妊婦帯
【課題】使用感に優れ、かつ、優れた腰痛緩和・予防効果を発揮する妊婦帯を提供すること。
【解決手段】妊婦の背面側腰部の上端付近M1から下腹部N1にかけて斜め下方に向かって巻かれる帯状であって、その両端が前面側において互いに着脱可能になっており、かつ、背面側腰部の上端付近M1から下腹部N1に沿った方向に弾性力を有する下腹ベルト部20と、下腹ベルト部20の背面側に接続されると共に、妊婦の胸椎に沿って背面側に配置され、胸椎に沿った方向に弾性力を有する背中ベルト部30と、背中ベルト部30の上端部に接続されると共に、妊婦の肩部に掛けられることで肩部に対して位置決めされる肩ベルト部40とを備えていることを特徴とする。
【解決手段】妊婦の背面側腰部の上端付近M1から下腹部N1にかけて斜め下方に向かって巻かれる帯状であって、その両端が前面側において互いに着脱可能になっており、かつ、背面側腰部の上端付近M1から下腹部N1に沿った方向に弾性力を有する下腹ベルト部20と、下腹ベルト部20の背面側に接続されると共に、妊婦の胸椎に沿って背面側に配置され、胸椎に沿った方向に弾性力を有する背中ベルト部30と、背中ベルト部30の上端部に接続されると共に、妊婦の肩部に掛けられることで肩部に対して位置決めされる肩ベルト部40とを備えていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰痛緩和・予防機能を備えた妊婦帯に関する。
【背景技術】
【0002】
妊婦は、下腹部の膨出に伴う負荷や、妊娠5ヶ月位から骨盤が緩みだすことから腰痛が多いと考えられている。
このため、従来の妊婦帯は、身体に負担を強いる腹部の重みをサポートして負担を軽減し、腰痛を緩和するようにしている。
例えば、弾性力を有する帯を、妊婦の背面側腰部の上端付近から腹部の下側にかけて巻いて、背面側腰部の上端付近を基準にして腹部の重みを支え、これにより、腰部に過度な負担がかかることを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−19560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような腰痛緩和機能を備えた妊婦帯は、確かに腰痛を緩和することはできるが、その緩和の程度が完全なわけではない。
例えば、下腹部を支える力を強めれば腰痛緩和の効果を高めることもできるが、それでは、弾性力を有する帯が腹部を強く締め付けて圧迫感を与える等、使用感が悪くなってしまうため、上述した従来の妊婦帯の形式では、腰痛緩和効果に一定の限界があると言わざるを得ない。
【0005】
さらに、本発明者の研究によれば、妊娠時における腰痛には背筋が関与していることが分かった。すなわち、妊婦は腰椎よりも前方に位置する重い腹部により腰椎が前方に湾曲するよう負荷がかかるため、体のバランスを保とうとして胸椎を後方に湾曲させる等、脊柱全体が前後方向に複雑に湾曲することになる。そして、この脊柱の複雑な湾曲は主に背筋が支持することになる。なお、実際に、筋肉の働きの大きさを見ることができる筋電図で、妊婦の背中における状態を確認したところ、通常の人と比べて大菱形筋や僧帽筋等の背筋が緊張している状態が確認され、特に上側の背筋の緊張が大きく、腰部側の筋肉の緊張は比較的小さいことがわかった。そして、このことから浅背筋だけでなく、脊柱起立筋等の深背筋にも影響が出ていると考えられ、このような背筋が疲労をすると、湾曲した脊柱を背筋だけでなく腰部筋肉で支えようとする度合いが大きくなり、腰部筋肉が疲労して、腰痛が悪化する傾向が確認された。そして、従来の妊婦帯の構成では、腹部や腰部回りを中心に腰痛対策をしており、腰痛緩和の効果を十分に高められないと考えるに至った。
【0006】
本発明は上記課題を解消し、使用感に優れ、優れた腰痛緩和または腰痛予防効果を発揮する妊婦帯を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、請求項1の発明によれば、妊婦の背面側腰部の上端付近から下腹部にかけて斜め下方に向かって巻かれる帯状であって、その両端部が前面側において互いに着脱可能になっており、かつ、前記背面側腰部の上端付近から前記下腹部に沿った方向に弾性力を有する下腹ベルト部と、前記下腹ベルト部の背面側に接続されると共に、前記妊婦の胸椎に沿って背面側に配置され、前記胸椎に沿った方向に弾性力を有する背中ベルト部と、前記背中ベルト部の上端部に接続されると共に、前記妊婦の肩部に掛けられることで前記肩部に対して位置決めされる肩ベルト部とを備えている妊婦帯により達成される。
【0008】
請求項1の構成によれば、妊婦帯は、妊婦の背面側腰部の上端付近から下腹部にかけて斜め下方に向かうように巻かれる帯状であって、背面側腰部の上端付近から下腹部に沿った方向に弾性力を有する下腹ベルト部を有している。なお、本発明の「弾性」とは、所謂「ゴム弾性」と同様な性質の作用を発揮するもので、「引っ張ると伸びるが、放すと元の状態に戻る」力を作用させるものを言う。このため、この下腹ベルト部で、背面側腰部の上端付近を基準にして腹部を支えて、下腹部の膨出に伴い骨盤にかかる重みを軽減することができる。また、この下腹ベルト部は、その両端部が前面側において互いに着脱可能になっているため、妊婦は自ら前面側で下腹ベルト部の長さを調整しながら引っ張って両端部を固定でき、腹部を支える力を自らの状態に応じて容易に調整することができる。
【0009】
さらに、本発明の妊婦帯は、下腹ベルト部の背面側に接続されると共に、妊婦の胸椎に沿って背面側に配置され、胸椎に沿った方向に弾性力を有する背中ベルト部と、背中ベルト部の上端部に接続されると共に、妊婦の肩部に掛けられることで肩部に対して位置決めされる肩ベルト部とを有している。
そうすると、胸椎に沿った方向に弾性力を有する背中ベルト部は、肩ベルト部で上端位置が保持され、下腹ベルト部の背面側を胸椎に沿って上端部側に引っ張ることになる。このため、上述した下腹ベルト部における下腹部を背面側腰部の上端付近に引き上げるように斜め上方向に働く弾性力と、背中ベルト部における胸椎に沿った方向に働く弾性力とが合成されて、妊婦帯全体としては、下腹部を背中ベルト部の上端部側に引き上げるように力が働く。したがって、腹部が脊柱を前方に曲げようとする重みを身体の上側から支えて、上述した脊柱の前後方向の湾曲を効果的に軽減させることができる。そこで、脊柱の湾曲を支持しようとする背筋の負担を軽減して背筋の疲労を和らげ、もって腰部筋肉へかかる負担も軽減できる。
しかも、下腹ベルト部の背面側が、背中ベルト部を介して肩ベルト部で保持されるため、従来の妊婦帯よりも位置ずれを起こしづらく、所定の位置で下腹部を支えられる。
なお、このように、本発明は腹部や腰部まわりを強く締め付ける方法で腰痛を緩和させているわけではなく、適切な力で下腹部を締め付けて保持でき、装着感に優れた妊婦帯とすることができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明の構成において、前記背中ベルト部の胸椎上側に対応した領域と、前記背中ベルト部の前記胸椎上側より下側の領域とでは、相対的に、前記背中ベルト部の前記胸椎上側より下側の領域の弾性力が強いことを特徴とする。
請求項2の構成によれば、背中ベルト部の胸椎上側に対応した領域と、その胸椎上側より下側の領域とでは、相対的に、胸椎上側より下側の領域の弾性力が強い。このため、背中ベルト部は、肩周りなどの動きの大きい胸椎上側に対応した領域の弾性力が弱くなって、妊婦の動きを阻害しないようにすることができ、かつ、この胸椎上側に対応した領域の弾性力を弱くした分だけ、下側の背中ベルト部の弾性力を強くして、背中ベルト部全体の弾性力を確保できる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明の構成において、前記肩ベルト部の長さを可変することで、着用した際の前記背中ベルト部の長さを調整可能にしたことを特徴とする。
請求項3の構成によれば、肩ベルト部の長さを可変することで、着用した際の前記背中ベルト部の長さを調整可能にした。したがって、着用した際、妊婦の手が届く肩ベルト部の長さを可変することで、妊婦が体形や腹部の膨出の変化、疲労度等に応じて背中ベルト部の長さを容易に調整し、背中ベルト部の弾性変形量を自在に調整できる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1ないし3の発明のいずれかの構成において、前記下腹ベルト部と前記背中ベルト部とは、少なくとも前記下腹ベルト部および前記背中ベルト部よりも剛性およびクッション性の高いパッド部を介して接続されていることを特徴とする。
請求項4の構成によれば、下腹ベルト部と背中ベルト部とは、少なくとも下腹ベルト部および背中ベルト部よりも剛性の高いパッド部を介して接続されている。したがって、下腹ベルト部と背中ベルト部とを接続した部分がよれたりして、接続部分の身体に対する位置が定まらないような事態を防止することができる。また、このパッド部は、クッション性も高いため、身体にある程度密着して、腰部における負担感を低減できるだけでなく、各ベルト部の基部となる下腹ベルト部と背中ベルト部との接続部分の身体に対する位置ずれをより防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、使用感に優れ、優れた腰痛緩和・予防効果を発揮する妊婦帯を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0015】
図1ないし図5は、本発明の第1の実施形態に係る妊婦帯10であって、図1は妊婦帯10の概略背面図、図2は妊婦帯10の後述する各ベルトを着用した状態を想定して組み立てた概略正面図、図3は妊婦帯10を着用した状態における概略背面図、図4は妊婦帯10を着用した状態における概略側面図、図5は図1のA−A線切断断面図である。
これらの図に示される妊婦帯10は、下腹ベルト部20と、背中ベルト部30と、肩ベルト部40と、補助ベルト部50と、パッド部60とを有している。
【0016】
下腹ベルト部20は、図4に示すように、背面側腰部の上端付近M1から下腹部N1にかけて斜め下方に向かうように巻かれる帯状体であり、下腹部N1を背面側腰部の上端付近M1側である斜め上方から持ち支えるような格好となっている。
具体的には、下腹ベルト部20は、図3に示すように、脊柱上にある背面側腰部の上端付近M1に位置するパッド部60から前面側の下腹に向かって、左右両側にそれぞれ延伸された広幅の二本の帯21,22を有しており、図2に示すように、前面側において開閉及び長さ調整できるように、その両端部が互いに着脱可能になっている。本実施形態の場合、図1及び図2に示すように、二本の帯21,22の先端側21a,22aどうしが、面ファスナーにより前面の下腹部で接続されて着脱可能になっており、一方の帯22の身体側の面に設けられた雄部材23(点描で示す部分)が、他方の帯21の外面に設けられ、長手方向に沿って所定の長さL1を有する雌部材24(平行斜線で示す部分)に着脱可能であって、位置を調整可能に固定されるようになっている。
