説明

太陽電池に用いられる光線透過率を最適化する被覆されたガラス物品及びその製造方法

【課題】太陽電池の構成要素としての使用に適した被覆された物品を提供する。
【解決手段】特に太陽電池の構成要素としての使用に適した、多層積層膜が、透明な絶縁性基板上に積層される。前記多層積層薄膜は、前記絶縁性基板上に積層された2.0未満の屈折率を有する透明な導電性金属酸化物層と、前記導電性金属酸化物層上に積層された2.3〜3.5の屈折率を有する光線透過率最適化中間層と、前記光線透過率最適化中間層上に積層された少なくとも4.5の屈折率を有するシリコン層とを含む。前記積層膜は、任意の適切な方法によって積層させることができるが、各層を大気圧化学気相積層によって積層させることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の構成要素としての使用に適した被覆されたガラス物品に関する。
【背景技術】
【0002】
非晶質シリコン太陽電池は、電卓や腕時計などの民生品から電力供給に至るまで、ますます幅広い用途で使用されている。一般に、非晶質シリコン太陽電池は、ガラス基板/透明導電膜/非晶質シリコン膜/金属電極膜を含む多層構造を有する。このような太陽電池に入射した太陽光は、ガラス基板面から透明導電膜を通過して非晶質シリコン膜に入る。したがって、前記太陽電池の良好な性能のためには、ガラス基板と透明導電膜は、高い透過率を有する必要がある。
【0003】
前記太陽電池を電力供給に使用する場合は、太陽放射線が入射する面積が広い必要がある。そのため、このような太陽電池では、ガラス基板としては、フロートプロセスで製造した安価なソーダ石灰ガラス(アルカリ含有ガラス)がよく使用される。SiO(シリコン酸化物)薄膜が、ガラス基板から当該多層構造の積層膜における他の構成要素へのアルカリイオンの移動を防止するためのバリア膜としてよく使用される。このような太陽電池を電力供給に使用する場合は、CVDによって積層させたSnO膜も、比較的安価であり、大量生産に非常に適しており、かつ、スパッタリングや真空蒸着によって積層されるSnO膜よりも接着強度が高いという理由により、よく使用される。
【0004】
したがって、電力供給用の非晶質シリコン太陽電池では、パネル面積が広いため、透明導電膜の電気抵抗を減少させることが重要である。特に、比較的安価なSnOから作成された透明導電膜は、SnOに適切な不純物ドープすること、及びSnO被膜の厚さを増加させることによって、導電膜全体の電気抵抗が減少するように作成される。
【0005】
ソーダ石灰ガラス上に、SnOの連続的なアルカリバリア膜とSnOの透明導電膜とをこの順で連続して積層させて二層被膜を形成したガラス基板について、高温及び高湿度(例えば、80℃、100%RH)で促進試験を行った。促進試験の結果、6000Å以上の厚さを有する透明導電膜に、電流の流れを妨げる細い亀裂が形成されたのが観察された。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、太陽電池(特に、非晶質シリコン太陽電池)の構成要素として特に適することが見いだされた被覆されたガラス物品に関する。
【0007】
本発明に係る被覆されたガラス物品は、透明な絶縁性基板と、前記絶縁性基板上に積層された透明な導電性金属酸化物層とを含む。前記導電性金属酸化物層は、2.0未満の屈折率を有する。前記導電性金属酸化物層上には、2.3〜3.5の屈折率を有する光線透過率最適化中間層(light transmittance optimizing interlayer)が積層される。前記光線透過率最適化中間層上には、少なくとも4.5の屈折率を有するシリコン層が積層される。随意的に、1つ以上の層の色抑制膜が、前記透明な導電性金属酸化物層の積層の前に、前記絶縁性基板上に積層される。
【0008】
前記積層膜の各層は、任意の適切な方法によって、好ましくはフロートガラス製造プロセス中にオンラインで、最も好ましくは前記プロセス中に大気圧化学気相成長法(atmospheric chemical vapor deposition)によって積層することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
太陽電池の技術分野における多くの当業者は、太陽電池の太陽放射線を電気エネルギーに変換する効率を向上させること、及び、従来の電気出力の方法よりも電気エネルギーの生成コストを向上させることを目的としている。
【0010】
