好中球の生存及び活性化因子としての中鎖脂肪酸、グリセリド及び類似体
【課題】好中球の生存及び活性化を促進するための、例えば化学療法及び放射線治療の望ましくない副作用として生じる好中球減少症の治療のための組成物及び方法。
【解決手段】中鎖脂肪酸、例えばカプリン酸若しくはカプリル酸、又はその塩又はトリグリセリド、そのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体、あるいは中鎖トリグリセリド(MCT)を含む組成物を、好中球減少症を軽減するか又は解消するのに十分な量で、治療を必要とするヒト又は動物に投与する。前記組成物は、傷害を治療するための有効量で投与される。前記方法は、骨髄移植の管理及び様々な好中球減少性疾患の治療にも有用である。
【解決手段】中鎖脂肪酸、例えばカプリン酸若しくはカプリル酸、又はその塩又はトリグリセリド、そのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体、あるいは中鎖トリグリセリド(MCT)を含む組成物を、好中球減少症を軽減するか又は解消するのに十分な量で、治療を必要とするヒト又は動物に投与する。前記組成物は、傷害を治療するための有効量で投与される。前記方法は、骨髄移植の管理及び様々な好中球減少性疾患の治療にも有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、好中球減少症の予防及び/又は治療に関する。これは、化学療法と放射線療法の使用に関係している好中球減少症の治療、並びに感染症、血液病及び栄養欠乏から生じる好中球減少症の治療を含んでいる。本発明は、一般に薬物の毒性を減少させ、そして薬効を高めることにも関する。特に、本発明は、好中球の生存及び活性化因子又は骨髄幹細胞増殖因子としての、中鎖脂肪酸、例えばカプリン酸、カプリル酸、又はその塩若しくはトリグリセリド、あるいはそのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
化学療法は、癌細胞と腫瘍を根絶させるための細胞傷害性薬物、例えば、これだけに制限されることなく、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、タキソテール、タクソール、5-フルオロビラシル(5-fluoroviracil)、メトトレキサート、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン又はクロラムブシルの使用を表す。しかし、これらの薬剤は、非特異性であり、そして特に高い服用量において、それらは正常、かつ、急速に分裂している細胞に有毒である。これは、化学療法と放射線治療を受けた患者において様々な副作用をしばしばもたらす。骨髄抑制、骨髄における重度の血球産生減少は、そのような副作用の1つである。それは、白血球減少症、好中球減少症及び血小板減少症を特徴とする。(特発性、周期性及び先天性の)重度の慢性好中球減少症は、循環している好中球数の選択的な減少、及び細菌感染症に対する高い感受性をも特徴とする。
【0003】
化学療法剤による癌治療の最重要点は、細胞毒性の機構と、宿主細胞を上回る腫瘍細胞の高い増殖に関する選択性の機構とを組み合わせることである。しかし、化学療法剤にそのような選択性があるのはまれである。化学療法剤の細胞毒性は、投与可能な服用量を制限して、治療サイクルに影響を与え、そして腫瘍をもつ患者の生活水準を大きな危険にさらす。
【0004】
他の正常組織は悪影響を受けもするが、骨髄は、増殖に特異的な治療、例えば化学療法又は放射線治療に特に敏感である。急性及び慢性の骨髄毒性は、癌治療の共通した副作用であり、それは血球数の減少と貧血、白血球減少症、好中球減少症、無顆粒球症、及び血小板減少症を引き起こす。そのような効果の1つの原因は、造血細胞(例えば、多能性幹細胞と他の前駆細胞)の数の減少であり、これらの細胞に対する細胞傷害性薬物若しくは放射線の致死効果、並びにより成熟した骨髄コンパートメントの減少によって誘発されたフィードバック機構によって誘発された幹細胞の分化の両方によって引き起こされる。2番目の原因は、幹細胞の自己再生能力の低下であり、それは直接的な(突然変異)、及び間接的な(幹細胞集団の老化)効果の両方に関係がある(Tubiana, M., et al., Radiotherapy and Oncology 29:1-17, 1993)。このように、癌治療は、しばしば多形核好中球(PMN)の減少又は好中球減少症をもたらす。PMNは、病原体の侵入に対する防衛の第一線であり、かつ、急性炎症中の中心的な役割を担っており、それらの主要な機能は、食作用及び病原菌の殺傷である。この役割を達成するために、PMNは、走化性因子への応答によって循環を離れ、そしてそれらの生物学的機能を発揮するために患部に入る。正常な血球数を示している個体において、好中球は、全白血球の約60%を占める(SI Units Conversion Guide, 66-67 (1992), New England Journal of Medicine Books)。しかし、癌の化学療法治療を受けた患者の3人に1人ほどが、好中球減少症を患う。健康なヒト成人について正常な好中球数の平均は、1800〜7700細胞/μLの範囲での、4400細胞/μLの水準にある。1000細胞〜500細胞/μLのカウントは、中程度の好中球減少症であり、そして500細胞/μL以下のカウントは、重度の好中球減少症である。骨髄抑制状態の患者は、感染症になりやすくて、入院を必要とする血液凝固系の障害でしばしば苦しめられる。好中球と血小板の不足は、癌治療の後の罹患率及び死亡率の主要原因であり、癌治療の高いコストの原因となる。これらの先に触れた状況において、好中球のアポトーシスを抑制するか、又は好中球の活性化及び動員を刺激することができるいずれかの薬剤の使用は、治療のための価値をもちうる。化学療法後に患者の免疫系を回復させる試みは、残りの幹細胞を増殖させ、そして感染に対抗する成熟細胞に分化させるように刺激するための造血増殖因子の使用を伴う。
【0005】
骨髄移植において、「動員」として知られている現象が、末梢血からの非常に多数の幹/前駆細胞を収集するために利用された。この方法は、現在の自家移植又は同種異系骨髄移植のために使用される。増殖因子が、骨髄機能を廃絶する療法と前駆幹細胞の注入前の収集のために末梢前駆幹細胞数を増やすために使用される。
【0006】
治療後の骨髄移植は、好中球減少症に対抗することもできる。しかし、これらの治療は、患者を感染症に無防備なままにする10〜15日間の治療を必要とする。骨髄幹細胞を刺激することができる作用物質は、幹細胞移植を容易にし、かつ、促進することができ、それにより骨髄移植後の好中球減少の時間枠を短くする。
【0007】
顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GMCSF)及び顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)のような造血増殖因子がそのような作用を発揮することができるが、それらを組み換えの技術によって産生しなければならないので、それらの使用は高価である。患者が免疫の抑制から「化学的に保護される」ならば、そのような治療後の寛解性治療が不要になる。
【0008】
従って、化学療法及び放射線治療によって誘発された骨髄抑制状態の望ましくない副作用を減らすための新規組成物及び方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の概要
本発明は、ヒトを含む哺乳動物の造血系の刺激のための新規方法を提供することによって化学的保護剤(chemoprotective agent)の必要性を満足させる。本発明は、化学療法及び放射線療法、そして造血系の刺激が治療的価値をもちうるあらゆる他の状況、例えば、これだけに制限されることなく、骨髄移植及び慢性好中球減少症、並びに感染症、血液の病気及び栄養欠乏症に起因する好中球減少症の骨髄抑制効果を治療する新規方法をも提供する。この方法は、骨髄抑制への対抗、好中球の生存及び活性化の増強、特にそのような治療を受けている患者の造血系を支援する。
【0010】
この方法に従って、医薬として許容される担体中、1以上の中鎖脂肪酸、例えばカプリン酸、カプリル酸又はその塩若しくはそのトリグリセリド、あるいはモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体を含む組成物を、例えば化学療法と放射線治療の副作用を減らすため、又は感染症、血液の病気及び栄養欠乏症から生じる好中球減少症を治療するための、好中球減少症を予防及び治療するのに有効な量で、哺乳動物、特にヒトに投与する。
【0011】
それ故に、単独の薬剤、又は他の化学療法剤若しくは骨髄抑制症状を誘発するそのような薬物のあり及び/又はなしの2種類以上の薬剤の組み合わせ物として、化学的保護用医薬組成物の製造のために、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸又はその金属塩(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム)、又はそのトリグリセリド、又はそのモノ−又はジグリセリド若しくはその他の類似体を使った組成物を提供することが本発明の目的である。
【0012】
本発明の他の目的は、造血活性化因子としてのカプリン酸、カプリル酸、又はそのナトリウム塩若しくはそのトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド、あるいは関連化合物の使用に関する。
【0013】
さらに、本発明は、カプリン酸、カプリル酸、又はそのナトリウム塩若しくはそのトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリドか他の類似体を含む組成物、並びに骨髄抑制と続く免疫抑制の治療のためのそのような化合物の使用を含む。
【0014】
本発明の目的は、重度の慢性好中球減少症の患者の治療のためのカプリン酸、カプリル酸、又はそのナトリウム塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体の使用にも関する。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、好中球の生存及び活性化因子としてのカプリン酸、カプリル酸、又はそのナトリウム塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体の使用に関する。
【0016】
本発明は、自家又は同種異系骨髄移植のように好中球の動員が治療的価値をもつ状態におけるカプリン酸、カプリル酸、又はそのナトリウム塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体の使用にも関する。
【0017】
ヒトを含む哺乳動物の化学的保護を提供するための有効な方法を提供することが本発明の目的である。
【0018】
本発明の他の目的は、ヒトを含む哺乳動物における化学療法及び放射線治療の有効性を増強するために有効な方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、副作用を避けながら、より十分な治療の恩恵をえるために、より多い通常投与量の使用、あるいはさらに必要な化学療法剤組成物の投与量の増加のための方法を提供する。
【0020】
本発明の他の目的は、ヒトを含む哺乳動物における化学療法によって誘発された好中球減少症を軽減するか又は解消するのに有効な方法を提供することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、血液の病気、例えば慢性特発性好中球減少症、周期性好中球減少症、走化性欠損白血球症候群、チェディアック−東症候群白血病及び再生不良性貧血に起因する好中球減少症の治療方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、感染症、例えばウイルス性感染症(例えば、HIV、はしか、肝炎、黄熱、単核細胞症)、及び細菌性感染症(例えば、腸チフス、パラチフス、ブルセラ症)に起因する好中球減少症の治療方法を提供することである。
【0023】
最後に、本発明の他の目的は、受容者における不都合な副作用を最小限しか又は全く引き起こさない方法を提供することである。
【0024】
本発明のこれらの及び他の目的、特徴、並びに利点は、以下の開示された態様及び添付の請求項の詳細な説明の再検討後に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】PMNのアポトーシスに対するMCTの効果を示す。
【図2】PMNの食作用に対するMCTの効果を示す。
【図3】A及びBは、PMNアポトーシスに対するドキソルビシンの効果を示す。
【図4】Aは、ドキソルビシン処理した好中球に対するMCTの時間経過応答を表す。Bは、MCT処理した好中球に対するドキソルビシンの時間経過応答を表す。
【図5】骨髄増殖に対するMCT及びトリカプリンの効果を示す。
【図6】免疫抑制された動物の骨髄細胞数に対するMCTの効果を示す。
【図7】免疫抑制された動物の脾臓細胞数に対するMCTの効果を示す。
【図8】正常なマウスの胸腺重量に対するMCT及びGM-CSFの効果を示す。
【図9】免疫抑制された動物の骨髄細胞数に対するMCT、カプリル酸ナトリウム及びカプリン酸ナトリウムの効果を示す。
【図10】B16F10メラノーマ・モデルにおける治療量以下の濃度のドキソルビシンと組み合わせたMCTの化学的保護効果及び抗腫瘍能力を表す。
【図11】DA-3乳癌モデルにおける治療量以下の濃度のシクロホスファミド又はタキソテールと組み合わせたMCTの化学的保護効果及び抗腫瘍能力を表す。
【図12】DA-3乳癌モデルにおける治療のための濃度のシクロホスファミド又はタキソテールと組み合わせたMCTの化学的保護効果及び抗腫瘍能力を表す。
【0026】
本発明の詳細な説明
高い投与量の化学療法及び放射線は、骨髄内の造血細胞を破壊し、患者を好中球及び血小板の著減したままにする。そのような治療の後に、患者は、好中球減少症に起因する感染症と発熱のために集中治療室内で数週間過ごす。血小板減少症は、血小板輸血を必要とする血液凝固時間の延長と出血障害をもたらす。骨髄抑制は、癌治療における服用量を制限する要因であり、そして好中球と血小板の不足が、これらの癌の治療後の罹患率と死亡率の原因をもたらす。
【0027】
骨髄移植において、2つのアプローチが使用されうる。移植前の骨髄の刺激は、末梢前駆幹細胞数を増加させる。しかし、新たに移植された骨髄は、十分に成熟した好中球、又は患者の免疫系を回復させるための好中球中間体を含んでいない。これは、患者を感染症に対し感受性の高い期間及び血液凝固時間の延長を有した状態のままにする。好中球の刺激及び活性化を伴う治療は、好中球減少症及び血小板減少症を減らすことにより、骨髄移植後の回復を増強する。
【0028】
本発明は、患者の好中球の生存及び活性化を促進する方法に関する。現在の方法は、患者の造血系を回復させることに向けられる。現在、そのような治療に使用されている造血増殖因子は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、幹細胞因子(SCF)及び顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)である。G-CSF及びGM-CSFは、好中球減少症及び血小板減少症の全期間を短くすることができるが、しかし、それらは、その患者が血液凝固が不完全な及び感染症にかかりやすい間の、かなりの時間帯がまだ残っている。
【0029】
骨髄移植における、「動員」は、末梢血液からのより多数の幹/前駆細胞を回収するために使用された。骨髄内の造血幹細胞は、増殖因子による処理後に血液中に動員される。そのような治療に使用された増殖因子は、インターロイキン-3(IL-3)、G-CSF、GM-CSF、SCF及びIL-3とGM-CSFの活性部分をもつ組み換え融合タンパク質を含む。動員された幹細胞は、次に増殖因子治療後に回収され、そして患者の好中球及び血小板を回復させるために、高い服用量の化学療法又は照射の次の課程に続いて患者の中に再注入される。
【0030】
中鎖トリグリセリド(本明細書中、「MCT」と呼ばれもする)は、8(C8、オクタン酸又はカプリル酸)及び10(C10、デカン酸又はカプリン酸)の炭素鎖長を有する脂肪酸によりエステル化されたグリセロールから成る。MCTは、C8及びC10脂肪酸のグリセロールエステルの混合物を通常含む。しかし、MCTは、わずかな量(各2±1%)のC6(ヘキサン酸又はカプロン酸)及びC12(ドデカン酸又はラウリン酸)のグリセロールエステルを含むこともできる。CRODAMOL(商標)は、Croda社、Toronto(Canada)から入手可能な市販のMCTである。実施例1で示されるように、CRODAMOL(商標)は、様々な割合で存在するC8及びC10脂肪酸から成るグリセロール・トリエステルを含むMCTである。しかし、CRODAMOL(商標)は、少しもC6又はC12脂肪酸エステルを含んでいない。一方、長鎖トリグリセリド(本明細書中、「LCT」と呼ばれもする)は、12超の炭素鎖長をもつ脂肪酸によりエステル化されたグリセロールから成る。LCTの状態にある典型的な脂肪酸は、パルチミン酸(C16)とステアリン酸(C18)を含む。MCTと異なり、LCTは食事脂肪の主成分である。実際には、MCTとLCTは、著しく異なる生物学的な性質を有する。MCTとLCTの間の生理学的な相違のいくつかが、Harrison's Principles of Internal Medicine, 8th Edition, 1520-1521 (1977), McGraw Hill Book Company or 15th Edition, 1668-1669 (2001)中に記載されている。例えば、LCTとは対照的に、MCTは、それらは腸の上皮細胞により吸収されることができるので、膵リパーゼによる加水分解を必要としない。
【0031】
MCT及びそれらの構成要素である中鎖脂肪酸は、食物及び製薬工業での使用を見出す無毒性の材料である。例えば、K.A. Traul et al. in Food and Chemical Toxicology'38:79-98 (2000)は、それらがLCTを上回る多数の利点を提供するので、MCTが、多数の食物及び栄養物用途に利用されたと述べる。MCTは、様々なヒト及び獣医学の製剤、そして化粧品の乳化剤として元来使用されもする。それらは、MCTの安全性を支持する多数の毒性研究を参照する。例えば、それらは1 g/kgのレベルまでの、MCTのヒト食事消費量の安全性が臨床試験で確認されたことを指摘する。C8とC10脂肪酸は、類似した安全性と用途をもつ。例えば、Merck Index, 11th Edition, 266 (1989)において、カプリル酸は、本質的に無毒である、10.08 g/kgのLD50(経口、ラット)を有すると報告されている。実際、連邦規制基準(CFR)の184節によると、米国食品医薬品局(U.S. federal Drug Agency)(FDA)は、カプリル酸にGRAS(一般に安全と認められる)認証を与えた。同様に、172節(CFR)によると、遊離脂肪酸(例えば、カプリン酸、カプリル酸)及びその金属塩が、食物に使用する安全な添加剤として認められている。Journal of Pharmacy and Pharmacology 53:149-154 (2001)中、D. Dimitrijevicらにより言及されるとおり、カプリン酸(ナトリウム塩)は、直腸用製剤のための吸収促進剤として日本とスウェーデンでヒトが使用するために認可されている。米国特許番号第4,602,040号(1986年)は、医薬賦形剤としてのMCTの使用を説明している。つい最近、PCT公報WO 01/97799は、抗菌性剤としての、中鎖脂肪酸、特にカプリル酸及びカプリン酸の使用を記載している。
【0032】
しかし、本明細書中に開示された意外な発見まで、好中球の生存及び活性化因子としての中鎖脂肪酸、例えばカプリン酸、カプリル酸若しくはその金属塩、又はモノ−、ジ−又はトリグリセリド(MCT)の有効性は知られていなかった。本明細書中に記載のとおり、MCTは、造血の促進と好中球の成熟に関連する活性の少なくとも98%を構成するC8(カプリル酸)とC10(カプリン酸)脂肪酸のトリグリセリドを含む。D. Waitzberg etal in Nutrition 13:128-132 (1997)は、脂質エマルジョン(LCT及びMCT)は、好中球の殺菌機能を適度にだけ低下させ、そして単球に対して効果をもたないことを述べている。実際、MCTが好中球減少症に影響を与えるかもしれないというはっきりしない示唆を与える唯一の公報は、MCTをLCTに加えて投与し、そして単独のLCTと比較する臨床検査を記載している。研究は、MCT単独では行われておらず、それで免疫機能に対する効果が明らかでない。しかし、Clinical Nutrition 19:253-258 (2000)中S. Demirerらにより報告された結果は、MCTが、LCTと組み合わせて、そしてLCT単独と比較したとき、MCTが好中球減少症を悪化させるということを教示している。すなわち、MCTが好中球の機能及び/又は生存を抑えることが示唆された。この示唆をある程度支持する、PCT公報WO95/30413は、不飽和長鎖脂肪酸、例えばリノレン酸、並びに飽和長鎖(C16又はそれより長い)脂肪酸が、造血幹細胞増殖を高めるために機能しうることを断言している。
【0033】
本発明は、造血活性化又は増殖因子及び好中球の生存及び活性化因子としての中鎖脂肪酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体、あるいはMCTの使用に関する。化学療法及び放射線療法で使用されるとき、中鎖脂肪酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体、あるいはMCTを含む組成物は、好中球減少の時間枠を短くして、造血系の補充を加速するために治療前、その最中及び/又はその後に投与される。さらに、化学療法及び放射線療法による治療と関係する複数の時点での、中鎖脂肪酸をその金属塩、又はそのトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体、及び/又はMCTと一緒に組み合わせたものを使用することが可能である(例えば、治療前の脂肪酸と治療後のMCT)。あるいは、同時に:化学療法と放射線療法の治療前、治療中及び/又は治療後に前記組み合わせ物を投与することが可能である。重度の好中球減少症において、中鎖脂肪酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド、又は他のその類似体、あるいはMCTを含む組成物が治療用薬剤として使用される。骨髄移植において、中鎖脂肪酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド、又は他のその類似体、あるいはMCTが、切除放射線療法又は化学療法後の移植に利用可能な末梢幹細胞の数を増やすために使用される。中鎖脂肪酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド、又は他のその類似体、あるいはMCTが、骨髄幹細胞を刺激するために骨髄移植後に使用されることもでき、それにより好中球減少症からの回復までの期間が短かくなる。