【0017】
なお、この二本の帯21,22どうしを固定する手段は、面ファスナーに限られず、例えばフックアイ、ホック、ボタンなどの係止手段を用いてもよい。その際、二本の帯21,22に設けた雄雌等の対となる係止手段のうち、一方の係止手段を一方の帯側の長さ方向に複数列並べて、他方の係止手段を選択的に一方の係止手段に装着することでベルト部20の長さを調整可能としても勿論よい。
また、下腹ベルト部20は、二本の帯21,22が一体に形成されて一本となっていてもよいが、本実施形態の場合、二本の帯21,22の基端部側がパッド部60に縫合されることで接続されている。
【0018】
そして、下腹ベルト部20は、背面側腰部の上端付近M1から下腹部N1に沿った方向に弾性力を有しており、引き伸ばして着用することにより、腹部の下側を背面側腰部の上端付近M1側に(図4の矢印nm方向に)斜め上方に向かって持ち上げることができる。
本実施形態の場合、下腹ベルト部20の弾性力はパワーネット等のウレタンやゴム等の弾性材料を使用した伸縮生地で付与されており、ここでは、図1に示すように、上述した面ファスナーが設けられている先端側21a,22aも伸縮性生地を使用して、パワーネット等の弾性部材上に縫合することで、下腹ベルト部20全体が伸縮性生地で形成され、弾性力を有する構成とされている。なお、下腹ベルト部20は、例えば面ファスナーが設けられた先端側21a,22a以外の脇身頃に位置する部分21b,21bのみ(即ち、下腹ベルト部20の一部のみ)に弾性力を持つ部分を配置するように構成してもよい。
また、この下腹ベルト部20は、例えばパワーネットの幅方向にテグス等の非伸縮性材料を設けて、幅方向には伸縮せず、長手方向に沿ってのみ弾性力を発揮するようにしているが、長手方向の弾性力は強くしつつ、幅方向にも僅かに伸縮可能とすることで身体にフィットする構成としても良い。また、パワーネット等の伸縮性材料の弾性力を阻害しない範囲で、身体面における感触を高めるための層を一体化してもよい。
【0019】
背中ベルト部30は、下腹ベルト部20の背面側に接続されており、本実施形態の場合、背面側腰部の上端付近M1に配置されるようにしたパッド部60を介して、下腹ベルト部20と接続されている。
具体的には、図3及び図5に示すように、パッド部60のクッション層62,64が形成された上端縁60cと背中ベルト部30とが縫合され、パッド部60のクッション層62,64が形成された上側における左右の両側縁60a,60bと下腹ベルト部20とが縫合されることで、背中ベルト部30と下腹ベルト部20とがパッド部60を介して接続されている。
【0020】
また、背中ベルト部30は、妊婦の胸椎(図6参照)に沿って背面側に配置されている。本実施形態の場合、図3に示すように、胸椎に沿って、背面側腰部の上端付近となる腰椎と胸椎の境界付近M1から胸椎と頚椎の境界付近P1にかけて、背面側に配置されており、本実施の形態においては、パッド部60の関係上、腰椎と胸椎の境界付近M1の上側に位置する構成とされている。
なお、背中ベルト部30は幅の太い一本の帯状が胸椎上に配置されているが、本発明は後述する胸椎に沿った方向に弾性力を発揮できればこの形態に限られず、例えば、複数本から構成されていてもよく、また、その際、胸椎上には配置されず、胸椎の両脇の脊柱起立筋に沿って配置する構成とされてもよい。
【0021】
そして、背中ベルト部30は、胸椎に沿った方向に弾性力を有している。この弾性力は、下腹ベルト部20の背面側と、胸椎と頚椎の境界付近P1との間で力を発揮するようになっており、引き伸ばして着用された際、後述する肩ベルト部40と協働して、下腹ベルト部20の背面側腰部の上端付近M1(即ちパッド部60)を、胸椎と頚椎の境界付近P1方向に引っ張るように弾性力を発揮している。
なお、本実施形態の背中ベルト部30は、下腹ベルト部20と同様の材料で形成されており、例えば、パワーネットなどのウレタンやゴム等の弾性材料を使用した伸縮生地で弾性力が付与されており、パワーネットの幅方向(水平方向)にテグス等の非伸縮性材料を設けて、胸椎方向(上下方向)にのみ弾性力を発揮するようにしている。
【0022】
また、背中ベルト部30の弾性力は、背中の各機能に対応して付与されることが好ましく、本実施形態の場合、図3に示すように、背中ベルト部30の胸椎上側に対応した領域31と、背中ベルト部30の胸椎上側より下側の領域32とでは、相対的に下側の領域32の弾性力の方がより強くなるよう構成されている。そして、胸椎上側領域31の弾性力が相対的に弱いことで腕を動かし易くしているにも係わらず、所定の弾性力を確保している。すなわち、背中ベルト部30の胸椎上側に対応した領域31の弾性力を強くしてしまうと、肩甲骨周り等の動きを阻害して、肩が回し難くなって日常生活に支障を及ぼす恐れがある。このため、胸椎上側に対応した領域31の弾性力を比較的弱くし、この弾性力を弱くした分だけ、背中ベルト部30の下側の領域32の弾性力を高めており、このような構成とすることで、さらに、身体へのフィット性を高めつつ、胸椎下側領域32よりも広い面積とされた胸椎上側領域31の通気性を確保している。
なお、図5に示すように、背中ベルト部30では、全体がパワーネット等の弾性体34で形成され、背中ベルト部30の下側の領域32にのみタックゴム等の材質や厚み、伸縮繊維の太さ等を調整することによって、強い弾性力を有する弾性層である弾性体35をさらに付加して、下側の領域32の弾性力を強くしている。
【0023】
肩ベルト部40は、Y字状に左右に分離した背中ベルト部30の上端部に接続されると共に、妊婦の肩部に掛けられることで、肩部に対して位置決めされるようになっている。
具体的には、肩ベルト部40は、図3及び図4に示すように、背中ベルト部30の上端部の左右側縁から延伸するようにした一対のベルト41,42からなっており、左右のベルト41,42は、いずれも同様の構成となっている。そして、この一対のベルト41,42は、着用された場合、それぞれ肩部の左右の各々に掛けられるようになっており、その端部41a,42aが背中ベルト部30の下端における左右に位置するようにパッド部60の上端部60cと結合されている。
なお、本発明の肩ベルト部40は、例えば、肩部の周囲を回繞させてから、背中ベルト部30と接続されていない一方の端部41a,42aを背中ベルト部30の略中間領域に接続させてもよいが、好ましくは、上述のように、一方の端部41a,42aをパッド部60に接続した方が着脱し易いだけでなく、これにより、背中ベルト部30の弾性力を阻害するような原因を防止できる。
【0024】
このように、肩ベルト部40は使用者の肩部に対して位置決めされてその動きが規制されているため、この肩ベルト部40と接続された背中ベルト部30は、その上端部が身体に対して位置決めされることになる。したがって、背中ベルト部30は、その弾性力により、図4に示すように、脊柱に沿った上方向(矢印mp方向)に、下腹ベルト部20の背面側を引っ張ることになる。
【0025】
また、肩ベルト部40は、その長さを可変することで、装着した際の背中ベルト部30の長さを調整可能にしている。
具体的には、この肩ベルト部40の長さを可変する手段は、図1、図4に示すように、肩口よりも下側(パッド部60側)に設けられたアジャスター44により実現している。なお、アジャスター44は、肩ベルト部の長さが可変できればその構成はどのようなものでもよく、例えば、図示するように、パッド部60に縫合されたベルト端部41a,42aにループの端部に設けた環状部材を配置して、ベルト41の一端をアジャスター44に固定して、環状部材を通してループ状としてアジャスター44を通すことで長さを可変するタイプのもの、或いは、長手方向に沿って複数の雌型スナップを設け、この雌型スナップと環状を通したベルトの先端に設けられた雄型スナップとを嵌合するような構造のものでもよい。
【0026】
なお、本実施形態の肩ベルト部40は、例えば下腹ベルト部20と同様にパワーネット等の伸縮性生地とされ、長手方向にある程度の弾性力を付与することで、身体の動きに対応できるようにしている。具体的には、肩ベルト部40は身体の前面の材料が切り替えられた切替部43,43より上側は弾性力強いパワーネット等の伸縮材料で形成されて、確実に背中ベルト部30を保持できる形態とされており、アジャスター44等が設けられた切替部43より下側は比較的弾性力の弱いベルト部材によって形成されて、長さ調整を行いやすい構成とされている。なお、肩ベルト部40は、下腹ベルト部20や背中ベルト部30に比べて幅寸法が小さいため、その弾性力は下腹ベルト部20や背中ベルト部30の弾性力に比べれば僅かである。また、肩ベルト部40は、例えば、パワーネットの幅方向にテグス等の非伸縮性材料を設けて、長手方向にのみ弾性力を発揮するようにしている。
【0027】
パッド部60は、下腹ベルト部20と背中ベルト部30とを取り付ける部分に介在し、少なくとも下腹ベルト部20および背中ベルト部30に比べて剛性およびクッション性が高くなっている。これにより、着用された際に、下腹ベルト部20と背中ベルト部30を所定の位置に配置すると共に、伸縮性を抑えた材料で形成することで、各ベルト部20,30,40の基部として各ベルト部の弾性力を有効に機能できる構成としている。すなわち、下腹ベルト部20と背中ベルト部30との接続部分が動き易かったり伸縮してしまうと、下腹ベルト部20と背中ベルト部30の身体に対する位置が定まらず、このため妊婦帯10の脊柱に与える影響も定まらなくなって、ともすると背筋の活動に対する負荷となってしまって疲労が高まる恐れがある。また、下腹ベルト部20の位置が定まらないと、妊婦帯としての機能を発揮することができなくなる。そこで、下腹ベルト部20と背中ベルト部30との身体に対する接続位置を定めるためにパッド部60を設けた。
【0028】
本実施形態の場合、パッド部60は、図5に示すように、弾性や伸縮性が略無く、厚み方向にクッション性を有する板状のカルソフト等から形成されたクッション材料を用いて形成されている。そして、このカルソフト等から形成されたクッション材料を厚み方向に積層することで、クッション性と剛性の両方を兼ねるようにしている。
さらに、パッド部60は、その全体を同じ剛性とせず、図3に示すように、各ベルト部20,30,40,50が縫合等して取り付けられた一方の領域(図3の破線で囲まれた上側の領域)を、他方の領域よりも剛性を高めるようにしている。具体的には、この剛性が高められた一方の領域は、図5に示すように、複数枚の板状のカルソフト等から形成されたクッション層62,64を、通気性を有するよう表面に開口等を形成した身体側(内側)の表面材67と外側の表面材68とを有する表面部材61の内側の一部に、厚み方向に積層するように収容して形成されている。なお、一方の領域(図3の破線で囲まれた上側の領域)は、図5では、外側のクッション層62に、クッション層62より小さな外形を有する身体側のクッション層64を厚み方向に積層し、外側のクッション層62の周縁部を、カルソフト等から形成された表面部材61に縫合することで形成されている。そして、この一方の領域の剛性が比較的高くなるようにしたクッション層62,64を適切な大きに形成することで、剛性を高めても着用感を維持できるようにしている。
