太陽光発電システム
【課題】太陽電池からの出力電力は日射量が一定の時、出力電流に応じてP−I特性曲線31の如く変化する。取り出す出力電流がIM であれば、この日射量での最大出力PM を取り出すことが出来る。しかし、従来は電流が必ずしもそのようには制御されておらず、取り出す電力は最大出力PM より小さく、太陽電池の能力を充分には活用していなかった。
【解決手段】いろいろな日射量でのP−I特性曲線31の最大出力点Mを連ねた線が、最大出力点ライン30である。現状の発電状況が最大出力点ライン30がP−I特性曲線31より大である第1領域32にある場合(例、Y点)は、電流を減少制御して最大出力点Mに近づける。逆に小である第2領域33にある場合(例、A点)は、電流を増加制御して最大出力点Mに近づける。そうすれば、最大出力を取り出すことが出来る。日射量が変ってもこの制御を行えば、日射量の変化に追従しながら常に最大出力を得ることが出来る。
【解決手段】いろいろな日射量でのP−I特性曲線31の最大出力点Mを連ねた線が、最大出力点ライン30である。現状の発電状況が最大出力点ライン30がP−I特性曲線31より大である第1領域32にある場合(例、Y点)は、電流を減少制御して最大出力点Mに近づける。逆に小である第2領域33にある場合(例、A点)は、電流を増加制御して最大出力点Mに近づける。そうすれば、最大出力を取り出すことが出来る。日射量が変ってもこの制御を行えば、日射量の変化に追従しながら常に最大出力を得ることが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池への日射量が変化しても、それに追従して常にその時の日射量での最大電力を取り出しつつ、蓄電なり負荷への給電なりをするようにした太陽光発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、環境に有害なCO2 など発生することなく発電するので、クリーンなエネルギー発生装置として期待されている。価格の高さが長らく普及を妨げて来たが、価格低下や補助金制度に助けられ、官庁,学校等の公共施設のほか、一般家庭でも設置されるようになって来ている。
太陽電池は日射をエネルギー源として発電するから、発電量は日射量によって大きく変動し、日射量が多ければ多く発電し、少なければ発電量が少ない。一方、太陽電池を設置した者が電力を必要とする時間帯は、まちまちである。一般家庭では、むしろ日射のない夜の方が多く必要とする。
【0003】
そこで、従来は次のような太陽光発電システムが用いられている。
即ち、太陽電池を設置する場合には、浮動充電するよう接続された蓄電池も併せて設置する。そして、太陽電池で発電した電力のうち、その時点で消費する電力を超えた分は蓄電池に蓄電しておき、発電量が少なくなった時間帯にそれを放電させて消費する。
また、蓄電池を満充電してもなお電力が余る場合には、交流に変換して電力系統に供給する(逆潮流させる)。なお、逆潮流された電力は、電力会社が所定の価格で購入することが義務づけられている。
【特許文献1】特開平06−078473号公報
【特許文献2】特開平11−155242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(問題点)
前記した従来の太陽光発電システムには、次のような問題点があった。
第1の問題点は、太陽電池からの発電電力の取り出し方が、常にその時の最大電力を取り出すものとはなっておらず、太陽電池の能力を充分には活用していないという点である。
第2の問題点は、太陽電池を設置する者が増えるに伴い不安定な逆潮流が増え、電力系統に悪影響を及ぼすことがあるという点である。
【0005】
(問題点の説明)
まず第1の問題点について説明する。
図12は、太陽電池の出力電流Iと出力電力Pとの関係を示す図である。横軸は出力電流Iを表し、縦軸は出力電力Pを表し、31は或る日射量における両者の関係を表す曲線、即ちP−I特性曲線である。日射量は太陽の移動(逆に言えば物の影の移動)や雲の流れに応じて刻々と変化するものであるが、日射量が変わればこのP−I特性曲線も異なったものとなる。
【0006】
P−I特性曲線31は上に凸なるカーブを描く曲線であることより明らかなように、この日射量において取り出せる最大電力は、その頂点Mの出力電力PM であり、それは出力電流をIM とした時に得られる(以下、IM を最大出力時電流ということにする。最適電流とも言う。)。ところが、従来の太陽光発電システムでは、例えばその時の需要等に従い出力電流をIA とし、それに対応した電力PA を取り出すようなことを行っていた。これでは、折角PM の電力を取り出せるところを、それより遙かに小さいPA の電力しか取り出していないことになり、太陽電池の能力を充分に活用しているとは言えなかった。
【0007】
次に第2の問題点について説明する。
太陽電池の発電量は日射に応じて大きく変動するから、地域における太陽電池の発電量は、天気によって大きく変動する。或る地域の天気が良く、日射量が大であれば、その地域に設置されている太陽電池の殆どは発電過剰となる。
過剰電力を蓄電装置が充分吸収してくれれば良いが、従来の蓄電装置(浮動充電するよう接続された蓄電池)では、充電電流を短時間に変化させることが出来ない等の事情から、充分に吸収することが出来ない。その結果、逆潮流が多くなることになるが、そうすると、その地域の配電網の電圧を上昇させたり、電力系統の周波数を上昇させたりといった悪影響を及ぼすことになる。
本発明は、以上のような問題点を解決することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の目的は、そのときの環境条件(日射量や周囲温度(実際にはパネル温度)が変化しても、そのときの条件で太陽電池が発生できる最大電力を効率よく取得することである。第2の目的は、取得された電力は、出来るだけ現在及び将来の負荷需要に応じた利用が出来るようにするために蓄積して、電源(系統)側への逆潮流を低減することにある。第1の具体的な目的は、日射量の大きさや急激な変化等が天候によって発生しても、その時の日射量で発生できる最大電力を取得できるようにすることである。
そして、前記課題を解決するため本発明では、太陽電池及びその出力レベルを調整する電力変換手段を具備した太陽光発電システムにおいて、上記電力変換手段は、太陽電池の出力電力と出力電流特性における、最大電力とその最大値を与える最適電流との関係をもとに、その時点の日射量で出力できる最大電力を探索することとした。
この太陽光発電システムにおいては、太陽電池の出力電圧を検出する電圧検出手段及び出力電流を検出する電流検出手段を具備し、最大電力と最適電流との関係を比例特性として、当該電圧検出手段及び電流検出手段で検出された検出電圧と検出電流との積で算出された算出発電電力と、前記検出電流に対応する前記比例特性から決定される検出電流対応の最大電力とを比較し、該検出電流対応の最大電力が前記算出発電電力以上の時は、太陽電池からの出力電流を減少させ、該検出電流対応の最大電力が前記算出発電電力より小の時は、太陽電池からの出力電流を増加させ、上記検出時点で太陽電池が発生できる前記比例特性上の最適な最大電力点に到達するように、太陽電池の出力電圧及び出力電流を制御することとしても良い。
また、比例特性の検出時点における比例係数の演算には、検出時点より前の第1の時点及び第2の時点で演算過程によって既に得られている第1の最適な最大電力と第2の最適な最大電力との差分と、各最適な最大電力を与える第1の最適電流と第2の最適電流との差分との比から求める過程が含まれるようにすることも出来る。
【0009】
更に本発明では、太陽電池及びその出力レベルを調整する電力変換手段、当該電力変換手段を介して接続される電気二重層キャパシタを具備した太陽光発電システムにおいて、上記太陽電池で発電される電気エネルギーを上記電気二重層キャパシタに蓄積するために流す充電電流の条件は、当該電気二重層キャパシタの端子電圧をもとに決定することとした。
この太陽光発電システムにおいては、太陽電池で発電された電気エネルギーは、電気二重層キャパシタに蓄積できる能力を超えた時にのみ、当該電気二重層キャパシタに蓄積できない余剰エネルギーを系統に逆潮流させるようにすることが出来る。
これにより、日射量が変化しても、それに追従してその日射量での最大出力が得られるようにすることが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の太陽光発電システムによれば、次のような効果を奏する。
1.常にその時点の日射量に応じた最大電力を取得することが出来るようになった。
現在の日射量に対応したP−I特性曲線上の動作点が、P−I特性曲線と最大出力点ラインとの大小関係で割り出した第1領域にあるか第2領域にあるかに応じ、動作点が反対の領域に入らないようにしつつ、第1領域にある場合は出力電流をひたすら減少させ、第2領域にある場合はひたすら増加させて、最大電力が出力される電流(最適電流)に近づけるようにしたので、常に最大電力が速やかに取得できるようになった。
【0011】
2.需要者での蓄電量が多くなり、電力系統へ逆潮流させる電力が少なくなる。