【0034】
従って、本方法は、化学療法又は放射線療法;慢性又は一過性好中球減少症;薬物によって誘発された好中球減少症によって生じた骨髄抑制;並びに血液の病気、栄養欠乏症、感染症又は放射線療法によって生じた好中球減少症を治療するために造血を刺激するために有用である。一過性の好中球減少症は、動物の輸送によるストレス、又はヒト若しくは動物の移動によって生じる。本方法は、患者の外傷を治癒させ、及び患者の骨髄移植を円滑にするための好中球の動員を増加させる造血の刺激にも有用である。
【0035】
本明細書中に使用されるとき、用語「a」又は「an」は、それが使用される文脈に依存して、1以上を意味することができる。
【0036】
本明細書中に使用されるとき、「中鎖脂肪酸、例えばカプリン酸若しくはカプリル酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCT組成物」は、上記有効成分及び1以上の医薬として許容される担体を含む組成物を表す。
【0037】
本明細書中に使用されるとき、用語「医薬として許容される担体」は、中鎖脂肪酸、例えばカプリン酸若しくはカプリル酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCTの生理学的な効果を妨げず、かつ、ヒトを含めた哺乳動物に無毒な物質を表す。
【0038】
本発明のカプリン酸若しくはカプリル酸、又はその塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−又はジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCT組成物は、当業者に知られた方法によりカプリン酸若しくはカプリル酸、又はその塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−又はジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCT、及び医薬として許容される担体を使用して処方される(MERCK INDEX, Merck & Co., Rahway, NJ)。これらの組成物は、これだけに制限されることなく、液剤、油剤、乳剤、エアゾール剤、吸入剤、カプセル剤、丸剤、パッチ剤及び坐剤を含む。
【0039】
全ての方法が、有効成分を1以上の副成分を構成する担体と合わせるステップを含む。
【0040】
本明細書中に使用されるとき、用語「化学療法」は、細胞傷害性薬物を使って増殖細胞を殺傷する方法を表す。用語「化学療法中」は、投与された細胞傷害性薬物の効果が続く期間を表す。一方、用語「化学療法後」は、いかなる同じ細胞傷害性薬物の事前投与にも関係なく、そして投与された細胞傷害性薬物の効果の残存も関係なく、細胞傷害性薬物の投与後の組成物が投与される全ての状況をカバーすることを意味する。
【0041】
本願発明の方法が化学療法に適用されるとき、カプリン酸若しくはカプリル酸、又はその塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCT組成物が、化学療法の前、その最中又はそれに続いて(すなわち、細胞傷害性薬物の投与前、その最中又はそれに続いて)投与されうる。
【0042】
「細胞傷害性薬物」によって、高増殖型細胞、例えば腫瘍細胞、ウイルスに感染された細胞又は造血細胞を殺傷する薬剤を意味する。本発明を実行するために使用されうる細胞傷害性薬物の例は、これだけに制限されることなく、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、タキソテール、タクソール、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン又はクロラムブシル、並びに上記の化合物のいずれかのアゴニストを含む。細胞傷害性薬物は、抗ウイルス剤、例えばAZT(すなわち、3'-アジド-3'-デオキシチミジン)又は3TC/ラミブジン(すなわち、3-チアシチジン)でもありうる。
【0043】
本明細書中に使用されるとき、用語「白血球減少症」は、血中の白血球数の異常な減少を表す。
【0044】
本明細書中に使用されるとき、用語「好中球減少症」は、血中に異常に少ない好中球しか存在しないこと表す。
【0045】
1つの好ましい態様において、前記医薬組成物は、好中球減少症、血小板減少症の治療においてか、又は好中球の生存及び活性化因子としての使用のための、経口、舌下投与若しくは吸入(経鼻スプレー)、静中、筋中、皮下のためのいずれか好適な組成物の形態である。
【0046】
治療における使用のために必要とされる本発明の組成物の量は、投与経路、治療する症状の性質、患者の年齢及び状態により変化し、そして結局かかりつけの内科医の判断であることが認識される。所望の投与量は、都合よく、単回投与で、又は例えば1日につき2回、3回、4回以上の投与量として適切な間隔で摂取される分割された投与量で提供されうる。
【0047】
治療における使用のために、中鎖脂肪酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCTは未処理の化学薬品として投与されることもできるが、医薬製剤として有効成分を提供することが好ましい。
【0048】
本願発明の好ましい態様において、投与される有効成分の量は、血中(遊離及び/又は血清アルブミンへ結合)濃度が1 μMより高くなるような量である。特に好ましい態様において、血中濃度は、1 mMより高い。
【0049】
他の態様において、医薬組成物は、経口(舌下を含む)であるか、又は非経口(筋中、皮下、経腸及び静中を含む)投与の形態で存在する。必要に応じて、この製剤は、都合よく、別個の投与単位で提供され、そして薬学の技術分野で周知の方法のいずれかにより調整される。全ての方法が、活性化合物を液状担体又は微粉化された固形担体、あるいはその両方と合わせ、そして、必要ならば、産物を所望の製剤に成形するステップを含む。所望であれば、有効成分の徐放を得るために適合させた先に記載の製剤を使用する。
【0050】
中鎖脂肪酸、又はその塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCTは、他の治療として活性な薬剤、例えば細胞毒性抗癌剤又は他の抗癌剤(免疫の調節又は制御剤又は治療のためのワクチン又は抗血管新生剤など)、免疫抑制剤(抗炎症剤を含む)、増殖因子、例えばコロニー刺激因子(好ましくは、GM-CSF又はG-CSF)、サイトカイン、例えばインターロイキン2又はインターロイキン15、あるいはそれらの組み合わせ物と組み合わせて使用されることもできる。そのような組み合わせ物の個々の構成要素は、別個の又は組み合わせられた医薬製剤で連続してか(前又は後に)又は同時にかのいずれかで投与される。先に参照された組み合わせ物は、都合よく、医薬製剤の形態での使用のために提供され、それにより、その医薬として許容される担体と一緒に先に定義されるような組み合わせ物を含む医薬製剤は、本発明のさらなる側面を含む。
【0051】
治療を必要としている患者の造血を刺激する方法の好ましい態様において、1以上の下記の化合物:
【0052】
【化1】
【0053】
{式中、
R1が、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和C7-C11アルキル基であり;
A及びBが、独立に水素又は
【0054】
【化2】
【0055】
であり;そして
Xが、ヒドロキシル基、金属モノ−若しくはジカチオン性対イオンをもつオキシ・アニオン、又は直鎖若しくは分岐C1-C4アルキル部分をもつアルコキシ基である。}又はその組み合わせ物を含む組成物の薬理学的有効量が投与される。
【0056】
式(III)中、用語「Z=ゼロ」が、一定しないZが任意であり、かつ、除かれているか又は水素により置換されることを示すことは、当業者によって知られる。
【0057】
代わりの好ましい態様において、組成物は、中鎖脂肪(MCTs)である式(I){式中、A、B及びR1は、同じものであり、そしてそれぞれ直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和C7及びC9アルキル基である。}によって表される少なくとも2つの化合物の混合物を含む。あるいは、組成物は、2つのトリグリセリドの混合物を含み、ここで、最初のMCTが、式(I){式中、A、B、及びR1が、CH3(CH2)6である。}によって表され、そして2番目のMCTが式(I){その中にA、B及びR1が、CH3(CH2)8である。}によって表される。あるいは、組成物は、各々0.1%〜3%の、式(I){式中、A、B及びR1が、CH3(CH2)4である。}によって表される3番目の化合物、及び式(I){式中、A、B及びR1が、CH3(CH2)10である。}によって表される4番目の化合物をさらに含む。あるいは、組成物は、以下の式:
【0058】
【化3】
【0059】
によって表されるC8及びC10脂肪酸トリグリセリドの4つの幾何異性体を含む混合物である。
【0060】
代わりの好ましい態様において、組成物は、式(II)又は式(III){式中、Xが、OHであるか、又はXが、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムのような金属対イオンをもつオキシ・アニオンである。}によって表される1以上の化合物を含む。
【0061】
より好ましい態様において、組成物は、カプリル酸、カプリン酸、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸カルシウム、カプリン酸カルシウム、カプリル酸トリグリセリド又はカプリン酸トリグリセリドである。
【0062】
本明細書中に記載の組成物及び方法は、以下の類似体及び化合物:
生体内での分解により前述の活性物質を放出する医薬製剤を提供する、カプリル酸トリグリセリド又はカプリン酸トリグリセリドのアザ類似体、好ましくはアザ類似体は、1,2,3-O,N,O-トリオクタノイル・セリノール又は1,2,3-O,N,O-トリデカノイル・セリノールである;
以下の式(IV):
【0063】
【化4】
【0064】
によって表される化合物;
以下の式(V):
【0065】
【化5】
【0066】
によって表される化合物;
以下の式(VI):
【0067】
【化6】
【0068】
によって表される化合物;
を含む。
【0069】
以下の実施例は、本願発明の実施をさらに説明するが、その制限を意図したものではない。中連鎖脂肪酸、又はその塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−又はジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCT及びいずれか特定の患者(ヒト又は動物)に投与される関連する医薬製剤の投与の選択は、主治医の決定権の範囲内にあり、適切な投与量に見合ったやり方で処方され、そして独自に主治医の範囲内にある病気のステージなどの因子に依存するであろうことは、理解される。
【実施例】
【0070】
実施例1:CRODAMOL(商標)の解析(MCT:カプリル酸/カプリン酸・トリグリセリド)
Croda社(Toronto, Canada)製のCRODAMOL(商標)GTCC lot番号T1033-1299を、ガスクロマトグラフィーによって分析した。GC FID分析は、グラジエント:10分間で100℃-250℃、その後250℃で25分間;FID 250℃の条件を設定した。4つのピーク:22.04分(26%)、25.07分(43%)、29.16分(25%)及び34.75分(5%)を観察した。
【0071】
シグマ-アルドリッチ社lot番号079H1212から得られたカプリル酸トリグリセリド(トリカプリリン)サンプルを、ガスクロマトグラフィーによって分析した。GC FID分析は、グラジエント:10分間で100℃-250℃、その後250℃で25分間;FID 250℃の条件を設定した。22.31分(98%)における主に1つのピーク。
【0072】
実施例2:酸塩化物及びピリジン塩基を使ったアルコールのアシル化
【0073】
【化7】
【0074】
一般法A(ピリジン)
乾燥したCH2Cl2中、アルコール(〜0.1 M)とピリジン(4:1)の溶液を、窒素下で0℃に冷やし、そして酸塩化物(1.2当量)により処理した。この反応物を、気温までゆっくりと温め、そして一晩撹拌した。TLC分析(SiO2、EtOAc 1:9ヘキサン)は、残余アルコールがないことを示した。反応混合物を、CH2Cl2により希釈し、飽和水性NH4Cl溶液により洗浄した。水相を、CH2Cl2(X1)とヘキサン(X1)を用いて抽出し、そして合わせた有機相を、飽和水性NaCl溶液を用いて洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、そして真空中で留去して、未精製産物を得た。
【0075】
一般法B(DMAP)
乾燥したCH2Cl2中、アルコール(〜0.1 M)の溶液を、窒素下で0℃に冷やし、そしてDMAP(1.3当量)及び酸塩化物(1.2当量)により処理した。この反応物を、気温までゆっくりと温め、そして一晩撹拌した。TLC分析(SiO2、EtOAc 1:9ヘキサン)は、残余アルコールがないことを示した。反応混合物を、CH2Cl2により希釈し、飽和水性NH4Cl溶液により洗浄した。水相を、CH2Cl2(X1)とヘキサン(X1)を用いて抽出し、そして合わせた有機相を、飽和水性NaCl溶液を用いて洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、そして真空中で留去して、未精製産物を得た。
【0076】
実施例3:ノナン酸トリグリセリド
グリセロール(120 mg、1.30 mmol)を、実施例2の一般法Aに従って塩化ノナノイル(751 μL、4.16 mmol)によりアシル化した。カラムクロマトグラフィー(Isolute(商標)SiO2、ヘキサン中、0-5%のEtOAcを用いて溶出)による精製で、画分を含む2つの産物を得、それを真空中で留去して、それぞれ89%(127 mg、19%)と93%(475 mg、71%))の純度(GC/FID)の無色透明の液体として所望の産物を得た。Rf 0.46(SiO2、ヘキサン中10%の酢酸エチル);1H NMR(CDCl3、300 MHz)δH=5.27(m,1H)、4.29(dd,2H)、4.14(dd,2H)、2.31(m,6H)、1.61(m,6H)、1.27(m,30H)、0.88(t,9H);MS(FAB+)m/z=510(M-H+);GC FID分析、条件:グラジエント10分間で100℃-250℃、その後250℃で25分間;FID 250℃;27.25分。
【0077】
実施例4:ノナン酸ジグリセリド及びモノグリセリド
【0078】
【化8】
【0079】
グリセロール(100 mg、1.09 mmol)を、実施例2の一般法Aに従って1当量の塩化ノナノイル(205 μL、1.09 mmol)によりアシル化した。Biotage(商標)(40S、SiO2、ヘキサン中、10%の酢酸エチル-100%の酢酸エチルを用いて溶出)による精製で、無色透明の油を得た。以下の2つの異なる化合物を得た:
ノナン酸ジグリセリドを、白色の固体として得た(73 mg、18%)。mp 24-26℃;Rf 0.52(Et3Nを用いて前処理したSiO2、ヘキサン中、30%の酢酸エチル);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=4.17(m,5H)、2.35(t,4H)、1.63(m,4H)、1.27(m,20H)、0.88(t,6H);MS(FAB+) m/z=373(M+H+)。
【0080】
ノナン酸モノグリセリドを、白色の固体として得た(85 mg、34%)。mp 37-38.5℃;Rf 0.08 (Et3Nを用いて前処理したSiO2、ヘキサン中、30%の酢酸エチル);1H NMR(CDCl3、300MHz)、δH=4.18(m,2H)、3.94(m,1H)、3.69(m,1H)、3.62(m,1H)、2.36(t,2H)、1.62(m,2H)、1.28(m,10H)、0.88(t,3H)、MS(FAB+) m/z=233(M+H+)。
【0081】
実施例5:1,2,3-O,N,O-トリデカノイル・セリノール
セリノール(51 mg、0.56 mmol)を、実施例2の一般法Bに従って塩化デカノイル(372 μL、1.76 mmol)によりアシル化した。MPLC(SiO2、ヘキサン中、0その後10%のEtOAcを用いて溶出)による精製で、白色の固体として所望の産物を得た(301 mg、97%)。mp 54℃;TLC、Rf 0.85(SiO2、EtOAc 2:3ヘキサン);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=0.84(9H,t)、1.20-1.27(36H,m)、1.52-1.60(6H,m)、2.13(2H,t)、2.28(4H,t)、4.03(2H,2xABXの2xA)、4.19(2H,2xABXの2xB)、4.41-4.46(1H,m)、5.70(1H,d);HRMS m/e C33H63NO5についての計算 553.4706、実測553.4713。GC-FID分析、グラジエント条件:10分間で100℃-250℃、その後250℃で25分間;FID 250℃; 14.80分で主に1つのピーク(98%)。
【0082】
実施例6:1,3-O,O-ジデカノイル・セリノール
【0083】
【化9】
【0084】
アセトン(17 ml)及び水(17 ml)中、セリノール(1.57 gm、17.2 mmol)溶液を、トリエチルアミン(3.60 ml、25.9 mmol)とBOC-ON(4.67 gm、19.0 mmol)により処理し、そしてこの反応物を窒素下で一晩撹拌した。アセトンを真空中で留去し、そして未精製の混合物を、EtOAcと水の間で分配した。水相を、EtOAc(X3)を用いて抽出し、合わせた有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、そして真空中で留去して、黄色の固体を得た。MPLC(SiO2、ヘキサン中40〜80%のEtOAcを用いて抽出)による精製で白色の結晶性固体としてN-BOC-ジオール中間体を得た(2.10 gm、64%)。TLC、Rf 0.15(SiO2、EtOAc 4:1ヘキサン);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=1.40(9H,s)、3.54-3.56(5H,m)。
【0085】
N-BOC-ジオール中間体(50 mg、0.26 mmol)を、一般法Bに従って塩化デカノイル(173 μL、0.83 mmol)によりアシル化した。MPLC(SiO2、ヘキサン中0その後10%のEtOAcを用いて抽出)による精製で、無色透明な油としてN-BOC-ジアシル中間体を得た(115 mg、88%)。TLC、Rf 0.80(SiO2、EtOAc 2:3ヘキサン);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=0.87(6H,t)、1.23-1.30(24H,m)、1.44(9H,s)、1.56-1.70(4H,m)、2.31(4H,t)、4.04-4.21(4H,m)、4.77-4.80(1H,m)、6.73(1H,d)。
【0086】
乾燥したCH2Cl2(1.5 ml)中、N-BOC-ジアシル中間体(76 mg、0.15 mmol)の溶液を、0℃に冷やし、1,4-ジオキサン(375 μL、1.50 mmol;終濃度0.8 M)中、4.0 Mの無水HClの溶液により処理した。反応物を、室温まで加温し、そして同じ温度で3時間撹拌した。1,4-ジオキサン(375 μL、1.50 mmol)中、4.0 Mの無水HClのさらなる部分を加え、そして反応物をさらに2時間撹拌した。溶剤の留去によって、白色の固体として所望の産物を得た(69 mg、100%)。mp 101℃;TLC、Rf 0.40(SiO2、EtOAc2:3ヘキサン);1HNMR(CDCl3、300MHz)、δH=0.88(6H,t)、1.20-1.29(24H,m)、1.55-1.65(4H,m)、2.45-2.52(4H,m)、3.72-3.80(1H,m)、4.30-4.51(2H,m)、8.6-9.0(3H,br m);HRMS m/e (M-HCl)、C23H45NO4について計算339.3348、実測339.3340;GC-FID分析、グラジエント条件:10分間で100℃−250℃、その後250℃で25分間;FID 250℃。17.14分で主に1つのピーク(94%)。
【0087】
実施例7:α-及びβ-1-O-メチル-2,3,4-O,O,O-トリデカノイル-L-フコピラノース
【0088】
【化10】
【0089】
1-O-メチル-L-フコピラノース(593 mg、3.33 mmol)を、Levene & Muskat(J. Biol Chem.105:431-441, 1934)の方法に従って合成し、そして実施例2の一般法Bに従って塩化デカノイル(2.90 ml、14.0 mmol)を用いてアシル化した。MPLC(SiO2、ヘキサン中0〜5%のEtOAcを用いて溶出)による精製で、無色透明の油としてα(1.18 gm、55%)とβ(0.52 gm、24%)から成る所望の産物を得た。
【0090】
αアノマーに関するデータ:TLC、Rf 0.45(SiO2、EtOAc 1:9ヘキサン);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=0.87(9H,t)、1.14(3H,d)、1.20-1.35(36H,m)、1.52-1.68(4H,m)、2.18(2H,t)、2.29(1H, ABX2のA)、2.32(1H, ABX2のB)、2.41(2H,t)、3.38(3H,s)、4.13(1H,qd,J6.5)、4.93(1H,d)、5.15(1H,dd,5.30(1H,dd),5.36(1H,dd);HRMS m/e (M-CH3O) C36H65O7についての計算609.4730、実測609.4720。
