説明

姿勢と運動をモニターするシステムと方法

【課題】患者の姿勢と運動をモニターするシステムと方法を提供する。
【解決手段】様々なレベルの構成装置のネットワークは、データを感知し、構成装置間で処理して伝達し、さらに構成装置のピア群の階層に自己組織化して、患者の姿勢と運動をモニターするタスクまたは機能を行なう。総合ピア群は、構成装置を有する様々な下層レベルのピア群を包含する。様々なレベルの感知、計算、データ分散、または通信タスクは、ネットワークの複数の比較的単純な構成装置間の通信その他の機能の調整により行なわれる。対称および非対称の暗号、その他の通信プロトコルを使用して、ネットワークの構成装置のタスクおよび機能を調整する。容認範囲外の姿勢と運動が検出されれば、いつでも警報その他の警告信号を、患者や医師、その他の介護人に伝達することができる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の背景〕
〔発明の分野〕
本発明は、患者の姿勢と運動をモニターするシステムと方法に関し、特に、患者体内、上、または、その周囲、あるいは、その組み合わせで配置した構成装置のネットワークを用いて、患者の姿勢と運動のパラメータをモニターするシステムと方法に関する。装置はネットワーク内で互いに動的に自己組織化し、通信して個々の装置の機能を調節し、ネットワークの総合的機能を最適化する。
【0002】
〔関連技術〕
治療措置における手足、胴体、頭部などの体の部分の位置の感知は、一般に単純な観察により行なわれている。医者は患者の姿勢をノートに取り、それらのノートが患者の検査記録および医療履歴の一部となることがある。連続検査中に取ったそのようなノートは、患者の運動および姿勢の徐々の、あるいは、突然の変化について、極めて貴重な情報となり得る。運動障害、負傷後の体のリハビリ、運動、もしくは、姿勢に影響を与える治療中など、多くの場合、それらの重要な健康上の指標の連続情報は、診断および治療過程に非常に有用である。それらの利点には、医師が運動障害を早期に診断して適切な薬の投与、または、運動障害の治療で使われる他の治療法を決められることがある。さらに、姿勢、運動をモニターすることで、治療前および治療中の両方の心理状態の判定に関連した、例えば双極性障害などの精神障害の医療を支援する情報がもたらされる。運動と姿勢の連続的なモニタリングは、患者、その家族、患者と親しい介護人との面接を通しても行なわれている。早期の診断とより正確な治療のためには、より信頼性があり、質的に正確で量的なシステムが非常に望まれる。
【0003】
連続的に姿勢と運動をモニタリングすることは、途方もない仕事である。そのような連続的なモニターシステムを構築する際の一つの課題は、毎日の生活でモニターが邪魔にならないようにすることである。日常の行動中にモニターが存在するので、モニターは理想的には非常に小さく、軽く、好適には不必要な検出を減らすため、隠れたものがよい。同時に、モニターは、操作、リセット、再スタート、または、交換が容易なものが理想的である。モニターが連続的にあることで、患者に危険があってはいけない。それらの機能的な要件から、非常に単純な小型のデザインで、機能は高度に自動化され、製造コスト、サービスコストが低いものが要求される。しかし、姿勢と運動などの複雑なデータを長い期間、測定し記録する医療器具は、一般に、かさ張り、複雑で高価であった。そのような医療器具は、一般に、感知、計算、通信、データ記憶その他のモジュールを内蔵していた。さらにそのような医療器具は複雑で、メンテナンスが高価になりがちで、しばしば訓練を積んだ技術者による設定およびサービスを必要とした。そのような従来の姿勢と運動のモニターシステムが故障すると、しばしば全システムを製造業者に送り返すか、さもなければ訓練を積んだ技術者に渡して、サービスまたは修理を必要とした。システムのそのようなサービスおよび修理には、診断および/または治療時間のロスにつながることがあり、必要に応じて、搬送コストを含む、システムのサービスおよび修理の出費も生じていた。
【0004】
上記のケースのそれぞれにおいて、従来の姿勢と運動のシステムは、一般に、錯雑としている。この複雑性がシステムの故障の尤度を増している。そのような複雑な医療器具は、例えば、感知、計算、通信またはデータ記憶行動モードのいずれでも故障することがある。それらのモードのいずれか一つが故障すれば、機能性の重大なロスにつながることがあり、それはさらに患者の健康を危うくすることがある。これは特に、一つだけの装置が、モニター機能の保全に責任がある場合では問題である。そのような装置のいずれか一つの構成要素の機能が失われると、患者の健康に対し大きな否定的な衝撃をもたらすことがある。
【0005】
さらに、単一の装置は、詳細な姿勢と運動のデータを集めるには、限られた能力しかないことがある。一般に、全ての手足、胴体、頭、首の相対的な位置および運動に関する情報を有することが望ましいので、手足または体の部分の少ない位置または運動をモニターする装置よりも、手足または体部分の一つ以上の位置および運動に関するデータを収集し、処理する、より丈夫なシステムを有することが好適である。これには、患者の様々な手足および体部分の一つ以上、好適には全ての実際の位置に関するデータを集めることのできるセンサーシステムが必要となる。
【0006】
患者の姿勢と運動を連続的にモニターすることは、旧来の複雑な装置設計とは異なる、装置アーキテクチャを必要とする。多くの従来の医療器具の様々な機能を、いくつかの別個の装置に都合よく分けることができる。それらの装置のいくつかは体に装着し、他のものは患者がいる環境に配置でき、そしてさらにその他のものは患者に植え込むことができる。例えば、一つの別個の装置を体の一つの部分に植え込んで、感知と通信機能を行い、別の別個の装置を体の他の部分に取り付け、装着して通信と計算機能を行なうことができ、第3の別個の装置をモニターされている患者の環境内に配置して、通信とデータ記憶機能を行なうことができる。
【0007】
これらの全ての観察結果に鑑みて、現在の複雑な装置よりもさらに高度な機能性を持つように構成された、より丈夫な医療器具に対するニーズが存在する。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明のシステムと方法は、患者の体内に植え込んだもの、患者の体に外的に取り付けたもの、患者の体が存在する環境に配置したもの、あるいはその組み合わせで配置された構成装置のネットワークから構成される。構成装置が患者に対して配置されると、装置のネットワーク内で動的に自己組織化して、患者に対し個々および集合的な機能を遂行する。最低、各装置は互いの範囲内で少なくとも一つの他の装置と通信する。さらに、各装置はその範囲内の他の装置と通信し、データを計算して記憶し、データを分散し、一部のケースでは、その範囲を超えて複数の装置間で通信するか、または、適切な通信プロトコルを使用して、ネットワークから警報またはその他の警告を発することができる。
【0009】
本明細書内で、「装置」または「ピア装置」と称する各構成装置を、患者の中、上または周囲に配置すると、その通信範囲内にある他の構成装置と通信リンクを確立する。ネットワークの一部の装置は直接互いに接続されて、データを直接交換する。ネットワーク内の他の装置は、直接接続されていないので、メッセージの飛び跳ね(hopping)によって、すなわち介在する構成装置のチェーンを介してメッセージを送受信することによって、または、適切な通信プロトコルを使用したパイプライン動作を通して、データを交換するか、または、間接的に通信する。直接または間接的な通信プロトコルでリンクされた全ての構成装置は、同じネットワークまたは装置のアレイに属する様々な構成装置を通して、互いにメッセージをやり取りできる。
【0010】
