説明

好酸球増加症候群のためのスタウロスポリン誘導体

本発明はFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置のための、特に好酸球増加症候群およびイマチニブに対する耐性を有する好酸球増加症候群の治療的および/または予防的処置のための薬物の製造のためのスタウロスポリン誘導体の使用、ならびに好酸球増加症候群およびイマチニブに対する耐性を有する好酸球増加症候群またはFIPL1−PDGFRaもしくはPDGFRαを活性化する類似の変異に関連するその他の疾患を処置する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置のための、特に好酸球増加症候群およびイマチニブ耐性を伴う好酸球増加症候群の治療的および/または予防的処置のための薬物の製造のためのスタウロスポリン誘導体(本明細書以降:“スタウロスポリン誘導体”)の使用、ならびに好酸球増加症候群およびイマチニブ耐性を伴う好酸球増加症候群またはFIPL1−PDGFRもしくはPDGFRαを活性化する類似する変異に関連するその他の疾患を処置する方法に関する。
【0002】
本発明は特にFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置のための医薬組成物の製造のための式:
【化1】

または
【化2】

〔式中、(II)は化合物の(I)の部分的水素化誘導体である〕
または
【化3】

または
【化4】

または
【化5】

または
【化6】

〔式中、RおよびRは互いに別個に、非置換もしくは置換アルキル、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、アミノ、一もしくは二置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−一もしくはN,N−二置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−一もしくはN,N−二置換されたアミノスルホニルであり;
nおよびmは互いに別個に、0を含んで0から4を含んで4までの数字であり;
n’およびm’は互いに別個に、0を含んで0から4を含んで4までの数字であり;
、R、RおよびR10は互いに別個に、水素、−O、炭素原子30個までのアシル、各々の場合に炭素原子29個までの脂肪族、炭素環式もしくは炭素環式−脂肪族ラジカル、各々の場合に炭素原子20個までの、および各々の場合にヘテロ原子9個までの複素環式もしくは複素環式−脂肪族ラジカル、炭素原子30個までのアシルであり、ここでRは存在しないでよいか;
またはRが炭素原子30個までのアシルである場合、Rはアシルではなく;
が存在しない場合、pは0であるか、またはRおよびRが双方共に存在する場合、1であり、そして各々の場合前記したラジカルの1個であり;
は水素、各々の場合に炭素原子29個までの脂肪族、炭素環式、もしくは炭素環式−脂肪族ラジカル、または各々の場合に炭素原子20個までの、および各々の場合にヘテロ原子9個までの複素環式もしくは複素環式−脂肪族ラジカル、または炭素原子30個までのアシルであり;
、RおよびRはアシルもしくは−(低級アルキル)−アシル、非置換もしくは置換アルキル、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、アミノ、一もしくは二置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ、カルボニル、カルボニルジオキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−一もしくはN,N−二置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−一もしくはN,N−二置換アミノスルホニルであり;
Xは2個の水素原子;1個の水素原子およびヒドロキシ;O;または水素および低級アルコキシを表し;
Zは水素または低級アルキルを表し;
そして波線で示された2個の結合のいずれかは環Aでは存在せず、そして4個の水素原子により置換され、ならびに環Bの2本の波線は各々、それぞれの平行な結合と一緒に二重結合を示すか;
または波線で示された2個の結合は環Bでは存在せず、そして全部で4個の水素原子により置換され、ならびに環Aの2本の波線は各々、それぞれの平行な結合と一緒に二重結合を示すか;
または環Aおよび環Bの双方の4個の波線結合の全てが存在せず、そして全部で8個の水素原子により置換される〕
のスタウロスポリン誘導体または、少なくとも1個の塩形成基が存在する場合、その塩の使用に関する。
【0003】
前記および後記で用いる一般用語および定義は、好ましくは以下の意味を有する:
接頭語の「低級」は関連するラジカルが好ましくは最高7個を含む7個までの炭素原子、特に最高4個を含む4個までの炭素原子を有することを示す。
低級アルキルは特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、またはtert−ブチルであり、そしてペンチル、ヘキシル、またはヘプチルでもある。
【0004】
非置換または置換アルキルは好ましくはC−C20アルキル、特に低級アルキル、典型的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルであり、これは非置換であるかまたは特にフッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素のようなハロゲン、フェニルもしくはナフチルのようなC−C14アリール、ヒドロキシ、低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシもしくはフェニルオキシのようなエーテル化ヒドロキシ、低級アルカノイルオキシもしくはベンゾイルオキシのようなエステル化ヒドロキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、フェニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−(フェニル−低級アルキル)アミノのような一もしくは二置換アミノ、シアノ、メルカプト、低級アルキルチオのような置換メルカプト、カルボキシ、低級アルコキシカルボニルのようなエステル化カルボキシ、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイルもしくはN,N−ジ−低級アルキルカルバモイルのようなN−一もしくはN,N−二置換カルバモイル、スルホ、低級アルカンスルホニルもしくは低級アルコキシスルホニルのような置換スルホ、アミノスルホニルまたはN−低級アルキルアミノスルホニルもしくはN,N−ジ−低級アルキルアミノスルホニルのようなN−一もしくはN,N−二置換アミノスルホニルにより置換されている。
【0005】
ハロゲンは好ましくはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、特にフッ素または塩素である。
エーテル化ヒドロキシは特に低級アルコキシ、フェニルオキシのようなC−C14アリールオキシまたはベンジルオキシのようなC−C14アリール−低級アルコキシである。
エステル化ヒドロキシは好ましくは低級アルカノイルオキシまたはベンゾイルオキシのようなC−C14アリールカルボニルオキシである。
【0006】
一または二置換アミノは特に低級アルキル、C−C14アリール、C−C14アリール−低級アルキル、低級アルカノイルまたはC−C12アリールカルボニルにより一置換または二置換されたアミノである。
置換メルカプトは特に低級アルキルチオ、C−C14アリールチオ、C−C14アリール−低級アルキルチオ、低級アルカノイルチオ、またはC−C14アリール−低級アルカノイルチオである。
エステル化カルボキシは特に低級アルコキシカルボニル、C−C14アリール−低級アルコキシカルボニルまたはC−C14アリールオキシカルボニルである。
【0007】
N−一またはN,N−二置換カルバモイルは特に低級アルキル、C−C14アリールまたはC−C14アリール−低級アルキルによりN−一置換またはN,N−二置換されたカルバモイルである。
置換スルホニルは特にトルエンスルホニルのようなC−C14アリールスルホニル、C−C14アリール−低級アルカンスルホニルまたは低級アルカンスルホニルである。
N−一またはN,N−二置換アミノスルホニルは特に低級アルキル、C−C14アリールまたはC−C14アリール−低級アルキルによりN−一置換またはN,N−二置換されたアミノスルホニルである。
【0008】
−C14アリールはフェニル、ナフチル、フルオレニルまたはインデニルのような環系に6から14個の炭素原子を有するアリールラジカルであり、これは非置換であるかまたは特にフッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素のようなハロゲン、フェニルもしくはナフチル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシ、フェニルオキシ、低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、フェニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−(フェニル−低級アルキル)アミノ、シアノ、メルカプト、低級アルキルチオ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキルカルバモイル、スルホ、低級アルカンスルホニル、低級アルコキシスルホニル、アミノスルホニル、N−低級アルキルアミノスルホニル、またはN,N−ジ−低級アルキルアミノスルホニルにより置換されている。
指数nおよびmは各々の場合で好ましくは1、2または特に0である。一般的に、各々の場合でnおよびmが0(ゼロ)である式Iの化合物が特に好ましい。
【0009】
非環式置換基により置換され、そして好ましくは最高18個、特に最高12個、および概して7個を超えない炭素原子を有する、炭素原子29個までの脂肪族炭水化物ラジカルR、R、RまたはR10は飽和または不飽和であり、そして特に非置換であるか、または非環式置換基により置換された直鎖状もしくは分岐した低級アルキル、低級アルケニル、低級アルカジエニル、または低級アルキニルラジカルでよい。低級アルキルは例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、そしてまたn−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシルおよびn−ヘプチルであり;低級アルケニルは例えば、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−または3−メタリルおよび2−または3−ブテニルであり;低級アルカジエニルは例えば1−ペンタ−2,4−ジエニルであり;低級アルキニルは例えばプロパルギルまたは2−ブチニルである。対応する不飽和ラジカルでは、二重結合は特に遊離原子価に関してα位よりも高位に位置する。置換基は特に後記でRの置換基として定義されるアシルラジカル、好ましくはカルボキシもしくは低級アルコキシカルボニル、シアノまたはジ−低級アルキルアミノのような遊離またはエステル化カルボキシである。
【0010】
各々の場合に炭素原子29個までの炭素環式または炭素環式−脂肪族ラジカルR、R、RまたはR10は特に芳香族、脂環式、脂環式−脂肪族、または芳香族−脂肪族ラジカルであり、これは非置換形態で存在するか、または後記でRの置換基と称されるラジカルにより置換されているかのいずれかである。芳香族ラジカル(アリールラジカル)RまたはRはことさら特にフェニル、また1−または2−ナフチルのようなナフチル、特に4−ビフェニリルのようなビフェニリル、およびまたアントリル、フルオレニルおよびアズレニル、ならびに1個またはそれより多い飽和環を有するその芳香族類似体であり、これは非置換形態で存在するか、または後記でRの置換基と称されるラジカルにより置換されているかのいずれかである。好ましい芳香族−脂肪族ラジカルはアリール−低級アルキル−およびアリール−低級アルケニルラジカル、例えば例えばベンジル、フェネチル、1−、2−または3−フェニルプロピル、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル)、トリチル、およびシンナミルのような末端フェニルラジカルを有するフェニル−低級アルキルまたはフェニル−低級アルケニル、およびまた1−または2−ナフチルメチルである。低級アルキルのような非環式ラジカルを担持するアリールラジカルでは様々に位置したメチルラジカルを有するo−、m−およびp−トリルおよびキシリルラジカルを特記する。
【0011】
炭素原子29個までを有するシクロ脂肪族ラジカルR、R、RまたはR10は特に置換または好ましくは非置換単、二または多環式シクロアルキル−、シクロアルケニル−、またはシクロアルカジエニルラジカルである。好ましいのは、最高14個、特に12個の環炭素原子を有するラジカルおよび3−から8−、好ましくは5−から7−、ならびにことさら特に6員環を有するラジカルであり、これはまた、1個またはそれより多い、例えば2個の脂肪族炭化水素ラジカル、例えば前記のもの、特に低級アルキルラジカル、またはその他のシクロ脂肪族ラジカル等を、置換基として担持できる。好ましい置換基はRとして後記の非環式置換基である。
【0012】
炭素原子29個までを有する脂環式−脂肪族ラジカルR、R、RまたはR10は非環式ラジカル、特に特にメチル、エチルおよびビニルのような最高7個、好ましくは最高4個の炭素原子を有するものが1個またはそれより多い、前記で定義したシクロ脂肪族ラジカルを担持するラジカルである。環および/または鎖が不飽和であるが、非芳香族性である、ならびに鎖の末端炭素原子で環を担持するシクロアルキル−低級アルキルラジカルおよびその類似体を特記する。好ましい置換基はRとして後記の非環式置換基である。
【0013】
各々炭素原子20個まで、および各々ヘテロ原子9個までを有する複素環式ラジカルR、R、RまたはR10は特に芳香族特性の単環式であるが、また二または多環式、アザ−、チア−、オキサ−、チアザ−、オキサザ−、ジアザ−、トリアザ−、またはテトラアザ環状ラジカルおよびこの型の対応する複素環式ラジカルでもあり、これは部分的またはことさら特に全体的に飽和しており、これらのラジカルは、必要な場合、さらに非環式、炭素環式、または複素環式ラジカルを担持する可能性があり、そして/または官能基、好ましくは脂肪族炭化水素ラジカルの置換基として前記したものにより一、二または多置換されている可能性がある。ことさら特にこれらは2−アジリジニルのような窒素、酸素またはイオウ原子を有する非置換または置換単環式ラジカル、および特にピリル、例えば2−ピリルもしくは3−ピリル、ピリジル、例えば2−、3−、もしくは4−ピリジル、およびまたチエニル、例えば2−もしくは3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリルのようなこの型の芳香族ラジカルであり;酸素、イオウ、または窒素原子を有する類似する二環式ラジカルは例えば、インドリル、典型的には2−もしくは3−インドリル、キノリル、典型的には2−もしくは4−キノリル、イソキノリル、典型的には3−もしくは5−イソキノリル、ベンゾフラニル、典型的には2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的には3−クロメニル、またはベンゾチエニル、典型的には2−もしくは3−ベンゾチエニルであり;数個のヘテロ原子を有する好ましい単環式および二環式ラジカルは例えばイミダゾリル、典型的には2−もしくは4−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的には2−もしくは4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的には2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的には3−イソオキサゾリル、またはチアゾリル、典型的には2−チアゾリル、およびベンズイミダゾリル、典型的には2−ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、典型的には2−ベンゾオキサゾリル、またはキナゾリル、典型的には2−キナゾリニルである。2−テトラヒドロフリル、2−または3−ピロリジニル、2−、3−、または4−ピペリジル、およびまた2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルおよびN−モノ−またはN,N’−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニルラジカルのような、適切な部分的にまたは特に完全に飽和した類似したラジカルもまた考慮され得る。これらのラジカルはまた1個またはそれより多い非環式、炭素環式、または複素環式ラジカル、特に本明細書で前記したものを担持し得る。複素環式ラジカルRまたはRの遊離原子価はその炭素原子の1個から生じたものでなければならない。ヘテロシクリルは非置換か、または1個またはそれより多い、好ましくは1または2個の、Rとして後記の置換基で置換され得る。