【0091】
βアノマーに関するデータ:TLC、Rf 0.40(SiO2、EtOAc 1:9ヘキサン);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=0.87(9H,t,J6.5Hz)、1.22(3H,d)、1.20-1.35(36H,m)、1.49-1.67(4H,m)、2.18(2H,t)、2.25(1H,ABX2のA)、2.29(1H, ABX2のB)、2.34(2H,t)、3.50(3H,s)、3.81(1H,qd)、4.35(1H,d)、5.03(1H,dd)、5.19(1H,dd)、5.24(1H,dd)。
【0092】
実施例8:L-グルタミン酸カプラミド
【0093】
【化11】
【0094】
乾燥したCH2Cl2(60 ml)中、カプリン酸(7.30 mmol、1.26g)の溶液に、窒素下でL-グルタミン酸ジ-t-ブチルエステル塩酸塩(6.09 mmol、1.80 gm)、DMAP(1.8 mmol、0.22 g)、ジイソプロピルエチルアミン(18 mmol、3 ml)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)(7.30 mmol、1.40 gm)を加えた。得られた無色透明の溶液を24時間室温で撹拌した。その後、溶剤を減圧下で取り除き、白色の油性の残渣を得た。Biotage(商標)(40S、SiO2、ヘキサン中5%の酢酸エチル−ヘキサン中30%の酢酸エチルを用いて抽出)による精製で、無色透明の油を得、それがL-グルタミン酸ジ-t-ブチルエステル・カプラミド(2.47 gm、98%)であった。Rf 0.56(SiO2、ヘキサン中30%の酢酸エチル);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=6.05(d,1H)、4.45(m,1H)、2.30(m,2H)、2.27(m,2H)、2.16(t,2H)、2.07(m,1H)、1.87(m,1H)、1.58(m,2H)、1.43(s,9H)、1.41(s,9H)、1.23(m,12H)、0.84(t,3H)。
【0095】
BOC基の脱保護を、1,4-ジオキサン(23 ml)中、4.0 MのHClの溶液をCH2Cl2(35 ml)中、ジ-t-ブチルエステル誘導体(5.75 mmol、2.38 gm)の溶液に0℃で緩やかに加えることによって実行した。無色透明の溶液を、室温まで加温し、そしてさらに20時間撹拌した。その後減圧下で溶剤を取り除き、そして得られた白色の固体を乾燥させて、L-グルタミン酸カプラミド(1.71 gm、99%)を得た。mp 95-96.5℃;1H NMR(CD3OD、300 MHz)、δH=4.39(m,1H)、3.27(d,1H)、2.36(t,2H)、2.20(t,2H)、2.13(m,1H)、1.90(m,1H)、1.58(m,2H)、1.27(m,12H)、0.86(t,3H);MS(ES+) m/z=324(M+Na+)、302(M+H+);MS(ES-) m/z=300(M-H+);HPLC分析、条件:グラジエント10分間で0.01%のTFA中10%-70%のアセトニトリル;流速1.0 ml/分;210 nm;8.93分。
【0096】
実施例9:カプリン酸N,N-ジメチルアセトアミド・エステル
窒素下、無水DMF(80 ml)中、カプリン酸(8.7 mmol、1.5 g)の溶液に、ヨウ化ナトリウム(0.87 mmol、130 mg)、続いてジメチルクロロアセトアミド(9.6 mmol、985 μl)を加えた。その後、炭酸カリウム(9.6 mmol、1.3 g)を、加え、得られた懸濁液を、90℃で5日間撹拌した。反応物を室温まで冷やし、そして蒸留水と混合した。この産物を、酢酸エチル(X3)を用いて抽出した。合わせた有機相を、NaHCO3の水性溶液を用いて洗浄し、Na2SO4を用いて乾燥させ、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。得られた黄色の液体をBiotage(商標)(40M、SiO2、ヘキサン中50%の酢酸エチル−ヘキサン中25%の酢酸エチルを用いて抽出)によって精製した。白色の粉末としてカプリン酸N,N-ジメチルアセトアミド・エステルを得た(2.03 gm、92%)。mp 42-42.5℃;Rf 0.55(SiO2、酢酸エチル);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=4.64(s,2H)、2.92(s,3H)、2.91(s,3H)、2.38(t,2H)、1.62(qt,2H)、1.22(m,12H)、0.83(t,3H);MS(ES+) m/z=537(2M+Na+)、280(M+Na+)、258(M+H+)。
【0097】
実施例10:好中球のアポトーシス及び生存のインビトロ・アッセイ
好中球の生存を、Lagraoui及びGagnon(Cell. Mol. Biol. 43:313-318, 1997)により記載されたとおり計測した。好中球を、健康なボランティアの末梢血液から得た。血液を、Lympholyte-poly(Cedarlane, Hornby, Canada)を用いた密度遠心分離法に、続いて混入した赤血球の低張溶解に供した。細胞を、10%のFBS(Hyclone, Logan, USA)を補ったRPMI(Gibco, Burlington, Canada)中に懸濁した。最終的な細胞製剤は、ライトギムザ染色に測定されるように>95%の好中球から成った。生存度は、トリパンブルー排除によって測定されるように97%より高かった。多形核球(PMN)は、短い半減期をもち、そしてアポトーシスを示す特徴的な変化を急速に受ける。アポトーシスを、Nicoletti et al, J. Immunol. Meth. 139:271-279 (1991)により記載された方法に従って評価した。要するに、新鮮な単離好中球を、様々な濃度のMCTと一緒に37℃で24時間インキュベートした。インキュベーション後に、細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI、Sigma)により染色し、そしてXLフローサイトメーター(Coulter)を使ってアポトーシスについて分析した。そしてデータをアポトーシス細胞の割合として表した。
【0098】
図1は、好中球のアポトーシスを様々な濃度のMCTの不存在(対照)又は存在下で計測したいくつかの実験をまとめたものを表す。結果は、MCTの存在下、インビトロにおいて、好中球のアポトーシスが最高90%まで抑えられ、この抑制作用が用量に依存していることを示す。このように、MCTは好中球の生存を高めることができ、好中球の生存因子として使用することができる。
【0099】
実施例11:PMN食作用のインビトロ・アッセイ
好中球(2x106/ml)を、様々な濃度のMCTと一緒に95%の湿度及び5%のCO2の中37℃において24時間インキュベートした。24時間後に、生存度を、トリパンブルー排除によって速定し、そして細胞を、2 mMのグルコース、1 mMのMgCl2及び1 mMのCaCl2を含むPBSを用いて3回洗浄した。次に、細胞濃度を、1x106細胞/mlに合わせ、そしてフルオレスプライト(fluoresbrite)カルボキシレート・ミクロスフィア(1/10希釈)と一緒にインキュベートした。30分間のインキュベーションの後に、好中球を洗浄し、2%のパラホルムアルデヒド中で固定した。固定した好中球を、XLフローサイトメーター(Coulter)を使ってミクロスフィアの摂取について分析した。そしてデータを、食作用細胞の割合としてまとめたものとして表した。
【0100】
図2は、様々な濃度のMCTの不存在(対照)又は存在下におけるPMN食作用活性を計測したいくつかの実験をまとめたものを表した。結果は、MCTがヒトPMNの食作用活性を高めることを示す。食作用活性は、対照値から2〜3倍まで高められ、そして刺激の広がりは、ドナーの免疫の状態に依存する。
【0101】
実施例12:好中球のアポトーシスに対するドキソルビシンの効果
実施例10に記載のとおりPMNを単離した。細胞(2x106/ml)を、様々な濃度の化学療法剤、ドキソルビシンの存在下、5%のCO2及び95%の湿度の中、37℃で4時間インキュベートした。アポトーシス細胞を、実施例10に記載のとおり評価した。データを、アポトーシス細胞の割合で表した。図3A及び3Bは、ドキソルビシンがPMNのアポトーシスを誘発することを示す。
【0102】
実施例13:MCTは、好中球のドキソルビシンによって誘発されたアポトーシスを救う
実施例10に記載のとおりPMNを単離した。細胞(2x106/ml)を、MCT(2.5%と5.0%)のあり又はなしで、様々な濃度のドキソルビシンの存在下、5%のCO2及び95%の湿度の中、37℃において4時間インキュベートした。アポトーシス細胞を、実施例10に記載のとおり評価した。データを、アポトーシス細胞の割合で表す。
【0103】
表1は、MCTとPMNに対する化学的保護効果を計測した2つの実験を表す。結果を、MCTのあり又はなしでのドキソルビシンの存在又は不存在下において4時間のインキュベーションの後のアポトーシス細胞の割合で表す。実施例12中のように、ドキソルビシンはインビトロでPMNアポトーシスを誘発する。しかし、2.5%と5%(v/v)の濃度でのMCTの存在下で、ドキソルビシンのアポトーシス効果は抑えられる。このように、MCTは、PMNに対する抗アポトーシス作用を発揮する。製造業者のBiosources推奨(Apotargetアネキシン-VFITCアポトーシスキット#PHN1018)によるアネキシンV-FITC/PI(ヨウ化プロピジウム)法を使ってアポトーシスを調査しもした。アネキシンVは、早期から末期アポトーシスにおいて細胞内膜から外膜に移動するホスファチジルセリンに結合する。要するに、好中球を、様々な濃度のドキソルビシン及びMCTの存在又は不存在下でインキュベートする。24時間後に、好中球をPBSを用いて洗浄し、2 μlのアネキシンV-FITC及び10 μlのPI(Sigma、1 mg/ml)を用いて20分間染色した。インキュベーション後に、染色した細胞をパラホルムアルデヒド(1%)中で固定し、そしてXLフローサイトメーター(Coulter)を使ってアポトーシスについて分析した。そしてデータをアポトーシス細胞の割合として表した。
【0104】
図4Aは、ドキソルビシン処理した好中球に対するMCTの時間経過応答を表す。MCTは、時間及び用量依存的な様式でヒト好中球のドキソルビシンによって誘発されたアポトーシスを救う。
【0105】
図4Bは、MCT処理した好中球に対するドキソルビシンの時間経過応答を表す。MCTは、用量依存的な様式で、毒物(ドキソルビシン)の導入前4時間まで、ドキソルビシンによって誘発されたアポトーシスから好中球を保護した。
【0106】
【表1】
【0107】
実施例14:MCTは、好中球のドキソルビシンによって誘発されたアポトーシスを救う:GM-CSFとの比較
表2は、ドキソルビシンによって誘発されたヒト好中球のアポトーシスに対するGM-CSF、MCT及びトリカプリリンの効果を表す。GM-CSFとMCTは、ドキソルビシンによって誘発されたアポトーシスに対抗してヒト好中球を救うか又は保護することができる。トリカプリリンは、ドキソルビシンによって誘発されたアポトーシスを救い、さらにそれは、未処理の好中球(対照、ドキソルビシンの不存在)にで観察されたより高い程度までヒト好中球の生存度を高める。
【0108】
【表2】
【0109】
実施例15:MCT及びトリカプリンは、インビトロにおいてマウス骨髄増殖を増加させる
骨髄細胞を、雌C57BL/6マウス(6〜8週齢)の大腿部から得た。細胞をフラッシュし、PBSにより洗浄した。回収した細胞を、遠心分離し、2x106細胞/mlで再懸濁した。100 μlの細胞(2x106細胞)を、MCT又はトリカプリンの存在又は不存在下、96ウェルのマイクロタイタープレート内で48時間インキュベートする。インキュベーションの後に、細胞を、1 μCiの[3H]-チミジンにより6時間パルス標識する。プレートを、Tomteckにより採取し、Microbetapβ-カウンターでカウントする。DNA内への[3H]-チミジンの取り込みは、細胞増殖の直接的な目安である。
【0110】
図5は、骨髄増殖に対するMCTとトリカプリンの効果に関する代表的な実験を表す。MCTとトリカプリンは、骨髄増殖を対照に比べて3〜5倍増加させる。
【0111】
実施例16:化学的保護の検討:インビボにおけるMCTによる免疫系細胞の増殖又は保護の誘導
雌C57BL/6マウス、6〜8週齢を、0日目に静中投与される80 mgの5-フルオロウラシル(5-FU)又は100〜200 mgのシクロホスファミド(CY)又は12 mgのタキソテール(TX)による処理によって免疫抑制した。MCT又は他の化合物の免疫保護効果を検査するために、マウスを、試験化合物を用いて、-3、-2及び-1日目に経口的に前処理するか又は0日目に静中的に処理した。マウスを、+5日目に心臓穿刺及び頸部脱臼によって屠殺した。そして細胞懸濁液を、下記のとおり、胸腺、脾臓及び骨髄から調製した。
【0112】
組織を、PBS緩衝液中で押しつぶし、そして混入している赤血球を、ACK緩衝液(155 mMのNH4Cl、12 mMのNaHCO3、0.1 mMのEDTA、pH7.3)を用いて5分間溶解した。次に細胞を、遠心分離によって回収し、PBSにより3回洗浄し、そして組織培養培地中に再懸濁した。細胞を血球計でカウントした。
【0113】
結果は、以下の表及び図に示すとおり、MCTは、媒質のみと比べて正常及び免疫抑制した動物の免疫組織中の細胞数を大幅に増加させることを示す。実験とマウスの免疫状況に依存して、MCTは、骨髄細胞及び/又は脾臓細胞及び/又は胸腺細胞の数を増加させることができる。
【0114】
図6は、免疫抑制した動物における骨髄細胞数に対するMCTの効果を示す。CY及び5-FUだけが、対照(細胞毒素処理なし)と比べて骨髄細胞数を低下させた。マウスにおいて、タキソテール処理は、骨髄細胞数に対する顕著な影響を与えない。抑制された骨髄において、-3、-2及び-1日目のMCTの投与(マウスにつき6.25 μMole)が、大幅に骨髄細胞数を高めた。
【0115】
図7は、o.s.によるMCTの前処置投薬計画を受けた免疫抑制マウスの脾臓細胞数に対するMCTの効果を表す。全ての細胞毒(CY、5-FU及びTX)が、制御と比べて大幅に脾臓細胞数を減少させる。-3、-2及び-1日目のMCTの投与(マウスにつき6.25 μMole)が、CY、5-FU及びTXについてそれぞれ0.0017、0.009及び0.0036未満の「P」をもつ脾臓細胞数を大幅に増加させる。
【0116】
さらに、MCTは、0日目でのi.v.投与したときに、正常なマウスの骨髄細胞数を大幅に高める(表3)。しかし、1回のMCTのi.v.注射では、正常及び免疫抑制したマウスの脾臓細胞数を改善するのに十分ではない。
【0117】
【表3】
【0118】
実施例17:化学的保護の検討:正常なマウスにおける-3、-2及び-1日目で投与されるときの、免疫細胞増殖のMCT誘導に関するインビボにおける用量反応
正常なマウスにおける免疫細胞増殖に関するMCT誘導のインビボにおける用量反応を、実施例16に記載のプロトコールにより評価した。
【0119】
表4は、正常なマウスにおいて-3、-2及び-1日目に経口投与されたMCT処理に対する用量反応を表す。MCTは、骨髄及び脾臓細胞数を大幅に増加させる。
【0120】
【表4】
【0121】
実施例18:化学的保護の検討:免疫細胞の増殖又は保護に関するインビボ誘導:MCT対GM-CSFの効果の比較
免疫細胞増殖/再生又は保護の誘導に関するインビボでの比較を、実施例16に記載のプロトコルにしたがって行った。MCTとGM-CSFの比較研究を、正常及び免疫抑制した動物において実施した。MCTと比べて、GM-CSFは、免疫抑制動物の骨髄及び脾臓細胞数に対して顕著な活性を持っていない。GM-CSFの顕著な効果は、正常なマウスの胸腺重量に対してだけ観察された(図8)。この場合、MCTはGM-CSFに類似した効果を表わした。
【0122】
実施例19:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するカプリル酸とカプリン酸の効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。表5に示されるとおり、カプリン酸だけが骨髄細胞数を大幅に高める。シクロホスファミド処理したマウスと比べて、脾臓細胞数に対する顕著な効果は証明されなかった。
【0123】
【表5】
【0124】
実施例20:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するトリカプリリン及びトリカプリンの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。トリカプリリンとトリカプリンのどちらもCY処理したマウスの骨髄細胞数の増殖又は保護に効果的である(表6)。シクロホスファミド処理したマウスと比べて、脾臓細胞数に対する顕著な効果は観察されなかった。
【0125】
【表6】
【0126】
実施例21:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するノナン酸とラウリン酸の効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。骨髄及び脾臓細胞数の増殖又は保護の顕著な増加を、CY処理したマウスにおいてラウリン酸の前処理により観察した。しかし、ノナン酸は、シクロホスファミド処理したマウスと比べて、免疫細胞数(表7)に対する弱い(顕著ではない)活性を証明する。
【0127】
【表7】
【0128】
実施例22:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するトリラウリン及びトリミリスチンの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。トリラウリン及びトリミリスチンは、CY免疫抑制したマウスの骨髄及び脾臓細胞数に対する弱い(顕著ではない)活性をもっている(表8)。
【0129】
【表8】
【0130】
実施例23:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するトリカプロイン及びカプロン酸ナトリウムの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。トリカプロイン及びカプロン酸ナトリウムは、CY免疫抑制したマウスの骨髄及び脾臓細胞数に対する弱い(顕著ではない)活性をもつ(表9)。
【0131】
【表9】
【0132】
実施例24:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するカプリル酸ナトリウム及びカプリン酸ナトリウムの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。骨髄細胞数の増殖又は保護の顕著な増加を、CY処理したマウスにおけるカプリル酸ナトリウム及びカプリン酸ナトリウムによる前処理によって観察した(図9)。
【0133】
実施例25:化学的保護の検討:処理後の投薬計画
化学的保護の検討を、マウスを1、2、3及び4日目にo.s.によりMCT、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム又はカプリン酸により(後)処理したことを除いて、実施例16に記載のとおりが実施した。
【0134】
骨髄細胞数の顕著な増加を、CY処理したマウスにおけるMCT、カプリル酸ナトリウム及びカプリン酸ナトリウムの後処理により観察した(表10)。後処理として使用されるとき、カプリン酸は、脾臓細胞数の顕著な増加、及び骨髄細胞数のわずかな増加を誘発する(表11)。
【0135】
【表10】
【0136】
【表11】
【0137】
実施例26:化学的保護の検討:免疫表現型タイピング・アッセイ
雌、6〜8週齢の、C57BL/6マウスを、異なる濃度のMCTを用いてo.s.により-3、-2及び-1日目に、又は静中にて0日目に前処理した。免疫抑制した動物に対して、免疫表現型タイピングをも実施した。免疫抑制を、0日目にi.v.注射した80 mg/kgの5-フルオロウラシル(5-FU)又は100〜200 mg/kgのシクロホスファミド(CY)又は12 mg/kgのタキソテール(TX)によって得た。マウスを、5日目に心臓穿刺により屠殺した。血液と脾臓を回収し、そして細胞懸濁液を調製して、そして赤血球をACK緩衝液(155 mMのNH4Cl、12 mMのNaHCO3、0.1 mMのEDTA、pH7.3)中で5分間溶解した。細胞を、PBS、pH7.4を用いて3回洗浄し、そして組織培養培地中に再懸濁した。次に、この細胞を、製造業者(Gibco/BRL、Cedarlane、Boehringer Mannheim)の推奨に従ってフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)又はフィコエリスリン(PE)結合細胞表面マーカーと一緒に氷上で45分間インキュベートした。次にこの細胞を、PBSを用いて洗浄し、1%のパラホルムアルデヒドを用いて固定し、そしてCoulterXLフローサイトメーターにより分析した。細胞サブセットの分析を、標準細胞表面マーカーの測定によって行った。上記マーカーは、以下の:TCR(T細胞レセプター)、CD4(Tヘルパー)、CD8(T細胞傷害性/サプレッサー)、CD11b(マクロファージ)、NK(NK細胞)及びLy5(B細胞)である。骨髄細胞を、実施例15に記載のとおり得た。細胞を、製造業者の推奨に従ってFITC又はPE結合細胞表面マーカーの45分間のインキュベーションによって染色した。次にこの細胞を、PBSを用いて洗浄し、1%のパラホルムアルデヒドを用いて固定し、そしてCoulterXLフローサイトメーターにより分析した。細胞サブセットの分析を、標準細胞表面マーカーの測定によって行った。上記マーカーは、以下の:CD34(造血前駆細胞)、CD41(血小板、巨核細胞)、CD13(骨髄球幹細胞、骨髄球、前単球)及びCD38(リンパ幹細胞、プロ−B、プレ−B)である。表12は、正常なマウスにおける血液と脾臓免疫表現型タイピングに対するMCTの効果を表す。血液の免疫表現型タイピングにおいて、MCTは、CD8+及びLY5+細胞サブセットを増加させる。いくつかの実験において、MCTは、わずかにLY5-TCRサブセットを増加させる(データ未掲載)。脾臓の免疫表現型タイピングにおいて、MCTは、LY5+TCR+及びCD4+細胞の相対的な割合を大幅に増加させる。LY5-TCR-は、非B-、非T細胞である、好中球を表す。
