太陽電池付反射型ディスプレイ
【課題】表示駆動電力を、情報表示面に形成した太陽電池30によって供給する、特に、カラーフィルターを有する反射型カラー液晶ディスプレイ2において、カラーフィルター50の役割を補うか、或いは損なわずに太陽電池機能を有する太陽電池付反射型ディスプレイを提供することにある。
【解決手段】観察者側Kから、光透過率制御層10、選択的反射層22、太陽電池30もしくは光透過率制御層10、太陽電池30、反射層20の順で構成される太陽電池付ディスプレイにおいて、該太陽電池30の前面に配設される選択的反射層22が特定色のみを観察者側に反射する光学干渉膜で構成され、前記光透過率制御層より背面側に、3色とブラックマトリックスで構成されるカラーフィルターを配設し、前記反射層より前面側に該ブラックマトリックスと太陽電池の前面側電極を共用する太陽電池付反射型ディスプレイである。
【解決手段】観察者側Kから、光透過率制御層10、選択的反射層22、太陽電池30もしくは光透過率制御層10、太陽電池30、反射層20の順で構成される太陽電池付ディスプレイにおいて、該太陽電池30の前面に配設される選択的反射層22が特定色のみを観察者側に反射する光学干渉膜で構成され、前記光透過率制御層より背面側に、3色とブラックマトリックスで構成されるカラーフィルターを配設し、前記反射層より前面側に該ブラックマトリックスと太陽電池の前面側電極を共用する太陽電池付反射型ディスプレイである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示駆動電力の一部或いはすべての電力を、情報表示面に形成した太陽電池によって供給する反射型ディスプレイに関するものであり、さらに詳しくは、反射型カラー液晶ディスプレイにおいては、そのカラーフィルターの役割を補うか、或いは損なわずに太陽電池機能を有する太陽電池付反射型ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の平面型の画像表示ディスプレイは、その代表的な構造として図6に示すように、光の偏光と液晶材料の特性を利用して光の透過と遮光を電気的に制御する光透過率制御層(10)としての液晶の背面に、発光層(40)(通称バックライト)を設けている。
【0003】
また、色表現によって情報表示を行うディスプレイにおいて、幅広いスペクトル分布をした光にマスクをかけて各画素の配色パターンに求められる波長域の光だけを通すようにするために、光源から観察者に至る光の行路の何処かにカラーフィルター(50)が配設されている。
【0004】
このカラーフィルター(50)は、図7にその例を示すように、一般には赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の配色された画素パターンについて、それらの発光程度の割こよって画像等の情報を表示する場合に、表示を鮮明化する等の手段としてブラックマトリクス(BM)と呼ばれるクロム等の無透過パターンをガラス基板(52)上に形成されている。
【0005】
上記カラーフィルター(50)の3色の配色された画素パターンのうち、2色或いは3色の光透過スペクトルは、図8に示すように、可視光領域において多くを重なり合わない分布を持ち、各画素の液晶の配向性を図7に示すITO(Indium Tin Oxide)でなる透明電極(12)に印加する電圧の制御によって制御することで、可視光領域の波長(400nm〜700nm)において様々なフルカラー化を実現するものである。
【0006】
また、これら従来の液晶を用いたディスプレイの発展として、画面周囲に発光管を配置し、光ファイバーによって画面全体を背面から照らすもので、この発光管の代わりに、図9に示すように、エレクトロルミネッセンス発光素子(14)を用いたディスプレイが考案されているが、画面全体にエレクトロルミネッセンス発光素子(14)を配し、選択的に電流を流すことで発光させるものも開発されている。この場合、特に有機エレクトロルミネッセンス発光素子(14)によって構成すれば低電圧且つ高効率の自発光型ディスプレイが実現されている。
【0007】
また、他方、さらに低消費電力のディスプレイとして開発されたのが、反射型液晶ディスプレイと呼ばれるものである。これは、発光層(40)としてのバックライトを有せず、外部からの室内光や太陽光の反射率を変えることによって画像や文字などの情報を画面表示するものであって、一般の印刷物に近い自然な表示が可能なだけでなく、それ自ら発光する必要が無いために、相対的に少ないエネルギーで駆動出来る利点を持つものである。
【0008】
図10、図11および図12に上記反射型カラー液晶ディスプレイの構造の一例を示す。ITOでなる透明電極(12)とアルミ反射板でなる反射層(20)の間の光透過率制御層(10)としての液晶(16)に電圧を印加して各色の光の透過度を変えるもので、図10に示すディスプレイでは、偏光板(54)下方のアルミ反射板でなる反射層(20)で外光が反射されて観察者に反射される。また、図11に示すディスプレイでは、光透過率制御層(10)としてHAN液晶と呼ばれる液晶(16)を用いたもので偏光板(54)が一枚で良い。また、図12に示すディスプレイでは、下方のアルミ反射板でなる反射層(20)が液晶の電極として機能するように設計されており、紙の様な白さを出すために表面が粗されている。なおここで使用される液晶(16)は強誘電体でゲストホスト液晶と称されるものであり、一度形成した情報をエネルギーを消耗することなく保持でき、さらに低消費電力化が可能と考えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記の従来技術における反射型液晶ディスプレイあるいはエレクトロルミネッセンスディスプレイであっても、自体の情報表示(液晶への電圧印加)駆動のみならず、電気信号処理部(CPU)等の半導体演算記憶素子等の駆動、ディスク等の記憶装置の駆動に多くの電力を必要とし、長時間の使用では体積あるいは重量のある電池を共に運ばなくてはならず、使用者の負担となり、当然のことながら、電池の消耗によってその使用時間には限りがあった。
【0010】
また、表示部に対してのみであっても、それ自体が電池を必要としなければ、演算部や記憶部等と物理的に分離可能にし、表示画面(ディスプレイ)の設置が自由となる他、ディスプレイを備えた器具の使用形態を格段に自由に出来ることは想像に難くない。
【0011】
