説明

太陽電池とその製造方法

【課題】伝播光と非伝播光を利用することで、高い光電変換効率を有する太陽電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の太陽電池は、光電変換層と、光入射面側電極層と、対向電極層と、を具備し、前記光入射面側電極層が前記層を貫通する複数の開口部を有し、かつ、その層厚が10nm以上200nm以下の範囲にあり、前記開口部の1つあたりの面積が80nm以上0.8μm以下の範囲にあり、前記光入射面側電極の開口率が10%以上66%以下の範囲にあり、前記光電変換層の、前記開口部の直下部分に凹部が形成されていることを特徴とする。この太陽電池は、特定の構造を有する光入射面側電極を作製した後に、さらにエッチングなどにより光電変換層を加工することにより製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝播光と非伝播光を利用し、高い光電変換効率を有する太陽電池、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池の光電変換効率を向上させる方法として、素子の光入射面における光入射損失を抑えることが検討されている。具体的には、電極として、ミクロンオーダーでパターン化された櫛形の金属電極や導電性透明酸化物薄膜電極を用い、さらに必要に応じて光電変換層表面を粗面化することで、光入射面における入射光の反射を抑える方法などが考えられている。これらの方法は、全て、光電変換に用いられるエネルギーを伝播光(Far−filed光)のみから得て、その光電変換効率を向上させることを目的とする方法である(例えば、特許文献1および2)。しかし、そのような光電変換効率の向上方法も、伝播光のみをエネルギー源としている以上、自ずと限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−37318号公報
【特許文献2】特開平8−191152号公報
【特許文献3】登録第4077312号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題を考慮してなされたもので、伝播光だけではなく、従来光電変換に利用されていなかった非伝播光を利用して、光電変換効率の高い太陽電池及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施態様による太陽電池は、少なくともp型半導体とn型半導体を含む光電変換層と、光入射面側電極層と、光入射面側電極とは反対側の面に形成された対向電極層と、を具備し、前記光入射面側電極層が前記層を貫通する複数の開口部を有し、かつ、その層厚が10nm以上200nm以下の範囲にあり、前記開口部の1つあたりの面積が80nm以上0.8μm以下の範囲にあり、前記光入射面側電極の総面積に対する前記開口部の総面積の割合である開口率が10%以上66%以下の範囲にあり、前記光電変換層の、前記開口部の直下部分に凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明の一実施態様による、前記の太陽電池の製造方法は、光電変換層を形成させる工程と、前記光電変換層の光入射面側に光入射面側電極層を形成させる工程と、前記光電変換層の光入射面と反対側面に対向電極層を形成させる工程と、を含み、前記光入射面側電極層を形成させる工程が、金属薄膜層を形成させる工程と、形成させようとする光入射面側電極の形状に対応した微細凹凸パターンを表面に有するスタンパーを準備する工程と、前記金属薄膜層の少なくとも一部に前記スタンパーを利用してレジストパターンを転写する工程と、前記レジストパターンをエッチングマスクとして前記金属薄膜層に開口部を形成させ、さらに前記光電変換層に凹部を形成させる工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の別の一実施態様による、前記の太陽電池の製造方法は、光電変換層を形成させる工程と、前記光電変換層の光入射面側に光入射面側電極層を形成させる工程と、前記光電変換層の光入射面と反対側面に対向電極層を形成させる工程と、を含み、前記光入射面側電極層を形成させる工程が、金属薄膜層を形成させる工程と、前記金属薄膜層の少なくとも一部の表面にブロックコポリマーを含む組成物を塗布してブロックコポリマー膜を形成させる工程と、前記ブロックコポリマーの相分離を起こさせることでドット状のミクロドメインを生成させる工程と、前記ミクロドメインのパターンをエッチングマスクとして前記金属薄膜をエッチングして開口部を有する光入射面側電極層を形成させ、さらに前記光電変換層に凹部を形成させる工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のさらに別の一実施態様による、前記の太陽電池の製造方法は、光電変換層を形成する工程と、前記光電変換層の光入射面側に光入射面側電極層を形成させる工程と、前記光電変換層の光入射面と反対側面に対向電極層を形成させる工程と、を含み、前記光入射面側電極層を形成させる工程が、前記金属薄膜層の少なくとも一部にレジスト組成物を塗布してレジスト層を形成させる工程と、前記レジスト層の表面に微粒子の単粒子層を形成させる工程と、前記単粒子層をエッチングマスクとして前記レジスト層をエッチングしてレジストパターンを形成させる工程と、前記レジストパターンの開口部に無機物質を充填して逆パターンマスクを形成させる工程と、前記逆パターンマスクをエッチングマスクとして前記金属薄膜層に開口部を形成させ、さらに前記光電変換層に凹部を形成させる工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明による太陽電池では、光電変換に利用する光として、伝播光(Far−filed光)だけでなく、近接場光(Near−filed光)も利用することによって、光電変換効率が改良される。さらには本発明による太陽電池は、光入射面にナノサイズの凹凸が形成されていることによって、表面の反射が防止されて、さらに光電変換効率が改良される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係わる太陽電池の斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係わる太陽電池の断面図。
【図3】本発明の一実施態様である太陽電池の動作原理を説明するための概念図。
【図4】本発明の実施形態に係わる太陽電池の凹部の断面構造を示す図。
【図5】本発明の一実施態様による太陽電池の製造方法を説明するための概念図。
【図6】本発明の一実施態様による太陽電池の製造方法を説明するための概念図。
【図7】本発明の一実施態様による太陽電池の製造方法を説明するための概念図。
【図8】実施例1の太陽電池の製造方法を説明するための概念図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
最初に、本発明の原理について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施態様による太陽電池の構造を示すものである。ここで、太陽電池は光入射面側電極101と対向電極102との間に光電変換層103が挟まれた構造を有している。このような用途に用いることができる光電変換層は種々のものが知られており、それらから任意のものを選択することができる、例えば、pn接合型、pin型などの光電変換層を用いることができる。ここで、本発明の一実施態様による太陽電池は、光入射面に設けられた光入射面側電極101が、金属薄膜に開口部104を有するメッシュ構造を有することを特徴のひとつとしている。