【0138】
免疫抑制したマウスに与えられるとき、MCTは、シクロホスファミド単独と比べて、血液及び脾臓の免疫表現型タイピングにおいてLY5-TCR-(おそらく好中球)及びCD11+(マクロファージ)細胞の相対的な割合を増加させる。これらの細胞サブセットは、骨髄性細胞前駆体に由来する(表13)。
【0139】
【表12】
【0140】
【表13】
【0141】
実施例27:化学的保護の検討:免疫表現型タイピング・アッセイ
トリミリスチン、トリラウリン、カプリン酸及びカプロン酸ナトリウムの免疫表現型タイピングを、実施例26に記載のプロトコールに従って行った。
【0142】
表14は、血液及び脾臓の免疫表現型タイピングに対するこれらのMCT類似体の効果を表す。血液において、トリミリスチンとトリラウリンは、シクロホスファミド単独と比べて、顕著な影響を与えない。しかし脾臓において、トリミリスチンとトリラウリンが、CD11+の相対的な割合を高める。さらに、トリラウリンが、LY5-TCR-及びNK+細胞サブセットの顕著な増加を誘発する。
【0143】
興味深いことに、血液において、カプリン酸とカプロン酸ナトリウムが、LY5-TCR-の相対的な割合を大幅に増加させる。脾臓において、カプリン酸は、シクロホスファミド単独に比べて顕著な影響を与えない。
【0144】
【表14】
【0145】
実施例28:化学的保護研究:骨髄の免疫表現型タイピング
骨髄の免疫表現型タイピングに対するMCT、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウムの効果を、実施例26に記載のプロトコールによって評価した。シクロホスファミドによる処理は、検討した全てのサブセット(CD34+、CD13+、CD41+及びCD38+)の顕著な増加を誘発する。MCT又はカプリル酸ナトリウム又はカプリン酸ナトリウムの添加は、骨髄単球幹細胞、骨髄球及び前単球であるCD13+系統の数を増幅させる。CD13+の相対的な割合のこの増加は、シクロホスファミド単独と比べて顕著である。この結果は、MCT及び他の関連化合物が(先の実施例で例証されるような)骨髄細胞の数の顕著な増加を誘発し、さらに食作用細胞(PMN及び単球)の前駆細胞の相対的な割合をさらに高めることをはっきりと説明している。これは、細胞傷害性治療からの良好な回復又は病原菌に対する保護をもたらすかもしれない(表15)。
【0146】
【表15】
【0147】
実施例29:化学的保護
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するはトリデカノイルセリノール及びジデカノイルセリノールの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。
【0148】
表16で示されるように、トリデカノイルセリノールは、脾臓細胞数を大幅に高める。骨髄細胞数に対して顕著な効果は証明されなかった。
【0149】
【表16】
【0150】
実施例30:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するα-メチル・トリデカノイル-L-フコピラノースとβ-メチル・トリデカノイル-L-フコピラノースの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。
【0151】
表17で示されるように、β-メチル・トリデカノイル-L-フコピラノースが、シクロホスファミドで処理したマウスと比べて骨髄細胞数に対するわずかな(顕著ではない)活性を証明した。α-メチル・アノマーの活性の不足は、α-アルキルピラノシドの知られている不安定性の点から予想される。
【0152】
【表17】
【0153】
実施例31:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するカプリン酸エチル及びカプリン酸N,N-ジメチルアセトアミド・エステルの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。
【0154】
表18に示されるとおり、カプリン酸N,N-ジメチルアセトアミドだけで、骨髄細胞数を大幅に高める。脾臓細胞数に対する顕著な効果は証明されなかった。
【0155】
【表18】
【0156】
実施例32:抗腫瘍活性
雌の6〜8週齢のC57BL/6マウスに、ATCC(細胞培養の源、Dr. I. J. Fidler)由来の1x105のB16F10メラノーマ細胞を0日目に静中注射した。次に動物に、10 mg/kgのドキソルビシンを含むか又はそれを含まず、7、9、14及び16日目に、そしてMCT(25 μMole/マウス)を10及び17日目にi.v.注射した。マウスを、22日目に屠殺した。体重及び腫瘍量を記録した。連続した腫瘍量を、式0.4(axb2){式中、「a」は、主な腫瘍直径を、そして「b」は小さな垂直方向の直径である。}を使って、キャリパーによる2次元の直径寸法によって得た。
【0157】
この実験を、、MCTが悪影響を及ぼしたり、又は免疫の細胞よりむしろ癌細胞を保護したりしていないか確認するために行った。
【0158】
図10は、B16F10メラノーマ・モデルにおける、治療量以下の濃度のドキソルビシンと組み合わせたMCTの化学的保護効果及び抗腫瘍能力を表す。単独で使用されるとき、MCTは、治療量以下の濃度のドキソルビシン(T/C約25%減少)と同じ位の腫瘍量のわずかな減少(T/C約20%)を誘発する。MCTをドキソルビシンと組み合わせて使用するとき、相加効果が観察される(T/C約45〜50%)。これらの結果は、MCTを治療量以下の濃度の細胞傷害性薬物と組み合わせるとき、治療のための活性を達成することが可能であることを示す。
【0159】
実施例33:抗腫瘍活性
同系腫瘍DMBA3(DA-3、乳癌モデル)は、雌BALB/cマウスの7,12-ジメチルベンズアントラセンによって処理した新生物発生前病変から生じた。DA-3細胞を、プラスチック・フラスコ内の0.1 mMの非必須アミノ酸、0.1 μMのピルビン酸ナトリウム、2 mMのL-グルタミン及び100 μg/mlの硫酸ゲンタマイシンを含むRPMI-1640中、単層培養として培養した。これにさらに50 μMの2-メルカプトエタノール及び10%のウシ胎仔血清を補った。6〜8週齢のBALB/cマウスに局所性の腫瘍を産生するために、DA-3腫瘍を、5x105の生きた腫瘍細胞のs.c.接種によりインビボにおいて連続的に継代した。次に動物を、腫瘍の痕跡について触診によって連続的にモニターした。連続した腫瘍量を、式0.4(axb2){式中、「a」は、主な腫瘍直径を、そして「b」は小さな垂直方向の直径である。}を使って、キャリパーによる2次元の直径寸法によって得た。腫瘍は概して、接種以後7〜10日で認識できた。
【0160】
DA-3腫瘍モデルにおいて、シクロホスファミド(CY、100 mg/kg)、そしてタキソテール(TX、20 mg/kg)との組み合わせたMCTの抗腫瘍能力及び保護の評価のために、2つの処理投薬計画を使用した。BABL/cマウスに対し、0日目に腫瘍細胞を注射した。MCTによる処理を、9及び16日目の単回ボーラス注射としてのi.v.投与されたCY又はTXによる処理前に、6、7及び8日目;13、14及び15日目;20、21及び23日目にosにより行われた。体重と腫瘍量を、4日目から23日目までモニターした。23日目に、全ての動物を屠殺した。%T/C(対照に対する処理)を、100を掛けた、対照群のそれぞれの値により割られた処理群の停止日での腫瘍量の比率として計算した。NCI基準によって、%T/Cが≦40%であるとき、産物が有効であるとみなされる。
【0161】
MCTが悪影響を及ぼしたり、免疫細胞よりむしろ癌細胞を保護していないか確認するためにこの実験を実施した。図11は、DA-3乳癌モデルにおいて、治療量以下の濃度のCY及びTXと組み合わせたMCTの化学的保護効果及び抗腫瘍能力を示す。MCTは、対照と比べての腫瘍量のわずかな減少(T/C約18%)を誘発する。MCTがCY又はTXと組み合わせて使用されるとき、腫瘍量の増悪は観察されない。しかし、CYと組み合わせて使用されるとき、治療としての応答が観察される(T/C=39.4%)。これらの結果は、MCTを治療量以下の濃度のCYと組み合わせたときに、治療のための活性が得られることを示す。この効果は、MCT処理した動物の免疫細胞の能力の全体的な増加によるかもしれない(図11及び表19)。
【0162】
【表19】
【0163】
実施例34:抗腫瘍活性
抗腫瘍及び化学的保護能力を、治療のための濃度の細胞傷害性薬物(シクロホスファミド、200 mg/kg;タキソテール、30 mg/kg)の使用を除いて、実施例30に記載のプロトコールにより評価した。
【0164】
MCTが悪影響を及ぼしたり、又は免疫細胞よりむしろ癌細胞を保護していないか確認するために、この実験を行った。図12は、DA-3乳癌モデルにおいて、治療濃度のCY及びTXと組み合わせたMCTの化学的保護効果及び抗腫瘍能力を示す。MCTは、対照と比べての腫瘍量のわずかな減少を誘発する。MCTがCY又はTXと組み合わせて使用されるとき、腫瘍量の増悪は観察されない。CY又はCY+MCTにより処理されるとき、腫瘍量の顕著な減少が観察される。さらに、腫瘍量の減少の顕著な応答は、対照マウス(p=0.1211)と比べて顕著ではないTX単独に比べて、TXと組み合わせたMCTの処理(p<0.0327)により得られる(表20)。これらの結果は、MCTをわずかではない治療濃度のTXと組み合わせたときに治療のための活性が得られることを示す。この効果は、MCT処理した動物の免疫細胞の能力の全体的な増加によるかもしれない。
【0165】
【表20】
【0166】
当該文書中に引用した全ての参考文献を、その全体について本明細書中に援用する。
【0167】
本明細書中に記載の組成物及び方法の修飾及び変更は、先の記述から当業者にとって明白である。そのような修飾及び変異が、添付した要求の範囲内に入ることが意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、好中球減少症の予防及び/又は治療に関する。これは、化学療法と放射線療法の使用に関係している好中球減少症の治療、並びに感染症、血液病及び栄養欠乏から生じる好中球減少症の治療を含んでいる。本発明は、一般に薬物の毒性を減少させ、そして薬効を高めることにも関する。特に、本発明は、好中球の生存及び活性化因子又は骨髄幹細胞増殖因子としての、中鎖脂肪酸、例えばカプリン酸、カプリル酸、又はその塩若しくはトリグリセリド、あるいはそのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
化学療法は、癌細胞と腫瘍を根絶させるための細胞傷害性薬物、例えば、これだけに制限されることなく、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、タキソテール、タクソール、5-フルオロビラシル(5-fluoroviracil)、メトトレキサート、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン又はクロラムブシルの使用を表す。しかし、これらの薬剤は、非特異性であり、そして特に高い服用量において、それらは正常、かつ、急速に分裂している細胞に有毒である。これは、化学療法と放射線治療を受けた患者において様々な副作用をしばしばもたらす。骨髄抑制、骨髄における重度の血球産生減少は、そのような副作用の1つである。それは、白血球減少症、好中球減少症及び血小板減少症を特徴とする。(特発性、周期性及び先天性の)重度の慢性好中球減少症は、循環している好中球数の選択的な減少、及び細菌感染症に対する高い感受性をも特徴とする。
【0003】
化学療法剤による癌治療の最重要点は、細胞毒性の機構と、宿主細胞を上回る腫瘍細胞の高い増殖に関する選択性の機構とを組み合わせることである。しかし、化学療法剤にそのような選択性があるのはまれである。化学療法剤の細胞毒性は、投与可能な服用量を制限して、治療サイクルに影響を与え、そして腫瘍をもつ患者の生活水準を大きな危険にさらす。
【0004】
他の正常組織は悪影響を受けもするが、骨髄は、増殖に特異的な治療、例えば化学療法又は放射線治療に特に敏感である。急性及び慢性の骨髄毒性は、癌治療の共通した副作用であり、それは血球数の減少と貧血、白血球減少症、好中球減少症、無顆粒球症、及び血小板減少症を引き起こす。そのような効果の1つの原因は、造血細胞(例えば、多能性幹細胞と他の前駆細胞)の数の減少であり、これらの細胞に対する細胞傷害性薬物若しくは放射線の致死効果、並びにより成熟した骨髄コンパートメントの減少によって誘発されたフィードバック機構によって誘発された幹細胞の分化の両方によって引き起こされる。2番目の原因は、幹細胞の自己再生能力の低下であり、それは直接的な(突然変異)、及び間接的な(幹細胞集団の老化)効果の両方に関係がある(Tubiana, M., et al., Radiotherapy and Oncology 29:1-17, 1993)。このように、癌治療は、しばしば多形核好中球(PMN)の減少又は好中球減少症をもたらす。PMNは、病原体の侵入に対する防衛の第一線であり、かつ、急性炎症中の中心的な役割を担っており、それらの主要な機能は、食作用及び病原菌の殺傷である。この役割を達成するために、PMNは、走化性因子への応答によって循環を離れ、そしてそれらの生物学的機能を発揮するために患部に入る。正常な血球数を示している個体において、好中球は、全白血球の約60%を占める(SI Units Conversion Guide, 66-67 (1992), New England Journal of Medicine Books)。しかし、癌の化学療法治療を受けた患者の3人に1人ほどが、好中球減少症を患う。健康なヒト成人について正常な好中球数の平均は、1800〜7700細胞/μLの範囲での、4400細胞/μLの水準にある。1000細胞〜500細胞/μLのカウントは、中程度の好中球減少症であり、そして500細胞/μL以下のカウントは、重度の好中球減少症である。骨髄抑制状態の患者は、感染症になりやすくて、入院を必要とする血液凝固系の障害でしばしば苦しめられる。好中球と血小板の不足は、癌治療の後の罹患率及び死亡率の主要原因であり、癌治療の高いコストの原因となる。これらの先に触れた状況において、好中球のアポトーシスを抑制するか、又は好中球の活性化及び動員を刺激することができるいずれかの薬剤の使用は、治療のための価値をもちうる。化学療法後に患者の免疫系を回復させる試みは、残りの幹細胞を増殖させ、そして感染に対抗する成熟細胞に分化させるように刺激するための造血増殖因子の使用を伴う。
【0005】
骨髄移植において、「動員」として知られている現象が、末梢血からの非常に多数の幹/前駆細胞を収集するために利用された。この方法は、現在の自家移植又は同種異系骨髄移植のために使用される。増殖因子が、骨髄機能を廃絶する療法と前駆幹細胞の注入前の収集のために末梢前駆幹細胞数を増やすために使用される。
【0006】
治療後の骨髄移植は、好中球減少症に対抗することもできる。しかし、これらの治療は、患者を感染症に無防備なままにする10〜15日間の治療を必要とする。骨髄幹細胞を刺激することができる作用物質は、幹細胞移植を容易にし、かつ、促進することができ、それにより骨髄移植後の好中球減少の時間枠を短くする。
【0007】
顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GMCSF)及び顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)のような造血増殖因子がそのような作用を発揮することができるが、それらを組み換えの技術によって産生しなければならないので、それらの使用は高価である。患者が免疫の抑制から「化学的に保護される」ならば、そのような治療後の寛解性治療が不要になる。
【0008】
従って、化学療法及び放射線治療によって誘発された骨髄抑制状態の望ましくない副作用を減らすための新規組成物及び方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の概要
本発明は、ヒトを含む哺乳動物の造血系の刺激のための新規方法を提供することによって化学的保護剤(chemoprotective agent)の必要性を満足させる。本発明は、化学療法及び放射線療法、そして造血系の刺激が治療的価値をもちうるあらゆる他の状況、例えば、これだけに制限されることなく、骨髄移植及び慢性好中球減少症、並びに感染症、血液の病気及び栄養欠乏症に起因する好中球減少症の骨髄抑制効果を治療する新規方法をも提供する。この方法は、骨髄抑制への対抗、好中球の生存及び活性化の増強、特にそのような治療を受けている患者の造血系を支援する。
【0010】
この方法に従って、医薬として許容される担体中、1以上の中鎖脂肪酸、例えばカプリン酸、カプリル酸又はその塩若しくはそのトリグリセリド、あるいはモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体を含む組成物を、例えば化学療法と放射線治療の副作用を減らすため、又は感染症、血液の病気及び栄養欠乏症から生じる好中球減少症を治療するための、好中球減少症を予防及び治療するのに有効な量で、哺乳動物、特にヒトに投与する。
【0011】
それ故に、単独の薬剤、又は他の化学療法剤若しくは骨髄抑制症状を誘発するそのような薬物のあり及び/又はなしの2種類以上の薬剤の組み合わせ物として、化学的保護用医薬組成物の製造のために、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸又はその金属塩(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム)、又はそのトリグリセリド、又はそのモノ−又はジグリセリド若しくはその他の類似体を使った組成物を提供することが本発明の目的である。
【0012】
本発明の他の目的は、造血活性化因子としてのカプリン酸、カプリル酸、又はそのナトリウム塩若しくはそのトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド、あるいは関連化合物の使用に関する。
【0013】
さらに、本発明は、カプリン酸、カプリル酸、又はそのナトリウム塩若しくはそのトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリドか他の類似体を含む組成物、並びに骨髄抑制と続く免疫抑制の治療のためのそのような化合物の使用を含む。
【0014】
本発明の目的は、重度の慢性好中球減少症の患者の治療のためのカプリン酸、カプリル酸、又はそのナトリウム塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体の使用にも関する。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、好中球の生存及び活性化因子としてのカプリン酸、カプリル酸、又はそのナトリウム塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体の使用に関する。
【0016】
本発明は、自家又は同種異系骨髄移植のように好中球の動員が治療的価値をもつ状態におけるカプリン酸、カプリル酸、又はそのナトリウム塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体の使用にも関する。
【0017】
ヒトを含む哺乳動物の化学的保護を提供するための有効な方法を提供することが本発明の目的である。
【0018】
本発明の他の目的は、ヒトを含む哺乳動物における化学療法及び放射線治療の有効性を増強するために有効な方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、副作用を避けながら、より十分な治療の恩恵をえるために、より多い通常投与量の使用、あるいはさらに必要な化学療法剤組成物の投与量の増加のための方法を提供する。
【0020】
本発明の他の目的は、ヒトを含む哺乳動物における化学療法によって誘発された好中球減少症を軽減するか又は解消するのに有効な方法を提供することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、血液の病気、例えば慢性特発性好中球減少症、周期性好中球減少症、走化性欠損白血球症候群、チェディアック−東症候群白血病及び再生不良性貧血に起因する好中球減少症の治療方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、感染症、例えばウイルス性感染症(例えば、HIV、はしか、肝炎、黄熱、単核細胞症)、及び細菌性感染症(例えば、腸チフス、パラチフス、ブルセラ症)に起因する好中球減少症の治療方法を提供することである。
【0023】
最後に、本発明の他の目的は、受容者における不都合な副作用を最小限しか又は全く引き起こさない方法を提供することである。
【0024】
本発明のこれらの及び他の目的、特徴、並びに利点は、以下の開示された態様及び添付の請求項の詳細な説明の再検討後に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】PMNのアポトーシスに対するMCTの効果を示す。
【図2】PMNの食作用に対するMCTの効果を示す。
【図3】A及びBは、PMNアポトーシスに対するドキソルビシンの効果を示す。
【図4】Aは、ドキソルビシン処理した好中球に対するMCTの時間経過応答を表す。Bは、MCT処理した好中球に対するドキソルビシンの時間経過応答を表す。
【図5】骨髄増殖に対するMCT及びトリカプリンの効果を示す。
【図6】免疫抑制された動物の骨髄細胞数に対するMCTの効果を示す。
【図7】免疫抑制された動物の脾臓細胞数に対するMCTの効果を示す。
【図8】正常なマウスの胸腺重量に対するMCT及びGM-CSFの効果を示す。
【図9】免疫抑制された動物の骨髄細胞数に対するMCT、カプリル酸ナトリウム及びカプリン酸ナトリウムの効果を示す。
【図10】B16F10メラノーマ・モデルにおける治療量以下の濃度のドキソルビシンと組み合わせたMCTの化学的保護効果及び抗腫瘍能力を表す。
【図11】DA-3乳癌モデルにおける治療量以下の濃度のシクロホスファミド又はタキソテールと組み合わせたMCTの化学的保護効果及び抗腫瘍能力を表す。
【図12】DA-3乳癌モデルにおける治療のための濃度のシクロホスファミド又はタキソテールと組み合わせたMCTの化学的保護効果及び抗腫瘍能力を表す。
【0026】
本発明の詳細な説明