各構成装置は単一の機能、または複数の機能の組み合わせを持つことができる。例えば、ある構成装置は、ネットワーク内で主に感知ユニットとして作動する。そのような感知ユニットは、患者の体の中、上、あるいは、周囲に配置された他の構成装置に対して、患者のそれぞれの体部分の位置を測定することに主に責任を持つ。次に、測定されたデータは、感知ユニットの通信範囲内の他の構成装置に通信される。そして、ネットワーク内の他の構成装置はこのデータを処理し、場合により、他の構成装置の機能を起動する。他の構成装置は、感知機能と計算機能の組み合わせを持つことができ、生の感知データを局所的に一部処理する能力を持つことが出来る。構成装置はさらに他の機能を行なうこともできる。しかし好適には、各構成装置は、少なくとも測定する能力を有する。すなわち、各構成装置は、医療器具を含む構成装置のネットワーク内において、ネットワーク内の少なくとも2つの他の構成装置に対する距離、および、基本的な通信機能(例えば命令を送受信する能力)を感知する。そこで、そのような構成装置のネットワークで構成される医療器具は、その感知ユニットから得られる連続的なデータに基づいて、様々な手足および体部分の相対的な位置および運動をモニターすることができ、そのようなデータは次に分析され、他の構成装置に通信されて、感知したデータに基づいて、機能を実行する。
【0011】
内蔵された感知、計算、通信機能を備えたそのような構成装置のネットワークは、受動的なモニタリングを超えた機能を持つことが出来る。そのような構成装置のネットワークは患者の姿勢と運動のパターンを連続的にモニターでき、次に個々のセンサーから集められた生データを処理して分析し、患者の姿勢と運動のパターンを検出できる。検出された姿勢・運動パターンは、心臓麻痺、注意不足、高血圧などの様々な状況を診断またはモニターするのに使用でき、または、患者の状況の悪化を表示するか、または、患者の検出された姿勢と運動に鑑みて、薬、治療もしくは訓練療法の適性を確認するのに使用できる。構成装置のネットワークから構成される姿勢・運動モニターシステムを使用して、睡眠研究も行なうことができる。とにかく、例えば患者が何らかの危険にあることを示すパターンが検出されれば、ネットワーク内の一つまたは複数の構成装置は、患者、医師、または、他の介護人にその危険について警告する警報、または、その他の警告信号を発することができる。そして患者に適切な治療措置を行なうことができる。そのような治療措置は、例えば、薬物療法または投与量の変更、患者に関係した整形外科、または、他の装置の調節、あるいは治療法の変更であることがある。
【0012】
一般に、分散姿勢・運動モニターシステムは、患者の体内、上あるいは周辺に分散した多数の構成装置を含む。一部、多くあるいは全ての構成装置は感知機能を有し、しばしば、インクリノメータ(inclinometers)および加速度計であることがある。しかし構成装置は、筋肉の張力、皮膚温度、皮膚上の気流あるいは流体流、ねじりなどを測定するセンサーなど、他の種類のセンサーをも含むことができる。好適には多数の構成装置は互いに無線で通信するが、有線通信も容易に可能である。
【0013】
そのような分散の姿勢・運動モニターシステムの構成装置は、それらのネットワーク内の少なくとも一つの他の装置との通信を可能にする、少なくとも一つの最小の通信機能を有している。この最小通信リンクにより、構成装置は、ネットワークの残りの様々なレベルで考慮される情報を送受信できる。構成装置は、単に遊離した装置としてより、このように、構成装置のネットワーク全体の関係内のシステム構成要素として作動する。ネットワークの構成要素として、多数の構成装置は、装置全体の通信、計算、データ記憶および警告機能に貢献でき、動的に変更可能なシステムレベル要件にしたがって、それらの感知機能を調節または細かく同調させることができる(例えば周波数、データ収集機能の範囲または解像度の調節)。モニターされている患者の姿勢または運動の変化により、構成装置レベルのネットワークの調節が必要なことがしばしばある。
【0014】
構成装置の一部、特に姿勢または運動の検出に主に責任がある装置は、ネットワーク内の少なくとも2つの他の構成装置に対して、3次元空間内のそれらの位置を判定するため、基本的な三角測量法を使用する。そのような探索手法は、例えば超音波または高周波技術を用いて行なうことができる。一部の超音波または高周波ベースの探索技術では、構成装置が内蔵の電源を使って活発に三角測量に関与する必要がある。他の超音波または高周波ベースの探索技術では、位置測定中には構成装置は受動的なままでもよく、それにより、一つの装置から送信された信号を他の装置で受信し、送信装置に送り返す。それらの受動的動作は、患者に対して特有な位置(例えば指またはまぶたに配置された構成装置)にあることで、非常に小さく軽い必要のある装置に好適である。
【0015】
ネットワーク内の少なくとも一部の構成装置は、計算およびデータ記憶機能を持ち、ネットワーク全体を通して計算機能の分散を支援する。このようにネットワーク全体を通し計算機能を分散することで、個々の構成装置の計算または記憶機能を比較的小さく、したがってエネルギー的、スペース的に効率的にしつつ、ネットワーク内の実質的で全体的な計算機能を可能にする。被モニター患者の体に対して、スペース的、重量的な要件があまり限定されていない患者の体に配置された構成装置は、ネットワークの計算資源の大部分を提供するが、スペース的、重量的により限られた場所に配置された他の構成装置は、内蔵された最小の計算機能を持ち、それによりサイズを小さくし、重量を軽くできる。
【0016】
構成装置はさらに、そのような計算または通信機能をサポートするため、内蔵された何らかの形の電源を備えている。もちろん、活発な計算が行なわれる場合は、計算機能を行なう構成装置内でより多くのパワーが必要になる。そのような電源には、医療器具または小型装置でしばしば使用される様々な電池技術を備えることができる。代わりに、直接または間接的に患者の体から電源をもたらすことができ、構成装置は温度差、運動、あるいは患者体内で生じている化学的、もしくは電気的エネルギーからエネルギーを取り入れる。もちろん、一部の構成装置は全面的に受動的で、したがって内蔵電力を持たない。そのような受動的な構成装置は、例えばRFIDタイプタグ(RFID type tags)として構成できる。
【0017】
患者の姿勢と運動のデータを収集するため、構成装置のネットワークを、患者の体に対してマッピングする。構成装置は、患者の体内、上または周辺に、あるいはその一部の組み合わせに配置できる。モニターする特定の体部分または一般的な体の部分は、患者に対してどこに構成装置があるのかを判定するために役に立つ。モニターされた体部分または一部の位置の計算をするため、感知構成装置を患者の体に対して配置した後、センサー位置マップを作成できる。マップは一つまたは複数の構成装置に記憶されるか、または、ネットワークに分離して接続されたコンピュータに記憶され、患者の姿勢と運動の連続的なモニタリングが行なわれる際、進行中の基準として使用される。
【0018】
患者の体のマッピングの一つの方法として、患者の体上の標識と患者の体の中、上あるいは周辺に配置した様々な構成装置との間の距離を測定する。この距離は、ネットワークにより検出される継続した測定値に対する将来の基準のために記録、保存される。そのようなマップを記録する、より複雑で半自動的な自動化手段を使用することもできる。いずれにしろ、作成したマップは、ネットワークに接続した独立したコンピュータまたはネットワークの一つもしくは複数の構成装置に好適に保存される。
【0019】
構成装置によるそのような患者の体のマッピングは有益であるが、ベースラインまたは基準測定値に対する関連リアルタイム測定に関しては、そのようなマッピングは必要でない。むしろ、構成装置により収集された感知データを、センサー位置マップを使用せずに、患者の状態に適合させることができる。代わりに、ある値範囲に入る、一つまたは複数の構成装置により検出された測定値が「容認可能な患者状態」として認識され、指定範囲外の測定値は「容認できない患者の状態」として認識されるように、構成装置に容認可能な測定値範囲を設けることができる。「容認できない患者状態」は、警報信号を有する構成装置に伝えられ、患者または介護人に、患者の体で容認できない姿勢または運動が生じたことを警告する。それにより、患者または介護人は、適切な治療措置を行なうことができる。装置のネットワークをこのように訓練して、どのような測定値およびその組み合わせが患者にとって安全か、ならびにどのような示度が警報を与えることになるか、を認識できる。そのような訓練は、患者、ヘルスケア提供者、家族、または、その他の介護人が行なうことができる。そのような訓練中、訓練者は、装置のネットワークにフィードバックをオンラインまたはオフラインで与えることができる。
