説明

太陽電池およびその製造方法

【課題】発電効率を向上させつつ、発生した光生成キャリアをより多く取り出すことができる太陽電池を提供する。
【解決手段】受光面電極層2と、受光面電極層2上に積層された第1光電変換部31と、第1光電変換部31上に積層されたSiOからなる反射層32と、反射層32上に積層された第2光電変換部33と、第2光電変換部33上に積層された裏面電極層4と、を有し、反射層32の酸素濃度は、第1光電変換部31側よりも前記第2光電変換部33側の方が高くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射した光の一部を反射する反射層を備える太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、クリーンで無尽蔵のエネルギー源である太陽からの光を直接電気に変換できることから、新しいエネルギー源として期待されている。
【0003】
一般的に、太陽電池は、光入射側に設けられる透明電極層と、光入射側の反対側に設けられる裏面電極層との間に、太陽電池に入射した光を吸収して光生成キャリアを生成する光電変換部を備えている。
【0004】
従来から、光電変換に寄与する積層体として複数の光電変換部を設け、入射した光の多くを光電変換に寄与させることが知られている。このような複数の光電変換部は、光入射側に設けられた光電変換部で光電変換に寄与することなく透過した光の一部を、他の光電変換部により光電変換に寄与させることができるため、光電変換部において吸収される光の量が増加する。その結果、光電変換部において生成される光生成キャリアが増加するため、太陽電池の発電効率が向上する。
【特許文献1】特開平4−167474
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、太陽電池の発電効率のさらなる向上が求められている。
【0006】
ここで、発電効率をさらに向上させるためには、光電変換部において生成される光生成キャリアを増加させることが有効である。そこで、複数の光電変換部の間に反射層を設けることが検討されている。これにより、入射した光の一部を反射して光入射側の光電変換部に入射させるとともに、裏面電極層側の他の光電変換部においては、入射した光のうち裏面電極層などにより反射された光を再度反射して閉じ込めることができる。上記のような反射材料の主体となる透光性導電材料としては、酸化シリコン(SiO)を用いて、研究開発が行われてきた。
【0007】
しかし、より多くの光を反射させて光入射側の光電変換部に入射させるとともに、より多くの光を裏面電極側の他の光電変換部に閉じ込めるために低屈折の反射層を用いた場合、隣接する光電変換部とのコンタクト抵抗が大きくなり、生成された光生成キャリアをロスする問題が生じていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、発電効率を向上させた太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る太陽電池は、受光面電極層と、受光面電極層上に積層された第1光電変換部と、第1光電変換部上に積層されたSiOからなる反射層と、反射層上に積層された第2光電変換部と、第2光電変換部上に積層された裏面電極層と、を有し、反射層の酸素濃度は、第1光電変換部側から第2光電変換部側に向かって高くなっていることを要旨とする。
【0010】
また、本発明に係る太陽電池の製造方法は、受光面電極層を形成する工程Aと、受光面電極層上に第1光電変換部を形成する工程Bと、第1光電変換部上にSiOからなる反射層を形成する工程Cと、反射層上に第2光電変換部を形成する工程Dと、第2光電変換部上に裏面電極層を形成する工程Eと、を有し、工程Cにおいて、反射層の酸素濃度が第1光電変換部側から第2光電変換部側に向かって高くなるように形成されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発生した光生成キャリアのロスを抑制し、発電効率を向上させた太陽電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0013】
[第1実施形態]
〈太陽電池の構成〉
以下において、本発明の第1実施形態に係る太陽電池の構成について、図1を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係る太陽電池10の断面図である。
【0015】
太陽電池10は、基板1と、受光面電極層2と、積層体3と、裏面電極層4とを備える。
【0016】
基板1は、透光性を有し、ガラス、プラスチック等の透光性材料により構成される。
【0017】
受光面電極層2は、基板1上に積層されており、導電性および透光性を有する。受光面電極層2としては、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In)、又は酸化チタン(TiO)などの金属酸化物を用いることができる。尚、これらの金属酸化物に、フッ素(F)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)などがドープされていてもよい。
