説明

太陽電池裏面シート及びこれを備えた太陽電池モジュール

【課題】高温高湿下であっても発電効率を上げ、長期的な性能劣化を最小限に抑えて耐久性に富み各層間の密着強度を維持できるようにした。
【解決手段】太陽電池セルを封止した充填層の前面側に前面板を積層した太陽電池モジュールの裏面側に太陽電池裏面シート4を配置した。裏面シート4は透光性絶縁層7と、凹凸構造層8と、凹凸構造層8に形成された凹凸構造部8aに沿って設けられた鏡面反射金属層9と、バリア層10と、接着層11と、耐候層12とを積層した。凹凸構造層8は、ガラス転移温度が20〜40℃の範囲の紫外線硬化樹脂又は熱硬化樹脂で形成した。接着層11はガラス転移温度を20〜45℃の範囲にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば太陽電池モジュールの裏面側に配設されていて、太陽電池セルに入射せず裏面シートへ射出して本来は損失してしまう光を、有効に利用することができる太陽電池裏面シートと、この太陽電池裏面シートを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源として太陽電池が注目され、現在種々の形態からなる太陽電池モジュールが開発され様々な分野で利用が促進されている(特許文献1参照)。
【0003】
この太陽電池は入射した光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、太陽電池のうち主要なものは使用材料の種類によって結晶シリコン系、アモルファスシリコン系、有機化合物系等に分類される。このうち、現在市場で流通しているものはほとんどが結晶系シリコン太陽電池であり、この結晶系シリコン太陽電池はさらに単結晶型及び多結晶型に分類される。
単結晶型のシリコン太陽電池は基板の品質が良いために高効率化が容易であるという長所を有する反面、基板の製造コストが高くなるという短所を有する。これに対して多結晶型のシリコン太陽電池は基板の品質が劣るために高効率化が難しいという短所はあるものの、低コストで製造できるという長所があり、現在の主流となっている。
【0004】
上記のような太陽電池素子を使用し、表面シ−ト層、充填層、光起電力素子としての太陽電池素子、充填層、および裏面シート層等の順に積層し、真空吸引して加熱圧着するラミネ−ション法等を利用して製造されている。
【0005】
上記の太陽電池モジュ−ルを構成する裏面シート層としては、現在、強度に優れたプラスチック基材等が最も一般的に使用され、その他、金属板等も使用されている。而して、一般に、太陽電池モジュ−ルに備えられた裏面シート層として、例えば強度に優れかつ耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐薬品性、光反射性、光拡散性等に優れ、特に、水分、酸素等の侵入を防止する防湿性に優れることが必要とされる。更に、裏面シート層は、表面硬度が高く、かつ表面の汚れ、ゴミ等の蓄積を防止する防汚性に優れ、耐久性に富み、その保護能力性が高いこと等の条件を充足することが必要とされている。
【0006】
また、光利用効率を高めるべく太陽電池モジュールの前面から入射した太陽光のうち、太陽電池セルに入射せずに太陽電池セル間を通った光を、太陽電池セルの裏面側に設けた裏面シートで再反射させて太陽電池セルの受光面に再入射させることが行なわれている(特許文献2参照)。
また、裏面シートの光反射材の表面を凹凸構造とする試みも行われている。光反射材の表面を凹凸構造とすることで、より光利用効率の向上が望めることになる(特許文献3参照)。
【0007】
凹凸構造の光反射材として、例えばアルミニウムなどの金属が用いられるが、アルミニウムは水分や酸等による腐食がおこりやすく、太陽電池モジュールとして十数年以上、自然環境に耐え得ることが出来ないため、光利用効率向上の効果が低下してしまうことが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−295437号公報
【特許文献2】特開2000−332279号公報
【特許文献3】特開平11−307791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のような太陽電池モジュール用裏面シートにおいては、光を反射させる凹凸構造を形成した光反射材としての金属層を備えた光反射凹凸構造が構成されていることにより発電効率を向上させることが期待出来る。
しかしながら、太陽電池モジュールは高温高湿下で使用されることが多いため、水分や酸等が裏面側から侵入することによって劣化する等して長期的性能安定性に欠けることが問題であった。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、高温高湿下であっても発電効率を上げることができると共に長期的な性能劣化を最小限に抑え、特に加水分解や充填材によって発生する酸等を防止し、各層間の密着強度を維持できるようにした太陽電池裏面シート及びこれを用いた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係わる太陽電池裏面シートは、内部に太陽電池セルを封止した充填層の前面側に前面板が積層されてなる太陽電池モジュールの裏面側に配置される太陽電池裏面シートであって、前面側から順に少なくとも透光性絶縁層と、凹凸構造部を形成した凹凸構造層と、該凹凸構造層の凹凸構造部に沿って形成された光反射層と、接着層と、耐候層とが積層されてなり、凹凸構造層は、ガラス転移温度が20〜40℃の範囲の紫外線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂で形成されていることを特徴とする。
本発明による太陽電池裏面シートによれば、凹凸構造層がガラス転移温度20〜40℃の範囲であるため、太陽電池モジュールを組立てる際に凹凸構造層の変形がなく長期にわたって、入射する光の制御や各層間の高い密着強度を維持することができる。
なお、凹凸構造層は、ガラス転移温度が20℃未満の場合には、硬化した後でも柔軟性が非常に高くて変形が激しく、ロール状に巻回したときにブロッキングが生じやすいなどの問題が発生し望ましくない。また、ガラス転移温度が40℃を超える高温環境下では他の各層より応力が大きく、応力の違いによって凹凸構造層と隣接している透光性絶縁層や光反射層との密着強度が低下するので望ましくない。
【0012】
また、接着層はガラス転移温度が20〜45℃の範囲にあることが好ましい。
接着層のガラス転移温度が上述の範囲とされることで高温環境時でも柔軟な性質を持たせて各層間の高い密着強度を維持できる。
なお、ガラス転移温度が20℃未満になると柔軟性が高すぎて硬化が難しく作製が困難であり望ましくない。また、ガラス転移温度が45℃を超えると高温環境下では他の層より応力が大きくなり、凹凸構造層と耐候層との密着を妨げることになり望ましくない。
【0013】
また、凹凸構造部の凸部のピッチをpとし、凹凸構造部の凸部の頂角をθとし、凹凸構造部の凹部に対する凸部の高さの平均をHaとし、接着層の厚みをdとした場合に、下記の式(1)、(2)、(3)、(4)を満たすことが好ましい。
10μ≦p≦30μ ・・・(1)
111°≦θ≦137° ・・・(2)
2μ≦Ha≦11μ ・・・(3)
Ha<d≦13μ ・・・(4)。