【0020】
実際には、構成装置の分散姿勢・運動モニターネットワークは、患者の姿勢と運動のパターンを検出する。検出した姿勢・運動パターンは、例えば、病気の進行を示すか、あるいは、投与した薬の望ましくないまたは危険な副作用の明白な発症を示すのに使用できる。姿勢・運動パターンの所定の容認範囲外の姿勢または運動のパターンを検出することで、しばしば、薬療法または投与量の変更、あるいは治療法の変更が望ましいことが分かる。理想的には、1組の構成装置が、患者の体内に植え込まれる、患者に取り付けられる、あるいは患者の周囲または患者が位置する環境(例えば車椅子、ベッド、または部屋)、あるいはその組み合わせにおいて分散される。好適には構成装置は無線だが、有線装置も使用できる。患者に対して適切な場所に配置されると、構成装置は、本明細書中で記載する通信およびセキュリティ手段を用いて、通信ネットワークを確立する。
【0021】
構成装置の個々の位置は、患者の体に幾何学的にマッピングできる。上述したように、そのようなマッピングはオプションで、患者の個々の医学的状態およびモニターの必要性に基づいて、医師の裁量で始められる。代わりに、医師は、装置ネットワークが警報シーケンスを始める、ある基準を設定することもできる。患者および医師にとって、そのような警報基準に入る簡単な方法は、医師が注目すべきあるいは危険とさえ見なす運動パターン(例えば手のふるえ、一定の運動不能、あるいは所定の体部分の所定期間の運動の欠如)をシミュレートすることである。その後、患者の姿勢と運動のモニターが始まる。構成装置のネットワークにより収集されたデータは、分析のために医師に送られるか、または、ネットワーク全体に伝達される。患者のベースラインマッピング、または、その他との比較により判定して、姿勢・運動パターンが容認範囲内であれば、データ収集は繰り返される。患者のベースラインマッピング、または、その他との比較により判定して、姿勢・運動パターンが容認外であれば、そのような検出値は構成装置間で伝えられて、警報またはその他の警告信号を発する。勿論、構成装置のネットワークにより収集されたデータは、医師に送ると共に、ネットワーク全体に伝えられて、上記で詳述したように警報またはその他の警告を繰り返す、あるいは生じることができる。
【0022】
ネットワーク内の構成装置間の通信リンクは、ネットワーク内の構成装置間のデータ伝播を支援し、感知された生理的パラメータ、すなわち患者または患者が位置する環境の姿勢または運動、による様々な構成装置の機能の制御を支援する。このデータ伝播により、ネットワークを構成する多くの構成装置間で様々なタスクを割り当てることができる。個々の装置の機能的な能力では複雑な機能を果たせないが、ネットワークの前後関係で様々な装置間のタスク割り当てにより、装置のネットワークは、複雑な計算、通信、エネルギー管理、または、その他の機能を行なうことができる。例えば、十分に大きな数の構成装置間で計算タスクを割り当てることで、個々の構成装置の内蔵された計算能力は大きく制限されているとしても、複雑なタスクを行なうことができる。
【0023】
ネットワーク内の構成装置間でのタスクの割り当ては、患者または患者が位置する環境の動的に変化している状態および生理的パラメータに対応するため、動的な過程となっている。ある構成装置が全体または部分的な機能を失うと、破壊される、または取り外される、あるいは新しい装置がネットワークに導入されると、現在、作動している装置間のタスク割り当ては、ネットワークの構成装置を自己組織化して適時に効率的な形で所期のタスクやサブタスクなどを達成して、新しいネットワーク構成と、実際のネットワーク内での資源の入手性に対して適応する。本明細書内で説明するネットワーク内の構成装置の自己組織化方法により、構成装置間で感知し、計算しデータを通信する全体的な医療器具の適応性が患者のために増える。
【0024】
構成装置間のタスク、サブタスクなどの割り当ては、好適には通信プロトコルにより導かれ、そのようなネットワークを構成する単純な構成装置のアレイに鑑みて、ネットワークを効率化するために確実にタスク割り当てを最適化する。このように、構成装置間の管理された通信を可能にし、ある場合には、他の装置を除外する通信プロトコルを設ける。例えば、所期の構成装置に対処するため、ネットワーク全体を通しメッセージを同報通信するよりも、一つの構成装置はその通信範囲内の特定の構成装置にメッセージを宛てることができる。そのようなネットワークワイドの同報通信プロトコルの欠点は自明であり、本発明のシステムと方法のピア固有通信プロトコル(peer-specific communication protocols)ではそれを最小にする。そのようなピア固有通信プロトコルは好適には、各構成装置に対して仮想識別子を使い、匿名性と責任性の要件に対するニーズを強調する。
【0025】
このように、本発明のシステムと方法による医療器具全体の装置のネットワークを構成する構成装置は、ネットワーク内に通信パイプラインを組み込んで、個々のタスクの割り当てを、様々な構成装置のそれぞれに伝える。さらに、構成装置は、その通信範囲外の他の構成装置にメッセージを送信できる。構成装置から発信元構成装置の通信範囲を超えて一つまたは複数の構成装置へメッセージを発信することは、中間構成装置のチェーンを通して行なうことができる。したがって、メッセージが所期の受信構成装置に確実に到達するようにすることで、ネットワークはメッセージで溢れることはない。さらに、構成装置は好適には局所通信スケジューリングを行い、それにより同一通信リンクを使用する目的構成装置間で衝突なしの確実な直接通信が可能となる。このため、装置間の通信リンクは、好適には、受信構成装置が、メッセージを送る送信構成装置が使用するのと同一のチャネルを聞くように、装置間の通信リンクが割り当てられる。さらに、同一チャネルを使用する構成装置の通信は、メッセージの衝突の可能性、すなわち同一チャネルを通して一つ以上の構成装置が同時にメッセージを送ること、を最小にするように好適にスケジュールすべきである。このように構成装置も好適にタスク割り当てとスケジューリングを行なって、タスクが適切な構成装置に割り当てられ、各構成装置がそのタスクを、サービス品質要件とリスク推定にしたがってできるだけ少ない資源で所期のタスクが達成されるようにスケジュールされるようにする。さらに、構成装置は、タスクを好適に割り当てしスケジューリングして、エネルギー消費と重要な資源の使用を最小化し、それにより本発明のシステムと方法による医療器具を作動する全体的な「コスト」を削減する。
【0026】
このように構成装置のネットワークは全般に、集合的に総合ピア群を構成するピア装置の様々なレベルのピア群の階層を備えている。総合ピア群はさらに、本発明のシステムと方法の医療器具を構成する。各ピア群レベルには、遂行するタスクまたは機能が割り当てられる。ピア群内のピア装置はさらに、サブ・ピア装置から構成されるサブ・ピア群として形成され、サブタスクまたはサブ機能を解決して、最終的に総合ピア群のタスクまたは機能をより効率的に行なう。サブ・ピア群のサブ・ピア装置は、さらにサブサブ・ピア装置から構成されるサブサブ・ピア群を形成し、サブサブタスクまたはサブサブ機能などを行なって、最終的に総合ピア群の目的タスクまたは機能を行なう。このようにピア群の各レベルは、患者の体内、上または周囲あるいはそのいくつかの組み合わせでできる装置の論理群であり、感知し、データを通信、計算、分散し、そのようなデータに基づいて治療効果を出す。技術者は理解するように、ここでは様々なレベルは特に繰り返して示していなくても、ここで説明する医療器具の前後関係から、ピア群の参照符号は医療器具の総合ピア群を示すが、ピア群、サブ・ピア群またはサブサブ・ピア群などの参照符号は、それぞれのタスクや機能、サブタスクまたはサブ機能、あるいはサブサブタスクまたはサブサブ機能などと関連した様々なレベルの装置、サブ装置、サブサブ装置などを含むものと理解される。
【0027】