【0014】
複素環式−脂肪族ラジカルR、R、RまたはR10は、1、2個またはそれより多い複素環式ラジカル、例えば前段落で挙げたものを担持し、該複素環式環がその窒素原子の1個によって脂肪族鎖に結合している可能性もある、特に最高7個、好ましくは最高4個の炭素原子を有する、特に低級アルキルラジカルである。複素環式−脂肪族ラジカルRは、例えばイミダゾール−1−イルメチル、4−メチルピペラジン−1−イルメチル、ピペラジン−1−イルメチル、2−(モルホリン−4−イル)エチルおよびまたピリド−3−イルメチルである。ヘテロシクリルは非置換であるかまたは1個またはそれより多い、好ましくは1または2個の、Rとして後記の置換基により置換され得る。
【0015】
各々炭素原子20個まで、および各々ヘテロ原子10個までを有するヘテロ脂肪族ラジカルR、R、RまたはR10は、1、2個またはそれより多い炭素原子の代わりに同一のまたは異なる、特に酸素、イオウおよび窒素のようなヘテロ原子を含有する脂肪族ラジカルである。ヘテロ脂肪族ラジカルRの特に好ましい配列は、1個またはそれより多い炭素原子が好ましくは直鎖状アルキルで、反復基、必要であれば多反復基(O−CH−CH−)q(ここでq=1から7)を形成するように、好ましくは数個の(特に2個の)炭素原子により互いに分離されている酸素原子により置換されているオキサアルキルラジカルの形態をとる。
【0016】
、R、RまたはR10として特に好ましいのは、アシルは別として、低級アルキル、特にメチルもしくはエチル;低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、特にメトキシカルボニルメチルもしくは2−(tert−ブトキシカルボニル)エチル;カルボキシ−低級アルキル、特にカルボキシメチルもしくは2−カルボキシエチル;またはシアノ−低級アルキル、特に2−シアノエチルである。
炭素原子30個までを有するアシルラジカルR、R、R、R、R、R、またはR10は、必要な場合官能的に修飾されているカルボン酸、必要な場合エステル化されている有機スルホン酸、またはピロもしくはオルトリン酸のようなリン酸に由来する。
【0017】
Acと称され、そして必要な場合官能的に修飾されているカルボン酸に由来するアシルは特に部分式Y−C(=W)−〔式中、Wは酸素、イオウ、またはイミノであり、そしてYは水素、炭素原子29個までを有するヒドロカルビルR、ヒドロカルビルオキシR−O−、アミノ基または置換アミノ基、特に式RHN−またはRN−(式中、Rラジカルは同一であるか、または互いに異なっていてよい)の1個である〕の1個である。
【0018】
ヒドロカルビル(炭化水素ラジカル)Rは各々炭素原子29個まで、特に炭素原子18個まで、そして好ましくは12個までを有する非環式(脂肪族)、炭素環式、または炭素環式−非環式炭化水素ラジカルであり、そして飽和または不飽和であり、非置換であるかまたは置換されている。1、2個またはそれより多い炭素原子の代わりに、これは非環式および/または環式部分に、特に酸素、イオウ、および窒素のような同一または異なるヘテロ原子を含有し得る;後者の場合、複素環式ラジカル(ヘテロシクリルラジカル)または複素環式−非環式ラジカルとして記載される。
【0019】
不飽和ラジカルは、1個またはそれより多い、特に共役および/または孤立した多重結合(二重または三重結合)を含有するものである。環状ラジカルなる用語はまた共役した二重結合を有する芳香族および非芳香族ラジカル、例えば少なくとも1個の6員炭素環式または5−から8員複素環式環が最高数の非累積二重結合を含有するものを含む。少なくとも1個の環が6員芳香環(すなわちベンゼン環)として存在する炭素環式ラジカルをアリールラジカルとして定義する。
【0020】
非環式非置換炭化水素ラジカルRは特に直鎖状または分岐した低級アルキル−、低級アルケニル−、低級アルカジエニル−、または低級アルキニルラジカルである。低級アルキルRは例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、およびまたn−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシルおよびn−ヘプチルであり;低級アルケニルは例えばアリル、プロペニル、イソプロペニル、2−または3−メタリルおよび2−または3−ブテニルであり;低級アルカジエニルは例えば1−ペンタ−2,4−ジエニルであり;低級アルキニルは例えばプロパルギルまたは2−ブチニルである。対応する不飽和ラジカルでは、二重結合は特に遊離原子価に関してα位よりも高位に位置する。
【0021】
炭素環式炭化水素ラジカルRは特に単、二もしくは多環式シクロアルキル−、シクロアルケニル−、もしくはシクロアルカジエニルラジカル、または対応するアリールラジカルである。1個もしくはそれより多い、例えば2個の非環式ラジカル、例えば前記したもの、特に低級アルキルラジカル、またはその他の炭素環式ラジカルを担持することもできる、最高14個、特に12個の環−炭素原子、ならびに3−から8−、好ましくは5−から7−、およびことさら特に6員環を有するラジカルが好ましい。炭素環式−非環式ラジカルは、特に最高7個、好ましくは最高4個の炭素原子を有する特にメチル、エチルおよびビニルのような非環式ラジカルが、前記の定義の、1個またはそれより炭素環式の、必要であれば芳香族の、ラジカルを担持するものである。環および/または鎖が不飽和である、ならびに鎖の末端炭素原子で環を担持するシクロアルキル−低級およびアリール−低級アルキルラジカルならびにその類似体を特記する。
【0022】
シクロアルキルRは、ことさら特に3個から10個を含み10個までの炭素原子を有し、そして例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル、ならびにビシクロ[2,2,2]オクチル、2−ビシクロ[2,2,1]ヘプチル、およびアダマンチルであり、これはまた1、2個またはそれより多い、例えば低級、アルキルラジカル、特にメチルラジカルにより置換されてよく;シクロアルケニルは1−、2−、または3位に二重結合を担持する、例えば既に挙げた単環式シクロアルキルラジカルの1個である。シクロアルキル−低級アルキルまたは−低級アルケニルは前記したシクロアルキルラジカルの1個により置換された、例えば−メチル、−1−もしくは−2−エチル、−1−もしくは−2−ビニル、−1−、−2−もしくは−3−プロピルまたは−アリルであり、直鎖の末端で置換されたものが好ましい。
【0023】
アリールラジカルRはことさら特にフェニル、また1−または2−ナフチルのようなナフチル、特に4−ビフェニリルのようなビフェニリル、およびまたアントリル、フルオレニルおよびアズレニル、ならびに1個またはそれより多い飽和環を有するその芳香族類似体である。好ましいアリール−低級アルキルおよび−低級アルケニルラジカルは例えばベンジル、フェネチル、1−、2−、または3−フェニルプロピル、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル)、トリチル、およびシンナミルのような末端フェニルラジカルを有するフェニル−低級アルキルまたはフェニル−低級アルケニル、ならびにまた1−または2−ナフチルメチルである。アリールは非置換または置換され得る。
【0024】
複素環式−非環式ラジカルを含む複素環式ラジカルは、特に芳香族特性の単環式であるが、また二または多環式、アザ−、チア−、オキサ−、チアザ−、オキサザ−、ジアザ−、トリアザ−、またはテトラアザ環状ラジカル、ならびに部分的またはことさら特に全体的に飽和したこの型の対応する複素環式ラジカルでもあり;必要な場合、例えば前記した炭素環式またはアリールラジカルの場合に、これらのラジカルはさらに非環式、炭素環式、または複素環式ラジカルを担持し得て、そして/または官能基により一、二または多置換され得る。複素環式−非環式ラジカルの非環式部分は、例えば対応する炭素環式−非環式ラジカルに関して示した意味を有する。ことさら特にこれらは2−アジリジニルのような窒素、酸素またはイオウ原子を有する非置換または置換単環式ラジカル、および特にピロリル、例えば2−ピロリルもしくは3−ピロリル、ピリジル、例えば2−、3−、もしくは4−ピリジル、およびまたチエニル、例えば2−もしくは3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリルのようなこの型の芳香族ラジカルであり;酸素、イオウ、または窒素原子を有する類似する二環式ラジカルは例えば、インドリル、典型的には2−もしくは3−インドリル、キノリル、典型的には2−もしくは4−キノリル、イソキノリル、典型的には3−もしくは5−イソキノリル、ベンゾフラニル、典型的には2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的には3−クロメニル、またはベンゾチエニル、典型的には2−もしくは3−ベンゾチエニルであり;数個のヘテロ原子を有する好ましい単環式および二環式ラジカルは例えばイミダゾリル、典型的には2−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的には2−もしくは4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的には2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的には3−イソオキサゾリル、またはチアゾリル、典型的には2−チアゾリル、およびベンズイミダゾリル、典型的には2−ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、典型的には2−ベンゾオキサゾリル、またはキナゾリル、典型的には2−キナゾリニルである。2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−または3−ピロリジル、2−、3−、または4−ピペリジル、およびまた2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルおよびN,N’−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニルラジカルのような、適切な部分的にまたは特に完全に飽和した類似したラジカルもまた考慮され得る。これらのラジカルはまた1個またはそれより多い非環式、炭素環式、または複素環式ラジカル、特に本明細書で前記したものを担持し得る。複素環式−非環式ラジカルは特に最高7個、好ましくは最高4個の炭素原子を有する非環式ラジカル、例えば前記したものに由来し、そして1、2個またはそれより多い複素環式ラジカル、例えば前記したものを担持でき、その環はその窒素原子の1個によって脂肪族鎖に結合する可能性もある。
【0025】
既に記載したように、ヒドロカルビル(ヘテロシクリルを含む)は1、2個またはそれより多い同一のまたは異なる置換基(官能基)により置換され得て;1個またはそれより多い下記の置換基を考慮し得る:低級アルキル;遊離の、エーテル化およびエステル化ヒドロキシル基;カルボキシ基およびエステル化カルボキシ基;メルカプト−および低級アルキルチオ−および、必要な場合、置換フェニルチオ基;ハロゲン原子、典型的には塩素およびフッ素であるが、また臭素およびヨウ素;ハロゲン−低級アルキル基;ホルミルの形態で存在するオキソ基(すなわちアルデヒド)およびケト基、また対応するアセタールまたはケタールとして;アジド基;ニトロ基;シアノ基;1級、2級および好ましくは3級アミノ基、アミノ−低級アルキル、一または二置換アミノ−低級アルキル、従来の保護基(特に低級アルコキシカルボニル、典型的にはtert−ブトキシカルボニル)により保護された1級または2級アミノ基、低級アルキレンジオキシ、およびまた遊離のまたは機能的に修飾されたスルホ基、典型的には遊離形態でまたは塩として存在するスルファモイルまたはスルホ基。ヒドロカルビルラジカルはまた遊離型であるか、または1または2個の置換基を担持するカルバモイル、ウレイド、またはグアニジノ基、およびシアノ基を担持し得る。前記で使用した「(複数の)基」なる語はまた個々の基の意味を含むと解釈される。
ハロゲン−低級アルキルは好ましくは1から3個のハロゲン原子を含有し;トリフルオロメチルまたはクロロメチルが好ましい。
【0026】
置換基としてヒドロカルビルに存在するエーテル化ヒドロキシル基は、例えば低級アルコキシ基、典型的にはメトキシ−、エトキシ−、プロポキシ−、イソプロポキシ−、ブトキシ−、およびtert−ブトキシ基であり、これはまた、特に(i)ヘテロシクリル(ここで、ヘテロシクリルは好ましくは4から12個の環原子を有することができ、不飽和または部分的もしくは全体的に飽和でよく、一または二環式であり、そして窒素、酸素およびイオウから選択される3個までのヘテロ原子を有し得て、そしてことさら特にピロリル、例えば2−ピロリルもしくは3−ピロリル、ピリジル、例えば2−、3−もしくは4−ピリジル、およびまたチエニル、例えば2−もしくは3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリル、インドリル、典型的には2−もしくは3−インドリル、キノリル、典型的には2−もしくは4−キノリル、イソキノリル、典型的には3−もしくは5−イソキノリル、ベンゾフラニル、典型的には2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的には3−クロメニル、ベンゾチエニル、典型的には2−もしくは3−ベンゾチエニル;イミダゾリル、典型的には1−もしくは2−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的には2−もしくは4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的には2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的には3−イソオキサゾリル、チアゾリル、典型的には2−チアゾリル、ベンズイミダゾリル、典型的には2−ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、典型的には2−ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、典型的には2−キナゾリニル、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−もしくは4−テトラヒドロピラニル、1−、2−もしくは3−ピロリジル、1−、2−、3−、もしくは4−ピペリジル、1−、2−もしくは3−モルホリニル、2−もしくは3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N’−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニルである)により;ならびにまた(ii)ハロゲン原子、例えば2,2,2−トリクロロエトキシ、2−クロロエトキシ、または2−ヨードエトキシラジカルにおけるように、特に2位で一、二または多置換されたものにより;または(iii)ヒドロキシにより、または(iv)低級アルコキシラジカル、各々好ましくは、2−メトキシエトキシラジカルにおけるように、特に2位で一置換されたものにより;置換され得る。かかるエーテル化ヒドロキシル基はまた非置換または置換フェノキシラジカルおよび、特にベンジルオキシ、ベンズヒドリルオキシ、およびトリフェニルメトキシ(トリチルオキシ)のようなフェニル−低級アルコキシラジカル、ならびにヘテロシクリルオキシラジカルであり、ここでヘテロシクリルは好ましくは4から12個の環原子を有することができ、不飽和または部分的もしくは全体的に飽和でよく、一または二環式であり、そして窒素、酸素およびイオウから選択される3個までのヘテロ原子を含有することができ、そしてことさら特にピロリル、例えば2−ピロリルもしくは3−ピロリル、ピリジル、例えば2−、3−もしくは4−ピリジル、およびまたチエニル、例えば2−もしくは3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリル、インドリル、典型的には2−もしくは3−インドリル、キノリル、典型的には2−もしくは4−キノリル、イソキノリル、典型的には3−もしくは5−イソキノリル、ベンゾフラニル、典型的には2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的には3−クロメニル、ベンゾチエニル、典型的には2−もしくは3−ベンゾチエニル;イミダゾリル、典型的には1−もしくは2−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的には2−もしくは4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的には2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的には3−イソオキサゾリル、チアゾリル、典型的には2−チアゾリル、ベンズイミダゾリル、典型的には2−ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、典型的には2−ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、典型的には2−キナゾリニル、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−もしくは4−テトラヒドロピラニル、1−、2−もしくは3−ピロリジル、1−、2−、3−、もしくは4−ピペリジル、1−、2−もしくは3−モルホリニル、2−もしくは3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N’−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニル;特に2−もしくは4−テトラヒドロピラニルオキシのようなものである。
