大腿骨骨折治療用手術器具
【課題】 大腿骨に挿入されるネイルからラグスクリューを刺入する場合に用いられるターゲットデバイスに付設するセンターガイドにおいて、センターガイドに設けられるX線マーカーとX線照射方向を容易に一致させることできるようにするとともに、ターゲットデバイスにX線照射方向を確認できる照準を設けてラグスクリューを正確、かつ、確実に刺入できるようにする
【解決手段】 大腿骨に挿入されるネイルの上部に接続されるターゲットデバイスと、ターゲットデバイスから刺入されるラグスクリューのガイドであるX線マーカが設けられたセンターガイドとからなる大腿骨骨折治療用手術器具において、X線マーカをX線照射方向に奥行きのある二枚の壁状のものにするとともに、ターゲットデバイス又はネイルにおけるガイドピン突出個所にラグスクリュー刺入孔の中心線と一致した照準を設ける。
【解決手段】 大腿骨に挿入されるネイルの上部に接続されるターゲットデバイスと、ターゲットデバイスから刺入されるラグスクリューのガイドであるX線マーカが設けられたセンターガイドとからなる大腿骨骨折治療用手術器具において、X線マーカをX線照射方向に奥行きのある二枚の壁状のものにするとともに、ターゲットデバイス又はネイルにおけるガイドピン突出個所にラグスクリュー刺入孔の中心線と一致した照準を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腿骨頸部が骨折した場合の治療に用いられるラグスクリューを正確、かつ、確実に骨頭に刺入するための大腿骨骨折治療用手術器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大腿骨の頸部は細くなっている関係で骨折し易く、この骨折を治療するために用いられる大腿骨骨折治療用器具は、一般的には、図11に示すように、大腿骨Aの近位端から髄腔内に挿入されるネイルBと、ネイルBに斜め上方に向けて形成された貫通孔(ラグスクリュー刺入孔)Cから骨折面Dを通過して大腿骨Aの骨頭E内に挿入されるラグスクリューFとからなる。この場合、ラグスクリューFの刺入はX線透過画像を見ながら行うが、骨頭Eの付け根(頸部)は特に細いことから、その中心に刺入するためには相応の熟練を要する。
【0003】
このため、下記特許文献1に示すターゲットデバイス(以下、デバイス)と称される器具を用いている。これは、ネイルの上部に接続されて大腿部の外側に垂沿するもので、下部にネイルに形成されたラグスクリュー刺入孔にラグスクリューを正確に刺入するためのガイドとなるガイドピンを挿入するガイドピン挿入孔を有するものである。
【0004】
ガイドピン挿入孔はラグスクリュー刺入孔に正確に照準されており、しかも、二つの挿入(刺入)孔を結んだ角度は大腿骨骨軸と骨頭中心軸との交叉角度に設定されているものである。したがって、このデバイスを用いてガイドピンを設置し、このガイドピンをガイドにラグスクリューを刺入すれば、ネイルに形成されたラグスクリュー刺入孔にラグスクリューを正確に刺入することができる上にラグスクリューの刺入角度を骨頭中心軸と平行に設定できる。
【0005】
しかし、これだけではガイドピンが骨頭の中心に正確に刺入されるかどうかは判断できない。この判断はX線透過画像によることになり、それにはX線を大腿骨の前後方向(AP面)から照射した画像と、左右方向(ML面)から照射する画像によっている。具体的には、X線透過画像を見ながらガイドピンを骨頭にわずかに刺入してその状況を判断するのであるが、このデバイスはあくまでもネイルに形成されたラグスクリュー刺入孔にラグスクリューのガイドとなるガイドピンを正確に挿入できるだけのものであるから、ネイルの挿入深さが適当でない場合には、ガイドピンは骨頭から上下にずれるし、ネイルが内外又は前後に傾いていると、ガイドピンは骨頭を突き破る。
【0006】
また、ネイルが回旋している場合も同様であって、ガイドピンは骨頭の前後に傾いて刺入され、骨頭中心に沿って刺入することができない。誤った方向に刺入すると、再度やり直しを行うことになるが、これを何度も繰り返すと、骨頭組織を損傷してラグスクリューの固定度が低下して治療効果が十分に上がらないし、手術時間も長くなって患者の負担が大きい。
【0007】
そこで、ガイドピンの刺入方向・角度を予測するために、ワンショットガイド(ストライカー社製の商品名で以下、ガイド)という器具をデバイスに取り付けている。図8はガイドの使用状態を示すAP面の説明図、図9は同じくAP面のX線透過画像、図10はML面のX線透過画像であるが、大腿骨aの中に挿入されたネイルb(cはラグスクリュー刺入孔)にはデバイスdが接続されているのは上記したとおりである。
【0008】
一方、デバイスdにはガイドeが一定の拘束状態の下で回動可能に取り付けられており、ガイドeには二本の金属線からなるマーカfとこれと距離を置いてその中心に設けられた一本の金属線からなるインジケータgが設けられているものである。図7はX線照射装置の説明図であるが、骨頭hとガイドeとを挟んでX線源iと受光面jとが180°対向して配置されている。
【0009】