同一ピア群内のピア装置は互いに物理的に密接である必要はなく、類似の能力(例えば感知、計算など)を持つ必要もないが、ピア群のピア装置間でタスクや機能を伝えられるピア群内のピア装置のチェーンを少なくとも有することが通常、好ましい。さらに、ピア群の各々の必要タスクまたは機能のため、ピア群内で所与の能力を備えた一つ以上のピア装置を有することが、通常、好ましい。ここでタスクおよび機能とは、データを一つのピア装置から他へ伝えることや、データに対してある特定の計算を行なうこと、あるパラメータを感知すること、あるいはある警報その他の信号伝達効果をもたらすこと、のような任意の活動とすることができる。ピア群のピア装置、またはサブ・ピア群のサブ・ピア装置などは、患者の体内、上、あるいは周囲に配置して、ここで詳述する様々なタスクあるいは機能を行なう。総合ピア群のタスクの実行は、様々なタスクまたはサブタスクなどの全てが、総合ピア群内の様々なレベルのピア群の適切に対応するピア装置やサブ・ピア装置により受諾され行なわれて、始まる。総合ピア群のタスクの実行前に様々なタスクの包含的な割り当てを行なうことで、ピア群のタスクの最終的な実行前に、ピア群内で様々なレベルのピア装置間の最低レベルの信用や信頼性の達成が保証される。ピア群のタスクの実行前にタスクの包含的な割り当てを行なうことで、さらに、適切に割り当てられたタスクを効率的に実行する能力と資源を有する様々な構成装置間で様々なタスクをシーケンス化し、様々な割り当てられたタスクを実行するピア群の効率性が増大する。このようにピア群のタスクの実行準備ができると、ピア装置またはサブ・ピア装置などは、最適化した所定のシーケンスとスケジュールにしたがってデータを受け取り、処理し、その割り当てられたタスクまたは機能に取り掛かり、所期の感知や検出、警告その他の効果を達成できる。このように、各装置は、ネットワーク内で分散されたデータの一部または全てを処理可能にするデータやアルゴリズム、プロトコルを含み、データの一部または全ての交換、修正または再構築を行うことができ、ネットワーク内の様々な装置から、データ記憶、計算、通信、エネルギー供給、刻時、感知、信号伝達効果の受け渡しを自律的に割り当てることができる。
【0028】
様々なレベルの装置のタスク、サブタスクなどは、まれであるが一回限りのタスクとすることができるが、所与の再スタート時間で繰り返し実行可能なタスクとすることができる。前者の場合、各ピアがその後継ピアを信用するピアの単一のチェーンでタスクを解決できる。しかし一つの装置の故障がチェーンを破壊し、チェーンを再保存するまでタスクの実行が停止することがある。しかし、後者の場合、ピア装置の単一のチェーンでは、タスクを行なう再スタート前に割り当てられた時間内で所期のタスクを行なうには不十分なことがある。しかし構成装置間のパイプライン通信により、同一タスクの実行を上流側構成装置により再スタートしつつ、所期のタスクの引き続きの実行を下流側構成装置により可能にすることで、この不足を克服できる。この後者の状況は、例えば、1ms毎に一部のピア装置が感知した感知情報に基づいて、一部のピア装置が計算した運動量を1ms毎に判定する場合に起こり得る。しかし、運動の計算量は、得られた感知情報に基づいて1ms以上かかる。この場合、タスクはパイプラインタスクと呼ばれ、別の同様のタスクが始められても現在タスクの実行を可能にするパイプライン動作により最適に行なわれる。
【0029】
サバイバブル・パイプライン・プロトコル(Survibable Pipeline Protocols:SPP)は、装置のネットワーク内で集中調整装置を有することなしに、様々なレベルのピア群を組織化し、保全して、そのようなパイプラインタスクを実行する枠組みを提供することで、そのようなパイプラインタスクまたは作業の達成を支援する。そのように、SPPは、例えばピア装置が故障するか、または、新しいピア装置がネットワークに導入されたときにタスクが実行される、患者の体内、上、周辺で生じるピア装置の使用可能性の変化にピア群が対応できるようにする。このように、SPPプロトコルは、ピア装置のネットワーク内に集中調整装置なしに、装置のピア群を追加、除去あるいは再組織化する枠組みを提供する。このように、ピア装置のネットワークは、様々なレベルのピア装置などの使用可能性、性能、信頼性の変化、新しく導入されたピア装置の使用可能性、あるいは処理速度、タスクの性能シーケンス、提供する信号効果の量またはタイプなどのタスクの要件の変化に、中心的な調節装置に依存せずに、連続的に対応する。集中調整装置を導入することは、集中調整装置の機能が失われると、ネットワーク全体の機能の組織破壊と損失につながる可能性があるので、ネットワークを弱体化し、生き残る可能性が少なくなる。
【0030】
一般に、総合ピア群のタスクは、総合ピア群内の様々なレベルのピア群の全てのタスクまたは機能、サブタスクあるいはサブ機能の全てが実行されたときに完了する。タスクの実行後、タスクの実行に関与したピア装置などは、他のピア装置間の関係を更新できる。勿論、実行したタスクを完了すると、サブ・ピア装置間の関係の同じ更新が同様に行なわれる。
【0031】
理想的には、構成装置が、任意のピア装置にタスクあるいはタスクの一部を割り当てることに関連したリスクを評価する備えがあることである。それにより、一方で、構成装置は、所与のタスクを最もうまく完了する可能性のある一組の他の構成装置を選択でき、伝達に関係したタスクをこのピア装置のサブセットに宛がうことができる。
【0032】
構成装置は、無線チャネルなど不確かなメディアを通して互いに通信できる。しかし、装置間で交換する情報は、通信で専用の機密データを含んでいることがあるので、データの統合性と機密性に関する基本的なセキュリティ手段に加えて、通信プロトコルにおいてある程度の匿名性および責任性があることが好ましい。匿名性は、情報を送った後は構成装置を識別できず(例えば、発信元へ遡って情報を追跡できない)、仮想識別子(例えば、装置からの通信に含まれる識別コード)を発信元の装置へリンクできない、または遡って追跡することもできない、ということを必要とする。このように匿名性は、ネットワーク内の装置間で通信されている情報の追加層のセキュリティを提供し、ネットワーク内の個々の構成装置に対して目標攻撃を行なうのが難しくなる。他方、責任性は、ネットワークの作動手順および規則にしたがって機能を止める構成装置を識別し、ネットワークの残りの構成装置の有効性を弱めることなく、ネットワークから排除または切断する、ということを必要とする。匿名性と責任性は、究極的には互いに排他的な要件である。しかし、それらの要件の部分的な和解も可能で、それを本明細書で考える。匿名性と責任性は、このように構成装置、患者、医師、介護人を含む、ネットワーク全ての構成要素に拡げることができる。
【0033】
ピア装置間の直接通信は、非対称および対称の暗号化に基づいている。非対称暗号は最初に、ピア間で信用でき安全な通信チャネルを確立するのに使用されるが、対称暗号は、後にデータ通信中に使用される。プリティ・グッド・プライバシィ(Pretty Good Privacy)プロトコルが、メッセージの統合性、機密性、認証、非拒絶(non−repudiation)、匿名性、アクセス制御を提供する非対称および対称暗号の例である。別の例として、「匿名しかし責任ある自己組織化コミュニティ(Anonymous But Accountable Self Organizing Communities:AASOC)」があり、先行リストに責任性をつけて拡張する。非対称および対称の暗号に基づく数々の他の方法も知られている。
【0034】
共通のピア群、サブ・ピア群内の対応するレベルのピア装置は、このように暗号関係を通して互いに通信し、ネットワーク内の装置間の信用のウェブを確立し、サバイバブル・パイプライン・プロトコルを使用して、様々なレベルの自己組織化装置の階層を確立し、ピア群内の装置により順位付けたタスクまたは機能を実行、保全し、装置間の信用関係を更新する。その後、総合ピア群はその所期のタスクまたは機能を実行する。それらには、患者の姿勢と運動の感知または検出、その分析、感知した生理的パラメータに基づく警報提供あるいはその他の信号伝達、および総合ピア群の様々なレベルの装置およびピア群内で生じるデータ伝達および計算がある。暗号とサバイバブル・パイプライン・プロトコルをそのように用いて、本発明のシステムと方法の医療器具のネットワーク内の少なくとも一つの総合ピア群内の様々なレベルの自己組織化ピア装置間のデータ通信を調整する。
【0035】
