説明

太陽電池モジュールを備えたモジュラー要素

【課題】特に平らな屋根である建物の屋根をふさぐのに用いられるモジュラー建築要素であって、自然光が前記建物の内部を照射することを可能にする。
【解決手段】少なくとも1つの透明又は半透明な部分11を有する、水平平面に対して傾斜が付けられた第1面2と、前記第1面と反対側にあり、少なくとも1つの太陽電池モジュールを備える少なくとも1つの太陽電池パネル15を有する、水平平面に対して傾斜が付けられた第2面3と、を有する壁面を備え、前記モジュラー要素1の前記面の少なくとも一部は、少なくとも1つの断熱25及び/又は防音レイヤ11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根、特に平らな屋根を覆うのに用いられるモジュラー建築要素に関する。さらに本発明は、本発明による少なくとも1つのモジュラー要素を備える屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば倉庫又は工場のような建物の屋根は、平坦な屋根の形をとっている。場合によっては、これら屋根は、実質的に角柱状の形状の屋根によって覆われることがあり、これらは片流れ屋根と呼ばれる。より正確には、これらの屋根は、建物の中に拡散光を取り入れる目的のために、北側に急勾配が付けられるよう構成されたガラスの板を備える半透明な部分を有し、これは「天窓」という名前でよく知られている。さらに、これらの屋根は、例えば南を向くよう方向付けられるよう配置される太陽集光器を含み得る。この特定の向きは、太陽集光器がより効果的であることを可能にする。そのような屋根は、特に文献DE2559226から知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、いくつかの別個の建築要素を有するそのような屋根の建築は複雑であり、建築家によるその設計は建物の寸法に依存する。これは、そのパネルが満足できるように動作することを可能にする冷却、断熱及び位置付け条件を確実にすることが望まれるなら、そのような構造物上で太陽パネルを統合することが複雑だからである。その結果、これら屋根の建築の上流物(upstream)、すなわちそのような屋根の設計においては、屋根を構成する全ての構成材を提供し、かつこれらの構成材を建築現場で組み立てることが必要である。
【0004】
加えて、いったん構成材が配置されると、屋根全体の気密及び熱的保護は、この屋根によって形成される異種のものの組み立てを考えると、達成するのが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、このようなタイプの屋根を作り、太陽電池パネルを一体化するのをより容易にするモジュラー建築要素を提供することによって、これら欠点を完全に又は部分的に解決することを目的とする。この目的のために、本発明の主題は、特に平らな屋根である建物の屋根をふさぐのに用いられるモジュラー建築要素であって、自然光が前記建物の内部を照射することを可能にするのに適する、少なくとも1つの透明又は半透明な部分を有する、水平平面に対して傾斜が付けられた第1面と、前記第1面と反対側にあり、少なくとも1つの太陽電池モジュールを備える少なくとも1つの太陽電池パネルを有する、水平平面に対して傾斜が付けられた第2面と、を有する壁面を備え、前記モジュラー要素の前記面の少なくとも一部は、少なくとも1つの断熱及び/又は防音レイヤを備える。
【0006】
本発明の構成によるこのようなモジュラー要素の製造は、多くの太陽電池パネル、及び全体的照明の領域が、建物の屋根によって与えられる寸法に適合されることを可能にしつつも、屋根において断熱及び/又は防音を確保する。「全体的照明(overall illumination)」という語は、直接照明、拡散照明、及び反射照明を含む。
【0007】
本発明のある実施形態によれば、モジュラー建築要素は、前記モジュラー建築要素が前記屋根上に配置されるとき、前記モジュラー要素及び前記屋根の間の封止の連続性を実現するよう設計された封止手段を備える。
【0008】
この特徴は、前記モジュラー建築要素が前記屋根上に配置されるとき、モジュラー要素及び屋根の接触領域全体にわたって封止の連続性を提供する。
【0009】
ある実施形態によれば、前記断熱及び/又は防音手段は、グラスウールを備える。