【0013】
図2は、図1に示されるような、本発明の一実施態様による太陽電池の垂直方向の断面図である。本発明による太陽電池は、光電変換層の開口部104直下部分に凹部201を有することを特徴の一つとしている。この構造は、後述するように光反射防止に寄与する。
【0014】
ここで、光入射面側電極101は金属からなるものであるため、図2に示すように、光電変換層が金属部分で被覆された部分では光が反射して透過せず、開口部のみで光が透過し、光が光電変換層に伝播するのが一般的である。すなわち、電極全体の面積に対する開口部の面積の割合に応じた光が光電変換層に伝播する。そして、この伝播した光の量に応じて電流が発生することが一般的に推定できる。
【0015】
しかしながら、驚くべきことに、光入射面側電極の構造を特定のものにすることで、光電変換層に伝播した光の量に応じた電流よりも、より多くの電流を発生させることができることを本発明者らは見出した。
【0016】
この現象は、以下のようなメカニズムによるものと考えられる。まず、すでに公知の事象として、微細開口を有する金属薄膜に光を照射した場合、その微細開口の直径が入射光の波長程度であると、表面プラズモンの励起が起こることが知られている。図3はこの様子を示す概念図である。すなわち、金属薄膜の受光面に光が照射されると、自由電子が水平方向に振動する。この自由電子の振動を金属薄膜の厚さ方向で比較すると、受光面に近いほど振動しやすい。このため、金属薄膜端部の上面側301に自由電子が局在しやすくなり、金属薄膜の端部に厚さ方向の電場302が発生する。その結果、この電場が光電変換層にまで浸透して、金属薄膜端部、すなわち開口部外縁部の直下部303の電場が増強される。
【0017】
すなわち、本発明の一実施態様による太陽電池は、メッシュ金属電極を光入射面側電極として用いることにより、金属電極の開口部を透過した光による光電変換に加え、金属電極の微細開口部末端部近傍の電場が増強されて、pn接合のキャリアが大量に励起されることによって光電変換が起こり、太陽電池の発電効率が向上していると考えられる。言い換えると、本発明の一実施態様によれば、光入射面側電極の金属部に照射されて光電変換層まで伝播しない光、すなわち近接場光によっても光電変換が行われるということができる。
【0018】
このような近接場光を光電変換に利用するためには、電極層が特定の構造を有することが必要である。まず、本発明で提案する光入射面側電極は開口部間に存在する金属の最小部分の距離の平均値が10nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。開口部の間の距離の平均値が200nmより大きい範囲では、双極子同士は相互作用をもたないため電場の強さは一定値となって電場増強効果が得られにくく、また、電極としての十分な導電性を得るという観点から開口部の間の距離は10nm以上であることが好ましいからである。
【0019】
また、光入射面側電極は、より多くの光を透過させるためには開口部の面積が多いほうが有利であるが、一方で光入射面側電極として導電性を高く維持するために、開口部の面積が少ない方が有利である。このような観点から、光入射面側電極層の総面積を基準とした開口部の総面積の割合、すなわち、開口率が10%以上66%以下の範囲にある必要があり、22%以上66%以下であることが好ましい。
【0020】
開口部間の距離が上記した範囲である場合、単位面積あたりの電場をより強くするために、端部の長さ、言い換えれば開口部外縁部の長さが長い構造の電極が好ましい。具体的には、開口部の形状が円形であり、かつその開口部が周期的に配置され、かつ開口部の直径が同じ場合には、開口部の間の距離が短いほうが開口部の数が多く、開口部外縁部の長さの合計も長くなり、電場増強効果が強い。一方、開口部の形状が円形であり、かつその開口部が周期的に配置され、かつ開口部の間の距離が同じ場合には、開口部の直径が小さいほうが単位面積当たりの開口部の数が多くなり、開口部外縁部の長さの合計も長くなり、電場増強効果が強いと言える。
【0021】
ただし、開口部の配列は必ずしも周期的である必要は無く、周期開口、擬周期開口、ランダム開口など、いずれの配置であっても本発明の効果は得られる。故に、本発明は開口部の配列の周期性を限定するものではない。また、開口部の形状も円形に限られない。むしろ、開口部面積が同じであっても、円形よりも星型やC字型などの形状であるほうが開口部の外縁部の長さが長くなるので、電場増強効果の点からは有利である。一方、開口部の形状が円形である場合には、電極の製造が容易になるという利点もある。
【0022】
上記した通り、電場増強効果は開口部の間の距離や、開口部の形状に依存するが、Finite Diffrence Time Domain法(FTDT法)によるシミュレーションの結果、開口部1つあたりの面積が80nm以上0.8μm以下の範囲にあることが必要であり、1000nm以上 0.03μm以下の範囲にあることが好ましい。また、開口部の形状が円形である場合、開口径(開口部の直径)は10nm以上1000nm以下が好ましく、40nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0023】
また、光入射面側電極の膜厚は、10nm〜200nmの間である必要がある。膜厚が10nmより小さいと、金属膜の抵抗率が高く、十分な導電性が確保できないために変換効率が低下するため好ましくない。一方、膜厚が200nmより大きいと、電場増強効果が光電変換層に十分及ばず、光電変換効率改良の効果が得られないことがあるので好ましくない。
【0024】
上記したような光入射面側電極の構造によって、光入射面側電極の端部(開口部の外縁部)の電場が増強されるが、その電場増強効果が空乏層に及ぶことによって光電変換効率の改良が達成される。このため、光吸収層と光入射面側電極との距離が短いことが必要である。具体的には、空乏層の少なくとも一部が、光入射面側電極と光電変換層との接触面から1μm以内の距離に配置されていることが好ましく、500nm以内の距離であることがより好ましい。ここで、空乏層とは光によって励起されて電荷分離により電子とホールが生成する領域である。この空乏層は、pn接合型光電変換層においてはpn接合界面の近傍、pin接合型光電変換層においてはi層を中心にp層およびn層に及ぶ領域に存在する。
【0025】
さらに、本発明の一実施態様による太陽電池は、光電変換層に凹部を有する。この凹部は、前記した光入射面側電極に設けられた開口部の直下に形成されている。その形状は特に限定されないが、例えば図4に示されるような断面構造を有することができる。まず、凹部を形成させる場合、比較的簡単に形成させることができるので、図4(a)のような柱状構造とすることが好ましい。このとき、開口部の形状が円状である場合には、この凹部は柱状構造となる。一方、この凹部を含んだ光入射面の凹凸構造が反射防止に寄与するため、反射防止効果が高くなるような構造を有する凹部も好ましい。このような観点からは、光入射面に平行な方向で屈折率に勾配を持たせるために、凹部の内側面が斜面を有することが好ましい。このため、凹部の形状は、図4(b)または(c)に示されるような、逆錐状、または逆錐台状であることが好ましい。この場合にも、開口部が円状であると、逆円錐状または逆円錐台状となる。