【0014】
凹凸構造部(及び光反射層)の凸部のピッチが30μmより大きい場合には、ピッチの増大に伴って凸部の高さHaが高くなるため透光性絶縁層と接着層の間に凹凸構造部及び光反射層を貼り合わせる際に、接着層に気泡が入りやすい等の欠点が発生し易くなると共に、接着層の厚みを高さHaに応じて厚くする必要があるため接着層の製作が困難になり、好ましくない。一方、凹凸構造部(及び光反射層)の凸部のピッチが10μmより小さい場合には、入射光が反射する際に光の回折が起こり、回折光は分光して広がった光になるため制御が難しくなり好ましくない。さらに、金型製作時に金型を切削する時間が長くなりタクトが低下して生産効率が悪くなるため好ましくない。これを踏まえて、本発明の裏面シートによれば、上記(1)式を満たすことにより問題を解決することができる。
【0015】
また、(2)式において、頂角θが137°を超える場合には、前面板と空気との界面において反射光の全反射が発生し難くなるため再集光効率が落ちる可能性が高くなり好ましくない。また、頂角θが111°を下回る場合には、光反射層で反射した光の一部が光反射層の隣接する凸部の反射面でさらに反射してしまい、再集光効率が落ちるため好ましくない。
そして、(1)、(2)式を満たす凹凸構造部の凹凸高低さは三平方の定理から2〜11μになることから、上記(3)式の範囲に設定することができる
また、(4)式が満たされることにより、凹凸構造部の凸部による凹凸形状を接着層によって十分に埋めることができる。接着層の厚みdが凹凸構造部の高低差Haより大きくないと、凹凸構造部の凹凸形状を十分に埋めることができなくなり、密着性低下による層間剥離が生じたり凹凸形状に追随した形状が表面に露呈して望ましくない。また接着層の厚みが14μm以上であるとクラックが生じてしまい、好ましくない。この点、上述の範囲に設定することで問題を確実に回避することができる。
【0016】
また、接着層と光反射層との間にバリア層が備えられていることが好ましい。
光反射層の背面側にバリア層が形成されることより、太陽電池モジュール内部へ水蒸気が透過することを防止し、太陽電池モジュールに用いられている電極と光反射層の腐食や加水分解による充填材や透光性絶縁層、接着層、耐候層の劣化を防ぐことができる。
【0017】
また、バリア層の水蒸気透過度が0〜0.6g/mであり、バリア層は無機物または無機酸化物を含むことが好ましい。
バリア層の水蒸気透過度が0.6g/mを超えてしまうと、太陽電池モジュールに用いられている電極、光反射層の腐食や加水分解による充填層や透光性絶縁層、接着層、耐候層等の劣化を防ぐことができる。
【0018】
また、凹凸構造部は、略プリズム形状、略多角錐形状、或いはこれらのいずれかの形状の逆型形状が複数配列されてなることが好ましい。
光反射層は凹凸構造部の凹凸形状に沿って形成されているから、凹凸構造部の凹凸形状に沿って形成された光反射層により、前面板側から入射する光を裏面シート内の光反射層によって特定方向に反射させて前面板と大気との界面で全反射させて、その反射光を確実に太陽電池セルへ再入射させて光の利用効率の向上を図ることができる。
【0019】
本発明による太陽電池モジュールは、上述したいずれかに記載された太陽電池裏面シートを、裏面側に配設したことで、太陽電池裏面シートの前面板から太陽電池セルの間を透過して、透光性絶縁層に入射する光を、光反射層で反射させて前面板と大気との界面で全反射させ、その反射光を確実に太陽電池セルへ再入射させて光の利用効率の向上を図ると共に発電量を増加させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による太陽電池裏面シート及び太陽電池モジュールによれば、凹凸構造をなす凹凸構造部と光反射層とを有することにより、太陽電池裏面シートの光入射側から透光性絶縁層を経由して凹凸構造を有する光反射層に入射する光を反射させて前面板と大気との界面で反射させて太陽電池セルへ到達するように反射させることができ、光の利用効率を向上させて発電量を増加させることができる。
しかも、凹凸構造層は、ガラス転移温度が20〜40℃の紫外線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂から形成されているため、各層間の応力に差が少なく高温環境下においても各層間の密着力が低下せず一定の品質を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態による太陽電池モジュールの概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す太陽電池モジュールにおける裏面シートの概略構成を示す縦断面図である。
【図3】(a)、(b)は凹凸構造層の凹凸構造部の形状の例を示す斜視図である。
【図4】試験例において透光性絶縁層と凹凸構造層を接合した構成を示す縦断面図である。
【図5】試験例における透光性絶縁層に接合した凹凸構造層に形成した格子状カット部に対する粘着テープの位置関係を示す説明図である。
【図6】凹凸構造層に形成した格子状カット部に被着した粘着テープを引き剥がす直前の縦断面図である。
【図7】試験例による裏面シートを接合した太陽電池モジュールの概略構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態による太陽電池用裏面シート及びこれを用いた太陽電池モジュールについて添付図面により詳細に説明する。なお、本明細書において、太陽電池モジュールへの太陽光等の光の入射方向を前面側とし、反対方向を裏面側ということがある。
図1に示す本発明の実施形態による太陽電池モジュール1は、光の入射方向から前面板2と、封止材からなる充填層3と、裏面シート4とが積層されており、充填層3内には太陽電池セル5が封止されている。太陽電池セル5は太陽光等の光線を受光することにより光電変換して発電を行なう装置である。なお、太陽電池モジュール1を照射する光源Lとして、例えば太陽光や室内灯等の人工照明の光が採用されている。
図1に示すように裏面シート4は太陽電池モジュール1の最も裏面側に積層されている。 太陽電池モジュール1では光源Lから光が太陽電池モジュール1内に入射して太陽電池セル5の受光面5aに直接入射する入射光H1や、太陽電池セル5やセル5間の間隙を透過した入射光が裏面シート4で反射して受光面5aに入射する反射光H2を、受光して発電するしくみである。
【0023】
次に、本実施形態による太陽電池モジュール1の各構成について説明する。
前面板2は、太陽電池モジュール1の前面に配置されて表面に光線が直接に入射するものである。前面板2は、光線透過率が高い透明な材料が用いられ、具体的には強化ガラス、PEN(ポリエチレンナフタレート)などの樹脂シートが使用されている。前面板2の厚みは、例えば強化ガラスであれば約3〜5mm、樹脂シートであれば数十〜数百μmに設定されている。
【0024】
充填層3は、前面板2の裏面側に積層されており、太陽電池セル5を内部に封止する役割を有している。充填層3は、前面板2から入射した光線を透過させるため光線透過率が高い材料が用いられ、例えば難燃性をもつEVA(エチレン・ビニル・アセテート)から形成されている。