装置間のある程度の匿名性と責任性を提供する単純なプロトコルとして、プリティ・グッド・プライバシィ(PGP)がある。PGPはピア装置、サブ・ピア装置間の公開キー−専用キー暗号で守られた関係に基づいている。専用キーは、データが関係する発信ピア装置、サブ・ピア装置などを認証する。それに対して公開キーは、所与のピア装置が、所与のピア装置に対して伝えられようとしているデータの受信を許可する必要な専用キーを所有しているか見分けるため、所与のピア装置の識別を判定できるように、所与のピア装置を識別データで符号化している。
【0036】
PGPにおいて、各々のピア装置、サブ・ピア装置などの公開キーは、このように他のピア装置、サブ・ピア装置などの少なくとも一つの専用キーにより承認され、それにより、それらのピア装置、サブ・ピア装置などの間で信用を作る。したがって、一つまたは複数の公開キーの署名が期限切れになるまで、あるいはピア装置、サブ・ピア装置などが不適切に行動をするまで、それらの装置間で信用は保全される。さらに、PGPを使用して、発信ピア装置、サブ・ピア装置などは、上記で詳述したように、直接的に他のピア装置などと通信でき、あるいは、発信ピア装置もその他のピア装置も互いに直接信用される公開キーを持っていなくても、中間ピア装置の公開キーが発信ピア装置その他のピア装置に信用されていれば、間接的に通信できる。そのような信用のウェブは成長して医療器具のネットワーク内の様々なピア群などと接続される。そして、最終的に各ピア装置などは、ネットワーク内の様々なピア装置などの全ての公開または専用キーに関する情報をどの単一のピア装置なども記憶する必要なしに、チェーン内の信用できるピア装置の各々と、直接または間接的に通信できる。このように、公開キーインフラにあった信用される第三者は、もはや必要なくなる。
【0037】
ピア装置などがコミュニティの規則にしたがって作動しない場合は、他のピア装置などは、先の承認が期限切れになった後、この有害なピア装置の公開キーを承認しない。このように有害なピア装置は、信用ウェブ内のピア装置間ではもはや信用されず、したがって装置のネットワークから排除される。「有害」という用語は、ピア装置のいくつかのタイプの作業不良のいずれかを意味する。例えば、そのような不良なピア装置は、装置が、他の優先して行なうべきタスク、を有していて一時的に使用できないとき、ピア装置がその電池を再充填しなければならないとき、あるいは単純にそのピア装置がネットワークの通信範囲外にあるときに生じ得る。ピア装置が作業不良、すなわち上記で述べた理由のいずれかでネットワークで使用不可能ならば、使用不可能な装置は通信に応答しないので、そのような動作不良は他の装置により自動的に検出される。
【0038】
ピア装置では他の形の動作不良も生じ得ることがあり、それは全体的なネットワークの性能に関しより深刻なものとなり得る。より深刻なピア装置の作業不良の一つは、例えばピア装置のハードウエア部分が壊れるなどして、ピア装置がもはやコミュニティの基本的な機能要件に適さない場合に生じる。それゆえに、この後者の有害なピア装置は、データの統合性やセキュリティあるいは一部の通信機能を提供できなくなる。この種の動作不良は、タスク実行や通信など、コミュニティの一部の基本的な機能を不良装置は実行できないので、ネットワーク内の他の装置により検出される。しかし、最も深刻な形の有害、すなわち動作不良のピア装置は、装置のネットワークの動作を意図的に妨害しようとする不良ピア装置の傾向がある。この最後のタイプの有害ピア装置は、ピア装置の様々なレベルのネットワークに向けた有害なピア装置の意図的努力を挫く支援をする特殊なアルゴリズムにより一番発見されている。このように、今後、「有害」という用語は、上記で詳述した動作不良装置のいずれかのタイプを意味するものと理解される。
【0039】
2つのピア装置などが互いに通信すること、すなわち信用を確立することを合意した後、信用したピア装置間で今後の通信ができる対称キーを生成できる。そこで、ピア装置は、より面倒な公開―専用キー関係の代わりに、その対称キー関係でデータを符号化、復号化する。一旦確立すると、対称キー関係は、ピア装置から計算をあまり要求しないが、通信期間中、同一あるいはより高いセキュリティを保証する。
【0040】
このように、本発明のシステムと方法は、患者の姿勢と運動を感知し、そのような姿勢や運動が容認範囲外であると判断されると、警報や信号その他の治療効果をもたらす手段を提供する。ここで記載するシステムと方法は、このように、様々なレベルのタスクあるいは機能を行なうためにネットワーク内で動的で共働的な階層を自己組織化できる、複数の比較的単純な構成装置により機能的な丈夫さを有する医療器具を備える構成装置のネットワークを提供する。したがっていずれか一つの構成装置の故障がネットワークの性能に大きな衝撃を与えることはなく、わずかだけ、医療器具のネットワーク全体の機能的能力を削減するだけである。したがって理想的には、ネットワークを構成する構成装置の一つあるいは一部が故障しても、医療器具は機能の完全な喪失を経験することはない。各構成装置は、個々には単純な機能を行なうが、ネットワーク内に組み立てられるとより複雑な機能の遂行に集合的に貢献可能な、比較的廉価で単純な構造を有することができる。構成装置のサイズが小さいことで、患者の体に植え込まれるまたは取り付ける際、患者への体積的な侵入が少なくなる。さらに、構成装置のサイズが小さいことで、体中に装置を分散するのに対応でき、患者の姿勢と運動を、同時にあるいはほぼ同時に複数の場所で感知できる。ここで記述した医療器具は、患者の姿勢と運動をモニターするのに使用して、治療や薬療法、投与量の適切さの判断を支援する。さらに、ここで記述する医療器具は、患者の姿勢または運動に基づいて患者の状態を診断するのに使用できる。そのような状態として、心臓麻痺、パーキンソン病あるいは注意不足疾患がある。ここで記述する医療器具はさらに、運動選手や患者の回復の際の訓練活動をモニターするか、または、体重削減プログラムのモニター、あるいは患者の睡眠研究を行なうのに使用できる。また、該医療器具は、治療装置(例えば深脳刺激器、ペースメーカー、薬剤送り出しポンプ)や増強装置(例えば義足、補聴器、音響または視覚フィードバック装置)と結合して、ここで記述する医療器具を含む構成装置のネットワークにより検出された姿勢と運動に対応して、患者のためにそのような治療または増強装置の機能を直接的または間接的に調整できる。
【0041】
構成および部品の組み合わせの様々な新規の詳細を含め、本発明の上記のおよび他の特徴は、添付の図面および請求項を参照して、以下により詳細に説明する。ここで説明する本発明の様々な例示的な実施例は、例示のためにのみ示したもので、それを限定するものではないことが理解されよう。本発明の原理や特徴は、本発明の範囲を逸脱せずに、様々な別の実施例で使用できる。
【0042】
本発明の器械および方法の上記およびその他の特徴、態様、および利点は、詳細な説明と、特許請求項および添付の図面の関連からより理解されるであろう。
【0043】
〔発明の詳細な説明〕
ここで説明する本発明のシステムと方法は、例えば患者の体部分あるいは体の一部または体全部の姿勢と運動を近似することを意図した医療器具を含む。医療器具は、2つまたはそれ以上の比較的単純な構成装置であって、階層的に構成した構成装置のネットワークの様々なレベルに自己組織化する構成装置から構成される。階層ネットワークは、ネットワークの様々なレベルに関連したタスクや機能を完了することで、姿勢や運動の連続的なモニターを行なう。したがって各構成装置は、ネットワーク内で感知し、記憶し、分散した一部または全てのデータまたは情報を処理できるデータ、アルゴリズムまたはプロトコルを含み、一部または全てのデータを交換、変更または再構成し、ネットワーク内の様々な装置間で、自律的にデータ記憶、計算、通信、エネルギー供給、計時、あるいは感知または信号発信機能を割り当てることができる。
【0044】
