説明

太陽電池封止材用樹脂組成物、及びそれを用いた太陽電池封止材、その製造方法、ならびに太陽電池モジュール

【課題】 優れた難燃性を有し、しかも、二度練り等の必要がなく生産性にも優れる太陽電池封止材用樹脂組成物及びそれを用いた太陽電池封止材、その製造方法、ならびに太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】 オレフィン系樹脂材料(X)100重量部に対して、有機過酸化物(B)0.1〜5重量部、及びポリリン酸塩系難燃剤(C)5〜100重量部を含むことを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物などにより提供する。オレフィン系樹脂材料(X)は、エチレン−α−オレフィン共重合体(A1)またはエチレン−ビニルエステル共重合体(A2)から選ばれるエチレン共重合体(A)であることが好ましい。ポリリン酸塩系難燃剤(C)は、イントメッセント系難燃剤であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池封止材用樹脂組成物、及びそれを用いた太陽電池封止材、その製造方法、ならびに太陽電池モジュールに関し、さらに詳しくは、有機過酸化物とエチレン共重合体を必須とした太陽電池封止材において、優れた難燃性を有し、二度練り等の必要がなく効率的に生産しうる太陽電池封止材用樹脂組成物、及びそれを用いた太陽電池封止材、その製造方法、ならびに太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の増加など地球環境問題がクローズアップされる中で、水力、風力、地熱などの有効利用とともに太陽光発電が再び注目されるようになった。
太陽光発電は、一般にシリコン、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレンなどの太陽電池素子を上部透明保護材と下部基板保護材とで保護し、太陽電池素子と保護材とを樹脂製の封止材で固定し、パッケージ化した太陽電池モジュールを用いるものであり、水力、風力などと比べて規模は小さいものの、電力が必要な場所に分散して配置できることから、発電効率等の性能向上と価格の低下を目指した研究開発が推進されている。また、国や自治体で住宅用太陽光発電システム導入促進事業として設置費用を補助する施策が採られることで、徐々にその普及が進みつつある。しかしながら、更なる普及には一層の低コスト化が必要であり、そのため従来型のシリコンやガリウム−砒素などに代わる新たな素材を用いた太陽電池素子の開発だけでなく、太陽電池モジュールの製造コストをより一層低減する努力も地道に続けられている。
【0003】
太陽電池モジュールを構成する太陽電池封止材の条件としては、太陽電池の発電効率を低下しないように、太陽光の入射量を確保するため、透明性が良好なことが求められている。また、太陽電池モジュールは通常、屋外に設置されるから長期間太陽光に晒され温度上昇する。それにより樹脂製の封止材が流動し、モジュールが変形したりするトラブルを避けるために、耐熱性を有するものでなければならない。また年々、太陽電池素子の材料コストを削減するために薄肉化が進んでおり、一層柔軟性に優れた封止材も求められている。
【0004】
現在、太陽電池モジュールにおける太陽電池素子の封止材では、柔軟性、透明性等の観点から、酢酸ビニル含量の高いエチレン・酢酸ビニル共重合体が樹脂成分として採用され、これに有機過酸化物が架橋剤として併用されている(たとえば、特許文献1参照)。
そして、太陽電池素子の封止作業では、太陽電池素子を樹脂製の封止材でカバーした後、数分から十数分程度加熱して仮接着し、オーブン内において有機過酸化物が分解する高温で数分から1時間加熱処理して接着させている(たとえば、特許文献2参照)。
【0005】
一方、太陽電池モジュールの製造コストを抑えるために、封止作業に要する時間のさらなる短縮が求められており、封止材の樹脂成分であるエチレン・酢酸ビニル共重合体に代わり、結晶化度が40%以下の非晶性又は低結晶性のα−オレフィン系共重合体からなる太陽電池封止材が提案されている(特許文献3参照)。この特許文献3には、非晶性又は低結晶性のエチレン・ブテン共重合体に、有機過酸化物を混合し、異型押出機を用いて加工温度100℃でシートを作製することが例示されているが、加工温度が低いため十分な生産性は得られない。
【0006】
また、太陽電池モジュールは、住宅等の建築物に取り付けて使用されるために将来的には難燃性が要求される。太陽電池モジュールを構成する樹脂製封止材は、易燃性であるエチレン・酢酸ビニル共重合体やα−オレフィン系共重合体などのエチレン系重合体を主成分としているために、難燃剤を添加して難燃性を具える必要がある。このような太陽電池封止材として、エチレン−酢酸ビニル共重合体にハロゲン系有機難燃剤や水酸化無機塩などの難燃剤を配合した太陽電池用封止膜(特許文献4)などが提案されているが、現実には、下記の問題があり、まだ実用化されていない。
例えば、ハロゲン系難燃剤は、難燃効果が高いものの燃焼して腐食性ガスを発生して太陽電池素子に悪影響を与える恐れがある。また、水酸化マグネシウムなどの無機水酸化物からなる難燃剤は、難燃効果を得るためには多量に配合する必要があり、それにより透明性を損ない、更に、多量の無機水酸化物を混合する過程で発熱を伴い有機過酸化物の分解を誘発する問題が生じる。そのため、混練工程を2度に分けて行い、しかも難燃剤を封止材の下部にのみ配合することが提案されているが(特許文献5)、生産効率および難燃性の面で十分とはいえない。
このように従来の技術では、難燃性を有し、かつ透明性を害せず、生産効率も損なわない難燃性に優れた太陽電池封止材用樹脂組成物を得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−116182号公報
【特許文献2】特開2003−204073号公報
【特許文献3】特開2006−210906号公報
【特許文献4】特開平9−027633号公報
【特許文献5】特開平8−316508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、有機過酸化物とエチレン共重合体を必須とした太陽電池封止材の材料として使用され、優れた難燃性を有し、透明性を損なわずに、しかも、二度練り等の必要がなく生産性にも優れる太陽電池封止材用樹脂組成物及びそれを用いた太陽電池封止材、その製造方法、ならびに太陽電池モジュールを提供することにある。
【0009】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、エチレン共重合体などの樹脂成分に対して、有機過酸化物及びポリリン酸塩系難燃剤を特定量配合することにより、難燃性に優れるだけでなく、耐熱性など封止性能に優れる太陽電池封止材用樹脂組成物が得られ、しかも、二度練り等の必要がないため生産効率も向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、オレフィン系樹脂材料(X)100重量部に対して、有機過酸化物(B)0.1〜5重量部、及びポリリン酸塩系難燃剤(C)5〜100重量部を含むことを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記オレフィン系樹脂材料(X)が、エチレン−α−オレフィン共重合体(A1)またはエチレン−ビニルエステル共重合体(A2)から選ばれるエチレン共重合体(A)であることを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、前記α−オレフィン系重合体(A)が下記の特性(a1)〜(a2)を満足するエチレン−α―オレフィン共重合体(A1)であることを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物が提供される。
(a1)密度が0.86〜0.92g/cm
(a2)190℃、21.18N荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.05〜50g/10分
【0013】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜第3のいずれかの発明において、前記ポリリン酸塩系難燃剤(C)が、イントメッセント系難燃剤であることを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜第4のいずれかの発明において、前記樹脂材料(X)は、さらに、架橋助剤(F)、シランカップリング剤(G)、酸化防止剤(H)、紫外線吸収剤(I)および光安定剤(J)からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含むことを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物が提供される。
【0015】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜第5のいずれかの発明の太陽電池封止材用樹脂組成物を押出成形してなる太陽電池用封止材が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜第5のいずれかの発明において、上部封止材層と下部封止材層の少なくとも2層以上で構成される封止材であって、少なくとも下部封止材層が前記太陽電池封止材用樹脂組成物からなる太陽電池用封止材が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、オレフィン系樹脂材料(X)、有機過酸化物(B)およびポリリン酸塩系難燃剤(C)を含む樹脂組成物を、該有機過酸化物の急速分解温度以下の温度で溶融押し出しし、シート成形することを特徴とする太陽電池封止材の製造方法が提供される。
一方、本発明の第9の発明によれば、第6又は第7の発明の太陽電池用封止材を含むことを特徴とする太陽電池モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、太陽電池封止材用樹脂組成物が、樹脂成分であるオレフィン系樹脂材料に対してポリリン酸塩系難燃剤を特定量含むため、難燃性に優れており、樹脂成分への分散性が高いために、二度練り等の必要がないことから効率的に生産できるという効果がある。
また、オレフィン系樹脂材料として、シングルサイト触媒で製造された分子量分布の狭い特定のエチレン・α−オレフィン重合体を用いることで、加工性と表面外観が良好な太陽電池封止材が得られる。
さらに、架橋剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤,光安定剤などの添加剤を配合することにより、難燃性を有するだけでなく、耐熱性、透明性、柔軟性、接着性等の太陽電池用封止材に要求される諸性能を保持した太陽電池封止材が得られ、太陽電池モジュールの生産性も大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の太陽電池封止材用樹脂組成物は、オレフィン系樹脂材料(X)、有機過酸化物(B)およびポリリン酸塩系難燃剤(C)を含有してなることを特徴とする。
【0018】
I.太陽電池封止材用樹脂組成物