改良された太陽電池を作成する上で直面する問題は、導電率が高い、かつ太陽放射線の透過率が高い構造の製造である。この問題は、いくつかある特徴の中で特に導電性金属酸化物層の厚さが比較的薄いという特徴を有する積層膜の形成することにより解決することができる。しかし、この方法には、上述したように、導電性金属酸化物層に電流の流れを阻害する亀裂が生じる可能性があるという欠点がある。導電性金属酸化物層を厚くして約6,000〜10,000Åにすると、太陽放射線が導電性金属酸化物層を通過する能力を減少させ、電気エネルギーへの変換に使用される太陽放射線が減少する。これまでは、導電性金属酸化物層を厚くすることは、表面粗度が高く導電率が優れているため、望ましいと考えられていた。
【0011】
本発明に係る被覆されたガラス物品は、太陽エネルギーの吸収と反射を良好に両立させると同時により薄い導電性金属酸化物層の使用を可能にする選択された範囲内の屈折率を有する光線透過率最適化中間層を提供するために、薄膜の様々な光学干渉及び他の原理を利用する。このようにすると、より多くの太陽放射が太陽電池に入射するので、太陽放射をより効率的に利用することができる。本発明に係る被覆されたガラス物品を使用することにより、太陽電池効率を大幅に増加させることができる。
【0012】
本発明では、例えばソーダ石灰−シリカガラスなどの透明な絶縁性基板が使用される。また、好ましくはフロートプロセスで作成された、他の透明なガラスを使用することもできる。
【0013】
ドーパントの添加によって導電性にされた適切な金属酸化物膜が、基板材料上に積層される。酸化スズが好ましい金属酸化物であり、フッ素と共にドープされることが好ましい。酸化スズを使用する場合、好ましい薄膜厚さは、約3000〜7500Åである。積層膜全体を適切に機能させるためには、導電性金属酸化物層の屈折率は、2.0未満にすべきである。
【0014】
本発明では、光線透過率最適化中間層は、導電性金属酸化物層上に積層される。光線透過率最適化中間層に適している材料としては、TiO及び他の適切な半化学量論的金属酸化物がある。光線透過率最適化中間層それ自体は厚さが大きい必要はなく、約300〜600Åで十分であることが分かっており、約450〜500Åの厚さが好ましい。この場合も先と同様に、前記好ましい積層膜の他の層に適合するために、光線透過率最適化中間層は、2.3〜3.5の屈折率を有する。特に好ましい実施形態では、光線透過率最適化中間層の屈折率は2.5〜3.0である。
【0015】
本発明に係る被覆されたガラス物品が非晶質シリコン太陽電池の構成要素として使用される特に好ましい実施形態では、シリコン層が光線透過率最適化中間層上に積層される。シリコン層の屈折率は、少なくとも4.5であり、好ましくは少なくとも5.0である。
【0016】
使用目的によっては、光線がガラス基板から反射されたときに又はガラス基板を通過したときに生じる虹色効果をさらに抑制することが望ましい。本発明に関連して、単一の金属酸化物層、金属酸化物層とシリカ層、又は傾斜コーティング層などの、任意の適切な単一層又は多層の色抑制積層膜を使用し得る。
【0017】
好ましい実施形態では、例えば米国特許第4、377、613号及び4、419、386号(Gordon)(この参照により本明細書に組み込まれる)に知られているように、金属酸化物層とシリカ層は一体となって優れた色抑制膜積層膜を形成する。色抑制積層膜は、導電性金属酸化物層の積層の前に、基板材料上に積層される。色抑制積層膜は比較的薄く、前記酸化スズ層は250〜600Åの厚さを有しており、前記シリカ層は250〜350Åの厚さを有している。
【0018】
上述したように、本発明に係る被覆されたガラス物品の前記積層膜における様々な層の厚さは、ある特定の厚さのみではなく、比較的広い範囲内に含まれ得る。したがって、前記膜の厚さは、前記積層膜の全体的特性及び性能を「調整」するために、最適化することができる。
【0019】
本発明に係る被覆されたガラス物品の前記層は、任意の適切な方法によって絶縁性基板材料上に積層される。好ましくは、大気圧化学気相蒸着法(Atmospheric Chemical Vapor Deposition:APCVD)によって積層される。化学気相蒸着法によって金属酸化物を積層させる他の方法は、例えば、米国特許第5、698、262号、第5、773、086号、及び第6、238、738号に開示されている(この参照により本明細書に組み込まれる)。
【0020】
好ましい薄膜積層方法を実施するために、ガス状混合物は、当該ガス状混合物が積層させる材料を形成するために反応する温度以下の温度に維持される。そして、ガス状混合物は、前記反応物質の反応温度以上にされた被覆する平坦なガラス基板の近くの位置に搬送される。前記前駆体ガス混合物は、その後、前記基板の真上の蒸着空間に導入される。前記基板からの熱は、前記前駆体ガスの温度を、前記前駆体化合物の熱分解温度以上に上昇させる。
【0021】