高い投与量の化学療法及び放射線は、骨髄内の造血細胞を破壊し、患者を好中球及び血小板の著減したままにする。そのような治療の後に、患者は、好中球減少症に起因する感染症と発熱のために集中治療室内で数週間過ごす。血小板減少症は、血小板輸血を必要とする血液凝固時間の延長と出血障害をもたらす。骨髄抑制は、癌治療における服用量を制限する要因であり、そして好中球と血小板の不足が、これらの癌の治療後の罹患率と死亡率の原因をもたらす。
【0027】
骨髄移植において、2つのアプローチが使用されうる。移植前の骨髄の刺激は、末梢前駆幹細胞数を増加させる。しかし、新たに移植された骨髄は、十分に成熟した好中球、又は患者の免疫系を回復させるための好中球中間体を含んでいない。これは、患者を感染症に対し感受性の高い期間及び血液凝固時間の延長を有した状態のままにする。好中球の刺激及び活性化を伴う治療は、好中球減少症及び血小板減少症を減らすことにより、骨髄移植後の回復を増強する。
【0028】
本発明は、患者の好中球の生存及び活性化を促進する方法に関する。現在の方法は、患者の造血系を回復させることに向けられる。現在、そのような治療に使用されている造血増殖因子は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、幹細胞因子(SCF)及び顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)である。G-CSF及びGM-CSFは、好中球減少症及び血小板減少症の全期間を短くすることができるが、しかし、それらは、その患者が血液凝固が不完全な及び感染症にかかりやすい間の、かなりの時間帯がまだ残っている。
【0029】
骨髄移植における、「動員」は、末梢血液からのより多数の幹/前駆細胞を回収するために使用された。骨髄内の造血幹細胞は、増殖因子による処理後に血液中に動員される。そのような治療に使用された増殖因子は、インターロイキン-3(IL-3)、G-CSF、GM-CSF、SCF及びIL-3とGM-CSFの活性部分をもつ組み換え融合タンパク質を含む。動員された幹細胞は、次に増殖因子治療後に回収され、そして患者の好中球及び血小板を回復させるために、高い服用量の化学療法又は照射の次の課程に続いて患者の中に再注入される。
【0030】
中鎖トリグリセリド(本明細書中、「MCT」と呼ばれもする)は、8(C8、オクタン酸又はカプリル酸)及び10(C10、デカン酸又はカプリン酸)の炭素鎖長を有する脂肪酸によりエステル化されたグリセロールから成る。MCTは、C8及びC10脂肪酸のグリセロールエステルの混合物を通常含む。しかし、MCTは、わずかな量(各2±1%)のC6(ヘキサン酸又はカプロン酸)及びC12(ドデカン酸又はラウリン酸)のグリセロールエステルを含むこともできる。CRODAMOL(商標)は、Croda社、Toronto(Canada)から入手可能な市販のMCTである。実施例1で示されるように、CRODAMOL(商標)は、様々な割合で存在するC8及びC10脂肪酸から成るグリセロール・トリエステルを含むMCTである。しかし、CRODAMOL(商標)は、少しもC6又はC12脂肪酸エステルを含んでいない。一方、長鎖トリグリセリド(本明細書中、「LCT」と呼ばれもする)は、12超の炭素鎖長をもつ脂肪酸によりエステル化されたグリセロールから成る。LCTの状態にある典型的な脂肪酸は、パルチミン酸(C16)とステアリン酸(C18)を含む。MCTと異なり、LCTは食事脂肪の主成分である。実際には、MCTとLCTは、著しく異なる生物学的な性質を有する。MCTとLCTの間の生理学的な相違のいくつかが、Harrison's Principles of Internal Medicine, 8th Edition, 1520-1521 (1977), McGraw Hill Book Company or 15th Edition, 1668-1669 (2001)中に記載されている。例えば、LCTとは対照的に、MCTは、それらは腸の上皮細胞により吸収されることができるので、膵リパーゼによる加水分解を必要としない。
【0031】
MCT及びそれらの構成要素である中鎖脂肪酸は、食物及び製薬工業での使用を見出す無毒性の材料である。例えば、K.A. Traul et al. in Food and Chemical Toxicology'38:79-98 (2000)は、それらがLCTを上回る多数の利点を提供するので、MCTが、多数の食物及び栄養物用途に利用されたと述べる。MCTは、様々なヒト及び獣医学の製剤、そして化粧品の乳化剤として元来使用されもする。それらは、MCTの安全性を支持する多数の毒性研究を参照する。例えば、それらは1 g/kgのレベルまでの、MCTのヒト食事消費量の安全性が臨床試験で確認されたことを指摘する。C8とC10脂肪酸は、類似した安全性と用途をもつ。例えば、Merck Index, 11th Edition, 266 (1989)において、カプリル酸は、本質的に無毒である、10.08 g/kgのLD50(経口、ラット)を有すると報告されている。実際、連邦規制基準(CFR)の184節によると、米国食品医薬品局(U.S. federal Drug Agency)(FDA)は、カプリル酸にGRAS(一般に安全と認められる)認証を与えた。同様に、172節(CFR)によると、遊離脂肪酸(例えば、カプリン酸、カプリル酸)及びその金属塩が、食物に使用する安全な添加剤として認められている。Journal of Pharmacy and Pharmacology 53:149-154 (2001)中、D. Dimitrijevicらにより言及されるとおり、カプリン酸(ナトリウム塩)は、直腸用製剤のための吸収促進剤として日本とスウェーデンでヒトが使用するために認可されている。米国特許番号第4,602,040号(1986年)は、医薬賦形剤としてのMCTの使用を説明している。つい最近、PCT公報WO 01/97799は、抗菌性剤としての、中鎖脂肪酸、特にカプリル酸及びカプリン酸の使用を記載している。
【0032】
しかし、本明細書中に開示された意外な発見まで、好中球の生存及び活性化因子としての中鎖脂肪酸、例えばカプリン酸、カプリル酸若しくはその金属塩、又はモノ−、ジ−又はトリグリセリド(MCT)の有効性は知られていなかった。本明細書中に記載のとおり、MCTは、造血の促進と好中球の成熟に関連する活性の少なくとも98%を構成するC8(カプリル酸)とC10(カプリン酸)脂肪酸のトリグリセリドを含む。D. Waitzberg etal in Nutrition 13:128-132 (1997)は、脂質エマルジョン(LCT及びMCT)は、好中球の殺菌機能を適度にだけ低下させ、そして単球に対して効果をもたないことを述べている。実際、MCTが好中球減少症に影響を与えるかもしれないというはっきりしない示唆を与える唯一の公報は、MCTをLCTに加えて投与し、そして単独のLCTと比較する臨床検査を記載している。研究は、MCT単独では行われておらず、それで免疫機能に対する効果が明らかでない。しかし、Clinical Nutrition 19:253-258 (2000)中S. Demirerらにより報告された結果は、MCTが、LCTと組み合わせて、そしてLCT単独と比較したとき、MCTが好中球減少症を悪化させるということを教示している。すなわち、MCTが好中球の機能及び/又は生存を抑えることが示唆された。この示唆をある程度支持する、PCT公報WO95/30413は、不飽和長鎖脂肪酸、例えばリノレン酸、並びに飽和長鎖(C16又はそれより長い)脂肪酸が、造血幹細胞増殖を高めるために機能しうることを断言している。
【0033】
本発明は、造血活性化又は増殖因子及び好中球の生存及び活性化因子としての中鎖脂肪酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体、あるいはMCTの使用に関する。化学療法及び放射線療法で使用されるとき、中鎖脂肪酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体、あるいはMCTを含む組成物は、好中球減少の時間枠を短くして、造血系の補充を加速するために治療前、その最中及び/又はその後に投与される。さらに、化学療法及び放射線療法による治療と関係する複数の時点での、中鎖脂肪酸をその金属塩、又はそのトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド又は他の類似体、及び/又はMCTと一緒に組み合わせたものを使用することが可能である(例えば、治療前の脂肪酸と治療後のMCT)。あるいは、同時に:化学療法と放射線療法の治療前、治療中及び/又は治療後に前記組み合わせ物を投与することが可能である。重度の好中球減少症において、中鎖脂肪酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド、又は他のその類似体、あるいはMCTを含む組成物が治療用薬剤として使用される。骨髄移植において、中鎖脂肪酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド、又は他のその類似体、あるいはMCTが、切除放射線療法又は化学療法後の移植に利用可能な末梢幹細胞の数を増やすために使用される。中鎖脂肪酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド、又は他のその類似体、あるいはMCTが、骨髄幹細胞を刺激するために骨髄移植後に使用されることもでき、それにより好中球減少症からの回復までの期間が短かくなる。
【0034】
従って、本方法は、化学療法又は放射線療法;慢性又は一過性好中球減少症;薬物によって誘発された好中球減少症によって生じた骨髄抑制;並びに血液の病気、栄養欠乏症、感染症又は放射線療法によって生じた好中球減少症を治療するために造血を刺激するために有用である。一過性の好中球減少症は、動物の輸送によるストレス、又はヒト若しくは動物の移動によって生じる。本方法は、患者の外傷を治癒させ、及び患者の骨髄移植を円滑にするための好中球の動員を増加させる造血の刺激にも有用である。
【0035】
本明細書中に使用されるとき、用語「a」又は「an」は、それが使用される文脈に依存して、1以上を意味することができる。
【0036】
本明細書中に使用されるとき、「中鎖脂肪酸、例えばカプリン酸若しくはカプリル酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCT組成物」は、上記有効成分及び1以上の医薬として許容される担体を含む組成物を表す。
【0037】
本明細書中に使用されるとき、用語「医薬として許容される担体」は、中鎖脂肪酸、例えばカプリン酸若しくはカプリル酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCTの生理学的な効果を妨げず、かつ、ヒトを含めた哺乳動物に無毒な物質を表す。
【0038】
本発明のカプリン酸若しくはカプリル酸、又はその塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−又はジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCT組成物は、当業者に知られた方法によりカプリン酸若しくはカプリル酸、又はその塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−又はジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCT、及び医薬として許容される担体を使用して処方される(MERCK INDEX, Merck & Co., Rahway, NJ)。これらの組成物は、これだけに制限されることなく、液剤、油剤、乳剤、エアゾール剤、吸入剤、カプセル剤、丸剤、パッチ剤及び坐剤を含む。
【0039】
全ての方法が、有効成分を1以上の副成分を構成する担体と合わせるステップを含む。
【0040】
本明細書中に使用されるとき、用語「化学療法」は、細胞傷害性薬物を使って増殖細胞を殺傷する方法を表す。用語「化学療法中」は、投与された細胞傷害性薬物の効果が続く期間を表す。一方、用語「化学療法後」は、いかなる同じ細胞傷害性薬物の事前投与にも関係なく、そして投与された細胞傷害性薬物の効果の残存も関係なく、細胞傷害性薬物の投与後の組成物が投与される全ての状況をカバーすることを意味する。
【0041】
本願発明の方法が化学療法に適用されるとき、カプリン酸若しくはカプリル酸、又はその塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCT組成物が、化学療法の前、その最中又はそれに続いて(すなわち、細胞傷害性薬物の投与前、その最中又はそれに続いて)投与されうる。
【0042】
「細胞傷害性薬物」によって、高増殖型細胞、例えば腫瘍細胞、ウイルスに感染された細胞又は造血細胞を殺傷する薬剤を意味する。本発明を実行するために使用されうる細胞傷害性薬物の例は、これだけに制限されることなく、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、タキソテール、タクソール、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン又はクロラムブシル、並びに上記の化合物のいずれかのアゴニストを含む。細胞傷害性薬物は、抗ウイルス剤、例えばAZT(すなわち、3'-アジド-3'-デオキシチミジン)又は3TC/ラミブジン(すなわち、3-チアシチジン)でもありうる。
【0043】
本明細書中に使用されるとき、用語「白血球減少症」は、血中の白血球数の異常な減少を表す。
【0044】
本明細書中に使用されるとき、用語「好中球減少症」は、血中に異常に少ない好中球しか存在しないこと表す。
【0045】
1つの好ましい態様において、前記医薬組成物は、好中球減少症、血小板減少症の治療においてか、又は好中球の生存及び活性化因子としての使用のための、経口、舌下投与若しくは吸入(経鼻スプレー)、静中、筋中、皮下のためのいずれか好適な組成物の形態である。
【0046】
治療における使用のために必要とされる本発明の組成物の量は、投与経路、治療する症状の性質、患者の年齢及び状態により変化し、そして結局かかりつけの内科医の判断であることが認識される。所望の投与量は、都合よく、単回投与で、又は例えば1日につき2回、3回、4回以上の投与量として適切な間隔で摂取される分割された投与量で提供されうる。
【0047】
治療における使用のために、中鎖脂肪酸、又はその金属塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCTは未処理の化学薬品として投与されることもできるが、医薬製剤として有効成分を提供することが好ましい。
【0048】
本願発明の好ましい態様において、投与される有効成分の量は、血中(遊離及び/又は血清アルブミンへ結合)濃度が1 μMより高くなるような量である。特に好ましい態様において、血中濃度は、1 mMより高い。
【0049】
他の態様において、医薬組成物は、経口(舌下を含む)であるか、又は非経口(筋中、皮下、経腸及び静中を含む)投与の形態で存在する。必要に応じて、この製剤は、都合よく、別個の投与単位で提供され、そして薬学の技術分野で周知の方法のいずれかにより調整される。全ての方法が、活性化合物を液状担体又は微粉化された固形担体、あるいはその両方と合わせ、そして、必要ならば、産物を所望の製剤に成形するステップを含む。所望であれば、有効成分の徐放を得るために適合させた先に記載の製剤を使用する。
【0050】
中鎖脂肪酸、又はその塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−若しくはジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCTは、他の治療として活性な薬剤、例えば細胞毒性抗癌剤又は他の抗癌剤(免疫の調節又は制御剤又は治療のためのワクチン又は抗血管新生剤など)、免疫抑制剤(抗炎症剤を含む)、増殖因子、例えばコロニー刺激因子(好ましくは、GM-CSF又はG-CSF)、サイトカイン、例えばインターロイキン2又はインターロイキン15、あるいはそれらの組み合わせ物と組み合わせて使用されることもできる。そのような組み合わせ物の個々の構成要素は、別個の又は組み合わせられた医薬製剤で連続してか(前又は後に)又は同時にかのいずれかで投与される。先に参照された組み合わせ物は、都合よく、医薬製剤の形態での使用のために提供され、それにより、その医薬として許容される担体と一緒に先に定義されるような組み合わせ物を含む医薬製剤は、本発明のさらなる側面を含む。
【0051】
治療を必要としている患者の造血を刺激する方法の好ましい態様において、1以上の下記の化合物:
【0052】
【化1】
【0053】
{式中、
R1が、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和C7-C11アルキル基であり;
A及びBが、独立に水素又は
【0054】
【化2】
【0055】
であり;そして
Xが、ヒドロキシル基、金属モノ−若しくはジカチオン性対イオンをもつオキシ・アニオン、又は直鎖若しくは分岐C1-C4アルキル部分をもつアルコキシ基である。}又はその組み合わせ物を含む組成物の薬理学的有効量が投与される。
【0056】
式(III)中、用語「Z=ゼロ」が、一定しないZが任意であり、かつ、除かれているか又は水素により置換されることを示すことは、当業者によって知られる。
【0057】
代わりの好ましい態様において、組成物は、中鎖脂肪(MCTs)である式(I){式中、A、B及びR1は、同じものであり、そしてそれぞれ直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和C7及びC9アルキル基である。}によって表される少なくとも2つの化合物の混合物を含む。あるいは、組成物は、2つのトリグリセリドの混合物を含み、ここで、最初のMCTが、式(I){式中、A、B、及びR1が、CH3(CH2)6である。}によって表され、そして2番目のMCTが式(I){その中にA、B及びR1が、CH3(CH2)8である。}によって表される。あるいは、組成物は、各々0.1%〜3%の、式(I){式中、A、B及びR1が、CH3(CH2)4である。}によって表される3番目の化合物、及び式(I){式中、A、B及びR1が、CH3(CH2)10である。}によって表される4番目の化合物をさらに含む。あるいは、組成物は、以下の式:
【0058】
【化3】
【0059】
によって表されるC8及びC10脂肪酸トリグリセリドの4つの幾何異性体を含む混合物である。
【0060】
代わりの好ましい態様において、組成物は、式(II)又は式(III){式中、Xが、OHであるか、又はXが、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムのような金属対イオンをもつオキシ・アニオンである。}によって表される1以上の化合物を含む。
【0061】
より好ましい態様において、組成物は、カプリル酸、カプリン酸、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸カルシウム、カプリン酸カルシウム、カプリル酸トリグリセリド又はカプリン酸トリグリセリドである。
【0062】
本明細書中に記載の組成物及び方法は、以下の類似体及び化合物:
生体内での分解により前述の活性物質を放出する医薬製剤を提供する、カプリル酸トリグリセリド又はカプリン酸トリグリセリドのアザ類似体、好ましくはアザ類似体は、1,2,3-O,N,O-トリオクタノイル・セリノール又は1,2,3-O,N,O-トリデカノイル・セリノールである;
以下の式(IV):
【0063】
【化4】
【0064】
によって表される化合物;
以下の式(V):
【0065】
【化5】
【0066】
によって表される化合物;
以下の式(VI):
【0067】
【化6】
【0068】
によって表される化合物;
を含む。
【0069】
以下の実施例は、本願発明の実施をさらに説明するが、その制限を意図したものではない。中連鎖脂肪酸、又はその塩若しくはトリグリセリド、又はそのモノ−又はジグリセリド若しくは他の類似体、あるいはMCT及びいずれか特定の患者(ヒト又は動物)に投与される関連する医薬製剤の投与の選択は、主治医の決定権の範囲内にあり、適切な投与量に見合ったやり方で処方され、そして独自に主治医の範囲内にある病気のステージなどの因子に依存するであろうことは、理解される。
【実施例】
【0070】
実施例1:CRODAMOL(商標)の解析(MCT:カプリル酸/カプリン酸・トリグリセリド)
Croda社(Toronto, Canada)製のCRODAMOL(商標)GTCC lot番号T1033-1299を、ガスクロマトグラフィーによって分析した。GC FID分析は、グラジエント:10分間で100℃-250℃、その後250℃で25分間;FID 250℃の条件を設定した。4つのピーク:22.04分(26%)、25.07分(43%)、29.16分(25%)及び34.75分(5%)を観察した。
【0071】
シグマ-アルドリッチ社lot番号079H1212から得られたカプリル酸トリグリセリド(トリカプリリン)サンプルを、ガスクロマトグラフィーによって分析した。GC FID分析は、グラジエント:10分間で100℃-250℃、その後250℃で25分間;FID 250℃の条件を設定した。22.31分(98%)における主に1つのピーク。
【0072】
実施例2:酸塩化物及びピリジン塩基を使ったアルコールのアシル化
【0073】
【化7】
【0074】
一般法A(ピリジン)
乾燥したCH2Cl2中、アルコール(〜0.1 M)とピリジン(4:1)の溶液を、窒素下で0℃に冷やし、そして酸塩化物(1.2当量)により処理した。この反応物を、気温までゆっくりと温め、そして一晩撹拌した。TLC分析(SiO2、EtOAc 1:9ヘキサン)は、残余アルコールがないことを示した。反応混合物を、CH2Cl2により希釈し、飽和水性NH4Cl溶液により洗浄した。水相を、CH2Cl2(X1)とヘキサン(X1)を用いて抽出し、そして合わせた有機相を、飽和水性NaCl溶液を用いて洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、そして真空中で留去して、未精製産物を得た。
【0075】
一般法B(DMAP)