【0027】
この文脈でエーテル化ヒドロキシル基はシリル化ヒドロキシル基、典型的には例えばトリ−低級アルキルシリルオキシ、典型的にはトリメチルシリルオキシおよびジメチル-tert−ブチルシリルオキシ、またはフェニルジ−低級アルキルシリルオキシおよび低級アルキル−ジフェニルシリルオキシを含むと解釈される。
置換基としてヒドロカルビルに存在するエステル化ヒドロキシル基は例えば低級アルカノイルオキシである。
【0028】
置換基としてヒドロカルビルに存在するカルボキシル基は、水素原子が前記で特徴づけしたヒドロカルビルラジカルの1個、好ましくは低級アルキル−またはフェニル−低級アルキルラジカルにより置換されているものであり;エステル化カルボキシル基の実例は、必要な場合、フェニル部分で置換された低級アルコキシカルボニルまたはフェニル−低級アルコキシカルボニル、特にメトキシ、エトキシ、tert−ブトキシ、およびベンジルオキシカルボニル基、ならびにラクトン化カルボキシル基である。
【0029】
ヒドロカルビルの置換基としての1級アミノ基−NHはまた従来の保護基により保護された形態でも存在し得る。2級アミノ基は2個の水素原子のうちの1個の代わりに、ヒドロカルビルラジカル、好ましくは非置換のもの、典型的には前記したものの1個、特に低級アルキルを担持し、そして保護された形態でも存在し得る。
ヒドロカルビルの置換基として存在する3級アミノ基は前記で特徴づけした非置換ヒドロカルビルラジカル、特に低級アルキルのような2個の異なる、または好ましくは同一のヒドロカルビルラジカル(複素環式ラジカルを含む)を担持する。
【0030】
好ましいアミノ基は式R11(R12)N−〔式中、R11およびR12は各々の場合に別個に水素、(特にC−CアルキルまたはC−Cアルケニルのような)非置換非環式C−C−ヒドロカルビル、または必要な場合C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、ハロゲンおよび/またはニトロにより置換された単環式アリール、アラルキル、もしくはアラルケニルであり、そして最高10個の炭素原子を有するものであり、ここで炭素含有ラジカルは、炭素−炭素結合または必要な場合、ヒドロカルビルにより置換された酸素原子、イオウ原子もしくは窒素原子を介して連結され得る〕を有する。このような場合、これらはアミノ基の窒素原子を有する窒素含有複素環式環を形成する。以下は特に好ましい二置換アミノ基の実例である:ジ−低級アルキルアミノ、典型的にはジメチルアミノまたはジエチルアミノ、ピロリジノ、イミダゾール−1−イル、ピペリジノ、ピペラジノ、4−低級アルキルピペラジノ、モルホリノ、チオモルホリノおよびピペラジノまたは4−メチルピペラジノ、ならびに必要な場合、特にフェニル部分で、例えば低級−アルキル、低級−アルコキシ、ハロゲン、および/またはニトロにより置換されたジフェニルアミノおよびジベンジルアミノ;保護基は、特に低級アルコキシカルボニルアミノ、典型的にはtert−ブトキシカルボニルアミノ、フェニル−低級アルコキシカルボニルアミノ、典型的には4−メトキシベンジルオキシカルボニルアミノ、および9−フルオレニルメトキシカルボニルアミノ。
【0031】
アミノ−低級アルキルはことさら特に低級アルキル鎖の1位でアミノにより置換されており、そして特にアミノメチルである。
一または二置換アミノ−低級アルキルは1または2個のラジカルにより置換されたアミノ−低級アルキルであり、ここでアミノ−低級アルキルはことさら特に低級アルキル鎖の1位でアミノにより置換されており、そして特にアミノメチルであり;本明細書ではアミノ置換基は好ましくは(2個の置換基が互いに別個に各々のアミノ基に存在する場合)特にメチル、エチルまたはn−プロピルのような低級アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル、典型的には2−ヒドロキシエチル、C−Cシクロアルキル、特にシクロヘキシル、アミノ−低級アルキル、典型的には3−アミノプロピルまたは4−アミノブチル、N−モノ−またはN,N−ジ(低級アルキル)−アミノ−低級アルキル、典型的には3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキルアミノおよびN−モノ−またはN,N−ジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)アミノを含む群からのものである。
【0032】
二置換アミノ−低級アルキルはまた、(好ましくは1位で)窒素原子を介して低級アルキルに結合した5または6員の、飽和または不飽和ヘテロシクリルであり、そして酸素、窒素およびイオウから選択される0から2個、特に0または1個のその他のヘテロ原子を有しており、これは非置換であるかまたは特に低級アルキル、典型的にはメチル、およびまたオキソを含む群からの1または2個のラジカルにより置換されている。本明細書ではピロリジノ(1−ピロリジニル)、ピペリジノ(1−ピペリジニル)、ピペラジノ(1−ピペラジニル)、4−低級アルキルピペラジノ、典型的には4−メチルピペラジノ、イミダゾリノ(1−イミダゾリル)、モルホリノ(4−モルホリニル)、またはチオモルホリノ、S−オキソ−チオモルホリノ、もしくはS,S−ジオキソチオモルホリノもまた好ましい。
低級アルキレンジオキシは特にメチレンジオキシである。
【0033】
1または2個の置換基を担持するカルバモイル基は特にアミノカルボニル(カルバモイル)であり、これは窒素で1または2個のラジカルにより置換されており;本明細書ではアミノ置換基は好ましくは(2個の置換基が互いに別個に各々のアミノ基に存在する場合)特にメチル、エチルまたはn−プロピルのような低級アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル、典型的には2−ヒドロキシエチル、C−Cシクロアルキル、特にシクロヘキシル、アミノ−低級アルキル、典型的には3−アミノプロピルまたは4−アミノブチル、N−モノ−またはN,N−ジ(低級アルキル)−アミノ−低級アルキル、典型的には3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキルアミノおよびN−モノ−またはN,N−ジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)アミノを含む群からのものであり;アミノカルバモイルの二置換アミノもまた結合窒素原子ならびに酸素、窒素およびイオウから選択される0から2個、特に0または1個のその他のヘテロ原子を有する5または6員の、飽和または不飽和ヘテロシクリルであり、これは非置換であるかまたは特に低級アルキル、典型的にはメチル、およびまたオキソを含む群からの1または2個のラジカルにより置換されている。本明細書ではピロリジノ(1−ピロリジニル)、ピペリジノ(1−ピペリジニル)、ピペラジノ(1−ピペラジニル)、4−低級アルキルピペラジノ、典型的には4−メチルピペラジノ、イミダゾリノ(1−イミダゾリル)、モルホリノ(4−モルホリニル)、またはチオモルホリノ、S−オキソ−チオモルホリノ、もしくはS,S−ジオキソチオモルホリノもまた好ましい。
【0034】
Acと称される有機スルホン酸に由来するアシルは特に部分式R−SO−(式中、Rは前記で一般的および具体的な意味を定義したヒドロカルビルであり、また本明細書では後者が一般的に好ましい)を有するものである。低級アルキルフェニルスルホニル、特に4−トルエンスルホニルが特に好ましい。
必要な場合エステル化されているリン酸に由来するアシルは、Acと称され、特に部分式RO(RO)P(=O)−(式中、ラジカルRは互いに別個に、前記で示した一般的および具体的な意味に定義したとおりである)を有するものである。
本明細書に前記および後記する置換基に関する換算データは好ましいと考えられる。
【0035】
本発明による好ましい化合物は、例えばRが以下の好ましい意味を有するものである:低級アルキル、特にメチルもしくはエチル、アミノ−低級アルキル、ここでアミノ基は保護されていないか、または従来のアミノ保護基、特に低級アルコキシカルボニル、典型的にはtert−低級アルコキシカルボニル、例えばtert−ブトキシカルボニルにより保護されており、例えばアミノメチル、R,S−、R−もしくは好ましくはS−1−アミノエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノメチルまたはR,S−、R−、もしくは好ましくはS−1−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル、カルボキシ−低級アルキル、典型的には2−カルボキシエチル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、典型的には2−(tert−ブトキシカルボニル)エチル、シアノ−低級アルキル、典型的には2−シアノエチル、テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル、典型的には4−(テトラヒドロピラニル)−オキシメチル、モルホリノ−低級アルキル、典型的には2−(モルホリノ)エチル、フェニル、低級アルキルフェニル、典型的には4−メチルフェニル、低級アルコキシフェニル、典型的には4−メトキシフェニル、イミダゾリル−低級アルコキシフェニル、典型的には4−[2−(イミダゾール−1−イル)エチル)オキシフェニル、カルボキシフェニル、典型的には4−カルボキシフェニル、低級アルコキシカルボニルフェニル、典型的には4−エトキシカルボニルフェニルもしくは4−メトキシフェニル、ハロゲン−低級アルキルフェニル、典型的には4−クロロメチルフェニル、ピロリジノフェニル、典型的には4−ピロリジノフェニル、イミダゾール−1−イルフェニル、典型的には4−(イミダゾリル−1−イル)フェニル、ピペラジノフェニル、典型的には4−ピペラジノフェニル、(4−低級アルキルピペラジノ)フェニル、典型的には4−(4−メチルピペラジノ)フェニル、モルホリノフェニル、典型的には4−モルホリノフェニル、ピロリジノ−低級アルキルフェニル、典型的には4−ピロリジノメチルフェニル、イミダゾール−1−イル-低級アルキルフェニル、典型的には4−(イミダゾリル−1−イルメチル)フェニル、ピペラジノ−低級アルキルフェニル、典型的には4−ピペラジノメチルフェニル、(4−低級アルキルピペラジノメチル)−フェニル、典型的には4−(4−メチルピペラジノメチル)フェニル、モルホリノ−低級アルキルフェニル、典型的には4−モルホリノメチルフェニル、ピペラジノカルボニルフェニル、典型的には4−ピペラジノカルボニルフェニル、または(4−低級アルキル−ピペラジノ)フェニル、典型的には4−(4−メチルピペラジノ)フェニル。
【0036】
好ましいアシルラジカルAcはカルボン酸のアシルラジカルであり、これは部分式R−CO−(式中、Rは前記のヒドロカルビルラジカルRの一般的および好ましい意味の1個を有する)を特徴とする。本明細書では特に好ましいラジカルRは低級アルキル、特にメチルまたはエチル、アミノ−低級アルキル、ここでアミノ基は保護されていないか、または従来のアミノ保護基、特に低級アルコキシカルボニル、典型的にはtert−低級アルコキシカルボニル、例えばtert−ブトキシカルボニルにより保護され、例えばアミノメチル、R,S−、R−、もしくは好ましくはS−1−アミノエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノメチルまたはR,S−、R−、もしくは好ましくはS−1−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル、カルボキシ−低級アルキル、典型的には2−カルボキシエチル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、典型的には2−(tert−ブトキシカルボニル)エチル、テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル、典型的には4−(テトラヒドロピラニル)オキシメチル、フェニル、イミダゾリル−低級アルコキシフェニル、典型的には4−[2−(イミダゾール−1−イル)エチル]オキシフェニル、カルボキシフェニル、典型的には4−カルボキシフェニル、低級アルコキシカルボニルフェニル、典型的には4−エトキシカルボニルフェニル、ハロゲン−低級アルキルフェニル、典型的には4−クロロメチルフェニル、イミダゾール−1−イルフェニル、典型的には4−(イミダゾリル−1−イル)フェニル、ピロリジノ−低級アルキルフェニル、典型的には4−ピロリジノメチルフェニル、ピペラジノ−低級アルキルフェニル、典型的には4−ピペラジノメチルフェニル、(4−低級アルキルピペラジノメチル)フェニル、典型的には4−(4−メチルピペラジノメチル)フェニル、モルホリノ−低級アルキルフェニル、典型的には4−モルホリノメチルフェニル、ピペラジノカルボニルフェニル、典型的には4−ピペラジノカルボニルフェニル、または(4−低級アルキルピペラジノ)フェニル、典型的には4−(4−メチルピペラジノ)フェニルである。
【0037】
さらに好ましいアシルAcはカルボン酸のモノエステルに由来し、そして部分式R−O−CO−を特徴とする。低級アルキルラジカル、特にtert−ブチルは特にこれらの誘導体の好ましいヒドロカルビルラジカルRである。
別の好ましいアシルAcはカルボン酸(または、またチオカルボン酸)のアミドに由来し、そして式RHN−C(=W)−またはRN−C(=W)−(式中ラジカルRは互いに別個に、前記で定義したとおりであり、そしてWはイオウおよび特に酸素である)を特徴とする。特に、Acが式RHN−C(=W)−(式中Wは酸素であり、そしてRは以下の好ましい意味の1個を有する:モルホリノ−低級アルキル、典型的には2−モルホリノエチル、フェニル、低級アルコキシフェニル、典型的には4−メトキシフェニルもしくは4−エトキシフェニル、カルボキシフェニル、典型的には4−カルボキシフェニル、または低級アルコキシカルボニルフェニル、典型的には4−エトキシカルボニルフェニル)のラジカルである化合物が好ましい。
【0038】
部分式R−SO−(式中、Rは前記の一般的および具体的な意味で定義されるようなヒドロカルビルである)の好ましいアシルAcは低級アルキルフェニルスルホニル、典型的には4−トルエンスルホニルである。
pが0である場合、Rに結合する窒素原子は荷電していない。pが1である場合、Rもまた存在しなければならず、そしてRおよびRに結合する窒素原子(4級窒素)は正に荷電している。
各々炭素原子29個までを有する脂肪族、炭素環式、もしくは炭素環式−脂肪族ラジカルに関する、または各々炭素原子20個までおよびヘテロ原子9個までを有する複素環式もしくは複素環式−脂肪族ラジカル、または各々炭素原子30個までを有するアシルに関する定義は、対応するラジカルRおよびRに関して与えられた定義と一致するのが好ましい。特にR低級アルキル、特にメチル、またはことさら特に水素が好ましい。
【0039】
Zは特に低級アルキル、ことさら特にメチルまたは水素である。
波線により示された2個の結合が環Aで欠落している場合、二重結合は式Iで1、2、3、および4の数字により示された炭素原子間に存在せず(四水素化誘導体)、単結合のみ存在し、一方環Bは芳香族である(式Iで8および9の数字により示されたならびに10および11で示された炭素原子間の二重結合)。波線により示された2個の結合が環Bで欠落している場合、二重結合は式Iで8、9、10、および11の数字により示された炭素原子間に存在せず(四水素化誘導体)、単結合のみ存在し、一方環Aは芳香族である(式Iで1および2の数字により示されたならびに3および4で示された炭素原子間の二重結合)。波線により示された4個の結合全部が環AおよびBで欠落しており、そして全部で8個の水素原子により置換されている場合、二重結合は式Iで1、2、3、4、8、9、10、および11の数字を付けられた炭素原子間に存在せず(八水素化誘導体)、単結合のみ存在する。