【0018】
積層体3は、受光面電極層2と裏面電極層4との間に設けられる。積層体3は、第1光電変換部31と、反射層32と、第2光電変換部33とを含む。
【0019】
第1光電変換部31、反射層32、および第2光電変換部33は、受光面電極層2側から順に積層される。
【0020】
第1光電変換部31は、受光面電極層2側から入射する光、又は反射層32から反射される光により光生成キャリアを生成する。第1光電変換部31は、p型非晶質シリコン半導体と、i型非晶質シリコン半導体と、n型非晶質シリコン半導体とが基板1側から積層されたpin接合を有する(不図示)。
【0021】
反射層32は、第1光電変換部31を透過した光の一部を第1光電変換部31側に反射する。反射層32は、第1光電変換部31側から順次、接触するように積層される。
【0022】
反射層32は、主体となる透光性導電材料として酸化シリコン(SiO)が用いられる。ここで用いられるSiOは、層中の酸素濃度が第1光電変換部31側から後述する第2光電変換部33側に向かって高くなるものが用いられる。なお、本実施形態においてはSiO層の酸素濃度の変化を第1光電変換部31側から第2光電変換部33側に向かって一定の割合で高くなるようにしたが、これに限らず段階的に高くなるようにしたものでも良い。要するに、SiO層の酸素濃度は、第1光電変換部31側よりも第2光電変換部33側の方が高くなっていれば良い。また、本実施形態においては、中間層32bは、膜厚を50nmとしたが、30〜150nmとすることが好適である。
【0023】
第2光電変換部33は、第1光電変換部31を透過して受光面電極層2側から入射する光、又は裏面電極層4から反射される光により光生成キャリアを生成する。第2光電変換部33は、p型微結晶シリコン半導体と、i型微結晶シリコン半導体と、n型微結晶シリコン半導体とが基板1側から積層されたpin接合を有する(不図示)。
【0024】
裏面電極層4は、導電性を有する1または複数の層からなる。裏面電極層4としては、ZnO、銀(Ag)などを用いることができ、本実施形態では、裏面電極層が、ZnOを含む層と、Agを含む層とを積層体3側から積層した構成とした。しかし、これに限るものではなく、裏面電極層4は、Agを含む層のみを有していてもよい。
【0025】
〈作用および効果〉
本発明の第1実施形態に係る太陽電池10の効果について、以下に詳説する。
【0026】
(1)太陽電池10では、反射層32の酸素濃度を第1光電変換部31側から第2光電変換部33側に向かって高くなるようにする。これにより、以下の効果が得られる。
【0027】
(a)酸素濃度が第1光電変換部31側から第2光電変換部33側に向かって高くなるように反射層32を形成することにより、反射層32の第1光電変換部31側においては、反射層32の平均酸素濃度に比べて酸素濃度が低く、高屈折率の膜となる。一方、反射層32の第2光電変換部33側においては、反射層32の平均酸素濃度に比べて酸素濃度が高く、低屈折率の膜となる。この結果、反射層32全体としての屈折率は相殺され、反射層32全体の光学特性は、反射層32の平均酸素濃度を均一に有する膜と同等となる。つまり、反射層32の第1光電変換部31側の酸素濃度を低くすることにより高い酸素濃度を有する反射層32と第1光電変換部31との接触界面で生じるコンタクト抵抗を抑制しつつ、反射層32中の第2光電変換部33側の酸素濃度を高くすることにより反射層32全体の屈折率が高くなるようにして、反射層32と第1光電変換部31、もしくは反射層32と第2光電変換部33との界面での反射率が高くなるようにする。この結果、反射層32と第1光電変換部31、もしくは反射層32と第2光電変換部33との界面での反射効果を高めつつ、酸素濃度が高い反射層32とシリコンからなる第1光電変換部31間で生じる高いコンタクト抵抗から起因する太陽電池10のシリーズ抵抗(直列抵抗)値の増大を抑制することができる。
【0028】
従って、太陽電池10において、シリーズ抵抗値の増大による太陽電池10の曲線因子(F.F.)の減少を抑制しつつ、反射層32と第1光電変換部31、もしくは第2光電変換部33との界面での反射率が高められることによって短絡電流を増加させ、太陽電池10の発電効率の向上を図ることができる。
【0029】
(b)本実施形態では、CO流量を成膜開始時よりも成膜終了時の方が多くなるようにして反射層32を成膜することにより、成膜開始時よりも成膜終了時の方が結晶化し難くすることができ、反射層32の結晶化率が高くなることを抑制できる。これにより、結晶成分に比べ多くの酸素を取り込み易いアモルファス成分を多くし、より良く酸素濃度を高めることができ、反射層32での光吸収ロスを小さくすることができる。
【0030】
尚、550nmの波長の光に対する反射層32全体としての屈折率を2.4未満とすることにより、4.3程度の屈折率を有するシリコンとの界面における反射率を8%以上とすることができる。これにより、非晶質シリコンからなる第1光電変換部31に入射する光を多くすることができ、実質的に第1光電変換部31の厚さを厚くしたときと同様の効果を得ることができる。この結果、厚さが厚いほど問題となる第1光電変換部31の光劣化を抑制しつつ、第1光電変換部31において生成される光生成キャリアの減少を抑制することができる。