しからば、太陽電池(30)を反射型ディスプレイに応用するにも、太陽電池の形成される部分では画像表示が出来ず、表示画面が制約を受ける問題があった。さらに、太陽電池(30)に用いられる光電気変換層は可視光領域で透明でないものが多く、反射型カラー液晶ディスプレイではその画面表示部に形成すると表示される情報の色彩が影響されることから、画像表示部の周囲の小面積に形成する他にない。また、液晶等でなる光透過率制御層(10)より背面側に太陽電池(30)層を形成するも、各種太陽電池が特有の色を持つために、例えば反射型カラーディスプレイに使用することが困難であった。
【0012】
さらに、太陽電池(30)を光透過率制御層(10)より背面側に形成するために、発生した電力をとりだす為の電極を作ると、電極それ自身の色が表示画面に影響し、正確な情報伝達や画像表示が困難になる等の問題があった。
【0013】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、表示駆動電力の一部或いはすべての電力を、情報表示面に形成した太陽電池によって供給する反射型ディスプレイにおいて、特に、カラーフィルターを有する反射型カラー液晶ディスプレイにおけるカラーフィルターの役割を補うか、あるいは損なわずに太陽電池機能を有する太陽電池付反射型ディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、周期的に形成された多数の画素の相互の明暗の差あるいは色彩変化によって情報を観察者に視覚的に与え、観察者側に周囲光を反射し、光が反射される前後の行路において光の吸収あるいは遮光によって画像や文字情報を表示する反射型ディスプレーであって、観察者側から、少なくとも光の吸収あるいは遮光を行う光透過率制御層、太陽電池、反射層の順で構成される太陽電池付反射型ディスプレイにおいて、該光透過率制御層と太陽電池の間に選択的反射層を設け、該選択的反射層が、特定色のみを観察者側に反射する光学干渉膜または光学多層膜で構成されてなることを特徴とする太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0015】
また、請求項2の発明では、前記各画素の画素間領域に対応して導電性パターンを形成し、該導電性パターン自体を太陽電池の電極もしくはその一部とすることを特徴とする請求項1記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0016】
また、請求項3の発明では、前記光透過率制御層より背面側(観察者側と反対側)に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色パターンとブラックマトリックスで構成されるカラーフィルターを配設し、前記選択的反射層より前面側(観察者側)に該ブラックマトリックスと少なくとも部分的にそのパターンを一にする太陽電池の前面側電極を有することを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0017】
また、請求項4の発明では、前記光の吸収あるいは遮光を電気的制御に用いられる電極のうち、背面側の電極を太陽電池の前面側電極と共用とすることを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0018】
また、請求項5の発明では、前記太陽電池の観察者側にある選択的反射層における可視光領域(波長400nm〜700nm)の光の反射率の平均値が50%を越え、かつ該選択的反射層を該太陽電池の前面側電極として共用することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0019】
また、請求項6の発明では、前記3色の配色パターンのうち1色あるいは2色の画素の領域にのみ太陽電池機能(光電気変換機能)を持たせることによって、前記以外の配色パターンの光の反射率を確保することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0020】
さらにまた、請求項7の発明では、前記カラーフィルターの1色あるいは2 色の配色パターン領域について、配色の反射領域の光の透過率を他の配色部分とは異なる太陽電池の光電変換膜を形成してなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0021】
さらにまた、請求項8の発明では、前記光透過率制御層は、反射型液晶表示素子またはエレクトロルミネッセンス表示素子よりなる請求項1から7のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
即ち、観察者側から、少なくとも光の吸収あるいは遮光を行う光透過率制御層(液晶等)、選択的反射層、太陽電池、反射層もしくは前記光透過率制御層、太陽電池、反射層の順で構成される太陽電池付反射型ディスプレイにおいて、該太陽電池の前面に配設される選択的反射層が特定色のみを観察者側に反射する光学干渉膜または光学多層膜で構成されてなるので、この選択的反射層が、太陽電池の前面側電極を兼ねるとともに、電気エネルギーに変換可能な波長の光を背面にある太陽電池側に透過させる機能を持たせることができる。
【0023】
また、前記光透過率制御層より背面側に、3色パターンとブラックマトリックスで構成されるカラーフィルターを配設し、前記選択的反射層より前面側(観察者側)に該ブラックマトリックスと少なくとも部分的にそのパターンを一にする太陽電池の前面側電極を有することとしたので、特に反射型カラー液晶ディスプレイにおけるカラーフィルターの役割を補うか、あるいは損なわずに太陽電池機能を有する太陽電池付反射型ディスプレイを提供できる。
【0024】
さらに、太陽電池を形成しながら画像表示の明るさやコントラストを損なわない電極構造のカラーフィルターを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下本発明の実施の形態を具体例により詳細に説明する。