被覆基板が製造プロセスにある場合は、実用的な見地から高い蒸着速度が重要である。このことは、とりわけ、ガラスリボンが特定のライン速度で移動する、かつ特定の被膜厚さが要求されるオンライン・フロートガラスプロセスについて言える。
【0022】
フロートガラス装置は、本発明に係る方法を実施するための手段として利用される。フロートガラス装置のある特定の例を以下に説明する。前記フロートガラス装置は、具体的には、公知のフロートガラスプロセスに従って連続的なガラスリボンを形成するフロート槽と、融解炉から供給された溶融ガラスを前記フロート槽に搬送する管部分とを備える。前記ガラスリボンは、前記フロート槽から隣接するガラス焼きなまし炉及び冷却部を通って進む。前記連続的ガラスリボンは、その上に本発明に従って所望の被覆が積層される基材としての役割を果たす。
【0023】
前記フロート槽は、その内部に溶融スズ槽が含まれる底部、屋根、反対側の側壁、及び端壁を含む。前記屋根、側壁及び端壁が一体となって、前記溶融スズの酸化を防止するための非酸化雰囲気を維持する囲いを画定する。
【0024】
さらに、ガス分配ビーム(gas distributor beam)が、前記フロート槽の内部に配置される。前記フロート槽の内部の前記ガス分配ビームは、本発明に係る方法によって金属酸化物被膜を形成する前に、前記基板上に追加的な被膜を形成するために使用される。前記追加的被膜は、シリコン及びシリカを含み得る。
【0025】
実施中は、前記溶融ガラスは、調整ツイール(regulating tweel)の真下に位置する前記管に沿って流れ、制御された量の前記スズ槽の表面上に向かって下向きに流れる。スズ槽では、前記溶融ガラスは、重力、表面張力及び物理的な影響を受けて横方向に広がり、前記ガラスリボンを形成するために前記スズ層を横断して前進する。前記ガラスリボンは、取り出しロールによって取り出され、その後、整列されたロールによってガラス焼きなまし炉及び冷却部を通って搬送される。本発明に係る被覆の形成は、フロート槽で、又はさらに生産ラインに沿って(例えば、フロート槽とガラス焼きなまし炉との間で、又はガラス焼きなまし炉で)行われる。
【0026】
前記スズ槽の酸化を防止するために、前記スズ槽の前記囲いの内部では、適切な非酸化雰囲気(通常は窒素、或いは、窒素と水素の混合物(窒素優位))が維持される。前記雰囲気ガスは、分配マニホールドに動作可能に結合された管路を介して導入される。前記非酸化性ガスは、外側大気の侵入を防止するために、通常の損失を補い、わずかな正圧(環境大気圧より約0.001〜0.01気圧高い)を維持するのに十分な割合で導入される。本発明の目的のために、上述した圧力範囲は、通常の大気圧力の構成要素となると考えられている。スズ槽及び前記囲いの所望の温度レジームを維持するための加熱は、前記囲いに設けられた放射ヒータによって提供される。前記冷却部は囲まれておらず、前記ガラスリボンは周囲大気に開いているので、前記ガラス焼きなまし炉内の雰囲気は通常は周囲空気である。周囲空気は、例えば冷却部に設けられたファンによって前記ガラスリボンに導かれる。また、前記ガラスリボンがガラス焼きなまし炉を通って搬送されるときに、前記ガラスリボンの温度を予め定められたレジームに従って徐々に減少させるために、ガラス焼きなまし炉内にヒータを設置することもできる。
【0027】
ガス分配ビームは、前記ガラスリボン基板上に様々な被膜を積層させるために、通常はフロート槽内に配置される。しかし、フロート槽の下流に配置することもできる。前記ガス分配ビームは、本発明のプロセスの実施に使用することができる反応装置(reactor)の一形態である。
【0028】
前記前駆体材料を本発明に従って供給するのに適したガス分配ビームの従来構成は、通常は、間隔が空けられた内側壁及び外側壁により形成され、少なくとも2つの囲まれた空洞を画定する、一般に管状の逆構造である。前記ガス分配ビームを所望の温度に維持するために、適切な熱交換媒体が前記閉鎖された空洞を通して循環される。好ましいガス分配ビームは、米国特許第4、504、526号(Hoferら)に開示されている(この参照により本明細書に組み込まれる)。
【0029】
前記前駆体ガス混合物は、流体冷却式供給管を通って供給される。前記供給管は、前記ガス分配ビームに沿って延び、前記ガスは前記供給管に沿って配置されたドロップラインに入る。前記供給管は、前記フレームワークによって伝達されるヘッダー内の送達チャンバーへ通じる。前記ドロップラインに入った前駆体ガス混合物は、前記送達チャンバーから、通路を通って、前記前駆体ガス混合物がその表面に沿って流れる前記ガラスに向かって開いた蒸発空間を画定する被覆チャンバーに向かって排出される。
【0030】