本願発明においてオレフィン系樹脂材料(X)とは、エチレン共重合体(A)、すなわちエチレンを主成分とし、これと共重合可能な単量体との共重合体であって、より具体的には、エチレンと酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステルの共重合体、エチレンとアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステルの共重合体、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸の共重合体またはそのアイオノマー、エチレン・ビニルエステル・不飽和カルボン酸共重合体またはそのアイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体またはそのアイオノマー、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンの共重合体またはその酸変性体、あるいはこれらの2種以上の混合物などを例示することができる。これらエチレン共重合体(A)には、必要に応じて、他のポリオレフィン系樹脂を併用することができる。
これらの中では、特にエチレン・ビニルエステルの共重合体(A1)、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(A2)及びエチレン・α―オレフィン共重合体(A3)が好ましい。
【0019】
1.エチレン・ビニルエステル共重合体(A1)
エチレン・ビニルエステル共重合体(A1)は、高圧ラジカル重合法で製造されるエチレンを主成分とするプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニル等のビニルエステル単量体との共重合体である。これらの中でも特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。
エチレン50〜99.5重量%に対して、ビニルエステルが0.5〜50重量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5重量%からなる共重合体が好ましい。ビニルエステルが、好ましくは3〜50重量%、とくに5〜40重量%の割合で共重合されたものを用いるのがよい。この共重合体において、極性単量体の重合割合が少ないものは、融点が高く低温度でシート成形しにくいという欠点があり、また無機系充填剤との親和性に劣り、一方あまり極性単量体の共重合割合が多いものを用いると、強度が弱くまたべたつきが多くなるので望ましくない。
これらはまた、シートの押出成形性、得られるシートの外観やべたつき等を考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜50g/10分、0.1〜40g/10分であり、溶融張力は2.0〜25g、好ましくは3〜20gである。
【0020】
2.エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(A2)
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(A2)は、エチレンと特定量の不飽和カルボン酸エステルとの共重合体であって、不飽和カルボン酸エステルが15〜40重量%、好ましくは20〜35重量%の割合で共重合されているものを用いるのがよい。この共重合体において、極性単量体の重合割合が少ないものは、融点が高く低温度でシート成形しにくいという欠点があり、また無機充填剤との親和性に劣り、一方あまり極性単量体の共重合割合が多いものを用いると、強度が弱くまたべたつきが多くなるので望ましくない。
これらはまた、シートの押出成形性、得られるシートの外観やべたつき等を考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜50g/10分、0.1〜40g/10分のものを使用するのが望ましい。
【0021】
3.エチレン・α−オレフィン共重合体(A3)
本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体(A3)としては、エチレンを主成分とする他のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンを主成分とする他のα−オレフィンとの共重合体が挙げられ、他のα−オレフィンの1種または2種以上を副成分とし、必要に応じて、ジエンモノマーを少量共重合させた共重合体を包含するものであり、特に、X線による結晶化度40%以下のα−オレフィン系重合体、とりわけ、密度が0.86〜0.92g/cmのエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
α−オレフィンとしては、炭素数3〜12、好ましくは3〜10の範囲、具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−へキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等を挙げることができる。これらα−オレフィンの含有量は、3〜40モル%の範囲で選択されることが好ましい。これらα−オレフィンは、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
【0022】
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレン重合単位を50〜90モル%、好ましくは70〜85モル%、エチレン以外のα−オレフィン重合単位を50〜10モル%、好ましくは30〜15モル%、必要に応じてジエンモノマー重合単位を5モル%以下、好ましくは2モル%以下含有するものを挙げることができる。
【0023】
ここでα−オレフィンの含有量は、下記の条件の13C−NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子製JEOL−GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
【0024】
エチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体等の二元共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・1−オクテン共重合体、エチレン・1−ブテン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−ブテン・1−オクテン共重合体三元共重合体等が挙げられる。
【0025】
また、ジエンモノマーを少量共重合させた共重合体としては、エチレン・プロピレン・ジシクペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・1,6−ヘキサジエン共重合体等を例示することができる。
これらの中ではとくに、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体等の二元共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体等の三元共重合体が好ましい。
【0026】
上記の本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体(A3)の中でも、特に下記の特性(a1)〜(a2)を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
(a1)密度が0.86〜0.92g/cm
(a2)190℃、21.18N荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.05〜50g/10分
【0027】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体(A3)の(a1)密度は、0.86〜0.92g/cm、好ましくは0.87〜0.91g/cm、より好ましくは0.88〜0.908g/cmの範囲である。上記密度がこの範囲であると、透明性、柔軟性、耐熱性等を兼ね備えた太陽電池用封止材の提供が容易に可能となる。
一方、密度が0.86g/cm未満であると、シートが柔らかすぎて取り扱い作業性が低下し、かつ耐熱性が劣るものとなる。また、密度が0.92g/cmを超えると、シートの柔軟性が損なわれるおそれが生じ、かつ、透明性が劣るものとなるおそれが生じる。
【0028】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体(A3)の(a2)メルトフローレート(MFR)は、190℃、21.18N荷重下で測定したMFRが0.05〜50g/10分、特に0.1〜45g/10分のものを使用するのが好ましい。上記MFRが0.05g/10分未満では、高速時の成形加工性が悪化し、生産性が低下する懸念が生じる。一方、MFRが50g/10分を超える場合には、機械的強度の低下等が起こり、シートの薄肉化等ができないなどの懸念が生じる。
【0029】
上記エチレン・α−オレフィン共重合体(A3)は、さらに、(a3)ポリマー中のコモノマーによる分岐数(N)と、引張弾性率(E)が下記式(a)を満たしていることが好ましい。
式(a): N ≧ −0.67×E+53
(但し、Nは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの分岐数であり、Eは、ISO1184−1983に準拠して測定した、シートの引張弾性率である。)
ここで、ポリマー中のコモノマーによる分岐数(N)は、例えば、E.W.Hansen,R.Blom,and O.M.Bade,Polymer,36巻4295頁(1997年)を参考に、13C−NMRスペクトルから算出することができる。
【0030】
太陽電池モジュールでは、太陽電池素子の薄膜化に伴い、上部保護材がガラスからフィルムに置き換えられたものも普及してきている。ところが上部保護材側から衝撃が加わると、配線が断線しやすいため、封止材の剛性を高くすることが求められる。高分子鎖の分岐度が低い共重合体であれば、架橋後の共重合体の剛直性が強まるので、高剛性の封止材として有用である。しかし、剛性を高くすると、架橋効率が悪くなるので、高分子鎖の分岐度がある程度高い共重合体を用いて、架橋前の共重合体の流動性を向上させ、成形性に優れた材料として使用する必要がある。
本発明では、エチレン・α−オレフィン共重合体のコモノマーによる分岐数(N)が式(a)を満たすポリマー構造となっているので、剛性と架橋効率のバランスが良好である。
【0031】
さらに、本発明では、特性(a3)の関係式は、下記式(a’)で示されることが好ましい。また、特性(a3)の関係式は、下記式(a’’)であることがより好ましい。
式(a’): −0.67×E+80 ≧ N ≧ −0.67×E+53
式(a’’): −0.67×E+75 ≧ N ≧ −0.67×E+54
【0032】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体は、上述した様に、触媒を用いた共重合反応により製造できるが、共重合させる原料単量体の組成比や使用する触媒の種類を選択することにより、その高分子鎖中の分岐度を容易に調整することが可能である。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体が式(a)を満たすためには、エチレン・α−オレフィン共重合体中のコモノマーは、プロピレン、1−ブテン、又は1−ヘキセンから選択するのが好ましい。また、気相法、高圧法を用いて製造するのが好ましく、特に、高圧法を選択するのがより好ましい。
