説明

大電流用プローブピン

【課題】電気抵抗が小さいうえ適用範囲も広い大電流用プローブピンを実現する。
【解決手段】電気導通用の接触部14aが複数形成されて分散配置されている当接部材14と、棒状の導電体からなりヘッド11aには当接部材14が取り付けられテール11bには電線端部18を接続しうるプランジャ11(進退部材)と、被検体に当接部材14を当接させるようプランジャ11を付勢するコイルばね12(付勢手段)とを具え、当接部材14の周縁部が放射状に分岐して接触部14aを成しており、当接部材14の中央部が凹み11cの中で留具挿通孔14bに差し込んだ留め具15にてプランジャ11に固定され、接触部14aが凹み11cの内周縁(11d)より外周側へ延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プローブヘッドの先端を被検体に当接させて通電するための大電流用プローブピンに関し、詳しくは、大電流通電のため多点で接触する大電流用プローブピンに関する。
【背景技術】
【0002】
大電流用プローブピンは、導電性のピンからなり、一本ずつ支持部材にて保持されて、先端を被検体に当接させることで、電気的な接続を確立するようになっている。
また、接触圧力を安定させるために、導電性部材からなる棒状の進退部材をコイルばね等で被検体に向けて付勢するとともに、接触部の偏在による不所望な接点溶着を防止する等のために、接触部の多数化と分散化が図られている(例えば特許文献1,2参照)。
さらに、耐久性を向上させるために、高硬度のタングステン合金などからなる当接部材を進退部材の先端部に装着することも行われている。
【0003】
このような大電流用プローブピンを、本願発明の説明に役立つよう、図面を引用して具体的に説明する。図6は、(a)が従来の大電流用プローブピン60の正面図、(b)がプローブピン60のプランジャ11(進退部材)のヘッド11a(先端部)の当接部材61の正面図、(c)がその当接部材61の平面図、(d)が支持部材16への取り付けや電線端部の接続も済ませてプローブになった状態を一部断面で示した正面図、(e)が測定状態の正面図である。
【0004】
プローブピン60は(図6(a)参照)、真鍮等の金属製で導電性のプランジャ11(進退部材)と、プランジャ11を遊挿しうるコイルばね12(付勢部材)と、プランジャ11を挿通しうる円筒状のスリーブ13(筒状案内部材)とを具えたものであり、プランジャ11が細長い丸棒状に形成され、スリーブ13がプランジャ11と摺動可能かつ軸方向移動可能に嵌合した状態で、コイルばね12がスリーブ13の前端とプランジャ11のヘッド11a(先端部)とを離隔させるよう押すことで、プランジャ11が前方へ付勢されるようになっている。また、プランジャ11の後端部はスリーブ13から突き出ていて電線端部を接続できるようになっている。
【0005】
さらに、ヘッド11a(進退部材の先端部)の最先端には、耐久性を高めるためにプランジャ11とは異なる材質の別部材からなる当接部材61が取り付けられている。
当接部材61は(図6(b),(c)参照)、耐摩耗性に優れたタングステン製の円板から作られ、その上面には、断面V字形の溝61bを彫り込む加工がマトリクス状に即ち等ピッチで縦横に施されて、角錐状突起の接触部61aが多数形成されいている。そして、当接部材61の下面側が銀鑞62にてヘッド11aの先端面に鑞付けされて、当接部材61がプランジャ11の最先端に固定されている。
【0006】
このようなプローブピン60は(図6(d)参照)、支持部材16の貫通穴にスリーブ13を圧入することで支持部材16に保持され、プランジャ11の後端部に電線端部を接続させることで、プローブとしての使用準備が整う。
そして、使用時には(図6(e)参照)、プランジャ11のヘッド11aの当接部材61と被検体20の表面とを当接させ、更に押し込んでコイルばね12の弾撥力で接触圧を安定させることで接触部の電気導通状態を安定させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭62−114366号公報
【特許文献2】実開昭63−105871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来の大電流用プローブピンでは、進退部材の先端部に取り付ける多点分散接触の当接部材をタングステン等から作っていた。タングステンやタングステン合金のような高硬度部材や超硬部材は、耐久性に優れていて長持ちするだけでなく、被検体の表面の汚れや酸化膜を突起状の接触部が突き破って電気導通状態の確立に寄与するという利点も持っている。