本発明の太陽電池付反射型ディスプレイに係わる液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(以下ELと略す)ディスプレイは、通常、例えば図10に示すように、2枚のガラス基板(52)の間に光透過率制御層(10)としての液晶(16)等を挟み込むことによって作るのが一般的である。この2枚のガラス基板(52)のうち、観察者側(K)のガラス基板(52)には、赤(R)、緑(G)、青(B)の配色パターンとブラックマトリックスでなるカラーフィルター(50)が配設されている(このガラス基板(52)とカラーフィルター(50)を併せてカラーフィルター基板(5)と呼ばれる)。ただし、カラーELディスプレーの場合は、発光色の異なるEL材料を用いることでカラーフィルター不要のディスプレイも構成可能となっている。
【0026】
また、本発明の太陽電池付反射型ディスプレイに係わる太陽電池(30)は、図13にその例を示すようにP−N接合をなす一対の半導体(N型半導体(32)、P型半導体(34))の層と電力を取り出す前面電極(36)と背面電極(38)によってその基本的な単位を構成される。半導体材料の違いによって化合物半導体、アモルフアス太陽電池や、シリコン単結晶 太陽電池等、様々なものが考案されている。
【0027】
本発明の太陽電池付反射型ディスプレイでは、例えば図1に示すように、前記した2枚のガラス基板(52)のうちの背面側(観察者側(K)と反対側)の基板(52)に、可視光領域の光の一部を反射する太陽電池(30)を構成して、自身の駆動する電力を補う反射型液晶ディスプレイ(2)を作成する。
特に、反射型液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのような消費電極が極めて小さいものならば、少なくとも自身のエネルギー源として応用可能でエネルギー源不要のデイスプレイを構成可能になる。
【0028】
本発明に係わる太陽電池(30)は、光電変換層を構成する材料とその組み合わせによって決まるある特定の波長より長い波長の光はエネルギーに変換出来ないという特徴を持つ。その波長の光より短波長の光エネルギーを吸収して電気エネルギーに変換する事によって電力を発生する。逆に、その変換の限界となる波長や、光の電力への変換効率の波長依存性にしたがって様々な色をもつことになる。例えば、アモルフアスシリコンを光電変換層としたものは、図14に示すような光吸収(光電気変換効率)を持ち、そのために赤褐色をしている。
【0029】
この光電変換層材料を用い、ITO等でなる透明電極(12)を太陽電池(30)の前面側に用いて構成し、図1に示すような反射型液晶ディスプレイ(2)を構成すれば、少なくとも赤に関しては明るく表示可能な、赤と黒によって情報を表示する太陽電池付きの反射型液晶ディスプレイが作成可能である。この太陽電池(30)の背面側の反射板でなる反射層(20)にクロムや銀等を使用して背面電極(38)とし、光電気変換を高効率で可能な波長について大きな光反射率を持たせれば、ディスプレイへの入射光のみならず、この反射光についても電気エネルギーに変換可能で、高効率太陽電池を構成することが出来る。
【0030】
また、本発明に係わる太陽電池(30)の構成位置は、図1に示すように、反射板でなる反射層(20)の前面に形成しても、図2に示すように裏面に形成してもよい。例えば図1に示すように、この反射板でなる反射層(20)の前面に形成する場合には、太陽電池(30)の観察者側(K)の前面側電極(36)には、光透過率制御層(10)としての液晶(16)のITO等でなる透明電極(12)を共用で用いることが出来る他に、反射板の反射面にはクロムや銀等の反射光率の高い反射層(20)を形成する必要があり、太陽電池(30)の背面側電極(38)と共用可能とすることができる。この場合には、反射された光が再び太陽電池(30)の光電気変換層を通ることから変換効率がさらに高くすることができる。
【0031】
また、図2に示すように、太陽電池(30)を反射層の背面に形成する場合には、この反射層は、太陽電池(30)の前面側電極(36)を兼ねるとともに、電気エネルギーに変換可能な波長の光を背面の太陽電池(30)側に透過させる機能を有する選択的反射層(22)とする必要がある。この場合、選択的反射層(22)としては光学干渉膜や光学多層膜などによる透過波長域を選択出来る膜を用いることによってこの機能を補うことができる。
【0032】
上記光学干渉膜等の透過波長域を選択可能な選択的反射層(22)としての材料の選択については、多くは公知であるとともに、本発明の主旨から離れるのでここでは説明しない。反射材も光学干渉膜や光学多層膜によって構成するなどの様々な方法があるが、同様の理由でここに説明しない。
【0033】
以上説明したように、情報を表示するディスプレイの画面に亘って太陽電池を構成すれば電力供給機能を果たし、従来の太陽電池のようにその形成がディスプレイ面でも可能な為に、大きな電力の供給が可能となる。
【0034】
また、反射型液晶ディスプレイ面以外に太陽電池の受光面を形成する必要がないから、カード型の携帯用情報処理端末等、表面全体をディスプレイとすることも可能である。
【0035】
さらに、反射型カラー液晶ディスプレイについて説明すると、太陽電池付きとする場合には、次のようにカラーパターンに添った構成とすることで十分な精彩度と明るさを維持した反射型液晶ディスプレイを構成することが出来る。すなわち、前述したように、可視光に対して光電気変換能力を持つ膜はそれ特有の色を持つものであり、このため、図3に示すように、画像表示面の各色(R、G、B)パターンをもつカラーフィルター(50)の分布にあわせて太陽電池(30)を構成することで、画像表示等で必要な目的とする色の再現が可能となる。
【0036】
例えば、図4はカラーフィルター(50)の赤色(R)パターンの部分にのみアモルフアスシリコンを用いた太陽電池(30)を構成した例である。また、cdsを用いた場合は、青色(B)より短波長を吸収することから、黄色を表現することが出来る。さらに、この部分に顔料などによる赤を吸収する色材による膜を形成すれば緑(G)のパターンを形成することが可能となる。
【0037】
このように、各色(R、G、B)パターンに対して部分的に選択的に太陽電池(30)を選択すれば、太陽電池(30)のために供することのできる面積がより広く確保出来、さらに自由な色再現が可能になる利点を持つものである。また、太陽電池(30)の光電気変換膜自体にカラーフィルターの役割を果たさせ、太陽電池(30)の背面側電極(38)を反射層(20)としても、また、顔料入りレジストによりなるカラーフィルターを併用することによっても本発明は制限されるものではない。さらに、各色(R、G、B)パターンに追従して太陽電池(30)の光電気変換膜の材料構成を変えることは、フォトリソ工程などの公知の技術によって可能なことは明白である。