なお、表面部材61の剛性は低いことが好ましく、本実施形態の場合、クッション層62,64よりも薄手の一枚のカルソフトから形成されている。
【0029】
そして、図1に示すように、パッド部60と下腹ベルト部20との接続構造については、パッド部60の左右両端60a,60bに、二本の帯21,22の夫々の端部を接続するようにしているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、下腹ベルト部20を一本の帯にして、下腹ベルト部20の背面側腰部の上端付近M1であって身体側の面に、パッド部60の外側の面を重ね合わせて縫合してもよい。なお、本実施形態の場合、下腹ベルト部20は、上述した一方の領域(図3の破線で囲まれた上側の領域)の表面部材61に縫合されることで、間接的にクッション層62と接続されている。
また、パッド部60と背中ベルト部30との接続構造についても、図5に示されるように、表面部材61を介して接続されている。すなわち、クッション層62に縫合された表面部材61と背中ベルト部30の下端部とが縫合されることで、特に伸縮性を抑えたクッション層62と背中ベルト部30とが接続されている。なお、本発明はこれに限られず、例えば、クッション層62に背中ベルト部30の下端部を直接縫合したり、パッド部60の外側の面に背中ベルト部30を重ね合わせて縫合したりしてもよい。
【0030】
また、本実施形態の場合、クッション層62と外側の表面材68の間には、図1に示すように、少なくともパッド部60に比べて強い剛性を有し、両端部が離間する弓形とされた骨格部69が、脊柱の両脇に沿うように2本配置されている。ここでは、骨格部69は、例えば、コイルボーンや樹脂ボーン等を用いて長手方向に撓むことが可能で、伸縮性を有さない細長い棒状に形成されている。これにより、表面部材61や補助ベルト部50の動きを規制しつつ、パッド部60の形状保持性を高めている。
また、パッド部60については、外側の表面材68の内側に、弾力性を有する伸縮層68aを設けて、パッド部60全体での身体へのフィット性を高めるようにしている。
【0031】
補助ベルト部50は、図4に示すように、背面側腰部の上端付近M1から略水平方向に腹部の上側に沿って胴部に巻きつけられる帯状体であって、パッド部60を変形させて身体に密着するよう身体側に押し付けて位置決めし、これにより下腹ベルト部20および背中ベルト部30を位置決めして、動きづらいように固定できるようにしている。特に、本実施形態の妊婦帯10は、様々な体形を有する者に着用されるものであり、例えば、身体の動きに伴って、背中ベルト部30の弾性力により、パッド部60の位置が背面側腰部の上端付近M1より上になってしまう恐れがある。そして、パッド部60が所定の位置より上になると、下腹ベルト部20の腹部を締め付ける力が必要以上に大きくなって装着感を損なう恐れがある。そこで、補助ベルト部50によって、パッド部60を背面側腰部の上端付近M1に位置決めした状態で保持するようにしている。
【0032】
ここでは、補助ベルト部50は、胸部の下近傍から背面側腰部の上端付近M1にかけて配置されており、パッド部60の左右両端縁60a,60bから延びるように身体に巻き付けられている。なお、補助ベルト部50は、パッド部60の部分で分断されずに一本のベルトから形成されてもよく、この際、パッド部60を身体側に均一に押し付けて変形させるように、幅方向(図5の上下方向)の寸法がクッション層62よりも大きく、例えばパッド部60の上下方向の寸法と同等にして、パッド部60の外側に重ねて配置するようにしてもよい。
また、補助ベルト部50は、図1及び図4に示すように、前面側では、腹部への締付感を低減するため、幅方向の寸法を小さくしており、全体として、背面側から脇身頃側に向かうに従って幅寸法が除々に小さくなるように形成されている。
【0033】
なお、本実施形態の補助ベルト部50は、長手方向に弾性力を発揮するように、例えばパワーネット等の伸縮性材料で形成され、幅方向(図4の上下方向)にテグス等の非伸縮性材料を設けて、長手方向にのみ弾性力を発揮するようにしている。
また、補助ベルト部50も、下腹ベルト部20と同様に、図2に示すように、前面側において長さ調整できるように、両端部が面ファスナー等で互いに着脱可能になっている。
このように本実施の形態は、基点となるパッド部60に下腹ベルト部20、背筋ベルト部30、肩ベルト部40、補助ベルト部50がそれぞれ連結されており、それぞれ目的に応じて、背中ベルト部30の下側領域32の弾性力が最も強く、その他の背中ベルト部30の部分や下腹ベルト部20がその次に強い弾性力を有する構成とされ、補助ベルト部50、肩ベルト部40の弾性力が比較的弱い構成とされている。
【0034】
本発明の第1の実施形態は以上のように構成されており、妊婦帯10は、背面側腰部の上端付近M1を基準にして下腹部N1を支える下腹ベルト部20と、この下腹ベルト部20の背面側に接続されると共に、胸椎に沿って背面側に配置され、胸椎に沿った方向に弾性力を有する背中ベルト部30と、背中ベルト部30の上端部に接続されると共に、肩部に対して位置決めされた肩ベルト部40とを有している。このため、図4に示すnm方向に働く下腹ベルト部20の弾性力と、胸椎に沿ったmp方向に働く背中ベルト部30の弾性力とが合成されて、下腹部N1を胸椎と頚椎の境界付近P1に引き上げるように点線で示す矢印np方向(図6参照)に弾性力が機能する。つまり、図4に示すように、肩部を囲繞するよう配置された肩ベルト部40と、下腹部の下側に配置された下腹ベルト部20とによって、それぞれ身体に対して位置決めされることで、下腹ベルト部20と背中ベルト部30の弾性力がそれぞれ発揮され、結果的にnp方向に弾性力が発揮されることとなる。したがって、腹部の重みを出来るだけ背中の上側から支えて、腹部の重みが脊柱の前後方向に出来るだけ作用しないようにして、脊柱の前後方向の湾曲を効果的に軽減させて、腰痛を緩和または予防させることができる。
【0035】
すなわち、脊柱周辺を側面からみた図6に示すように、妊婦は腰椎の前方に胎児Kが位置することから、腰椎が前方に湾曲し、このため、脊柱は全体のバランスを保とうとして、胸椎の下側が後方に湾曲し、さらに、胸椎と頚椎の境目付近P1が前方に湾曲して、さらに胸椎の上側から頚椎が後方に湾曲しようとする。そして、このような腰椎の前後方向の湾曲を支えるためには、下腹ベルト部20のnm方向の弾性力だけでは効果が十分とは言えない。そこで、腹部を出来るだけ上側(本実施形態の場合、胸椎と頚椎の境目付近P1)から支え持つようにして、腹部の重みが腰椎を前方に向かわせようとする力を効果的に抑制し、もって脊柱全体の過度な湾曲を防止することができる。しかもこれらの湾曲をコントロールする脊柱起立筋等の背筋を、背中ベルト部30の弾性力によって補助することができる。したがって、脊柱の複雑な湾曲を支持しようとする背筋の負担を軽減して、背筋が疲労した分だけ腰部筋肉に過度な負担がかかるような事態を防止し、腰痛を効果的に緩和することができる。
【0036】
そして、本発明は腹部や腰部まわりを強く締め付ける方法で腰痛を緩和させているわけではないので、腹部を過度に締め付けることもなく、妊婦が不快感を持つことなく、使用することができる。
さらに、下腹部N1は、直接、胸椎と頚椎の境目付近P1に引き上げられると、腹部を押さえる方向によって胎児を圧迫してしまう等の悪影響を与える恐れがあるが、本実施形態の場合、背面側腰部の上端付近M1を経由して引き上げられているので、胎児に与える影響も無くすことができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、第1の実施形態の変形例であって妊婦帯の概略背面図である図7に示されるように、上述した補助ベルト50やパッド部60(図1参照)を設けなくても特によい。
すなわち、妊婦の体形に合わせた弾性力や長さを有する下腹ベルト部20、背中ベルト部30、及び肩ベルト部40を用意すれば、補助ベルトは特になくても構わない。
また、背中ベルト部30と下腹ベルト部20とは、パッド部60(図1参照)を介することなく、直接縫合するなどして接続するようにしてもよい。その際、図7に示すように、下腹ベルト部20の二本の帯21,22の背面側の端部の夫々を、背中ベルト部30と共に重ね合わせるようにして縫合するとよい。これにより、下腹ベルト部20と背中ベルト部30とが重ね合せられた領域(図7の平行斜線で示す部分)に、ある程度の剛性を持たせることができ、しかも重ね合わせ領域における各ベルト部20,30の伸縮方向が異なることで非伸縮性とすることができ、ヨレ等を防止することができる。したがって、パッド部60を形成しなくとも、下腹ベルト部20と背中ベルト部30とが接続する領域の身体に対する位置を定めて、脊柱に与える影響を定めたり、妊婦の腹部に及ぼす悪影響を防止したりすることができる。
【0038】
なお、図7の肩ベルト部40は、肩に掛けられる部分にクッション性を有する筒状のカバー45,45が設けられており、このカバー45,45の中にベルト41,42が挿通されている。これにより、肩に対してカバー45を密着させて、肩ベルト部40を位置決めすることができる。また、この変形例においては、肩ベルト部40が背中ベルト部30の下側領域に固定されていると共に、肩ベルト部40の長さ調整機能を設けておらず、使用者が体形に応じてサイズを選択して購入する構成とされている。
【0039】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る妊婦帯12の概略背面図である。
図8において、図1ないし図5の妊婦帯10と同一の符号を付した箇所は共通の構成であるから、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
本第2の実施形態に係る妊婦帯12が第1の実施形態と主に異なるのは、下腹ベルト部20と背中ベルト部30及び肩ベルト部40とが着脱可能になっている点である。
【0040】
すなわち、妊婦帯12は、まず、下腹ベルト部20と背中ベルト部30との接続構造が第1の実施形態に係る妊婦帯10と異なっている。
具体的には、妊婦帯12は、下腹ベルト部20と背中ベルト部30の下端とを、面ファスナー等の着脱手段が設けられた連結手段70を介して接続するようにしている。ここでは、連結手段70は第1の実施形態における背中ベルト部30の下側の領域32に該当する部材であり、強い弾性力を持つ材料で形成されている。また、連結手段70の内面の上下方向の両端部に、着脱手段である雄部材72,72を設け、パッド部60を覆う表面部材61や背中ベルト部30の胸椎上側領域31になる外面に、着脱手段である雌部材71,71を設けて、これら雄部材72,72と雌部材71,71とを接続するようにしている。なお、着脱手段である雄部材72は、連結手段70の全面に設けられていてもよい。また、雄部材72と雌部材71とが逆に設けられていても勿論よい。