充填層3を透過した光が入射される太陽電池セル5は、充填層3の内部に所定間隔で複数埋設されており、受光部に入射した光を光電効果によって電力へと変換する機能を有している。太陽電池セル5として、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、薄膜シリコン型、CIGS(Cu・In・Ga・Seの化合物)系薄膜型等が用いられる。このような複数の太陽電池セル5は、互いに電極(図示省略)により接続され、発電された電力が電極によって外部に取り出される。
【0025】
なお、一部の光は、充填層3及び太陽電池セル5間を透過して太陽電池モジュール1の裏面に配された裏面シート4へ入射する。裏面シート4は、入射光を前面板2方向へ反射させる機能を有している。裏面シート4で反射された光は、前面板2と大気との界面でさらに反射され、太陽電池セル5の受光面5aに反射光H2として到達することで、太陽電池セル5の光電変換により電力へ変換される。これにより光の利用効率の向上が図られている
【0026】
次に裏面シート4について図2により説明する。
図2に示す裏面シート4は、前面板2側から透光性絶縁層7、透光性絶縁層7とは反対側に例えばプリズム形状に形成された凹凸構造部8aを配列させた凹凸構造層8、凹凸構造部8aに沿って形成された凹凸形状の光反射層である鏡面反射金属層9、バリア層10、接着層11、耐候層12とが順次積層されて構成されている。ここで、凹凸構造層8と鏡面反射金属層9とバリア層10は一体化されて反射凹凸構造層14を構成する。
【0027】
耐候層12は裏面シート4の最も裏面側に設けられ、反射凹凸構造層11を背面側から保護する役割を有している。耐候層12は、耐水性、紫外線に対する耐久性等の耐候性を有しているものが望ましく、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、リエチレンナフタレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、エポキシン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等から形成されていることが好ましい。
【0028】
上述した樹脂の中でも、高い耐熱性、強度、耐候性、耐久性、水蒸気等に対するガスバリア性等を有したものとして、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリ乳酸系樹脂が好ましい。
上述のポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂の中でも、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0029】
上述のフッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)やテトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)が特に好ましい。
【0030】
上述の環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えばa)シクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)、シクロヘキサジエン(及びその誘導体)、ノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンを重合させてなるポリマー、b)当該環状ジエンとエチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン系モノマーの1種又は2種以上とを共重合させてなるコポリマー等が挙げられる。これらの環状ポリオレフィン系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるシクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)又はノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンのポリマーが特に好ましい。
【0031】
なお、裏面シート4の前面側に配設される透光性絶縁層7の形成材料として、上述のフッ素系樹脂合成樹脂または環状ポリオレフィン系樹脂を1種又は2種以上混合して使用することができる。また、透光性絶縁層7の形成材料中には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良または改質する目的で種々の添加剤等を混合することができる。この添加剤として、例えば滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料等が挙げられる。
上述の透光性絶縁層7の成形方法は特に限定されず、例えば押出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の公知の方法が採用される。
【0032】
また、透光性絶縁層7中に紫外線安定剤又は分子鎖に紫外線安定基が結合したポリマーを含有することも可能である。この紫外線安定剤又は紫外線安定基により、紫外線で発生するラジカル、活性酸素等が不活性化され、裏面シート4の紫外線安定性、耐候性等を向上させることができる。この紫外線安定剤又は紫外線安定基としては、紫外線に対する安定性が高いヒンダードアミン系紫外線安定剤又はヒンダードアミン系紫外線安定基が好適に用いられる。
【0033】
反射凹凸構造層11は、凹凸構造層8と鏡面反射金属層9とを備えており、凹凸構造層8は透光性絶縁層7から入射されてきた光を鏡面反射金属層9で反射させて特定の方向へ反射させるための構造層である。凹凸構造層8は、図3に示すように、透光性絶縁層7と反対側の面に規則的に凸部8aaが複数配列されてなる凹凸構造部8aを有しており、その凹凸構造部8aの表面に薄層の鏡面反射金属層9が転写によって積層されることで構成されている。
【0034】
そのため、凹凸構造部8aと鏡面反射金属層9は凸部8aaと凸部9aのピッチpと高さHaが同一となり、鏡面反射金属層9は凹凸構造8aの凹凸形状を転写して形状を構成する。
凹凸構造部8aは、図3(a)に示すように、例えば略四角錐等の多角錐形状の凸部8aaが縦横方向に配列されて構成されている。或いは、同図(b)に示すように、断面略三角形のプリズム形状の凸部8aaがその延在方向に略直交する方向に配列されて構成されている。
【0035】
図3に示す凹凸構造部8aについて更に詳述する。
凹凸構造層8は反射凹凸構造層14の片面に設けられて、鏡面反射金属層9に入射する光線を調光する機能がある。主に太陽電池モジュール1の光源Lとなる太陽光は太陽電池モジュール1から無限遠に位置する光源に近似されるので、太陽光は、太陽電池モジュール1が設置されるような屋上、屋根などでは平行光として太陽電池モジュール1へ入射することになる。なお、全てが平行光ということではなく、周辺物に当たり反射する散乱光も存在するが、大部分が平行光として入射する。このような平行光の調光には、平面をもつプリズム形状が有効である。
【0036】
なお、凹凸構造部8aでは、凸部8aaは図3に示すようにプリズム形状や四角錐形状等の他、これらの逆型形状をなしていてもよい。ここで、プリズム形状とは平面に対して裏面側に凸である断面略V字形状であり、その逆型は平面に対して前面側に凸であるV字形状を示す。また、略四角錘形状は、平面に対して裏面側に凸である構造であり、その逆型は平面に対して前面側に凸である形状のことを示している。このような四角錐形状の凸部8aaの応用例として、五角錐、六角錐、あるいは三角錐等の各種の多角錐形状をなしていてもよいし、円錐形状をなしていてもよい。
