説明

大面積ELランプ

第1ELランプ(32)の非発光辺縁部(35)を第2ELランプ(31)の発光縁部(36)によって覆い、実質的に継ぎ目無しの発光領域を提供する。第1及び第2のランプを機械的に接合する。これらのELランプは、これらのランプの母線の少なくとも一部と重なった導電性テープによって並列に、電気的に連結される。複数のランプを互いに接合し、他の手段によって得ることができるよりもかなり大きいELランプを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセント(EL)ランプに関し、特に、大面積ELランプに関する。本明細書中において、EL「パネル」とは、一つ又は複数の発光領域を含む単一の基板であり、各発光領域がEL「ランプ」である。
【背景技術】
【0002】
ELランプは、本質的には、一方が透明な二つの導電性電極間に誘電体層を持つコンデンサである。誘電体層に燐光体粉体が設けられているか或いは別個の燐光体粉体層が誘電体層と一方の電極との間に設けられているかのいずれかである。燐光体粉体は、強い電場が存在下で、非常に小さな電流を使用して光を放射する。
【0003】
最新(1990年以降)のELランプは、厚さが約7.0ミル(0.178mm)のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET))又はポリカーボネートでできた透明な基板を含む。酸化インジウム錫(ITO)でできた透明な前面電極を基板上に1000Å程度の厚さまで蒸着する。燐光体層を前面電極にスクリーン印刷し、誘電体層を燐光体層上にスクリーン印刷する。背面電極を誘電体層にスクリーン印刷する。背面絶縁層を、スクリーン印刷された層の形態で、又は接着剤コーティングを備えたテープの形態で追加してもよい。
【0004】
スクリーン印刷に使用するインクには、バインダー、溶剤、及び充填材が含まれ、充填材が、印刷した層の性質を決定する。代表的な溶剤は、ジメチルアセトアミド(DMAC)である。バインダーは、代表的には、フッ化ポリビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン(PVDF/HFP)等のフルオロポリマー、ポリエステル、ビニル、又はエポキシである。燐光体層は、代表的には、米国特許第5,418,062号(バッド(Budd))に記載されているような、溶剤、バインダー、及びドーピングした硫酸亜鉛燐光体粒子を含有するスラリー(インク)からスクリーン印刷される。誘電体層は、代表的には、溶剤、バインダー、及びチタン酸バリウム(BaTiO)粒子を含有するスラリー(インク)からスクリーン印刷される。
【0005】
背面(不透明)電極は、代表的には、溶剤、バインダー、及び導電性粒子を含有するスラリー(インク)からスクリーン印刷される。導電性粒子は、銀、炭素、又はグラファイト、又はこれらの混合物等である。導電性インクでできた母線(bus bar)は、大型のランプでの電圧降下を減少するため、代表的には、電極に付着される。各層の溶剤及びバインダーが化学的に同じであるか或いは類似している場合には、隣接した層間に化学的適合性があり、良好に接着する。夫々の層は、例えばスクリーン印刷又はロールコーティングによって形成され、次いで硬化し、乾燥される。
【0006】
多くのELランプは、例えばロールコーティングによって連続的に製造されるのでなく、スクリーン印刷によってバッチ式に製造される。そのため、ランプの大きさは、代表的には、18インチ×24インチ(46cm×61cm)のスクリーンの大きさに限定される。ビジュアルサイン伝達(signage)等の、大型のランプが望まれる多くの用途がある。グラフィックや透明物体にバックライトを当てるための、実質的に継ぎ目のない大きな発光領域が必要とされている。「大きい」という用語は、ELランプが、現在利用可能な装置が作ることができるよりも大きいという意味で使用される。ロールコーティングにより製造されたランプでも幅には限りがあり、製造装置は比例しない。即ち、ロールコーティングにより製造されるランプの幅を二倍にするには、単にロールの幅を二倍にすればよいというものではない。例えば、幅が増大するにつれて、層の均一性が重要な問題となる。
【0007】
ケーブルによって相互連結された文字によって、支持体上に発光文字を形成することが、当該技術分野で知られている。例えば、米国特許第2,910,792号(プファッフ・ジュニア(Pfaff,Jr.))を参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、以上に鑑みると、本発明の目的は、実質的に継ぎ目のない大型のELパネルを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、単一のスクリーン印刷機の加工面積よりも面積が大きい、スクリーン印刷によるELランプを提供することである。
【0010】