【0038】
また、太陽電池(30)の吸収する波長領域は、太陽電池(30)を構成するN型半導体(32)とP型半導体(34)のハンド構造に起因することから、例えば、イオンドープと呼ばれる処理によって光の吸収波長を変え、色調を走査することが可能である。この場合に、画素のパターン化は、フォトリソ工程を用いて1色づつ構成してもよいし、ドープする原子やその量を各パターンに分けることによって構成しても良い。
【0039】
また、カラーフィルター(50)に太陽電池(30)を構成する場合、既に従来のカラーフィルターの構成要素になっているブラックマトリックス(BK)をそのままカラーフィルターの電極として採用することが出来る。現在の液晶ディスプレイに用いられるブラックマトリックスは、クロムで構成されるものが多い。しかし、金属クロムのように全く光を透過しない材料でなくとも、透明若しくは半透明の材料を観察者側に用いれば、この部分でも発電を行えるのは明白である。
【0040】
また、図5に示すように、ブラックスマトリックス(BM)の部分を幹として、透明電極(12)をそれの裏或いは表に構成すれば、さらに効率よく電力取りだし電極として働くことは明らかである。この透明電極(12)が反射型液晶ディスプレイの前面に形成されているかあるいは一部なのかは本発明では問わない。もしその幅が広ければ、光の透過率は多少であるが制限を受ける。しかし、電力取り出しが電気的に効率が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態を示す太陽電池付反射型液晶ディスプレイを側断面で表した説明図である。
【図2】本発明の他の一実施の形態を示す太陽電池付反射型液晶ディスプレイを側断面で表した説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す太陽電池付反射型カラー液晶ディスプレイを側断面で表した説明図である。
【図4】本発明の他の一実施の形態を示す太陽電池付反射型カラー液晶ディスプレイを側断面で表した説明図である。
【図5】本発明のさらに他の一実施の形態を示す太陽電池付反射型カラー液晶ディスプレイを側断面で表した説明図である。
【図6】本発明に係わる従来の平面型画像表示ディスプレイを側断面で表した説明図である。
【図7】本発明に係わるカラーフィルターの一例を側断面で表した説明図である。
【図8】本発明に係わるカラーフィルターの透過スペクトルを示すグラフである。
【図9】本発明に係わる従来のELディスプレイの一例を側断面で表した説明図である。
【図10】本発明に係わる従来のカラー液晶ディスプレイの一例を側断面で表した説明図である。
【図11】本発明に係わる従来のカラー液晶ディスプレイの他の例を側断面で表した説明図である。
【図12】本発明に係わる従来のカラー液晶ディスプレイのさらに他の例を側断面で表した説明図である。
【図13】本発明に係わる太陽電池の一例を示す側断面図である。
【図14】本発明に係わる太陽電池の光電変換層の一例における光吸収曲線である。
【符号の説明】
【0042】
1‥‥太陽電池付反射型ディスプレイ
2‥‥太陽電池付反射型液晶ディスプレイ
5‥‥カラーフィルター基板
10‥‥光透過率制御層
12‥‥透明電極
13‥‥MIMダイオード
14‥‥エレクトロルミネッセンス発光素子
16‥‥液晶
20‥‥反射層
22‥‥選択的反射層
30‥‥太陽電池
32‥‥N型半導体
34‥‥P型半導体
36‥‥前面側電極
38‥‥背面側電極
40‥‥発光層
50‥‥カラーフィルター
52‥‥ガラス基板
54‥‥偏光板
BM‥‥ブラックマトリックス
K‥‥観察者側
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示駆動電力の一部或いはすべての電力を、情報表示面に形成した太陽電池によって供給する反射型ディスプレイに関するものであり、さらに詳しくは、反射型カラー液晶ディスプレイにおいては、そのカラーフィルターの役割を補うか、或いは損なわずに太陽電池機能を有する太陽電池付反射型ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の平面型の画像表示ディスプレイは、その代表的な構造として図6に示すように、光の偏光と液晶材料の特性を利用して光の透過と遮光を電気的に制御する光透過率制御層(10)としての液晶の背面に、発光層(40)(通称バックライト)を設けている。
【0003】
また、色表現によって情報表示を行うディスプレイにおいて、幅広いスペクトル分布をした光にマスクをかけて各画素の配色パターンに求められる波長域の光だけを通すようにするために、光源から観察者に至る光の行路の何処かにカラーフィルター(50)が配設されている。
【0004】
このカラーフィルター(50)は、図7にその例を示すように、一般には赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の配色された画素パターンについて、それらの発光程度の割こよって画像等の情報を表示する場合に、表示を鮮明化する等の手段としてブラックマトリクス(BM)と呼ばれるクロム等の無透過パターンをガラス基板(52)上に形成されている。
【0005】
上記カラーフィルター(50)の3色の配色された画素パターンのうち、2色或いは3色の光透過スペクトルは、図8に示すように、可視光領域において多くを重なり合わない分布を持ち、各画素の液晶の配向性を図7に示すITO(Indium Tin Oxide)でなる透明電極(12)に印加する電圧の制御によって制御することで、可視光領域の波長(400nm〜700nm)において様々なフルカラー化を実現するものである。
【0006】
また、これら従来の液晶を用いたディスプレイの発展として、画面周囲に発光管を配置し、光ファイバーによって画面全体を背面から照らすもので、この発光管の代わりに、図9に示すように、エレクトロルミネッセンス発光素子(14)を用いたディスプレイが考案されているが、画面全体にエレクトロルミネッセンス発光素子(14)を配し、選択的に電流を流すことで発光させるものも開発されている。この場合、特に有機エレクトロルミネッセンス発光素子(14)によって構成すれば低電圧且つ高効率の自発光型ディスプレイが実現されている。
【0007】