なお、凹凸構造部8aの凸部8aaは、凹凸構造層8の表面全域にわたって形成されていてもよいし、太陽電池セル5の受光面5aに鏡面反射金属層9での反射光を入射させる箇所にのみ形成されていてもよい。
【0037】
反射凹凸構造層14を形成する材料は透光性絶縁層7との密着性が高いことが望ましい。
凸部8aaに用いられる材料はポリマー組成分が望ましく、ポリマー組成物の他に例えば硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤等が適宜配合されてもよい。
【0038】
凸部8aaに用いられるポリマー組成物は特に限定されるものではなく、例えばポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル−(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、リエチレンナフタレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられ、これらのポリマーを1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0039】
上述のポリウレタン系樹脂の原料であるポリオールとしては、例えば水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールや、水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールなどが挙げられ、これらを単体で又は2種以上混合して使用することができる。
【0040】
水酸基含有不飽和単量体としては、(a)例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、ケイヒアルコール、クロトニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体、(b)例えばエチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、プロピレンオキサイド、ブチレングリコール、ブチレンオキサイド、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルデカノエート、プラクセルFM−1(ダイセル化学工業株式会社製)等の2価アルコール又はエポキシ化合物と、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との反応で得られる水酸基含有不飽和単量体などが挙げられる。これらの水酸基含有不飽和単量体から選択される1種又は2種以上を重合してポリオールを製造することができる。
【0041】
また上述のポリオールは、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、スチレン、ビニルトルエン、1−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジエチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプレン等から選択される1種又は2種以上のエチレン性不飽和単量体と、上述の(a)及び(b)から選択される水酸基含有不飽和単量体とを重合することで製造することもできる。
【0042】
水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールの数平均分子量は1000以上500000以下であり、好ましくは5000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0043】
水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールは、(c)例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノルA、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ハイドロキノンビス(ヒドロキシエチルエーテル)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシヌレート、キシリレングリコール等の多価アルコールと、(d)例えばマレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、トリメット酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸とを、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール中の水酸基数が前記多塩基酸のカルボキシル基数よりも多い条件で反応させて製造することができる。
【0044】
上述の水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールの数平均分子量は500以上300000以下であり、好ましくは2000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0045】
当該ポリマー組成物のポリマー材料として用いられるポリオールとしては、上述のポリエステルポリオール、及び、上述の水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られ、かつ、(メタ)アクリル単位等を有するアクリルポリオールが好ましい。かかるポリエステルポリオール又はアクリルポリオールをポリマー材料とすれば耐候性が高く、反射凹凸構造層14の黄変等を抑制することができる。なお、このポリエステルポリオールとアクリルポリオールのいずれか一方を使用してもよく、両方を使用してもよい。
なお、上述のポリエステルポリオール及びアクリルポリオール中の水酸基の個数は、1分子当たり2個以上であれば特に限定されないが、固形分中の水酸基価が10以下であると架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が低下する傾向がある。
【0046】
凹凸構造層8における凸部8aaの形成方法として、プラスチック原料をスクリュまたはプランジャで加熱シリンダ内に送り込み、加熱流動化させ、先端のダイを通過させて形を与え、これを水または空気で冷却固化させて、長尺品を作る押出成形法がある。他にも形状が切削された金型を用いたプレス法、キャスティング法、射出成形法、UV成形法などが挙げられる。これらの方法によれば、シート形成と同時に凹凸構造層8の凹凸構造部8aを形成することが可能である。
【0047】
また、裏面シート4において、凹凸構造層8の凸部8aaが例えば略プリズム形状、略多角錐形状、あるいは、これらの逆型形状のいずれかをなす場合には、光反射効率を最大限に高めることができる。これに対し、凸部8aaが例えば高アスペクト比の非球面レンズの場合、散乱性はあるが構造による光の吸収が起こり、再帰反射率の低下を招く可能性がある。したがって、凸部8aaを上述した図3(a)、(b)に示すような略四角錐形状やプリズム形状とすることにより、再帰反射率の低下を防ぎ、光を効果的に太陽電池セル5に向けて反射させることができる。
