説明

太陽光発電装置

【課題】水処理施設の開口部上方を覆う覆蓋の設置面積を有効活用するため,太陽電池モジュールと覆蓋を組合せた太陽光発電装置を提供する。
【解決手段】太陽電池モジュールと覆蓋の一体化に対し,支持する機能,押える機能,仕舞機能を完全に独立させ役割分担を明確に設計した。機能毎に部材の標準化が可能であり,取付け手順のマニュアルも簡便なものとなる。その結果工場での加工範囲が増加し,精度面,効率面,安全面等で効果が認められた。またメンテナンスも水処理施設に設置した状態で容易に行うことが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浄水場或は下水処理場等水処理施設に敷設される覆蓋の表面に太陽電池モジュールを配置し,クリーンエネルギーの有効利用を図るものである。
【背景技術】
【0002】
水処理施設に敷設される覆蓋は,防臭,防藻,転落防止,危険物投入防止等を目的としてガラス繊維強化プラスチック(以下FRPと略す),合成木材,サンドイッチパネル,アルミニウム等で製作されている。近年二酸化炭素低減にむけ太陽光発電が普及しており覆蓋も従来の目的に加え,太陽電池モジュールと組合せた太陽光発電システムの採用が始っている。覆蓋の機能と発電を有機的に組合せた設計を提供するため太陽電池モジュールの取付け手法を考案した。覆蓋の形状は設計仕様により,種々選択されるが,本考案に懸る取付け手法はその制約を受ける事はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特開平3−80979或は特許第3316493号にて太陽光発電装置が提唱されており,覆蓋に太陽電池モジュールをスライドさせながら片側より挿入設置している。太陽電池モジュール覆蓋に直接固定されていないので,ガタつきが避けられず暴風時に危険が伴う。また任意のモジュールパネルの入れ替えは隣接するパネルも取り外す必要があり作業性の煩雑さは否めない。また,覆蓋の形状に制約を受け,設置が可能なアーチ状においても加工及び組立精度の点から,スライド押え部材との間隙を確保する必要があり,覆蓋と太陽電池モジュールとの一体化からは程遠いものと為らざるを得ない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
水処理施設の開口寸法及び負荷条件に応じて,覆蓋の幅方向断面の形状を設計するが,上面には二段の凹部を設けることを必須条件とする。図−1に示すように,上段は深さ及び幅を小さく設定し,下段は太陽電池モジュールの幅と厚みに合せた寸法に設定する。
覆蓋の長さ方向の形状は仕様を満足すれば,アーチ状,山形状,片流れ状,平板状等制約を受ける事はない。また覆蓋の形態として,可動タイプと固定タイプがあるが,同様である。太陽電池モジュールは図−2に示す支持部材を覆蓋下段の上面に固定した後,枠部を支持部材凹部に嵌め込むことにより,定位置に配列する。支持部材の厚みはケーブル配線の空隙及び雨水の排水路を確保することとなる。
図−3に示す押え部材は,凹部上段に固定されたネジを介して覆蓋に締結されるとともに,太陽電池モジュールの枠部を上部より押さえ,完全に覆蓋との一体化が図れることとなる。アーチ型覆蓋の場合は干渉材を介することにより,太陽電池モジュールの直線枠との位相差を吸収する。押え板の取付け位置は太陽電池モジュールの隣接部にて2枚分を押えることが一般的であるが,必須条件ではない。
太陽光発電装置としての付加価値として,外観も重要な要素であり押え部材の仕舞を考慮し,逆U字のカバーを取付ける。作業性を考え覆蓋長さ方向の両サイドで覆蓋と締結する。仕舞カバーを外し,特定位置の押え部材を外せば,任意の太陽電池モジュールの取替が覆蓋を設置した状態で可能となる。覆蓋断面両サイドの凸部は十分な剛性を見込んでおり作業者の足場になり得る。太陽電池モジュールの損傷は避けることが可能である。
【発明の効果】
【0005】
覆蓋の設計上,制約があるのは断面に形成された二段の凹部のみであり,通常の設計に於いても断面性能向上の手段としての凹凸付与は実施されており,違和感は全くない。
覆蓋と太陽電池モジュールの固定は,覆蓋本体と間接締結であり,設置工事の段階で支持部材及び押え部材用ネジは覆蓋に完全に固定されているので,メンテナンス時のモジュール取替は非常に簡便に行うことが可能である。
設置工事に於いても,太陽電池モジュールの位置決め及び固定は容易であり,モジュール間のケーブル配線も一枚づつ位置決めをしながら接続する為,コネクターの配置も容易となる。支持部材及び押え部材用ネジは工場取付けが可能であり,現地工事の簡略化が可能となる。また,カバーを取付けることにより長さ方向は覆蓋のコーナーラインが,幅方向は太陽電池モジュール枠の幾何学ラインが対照的に配置され,無機的なモジュールパネルと有機的な覆蓋の調和が美観を向上させている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
