説明

太陽電池モジュール

【課題】美観を損なわない外周フレームを有する太陽電池モジュール。
【解決手段】屋根材と一体化した太陽電池モジュールまたは、屋根の上に設置して用いる太陽電池モジュールで、長辺と短辺の比が2:1以上の外周フレーム付き長方形太陽電池モジュールであって、少なくとも長辺を構成する外周フレーム材の一方の色が色差計におけるb値が1.5から2.5の範囲にあり、かつ太陽電池部分との色差が8以下であり、該太陽電池がシリコンを活性層とする薄膜太陽電池で形成されてなる太陽電池モジュールを用いる、または、該モジュールの少なくとも外周の一辺には外周フレームがついておらず、該外周フレームのない辺の内側に隣接する別の太陽電池モジュールと接続するための接続部材が設けられている太陽電池モジュールを用いることにより解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家屋、建物の屋根に設置する太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムの実用化と低コスト化技術の開発が進められている。特に次世代の太陽電池として太陽電池として注目を集めているのが、薄膜シリコン太陽電池である。薄膜シリコン太陽電池はシリコンウエハーを用いる単結晶シリコン太陽電池や多結晶シリコン太陽電池などに比べて製造に要する原料が少なく、大面積の集積型太陽電池としてガラスなどの基板に直接作成が容易なことから、低コストの太陽電池として注目されている。また、屋根に設置する場合においても、大面積でかつ矩形状のモジュールとして作成可能なため、現在の家屋の洋瓦として代替ができ、数インチサイズの円形ウエハータイプの太陽電池のように美観を損ねることが少ない。
【0003】
また、昨今、太陽電池モジュールを屋根の上に設置して住宅で消費する電力をまかなうと共に、余剰電力を電力会社に売却するいわゆる系統連係システムの普及によって一般戸建て住宅を対象とした太陽光発電システムが増加している。その際、住宅の屋根に設置することを前提としているため、その建物自体や周辺の住宅との美観が重要になっている。
【0004】
それゆえ、形状を屋根瓦と類似させた形状の太陽電池モジュールを屋根瓦として用いるものが好ましく、1例として、図1に示したようなコロニアルタイプのモジュールが提案されている(意匠75277号)。このモジュールは通常の瓦の一部を太陽電池に置き換えるだけで発電システムとして利用でき、外観も良好である。ただし、このモジュールは図2のように設置するため、外部に現れる発電部分2がモジュール全体の僅かの部分でしかなく、太陽電池の製造において、製造設備が大きくなりコスト的に不利が生じる。また、釘で打ちつけるなど設置がめんどうであるなどの短所を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに代わるモジュールとして図2に示した連結型モジュールが提案されている。これは、隣接する上下のモジュールを簡易に接続できる構造の外周フレーム3、4を用いて連結するもので比較的無駄のない安価なモジュールを容易に施工することができる。このモジュールはコロニアル瓦タイプのモジュールと比較して外周フレームを用いることができるため、強度面でも有利でありモジュールの重なり合う部分が僅かしかないためコスト的にも有利である。しかし、このモジュールの場合、上下をつなぐ接続機能を持つ外周フレームが表面に露出し、目立つため、住宅の屋根としての美観を損なうという問題点がある。また、外周フレームの中でも下部側の外周フレームは下から見上げた時にはさらによく目立つという欠点を有する。このため、本発明者らはこれら問題点を解決し、フレームが接続機能を果たしかつ美観にもすぐれたモジュールを発明するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に基づき、屋根材と一体化した太陽電池モジュールまたは、屋根の上に設置して用いる太陽電池モジュールで、長辺と短辺の比が2:1以上のフレーム付き長方形太陽電池モジュールであって、少なくとも長辺を構成するフレーム材3の一方の色が色差計におけるb値が1.5から2.5の範囲にあり、かつ太陽電池部分5との色差が8以下であり、該太陽電池がシリコンを活性層とする薄膜太陽電池で形成されてなる太陽電池モジュールまたは屋根材と一体化した太陽電池モジュール、または屋根材と一体化した太陽電池モジュールまたは、屋根の上に設置して用いる太陽電池モジュールであって、該モジュールの少なくとも外周の一辺には外周フレームがついておらず、該外周フレームのない辺の内側に隣接する別の太陽電池モジュールと接続するための接続