より具体的には、シートの引張弾性率のEを固定して、分岐数のNを増減させるためには、主にエチレンと共重合させるコモノマーの炭素数を変更する方法によることができる。エチレンに対して、1−ブテン又は1−ヘキセンの量が60〜80wt%となるように混合し、メタロセン触媒を使用して、重合温度130〜200℃で反応させ、エチレン・α−オレフィン共重合体を製造することが好ましい。
これにより、エチレン・α−オレフィン共重合体の分岐数Nが適度に調整でき、得られるシートの引張弾性率Eが、40MPa以下となって、式(a)が示す範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。
【0033】
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A3)は、さらに、(a4)フローレシオ(FR)、すなわち190℃における10kg荷重でのMFR測定値であるI10と、190℃における2.16kg荷重でのMFR測定値であるI2.16との比(I10/I2.16)が7.0未満であることが好ましい。なお、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210−1999に準拠して測定した値である。
【0034】
FRは、エチレン・α−オレフィン共重合体の分子量分布、長鎖分岐の量と相関が深いことが知られている。
本発明では、上記(a1)〜(a4)の条件を満たすポリマーの中でも、190℃における10kg荷重でのMFR測定値(I10)と、190℃における2.16kg荷重でのMFR測定値(I2.16)との比(I10/I2.16)が7.0未満であるものを使用する。このような長鎖分岐に特徴があるポリマー構造となっている共重合体を用いることにより、剛性と架橋効率のバランスが良好なものとなる。これに対して、FRが7.0以上であると、太陽電池封止材として、架橋する際の架橋効率が悪くなる傾向にある。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体のFRは、7.0未満であり、好ましくは、6.5未満、より好ましくは、6.3未満である。ただし、FRが5.0未満であると、太陽電池封止材として、十分な剛性が得られ難くなることがある。特性(a6)のフローレシオ(FR)は、5.0〜6.2であることが最も好ましい。
【0035】
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体は、さらに、(a5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下である。
また、Mz/Mnは、2.0以上が好ましく、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上である。ただし、Mz/Mnが8.0を超えると、透明性が悪化する。(Mz/Mn)を所定の範囲に調整するには、適当な触媒系を選択する方法等によることができる。
【0036】
なお、Mz/Mnの測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行い、測定条件は、次のとおりである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工製AD806M/S 3本
(カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いて、ポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンは、α=0.733、logK=−3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
【0037】
なお、Z平均分子量(Mz)は、高分子量成分の平均分子量への寄与が大きいので、Mz/Mnは、Mw/Mnに比べて、高分子量成分の存在を確認しやすい。高分子量成分は、透明性に影響を与える要因であり、高分子量成分が多いと、透明性は悪化する。また、架橋効率も悪化する傾向が見られる。よって、Mz/Mnは、小さい方が好ましい。
上記MFRが0.05g/10分未満では、高速成形時の加工性が悪化し、生産性が低下する懸念が生じる。また、MFRが50g/10分を超える場合には、機械的強度の低下等が起こり、シートの薄肉化等ができないなどの懸念が生じる。
【0038】
エチレン・α−オレフィン共重合体は、チーグラー触媒、バナジウム触媒又はメタロセン触媒等、好ましくはバナジウム触媒又はメタロセン触媒、より好ましくはメタロセン触媒を使用して製造することができる。製造法としては、高圧イオン重合法、気相法、溶液法、スラリー法等が挙げられる。特に、メタロセン触媒を使用し、高圧イオン重合法で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0039】
シングルサイト触媒であるメタロセン触媒としては、特に限定されるわけではないが、好ましくはシクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物と助触媒とを触媒成分とする触媒が挙げられる。
エチレン・α−オレフィン共重合体の市販品としては、日本ポリエチレン社製のハーモレックス(登録商標)シリーズ、カーネル(登録商標)シリーズ、プライムポリマー社製のエボリュー(登録商標)シリーズ、住友化学社製のエクセレン(登録商標)GMHシリーズ、エクセレン(登録商標)FXシリーズ等が挙げられる。
また、バナジウム触媒としては、可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウムハライドとを触媒成分とする触媒が挙げられる。
【0040】
3.他のポリオレフィン系樹脂
本発明における他のポリオレフィン系樹脂とは、高圧ラジカル重合法による低密度ポリエチレンをはじめ、チーグラー触媒、バナジウム触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等のイオン重合法による密度0.86〜0.91g/cm未満の超低密度ポリエチレン、また、0.91〜0.94g/cm未満の直鎖状低密度ポリエチレン、あるいは0.94〜0.97g/cmの高密度ポリエチレン、さらにはエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと他のα−オレフィン共重合体、及び官能基含有ポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。
本発明のオレフィン系樹脂材料に、これら他のポリオレフィン系樹脂を配合することで、柔軟性や成形加工性等を付与することができる。
【0041】
(1)低密度ポリエチレン(LDPE)
上記高圧ラジカル重合法による低密度ポリエチレン(LDPE)は、190℃、21.18N荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.05〜100g/10分、好ましくは0.1〜70g/10分、さらに好ましくは0.5〜50g/10分である。この範囲内であれば組成物の溶融張力が適切な範囲となりシート成形がし易い。
密度は、0.905〜0.940g/cm、好ましくは0.910〜0.938g/cm、さらに好ましくは0.912〜0.935g/cmである。
溶融張力は、1.5〜25g、好ましくは3〜20g、さらに好ましくは3〜15gである。
また、Mw/Mnは、3.0〜15、好ましくは4.0〜10である。溶融張力、Mw/Mnは、樹脂の弾性項目であり、上記の範囲であれば、シート成形がし易い。なお、ここでいうMw/Mnは、GPC分析による重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)である。
【0042】
(2)イオン重合による直鎖状ポリエチレン
本発明に係るイオン重合による直鎖状ポリエチレンとは、密度0.86〜0.97g/cmのエチレン単独重合体またはエチレン−α−オレフィン共重合体として、0.86〜0.91g/cm未満の超低密度ポリエチレン(VLDPE)、0.91g/cm〜0.94g/cm未満の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、0.94g/cm以上の直鎖状中・高密度ポリエチレン(MDPE・HDPE)等が挙げられる。
【0043】
本発明で用いられる直鎖状ポリエチレンの超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状中・高密度ポリエチレン(MDPE・HDPE)は、密度が0.86〜0.97g/cm、190℃、21.18N荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.05〜50g/10分、好ましくは0.1〜45g/10分、さらに好ましくは0.5〜40g/10分の範囲で選択される。
これらの中でも、特に柔軟性、透明性等の点から超低密度ポリエチレン(VLDPE)および低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
超低密度ポリエチレン(VLDPE)および低密度ポリエチレン(LLDPE)の分子量分布(Mw/Mn)は、2.0〜6.0、好ましくは2.5〜5.0、より好ましくは2.8〜4.0の範囲である。この範囲であると、柔軟性、透明性等のバランスのとれたシートの提供が可能である。
【0044】
(3)エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム
本発明に係るエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムとしては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、エチレン−1−ブテン共重合体ゴム等が挙げられる。
【0045】
(4)プロピレンの単独重合体またはプロピレンと他のα−オレフィン共重合体
本発明に係るプロピレン系重合体としては、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと他のα−オレフイン共重合体であって、アイソタックチックプロピレン単独重合体、シンジオタクチックプロピレン重合体、プロピレンとエチレン、ブテン−1等のα−オレフィンとのランダム重合体、ブロック重合体等が例示される。これらの中でも、柔軟性、透明性等の点から、ランダム重合体が好ましい。
【0046】
(5)官能基含有ポリオレフィン系樹脂
本発明に係る官能基含有ポリオレフィン系樹脂とは、下記の官能基含有化合物(a)〜(f)とオレフィンとの共重合体、またはポリオレフィン系樹脂にラジカル発生剤の存在下で官能基含有化合物(a)〜(f)変性グラフトして得られる官能基変性ポリオレフィン系樹脂を包含するものである。
官能基含有ポリオレフィン系樹脂は、一種でも、二種以上の併用であってもよい。
【0047】
(1)官能基含有化合物