【0026】
また、反射防止効果をより強く発現させるために、凹部の深さを入射光の波長以下とあることが好ましい。ここで、太陽電池に照射する光の波長が限定されていない場合、例えば太陽光などを照射する場合には、光の波長範囲は広くなる。このような場合には、光電変換層において光電変換率が高い波長、言い換えると、光電変換層の分光感度特性を基準として凹部の深さを決定することが好ましい。より一般的には、800nm以下、好ましくは500nm以下である。
【0027】
以上、本発明の一実施態様による太陽電池の構造を、形状の観点から説明したが、このような構造を構成する材料は、従来知られている任意のものから選択して用いることができる。
【0028】
本発明において光入射面側電極を構成する金属は、任意に選択される。ここで金属とは、単体で導体であり、金属光沢を有し、延性があり、常温では固体である金属元素からなるもの、およびそれらからなる合金をいう。一実施形態では、金属電極を構成する素材のプラズマ周波数は、入射光の周波数より高いことが好ましい。また、用いようとする光の波長領域において光の吸収が少ないことが望ましい。このような材料として、具体的にはアルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、コバルト、クロム、銅、およびチタンなどが上げられ、このうちアルミニウム、銀、白金、ニッケル、またはコバルトが好ましい。しかしながら、前記入射光の周波数より高いプラズマ周波数を有する金属であれば、これらの限りではない。また、金属薄膜の形態としては、上記金属種の単層膜に限らす、複数の上記金属種からなる多層膜であっても本発明の効果を得ることができる。本発明においては、インジウムのようなレアメタルを用いる必要が無く、典型的な金属材料を用いることが可能である。
【0029】
光電変換層は、p型半導体とn型半導体から構成されるものが現在最も流通しており、安価で簡便な製造を行うためにはp型半導体とn型半導体から構成されることが好ましい。半導体の材料としては、入手が容易なシリコンを材料とすることが望ましく、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどを採用することができる。このようなシリコンからなる光電変換層のひとつとして、p型結晶シリコンとn型結晶シリコンとを順次積層して構成されたpn接合型光電変換層が挙げられる。ここで、p型/n型結晶シリコンは、それぞれ単結晶、多結晶、または微結晶のいずれであってもよい。しかしながら、一般に単結晶であると光電変換効率が高く、また多結晶であると生産コストが安価になるというメリットがある。また、p型アモルファスシリコンと、ドーピングされていないi型アモルファスシリコンと、n型アモルファスシリコンとを順次積層して構成されたpin接合型光電変換層を用いることもできる。このような光電変換層は、製造コストが安価であるほか、高温時に出力が落ちにくいという利点もある。
【0030】
また、光電変換層を構成する半導体の材料は、シリコンのみに限られず、GaAsやカッルコパライト系などの化合物半導体を用いることもできる。また、光電変換層の構造は、上記した積層構造に限らず、ヘテロ接合、微粒子により形成されるもの、タンデム型、ドット型、ジャンクション型などを採用することも可能であり、本発明において、光電変換層はその構造は限定されるものではない。
【0031】
また、対向電極は、その接触する半導体とオーミック接触をとることができる材料であれば任意のものを採用することが出来る。具体的には光入射面側電極に用いることができる材料を対向電極にも用いることができる。
【0032】
また、一般的に、反射防止膜や光電変換層裏面の形状工夫などによる、太陽電池の光電変換効率の改良が検討されている。本発明の一実施態様による太陽電池には、これらの改良を本発明による効果を損なわない限り、組み合わせることができる。
【0033】
次に、本発明の一実施態様である、太陽電池の製造方法について説明すると以下の通りである。
【0034】
本発明において製造される太陽電池は、光電変換層と、その光電変換層の表面に形成された光入射面側電極と、裏面に形成された対向電極とを具備している。これらを組み立てる順序は特に限定されず、
(1)光電変換層を形成させてから、その一方の面に光入射面側電極、そして反対側の面に対向電極を形成させる方法、
(2)光入射面側電極、または対向電極の上に、半導体を積層すること等により光電変換層を形成させ、さらに光電変換層の上に対向電極または光入射面側電極を形成させる方法、
のいずれであってもよい。
【0035】
また、本発明の一実施態様である太陽電池は、開口部の直下に凹部を有するが、この凹部を形成する時期も特に限定されない。すなわち、光電変換層上に光入射面側電極層を形成させ、その電極層をエッチングなどにより加工して開口部を形成させ、さらにエッチングにより光電変換層に凹部を形成させても、光電変換層に凹部を形成させてから、その凹部に対応する位置に開口部を有する電極層を形成させてもよい。しかし、より簡便であるので、前者の方法が好ましく用いられる。
【0036】
光電変換層は、用いる半導体の種類によって、任意の方法を用いて形成させることができる。例えば、p型またはn型の半導体基板に、不純物を部分的にドープしたり、ほかの半導体の層を蒸着などにより積層することなどにより形成させることができる。また、透明な基板上に電極層を積層し、その上にp型、n型またはi型の半導体層を積層することで形成させてもよい。
【0037】
さらには、本発明の実施態様による太陽電池は、光入射面側電極に開口部を有する点に特徴があるが、光入射面側電極の構造は、光電変換層の表面に金属薄膜層を形成させてから開口部を設けてもよいし、あらかじめ開口部を有する金属薄膜を光電変換層上に積層するのであってもよい。
【0038】
また、光入射面側電極に微細な開口部を形成する方法も任意の方法を用いることができる。例えば、もっとも一般的に知られている方法は、超微細構造を形成することができる電子ビーム露光装置などを用いてエッチングする方法などがある。しかしながら、このような方法によると、製造コストが比較的高くなるという懸念点がある。一方で、より安価で大面積の金属電極に微細な開口部を形成させることもできる。
【0039】
具体的には、
(A)電極のもととなる金属薄膜上にレジストを塗布してレジスト層を形成させ、
そのレジスト層の表面に微粒子の単粒子層を形成させ、
その単粒子層をエッチングマスクとして微細な開口部に対応するレジストパターンを形成させ、
そのレジストパターンの開口部に無機物質を充填して、逆パターンマスクを形成させ、
その逆パターンマスクを介して金属薄膜をエッチングして微細な開口部を形成させる方法、
(B)電極のもととなる金属薄膜上にブロックコポリマーを含む組成物を塗布して、ブロックコポリマー膜を形成させ、
ブロックコポリマーのドット状のミクロドメインを生成させ、
生成したミクロドメインのパターンを介して金属薄膜をエッチングして微細な開口部を形成させる方法、
(C)形成させようとする光入射面側電極の形状に対応した微細凹凸パターンを表面に有するスタンパーを準備し、
電極のもととなる金属薄膜上にそのスタンパーを利用してレジストパターンを転写し、