蓄電装置として極めて短時間(例、マイクロセカンド単位)での電流変化に応じても充放電し得る電気二重層コンデンサ(EDLC)を採用し、前記の最大出力追従制御で行われる電流制御に対応し得るようにしたので、効率良く充電される。このように、需要者で発電した電力は、需要者のところで最大限蓄電されるので、電力系統へ逆潮流される電力は自ずと少なくなり、電力系統に周波数変化等の悪影響を及ぼすことが少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
或る特定の日射量でのP−I特性曲線は、図12に示したように、出力電流が大になるにつれて出力電力は徐々に増大し、出力電流がIM の時に最大電力PM となる。出力電流がIM より大になると出力電力は急激に減少する。出力端子が短絡された時の電流IS が、この時の日射量での最大の出力電流となるが、その時の出力電圧は0であるから出力電力も0である。
本発明は、このP−I特性曲線に関する新たな知見に基づき、常に最大出力を取得することが出来る新たな最大出力追従制御(MPPT制御)を考案し、太陽光発電システムに応用したものである。そこで、先ずその新たな知見について述べる。
【0013】
図2は、太陽電池の最大出力点ラインを説明する図である。符号は図12のものと同様であり、30,30−1,30−2,30−3は最大出力点ライン、34,35,36はP−I特性曲線、M34,M35,M36は各P−I特性曲線の最大出力点、PM34 ,PM35 ,PM36 は最大出力、IM34 ,IM35 ,IM36 は最大出力時電流、IS34 ,IS35 ,IS36 は短絡電流である。IR はこの太陽電池の定格電流である。
P−I特性曲線34,35,36は、太陽電池(パネル)の温度が一定である状況下において、日射量がいろいろに異なった場合に対応するP−I特性曲線である。日射量が大であるほど、特性曲線は大きなものとなる。
【0014】
図2(1)は、P−I特性曲線34,35,36と最大出力点ライン30を示した図である。最大出力点ライン30は、各P−I特性曲線の最大出力点M34,M35,M36を連ねたラインであるが、本発明の発明者は、太陽電池(パネル)の温度が一定であれば最大出力点ライン30は、原点を通りほぼ直線となるという重要な知見を得た。言い換えれば、太陽電池の温度が一定であれば、日射量がいろいろに変化しても、最大出力PM と最大出力時電流IM との間にはほぼ線形の比例関係が存在するということである。
【0015】
従って、最大出力点ライン30の傾きがaであれば、
PM =a×IM
の関係が成り立つ。
このことは、任意の出力電流に対応する最大出力点ライン30上の点の出力電力は、上式により算出することが出来ることを物語っている。
例えば、出力電流がIM34 である場合、それに対応する最大出力点ライン30上の点M34の出力電力PM34 は、次のように算出される。
PM34 =a×IM34
【0016】
図2(2)は、太陽電池(パネル)の温度が変化した場合の最大出力点ラインを示している。最大出力点ラインの傾きを仔細に点検すると、出力電流が太陽電池の定格電流IR の約半分以下である範囲では、温度の変化に関係なく一定値a0 と見ることが出来る。しかし、それより大きい範囲では、高温となるほど傾きは小になっている。つまり、定格電流IR の約半分より大の範囲では、傾きaは温度Tの関数a(T)となっていると言うことが出来る。
図2(2)において、傾きが大である最大出力点ライン30−1は低温の場合のものであり、傾きが小である最大出力点ライン30−3は高温の場合のものである。
【0017】
図3は、太陽電池の短絡電流IS と最大出力時電流(最適電流)IM との関係を示す図である。両者の関係も原点を通る直線の関係となる。因みに、図2(1)の値に例を取ると、短絡電流がIS34 の場合の最大出力時電流は、IM34 という関係になる。
この直線の傾きは、太陽電池(パネル)の温度が変化しても殆ど変わらず、両者の関係は
IM =K×IS
で表されることが知られている。ここにKは、短絡電流と最適電流の間を関連付ける当該太陽電池の特性によって定まる物理的定数であり、通常、0.9〜0.95の範囲にある値である。
【0018】
図1は、本発明での最大出力追従制御(MPPT制御)の原理を説明する図である。符号は図12,図2のものに対応し、A,Yは動作点、32は第1領域、33は第2領域、IY は動作点がYである時の出力電流である。また、A1 は出力電流IA (動作点がAの時の出力電流)の時の最大出力点ライン30上の点であり、Y1 は出力電流IY (動作点がYの時の出力電流)の時の最大出力点ライン30上の点である。
【0019】
図1のように、P−I特性曲線31と最大出力点ライン30とを同じ座標面上に記載した場合、両者は原点とM点で交叉し、両者の間に挟まれる領域が2つ出来る。最大出力点ライン30の方が上になっている領域(最大出力時電流IM より出力電流が大である方の領域)を第1領域32とし、最大出力点ライン30の方が下になっている領域を第2領域33と呼ぶことにする。
第1領域32では、最大出力点ライン30の方がP−I特性曲線31より上にあるから、同じ電流(例、IY )に対応する各線上の点(例、Y1 ,Y)の高さ(例、PY1,PY )を比べると、最大出力点ライン30上の点(例、Y1 )の方が上にある(PY1>PY )。従って言い換えれば、第1領域32とは、現在の出力電流を最大出力時電流IM と見立てて計算した最大出力(PY1)の方が、現在の実際の出力電力(PY )より大である領域のことと言うことが出来る。
【0020】
一方、第2領域33では、最大出力点ライン30の方がP−I特性曲線31より下にあるから、同じ電流(例、IA )に対応する各線上の点(例、A1 ,A)の高さ(PA1,PA )を比べると、最大出力点ライン30上の点(例、A1 )の方が下にある(PA1<PA )。従って言い換えれば、第2領域33とは、現在の出力電流を最大出力時電流IM と見立てて計算した最大出力(PA1)の方が、現在の実際の出力電力(PA )より小である領域のことと言うことが出来る。
【0021】
本発明では、上記のように領域分けした上で、動作点を行きつ戻りつさせることなく、動作点がいずれの領域にあるかに応じて、その領域独特の制御方法で一方向に移動させて行くことにより動作点をMに接近せしめ、最大出力を得るようにする。
例えば、動作点が第1領域32のY点にある場合、第1領域独特の制御方法によりP−I特性曲線31上を矢印のようにひたすらM点に向かって移動させ(行きつ戻りつさせることなく)、M点に接近せしめる。他方、動作点が第2領域33のA点にある場合、第2領域独特の制御方法によりP−I特性曲線31上を矢印のようにひたすらM点に向かって移動させ、M点に接近せしめる。
本発明では動作点を行きつ戻りつさせないので、速やかにMに接近し、速やかに最大電力PM を出力させることが出来る。
(なお、各領域独特の制御方法については、図6中の第1領域での制御A,第2領域での制御Bのところで詳しく説明する。)
【0022】
図4は、本発明の太陽光発電システムの構成を示す図である。図4において、1は太陽電池、2は整流平滑部、3は電流検出器、4は最大出力追従制御装置、5はDC−DCコンバータ、6は充電バイパススイッチ部、61はダイオード、62はトランジスタ、7は突入電流抑制部、71は抵抗、72はトランジスタ、8は充電制御装置、9は蓄電装置(電気二重層コンデンサ(EDLC)を直列接続して構成)、10は電流検出器、11は温度検出器、12は電圧検出線、13は主電路スイッチ部、131はダイオード、132はトランジスタ、14はEDLC監視部、15はDC−DCコンバータ、16は電流検出器、17はコンバータ制御装置、18はインバータ、19はインバータ制御装置、20は配線、21は電気負荷である。なお、上記のトランジスタ62,72,132は、スイッチング用のトランジスタである。
【0023】
まず、全体構成を概説する。太陽電池1の発電電力は整流平滑部2とDC−DCコンバータ5を経て、制御された直流出力とされる。最大出力追従制御装置4は、太陽電池1からの電流検出信号(電流検出器3で検出),電圧検出信号等を基にして、DC−DCコンバータ5を制御する。
充電バイパススイッチ部6は、蓄電装置9に充電する必要がない時(例えば、発電電力を電気負荷21にそのまま供給する時とか、既に満充電となっている時など)に、電流を流す経路を提供するためのものである。ダイオード61が直流の流れる方向とは逆方向に接続されているので、トランジスタ62がオフされている時には、この経路を通って直流は流れることが出来ない。しかし、充電制御装置8からトランジスタ62をオンする信号が送られて来ると、この経路に直流が流れることが出来るようになる。
【0024】
突入電流抑制部7は、蓄電装置9に充電電荷が殆ど無い充電初期に、突入電流を抑制するための抵抗71を充電経路に挿入するためのものである。充電初期で抵抗71を線路に直列接続する必要がある時には、充電制御装置8からトランジスタ72をオフする信号が送られる。トランジスタ72がオフすることにより、抵抗71が充電経路に直列に接続される。
初期充電を終えると、トランジスタ72をオンする信号が送られる。トランジスタ72がオンになると、充電電流はトランジスタ72の方を通って流れることになり、抵抗71は充電経路から事実上除外される。
【0025】
EDLC監視部14は、蓄電装置9の各種の状態を監視するためのものである。電流検出器10は、蓄電装置9への充電電流を検出する。蓄電装置9は多くのEDLCが直列接続されて構成されているが、温度検出器11や電圧検出線12は、個々のEDLCの温度や電圧を検出する。EDLC監視部14による監視は、これらからの検出信号に基づいて行われる。監視の結果、充電に関する制御は次の3つのモードによって行われる。