本発明に係る官能基含有ポリオレフィン系樹脂の官能基含有化合物は、エポキシ基含有化合物(a)、不飽和カルボン酸基含有化合物またはその誘導体(b)、エステル基含有化合物(c)、ヒドロキシル基含有化合物(d)、アミノ基含有化合物(e)、及びシラン基含有化合物(f)の群から選択される少なくとも1種の化合物であり、エポキシ基含有化合物(a)、又は不飽和カルボン酸基含有化合物またはその誘導体(b)が好ましい。
【0048】
(a)エポキシ基含有化合物
エポキシ基含有化合物としては、例えばフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、エポキシ化植物油などが挙げられる。
【0049】
(b)不飽和カルボン酸基含有化合物またはその誘導体
本発明において使用する不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、カルボン酸基または酸無水基含有化合物から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
例えば、一塩基性不飽和カルボン酸、二塩基性不飽和カルボン酸、ならびに、これらの金属塩、アミド、イミド、エステルおよび無水物が挙げられる。一塩基性不飽和カルボン酸の炭素数は20個以下、好ましくは15個以下、また二塩基性不飽和カルボン酸の炭素数は30個以下、好ましくは25個以下であり、誘導体の炭素数は30個以下、好ましくは25個以下である。これら不飽和カルボン酸基含有化合物およびその誘導体の中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびその無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸およびその無水物、ならびにメタクリル酸グリシジルが好ましく、特に無水マレイン酸、5−ノルボルネン酸無水物が、樹脂組成物の接着性能が優れることから好適である。
【0050】
また、好ましい共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・無水マレイン酸・酢酸ビニル共重合体、エチレン・無水マレイン酸・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・無水マレイン酸・アクリル酸エチル共重合体等の二元又は三元共重合体が挙げられる。
【0051】
不飽和カルボン酸基含有化合物またはその誘導体の含有量は、官能基含有ポリオレフィン系樹脂(C)中に、0.05〜5.0重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%、特に好ましくは0.2〜2重量%である。この含有量の範囲であれば、未反応モノマーが増加することなく、十分な接着性能を付与することができる。
【0052】
(c)エステル基含有化合物
エステル基含有化合物としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどが例示でき、特に好ましいものとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルを挙げることができる。
【0053】
上記の具体的な製品としては、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(住友化学製、アクリフト(登録商標)CM502)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ユニカー製、NUC(登録商標)−6570)が市販されている。
エステル基含有化合物の含有量は、官能基含有ポリオレフィン系樹脂(C)中に、5.0〜40.0重量%が好ましく、より好ましくは10〜30.0重量%、特に好ましくは15.0〜25.0重量%である。この範囲の含有量であれば、官能基含有ポリオレフィン系樹脂(C)の柔軟性や接着性が発現する。
【0054】
上記エステル基含有化合物とエチレン共重合体には、エチレンの他に他の不飽和単量体として、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数3〜10のオレフィン類、C〜Cアルカンカルボン酸のビニルエステル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸および無水マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物類などの群から選ばれた少なくとも1種を使用することが可能である。
【0055】
上記エチレン共重合体は、エチレン65〜99.5重量%、不飽和カルボン酸またはそのエステル0.5〜35重量%および他の不飽和単量体0〜25重量%からなる共重合体が好ましい。
これらエチレン共重合体のMFRは、0.05〜50g/10分、好ましくは0.1〜45g/10分の範囲で選択される。
【0056】
(d)ヒドロキシル基含有化合物
ヒドロキシル基含有化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト等が挙げられる。
ヒドロキシル基含有化合物の含有量は、官能基含有ポリオレフィン系樹脂(C)中に、0.05〜5.0重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%、特に好ましくは0.2〜2重量%である。この範囲の含有量であれば、未反応モノマーが増加することなく、十分な接着性能を付与することができる。
【0057】
(e)アミノ基含有化合物
アミノ基含有化合物としては、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ基含有化合物の含有量は、官能基含有ポリオレフィン系樹脂(C7)中に、0.05〜5.0重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%、特に好ましくは0.2〜2重量%である。この範囲の含有量であれば、未反応モノマーが増加することなく、十分な接着性能を付与することができる。
【0058】
(f)シラン基含有化合物
シラン基含有化合物としては、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセチルシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリスメチルエチルケトオキシムシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等のビニルシラン類、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン等のアクリルシラン類、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン等のメタクリルシラン類、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルメチルジメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のスチリルシラン類等の不飽和シラン化合物が挙げられる。
なお、これらの不飽和シラン化合物は、単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。
シラン基含有化合物の含有量は、官能基含有ポリオレフィン系樹脂中に、0.01〜5重量%である。好ましくは、0.01〜3重量%、より好ましくは0.01〜1重量%である。この範囲の含有量であると、ガラス等の保護材との十分な接着が得られ、また、体積固有抵抗値の低下を抑えることができる。
他のポリオレフィン系樹脂は、封止材の機能、例えば接着性、加工性との性能を向上させるために配合することができる任意成分である。なお、官能基含有ポリオレフィン系樹脂のうち酸素原子、窒素原子などが含まれているものは、オレフィン系重合体(A)よりも多少なりとも難燃性能が高い。
【0059】
5.有機過酸化物(B)
本発明に係る有機過酸化物は、オレフィン系樹脂材料(X)の架橋剤であって、有機、無機のラジカル発生剤を使用することが可能である。有機過酸化物としては、分解温度(半減期が1時間である温度)が70〜180℃、とくに90〜160℃の有機過酸化物を用いることがが好ましい。
このような有機過酸化物として、例えば、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ジパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、ジクロヘキサノンパーオキサイドなどが挙げられる。
【0060】
有機過酸化物(B)の配合割合は、オレフィン系樹脂材料(X)を100重量部としたときに、0.2〜5重量部であり、好ましくは0.5〜3重量部、より好ましくは、1〜2重量部である。有機過酸化物(B)の配合割合が上記範囲よりも少ないと、架橋しないかまたは架橋に時間がかかる。また、上記範囲よりも大きいと、分散が不十分となり、架橋度が不均一になりやすい。
【0061】
6.ポリリン酸塩系難燃剤(C)
本発明では、オレフィン系樹脂材料(X)に、難燃剤としてポリリン酸塩系難燃剤(C)を配合する。ポリリン酸塩系難燃剤(C)の種類は、オレフィン系樹脂材料(X)に難燃性を付与できるものであれば限定されないが、具体的には塩基性含窒素化合物とリン酸との塩が好ましい。
該塩を構成するリン酸としては、オルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸などの無機リン酸;ホスホン酸、ホスフィニコカルボン酸などの有機リン酸が挙げられる。これらのうち、オルトリン酸が好ましい。リン酸は縮合されたもの(ポリリン酸)が好ましい。ポリリン酸としては、鎖状ポリリン酸、環状ポリメタリン酸などが挙げられる。これらポリリン酸の縮合度は通常3〜50であるが、本発明では、これら縮合度によって特に制約されない。本発明ではオルトリン酸の縮合物が特に好ましく用いられる。
一方、該塩を構成する塩基性含窒素化合物としては、メラミン、メラミン誘導体、メラミンと類似の構造を有する化合物、メラミンの縮合物などが挙げられる。具体的には、メラミン、アンメリド、アンメリン、ホルモグアナミン、グアニルメラミン、シアノメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、サクシノグアナミン、メラム、メレム、メトン、メロンなどのトリアジン骨格を有する化合物、およびこれらの硫酸塩、メラミン樹脂などを挙げることができる。これらのうち特にメラミン、メラム、メレム、およびそれらの複塩が好ましい。
【0062】