そして、ネイルbに形成されたラグスクリュー刺入孔cの向きを骨頭hの中心線に合せる操作をするのであるが、それには、まず、マーカfの中心にインジケータgが表示されるようガイドeの位置を調整する。これにより、インジケータgとラグスクリュー刺入孔cの軸芯とが同一照射線(面)L上にあることになるから、後はデバイスdを操作してネイルbの挿入深さ、前後左右の傾き及び回旋方向を調整し、インジケータgを骨頭hの中心に合わせる。この調整操作をした後にガイドピンkをデバイスdからネイルbのラグスクリュー刺入孔cに向けて刺入すれば、ガイドピンkはインジケータg上を通り、予測したとおりの方向(骨頭hの中心軸に沿う方向)へ刺入できるというものである。
【0010】
ところが、マーカfとインジゲータgの設定は施術者がX線透過画像を見ながら行うものであるから、照射線Lとガイドeとの位置関係がわずかに傾いた状態でもマーカfの間にインジケータgがあり、中心にあるのかどうかが判断し難いことがある。この原因は、マーカfとインジケータgとには奥行きはあるものの個々のものには奥行きがないから、若干傾いた傾いた場合でもインジケータgはマーカfの中心付近にあり、正確な判断をし難いからである。換言すれば、マーカfとしての感度が十分でないということである。さらに、他の原因として、デバイスd自体にネイルbのラグスクリュー刺入孔cの軸芯と一致する明確な照準が設けられていないことが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7077847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような課題を解決するものであり、ガイドのマーカがX線の照射方向と一致しているかどうかを容易に判別できるようにしてその感度を上げるとともに、デバイス自体にもネイルのラグスクリュー挿入孔の軸芯に一致する明確な照準を設けたものである。さらに、マーカ自体を患者の体形に合わせて伸縮できるようにしてその確認の容易化を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、大腿骨の近位端から骨軸に沿って挿入されるネイルの上部に接続されて大腿部の外側に垂沿し、下端部にネイルに形成されたラグスクリュー刺入孔から刺入されるラグスクリューのガイドのためのガイドピンを挿入するガイドピン挿入孔がラグスクリュー刺入孔に向けて形成されたターゲットデバイスと、ガイドピン挿入孔に結合されてガイドピン挿入孔とラグスクリュー刺入孔を結ぶ軸芯回りに回動し、X線照射を受けてその透過画像によって大腿骨の骨頭に対するガイドピンの挿入方向を設定するX線マーカが設けられたセンターガイドとからなる大腿骨骨折治療用手術器具において、X線マーカをX線照射方向に奥行きのある二枚の壁状のものにするとともに、ターゲットデバイスにおけるガイドピン突出個所にラグスクリュー刺入孔の中心線と一致した照準を設けたことを特徴とする大腿骨骨折治療用手術器具を提供したものである。
【0014】
また、本発明は、以上の手術器具において、請求項2に記載した、X線マーカをセンターガイドの面と平行な二本のループ形金属線とした手段、請求項3に記載した、照準が大腿骨の前後方向からのX線照射であるAP面と左右方向からのX線照射であるML面に設けられる手段、請求項4に記載した、ML面の照準がX線照射方向と直角なU字溝である手段、請求項5に記載した、センターガイドが伸縮できる手段を提供する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によると、X線透過画像にX線マーカの奥行きが見えていると、X線源から照射される照射線の方向が正しくないことになる。その場合は、奥行きが見えないようにX線源の位置を修正するか、X線マーカ(センターガイド)の位置を修正することになるのであるが、これによって照射線をX線マーカと同一線上に設定できる。謂わば、X線マーカの感度を上げることができたのである。このとき、センターガイドが骨頭の中心軸に正しく設定されておれば、必然的に照射線はネイルのラグスクリュー刺入孔のAP面、ML面ともに軸芯を通ることになる。加えて、ターゲットデバイス又はネイルには、ラグスクリュー刺入孔の軸芯と一致した照準が設けられているため、X線透過画像で確認しながらガイドピンの挿入を行った場合、予め、ガイドピンが見えて来る位置を予測することができる。
【0016】
さらに、請求項2のX線マーカーによれば、奥行きがあってX線の照射方向との傾きが容易に判別できるし、請求項3及び4の手段によれば、照準をより見易いものにできる。請求項5の手段によれば、センターガイドを患者の身体にもっとも近づけることができ、デバイスの照準との関連付けをより明確にできるとともに、ガイドピンの刺入をより長い範囲で確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ターゲットデバイスとセンターガイドの組合せを示す斜視図である。
【図2】ターゲットデバイスとセンターガイドの組合せを示す斜視図である。
【図3】図1の(イ)矢視図である。
【図4】マーカー部の一部斜視図である。
【図5】センターガイドによるAP面の設定を示す一部平面図である。
【図6】センターガイドによるML面の設定を示す一部平面図である。
【図7】患者とX線照射装置の関係を示す説明図である。
【図8】センターガイドの使用状態を示すAP面の説明図である。
【図9】センターガイドの使用状態を示すAP面のX線透過画像である。