次ぎに、妊婦帯12は、肩ベルト40の端部41a,42aが、パッド部60ではなく背中ベルト部30の胸椎上側領域31の下端側両側縁に沿って接続されており、好ましくは、図8に示すように、背中ベルト部30の面ファスナー(雌部材71)が設けられている領域に取り付けられている。
【0041】
本発明の第2の実施形態に係る妊婦帯12は以上のように構成されており、これにより、背中ベルト部30の胸椎上側領域31及び肩ベルト部40と、下腹ベルト部20及び補助ベルト部50とを互いに接続させたり分離させたりすることができる。したがって、例えば、妊娠中期〜後期に下腹ベルト部20及び補助ベルト部50のみを着用し、膨らみがかなり大きくなったら、連結手段70を介して背中ベルト部30及び肩ベルト部40を装着し、下腹部の支えが不要になった産後も、骨盤の歪み等がある状態で乳児を抱く必要があるため、背筋への負担を補助できるよう、背中ベルト部30の上側領域32及び肩ベルト部40のみを着用することができ、身体の状態に応じて選択的に使用できる。
【0042】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る妊婦帯14の概略正面図である。
図9において、図1ないし図5の妊婦帯10と同一の符号を付した箇所は共通の構成であるから、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
本第3の実施形態に係る妊婦帯14が第1の実施形態と異なるのは、肩ベルト部40の接続構造についてである。
【0043】
すなわち、この妊婦帯14の肩ベルト部40は、背中ベルト30の上端部から延伸するようにした一対のベルト41,42の端部41a,42aが、補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20に接続されている。
具体的には、ベルト41,42の端部41a,42aの内面側には、例えば面ファスナーの雄部材(点描で示す部分)が所定の長さをもって設けられている。
そして、補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20の前面側の外面には、例えば面ファスナーの雌部材(平行斜線で示す領域)が設けられている。
なお、この補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20に設けられた面ファスナーは、長さ方向について前面側の全体に設けられることが好ましい。
また、この面ファスナーは、下腹ベルト部20の一対の帯21,22の端部どうしや、補助ベルト部50の両端部どうしを固定する手段を兼ね備えている。
【0044】
本発明の第3の実施形態は以上のように構成されており、これにより、肩ベルト部40と、補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20の前面側とを着脱可能にしている。したがって、肩ベルト部40を前面側で下側に引っ張って、肩ベルト部40と接続された背中ベルト部30の長さを容易に調整しながら、肩ベルト部40を補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20に固定できる。そして、この実施形態では、補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20に設けられた面ファスナーは、長さ方向について前面側の全体に設けられているので、肩ベルト部40を補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20に取り付ける部位の自由度を増すことができ、使用者の体形に応じて選択的に着脱できる。
【0045】
なお、下腹ベルト部20に面ファスナーを設けて、肩ベルト部40を下腹ベルト部20のみに固定することもできるが、このようにすると、下腹ベルト部20を肩側に引き上げる方向(図9のY方向)に力が働く。このため、妊婦帯12は、図4のnm方向のベクトルとmp方向のベクトルとが合成されるだけではなく、図9のy方向の身体の前面側におけるベクトルも加味される。したがって、下腹ベルト部20を支え持つ方向が変わってしまい、胎児を圧迫してしまう恐れがある。したがって、肩ベルト部40は、あくまでも補助ベルト部50で確実に固定するようにして、下腹ベルト部20に面ファスナーを設けるとしても、その面ファスナーは肩ベルト部40の端部がぶらつかないように取り付けられる程度にすることが好ましい。
【0046】
図10および図11は、本発明の第4の実施形態に係る妊婦帯16であって、図10は妊婦帯16を着用した場合の概略斜視図、図11は妊婦帯16の概略背面図である。
これらの図において、図1ないし図5の妊婦帯10と同一の符号を付した箇所は共通の構成であるから、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
本第4の実施形態に係る妊婦帯16が第1の実施形態と異なるのは、妊婦帯が上半身用インナーの形態とされている点である。
【0047】
すなわち、妊婦帯16は、上半身用インナー76と、上述した下腹ベルト部20、背中ベルト部30、肩ベルト部40、補助ベルト部50、及びパッド部60とを備えている。
上半身用インナー76は、所謂下着としての機能を発揮するものであり、例えば、ベストやチョッキタイプ、ハーフトップタイプ等の衣類状の形態とされており、前身頃と後身頃を備えている。
前身頃では、左右を互いに分離して、脱ぎ着する際に開閉可能となっている突合せ部78を有しており、この突合せ部78は、前身頃の幅方向の略中央で、略上下方向に沿ってボタンやスナップ等の係止手段79で着脱可能となっている。
【0048】
そして、この上半身用インナー76に、上述した下腹ベルト部20、背中ベルト部30、肩ベルト部40、補助ベルト部50、及びパッド部60が直接又は間接的に接続されている。この際、各ベルト部20,30,40,50は、上述のように弾性力を有するため、この弾性力を阻害することがないよう、上半身用のインナー76は十分な伸縮性を有する布地を用いることが好ましい。
また、本実施形態の場合、背中ベルト部30、肩ベルト部40、補助ベルト部50、及びパッド部60は、上半身用インナー76と一体となるように縫合されており、パッド部60が基点となるよう背面側腰部の上端付近M1に配置され、背中ベルト部30はパッド部60の上端から上方に延伸され、肩ベルト部40は背中ベルト部30の上端から延伸されて、肩を囲繞するように周回してパッド部60側の背中ベルト部30両側縁に接続されている。また、補助ベルト50はパッド部60から延伸されて、上述した突合せ部78で左右に分離され、分離された左右がボタンやスナップ等の係止手段79で互いに接続されるようになっている。
そして、下腹ベルト部20のみが、パッド部60を介して上半身用インナー76に取り付けられ、第1の実施形態と同様に、背面側腰部の上端付近M1から下腹部N1にかけて巻かれる帯状体となっている。
【0049】
本発明の第4の実施形態は以上のように構成されており、妊婦帯16は、背中ベルト部30、肩ベルト部40、補助ベルト部50、及びパッド部60が上半身用インナー76に縫合され、下腹ベルト部20がパッド部60を介して上半身用インナー76に取り付けられている。したがって、上半身用インナーと妊婦帯を別々に着用する面倒を解消し、容易に着用することができる。なお、衣類に近い感触として着用感を高められるよう、パッド部60を設けず各ベルト部20,30,40,50を上半身用インナー76に縫合するだけで構成してもよい。
【0050】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、面ファスナー等を使用した係合は、ホックやフック、バックル等の他の係合手段を採用しても良い。さらに、下腹ベルト部20と補助ベルト部50の間は大きな開口とされて、腹部が露出する構成とされているが、腹巻状となるよう各ベルト部20,50間に保温層を配置しても良い。さらにまた、パッド部60の内面にポケット等を形成し、例えば使い捨て携帯カイロや、ゲルを使用した冷却具/加温具を装着できるよう構成してもよい。また、上記実施形態の各構成は、その一部を省略し、あるいは上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る妊婦帯の概略背面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る妊婦帯について、各ベルトを着用した状態を想定して組み立てた概略正面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る妊婦帯を着用した状態における概略背面図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る妊婦帯を着用した状態における概略側面図。
【図5】図1のA−A線切断断面図。
【図6】脊柱周辺を側面からみた図。
【図7】本発明の第1の実施形態の変形例に係る妊婦帯の概略背面図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る妊婦帯の概略背面図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る妊婦帯の概略正面図。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る妊婦帯を着用した場合の概略斜視図。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る妊婦帯の概略背面図。
【符号の説明】
【0052】
10,12,14,16・・・妊婦帯、20・・・下腹ベルト部、30・・・背中ベルト部、40・・・背中ベルト部、50・・・補助ベルト部、60・・・パッド部、M1・・・背面側腰部の上端付近、N1・・・下腹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰痛緩和・予防機能を備えた妊婦帯に関する。
【背景技術】
【0002】
妊婦は、下腹部の膨出に伴う負荷や、妊娠5ヶ月位から骨盤が緩みだすことから腰痛が多いと考えられている。
このため、従来の妊婦帯は、身体に負担を強いる腹部の重みをサポートして負担を軽減し、腰痛を緩和するようにしている。
例えば、弾性力を有する帯を、妊婦の背面側腰部の上端付近から腹部の下側にかけて巻いて、背面側腰部の上端付近を基準にして腹部の重みを支え、これにより、腰部に過度な負担がかかることを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−19560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような腰痛緩和機能を備えた妊婦帯は、確かに腰痛を緩和することはできるが、その緩和の程度が完全なわけではない。