【0048】
ここで、凹凸構造部8aの凸部8aaについて更に特定すると、
凸部8aaのピッチをp、凸部8aaの頂部の頂角をθ、凸部8aaの平均凹凸高さ(高低差)をHa、反射凹凸構造層14に隣接する接着層11の厚みをdとした場合に、下記の式(1)、(2)、(3)、(4)を満たすものとする。
【0049】
10μm≦p≦30μm ・・・(1)
111°≦θ≦137° ・・・(2)
2μm≦Ha≦11μm ・・・(3)
Ha<d≦13μm ・・・(4)
【0050】
凸部8aa(及び凸部9a)のピッチpは10μm以上30μm以下の範囲に設定されており、凸部8aaのピッチpが30μmより大きい場合には、ピッチpの増大にともなって凸部8aa(及び凸部9a)の高さHaが高くなるため透光性絶縁層7と接着層11との間に貼り合わせる際に、接着層11等に気泡が入りやすい等の欠点が発生し易くなり好ましくない。また、接着層11の厚みdを厚くする必要があるため、形成そのものが困難となってしまう。
一方、凸部8aa(及び凸部9a)のピッチが10μmより小さい場合、光が反射する際に光の回折が起こり得る。回折光は分光して広がった光になるため制御が難しく、特定方向に反射する上で好ましくない。さらに、金型製作時に金型を切削する時間が長くタクトが低下し生産効率が悪くなるため好ましくない。
これを踏まえて本実施形態では、凸部8aa(凸部9a)のピッチが10μm〜30μmの範囲に設定されているため、上記不都合を解消することができる。
【0051】
凸部8aa及び凸部9aの頂角θが111°〜137°の範囲に設定され、太陽電池モジュール1に用いられる充填層3の封止樹脂および前面板2のガラスの屈折率を約1.5とした場合に、前面板2と空気との界面において全反射するが、その際、この反射光が光反射凹凸部14へ入射してしまうことを防ぐことが可能となる。
一方、上記頂角θが137°を超える場合、前面板2と空気との界面において全反射が発生し難くなるため再集光効率が落ちることになり好ましくない。また、上記頂角θが111°を下回る場合、鏡面反射金属層9の凸部9aの一の面で反射した光の一部が隣の鏡面反射金属層9の凸部9aの面で衝突する可能性が高くなり、再集光効率が落ちる可能性が高くなり好ましくない。
【0052】
さらに、凸部8aa及び凸部9aの頂角θが、120°〜135°の範囲に設定されている場合には、安定して前面板2と空気との界面において全反射する範囲の角度に形成することができるとともに、反射した光の一部が鏡面反射金属層9で衝突することなく太陽電池セル5の受光面5aに入射するため、反射率が落ちることがなく再集光効率を高く維持することができる。
【0053】
上記(1)、(2)式を満たす凸部8aa及び凸部9aの凹凸高さは三平方の定理より2〜11μmになることから上記(3)式の範囲に設定することができる。
また、上記(4)式が満たされることにより、反射凹凸構造層14を十分に埋めることができる。この点、上記(4)式が満たされなければ、反射凹凸構造層14を十分に埋めることができなくなり、密着低下による層間剥離が生じ、反射凹凸構造層14に追随した凹凸形状が表面に露呈してしまい望ましくない。この点、上述の範囲に設定することで問題を確実に回避することができる。
また、反射凹凸構造層14に、その凸部8aaに沿って形成された鏡面反射金属層9が配設されているため、反射凹凸構造層14における光の反射効率を向上させることができる。
【0054】
鏡面反射金属層9は、入射してきた光を反射する機能を有する層である。鏡面反射金属層9に用いられる材料は、反射性を有しかつ蒸着が可能であれば特に限定されるものではなく、例えばアルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)等の金属や、これらの合金等が挙げられる。また、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の高屈折率材料を含んでも良い。
中でも、アルミニウムは紫外、可視、近赤外領域において、反射率が高く、表面に酸化皮膜を生成することにより、内部の侵食を防ぐことができる。しかも、高い水蒸気バリア性を有するという利点がある。また、銀は可視領域、近赤外領域においてアルミニウムと比較しても反射率が高いという利点がある。金は可視領域の短波長側に吸収があるものの、600nm以上の波長においてはアルミニウムよりも反射率が高い。さらに、これら3種の金属は非常に侵食されにくいという利点があるため、鏡面反射金属層9に用いる材料として望ましい。
【0055】
鏡面反射金属層9を形成する際には、凹凸構造部8aに沿って金属を蒸着することで形成される。この鏡面反射金属層9の蒸着手段は、凸部8aaに収縮や黄変等の劣化を招来することなく金属を蒸着できれば特に限定されるものではなく、(a)真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法;PVD法)、(b)プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法;CVD法)が採用される。これらの蒸着法の中でも、生産性が高く良質な光反射層を形成できる真空蒸着法やイオンプレーティング法が好ましい。
【0056】
なお、鏡面反射金属層9は単層構造でもよく2層以上の多層構造でもよい。このように鏡面反射金属層9を多層構造とすることで、蒸着の際にかかる熱負担の軽減により凸部8aaの劣化が低減され、さらに凸部8aaと鏡面反射金属層9との密着性等を改善することができる。このとき、鏡面反射金属層9として金属膜の上に酸化金属層を設けても良い。また、上述の物理気相成長法及び化学気相成長法における蒸着条件は、凹凸構造層8や耐候層12の樹脂種類、鏡面反射金属層9の厚み等に応じて適宜設計される。
【0057】
鏡面反射金属層9の厚みの下限として10nmが好ましく、20nmが特に好ましい。一方、鏡面反射金属層9の厚みの上限として200nmが好ましく、100nmが特に好ましい。鏡面反射金属層9の厚みが10nmより小さいと、鏡面反射金属層9に入射する光を十分に反射させることができない。また、20nm以上の厚みであっても鏡面反射金属層9で反射される光は増えないため、20nmであれば十分な厚みといえる。一方、鏡面反射金属層9の厚みが200nmの上限を超えると鏡面反射金属層9に目視でも確認できるクラックが発生する不具合が発生し、100nm以下であれば目視で確認できないようなクラックも発生しないのでより好ましい。
【0058】
裏面シート4に鏡面反射金属層9を用いる場合には、その密接着性等を向上させるために鏡面反射金属層9の蒸着対象面である凹凸構造層8の凸部8aaの表面に表面処理を施すとよい。このような表面処理としては、例えば(a)コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いた酸化処理、及び(b)プライマーコート処理、アンダーコート処理、アンカーコート処理、蒸着アンカーコート処理などが挙げられる。
これらの表面処理の中でも、コロナ放電処理及びアンカーコート処理が、凸部8aaと鏡面反射金属層9との接着強度を向上させると共に緻密かつ均一な鏡面反射金属層9の形成に寄与するために好ましい。