ある実施例では、患者をマッピングし、患者の姿勢と運動についてのデータを得るために、構成装置を戦略的に患者の体内、上、または周囲に配置する。次に得られたデータを、患者のベースラインまたは基準マッピングと比較する。現在の姿勢・運動データ対ベースラインまたは基準データとの比較を用いて、患者の現在の姿勢または運動を容認できるかどうかを判定する。他の実施例では、患者の姿勢と運動はマッピングしないが、三角法を使って測定し、戦略的に配置した構成装置間の能動または受動的な超音波または高周波動作に基づいて、目標の体または部分で生じる運動距離を判定する。このように能動的または受動的動作で、患者の姿勢または運動が容認できるかどうかを判定する。どちらの場合も、患者の姿勢または運動を容認できないと判定されると、警報他の信号を出して、患者や医師、介護人に、患者の容認できない状況について警告する。そこで、適切な治療措置を取ることができる。治療措置または治療効果は、医療器具からなる構成装置のネットワークに統合された構成装置から、あるいは、ここで記載した医療器具を含む構成装置のネットワークに独立的に接続された医療器具から提供することができる。
【0045】
ここでの説明では、ネットワーク内に2つまたは3つのレベルの構成装置を有するネットワークを述べるが、ネットワーク内には任意の数のレベルの構成装置を設けることができる。様々なレベルは一般に、全体的ピア群、所望によりサブサブ・ピア群を含むサブ・ピア群の集合および各レベルに対応する構成装置の集合を含む。勿論、技術者には容易に分かるように、ここでの非限定的な記述では、一般に単一の総合ピア群とそれと関連した様々なレベルを述べるが、ネットワークはさらに追加の総合ピア群、やサブサブ・ピア群と構成装置とを含むことができる。構成装置は同時にいくつかのピア群に加わることができる。さらに構成装置は、特にある機能またはタスクのために確立された装置の階層の一つのレベル、すなわちピア群やサブ・ピア群、サブサブ・ピア群の機能やタスクの実行に貢献できる。階層内の構成装置の他のレベルは、別の機能またはタスクを実行する。
【0046】
少なくとも一つの構成装置は、感知ユニットである。そのような装置のネットワークが支配的に感知ユニット構成装置で構成されていると、ネットワークは主に感知機能を行なう。そこでネットワークで得られた感知情報は患者や医師その他の介護人またはネットワークに接続された他の医療器具に送信される。ネットワークから患者や医師その他の介護人や他の医療器具あるいは人員に通信されたデータに対応して、治療計画や薬物療法、あるいは患者に投与される投与量を変えることができる。本発明のシステムと方法によると、感知ユニット以外の追加の構成装置により、構成装置のネットワークを構成することができる。
【0047】
図1は、総合ピア群PG1を形成するネットワークの実施例を概略的に示す。総合ピア群PGAは続いて、サブ・ピア群PG11、PG12、PG13から構成される。総合ピア群PG1が行なう詳細なタスクや機能は、サブ・ピア群PG11、PG12、PG13に割り当てられる。各サブ・ピア群PG11、PG12、PG13はさらに(PG111、GP112)のようにサブサブ・ピア群および/または構成装置(例えば、D1〜D4:D2、D4、D5;D3、D5、D6)とから構成される。各構成装置D1〜D6は、総合ピア群PG1の階層内の異なるレベルに属することができるように、総合ピア群内の一つ以上のサブ・ピア群PG11、PG12、PG13に属することができる。各サブ・ピア群PG11、PG12、PG13には、生理的なパラメータの感知、データの計算あるいは警報その他の信号を患者や医者、介護人あるいは他の医療器具に出すことを行なうため、サブ・ピア群タスク(サブタスク)あるいは機能(サブ機能)が割り当てられる。各構成装置D1〜D6には、患者あるいは患者が位置する環境内の生理的なパラメータの感知、データの計算、データの送り出し、データを他の構成装置へ伝えることなど、それが関係したサブ・ピア群またはサブサブ・ピア群の関係で行なう構成装置タスクあるいは機能が割り当てられる。
【0048】
構成装置D1〜D6、ピア群PG11、PG12、PG13、およびサブ・ピア群PG111、PG112のネットワークは、このように、総合ピア群PG1の様々なレベルを形成している。様々な構成装置D1〜D6は、構成装置があるレベルと関連した対応するタスクまたは機能の実行に貢献すると決めたならば、ネットワーク階層のそのレベル、すなわちピア群、サブ・ピア群あるいはサブサブ・ピア群に加わる。例えば、サブ・ピア群のタスクまたは機能が、一つの構成装置またはサブ・ピア群(PG11、PG12、PG13)により効率的に実行するには複雑すぎるならば、タスクまたは機能はより小さい部分に分割される(サブサブタスクまたはサブサブ機能)。サブサブ・ピア群(PG111、PG112のような)はこのように作られて、その中の構成装置は、それに対応してサブサブタスクやサブサブ機能を行なう。総合ピア群PG1、サブ・ピア群PG11、PG12、PG13、サブサブ・ピア群PG111、PG112および構成装置D1〜D6は例示的なもので、技術者は、本発明のシステムと方法による装置のネットワークは、少なくとも2つまたは複数の構成装置の、任意の数の少なくとも一つの総合ピア群で構成できることを理解しよう。さらに、様々なレベルのピア群、すなわちサブ・ピア群、サブサブ・ピア群などは、さらに図1にしめすように下層のレベルで構成することができ、例えばサブ・ピア群PG11がさらにサブ・ピア群PG111、PG112により構成されることを、技術者は容易に理解すべきである。勿論、提供されれば、各レベルのピア群は、対応して行うべきレベルのタスクや機能を有する。
【0049】
一般に、高いレベルのタスクあるいは機能は、下層のレベルのタスクあるいは機能の全てが完了するまで行なわれない。このように、理想的には、サブ・ピア群のサブタスクまたはサブ機能の各々が完了すれば、ネットワークは患者の姿勢と運動状況を判定し、必要に応じて、総合ピア群を構成する様々なレベルの構成装置およびピア群により感知され、計算、通信された生理的パラメータに基づいて、警報その他の信号を患者や医師、介護人またはその他の構成装置に出す。
【0050】
再び図1を参照すると、各構成装置D1〜D6は例えば、構成装置タスクまたは機能の少なくとも一つを行なう。したがって最低でも、各構成装置はネットワーク内の少なくとも一つの他の構成装置と通信し、より大きな総合ピア群内の個々の装置と様々なレベルのピア群、すなわちサブ・ピア群、サブサブ・ピア群などが集合的により複雑なタスクまたは機能を行なえるようにする。したがって、各構成装置は、生理的その他のパラメータの感知、データの計算と記憶、データの送り出し、ネットワーク内の一つまたは複数の他の装置との交信などの、一つまたは複数の機能を行なうことができる。構成装置間の通信は、構成装置がデータ信号やメッセージを受信または送信するが、受信と送信機能を両方行なわない点で一方向とするか、または、構成装置が少なくとも一つの他の構成装置からデータ信号やメッセージを送受信するように、相互的または二方向とすることができる。
【0051】
患者や患者の環境あるいはその一部の組み合わせにおいて構成装置を分布させることで、患者の体内、上あるいは周囲の様々な位置で、比較的単純なタスクや機能を行なうことができる。構成装置間の通信リンクは、ネットワークの各々のピア群内の様々なレベルの構成装置間で、信用を確立したり、様々なタスクや機能を割り当てたり、順位化する際の支援を行なう。このように、ネットワーク内の構成装置の組織化は、構成装置間に存在する通信リンクの結果、生じる。一つ以上の総合ピア群が設けられて場合、同様にピア群間の通信も設けることができる。理想的には、ネットワークの様々なレベルから構成される構成装置は互いに無線で通信するが、技術者は容易に理解するように、有線通信も可能である。
【0052】
装置間の通信は、信用する構成装置間の非対称または対称の暗号リンクを用いた直接的なもの、あるいは中間構成装置を使用し、暗号リンクとパイプライン・プロトコルを備えた間接的なものとすることができる。いずれの場合も、各々のピア群レベルを構成する構成装置間で行なわれる単純なタスクまたは機能の通信により、構成装置のネットワークは、体の他の部分または一部に対するある体の部分または体の一部の姿勢または運動の判定などのより複雑な機能を同時に行なうことができ、そのような姿勢あるいは運動は適切で容認できるパラメータ内にあるかどうかを判定できる。勿論、装置のネットワークがそのデータや判定を、患者や医師、介護人あるいは他の医療器具または人員に運ぶと、適切な治療措置を取ることが出来る。そのような治療措置には、神経、筋肉―骨格、その他の機能またはシステム機能を始め、人工的に器官の機能を、化学的または電気的手段、あるいは他の応答的医学プロトコルにより、刺激または制御することが含まれる。
【0053】