例えば、下腹部を支える力を強めれば腰痛緩和の効果を高めることもできるが、それでは、弾性力を有する帯が腹部を強く締め付けて圧迫感を与える等、使用感が悪くなってしまうため、上述した従来の妊婦帯の形式では、腰痛緩和効果に一定の限界があると言わざるを得ない。
【0005】
さらに、本発明者の研究によれば、妊娠時における腰痛には背筋が関与していることが分かった。すなわち、妊婦は腰椎よりも前方に位置する重い腹部により腰椎が前方に湾曲するよう負荷がかかるため、体のバランスを保とうとして胸椎を後方に湾曲させる等、脊柱全体が前後方向に複雑に湾曲することになる。そして、この脊柱の複雑な湾曲は主に背筋が支持することになる。なお、実際に、筋肉の働きの大きさを見ることができる筋電図で、妊婦の背中における状態を確認したところ、通常の人と比べて大菱形筋や僧帽筋等の背筋が緊張している状態が確認され、特に上側の背筋の緊張が大きく、腰部側の筋肉の緊張は比較的小さいことがわかった。そして、このことから浅背筋だけでなく、脊柱起立筋等の深背筋にも影響が出ていると考えられ、このような背筋が疲労をすると、湾曲した脊柱を背筋だけでなく腰部筋肉で支えようとする度合いが大きくなり、腰部筋肉が疲労して、腰痛が悪化する傾向が確認された。そして、従来の妊婦帯の構成では、腹部や腰部回りを中心に腰痛対策をしており、腰痛緩和の効果を十分に高められないと考えるに至った。
【0006】
本発明は上記課題を解消し、使用感に優れ、優れた腰痛緩和または腰痛予防効果を発揮する妊婦帯を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、請求項1の発明によれば、妊婦の背面側腰部の上端付近から下腹部にかけて斜め下方に向かって巻かれる帯状であって、その両端部が前面側において互いに着脱可能になっており、かつ、前記背面側腰部の上端付近から前記下腹部に沿った方向に弾性力を有する下腹ベルト部と、前記下腹ベルト部の背面側に接続されると共に、前記妊婦の胸椎に沿って背面側に配置され、前記胸椎に沿った方向に弾性力を有する背中ベルト部と、前記背中ベルト部の上端部に接続されると共に、前記妊婦の肩部に掛けられることで前記肩部に対して位置決めされる肩ベルト部とを備えている妊婦帯により達成される。
【0008】
請求項1の構成によれば、妊婦帯は、妊婦の背面側腰部の上端付近から下腹部にかけて斜め下方に向かうように巻かれる帯状であって、背面側腰部の上端付近から下腹部に沿った方向に弾性力を有する下腹ベルト部を有している。なお、本発明の「弾性」とは、所謂「ゴム弾性」と同様な性質の作用を発揮するもので、「引っ張ると伸びるが、放すと元の状態に戻る」力を作用させるものを言う。このため、この下腹ベルト部で、背面側腰部の上端付近を基準にして腹部を支えて、下腹部の膨出に伴い骨盤にかかる重みを軽減することができる。また、この下腹ベルト部は、その両端部が前面側において互いに着脱可能になっているため、妊婦は自ら前面側で下腹ベルト部の長さを調整しながら引っ張って両端部を固定でき、腹部を支える力を自らの状態に応じて容易に調整することができる。
【0009】
さらに、本発明の妊婦帯は、下腹ベルト部の背面側に接続されると共に、妊婦の胸椎に沿って背面側に配置され、胸椎に沿った方向に弾性力を有する背中ベルト部と、背中ベルト部の上端部に接続されると共に、妊婦の肩部に掛けられることで肩部に対して位置決めされる肩ベルト部とを有している。
そうすると、胸椎に沿った方向に弾性力を有する背中ベルト部は、肩ベルト部で上端位置が保持され、下腹ベルト部の背面側を胸椎に沿って上端部側に引っ張ることになる。このため、上述した下腹ベルト部における下腹部を背面側腰部の上端付近に引き上げるように斜め上方向に働く弾性力と、背中ベルト部における胸椎に沿った方向に働く弾性力とが合成されて、妊婦帯全体としては、下腹部を背中ベルト部の上端部側に引き上げるように力が働く。したがって、腹部が脊柱を前方に曲げようとする重みを身体の上側から支えて、上述した脊柱の前後方向の湾曲を効果的に軽減させることができる。そこで、脊柱の湾曲を支持しようとする背筋の負担を軽減して背筋の疲労を和らげ、もって腰部筋肉へかかる負担も軽減できる。
しかも、下腹ベルト部の背面側が、背中ベルト部を介して肩ベルト部で保持されるため、従来の妊婦帯よりも位置ずれを起こしづらく、所定の位置で下腹部を支えられる。
なお、このように、本発明は腹部や腰部まわりを強く締め付ける方法で腰痛を緩和させているわけではなく、適切な力で下腹部を締め付けて保持でき、装着感に優れた妊婦帯とすることができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明の構成において、前記背中ベルト部の胸椎上側に対応した領域と、前記背中ベルト部の前記胸椎上側より下側の領域とでは、相対的に、前記背中ベルト部の前記胸椎上側より下側の領域の弾性力が強いことを特徴とする。
請求項2の構成によれば、背中ベルト部の胸椎上側に対応した領域と、その胸椎上側より下側の領域とでは、相対的に、胸椎上側より下側の領域の弾性力が強い。このため、背中ベルト部は、肩周りなどの動きの大きい胸椎上側に対応した領域の弾性力が弱くなって、妊婦の動きを阻害しないようにすることができ、かつ、この胸椎上側に対応した領域の弾性力を弱くした分だけ、下側の背中ベルト部の弾性力を強くして、背中ベルト部全体の弾性力を確保できる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明の構成において、前記肩ベルト部の長さを可変することで、着用した際の前記背中ベルト部の長さを調整可能にしたことを特徴とする。
請求項3の構成によれば、肩ベルト部の長さを可変することで、着用した際の前記背中ベルト部の長さを調整可能にした。したがって、着用した際、妊婦の手が届く肩ベルト部の長さを可変することで、妊婦が体形や腹部の膨出の変化、疲労度等に応じて背中ベルト部の長さを容易に調整し、背中ベルト部の弾性変形量を自在に調整できる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1ないし3の発明のいずれかの構成において、前記下腹ベルト部と前記背中ベルト部とは、少なくとも前記下腹ベルト部および前記背中ベルト部よりも剛性およびクッション性の高いパッド部を介して接続されていることを特徴とする。
請求項4の構成によれば、下腹ベルト部と背中ベルト部とは、少なくとも下腹ベルト部および背中ベルト部よりも剛性の高いパッド部を介して接続されている。したがって、下腹ベルト部と背中ベルト部とを接続した部分がよれたりして、接続部分の身体に対する位置が定まらないような事態を防止することができる。また、このパッド部は、クッション性も高いため、身体にある程度密着して、腰部における負担感を低減できるだけでなく、各ベルト部の基部となる下腹ベルト部と背中ベルト部との接続部分の身体に対する位置ずれをより防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、使用感に優れ、優れた腰痛緩和・予防効果を発揮する妊婦帯を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0015】
図1ないし図5は、本発明の第1の実施形態に係る妊婦帯10であって、図1は妊婦帯10の概略背面図、図2は妊婦帯10の後述する各ベルトを着用した状態を想定して組み立てた概略正面図、図3は妊婦帯10を着用した状態における概略背面図、図4は妊婦帯10を着用した状態における概略側面図、図5は図1のA−A線切断断面図である。
これらの図に示される妊婦帯10は、下腹ベルト部20と、背中ベルト部30と、肩ベルト部40と、補助ベルト部50と、パッド部60とを有している。
【0016】
下腹ベルト部20は、図4に示すように、背面側腰部の上端付近M1から下腹部N1にかけて斜め下方に向かうように巻かれる帯状体であり、下腹部N1を背面側腰部の上端付近M1側である斜め上方から持ち支えるような格好となっている。
具体的には、下腹ベルト部20は、図3に示すように、脊柱上にある背面側腰部の上端付近M1に位置するパッド部60から前面側の下腹に向かって、左右両側にそれぞれ延伸された広幅の二本の帯21,22を有しており、図2に示すように、前面側において開閉及び長さ調整できるように、その両端部が互いに着脱可能になっている。本実施形態の場合、図1及び図2に示すように、二本の帯21,22の先端側21a,22aどうしが、面ファスナーにより前面の下腹部で接続されて着脱可能になっており、一方の帯22の身体側の面に設けられた雄部材23(点描で示す部分)が、他方の帯21の外面に設けられ、長手方向に沿って所定の長さL1を有する雌部材24(平行斜線で示す部分)に着脱可能であって、位置を調整可能に固定されるようになっている。
【0017】
なお、この二本の帯21,22どうしを固定する手段は、面ファスナーに限られず、例えばフックアイ、ホック、ボタンなどの係止手段を用いてもよい。その際、二本の帯21,22に設けた雄雌等の対となる係止手段のうち、一方の係止手段を一方の帯側の長さ方向に複数列並べて、他方の係止手段を選択的に一方の係止手段に装着することでベルト部20の長さを調整可能としても勿論よい。
また、下腹ベルト部20は、二本の帯21,22が一体に形成されて一本となっていてもよいが、本実施形態の場合、二本の帯21,22の基端部側がパッド部60に縫合されることで接続されている。
【0018】
そして、下腹ベルト部20は、背面側腰部の上端付近M1から下腹部N1に沿った方向に弾性力を有しており、引き伸ばして着用することにより、腹部の下側を背面側腰部の上端付近M1側に(図4の矢印nm方向に)斜め上方に向かって持ち上げることができる。
本実施形態の場合、下腹ベルト部20の弾性力はパワーネット等のウレタンやゴム等の弾性材料を使用した伸縮生地で付与されており、ここでは、図1に示すように、上述した面ファスナーが設けられている先端側21a,22aも伸縮性生地を使用して、パワーネット等の弾性部材上に縫合することで、下腹ベルト部20全体が伸縮性生地で形成され、弾性力を有する構成とされている。なお、下腹ベルト部20は、例えば面ファスナーが設けられた先端側21a,22a以外の脇身頃に位置する部分21b,21bのみ(即ち、下腹ベルト部20の一部のみ)に弾性力を持つ部分を配置するように構成してもよい。
また、この下腹ベルト部20は、例えばパワーネットの幅方向にテグス等の非伸縮性材料を設けて、幅方向には伸縮せず、長手方向に沿ってのみ弾性力を発揮するようにしているが、長手方向の弾性力は強くしつつ、幅方向にも僅かに伸縮可能とすることで身体にフィットする構成としても良い。また、パワーネット等の伸縮性材料の弾性力を阻害しない範囲で、身体面における感触を高めるための層を一体化してもよい。
【0019】
背中ベルト部30は、下腹ベルト部20の背面側に接続されており、本実施形態の場合、背面側腰部の上端付近M1に配置されるようにしたパッド部60を介して、下腹ベルト部20と接続されている。