【0059】
凸部8aaのアンカーコート処理に用いるアンカーコート剤として、例えばポリエステル系アンカーコート剤、ポリアミド系アンカーコート剤、ポリウレタン系アンカーコート剤、エポキシ系アンカーコート剤、フェノール系アンカーコート剤、(メタ)アクリル系アンカーコート剤、ポリ酢酸ビニル系アンカーコート剤、ポリエチレンアルイハポリプロピレン等のポリオレフィン系アンカーコート剤、セルロース系アンカーコート剤などが挙げられる。これらのアンカーコート剤の中でも、鏡面反射金属層9の接着強度をより向上させることができるポリエステル系アンカーコート剤が特に好ましい。
【0060】
上述のアンカーコート剤のコーティング量(固形分換算)は、1g/m以上、3g/m以下が好ましい。アンカーコート剤のコーティング量が1g/mより少ないと、鏡面反射金属層9の密着性向上効果が小さくなる。一方、アンカーコート剤のコーティング量が3g/mより多いと、裏面シート4の強度、耐久性等が低下するおそれがある。
なお、上述のアンカーコート剤中には、密接着性向上のためのシランカップリング剤、
ブロッキングを防止するためのブロッキング防止剤、耐候性等を向上させるための紫外線
吸収剤等の各種添加剤を適宜混合することができる。
【0061】
また、鏡面反射金属層9の裏面側にバリア層10を密着させてもよい。このバリア層10は水蒸気透過バリア性に優れた材料であることが望ましい。具体的には水蒸気透過度が0〜0.6g/mの範囲であることが望ましく、無機物である金、銀、白金、プラチナ、銅などの金属、またはスズ、鉄、ニッケルの合金や中でも、アルミニウム、クロム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、亜鉛やまたは無機酸化物である酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化タングステンなどから形成されているか、これらを含んでなることとする。
【0062】
特にバリア層10は、不動態を持つ金属表面がその金属の酸化皮膜に一様に覆われていると、酸に対する防食が特に良く内部の侵食を防ぐことが可能となる。
ここで、不動態とは、金属が電気化学列では卑な位置にあるにも関わらず、非常に遅い速度で腐食する金属の状態をいう。Cr、Al、Ni、Ti、ステンレス鋼などの多くの有用な構造金属材料の耐食性の根底となっている性質である。わずかなアノード電流によって、大きく分極する金属、すなわち活性な金属またはそのような金属を含む合金が、電気化学的にかなり貴な金属の挙動に近づく場合、その金属は不動態化していると称する。バリア層10の不動態化により、腐食生成物が保護性を有するようになり耐食性が付与される。ステンレス鋼、Ti、Al、この中でもステンレス鋼は特に極薄の不動態皮膜によって耐食性が安定に維持されるため、バリア層10として好ましい。
【0063】
鏡面反射金属層9の腐食は太陽電池モジュール1への反射能力に顕著に影響し、反射効率低下の原因になる。裏面シート4の構成において、鏡面反射金属層9に沿ってバリア層10が積層された構造を採用することで、バリア層10が耐候層12側の外部から侵入する水分の透過を防ぎ、鏡面反射金属層9の腐食を防ぐ働きを発揮する。
バリア層10は蒸着法で鏡面反射金属層9の裏面に直接積層したり、基材上に蒸着して形成したものを鏡面反射金属層9に貼り合せて使用する。バリア層10は鏡面反射金属層9と同一蒸着法を採用するので、製造方法の説明は省略する。
【0064】
バリア層10は耐候層12側から入り込んでくる水蒸気透過を防ぐことで反射凹凸構造層14の劣化を防ぎ、太陽電池モジュール1内部へ水蒸気の透過を防止して、太陽電池モジュール1に用いられる電極の腐食や、充填層3を構成する封止樹脂の劣化を防ぐことが可能となる。
なお、バリア層10の水蒸気透過度が0.6g/m を超えてしまうと、電極の腐食や、充填層3の劣化が発生する場合がある為、望ましくない。この点、水蒸気透過密度を0.6g/m 以下の範囲に設定することで、電極の腐食及び充填層3の劣化を確実に回避することができる。さらに、防食金属が凹凸構造層8の凸部8aaに沿うように形成されているので、鏡面反射金属層9に入射光が到達するまでの光の吸収を極力抑えることが可能となる。
【0065】
接着層11は、接着層11が接するバリア層10と耐候層12との密着性が良好であることが望ましく、耐久性、クッション性などの諸特性を補うために用いられ、一例としてシリコーン系樹脂等が用いられる。この接着層11を設けることで、前面板2側のその他の層のみでは不足する性能を補うことができる。例えば、耐久性、クッション性などを高めるためにはシリコーン系樹脂を用いるとよい。
特に屋外使用される太陽電池モジュール1の場合、日照時における太陽電池モジュール1の熱上昇は著しく、樹脂材料を含んで作製された裏面シート4に反りが発生し、太陽電池モジュール1の故障を招く恐れもある。
【0066】
本実施形態における太陽電池モジュール1は上述の構成を備えており、裏面シート4を作製する方法の例として、透光性絶縁層7上に金属板を用いたUV成形法により凸部8aaを形成した凹凸構造層8を成形するとともに、凸部8aa上に蒸着等により鏡面反射金属層9、バリア層10を形成することで反射凹凸構造層14を積層する。その後、バリア層10と耐候層12を接着層11によって接着する。
【0067】
このようにして、本実施の形態における裏面シート4は、透光性絶縁層7と、凹凸構造層8と、入射光を透光性絶縁層7に向けて反射する反射機能を有する鏡面反射金属層9と、バリア層10と、接着層11と、耐候層12とを備えている。そして、凹凸構造層8と、鏡面反射金属層9と、バリア層10とによって反射凹凸構造層14が構成されている。なお、凹凸構造層8はその裏面側(表面側でもよい)に凹凸構造部8aが設けられ、凹凸構造部8a上に鏡面反射金属層9とバリア層10が配設されて構成されている。
【0068】
本実施の形態による裏面シート4を備えた太陽電池モジュール1は上述の構成を備えているから、図1のように太陽光等の光源Lから出射する光H1は、太陽電池モジュール1の前面板2に入射して透過し、充填層3を経由して太陽電池セル5の受光面5aに入射して光電変換される。また、一部の入射光H2は太陽電池セル5、5の間や太陽電池セル5を透過し、太陽電池モジュール1の裏面側に配された裏面シート4へ入射する。
そして、裏面シート4に入射した光は、透光性絶縁層7を透過して凹凸構造層8を介して鏡面反射金属層9の凸部9aによって前面板2側へ反射される。そして、前面板2と大気との界面で反射させられた光は、充填層3内を透過して太陽電池セル5の受光面5aに入射して受光される。これによって、太陽電池セル5の受光面5aで受光される光が増大されて太陽電池セル5での発電に寄与し、光の利用効率の向上が図られる。
【0069】
本実施形態による裏面シート4によれば、反射凹凸構造層14に密着する接着層11によって、凹凸構造層8及び鏡面反射金属層9及びバリア層10による凸部8aa,9aを含む凹凸部を十分に埋めることができる。そのため、反射凹凸構造層14の凹凸部の成形が層間剥離や塵や埃の巻き込みを防止することが可能となる。