部材が設けられている太陽電池モジュール、さらには上記該外周フレームのない辺の内側の接続部材が太陽電池裏面に設けられた封止材料の中に埋設されていることを特徴とする太陽電池モジュール用いることで解決し、美観と機能面で価値の高い太陽電池モジュールを作製できることを見出した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成により、フレームが見えにくく洋瓦としての美観を保ったモジュールが簡易に作製できることを確認した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明請求項1に関わる長方形太陽電池モジュールにおいては、長方形の長辺と短辺の比は2:1以上の横長タイプが好ましく、3:1以上であることがより好ましい。それ以下の場合には、屋根瓦、特に洋瓦の代替としての美観を保持することができない。また色差計のb値は1.5から2.5であることが必要で、2.5を越えるとフレームの色彩が目立ち太陽電池モジュールを瓦の代替えとして用いる場合、瓦全体としての美観を損なうことになる。また、1.5以下の時には落ち着きはでてくるが、機械的な冷たさを感じさせやはり美観に影響を与える。
【0009】
一方、本発明者らが薄膜シリコン部分の膜厚を300nm〜500nmに変えて作製した40枚の太陽電池モジュールにおいては、太陽電池部分5のb値は最大で2.7、最小で1.2であり平均値は2.04であった。測定個所は各々のモジュールで3カ所、合計120カ所である。なお、色差計には日本電色社製SZ−Σ90を用いて測定した。
【0010】
上記太陽電池部分5に対し、フレームのb値が1.5〜2.5でかつ色差が8以内の場合にはフレームの存在感をなくすことができる。また、a値については美観との相関関係は見られない。フレームのb値を上記範囲にする方法としてはどんな方法でも良く、その範囲になるよう塗料を適宜混合し、塗装することで、フレームを作製することや、b値がその範囲の材質でフレームを作製してもよい。また、太陽電池としてはシリコンを活性層とする薄膜太陽電池であればよく、アモルファスシリコンおよび、多結晶シリコンを含むアモルファスシリコン太陽電池等が好適に用いられる。
【0011】
また、請求項2に関わるモジュールの基本構造の概略図を図5に、図6に設置例を示した。このモジュールは図3、図4の構造に比べ、従来あるべき外周フレームの下部の一辺がなく、モジュールの内側面内に内側フレームがあり、隣接する太陽電池の上部の外周フレームとネジ止めされる接続部材となっている。接続する方法としてはどんな方法でもよく、ネジ止めに限らず、はめ込み式にしてもよい。
【0012】
なお、内側フレームを用いずに、太陽電池裏面に設けられた封止材料(例えばEVA)の中に接続治具の一部を埋め込ませるようにして取り付け、それを接続部材として用いることも可能である。
【実施例】
【0013】
以下実施例にて、説明する。
【0014】
(実施例1、2 比較例1〜5)
面積90cm×30cmのソーダライムガラス上に透明導電膜を形成し、通常のプラズマCVD法でアモルファスシリコンを積層し、太陽電池を作製した。太陽電池の裏面電極としてはAgを用いた。その裏面側に裏面封止用のEVAシート、絶縁用のフッ素フィルムをおいた後、真空ラミネータで封止した。この太陽電池4辺にそれぞれ90cmのアルミニウム製フレーム2本と30cmのフレーム2本をシリコン樹脂を用いて取り付けネジ止めした太陽電池モジュールを7セット作製した。また、黒、茶、赤の塗料(それぞれ日本塗装工業会表示でTN−10、T09−30P、T05−40V)を任意に混合した7種類の塗料を用意し、各々のモジュールの4辺の外周フレームにはそれぞれの塗料で着色を施した。そして、その平均値と太陽電池の中心部分との色差を測定した。それぞれの外観を屋外で観察した結果を表1に示す。
【0015】
【表1】

さらに、表1における実施例2と比較例1のモジュールを各7セット作製し図3に示したように鉄板を貼った疑似屋根上に配置して施工性と外観を調べた。なお、長辺のフレームは2種類の簡易ジョイントになっており、互いに勘合できる機能を持たせることで接続している。それぞれの施工性は問題はなかったが、20m離れて観測した結果、実施例2の美観が圧倒的に比較例1より優れておりフレームの存在を感じさせない屋根となった。
【0016】
(実施例3)