【0040】
その特性から本発明の化合物は、塩形成基を含有する場合、薬学的、すなわち生理学的に許容される塩の形態で存在することもできる。単離および精製のために、薬学的に許容される塩を用いることもできる。治療用途には薬学的に許容される塩のみが用いられ、そしてこれらが好ましい。
【0041】
したがって、遊離酸基、例えば遊離スルホ、ホスホリルまたはカルボキシル基を有する式Iの化合物は塩として、好ましくは塩形成塩基性成分との生理学的に許容される塩として存在し得る。これらは主に、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウムもしくはカルシウム塩、またはアンモニアもしくは適当な有機アミン、特に3級モノアミンおよび複素環式塩基、例えばトリエチルアミン、トリ−(2−ヒドロキシエチル)−アミン、N−エチルピペリジンもしくはN,N’−ジメチルピペラジンとのアンモニウム塩のような金属またはアンモニウム塩でよい。
【0042】
塩基性特性を有する本発明の化合物はまた付加塩、特に無機および有機酸との酸付加塩としても存在し得るが、4級塩としても存在し得る。したがって例えば置換基としてアミノ基のような塩基性基を有する化合物は通例の酸と酸付加塩を形成し得る。適当な酸は、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸および臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸もしくは過塩素酸、またはギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、シュウ酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、アントラニル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンジスルホン酸、ハロベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、またはスルファニル酸のような脂肪族、脂環式、芳香族もしくは複素環式カルボン酸もしくはスルホン酸、およびまたメチオニン、トリプトファン、リジンまたはアルギニン、ならびにアスコルビン酸である。
【0043】
遊離形態と、例えば新規化合物の精製または同定において中間物質として用いることができるこれらの塩を含むその塩およびその溶媒和物の形態の(特に式Iの)化合物の間の密接な関係に鑑みて、前記および後記で遊離化合物への任意の言及は、適切でそして都合の良い場合、対応する塩およびその溶媒和物、例えば水和物への言及とも理解すべきである。
【0044】
式A、B、C、D、I、II、III、IV、VまたはVIの化合物、特に式中Rが水素であるものは、価値のある薬理学的特性を有している。
前記および後記したラジカルの基または化合物の場合、一般的な定義を、適切でそして都合の良い場合、前記および後記したさらに具体的な定義により置き換えることができる。
【0045】
およびRは互いに別個に低級アルキル、ハロゲン、C−C14アリール、ヒドロキシ、低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシ、フェニルオキシ、低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、フェニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−(フェニル−低級アルキル)アミノ、シアノ、メルカプト、低級アルキルチオ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキルカルバモイル、スルホ、低級アルカンスルホニル、低級アルコキシスルホニル、アミノスルホニル、N−低級アルキルアミノスルホニルもしくはN,N−ジ−低級アルキルアミノスルホニルにより置換された低級アルキル;ハロゲン;低級アルコキシ;C−C14アリールオキシ;C−C14アリール−低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;C−C14アリールカルボニルオキシ;低級アルキル、C−C14アリール、C−C14アリール−低級アルキル、低級アルカノイルもしくはC−C12アリールカルボニルにより一置換もしくは二置換されたアミノ;シアノ;ニトロ;メルカプト;低級アルキルチオ;C−C14アリールチオ;C−C14アリール−低級アルキルチオ;低級アルカノイルチオ;C−C14アリール−低級アルカノイルチオ;カルボキシ;低級アルコキシカルボニル、C−C14アリール−低級アルコキシカルボニル;C−C14アリールオキシカルボニル;カルバモイル;低級アルキル、C−C14アリールもしくはC−C14アリール−低級アルキルによりN−一もしくはN,N−二置換されたカルバモイル;スルホ;C−C14アリールスルホニル;C−C14アリール−低級アルカンスルホニル;低級アルカンスルホニル;または低級アルキル、C−C14アリールもしくはC−C14アリール−低級アルキルによりN−一もしくはN,N−二置換されたアミノスルホニルであり、ここでC−C14アリールは環系に6から12個の炭素原子を有するアリールラジカルであり、これは非置換であるか、またはハロゲン、フェニルもしくはナフチル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシ、フェニルオキシ、低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、フェニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−(フェニル−低級アルキル)アミノ、シアノ、メルカプト、低級アルキルチオ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキルカルバモイル、スルホ、低級アルカンスルホニル、低級アルコキシスルホニル、アミノスルホニル、N−低級アルキルアミノスルホニルもしくはN,N−ジ−低級アルキルアミノスルホニルにより置換され得て;
nおよびmは互いに別個に0または1または2、好ましくは0であり;
【0046】
、R、R、R10は互いに別個に水素、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルカジエニルであり、これは各々非置換であるか、または低級アルキル;ヒドロキシ;低級アルコキシ、これは非置換であるかまたは(i)不飽和、全体的に飽和、または部分的に飽和でよく、単環式または二環式であり、そして窒素, 酸素およびイオウから選択される3個までのヘテロ原子を含有でき、そしてことさら特にピロリル、例えば2−ピロリルもしくは3−ピロリル、ピリジル、例えば2−、3−もしくは4−ピリジル、または広義にはまたチエニル、例えば2−もしくは3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリル、インドリル、典型的には2−もしくは3−インドリル、キノリル、典型的には2−もしくは4−キノリル、イソキノリル、典型的には3−もしくは5−イソキノリル、ベンゾフラニル、典型的には2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的には3−クロメニル、ベンゾチエニル、典型的には2−もしくは3−ベンゾチエニル;イミダゾリル、典型的には1−もしくは2−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的には2−もしくは4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的には2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的には3−イソオキサゾリル、チアゾリル、典型的には2−チアゾリル、ベンズイミダゾリル、典型的には2−ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、典型的には2−ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、典型的には2−キナゾリニル、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロピラニル、1−、2−もしくは3−ピロリジル、1−、2−、3−、もしくは4−ピペリジル、1−、2−もしくは3−モルホリニル、2−もしくは3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N’−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニルである4から12個の環原子を有するヘテロシクリルにより、(ii)ハロゲンにより、(iii)ヒドロキシにより、または(iv)低級アルコキシにより一または二または三置換され得る;フェノキシ;フェニル−低級アルコキシ;ヘテロシクリルオキシ、ここでヘテロシクリルはピロリル、例えば2−ピロリルもしくは3−ピロリル、ピリジル、例えば2−、3−もしくは4−ピリジル、または広義にはまたチエニル、例えば2−もしくは3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリル、インドリル、典型的には2−もしくは3−インドリル、キノリル、典型的には2−もしくは4−キノリル、イソキノリル、典型的には3−もしくは5−イソキノリル、ベンゾフラニル、典型的には2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的には3−クロメニル、ベンゾチエニル、典型的には2−もしくは3−ベンゾチエニルである;イミダゾリル、典型的には1−もしくは2−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的には2−もしくは4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的には2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的には3−イソオキサゾリル、チアゾリル、典型的には2−チアゾリル、ベンズイミダゾリル、典型的には2−ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、典型的には2−ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、典型的には2−キナゾリニル、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−もしくは4−テトラヒドロピラニル、1−、2−もしくは3−ピロリジル、1−、2−、3−、もしくは4−ピペリジル、1−、2−もしくは3−モルホリニル、2−もしくは3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N’−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニル、特に例えば2−もしくは4−テトラヒドロピラニルオキシ;低級アルカノイルオキシ;カルボキシ;低級アルコキシカルボニル;フェニル−低級アルコキシカルボニル;メルカプト;低級アルキルチオ;フェニルチオ;ハロゲン;ハロゲン−低級アルキル;オキソ(そうでなければアシルであるので、1位以外で);アジド;ニトロ;シアノ;アミノ;モノ−低級アルキルアミノ;ジ−低級アルキルアミノ;ピロリジノ;イミダゾール−1−イル;ピペリジノ;ピペラジノ;4−低級アルキルピペラジノ;モルホリノ;チオモルホリノ;非置換であるかまたはフェニル部分で低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲンおよび/またはニトロにより置換されたジフェニルアミノまたはジベンジルアミノ;低級アルコキシカルボニルアミノ;非置換であるかまたはフェニル部分で低級アルキルまたは低級アルコキシにより置換されたフェニル−低級アルコキシカルボニルアミノ;フルオレニルメトキシカルボニルアミノ;アミノ−低級アルキル;一置換または二置換アミノ−低級アルキル、ここでアミノ置換基は低級アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル、C−Cシクロアルキル、アミノ−低級アルキル、N−モノ−またはN,N−ジ(−低級アルキル)アミノ−低級アルキル、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキルアミノおよびN−モノ−またはN,N−ジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)アミノから選択される;ピロリジノ−低級アルキル;ピペリジノ−低級アルキル;ピペラジノ−低級アルキル;4−低級アルキルピペラジノ−低級アルキル;イミダゾール−1−イル−低級アルキル;モルホリノ−低級アルキル;チオモルホリノ−低級アルキル;S−オキソ−チオモルホリノ−低級アルキル;S,S−ジオキソチオモルホリノ−低級アルキル;低級アルキレンジオキシ;スルファモイル;スルホ;カルバモイル;ウレイド;グアニジノ;シアノ;アミノカルボニル(カルバモイル)およびアミノカルボニルオキシ、これは窒素上の1または2個のラジカルにより置換されており、ここでアミノ置換基は互いに別個に低級アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル、C−Cシクロアルキル、アミノ−低級アルキル、N−モノ−またはN,N−ジ(−低級アルキル)アミノ−低級アルキル、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキルアミノおよびN−モノ−またはN,N−ジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)アミノからなる群から選択される;ピロリジノカルボニル;ピペリジノカルボニル;ピペラジノカルボニル;4−低級アルキルピペラジノカルボニル;イミダゾリノカルボニル;モルホリノカルボニル;チオモルホリノカルボニル;S−オキソ−チオモルホリノカルボニル;およびS,S−ジオキソチオモルホリノ;
【0047】
フェニル、ナフチル、末端フェニルラジカルを有するフェニル−低級アルキルまたはフェニル−低級アルケニル、これは非置換であるかまたは前記で低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルカジエニルの置換基として挙げたラジカルにより一置換または二置換されている;
またはヘテロシクリル−低級アルキル、ここでヘテロシクリルはピロリル、例えば2−ピロリルもしくは3−ピロリル、ピリジル、例えば2−、3−もしくは4−ピリジル、または広義にはまたチエニル、例えば2−もしくは3−チエニル、またはフリル、例えば2−フリル、インドリル、典型的には2−もしくは3−インドリル、キノリル、典型的には2−もしくは4−キノリル、イソキノリル、典型的には3−もしくは5−イソキノリル、ベンゾフラニル、典型的には2−ベンゾフラニル、クロメニル、典型的には3−クロメニル、ベンゾチエニル、典型的には2−もしくは3−ベンゾチエニル;イミダゾリル、典型的には1−もしくは2−イミダゾリル、ピリミジニル、典型的には2−もしくは4−ピリミジニル、オキサゾリル、典型的には2−オキサゾリル、イソオキサゾリル、典型的には3−イソオキサゾリル、チアゾリル、典型的には2−チアゾリル、ベンズイミダゾリル、典型的には2−ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、典型的には2−ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、典型的には2−キナゾリニル、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−もしくは4−テトラヒドロピラニル、1−、2−もしくは3−ピロリジル、1−、2−、3−、もしくは4−ピペリジル、1−、2−もしくは3−モルホリニル、2−もしくは3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N’−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニルであり、これは各々の場合で非置換であるかまたは低級アルキル、低級アルケニル、または低級アルカジエニルの置換基として挙げたラジカルにより一置換または二置換されている;