しかしながら、そのような硬い部材には、一般に、加工コストが嵩むうえ、電気抵抗が大きい、という不満がある。
【0009】
さらに、高硬度部材や超硬部材では、電気導通の確立には利点であった硬いという性質が、変形し難いという観点からは、被検体が限定されるため適用範囲が狭いという欠点を招く。すなわち、被検体の表面が完全な平坦でなく、被検体表面のプローブピン当接部位に凹凸やうねり等があると、例えそれが僅かなものであっても、プローブピンの進退部材の先端部の当接部材において分散している多数の接触部と被検体表面との接触状態が不揃いになるため、多点分散接触が部分的であれ損なわれて、電気導通状態が安定し難くなるので、プローブピン当接部位が十分に平坦な被検体に適用が限られるのである。
【0010】
そこで、多点分散接触用の当接部材などの形状を工夫して、電気抵抗の小さな導電性部材や良導体が使えて多点分散接触も揃って安定するように改良することにより、電気抵抗が小さいうえ適用範囲も広い大電流用プローブピンを実現することが技術的な課題となる。また、そのような大電流用プローブピンを安価に提供できるようにすることが更なる課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の大電流用プローブピンは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、電気導通用の接触部が複数形成されて分散配置されている当接部材と、棒状の導電体からなり先端には前記当接部材が取り付けられており後端部には電線を接続しうる進退部材と、被検体に前記当接部材を当接させるよう前記進退部材を付勢する付勢手段とを具えた大電流用プローブピンにおいて、前記当接部材の周縁部が放射状に分岐して前記接触部を成しており、前記進退部材の先端面に凹みが形成されており、前記当接部材の中央部が前記凹みの中で前記進退部材に固定されるとともに前記当接部材の前記接触部が前記凹みから出て前記凹みの内周縁より外周側へ延びていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の大電流用プローブピンは(解決手段2)、上記解決手段1の大電流用プローブピンであって、前記当接部材が板体を打ち抜いて形成した一体物からなることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の大電流用プローブピンは(解決手段3)、上記解決手段1,2の大電流用プローブピンであって、前記当接部材の中央部に留具挿通孔が貫通形成されており、前記留具挿通孔に差し込まれた留め具にて前記当接部材が前記進退部材に固定されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の大電流用プローブピンは(解決手段4)、上記解決手段1〜3の大電流用プローブピンであって、前記当接部材の前記接触部が被検体に当接していない自由状態では前記凹みの内周縁から浮いて離れていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このような本発明の大電流用プローブピンにあっては(解決手段1)、当接部材の周縁部を放射状に分岐させることで接触部の多数化と分散配置を維持するとともに、多数の接触部を中央部で片持ち支持しながら連結させることで当接部材を一体化している。そのうえで、当接部材の中央部は邪魔にならないよう進退部材の先端面の凹みに収めつつ必要な固定の役目を果たさせるとともに、当接部材の接触部が凹みから出て凹みの内周縁より外周側へ延びるようにしたことにより、当接部材の接触部が、被検体に当接すると、凹みの内周縁を支承点にしてシーソーのように揺動する。
【0016】
そして、揺動時には、当接部材の接触部の中央部寄り部分の変形によって接触圧力の変動が緩和されるので、被検体表面のプローブピン当接部位に多少の凹凸やうねりがあっても、当接部材と被検体表面との接触状態が多数の接触部について揃って安定することとなる。また、直進運動によって接触部同士が押し合うことで電気導通状態が確立されるにとどまらず、揺動によって接触部が擦れることで電気導通状態の確立が更に強化される。しかも、擦れ合いによる電気導通状態の確立には、押し合いのときほど、強い力や高い硬度が要らない。そのため、当接部材に採択可能な材質が広がるので、従来より電気抵抗の小さな部材が使用可能となる。したがって、この発明によれば、電気抵抗が小さいうえ適用範囲も広い大電流用プローブピンを実現することができる。