乾燥したCH2Cl2中、アルコール(〜0.1 M)の溶液を、窒素下で0℃に冷やし、そしてDMAP(1.3当量)及び酸塩化物(1.2当量)により処理した。この反応物を、気温までゆっくりと温め、そして一晩撹拌した。TLC分析(SiO2、EtOAc 1:9ヘキサン)は、残余アルコールがないことを示した。反応混合物を、CH2Cl2により希釈し、飽和水性NH4Cl溶液により洗浄した。水相を、CH2Cl2(X1)とヘキサン(X1)を用いて抽出し、そして合わせた有機相を、飽和水性NaCl溶液を用いて洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、そして真空中で留去して、未精製産物を得た。
【0076】
実施例3:ノナン酸トリグリセリド
グリセロール(120 mg、1.30 mmol)を、実施例2の一般法Aに従って塩化ノナノイル(751 μL、4.16 mmol)によりアシル化した。カラムクロマトグラフィー(Isolute(商標)SiO2、ヘキサン中、0-5%のEtOAcを用いて溶出)による精製で、画分を含む2つの産物を得、それを真空中で留去して、それぞれ89%(127 mg、19%)と93%(475 mg、71%))の純度(GC/FID)の無色透明の液体として所望の産物を得た。Rf 0.46(SiO2、ヘキサン中10%の酢酸エチル);1H NMR(CDCl3、300 MHz)δH=5.27(m,1H)、4.29(dd,2H)、4.14(dd,2H)、2.31(m,6H)、1.61(m,6H)、1.27(m,30H)、0.88(t,9H);MS(FAB+)m/z=510(M-H+);GC FID分析、条件:グラジエント10分間で100℃-250℃、その後250℃で25分間;FID 250℃;27.25分。
【0077】
実施例4:ノナン酸ジグリセリド及びモノグリセリド
【0078】
【化8】
【0079】
グリセロール(100 mg、1.09 mmol)を、実施例2の一般法Aに従って1当量の塩化ノナノイル(205 μL、1.09 mmol)によりアシル化した。Biotage(商標)(40S、SiO2、ヘキサン中、10%の酢酸エチル-100%の酢酸エチルを用いて溶出)による精製で、無色透明の油を得た。以下の2つの異なる化合物を得た:
ノナン酸ジグリセリドを、白色の固体として得た(73 mg、18%)。mp 24-26℃;Rf 0.52(Et3Nを用いて前処理したSiO2、ヘキサン中、30%の酢酸エチル);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=4.17(m,5H)、2.35(t,4H)、1.63(m,4H)、1.27(m,20H)、0.88(t,6H);MS(FAB+) m/z=373(M+H+)。
【0080】
ノナン酸モノグリセリドを、白色の固体として得た(85 mg、34%)。mp 37-38.5℃;Rf 0.08 (Et3Nを用いて前処理したSiO2、ヘキサン中、30%の酢酸エチル);1H NMR(CDCl3、300MHz)、δH=4.18(m,2H)、3.94(m,1H)、3.69(m,1H)、3.62(m,1H)、2.36(t,2H)、1.62(m,2H)、1.28(m,10H)、0.88(t,3H)、MS(FAB+) m/z=233(M+H+)。
【0081】
実施例5:1,2,3-O,N,O-トリデカノイル・セリノール
セリノール(51 mg、0.56 mmol)を、実施例2の一般法Bに従って塩化デカノイル(372 μL、1.76 mmol)によりアシル化した。MPLC(SiO2、ヘキサン中、0その後10%のEtOAcを用いて溶出)による精製で、白色の固体として所望の産物を得た(301 mg、97%)。mp 54℃;TLC、Rf 0.85(SiO2、EtOAc 2:3ヘキサン);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=0.84(9H,t)、1.20-1.27(36H,m)、1.52-1.60(6H,m)、2.13(2H,t)、2.28(4H,t)、4.03(2H,2xABXの2xA)、4.19(2H,2xABXの2xB)、4.41-4.46(1H,m)、5.70(1H,d);HRMS m/e C33H63NO5についての計算 553.4706、実測553.4713。GC-FID分析、グラジエント条件:10分間で100℃-250℃、その後250℃で25分間;FID 250℃; 14.80分で主に1つのピーク(98%)。
【0082】
実施例6:1,3-O,O-ジデカノイル・セリノール
【0083】
【化9】
【0084】
アセトン(17 ml)及び水(17 ml)中、セリノール(1.57 gm、17.2 mmol)溶液を、トリエチルアミン(3.60 ml、25.9 mmol)とBOC-ON(4.67 gm、19.0 mmol)により処理し、そしてこの反応物を窒素下で一晩撹拌した。アセトンを真空中で留去し、そして未精製の混合物を、EtOAcと水の間で分配した。水相を、EtOAc(X3)を用いて抽出し、合わせた有機抽出物を、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、そして真空中で留去して、黄色の固体を得た。MPLC(SiO2、ヘキサン中40〜80%のEtOAcを用いて抽出)による精製で白色の結晶性固体としてN-BOC-ジオール中間体を得た(2.10 gm、64%)。TLC、Rf 0.15(SiO2、EtOAc 4:1ヘキサン);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=1.40(9H,s)、3.54-3.56(5H,m)。
【0085】
N-BOC-ジオール中間体(50 mg、0.26 mmol)を、一般法Bに従って塩化デカノイル(173 μL、0.83 mmol)によりアシル化した。MPLC(SiO2、ヘキサン中0その後10%のEtOAcを用いて抽出)による精製で、無色透明な油としてN-BOC-ジアシル中間体を得た(115 mg、88%)。TLC、Rf 0.80(SiO2、EtOAc 2:3ヘキサン);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=0.87(6H,t)、1.23-1.30(24H,m)、1.44(9H,s)、1.56-1.70(4H,m)、2.31(4H,t)、4.04-4.21(4H,m)、4.77-4.80(1H,m)、6.73(1H,d)。
【0086】
乾燥したCH2Cl2(1.5 ml)中、N-BOC-ジアシル中間体(76 mg、0.15 mmol)の溶液を、0℃に冷やし、1,4-ジオキサン(375 μL、1.50 mmol;終濃度0.8 M)中、4.0 Mの無水HClの溶液により処理した。反応物を、室温まで加温し、そして同じ温度で3時間撹拌した。1,4-ジオキサン(375 μL、1.50 mmol)中、4.0 Mの無水HClのさらなる部分を加え、そして反応物をさらに2時間撹拌した。溶剤の留去によって、白色の固体として所望の産物を得た(69 mg、100%)。mp 101℃;TLC、Rf 0.40(SiO2、EtOAc2:3ヘキサン);1HNMR(CDCl3、300MHz)、δH=0.88(6H,t)、1.20-1.29(24H,m)、1.55-1.65(4H,m)、2.45-2.52(4H,m)、3.72-3.80(1H,m)、4.30-4.51(2H,m)、8.6-9.0(3H,br m);HRMS m/e (M-HCl)、C23H45NO4について計算339.3348、実測339.3340;GC-FID分析、グラジエント条件:10分間で100℃−250℃、その後250℃で25分間;FID 250℃。17.14分で主に1つのピーク(94%)。
【0087】
実施例7:α-及びβ-1-O-メチル-2,3,4-O,O,O-トリデカノイル-L-フコピラノース
【0088】
【化10】
【0089】
1-O-メチル-L-フコピラノース(593 mg、3.33 mmol)を、Levene & Muskat(J. Biol Chem.105:431-441, 1934)の方法に従って合成し、そして実施例2の一般法Bに従って塩化デカノイル(2.90 ml、14.0 mmol)を用いてアシル化した。MPLC(SiO2、ヘキサン中0〜5%のEtOAcを用いて溶出)による精製で、無色透明の油としてα(1.18 gm、55%)とβ(0.52 gm、24%)から成る所望の産物を得た。
【0090】
αアノマーに関するデータ:TLC、Rf 0.45(SiO2、EtOAc 1:9ヘキサン);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=0.87(9H,t)、1.14(3H,d)、1.20-1.35(36H,m)、1.52-1.68(4H,m)、2.18(2H,t)、2.29(1H, ABX2のA)、2.32(1H, ABX2のB)、2.41(2H,t)、3.38(3H,s)、4.13(1H,qd,J6.5)、4.93(1H,d)、5.15(1H,dd,5.30(1H,dd),5.36(1H,dd);HRMS m/e (M-CH3O) C36H65O7についての計算609.4730、実測609.4720。
【0091】
βアノマーに関するデータ:TLC、Rf 0.40(SiO2、EtOAc 1:9ヘキサン);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=0.87(9H,t,J6.5Hz)、1.22(3H,d)、1.20-1.35(36H,m)、1.49-1.67(4H,m)、2.18(2H,t)、2.25(1H,ABX2のA)、2.29(1H, ABX2のB)、2.34(2H,t)、3.50(3H,s)、3.81(1H,qd)、4.35(1H,d)、5.03(1H,dd)、5.19(1H,dd)、5.24(1H,dd)。
【0092】
実施例8:L-グルタミン酸カプラミド
【0093】
【化11】
【0094】
乾燥したCH2Cl2(60 ml)中、カプリン酸(7.30 mmol、1.26g)の溶液に、窒素下でL-グルタミン酸ジ-t-ブチルエステル塩酸塩(6.09 mmol、1.80 gm)、DMAP(1.8 mmol、0.22 g)、ジイソプロピルエチルアミン(18 mmol、3 ml)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)(7.30 mmol、1.40 gm)を加えた。得られた無色透明の溶液を24時間室温で撹拌した。その後、溶剤を減圧下で取り除き、白色の油性の残渣を得た。Biotage(商標)(40S、SiO2、ヘキサン中5%の酢酸エチル−ヘキサン中30%の酢酸エチルを用いて抽出)による精製で、無色透明の油を得、それがL-グルタミン酸ジ-t-ブチルエステル・カプラミド(2.47 gm、98%)であった。Rf 0.56(SiO2、ヘキサン中30%の酢酸エチル);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=6.05(d,1H)、4.45(m,1H)、2.30(m,2H)、2.27(m,2H)、2.16(t,2H)、2.07(m,1H)、1.87(m,1H)、1.58(m,2H)、1.43(s,9H)、1.41(s,9H)、1.23(m,12H)、0.84(t,3H)。
【0095】
BOC基の脱保護を、1,4-ジオキサン(23 ml)中、4.0 MのHClの溶液をCH2Cl2(35 ml)中、ジ-t-ブチルエステル誘導体(5.75 mmol、2.38 gm)の溶液に0℃で緩やかに加えることによって実行した。無色透明の溶液を、室温まで加温し、そしてさらに20時間撹拌した。その後減圧下で溶剤を取り除き、そして得られた白色の固体を乾燥させて、L-グルタミン酸カプラミド(1.71 gm、99%)を得た。mp 95-96.5℃;1H NMR(CD3OD、300 MHz)、δH=4.39(m,1H)、3.27(d,1H)、2.36(t,2H)、2.20(t,2H)、2.13(m,1H)、1.90(m,1H)、1.58(m,2H)、1.27(m,12H)、0.86(t,3H);MS(ES+) m/z=324(M+Na+)、302(M+H+);MS(ES-) m/z=300(M-H+);HPLC分析、条件:グラジエント10分間で0.01%のTFA中10%-70%のアセトニトリル;流速1.0 ml/分;210 nm;8.93分。
【0096】
実施例9:カプリン酸N,N-ジメチルアセトアミド・エステル
窒素下、無水DMF(80 ml)中、カプリン酸(8.7 mmol、1.5 g)の溶液に、ヨウ化ナトリウム(0.87 mmol、130 mg)、続いてジメチルクロロアセトアミド(9.6 mmol、985 μl)を加えた。その後、炭酸カリウム(9.6 mmol、1.3 g)を、加え、得られた懸濁液を、90℃で5日間撹拌した。反応物を室温まで冷やし、そして蒸留水と混合した。この産物を、酢酸エチル(X3)を用いて抽出した。合わせた有機相を、NaHCO3の水性溶液を用いて洗浄し、Na2SO4を用いて乾燥させ、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。得られた黄色の液体をBiotage(商標)(40M、SiO2、ヘキサン中50%の酢酸エチル−ヘキサン中25%の酢酸エチルを用いて抽出)によって精製した。白色の粉末としてカプリン酸N,N-ジメチルアセトアミド・エステルを得た(2.03 gm、92%)。mp 42-42.5℃;Rf 0.55(SiO2、酢酸エチル);1H NMR(CDCl3、300 MHz)、δH=4.64(s,2H)、2.92(s,3H)、2.91(s,3H)、2.38(t,2H)、1.62(qt,2H)、1.22(m,12H)、0.83(t,3H);MS(ES+) m/z=537(2M+Na+)、280(M+Na+)、258(M+H+)。
【0097】
実施例10:好中球のアポトーシス及び生存のインビトロ・アッセイ
好中球の生存を、Lagraoui及びGagnon(Cell. Mol. Biol. 43:313-318, 1997)により記載されたとおり計測した。好中球を、健康なボランティアの末梢血液から得た。血液を、Lympholyte-poly(Cedarlane, Hornby, Canada)を用いた密度遠心分離法に、続いて混入した赤血球の低張溶解に供した。細胞を、10%のFBS(Hyclone, Logan, USA)を補ったRPMI(Gibco, Burlington, Canada)中に懸濁した。最終的な細胞製剤は、ライトギムザ染色に測定されるように>95%の好中球から成った。生存度は、トリパンブルー排除によって測定されるように97%より高かった。多形核球(PMN)は、短い半減期をもち、そしてアポトーシスを示す特徴的な変化を急速に受ける。アポトーシスを、Nicoletti et al, J. Immunol. Meth. 139:271-279 (1991)により記載された方法に従って評価した。要するに、新鮮な単離好中球を、様々な濃度のMCTと一緒に37℃で24時間インキュベートした。インキュベーション後に、細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI、Sigma)により染色し、そしてXLフローサイトメーター(Coulter)を使ってアポトーシスについて分析した。そしてデータをアポトーシス細胞の割合として表した。
【0098】
図1は、好中球のアポトーシスを様々な濃度のMCTの不存在(対照)又は存在下で計測したいくつかの実験をまとめたものを表す。結果は、MCTの存在下、インビトロにおいて、好中球のアポトーシスが最高90%まで抑えられ、この抑制作用が用量に依存していることを示す。このように、MCTは好中球の生存を高めることができ、好中球の生存因子として使用することができる。
【0099】
実施例11:PMN食作用のインビトロ・アッセイ
好中球(2x106/ml)を、様々な濃度のMCTと一緒に95%の湿度及び5%のCO2の中37℃において24時間インキュベートした。24時間後に、生存度を、トリパンブルー排除によって速定し、そして細胞を、2 mMのグルコース、1 mMのMgCl2及び1 mMのCaCl2を含むPBSを用いて3回洗浄した。次に、細胞濃度を、1x106細胞/mlに合わせ、そしてフルオレスプライト(fluoresbrite)カルボキシレート・ミクロスフィア(1/10希釈)と一緒にインキュベートした。30分間のインキュベーションの後に、好中球を洗浄し、2%のパラホルムアルデヒド中で固定した。固定した好中球を、XLフローサイトメーター(Coulter)を使ってミクロスフィアの摂取について分析した。そしてデータを、食作用細胞の割合としてまとめたものとして表した。
【0100】
図2は、様々な濃度のMCTの不存在(対照)又は存在下におけるPMN食作用活性を計測したいくつかの実験をまとめたものを表した。結果は、MCTがヒトPMNの食作用活性を高めることを示す。食作用活性は、対照値から2〜3倍まで高められ、そして刺激の広がりは、ドナーの免疫の状態に依存する。
【0101】
実施例12:好中球のアポトーシスに対するドキソルビシンの効果
実施例10に記載のとおりPMNを単離した。細胞(2x106/ml)を、様々な濃度の化学療法剤、ドキソルビシンの存在下、5%のCO2及び95%の湿度の中、37℃で4時間インキュベートした。アポトーシス細胞を、実施例10に記載のとおり評価した。データを、アポトーシス細胞の割合で表した。図3A及び3Bは、ドキソルビシンがPMNのアポトーシスを誘発することを示す。
【0102】
実施例13:MCTは、好中球のドキソルビシンによって誘発されたアポトーシスを救う
実施例10に記載のとおりPMNを単離した。細胞(2x106/ml)を、MCT(2.5%と5.0%)のあり又はなしで、様々な濃度のドキソルビシンの存在下、5%のCO2及び95%の湿度の中、37℃において4時間インキュベートした。アポトーシス細胞を、実施例10に記載のとおり評価した。データを、アポトーシス細胞の割合で表す。
【0103】
表1は、MCTとPMNに対する化学的保護効果を計測した2つの実験を表す。結果を、MCTのあり又はなしでのドキソルビシンの存在又は不存在下において4時間のインキュベーションの後のアポトーシス細胞の割合で表す。実施例12中のように、ドキソルビシンはインビトロでPMNアポトーシスを誘発する。しかし、2.5%と5%(v/v)の濃度でのMCTの存在下で、ドキソルビシンのアポトーシス効果は抑えられる。このように、MCTは、PMNに対する抗アポトーシス作用を発揮する。製造業者のBiosources推奨(Apotargetアネキシン-VFITCアポトーシスキット#PHN1018)によるアネキシンV-FITC/PI(ヨウ化プロピジウム)法を使ってアポトーシスを調査しもした。アネキシンVは、早期から末期アポトーシスにおいて細胞内膜から外膜に移動するホスファチジルセリンに結合する。要するに、好中球を、様々な濃度のドキソルビシン及びMCTの存在又は不存在下でインキュベートする。24時間後に、好中球をPBSを用いて洗浄し、2 μlのアネキシンV-FITC及び10 μlのPI(Sigma、1 mg/ml)を用いて20分間染色した。インキュベーション後に、染色した細胞をパラホルムアルデヒド(1%)中で固定し、そしてXLフローサイトメーター(Coulter)を使ってアポトーシスについて分析した。そしてデータをアポトーシス細胞の割合として表した。
【0104】
図4Aは、ドキソルビシン処理した好中球に対するMCTの時間経過応答を表す。MCTは、時間及び用量依存的な様式でヒト好中球のドキソルビシンによって誘発されたアポトーシスを救う。
【0105】
図4Bは、MCT処理した好中球に対するドキソルビシンの時間経過応答を表す。MCTは、用量依存的な様式で、毒物(ドキソルビシン)の導入前4時間まで、ドキソルビシンによって誘発されたアポトーシスから好中球を保護した。
【0106】
【表1】
【0107】
実施例14:MCTは、好中球のドキソルビシンによって誘発されたアポトーシスを救う:GM-CSFとの比較
表2は、ドキソルビシンによって誘発されたヒト好中球のアポトーシスに対するGM-CSF、MCT及びトリカプリリンの効果を表す。GM-CSFとMCTは、ドキソルビシンによって誘発されたアポトーシスに対抗してヒト好中球を救うか又は保護することができる。トリカプリリンは、ドキソルビシンによって誘発されたアポトーシスを救い、さらにそれは、未処理の好中球(対照、ドキソルビシンの不存在)にで観察されたより高い程度までヒト好中球の生存度を高める。
【0108】
【表2】
【0109】
実施例15:MCT及びトリカプリンは、インビトロにおいてマウス骨髄増殖を増加させる
骨髄細胞を、雌C57BL/6マウス(6〜8週齢)の大腿部から得た。細胞をフラッシュし、PBSにより洗浄した。回収した細胞を、遠心分離し、2x106細胞/mlで再懸濁した。100 μlの細胞(2x106細胞)を、MCT又はトリカプリンの存在又は不存在下、96ウェルのマイクロタイタープレート内で48時間インキュベートする。インキュベーションの後に、細胞を、1 μCiの[3H]-チミジンにより6時間パルス標識する。プレートを、Tomteckにより採取し、Microbetapβ-カウンターでカウントする。DNA内への[3H]-チミジンの取り込みは、細胞増殖の直接的な目安である。
【0110】
図5は、骨髄増殖に対するMCTとトリカプリンの効果に関する代表的な実験を表す。MCTとトリカプリンは、骨髄増殖を対照に比べて3〜5倍増加させる。
【0111】
実施例16:化学的保護の検討:インビボにおけるMCTによる免疫系細胞の増殖又は保護の誘導
雌C57BL/6マウス、6〜8週齢を、0日目に静中投与される80 mgの5-フルオロウラシル(5-FU)又は100〜200 mgのシクロホスファミド(CY)又は12 mgのタキソテール(TX)による処理によって免疫抑制した。MCT又は他の化合物の免疫保護効果を検査するために、マウスを、試験化合物を用いて、-3、-2及び-1日目に経口的に前処理するか又は0日目に静中的に処理した。マウスを、+5日目に心臓穿刺及び頸部脱臼によって屠殺した。そして細胞懸濁液を、下記のとおり、胸腺、脾臓及び骨髄から調製した。
【0112】
組織を、PBS緩衝液中で押しつぶし、そして混入している赤血球を、ACK緩衝液(155 mMのNH4Cl、12 mMのNaHCO3、0.1 mMのEDTA、pH7.3)を用いて5分間溶解した。次に細胞を、遠心分離によって回収し、PBSにより3回洗浄し、そして組織培養培地中に再懸濁した。細胞を血球計でカウントした。
【0113】
結果は、以下の表及び図に示すとおり、MCTは、媒質のみと比べて正常及び免疫抑制した動物の免疫組織中の細胞数を大幅に増加させることを示す。実験とマウスの免疫状況に依存して、MCTは、骨髄細胞及び/又は脾臓細胞及び/又は胸腺細胞の数を増加させることができる。
【0114】