【図10】センターガイドの使用状態を示すML面のX線透過画像である。
【図11】ネイルとラグスクリューの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、これにおいて、上下、前後及び左右といった方向を指称することがあるが、これは、人が立った状態を基準にする。すなわち、前方は腹部側、後方は背中側、上方は頭部側、下方は足側、左方は左側面側、右方は右側面側(大腿部でいえば、内方が股側、外方が体外側)ということになる。図1、図2はターゲットデバイスにセンターガイドを取り付けた状態の説明図、図3は図2の(イ)矢視図であるが、ターゲットデバイス(以下、デバイス)1は、基部2とデバイスアーム3と先端部4を同一平面内で鎌形に湾曲させたものであり、基部2にガイドピンPを案内する案内スリーブ5を通すガイドピン挿入孔6がこの平面内で斜め上方に向けて形成されたものである。
【0019】
先端部4は大腿骨7の骨軸に沿って挿入されるネイル8の上端に接続されるもので、これによってデバイス1とネイル8とは一体化される。なお、先端部3の上面には凹陥部9が形成されており、凹陥部9の中心にU字溝10がネイル8のガイドピン挿入孔6と軸芯を一致させてある長さで設けられており、これで照準を形成している。この場合、先端部4は金属で構成されており、その方向のX線透過画像にはU字溝10がはっきり写るようになっている。
【0020】
ネイル8は周知のとおり、金属部材の基柱部11を主体とするもので、基柱部11にラグスクリュー(図示省略)を刺入するラグスクリュー刺入孔12が形成されているものである。このとき、デバイス1のガイドピン挿入孔6とラグスクリュー刺入孔12の軸芯は同じ傾きの同芯であり、AP面で大腿骨7と骨頭13の交叉角度に設定されている。したがって、ガイドピンPをガイドピン挿入孔6に通すと、ネイル8が大腿骨7の骨軸に沿って挿入されている限り、ラグスクリュー刺入孔12を貫通して骨頭13に平行に刺入されるようになっている。
【0021】
センターガイド(以下、ガイド)14は、デバイス1の背面で案内スリーブ5に嵌合されるもので、共に樹脂からなる嵌合部15からガイドアーム16を経てマーカ部17に至る同一平面内で湾曲したものである。この場合、マーカ部17には尾柱18が取り付けられており、尾柱18はガイドアーム16に形成された案内溝19に摺動可能に設けられている。したがって、尾柱18を案内溝19に抜き差しすることで、マーカ部17はガイドアーム16に対して伸縮可能になっている。なお、本例では、尾柱18の摺動にはある程度の抵抗を持たせており、殊更、尾柱18の固定構造はとっていないが、締付けボルト等で固定するものであってもよい。
【0022】
図4はマーカ部17の一部斜視図であるが、マーカ部17にはX線マーカ(以下マーカ)20が設けられるのであり、本例のマーカ20は、二本の平行なループ形金属線をガイドアーム16等の面に平行に設けたもので、こうすることで、奥行きを有する二枚の壁状のものになるようにしている。そして、マーカ20以外の部分はX線透過度の高い樹脂等で構成しており、マーカ20と平行な方向からX線を照射すると、マーカ20が二本の壁となって受光面に写るようになっている(X線透過度の低下を防ぐためにマーカ部17のループ形金属線の内部には貫通孔21を形成している)。
【0023】
このとき、X線がマーカ20のループ面と平行に照射されていないと、それぞれの金属線がループ状で二重に写るため、X線の照射線(面)とマーカ20とが同一平面でないことがわかる。なお、X線の照射線とマーカ20が同一平面にないと、マーカ20(ガイド14)、骨頭13及びネイル8(デバイス1)はそれぞれ間隔をあけて設けられていることから、照準方向に誤差が生ずる。このため、精度を上げるために極力同一平面に設定する必要がある。
【0024】
ガイド14の嵌合部15は案内スリーブ5に対してそれと直角な平面内で回動できるようになっており、案内スリーブ4を中心としてデバイスアーム3等に直角な面(AP面)と平行な面(ML面)とに亘って衛星運動ができるようになっている。(22は固定ノブ)。なお、ガイドアーム16とこれに続くマーカ部17はAP面で見ると同一平面にあり、ML面で見るとマーカ20とU字溝10とは重なるようになっている。つまり、ガイド14とデバイス1の湾曲面は交叉しておらず(傾いてはおらず)、同じ面の向きでAP面とML面に亘って回動するようになっている。
【0025】
以上のデバイス1とガイド14によるラグスクリューの刺入について、AP面の設定を図1の斜視図と図5の平面図に基づいて説明する。患者は仰向いた状態でベッドに横たわっているのであるが、最初にネイル8の上端をデバイス1の先端部4に接続してネイル8を大腿骨7に挿入し、デバイスアーム3や基部2を身体の真横に垂沿させる。このときのネイル8の挿入深さの設定、内外及び前後の傾きの是正はX線透過画像を見ながら行い、ネイル8の上部がわずか大腿骨7の近位端側に覗き、大腿骨7の中心線と一致するように挿入する。
【0026】
次に、デバイス1の案内スリーブ5にガイド14の嵌合部15を嵌合する。そして、ガイド14を手術側の大腿部の前方に回動させ(マーカ20を有する先端部4は身体の前部に干渉しない程度にデバイス1から離してある)、マーカ20がデバイス1のラグスクリュー刺入孔12の出口に来るように設定する。