前駆体材料が前記ガラスに対して、滑らかで、層流状で、一様な流れで、前記分配ビームを完全に横切るように排出されることを確実にすべく、前記分配ビームを横断する前駆体材料の流れを均等にするためのバッフル板が送達チャンバー内に設けられる。使用済みの前駆体物質は集められ、前記分配ビームの側面に沿った排気チャンバーを通して排出される。
【0031】
化学蒸着に使用される様々な形態の分配ビームが、本発明に係る方法に適しており、当該技術分野では周知である。
【0032】
このような他の分配ビーム構造は、通常は、前駆体ガス混合物を、ガス供給ダクトに案内する。前記ガス混合物は、冷却ダクトを通って循環する冷却流体によって冷却される。ガス供給ダクトは、細長い開口を通って、ガス流制限器(gas flow restrictor)に通じる。
【0033】
前記ガス流制限器は、複数の金属片を含む。前記複数の金属片は、正弦波の形で縦方向にクリンプ(crimped)され、互いに隣接して垂直に取り付けられ、前記分配器の長さに沿って伸びる。隣接してクランプされた金属片は、それらの間で複数の垂直的経路を画定するために、「位相をずらして(out of phase)」配置される。このような垂直的経路の断面積は、前記ガス供給ダクトの断面積よりも小さい。そのため、ガスは、前記ガス流制限器から実質的に一定の圧力で、前記分配器の長さ方向に沿って放出される。
【0034】
前記被覆ガスは、前記ガス流制限器から、実質的にU字形状の案内管路の入口側に放出される。前記管路は、一般に、入口脚部、前記昇温された被覆される前記ガラス基板に面する被覆チャンバー、及び排出脚部を含み、使用された被覆ガスを前記ガラスから回収することができる。前記被覆管路を画定する前記ブロックの丸められた角は、前記被覆されるガラス基板を横切る被覆ガスの、前記ガラスの表面に平行な、均一な層流を促進する。
【実施例】
【0035】
本発明を実施するための最適な形態を示す以下の実施例は、単に例示及び説明を目的としたものであり、本発明を限定するものではない。
【0036】
表1〜4に記載の実施例は、本発明に係る被覆されたガラス物品の積層膜の様々な構成のコンピュータで作成したモデリング、並びに、本発明との比較のための基準を提供する前記被覆されたガラスの範囲から外れた積層膜構造の結果である。
【0037】
表1〜4(実施例1〜16)での下記の各表記は、次の意味を持つ。
【0038】
Rgは、薄膜が積層されていない板ガラスの主表面からの、可視光線の反射率のパーセンテージを意味する。
【0039】
Rg(a)及びRg(b)は、板ガラスの薄膜が形成されてない面から反射された光線の色を意味する。a及びbはCIELAB色座標に従っている。
【0040】
ABSは、被覆されたガラスシートに積層された1つ又はそれ以上の膜によって吸収された可視光線のパーセンテージを意味する。
【0041】
Tは、電気エネルギーに変換することができる非晶質シリコン太陽電池によって吸収された可視光線のパーセンテージを意味する。
【0042】
特に、実施例1〜4は、本発明の範囲に含まれる。実施例1〜4は、実施例5〜8と対比され得る。実施例1〜4では、本発明の積層膜には、非晶質シリコン太陽電池を代表とする5000Åの厚さのシリコン層が使用される。表に示すように、実施例1〜4のモデル化された構造のガラス面反射率(Rg)は非常に低く、約5.2〜8.0%の範囲内にある。このような低い反射率は、太陽電池構造体に残留し、電気エネルギーへ変換に使用できる太陽放射線を最大化するのに役立つ。
【0043】
表に示すように、実施例1〜8の全ては、虹色抑制構造を使用している。非ドープのSn0層が薄く(250Å v 600Å)利用できる実施例である実施例2及び3は、一番低いRgを提供する。また、実施例2と実施例3は、ドープされたSn0層の厚さも異なる。これらの実施例では、モデル化されるドーパントとしては、フッ素が選択される。Sn0F層の厚さの差が2000Åもあるにもかかわらず、Rgの差異は非常に小さい。
【0044】
実施例5〜8は、反射による光線の損失を減少させ、光線の透過/吸収を高めるために、光線透過率最適化中間層との間の相互作用が非晶質シリコン層に対してどのように作用するかを対照的に示す。実施例5〜8のRgは、実施例1〜4よりも約20%高い。
【0045】
実施例9〜12及び実施例13〜16は光線透過率最適化中間層を備えておらず、光線透過率最適化中間層を使用した実施例との比較のための基準を提供する。前述したように、特に実施例13〜16では、Rgは、実質的に及び望ましくないことに実施例1〜4よりも高い。実際、実施例13〜16のRgは、平均して、実施例1〜4のRgの2倍以上である。したがって、TiOの光線透過率最適化中間層は、光線の反射率を減少させることにおいて、非常に高い有益な効果を有することが認められる。実施例1〜4の光線吸収率は、実施例13〜16よりも6〜10%高く、本発明に係る物品を使用した太陽電池の効率を著しく向上させる。