本発明の更に別の目的は、一つのELランプを別のELランプに取り付けるための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の目的は、第1ELランプの非発光辺縁部を第2ELランプの発光縁部によって覆い、実質的に継ぎ目のない発光領域を提供する、本発明によって達成される。これらのランプは、少なくとも辺縁部に沿って機械的に接合される。ELランプは、これらのランプの母線の少なくとも一部と重なる導電性テープによって電気的に並列に接続される。複数のランプを互いに接合し、他の手段で得ることができるよりも実質的に大きなELランプを提供できる。
【0012】
添付図面と関連して以下の詳細な説明を考慮することにより、本発明をより完全に理解できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明で使用するのに適したELパネルの断面を示す。幾つかの層は、比例して示されておらず、即ち、縮尺通りに示されていない。ランプ10は、透明基板11及び透明電極12を含む。透明電極は、代表的には、基板11に重なる酸化インジウム錫である。燐光体層13が電極12に重なっており、誘電体層15が燐光体層に重なっている。幾つかの用途では、燐光体層及び誘電体層を一つの層に組み合わせることができる。誘電体層15には、樹脂バインダー中に銀や炭素等の導電性粒子を含む背面電極16が重なっている。
【0014】
図2は、ランプ10の分解図である。基板11は、パネルを見る人に面する側を、電極12によりコーティングされる。電極12は、基板を完全に覆っていてもよいし、完全に覆っていなくてもよい。燐光体層13は、面積が電極12よりも小さく、ランプの発光領域を形成する。詳細には、代表的には、基板11上の燐光体層13の周囲に小さな辺縁部即ち境界部がある。誘電体層15は、燐光体層13よりも面積が大きく、辺縁部内に僅かに延びており、前面電極12を背面電極16から絶縁する。背面電極16は、代表的には、誘電体層15よりも面積が小さい。母線21が、前面電極12に対して低抵抗接触を提供し、母線22が、背面電極16に対して低抵抗接触を提供する。これらの母線は、ランプの同じ縁部に沿って配置されていてもよい。
【0015】
図2に示すように、ランプ10の右側の縁部に沿った辺縁部は、破線24から右側の縁部26まで延びている。辺縁部は、ランプ10の周囲に亘って連続している。本発明の1つの特徴によれば、第1ランプの1つの縁部に沿った辺縁部をトリミングし、第2ランプの辺縁部をその縁部に沿って第1ランプに重ね、これによってランプの発光領域を接合する。ELランプが拡散光源であるため、トリミングは、線24に沿って必ずしも正確でなくてもよい。発光領域間の小さな隙間は、通常の視認距離では目立たない。発光領域に切り込むと、組み合わせた発光領域は明らかに小さくなる。
【0016】
二つ以上のランプを接合するための方法を図3、図4、及び図5に示す。図3では、ELランプ31を線33に沿って切断し、辺縁部34を除去し、図4に示す状態にする。次いで、ELランプ31をELランプ32の右側辺縁部35上に置き、発光縁部36がランプ32の発光領域上又はその近くにある状態で、ランプ32に接合する。これらのランプの接合は、テープ、感圧接着剤、溶剤接着剤、紫外線硬化性樹脂、又は他の手段によって行うことができる。
【0017】
図6は、方法の最終工程を示す。この工程では、導電性テープ61がELランプの夫々の母線を接合し、ランプを並列に(in parallel)接続する。即ち、第1テープストリップが背面電極を互いに接続し、第2テープストリップが前面電極を互いに接続する。これらのランプは、並列でない態様で(前面側から背面側へ、及び背面側から前面側へ)接続できるけれども、これは好ましくない。「並列」という用語は、いずれの接続態様も含むものである。参照番号62で示すように、テープは、接合部だけに亘って延びるのでなく、ランプの背面側に亘って延びており、非常に長いランプ(側部が接合された幾つかのランプでできている)に対して適切な電流搬送性能を提供する。適当なテープには、3M社の滑らかなアルミニウムテープである1170(1170は登録商標である)又は銅箔テープである1181(1181は登録商標である)、及び金属化した任意のメッシュ又は織製金属メッシュテープが含まれる。どのようなテープを使用しようとも、そのテープは、Z軸方向に導電性を有する接着剤を有していなければならず、即ち接着剤はその厚さ方向に導電性でなければならない。
【0018】
更に、非常に長いランプについて、少なくとも前面電極は、この前面電極と重なった母線を導電性テープの下に有している必要がある。好ましくは、背面電極もまた、導電性テープと重なった母線を備えている。母線を提供し損なったり、テープを全てのランプの背面側に亘って連続的に延びるようにしなかったりすると、過電流により、及び導電性が低すぎることにより、「ホットスポット」即ち局所的加熱が生じる。
【0019】