図6は、免疫抑制した動物における骨髄細胞数に対するMCTの効果を示す。CY及び5-FUだけが、対照(細胞毒素処理なし)と比べて骨髄細胞数を低下させた。マウスにおいて、タキソテール処理は、骨髄細胞数に対する顕著な影響を与えない。抑制された骨髄において、-3、-2及び-1日目のMCTの投与(マウスにつき6.25 μMole)が、大幅に骨髄細胞数を高めた。
【0115】
図7は、o.s.によるMCTの前処置投薬計画を受けた免疫抑制マウスの脾臓細胞数に対するMCTの効果を表す。全ての細胞毒(CY、5-FU及びTX)が、制御と比べて大幅に脾臓細胞数を減少させる。-3、-2及び-1日目のMCTの投与(マウスにつき6.25 μMole)が、CY、5-FU及びTXについてそれぞれ0.0017、0.009及び0.0036未満の「P」をもつ脾臓細胞数を大幅に増加させる。
【0116】
さらに、MCTは、0日目でのi.v.投与したときに、正常なマウスの骨髄細胞数を大幅に高める(表3)。しかし、1回のMCTのi.v.注射では、正常及び免疫抑制したマウスの脾臓細胞数を改善するのに十分ではない。
【0117】
【表3】
【0118】
実施例17:化学的保護の検討:正常なマウスにおける-3、-2及び-1日目で投与されるときの、免疫細胞増殖のMCT誘導に関するインビボにおける用量反応
正常なマウスにおける免疫細胞増殖に関するMCT誘導のインビボにおける用量反応を、実施例16に記載のプロトコールにより評価した。
【0119】
表4は、正常なマウスにおいて-3、-2及び-1日目に経口投与されたMCT処理に対する用量反応を表す。MCTは、骨髄及び脾臓細胞数を大幅に増加させる。
【0120】
【表4】
【0121】
実施例18:化学的保護の検討:免疫細胞の増殖又は保護に関するインビボ誘導:MCT対GM-CSFの効果の比較
免疫細胞増殖/再生又は保護の誘導に関するインビボでの比較を、実施例16に記載のプロトコルにしたがって行った。MCTとGM-CSFの比較研究を、正常及び免疫抑制した動物において実施した。MCTと比べて、GM-CSFは、免疫抑制動物の骨髄及び脾臓細胞数に対して顕著な活性を持っていない。GM-CSFの顕著な効果は、正常なマウスの胸腺重量に対してだけ観察された(図8)。この場合、MCTはGM-CSFに類似した効果を表わした。
【0122】
実施例19:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するカプリル酸とカプリン酸の効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。表5に示されるとおり、カプリン酸だけが骨髄細胞数を大幅に高める。シクロホスファミド処理したマウスと比べて、脾臓細胞数に対する顕著な効果は証明されなかった。
【0123】
【表5】
【0124】
実施例20:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するトリカプリリン及びトリカプリンの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。トリカプリリンとトリカプリンのどちらもCY処理したマウスの骨髄細胞数の増殖又は保護に効果的である(表6)。シクロホスファミド処理したマウスと比べて、脾臓細胞数に対する顕著な効果は観察されなかった。
【0125】
【表6】
【0126】
実施例21:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するノナン酸とラウリン酸の効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。骨髄及び脾臓細胞数の増殖又は保護の顕著な増加を、CY処理したマウスにおいてラウリン酸の前処理により観察した。しかし、ノナン酸は、シクロホスファミド処理したマウスと比べて、免疫細胞数(表7)に対する弱い(顕著ではない)活性を証明する。
【0127】
【表7】
【0128】
実施例22:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するトリラウリン及びトリミリスチンの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。トリラウリン及びトリミリスチンは、CY免疫抑制したマウスの骨髄及び脾臓細胞数に対する弱い(顕著ではない)活性をもっている(表8)。
【0129】
【表8】
【0130】
実施例23:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するトリカプロイン及びカプロン酸ナトリウムの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。トリカプロイン及びカプロン酸ナトリウムは、CY免疫抑制したマウスの骨髄及び脾臓細胞数に対する弱い(顕著ではない)活性をもつ(表9)。
【0131】
【表9】
【0132】
実施例24:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するカプリル酸ナトリウム及びカプリン酸ナトリウムの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。骨髄細胞数の増殖又は保護の顕著な増加を、CY処理したマウスにおけるカプリル酸ナトリウム及びカプリン酸ナトリウムによる前処理によって観察した(図9)。
【0133】
実施例25:化学的保護の検討:処理後の投薬計画
化学的保護の検討を、マウスを1、2、3及び4日目にo.s.によりMCT、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム又はカプリン酸により(後)処理したことを除いて、実施例16に記載のとおりが実施した。
【0134】
骨髄細胞数の顕著な増加を、CY処理したマウスにおけるMCT、カプリル酸ナトリウム及びカプリン酸ナトリウムの後処理により観察した(表10)。後処理として使用されるとき、カプリン酸は、脾臓細胞数の顕著な増加、及び骨髄細胞数のわずかな増加を誘発する(表11)。
【0135】
【表10】
【0136】
【表11】
【0137】
実施例26:化学的保護の検討:免疫表現型タイピング・アッセイ
雌、6〜8週齢の、C57BL/6マウスを、異なる濃度のMCTを用いてo.s.により-3、-2及び-1日目に、又は静中にて0日目に前処理した。免疫抑制した動物に対して、免疫表現型タイピングをも実施した。免疫抑制を、0日目にi.v.注射した80 mg/kgの5-フルオロウラシル(5-FU)又は100〜200 mg/kgのシクロホスファミド(CY)又は12 mg/kgのタキソテール(TX)によって得た。マウスを、5日目に心臓穿刺により屠殺した。血液と脾臓を回収し、そして細胞懸濁液を調製して、そして赤血球をACK緩衝液(155 mMのNH4Cl、12 mMのNaHCO3、0.1 mMのEDTA、pH7.3)中で5分間溶解した。細胞を、PBS、pH7.4を用いて3回洗浄し、そして組織培養培地中に再懸濁した。次に、この細胞を、製造業者(Gibco/BRL、Cedarlane、Boehringer Mannheim)の推奨に従ってフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)又はフィコエリスリン(PE)結合細胞表面マーカーと一緒に氷上で45分間インキュベートした。次にこの細胞を、PBSを用いて洗浄し、1%のパラホルムアルデヒドを用いて固定し、そしてCoulterXLフローサイトメーターにより分析した。細胞サブセットの分析を、標準細胞表面マーカーの測定によって行った。上記マーカーは、以下の:TCR(T細胞レセプター)、CD4(Tヘルパー)、CD8(T細胞傷害性/サプレッサー)、CD11b(マクロファージ)、NK(NK細胞)及びLy5(B細胞)である。骨髄細胞を、実施例15に記載のとおり得た。細胞を、製造業者の推奨に従ってFITC又はPE結合細胞表面マーカーの45分間のインキュベーションによって染色した。次にこの細胞を、PBSを用いて洗浄し、1%のパラホルムアルデヒドを用いて固定し、そしてCoulterXLフローサイトメーターにより分析した。細胞サブセットの分析を、標準細胞表面マーカーの測定によって行った。上記マーカーは、以下の:CD34(造血前駆細胞)、CD41(血小板、巨核細胞)、CD13(骨髄球幹細胞、骨髄球、前単球)及びCD38(リンパ幹細胞、プロ−B、プレ−B)である。表12は、正常なマウスにおける血液と脾臓免疫表現型タイピングに対するMCTの効果を表す。血液の免疫表現型タイピングにおいて、MCTは、CD8+及びLY5+細胞サブセットを増加させる。いくつかの実験において、MCTは、わずかにLY5-TCRサブセットを増加させる(データ未掲載)。脾臓の免疫表現型タイピングにおいて、MCTは、LY5+TCR+及びCD4+細胞の相対的な割合を大幅に増加させる。LY5-TCR-は、非B-、非T細胞である、好中球を表す。
【0138】
免疫抑制したマウスに与えられるとき、MCTは、シクロホスファミド単独と比べて、血液及び脾臓の免疫表現型タイピングにおいてLY5-TCR-(おそらく好中球)及びCD11+(マクロファージ)細胞の相対的な割合を増加させる。これらの細胞サブセットは、骨髄性細胞前駆体に由来する(表13)。
【0139】
【表12】
【0140】
【表13】
【0141】
実施例27:化学的保護の検討:免疫表現型タイピング・アッセイ
トリミリスチン、トリラウリン、カプリン酸及びカプロン酸ナトリウムの免疫表現型タイピングを、実施例26に記載のプロトコールに従って行った。
【0142】
表14は、血液及び脾臓の免疫表現型タイピングに対するこれらのMCT類似体の効果を表す。血液において、トリミリスチンとトリラウリンは、シクロホスファミド単独と比べて、顕著な影響を与えない。しかし脾臓において、トリミリスチンとトリラウリンが、CD11+の相対的な割合を高める。さらに、トリラウリンが、LY5-TCR-及びNK+細胞サブセットの顕著な増加を誘発する。
【0143】
興味深いことに、血液において、カプリン酸とカプロン酸ナトリウムが、LY5-TCR-の相対的な割合を大幅に増加させる。脾臓において、カプリン酸は、シクロホスファミド単独に比べて顕著な影響を与えない。
【0144】
【表14】
【0145】
実施例28:化学的保護研究:骨髄の免疫表現型タイピング
骨髄の免疫表現型タイピングに対するMCT、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウムの効果を、実施例26に記載のプロトコールによって評価した。シクロホスファミドによる処理は、検討した全てのサブセット(CD34+、CD13+、CD41+及びCD38+)の顕著な増加を誘発する。MCT又はカプリル酸ナトリウム又はカプリン酸ナトリウムの添加は、骨髄単球幹細胞、骨髄球及び前単球であるCD13+系統の数を増幅させる。CD13+の相対的な割合のこの増加は、シクロホスファミド単独と比べて顕著である。この結果は、MCT及び他の関連化合物が(先の実施例で例証されるような)骨髄細胞の数の顕著な増加を誘発し、さらに食作用細胞(PMN及び単球)の前駆細胞の相対的な割合をさらに高めることをはっきりと説明している。これは、細胞傷害性治療からの良好な回復又は病原菌に対する保護をもたらすかもしれない(表15)。
【0146】
【表15】
【0147】
実施例29:化学的保護
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するはトリデカノイルセリノール及びジデカノイルセリノールの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。
【0148】
表16で示されるように、トリデカノイルセリノールは、脾臓細胞数を大幅に高める。骨髄細胞数に対して顕著な効果は証明されなかった。
【0149】
【表16】
【0150】
実施例30:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するα-メチル・トリデカノイル-L-フコピラノースとβ-メチル・トリデカノイル-L-フコピラノースの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。
【0151】
表17で示されるように、β-メチル・トリデカノイル-L-フコピラノースが、シクロホスファミドで処理したマウスと比べて骨髄細胞数に対するわずかな(顕著ではない)活性を証明した。α-メチル・アノマーの活性の不足は、α-アルキルピラノシドの知られている不安定性の点から予想される。
【0152】
【表17】
【0153】
実施例31:化学的保護の検討
免疫細胞増殖又は保護のインビボにおける誘導に対するカプリン酸エチル及びカプリン酸N,N-ジメチルアセトアミド・エステルの効果を、実施例16に記載のプロトコールによって評価した。
【0154】
表18に示されるとおり、カプリン酸N,N-ジメチルアセトアミドだけで、骨髄細胞数を大幅に高める。脾臓細胞数に対する顕著な効果は証明されなかった。
【0155】
【表18】
【0156】
実施例32:抗腫瘍活性
雌の6〜8週齢のC57BL/6マウスに、ATCC(細胞培養の源、Dr. I. J. Fidler)由来の1x105のB16F10メラノーマ細胞を0日目に静中注射した。次に動物に、10 mg/kgのドキソルビシンを含むか又はそれを含まず、7、9、14及び16日目に、そしてMCT(25 μMole/マウス)を10及び17日目にi.v.注射した。マウスを、22日目に屠殺した。体重及び腫瘍量を記録した。連続した腫瘍量を、式0.4(axb2){式中、「a」は、主な腫瘍直径を、そして「b」は小さな垂直方向の直径である。}を使って、キャリパーによる2次元の直径寸法によって得た。
【0157】
この実験を、、MCTが悪影響を及ぼしたり、又は免疫の細胞よりむしろ癌細胞を保護したりしていないか確認するために行った。
【0158】
図10は、B16F10メラノーマ・モデルにおける、治療量以下の濃度のドキソルビシンと組み合わせたMCTの化学的保護効果及び抗腫瘍能力を表す。単独で使用されるとき、MCTは、治療量以下の濃度のドキソルビシン(T/C約25%減少)と同じ位の腫瘍量のわずかな減少(T/C約20%)を誘発する。MCTをドキソルビシンと組み合わせて使用するとき、相加効果が観察される(T/C約45〜50%)。これらの結果は、MCTを治療量以下の濃度の細胞傷害性薬物と組み合わせるとき、治療のための活性を達成することが可能であることを示す。
【0159】
実施例33:抗腫瘍活性
同系腫瘍DMBA3(DA-3、乳癌モデル)は、雌BALB/cマウスの7,12-ジメチルベンズアントラセンによって処理した新生物発生前病変から生じた。DA-3細胞を、プラスチック・フラスコ内の0.1 mMの非必須アミノ酸、0.1 μMのピルビン酸ナトリウム、2 mMのL-グルタミン及び100 μg/mlの硫酸ゲンタマイシンを含むRPMI-1640中、単層培養として培養した。これにさらに50 μMの2-メルカプトエタノール及び10%のウシ胎仔血清を補った。6〜8週齢のBALB/cマウスに局所性の腫瘍を産生するために、DA-3腫瘍を、5x105の生きた腫瘍細胞のs.c.接種によりインビボにおいて連続的に継代した。次に動物を、腫瘍の痕跡について触診によって連続的にモニターした。連続した腫瘍量を、式0.4(axb2){式中、「a」は、主な腫瘍直径を、そして「b」は小さな垂直方向の直径である。}を使って、キャリパーによる2次元の直径寸法によって得た。腫瘍は概して、接種以後7〜10日で認識できた。
【0160】
DA-3腫瘍モデルにおいて、シクロホスファミド(CY、100 mg/kg)、そしてタキソテール(TX、20 mg/kg)との組み合わせたMCTの抗腫瘍能力及び保護の評価のために、2つの処理投薬計画を使用した。BABL/cマウスに対し、0日目に腫瘍細胞を注射した。MCTによる処理を、9及び16日目の単回ボーラス注射としてのi.v.投与されたCY又はTXによる処理前に、6、7及び8日目;13、14及び15日目;20、21及び23日目にosにより行われた。体重と腫瘍量を、4日目から23日目までモニターした。23日目に、全ての動物を屠殺した。%T/C(対照に対する処理)を、100を掛けた、対照群のそれぞれの値により割られた処理群の停止日での腫瘍量の比率として計算した。NCI基準によって、%T/Cが≦40%であるとき、産物が有効であるとみなされる。
【0161】
MCTが悪影響を及ぼしたり、免疫細胞よりむしろ癌細胞を保護していないか確認するためにこの実験を実施した。図11は、DA-3乳癌モデルにおいて、治療量以下の濃度のCY及びTXと組み合わせたMCTの化学的保護効果及び抗腫瘍能力を示す。MCTは、対照と比べての腫瘍量のわずかな減少(T/C約18%)を誘発する。MCTがCY又はTXと組み合わせて使用されるとき、腫瘍量の増悪は観察されない。しかし、CYと組み合わせて使用されるとき、治療としての応答が観察される(T/C=39.4%)。これらの結果は、MCTを治療量以下の濃度のCYと組み合わせたときに、治療のための活性が得られることを示す。この効果は、MCT処理した動物の免疫細胞の能力の全体的な増加によるかもしれない(図11及び表19)。
【0162】
【表19】
【0163】
実施例34:抗腫瘍活性
抗腫瘍及び化学的保護能力を、治療のための濃度の細胞傷害性薬物(シクロホスファミド、200 mg/kg;タキソテール、30 mg/kg)の使用を除いて、実施例30に記載のプロトコールにより評価した。
【0164】
MCTが悪影響を及ぼしたり、又は免疫細胞よりむしろ癌細胞を保護していないか確認するために、この実験を行った。図12は、DA-3乳癌モデルにおいて、治療濃度のCY及びTXと組み合わせたMCTの化学的保護効果及び抗腫瘍能力を示す。MCTは、対照と比べての腫瘍量のわずかな減少を誘発する。MCTがCY又はTXと組み合わせて使用されるとき、腫瘍量の増悪は観察されない。CY又はCY+MCTにより処理されるとき、腫瘍量の顕著な減少が観察される。さらに、腫瘍量の減少の顕著な応答は、対照マウス(p=0.1211)と比べて顕著ではないTX単独に比べて、TXと組み合わせたMCTの処理(p<0.0327)により得られる(表20)。これらの結果は、MCTをわずかではない治療濃度のTXと組み合わせたときに治療のための活性が得られることを示す。この効果は、MCT処理した動物の免疫細胞の能力の全体的な増加によるかもしれない。
【0165】
【表20】
【0166】
当該文書中に引用した全ての参考文献を、その全体について本明細書中に援用する。
【0167】
本明細書中に記載の組成物及び方法の修飾及び変更は、先の記述から当業者にとって明白である。そのような修飾及び変異が、添付した要求の範囲内に入ることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者の造血刺激方法であって、以下の式(I)によって表される1以上の化合物、以下の式(II)によって表される1以上の化合物、以下の式(III)によって表される1以上の化合物:
【化1】
{式中、
R1が、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和C7-C11アルキル基であり;
A及びBが、水素又は
【化2】
であり、かつ、AはBと必ずしも同一ではなく;そして
Xが、ヒドロキシル基、金属モノ−若しくはジカチオン性対イオンをもつオキシ・アニオン、又は直鎖若しくは分岐のC1-C4アルキル部分をもつアルコキシ基である。}又はその組み合わせ物を含む組成物の薬理学的有効量を上記患者に投与することを含む上記方法。
【請求項2】
前記組成物が、中鎖トリグリセリド(MCTs)である式(I){式中、A=B=R1が、それぞれ直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和C7及びC9アルキル基である。}によって表される少なくとも2つの化合物の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物が2種類のトリグリセリドから成る、請求項2に記載の方法であって、ここで、第1のMCTが、式(I)によって表され、かつ、A=B=R1=CH3(CH2)6-であり、そして第2のMCTが式(I)によって表され、かつ、A=B=R1=CH3(CH2)8-である上記方法。
【請求項4】
前記組成物が、各々0.1%〜3%の、式(I)によって表され、かつ、A=B=R1=CH3(CH2)4-である第3の化合物、及び式(I)によって表され、かつ、A=B=R1=CH3(CH2)10-である第4の化合物をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物が、以下の式:
【化3】
によって表されるC8及びC10脂肪酸トリグリセリドの4つの幾何異性体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、式(II)によって表され、かつ、XがOHである1以上の化合物を含む、請求項1に記載の方法であって、上記化合物が中鎖脂肪酸である上記方法。
【請求項7】
前記組成物が、式(III)によって表され、かつ、XがOHである1以上の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、式(II)によって表され、かつ、Xが、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムから成る群から選ばれる金属対イオンをもつオキシ・アニオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、式(III)によって表され、かつ、Xが、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムから成る群から選ばれる金属対イオンをもつオキシ・アニオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記1以上の化合物が、カプリル酸又はカプリン酸である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記1以上の化合物が、カプリル酸ナトリウム又はカプリン酸ナトリウムである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記1以上の化合物が、カプリル酸カルシウム又はカプリン酸カルシウムである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記1以上の化合物が、カプリル酸トリグリセリド又はカプリン酸トリグリセリドである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1以上の化合物が、血中で1 μMより高い濃度をもつ、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