そのレジストパターンを介して金属薄膜にパターンを形成させる方法
などが挙げられる。
【0040】
これらの方法により、金属薄膜に開口部を形成させた後、さらにエッチングなどにより光電変換層に凹部を形成させることにより本発明の一実施態様である太陽電池を製造することができる。
【0041】
これらの方法を図を参照して説明すると以下の通りである。
【0042】
(A)微粒子をマスクとして用いる方法
本発明の一実施態様であるナノ粒子を用いた太陽電池の製造方法を図5を参照しながら説明する。
【0043】
図5(a)示すように、まず、半導体基板として単結晶シリコンからなるp型シリコン基板を用意する。ここでは、シリコン基板としてp型のものを用いる場合には、不純物としてボロンなどがドープされたものを用いることができる。なお、本発明においては、半導体基板として多結晶シリコンを用いてもよいし、不純物としてボロン以外の一般的に知られている不純物をドープしてもよい。
【0044】
次に、p型シリコン基板501の一方の主面にリン等のn型不純物元素を多く含むn層502を形成させる。ここでn層502は、n型不純物元素を拡散させる熱拡散法などにより形成させることができる。
【0045】
次いで、p型シリコン基板501の一方の面上に金属、例えばAu/Znを真空蒸着により製膜して対向電極層504を形成させる。このAu/Zn膜である対向電極層504は、対向電極と反射膜とをかねさせることもできる。
【0046】
この後に、太陽光の光入射面にあたるn層502上に、微細開口部を有する光入射面側電極505Aを作製する。
【0047】
まず、n層502上に、微細開口を有する光入射面側電極としてアルミニウムからなるナノメッシュ構造を有する光入射面側電極を作製する。ここでは、基板上に細密充填構造に配列された微粒子の単粒子層を形成させ、配列したナノ粒子をエッチングによって任意のサイズに縮小してドットパターンを形成する方法を用いる。この配列されたドット状パターンを金属薄膜505に転写することで、開口部を有する光入射面側電極505Aとして用いることができる。その光入射面側電極の具体的な作製方法を説明すると以下の通りである。
【0048】
まず、前述のシリコン基板n層の主面上にアルミニウム等を真空蒸着により製膜して、金属薄膜505を形成させた(図5(a))。
【0049】
次に、金属薄膜505上にレジスト組成物を塗布し、さら加熱して、熱硬化反応させる。これによりレジスト層506が得られる。
【0050】
さらに、このレジスト層506の表面を、反応性リアクティブエッチング(RIE)処理する。この処理により、レジスト層の表面が親水化され、以後の分散液塗布時の濡れ性を改善させることができる(図5(b))。言い換えると、表面の親水化された層は、この後にシリカ粒子を捕捉するトラップ層として機能する。このようなトラップ層は、レジスト層の表面に有機ポリマーを塗布することなどにより形成させることもできる。
【0051】
次に、例えば粒子径が200nmであるシリカ微粒子を含む分散液を、前記レジスト層が形成された基板上に塗布して分散液層509を形成させ、その後、室温冷却することでレジスト層が再度硬化し、微粒子最下層のみが基板表面に捕捉される(図5(d))。ここでは、微粒子としてシリカ微粒子を用いたが、後述するようなエッチングの速度差を達成できるものであれば、無機または有機の任意の微粒子を用いることができる。また、微粒子の大きさは目的とする光入射面側電極の形状に応じて選択されるが、一般的には60〜700nmのものが選択される。
【0052】
次に、シリカ微粒子単粒子膜に対して、エッチングを行う(図5(e))。このプロセスでシリカ微粒子がエッチングされ半径が小さくなることで、隣接していた粒子間に隙間が生じていく。エッチング条件は下地のレジスト層はほとんどエッチングされることがないものを選択する。そのようにエッチングの速度差があることで、シリカ微粒子のみをエッチングして粒子の間に隙間を形成させることができる。
【0053】
次に、残ったシリカ微粒子をエッチングマスクに用いて、下地の熱硬化性レジストをエッチングする。
【0054】
以上の結果、初期にシリカ微粒子があった部位に、アスペクト比の高い柱状のレジストパターン506Aが得られる(図5(f))。
【0055】
次に、スピンオングラス(以下、SOGという)の溶液を、前記柱状レジストパターン上に塗布し、加熱する。これによりレジストパターンの間の隙間にSOGが充填される。
【0056】
次に、柱状レジストパターン上のSOGおよびシリカ微粒子をエッチングにより除去し、柱状レジストパターン506Aとその隙間にSOG509が充填された構造を形成させる(図5(g))。
【0057】
次に、残った柱状の熱硬化性レジスト506Aをエッチングにより除去する。この工程によって、前記柱状レジストパターンを反転した構造のSOGマスク509Aを金属薄膜505上に作製する(図5(h))。
【0058】
次に、金属薄膜505を前記SOGマスク509Aを介して、エッチングする。以上の工程によって、前記n層状に、微細な開口を有する光入射面側電極505Aを形成させる。
【0059】
さらに、SOGマスク509Aまたは光入射面側電極505Aをマスクとして光電変換層をエッチングし、SOGマスク509Aを除去することにより、本発明の一実施態様である太陽電池を得ることができる(図5(i))。
【0060】
(B)ブロックコポリマーを用いた方法
本発明の一実施態様であるブロックコポリマーを用いた太陽電池の製造方法を図6を参照しながら説明する。
【0061】
まず、p型シリコン基板601の一方の表面に、n層602を形成させて光電変換層603を形成させる。次いで、p型シリコン基板の上に金属を真空蒸着により製膜して対向電極層604を形成した。
【0062】
次いで、光電変換層603のn層の上に、レジスト組成物を塗布したのち、加熱により熱硬化反応させてレジスト層605を形成させる(図6(a))。
【0063】
次に、SOG溶液を、前記レジスト層を形成した基板上に塗布したのち、加熱によりSOG層606を形成させる(図6(b))。
【0064】
次に、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレートのジブロックコポリマーと、ポリメチルメタクリレートのホモポリマーとを含むブロックコポリマー溶液を準備する。この溶液を前記の基板上に塗布してブロックコポリマー層607を形成させる。さらに加熱することにより、ジブロックコポリマーを相分離させ、ポリメチルメタクリレートのマトリックス607A中にポリスチレンのドット状のミクロドメイン607Bが形成されるモルフォロジーが得られる(図6(c))。ここではポリスチレン−ポリメチルメタクリレートのほかのブロックコポリマーとして、芳香環ポリマーとアクリルポリマーの組み合わせから構成されるものが望ましい。その理由として、この2種のポリマーの間には、適当なガス種を用いたドライエッチング速度の違いがあるからである。本原理については、特許文献3に開示されている。芳香環ポリマーとして、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリヒドロキシスチレン、これらの誘導体が挙げられる。アクリルポリマーの例として、ポリメチルメタクレレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヘキシルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート、ポリフェニルメタクリレート、ポリシクロヘキシルメタクリレートなどが挙げられ、これらの誘導体が含まれる。また、これらのメタクリレートの代わりに、アクリレートを用いても同様の性質を示す。これらの中では、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレートのブロックコポリマーが、合成が容易であり、かつ各ポリマーの分子量の制御が容易な点から好ましいといえる。