または部分式Y−C(=W)−(ここでWは酸素であり、そしてYは水素、R、R−O−、RHN−、またはRN−(ここでラジカルRは同一であるかまたは異なっていてよい)である)のアシル;
または
【0048】
部分式R−SO−のアシル
(それによりRは式IIの化合物に関して存在しないでもよい);
から別個に選択される置換基により一置換もしくは多置換、好ましくは一置換もしくは二置換されるか;
または、
は式IIに関しては存在せず、式Iの化合物に関しては水素またはCHであり、そして
は部分式Y−C(=W)−(ここでWは酸素であり、そしてYは水素、R、R−O−、RHN−、またはRN−(ここでラジカルRは同一であるかまたは異なっていてよい)である)のアシルであるか、
または
部分式R−SO−のアシルであり、
ここで前記ラジカルのRは以下の意味を有している:置換または非置換低級アルキル、特にメチルまたはエチル、アミノ−低級アルキルヒドロキシ−低級アルキル、ここでアミノ基は保護されていないか、または従来のアミノ保護基により、特に低級アルコキシカルボニル、典型的にはtert−低級アルコキシカルボニル、例えばtert−ブトキシカルボニルにより保護されており、例えばアミノメチル、R,S−、R−もしくは好ましくはS−1−アミノエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノメチルまたはR,S−、R−、もしくは好ましくはS−1−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル、カルボキシ−低級アルキル、典型的には2−カルボキシエチル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、典型的には2−(tert−ブトキシカルボニル)エチル、シアノ−低級アルキル、典型的には2−シアノエチル、テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル、典型的には4−(テトラヒドロピラニル)−オキシメチル、モルホリノ−低級アルキル、典型的には2−(モルホリノ)エチル、フェニル、低級アルキルフェニル、典型的には4−メチルフェニル、低級アルコキシフェニル、典型的には4−メトキシフェニル、イミダゾリル−低級アルコキシフェニル、典型的には4−[2−(イミダゾール−1−イル)エチル)オキシフェニル、カルボキシフェニル、典型的には4−カルボキシフェニル、低級アルコキシカルボニルフェニル、典型的には4−エトキシカルボニルフェニルもしくは4−メトキシフェニル、ハロゲン−低級アルキルフェニル、典型的には4−クロロメチルフェニル、ピロリジノフェニル、典型的には4−ピロリジノフェニル、イミダゾール−1−イルフェニル、典型的には4−(イミダゾリル−1−イル)フェニル、ピペラジノフェニル、典型的には4−ピペラジノフェニル、(4−低級アルキルピペラジノ)フェニル、典型的には4−(4−メチルピペラジノ)フェニル、モルホリノフェニル、典型的には4−モルホリノフェニル、ピロリジノ−低級アルキルフェニル、典型的には4−ピロリジノメチルフェニル、イミダゾール−1−イル−低級アルキルフェニル、典型的には4−(イミダゾリル−1−イルメチル)フェニル、ピペラジノ−低級アルキルフェニル、典型的には4−ピペラジノメチルフェニル、(4−低級アルキルピペラジノメチル)−フェニル、典型的には4−(4−メチルピペラジノメチル)フェニル、モルホリノ−低級アルキルフェニル、典型的には4−モルホリノメチルフェニル、ピペラジノカルボニルフェニル、典型的には4−ピペラジノカルボニルフェニル、または(4−低級アルキル−ピペラジノ)フェニル、典型的には4−(4−メチルピペラジノ)フェニル;
が存在しない場合、pは0であるか、またはRおよびRの双方が存在する場合、pは1であり、そして各々の場合に(式IIの化合物に関して)前記したラジカルの1個であり;
【0049】
は水素または低級アルキル、特に水素であり、
Xは2個の水素原子を、Oを、もしくは1個の水素原子およびヒドロキシを;または1個の水素原子および低級アルコキシを表し;
Zは水素、または特に低級アルキル、ことさら特にメチルであり;
そして式IIの化合物に関しては、波線で示された2個の結合のいずれかは環Aでは存在せず、そして4個の水素原子により置換され、ならびに環Bの2本の波線は各々、それぞれの平行な結合と一緒に二重結合を示すか;
または波線で示された2個の結合は環Bでは存在せず、そして全部で4個の水素原子により置換され、ならびに環Aの2本の波線は各々、それぞれの平行な結合と一緒に二重結合を示すか;
または環Aおよび環Bの双方の4個の波線結合の全てが存在せず、そして全部で8個の水素原子により置換される;
式I、II、III、IV、V、VIの化合物、または少なくとも1個の塩形成基が存在する場合、その塩が好ましい。
【0050】
特に好ましいのは;
mおよびnは各々0であり;
およびRは互いに別個に
水素、
非置換であるか、またはカルボキシ;低級アルコキシカルボニル;およびシアノから互いに別個に選択されるラジカルにより一もしくは二置換された、特に一置換された低級アルキルであるか;
または
は水素もしくは−CHであり、そして
は前記で定義したとおりであるか、または好ましくはRは部分式R−CO(ここでRは低級アルキル;アミノ−低級アルキル、ここでアミノ基は保護されていない形態で存在するか、または低級アルコキシカルボニルにより保護されている;テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル;フェニル;イミダゾリル−低級アルコキシフェニル;カルボキシフェニル;低級アルコキシカルボニルフェニル;ハロゲン−低級アルキルフェニル;イミダゾール−1−イルフェニル;ピロリジノ−低級アルキルフェニル;ピペラジノ−低級アルキルフェニル;(4−低級アルキルピペラジノメチル)フェニル;モルホリノ−低級アルキルフェニル;ピペラジノカルボニルフェニル;または(4−低級アルキルピペラジノ)フェニルである)のアシルであるか;
もしくは部分式R−O−CO−(Rは低級アルキルである)のアシルであるか;
もしくは部分式RHN−C(=W)−(ここでWは酸素であり、そしてRは以下の意味を有している:モルホリノ−低級アルキル、フェニル、低級アルコキシフェニル、カルボキシフェニル、または低級アルコキシカルボニルフェニル)のアシルであるか;
またはRは低級アルキルフェニルスルホニル、典型的には4−トルエンスルホニルであり;
式IIの好ましい化合物に関する好ましいR基のさらに具体的な実例は以下に記載し、
は水素または低級アルキル、特に水素であり、
Xは2個の水素原子またはOを表し;
Zはメチルまたは水素である;
式Iの化合物、または少なくとも1個の塩形成基が存在する場合、その塩である。
【0051】
特に好ましいのは、
mおよびnは各々0であり;
およびRは互いに別個に
水素、
非置換であるか、またはカルボキシ;低級アルコキシカルボニル;およびシアノから互いに別個に選択されるラジカルにより一もしくは二置換された、特に一置換された低級アルキルである、それによりRはまた存在しないでもよいか;
または
は存在せず、そして
は部分式R−CO(ここでRは低級アルキル、特にメチルまたはエチル;アミノ−低級アルキル、ここでアミノ基は保護されていないか、または低級アルコキシカルボニル、典型的にはtert−低級アルコキシカルボニル、例えばtert−ブトキシカルボニルにより保護されており、例えばアミノメチル、R,S−、R−、もしくは好ましくはS−1−アミノエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノメチルまたはR,S−、R−、もしくは好ましくはS−1−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル;テトラヒドロピラニルオキシ-低級アルキル、典型的には4−(テトラヒドロピラニル)オキシメチル;フェニル;イミダゾリル−低級アルコキシフェニル、典型的には4−[2−(イミダゾール−1−イル)エチル)オキシフェニル;カルボキシフェニル、典型的には4−カルボキシフェニル;低級アルコキシカルボニルフェニル、典型的には4−メトキシ−または4−エトキシカルボニルフェニル;ハロゲン−低級アルキルフェニル、典型的には4−クロロメチルフェニル;イミダゾール−1−イルフェニル、典型的には4−(イミダゾリル−1−イル)フェニル;ピロリジノ−低級アルキルフェニル、典型的には4−ピロリジノメチルフェニル;ピペラジノ−低級アルキルフェニル、典型的には4−ピペラジノメチルフェニル;(4−低級アルキルピペラジノメチル)フェニル、典型的には4−(4−メチルピペラジノメチル)フェニル;モルホリノ−低級アルキルフェニル、典型的には4−モルホリノメチルフェニル;ピペラジノカルボニルフェニル、典型的には4−ピペラジノカルボニルフェニル;または(4−低級アルキルピペラジノ)フェニル、典型的には4−(4−メチルピペラジノ)フェニルである)からのアシルであるか;
または部分式R−O−CO−(ここでRは低級アルキルである)のアシルであるか;
または部分式RHN−C(=W)−(ここでWは酸素であり、そしてRは以下の意味を有している:モルホリノ−低級アルキル、典型的には2−モルホリノエチル、フェニル、低級アルコキシフェニル、典型的には4−メトキシフェニルまたは4−エトキシフェニル、カルボキシフェニル、典型的には4−カルボキシフェニル、または低級アルコキシカルボニルフェニル、典型的には4−エトキシカルボニルフェニル)のアシルであるか;
または低級アルキルフェニルスルホニル、典型的には4−トルエンスルホニルであり;
が存在しない場合、pは0であるか、またはRおよびRの双方が存在し、そして各々の場合前記したラジカルの1個である場合、1であり;
は水素または低級アルキル、特に水素であり、
Xは2個の水素原子かまたはOを表し;
Zはメチルまたは水素であり;
そして波線で示された2個の結合のいずれかは、好ましくは環Aでは存在せず、そして4個の水素原子により置換され、ならびに環Bの2本の波線は各々、それぞれの平行な結合と一緒に二重結合を示すか;
または波線で示された2個の結合もまた環Bでは存在せず、そして全部で4個の水素原子により置換され、ならびに環Aの2本の波線は各々、それぞれの平行な結合と一緒に二重結合を示すか;
または環Aおよび環Bの双方の4個の波線結合の全てが存在せず、そして全部で8個の水素原子により置換される;
式IIの化合物、または少なくとも1個の塩形成基が存在する場合、その塩である。
【0052】
ことさら特に好ましい式IIの化合物は;
8,9,10,11−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−[4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)ベンゾイル]−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−クロロメチルベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−(ピロリジン−1−イルメチル)ベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−(モルホリン−4−イルメチル)ベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−(ピペラジン−1−イルメチル)ベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−トシル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−トリフルオロアセチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−[4−(2−イミダゾール−1−イル−エトキシ)ベンゾイル]−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−メトキシカルボニルメチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−カルボキシメチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−テレフタロイルメチルエステル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−テレフタロイル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−エチルピペラジニルカルボニルベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(2−シアノエチル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−ベンゾイル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
ヨウ化N,N−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリニウム;
N−BOC−グリシル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−グリシル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(3−(tert−ブトキシカルボニル)プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(3−カルボキシプロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−イミダゾール−1−イル)ベンゾイル]−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−[(テトラヒドロ−2h−ピラン−4−イルオキシ)アセチル]−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−BOC−l−アラニル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
塩酸N−l−アラニル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチルスタウロスポリン;
N−(4−カルボキシフェニルアミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−エチルフェニルアミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(N−フェニルアミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(N−[2−(1−モルホリノ)エチル]アミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(N−[4−メトキシフェニル]アミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチルスタウロスポリン;
N−BOC−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−BOC−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチルスタウロスポリン;
N−BOC−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−7−オキソ−スタウロスポリン;
1,2,3,4,8,9,10,11−オクタヒドロスタウロスポリン;
または少なくとも1個の塩形成基が存在する場合、薬学的に許容されるその塩;
から選択される。
【0053】
ことさら特に好ましいのは、1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリンと称される式Iの化合物、または(特に薬学的に許容される)その塩(本明細書では式Iのmおよびnは0であり、そしてRは水素であり、塩が存在しない場合(p=0)、Rは存在しないか、または塩が存在する場合(p=1)水素であり、Rは水素であり、波線で示された2個の結合が環Aでは存在せず、そして4個の水素原子により置換され、ならびに環Bの波線で示された2個の結合が各々の場合で、平行な結合と一緒に二重結合であり、Xは2個の水素原子を表し、そしてZはメチルである)である。
【0054】
ことさら特に好ましいのは;
A) X=O;R、R、R=H;Q=−(CH−O−CH(CH)OH−(CH−;
B) X=O;R、R、R=H;Q= −(CH−O−CH(CHN(CH)−(CH−;
C) X=2個の水素原子;R、R、R=H;Q=
【化7】


