説明

天然皮革、およびその製造方法

【課題】天然皮革に人体の新陳代謝を活発にし、疲労回復を促進する機能を付与して、天然皮革の付加価値を高める天然皮革の製造方法を提供する。
【解決手段】天然皮革製造の表面塗装工程において、天然皮革の表面仕上げを行う表面塗装薬品中に、陰イオン放射物質を含有せしめることにある。陰イオン放射物質は、好ましくは白炭および七宝石から選ばれた一種以上で、粒径が0.7〜50μmであり、表面塗装薬品の固形分100重量部に対して陰イオン放射物質を5〜25重量部混合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然皮革およびその製造方法に関し、更に詳しくは、陰イオンが発生することで、人体の免疫力を高めて新陳代謝を活発にし、疲労回復を促進させる機能を有する天然皮革およびその製造方法
に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に皮革は、動物の皮を加工した天然皮革と、合成品で生産される人口皮革とに大別される。天然皮革は、量的に限界があることから値段が高いという短所があるが、人口皮革に比べて質感が優れ、高級感だけでなく耐久性も優れており、根強い人気がある。
【0003】
天然皮革の改質については、天然皮革を、動物、植物又は鉱物性の油性材料と、高級脂肪酸エステルの混合物により処理して、天然皮革に臭気がなく、優れた表面光沢、手触り、柔軟性を付与する方法〔特許文献1参照〕、遠赤外線放射性セラミックス粉末を含有させ、かつ超音波処理して天然皮革に柔軟性、耐洗濯性を付与する天然皮革の改質方法〔特許文献2参照〕、天然皮革を、バインダ、導電化剤でなる導電性被覆組成物で処理して天然皮革に電磁波シ−ルド効果を付与する方法〔特許文献3参照〕などが報告されている。
【0004】
【特許文献1】特開平07−011300号公報
【特許文献2】特開平08−067899号公報
【特許文献3】特開平11−229000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、天然皮革に人体の新陳代謝を活発にし、疲労回復を促進する機能を付与して、天然皮革の付加価値を高めることにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成すべく、本発明の天然皮革の製造方法は、製造の表面塗装工程において、天然皮革の表面仕上げを行う表面塗装薬品中に、陰イオン放射物質を含有せしめることにある。陰イオン放射物質は、好ましくは白炭および七宝石から選ばれた一種以上で、粒径が0.7〜50μmであり、表面塗装薬品の固形分100重量部に対して陰イオン放射物質を5〜25重量部混合させる。また、本発明の天然皮革は、上記製造方法により製造されたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により製造された天然皮革は、陰イオンが発生させる機能を有し、人体の新陳代謝を活発にし、疲労回復を促進させる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、天然皮革の製造における塗装工程で用いる表面塗装薬品に、陰イオン放射物質を混合させて塗装することある。
【0009】
本発明における天然皮革は、特に制限されるものではなく、牛革、馬革、豚革、鹿革、羊革、山羊革、カンガルー革、虫類革などの従来公知の天然皮革を包括する。
【0010】
天然皮革の製造工程は、代表的には前処理、なめし、再なめし、中和、染色、乾燥、塗装を順次行っていく。これをより具体的に説明すると次の通りである。
前処理工程は、採取した原皮を水洗いして原皮に付着する水溶性蛋白質などの汚れを除き、塩漬けされた原皮ではその塩分の除去し、さらに貯蔵中に損失した水分を補充して元の性状に戻す水洗工程と、引き続き行う、石灰液に漬け込んで、アルカリ化して毛やケラチン表皮層を溶かすとともに、皮の繊維組織を弛緩する工程がある。
【0011】
なめし工程は、クロムなめし剤などを作用させて、「皮」を耐久力のある「革」に変え、革の商品化のために柔軟性を付与し、熱に対する抵抗性を与える工程である。
再なめし工程は、硬さ、風合いなどの性質を調整するため、もう一度なめしを行う工程である。特に、腹部の皮は、繊維組織が比較的緩く、密度が低い組織であり、クロムタンニングのみでは乾燥させると薄くなり充填感のある革とならないので、通常ポリマーなどを使用して革に柔軟性、弾力性など充填感を付与して、風合いを調節する。
【0012】
中和工程は、後段の染料や油がしみこみ易いように、革の中の酸を中和する工程であり、染色工程は、革をいろいろな色に染め、同時に革に柔軟性と弾力性を与えるための油を加える工程であり、乾燥工程は、革のしわを伸ばし一定の水分を維持させる工程である。
【0013】
塗装工程は、表面塗装薬品を塗って、皮革表面の天然傷を隠すとともに、皮革商品として完成させる。その細部は、裏面コーティング、シーリングコーティング、ベースコーティング、カラーコーティング及びトップコーティング工程などがある。
【0014】
本発明が対象とするのは、革の再なめし、中和、染色、加脂、乾燥の各工程が終了した後で行う塗装工程であり、革に適用される表面塗装薬品に陰イオン放射物質を配合することに特徴がある。
【0015】
塗装工程で使用される表面塗装薬品は、コーティングを行う場所、目的により組成が異なるが、その代表的な組成を表1に示す。
【表1】