【0010】
この特徴は、グラスウールは、機械的な観点から可撓性があり、他の材料と比較して重量及びコストの点で優位性があるので、実現するのが簡単であるという利点を有する。
【0011】
有利には、前記断熱及び/又は防音手段は、複層ガラスユニットを備える。
【0012】
これらの構成は、音響絶縁及び熱的絶縁を提供する。
【0013】
本発明のある特徴によれば、前記第1面は、20°及び50°の間の角度をなす。
【0014】
太陽電池パネルのこのような傾斜は、太陽電池パネルの表面に配置された太陽電池モジュールの最適な効率を提供する。
【0015】
ある実施形態によれば、前記第2面は、60°より大きい角度をなす。
【0016】
この構成は、拡散光を建物の内部に導くことを可能にする。
【0017】
有利には、前記モジュラー要素は、凝結水を回収する溝を備える。
【0018】
好ましくは、モジュラー建築要素は、前記第2面の前記太陽電池パネルの背部に提供される冷却通路を含む。
【0019】
本発明は、少なくとも1つの筐体を有するフレーム構造、及び前記フレーム構造の前記筐体内に収められた、本発明による少なくとも1つのモジュラー建築要素を備える屋根にさらに関する。
【0020】
本発明による構成により、上述のタイプの屋根は、本発明による少なくとも1つの要素のための筐体を収めるよう形成される開口を有するフレーム構造を作ること、及びそれぞれの筐体にそのような要素を位置付けることによって簡単に作られ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
いずれにしても本発明は、本モジュラー建築要素の一実施形態を例示的に表す添付の概略図面を参照して、以下の説明に基づけば完全に理解されよう。
【0022】
図1から図3に示されるように、本発明によるモジュラー建築要素1は、水平面に対して傾斜が付けられた第1面2、水平面に対して傾斜が付けられた第2面3、及び帯部(strip)4によって形成される壁面を有する本体を備える。第2面3の向きは、第1面2の向きと反対であることによって、2つの面2,3は、これらの面の平面に垂直な断面で見たときに実質的に逆V字の形状を有する。この逆V字の頂点は先端が切られ、2つの面は、平らな水平帯部4によって接合される。
【0023】
モジュラー要素1は、第1及び第2面2,3に対して、及び帯部4に対して左右に配置される2つの側面5も含む。
【0024】
この壁面は、下に開いた空間を規定し、下に面する開口の端部は、第1及び第2面2,3の下端及び側面5の下端で構成される。開口の端部は、平らな外枠10によって囲まれる。
【0025】
図3に示されるように、第2面3は、第1面2よりも急な傾斜が付けられるように配置される。有利には、第1面2は、水平平面に対して60°より大きい角度をなす。好ましくは第2面3は、20°及び50°の間の角度bをなす。
【0026】
第1面2は、半透明又は透明の表面11を設ける、正方形又は長方形の開口6を含む。表面11は、例えばガラスのような透明又は半透明材料を用いて作られる。好ましくは表面11は、熱的及び音響的隔離を改善するための複層ガラスユニットを備える。好ましくは、これら表面11は、視覚的及び防犯上の保護に対応するために、強化すりガラスを備える。
【0027】
このような材料は、片流れ屋根の天窓に依存して、自然光によって建物内部を明るくする目的で用いられる。加えて、複層ガラスユニットの使用により、モジュラー要素1は、優れた防音と共に、良好な断熱も実現し得る。
【0028】
好ましくは、第1面2は、北半球においては北側に向くよう配置される。このように方向付けることによって、拡散光は建物内に入射できる。
【0029】
図1に示されるように、部分11は、保護メッシュ12を含む。保護メッシュ12は、平坦部9の上に配置される。この保護メッシュ12は、例えば侵入者を防ぐために設けられる。変形例によれば、部分11には、強化防犯ガラスが設けられる。
【0030】
図2に示されるように、第2面3は、太陽電池パネルを受け入れる位置13を有する。図2に示されるように、第2面3は、4つのそのような位置を有する。受入位置13は、長方形の形状であり、それぞれの受入位置13の幅は、水平平面に平行である。この位置に配置されるのは、パネルの背面が壁面の開口に面するよう、太陽電池パネルを受け入れるフレームである。より具体的には、これらは水平平面に平行な向きに、互いに横に並ぶよう構成される。太陽電池パネル15は、それぞれの受入位置13内に配置される。それぞれの太陽電池パネル15は、太陽電池モジュール群のセットを備える。それぞれの太陽電池モジュールは、少なくとも1つの太陽電池セル、又は電気的に互いに接続された太陽電池セル群のセットを備える。