【0065】
次に、ジブロックコポリマー層607をエッチングして、ブロックコポリマーのポリメチルメタクリレートのマトリックス607Aを選択的に除去する。このとき、ポリスチレンのドット部607Bはエッチングされない条件を選択する。この処理により除去されたポリメチルメタクリレートのマトリックス部分にSOG層606が露出する(図6(d))。次に、残ったポリスチレンをマスクに用いてSOG層606をエッチングする。このエッチングにより、露出したSOG層606部が選択的にエッチングされ、ポリスチレンのドット形状がSOG層に転写されて、ブロックコポリマーの相分離に応じたSOGのドットパターン606Bが形成される(図6(e))。ついで、このSOGドットパターン606Bをマスクとして、下地のレジスト層605をエッチングして、柱状メッシュ上のパターン605Bを形成させる(図6(f))。
【0066】
できあがった柱状のパターンに対して真空蒸着法でアルミニウムなどの金属を蒸着し、その後、柱状のパターン部位を除去することで開口部を有する光入射面側電極608が形成する(図6(g))。続いて、形成された開口部の直下部をさらにエッチングすることにより、開口部直下に凹部構造を有する、本発明による太陽電池(図6(h))を製造することができる。
【0067】
尚、ここで述べた製造方法はブロックコポリマーパターンを用いてリフトオフ法とエッチングにより本発明に係わる太陽電池を製造する方法であるが、ブロックコポリマーパターンを用いてエッチングのみのプロセスによっても製造することが可能である。このような方法の詳細については実施例1において例示する。
【0068】
(C)ナノインプリントによる方法
本発明の一実施態様であるナノインプリントを用いた太陽電池の製造方法を図7を参照しながら説明する。
【0069】
まず、(A)と同様の方法により、p型シリコン基板701の一方の表面に、n層702を形成させて光電変換層703を形成させる。さらに、光電変換層の上に金属薄膜を製膜して対向電極層704を形成した。この光電変換層703のn層の上に、アルミニウムを真空蒸着により製膜して、金属薄膜705を形成させる(図7(a))。
【0070】
レジスト組成物を金属薄膜705上に塗布し、加熱により熱硬化反応させ、レジスト層706を形成させる(図7(b))。
【0071】
このレジスト層706に、鋳型であるスタンパー707を用いて本発明において特定された開口構造に対応した微細凹凸パターンを転写する。
【0072】
スタンパーは、例えば石英上に電子線リソグラフィーにて所望の構造を形成させることにより製造することができる、そのほか、本発明で提案する太陽電池の製造方法では、スタンパーの材料及びスタンパーの微細凹凸構造形成手法は限定されない。例えば、スタンパーを前述した微粒子を用いた方法や、ブロックコポリマーを用いた方法により形成することも可能である。
【0073】
前記レジスト層706に前記スタンパー707を、必要に応じて加熱しながら押し付け、放冷後、離型することでレジスト層706にスタンパーの逆パターンを転写させる。これにより、柱状突起706Aを有する開口レジストパターンが形成される(図7(d))。
【0074】
なお、本発明は、熱ナノインプリントに限定されるものではなく、光インプリントやソフトインプリントなど、種々のインプリント技術を用いて同様のパターンを形成しても汎発明が提供する太陽電池の機能を損なうものではない。
【0075】
このレジストパターンマスクとして、金属薄膜705のエッチングを行って金属薄膜に開口部を形成させ、さらにレジストパターンマスク706Aまたは光入射面側電極705Aをマスクとして光電変換層703をエッチングし、レジストパターンマスク709Aを除去することにより、本発明の一実施態様である太陽電池を得ることができる(図7(d))。
【0076】
なお、これらの(A)〜(C)の方法のほか、金属薄膜を形成させる前に、光電変換層の上に直接レジストや無機物質によるパターンを形成させ、その隙間に金属を蒸着などにより堆積させて光入射面側電極とすることもできる。この場合には、レジストや無機物質によるパターンをエッチングやアッシングなどにより除去し、さらに開口部の直下部をエッチングなどにより除去することで本発明の一実施態様である太陽電池を製造することができる。
【0077】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)
本発明の一実施態様である太陽電池の作製を行った。この作製方法を図8を参照しながら説明すると以下の通りである。ここで光電変換層としては単結晶シリコンを用いた。
【0079】
まず、半導体基板としてp型の単結晶シリコンからなるp型シリコン基板を用意した。ここでは、ボロンがドープされた、チョクラルスキー法で製造されたシリコンインゴッドをマルチワイヤソーでにスライスして、厚さ230μmの、比抵抗が約2Ω・cmのシリコン基板を作製し、さらに機械研磨により70μmの厚さとした後、外径加工を行なうことによって、一辺5cmの正方形の表面を有する板状p型単結晶シリコンからなるp型シリコン基板801を得た。
【0080】
次に、p型シリコン基板801の一方の主面にリン等のn型不純物元素を多く含むn層802を形成させる。ここでn層802は、オキシ塩化リン(POCl)を含む高温ガス中にp型シリコン基板を設置し、p型シリコン基板の一方の主面に、リン等のn型不純物元素を拡散させる熱拡散法により形成することができる。なおn層を熱拡散法により形成する場合には、p型シリコン基板の両面および端部にもn層が形成されることがあるが、この場合には、必要なn層の表面を耐酸性樹脂で被覆した後にフッ硝酸溶液中にp型シリコン基板を浸漬することによって、不要なn層を除去することができる。本例では、このp型シリコン基板801に対し、POClガス雰囲気中において、850℃の温度で15分間の条件で熱拡散法により、p型シリコン基板801にn層802を形成させた。ここで、n層のシート抵抗値は約50Ωであった。
【0081】
続いて、n層802上に耐酸性樹脂層を形成させた後に、p型シリコン基板801をフッ硝酸溶液に15秒間浸漬することによって、耐酸性樹脂層が形成されていない部分のn層を除去した。その後、耐酸性樹脂層を除去することによって、p型シリコン基板の一方の主面のみにn層を形成させ、光電変換層803を得た。これにより、p型シリコン基板の厚みは50μmとなった。
【0082】
次いで、p型シリコン基板801の主面上にAu/Zn膜を真空蒸着により製膜して対向電極層804を形成させた。続いて、光電変換層803のn層上に、真空蒸着によりアルミニウムを蒸着させ、30nmの厚みを有する金属薄膜805を形成させた。
【0083】
この後に、太陽光の光入射面にあたる金属薄膜805に開口部、光電変換層803に凹部を形成する。
【0084】