である式Aの化合物である。
【0055】
ことさら特に好ましいのは;
A) X=2個の水素原子;R、R、R、R=H;R=CH;Z=CH(スタウロスポリン);
B) X=(R)または(S)異性体の1個の水素原子および1個のヒドロキシ原子;R、R、R、R=H;R=CH;Z=CH(UCN−01およびUCN−02);
C) X=2個の水素原子;R、R、R=H;R=CH;R=ベンゾイル;Z=CH(CGP41251またはPKC412またはミドスタウリン);
D) X=O;R、R、R=H;R=CH;R=エチルオキシカルボニル;Z=CH(NA382;CAS=143086−33−3);
E) X=1個の水素原子および1個のヒドロキシ原子;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;およびRは−(CHOH;−CHCH(OH)CHOH;−CO(CHCONa;−(CHCOH;−COCHN(CH
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

から選択される;
F) X=2個の水素原子;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;およびRはN−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−D−ラクトイル];N−[2−メチル−2−(テトラヒドロピラン−4−イルオキシ)−プロピオニル;N−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−L−ラクトイル];N−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−D−ラクトイル];N−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−アセチル)]から選択される;
G) X=O;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;およびRはN−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−D−ラクトイル];N−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−アセチル)]から選択される
H) X=1個の水素原子および1個のヒドロキシ原子;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;およびRはN−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−D−ラクトイル];N−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−アセチル)]から選択される;
である式Iの化合物である。
【0056】
「CAS」なる略語はCHEMICAL ABSTRACTS登録番号を意味する。
【0057】
式Iの最も好ましい化合物、例えばミドスタウリン(国際一般的名称)が1988年12月21日公開の欧州特許第0296110号、ならびに1992年3月3日公開の米国特許第5093330号、および日本特許第2708047号で対象となり、そして具体的に記載されている。その他の好ましい化合物が双方共に1995年12月7日公開の特許出願第WO95/32974号および第WO95/32976号で対象となり、そして具体的に記載されている。これらの文献に記載された全ての化合物は出典明示により本出願の一部とする。
【0058】
ことさら特に好ましいのは;
A) X=2個の水素原子;R、R、R=H;R=CH;R=メチルオキシカルボニル;Z=H(2−メチルK252a);
B) X=2個の水素原子;R、R、R、R=H;R=メチルオキシカルボニル;Z=H(K252a);
C) X=2個の水素原子;R、R、R、R=H;R=メチルオキシカルボニル;Z=CH(KT−5720);
である式IIIの化合物である。
【0059】
ことさら特に好ましいのは;
A) X=O;R、R、R=H;R=CH−NMe;R=CH;m’=n’=2;
B) X=O;R、R、R=H;R=CH−NH;R=CH;m’=2;n’=1(Ro−31−8425;CAS=151342−35−7);
である式IVの化合物である。
【0060】
ことさら特に好ましいのは;
A) X=O;R、R、R=H;R=CH;R10=−(CH−NH;(Ro―31−7549;CAS=138516―31);
B) X=O;R、R、R=H;R=CH;R10=−(CH−S−(C=NH)−NH; (Ro−31―8220;CAS=125314−64−9);
C) X=O;R、R、R=H;R=CH;R10=−CH
である式Vの化合物である。
【0061】
ことさら特に好ましいのは;
A) X=2個の水素原子;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;Rはメチルまたは(C−C10)アルキル、アリールメチル、CCH−から選択される
である式VIの化合物である。
【0062】
スタウロスポリン誘導体およびその製造方法は多くの先行文献において具体的に記載されており、そして当業者に周知である。
式A、B、C、Dの化合物およびその製造方法は、例えば1995年6月14日公開の欧州特許第0657458号、1994年11月17日公開の欧州特許第0624586号、1992年2月12日公開の欧州特許第0470490号、1989年8月16日公開の欧州特許第0328026号、1990年8月29日公開の欧州特許第0384349号、およびBarry M. Trost* and Weiping Tang Org. Lett., 3(21), 3409-3411のような多くの出版物に記載されている。
【0063】
式Iの化合物およびその製造方法は、1988年12月21日公開の欧州特許第0296110号、ならびに1992年3月3日公開の米国特許第5093330号、および日本特許第2708047号に具体的に記載されている。Rにテトラヒドロピラン−4−イル)−ラクトイル置換を有する式Iの化合物は、1994年11月17日公開の欧州特許第0624590号に記載されている。その他の化合物は1993年12月29日公開の欧州特許第0575955号、1987年9月23日公開の欧州特許第0238011号(UCN−O1)、1998年7月3日に第WO99/02532号として公開された国際特許出願第EP98/04141号に記載されている。
【0064】
式IIの化合物およびその製造方法は、1988年12月21日公開の欧州特許第0296110号、ならびに1992年3月3日公開の米国特許第5093330号、および日本特許第2708047号に具体的に記載されている。
【0065】
式IIIの化合物およびその製造方法は、1992年7月24日出願の米国特許第920102号の優先権を主張する特許出願(すなわち1997年4月16日公開の欧州特許第0768312号、2000年5月24日公開の第1002534号、1995年5月10日公開の第0651754号)に具体的に記載されている。
【0066】
式IVの化合物およびその製造方法は、各々1993年5月10日および1994年2月21日出願の英国特許出願第GB9309602号および第GB9403249号の優先権を主張する特許出願(すなわち1994年11月17日公開の欧州特許第0624586号、2000年5月24日公開の第1002534号、1995年5月10日公開の第0651754号)に具体的に記載されている。
【0067】
式Vの化合物およびその製造方法は、各々1988年2月10日、1988年11月25日、1989年2月23日、および1989年12月13日出願の英国特許出願第GB8803048号、第GB8827565号、第GB8904161号および第GB8928210号の優先権を主張する特許出願(すなわち1989年8月16日公開の欧州特許第0328026号および1990年8月29日公開の第0384349号)に具体的に記載されている。
【0068】
式VIの化合物およびその製造方法は、1991年10月10日出願の米国特許第07/777395号(Con)の優先権を主張する特許出願(すなわち1993年4月15日公開の国際特許出願第WO93/07153号)に具体的に記載されている。
【0069】
特にスタウロスポリン誘導体化合物に関して特許出願または科学的な出版物の引用が為される各々の場合で、最終生成物の対象物、医薬製剤および請求の範囲はこれらの出版物を参照することにより本出願の一部とする。
【0070】
コード番号、一般名または商品名により同定される活性物質の構造を標準概論「The Merck Index」の現行版から、またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から得ることができる。その対応する内容は出典明示により本明細書の一部とする。
【0071】
本発明による好ましいスタウロスポリン誘導体は式(VII):
【化12】