実施例1,2と同じく面積90cm×30cmのソーダライムガラス上に透明導電膜、アモルファスシリコン、裏面金属Agを形成し、その裏面側に裏面封止用のEVAシート、絶縁用のフッ素フィルムをおいた後、真空ラミネータで封止し太陽電池を作製した。さらに1長辺を除く3辺にシリコン樹脂を用いて外周フレームを取り付けネジ止めした。最後にフッ素系フィルムの上の適切な位置にシリコン樹脂を塗ってから最後に内側に外周フレームと同じ材質の内側フレームを密着させ短辺側の外周フレームに内側フレームをネジ止めしたのちシリコン樹脂を硬化させてモジュールを完成させた。リード線は通常の手法でモジュール中央から取り出しシリコン樹脂でポッティングした。このようにして図5に示すモジュールを作製した。こうして作製された同じ形状のモジュールを7枚用意したのち、鉄板を貼った疑似屋根上に図6のように配置して施工性を調べた。それぞれのモジュールは内側フレームに配した接続用雄型治具と隣接する太陽電池モジュールの上部外周フレームに取り付けた雌型治具とをかみ合わすことで接続している。また、各モジュール間はシーラントを流し込んで隙間をなくすことも可能である。
【0017】
この屋根を20m離れて観察したところ、従来の屋根瓦に比べ遜色のない外観が得られた。また、実施例の屋根を直近から見上げて観察したところ、下部フレームが見えない構造であることから、すっきりした外観であった。なお、実施例とは異なりモジュールの配列を互い違いではなく単純に直列に並べても良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コロニアル瓦タイプの太陽電池モジュール
【図2】コロニアル瓦タイプ太陽電池モジュールの設置例
【図3】外周フレーム付き太陽電池モジュールの外観図
【図4】外周フレーム付き太陽電池モジュールの設置例
【図5】本発明請求項2に関わる接続用内側フレーム付き太陽電池モジュール
【図6】接続用内側フレーム付き太陽電池のモジュール設置例
【符号の説明】
【0019】
1 コロニアル瓦太陽電池モジュールのガラス基板
2 コロニアル瓦太陽電池モジュールの太陽電池部分
3 外周フレーム付き太陽電池モジュールの太陽電池部分
4 外周フレーム
5 内側フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根材と一体化した太陽電池モジュールまたは、屋根の上に設置して用いる太陽電池モジュールで、長辺と短辺の比が2:1以上の外周フレーム付き長方形太陽電池モジュールであって、少なくとも長辺を構成する外周フレーム材の一方の色が色差計におけるb値が1.5から2.5の範囲にあり、かつ太陽電池部分との色差が8以下であり、該太陽電池がシリコンを活性層とする薄膜太陽電池で形成されてなる太陽電池モジュール。
【請求項2】
屋根材と一体化した太陽電池モジュールまたは、屋根の上に設置して用いる外周フレーム付き太陽電池モジュールであって、該モジュールの少なくとも外周の一辺には外周フレームがついておらず、該外周フレームのない辺の内側に隣接する別の太陽電池モジュールと接続するための接続部材が設けられている太陽電池モジュール。
【請求項3】
該外周フレームのない辺の内側の接続部材が太陽電池裏面に設けられた封止材料の中に埋設されていることを特徴とする請求項第2項記載の太陽電池モジュール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の上に設置して用いる外周フレーム付き太陽電池モジュールであって、該太陽電池モジュールの少なくとも外周の一辺には外周フレームがついておらず、隣接する別の太陽電池モジュールと接続するための接続部材が、該太陽電池モジュールの該外周フレームの無い辺の内側下面に設けられている太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記接続部材が、太陽電池裏面に設けられた封止材料上に設けられていることを特徴とする請求項第1項記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の太陽電池モジュールを屋根に設置する設置構造であって、該屋根を直近から見上げた場合に下部フレームが見えない構造である太陽電池モジュールの設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−100840(P2006−100840A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313014(P2005−313014)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【分割の表示】特願平9−168216の分割
【原出願日】平成9年6月25日(1997.6.25)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】