【0031】
(2)本発明の第1実施形態に係る太陽電池10では、反射層32として用いたSiOを微結晶とする。これにより、以下の効果が得られる。
【0032】
(a)反射層32を微結晶として、アモルファスSiO中に結晶成分を含むものとすることにより、アモルファスSiOのみからなるものに比べ、導電性を高めることができる。
【0033】
(b)第2光電変換部33を微結晶シリコンとした場合においては、反射層32として微結晶シリコンを用いることにより、反射層32を下地層として第2光電変換部33を結晶成長させることができ、より良く結晶化させることができる。この結果、第2光電変換部33の膜質が向上し、太陽電池10の発電効率を向上させることができる。
【0034】
〈その他の実施形態〉
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0035】
例えば、上述した第1実施形態では、積層体3に含まれる光電変換部が2つ(第1光電変換部31および第2光電変換部33)であるが、これに限定されるものではない。具体的には、積層体3には、3つ以上の光電変換部が含まれていてもよい。このような場合、反射層32は、任意の隣接する2つの光電変換部の間に設けることができる。
【0036】
また、上述した第1実施形態では、第1光電変換部31は、p型非晶質シリコン半導体と、i型非晶質シリコン半導体と、n型非晶質シリコン半導体とが基板1側から積層されたpin接合を有するが、これに限定されるものではない。具体的には、第1光電変換部31は、p型結晶質シリコン半導体と、i型結晶質シリコン半導体と、n型結晶質シリコン半導体とが基板1側から積層されたpin接合を有していてもよい。尚、結晶質シリコンには、微結晶シリコンや多結晶シリコンが含まれるものとする。
【0037】
さらに、上述した第1実施形態では、第2光電変換部33は、p型微結晶シリコン半導体と、i型微結晶シリコン半導体と、n型微結晶シリコン半導体とが基板1側から積層されたpin接合を有するが、これに限定されるものではない。具体的には、第1光電変換部31は、p型非晶質シリコン半導体と、i型非晶質シリコン半導体と、n型非晶質シリコン半導体とが基板1側から積層されたpin接合を有していてもよい。
【0038】
また、上述した第1実施形態では、第1光電変換部31および第2光電変換部33は、pin接合を有するが、これに限定されるものではない。具体的には、第1光電変換部31および第2光電変換部33の少なくとも一方が、p型シリコン半導体と、n型シリコン半導体とが基板1側から積層されたpn接合を有していてもよい。
【0039】
また、上述した第1実施形態では、太陽電池10は、基板1上に、受光面電極層2と、積層体3と、裏面電極層4とが順に積層された構成を有しているが、これに限定されるものではない。具体的には、太陽電池10は、基板1上に、裏面電極層4と、積層体3と、受光面電極層2とが順に積層された構成を有していてもよい。
【0040】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0041】
以下、本発明に係る太陽電池について、実施例を挙げて具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施することができるものである。
【0042】
〈実施例〉
以下のようにして、実施例1に係る太陽電池10を作製した。
【0043】
まず、厚さ4mmのガラス基板(基板1)上に、熱CVDにより表面に凹凸形状を有する600nm厚のSnO層(受光面電極層2)を形成した。
【0044】
次に、SnO層(受光面電極層2)上に、プラズマCVD法を用いて、p型非晶質シリコン半導体と、i型非晶質シリコン半導体と、n型非晶質シリコン半導体とを順次積層し、第1セル(第1光電変換部31)を形成した。
【0045】
プラズマCVD法としては、例えば、13.56MHzのRFプラズマCVDを適用することが好適である。プラズマの投入電力密度は、5mW/cm以上100mW/cm以下とすることが好ましい。
【0046】
次に、第1光電変換部31上に、プラズマCVD法を用いて、SiOからなる反射層32を形成した。反射層32形成する際には、成膜開始時から成膜終了時までにCO流量を120sccmから180sccmに一定の割合で増加させた。つまり、成膜開始時のSiH流量に対するCO流量の流量比を1.0として規格化した場合(以後、成膜開始時のSiH流量に対するCO流量の流量比を1.0として規格化したものを記載する)、成膜時にはSiH流量を変えず、CO流量のみを一定の割合で変えてCO/SiH流量比を1.0から1.5として反射層32全体のCO/SiH流量比の平均が1.25となるようにした。
【0047】