【0027】
この設定状態でX線透過画像を見ながらガイドピンPの刺入個所(ラグスクリュー刺入孔12の高さや内外方向の傾き)の決定を行うのであるが、このとき、マーカ20がループ状(奥行きがある状態)に写っていると、X線源とマーカ20とが同一平面にないのであるから、ガイド14の位置又はX線源の位置・角度を調整してマーカ20の奥行きが見えないようにする。そして、マーカ20と骨頭13の位置関係を合わすのであるが、このときのずれは、マーカ20が骨頭13の中心軸に対して上下方向にずれている場合と、内外(上下)方向に傾いている場合とである。前者の場合は、ネイル8の挿入深さを調整することになり、後者の場合は、ネイル8の内外方向の傾きを是正することになる。
【0028】
これにより、AP面の設定が完了したことになるので、今度はML面の設定を行う。図2の斜視図と図6の平面図はこれを示しているのであるが、この操作は、ガイド14を90°大腿部の外側に回し、同じくX線透過画像を見ながらマーカ20を骨頭13の中心線に合わす(このとき、マーカ20がルーブ状に見えた場合、ガイド14の位置又はX線源の位置・角度を調整するのは上記と同じ)。なお、このときのX線透過画像では、マーカ20が十分写っているのが好ましいから、これが可能なようにマーカー部17をガイドアーム16から引き出してマーカ20をできるだけ身体側に伸長させる。
【0029】
特に、X線は真横からでは他方の大腿部等に干渉して照射できないから、他方の大腿部を持ち上げて干渉しない範囲での上下斜め方向から照射することになるので、この伸長(伸縮)ができることは非常に重要である。そして、マーカ20と骨頭13の位置関係を合わすのであるが、このときのずれは、マーカ20自体が骨頭13の中心軸に対して前後方向にずれている場合と、骨頭13の中心を通っているが、前後方向に傾いている場合であり、前者の場合はネイル8の前後方向の傾きを是正し、後者の場合はネイル8を回旋させる。
【0030】
マーカ20と骨頭13の中心線が一致すると、デバイス1の照準(ネイル8のラグスクリュー刺入孔12の軸芯)とマーカ20の中心も合っている筈であるから、このことをデバイス1で確認する。AP面ではネイル8で行い、ラグスクリュー刺入孔12の入口と出口を結ぶ線がマーカ20の中心を通っていることを確認する。なお、入口と出口は側面からでも凹みとなっているから判別できるが、これを容易にするために、入口と出口を結ぶ中心線に溝や筋を入れてもよいし、X線照射方向と直角な方向に溝等を形成しておけばより判別が容易である。
【0031】
ML面ではデバイス1で行い、照準であるU字溝10がマーカ20の中心を通っていることを確認する。このときのU字溝10はX線照射方向と直角であるから、確認がより容易である。これらの操作によってガイドピンPが刺入されて来る方向が予測できるから、それが正しいことを確認する。以上により、AP面とML面の設定が終わったことになり、デバイス1のガイドピン挿入孔6から挿入されたガイドピンPはネイル8のラグスクリュー刺入孔12を経てマーカ20の二本の線の間を通って骨頭13の中心に正確に刺入されることになる。なお、ガイドピンPの刺入のときも、X線透過画像で正しい方向、角度で刺入されていることを確認する。
【0032】
この場合、マーカ部17は伸縮できるようになっているから、身体に着く位まで延ばしておけば、ガイドピン4の刺入状態がより長い範囲で確認できる。ガイドピン4が正しく刺入されたなら、ガイド14を外して案内スリーブ4を抜き、ラグスクリューを骨頭13の所定深さまで刺入するのであるが、この場合も、X線透過画像でその刺入が正しいことを確認する。
【符号の説明】
【0033】
1 ターゲットデバイス
2 基部
3 デバイスアーム
4 先端部
5 案内スリーブ
6 ガイドピン挿入孔
7 大腿骨
8 ネイル
9 凹陥部
10 照準(U字溝)
11 基柱部
12 ラグスクリュー刺入孔
13 骨頭
14 センターガイド
15 嵌合部
16 ガイドアーム
17 マーカ部
18 尾柱
19 案内溝
20 マーカ
21 貫通孔
22 固定ノブ
P ガイドピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腿骨頸部が骨折した場合の治療に用いられるラグスクリューを正確、かつ、確実に骨頭に刺入するための大腿骨骨折治療用手術器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大腿骨の頸部は細くなっている関係で骨折し易く、この骨折を治療するために用いられる大腿骨骨折治療用器具は、一般的には、図11に示すように、大腿骨Aの近位端から髄腔内に挿入されるネイルBと、ネイルBに斜め上方に向けて形成された貫通孔(ラグスクリュー刺入孔)Cから骨折面Dを通過して大腿骨Aの骨頭E内に挿入されるラグスクリューFとからなる。この場合、ラグスクリューFの刺入はX線透過画像を見ながら行うが、骨頭Eの付け根(頸部)は特に細いことから、その中心に刺入するためには相応の熟練を要する。
【0003】
このため、下記特許文献1に示すターゲットデバイス(以下、デバイス)と称される器具を用いている。これは、ネイルの上部に接続されて大腿部の外側に垂沿するもので、下部にネイルに形成されたラグスクリュー刺入孔にラグスクリューを正確に刺入するためのガイドとなるガイドピンを挿入するガイドピン挿入孔を有するものである。