【0017】
また、本発明の大電流用プローブピンにあっては(解決手段2)、当接部材の硬度を下げられるようになったことを利用して、当接部材が板体の打ち抜きにて一体形成されるようにしたことにより、電気抵抗が小さいうえ適用範囲も広い大電流用プローブピンを安価に提供することができる。
【0018】
さらに、本発明の大電流用プローブピンにあっては(解決手段3)、当接部材の中央部の留具挿通孔に留め具を差し込むことで当接部材が進退部材に固定されるようにしたことにより、当接部材の装着作業や交換作業が容易かつ迅速に行えることとなる。
【0019】
また、本発明の大電流用プローブピンにあっては(解決手段4)、当接部材の接触部が自由状態では凹みの内周縁から浮いて離れるようにしたことにより、個々の接触部の可動距離が浮上分だけ拡大するので、接触圧力の変動緩和の機能が強化される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1について、大電流用プローブピンの構造を示し、(a)がプローブピンの正面図、(b)がその縦断面図、(c)が進退部材の先端部の平面図、(d)がその縦断正面図、(e)が当接部材の平面図、(f)がその縦断正面図、(g)が支持や接続も済ませたプローブに係る一部断面視の正面図である。
【図2】(a)がプローブピンと被検体との当接開始時の正面図、(b)がそのときの接触部と周囲の縦断面拡大図、(c)がプローブピンと被検体との当接確立後の正面図、(d)がそのときの接触部と周囲の縦断面拡大図である。
【図3】本発明の実施例2について、大電流用プローブピンの構造を示し、(a)がプローブピンの正面図、(b)が進退部材の先端部の縦断正面図である。
【図4】(a)が支持や接続も済ませたプローブに係る一部断面視の正面図、(b)がプローブピンと被検体との当接確立後の正面図である。
【図5】本発明の実施例3について、(a),(b)何れもプローブピン等の正面図である。
【図6】従来の大電流用プローブピンを示し、(a)がプローブピンの正面図、(b)が進退部材の先端部の当接部材の正面図、(c)がその当接部材の平面図、(d)が支持や接続も済ませたプローブに係る一部断面視の正面図、(e)が測定状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
このような本発明の大電流用プローブピンについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜3により説明する。
図1〜2に示した実施例1は、上述した解決手段1〜3(出願当初の請求項1〜3)を具現化したものであり、図3〜4に示した実施例2は、上述した解決手段4(出願当初の請求項4)を具現化したものであり、図5に示した実施例3は、その変形例である。なお、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示した。また、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の各実施例についても共通する。
【実施例1】
【0022】
本発明の大電流用プローブピンの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が大電流用プローブピン10の正面図、(b)がそのプローブピン10の縦断面図、(c)がプローブピン10のプランジャ11(進退部材)のヘッド11a(先端部)の平面図、(d)がその縦断正面図、(e)が当接部材14の平面図、(f)がその縦断正面図、(g)が支持部材16への取り付けや電線端部18の接続も済ませてプローブになった状態を一部断面で示した正面図である。
【0023】
プローブピン10は(図1(a),(b)参照)、棒状の導電体からなり先端には当接部材が取り付けられており後端部には電線を接続しうる進退部材としてのプランジャ11と、被検体20に当接部材を当接させるようプランジャ11を付勢する付勢手段としてのコイルばね12と、プランジャ11に外嵌されてその進退を軸方向に限定する筒状案内部材としてのスリーブ13とを具えていて、支持部材16の貫通穴にスリーブ13を圧入することで支持部材16に保持されるようになっている点で、既述した従来のプローブピン60と同様である。プランジャ11の先端の当接部材を被検体20に当接させて被検体20とプランジャ11の後端部の接続電線との電気導通をとる点も従来同様である。