なお、接する面の屈折率差が大きいほど反射率は大きくすることができるため、550nmの波長の光に対するシリコンを主体とする材料の屈折率は4.3程度であることから、SiOからなる反射層32全体での屈折率は2.4未満となるように反射層32成膜時の平均CO/SiH流量比を調整することが好適である。
【0048】
また、COに代えて例えばCOやO、さらにはSiHに代えて例えばSiを用いてもよい。
【0049】
次に、反射層32上に、プラズマCVD法を用いて、p型微結晶シリコン半導体と、i型微結晶シリコン半導体と、n型微結晶シリコン半導体とを積層し、第2光電変換部33を形成した。
【0050】
プラズマCVD法としては、第1光電変換部31と同様に、例えば、13.56MHzのRFプラズマCVDを適用することが好適である。プラズマの投入電力密度は、5mW/cm以上100mW/cm以下とすることが好ましい。
【0051】
次に、第2光電変換部33上に、スパッタ法を用いて、ZnO層およびAg層(裏面電極層4)を形成した。
【0052】
上述した第1光電変換部31、反射層32および第2光電変換部33の形成条件を表1に示す。尚、ZnO層およびAg層(裏面電極層4)の厚さは、それぞれ90nm、200nmとした。
【0053】
【表1】

【0054】
以上により、本実施例1では、図1に示すように、第1光電変換部31と第2光電変換部33との間に、第1光電変換部31側から第2光電変換部33側に向かって酸素濃度が高くなった微結晶SiOからなる反射層32を有する太陽電池10を形成した。
【0055】
〈比較例1〉
以下のようにして、比較例1に係る太陽電池20を作製した。
【0056】
まず、上記実施例1および2と同様にして、厚さ4mmのガラス基板(基板21)上に、熱CVDにより表面に凹凸形状を有する600nm厚のSnO層(受光面電極層122)、第1光電変換部131を順次形成した。
【0057】
次に、第1光電変換部131上に、プラズマCVD法を用いて、SiOからなる反射層132を形成した。本比較例1では、反射層132はCO/SiH流量比を1.0として一定の割合で供給し、形成した。つまり、実施例の成膜開始時のSiH流量に対するCO流量の流量比のまま、流量比を変化させることなく反射層132の成膜を行った。
【0058】
次に、上記実施例と同様にして、反射層132上に、第2光電変換部133、ZnO層およびAg層(裏面電極層14)を順次形成した。
【0059】
上述した反射層132の形成条件を表2に示す。尚、第1光電変換部131、第2光電変換部133の形成条件は、上記実施例における形成条件と同様である。また、ZnO層およびAg層(裏面電極層14)の厚さは、上記実施例と同様に、それぞれ90nm、200nmとした。
【0060】
【表2】

【0061】
以上により、本比較例では、図2に示すように、第1光電変換部131と第2光電変換部133との間に、CO/SiH流量比を1.0として一定の割合で供給して形成し、一定の酸素濃度を有する微結晶SiOからなる反射層132を有する太陽電池20を形成した。
【0062】
〈比較例2〉
以下のようにして、比較例2に係る太陽電池30を作製した。
【0063】
まず、上記実施例1および2と同様にして、厚さ4mmのガラス基板(基板21)上に、熱CVDにより表面に凹凸形状を有する600nm厚のSnO層(受光面電極層222)、第1光電変換部131を順次形成した。
【0064】
次に、第1光電変換部131上に、プラズマCVD法を用いて、SiOからなる反射層232を形成した。本比較例2では、反射層232はCO/SiH流量比を1.25として一定の割合で供給し、形成した。
【0065】
次に、上記実施例と同様にして、反射層232上に、第2光電変換部133、ZnO層およびAg層(裏面電極層14)を順次形成した。
【0066】
上述した反射層232の形成条件を表3に示す。尚、第1光電変換部131、第2光電変換部133の形成条件は、上記実施例における形成条件と同様である。また、ZnO層およびAg層(裏面電極層14)の厚さは、上記実施例と同様に、それぞれ90nm、200nmとした。
【0067】
【表3】

【0068】
以上により、本比較例では、図3に示すように、第1光電変換部131と第2光電変換部133との間に、CO/SiH流量比を1.25として一定の割合で供給して形成し、一定の酸素濃度を有する微結晶SiOからなる反射層232を有する太陽電池30を形成した。
【0069】
〈比較例3〉
以下のようにして、比較例3に係る太陽電池40を作製した。
【0070】
まず、上記実施例1および2と同様にして、厚さ4mmのガラス基板(基板21)上に、熱CVDにより表面に凹凸形状を有する600nm厚のSnO層(受光面電極層322)、第1光電変換部131を順次形成した。
【0071】
次に、第1光電変換部131上に、プラズマCVD法を用いて、SiOからなる反射層332を形成した。本比較例3では、反射層332はCO/SiH流量比を1.5として一定の割合で供給し、形成した。
【0072】
次に、上記実施例と同様にして、反射層332上に、第2光電変換部133、ZnO層およびAg層(裏面電極層14)を順次形成した。
【0073】