まず、熱硬化性レジスト(THMR IP3250(商品名)、東京応化工業株式会社製)を乳酸エチルで重量比1:3に希釈した溶液を、基板の光入射面上に回転塗布で塗布したのち、無酸化オーブンにて窒素雰囲気下250℃でさらに1時間加熱し、熱硬化反応させることでレジスト層806を形成した(図8(a))。
【0085】
次に、SOG溶液(SOG−5500(商品名)、東京応化工業株式会社製)を乳酸エチルで重量比1:3に希釈した溶液を、前記レジスト層806上に回転塗布で塗布したのち、さらに、無酸化オーブンにて窒素雰囲気下250℃でさらに1時間加熱しすることでSOG層807を形成した(図8(b))。
【0086】
次に、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレートのジブロックコポリマーの2wt%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液と、ポリメチルスチレンのホモポリマーの2wt%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液とを8:2の割合で混合しブロックコポリマー溶液を得た。この溶液を前記のSOG層807上に回転塗布により塗布した。さらに、無酸化オーブンにて窒素雰囲気下250℃でさらに8時間加熱した。用いたジブロックコポリマーの分子量は、ポリスチレン部が166000g/mol、ポリメチルメタクリレート部が42000g/molであり、約30〜40nm径のポリメチルメタクリレートのドット状ミクロドメイン808Aがポリスチレンのマトリックス808B中に形成される(図8(c))。
【0087】
次に、ジブロックコポリマーに、O:30sccm、100mTorr、RFパワー100Wで、RIEを行った。このRIE条件では、ブロックコポリマーのポリメチルメタクリレートのドット部が選択的に除去されるが、ポリスチレンはエッチングされない。RIEは、ポリメチルメタクリレートを完全にエッチングする条件でおこない、この部分のSOG層が完全に露出した(図8(d))。次に、残ったメッシュ状のポリスチレン808Bをマスクに用いてSOG層807のRIEをCF:10sccm、CHF3:20sccm、5mTorr,100Wの条件で行った。このエッチングにより、ポリスチレンのメッシュ形状がSOG層に転写される(図8(e))。ついで、このSOG層808Bをマスクとして、O−RIEにより、光入射面側電極層の表面が露出するまでレジスト層806をエッチングした。この結果、金属薄膜805上に直径30〜40nmの開口部をもつメッシュ状のレジストマスク807Bが得られた(図8(f))。
【0088】
次に、得られたレジストマスク807Bを用いて、塩素ガスを用いたICP(誘導結合プラズマ)−RIEにより金属薄膜805及び光電変換層803内部までエッチングした(図8(g))。このとき、RIEは、Ar:25sccm、5mTorr、ICPパワー50W、Biasパワー150Wの条件で1分間スパッタエッチングを行い、金属薄膜表面のAlを除去したのち、連続して、Cl:2.5sccm、Ar:25sccm、5mTorr、ICPパワー50W、Biasパワー150Wで行なった。このように5mTorrという低圧条件でエッチング行なうことで、異方性エッチングが促進され垂直性の高いエッチングが可能となり、光電変換層803に円柱状の凹部が形成することが可能となる。
【0089】
その後、Oプラズマによるアッシング処理をすることで、所望の開口部を有する光入射側電極層と凹部を有する光電変換層を具備する太陽電池が得られた(図8(h))。
【0090】
得られた開口部は、平均開口部径が約40nmであり、開口部面積比率が約35%であった。また、光電変換層に形成された凹部の深さは光入射面側電極と光電変換層との界面から250nmであった。
【0091】
上記のようにして作製した太陽電池にAM1.5の擬似太陽光を照射した際の室温における光電変換効率を評価した。その結果、変換効率は7.5%と良好な値を示した。また同時に、アルミニウム以外の金属材料を用いて光入射面側電極を形成させた太陽電池についても、同様の検討を行った結果、本発明の効果が得られることが確認された。
【0092】
比較例1−1、1−2
実施例1の比較として、比較例1−1、および1−2を準備した。
比較例1−1は、実施例1に対して、膜厚、平均開口率、光電変換層の凹部高さは等しいが、平均開口径がおよそ50倍の2μmである光入射面側電極を有する太陽電池である。開口部の開口径が大きいので、作製にはフォトリソグラフィー技術を用いた。
【0093】
比較例1−2は、実施例1に対して膜厚、平均開口率および平均開口径等しいが、光電変換層に凹部が形成されていないものを用意した。方法は実施例1の製造方法で、光電変換層のエッチングを行わないことで製造した。
【0094】
これらの比較例1−1および1−2について、実施例1と同様の評価を行った結果、比較例1−1で得られた変換効率は4.1%、比較例1−2の得られた変換効率は7.1%であった。
【0095】
実施例1の結果と比較することにより、平均開口径を微細にすることで83%、光電変換層に凹部を設けることで8%の変換効率の向上が認められた。
【0096】
実施例2
本例においては、実施例1と同様の光電変換層に対し、ナノ粒子のパターンを用い、金属薄膜中に開口部を、光電変換層に凹部を形成した。本例では図5に対応する製造方法を用いた。
【0097】
まず、実施例1と同様に、真空蒸着により、光電変換層のp型シリコン基板主面上に対向電極504(Au/Zn)を、n層の主面上に金属薄膜505(アルミニウム、厚さ50nm)を形成させた(図5(a))。
【0098】
続いて、i線用ポジ型熱硬化性レジスト(THMR IP3250(商品名)、東京応化工業株式会社製)を乳酸エチルで1:1に希釈した溶液を金属薄膜505上に回転塗布を行った。ホットプレート上で110℃で90秒間加熱したのち、無酸化オーブンにて窒素雰囲気下270℃でさらに1時間加熱し、熱硬化反応させた。得られたレジスト層506の膜厚はおよそ240nmであった。
【0099】
さらに、このレジスト層506に対し、O:30sccm、100mTorr、RFパワー100Wで、RIEを行い、レジスト層506の表面を親水化させることでトラップ層507を形成した(図5(b))。
【0100】
次に、粒子径が200nmであるシリカ微粒子を含む分散液(PL−13(商品名)、扶桑化学工業株式会社製)をアクリルポリマーを含む組成物にて5wt%に希釈し、1μmメッシュのフィルターでフィルタリングを行って、塗布用のシリカ微粒子分散液509を得た。この溶液を、前記トラップ層507上に回転塗布を行ったのち(図5(c))、無酸化オーブンにて窒素雰囲気下150℃でさらに1時間加熱し、アニール処理を行った。その後、室温冷却することで、前記親水化処理したレジスト層上にシリカ微粒子の規則配列単粒子層が得られた。(図5(d))。
【0101】
次に、シリカ単粒子膜に対して、CF:30sccm、10mTorr、RFパワー100Wで、RIEを行うことによりシリカ粒子のシュリンク(収縮)処理を行なった(図5(e))。この工程の後、電子顕微鏡にて観測したところ、シリカ微粒子508Aの粒子系はおよそ120nm、粒子間の隙間はおよそ80nmであった。さらに、シリカ微粒子508Aをエッチングマスクに用いて、下地の熱硬化性レジストをO:30sccm、2mTorr、RFパワー100Wの条件RIEを行うことで、アスペクト比の高い柱状のレジストパターン506Aが得られた(図5(f))。