構成装置が互いの通信範囲内にある場合、そのような構成装置間に設けられた範囲内通信リンクにより、構成装置は互いに直接、通信できる。これを図2に示し、構成装置対D1〜D2とD2〜D3はそれぞれ互いの通信範囲にある結果、互いに直接、通信する。ここで、D1を包含する通信範囲を点線の円で示し、D3を包含する通信範囲を二点鎖線で示す。実線の円は、装置D2の通信範囲を示す。図2をさらに見ると、D1とD3は、それぞれ他の通信範囲外にあるので、直接互いに通信できないことは明らかである。構成装置間の直接、範囲内通信では、非対称および対称の暗号手法を用いる。これは、上記で示し、以下にさらに再び説明するプリティ・グッド・プライバシィ(PGP)や「匿名しかし責任ある自己組織化コミュニティ」(AASOC)プロトコルなどのプロトコルで提供される。そのような手法やプロトコルは構成装置間の信用の確立を支援し、互いに通信範囲内にある構成装置間の任意のデータを安全に送信する支援を行なう。
【0054】
構成装置の通信範囲は、医療器具全体の要件にしたがって事前に決定するか、動的に構成することができる。例えば、構成装置が他の少しの装置(例えば、所定数の装置以下)としか直接通信できない場合、その最大通信範囲を増大できる。他方、装置が直接、他の多くの構成装置と通信できる場合(例えば所定数以上の装置)、その通信範囲を削減して、短い距離で通信することでエネルギーを節約する。
【0055】
図3aは、構成装置D1がその通信範囲をその元も範囲(実線)から、新しくより大きな通信範囲(点線)に増大した時の例を示す。そのような通信範囲の増大は、範囲内の装置の必要数が少なくとも2台であるが、2台以上の装置の通信が、ネットワーク全体の効果または感度を増す場合には適切な場合が多い。
【0056】
図3bは、構成装置D1がその通信範囲をその元も範囲(実線)から、新しくより小さな通信範囲(点線)に減少した時の例を示す。通信範囲のそのような削減は、範囲内装置の数が例えば5台であるが、通信を少ない台数の装置に限ることで、ネットワークの効果または感度が向上する場合には適切となり得る。
【0057】
構成装置の実際の通信範囲は、通信媒体(高周波、赤外線、有線など)、通信ハードウエア(アンテナ、ワイヤ、IRセンサータイプなど)、通信用に使用可能なエネルギー(使用可能なエネルギーが少ないと、一般に通信範囲が小さいことが好適)、可能な最大送信エラービット割合など、あるいは関係する様々な構成装置の他のパラメータなどの、通信構成装置の物理的なパラメータまたは通信特定のパラメータにも依存することがある。例えば構成装置は、より少ないあるいは多い出力で通信することで、または使用する通信形態を変えることで、その物理的な位置を変えることで、あるいはここで検討する他のパラメータを変更することで、その通信範囲を変えることができる。
【0058】
再度、図2を参照すると、構成装置D1とD3の対は互いの通信範囲外にあり、そのような構成装置間で範囲外またはマルチホップ通信が行なわれ、本来、範囲外構成装置D1、D3の互いのリンクをできる。例えば構成装置D1、D3間の範囲外通信は、一つまたは複数の中間構成装置、この場合はD2、を介して行なわれ、D2は、本来は範囲外の構成装置D1、D3を互いにリンクする。構成装置間の範囲外通信は、さらに下記で説明する、ネットワーク内のSPPのようなパイプライン・プロトコルにより組織化し、保全することもできる。
【0059】
一般に、構成装置は同じピア群、すなわちPG11あるいはPG12内にあれば、互いに通信できる。しかし、ネットワーク内の全ての構成装置は、主要な総合ピア群(図1ではPG1)内にある。したがって、理想的にはいずれの構成装置も総合ピア群内の任意の他の構成装置と直接、間接的に通信できる。しかし、ネットワークの効率を最適化するには、構成装置間の局所化通信が好適である。構成装置の通信を局所化するため、理想的には装置は、ネットワークの階層内の最低の共通レベルのピア群内で通信すべきである。
【0060】
図4は、そこで、構成装置D1、D2が互いに、総合ピア群PG1を通すよりも、サブ・ピア群PG11を介して互いに通信することを示す。サブ・ピア群PG11は、両方の構成装置D1、D2で共用される最低の共有レベルのピア群であるので、構成装置D1、D2はサブサブ・ピア群PG111またはPG112を通して互いに通信することはできない。そのようなサブサブ・ピア群も、総合ピア群PG1の一部を構成していてでもある。いずれにしろ、構成装置D1、D2はPG1ではなく、PG11を通して通信すべきであり、できるだけ局所化され効率的なD1とD2間で通信を行なう。
【0061】
非対称暗号は一般に、各々のピア群内の構成装置間の信用を確立するが、対称暗号は一般に、構成装置間でそのような信用が確立された後、各ピア群内の構成装置間のデータ交換を承認する。他方、サバイバブル・パイプライン・プロトコル(SPP)は順位化されたタスクまたは機能と通信パイプラインを適切に実行、保全し、自己組織化した構成装置の階層を(様々なレベルのピア群の階層を作り、他の構成装置についての局所情報を保全して)確立することで構成装置間の信用関係を更新するのに使用される。各々のピア群レベル内の構成装置がその各々のタスクまたは機能を行なうと、各々のピア群のタスクが実行される。通信のセキュリティと匿名性は、本発明のシステムと方法による医療器具のネットワーク内で使用される通信方法に基づいて、暗号的な、PGPと、「匿名しかし責任ある自己組織化コミュニティ」(AASOC)により強化される。
【0062】
例えば図5に示すPGP暗号によれば、構成装置D1は公開キーK1aと専用キーK1bを備え、構成装置D2は公開キーK2aと専用キーK2bを備えている。K1aがK2bの上にある構成装置D2からD1への矢印で明らかなように、構成装置D1の公開キーK1aが構成装置D2の専用キーK2bにより承認されている場合は、例えばD2からD1への信用が確立されている。同様に、K2aがK1bの上にある構成装置D1からD2への矢印で明らかなように、構成装置D2の公開キーK2aが構成装置D1の専用キーK1bにより承認されれば、構成装置D1からD2への信用が確立される。そのような信用が構成装置間で確立されると、構成装置D1、D2間の二方向通信が容易に承認される。他の構成装置も、その間で信用と通信関係を確立するため、それと関連した同様の公開キーおよび専用キーを有している。このように、構成装置がその自身の専用キーで信用する構成装置の公開キーを承認することで、医療器具の信用された構成装置のネットワークが同様に確立される。
【0063】
構成装置間で公開キー−専用キー関係が確立されると、図5に示すように、構成装置D1、D2間で生成される対称キーK1−2のように、構成装置間で通信するための対称キーを生成することができる。対称キーが生成されると、構成装置は総合ピア群PG1内の他のどの信用される構成装置と通信できるように、信用される構成装置間でより迅速で、単純かつより安全な通信が可能になる。対称キーでメッセージを符号化し、復号化することは、メッセージ内の公開キー/専用キーアルゴリズム、暗号、またはプロトコルを使用したメッセージよりも典型的に簡単でより効率的に処理され、それにより対称キー構成が確立された構成装置間の通信の効率性を支援する。
【0064】
ここで例えば図6を参照すると、ピア群PG12が点線で示され、構成装置D4とD5が対称キーK4−5を有して、その間で信用が確立され通信が可能になっていることを示している。同様に、構成装置D5、D2は、対称キーK5−2を有して、その間で信用が確立され、通信が可能になっていることを示している。他方、構成装置D4、D2は、その間で通信が可能なように公開キー/専用キー関連性(K4aとK4b、K2aとK2b)を使用するとして示されている。しかし、この場合、装置D2の公開キーK2aは、装置D4の専用キーK4bで承認されておらず、公開キーK4aは専用キーK2bによって承認されていない。それでも、構成装置D4はD5を信用し、構成装置D2はD5を信用し、D5はD4とD2の両方を信用するので、矢印K4−K2に示すように、構成装置D2−D4間の信用を推論できる。したがってD4とD2は、専用キーK5bによる公開キーK4aとK2aのそれぞれの承認に基づいて、構成装置D2とD4は互いに信用できると結論づける。このように、前述のように公開キー/専用キー関係性を利用して構成装置D4とD2の間に十分な信用が確立されると、その間に対称キーK2−4が生成される。この間接的な(「推論的な」)信用の確立により、一部の構成装置は所定の装置間の信用の確立に依然、参加しつつ、他の全ての構成装置の公開キーを承認し記憶するのを差し控えることができ、通信を頻繁に生じる構成装置だけがその他の構成装置の公開キーを承認し記憶する傾向となる。