【0026】
第1のモードは、充電電荷が殆ど無い場合のモードである(初期充電。突入電流を抑制しつつの充電)。
第2のモードは、初期充電を終えた後の通常充電モードである(最大出力追従制御をしつつの充電)。
第3のモードは、満充電になってからのモードである(逆潮流させる)。
蓄電装置9から放電する場合、主電路スイッチ部13のトランジスタ132がオンされ、放電電流はそのトランジスタ132の方を通って流れ、DC−DCコンバータ15の入力側に供給され、所要の直流電圧に変換される。更にインバータ18により交流に変換され、電気負荷21に供給される。コンバータ制御装置17,インバータ制御装置19は、それぞれDC−DCコンバータ15,インバータ18の制御を行う。
【0027】
以下、本発明の太陽光発電システムの制御について説明するが、最初にシステム全体の制御の概要を説明し、次に最大出力追従制御(MPPT制御)について説明する。
(システム全体の制御の概要)
図5は、本発明の太陽光発電システムでの制御を説明するフローチャートである。
ステップ1…先ず、次のようなデータの検出を行う。
(1)蓄電装置9への充電電流の検出。これは、充電経路に設置されている電流検出器10により行う。
(2)蓄電装置9を構成している個々のEDLC(電気二重層コンデンサ)の温度TC の検出。これは温度検出器11により行う。
(3)個々のEDLCの印加電圧VC の検出。これは個々のEDLCに設けられている電圧検出線12より、電圧を取り込むことにより行う。
【0028】
ステップ2…検出されて来る温度TC のいずれかが、許容最大温度を超えていないかどうか調べる。超えていたものが1つでもあった場合、そのまま充電を続けるとEDLCが損傷される恐れがあるので、充電は停止する(ステップ8へ)。
図11は、いずれかの信号が比較基準値を超えるかどうかを検知する回路の1例であるが、いずれかの検出温度TC が許容最大温度を超えているかどうかを調べる回路は、この回路を応用して構成することが出来る。図11において、S1 ,S2 ,S3 ,SN は信号端子、40は優先出力回路、41は比較回路、42は比較基準値設定部、401,402,403,40Nはダイオードである。各ダイオードのカソードは一括接続され、比較回路41の一方の入力端子に接続されている。比較回路41の他方の入力端子には、比較基準値設定部42の出力が入力されている。
【0029】
比較基準値設定部42に許容最大温度を設定しておき、信号端子S1 ,S2 ,S3 ,SN に個々のEDLCからの検出温度TC の信号を入力する。すると、優先出力回路40の出力としては、最も高い温度の検出信号のみが出て来る。なぜなら、それより低い温度の検出信号が入力されているダイオードに対しては、最も高い温度の検出信号がカソード側に回り込んで来て印加され、逆電圧印加状態とされ、オフとされるからである。こうして、最も高い温度の検出信号が電圧検出線11の一方の入力端子に入力され、比較基準値設定部42に設定されている許容最大温度と比較される。
【0030】
ステップ3…検出されて来る印加電圧VC のいずれかが、許容最大電圧を超えていないかどうか調べる。超えていたものが1つでもあった場合、そのまま充電を続けるとEDLCが損傷される恐れがあるので、充電は停止する(ステップ8へ)。これを調べる回路も、図11の回路を応用して構成することが出来る(この場合には、比較基準値設定部42には、許容最大電圧を設定しておく。)。
ステップ4…検出した充電電流が、突入電流判定用電流値を超えているかどうか調べる。蓄電装置9の充電量がゼロ或いは極めて少ない場合に充電を行うと、極めて大きい突入電流が流れる。この電流もEDLCや他の回路素子を損傷する恐れがあるので、予め突入電流判定用電流値を設定しておき、これを超える値かどうか調べる。
【0031】
ステップ5…充電電流が突入電流判定用電流値を超える場合には、突入電流であると判断し、初期充電モードでの制御を行う。即ち、直ちに回路に抵抗等を挿入し、突入電流を抑制する。具体的には、図4において、充電制御装置8よりトランジスタ72にオフ信号を発し、回路に抵抗71を挿入する。
ステップ6…ステップ4で、充電電流が突入電流判定用電流値より小さい場合には、蓄電装置9が満充電になっているかどうか調べる。これは蓄電装置9の電圧なり、充電電流なりを調べることによって行う。
【0032】
ステップ7…まだ満充電になっていない場合には、通常充電モードでの制御を行う。突入電流抑制用の抵抗71は回路に挿入しておく必要がないから、充電制御装置8からのオン信号によりトランジスタ72がオンされ、抵抗71はバイパスされる。太陽電池1からの電流はトランジスタ72の方を通って流れ、蓄電装置9を充電したり、電気負荷21へ給電されたりする。
なお、本発明では、このモードでの制御を行う場合、太陽電池1から常に最大出力を取り出しつつ行えるようにするため、独特の方法での最大出力追従制御を提案している。その詳細については、図6〜図10等で説明する。
ステップ8…満充電になっている場合には、蓄電装置9への充電は止める。充電制御装置8からのオン信号によりトランジスタ62がオンされ、太陽電池1からの電流はトランジスタ62を通って電気負荷21に給電されたり、電力系統へ逆潮流されたりする。
【0033】
(最大出力追従制御)
図6は、本発明における最大出力追従制御を説明するフローチャートである。
ステップ1…太陽電池1からの出力電圧V,出力電流Iを検出する。
ステップ2…検出したV,Iを用いて出力電力Pを算出する。
ステップ3…検出した出力電流Iの値が、太陽電池1の定格電流IR の半分以下であるかどうか調べる。これは、図2(2)で示したが、最大出力点ラインの傾きa(T)として、予め分かっている定数a0 (メーカーによって与えられる)を使ってよいかどうかを判断するためである。なお、この段階で最大出力点ラインの傾きa(T)の点検を始めた理由は、ステップ6で、今回検出した出力電流Iに対応する最大出力(最大出力点ライン30上の点(図1のA1 ,Y1 等)での出力)を計算する際にa(T)を使用するためである。
【0034】
ステップ4…出力電流Iの値が太陽電池1の定格電流IR の半分以下である場合には、最大出力点ラインの傾きa(T)としては、定数a0 を使用する。
ステップ5…出力電流Iの値が太陽電池1の定格電流IR の半分より大である場合には、最大出力点ラインの傾きa(T)として定数a0 を使用するのは憚られる。そこで、前回,前々回のフローの時の電流,最大電力を用いて、a(T)を近似的に計算する。
即ち、前回の電流,最大電力がIM1,PM1であり、前々回の電流,最大電力がIM2,PM2であるとした場合、次式の如く電流の増分ΔIM ,最大出力の増分ΔPM の比を取り、a(T)を近似的に得る。
ΔPM PM1−PM2
a(T)= =
ΔIM IM1−IM2
【0035】
ステップ6…今回の検出電流に対応する最大電力PM を算出する。図1で説明したところの、点Y1 における電力PY1の算出、或いは点A1 における電力PA1の算出である。
ステップ7…ステップ2で求めた現在の実際の出力電力Pの値が、ステップ6で算出した最大電力PM と等しいかどうか調べる。
もし等しければ、図1で言えば、現在の動作点が点Mに来ているということを意味している。この場合は最大電力を取り出し中であり、申し分ないわけであるから、何らの制御もする必要がない。従って、ステップ1へ戻る。
ステップ8…等しくない場合は、現在の実際の出力電力Pの方がステップ6で算出した最大電力PM より大きいかどうか調べる。もし小さければ、動作点は第1領域32にあるということであるから、第1領域での制御Aという制御ブロックに進む。もし大きければ、動作点は第2領域33にあるということであるから、第2領域での制御Bという制御ブロックに進む。
【0036】
〔第1領域での制御A〕
図7は、第1領域での制御を説明するフローチャートであり、図8は第1領域での制御を説明する図である。符号は図1のものに対応し、Y,X,Wは動作点、Y1 ,X1 ,W1 はY,X,Wに対応する最大出力点ライン30上の点、PY ,PX ,PW ,PY1,PX1,PW1は電力,IY ,IX ,IW は電流である。
ステップA1…制御目標電流ID を仮決定する。第1領域32では、ID =K×Iにより制御目標電流ID を先ず仮決定する。図3でIM =K×IS の関係があることを説明したが、仮決定で使用するKはそのKである。Iは、現在の電流である。
例えば、図8で現在の電流がIY であるとした場合、K×IY =IX ならば、制御目標電流はIX と仮決定される。
【0037】
ステップA2…制御目標電流ID とした場合の最大出力点ライン30上の出力値PMDを算出する。これは、PMD=a(T)×ID で算出される(図6のステップ6参照)。
例えば、図8で制御目標電流をIX と仮決定した場合であれば、その時の最大出力点ライン30上の点X1 における出力値PX1を算出する。
ステップA3…算出した出力値PMDと今の時点の出力Pとを比較する。この比較は、仮決定した制御目標電流ID に電流を制御した場合、第1領域32を外れてしまうかどうかの点検をするために行う。PMD>Pであれば、まだ第1領域32に留まると判断し、そうでなければ第1領域32を外れると判断する。外れると判断された場合は、第1領域32での制御はもはや行わず、図6のステップ1に戻る。
