説明

天然木薄板シートの製造方法

【課題】表面に天然木の質感をそのまま備えたまま、幅広、長尺で利用でき、壁紙、文具および雑貨の表面材として貼付けられる、染色した天然木薄板シート製造方法を提供する。
【解決手段】水平方向及び直交する上下方向に並べた天然木薄板を、紙、布または不織布のいずれかを材料とし0.03〜0.3mmの厚さの裏打ちシートを裏面に固定して連結したことを基本とし、天然木薄板の表面を仮止めし、裏面を下地処理し、顔料を混合した耐水性接着剤を用いて裏打ちシートの固定を追加する。更に染料液中でローラー圧縮し、解圧による染色を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天然木を用いた薄板シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の木材を主材とする薄板を染色する方法には、木材の薄板を染色液に浸漬し、染料液を板内に浸透させ染色後、蒸気をかけて木材繊維を膨潤させて染料を木材繊維組織内に分散させ、染料を定着する方法がある。
例えば、木材をシート状に薄くスライスして経木シートを作成し、尿素、重曹、還元防止剤、均染剤及び染料を含み、任意に機能性キレート剤を含む染料溶液で染色する着色経木シートの方法がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−26995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の木材を主材とする薄板を染色する方法は、原料木材の寸法が限られていることにより、長さおよび幅の制限された複数枚の薄板をバッチ処理により行っている。このため木材薄板は割れやすく、家具に1枚ずつ貼り付ける場合は利用できるが、幅広、長尺で利用したり、壁紙、文具および雑貨の表面材として貼付ける際には加工に難があり、割れ防止にポリウレタンなどの樹脂を含浸する必要がある。
本発明は、表面に天然木の質感をそのまま備えたまま、幅広、長尺で利用でき、壁紙、文具および雑貨の表面材として貼付けられる、染色した天然木薄板シート製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明に係る天然木薄板シートの製造方法は請求項1記載の特徴を有する。すなわち水平方向及び直交する上下方向に並べた天然木薄板を、紙、布または不織布のいずれかを材料とし0.03〜0.3mmの厚さの裏打ちシートを裏面に固定して連結したことを特徴としている。
この方法によれば表面に天然木の質感をそのまま備えたまま、幅広、長尺で利用でき、壁紙、文具および雑貨の表面材として貼付けられる。かつ所望の大きさで製造することも出来る。
【0006】
請求項2記載の天然木薄板シートの製造方法は、請求項1記載の天然木薄板シートの製造方法において、天然木薄板の表面を仮止めし、裏面を下地処理し、耐水性接着剤を用いて裏打ちシートを固定したことを特徴としている。
この方法によれば、より割れを少なくすることが出来る。
【0007】
請求項3記載の天然木薄板シートの製造方法は、請求項2記載の天然木薄板シートの製造方法において、顔料を混合した耐水性接着剤を用いることを特徴としている。
この方法によれば天然木薄板シートに所望の色を付けることが出来る。
【0008】
請求項4記載の天然木薄板シートの製造方法は、請求項1〜3記載のいずれかの天然木薄板シートの製造方法において、染料液中でローラー圧縮し、解圧により染色したことを特徴としている。
この方法によれば解圧による木材繊維の膨らみで染色することができ、より安定した染色が出来る。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る天然木薄板シートの製造方法は、水平方向及び直交する上下方向に並べた天然木薄板を、紙、布または不織布のいずれかを材料とし0.03〜0.3mmの厚さの裏打ちシートを裏面に固定して連結したことを基本としている。この方法によれば、表面に天然木の質感をそのまま備えたまま、幅広、長尺で利用でき、壁紙、文具および雑貨の表面材として貼付けられる。かつ所望の大きさで製造することも出来る。
かつ本発明に係る天然木薄板シートの製造方法は、天然木薄板の表面を仮止めし、裏面を下地処理し、耐水性接着剤を用いて裏打ちシートの固定を追加している。この方法によればより割れを少なくすることが出来る。
更に本発明に係る天然木薄板シートの製造方法は、顔料を混合した耐水性接着剤の使用を追加している。この方法によれば天然木薄板シートに所望の色を付けることが出来る。
更に本発明に係る天然木薄板シートの製造方法は、染料液中でローラー圧縮し、解圧による染色を追加している。この方法によれば解圧による木材繊維の膨らみで染色することができ、更に安定した染色が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための処理方法を例示する物であり、以下の方法や条件に特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定する物ではない。
【0011】
本発明の天然木薄板には、スギの突き板が適している。木目がはっきりしており、厚み方向には染色液は浸透しにくいからである。本発明によるローラー圧縮及び回復によって染料吸収が図られるため適している。ただし、本発明の方法は、材料をスギには特定しない。スギ以外の木材、たとえばキリやヒノキ等の密度の低い木材にも利用できるからである。
【0012】