造血を刺激することで、前記患者の化学療法に起因する骨髄抑制を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
造血を刺激することで、前記患者の放射線療法に起因する骨髄抑制を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
造血を刺激することで、前記患者の慢性の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
造血を刺激することで、前記患者の一過性の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
造血を刺激することで、血液の病気に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
造血を刺激することで、前記患者の薬物によって誘発された好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
造血を刺激することで、栄養欠乏症に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
造血を刺激することで、感染症に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
造血を刺激することで、放射線療法に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
造血を刺激することで、前記患者の外傷を治癒させる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
造血を刺激することで、前記患者の好中球の動員を誘発して骨髄移植を容易にする、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
薬理学的有効量のヒト・コロニー刺激因子の同時投与をさらに含む、請求項1に記載の方法であって、上記薬理学的有効量が、1以上の化合物の存在によって軽減される上記方法。
【請求項27】
前記コロニー刺激因子が、G-CSF又はGM-CSFである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
薬理学的有効量のヒト・コロニー刺激因子の個々の投与をさらに含む、請求項1に記載の方法であって、上記投与が、1以上の化合物の投与前及び/又は後、しかし同時投与ではない上記方法。
【請求項29】
前記コロニー刺激因子が、G-CSF又はGM-CSFである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
薬理学的有効量のヒト・サイトカインの同時投与をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記サイトカインが、インターロイキン2又はインターロイキン15である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
カプリル酸トリグリセリド又はカプリン酸トリグリセリドのaza類似体を含む化合物であって、上記aza類似体が、1,2,3-O,N,O-トリオクタノイルセリノール又は1,2,3-O,N,O-トリデカノイルセリノールである上記化合物。
【請求項33】
1以上の任意の希釈剤、担体及び/又は賦形剤と関連して、そして医薬製剤を提供するのに十分な量又は投与量の、以下の式(IV):
【化4】
によって表される化合物。
【請求項34】
1以上の任意の希釈剤、担体及び/又は賦形剤と関連して、そして医薬製剤を提供するのに十分な量又は投与量の、以下の式(V):
【化5】
によって表される化合物。
【請求項35】
1以上の任意の希釈剤、担体及び/又は賦形剤と関連して、そしてインビボにおける分解によって請求項1に記載の薬物が放出される医薬製剤を提供するのに十分な量又は投与量の、以下の式(IV):
【化6】
によって表される化合物。
【請求項36】
そのような治療を必要とする患者の造血刺激方法であって、薬理学的有効量の、請求項32〜35のいずれか1項に記載の1以上の化合物を投与することを含む上記方法。
【請求項37】
造血を刺激することで、前記患者の化学療法に起因する骨髄抑制を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
造血を刺激することで、前記患者の放射線療法に起因する骨髄抑制を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
造血を刺激することで、前記患者の慢性の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
造血を刺激することで、前記患者の一過性の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
造血を刺激することで、血液の病気に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
造血を刺激することで、前記患者の薬物によって誘発された好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
造血を刺激することで、栄養欠乏症に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
造血を刺激することで、感染症に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
造血を刺激することで、放射線療法に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
造血を刺激することで、前記患者の外傷を治癒させる、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
造血を刺激することで、前記患者の好中球の動員を誘発して骨髄移植を容易にする、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
薬理学的有効量のヒト・コロニー刺激因子の同時投与をさらに含む、請求項36に記載の方法であって、上記薬理学的有効量が、1以上の化合物の存在によって軽減される上記方法。
【請求項49】
前記コロニー刺激因子が、G-CSF又はGM-CSFである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
薬理学的有効量のヒト・コロニー刺激因子の個々の投与をさらに含む、請求項36に記載の方法であって、上記投与が、1以上の化合物の投与前及び/又は後、しかし同時投与ではない上記方法。
【請求項51】
前記コロニー刺激因子が、G-CSF又はGM-CSFである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
薬理学的有効量のヒト・サイトカインの同時投与をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項53】
前記サイトカインが、インターロイキン2又はインターロイキン15である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
造血を刺激するための薬剤の製造のための1以上の化合物の使用であって、当該1以上の化合物が、以下の式(I)、(II)、(III):
【化7】
{式中、
R1が、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和C7-C11アルキル基であり;
A及びBが、独立に水素又は
【化8】
であり、かつ、AはBと必ずしも同一ではなく;そして
Xが、ヒドロキシル基、金属モノ−若しくはジカチオン性対イオンをもつオキシ・アニオン、又は直鎖若しくは分岐C1-C4アルキル部分をもつアルコキシ基である。}により表される化合物及びその組み合わせ物から成る群から選ばれる上記使用。
【請求項55】
造血を刺激することで、輸送又は移動によるストレスに起因する、動物の一過性の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
造血を刺激することで、輸送又は移動によるストレスに起因する、動物の一過性の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項1】
治療を必要とする患者の造血刺激方法であって、以下の式(I)によって表される1以上の化合物、以下の式(II)によって表される1以上の化合物、以下の式(III)によって表される1以上の化合物:
【化1】
{式中、
R1が、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和C7-C11アルキル基であり;
A及びBが、水素又は
【化2】
であり、かつ、AはBと必ずしも同一ではなく;そして
Xが、ヒドロキシル基、金属モノ−若しくはジカチオン性対イオンをもつオキシ・アニオン、又は直鎖若しくは分岐のC1-C4アルキル部分をもつアルコキシ基である。}又はその組み合わせ物を含む組成物の薬理学的有効量を上記患者に投与することを含む上記方法。
【請求項2】
前記組成物が、中鎖トリグリセリド(MCTs)である式(I){式中、A=B=R1が、それぞれ直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和C7及びC9アルキル基である。}によって表される少なくとも2つの化合物の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物が2種類のトリグリセリドから成る、請求項2に記載の方法であって、ここで、第1のMCTが、式(I)によって表され、かつ、A=B=R1=CH3(CH2)6-であり、そして第2のMCTが式(I)によって表され、かつ、A=B=R1=CH3(CH2)8-である上記方法。
【請求項4】
前記組成物が、各々0.1%〜3%の、式(I)によって表され、かつ、A=B=R1=CH3(CH2)4-である第3の化合物、及び式(I)によって表され、かつ、A=B=R1=CH3(CH2)10-である第4の化合物をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物が、以下の式:
【化3】
によって表されるC8及びC10脂肪酸トリグリセリドの4つの幾何異性体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、式(II)によって表され、かつ、XがOHである1以上の化合物を含む、請求項1に記載の方法であって、上記化合物が中鎖脂肪酸である上記方法。
【請求項7】
前記組成物が、式(III)によって表され、かつ、XがOHである1以上の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、式(II)によって表され、かつ、Xが、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムから成る群から選ばれる金属対イオンをもつオキシ・アニオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、式(III)によって表され、かつ、Xが、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムから成る群から選ばれる金属対イオンをもつオキシ・アニオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記1以上の化合物が、カプリル酸又はカプリン酸である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記1以上の化合物が、カプリル酸ナトリウム又はカプリン酸ナトリウムである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記1以上の化合物が、カプリル酸カルシウム又はカプリン酸カルシウムである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記1以上の化合物が、カプリル酸トリグリセリド又はカプリン酸トリグリセリドである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1以上の化合物が、血中で1 μMより高い濃度をもつ、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
造血を刺激することで、前記患者の化学療法に起因する骨髄抑制を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
造血を刺激することで、前記患者の放射線療法に起因する骨髄抑制を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
造血を刺激することで、前記患者の慢性の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
造血を刺激することで、前記患者の一過性の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
造血を刺激することで、血液の病気に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
造血を刺激することで、前記患者の薬物によって誘発された好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
造血を刺激することで、栄養欠乏症に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
造血を刺激することで、感染症に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
造血を刺激することで、放射線療法に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
造血を刺激することで、前記患者の外傷を治癒させる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
造血を刺激することで、前記患者の好中球の動員を誘発して骨髄移植を容易にする、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
薬理学的有効量のヒト・コロニー刺激因子の同時投与をさらに含む、請求項1に記載の方法であって、上記薬理学的有効量が、1以上の化合物の存在によって軽減される上記方法。
【請求項27】
前記コロニー刺激因子が、G-CSF又はGM-CSFである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
薬理学的有効量のヒト・コロニー刺激因子の個々の投与をさらに含む、請求項1に記載の方法であって、上記投与が、1以上の化合物の投与前及び/又は後、しかし同時投与ではない上記方法。
【請求項29】
前記コロニー刺激因子が、G-CSF又はGM-CSFである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
薬理学的有効量のヒト・サイトカインの同時投与をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記サイトカインが、インターロイキン2又はインターロイキン15である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
カプリル酸トリグリセリド又はカプリン酸トリグリセリドのaza類似体を含む化合物であって、上記aza類似体が、1,2,3-O,N,O-トリオクタノイルセリノール又は1,2,3-O,N,O-トリデカノイルセリノールである上記化合物。
【請求項33】
1以上の任意の希釈剤、担体及び/又は賦形剤と関連して、そして医薬製剤を提供するのに十分な量又は投与量の、以下の式(IV):
【化4】
によって表される化合物。
【請求項34】
1以上の任意の希釈剤、担体及び/又は賦形剤と関連して、そして医薬製剤を提供するのに十分な量又は投与量の、以下の式(V):
【化5】
によって表される化合物。
【請求項35】
1以上の任意の希釈剤、担体及び/又は賦形剤と関連して、そしてインビボにおける分解によって請求項1に記載の薬物が放出される医薬製剤を提供するのに十分な量又は投与量の、以下の式(IV):
【化6】
によって表される化合物。
【請求項36】
そのような治療を必要とする患者の造血刺激方法であって、薬理学的有効量の、請求項32〜35のいずれか1項に記載の1以上の化合物を投与することを含む上記方法。
【請求項37】
造血を刺激することで、前記患者の化学療法に起因する骨髄抑制を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
造血を刺激することで、前記患者の放射線療法に起因する骨髄抑制を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
造血を刺激することで、前記患者の慢性の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
造血を刺激することで、前記患者の一過性の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
造血を刺激することで、血液の病気に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
造血を刺激することで、前記患者の薬物によって誘発された好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
造血を刺激することで、栄養欠乏症に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
造血を刺激することで、感染症に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
造血を刺激することで、放射線療法に起因する前記患者の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
造血を刺激することで、前記患者の外傷を治癒させる、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
造血を刺激することで、前記患者の好中球の動員を誘発して骨髄移植を容易にする、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
薬理学的有効量のヒト・コロニー刺激因子の同時投与をさらに含む、請求項36に記載の方法であって、上記薬理学的有効量が、1以上の化合物の存在によって軽減される上記方法。
【請求項49】
前記コロニー刺激因子が、G-CSF又はGM-CSFである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
薬理学的有効量のヒト・コロニー刺激因子の個々の投与をさらに含む、請求項36に記載の方法であって、上記投与が、1以上の化合物の投与前及び/又は後、しかし同時投与ではない上記方法。
【請求項51】
前記コロニー刺激因子が、G-CSF又はGM-CSFである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
薬理学的有効量のヒト・サイトカインの同時投与をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項53】
前記サイトカインが、インターロイキン2又はインターロイキン15である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
造血を刺激するための薬剤の製造のための1以上の化合物の使用であって、当該1以上の化合物が、以下の式(I)、(II)、(III):
【化7】
{式中、
R1が、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和C7-C11アルキル基であり;
A及びBが、独立に水素又は
【化8】
であり、かつ、AはBと必ずしも同一ではなく;そして
Xが、ヒドロキシル基、金属モノ−若しくはジカチオン性対イオンをもつオキシ・アニオン、又は直鎖若しくは分岐C1-C4アルキル部分をもつアルコキシ基である。}により表される化合物及びその組み合わせ物から成る群から選ばれる上記使用。
【請求項55】
造血を刺激することで、輸送又は移動によるストレスに起因する、動物の一過性の好中球減少症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
造血を刺激することで、輸送又は移動によるストレスに起因する、動物の一過性の好中球減少症を治療する、請求項36に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−53135(P2010−53135A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−272679(P2009−272679)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【分割の表示】特願2002−580924(P2002−580924)の分割
【原出願日】平成14年4月18日(2002.4.18)
【出願人】(501475952)プロメティック、バイオサイエンシーズ、インコーポレーテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】PROMETIC BIOSCIENCES INC.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272679(P2009−272679)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【分割の表示】特願2002−580924(P2002−580924)の分割
【原出願日】平成14年4月18日(2002.4.18)
【出願人】(501475952)プロメティック、バイオサイエンシーズ、インコーポレーテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】PROMETIC BIOSCIENCES INC.
【Fターム(参考)】
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