上述した反射層332の形成条件を表4に示す。尚、第1光電変換部131、第2光電変換部133の形成条件は、上記実施例における形成条件と同様である。また、ZnO層およびAg層(裏面電極層14)の厚さは、上記実施例と同様に、それぞれ90nm、200nmとした。
【0074】
【表4】

【0075】
以上により、本比較例では、図4に示すように、第1光電変換部131と第2光電変換部133との間に、CO/SiH流量比を1.5として一定の割合で供給して形成し、一定の酸素濃度を有する微結晶SiOからなる反射層332を有する太陽電池40を形成した。
【0076】
〈特性評価〉
実施例、および比較例1〜3に係る太陽電池について、開放電圧、短絡電流、曲線因子および発電効率の各特性値の比較を行った。比較結果を表5に示す。尚、表5においては、比較例1における各特性値を1.00として規格化して表している。
【0077】
【表5】

【0078】
表5に示すように、実施例では、短絡電流については比較例1よりも増加し、また曲線因子については比較例2および比較例3よりも増加し、発電効率がいずれの比較例よりも高くなることが確認された。
【0079】
短絡電流については、実施例に係る太陽電池20では、比較例1に比べ、層中の酸素量を増加させて反射層32全体としての屈折率を小さくしたことより第1光電変換部31との屈折率差を大きくすることができたため、より多くの光を反射層32に反射させることが可能になり、増加させることができたと考えられる。また、短絡電流からCO/SiH流量比を1.0から1.5に変えながら形成して酸素濃度が膜は、CO/SiH流量比を1.25と一定にして形成したものと同様の反射効果を有することも確認された。
【0080】
曲線因子については、実施例に係る太陽電池20では、比較例2および比較例3に比べ、第1光電変換部31に接する側の反射層32の酸素濃度を小さくすることができるため、太陽電池20におけるシリーズ抵抗値を低下させることができたことにより増加させることができたと考えられる。
【0081】
従って、短絡電流および曲線因子の改善により、より多くの光を第1光電変換部31に入射させてより多くの光キャリアを発生させ、さらに第1光電変換部31と反射層32との界面でのロスを少なくすることにより、より多くの電流を取り出すことが可能となり、実施例では、いずれの比較例よりも発電効率を向上させることができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施形態(実施例)に係る太陽電池10の断面図である。
【図2】本発明の比較例1に係る太陽電池20の断面図である。
【図3】本発明の比較例2に係る太陽電池30の断面図である。
【図4】本発明の比較例3に係る太陽電池40の断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1,11…基板
2,12…受光面電極層
3…積層体
31,131,231,331…第1光電変換部
32,132,232,332…反射層
33,133,233,333…第2光電変換部
4,14…裏面電極層
10,20,30,40…太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面電極層と、
前記受光面電極層上に積層された第1光電変換部と、
前記第1光電変換部上に積層されたSiOからなる反射層と、
前記反射層上に積層された第2光電変換部と、
前記第2光電変換部上に積層された裏面電極層と、
を有し、
前記反射層の酸素濃度は、前記第1光電変換部側よりも前記第2光電変換部側の方が高くなっている
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記反射層の酸素濃度は、前記第1光電変換部側から前記第2光電変換部側に向かって徐々に又は段階的に高くなっていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記反射層は、微結晶からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
受光面電極層を形成する工程Aと、
前記受光面電極層上に第1光電変換部を形成する工程Bと、
前記第1光電変換部上にSiOからなる反射層を形成する工程Cと、
前記反射層上に第2光電変換部を形成する工程Dと、
前記第2光電変換部上に裏面電極層を形成する工程Eと、
を有し、
前記工程Cにおいて、前記反射層の酸素濃度が前記第1光電変換部側よりも前記第2光電変換部側の方が高くなるように形成されること
を特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記工程Cは、前記反射層をシリコンを含むガスと酸素を含むガスとを用いたプラズマCVD法により形成する工程であって、酸素を含むガスの流量が成膜開始時に比べ、成膜終了時に多くなるようにして形成することを特徴とする請求項4に記載の太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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