【0102】
次に、SOG(SOG−5500(商品名)、東京応化工業株式会社製)を乳酸エチルで14wt%に希釈した溶液を0.3μmメッシュのフィルターによるフィルタリングを行って、回転塗布を行った。これによりレジストパターンの間の隙間にSOGが充填される。この後、ホットプレート上で110℃で90秒間加熱し、さらに、無酸化オーブンにて窒素雰囲気下250℃でさらに1時間加熱した。次に、前記工程によって形成されたSOG層および前記SOG層中に含有される微細化されたシリカ微粒子を、CF:30sccm、10mTorr、RFパワー100Wの条件でRIEを行った。この処理によって柱状レジストパターン上のSOGおよびシリカ微粒子が除去され、柱状レジストパターン506Aとその隙間にSOG509が充填された構造形成される(図5(g))。
【0103】
次に、残った柱状の熱硬化性レジスト506AをO:30sccm、10mTorr、RFパワー100WでRIEを行った。この工程によって、前記柱状レジストパターンを反転した構造のSOGマスク509Aを金属薄膜505上に作成した(図5(h))。
【0104】
次に、金属薄膜505を前記SOGマスク509Aを介して、実施例1と同様の条件でICP−RIEエッチングし、金属薄膜に開口部505Aを形成し、されにエッチングを続けることで光電変換層503に凹部を形成した。ついで、残ったSOGマスク509AをRIEにより除去することで太陽電池を製造した(図5(i))。
【0105】
製造した太陽電池は、厚み50nm、平均開口径110nm、平均開口率30%の開口を有するアルミニウムからなるメッシュ構造を有する表面電極505Aを具備しており、光電変換層に形成された凹部の深さは光入射面側電極と光電変換層との界面から250nmであった。
【0106】
実施例2で作製した太陽電池の光電変換効率を評価した結果、光電変換効率は6.7%と良好な値を示した。また、アルミニウム以外の金属材料を光入射面側電極の材料として用いた場合についても、同様の検討を行った結果、本発明の効果が得られることが確認された。
【0107】
比較例2−1、
比較例として、実施例2に対して光照射側電極層の膜厚、平均開口率および平均開口径等しいが、光電変換層に凹部が形成されていないものを用意した。製造方法は実施例2と同様の製造方法で、ただし光電変換層のエッチングを行わないことで製造した。
【0108】
実施例1と同様の評価を行った結果、比較例2−1で得られた変換効率は6.1%であり、実施例2の太陽電池は、光電変換層に凹部を設けることにより、およそ10%の変換効率が改良されることが確認された。
【0109】
実施例3
本例では、ナノインプリント法を用いて本発明に係わる太陽電池を製造した。本例では図7に対応する製造方法を用いた。
【0110】
まず、実施例1と同様に真空蒸着により、シリコン基板のp型シリコン基板主面上に対向電極704(Au/Zn)を、n層の主面上に金属薄膜705(アルミニウム、厚さ50nm)を形成させた(図7(a))。
【0111】
続いて、i線用ポジ型熱硬化性レジスト(THMR IP3250(商品名)、東京応化工業株式会社製)を乳酸エチルで1:2に希釈した溶液を金属薄膜705上に回転塗布を行ったのち、ホットプレート上において110℃で90秒間加熱し、熱硬化反応させ、レジスト層706を形成させた(図7(b))。膜厚はおよそ150nmであった。
【0112】
このレジスト層706に、鋳型であるスタンパー707を用いて本発明において特定された開口構造に対応した微細凹凸パターンを転写する。
【0113】
用いたスタンパーの材質は石英であり、深さ120nm、直径130nmのホールが200nm周期の最密充填配列で並んだ表面構造を有するものを準備した。この微細なパターンは電子線リソグラフィーによりパターニングされたものである。
【0114】
離型用処理として、前記スタンパー表面をパーフルオロポリエーテル等のフッ素系離型剤でコーティングし、スタンパーの表面エネルギーを低くすることで離型性を向上させた。
【0115】
前記レジスト層706に前記スタンパー707を、ヒータープレートプレスN4005−00型(商品名、エヌピーエー製)を用いて、128℃、圧力60kNにて押し付け、1時間かけて室温に戻し、垂直に離型することでレジスト層に鋳型の反転パターンを転写した。これにより、直径130nmの柱状突起706Aが周期的に配列した構造を有する周期開口レジストパターンが作成された(図7(d))。
【0116】
このレジストパターンをエッチングマスクとして、前記金属薄膜705および前記光電変換層703のエッチングを実施例1と同様のICP−RIE条件で行った。
以上の工程によって、厚み30nm、平均開口径130nm、平均開口率35%の開口を有するアルミニウムからなるナノメッシュ構造を有する光入射面側電極705Aを得た。また、光電変換層に形成された凹部の深さは光入射面側電極と光電変換層との界面から250nmであった。
【0117】
上記のようにして作製した太陽電池の変換効率を実施例1と同様に評価した。その結果、変換効率は7.3%と良好な値を示した。また同時に、アルミニウム以外の金属材料を光入射面側電極の材料として用いた場合についても、同様の検討を行った結果、本発明の効果が得られることが確認された。
【0118】
比較例3−1
比較例として、実施例3に対して、光入射側電極層の膜厚、平均開口率および平均開口径等しいが、光電変換層に凹部が形成されていないものを用意した。製造方法は実施例3と同様の製造方法で、光電変換層のエッチングを行わないことで製造した。
【0119】
実施例1と同様の評価を行った結果、比較例3−1の太陽電池で得られた変換効率は6.4%であり、光電変換層に凹部を設けることで14%の変換効率の向上が認められた。
【0120】
以上の例により、金属薄膜の開口部付近で発生する非伝播光の吸収、および光電変換層に凹部を設けることによる伝播光の吸収を高め、変換効率を向上させることが可能となる。また、ブロックコポリマーを用いた方法、ナノ粒子を用いた方法、およびナノインプリントによる方法によって、本発明に係わる構造を有する太陽電池を製造することが可能である。また、これらの製造方法に限らず、例えばアルミナ陽極酸化法など、本発明に関わる所望の構造が得られるような微細加工技術により製造された太陽電池であっても、本発明による効果を得ることができる。
【0121】
実施例4
本例ではGaAsから構成される太陽電池を製造した。
まず、p型GaAs基板上に有機金属気相成長法(MOCVD)によりn型GaAsをエピタキシャル成長させることで光電変換層を得た。その後、真空蒸着によりp型GaAs側にAu/Au−Zn薄膜を形成し、窒素雰囲気下450℃、30分間アニールすることで対向電極を形成した。次いで、n型GaAs面にAuを真空蒸着により30nm形成することで金属薄膜層を形成した。
【0122】
次に、実施例2と同様に、ナノ粒子パターンを用いて金属薄膜に開口部、さらに光電変換層に凹部を形成した。Auは化学安定性が高いため、ICP−RIEではなくイオンミリングによる物理的なエッチングでAu金属薄膜中に開口部を形成した。金属膜に開口部を形成した後、ICP−RIEにより光電変換層に凹部を形成した。
【0123】
本実施例で作製した太陽電池の光入射面側電極は、厚み30nm、平均開口径110nm、平均開口率30%の開口を有するAu金属薄膜であり、光電変換層としては、光入射面側電極と光電変換層との界面からの深さ350nmの凹部が形成されたものであった。