また、他方、さらに低消費電力のディスプレイとして開発されたのが、反射型液晶ディスプレイと呼ばれるものである。これは、発光層(40)としてのバックライトを有せず、外部からの室内光や太陽光の反射率を変えることによって画像や文字などの情報を画面表示するものであって、一般の印刷物に近い自然な表示が可能なだけでなく、それ自ら発光する必要が無いために、相対的に少ないエネルギーで駆動出来る利点を持つものである。
【0008】
図10、図11および図12に上記反射型カラー液晶ディスプレイの構造の一例を示す。ITOでなる透明電極(12)とアルミ反射板でなる反射層(20)の間の光透過率制御層(10)としての液晶(16)に電圧を印加して各色の光の透過度を変えるもので、図10に示すディスプレイでは、偏光板(54)下方のアルミ反射板でなる反射層(20)で外光が反射されて観察者に反射される。また、図11に示すディスプレイでは、光透過率制御層(10)としてHAN液晶と呼ばれる液晶(16)を用いたもので偏光板(54)が一枚で良い。また、図12に示すディスプレイでは、下方のアルミ反射板でなる反射層(20)が液晶の電極として機能するように設計されており、紙の様な白さを出すために表面が粗されている。なおここで使用される液晶(16)は強誘電体でゲストホスト液晶と称されるものであり、一度形成した情報をエネルギーを消耗することなく保持でき、さらに低消費電力化が可能と考えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記の従来技術における反射型液晶ディスプレイあるいはエレクトロルミネッセンスディスプレイであっても、自体の情報表示(液晶への電圧印加)駆動のみならず、電気信号処理部(CPU)等の半導体演算記憶素子等の駆動、ディスク等の記憶装置の駆動に多くの電力を必要とし、長時間の使用では体積あるいは重量のある電池を共に運ばなくてはならず、使用者の負担となり、当然のことながら、電池の消耗によってその使用時間には限りがあった。
【0010】
また、表示部に対してのみであっても、それ自体が電池を必要としなければ、演算部や記憶部等と物理的に分離可能にし、表示画面(ディスプレイ)の設置が自由となる他、ディスプレイを備えた器具の使用形態を格段に自由に出来ることは想像に難くない。
【0011】
しからば、太陽電池(30)を反射型ディスプレイに応用するにも、太陽電池の形成される部分では画像表示が出来ず、表示画面が制約を受ける問題があった。さらに、太陽電池(30)に用いられる光電気変換層は可視光領域で透明でないものが多く、反射型カラー液晶ディスプレイではその画面表示部に形成すると表示される情報の色彩が影響されることから、画像表示部の周囲の小面積に形成する他にない。また、液晶等でなる光透過率制御層(10)より背面側に太陽電池(30)層を形成するも、各種太陽電池が特有の色を持つために、例えば反射型カラーディスプレイに使用することが困難であった。
【0012】
さらに、太陽電池(30)を光透過率制御層(10)より背面側に形成するために、発生した電力をとりだす為の電極を作ると、電極それ自身の色が表示画面に影響し、正確な情報伝達や画像表示が困難になる等の問題があった。
【0013】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、表示駆動電力の一部或いはすべての電力を、情報表示面に形成した太陽電池によって供給する反射型ディスプレイにおいて、特に、カラーフィルターを有する反射型カラー液晶ディスプレイにおけるカラーフィルターの役割を補うか、あるいは損なわずに太陽電池機能を有する太陽電池付反射型ディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、周期的に形成された多数の画素の相互の明暗の差あるいは色彩変化によって情報を観察者に視覚的に与え、観察者側に周囲光を反射し、光が反射される前後の行路において光の吸収あるいは遮光によって画像や文字情報を表示する反射型ディスプレーであって、観察者側から、少なくとも光の吸収あるいは遮光を行う光透過率制御層、太陽電池、反射層の順で構成される太陽電池付反射型ディスプレイにおいて、該光透過率制御層と太陽電池の間に選択的反射層を設け、該選択的反射層が、特定色のみを観察者側に反射する光学干渉膜または光学多層膜で構成されてなることを特徴とする太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0015】
また、請求項2の発明では、前記各画素の画素間領域に対応して導電性パターンを形成し、該導電性パターン自体を太陽電池の電極もしくはその一部とすることを特徴とする請求項1記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0016】
また、請求項3の発明では、前記光透過率制御層より背面側(観察者側と反対側)に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色パターンとブラックマトリックスで構成されるカラーフィルターを配設し、前記選択的反射層より前面側(観察者側)に該ブラックマトリックスと少なくとも部分的にそのパターンを一にする太陽電池の前面側電極を有することを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0017】
また、請求項4の発明では、前記光の吸収あるいは遮光を電気的制御に用いられる電極のうち、背面側の電極を太陽電池の前面側電極と共用とすることを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0018】
また、請求項5の発明では、前記太陽電池の観察者側にある選択的反射層における可視光領域(波長400nm〜700nm)の光の反射率の平均値が50%を越え、かつ該選択的反射層を該太陽電池の前面側電極として共用することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0019】
また、請求項6の発明では、前記3色の配色パターンのうち1色あるいは2色の画素の領域にのみ太陽電池機能(光電気変換機能)を持たせることによって、前記以外の配色パターンの光の反射率を確保することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0020】