具体的には、図3及び図5に示すように、パッド部60のクッション層62,64が形成された上端縁60cと背中ベルト部30とが縫合され、パッド部60のクッション層62,64が形成された上側における左右の両側縁60a,60bと下腹ベルト部20とが縫合されることで、背中ベルト部30と下腹ベルト部20とがパッド部60を介して接続されている。
【0020】
また、背中ベルト部30は、妊婦の胸椎(図6参照)に沿って背面側に配置されている。本実施形態の場合、図3に示すように、胸椎に沿って、背面側腰部の上端付近となる腰椎と胸椎の境界付近M1から胸椎と頚椎の境界付近P1にかけて、背面側に配置されており、本実施の形態においては、パッド部60の関係上、腰椎と胸椎の境界付近M1の上側に位置する構成とされている。
なお、背中ベルト部30は幅の太い一本の帯状が胸椎上に配置されているが、本発明は後述する胸椎に沿った方向に弾性力を発揮できればこの形態に限られず、例えば、複数本から構成されていてもよく、また、その際、胸椎上には配置されず、胸椎の両脇の脊柱起立筋に沿って配置する構成とされてもよい。
【0021】
そして、背中ベルト部30は、胸椎に沿った方向に弾性力を有している。この弾性力は、下腹ベルト部20の背面側と、胸椎と頚椎の境界付近P1との間で力を発揮するようになっており、引き伸ばして着用された際、後述する肩ベルト部40と協働して、下腹ベルト部20の背面側腰部の上端付近M1(即ちパッド部60)を、胸椎と頚椎の境界付近P1方向に引っ張るように弾性力を発揮している。
なお、本実施形態の背中ベルト部30は、下腹ベルト部20と同様の材料で形成されており、例えば、パワーネットなどのウレタンやゴム等の弾性材料を使用した伸縮生地で弾性力が付与されており、パワーネットの幅方向(水平方向)にテグス等の非伸縮性材料を設けて、胸椎方向(上下方向)にのみ弾性力を発揮するようにしている。
【0022】
また、背中ベルト部30の弾性力は、背中の各機能に対応して付与されることが好ましく、本実施形態の場合、図3に示すように、背中ベルト部30の胸椎上側に対応した領域31と、背中ベルト部30の胸椎上側より下側の領域32とでは、相対的に下側の領域32の弾性力の方がより強くなるよう構成されている。そして、胸椎上側領域31の弾性力が相対的に弱いことで腕を動かし易くしているにも係わらず、所定の弾性力を確保している。すなわち、背中ベルト部30の胸椎上側に対応した領域31の弾性力を強くしてしまうと、肩甲骨周り等の動きを阻害して、肩が回し難くなって日常生活に支障を及ぼす恐れがある。このため、胸椎上側に対応した領域31の弾性力を比較的弱くし、この弾性力を弱くした分だけ、背中ベルト部30の下側の領域32の弾性力を高めており、このような構成とすることで、さらに、身体へのフィット性を高めつつ、胸椎下側領域32よりも広い面積とされた胸椎上側領域31の通気性を確保している。
なお、図5に示すように、背中ベルト部30では、全体がパワーネット等の弾性体34で形成され、背中ベルト部30の下側の領域32にのみタックゴム等の材質や厚み、伸縮繊維の太さ等を調整することによって、強い弾性力を有する弾性層である弾性体35をさらに付加して、下側の領域32の弾性力を強くしている。
【0023】
肩ベルト部40は、Y字状に左右に分離した背中ベルト部30の上端部に接続されると共に、妊婦の肩部に掛けられることで、肩部に対して位置決めされるようになっている。
具体的には、肩ベルト部40は、図3及び図4に示すように、背中ベルト部30の上端部の左右側縁から延伸するようにした一対のベルト41,42からなっており、左右のベルト41,42は、いずれも同様の構成となっている。そして、この一対のベルト41,42は、着用された場合、それぞれ肩部の左右の各々に掛けられるようになっており、その端部41a,42aが背中ベルト部30の下端における左右に位置するようにパッド部60の上端部60cと結合されている。
なお、本発明の肩ベルト部40は、例えば、肩部の周囲を回繞させてから、背中ベルト部30と接続されていない一方の端部41a,42aを背中ベルト部30の略中間領域に接続させてもよいが、好ましくは、上述のように、一方の端部41a,42aをパッド部60に接続した方が着脱し易いだけでなく、これにより、背中ベルト部30の弾性力を阻害するような原因を防止できる。
【0024】
このように、肩ベルト部40は使用者の肩部に対して位置決めされてその動きが規制されているため、この肩ベルト部40と接続された背中ベルト部30は、その上端部が身体に対して位置決めされることになる。したがって、背中ベルト部30は、その弾性力により、図4に示すように、脊柱に沿った上方向(矢印mp方向)に、下腹ベルト部20の背面側を引っ張ることになる。
【0025】
また、肩ベルト部40は、その長さを可変することで、装着した際の背中ベルト部30の長さを調整可能にしている。
具体的には、この肩ベルト部40の長さを可変する手段は、図1、図4に示すように、肩口よりも下側(パッド部60側)に設けられたアジャスター44により実現している。なお、アジャスター44は、肩ベルト部の長さが可変できればその構成はどのようなものでもよく、例えば、図示するように、パッド部60に縫合されたベルト端部41a,42aにループの端部に設けた環状部材を配置して、ベルト41の一端をアジャスター44に固定して、環状部材を通してループ状としてアジャスター44を通すことで長さを可変するタイプのもの、或いは、長手方向に沿って複数の雌型スナップを設け、この雌型スナップと環状を通したベルトの先端に設けられた雄型スナップとを嵌合するような構造のものでもよい。
【0026】
なお、本実施形態の肩ベルト部40は、例えば下腹ベルト部20と同様にパワーネット等の伸縮性生地とされ、長手方向にある程度の弾性力を付与することで、身体の動きに対応できるようにしている。具体的には、肩ベルト部40は身体の前面の材料が切り替えられた切替部43,43より上側は弾性力強いパワーネット等の伸縮材料で形成されて、確実に背中ベルト部30を保持できる形態とされており、アジャスター44等が設けられた切替部43より下側は比較的弾性力の弱いベルト部材によって形成されて、長さ調整を行いやすい構成とされている。なお、肩ベルト部40は、下腹ベルト部20や背中ベルト部30に比べて幅寸法が小さいため、その弾性力は下腹ベルト部20や背中ベルト部30の弾性力に比べれば僅かである。また、肩ベルト部40は、例えば、パワーネットの幅方向にテグス等の非伸縮性材料を設けて、長手方向にのみ弾性力を発揮するようにしている。
【0027】
パッド部60は、下腹ベルト部20と背中ベルト部30とを取り付ける部分に介在し、少なくとも下腹ベルト部20および背中ベルト部30に比べて剛性およびクッション性が高くなっている。これにより、着用された際に、下腹ベルト部20と背中ベルト部30を所定の位置に配置すると共に、伸縮性を抑えた材料で形成することで、各ベルト部20,30,40の基部として各ベルト部の弾性力を有効に機能できる構成としている。すなわち、下腹ベルト部20と背中ベルト部30との接続部分が動き易かったり伸縮してしまうと、下腹ベルト部20と背中ベルト部30の身体に対する位置が定まらず、このため妊婦帯10の脊柱に与える影響も定まらなくなって、ともすると背筋の活動に対する負荷となってしまって疲労が高まる恐れがある。また、下腹ベルト部20の位置が定まらないと、妊婦帯としての機能を発揮することができなくなる。そこで、下腹ベルト部20と背中ベルト部30との身体に対する接続位置を定めるためにパッド部60を設けた。
【0028】
本実施形態の場合、パッド部60は、図5に示すように、弾性や伸縮性が略無く、厚み方向にクッション性を有する板状のカルソフト等から形成されたクッション材料を用いて形成されている。そして、このカルソフト等から形成されたクッション材料を厚み方向に積層することで、クッション性と剛性の両方を兼ねるようにしている。
さらに、パッド部60は、その全体を同じ剛性とせず、図3に示すように、各ベルト部20,30,40,50が縫合等して取り付けられた一方の領域(図3の破線で囲まれた上側の領域)を、他方の領域よりも剛性を高めるようにしている。具体的には、この剛性が高められた一方の領域は、図5に示すように、複数枚の板状のカルソフト等から形成されたクッション層62,64を、通気性を有するよう表面に開口等を形成した身体側(内側)の表面材67と外側の表面材68とを有する表面部材61の内側の一部に、厚み方向に積層するように収容して形成されている。なお、一方の領域(図3の破線で囲まれた上側の領域)は、図5では、外側のクッション層62に、クッション層62より小さな外形を有する身体側のクッション層64を厚み方向に積層し、外側のクッション層62の周縁部を、カルソフト等から形成された表面部材61に縫合することで形成されている。そして、この一方の領域の剛性が比較的高くなるようにしたクッション層62,64を適切な大きに形成することで、剛性を高めても着用感を維持できるようにしている。
なお、表面部材61の剛性は低いことが好ましく、本実施形態の場合、クッション層62,64よりも薄手の一枚のカルソフトから形成されている。
【0029】
そして、図1に示すように、パッド部60と下腹ベルト部20との接続構造については、パッド部60の左右両端60a,60bに、二本の帯21,22の夫々の端部を接続するようにしているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、下腹ベルト部20を一本の帯にして、下腹ベルト部20の背面側腰部の上端付近M1であって身体側の面に、パッド部60の外側の面を重ね合わせて縫合してもよい。なお、本実施形態の場合、下腹ベルト部20は、上述した一方の領域(図3の破線で囲まれた上側の領域)の表面部材61に縫合されることで、間接的にクッション層62と接続されている。
また、パッド部60と背中ベルト部30との接続構造についても、図5に示されるように、表面部材61を介して接続されている。すなわち、クッション層62に縫合された表面部材61と背中ベルト部30の下端部とが縫合されることで、特に伸縮性を抑えたクッション層62と背中ベルト部30とが接続されている。なお、本発明はこれに限られず、例えば、クッション層62に背中ベルト部30の下端部を直接縫合したり、パッド部60の外側の面に背中ベルト部30を重ね合わせて縫合したりしてもよい。
【0030】
また、本実施形態の場合、クッション層62と外側の表面材68の間には、図1に示すように、少なくともパッド部60に比べて強い剛性を有し、両端部が離間する弓形とされた骨格部69が、脊柱の両脇に沿うように2本配置されている。ここでは、骨格部69は、例えば、コイルボーンや樹脂ボーン等を用いて長手方向に撓むことが可能で、伸縮性を有さない細長い棒状に形成されている。これにより、表面部材61や補助ベルト部50の動きを規制しつつ、パッド部60の形状保持性を高めている。
また、パッド部60については、外側の表面材68の内側に、弾力性を有する伸縮層68aを設けて、パッド部60全体での身体へのフィット性を高めるようにしている。
【0031】