【0024】
これに対し(図1(a)〜(g)参照)、プランジャ11のテール11b(後端部)に雌ねじが形成されていてそこにナット17で電線端部18を固定して接続するようになっている点と(図1(g)参照)、プランジャ11(進退部材)のヘッド11a(先端部)の先端面に凹み11c(座繰り)が形成されている点と(図1(c),(d)参照)、当接部材61に代えて新たな当接部材14が導入された点と(図1(a)〜(d)参照)、プランジャ11の先端面への当接部材14の取り付け手段が鑞付けでなく留め具15になっている点で(図1(a)〜(d)参照)、プローブピン10はプローブピン60と相違する。
【0025】
当接部材14は、電気導通用の接触部が複数形成されて分散配置されているという点で大電流用の基本要件を当接部材61から引き継いでいるが、具体的な形状も材質も作り方も当接部材61と異なっている。すなわち、当接部材14は、厚さ一定の平板から所定形状部分をプレス等で打ち抜きながら同時に曲げ加工も施すことで作られる一体物であり、例えば200℃以上の高温環境下で使用する場合の素材にはステンレススチール等が採用され、それほど高温でなければ導電性もバネ性も良いベリリウム銅などから作られる。
【0026】
当接部材14の形状は(図1(e),(f)参照)、花びらが離れるほど開いた花のようであり、円板からその周縁部を等ピッチ角で数箇所切り欠いて、残った周縁部が放射状に分岐して接触部14aを成している。接触部14aは、図示したのは6個であるが、同一形状や類似形状のものが等ピッチ角で放射状に分散していれば、5個以下でも良く、7個以上でも良い。当接部材14の中央部は、一周分がまるまる平坦なまま残っていて、多数の接触部14aを少し傾いた片持ち状態で支持する連結部となっているが、その中心部には留具挿通孔14bが貫通形成されている。この留具挿通孔14bも、接触部14a間の切欠も、接触部14aを傾ける曲げも、一回のプレス工程で加工できるものである。
【0027】
プランジャ11のヘッド11aの先端面は(図1(c),(d)参照)、中央に、浅い丸皿状の凹み11cが彫り込み加工等にて形成されており、その周りには、細い土手のようになった一周分の周縁部が残っている。この凹み11cの径は当接部材14の外接円の径より小さくなっている。また、凹み11cの中心には、留め具15を差し込む留具挿着孔が、穿孔されている。留め具15は、太めの頭部と細めの首下部とを具えており、首下部を留具挿通孔14bに差し込んでから留具挿着孔に装着されていて、頭部で当接部材14を押さえてプランジャ11に固定しているものとなっている。
【0028】
具体的な留め具15の形状等は、図示した小ボルトのように留具挿着孔にねじ込んで装着するものでも良く、図示しないカシメピンのように留具挿着孔に打ち込んで装着するものでも良く、他の形状のものでも良いが、頭部が突き出て当接部材14の被検体への当接を妨害することがないよう、望ましくは頭部全体が凹み11cの中に収まり、少なくとも頭頂部が接触部14aより常に後方に位置するようになっている。
そして、留め具15を用いた取り付けによって、当接部材14の中央部が凹み11cの中でプランジャ11(進退部材)に固定された状態になるとともに、当接部材14の接触部14aが凹み11cから出て凹み11cの内周縁(11d)より外周側へ延びている状態にもなっている。
【0029】
この実施例1の大電流用プローブピン10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
【0030】
図1(g)は、支持部材16への取り付けや電線端部18の接続も済ませてプローブピン10からプローブが出来上がったところの正面図である。また、図2(a),(b)は、プローブピン10と被検体20とが当接を開始した時の状態を示し、(a)が正面図、(b)が接触部14a,21とその周囲とに係る縦断面拡大図である。さらに、図2(c),(d)は、プローブピン10と被検体20とが十分に押し合って接続を確立した当接後の状態を示し、(c)が正面図、(d)が接触部14a,21とその周囲とに係る縦断面拡大図である。
【0031】
プローブピン10は、先ず(図1(g)参照)、支持部材16の貫通穴にスリーブ13(筒状案内部材)を圧入することで支持部材16に保持され、プランジャ11(進退部材)のテール11b(後端部)にナット17で電線端部18を接続させることで、プローブとしての使用準備が整う。そして、使用時には(図2参照)、プランジャ11のヘッド11a(先端部)の当接部材14と被検体20の表面とを当接させ(図2(a),(b)参照)、更に押し込んでコイルばね12の弾撥力で接触圧を安定させることで、接触部14aの電気導通状態を安定させる(図2(c),(d)参照)。