本発明に係る天然木薄板シートの製造方法の工程は、突き板を幅方向及び長さ方向に並べて、仮固定し、裏面に裏打ちシートを接着する貼合せ工程と、突き板表側を研磨することにより厚さを均一にする工程とを順に実行し、天然木薄板を連続したシート状に加工する。
【0013】
突き板を、幅方向に並べて表面を弱粘着テープで仮固定を行い、次いで縦方向にも同様に仮固定を行う。突き板を仮固定したものをロール状に巻取った形態か、あるいは1枚の長い突き板の形態で製造工程に供する。
【0014】
接着剤塗布は、裏打ちシートは紙、布または不織布が用いられ、ロール状に巻いた状態で接着剤塗布部に供給される。接着剤塗布部ローラーで構成されているロールコーターであり、接着剤は2本のローラーの谷間に入れられており、この2本のローラーの区間を通る間に、裏打ちシートの表面に接着剤が塗布される。次いで、1次乾燥部において、接着剤が塗布された裏打ちシートが通過する間に接着剤が適度に乾燥される。
【0015】
接着剤は、耐水性の接着剤を用いる。代表的には、耐水性を持たせた変成酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤が用いられる。耐水性であれば、有機溶剤に溶かした接着剤でも良い。接着剤には、裏打ちシートへの隠蔽を図るため、適宜顔料を加えることも出来る。
【0016】
プレス工程で、このプレスの入側に接着剤が塗布された裏打ちシートと既述の突き板が共に挿入され、ローラープレスにより互いに接合される。ついで、はヒータが内蔵された熱ロールで通過することで、ローラープレスを通過した突き板と裏打ちシートとの間の接着剤が熱ロールで加熱されることによって、硬化し、接合強度を高める。さらに、2次乾燥部で、接着し終えたシートを冷却しながら、突き板と裏打ちシートの接合を確実にする。
【0017】
研磨工程では、目の粗いサンドペーパで厚さを調整する役割と、目の細かいサンドペーパで表面の粗さを調整する役割の両方が含まれている。この両方は一つの工程としてまとめて行っても、別工程として分けて行ってもよい。さらに、サンドペーパの目の粗さを順に変えて複数工程でおこなうこともできる。このようにすると、効率よく厚さを薄くしながら、表面粗さを均一に仕上げていくことができる。
【0018】
以上の工程を終えた物を、ロール状に巻き取り天然木薄板シートとして、染色前に保管を行う。以下の染色工程において染色及び染料の木材繊維内への定着を行う。
【0019】
染色ローラー部では、ロール状の巻を戻すと共に、シートを染料液中で天然木薄板シートを温度調整した染料液中でローラー圧縮及び解放し、染色液の浸透を図る。対になったローラーの接触部が染料液を入れた槽中にあり、天然木薄板シート2m/min程度で移送しながら、線圧10kg/cm程度の圧力で圧縮し、直後に解放する。ただし、移送スピード及び線圧は、木材材質及び裏打ちシートの圧縮耐性に応じ適宜調整を行う。このローラー対は、1対のローラーでも良いが、複数で数が多い場合は染料の浸透が良くなると考えられるが、接着剤により高い耐水性が求められる。
【0020】
染料液は、代表的には、直接染料剤が用いられる。染料液には、染料のほか浸透促進剤などの一般的な添加剤を添加する。染料濃度は、淡色で0.1%程度から濃色でも数%の添加で十分な色の濃さとなる。温度は若干の加温を行うと良く、通常は50℃程度であるが、常温から90℃付近まで考えられる。高温になると共に、染料の浸透が良くなるが、接着剤により高い耐水性が求められる。
【0021】
染色ローラー部の最後には、過剰な染料を絞るため、染料液外に対になった圧縮ローラーを設け、液中圧縮と同程度の線圧で絞る。次いで、染料乾燥部で、染料を含んだシートが通過する間に染料液がほかの物につかない程度に乾燥され、シートをロール状に巻き取る。
【0022】
巻き取ったシートを、蒸煮装置において染料の木材繊維内への定着を行う。蒸煮装置は、蒸圧の蒸し装置で、30〜60分程度蒸すと、染料が木材細胞表面から、木材繊維中へ分散し発色が鮮やかになり定着性もよくなる。簡易的には、樹脂フィルムで密封し100℃に加熱することでも可能である。蒸煮装置は、蒸圧の装置から蒸気によるより高い温度が得られる圧力まで考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向及び直交する上下方向に並べた天然木薄板を、紙、布または不織布のいずれかを材料とし0.03〜0.3mmの厚さの裏打ちシートを裏面に固定して連結したことを特徴とする天然木薄板シートの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の天然木薄板シートの製造方法において、天然木薄板の表面を仮止めし、裏面を下地処理し、耐水性接着剤を用いて裏打ちシートを固定したことを特徴とする天然木薄板シートの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の天然木薄板シートの製造方法において、顔料を混合した耐水性接着剤を用いたことを特徴とする天然木薄板シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3記載のいずれかの天然木薄板シートの製造方法において、染料液中でローラー圧縮し、解圧により染色したことを特徴とする天然木薄板シートの製造方法。

【公開番号】特開2012−213903(P2012−213903A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80334(P2011−80334)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(592197108)徳島県 (30)
【Fターム(参考)】