説明

太陽光集光システム

【課題】ヘリオスタットの状態は変化させずに得られる熱エネルギーの調整を図ることができる太陽光集光システムを提供する。
【解決手段】センタミラー1が上下方向に平行移動するため、センタミラー1からの反射光が一点に集光した状態から、センタミラー1を上下に平行移動させると、反射光の集光範囲が広がり、単位面積当たりで得られる熱エネルギーが低下する。従って、集光部の熱エネルギーが大きくなり過ぎる場合は、一部のヘリオスタット7の向きを変えるのではなく、センタミラー1を上下に平行移動させるだけで、その移動量に応じて、熱エネルギーが低下するため、熱エネルギーの調整が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光集光システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光を効率良く一点に集めて熱エネルギーに変え、その熱エネルギーにより、発電や、海水淡水化を行う技術が知られている。この種の太陽光集光装置は、所定の高さに設置された下向きのセンタミラーへ向けて、複数のヘリオスタットにより太陽光を反射し、センタミラーにて反射された太陽光をセンタミラーの下方の一点に集光させる構造になっている。複数のヘリオスタットからの反射光を一点に集中するため高い熱エネルギーが得られるようになっている。
【0003】
この種の太陽光集光システムの場合、太陽光の弱い冬期などでも必要な熱エネルギーが得られるように、数多くのヘリオスタットをセンタミラーの周囲に配置している。従って、太陽光の強い夏期の日中などは全てのヘリオスタットを利用すると、一点に集中する熱エネルギーが大きくなり過ぎるため、一部のヘリオスタットの向きを変えてセンタミラーから外し、センタミラーに入光しないようにして、一点に集光される熱エネルギーの調整を図っている。曇りの状態から晴天に変化したような場合も同様の調整を図っている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−119105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、一部のヘリオスタットの向きを変えることにより、得られる熱エネルギーの調整を行っているため、ヘリオスタットの制御が大変に面倒である。特に、各ヘリオスタットをセンサー方式により自律制御している場合は、いったん向きを変えたヘリオスタットを元の状態の戻すために別のセンサーが必要となり、センサーの構造が大変に複雑になる。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、ヘリオスタットの状態は変化させずに得られる熱エネルギーの調整を図ることができる太陽光集光システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、所定の高さに設置されるセンタミラーと、センタミラーを所定の高さ位置に支持するタワーと、センタミラーの周囲の地上に設置されて太陽光をセンタミラーへ向けて反射させるヘリオスタットとから成り、センタミラーにて反射された太陽光がセンタミラーの下方の一点に集光する太陽光集光システムであって、前記センタミラーがタワーに対して上下方向に平行移動自在であることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、センタミラーがタワーの上部に伸縮機構を介して吊り下げ支持され、伸縮機構を伸縮させることにより、センタミラーが上下方向に平行移動することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、センタミラーが楕円鏡で、ヘリオスタットからの反射光がセンタミラーの第1焦点に向けて反射され、第1焦点を通過した反射光がセンタミラーで反射されて第2焦点に集光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、センタミラーが上下方向に平行移動するため、センタミラーからの反射光が一点に集光した状態から、センタミラーを上下に平行移動させると、反射光の集光範囲が広がり、単位面積当たりで得られる熱エネルギーが低下する。従って、集光部の熱エネルギーが大きくなり過ぎる場合は、一部のヘリオスタットの向きを変えるのではなく、センタミラーを上下に平行移動させるだけで、その移動量に応じて、熱エネルギーが低下するため、熱エネルギーの調整が容易である。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、センタミラーをタワーに対して吊り下げ支持している構造が伸縮機構のため、伸縮機構を伸縮させるだけで、センタミラーを上下方向で平行移動させることができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、センタミラーが楕円鏡のため、ヘリオスタットはセンタミラーの第1焦点へ向けて太陽光を反射するように制御すれば良い。そうすれば、第1焦点を通過した反射光は必ずセンタミラーで反射されて第2焦点に集光する。全てのヘリオスタットの反射ターゲットが一点(第1焦点)のため、ヘリオスタットの制御が行い易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好適な実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1は太陽集光装置を示している。中心にはセンタミラー1が4本のタワー2により地面に対して所定高さ(約10m)に支持されている。センタミラー1は楕円鏡で、中央には円形の開口3が形成されている。この開口3は下方の熱気を上方へ逃がすためのものである。
【0013】
タワー2の頂部4は内側に曲折している。センタミラー1の四方にはタワー2の頂部4の下方に位置する突片5が形成されている。そして、この突片5と頂部4とが、伸縮機構としてのリニアアクチュエータ6により上下方向で連結されている。従って、センタミラー1はこのアクチュエータ6を介してタワー2の頂部4に吊り下げ支持された状態になっている。4本のアクチュエータ6は油圧で作動し、全てが同じ長さだけ精密に同期して伸縮することができる。