表1において、顔料はこの分野で通常使用されるものであり、補助剤は、メラミン、ポリウレタンなどのレジン、プロテインなどが使用される。
【0016】
本発明で使用される陰イオン放射物質は、好ましくは白炭、七宝石、及びこれらの混合物である。白炭は、クヌギの木などを窯内温度1000℃以上に上昇させて焼き、そのピークのときに窯外にかき出し、炭と灰を混ぜ合わせた「消し粉」で消火させる窯外消火木炭である。代表的には、炭素が90%、水分が9%程度で、微量の灰分でなっている。炭の酸度はpH8〜9の弱アリカリ性で、各種の金属元素を含有している。白炭の効果は、陰イオンを発生して空気の浄化作用があり、遠赤外線を発散して人体に対しての温熱効果、新陳代謝促進効果、多孔質であるため臭気成分、有害物質、水分の吸収効果、防腐効果があり、人の健康増進、身の回りの衛生管理などに役立つことが知られている。
【0017】
七宝石は、7種類以上の光を有する鉱物質として強力な気を放射し、36個の固有特性エネルギーを放射する物質で、花崗岩類、片岩類、片麻岩類、石灰岩類、珪岩、頁岩及び安山岩などからなる物質である。
【0018】
陰イオン放射物質は、粒径0.7〜50μmのものが好ましい。0.7μm未満でも特に障害にはならないが、入手が容易でなく、製品単価も高くなり実質的でない。50μmを超える場合は、表面塗装薬品をコーティングしたときに革への付着力が落ち、かつ塗装表面が粗く濁るなど革の物性に悪影響を及ぼして天然皮革の質感を悪くすることがある。
【0019】
陰イオン放射物質の量は、好ましくは表面塗装薬品の固形分100重量部に対して5〜25重量部、より好ましくは10〜20重量部である。5重量部未満では、陰イオンの放射効果が少く実質的な効果が期待できず、25重量部を超えると塗装膜の厚さが増え、付着力が落ちるなど物性に悪影響を及ぼし、天然皮革の質感を落としてしまうことがある。
【0020】
陰イオン放射物質は、少なくとも革の裏面コーティング用の表面塗装薬品、および表面ベースコーティング用の表面塗装薬品の一方に配合されるが、好ましくは両方の表面塗装薬品に配合される。その添加量は、それぞれ表面塗装薬品の固形分100重量部に対して5〜25重量部で任意に決められる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例によって詳述するが、これらの実施例によって限定されるものではない。
〔実施例〕
前処理、なめし、再なめし、中和、染色、乾燥、塗装の各工程を経た牛皮革を、表2の塗装薬品の固形分100重量部に対し、陰イオン放射物質として裏面コーティングについては白炭15重両部、ベースコーティングについては白炭20重両部を配合してそれぞれ塗装工程を行い、天然皮革を製造した。
【0022】
【表2】

【0023】
〔比較例〕
実施例と同様の表面塗装薬品を用い、陰イオン放射物質を加えずに実施した。
【0024】
〔試験方法〕
陰イオン測定方法:陰イオン測定器で測定温度21〜25℃、湿度45〜55RH、大気中陰イオン数30〜100個の条件下で実施した。結果を表3に示す。
【表3】

【0025】
表3に表された通り、陰イオン放射物質を含む造成物を塗装した革については、陰イオン放出個数が一般的な塗装による革に比べて著しく多いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上述したように、本発明の天然皮革の製造方法は、天然皮革から陰イオンが多く発せられ、これにより身体の免疫力を高めて新陳代謝を活発にすることができ、天然皮革の付加価値を高め、自動車シートなど各種産業分野への適用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然皮革の表面塗装工程製造において、前記天然皮革の表面仕上げを行う表面塗装薬品中に、陰イオン放射物質を含有せしめることを特徴とする天然皮革の製造方法。
【請求項2】
前記陰イオン放射物質が、白炭および七宝石から選ばれた一種以上で、粒径が0.7〜50μmであることを特徴とする請求項1記載の天然皮革の製造方法。
【請求項3】
前記陰イオン放射物質が、前記表面塗装薬品の固形分100重量部に対して5〜25重量部であることを特徴とする請求項1記載の天然皮革の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする天然皮革。

【公開番号】特開2008−13743(P2008−13743A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331187(P2006−331187)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(506407497)朝光皮革株式会社 (1)
【Fターム(参考)】