塩基性含窒素化合物とリン酸との塩であるポリリン酸塩系難燃剤(C)の具体例としては、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステルアミド、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩;ペンタエリスリトールビスホスフェート・メラミン、ペンタエリスリトールビスホスフェート・ジメラミン、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸・ジメラミン、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸・テトラメラミン、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)・テトラメラミン塩、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)・ヘキサメラミン塩、フェニルホスホン酸・メラミン、フェニルホスホン酸・ジメラミン、3−(フェニルホスフィニコ)プロピオン酸・メラミン、3−(フェニルホスフィニコ)プロピオン酸・ジメラミン;前記メラミン塩に対応するメラム塩、メレム塩や、これらの複塩などが挙げられる。
上記ポリリン酸アンモニウムは、オルソリン酸アンモニウムと尿素を260℃以上の温度で熱的に縮合させて得られる白色の結晶性粉末である。その構造は、H(n−m)2(NH3n+1で示され、nは平均値20〜400で、リン30%、窒素15%を含むものは難燃効果が高い。したがって、本発明におけるポリリン酸塩系難燃剤(C)は、分子あたりのリンが多いほど難燃効果が高いが、使用樹脂の透明度が犠牲になるので、平均値5〜500程度が適切である。
【0063】
これらのうち、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、オルトリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、オルトリン酸メラミン、オルトリン酸メラム、オルトリン酸メレム、ピロリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、ピロリン酸メラミン、ピロリン酸メラム、ピロリン酸メレム、メタリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、メタリン酸メラミン、メタリン酸メラム、メタリン酸メレムが好ましい。特にポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン等のポリアルキレンポリアミン類のポリリン酸塩が好ましい。
【0064】
本発明の樹脂組成物に用いられるポリリン酸塩系難燃剤(C)は、いずれか1種を用いても、2種以上の混合体として用いても良い。
【0065】
かかるポリリン酸塩系難燃剤による樹脂への難燃メカニズムについて付言すると、ポリリン酸塩系化合物は、樹脂成分であるオレフィン系樹脂材料の燃焼過程で、熱分解して比較的厚いリン酸層を形成する。このリン酸層が酸素を遮断することで、オレフィン系樹脂材料と酸素との反応を抑制するので、それにより難燃性能が得られるものと考えられる。
これに対して、従来のリン酸塩系難燃剤は、リンの量が少ないので熱分解して形成されるリン酸層が薄くなるため、ポリリン酸塩系難燃剤のような難燃性能が発現しないものと考えられる。
【0066】
近年、ポリリン酸塩系難燃剤の中でも、イントメッセント系難燃剤と称される難燃剤が開発されている。イントメッセント系難燃剤とは、燃焼が始まり加熱されるとともに材料表面に泡が吹き出し、泡状の断熱膨張層ができることによって材料表面の熱が内部に伝わらないようにするとともに酸素の供給を遮断して、もって熱分解と酸化反応を抑止して難燃化の作用をする物質である。
このようなイントメッセント系物質としては、反応性化合物として、例えばポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン等のポリアルキレンポリアミン類のポリリン酸塩を用い、泡の骨格形成剤として、例えばデキストリン等の炭化水素化合物、ペンタエリスリトール等の多官能アルコール、ポリ酢酸ビニル等の炭化水素化合物等、発泡剤として、例えば分解性アンモニウム塩、ジシアンアミド、メラミン等のアミド化合物等、ビヒクルとして、例えば水系合成エマルジョン、溶剤系のアルキド樹脂、エポキシ樹脂等を組み合わせたものが挙げられる。このようなイントメッセント系難燃剤としては、例えば、アデカ社製、アデカスタブ FP−2100、FP−2200などの市販品を例示できる。
【0067】
本発明の樹脂組成物において、ポリリン酸塩系難燃剤の添加量としては、オレフィン系樹脂材料(X)100重量部に対し5〜100重量部、好ましくは7〜80重量部、更に好ましくは10〜50重量部である。5重量部よりも少ないと、難燃性の効果が乏しく、100重量部よりも多いと、樹脂との混練時に樹脂圧があがるか、又はコスト的に不利である。ただし、この量は、無機水酸化物化合物を難燃剤として用いる場合に比べると比較的少量であるため、有機過酸化物を必須とする樹脂組成物を製造する工程においても、オレフィン系樹脂材料と、有機過酸化物と難燃剤を同時に溶融混練することが可能となる。
【0068】
一般に、樹脂組成物に配合される難燃剤には、有機系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤、NOR型ヒンダードアミン系難燃剤など様々なものがあるが、本発明では上記ポリリン酸塩系難燃剤に対して、これら他の難燃難燃剤を本発明の目的を阻害しない範囲で併用することができる。太陽電池モジュールでは、燃焼時にハロゲンガスを発生しない材料、すなわちノンハロゲン系難燃性化合物の使用が好ましい。ノンハロゲン系難燃性化合物としては、例えば、上記水酸化マグネシウム等の無機難燃剤やホスフェート、ホスフィネート、ホスフィンオキシドなどリン酸系誘導体化合物等のリン系難燃剤;テトラゾール系化合物、メラミン系化合物、メラミンシアヌレート及び/又はそれらの構造内に有する高分子化合物など窒素原子を含む難燃剤;ホスファゼン化合物などのようにリン及び窒素の両方が含有されている難燃剤が挙げられる。これらの中では、1分子内にリン又は窒素が多く含まれる化合物の難燃性が大きいので特に好ましい。
【0069】
無機系難燃剤には、水酸化アルミニウム、合成水酸化マグネシウム、天然系マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、酸化スズ、の水和物等の金属水和化合物、ホウ酸亜鉛、ホウ酸バリウム、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム等のホウ酸塩類、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、四酸化アンチモンその他のアンチモン化合物、グアニジン化合物、ジルコニウム化合物、酸化ジルコン、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ハイドロタルサイト、ハイドロマグネサイト、無水アルミナ、二硫化モリブデン、粘土、赤燐、珪藻土、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、シリカ、ホワイトカーボン、ゼオライト、リトポン等が挙げられる。
本発明では、これら無機難燃剤を単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
これらの無機難燃剤の中でも、安全性が高い、金属水和化合物、とりわけ水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を好適に使用することができる。最も好ましいものは、加工性に優れた水酸化マグネシウムである。水酸化マグネシウムとしては、海水等からの合成水酸化マグネシウム及びブルーサイト等の水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物の両方を好適に使用することができる。
金属水酸化物の平均粒径は、特に制限されるわけではないが、樹脂材料への分散性や均一な難燃性効果の観点から、40μm以下、好ましくは0.1〜20μmであることが望ましい。
また、金属水酸化物は、そのままでもよいが表面処理剤で表面処理を施すと、樹脂材料との相溶性が高まる。表面処理剤としては、ステアリン酸、オレイン酸又はパルミチン酸等の高級脂肪酸やそのカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム等の金属塩;パラフィン、ワックス又はその変性物;シランカップリング剤; チタネートカップリング剤等を使用できる。
水酸化マグネシウムなどの無機系難燃剤は、単独で使用すると樹脂に対し多量に配合する必要があり、透明性を損ない、また、混合過程で発熱を伴い有機過酸化物の分解を誘発しやすい問題があるが、本願発明ではポリリン酸塩系難燃剤と併用することで、上記問題を少なくすることができる。
上記無機系難燃剤の配合量は、オレフィン系樹脂材料(X)100重量部に対して、10〜400重量部、好ましくは20〜200重量部の範囲が挙げられる。使用量が少なすぎると難燃性が不十分であり、多すぎると透明性が悪化することがある。
【0070】
リン系難燃剤としては無機金属が含まれないものとして、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(モノクロロプロピル)ホスフェート、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、テトラキス(2−クロロエチル)エチレンジホスフェート等のホスフェート類;ジフェニルクレジルホスフェート、ジメチルメチルホスフォネート、ジブチルヒドロキシエチルホスフォネート、ジ(ブトキシ)ホスフィニルプロピルアミド、ジ(ポリオキシエチレン)ヒロドキシメチルホスフォネート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒロドキシエチル)アミノメチルホスフォネート等のホスフォネート類;トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;フェニルホスフォン酸、フェニルホスフォン酸ジクロリド、芳香族縮合リン酸エステル類、含ハロゲン縮合リン酸エステル類、赤リン系トリス(2−クロロエチル)オルトリン酸エステル等が挙げられる。
【0071】
また、無機金属が含まれるリン酸系誘導体の塩及び/又はその複合体の難燃剤としては、例えば、ホスホン酸アルミニウム、ホスフィン酸アルミニウム、ジホスフィン酸アルミニウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスフィン酸マグネシウム、ジホスフィン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、ホスフィン酸カルシウム、ジホスフィン酸カルシウム、リン酸カルシウムを主成分としたハイドロキシアパタイト等が挙げられる。好ましいものは、無機金属がイオン化した際の価数が大きく、1分子内のリン含有率を高くすることが出来るホスホン酸アルミニウム、ホスフィン酸アルミニウム、ジホスフィン酸アルミニウムである。
上記リン系難燃剤の配合量は、オレフィン系樹脂材料(X)100重量部に対して、0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜30重量部、更に好ましくは0.5〜25重量部、1〜20重量部の範囲が挙げられる。使用量が少なすぎると難燃性が不十分であり、多すぎると透明性が悪化することがある。
【0072】
7.添加剤
本発明の太陽電池封止材用組成物においては、オレフィン系樹脂材料(X)に対して、さらに架橋助剤(F)、シランカップリング剤(G)、酸化防止剤(H)、紫外線吸収剤(I)及び光安定剤(J)、加工助剤(K)から選ばれる少なくとも一種の添加剤を配合させることが好ましい。