【0014】
センタミラー1は下面が反射面で、その反射面の鏡面形状が回転楕円面の一部(オフセット楕円鏡)を構成している。従って、このセンタミラー1の下方には楕円面の長軸上に第1焦点A(高位置)と第2焦点B(低位置)が存在する。
【0015】
センタミラー1の周囲には、多数のヘリオスタット7がセンタミラー1を取り囲むように放射状に設置されている。ヘリオスタット7は図示せぬセンサーにより太陽の動きに連動して向きを変化させる構造となっており、センターミラー1の高さとは独立に地面に対して位置固定された仮想点に向けて反射するように制御される。そしてセンターミラー1が地面に対して所定の高さに位置づけられて第1焦点Aが仮想点に一致したときに、ヘリオスタット7は常に太陽光Lを第1焦点Aへ向けて反射するように制御される。第1焦点Aを通過した太陽光Lはセンタミラー1にて反射され、そして第2焦点Bに集光する。第2焦点Bに集光した太陽光Lは熱変換装置8導入されて熱エネルギーに変換される。得られた熱エネルギーは蒸気タービンを回転させる蒸気発生等に利用される。
【0016】
太陽光Lは第2焦点Bに集光するが、完全な点ではなく、第2焦点Bにおいて一定の大きさの太陽の像dを結ぶ。第1焦点Aを通過して第2焦点Bに集光する像dが一番小さいサイズとなる。この状態では高温が得られ、熱変換装置8において大きな熱エネルギーが得られる。
【0017】
そして、熱変換装置8で発生する熱エネルギーをモニターした結果、必要量よりも熱エネルギーが大きくなり過ぎた場合には、これを検出し、その検出信号を図示せぬ制御部へ出力する。検出信号を入力した制御部はアクチュエータ6を制御して、全てのアクチュエータ6を所定の同じ長さだけ長くする。全てのアクチュエータ6が同じだけ長くなるため、センタミラー1は下方へ平行移動する。
【0018】
センタミラー1が下方へ平行移動すると、第1焦点A及び第2焦点Bも地面に対して平行移動し地面に対して固定された仮想点から第1焦点Aがずれるため、太陽光Lが第1焦点A及び第2焦点Bに集まらなくなって、第2焦点Bにおける集光面積Dが大きくなる。従って、単位面積当たりの熱エネルギー量が低下し、熱変換装置8で発生する熱量も低下する。
【0019】
熱変換装置8で発生する熱エネルギーが下がり過ぎると、その信号が制御部へ出力され、制御部がアクチュエータ6を元の長さに戻す。アクチュエータ6が元の長さに戻ると、センタミラー1が上昇し、第1焦点A及び第2焦点Bの幾何学的関係が成立し、第2焦点Bに小さな太陽の像dを結ぶ。
【0020】
以上の制御を繰り返すことにより、熱変換装置8で得られる熱エネルギーが大きくなりすぎるのを防止することができる。ヘリオスタット7の向きはそのままで、センタミラー1を上下方向で平行移動させるだけで熱エネルギーの制御を行うことができるため、熱エネルギーの調整が容易である。
【0021】
以上に実施形態では、集光面積Dを広げるために、センタミラー1は下降させる例を示したが、正規位置から上昇させても良い。
【0022】
センタミラー1を楕円鏡例にしたが球面鏡でも良い。下側に凸の鏡面でも良い。複数のリング状のミラーをフレネル状に中心から隙間を設けて状態で組み合わせた構造でも良い。要は、高い位置に設置したセンタミラーにミラーに向けてヘリオスタット7から太陽光Lを反射し、センタミラーで反射された太陽光Lがセンタミラー1の下方である程度の範囲に集光する太陽光集光システムであれば、本発明を適用することができる。
【0023】
伸縮機構として油圧式のアクチュエータ6を例にしたが、その他のスクリュー構造等を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る太陽集光装置を示す一部断面の全体図。
【図2】センタミラーを示す拡大断面図。
【図3】センタミラーを示す斜視図。
【図4】センタミラーを示す平面図。
【図5】正規位置にあるセンタミラーの光路を示す図。
【図6】下方へ平行移動させたセンタミラーの光路を示す図。
【符号の説明】
【0025】
1 センタミラー
2 タワー
6 アクチュエータ(伸縮機構)
7 ヘリオスタット
8 熱変換装置
A 第1焦点
B 第2焦点
L 太陽光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の高さに設置されるセンタミラーと、センタミラーを所定の高さ位置に支持するタワーと、センタミラーの周囲の地上に設置されて太陽光をセンタミラーへ向けて反射させるヘリオスタットとから成り、センタミラーにて反射された太陽光がセンタミラーの下方の所定の一点に集光する太陽光集光システムであって、
前記センタミラーがタワーに対して上下方向に平行移動自在であることを特徴とする太陽光集光システム。
【請求項2】
センタミラーがタワーの上部に伸縮機構を介して吊り下げ支持され、伸縮機構を伸縮させることにより、センタミラーが上下方向に平行移動することを特徴とする請求項1記載の太陽光集光システム。
【請求項3】
センタミラーが楕円鏡で、ヘリオスタットからの反射光がセンタミラーの第1焦点に向けて反射され、第1焦点を通過した反射光がセンタミラーで反射されて第2焦点に集光することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の太陽光集光システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−151346(P2010−151346A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328309(P2008−328309)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(390013033)三鷹光器株式会社 (114)
【Fターム(参考)】