【0046】
実施例1〜4
【表1】

【0047】
表1(実施例1〜4)は、本発明に係る物品の非晶質シリコン太陽電池の構成要素としての使用と、それの光学的分析の結果を示す。
【0048】
実施例5〜8
【表2】

【0049】
表2(実施例5〜8)は、フッ素ドープ酸化スズTCO層を有するが非晶質シリカ被覆とは組み合わされていない本発明に係る物品の光学的性質を示す。
【0050】
実施例9〜12
【表3】

【0051】
表3(実施例9〜12)は、光線透過率最適化中間層を使用しない場合の光学的性質を示す。
【0052】
実施例13〜16
【表4】

【0053】
表4(実施例13〜16)は、光線透過率最適化中間層を使用していない公知の非晶質シリコン太陽電池の化学的組成及び光学的性質を示す。
【0054】
表1から分かるように、光線反射率最適化中間層を備えているこれらのサンプルは、入射する太陽放射線の反射率を、光線反射率最適化中間層を備えていないサンプルよりも7〜8%減少させる。このような反射率の減少は、変換効率を8〜9%増加させることができる。従来の太陽電池の変換効率は約10〜12%なので、前記変換効率の増加は非常に顕著である。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池の構成要素としての使用に適した被覆されたガラス物品であって、
透明な絶縁性基板と、
前記絶縁性基板上に積層された、2.0未満の屈折率を有する透明な導電性金属酸化物層と、
前記導電性金属酸化物層上に積層された、2.3〜3.5の屈折率を有する光線透過率最適化中間層と、
前記光線透過率最適化中間層上に積層された、少なくとも4.5の屈折率を有するシリコン層とを含む物品。
【請求項2】
請求項1に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記導電性金属酸化物層は、フッ素ドープ金属酸化物を含むことを特徴とする物品。
【請求項3】
請求項1に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記光線透過率最適化中間層は、金属酸化物層を含むことを特徴とする物品。
【請求項4】
請求項3に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記光線透過率最適化中間層は、チタン酸化物を含むことを特徴とする物品。
【請求項5】
請求項1に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記シリコン層は、非晶質シリコンを含むことを特徴とする物品。
【請求項6】
請求項1に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記絶縁性基板と前記導電性金属酸化物層との間に介挿された色抑制膜をさらに含むことを特徴とする物品。
【請求項7】
請求項6に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記色抑制膜は、単一の金属酸化物層、金属酸化物層とシリカ層、及び傾斜層から成る群より選択される1つを含むことを特徴とする物品。
【請求項8】
請求項6に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記色抑制膜は、250〜600Åの厚さを有する酸化スズ層と、250〜350Åの厚さを有するシリカ層とを含むことを特徴とする物品。
【請求項9】
請求項4に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記光線透過率最適化中間層は、300〜600Åの平均厚さを有するチタン酸化物層を含むことを特徴とする物品。
【請求項10】
請求項9に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記光線透過率最適化中間層は、450〜500Åの平均厚さを有するチタン酸化物層を含むことを特徴とする物品。
【請求項11】
請求項2に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記導電性金属酸化物層は、5000〜7500Åの厚さを有するフッ素ドープ酸化スズを含むことを特徴とする物品。
【請求項12】
請求項3に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記光線透過率最適化中間層は、2.3〜3.0の屈折率を有することを特徴とする物品。