【0073】
(1)架橋助剤(F)
また、本発明の樹脂組成物には架橋助剤(F)を配合することができる。架橋助剤は、架橋反応を促進させ、α−オレフィン共重合体の架橋度を高めるのに有効であり、その具体例としては、ポリアリル化合物やポリ(メタ)アクリロキシ化合物のような多不飽和化合物を例示することができる。
【0074】
より具体的には、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエートのようなポリアリル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなポリ(メタ)アクリロキシ化合物、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
架橋助剤は、オレフィン系樹脂材料(X)100重量部に対し、0〜5重量部程度の割合で配合することができる。
【0075】
(2)シランカップリング剤(G)
本発明におけるシランカップリング剤(G)としては、例えばγ−クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロルシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
好ましくは、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
これらのシランカップリング剤(G)は、オレフィン系樹脂材料(X)100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部、さらに好ましくは0.5〜1重量部で使用される。
【0076】
(3)酸化防止剤(H)
本発明で使用される酸化防止剤(H)としては、(i)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(ii)リン系酸化防止剤、(iii)硫黄系酸化防止剤など種々のタイプのものを使用することができるが、とくに(i)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の使用が好ましい。
【0077】
(i)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4−sec−ブチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、トコフェロール、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオ)−1,3,5−トリアジンなどを挙げることができる。
【0078】
(ii)リン系酸化防止剤
リン系酸化防止剤としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスファネートジメチルエステル、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファネートなどを挙げることができる。
【0079】
(iii)硫黄系酸化防止剤
硫黄系酸化防止剤としては、2,4−ビス−n−オクチルチオ−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾールなどを挙げることができる。
【0080】
(4)紫外線吸収剤(I)
本発明の樹脂組成物には、紫外線吸収剤を配合することができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。
【0081】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
【0082】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニル置換ベンゾトリアゾール化合物であって、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、などを挙げることができる。
また、トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノールなどを挙げることができる。
さらに、サリチル酸エステル系としては、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどを挙げることができる。
これら紫外線吸収剤は、オレフィン系樹脂材料(X)100重量部に対し、0〜2.0重量部程度配合することが好ましい。
【0083】
(5)光安定化剤(J)
(i)ヒンダードアミン系光安定化剤
本発明において、樹脂組成物には、ヒンダードアミン系光安定化剤を配合することが好ましい。ヒンダードアミン系光安定化剤は、ポリマーに対して有害なラジカル種を補足し、新たなラジカルを発生しないようにするものである。ヒンダードアミン系光安定化剤には、低分子量のものから高分子量のものまで多くの種類の化合物があるが、従来公知のものであれば特に制限されずに用いることができる。
【0084】
低分子量のヒンダードアミン系光安定化剤としては、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロパーオキサイド及びオクタンの反応生成物(分子量737)70重量%とポリプロピレン30重量%からなるもの;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(分子量685);ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート混合物(分子量509);ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(分子量481);テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(分子量791);テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(分子量847);2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートの混合物(分子量900);1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートの混合物(分子量900)などが挙げられる。
【0085】
また、高分子量のヒンダードアミン系光安定化剤としては、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](分子量2,000〜3,100);コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物(分子量3,100〜4,000);N,N’,N”,N”’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン(分子量2,286)と上記コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物の混合物;ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(分子量2,600〜3,400)、並びに、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の環状アミノビニル化合物とエチレンとの共重合体などが挙げられる。
上述したヒンダードアミン系光安定化剤は、一種単独で用いられてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
これらの中でも、ヒンダードアミン系光安定化剤としては、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](分子量2,000〜3,100);コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物(分子量3,100〜4,000);N,N’,N”,N”’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン(分子量2,286)と上記コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物の混合物;ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(分子量2,600〜3,400)環状アミノビニル化合物とエチレンとの共重合体を用いるのが好ましい。製品使用時に経時でのヒンダードアミン系光安定剤のブリードアウトが妨げられるからである。また、ヒンダードアミン系光安定化剤は、融点が、60℃以上であるものを用いるのが、組成物の作製しやすさの観点から好ましい。
【0087】
本発明において、ヒンダードアミン系光安定化剤の含有量は、前記オレフィン系樹脂材料(X)100重量部に対して、0.1〜2.5重量部とし、好ましくは0.1〜1.0重量部とするのがよい。前記含有量を0.1重量部以上とすることにより、安定化への効果が十分に得られ、2.5重量部以下とすることにより、ヒンダードアミン系光安定化剤の過剰な添加による樹脂の変色を抑えることができる。
【0088】
また、本発明において、前記有機過酸化物と前記ヒンダードアミン系光安定化剤との重量比を、1:0.01〜1:10とし、好ましくは1:0.02〜1:6.5とする。これにより、樹脂の黄変を顕著に抑制することが可能となる。
【0089】
本発明の加工助剤(K)としては、(K1)脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪族炭化水素系から選択される少なくとも1種の滑剤系加工助剤、(K2)炭素数9〜40の飽和又は不飽和の脂肪酸エステル系加工助剤、(K3)エポキシ化動植物油系加工助剤、(K4)フッ素系エラストマー系加工助剤、(K5)シリコーン系加工助剤、及び(K6)ポリエステル系加工助剤から選ばれる少なくとも1種から選択された加工助剤が挙げられる。
【0090】
上記加工助剤(K)の配合量は、オレフィン系樹脂材料(X)100重量部に対して、0.05〜20重量部に範囲で選択される。該加工助剤の配合量が0.05重量部未満では、その効果が発揮されず、20重量部を超える場合には、スクリューがスリップして押出成形が円滑に行われない懸念が生じる。また太陽電池用封止材の透明性やシートの強度低下を招く虞も生じる。
【0091】
(6)他の添加成分
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を著しく損なわない範囲で、他の付加的任意成分を配合することができる。このような任意成分としては、通常のポリオレフィン系樹脂材料に使用される、結晶核剤、透明化剤、着色剤、分散剤、充填剤、蛍光増白剤等を挙げることができる。
【0092】
II.太陽電池封止材
本発明において太陽電池封止材(以下、単に封止材ともいう)とは、上記樹脂組成物をペレット化し、押出成形、カレンダー成形等によって、フィルムもしくはシート化したものである。
【0093】