例えば、図8で制御目標電流をIX とした場合の出力値PX1と、今の時点の出力PY とを比較する。図8を観察すればPX1>PY であるから、この場合は電流をIX にしてもなお、第1領域32に留まると判断される。
【0038】
ステップA4…ステップA3でなお第1領域32に留まると判断された場合は、制御目標電流ID を本決定し、電流をそのID に制御する。
ステップA5…電流がID に制御されたところで、電流I,電圧Vを検出し、その時の出力Pを算出する。そうして、ステップA1に戻り、再び上述した第1領域での制御を繰り返す。
【0039】
その結果、P−I特性曲線31上の動作点は、図8でY→X→Wとひたすら最大出力点Mに向かって接近してゆき(最大出力点Mの左右を行きつ戻りつして接近するのでなく)、次に設定した制御目標電流ID にすると第2領域33に入ってしまうという所で、第1領域での制御を終了する。ひたすら接近してゆくので、最大出力点M(ないしその近傍)に到達するまでの時間が短く、制御が迅速に行われる。
【0040】
〔第2領域での制御B〕
図9は、第2領域での制御を説明するフローチャートであり、図10は第2領域での制御を説明する図である。符号は図1のものに対応し、A,B,Cは動作点、A1 ,B1 ,C1 はA,B,Cに対応する最大出力点ライン30上の点、PA ,PB ,PC ,PA1は電力,IA ,IB ,IC は電流である。
ステップB1…制御目標電流ID を決定する。第2領域33では、ID =P/a(T)により制御目標電流ID を決定する。a(T)は最大出力点ライン30の傾きである。Pは、現在の出力電力ある(現在の検出電圧,検出電流がそれぞれV,Iであるなら、V×I=Pと計算される)。つまり、上記のように定めたID は、現時点で流すことが可能な最大電流に他ならず、それを目標値としたということである。
例えば、図10で現在の動作点はAであるとした場合、その時の出力電力はPA であるから、制御目標電流はPA ÷a(T)で計算される。計算の結果、PA ÷a(T)=IB であったとすれば、次の制御目標電流はIB とされる。
【0041】
ステップB2…電流を制御して、制御目標電流ID となるようにする。
例えば、図10で動作点がAにある時点において算出された制御目標電流がIB であれば、電流はIB となるように制御される。
ステップB3…電流が制御目標電流に制御されたところで、新たな動作点での電圧V,電流Iを検出し、それらを基にその時の出力P(P−I特性曲線31上の動作点の出力)や、その時の最大出力点ライン30上の出力を算出する。
例えば、図10で電流を制御目標電流IB に制御した場合、動作点はB点となる。この時の電流,電圧の検出値はそれぞれIB ,VB と検出されたとすると、B点の出力PB はPB =VB ×IB で算出される。また、動作点Bに対応する最大出力点ライン30上の点B1 の出力PB1は、PB1=a(T)×IB で算出される(なお、理論的に言えば、PB1=PA である。なぜなら、IB を決定する際、IB =PA ÷a(T)(つまりPA =a(T)×IB )で決定しているからである。従って、わざわざPB1=a(T)×IB でPB1を計算しなくとも、PA をそのままPB1として用いてよい。)。
【0042】
ステップB4…ステップB3で算出した出力PB から最大出力点出力PB1を差し引いた差の値の、定格電力PR (これは太陽電池1のメーカーから予め与えられている)に対する比ΔPを算出する。
例えば、図10で電流を制御目標電流IB に制御した場合、(PB −PB1)/PR の計算をしてΔPを求める。
【0043】
ステップB5…予め小さな値εを定めておいて、ΔP<εとなったどうか調べる。このεの値は、P−I特性曲線31上の動作点と、それに対応する最大出力点ライン30上の点との縦方向の差が、定格電力PR の大きさに比べて、充分に小さくなったと判断されるような場合にΔPが取る値程度の値に定められる。
ΔP<εとなれば、P−I特性曲線31上の動作点は充分にM点に接近しているから、もう第2領域33での制御を続行する必要なしと判断し、図6のステップ1に戻る。
まだΔP<εとなっていなければ、ステップB1に戻り、再び上述した第2領域での制御を繰り返す。
【0044】
その結果、P−I特性曲線31上の動作点は、A→B→Cとひたすら最大出力点Mに向かって接近してゆき(最大出力点Mの左右を行きつ戻りつして接近するのでなく)、充分近くまで接近した所で、第2領域での制御を終了する。第2領域の制御でも、ひたすら接近してゆくので、最大出力点M(ないしその近傍)に到達するまでの時間が短く、制御が迅速に行われる。
【0045】
以上のように本発明によれば、現在の日射量に対応したP−I特性曲線上の動作点が、P−I特性曲線と最大出力点ラインとの大小関係で割り出した第1領域,第2領域のいずれにあるかに応じ、出力電流をそれぞれ独特の仕方で最大電力が出力される電流に近づけるようにしたので、常に最大電力が速やかに取得できるようになる。
また、蓄電装置として極めて短時間(例、マイクロセカンド単位)での電流変化に応じても充放電し得る電気二重層コンデンサ(EDLC)を採用し、前記の最大出力追従制御で行われる電流制御に対応し得るようにしたので、充電が効率良く行われる。その結果、需要者で発電した電力は、需要者のところで最大限蓄電されるので、電力系統へ逆潮流される電力は自ずと少なくなり、電力系統に電圧上昇や周波数変化等の悪影響を及ぼすことが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明での最大出力追従制御の原理を説明する図
【図2】太陽電池の最大出力点ラインを説明する図
【図3】太陽電池の短絡電流と最適電流(最大出力時電流)との関係を示す図
【図4】本発明の太陽光発電システムの構成を示す図
【図5】本発明の太陽光発電システムでの制御を説明するフローチャート
【図6】本発明における最大出力追従制御を説明するフローチャート
【図7】第1領域での制御を説明するフローチャート
【図8】第1領域での制御を説明する図
【図9】第2領域での制御を説明するフローチャート
【図10】第2領域での制御を説明する図
【図11】いずれかの信号が比較基準値を超えるかどうかを検知する回路の1例
【図12】太陽電池の出力電流と出力電力との関係を示す図
【符号の説明】
【0047】
1…太陽電池、2…整流平滑部、3…電流検出器、4…最大出力追従制御装置、5…DC−DCコンバータ、6…充電バイパススイッチ部、61…ダイオード、62…トランジスタ、7…突入電流抑制部、71…抵抗、72…トランジスタ、8…充電制御装置、9…蓄電装置、10…電流検出器、11…温度検出器、12…電圧検出線、13…主電路スイッチ部、14…EDLC監視部、15…DC−DCコンバータ、16…電流検出器、17…コンバータ制御装置、18…インバータ、19…インバータ制御装置、20…配線、21…電気負荷、40…優先出力回路、41…比較回路、42…比較基準値
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池への日射量が変化しても、それに追従して常にその時の日射量での最大電力を取り出しつつ、蓄電なり負荷への給電なりをするようにした太陽光発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、環境に有害なCO2 など発生することなく発電するので、クリーンなエネルギー発生装置として期待されている。価格の高さが長らく普及を妨げて来たが、価格低下や補助金制度に助けられ、官庁,学校等の公共施設のほか、一般家庭でも設置されるようになって来ている。
太陽電池は日射をエネルギー源として発電するから、発電量は日射量によって大きく変動し、日射量が多ければ多く発電し、少なければ発電量が少ない。一方、太陽電池を設置した者が電力を必要とする時間帯は、まちまちである。一般家庭では、むしろ日射のない夜の方が多く必要とする。
【0003】
そこで、従来は次のような太陽光発電システムが用いられている。
即ち、太陽電池を設置する場合には、浮動充電するよう接続された蓄電池も併せて設置する。そして、太陽電池で発電した電力のうち、その時点で消費する電力を超えた分は蓄電池に蓄電しておき、発電量が少なくなった時間帯にそれを放電させて消費する。
また、蓄電池を満充電してもなお電力が余る場合には、交流に変換して電力系統に供給する(逆潮流させる)。なお、逆潮流された電力は、電力会社が所定の価格で購入することが義務づけられている。
【特許文献1】特開平06−078473号公報
【特許文献2】特開平11−155242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(問題点)
前記した従来の太陽光発電システムには、次のような問題点があった。
第1の問題点は、太陽電池からの発電電力の取り出し方が、常にその時の最大電力を取り出すものとはなっておらず、太陽電池の能力を充分には活用していないという点である。
第2の問題点は、太陽電池を設置する者が増えるに伴い不安定な逆潮流が増え、電力系統に悪影響を及ぼすことがあるという点である。
【0005】
(問題点の説明)
まず第1の問題点について説明する。