さらにまた、請求項7の発明では、前記カラーフィルターの1色あるいは2 色の配色パターン領域について、配色の反射領域の光の透過率を他の配色部分とは異なる太陽電池の光電変換膜を形成してなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【0021】
さらにまた、請求項8の発明では、前記光透過率制御層は、反射型液晶表示素子またはエレクトロルミネッセンス表示素子よりなる請求項1から7のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイとしたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
即ち、観察者側から、少なくとも光の吸収あるいは遮光を行う光透過率制御層(液晶等)、選択的反射層、太陽電池、反射層もしくは前記光透過率制御層、太陽電池、反射層の順で構成される太陽電池付反射型ディスプレイにおいて、該太陽電池の前面に配設される選択的反射層が特定色のみを観察者側に反射する光学干渉膜または光学多層膜で構成されてなるので、この選択的反射層が、太陽電池の前面側電極を兼ねるとともに、電気エネルギーに変換可能な波長の光を背面にある太陽電池側に透過させる機能を持たせることができる。
【0023】
また、前記光透過率制御層より背面側に、3色パターンとブラックマトリックスで構成されるカラーフィルターを配設し、前記選択的反射層より前面側(観察者側)に該ブラックマトリックスと少なくとも部分的にそのパターンを一にする太陽電池の前面側電極を有することとしたので、特に反射型カラー液晶ディスプレイにおけるカラーフィルターの役割を補うか、あるいは損なわずに太陽電池機能を有する太陽電池付反射型ディスプレイを提供できる。
【0024】
さらに、太陽電池を形成しながら画像表示の明るさやコントラストを損なわない電極構造のカラーフィルターを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下本発明の実施の形態を具体例により詳細に説明する。
本発明の太陽電池付反射型ディスプレイに係わる液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(以下ELと略す)ディスプレイは、通常、例えば図10に示すように、2枚のガラス基板(52)の間に光透過率制御層(10)としての液晶(16)等を挟み込むことによって作るのが一般的である。この2枚のガラス基板(52)のうち、観察者側(K)のガラス基板(52)には、赤(R)、緑(G)、青(B)の配色パターンとブラックマトリックスでなるカラーフィルター(50)が配設されている(このガラス基板(52)とカラーフィルター(50)を併せてカラーフィルター基板(5)と呼ばれる)。ただし、カラーELディスプレーの場合は、発光色の異なるEL材料を用いることでカラーフィルター不要のディスプレイも構成可能となっている。
【0026】
また、本発明の太陽電池付反射型ディスプレイに係わる太陽電池(30)は、図13にその例を示すようにP−N接合をなす一対の半導体(N型半導体(32)、P型半導体(34))の層と電力を取り出す前面電極(36)と背面電極(38)によってその基本的な単位を構成される。半導体材料の違いによって化合物半導体、アモルフアス太陽電池や、シリコン単結晶 太陽電池等、様々なものが考案されている。
【0027】
本発明の太陽電池付反射型ディスプレイでは、例えば図1に示すように、前記した2枚のガラス基板(52)のうちの背面側(観察者側(K)と反対側)の基板(52)に、可視光領域の光の一部を反射する太陽電池(30)を構成して、自身の駆動する電力を補う反射型液晶ディスプレイ(2)を作成する。
特に、反射型液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのような消費電極が極めて小さいものならば、少なくとも自身のエネルギー源として応用可能でエネルギー源不要のデイスプレイを構成可能になる。
【0028】
本発明に係わる太陽電池(30)は、光電変換層を構成する材料とその組み合わせによって決まるある特定の波長より長い波長の光はエネルギーに変換出来ないという特徴を持つ。その波長の光より短波長の光エネルギーを吸収して電気エネルギーに変換する事によって電力を発生する。逆に、その変換の限界となる波長や、光の電力への変換効率の波長依存性にしたがって様々な色をもつことになる。例えば、アモルフアスシリコンを光電変換層としたものは、図14に示すような光吸収(光電気変換効率)を持ち、そのために赤褐色をしている。
【0029】
この光電変換層材料を用い、ITO等でなる透明電極(12)を太陽電池(30)の前面側に用いて構成し、図1に示すような反射型液晶ディスプレイ(2)を構成すれば、少なくとも赤に関しては明るく表示可能な、赤と黒によって情報を表示する太陽電池付きの反射型液晶ディスプレイが作成可能である。この太陽電池(30)の背面側の反射板でなる反射層(20)にクロムや銀等を使用して背面電極(38)とし、光電気変換を高効率で可能な波長について大きな光反射率を持たせれば、ディスプレイへの入射光のみならず、この反射光についても電気エネルギーに変換可能で、高効率太陽電池を構成することが出来る。
【0030】
また、本発明に係わる太陽電池(30)の構成位置は、図1に示すように、反射板でなる反射層(20)の前面に形成しても、図2に示すように裏面に形成してもよい。例えば図1に示すように、この反射板でなる反射層(20)の前面に形成する場合には、太陽電池(30)の観察者側(K)の前面側電極(36)には、光透過率制御層(10)としての液晶(16)のITO等でなる透明電極(12)を共用で用いることが出来る他に、反射板の反射面にはクロムや銀等の反射光率の高い反射層(20)を形成する必要があり、太陽電池(30)の背面側電極(38)と共用可能とすることができる。この場合には、反射された光が再び太陽電池(30)の光電気変換層を通ることから変換効率がさらに高くすることができる。
【0031】
また、図2に示すように、太陽電池(30)を反射層の背面に形成する場合には、この反射層は、太陽電池(30)の前面側電極(36)を兼ねるとともに、電気エネルギーに変換可能な波長の光を背面の太陽電池(30)側に透過させる機能を有する選択的反射層(22)とする必要がある。この場合、選択的反射層(22)としては光学干渉膜や光学多層膜などによる透過波長域を選択出来る膜を用いることによってこの機能を補うことができる。
【0032】