本発明の太陽電池封止材は、ペレットとして使用してもよいが、通常、0.1〜1mm程度の厚みのフィルムまたはシート状に成形して使用される。厚さが0.1mmよりも薄いと、強度が小さく、接着が不十分となり、一方、1mmよりも厚いと、透明性が低下して、問題になる場合がある。好ましい厚さは、0.1〜0.8mmである。
【0094】
また、本発明において封止材は、上記のように単層フィルムもしくはシートでもよいが、多層押出成形によって、2層以上の多層フィルムで構成しても良い。
本発明の好ましい態様としては、封止材を、太陽電池素子の上部(透明保護材側)に用いる上部封止材層と下部(下部基板保護材側)に用いる下部封止材層の2層構成、もしくは更なる層を加えた3層構成以上の多層構成で構成し、透明性に優れたNOR型ヒンダードアミン系難燃剤などを含有した樹脂組成物を用いて上部封止材層を形成し、他の透明性には劣るが難燃性に優れた難燃剤、例えば無機系難燃剤または本発明のポリリン酸塩系難燃剤を含有した樹脂組成物で下部封止材層を形成する態様が挙げられる。
このような態様によれば、封止材全体の難燃性を担保しつつ、透明性を低下しない太陽電池封止材を得ることができる。
【0095】
また、本発明の太陽電池封止材は、上記のように単層フィルムもしくはシートでもよいが、多層押出成形によって、本発明の樹脂組成物からなるシートの片面又は両面に、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂等の上部(表面)保護材および/または下部(裏面)保護材と接着性を有するフィルム、例えば、エチレンと不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂等を設けた多層化シート、あるいは本発明の樹脂組成物からなるシートの片面または両面に、接着性樹脂を介して、水蒸気バリヤー性基材、金属酸化物の蒸着フィルム等を設けた多層化シートとすることもできる。
【0096】
シート状太陽電池封止材は、T−ダイ押出機、カレンダー成形機などを使用する公知のシート成形法によって製造することができる。例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体に、NOR型ヒンダードアミン系難燃剤を添加し、必要に応じて、架橋剤、ヒンダードアミン系光安定化剤、さらには架橋助剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の添加剤を予めドライブレンドして、T−ダイ押出機のホッパーから供給し、好ましくは有機過酸化物の急速分解温度以下の温度である80〜150℃の押出温度において、シート状に押出成形することによって得ることができる。これらドライブレンドに際して、一部又は全部の添加剤は、マスターバッチの形で使用することができる。また、T−ダイ押出やカレンダー成形において、予め非晶性α−オレフィン系共重合体に、一部又は全部の添加剤を、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて溶融混合して得た樹脂組成物を使用することもできる。
【0097】
III.太陽電池モジュール
太陽電池モジュールは、この上記の太陽電池封止材を用いれば、太陽電池素子を上下の保護材とともに固定することにより、製作することができる。
このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができる。例えば、上部透明保護材/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟む構成のもの、下部基板保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材と上部透明保護材を形成させるような構成のもの、上部透明保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えば、フッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作製したものの上に、封止材と下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。
【0098】
太陽電池素子としては、特に制限されず、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルルなどのIII−V族やII−VI族化合物半導体系等の各種太陽電池素子を用いることができる。
【0099】
太陽電池モジュールを構成する上部(表面)保護材としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂などを例示することができる。
また、下部保護材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単体もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレススチールなどの金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの1層もしくは多層の保護材を例示することができる。このような上部及び/又は下部の保護材には、封止材との接着性を高めるためにプライマー処理を施すことができる。
【0100】
また、本発明の太陽電池モジュールにおいては、さらに、表面保護シート及び/又は裏面保護シートと太陽電池用封止材との間に、水蒸気バリヤーフィルムを設けることが好ましい。
上記水蒸気バリヤーフィルムとしては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリプロピレン樹脂から選択された1種の樹脂のフィルム、またはそれらの樹脂の延伸フィルム、並びにそれらの樹脂の表面に無機酸化物を蒸着したフィルム等が挙げられ、特に、無機酸化物を蒸着したフィルムが水蒸気バリヤー性、透明性等が優れるので、好ましい。
【0101】
太陽電池モジュ−ル等を構成する無機酸化物の蒸着フィルムとしては、例えば、物理気相成長法、または、化学気相成長法、あるいは、その両者を併用して、無機酸化物の蒸着薄膜の1層あるいは2層以上からなる多層膜を形成して製造することができる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)を用いて無機酸化物の蒸着薄膜を形成することができる。
本発明に係る金属の酸化物としては、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等を挙げることができる。無機酸化物の薄膜の膜厚としては、使用する金属、または金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å(5〜200nm)位、好ましくは、100〜1000Å(10〜100nm)位の範囲内で、任意に選択して形成することが望ましい。また、本発明においては、無機酸化物の蒸着薄膜としては、無機酸化物の蒸着薄膜の1層だけではなく、2層あるいはそれ以上を積層した積層体の状態でもよく、また、使用する金属、または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の薄膜を構成することもできる。
【0102】
太陽電池モジュールを製造するに際しては、本発明の封止材のシートを予め作っておき、封止材の樹脂組成物が溶融する温度、例えば150〜200℃で圧着するという方法によって、前記のような構成のモジュールを形成することができる。
また、本発明の封止材を押出コーティングすることによって、太陽電池素子や上部保護材あるいは下部保護材と積層する方法を採用すれば、わざわざシート成形することなく、一段階で太陽電池モジュールを製造することが可能である。したがって、本発明の封止材を使用すれば、モジュールの生産性を格段に改良することができる。
【0103】
一方、太陽電池モジュールを製造する際、有機過酸化物が実質的に分解せず、かつ本発明の封止材が溶融するような温度で、太陽電池素子や保護材に該封止材を仮接着し、次いで、昇温して充分な接着とエチレン・α−オレフィン共重合体の架橋を行うことも、できる。
この場合は、封止材層の融点(DSC法)が85℃以上、150℃の貯蔵弾性率が10Pa以上の耐熱性が良好な太陽電池モジュールを得るために、封止材層におけるゲル分率(試料1gをキシレン100mlに浸漬し、110℃、24時間加熱した後、20メッシュ金網で濾過し未溶融分の質量分率を測定)が50〜98%、好ましくは70〜95%程度になるように架橋するのがよい。
【0104】
太陽電池素子の封止作業では、太陽電池素子を上記本発明の封止材でカバーした後、有機過酸化物が分解しない程度の温度に、数分から10分程度加熱して仮接着し、次に、オーブン内において、有機過酸化物が分解する150〜200℃程度の高温で、5分から30分間加熱処理して接着させる等の方法がある。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例によって、具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた評価方法及び使用樹脂は、以下の通りである。
【0106】
1.樹脂物性の評価方法
(1)メルトフローレート(MFR)
エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、JIS K6922−2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)密度
エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、JIS K6922−2:1997附属書(23℃、低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定した。
(3)Z平均分子量/数平均分子量(Mz/Mn)
Mz/Mnの測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行い、測定条件は、次のとおりである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工製AD806M/S 3本
(カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いて、ポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンは、α=0.733、logK=−3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
(4)分岐数:ポリマー中の分岐数(N)は、NMRにより次の条件で測定し、コモノマー量は、主鎖及び側鎖の合計1000個の炭素あたりの個数で求めた。
装置:ブルカー・バイオスピン(株) AVANCEIII cryo−400MHz
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重化ブロモベンゼン=8/2混合溶液
<試料量>
460mg/2.3ml
<C−NMR>
・Hデカップル、NOEあり
・積算回数:256scan
・フリップ角:90°
・パルス間隔20秒
・AQ(取り込み時間)=5.45s D1(待ち時間)=14.55s