図12は、太陽電池の出力電流Iと出力電力Pとの関係を示す図である。横軸は出力電流Iを表し、縦軸は出力電力Pを表し、31は或る日射量における両者の関係を表す曲線、即ちP−I特性曲線である。日射量は太陽の移動(逆に言えば物の影の移動)や雲の流れに応じて刻々と変化するものであるが、日射量が変わればこのP−I特性曲線も異なったものとなる。
【0006】
P−I特性曲線31は上に凸なるカーブを描く曲線であることより明らかなように、この日射量において取り出せる最大電力は、その頂点Mの出力電力PM であり、それは出力電流をIM とした時に得られる(以下、IM を最大出力時電流ということにする。最適電流とも言う。)。ところが、従来の太陽光発電システムでは、例えばその時の需要等に従い出力電流をIA とし、それに対応した電力PA を取り出すようなことを行っていた。これでは、折角PM の電力を取り出せるところを、それより遙かに小さいPA の電力しか取り出していないことになり、太陽電池の能力を充分に活用しているとは言えなかった。
【0007】
次に第2の問題点について説明する。
太陽電池の発電量は日射に応じて大きく変動するから、地域における太陽電池の発電量は、天気によって大きく変動する。或る地域の天気が良く、日射量が大であれば、その地域に設置されている太陽電池の殆どは発電過剰となる。
過剰電力を蓄電装置が充分吸収してくれれば良いが、従来の蓄電装置(浮動充電するよう接続された蓄電池)では、充電電流を短時間に変化させることが出来ない等の事情から、充分に吸収することが出来ない。その結果、逆潮流が多くなることになるが、そうすると、その地域の配電網の電圧を上昇させたり、電力系統の周波数を上昇させたりといった悪影響を及ぼすことになる。
本発明は、以上のような問題点を解決することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の目的は、そのときの環境条件(日射量や周囲温度(実際にはパネル温度)が変化しても、そのときの条件で太陽電池が発生できる最大電力を効率よく取得することである。第2の目的は、取得された電力は、出来るだけ現在及び将来の負荷需要に応じた利用が出来るようにするために蓄積して、電源(系統)側への逆潮流を低減することにある。第1の具体的な目的は、日射量の大きさや急激な変化等が天候によって発生しても、その時の日射量で発生できる最大電力を取得できるようにすることである。
そして、前記課題を解決するため本発明では、太陽電池及びその出力レベルを調整する電力変換手段を具備した太陽光発電システムにおいて、上記電力変換手段は、太陽電池の出力電力と出力電流特性における、最大電力とその最大値を与える最適電流との関係をもとに、その時点の日射量で出力できる最大電力を探索することとした。
この太陽光発電システムにおいては、太陽電池の出力電圧を検出する電圧検出手段及び出力電流を検出する電流検出手段を具備し、最大電力と最適電流との関係を比例特性として、当該電圧検出手段及び電流検出手段で検出された検出電圧と検出電流との積で算出された算出発電電力と、前記検出電流に対応する前記比例特性から決定される検出電流対応の最大電力とを比較し、該検出電流対応の最大電力が前記算出発電電力以上の時は、太陽電池からの出力電流を減少させ、該検出電流対応の最大電力が前記算出発電電力より小の時は、太陽電池からの出力電流を増加させ、上記検出時点で太陽電池が発生できる前記比例特性上の最適な最大電力点に到達するように、太陽電池の出力電圧及び出力電流を制御することとしても良い。
また、比例特性の検出時点における比例係数の演算には、検出時点より前の第1の時点及び第2の時点で演算過程によって既に得られている第1の最適な最大電力と第2の最適な最大電力との差分と、各最適な最大電力を与える第1の最適電流と第2の最適電流との差分との比から求める過程が含まれるようにすることも出来る。
【0009】
更に本発明では、太陽電池及びその出力レベルを調整する電力変換手段、当該電力変換手段を介して接続される電気二重層キャパシタを具備した太陽光発電システムにおいて、上記太陽電池で発電される電気エネルギーを上記電気二重層キャパシタに蓄積するために流す充電電流の条件は、当該電気二重層キャパシタの端子電圧をもとに決定することとした。
この太陽光発電システムにおいては、太陽電池で発電された電気エネルギーは、電気二重層キャパシタに蓄積できる能力を超えた時にのみ、当該電気二重層キャパシタに蓄積できない余剰エネルギーを系統に逆潮流させるようにすることが出来る。
これにより、日射量が変化しても、それに追従してその日射量での最大出力が得られるようにすることが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の太陽光発電システムによれば、次のような効果を奏する。
1.常にその時点の日射量に応じた最大電力を取得することが出来るようになった。
現在の日射量に対応したP−I特性曲線上の動作点が、P−I特性曲線と最大出力点ラインとの大小関係で割り出した第1領域にあるか第2領域にあるかに応じ、動作点が反対の領域に入らないようにしつつ、第1領域にある場合は出力電流をひたすら減少させ、第2領域にある場合はひたすら増加させて、最大電力が出力される電流(最適電流)に近づけるようにしたので、常に最大電力が速やかに取得できるようになった。
【0011】
2.需要者での蓄電量が多くなり、電力系統へ逆潮流させる電力が少なくなる。
蓄電装置として極めて短時間(例、マイクロセカンド単位)での電流変化に応じても充放電し得る電気二重層コンデンサ(EDLC)を採用し、前記の最大出力追従制御で行われる電流制御に対応し得るようにしたので、効率良く充電される。このように、需要者で発電した電力は、需要者のところで最大限蓄電されるので、電力系統へ逆潮流される電力は自ずと少なくなり、電力系統に周波数変化等の悪影響を及ぼすことが少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
或る特定の日射量でのP−I特性曲線は、図12に示したように、出力電流が大になるにつれて出力電力は徐々に増大し、出力電流がIM の時に最大電力PM となる。出力電流がIM より大になると出力電力は急激に減少する。出力端子が短絡された時の電流IS が、この時の日射量での最大の出力電流となるが、その時の出力電圧は0であるから出力電力も0である。
本発明は、このP−I特性曲線に関する新たな知見に基づき、常に最大出力を取得することが出来る新たな最大出力追従制御(MPPT制御)を考案し、太陽光発電システムに応用したものである。そこで、先ずその新たな知見について述べる。
【0013】
図2は、太陽電池の最大出力点ラインを説明する図である。符号は図12のものと同様であり、30,30−1,30−2,30−3は最大出力点ライン、34,35,36はP−I特性曲線、M34,M35,M36は各P−I特性曲線の最大出力点、PM34 ,PM35 ,PM36 は最大出力、IM34 ,IM35 ,IM36 は最大出力時電流、IS34 ,IS35 ,IS36 は短絡電流である。IR はこの太陽電池の定格電流である。
P−I特性曲線34,35,36は、太陽電池(パネル)の温度が一定である状況下において、日射量がいろいろに異なった場合に対応するP−I特性曲線である。日射量が大であるほど、特性曲線は大きなものとなる。
【0014】
図2(1)は、P−I特性曲線34,35,36と最大出力点ライン30を示した図である。最大出力点ライン30は、各P−I特性曲線の最大出力点M34,M35,M36を連ねたラインであるが、本発明の発明者は、太陽電池(パネル)の温度が一定であれば最大出力点ライン30は、原点を通りほぼ直線となるという重要な知見を得た。言い換えれば、太陽電池の温度が一定であれば、日射量がいろいろに変化しても、最大出力PM と最大出力時電流IM との間にはほぼ線形の比例関係が存在するということである。
【0015】
従って、最大出力点ライン30の傾きがaであれば、
PM =a×IM
の関係が成り立つ。
このことは、任意の出力電流に対応する最大出力点ライン30上の点の出力電力は、上式により算出することが出来ることを物語っている。
例えば、出力電流がIM34 である場合、それに対応する最大出力点ライン30上の点M34の出力電力PM34 は、次のように算出される。
PM34 =a×IM34
【0016】
図2(2)は、太陽電池(パネル)の温度が変化した場合の最大出力点ラインを示している。最大出力点ラインの傾きを仔細に点検すると、出力電流が太陽電池の定格電流IR の約半分以下である範囲では、温度の変化に関係なく一定値a0 と見ることが出来る。しかし、それより大きい範囲では、高温となるほど傾きは小になっている。つまり、定格電流IR の約半分より大の範囲では、傾きaは温度Tの関数a(T)となっていると言うことが出来る。
図2(2)において、傾きが大である最大出力点ライン30−1は低温の場合のものであり、傾きが小である最大出力点ライン30−3は高温の場合のものである。
【0017】
図3は、太陽電池の短絡電流IS と最大出力時電流(最適電流)IM との関係を示す図である。両者の関係も原点を通る直線の関係となる。因みに、図2(1)の値に例を取ると、短絡電流がIS34 の場合の最大出力時電流は、IM34 という関係になる。
この直線の傾きは、太陽電池(パネル)の温度が変化しても殆ど変わらず、両者の関係は
IM =K×IS
で表されることが知られている。ここにKは、短絡電流と最適電流の間を関連付ける当該太陽電池の特性によって定まる物理的定数であり、通常、0.9〜0.95の範囲にある値である。