【請求項13】
請求項2に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記導電性金属酸化物層は、3000〜5500Åの厚さを有するフッ素ドープ酸化スズを含むことを特徴とする物品。
【請求項14】
請求項1に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記シリコン層は、少なくとも5.0の屈折率を有することを特徴とする物品。
【請求項15】
請求項1に記載の被覆されたガラス物品であって、
前記導電性金属酸化物層は、スズドープ酸化インジウムを含むことを特徴とする物品。
【請求項16】
太陽電池の構成要素としての使用に適した被覆された物品の製造方法であって、
加熱された絶縁性基板を提供するステップと、
前記絶縁性基板上に、2.0未満の屈折率を有する透明な導電性金属酸化物層を積層させるステップと、
前記導電性金属酸化物層上に、2.3〜3.5の屈折率を有する光線透過率最適化中間層を積層させるステップと、
前記光線透過率最適化中間層上に、少なくとも4.5の屈折率を有するシリコン層を積層させるステップとを含む方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
各層は、フロートガラス製造プロセス中にオンラインで積層されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、
各層は、大気圧化学気相成長法によって積層されることを特徴とする方法。
【請求項19】
太陽電池の構成要素としての使用に適した被覆されたガラス物品であって、
透明な絶縁性基板と、
前記絶縁性基板上に積層された、2.0未満の屈折率を有する透明な導電性金属酸化物層と、
前記導電性金属酸化物層上に積層された、2.3〜3.5の屈折率を有する光線透過率最適化中間層と、
前記光線透過率最適化中間層上に積層された、少なくとも4.5の屈折率を有するシリコン層とを含み、
5.2〜8.0のガラス面反射率を有することを特徴とする物品。
【請求項20】
太陽電池の構成要素としての使用に適した被覆されたガラス物品であって、
透明な絶縁性基板と、
前記絶縁性基板上に積層された、2.0未満の屈折率を有する透明な導電性金属酸化物層と、
前記導電性金属酸化物層上に直接的に積層された、2.3〜3.5の屈折率を有する光線透過率最適化中間層と、
前記光線透過率最適化中間層上に積層された、少なくとも4.5の屈折率を有するシリコン層とを含むことを特徴とする物品。
【請求項21】
太陽電池の構成要素としての使用に適した被覆されたガラス物品であって、
透明な絶縁性基板と、
前記絶縁性基板上に積層された、2.0未満の屈折率を有する透明な導電性金属酸化物層と、
前記金属酸化物層上に直接的に積層された、300〜600Åの厚さを有する、チタン酸化物を含む光線透過率最適化中間層と、
前記光線透過率最適化中間層上に積層された、少なくとも4.5の屈折率を有するシリコン層とを含むことを特徴とする物品。
【請求項22】
太陽電池の構成要素としての使用に適した被覆されたガラス物品であって、
透明な絶縁性基板と、
前記絶縁性基板上に積層された、2.0未満の屈折率を有する透明な導電性金属酸化物層と、
前記金属酸化物層上に直接的に積層された、450〜500Åの厚さを有する、TiOを含む光線透過率最適化中間層と、
前記光線透過率最適化中間層上に積層された、少なくとも4.5の屈折率を有するシリコン層とを含むことを特徴とする物品。

【公表番号】特表2009−505941(P2009−505941A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529119(P2008−529119)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/033078
【国際公開番号】WO2007/027498
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(506299179)ピルキングトン・グループ・リミテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】Pilkington Group Limited
【住所又は居所原語表記】Prescot Road, St. Helens, Merseyside WA10 3TT, Great Britain
【出願人】(502098020)ピルキングトン・ノースアメリカ・インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】