別のランプをELランプ31の右側に取り付けることができる。実際には、所望の広幅のランプを形成するため、ランプをいずれの側に追加してもよい。ELランプが電極を一方の側部に沿ってだけ備えている場合には、追加のELランプを残りの三つの側部に取り付けることができる。接合されるべきELランプは、任意の所望の形状を備えていてもよいが、直線状の縁部を重ねるのが、明らかに、ランプの接合を簡単にする。
【0020】
かくして、本発明は、実質的に継ぎ目のない大型のELパネルを提供し、詳細には、単一のスクリーン印刷機の作業領域よりも面積が大きい、スクリーン印刷されたELランプを提供する。更に、一つのELランプを別のELランプに取り付ける方法を提供する。
【0021】
かくして、本発明を説明したが、本発明の範囲内で多くの変更を加えることができるということは当業者には理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ELランプの断面図である。
【図2】ELランプの分解図である。
【図3】ELランプの1つの縁部から非発光領域をトリミングする工程を示す図である。
【図4】トリミングしたランプを別のELランプと隣接して位置決めする工程を示す図である。
【図5】ELランプの非発光縁部をトリミングしたELランプと重ねる工程を示す図である。
【図6】図5のELランプの母線に導電性テープを適用する工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 ELランプ
11 透明基板
12 透明電極
13 燐光体層
15 誘電体層
16 背面電極
21、22 母線
26 辺縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ELパネルであって、
重ねた縁部に沿って機械的に接合された少なくとも二つのELランプと、第1のランプの少なくとも一つの電極を第2のランプの電極に電気的に接続する導電性テープとを含む、ELパネル。
【請求項2】
請求項1に記載のELパネルにおいて、
前記ELランプは、各々、非発光辺縁部を第1縁部に沿って備えている、ELパネル。
【請求項3】
請求項2に記載のELパネルにおいて、
第1のELランプは、前記非発光辺縁部を除去されており、且つ、第2のELランプに、該第2のELランプの前記非発光辺縁部に沿って重なっており、これにより、前記パネルに実質的に継ぎ目のない発光領域を形成する、ELパネル。
【請求項4】
請求項1に記載のELパネルにおいて、
前記ELランプの各々は少なくとも二つの電極を有し、前記導電性テープは、前記ELランプを並列に接続する、ELパネル。
【請求項5】
請求項4に記載のELパネルにおいて、
前記ELランプは母線を有し、前記導電性テープが前記母線を覆っている、ELパネル。
【請求項6】
請求項1に記載のELパネルにおいて、
前記導電性テープは、前記少なくとも二つのELランプの背面側に亘って連続的に延びている、ELパネル。
【請求項7】
ELパネルであって、
少なくとも二つのELランプを有し、前記ELランプのうちの第1のランプは、該第1のランプの一方の縁部に沿って非発光辺縁部を有し、前記ELランプのうちの第2のランプは、該第2のランプの縁部まで延びる発光領域を有し、前記第2のランプの発光縁部は、前記第1のランプの前記非発光辺縁部と重なっており、且つ、前記第1のELランプに機械的に接合され、前記ELランプは、各々、少なくとも二つの電極を有し、前記パネルは、更に、前記ELランプを並列に、電気的に接続する導電性テープを備えており、これによって、前記第1のELランプ及び前記第2のELランプは、前記ELパネルに実質的に継ぎ目のない発光領域を形成する、ELパネル。
【請求項8】
大面積のELランプを製造する方法であって、
第1のELランプの縁部を第2のELランプの非発光辺縁部上に置く工程であって、前記第1のELランプは前記縁部に対して発光する、工程と、
前記第1のELランプと前記第2のELランプとを機械的に接合する工程と、
前記ELランプを導電性テープで並列に接続する工程とを含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の大面積のELランプを製造する方法において、
前記第1のELランプ及び前記第2のELランプは母線を有し、前記接続する工程は、前記母線を前記導電性テープで覆う工程を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−513958(P2008−513958A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532384(P2007−532384)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/032192
【国際公開番号】WO2006/033863
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(500105311)ワールド・プロパティーズ・インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】