上記光学干渉膜等の透過波長域を選択可能な選択的反射層(22)としての材料の選択については、多くは公知であるとともに、本発明の主旨から離れるのでここでは説明しない。反射材も光学干渉膜や光学多層膜によって構成するなどの様々な方法があるが、同様の理由でここに説明しない。
【0033】
以上説明したように、情報を表示するディスプレイの画面に亘って太陽電池を構成すれば電力供給機能を果たし、従来の太陽電池のようにその形成がディスプレイ面でも可能な為に、大きな電力の供給が可能となる。
【0034】
また、反射型液晶ディスプレイ面以外に太陽電池の受光面を形成する必要がないから、カード型の携帯用情報処理端末等、表面全体をディスプレイとすることも可能である。
【0035】
さらに、反射型カラー液晶ディスプレイについて説明すると、太陽電池付きとする場合には、次のようにカラーパターンに添った構成とすることで十分な精彩度と明るさを維持した反射型液晶ディスプレイを構成することが出来る。すなわち、前述したように、可視光に対して光電気変換能力を持つ膜はそれ特有の色を持つものであり、このため、図3に示すように、画像表示面の各色(R、G、B)パターンをもつカラーフィルター(50)の分布にあわせて太陽電池(30)を構成することで、画像表示等で必要な目的とする色の再現が可能となる。
【0036】
例えば、図4はカラーフィルター(50)の赤色(R)パターンの部分にのみアモルフアスシリコンを用いた太陽電池(30)を構成した例である。また、cdsを用いた場合は、青色(B)より短波長を吸収することから、黄色を表現することが出来る。さらに、この部分に顔料などによる赤を吸収する色材による膜を形成すれば緑(G)のパターンを形成することが可能となる。
【0037】
このように、各色(R、G、B)パターンに対して部分的に選択的に太陽電池(30)を選択すれば、太陽電池(30)のために供することのできる面積がより広く確保出来、さらに自由な色再現が可能になる利点を持つものである。また、太陽電池(30)の光電気変換膜自体にカラーフィルターの役割を果たさせ、太陽電池(30)の背面側電極(38)を反射層(20)としても、また、顔料入りレジストによりなるカラーフィルターを併用することによっても本発明は制限されるものではない。さらに、各色(R、G、B)パターンに追従して太陽電池(30)の光電気変換膜の材料構成を変えることは、フォトリソ工程などの公知の技術によって可能なことは明白である。
【0038】
また、太陽電池(30)の吸収する波長領域は、太陽電池(30)を構成するN型半導体(32)とP型半導体(34)のハンド構造に起因することから、例えば、イオンドープと呼ばれる処理によって光の吸収波長を変え、色調を走査することが可能である。この場合に、画素のパターン化は、フォトリソ工程を用いて1色づつ構成してもよいし、ドープする原子やその量を各パターンに分けることによって構成しても良い。
【0039】
また、カラーフィルター(50)に太陽電池(30)を構成する場合、既に従来のカラーフィルターの構成要素になっているブラックマトリックス(BK)をそのままカラーフィルターの電極として採用することが出来る。現在の液晶ディスプレイに用いられるブラックマトリックスは、クロムで構成されるものが多い。しかし、金属クロムのように全く光を透過しない材料でなくとも、透明若しくは半透明の材料を観察者側に用いれば、この部分でも発電を行えるのは明白である。
【0040】
また、図5に示すように、ブラックスマトリックス(BM)の部分を幹として、透明電極(12)をそれの裏或いは表に構成すれば、さらに効率よく電力取りだし電極として働くことは明らかである。この透明電極(12)が反射型液晶ディスプレイの前面に形成されているかあるいは一部なのかは本発明では問わない。もしその幅が広ければ、光の透過率は多少であるが制限を受ける。しかし、電力取り出しが電気的に効率が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態を示す太陽電池付反射型液晶ディスプレイを側断面で表した説明図である。
【図2】本発明の他の一実施の形態を示す太陽電池付反射型液晶ディスプレイを側断面で表した説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す太陽電池付反射型カラー液晶ディスプレイを側断面で表した説明図である。
【図4】本発明の他の一実施の形態を示す太陽電池付反射型カラー液晶ディスプレイを側断面で表した説明図である。
【図5】本発明のさらに他の一実施の形態を示す太陽電池付反射型カラー液晶ディスプレイを側断面で表した説明図である。
【図6】本発明に係わる従来の平面型画像表示ディスプレイを側断面で表した説明図である。
【図7】本発明に係わるカラーフィルターの一例を側断面で表した説明図である。
【図8】本発明に係わるカラーフィルターの透過スペクトルを示すグラフである。
【図9】本発明に係わる従来のELディスプレイの一例を側断面で表した説明図である。
【図10】本発明に係わる従来のカラー液晶ディスプレイの一例を側断面で表した説明図である。
【図11】本発明に係わる従来のカラー液晶ディスプレイの他の例を側断面で表した説明図である。
【図12】本発明に係わる従来のカラー液晶ディスプレイのさらに他の例を側断面で表した説明図である。
【図13】本発明に係わる太陽電池の一例を示す側断面図である。
【図14】本発明に係わる太陽電池の光電変換層の一例における光吸収曲線である。
【符号の説明】
【0042】
1‥‥太陽電池付反射型ディスプレイ
2‥‥太陽電池付反射型液晶ディスプレイ
5‥‥カラーフィルター基板
10‥‥光透過率制御層
12‥‥透明電極
13‥‥MIMダイオード
14‥‥エレクトロルミネッセンス発光素子
16‥‥液晶
20‥‥反射層
22‥‥選択的反射層
30‥‥太陽電池
32‥‥N型半導体
34‥‥P型半導体
36‥‥前面側電極
38‥‥背面側電極
40‥‥発光層
50‥‥カラーフィルター
52‥‥ガラス基板
54‥‥偏光板
BM‥‥ブラックマトリックス
K‥‥観察者側