【0004】
ガイドピン挿入孔はラグスクリュー刺入孔に正確に照準されており、しかも、二つの挿入(刺入)孔を結んだ角度は大腿骨骨軸と骨頭中心軸との交叉角度に設定されているものである。したがって、このデバイスを用いてガイドピンを設置し、このガイドピンをガイドにラグスクリューを刺入すれば、ネイルに形成されたラグスクリュー刺入孔にラグスクリューを正確に刺入することができる上にラグスクリューの刺入角度を骨頭中心軸と平行に設定できる。
【0005】
しかし、これだけではガイドピンが骨頭の中心に正確に刺入されるかどうかは判断できない。この判断はX線透過画像によることになり、それにはX線を大腿骨の前後方向(AP面)から照射した画像と、左右方向(ML面)から照射する画像によっている。具体的には、X線透過画像を見ながらガイドピンを骨頭にわずかに刺入してその状況を判断するのであるが、このデバイスはあくまでもネイルに形成されたラグスクリュー刺入孔にラグスクリューのガイドとなるガイドピンを正確に挿入できるだけのものであるから、ネイルの挿入深さが適当でない場合には、ガイドピンは骨頭から上下にずれるし、ネイルが内外又は前後に傾いていると、ガイドピンは骨頭を突き破る。
【0006】
また、ネイルが回旋している場合も同様であって、ガイドピンは骨頭の前後に傾いて刺入され、骨頭中心に沿って刺入することができない。誤った方向に刺入すると、再度やり直しを行うことになるが、これを何度も繰り返すと、骨頭組織を損傷してラグスクリューの固定度が低下して治療効果が十分に上がらないし、手術時間も長くなって患者の負担が大きい。
【0007】
そこで、ガイドピンの刺入方向・角度を予測するために、ワンショットガイド(ストライカー社製の商品名で以下、ガイド)という器具をデバイスに取り付けている。図8はガイドの使用状態を示すAP面の説明図、図9は同じくAP面のX線透過画像、図10はML面のX線透過画像であるが、大腿骨aの中に挿入されたネイルb(cはラグスクリュー刺入孔)にはデバイスdが接続されているのは上記したとおりである。
【0008】
一方、デバイスdにはガイドeが一定の拘束状態の下で回動可能に取り付けられており、ガイドeには二本の金属線からなるマーカfとこれと距離を置いてその中心に設けられた一本の金属線からなるインジケータgが設けられているものである。図7はX線照射装置の説明図であるが、骨頭hとガイドeとを挟んでX線源iと受光面jとが180°対向して配置されている。
【0009】
そして、ネイルbに形成されたラグスクリュー刺入孔cの向きを骨頭hの中心線に合せる操作をするのであるが、それには、まず、マーカfの中心にインジケータgが表示されるようガイドeの位置を調整する。これにより、インジケータgとラグスクリュー刺入孔cの軸芯とが同一照射線(面)L上にあることになるから、後はデバイスdを操作してネイルbの挿入深さ、前後左右の傾き及び回旋方向を調整し、インジケータgを骨頭hの中心に合わせる。この調整操作をした後にガイドピンkをデバイスdからネイルbのラグスクリュー刺入孔cに向けて刺入すれば、ガイドピンkはインジケータg上を通り、予測したとおりの方向(骨頭hの中心軸に沿う方向)へ刺入できるというものである。
【0010】
ところが、マーカfとインジゲータgの設定は施術者がX線透過画像を見ながら行うものであるから、照射線Lとガイドeとの位置関係がわずかに傾いた状態でもマーカfの間にインジケータgがあり、中心にあるのかどうかが判断し難いことがある。この原因は、マーカfとインジケータgとには奥行きはあるものの個々のものには奥行きがないから、若干傾いた傾いた場合でもインジケータgはマーカfの中心付近にあり、正確な判断をし難いからである。換言すれば、マーカfとしての感度が十分でないということである。さらに、他の原因として、デバイスd自体にネイルbのラグスクリュー刺入孔cの軸芯と一致する明確な照準が設けられていないことが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7077847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような課題を解決するものであり、ガイドのマーカがX線の照射方向と一致しているかどうかを容易に判別できるようにしてその感度を上げるとともに、デバイス自体にもネイルのラグスクリュー挿入孔の軸芯に一致する明確な照準を設けたものである。さらに、マーカ自体を患者の体形に合わせて伸縮できるようにしてその確認の容易化を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、大腿骨の近位端から骨軸に沿って挿入されるネイルの上部に接続されて大腿部の外側に垂沿し、下端部にネイルに形成されたラグスクリュー刺入孔から刺入されるラグスクリューのガイドのためのガイドピンを挿入するガイドピン挿入孔がラグスクリュー刺入孔に向けて形成されたターゲットデバイスと、ガイドピン挿入孔に結合されてガイドピン挿入孔とラグスクリュー刺入孔を結ぶ軸芯回りに回動し、X線照射を受けてその透過画像によって大腿骨の骨頭に対するガイドピンの挿入方向を設定するX線マーカが設けられたセンターガイドとからなる大腿骨骨折治療用手術器具において、X線マーカをX線照射方向に奥行きのある二枚の壁状のものにするとともに、ターゲットデバイスにおけるガイドピン突出個所にラグスクリュー刺入孔の中心線と一致した照準を設けたことを特徴とする大腿骨骨折治療用手術器具を提供したものである。