【0124】
上記のようにして作製した太陽電池の変換効率を実施例1と同様に評価した。その結果、変換効率は6.7%と良好な値を示した。また同時に、アルミニウム以外の金属材料を光入射面側電極の材料として用いた場合についても、同様の検討を行った結果、本発明の効果が得られることが確認された。
【0125】
比較例4−1、4−2
実施例4の比較サンプルとして、比較例4−1、および4−2を準備した。
比較例4−1は、実施例4に対して膜厚、平均開口率、光電変換層の凹部高さは等しいが、平均開口径がおよそ50倍の2μmである光入射面側電極を有する太陽電池である。開口部および凹部はフォトリソグラフィーにより開口部形状のパターニングを行った後、エッチングを行うことで形成した。
【0126】
比較例4−2は、実施例4に対して膜厚、平均開口率および平均開口径等しいが、光電変換層に凹部が形成されていないものを用意した。方法は実施例4の製造方法で、光電変換層のICP−RIEを行わないことで製造した。
【0127】
実施例1と同様の評価を行った結果、比較例4−1で得られた変換効率は4.1%、比較例4−2の得られた変換効率は6.3%であった。実施例4の結果と比較することで、開口部の平均開口径を微細にすることで63%の向上が、光電変換層に凹部を設けることで6%の変換効率の向上があることが認められた。
【0128】
このように本発明に係わる太陽電池においては、シリコンやGaAsなど公知の光電変換材料であれば適用することが可能である。
【符号の説明】
【0129】
101 光入射面側電極
102 対向電極
103 光電変換層
104 開口部
105 凹部
301 光入射面側電極層の端部
302 電場
501 p型半導体
502 n
503 光電変換層
504 対向電極
505 金属薄膜
505A 光入射面側電極
506 レジスト層
507 トラップ層
508 シリカ微粒子
509 スピンオングラス(SOG)
601 p型シリコン基板
602 n
603 光電変換層
604 対向電極層
605 レジスト層
606 SOG層
607 ブロックコポリマー層
607A ポリメチルメタクリレートのマトリックス
607B ポリスチレンのドット状のミクロドメイン
708 光入射面側電極
706 レジスト層
707 スタンパー
801 p型シリコン基板
802 n
803 光電変換層
804 対向電極
805 金属薄膜
806 レジスト層
807 SOG層
808A ポリメチルメタクリレートのドット状のミクロドメイン
808B ポリスチレンのマトリックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともp型半導体とn型半導体を含む光電変換層と、光入射面側電極層と、光入射面側電極とは反対側の面に形成された対向電極層と、を具備し
前記光入射面側電極層が前記層を貫通する複数の開口部を有し、かつ、その層厚が10nm以上200nm以下の範囲にあり、
前記開口部の1つあたりの面積が80nm以上0.8μm以下の範囲にあり、
前記光入射面側電極の総面積に対する前記開口部の総面積の割合である開口率が10%以上66%以下の範囲にあり、
前記光電変換層の、前記開口部の直下部分に凹部が形成されている
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
空乏層の少なくとも一部が、前記光入射面側電極と前記光電変換層との接触面から1μm以内の距離に配置されている、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記凹部の形状が、円柱状、逆円錐状、または逆円錐台状のいずれかである、請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記凹部の深さが、入射光の波長以下である、請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記光電変換層が、少なくとも単結晶シリコン、多結晶シリコン、あるいはアモルファスシリコンを含む、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記光入射面側電極層の材料が,アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、コバルト、クロム、銅、およびチタンからなる群から選択される、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項7】
光電変換層を形成させる工程と、
前記光電変換層の光入射面側に光入射面側電極層を形成させる工程と、
前記光電変換層の光入射面と反対側面に対向電極層を形成させる工程とを含み、前記光入射面側電極層を形成させる工程が、
金属薄膜層を形成させる工程と、
形成させようとする光入射面側電極の形状に対応した微細凹凸パターンを表面に有するスタンパーを準備する工程と、
前記金属薄膜層の少なくとも一部に前記スタンパーを利用してレジストパターンを転写する工程と、
前記レジストパターンをエッチングマスクとして前記金属薄膜層に開口部を形成させ、さらに前記光電変換層に凹部を形成させる工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項8】
光電変換層を形成させる工程と、
前記光電変換層の光入射面側に光入射面側電極層を形成させる工程と、
前記光電変換層の光入射面と反対側面に対向電極層を形成させる工程とを含み、前記光入射面側電極層を形成させる工程が、
金属薄膜層を形成させる工程と、
前記金属薄膜層の少なくとも一部の表面にブロックコポリマーを含む組成物を塗布してブロックコポリマー膜を形成させる工程と、
前記ブロックコポリマーの相分離を起こさせることでドット状のミクロドメインを生成させる工程と、
前記ミクロドメインのパターンをエッチングマスクとして前記金属薄膜をエッチングして開口部を有する光入射面側電極層を形成させ、さらに前記光電変換層に凹部を形成させる工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記ブロックコポリマー膜と前記金属薄膜の間に犠牲層としての中間マスク層を用いることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
光電変換層を形成する工程と、
前記光電変換層の光入射面側に光入射面側電極層を形成させる工程と、
前記光電変換層の光入射面と反対側面に対向電極層を形成させる工程とを含み、前記光入射面側電極層を形成させる工程が、
前記金属薄膜層の少なくとも一部にレジスト組成物を塗布してレジスト層を形成させる工程と、
前記レジスト層の表面に微粒子の単粒子層を形成させる工程と、
前記単粒子層をエッチングマスクとして前記レジスト層をエッチングしてレジストパターンを形成させる工程と、
前記レジストパターンの開口部に無機物質を充填して逆パターンマスクを形成させる工程と、
前記逆パターンマスクをエッチングマスクとして前記金属薄膜層に開口部を形成させ、さらに前記光電変換層に凹部を形成させる工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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