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に形成された多数の画素の相互の明暗の差あるいは色彩変化によって情報を観察者に視覚的に与え、観察者側に周囲光を反射し、光が反射される前後の行路において光の吸収あるいは遮光によって画像や文字情報を表示する反射型ディスプレーであって、観察者側から、少なくとも光の吸収あるいは遮光を行う光透過率制御層、太陽電池、反射層の順で構成される太陽電池付反射型ディスプレイにおいて、該光透過率制御層と太陽電池の間に選択的反射層を設け、該選択的反射層が、特定色のみを観察者側に反射する光学干渉膜または光学多層膜で構成されてなることを特徴とする太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項2】
前記各画素の画素間領域に対応して導電性パターンを形成し、該導電性パターン自体を太陽電池の電極もしくはその一部とすることを特徴とする請求項1記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項3】
前記光透過率制御層より背面側(観察者側と反対側)に、赤、緑、青の3色パターンとブラックマトリックスで構成されるカラーフィルターを配設し、前記選択的反射層より前面側(観察者側)に該ブラックマトリックスと少なくとも部分的にそのパターンを一にする太陽電池の前面側電極を有することを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項4】
前記光の吸収あるいは遮光を電気的制御に用いられる電極のうち、背面側の電極を太陽電池の前面側電極と共用とすることを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項5】
前記太陽電池の観察者側にある選択的反射層における可視光領域(波長400nm〜700nm)の光の反射率の平均値が50%を越え、かつ該選択的反射層を該太陽電池の前面側電極として共用することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項6】
前記3色の配色パターンのうち1色あるいは2色の画素の領域にのみ太陽電池機能(光電気変換機能)を持たせることによって、前記以外の配色パターンの光の反射率を確保することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項7】
前記カラーフィルターの1色あるいは2色の配色パターン領域について、配色の反射領域の光の透過率を他の配色部分とは異なる太陽電池の光電変換膜を形成してなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項8】
前記光透過率制御層は、反射型液晶表示素子またはエレクトロルミネッセンス表示素子よりなる請求項1から7のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項1】
周期的に形成された多数の画素の相互の明暗の差あるいは色彩変化によって情報を観察者に視覚的に与え、観察者側に周囲光を反射し、光が反射される前後の行路において光の吸収あるいは遮光によって画像や文字情報を表示する反射型ディスプレーであって、観察者側から、少なくとも光の吸収あるいは遮光を行う光透過率制御層、太陽電池、反射層の順で構成される太陽電池付反射型ディスプレイにおいて、該光透過率制御層と太陽電池の間に選択的反射層を設け、該選択的反射層が、特定色のみを観察者側に反射する光学干渉膜または光学多層膜で構成されてなることを特徴とする太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項2】
前記各画素の画素間領域に対応して導電性パターンを形成し、該導電性パターン自体を太陽電池の電極もしくはその一部とすることを特徴とする請求項1記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項3】
前記光透過率制御層より背面側(観察者側と反対側)に、赤、緑、青の3色パターンとブラックマトリックスで構成されるカラーフィルターを配設し、前記選択的反射層より前面側(観察者側)に該ブラックマトリックスと少なくとも部分的にそのパターンを一にする太陽電池の前面側電極を有することを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項4】
前記光の吸収あるいは遮光を電気的制御に用いられる電極のうち、背面側の電極を太陽電池の前面側電極と共用とすることを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項5】
前記太陽電池の観察者側にある選択的反射層における可視光領域(波長400nm〜700nm)の光の反射率の平均値が50%を越え、かつ該選択的反射層を該太陽電池の前面側電極として共用することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項6】
前記3色の配色パターンのうち1色あるいは2色の画素の領域にのみ太陽電池機能(光電気変換機能)を持たせることによって、前記以外の配色パターンの光の反射率を確保することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項7】
前記カラーフィルターの1色あるいは2色の配色パターン領域について、配色の反射領域の光の透過率を他の配色部分とは異なる太陽電池の光電変換膜を形成してなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【請求項8】
前記光透過率制御層は、反射型液晶表示素子またはエレクトロルミネッセンス表示素子よりなる請求項1から7のいずれか1項に記載の太陽電池付反射型ディスプレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−134661(P2008−134661A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33029(P2008−33029)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【分割の表示】特願平10−100956の分割
【原出願日】平成10年4月13日(1998.4.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【分割の表示】特願平10−100956の分割
【原出願日】平成10年4月13日(1998.4.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]