のN−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3’,2’,1’−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミドまたはその塩(本明細書以後:「式(VII)の化合物またはミドスタウリン」)である。
【0072】
式VIIの化合物はまたミドスタウリン(国際一般名)またはPKC412としても公知である。
ミドスタウリンは天然に存在するアルカロイド、スタウロスポリンの誘導体であり、そして1988年12月21日公開の欧州特許第0296110号、ならびに1992年3月3日公開の米国特許第5093330号、および日本特許第2708047号に具体的に記載されている。
【0073】
本発明により、驚くべきことに、ミドスタウリンが治療特性を有していることが見出され、それによりこれは特にPDGFRα(血小板由来成長因子α、PDGRAとも略される)の阻害剤として、そして特に好酸球増加症候群のようなFIP1L1−PDGFRα誘起疾患の処置に関して有用性が付与される。本明細書前記および後記で用いるFIP1L1−PDGFRαは、遺伝子FIP1L1(FIP1様1)とPDGFRαとの融合生成物の意味である。特に驚くべきことは、FIP1L1−PDGFRαにおけるT674I変異が原因で生じると考えられているイマチニブ誘起の耐性の防御または処置に、ミドスタウリンが有効であることである。
スタウロスポリン誘導体、例えばミドスタウリンは元来タンパク質キナーゼC(PKC)の阻害剤として同定された。(Meyer T, Regenass U, Fabbro D, et al: Int J Cancer 43: 851-856, 1989)。
【0074】
今驚くべきことに、スタウロスポリン誘導体が治療特性を有していることが見出だされ、それによりこれは特にFIP1L1−PDGFRαの阻害剤として、そして特に好酸球増加症候群およびイマチニブに対する耐性を有する好酸球増加症候群の処置および予防において有用性が付与される。特にミドスタウリンはFIP1L1−PDGFRαT674変異に対して予期されなかった高い有効性を示す。
したがって本発明はFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患、またはFIPL1−PDGFRaまたはPDGFRαを活性化する類似の変異に関連するその他の疾患の処置のための薬物の製造のためのスタウロスポリン誘導体の使用に関係する。
【0075】
本明細書で用いる「FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患」なる用語は、限定するものではないが、好酸球増加症候群およびイマチニブに対する耐性を有する好酸球増加症候群を含む。この用語はまた具体的にはFIP1L1−PDGFRα変異、特にFIP1L1−PDGFRαT674I変異の結果である疾患を含む。
本発明はさらに特に好酸球増加症候群およびイマチニブに対する耐性を有する好酸球増加症候群の処置のための薬物の製造のためのスタウロスポリン誘導体の使用に関係する。
【0076】
別の実施形態では、本発明は、かかる処置を必要とする哺乳動物に治療上有効量のスタウロスポリン誘導体またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含む、FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患を処置するための方法を提供する。
【0077】
好ましくは本発明は、かかる処置を必要とする哺乳動物にFIP1L1−PDGFRα阻害量の、式(VII)のN−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3’,2’,1’−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患を患う哺乳動物、特にヒトを処置するための方法を提供する。
【0078】
本発明はまた、治療上有効量の式VIIの化合物を哺乳動物対象に、1から6週間の期間、週7から4回、またはその期間の約100%から約50%の日数で投与し、続いて1から3週間の期間薬剤を投与せず、そしてこのサイクルを1から数サイクルまで繰り返す方法にも関係する。
好ましくは、この方法はFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患を処置するために用いられる。
さらに好ましくは、この方法は好酸球増加症候群またはイマチニブに対する耐性を有する好酸球増加症候群を処置するために用いられる。
【0079】
別の実施形態では、本発明はFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患を処置するのに使用するための、さらに特に好酸球増加症候群またはイマチニブに対する耐性を有する好酸球増加症候群を処置するための医薬組成物の製造のためのスタウロスポリン誘導体の使用に関する。
スタウロスポリン誘導体は有用な薬理学的特性を有している。特にミドスタウリンは130nMの範囲の濃度でFIP1L1−PDGFRα発現Ba/F3細胞の成長を阻害する。
スタウロスポリン誘導体、特に式IまたはIIの化合物の活性をインビボで、例えば1日1回から3回まで、1日あたり0.1から10または1から5mg/kg体重の範囲の用量での動物への経口投与で実証することができる。
【0080】
したがってスタウロスポリン誘導体は、FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患、例えば好酸球増加症候群またはイマチニブに対する耐性を有する好酸球増加症候群である疾患の処置に極めて適している。
FIP1L1−PDGFRαは好酸球増加症候群の原因であり、そしてチロシンキナーゼ阻害剤、イマチニブ(国際一般名)(これは米国でGLEEVEC(登録商標)および欧州でGLIVEC(登録商標)の名の下で市販されている)の治療標的である。
【0081】
驚くべきことに、頻繁にイマチニブで好酸球増加症候群を処置している間に再発を生じたとき、PDGFRαにおけるT674I変異が診断されることが見出された。
これは出願人に、現在の薬物治療がほとんど有用性を提供せず、そして現在の利用可能な薬物治療および/または幹細胞移植治療に以前に失敗しているこれらの患者における可能な治療研究法としてFIP1L1−PDGFRα活性の新しい阻害剤の探求を促している。
【0082】
本明細書では、「処置」なる用語は予防的または防御的処置および治療的または疾患抑制的処置の双方を含み、疾患にかかる危険性を有するかまたは疾患にかかっていることが疑われる患者および病気の患者の処置を含む。この用語はさらに疾患の進行の遅延のための処置を含む。
本明細書で用いる「治療的」なる用語はFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患を含む、症状の処置における有効性を意味する。
「予防的」なる用語はFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患を含む疾患の発症または再発の防御を意味する。
【0083】
本明細書で用いる「進行の遅延」なる用語は、処置される疾患の前段階または初期相にある患者への活性化合物の投与を意味し、ここで患者は、例えば対応する疾患の前形態であることが診断されるか、または、患者が例えば医学的処置の間のもしくは事故に起因する状態で、対応する疾患が進行する可能性がある状態である。
【0084】
この予測不可能な特性の範囲は、スタウロスポリン誘導体の使用がFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患を含む疾患の処置のための医薬品の製造のために特に重要であることを意味している。特にミドスタウリンは高度な安全限界、高度な親和性および選択性を有している。
この効果は特に好酸球増加症候群またはイマチニブに対する耐性を有する好酸球増加症候群の患者に臨床的に適切である。
【0085】
スタウロスポリン誘導体が特に良好な安全限界およびその他の利点を有して、FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置に特に適当であることを実証するために、当業者に公知の様式で臨床試験を実施することができる。
【0086】
FIP1L1−PDGFRα活性を阻害するために、またはFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患を処置するために用いられるスタウロスポリン誘導体の正確な用量は宿主、処置される症状の特性および重篤度、投与の様式を含むいくつかの因子に依存する。しかしながら一般的に、スタウロスポリン誘導体を非経腸的に、例えば腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内、または直腸に、または経腸的に、例えば経口的に、好ましくは静脈内、または好ましくは経口的に、静脈内に0.1から10mg/kg体重、好ましくは1から5mg/kg体重の1日用量で投与するときに、FIP1L−PDGFRαの満足できる阻害が達成される。ヒト試験では、全用量225mg/日が最も可能性の高い最大耐量(MTD)であった。好ましい静脈内1日用量は0.1から10mg/kg体重であるか、またはたいていの大型霊長類では、1日用量200−300mgである。典型的な静脈内用量は3から5mg/kg、週3から5回である。
最も好ましくは、スタウロスポリン誘導体、特にミドスタウリンを経口的にマイクロエマルジョン、ソフトゲル、または固体分散剤のような投与形態により、約250mg/日までの用量で投与し、1日1回、2回または3回投与する。
【0087】
通常最初に少用量を投与し、そして処置下の宿主に最適な用量が決定されるまで、用量を徐々に増加させる。用量の上限は副作用により強いられるものであり、そして処置される宿主に関する試験により決定することができる。
スタウロスポリン誘導体を1個またはそれより多い薬学的に許容される担体および、場合によっては1個またはそれより多いその他の従来の医薬用佐剤と組合せることができ、そして経腸的に、例えば経口的に、錠剤、カプセル、カプレット等の形態で、または非経腸的に、例えば腹腔内もしくは静脈内に、滅菌注射用溶液もしくは懸濁液の形態で投与することができる。経腸用および非経口用組成物を従来の手段により製造することができる。
【0088】
本発明による輸液は滅菌してあるのが好ましい。これは例えば滅菌ろ過膜を通すろ過により達成することができる。液体形態での任意の組成物の無菌形成、バイアルの無菌充填および/または無菌条件下での本発明の医薬組成物の適当な希釈剤との配合は当業者に周知である。
スタウロスポリン誘導体をFIP1L1−PDGFRαの阻害に有効である活性物質の量を含有する経腸用および非経口用医薬組成物、単位投与形態のかかる組成物、および薬学的に許容される担体を含むかかる組成物に処方することができる。
【0089】
これらの病状で用いるために、スタウロスポリン誘導体を単独で、または少なくとも1個の別の医薬的に活性な化合物と組合せて用いることができる。これらの活性化合物を同一の医薬調製物に組合せるか、または、組合せ相手を別個に投与できるか、または区別された量の組合せ相手との異なる確定された組合せの使用により、すなわち同時にまたは別の時点で投与することができるという意味で組合せ調製物「複数部品のキット」の形態で組合わせることができる。次いで複数部品のキットの部品を、例えば同時にまたは時間的にずらして、すなわち複数部品のキットの任意の部品に関して様々な時点で、および同等または異なる時間間隔で投与することができる。スタウロスポリン誘導体との組合せに使用するため列挙することができる化合物の非限定例は、シトシンアラビノシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、VP−16、またはイマチニブ等のような細胞毒性化学療法剤である。さらにスタウロスポリン誘導体を、有意な相乗効果を招くことが予測されるその他のシグナル伝達の阻害剤またはその他のオンコジーン標的薬剤と組合わせることができる。
【0090】
有用な組成物の例は欧州特許第0296110号、第0657164号、第0296110号、第0733372号、第0711556号、第0711557号に記載されている。
好ましい組成物は1995年6月14日公開の欧州特許第0657164号に記載されている。記載される医薬組成物は、グリコールグリセリドがグリセリルと、1個またはそれより多いC−C18飽和脂肪酸のポリエチレングリコールエステルの混合物である飽和ポリアルキレングリコールグリセリド中のミドスタウリンのような式Iの化合物の溶液または分散剤を含む。
【0091】
かかる組成物の2つの製造方法を本明細書後記に記載する。
組成物A:
60℃まで加熱することによりGelucire44/14(82部)を溶融する。粉末ミドスタウリン(18部)を溶融した材料に加える。得られた混合物を均質化し、そして一方はミドスタウリン25mg用量を、および他方は75mg用量を含有するように、得られた分散液を異なる大きさの硬質ゼラチンカプセルに導入する。得られたカプセルは経口投与に適当である。
【0092】
組成物B:
60℃まで加熱することによりGelucire44/14(86部)を溶融する。粉末ミドスタウリン(14部)を溶融した材料に加える。混合物を均質化し、そして一方はミドスタウリン25mg用量を、および他方は75mg用量を含有するように、得られた分散液を異なる大きさの硬質ゼラチンカプセルに導入する。得られたカプセルは経口投与に適当である。
【0093】
Gattefosseより市販により入手可能なGelucire44/14;はC8−C18飽和脂肪酸のグリセロールとのエステルおよび分子量約1500のポリエチレングリコールとの混合物であり、脂肪酸成分の組成に関する明細は、重量で4−10%カプリル酸、3−9%カプリン酸、40−50%ラウリン酸、14−24%ミリスチン酸、4−14%パルミチン酸および5−15%ステアリン酸である。
【0094】
Gelucire処方の好ましい実例は:
Gelucire(44/14):47g
60mlネジ切り型フラスコに入ったミドスタウリン:3.0g
からなる。
【0095】
好ましいソフトゲルの実例は以下のマイクロエマルジョンを含有する:
コーンオイルグリセリド 85.0mg
ポリエチレングリコール400 128.25mg
Cremophor RH40 213.75mg
ミドスタウリン 25.0mg
DLアルファトコフェロール 0.5mg
無水エタノール 33.9mg
全量 486.4mg
【0096】
しかしながらこれは説明のみの目的であることを明確に理解されるべきである。
好ましい実施形態では、本発明は、式VIIの化合物の1日有効量が100から300mg、好ましくは125mgから250mg、最も好ましくは220から230mg、好ましくは225mgである、本明細書に記載するような使用または方法に関する。
最も好ましくは、式VIIの化合物を1日1回、2回または3回、全量1日100から300mgを投与する。
非常に好ましい実施形態では、式VIIの化合物を1日3回、全量で1日220から230、好ましくは225mg、そして好ましくは投与あたり70から80mg、好ましくは75mgの用量で投与する。
【0097】
さらに別の実施形態では、本発明は包装材料および、前記包装材料中に含有される式(VII)のN−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3’,2’,1’−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミドまたは薬学的に許容されるその塩を含む製品に関し、ここで前記包装材料は前記式(VII)の化合物、または前記薬学的に許容される塩をFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患を患う哺乳動物に50から500mg、好ましくは100から300mg、好ましくは125mgから250mg、さらに好ましくは220から230mg、最も好ましくは225mgの量で、FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の進行を阻害するための具体的な投与計画に従って投与すべきことを示すラベルの指示を含む。
【0098】
式VIIの化合物を好酸球増加症候群またはイマチニブに対する耐性を有する好酸球増加症候群の処置のために、1日3回、全量で1日220から230mg、好ましくは225mg、そして好ましくは投与あたり70から80mg、最も好ましくは75mgの用量で投与する製品が好ましい。好ましい実施形態は式VIIの化合物25mgを含有するソフトゲルカプセルを含む製品に関する。
【0099】
本発明はさらに本明細書に前記した疾患および症状の処置のための本明細書に前記したスタウロスポリン誘導体のイマチニブとの組合せに関連する。かかる組合せの投与を例えば確定された組合せ医薬組成物または調製物の形態で同時にまたは連続してもしくは時間的にずらして行うことができる。本明細書に前記したような投与形態でのスタウロスポリン誘導体の、および米国でGLEEVEC(登録商標)/欧州でGLIVEC(登録商標)のその市販形態でのイマチニブの、これらの投与形態のために想定される投与量での投与が現在好ましい。
前記した組合せを用いるFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置は、疾患の重篤度または段階、および患者の全体的な症状等に依存して、いわゆる第一選択処置、すなわち先行する化学療法等をなんら伴わない、新たに診断された疾患の処置でよいか、またはいわゆる第二選択処置、すなわちイマチニブまたはスタウロスポリン誘導体での先行する処置の後の疾患の処置でよい。
【0100】
FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置のためのスタウロスポリン誘導体の効果は、以下の実施例の結果により説明される。これらの実施例はその範囲をいかなるようにも限定することなく、本発明を説明する:
レトロウイルス構築物MSCV−FIP1L1−PDGFRα−ires−EGFPおよび対応するT674I変異は以前に記載された(Cools et al., New England Journal of Medicine Vol. 348 No. 13, p 1201-1214 2003)。N659D変異をPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により導入した。
【0101】
細胞培養およびレトロウイルス形質導入
10%FBS(ウシ胎仔血清)を補充したDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)中で293T細胞を成長させた。10%FBSおよび1ng/mlマウスIL−3を補充したRPMI(Rosweli Park Memorial Institute)培地中でBa/F3細胞を成長させた。レトロウイルスベクターの生成および形質導入が記載された。形質転換されたBa/F3細胞をIL3の非存在下で成長させた。キナーゼ阻害剤イマチニブおよびPKC412を水(イマチニブ)またはDMSO(ジメチルスルホキシド)(PKC412)中10mMストック溶液として保存した。これらの阻害剤を使用するためにRPMI培地で希釈した。ウェスタンブロッティング用に溶解前90分間、イマチニブの存在下でBa/F3細胞をインキュベートした。用量反応曲線のために、Ba/F3細胞をイマチニブの存在下で24時間インキュベートし、そして出発および終了時点での生存細胞数を、Celltiter96AQueousone溶液増殖アッセイ(Promega)の使用により決定した。OriginPro 6.1ソフトウェア(OriginLab, Northampton, MA)を用いて用量反応曲線を適合させた。
【0102】
骨髄移植および動物の処置
Balb/cマウスをTaconic(Germantown, NY)から購入した。骨髄移植アッセイ(レシピエント・マウスあたり1×10細胞を注射する)およびマウスの薬物処置を以前に記載されたように行った(Schwaller et al., 1998; Kelly et al.; Weisberg et al., 2002)。使用前にイマチニブ(粉末として4℃で保存)を0.5%メチルセルロース(MC)水溶液に再懸濁した。PKC412(Gelucire(登録商標)44/14(GC)(Gattefosse、フランス)中6重量/重量%)をワックス状固体処方として4℃で保存した。投与前にGC/PKC412ワックス状固体混合物を44℃湯浴中で溶融し、そして滅菌脱イオン水で希釈した。定期的に動物の体重測定を行い、薬物の一貫した用量(イマチニブに関しては150mg/kg/日、およびPKC412に関しては100mg/kg/日)の投与を確実にした。22ゲージ胃管(Hornbecks)を用いて動物あたり最大容量150μlの経口胃管栄養法によりイマチニブに関しては12時間毎に、そしてPKC412に関しては24時間毎に投与を実施した。プラセボ動物には同一容量のMCまたはGC溶液を投与した。脾腫(背部正中線で検出可能な脾臓境界線)を有する任意の動物、または瀕死の動物を屠殺し、そして血液学的疾患の徴候に関して分析した。
【0103】
ヘパリン処理したガラスキャピラリーを用いて眼窩後方から末梢血を収集した。血液塗抹標本をWrightおよびGiemsaを用いて染色した。手動および自動(ADIVA 120 Hematology system, Bayer)全および鑑別血液細胞計数を実施した。関係する器官(脾臓、肝臓、心臓、肺、腸、後肢骨、および腎臓)の組織病理学的試験およびフローサイトメトリー用の脾臓および骨髄からの単一細胞懸濁液の調製を記載されるように実施した。マウスの生存時間の比較において、BMT(骨髄移植)の日から全時間を測定し、そして生存曲線における差異に有意性レベルを付けるためにログランク検定を用いる。
【0104】
組織病理学
マウス組織を自動処理器(Leica, Bannockburn, IL)で10%中性緩衝ホルマリン(Sigma)中少なくとも72時間固定し、アルコール中で脱水し、キシレン中で清浄し、そしてパラフィンに浸透させた。パラフィンに包埋した組織塊からの組織切片(4μm)を荷電したスライドに載せ、そしてキシレン中脱パラフィン化し、実験用アルコール溶液により再水和し、そしてヘマトキシリンおよびエオシンにより染色した。
【0105】
免疫沈降およびウェスタンブロッティング
抗Myc抗体(Cell Signaling)およびプロテインGアガロース(Roche)を用いて免疫沈降を実施した。各々の沈降実験は、myc標識FIP1L1−PDGFRα野生型またはT674I変異体を安定して発現する6×10Ba/F3細胞より開始した。1mM NaVO、20μMフェニルアルシンオキシド(Calbiochem)およびcomplete tablets(Roche)を含有する溶解バッファー(Cell Signaling)中で細胞を溶解した。ウェスタンブロッティング用に、遠心によりBa/F3細胞を回収し、そして2%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)および40μM DTT(ジチオスレイトール)(Cell Signaling)を含有する1×ローディングバッファー中で直接溶解し、10−12%SDS−PAGE(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)を用いて分離し、そして膜に移した。使用した抗体は:抗ホスホSTAT5および抗ホスホ−チロシン(P−Tyr−100/102)(Cell Signaling)、抗PDGFRα(Upstate)、抗−STAT5b(Santa-Cruz)、抗、マウスPOおよび抗ウサギPO(Amersham Pharmacia Biotech)であった。Western Lightning system (Perkin Elmer)を用いて検出を行った。
【0106】
以下の表はほんの一例としてFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患におけるミドスタウリン(PKC412)の効果を説明する。
【0107】
FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置のためのイマチニブの効果およびFIP1L1−PDGFRα(T674I)誘起疾患に対する抵抗性(試験1)
【表1】