【0018】
図1は、本発明での最大出力追従制御(MPPT制御)の原理を説明する図である。符号は図12,図2のものに対応し、A,Yは動作点、32は第1領域、33は第2領域、IY は動作点がYである時の出力電流である。また、A1 は出力電流IA (動作点がAの時の出力電流)の時の最大出力点ライン30上の点であり、Y1 は出力電流IY (動作点がYの時の出力電流)の時の最大出力点ライン30上の点である。
【0019】
図1のように、P−I特性曲線31と最大出力点ライン30とを同じ座標面上に記載した場合、両者は原点とM点で交叉し、両者の間に挟まれる領域が2つ出来る。最大出力点ライン30の方が上になっている領域(最大出力時電流IM より出力電流が大である方の領域)を第1領域32とし、最大出力点ライン30の方が下になっている領域を第2領域33と呼ぶことにする。
第1領域32では、最大出力点ライン30の方がP−I特性曲線31より上にあるから、同じ電流(例、IY )に対応する各線上の点(例、Y1 ,Y)の高さ(例、PY1,PY )を比べると、最大出力点ライン30上の点(例、Y1 )の方が上にある(PY1>PY )。従って言い換えれば、第1領域32とは、現在の出力電流を最大出力時電流IM と見立てて計算した最大出力(PY1)の方が、現在の実際の出力電力(PY )より大である領域のことと言うことが出来る。
【0020】
一方、第2領域33では、最大出力点ライン30の方がP−I特性曲線31より下にあるから、同じ電流(例、IA )に対応する各線上の点(例、A1 ,A)の高さ(PA1,PA )を比べると、最大出力点ライン30上の点(例、A1 )の方が下にある(PA1<PA )。従って言い換えれば、第2領域33とは、現在の出力電流を最大出力時電流IM と見立てて計算した最大出力(PA1)の方が、現在の実際の出力電力(PA )より小である領域のことと言うことが出来る。
【0021】
本発明では、上記のように領域分けした上で、動作点を行きつ戻りつさせることなく、動作点がいずれの領域にあるかに応じて、その領域独特の制御方法で一方向に移動させて行くことにより動作点をMに接近せしめ、最大出力を得るようにする。
例えば、動作点が第1領域32のY点にある場合、第1領域独特の制御方法によりP−I特性曲線31上を矢印のようにひたすらM点に向かって移動させ(行きつ戻りつさせることなく)、M点に接近せしめる。他方、動作点が第2領域33のA点にある場合、第2領域独特の制御方法によりP−I特性曲線31上を矢印のようにひたすらM点に向かって移動させ、M点に接近せしめる。
本発明では動作点を行きつ戻りつさせないので、速やかにMに接近し、速やかに最大電力PM を出力させることが出来る。
(なお、各領域独特の制御方法については、図6中の第1領域での制御A,第2領域での制御Bのところで詳しく説明する。)
【0022】
図4は、本発明の太陽光発電システムの構成を示す図である。図4において、1は太陽電池、2は整流平滑部、3は電流検出器、4は最大出力追従制御装置、5はDC−DCコンバータ、6は充電バイパススイッチ部、61はダイオード、62はトランジスタ、7は突入電流抑制部、71は抵抗、72はトランジスタ、8は充電制御装置、9は蓄電装置(電気二重層コンデンサ(EDLC)を直列接続して構成)、10は電流検出器、11は温度検出器、12は電圧検出線、13は主電路スイッチ部、131はダイオード、132はトランジスタ、14はEDLC監視部、15はDC−DCコンバータ、16は電流検出器、17はコンバータ制御装置、18はインバータ、19はインバータ制御装置、20は配線、21は電気負荷である。なお、上記のトランジスタ62,72,132は、スイッチング用のトランジスタである。
【0023】
まず、全体構成を概説する。太陽電池1の発電電力は整流平滑部2とDC−DCコンバータ5を経て、制御された直流出力とされる。最大出力追従制御装置4は、太陽電池1からの電流検出信号(電流検出器3で検出),電圧検出信号等を基にして、DC−DCコンバータ5を制御する。
充電バイパススイッチ部6は、蓄電装置9に充電する必要がない時(例えば、発電電力を電気負荷21にそのまま供給する時とか、既に満充電となっている時など)に、電流を流す経路を提供するためのものである。ダイオード61が直流の流れる方向とは逆方向に接続されているので、トランジスタ62がオフされている時には、この経路を通って直流は流れることが出来ない。しかし、充電制御装置8からトランジスタ62をオンする信号が送られて来ると、この経路に直流が流れることが出来るようになる。
【0024】
突入電流抑制部7は、蓄電装置9に充電電荷が殆ど無い充電初期に、突入電流を抑制するための抵抗71を充電経路に挿入するためのものである。充電初期で抵抗71を線路に直列接続する必要がある時には、充電制御装置8からトランジスタ72をオフする信号が送られる。トランジスタ72がオフすることにより、抵抗71が充電経路に直列に接続される。
初期充電を終えると、トランジスタ72をオンする信号が送られる。トランジスタ72がオンになると、充電電流はトランジスタ72の方を通って流れることになり、抵抗71は充電経路から事実上除外される。
【0025】
EDLC監視部14は、蓄電装置9の各種の状態を監視するためのものである。電流検出器10は、蓄電装置9への充電電流を検出する。蓄電装置9は多くのEDLCが直列接続されて構成されているが、温度検出器11や電圧検出線12は、個々のEDLCの温度や電圧を検出する。EDLC監視部14による監視は、これらからの検出信号に基づいて行われる。監視の結果、充電に関する制御は次の3つのモードによって行われる。
【0026】
第1のモードは、充電電荷が殆ど無い場合のモードである(初期充電。突入電流を抑制しつつの充電)。
第2のモードは、初期充電を終えた後の通常充電モードである(最大出力追従制御をしつつの充電)。
第3のモードは、満充電になってからのモードである(逆潮流させる)。
蓄電装置9から放電する場合、主電路スイッチ部13のトランジスタ132がオンされ、放電電流はそのトランジスタ132の方を通って流れ、DC−DCコンバータ15の入力側に供給され、所要の直流電圧に変換される。更にインバータ18により交流に変換され、電気負荷21に供給される。コンバータ制御装置17,インバータ制御装置19は、それぞれDC−DCコンバータ15,インバータ18の制御を行う。
【0027】
以下、本発明の太陽光発電システムの制御について説明するが、最初にシステム全体の制御の概要を説明し、次に最大出力追従制御(MPPT制御)について説明する。
(システム全体の制御の概要)
図5は、本発明の太陽光発電システムでの制御を説明するフローチャートである。
ステップ1…先ず、次のようなデータの検出を行う。
(1)蓄電装置9への充電電流の検出。これは、充電経路に設置されている電流検出器10により行う。
(2)蓄電装置9を構成している個々のEDLC(電気二重層コンデンサ)の温度TC の検出。これは温度検出器11により行う。
(3)個々のEDLCの印加電圧VC の検出。これは個々のEDLCに設けられている電圧検出線12より、電圧を取り込むことにより行う。
【0028】
ステップ2…検出されて来る温度TC のいずれかが、許容最大温度を超えていないかどうか調べる。超えていたものが1つでもあった場合、そのまま充電を続けるとEDLCが損傷される恐れがあるので、充電は停止する(ステップ8へ)。
図11は、いずれかの信号が比較基準値を超えるかどうかを検知する回路の1例であるが、いずれかの検出温度TC が許容最大温度を超えているかどうかを調べる回路は、この回路を応用して構成することが出来る。図11において、S1 ,S2 ,S3 ,SN は信号端子、40は優先出力回路、41は比較回路、42は比較基準値設定部、401,402,403,40Nはダイオードである。各ダイオードのカソードは一括接続され、比較回路41の一方の入力端子に接続されている。比較回路41の他方の入力端子には、比較基準値設定部42の出力が入力されている。
【0029】
比較基準値設定部42に許容最大温度を設定しておき、信号端子S1 ,S2 ,S3 ,SN に個々のEDLCからの検出温度TC の信号を入力する。すると、優先出力回路40の出力としては、最も高い温度の検出信号のみが出て来る。なぜなら、それより低い温度の検出信号が入力されているダイオードに対しては、最も高い温度の検出信号がカソード側に回り込んで来て印加され、逆電圧印加状態とされ、オフとされるからである。こうして、最も高い温度の検出信号が電圧検出線11の一方の入力端子に入力され、比較基準値設定部42に設定されている許容最大温度と比較される。
【0030】
ステップ3…検出されて来る印加電圧VC のいずれかが、許容最大電圧を超えていないかどうか調べる。超えていたものが1つでもあった場合、そのまま充電を続けるとEDLCが損傷される恐れがあるので、充電は停止する(ステップ8へ)。これを調べる回路も、図11の回路を応用して構成することが出来る(この場合には、比較基準値設定部42には、許容最大電圧を設定しておく。)。
ステップ4…検出した充電電流が、突入電流判定用電流値を超えているかどうか調べる。蓄電装置9の充電量がゼロ或いは極めて少ない場合に充電を行うと、極めて大きい突入電流が流れる。この電流もEDLCや他の回路素子を損傷する恐れがあるので、予め突入電流判定用電流値を設定しておき、これを超える値かどうか調べる。