補助ベルト部50は、図4に示すように、背面側腰部の上端付近M1から略水平方向に腹部の上側に沿って胴部に巻きつけられる帯状体であって、パッド部60を変形させて身体に密着するよう身体側に押し付けて位置決めし、これにより下腹ベルト部20および背中ベルト部30を位置決めして、動きづらいように固定できるようにしている。特に、本実施形態の妊婦帯10は、様々な体形を有する者に着用されるものであり、例えば、身体の動きに伴って、背中ベルト部30の弾性力により、パッド部60の位置が背面側腰部の上端付近M1より上になってしまう恐れがある。そして、パッド部60が所定の位置より上になると、下腹ベルト部20の腹部を締め付ける力が必要以上に大きくなって装着感を損なう恐れがある。そこで、補助ベルト部50によって、パッド部60を背面側腰部の上端付近M1に位置決めした状態で保持するようにしている。
【0032】
ここでは、補助ベルト部50は、胸部の下近傍から背面側腰部の上端付近M1にかけて配置されており、パッド部60の左右両端縁60a,60bから延びるように身体に巻き付けられている。なお、補助ベルト部50は、パッド部60の部分で分断されずに一本のベルトから形成されてもよく、この際、パッド部60を身体側に均一に押し付けて変形させるように、幅方向(図5の上下方向)の寸法がクッション層62よりも大きく、例えばパッド部60の上下方向の寸法と同等にして、パッド部60の外側に重ねて配置するようにしてもよい。
また、補助ベルト部50は、図1及び図4に示すように、前面側では、腹部への締付感を低減するため、幅方向の寸法を小さくしており、全体として、背面側から脇身頃側に向かうに従って幅寸法が除々に小さくなるように形成されている。
【0033】
なお、本実施形態の補助ベルト部50は、長手方向に弾性力を発揮するように、例えばパワーネット等の伸縮性材料で形成され、幅方向(図4の上下方向)にテグス等の非伸縮性材料を設けて、長手方向にのみ弾性力を発揮するようにしている。
また、補助ベルト部50も、下腹ベルト部20と同様に、図2に示すように、前面側において長さ調整できるように、両端部が面ファスナー等で互いに着脱可能になっている。
このように本実施の形態は、基点となるパッド部60に下腹ベルト部20、背筋ベルト部30、肩ベルト部40、補助ベルト部50がそれぞれ連結されており、それぞれ目的に応じて、背中ベルト部30の下側領域32の弾性力が最も強く、その他の背中ベルト部30の部分や下腹ベルト部20がその次に強い弾性力を有する構成とされ、補助ベルト部50、肩ベルト部40の弾性力が比較的弱い構成とされている。
【0034】
本発明の第1の実施形態は以上のように構成されており、妊婦帯10は、背面側腰部の上端付近M1を基準にして下腹部N1を支える下腹ベルト部20と、この下腹ベルト部20の背面側に接続されると共に、胸椎に沿って背面側に配置され、胸椎に沿った方向に弾性力を有する背中ベルト部30と、背中ベルト部30の上端部に接続されると共に、肩部に対して位置決めされた肩ベルト部40とを有している。このため、図4に示すnm方向に働く下腹ベルト部20の弾性力と、胸椎に沿ったmp方向に働く背中ベルト部30の弾性力とが合成されて、下腹部N1を胸椎と頚椎の境界付近P1に引き上げるように点線で示す矢印np方向(図6参照)に弾性力が機能する。つまり、図4に示すように、肩部を囲繞するよう配置された肩ベルト部40と、下腹部の下側に配置された下腹ベルト部20とによって、それぞれ身体に対して位置決めされることで、下腹ベルト部20と背中ベルト部30の弾性力がそれぞれ発揮され、結果的にnp方向に弾性力が発揮されることとなる。したがって、腹部の重みを出来るだけ背中の上側から支えて、腹部の重みが脊柱の前後方向に出来るだけ作用しないようにして、脊柱の前後方向の湾曲を効果的に軽減させて、腰痛を緩和または予防させることができる。
【0035】
すなわち、脊柱周辺を側面からみた図6に示すように、妊婦は腰椎の前方に胎児Kが位置することから、腰椎が前方に湾曲し、このため、脊柱は全体のバランスを保とうとして、胸椎の下側が後方に湾曲し、さらに、胸椎と頚椎の境目付近P1が前方に湾曲して、さらに胸椎の上側から頚椎が後方に湾曲しようとする。そして、このような腰椎の前後方向の湾曲を支えるためには、下腹ベルト部20のnm方向の弾性力だけでは効果が十分とは言えない。そこで、腹部を出来るだけ上側(本実施形態の場合、胸椎と頚椎の境目付近P1)から支え持つようにして、腹部の重みが腰椎を前方に向かわせようとする力を効果的に抑制し、もって脊柱全体の過度な湾曲を防止することができる。しかもこれらの湾曲をコントロールする脊柱起立筋等の背筋を、背中ベルト部30の弾性力によって補助することができる。したがって、脊柱の複雑な湾曲を支持しようとする背筋の負担を軽減して、背筋が疲労した分だけ腰部筋肉に過度な負担がかかるような事態を防止し、腰痛を効果的に緩和することができる。
【0036】
そして、本発明は腹部や腰部まわりを強く締め付ける方法で腰痛を緩和させているわけではないので、腹部を過度に締め付けることもなく、妊婦が不快感を持つことなく、使用することができる。
さらに、下腹部N1は、直接、胸椎と頚椎の境目付近P1に引き上げられると、腹部を押さえる方向によって胎児を圧迫してしまう等の悪影響を与える恐れがあるが、本実施形態の場合、背面側腰部の上端付近M1を経由して引き上げられているので、胎児に与える影響も無くすことができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、第1の実施形態の変形例であって妊婦帯の概略背面図である図7に示されるように、上述した補助ベルト50やパッド部60(図1参照)を設けなくても特によい。
すなわち、妊婦の体形に合わせた弾性力や長さを有する下腹ベルト部20、背中ベルト部30、及び肩ベルト部40を用意すれば、補助ベルトは特になくても構わない。
また、背中ベルト部30と下腹ベルト部20とは、パッド部60(図1参照)を介することなく、直接縫合するなどして接続するようにしてもよい。その際、図7に示すように、下腹ベルト部20の二本の帯21,22の背面側の端部の夫々を、背中ベルト部30と共に重ね合わせるようにして縫合するとよい。これにより、下腹ベルト部20と背中ベルト部30とが重ね合せられた領域(図7の平行斜線で示す部分)に、ある程度の剛性を持たせることができ、しかも重ね合わせ領域における各ベルト部20,30の伸縮方向が異なることで非伸縮性とすることができ、ヨレ等を防止することができる。したがって、パッド部60を形成しなくとも、下腹ベルト部20と背中ベルト部30とが接続する領域の身体に対する位置を定めて、脊柱に与える影響を定めたり、妊婦の腹部に及ぼす悪影響を防止したりすることができる。
【0038】
なお、図7の肩ベルト部40は、肩に掛けられる部分にクッション性を有する筒状のカバー45,45が設けられており、このカバー45,45の中にベルト41,42が挿通されている。これにより、肩に対してカバー45を密着させて、肩ベルト部40を位置決めすることができる。また、この変形例においては、肩ベルト部40が背中ベルト部30の下側領域に固定されていると共に、肩ベルト部40の長さ調整機能を設けておらず、使用者が体形に応じてサイズを選択して購入する構成とされている。
【0039】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る妊婦帯12の概略背面図である。
図8において、図1ないし図5の妊婦帯10と同一の符号を付した箇所は共通の構成であるから、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
本第2の実施形態に係る妊婦帯12が第1の実施形態と主に異なるのは、下腹ベルト部20と背中ベルト部30及び肩ベルト部40とが着脱可能になっている点である。
【0040】
すなわち、妊婦帯12は、まず、下腹ベルト部20と背中ベルト部30との接続構造が第1の実施形態に係る妊婦帯10と異なっている。
具体的には、妊婦帯12は、下腹ベルト部20と背中ベルト部30の下端とを、面ファスナー等の着脱手段が設けられた連結手段70を介して接続するようにしている。ここでは、連結手段70は第1の実施形態における背中ベルト部30の下側の領域32に該当する部材であり、強い弾性力を持つ材料で形成されている。また、連結手段70の内面の上下方向の両端部に、着脱手段である雄部材72,72を設け、パッド部60を覆う表面部材61や背中ベルト部30の胸椎上側領域31になる外面に、着脱手段である雌部材71,71を設けて、これら雄部材72,72と雌部材71,71とを接続するようにしている。なお、着脱手段である雄部材72は、連結手段70の全面に設けられていてもよい。また、雄部材72と雌部材71とが逆に設けられていても勿論よい。
次ぎに、妊婦帯12は、肩ベルト40の端部41a,42aが、パッド部60ではなく背中ベルト部30の胸椎上側領域31の下端側両側縁に沿って接続されており、好ましくは、図8に示すように、背中ベルト部30の面ファスナー(雌部材71)が設けられている領域に取り付けられている。
【0041】
本発明の第2の実施形態に係る妊婦帯12は以上のように構成されており、これにより、背中ベルト部30の胸椎上側領域31及び肩ベルト部40と、下腹ベルト部20及び補助ベルト部50とを互いに接続させたり分離させたりすることができる。したがって、例えば、妊娠中期〜後期に下腹ベルト部20及び補助ベルト部50のみを着用し、膨らみがかなり大きくなったら、連結手段70を介して背中ベルト部30及び肩ベルト部40を装着し、下腹部の支えが不要になった産後も、骨盤の歪み等がある状態で乳児を抱く必要があるため、背筋への負担を補助できるよう、背中ベルト部30の上側領域32及び肩ベルト部40のみを着用することができ、身体の状態に応じて選択的に使用できる。
【0042】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る妊婦帯14の概略正面図である。
図9において、図1ないし図5の妊婦帯10と同一の符号を付した箇所は共通の構成であるから、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
本第3の実施形態に係る妊婦帯14が第1の実施形態と異なるのは、肩ベルト部40の接続構造についてである。
【0043】
すなわち、この妊婦帯14の肩ベルト部40は、背中ベルト30の上端部から延伸するようにした一対のベルト41,42の端部41a,42aが、補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20に接続されている。
具体的には、ベルト41,42の端部41a,42aの内面側には、例えば面ファスナーの雄部材(点描で示す部分)が所定の長さをもって設けられている。
そして、補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20の前面側の外面には、例えば面ファスナーの雌部材(平行斜線で示す領域)が設けられている。