【0032】
このように、プローブピン10の使い方は概ね従来同様であるが、当接部材14の形状等の相違から接触部14aの接触動作等は従来と異なる。すなわち、プローブピン10が被検体20に当接するまでは(図2(a),(b)参照)、当接部材14の接触部14aがプランジャ11のヘッド11aの凹み11cの土手状周縁部の上方に位置しており、接触部14aより少し中央寄りの部分が凹み11cの内周縁11d(内周端の角)にて支承され、当接部材14の中央部が凹み11cの内底に固定されていて、接触部14a及びその基部がプランジャ11の先端面に対して平行ではなく少しだけ斜めになっているので、被検体20の表面の接触部21に対しても接触部14aは斜めの姿勢で当接する。
【0033】
そして、当接部材14の接触部14aが被検体20の表面の接触部21に当接してから更に押し込んでコイルばね12の付勢力を作用させると、プランジャ11のヘッド11aと被検体20の表面との間隙が縮むとともに、接触部14a及びその基部が凹み11cの内周縁11dを支承点にしてシーソーのように揺動する。そして、その揺動とともに、当接部材14の接触部14aの中央部寄り部分が曲がり、その曲げ変形によって生じる反力が、当接部材14の接触部14aと被検体20の接触部21とに作用する接触圧力となり、多数の接触部14a,21に係る接触圧力の総和がコイルばね12の付勢力と釣り合うところまで、プランジャ11と被検体20との間隙が縮む。
【0034】
このように、当接部材14と被検体20との当接に際して、全体的な接触圧力の変動がコイルばね12の付勢力によって緩和されると同時に、各々の接触部14a,21での局所的な接触圧力の変動が当接部材14及びその基部の弾性曲げ変形によって緩和されるので、プローブピン10の当接部材14の接触部14aの当接部位である被検体20の表面の接触部21のところに多少の凹凸やうねりがあっても、接触部14aと被検体20の表面との接触状態が多数の接触部14a,21について揃って安定する。
【0035】
また、当接部材14の接触部14aが被検体20の表面に押し込まれたときの相対運動のうち被検体20の表面に垂直な方向の直進運動成分に応じて接触部14a,21同士が押し合うことでプローブピン10と被検体20との電気導通状態が確立されるのは、従来と同様であるが、従来と異なり、当接部材14の接触部14aが揺動するため、被検体20の表面に平行な方向の言わば擦れ合い運動の成分も少しだけとは言え存在しており、それに応じて接触部14a,21同士が擦れるので、それによってプローブピン10と被検体20との電気導通状態の確立が更に強化される。
【実施例2】
【0036】
本発明の大電流用プローブピンの実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図3は、(a)が大電流用プローブピン30の正面図、(b)がプランジャ11(進退部材)のヘッド11a(先端部)の縦断正面図である。
【0037】
この大電流用プローブピン30が上述した実施例1のプローブピン10と相違するのは、スリーブ13が省かれている点と、プランジャ11(進退部材)にその外周面を一周する溝11eが彫り込み形成されている点と、当接部材14の接触部14aが被検体20に当接していない自由状態ではヘッド11aの先端面の凹み11c(座繰り)の内周縁11d(支承点)から浮いて離れている点である。
【0038】
この実施例2のプローブピン30について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図4は、(a)が支持や接続も済ませてプローブになった状態を一部断面で示した正面図、(b)がプローブピン30と被検体20との当接確立後の正面図である。
【0039】
この場合(図4(a)参照)、支持部材31の貫通穴にプランジャ11を挿通させてから、プランジャ11の溝11eに止め輪32を装着することで、プローブピン30が支持部材16に保持され、プランジャ11の後端面に電線端部をねじ止めすることで、プローブとしての使用準備が整う。
そして(図4(b)参照)、プローブピン30と被検体20とが当接すると、プランジャ11が支持部材31の貫通穴の中で摺動しながら軸方向に移動し、それによってコイルばね12が縮むので、その付勢力によって接触圧力が生じる。