FRP製ドーム型覆蓋にプラスチック製支持部材をSUSボルト・ナットにて固定する。支持部材はエンジニアリングプラスチック或はクロロプレン等のゴム製が推奨される。支持部材の固定位置は太陽電池モジュールの枠寸法に規制されるが,可能な範囲で幅を広く設定することが望ましい。また押え部材用固定ネジはSUSボルトを裏面より立上げ,SUSボルトにて締めつける。FRPとの接触面は大座金が好ましい。押え部材の材質はSUS板が性能/価格的に良好であり,モジュール枠との界面には発泡体を介することが最良である。SUS板に代えてFRP板等プラスチック製品も仕様を踏まえての採用は可能である。
押え部材の取付け位置は,制約がない限り支持部材と芯合せすることが望ましい。
カバーの材質もFRP製が望ましく,両端にSUS金物を取付け,覆蓋本体と締結する。
【実施例】
【0007】
1 アーチパネルの成形
幅1500mm,長さ6000mm,高さ700mm,立上り300mm,曲率半径14450mmのアーチ状パネルを成形した。
2 断面の設定
上段凹部は深さ25mm,幅40mmとし,下段凹部は深さ100mm,幅1300mmとした。深さは表面からの寸法であり,段差は25mm,75mmとなる。表面部の幅は両サイドで各々60mmとした。側壁の下がりは150mmとし,中央振分500mmにハットリブ補強を設定した。
3 支持部材の設定
クロロプレン製のブロック(50mm幅×120mm長×60mm高)の中央部を70mmに渡り,深さが20mmの凹部に加工し,残突起部の中央に10mmの孔を各々一ケ所設けた。
4 押え部材の設定
SUS製平板(50mm幅×60mm長×3mm厚)をL型に折り曲げ,7.5mmの立上りを設け,立上り側より12.5mmの幅中央部に8mmの孔を一ケ所加工した。
5 支持部材取付け孔加工
アーチ状パネルの凹部下段に幅方向は中央振分1000mm,長さ方向は頂点を基準に800mmピッチにて支持部材に対応する取付け孔を加工した。
6 押え部材取付孔加工
アーチ状パネルの凹部上段の幅中央部に頂点を基準として,800mmピッチにて押え部材に対応する取付け孔を加工した。
7 支持部材取付け
アーチ状パネルに支持部材をSUSボルト・ナットにより固定した。
8 太陽電池モジュールの設置
1280mm幅×800mm長の太陽電池モジュールを支持部材の凹部に隣接して嵌め込み,合計6モジュールをアーチ状パネルに設置した。
9 押え部材の固定
押え部材により,太陽電池モジュールの隣接位置にて2枚分の枠を同時に押え固定した。接触面にはクロロプレン発泡ゴムを介し,柔軟性を確保した。
10 カバーの取付け
凹部上段の押え部材を目隠しするため,アーチ状パネルと同じ曲率半径のカバーを成形し,両端に取付け金具を固定した後,アーチ状パネルの垂直立上り部にボルト締めをした。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本考案に懸る覆蓋の標準的な形状を示す。
【図2】請求項1における支持部材の取付け状況を示す。
【図3】請求項2における押え部材による太陽電池モジュールの固定状況を示す。
【図4】請求項3におけるカバーの設置状況を示す。
【図5】覆蓋の形状例を示す。
【符号の説明】
【0009】
図1の符号は
11…上段凹部,12…下段凹部,13…ハットリブ補強,14…側壁
図2の符号は
21…支持部材,22…固定用ボルトナット,23…固定用孔
図3の符号は
31…押え部材,32…パッキン,33…固定用ボルト・ナット,34…固定用孔
35…太陽電池モジュール
図4の符号は
41…カバー
図5の符号は
51…アーチ状覆蓋,山形状覆蓋,53…平板状覆蓋,54…片流れ状覆蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理施設,開口部上方を覆う覆蓋上面の幅方向に二段の凹部を形成し,この凹部の下段に太陽電池モジュールを嵌め込んだ太陽光発電装置に於いて,上面に固定された支持部材により,太陽電池モジュールの枠を保持し,所定の位置に太陽電池モジュールを配置することを特徴とした太陽光発電装置。
【請求項2】
水処理施設,開口部上方を覆う覆蓋上面の幅方向に二段の凹部を形成し,この凹部の下段に太陽電池モジュールを嵌め込んだ太陽光発電装置に於いて,凹部の上段にネジを固定しこのネジに締結可能な孔を有する押え部材にて,上方より太陽電池モジュールの枠を固定することを特徴とした太陽光発電装置。
【請求項3】
水処理施設,開口部上方を覆う覆蓋上面の幅方向に二段の凹部を形成し,この凹部の下段に太陽電池モジュールを嵌め込んだ太陽光発電装置に於いて,凹部の上段に固定された押え部材を目隠しする逆U字型のカバーを配置し,覆蓋長さ方向の両サイドで覆蓋と締結したことを特徴とした太陽光発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−158282(P2007−158282A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380776(P2005−380776)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(504222311)日成エンジニアリング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】