【0014】
また、本発明は、以上の手術器具において、請求項2に記載した、X線マーカをセンターガイドの面と平行な二本のループ形金属線とした手段、請求項3に記載した、照準が大腿骨の前後方向からのX線照射であるAP面と左右方向からのX線照射であるML面に設けられる手段、請求項4に記載した、ML面の照準がX線照射方向と直角なU字溝である手段、請求項5に記載した、センターガイドが伸縮できる手段を提供する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によると、X線透過画像にX線マーカの奥行きが見えていると、X線源から照射される照射線の方向が正しくないことになる。その場合は、奥行きが見えないようにX線源の位置を修正するか、X線マーカ(センターガイド)の位置を修正することになるのであるが、これによって照射線をX線マーカと同一線上に設定できる。謂わば、X線マーカの感度を上げることができたのである。このとき、センターガイドが骨頭の中心軸に正しく設定されておれば、必然的に照射線はネイルのラグスクリュー刺入孔のAP面、ML面ともに軸芯を通ることになる。加えて、ターゲットデバイス又はネイルには、ラグスクリュー刺入孔の軸芯と一致した照準が設けられているため、X線透過画像で確認しながらガイドピンの挿入を行った場合、予め、ガイドピンが見えて来る位置を予測することができる。
【0016】
さらに、請求項2のX線マーカーによれば、奥行きがあってX線の照射方向との傾きが容易に判別できるし、請求項3及び4の手段によれば、照準をより見易いものにできる。請求項5の手段によれば、センターガイドを患者の身体にもっとも近づけることができ、デバイスの照準との関連付けをより明確にできるとともに、ガイドピンの刺入をより長い範囲で確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ターゲットデバイスとセンターガイドの組合せを示す斜視図である。
【図2】ターゲットデバイスとセンターガイドの組合せを示す斜視図である。
【図3】図1の(イ)矢視図である。
【図4】マーカー部の一部斜視図である。
【図5】センターガイドによるAP面の設定を示す一部平面図である。
【図6】センターガイドによるML面の設定を示す一部平面図である。
【図7】患者とX線照射装置の関係を示す説明図である。
【図8】センターガイドの使用状態を示すAP面の説明図である。
【図9】センターガイドの使用状態を示すAP面のX線透過画像である。
【図10】センターガイドの使用状態を示すML面のX線透過画像である。
【図11】ネイルとラグスクリューの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、これにおいて、上下、前後及び左右といった方向を指称することがあるが、これは、人が立った状態を基準にする。すなわち、前方は腹部側、後方は背中側、上方は頭部側、下方は足側、左方は左側面側、右方は右側面側(大腿部でいえば、内方が股側、外方が体外側)ということになる。図1、図2はターゲットデバイスにセンターガイドを取り付けた状態の説明図、図3は図2の(イ)矢視図であるが、ターゲットデバイス(以下、デバイス)1は、基部2とデバイスアーム3と先端部4を同一平面内で鎌形に湾曲させたものであり、基部2にガイドピンPを案内する案内スリーブ5を通すガイドピン挿入孔6がこの平面内で斜め上方に向けて形成されたものである。
【0019】
先端部4は大腿骨7の骨軸に沿って挿入されるネイル8の上端に接続されるもので、これによってデバイス1とネイル8とは一体化される。なお、先端部3の上面には凹陥部9が形成されており、凹陥部9の中心にU字溝10がネイル8のガイドピン挿入孔6と軸芯を一致させてある長さで設けられており、これで照準を形成している。この場合、先端部4は金属で構成されており、その方向のX線透過画像にはU字溝10がはっきり写るようになっている。
【0020】
ネイル8は周知のとおり、金属部材の基柱部11を主体とするもので、基柱部11にラグスクリュー(図示省略)を刺入するラグスクリュー刺入孔12が形成されているものである。このとき、デバイス1のガイドピン挿入孔6とラグスクリュー刺入孔12の軸芯は同じ傾きの同芯であり、AP面で大腿骨7と骨頭13の交叉角度に設定されている。したがって、ガイドピンPをガイドピン挿入孔6に通すと、ネイル8が大腿骨7の骨軸に沿って挿入されている限り、ラグスクリュー刺入孔12を貫通して骨頭13に平行に刺入されるようになっている。
【0021】
センターガイド(以下、ガイド)14は、デバイス1の背面で案内スリーブ5に嵌合されるもので、共に樹脂からなる嵌合部15からガイドアーム16を経てマーカ部17に至る同一平面内で湾曲したものである。この場合、マーカ部17には尾柱18が取り付けられており、尾柱18はガイドアーム16に形成された案内溝19に摺動可能に設けられている。したがって、尾柱18を案内溝19に抜き差しすることで、マーカ部17はガイドアーム16に対して伸縮可能になっている。なお、本例では、尾柱18の摺動にはある程度の抵抗を持たせており、殊更、尾柱18の固定構造はとっていないが、締付けボルト等で固定するものであってもよい。