【0031】
好ましくは、第2面3は、南を向くように配置される。このような方向付けは、良好な太陽発電効率を提供する。
【0032】
簡単で自然な対流冷却を有する構成においては、第2面3は、それぞれの太陽電池パネル15のそばに、大まかには四角形形状の2つの開口、具体的にはそれぞれ16及び17を備える。それぞれの開口16,17の長さは、水平平面にほぼ平行である。より正確には、壁面は、2つの開口16,17及び太陽電池パネル15が一直線にそろうよう、それぞれの太陽電池パネルの頂部に配置された開口16、及び太陽電池パネルの底部に配置された開口17を有する。それぞれの開口16,17の長さは、それらが位置する場所に近い太陽電池パネル15の幅にほぼ等しいことに注意されたい。細かいメッシュのグリル18は、虫又はその他の有害生物の侵入を防ぐために、それぞれの開口16,17上に配置される。
【0033】
図3に示されるように、追加面20は、太陽電池パネル15の背部に配置される。追加面20は、第2面3にほぼ平行である。この構成は、太陽電池パネル15の背部に通路21を提供できるようにする。通路21は、太陽電池パネル15の近くに位置する2つの開口16,17に接続される。
【0034】
太陽電池パネル15の動作の間、日光に当たるよう配置される太陽電池セルは、温度が上昇することを思い出すことが大切である。この熱は、太陽電池セルの効率を下げるので、セル温度が過度に上昇するのを防ぐことが必要である。よってこのような通路21の構成は、太陽電池パネル15の背部への通気を可能にするという大きな効果を有するが、この通気は自然の対流によって起こるのである。この対流は、太陽電池パネル15及び周囲空気の間での熱交換を可能にし、その結果、太陽電池パネル15を冷却する。
【0035】
本発明のより詳細な代替の実施形態によれば、図4に示されるように、モジュラー要素1は、太陽電池パネル15の背部に配置される通路21システムと、建物の内部との間の接続システム28を含み得る。この構成は、太陽電池パネル15によって加熱された空気を利用できるようにする。通路21でこのように加熱された空気は、建物の内部に放出され得て、例えば冬季に建物を暖めることができる。図5は、冬季の通気のために、加熱された空気の回収ができる本発明の代替の実施形態を装備された産業施設の断面を、記号によって例示的に示す。図5はまた、夏季における外気29の循環、及び暖かい空気30の屋外への放出による、建物の冷却を記号によって示す。
【0036】
モジュラー要素1の追加面20、帯部4、第1面2、及び側面5は、内部表面22及び外部表面23を有するアセンブリを形成する。内部表面22は、いったんモジュラー要素1が建物の屋根24上に配置されると、建物の内部に向かうよう設けられる。外部表面23は、建物の外部と接触するよう設けられる。
【0037】
第2面3の開口16,17を除いて、上のように規定されるアセンブリの内部表面22上には、断熱手段が配置される。
【0038】
断熱手段は、熱的に隔離をする材料を含む。熱的に隔離する材料の選択肢としては、好ましくはグラスウール25があり、これは他の材料と比べて、重さ及びコストの点で優位性があり、機械的な観点から融通が利き、使用が簡単であることは容易に理解されよう。
【0039】
グラスウール25は、良好な防音及び良好な断熱の両方を確実にするだけ充分な厚さを有する。
【0040】
平らな屋根24上へのモジュラー建築要素1の配置は、外枠10における、モジュラー要素1及び平らな屋根24の間の接触表面26を規定する。接触表面26全体にわたって、すなわちモジュラー要素1及び平らな屋根24の間の境界において、封止手段が設けられる。特に、これらの封止手段は、ガスケット27を備える。モジュラー建築要素1が屋根に配置される時、このガスケット27は、モジュラー要素1及び平らな屋根24の間の封止が連続になるよう設けられる。このガスケット27は、建物の内部から外部へ熱が逃げること、又は屋根を介して水が建物内に入り込むことを防ぐために設けられる。