この点、凹凸構造層8が堅固に形成されていないと、これら反射凹凸構造層14の凹凸部を接着層11によって充分に埋めることができなくなり、層間剥離が生じたり、反射凹凸構造層14の凹凸部の形状に追随した形状が接着層11の表面に露呈してしまう不具合が生じる。
【実施例】
【0070】
次に本発明の実施例について説明する。
図4は裏面シート4についての試験例1〜9における、透光性絶縁層7に凹凸構造層8を積層した構成を示す縦断面図である。
具体的には、透光性絶縁層7に250μmのPETフィルムを使用し、凹凸構造層8に紫外線硬化樹脂を使用した。凹凸構造層8の最大凹凸の高さHaを約6μm、凹凸構造層8の凸部8aaの頂角の平均間隔pを15μmとした。そして、凹凸構造層8のガラス転移温度を0、10、15、20、30、40、45、50、100℃とした9種のサンプルを試験例1〜9として作成した。
そして、試験例1〜9について、PETフィルムと紫外線硬化樹脂の耐湿熱による密着性を確認するため高温高湿試験機を用いて耐性試験を実施した。
【0071】
裏面シート4は太陽電池モジュール1の背面を保護するものであり、使用状態で十数年自然環境に耐え得る構成でなければならない。そのため、高温高湿試験機において、試験例1〜9について、耐性の有無を検査するために温度85℃、湿度85%の環境下で、温度変化、湿度変化への耐性を確認する温度サイクル・温湿度サイクル試験を1000時間試行して、試験を実施した。
【0072】
また、試験例1〜9について、高温高湿試験機を用いた高温、高湿状態の耐性試験の後に、透光性絶縁層7と凹凸構造層8の密着性を確認するため付着試験を行った。
付着試験はJISで規格するクロスカット法に準じて行い、碁盤目テープ法を用いて密着性を評価した。クロスカット法において、隙間間隔1mmのカッターガイドを用いて凹凸構造層8を格子状にカットした。クロスカット法よりカットされた格子状カット部20は10mm×10mmの範囲に形成するものとする。
【0073】
図5は試験例1〜9における凹凸構造層8をクロスカットした格子状カット部20に例えばセロテープ(登録商標)等の粘着テープ21を接着した状態を示す説明図である。
クロスカット法において、凹凸構造層8の試験サンプルを高温高湿試験後に凹凸構造部8aの面にクロスカットを行い、カットされた格子状カット部20に粘着テープ21を平行な方向に接着し、格子状カット部20に密着した箇所から最低20mmを超える長さまで粘着テープ21を密着させる。
粘着テープ21を試験サンプルに正しく接触させる為に、格子状カット部20に指先で粘着テープ21をこすって密着させる。粘着テープ21を通して目視できる凹凸構造部8aにおける凸部8aaの色は接触面全体がきちんとしているかどうかを示す有効な目安となる。
【0074】
図6は試験例1〜9において、格子状カット部20から粘着テープ21を取り外す直前の縦断面図である。粘着テープ21を付着して5分以内に引き剥がすものとし、60°に近い角度で粘着テープ21の端部をつかみ、0.5〜1秒で確実に引き離し、透光性絶縁層7に対する凹凸構造層8の格子状カット部20の剥がれの評価を行う。
【0075】
表1により、試験例1〜6は層間の剥離はなかった。しかし、試験例1〜3はガラス転移温度が低いためサンプル作製時に柔軟性が非常に高くて変形が激しく、凹凸構造層8を形成した後、ロール状に巻回したときに凹凸構造層8の樹脂材料とこれに接する基材裏面との間でブロッキングが生じやすいという不具合が起こった。また、試験例7〜9は層間剥離が発生した。したがって、層間剥離が無く作製が困難でない試験例4乃至6による凹凸構造部8aは、ガラス転移温度20〜40℃の範囲を満たしている必要があることがわかった。
【0076】
【表1】

【0077】
次に、図7は試験例10〜25における耐性試験を行った太陽電池モジュール1の概略構成を示す縦断面図である。この太陽電池モジュール1の試験物は、前面板2と充填層3と裏面シート4とで構成されており、図1の構成から充填層3内の太陽電池セル5を除去した構成となっている。前面板2は厚さ3mmの強化ガラスを使用し、充填層3は太陽電池セル5の封止材として用いられているEVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)を使用した。
真空ラミネータ装置を使用して、前面板2上に充填層3と裏面シート4を順次積み重ねたものを3分間真空引き後、真空中で温度150℃で10分間熱をかけてプレスした後、封止したものが実施サンプルであり、試験例10〜25とする。
充填層3であるEVA樹脂に架橋構造を持たせる事で、EVA樹脂の耐熱性と耐薬品性を向上させる為に150℃の温度で加熱を行った。
【0078】
試験例10〜17における裏面シート4は図1と同様の構成であり、耐候層12にPETフィルム、接着層11に熱硬化性樹脂、バリア層10にニッケル、鏡面反射金属層9にアルミニウム、凹凸構造層8に紫外線硬化樹脂、凹凸構造層8の凸部8aaの高さHaを約6μmとし、透光性絶縁層7にPETフィルムを使用した(図4参照)。
そして、接着層11のガラス転移温度が10、15、20、30、40、45、50、55℃と異なる計8種を試験例10〜17として作成した。接着層11の耐湿熱による密着性を確認するため高温高湿試験機を用い、1000時間の耐性試験後に剥離試験を実施した。
剥離試験の試験方法として、裏面シート4を切断して10mm幅の試験片を作成し、引っ張り試験機を用いて耐候層12と反射凹凸構造層14との間の剥離強度を測定した。剥離強度の単位はN/15mmである。
【0079】
剥離試験の結果は表2に示す。表2により、高温高湿試験1000時間経過後の試験例10〜17を比較すると、試験例10〜15は、層間の剥離強度は高い値を示すが、試験例10、11はガラス転移温度が低くサンプル作製時に硬化が完全ではなかったために、ロール状に巻回ししたときにブロッキングが生じやすいなどの不具合がおこった。また、試験例16、17は層間の剥離強度が低い値を示し、作成が困難でない接着層11がガラス転移温度20〜45℃の範囲を満たしている必要があることがわかった。
【0080】
【表2】

【0081】
次に、試験例18〜25の裏面シート4は図1、図2と同様の構成を有しており、耐候層12にPETフィルム、接着層11に熱硬化樹脂、接着層11のガラス転移温度30℃、凹凸構造層8に紫外線硬化樹脂、凹凸構造層8の最大凹凸の高さHaを約5μm、透光性絶縁層7にPETフィルムを使用し、接着層11の膜厚が1、3、5、7、9、13、14、20μと異なる計8種を作成した。試験例18〜25の試験は裏面シート4の各層をを含む構成を用いており、接着層11の膜厚限定ための試験であるから、層間剥離箇所の試験は行わない。
試験例10〜19と同様に耐湿熱による密着性を確認するため高温高湿試験を用いて、1000時間の耐性試験後に剥離試験を実施した。剥離試験は試験例10〜19と同様のため省略する。
【0082】
表3より高温高湿試験1000時間経過後の実施サンプル18〜25を比較すると、接着層11の厚さが5μm以上の場合には十分な剥離強度が得られていることがわかる。また接着層11の厚さが14μm以上の場合にはクラックの発生が確認されたことより、必要な接着層11の厚さは5μm〜13μmの範囲であった。なお、クラックは接着層11でのクラックにより、透光性絶縁層7の面,耐候層12の面または両方の層の面から確認できる。
そのため、凹凸構造層8の凸部8aaの最大凹凸高さHaは、接着層11内に埋め込まれるために、5μm〜13μmの範囲である必要があることがわかった。