【0022】
図4はマーカ部17の一部斜視図であるが、マーカ部17にはX線マーカ(以下マーカ)20が設けられるのであり、本例のマーカ20は、二本の平行なループ形金属線をガイドアーム16等の面に平行に設けたもので、こうすることで、奥行きを有する二枚の壁状のものになるようにしている。そして、マーカ20以外の部分はX線透過度の高い樹脂等で構成しており、マーカ20と平行な方向からX線を照射すると、マーカ20が二本の壁となって受光面に写るようになっている(X線透過度の低下を防ぐためにマーカ部17のループ形金属線の内部には貫通孔21を形成している)。
【0023】
このとき、X線がマーカ20のループ面と平行に照射されていないと、それぞれの金属線がループ状で二重に写るため、X線の照射線(面)とマーカ20とが同一平面でないことがわかる。なお、X線の照射線とマーカ20が同一平面にないと、マーカ20(ガイド14)、骨頭13及びネイル8(デバイス1)はそれぞれ間隔をあけて設けられていることから、照準方向に誤差が生ずる。このため、精度を上げるために極力同一平面に設定する必要がある。
【0024】
ガイド14の嵌合部15は案内スリーブ5に対してそれと直角な平面内で回動できるようになっており、案内スリーブ4を中心としてデバイスアーム3等に直角な面(AP面)と平行な面(ML面)とに亘って衛星運動ができるようになっている。(22は固定ノブ)。なお、ガイドアーム16とこれに続くマーカ部17はAP面で見ると同一平面にあり、ML面で見るとマーカ20とU字溝10とは重なるようになっている。つまり、ガイド14とデバイス1の湾曲面は交叉しておらず(傾いてはおらず)、同じ面の向きでAP面とML面に亘って回動するようになっている。
【0025】
以上のデバイス1とガイド14によるラグスクリューの刺入について、AP面の設定を図1の斜視図と図5の平面図に基づいて説明する。患者は仰向いた状態でベッドに横たわっているのであるが、最初にネイル8の上端をデバイス1の先端部4に接続してネイル8を大腿骨7に挿入し、デバイスアーム3や基部2を身体の真横に垂沿させる。このときのネイル8の挿入深さの設定、内外及び前後の傾きの是正はX線透過画像を見ながら行い、ネイル8の上部がわずか大腿骨7の近位端側に覗き、大腿骨7の中心線と一致するように挿入する。
【0026】
次に、デバイス1の案内スリーブ5にガイド14の嵌合部15を嵌合する。そして、ガイド14を手術側の大腿部の前方に回動させ(マーカ20を有する先端部4は身体の前部に干渉しない程度にデバイス1から離してある)、マーカ20がデバイス1のラグスクリュー刺入孔12の出口に来るように設定する。
【0027】
この設定状態でX線透過画像を見ながらガイドピンPの刺入個所(ラグスクリュー刺入孔12の高さや内外方向の傾き)の決定を行うのであるが、このとき、マーカ20がループ状(奥行きがある状態)に写っていると、X線源とマーカ20とが同一平面にないのであるから、ガイド14の位置又はX線源の位置・角度を調整してマーカ20の奥行きが見えないようにする。そして、マーカ20と骨頭13の位置関係を合わすのであるが、このときのずれは、マーカ20が骨頭13の中心軸に対して上下方向にずれている場合と、内外(上下)方向に傾いている場合とである。前者の場合は、ネイル8の挿入深さを調整することになり、後者の場合は、ネイル8の内外方向の傾きを是正することになる。
【0028】
これにより、AP面の設定が完了したことになるので、今度はML面の設定を行う。図2の斜視図と図6の平面図はこれを示しているのであるが、この操作は、ガイド14を90°大腿部の外側に回し、同じくX線透過画像を見ながらマーカ20を骨頭13の中心線に合わす(このとき、マーカ20がルーブ状に見えた場合、ガイド14の位置又はX線源の位置・角度を調整するのは上記と同じ)。なお、このときのX線透過画像では、マーカ20が十分写っているのが好ましいから、これが可能なようにマーカー部17をガイドアーム16から引き出してマーカ20をできるだけ身体側に伸長させる。
【0029】
特に、X線は真横からでは他方の大腿部等に干渉して照射できないから、他方の大腿部を持ち上げて干渉しない範囲での上下斜め方向から照射することになるので、この伸長(伸縮)ができることは非常に重要である。そして、マーカ20と骨頭13の位置関係を合わすのであるが、このときのずれは、マーカ20自体が骨頭13の中心軸に対して前後方向にずれている場合と、骨頭13の中心を通っているが、前後方向に傾いている場合であり、前者の場合はネイル8の前後方向の傾きを是正し、後者の場合はネイル8を回旋させる。
【0030】
マーカ20と骨頭13の中心線が一致すると、デバイス1の照準(ネイル8のラグスクリュー刺入孔12の軸芯)とマーカ20の中心も合っている筈であるから、このことをデバイス1で確認する。AP面ではネイル8で行い、ラグスクリュー刺入孔12の入口と出口を結ぶ線がマーカ20の中心を通っていることを確認する。なお、入口と出口は側面からでも凹みとなっているから判別できるが、これを容易にするために、入口と出口を結ぶ中心線に溝や筋を入れてもよいし、X線照射方向と直角な方向に溝等を形成しておけばより判別が容易である。
【0031】