死亡の時点または試験終了時に決定した、試験1の異なる群のマウスの脾臓重量および白血球数(WBC)。n:分析したマウスの数。
【0108】
FIP1L1−PDGFRα−およびFIP1L1−PDGFRα(T674I)誘起骨髄増殖性疾患(試験2)の双方の処置のためのPKC412(ミドスタウリン)の効果。
【表2】

【表3】

死亡の時点または試験終了時に決定した、試験2の異なる群のマウスの脾臓重量および白血球数(WBC)。n:分析したマウスの数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置のための医薬組成物の製造のための式
【化1】

または
【化2】

または
【化3】

または
【化4】

〔式中、RおよびRは互いに別個に、非置換もしくは置換アルキル、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、アミノ、一もしくは二置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−一もしくはN,N−二置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−一もしくはN,N−二置換アミノスルホニルであり;
nおよびmは互いに別個に、0を含んで0から4を含んで4までの数字であり;
は水素、各々の場合に炭素原子29個までの脂肪族、炭素環式、もしくは炭素環式−脂肪族ラジカル、または各々の場合に炭素原子20個までの、および各々の場合にヘテロ原子9個までの複素環式もしくは複素環式−脂肪族ラジカル、または炭素原子30個までのアシルであり;
Xは2個の水素原子;1個の水素原子およびヒドロキシ;O;または水素および低級アルコキシを表し;
QおよびQ’は別個に薬学的に許容される有機骨格(organic bone)、または水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、アミノ、一もしくは二置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−一もしくはN,N−二置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−一もしくはN,N−二置換アミノスルホニルである〕
のスタウロスポリン誘導体または、少なくとも1個の塩形成基が存在する場合、その塩、またはその水素化誘導体の使用。
【請求項2】
FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置のための医薬組成物の製造のための式
【化5】

または
【化6】

または
【化7】

または
【化8】

または
【化9】

または
【化10】

〔式中、RおよびRは互いに別個に、非置換もしくは置換アルキル、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、アミノ、一もしくは二置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−一もしくはN,N−二置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−一もしくはN,N−二置換されたアミノスルホニルであり;
nおよびmは互いに別個に、0を含んで0から4を含んで4までの数字であり;
n’およびm’は互いに別個に、1を含んで1から4を含んで4までの数字であり;
、R、RおよびR10は互いに別個に、水素、各々の場合に炭素原子29個までの脂肪族、炭素環式もしくは炭素環式−脂肪族ラジカル、各々の場合に炭素原子20個までの、および各々の場合にヘテロ原子9個までの複素環式もしくは複素環式−脂肪族ラジカル、炭素原子30個までのアシルであり、ここでRは存在しないでもよいか;
またはRが炭素原子30個までのアシルであり、そしてRはアシルではなく;
が存在しない場合、pは0であるか、またはRおよびRが双方共に存在する場合、1であり、そして各々の場合前記したラジカルの1個であり;
は水素、または各々の場合に炭素原子29個までの脂肪族、炭素環式もしくは炭素環式−脂肪族ラジカル、または各々の場合に炭素原子20個までの、および各々の場合にヘテロ原子9個までの複素環式もしくは複素環式−脂肪族ラジカル、または炭素原子30個までのアシルであり;
、RおよびRはアシルもしくは−(低級アルキル)−アシル、非置換もしくは置換アルキル、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、アミノ、一もしくは二置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ、カルボニル、カルボニルジオキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−一もしくはN,N−二置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−一もしくはN,N−二置換アミノスルホニルであり;
Xは2個の水素原子;1個の水素原子およびヒドロキシ;O;または水素および低級アルコキシを表し;
Zは水素または低級アルキルを表し;
そして波線で示された2個の結合のいずれかは環Aでは存在せず、そして4個の水素原子により置換され、ならびに環Bの2本の波線は各々、それぞれの平行な結合と一緒に二重結合を示すか;
または波線で示された2個の結合は環Bでは存在せず、そして全部で4個の水素原子により置換され、ならびに環Aの2本の波線は各々、それぞれの平行な結合と一緒に二重結合を示すか;
または環Aおよび環Bの双方の4個の波線結合の全てが存在せず、そして全部で8個の水素原子により置換される〕
の化合物から選択されるスタウロスポリン誘導体または、少なくとも1個の塩形成基が存在する場合、その塩の使用。
【請求項3】
FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置のための医薬組成物の製造のための式I
【化11】

〔式中、
mおよびnは各々0であり;
およびRは互いに別個に
水素、
非置換であるか、またはカルボキシ;低級アルコキシカルボニル;およびシアノから互いに別個に選択されるラジカルにより一もしくは二置換された、特に一置換された低級アルキルであるか;
または
は水素もしくは−CHであり、そして
は部分式R−CO(ここでRは低級アルキル;アミノ−低級アルキル、ここでアミノ基は保護されていない形態で存在するか、または低級アルコキシカルボニルにより保護されている;テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル;フェニル;イミダゾリル−低級アルコキシフェニル;カルボキシフェニル;低級アルコキシカルボニルフェニル;ハロゲン−低級アルキルフェニル;イミダゾール−1−イルフェニル;ピロリジノ−低級アルキルフェニル;ピペラジノ−低級アルキルフェニル;(4−低級アルキルピペラジノメチル)フェニル;モルホリノ−低級アルキルフェニル;ピペラジノカルボニルフェニル;または(4−低級アルキルピペラジノ)フェニル)である)のアシルであるか;
もしくは部分式R−O−CO−(Rは低級 アルキルである)のアシルであるか;
もしくは部分式RHN−C(=W)−(ここでWは酸素であり、そしてRは以下の意味を有している:モルホリノ−低級アルキル、フェニル、低級アルコキシフェニル、カルボキシフェニル、または低級アルコキシカルボニルフェニル)のアシルであるか;
またはRは低級アルキルフェニルスルホニル、典型的には4−トルエンスルホニルであり;
は水素または低級アルキルであり、
Xは2個の水素原子またはOを表し;
Zはメチルまたは水素である〕
のスタウロスポリン誘導体または、少なくとも1個の塩形成基が存在する場合、その塩の使用。
【請求項4】
FIP1L1−PDGFRαに変異が存在するFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置のための請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
変異がT674Iである請求項4に記載の使用。
【請求項6】
好酸球増加症候群の処置のための請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
好酸球増加症候群がイマチニブによる処置に耐性である請求項6に記載の使用。
【請求項8】
かかる処置を必要とする哺乳動物にFIP1L1−PDGFRα阻害量の請求項1から3のいずれか一項で定義されるスタウロスポリン誘導体を投与することを含む、FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患を患う哺乳動物を処置するための方法。
【請求項9】
好酸球増加症候群またはイマチニブに対する耐性を有する好酸球増加症候群を処置するための請求項8に記載の方法。
【請求項10】
FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置のための医薬組成物の製造のための式(VII):
【化12】

のN−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3’,2’,1’−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミドまたはその塩の使用。
【請求項11】
好酸球増加症候群またはイマチニブに対する耐性を有する好酸球増加症候群を処置するための請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式(VII)のN−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3’,2’,1’−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミドを含む、FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置のための医薬組成物。
【請求項13】
かかる処置を必要とする哺乳動物にFIP1L1−PDGFRα阻害量の、請求項10で定義される式(VII)のN−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3’,2’,1’−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミドを投与することを含む、FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患を患うヒトを含む哺乳動物を処置するための方法。
【請求項14】
好酸球増加症候群またはイマチニブに対する耐性を有する好酸球増加症候群を処置するための請求項13に記載の方法。
【請求項15】
治療上有効量の式VIIの化合物を哺乳動物対象に、1から6週間の期間、週7から4回、またはその期間の約100%から約50%の日数で投与し、続いて1から3週間の期間薬剤を投与せず、そしてこのサイクルを1から数サイクルまで繰り返す請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
式VIIの化合物の1日有効量が1日100から300mg、好ましくは220から230mg、最も好ましくは225mgである請求項10から15のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項17】
式VIIの化合物を1日1回、2回または3回、全量1日100から300mg、好ましくは220から230mg、最も好ましくは1日225mg投与する、請求項10から16のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項18】
式VIIの化合物を1日3回、全量で1日220から230mg、好ましくは225mg、そして好ましくは投与あたり70から80mg、最も好ましくは75mgの用量を投与する、請求項10から17のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項19】
包装材料および、前記包装材料中、請求項10で定義される式(VII)のN−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3’,2’,1’−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミドまたは薬学的に許容されるその塩を含む製品であって、ここで前記包装材料が前記式(VII)の化合物、または前記薬学的に許容される塩をFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患を患う哺乳動物に100から300mg、好ましくは220から230mg、最も好ましくは225mgの量で、FIP1L1−PDGFRαを阻害するための具体的な投与計画に従って投与すべきことを示すラベルの指示を含む製品。
【請求項20】
式VIIの化合物を1日3回、全量で1日220から230mg、好ましくは225mg、そして好ましくは投与あたり70から80mg、最も好ましくは75mgの用量を投与するFIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置のための請求項19に記載の製品。
【請求項21】
イマチニブと組合わせた請求項1から7のいずれか一項に記載の、FIP1L1−PDGFRα誘起骨髄増殖性疾患の処置のためのスタウロスポリン誘導体の使用(ここで、各々の活性成分は、互いに別個に遊離の形態で、または薬学的に許容される塩の形態で存在し得る)。








【公表番号】特表2006−527181(P2006−527181A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508282(P2006−508282)
【出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006070
【国際公開番号】WO2004/108132
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】