【0083】
【表3】

【0084】
上述したように、本実施形態による裏面シート4及びこれを備えた太陽電池モジュール1によれば、凹凸形状をなす鏡面反射金属層9と凹凸構造層8とを備えた反射凹凸構造層14を有することにより、太陽電池セル5間を透過する光を、裏面シート4の光反射凹凸構造層14における鏡面反射金属層9の凸部9aによって反射させて、太陽電池セル5へ到達させることができるから、光の利用効率を向上させて発電量を増加させることができる。
しかも、凹凸構造層8は、ガラス転移温度が20〜40℃の紫外線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂から形成されているため、各層間の応力に差が少なく高温環境下においても各層間の密着力が低下せず一定の品質を保持することができる。
【0085】
また、光反射凹凸構造層14と耐候層12とを接着する接着層11がガラス転移温度20〜45℃の範囲であるため、接着層11のガラス転移温度が低いことにより高温環境時でも柔軟な性質を持たせて各層間の高い密着強度を維持できる。
なお、ガラス転移温度20℃未満になると柔軟性を持ちすぎて硬化が難しく作製が困難であり望ましくない。また45℃を超える高温環境下では各層より応力が大きく、反射凹凸構造層14と耐候層12との密着を妨げることとなり望ましくない。この点上述の範囲に設定することで問題を確実に回避することができる。
また、裏面シート4において、接着層11は、その膜厚が5μm〜13μmの範囲であれば、10N/mmという十分な剥離強度を有すると共に、クラックを生じない外観を得られる。
【0086】
また、光反射凹凸構造層14が(1)式〜(4)式を満足するから、(1)式において、鏡面反射金属層9の凸部9aのピッチpが10μm〜30μmの範囲とすることで、透光性絶縁層7と接着層11を介して貼り合わせる際に気泡が入ることを防止でき、接着層11の厚みを厚くすることを防止できる。しかも、鏡面反射金属層9で光が反射する際に光の回折を防止できる。
また、(2)式によれば、太陽電池モジュール1に用いられる充填層3および前面板2の屈折率を約1.5とした場合に、前面板2と空気との界面における反射光が光反射凹凸構造層14へ再入射することを防ぐことができる。また、前面板2と空気との界面において、反射した光の一部が隣の凸部9aでさらに反射して再集光効率が落ちることを防ぎ、全反射させて再集光効率を向上できる。
(4)式が満たされることにより、反射凹凸構造層14の凹凸形状を十分に埋めることができる。この点、(4)式が満たされなければ、凹凸形状を十分に埋めることができなくなり、密着低下による層間剥離が生じたり凹凸形状に追随した形状が表面に露呈して望ましくない。また13μmを超える厚みを持たせると、クラックが生じ好ましくない。
【0087】
また、接着層11と鏡面反射金属層9との間にバリア層10が備えられているから、太陽電池モジュール1内部への水蒸気の透過を防止し、電極、鏡面反射金属層9の腐食や加水分解による充填層3や透過性絶縁層7の劣化を防ぐことができる。しかも、バリア層10の水蒸気透過度が0〜0.6g/mの無機物または無機酸化物を含むことで、上述の効果を確実に発揮できる。
【0088】
なお、上述した実施形態において、反射凹凸構造層14において鏡面反射金属層9の裏面側にバリア層10を設けたが、バリア層10は必ずしも設けなくてもよい。
また、上述した実施形態では、太陽電池裏面シート4を備えた太陽電池モジュール1について説明したが、本発明は太陽電池モジュールに限定されることはなく、ディスプレイ部材や照明装置等の各種光学機器の裏面シートにも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の裏面シートはディスプレイ部材や照明装置などの各種光学機器に用いる裏面シートに利用が可能である。特に太陽電池の分野では強度に優れ、かつ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐薬品性、光反射性、光拡散性等の諸堅牢性に優れ、極めて耐久性に富み、その保護能力性が高く、光の効率向上に利用が期待される。
【符号の説明】
【0090】
1 太陽電池モジュール
2 前面板
3 充填層
5 太陽電池セル
8 凹凸構造層
8a 凹凸構造部
8aa、9a 凸部
9 鏡面反射金属層(光反射層)
10 バリア層
11 接着層
12 耐候層
14 反射凹凸構造層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に太陽電池セルを封止した充填層の前面側に前面板が積層されてなる太陽電池モジュールの裏面側に配置される太陽電池裏面シートであって、
前面側から順に少なくとも透光性絶縁層と、凹凸構造部を形成した凹凸構造層と、該凹凸構造層の凹凸構造部に沿って形成された光反射層と、接着層と、耐候層とが積層されてなり、
前記凹凸構造層は、ガラス転移温度が20〜40℃の範囲の紫外線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂で形成されていることを特徴とする太陽電池裏面シート。
【請求項2】
前記接着層はガラス転移温度が20〜45℃の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載された太陽電池裏面シート。
【請求項3】
前記凹凸構造部の凸部のピッチをpとし、前記凹凸構造部の凸部の頂角をθとし、前記凹凸構造部の凸部の高さの平均をHaとし、前記接着層の厚みをdとした場合に、下記の式(1)、(2)、(3)、(4)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載された太陽電池裏面シート。
10μ≦p≦30μ ・・・(1)
111°≦θ≦137° ・・・(2)
2μ≦Ha≦11μ ・・・(3)
Ha<d≦13μ ・・・(4)
【請求項4】
前記接着層と光反射層との間にバリア層が備えられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載された太陽電池裏面シート。
【請求項5】
前記バリア層の水蒸気透過度が0〜0.6g/mであり、前記バリア層は無機物または無機酸化物を含むことを特徴とする請求項4に記載された太陽電池裏面シート。
【請求項6】
前記凹凸構造部は、略プリズム形状、略多角錐形状、或いはこれらのいずれかの形状の逆型形状が複数配列されてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載された太陽電池裏面シート。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載された前記太陽電池裏面シートを、前記太陽電池モジュールの裏面側に配設してなることを特徴とする太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−119467(P2012−119467A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267400(P2010−267400)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】