【0031】
ステップ5…充電電流が突入電流判定用電流値を超える場合には、突入電流であると判断し、初期充電モードでの制御を行う。即ち、直ちに回路に抵抗等を挿入し、突入電流を抑制する。具体的には、図4において、充電制御装置8よりトランジスタ72にオフ信号を発し、回路に抵抗71を挿入する。
ステップ6…ステップ4で、充電電流が突入電流判定用電流値より小さい場合には、蓄電装置9が満充電になっているかどうか調べる。これは蓄電装置9の電圧なり、充電電流なりを調べることによって行う。
【0032】
ステップ7…まだ満充電になっていない場合には、通常充電モードでの制御を行う。突入電流抑制用の抵抗71は回路に挿入しておく必要がないから、充電制御装置8からのオン信号によりトランジスタ72がオンされ、抵抗71はバイパスされる。太陽電池1からの電流はトランジスタ72の方を通って流れ、蓄電装置9を充電したり、電気負荷21へ給電されたりする。
なお、本発明では、このモードでの制御を行う場合、太陽電池1から常に最大出力を取り出しつつ行えるようにするため、独特の方法での最大出力追従制御を提案している。その詳細については、図6〜図10等で説明する。
ステップ8…満充電になっている場合には、蓄電装置9への充電は止める。充電制御装置8からのオン信号によりトランジスタ62がオンされ、太陽電池1からの電流はトランジスタ62を通って電気負荷21に給電されたり、電力系統へ逆潮流されたりする。
【0033】
(最大出力追従制御)
図6は、本発明における最大出力追従制御を説明するフローチャートである。
ステップ1…太陽電池1からの出力電圧V,出力電流Iを検出する。
ステップ2…検出したV,Iを用いて出力電力Pを算出する。
ステップ3…検出した出力電流Iの値が、太陽電池1の定格電流IR の半分以下であるかどうか調べる。これは、図2(2)で示したが、最大出力点ラインの傾きa(T)として、予め分かっている定数a0 (メーカーによって与えられる)を使ってよいかどうかを判断するためである。なお、この段階で最大出力点ラインの傾きa(T)の点検を始めた理由は、ステップ6で、今回検出した出力電流Iに対応する最大出力(最大出力点ライン30上の点(図1のA1 ,Y1 等)での出力)を計算する際にa(T)を使用するためである。
【0034】
ステップ4…出力電流Iの値が太陽電池1の定格電流IR の半分以下である場合には、最大出力点ラインの傾きa(T)としては、定数a0 を使用する。
ステップ5…出力電流Iの値が太陽電池1の定格電流IR の半分より大である場合には、最大出力点ラインの傾きa(T)として定数a0 を使用するのは憚られる。そこで、前回,前々回のフローの時の電流,最大電力を用いて、a(T)を近似的に計算する。
即ち、前回の電流,最大電力がIM1,PM1であり、前々回の電流,最大電力がIM2,PM2であるとした場合、次式の如く電流の増分ΔIM ,最大出力の増分ΔPM の比を取り、a(T)を近似的に得る。
ΔPM PM1−PM2
a(T)= =
ΔIM IM1−IM2
【0035】
ステップ6…今回の検出電流に対応する最大電力PM を算出する。図1で説明したところの、点Y1 における電力PY1の算出、或いは点A1 における電力PA1の算出である。
ステップ7…ステップ2で求めた現在の実際の出力電力Pの値が、ステップ6で算出した最大電力PM と等しいかどうか調べる。
もし等しければ、図1で言えば、現在の動作点が点Mに来ているということを意味している。この場合は最大電力を取り出し中であり、申し分ないわけであるから、何らの制御もする必要がない。従って、ステップ1へ戻る。
ステップ8…等しくない場合は、現在の実際の出力電力Pの方がステップ6で算出した最大電力PM より大きいかどうか調べる。もし小さければ、動作点は第1領域32にあるということであるから、第1領域での制御Aという制御ブロックに進む。もし大きければ、動作点は第2領域33にあるということであるから、第2領域での制御Bという制御ブロックに進む。
【0036】
〔第1領域での制御A〕
図7は、第1領域での制御を説明するフローチャートであり、図8は第1領域での制御を説明する図である。符号は図1のものに対応し、Y,X,Wは動作点、Y1 ,X1 ,W1 はY,X,Wに対応する最大出力点ライン30上の点、PY ,PX ,PW ,PY1,PX1,PW1は電力,IY ,IX ,IW は電流である。
ステップA1…制御目標電流ID を仮決定する。第1領域32では、ID =K×Iにより制御目標電流ID を先ず仮決定する。図3でIM =K×IS の関係があることを説明したが、仮決定で使用するKはそのKである。Iは、現在の電流である。
例えば、図8で現在の電流がIY であるとした場合、K×IY =IX ならば、制御目標電流はIX と仮決定される。
【0037】
ステップA2…制御目標電流ID とした場合の最大出力点ライン30上の出力値PMDを算出する。これは、PMD=a(T)×ID で算出される(図6のステップ6参照)。
例えば、図8で制御目標電流をIX と仮決定した場合であれば、その時の最大出力点ライン30上の点X1 における出力値PX1を算出する。
ステップA3…算出した出力値PMDと今の時点の出力Pとを比較する。この比較は、仮決定した制御目標電流ID に電流を制御した場合、第1領域32を外れてしまうかどうかの点検をするために行う。PMD>Pであれば、まだ第1領域32に留まると判断し、そうでなければ第1領域32を外れると判断する。外れると判断された場合は、第1領域32での制御はもはや行わず、図6のステップ1に戻る。
例えば、図8で制御目標電流をIX とした場合の出力値PX1と、今の時点の出力PY とを比較する。図8を観察すればPX1>PY であるから、この場合は電流をIX にしてもなお、第1領域32に留まると判断される。
【0038】
ステップA4…ステップA3でなお第1領域32に留まると判断された場合は、制御目標電流ID を本決定し、電流をそのID に制御する。
ステップA5…電流がID に制御されたところで、電流I,電圧Vを検出し、その時の出力Pを算出する。そうして、ステップA1に戻り、再び上述した第1領域での制御を繰り返す。
【0039】
その結果、P−I特性曲線31上の動作点は、図8でY→X→Wとひたすら最大出力点Mに向かって接近してゆき(最大出力点Mの左右を行きつ戻りつして接近するのでなく)、次に設定した制御目標電流ID にすると第2領域33に入ってしまうという所で、第1領域での制御を終了する。ひたすら接近してゆくので、最大出力点M(ないしその近傍)に到達するまでの時間が短く、制御が迅速に行われる。
【0040】
〔第2領域での制御B〕
図9は、第2領域での制御を説明するフローチャートであり、図10は第2領域での制御を説明する図である。符号は図1のものに対応し、A,B,Cは動作点、A1 ,B1 ,C1 はA,B,Cに対応する最大出力点ライン30上の点、PA ,PB ,PC ,PA1は電力,IA ,IB ,IC は電流である。
ステップB1…制御目標電流ID を決定する。第2領域33では、ID =P/a(T)により制御目標電流ID を決定する。a(T)は最大出力点ライン30の傾きである。Pは、現在の出力電力ある(現在の検出電圧,検出電流がそれぞれV,Iであるなら、V×I=Pと計算される)。つまり、上記のように定めたID は、現時点で流すことが可能な最大電流に他ならず、それを目標値としたということである。
例えば、図10で現在の動作点はAであるとした場合、その時の出力電力はPA であるから、制御目標電流はPA ÷a(T)で計算される。計算の結果、PA ÷a(T)=IB であったとすれば、次の制御目標電流はIB とされる。
【0041】
ステップB2…電流を制御して、制御目標電流ID となるようにする。
例えば、図10で動作点がAにある時点において算出された制御目標電流がIB であれば、電流はIB となるように制御される。
ステップB3…電流が制御目標電流に制御されたところで、新たな動作点での電圧V,電流Iを検出し、それらを基にその時の出力P(P−I特性曲線31上の動作点の出力)や、その時の最大出力点ライン30上の出力を算出する。
例えば、図10で電流を制御目標電流IB に制御した場合、動作点はB点となる。この時の電流,電圧の検出値はそれぞれIB ,VB と検出されたとすると、B点の出力PB はPB =VB ×IB で算出される。また、動作点Bに対応する最大出力点ライン30上の点B1 の出力PB1は、PB1=a(T)×IB で算出される(なお、理論的に言えば、PB1=PA である。なぜなら、IB を決定する際、IB =PA ÷a(T)(つまりPA =a(T)×IB )で決定しているからである。従って、わざわざPB1=a(T)×IB でPB1を計算しなくとも、PA をそのままPB1として用いてよい。)。
【0042】
ステップB4…ステップB3で算出した出力PB から最大出力点出力PB1を差し引いた差の値の、定格電力PR (これは太陽電池1のメーカーから予め与えられている)に対する比ΔPを算出する。
例えば、図10で電流を制御目標電流IB に制御した場合、(PB −PB1)/PR の計算をしてΔPを求める。
【0043】
ステップB5…予め小さな値εを定めておいて、ΔP<εとなったどうか調べる。このεの値は、P−I特性曲線31上の動作点と、それに対応する最大出力点ライン30上の点との縦方向の差が、定格電力PR の大きさに比べて、充分に小さくなったと判断されるような場合にΔPが取る値程度の値に定められる。