なお、この補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20に設けられた面ファスナーは、長さ方向について前面側の全体に設けられることが好ましい。
また、この面ファスナーは、下腹ベルト部20の一対の帯21,22の端部どうしや、補助ベルト部50の両端部どうしを固定する手段を兼ね備えている。
【0044】
本発明の第3の実施形態は以上のように構成されており、これにより、肩ベルト部40と、補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20の前面側とを着脱可能にしている。したがって、肩ベルト部40を前面側で下側に引っ張って、肩ベルト部40と接続された背中ベルト部30の長さを容易に調整しながら、肩ベルト部40を補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20に固定できる。そして、この実施形態では、補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20に設けられた面ファスナーは、長さ方向について前面側の全体に設けられているので、肩ベルト部40を補助ベルト部50及び/又は下腹ベルト部20に取り付ける部位の自由度を増すことができ、使用者の体形に応じて選択的に着脱できる。
【0045】
なお、下腹ベルト部20に面ファスナーを設けて、肩ベルト部40を下腹ベルト部20のみに固定することもできるが、このようにすると、下腹ベルト部20を肩側に引き上げる方向(図9のY方向)に力が働く。このため、妊婦帯12は、図4のnm方向のベクトルとmp方向のベクトルとが合成されるだけではなく、図9のy方向の身体の前面側におけるベクトルも加味される。したがって、下腹ベルト部20を支え持つ方向が変わってしまい、胎児を圧迫してしまう恐れがある。したがって、肩ベルト部40は、あくまでも補助ベルト部50で確実に固定するようにして、下腹ベルト部20に面ファスナーを設けるとしても、その面ファスナーは肩ベルト部40の端部がぶらつかないように取り付けられる程度にすることが好ましい。
【0046】
図10および図11は、本発明の第4の実施形態に係る妊婦帯16であって、図10は妊婦帯16を着用した場合の概略斜視図、図11は妊婦帯16の概略背面図である。
これらの図において、図1ないし図5の妊婦帯10と同一の符号を付した箇所は共通の構成であるから、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
本第4の実施形態に係る妊婦帯16が第1の実施形態と異なるのは、妊婦帯が上半身用インナーの形態とされている点である。
【0047】
すなわち、妊婦帯16は、上半身用インナー76と、上述した下腹ベルト部20、背中ベルト部30、肩ベルト部40、補助ベルト部50、及びパッド部60とを備えている。
上半身用インナー76は、所謂下着としての機能を発揮するものであり、例えば、ベストやチョッキタイプ、ハーフトップタイプ等の衣類状の形態とされており、前身頃と後身頃を備えている。
前身頃では、左右を互いに分離して、脱ぎ着する際に開閉可能となっている突合せ部78を有しており、この突合せ部78は、前身頃の幅方向の略中央で、略上下方向に沿ってボタンやスナップ等の係止手段79で着脱可能となっている。
【0048】
そして、この上半身用インナー76に、上述した下腹ベルト部20、背中ベルト部30、肩ベルト部40、補助ベルト部50、及びパッド部60が直接又は間接的に接続されている。この際、各ベルト部20,30,40,50は、上述のように弾性力を有するため、この弾性力を阻害することがないよう、上半身用のインナー76は十分な伸縮性を有する布地を用いることが好ましい。
また、本実施形態の場合、背中ベルト部30、肩ベルト部40、補助ベルト部50、及びパッド部60は、上半身用インナー76と一体となるように縫合されており、パッド部60が基点となるよう背面側腰部の上端付近M1に配置され、背中ベルト部30はパッド部60の上端から上方に延伸され、肩ベルト部40は背中ベルト部30の上端から延伸されて、肩を囲繞するように周回してパッド部60側の背中ベルト部30両側縁に接続されている。また、補助ベルト50はパッド部60から延伸されて、上述した突合せ部78で左右に分離され、分離された左右がボタンやスナップ等の係止手段79で互いに接続されるようになっている。
そして、下腹ベルト部20のみが、パッド部60を介して上半身用インナー76に取り付けられ、第1の実施形態と同様に、背面側腰部の上端付近M1から下腹部N1にかけて巻かれる帯状体となっている。
【0049】
本発明の第4の実施形態は以上のように構成されており、妊婦帯16は、背中ベルト部30、肩ベルト部40、補助ベルト部50、及びパッド部60が上半身用インナー76に縫合され、下腹ベルト部20がパッド部60を介して上半身用インナー76に取り付けられている。したがって、上半身用インナーと妊婦帯を別々に着用する面倒を解消し、容易に着用することができる。なお、衣類に近い感触として着用感を高められるよう、パッド部60を設けず各ベルト部20,30,40,50を上半身用インナー76に縫合するだけで構成してもよい。
【0050】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、面ファスナー等を使用した係合は、ホックやフック、バックル等の他の係合手段を採用しても良い。さらに、下腹ベルト部20と補助ベルト部50の間は大きな開口とされて、腹部が露出する構成とされているが、腹巻状となるよう各ベルト部20,50間に保温層を配置しても良い。さらにまた、パッド部60の内面にポケット等を形成し、例えば使い捨て携帯カイロや、ゲルを使用した冷却具/加温具を装着できるよう構成してもよい。また、上記実施形態の各構成は、その一部を省略し、あるいは上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る妊婦帯の概略背面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る妊婦帯について、各ベルトを着用した状態を想定して組み立てた概略正面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る妊婦帯を着用した状態における概略背面図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る妊婦帯を着用した状態における概略側面図。
【図5】図1のA−A線切断断面図。
【図6】脊柱周辺を側面からみた図。
【図7】本発明の第1の実施形態の変形例に係る妊婦帯の概略背面図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る妊婦帯の概略背面図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る妊婦帯の概略正面図。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る妊婦帯を着用した場合の概略斜視図。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る妊婦帯の概略背面図。
【符号の説明】
【0052】
10,12,14,16・・・妊婦帯、20・・・下腹ベルト部、30・・・背中ベルト部、40・・・背中ベルト部、50・・・補助ベルト部、60・・・パッド部、M1・・・背面側腰部の上端付近、N1・・・下腹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊婦の背面側腰部の上端付近から下腹部にかけて斜め下方に向かって巻かれる帯状であって、その両端部が前面側において互いに着脱可能になっており、かつ、前記背面側腰部の上端付近から前記下腹部に沿った方向に弾性力を有する下腹ベルト部と、
前記下腹ベルト部の背面側に接続されると共に、前記妊婦の胸椎に沿って背面側に配置され、前記胸椎に沿った方向に弾性力を有する背中ベルト部と、
前記背中ベルト部の上端部に接続されると共に、前記妊婦の肩部に掛けられることで前記肩部に対して位置決めされる肩ベルト部と
を備えていることを特徴とする妊婦帯。
【請求項2】
前記背中ベルト部の胸椎上側に対応した領域と、前記背中ベルト部の前記胸椎上側より下側の領域とでは、相対的に、前記背中ベルト部の前記胸椎上側より下側の領域の弾性力が強いことを特徴とする請求項1に記載の妊婦帯。
【請求項3】
前記肩ベルト部の長さを可変することで、着用した際の前記背中ベルト部の長さを調整可能にしたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の妊婦帯。
【請求項4】
前記下腹ベルト部と前記背中ベルト部とは、少なくとも前記下腹ベルト部および前記背中ベルト部よりも剛性およびクッション性の高いパッド部を介して接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の妊婦帯。
【請求項1】
妊婦の背面側腰部の上端付近から下腹部にかけて斜め下方に向かって巻かれる帯状であって、その両端部が前面側において互いに着脱可能になっており、かつ、前記背面側腰部の上端付近から前記下腹部に沿った方向に弾性力を有する下腹ベルト部と、
前記下腹ベルト部の背面側に接続されると共に、前記妊婦の胸椎に沿って背面側に配置され、前記胸椎に沿った方向に弾性力を有する背中ベルト部と、
前記背中ベルト部の上端部に接続されると共に、前記妊婦の肩部に掛けられることで前記肩部に対して位置決めされる肩ベルト部と
を備えていることを特徴とする妊婦帯。
【請求項2】
前記背中ベルト部の胸椎上側に対応した領域と、前記背中ベルト部の前記胸椎上側より下側の領域とでは、相対的に、前記背中ベルト部の前記胸椎上側より下側の領域の弾性力が強いことを特徴とする請求項1に記載の妊婦帯。
【請求項3】
前記肩ベルト部の長さを可変することで、着用した際の前記背中ベルト部の長さを調整可能にしたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の妊婦帯。
【請求項4】
前記下腹ベルト部と前記背中ベルト部とは、少なくとも前記下腹ベルト部および前記背中ベルト部よりも剛性およびクッション性の高いパッド部を介して接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の妊婦帯。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−144319(P2008−144319A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334490(P2006−334490)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】
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