ML面ではデバイス1で行い、照準であるU字溝10がマーカ20の中心を通っていることを確認する。このときのU字溝10はX線照射方向と直角であるから、確認がより容易である。これらの操作によってガイドピンPが刺入されて来る方向が予測できるから、それが正しいことを確認する。以上により、AP面とML面の設定が終わったことになり、デバイス1のガイドピン挿入孔6から挿入されたガイドピンPはネイル8のラグスクリュー刺入孔12を経てマーカ20の二本の線の間を通って骨頭13の中心に正確に刺入されることになる。なお、ガイドピンPの刺入のときも、X線透過画像で正しい方向、角度で刺入されていることを確認する。
【0032】
この場合、マーカ部17は伸縮できるようになっているから、身体に着く位まで延ばしておけば、ガイドピン4の刺入状態がより長い範囲で確認できる。ガイドピン4が正しく刺入されたなら、ガイド14を外して案内スリーブ4を抜き、ラグスクリューを骨頭13の所定深さまで刺入するのであるが、この場合も、X線透過画像でその刺入が正しいことを確認する。
【符号の説明】
【0033】
1 ターゲットデバイス
2 基部
3 デバイスアーム
4 先端部
5 案内スリーブ
6 ガイドピン挿入孔
7 大腿骨
8 ネイル
9 凹陥部
10 照準(U字溝)
11 基柱部
12 ラグスクリュー刺入孔
13 骨頭
14 センターガイド
15 嵌合部
16 ガイドアーム
17 マーカ部
18 尾柱
19 案内溝
20 マーカ
21 貫通孔
22 固定ノブ
P ガイドピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨の近位端から骨軸に沿って挿入されるネイルの上部に接続されて大腿部の外側に垂沿し、下端部にネイルに形成されたラグスクリュー刺入孔から刺入されるラグスクリューのガイドのためのガイドピンを挿入するガイドピン挿入孔がラグスクリュー刺入孔に向けて形成されたターゲットデバイスと、ガイドピン挿入孔に結合されてガイドピン挿入孔とラグスクリュー刺入孔を結ぶ軸芯回りに回動し、X線照射を受けてその透過画像によって大腿骨の骨頭に対するガイドピンの挿入方向を設定するX線マーカが設けられたセンターガイドとからなる大腿骨骨折治療用手術器具において、X線マーカをX線照射方向に奥行きのある二枚の壁状のものにするとともに、ターゲットデバイス又はネイルにおけるガイドピン突出個所にラグスクリュー刺入孔の中心線と一致した照準を設けたことを特徴とする大腿骨骨折治療用手術器具。
【請求項2】
X線マーカをセンターガイドの面と平行な二本のループ形金属線とした請求項1の大腿骨骨折治療用手術器具。
【請求項3】
照準が大腿骨の前後方向からのX線照射であるAP面と左右方向からのX線照射であるML面に設けられる請求項1又は2の大腿骨骨折治療用手術器具。
【請求項4】
ML面の照準がターゲットデバイスに設けられるX線照射方向と直角なU字溝である請求項3の大腿骨骨折治療用手術器具。
【請求項5】
センターガイドが伸縮できるものである請求項1〜4いずれかの大腿骨骨折治療用手術器具。
【請求項1】
大腿骨の近位端から骨軸に沿って挿入されるネイルの上部に接続されて大腿部の外側に垂沿し、下端部にネイルに形成されたラグスクリュー刺入孔から刺入されるラグスクリューのガイドのためのガイドピンを挿入するガイドピン挿入孔がラグスクリュー刺入孔に向けて形成されたターゲットデバイスと、ガイドピン挿入孔に結合されてガイドピン挿入孔とラグスクリュー刺入孔を結ぶ軸芯回りに回動し、X線照射を受けてその透過画像によって大腿骨の骨頭に対するガイドピンの挿入方向を設定するX線マーカが設けられたセンターガイドとからなる大腿骨骨折治療用手術器具において、X線マーカをX線照射方向に奥行きのある二枚の壁状のものにするとともに、ターゲットデバイス又はネイルにおけるガイドピン突出個所にラグスクリュー刺入孔の中心線と一致した照準を設けたことを特徴とする大腿骨骨折治療用手術器具。
【請求項2】
X線マーカをセンターガイドの面と平行な二本のループ形金属線とした請求項1の大腿骨骨折治療用手術器具。
【請求項3】
照準が大腿骨の前後方向からのX線照射であるAP面と左右方向からのX線照射であるML面に設けられる請求項1又は2の大腿骨骨折治療用手術器具。
【請求項4】
ML面の照準がターゲットデバイスに設けられるX線照射方向と直角なU字溝である請求項3の大腿骨骨折治療用手術器具。
【請求項5】
センターガイドが伸縮できるものである請求項1〜4いずれかの大腿骨骨折治療用手術器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−115408(P2011−115408A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276011(P2009−276011)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(508282465)ナカシマメディカル株式会社 (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(508282465)ナカシマメディカル株式会社 (22)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]