【0041】
変形例によれば、第1面2には、図1、図2又は図3に図示されない溝が設けられる。凝結水の回収のための溝は、太陽電池モジュールの背部の2重壁の底部に配置される排出口によって図4で記号的に示される。この溝は、太陽電池パネル15の近くに配置され、好ましくは太陽電池パネル15の下に配置される。この目的は、太陽電池パネル15の表面上で凝結する水を回収することである。
【0042】
このようなモジュラー建築要素を建物の平らな屋根上に配置するためには、フレーム構造(図面には示されない)が用いられる。フレーム構造は、モジュラー要素が配置される筐体を備える。フレーム構造は、建物の屋根をふさぐよう意図される。
【0043】
本発明は、特定の例示的実施形態について説明されてきたが、本発明は決して実施形態によって限定されるのではなく、記載された手段の技術的等価物、及びそれらの組み合わせを全て含み、もしこれらが本発明の範囲に含まれるなら、それらの組み合わせも含むことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】保護ガラスを持つ、日光に当たらない側のモジュラー建築要素の斜視図である。
【図2】図1のそれと反対の、第2の見る角度におけるモジュラー建築要素の斜視図である。
【図3】図2の線IV−IVを通る垂直平面内における断面図である。
【図4】熱せられた空気の回収と共に、太陽電池による太陽光発電の断面図である。
【図5】冬季における暖かい空気の回収、及び夏季における涼しい空気の通気を実現する産業施設の概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に平らな屋根である建物の屋根(24)をふさぐのに用いられるモジュラー建築要素(1)であって、
自然光が前記建物の内部を照射することを可能にするのに適する、少なくとも1つの透明又は半透明な部分(11)を有する、水平平面に対して傾斜が付けられた第1面(2)と、
前記第1面と反対側にあり、少なくとも1つの太陽電池モジュールを備える少なくとも1つの太陽電池パネル(15)を有する、水平平面に対して傾斜が付けられた第2面(3)と
を有する壁面を備え、
前記モジュラー要素(1)の前記面の少なくとも一部は、少なくとも1つの断熱(25)及び/又は防音(11)レイヤを備える
モジュラー建築要素。
【請求項2】
前記モジュラー建築要素(1)が前記屋根(24)上に配置されるとき、前記モジュラー要素(1)及び前記屋根(24)の間の封止の連続性を実現するよう設計された封止手段(27)
を備える請求項1に記載のモジュラー建築要素(1)。
【請求項3】
前記断熱(25)及び/又は防音手段は、グラスウール(25)を備える
請求項1及び2のいずれか1項に記載のモジュラー建築要素(1)。
【請求項4】
前記断熱及び/又は防音手段は、複層ガラスユニットを備える
請求項1〜3のいずれか1項に記載のモジュラー建築要素(1)。
【請求項5】
前記第1面(2)は、20°及び50°の間の角度(b)をなす
請求項1〜4のいずれか1項に記載のモジュラー建築要素(1)。
【請求項6】
前記第2面(3)は、60°より大きい角度(a)をなす
請求項1〜5のいずれか1項に記載のモジュラー建築要素(1)。
【請求項7】
前記モジュラー要素は、凝結水を回収する溝を備える
請求項1〜6のいずれか1項に記載のモジュラー建築要素(1)。
【請求項8】
冷却通路(21)が、前記第2面の前記太陽電池パネル(15)の背部において提供される
請求項1〜7のいずれか1項に記載のモジュラー建築要素(1)。
【請求項9】
少なくとも1つの筐体を有するフレーム構造、及び
前記フレーム構造の前記筐体内に収められた、請求項1〜8のいずれか1項に記載の少なくとも1つのモジュラー建築要素(1)
を備える屋根。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−162046(P2009−162046A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−213(P2009−213)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【出願人】(509005672)フォトワット インターナショナル (2)
【Fターム(参考)】