(5)引張弾性率:厚み0.7mmのプレスシートを用いて、ISO1184−1983に準拠して測定した。尚、引張速度1mm/min、試験片幅10mm、つかみ具間を100mmとし、伸び率1%のときの引張弾性率を求めた。この値が小さい程、柔軟性に優れていることを示す。
【0107】
2.シートの評価方法
(1) シート外観
2軸押出機を用いた溶融混練によって得られたペレットを160℃−0kg/cmの条件で、3分予熱した後、160℃−100kg/cmの条件で27分加圧(160℃で30分間プレス成形)し、その後、30℃に設定された冷却プレスに100kg/cmの加圧の条件で、10分間冷却することで、厚み0.7mmのシートを作製した。このシートの外観を目視によって確認した。シートにむらや発砲がなく均一な状態のものを○とした。なお、2軸押出機を用いて溶融混練できたものを○、溶融混練できなかったものを×とした。
(2)耐熱性
太陽電池モジュールは通常、屋外に設置されるから長期間太陽光に晒され温度上昇する。それにより樹脂製の封止材が流動し、モジュールが変形したりするトラブルを避けるために、耐熱性を有するものでなければならない。耐熱性の評価として150℃で30分架橋したシートのゲル分率を用いた。ゲル分率が高いほど架橋が進行しており、耐熱性が高いと評価できる。ゲル分率が70wt%のものを、耐熱性評価「○」とした。尚、ゲル分率は、当該シートを、約1gを切り取り精秤して、キシレン100ccに浸漬し110℃で24時間処理し、ろ過後残渣を乾燥し精秤して、処理前の重量で割りゲル分率を算出する。
(3)難燃性(酸素指数)
上記のプレス成形条件で、厚み2.0mmのシートを作成した。得られたシートをJIS K7201の方法で酸素指数を測定した。難燃性は、酸素指数が20以上であれば合格と評価した。
【0108】
3.使用原料
(1)樹脂
・エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVAと称す)
(酢酸ビニル含量33重量%、MFR30g/10分)
・成分(A1):エチレン・α−オレフィン共重合体
下記の<製造例1>で重合したエチレンと1−へキセンの共重合体(PE−1)を用いた。物性を表1に示す。
・成分(A1):エチレン・α−オレフィン共重合体
下記の<製造例2>で重合したエチレンと1−ブテンの共重合体(PE−2)を用いた。物性を表1に示す。
(2)ポリリン酸塩系難燃剤:ポリアルキレンポリアミン類のポリリン酸塩を含むイントメッセント系難燃剤(アデカ社製、アデカスタブ FP−2200)
(3)有機過酸化物:アルケマ吉富社製、ルペロックス101(2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン)
(4)ヒンダードアミン系光安定化剤:コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物(チバ・ジャパン社製、TINUVIN 622LD)
(5)紫外線吸収剤:2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン
(サンケミカル社製、CYTEC UV531)
【0109】
<製造例1>
(i)触媒の調製
エチレンと1−へキセンの共重合体を製造するための触媒は、特表平7−508545号公報に記載された方法で調製した。即ち、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0mモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して等モル加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
(ii)重合
内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器を用い、反応器内の圧力を130MPaに保ち、エチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が75重量%となるように40kg/時の割合で原料ガスを連続的に供給した。また、上記触媒溶液を連続的に供給し、重合温度が150℃を維持するようにその供給量を調整した。1時間あたりのポリマー生産量は約4.3kgであった。反応終了後、1−ヘキセン含有量が24重量%、MFRが35g/10分、密度が0.880g/cm、Mz/Mnが3.7であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−1)を得た。このエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−1)の特性を表1に示す。
【0110】
<製造例2>
表1に示す組成、密度、および溶融粘度となるように、製造例1における重合時のモノマー組成、重合温度を変更して重合を行った。反応終了後、1−ブテン含有量=35重量%、MFR=33g/10分、密度=0.870g/cm、Mz/Mn=3.5であるエチレン・1−ブテン共重合体(PE−2)を得た。このエチレン・1−ブテン共重合体(PE−2)の特性を表1に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
(実施例1)
EVA100重量部に対して、難燃剤としてポリリン酸塩系化合物30重量部、有機過酸化物を1.5重量部配合した。これを十分に混合し、この組成物を下記条件で溶融混練し、ペレット化をおこなった。樹脂温度・樹脂圧力ともに安定しており押出成形が可能であった。
押出機:TEX35二軸押出機
樹脂温度:110℃
そのペレットを用いて、前述の通りプレス機にて試験片を作成した。得られたシートは添加剤の分散ムラ等もなく、良好な状態であった。その後、難燃性(酸素指数)を測定した。評価結果を表2に示す。
【0113】
(実施例2)
実施例1のEVAの代わりにエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−1)を用いて、難燃剤を20重量部添加した以外は実施例1と同様にペレットを作成した。樹脂温度・樹脂圧力ともに安定しており押出成形が可能であった。
その後作成したシートにおいても添加剤の分散ムラ等なく、良好な状態であった。その後、酸素指数について測定した。評価結果を表2に示す。
【0114】
(実施例3)
EVAの代わりにエチレン・1−ブテン共重合体(PE−2)を用い、難燃剤を35重量部添加した以外は実施例1と同様にペレットを作成した。樹脂温度・樹脂圧力ともに安定しており押出成形が可能であった。
その後作成したシートにおいても添加剤の分散ムラ等なく、良好な状態であった。その後、酸素指数について測定した。評価結果を表2に示す。
【0115】
(比較例1)
難燃剤としてポリリン酸塩系化合物の代わりに、水酸化マグネシウムを200重量部添加した以外は実施例1と同様に溶融混練押出しをおこなったところ、樹脂温度が有機過酸化物の急速分解温度(138℃)以上となり、有機過酸化物が押出機内で分解し、EVAの架橋が起こり、押し出しが不可能となった。評価結果を表2に示す。
【0116】
(比較例2)
難燃剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にペレットを作成した。樹脂温度・樹脂圧力ともに安定しており押出成形が可能であった。
その後作成したシートにおいても添加剤の分散ムラ等なく、良好な状態であった。その後、難燃性について測定した。評価結果を表2に示す。
【0117】
(比較例3)
有機過酸化物を添加しなかった以外は実施例1と同様にペレットを作成した。樹脂温度・樹脂圧力ともに安定しており押出成形が可能であった。
その後作成したシートにおいても添加剤の分散ムラ等なく、良好な状態であった。その後、難燃性について測定した。評価結果を表2に示す。
【0118】
【表2】

【0119】
(評価):
この結果、表2から明らかなように、実施例1〜3では、ポリリン酸塩系難燃剤を使用した本発明の樹脂組成物であるために、これを押出成形して得られたシートは、外観が良く、難燃性が優れるものであった。
これに対して、比較例1では、無機水酸化物を多量に配合したために樹脂を押し出せず、ペレットが得られず、比較例2では、難燃剤を使用しなかったために難燃性が劣るものとなり、比較例3では、有機過酸化物を使用しなかったために耐熱性が劣るものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の太陽電池封止材用樹脂組成物は、難燃性、生産性、柔軟性、耐熱性、耐候性等が要求される太陽電池封止材に利用され、太陽電池モジュールとして有用である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂材料(X)100重量部に対して、有機過酸化物(B)0.1〜5重量部、及びポリリン酸塩系難燃剤(C)5〜100重量部を含むことを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項2】
前記オレフィン系樹脂材料(X)が、エチレン−α−オレフィン共重合体(A1)またはエチレン−ビニルエステル共重合体(A2)から選ばれるエチレン共重合体(A)であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体(A1)が、下記の特性(a1)〜(a2)を満足することを特徴とする請求項2に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
(a1)密度が0.86〜0.92g/cm
(a2)190℃、21.18N荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.05〜50g/10分
【請求項4】
前記ポリリン酸塩系難燃剤(C)が、イントメッセント系難燃剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂材料(X)は、さらに、架橋助剤(F)、シランカップリング剤(G)、酸化防止剤(H)、紫外線吸収剤(I)および光安定剤(J)からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物を押出成形してなる太陽電池用封止材。
【請求項7】
上部封止材層と下部封止材層の少なくとも2層以上で構成される封止材であって、少なくとも下部封止材層が請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物からなることを特徴とする太陽電池用封止材。
【請求項8】
オレフィン系樹脂材料(X)、有機過酸化物(B)およびポリリン酸塩系難燃剤(C)を含む樹脂組成物を、該有機過酸化物の急速分解温度以下の温度で溶融押し出しし、シート成形することを特徴とする太陽電池封止材の製造方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の太陽電池用封止材を含むことを特徴とする太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2012−19001(P2012−19001A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154474(P2010−154474)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】