【0040】
当接部材14の動作等は概ね上述したのと同様であるが、当接部材14の接触部14aとヘッド11aの内周縁11dとが自由状態では離れていることから、プローブピン30と被検体20とが当接したときに個々の接触部14aが変位しうる可動距離が拡大するので、接触部14a,21間に作用する接触圧力に対する変動緩和の機能が強化される。
また、プローブピン10ではプランジャ11の外周に溝加工が無いので、プローブピン10は直径5mm以下の細形でも作りやすいのに対し、プローブピン30ではプランジャ11の外周に溝加工が有るので直径5mm以上の太形しか作りやすくないが、プローブピン30はスリーブ13を省いてコストダウンが図られている。
【実施例3】
【0041】
図5(a)に正面図を示したものは、上述した大電流用プローブピン30にスリーブ33(筒状案内部材)を追加したものである。
これは、プランジャ11を摺動案内する貫通穴を支持部材31に形成するのが、困難な場合や、不向きな場合に、適している。
【0042】
図5(b)に正面図を示したのは、上述した大電流用プローブピン30の付勢部材としてコイルばね12に代えてエアシリンダ34を採用したものである。
空気圧を利用すると変位によらず押し付け力がほぼ一定になるので、空気圧システムが簡便に利用できる環境に適している。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の大電流用プローブピンは、半導体デバイスや、プリント配線板その他の回路基板などを対象とした電気的な検査や試験に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10…プローブピン、11…プランジャ(進退部材)、
11a…ヘッド(先端部)、11b…テール(後端部)、
11c…凹み(座繰り)、11d…内周縁(支承点)、
11e…溝、12…コイルばね(付勢部材)、
13…スリーブ(筒状案内部材)、14…当接部材、
14a…接触部、14b…留具挿通孔、15…留め具、
16…支持部材、17…ナット、18…電線端部、
20…被検体、21…接触部、
30…プローブピン、31…支持部材、32…止め輪、
33…スリーブ33(筒状案内部材)、34…エアシリンダ、
60…プローブピン、61…当接部材、
61a…接触部、61b…彫込溝、62…銀鑞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気導通用の接触部が複数形成されて分散配置されている当接部材と、棒状の導電体からなり先端には前記当接部材が取り付けられており後端部には電線を接続しうる進退部材と、被検体に前記当接部材を当接させるよう前記進退部材を付勢する付勢手段とを具えた大電流用プローブピンにおいて、前記当接部材の周縁部が放射状に分岐して前記接触部を成しており、前記進退部材の先端面に凹みが形成されており、前記当接部材の中央部が前記凹みの中で前記進退部材に固定されるとともに前記当接部材の前記接触部が前記凹みから出て前記凹みの内周縁より外周側へ延びていることを特徴とする大電流用プローブピン。
【請求項2】
前記当接部材が板体を打ち抜いて形成した一体物からなることを特徴とする請求項1記載の大電流用プローブピン。
【請求項3】
前記当接部材の中央部に留具挿通孔が貫通形成されており、前記留具挿通孔に差し込まれた留め具にて前記当接部材が前記進退部材に固定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された大電流用プローブピン。
【請求項4】
前記当接部材の前記接触部が被検体に当接していない自由状態では前記凹みの内周縁から浮いて離れていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載された大電流用プローブピン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−137791(P2011−137791A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269(P2010−269)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(591002887)日本コネクト工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】