ΔP<εとなれば、P−I特性曲線31上の動作点は充分にM点に接近しているから、もう第2領域33での制御を続行する必要なしと判断し、図6のステップ1に戻る。
まだΔP<εとなっていなければ、ステップB1に戻り、再び上述した第2領域での制御を繰り返す。
【0044】
その結果、P−I特性曲線31上の動作点は、A→B→Cとひたすら最大出力点Mに向かって接近してゆき(最大出力点Mの左右を行きつ戻りつして接近するのでなく)、充分近くまで接近した所で、第2領域での制御を終了する。第2領域の制御でも、ひたすら接近してゆくので、最大出力点M(ないしその近傍)に到達するまでの時間が短く、制御が迅速に行われる。
【0045】
以上のように本発明によれば、現在の日射量に対応したP−I特性曲線上の動作点が、P−I特性曲線と最大出力点ラインとの大小関係で割り出した第1領域,第2領域のいずれにあるかに応じ、出力電流をそれぞれ独特の仕方で最大電力が出力される電流に近づけるようにしたので、常に最大電力が速やかに取得できるようになる。
また、蓄電装置として極めて短時間(例、マイクロセカンド単位)での電流変化に応じても充放電し得る電気二重層コンデンサ(EDLC)を採用し、前記の最大出力追従制御で行われる電流制御に対応し得るようにしたので、充電が効率良く行われる。その結果、需要者で発電した電力は、需要者のところで最大限蓄電されるので、電力系統へ逆潮流される電力は自ずと少なくなり、電力系統に電圧上昇や周波数変化等の悪影響を及ぼすことが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明での最大出力追従制御の原理を説明する図
【図2】太陽電池の最大出力点ラインを説明する図
【図3】太陽電池の短絡電流と最適電流(最大出力時電流)との関係を示す図
【図4】本発明の太陽光発電システムの構成を示す図
【図5】本発明の太陽光発電システムでの制御を説明するフローチャート
【図6】本発明における最大出力追従制御を説明するフローチャート
【図7】第1領域での制御を説明するフローチャート
【図8】第1領域での制御を説明する図
【図9】第2領域での制御を説明するフローチャート
【図10】第2領域での制御を説明する図
【図11】いずれかの信号が比較基準値を超えるかどうかを検知する回路の1例
【図12】太陽電池の出力電流と出力電力との関係を示す図
【符号の説明】
【0047】
1…太陽電池、2…整流平滑部、3…電流検出器、4…最大出力追従制御装置、5…DC−DCコンバータ、6…充電バイパススイッチ部、61…ダイオード、62…トランジスタ、7…突入電流抑制部、71…抵抗、72…トランジスタ、8…充電制御装置、9…蓄電装置、10…電流検出器、11…温度検出器、12…電圧検出線、13…主電路スイッチ部、14…EDLC監視部、15…DC−DCコンバータ、16…電流検出器、17…コンバータ制御装置、18…インバータ、19…インバータ制御装置、20…配線、21…電気負荷、40…優先出力回路、41…比較回路、42…比較基準値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池及びその出力レベルを調整する電力変換手段を具備した太陽光発電システムにおいて、
上記電力変換手段は、太陽電池の出力電力と出力電流特性における、最大電力とその最大値を与える最適電流との関係をもとに、その時点の日射量で出力できる最大電力を探索する
ことを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
太陽電池の出力電圧を検出する電圧検出手段及び出力電流を検出する電流検出手段を具備し、
最大電力と最適電流との関係を比例特性として、当該電圧検出手段及び電流検出手段で検出された検出電圧と検出電流との積で算出された算出発電電力と、前記検出電流に対応する前記比例特性から決定される検出電流対応の最大電力とを比較し、
該検出電流対応の最大電力が前記算出発電電力以上の時は、太陽電池からの出力電流を減少させ、
該検出電流対応の最大電力が前記算出発電電力より小の時は、太陽電池からの出力電流を増加させ、
上記検出時点で太陽電池が発生できる前記比例特性上の最適な最大電力点に到達するように、太陽電池の出力電圧及び出力電流を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
比例特性の検出時点における比例係数の演算には、
検出時点より前の第1の時点及び第2の時点で演算過程によって既に得られている第1の最適な最大電力と第2の最適な最大電力との差分と、
各最適な最大電力を与える第1の最適電流と第2の最適電流との差分との比から求める過程が含まれる
ことを特徴とする請求項2記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
太陽電池及びその出力レベルを調整する電力変換手段、当該電力変換手段を介して接続される電気二重層キャパシタを具備した太陽光発電システムにおいて、
上記太陽電池で発電される電気エネルギーを上記電気二重層キャパシタに蓄積するために流す充電電流の条件は、当該電気二重層キャパシタの端子電圧をもとに決定する
ことを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項5】
太陽電池で発電された電気エネルギーは、電気二重層キャパシタに蓄積できる能力を超えた時にのみ、当該電気二重層キャパシタに蓄積できない余剰エネルギーを系統に逆潮流させる
ことを特徴とする請求項4記載の太陽光発電システム。
【請求項1】
太陽電池及びその出力レベルを調整する電力変換手段を具備した太陽光発電システムにおいて、
上記電力変換手段は、太陽電池の出力電力と出力電流特性における、最大電力とその最大値を与える最適電流との関係をもとに、その時点の日射量で出力できる最大電力を探索する
ことを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
太陽電池の出力電圧を検出する電圧検出手段及び出力電流を検出する電流検出手段を具備し、
最大電力と最適電流との関係を比例特性として、当該電圧検出手段及び電流検出手段で検出された検出電圧と検出電流との積で算出された算出発電電力と、前記検出電流に対応する前記比例特性から決定される検出電流対応の最大電力とを比較し、
該検出電流対応の最大電力が前記算出発電電力以上の時は、太陽電池からの出力電流を減少させ、
該検出電流対応の最大電力が前記算出発電電力より小の時は、太陽電池からの出力電流を増加させ、
上記検出時点で太陽電池が発生できる前記比例特性上の最適な最大電力点に到達するように、太陽電池の出力電圧及び出力電流を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
比例特性の検出時点における比例係数の演算には、
検出時点より前の第1の時点及び第2の時点で演算過程によって既に得られている第1の最適な最大電力と第2の最適な最大電力との差分と、
各最適な最大電力を与える第1の最適電流と第2の最適電流との差分との比から求める過程が含まれる
ことを特徴とする請求項2記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
太陽電池及びその出力レベルを調整する電力変換手段、当該電力変換手段を介して接続される電気二重層キャパシタを具備した太陽光発電システムにおいて、
上記太陽電池で発電される電気エネルギーを上記電気二重層キャパシタに蓄積するために流す充電電流の条件は、当該電気二重層キャパシタの端子電圧をもとに決定する
ことを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項5】
太陽電池で発電された電気エネルギーは、電気二重層キャパシタに蓄積できる能力を超えた時にのみ、当該電気二重層キャパシタに蓄積できない余剰エネルギーを系統に逆潮流させる
ことを特徴とする請求項4記載の太陽光発電システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−176474(P2008−176474A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8160(P2007−8160)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年8月IEEE発行の下記の機関誌 IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRIAL ELECTRONICS, VOL.53,NO.4,AUGUST 2006
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年8月IEEE発行の下記の機関誌 IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRIAL ELECTRONICS, VOL.53,NO.4,AUGUST 2006
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】
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