【0065】
ネットワークのピア群を構成する様々な構成装置でPGP暗号やAASOCを使用することで、構成装置間で通信されるデータの内的、外的な責任の確保の支援がなされ、その間で通信されるデータのプライバシィや機密性を保全し守る支援がなされる。特に医療での適用では、センサーネットワークは、患者とその環境から多くの個人的で高度に敏感な情報を集め、ネットワークに記憶された情報が保護され、ネットワークの通信が安全で匿名性があるという望ましさが強調されている。さらに好適には、有害なユーザーや装置に対抗して、責任性が設けられる。
【0066】
ネットワーク内の構成装置は比較的単純で、比較的限られた電源を備えて比較的小さな計算機能(例えばパソコンや携帯情報端末、携帯電話に比べれば)を有するので、ネットワーク内でセキュリティを備えるため装置により適用されるいずれのアルゴリズムも理想的に選別、実施して、エネルギー消費と計算資源要件を最小にする。PGP暗号は、上記で詳述したように、非対称公開キー−専用キー関係性で装置間の信用を生じる、非対称、対称キー暗号方法を用いてそれらの目標を達成する傾向にあるが、より効率的な対称キーとそれと関連したアルゴリズムを生成して、信用された装置間のより迅速な通信を確立する支援をする。他の構成装置の公開キーに対する構成装置の専用キー承認は、そのような装置の識別やセキュリティと装置間で通信される情報やデータの保証を支援し、それによりネットワーク全体の信頼性と効率性が増す。装置間の信用が崩壊するような、ネットワークそして医療器具の故障のリスクは、所望により、構成装置の機能のために作成したより高価で計算的に緻密なアルゴリズムをさらに実施することで最小にすることができる。
【0067】
ここで図7を参照すると、医療器具のタスクあるいは機能の実行と、そのタスクまたは機能の実行に貢献するピア群の様々な作られたレベルを示している。総合ピア群はPG1である。機能1は、サブ・ピア群PG11に割り当てられて示されている。機能1のサブ機能2は、サブ・ピア群PG112に割り当てられて示されている。サブ・ピア群PG11はさらに、サブサブ・ピア群PG111とPG112により構成され、サブサブ・ピア群PG112はさらに、サブサブサブ・ピア群PG1121、PG1122、PG1123とPG1124により構成されている。機能1は、円OP1からOP5に示されるように、5つの作業を含んでいる。最初の作業OP1を実行した後(例えば、一部の生理的パラメータを感知)、その結果をPG1121に送って、第2の作業OP2に組み入れる。OP2の実行後(例えば、後継の測定のため、一部のパラメータを計算)、その結果をPG1122に送ってOP3に組み込み、同時にPG1123に送ってOP4に組み入れる。OP3とOP4との実行後(例えば、PG1122に対するOP2の結果に基づいたパラメータ測定、およびPG1123に対するOP2の結果に基づいた他の測定)、その結果をPG1124に送ってOP5に組み入れる。OP1からOP5の実行過程で、患者の姿勢と運動の判定は、患者や医師、介護人あるいは他の医療器具に伝えられる。マッピングその他に基づいて、患者の姿勢と運動の判定が、容認可能な範囲を超えると判断されると、患者や医師、あるいは介護人は、その判断に基づいて適切な医療措置を取ることが出来る。そのような治療措置には、治療または薬剤療法あるいは投与量の開始や変更、患者の体のある場所に刺激を与える、その他の措置がある。先行するOP1からOP4の作業における患者の姿勢と運動の判断に対応して、警報その他の信号を、例えばOP5の実行として出すことができる。その後、割り当てられたサブ機能2が実行されたことを示すフィードバックが装置D1、すなわち構成装置D1〜D9全てを調整しスケジューリングしてそれぞれのタスクや機能を行い、機能1の第1の作業を完全に実行する責任を持つ「マネジャー」装置に、送られる(「マネジャー」装置の概念は、下記により詳細に説明する)。
【0068】
図7をさらに参照して、太線の矢印は、医療器具を形成する構成装置と様々なピア群のレベルの間のデータ伝播を示し、総合ピア群PG1は最大の長方形で示され、サブピアPG11は二番目に大きな長方形で示され、サブサブ・ピア群PG111は小さな内部の長方形で示されるが、その全ては作業OP1に対応する。サブサブ・ピア群PG112は、陰影付きの内部長方形として示されている。サブサブ・ピア群PG112はさらに、陰影のサブサブ・ピア群PG112の長方形内の小さな長方形として示されている、一連のサブサブサブ・ピア群PG1121、PG1122、PG1133、PG1124から構成されている。構成装置D1〜D9は、図7において、最小の長方形として示されている。図7に描かれた様々なレベルのピア群において、PG1とPG2がサブ機能2の完了の上に機能1の最終的な実行の組織化に対して責任を持つが、PG111、PG112およびPG1121〜PG1124は、医療器具の総合的な機能1の一部を構成する特定の作業OP1〜OP5およびサブ機能2の実行に責任を持つ。
【0069】
さらに図7を参照して、ピア群を構成する構成装置は、3つの異なる役割のいずれも満たすことができる。例えば構成装置は、「馬車馬」装置、「保全」装置、「マネジャー」装置、あるいはその組み合わせのいずれかである。「馬車馬」構成装置は、処理するデータを受け取れば、それぞれのピア群の割り当てられたタスクの実行に責任を持つ。ピア群の全ての構成装置は、「馬車馬」装置として作動できる。「保全」装置は先の作業からデータを受け取り、そのデータを処理するピア群の一つまたは複数の後続「馬車馬」装置にデータを配送し、ピア群内の様々な装置の役割の保全を支援する。「マネジャー」装置は、さらにピア群内のデータ割り当てと処理をスケジュールし、新しい装置を補充して、必要に応じてピア群に割り当てられたタスクの実行を支援し、ピア群内の様々なレベルの構成装置の他の「マネジャー」装置に後継タスク(または作業)の割り当てを組織化する「保全」装置である。とりわけ「マネジャー」装置は、例えば図7の作業OP5のように、複数のプロセッサ作業またはサブタスクから入力データを受け取るケースに一つのレベルから他のものへのデータ送信を単純にする支援をする。そのような場合、対応するデータパッケージを、処理のためピア群内の同一「馬車馬」装置に送る必要があり、その場合、パッケージは典型的には、処理が始まる前に整理される。
【0070】
図8aは、ピア群内に十分な数の「保全」装置があってデータを効率的に受信して「馬車馬」装置に送り、データの適時の処理を行なうようにする過程を示す。ピア群内のタスクの信頼性要件を間違いなく満たす十分な「保全」装置がピア群内になければ、「馬車馬」装置がピア群内から補充されて、「保全」装置になる。「馬車馬」装置がピア群内から補充できなければ、それぞれのピア群の「マネジャー」装置に、そのピア群の割り当てられたタスク、機能あるいは作業は、ピア群内で使用可能な現在の装置で保証できないという忠告が送られる。図8bは、先の「マネジャー」装置が適切に対応しないあるいは機能しない場合に使用可能な「保全」装置から追加の「マネジャー」装置を補充する過程を示す。
【0071】
図9は、タスクまたは機能の組織化がどのように始まるかを例示するフロー図であり、ここで「タスク」という用語しか使用しないが、機能およびそのようなタスクや機能あるいはその一連のものの様々なレベルは、ここで述べた説明に包含されることを理解すべきである。構成装置のネットワークにより組織化され実行されるタスクは、ネットワーク内で宣伝される。ステップ1000では、ネットワーク内の様々な構成装置は、宣伝タスクの記述を受ける。宣伝タスクの記述には、宣伝タスクの、タスクを行なうのに必要な作業、好適なデータ経路、信頼性要件、必要実行時間(例えば待ち時間、再開時間)の記述が含まれる。ステップ1100では、構成装置は、その宣伝タスクを行なう責任を受けるかどうか判定する。該装置が宣伝タスクを受けるならば、ステップ1200で、受諾した装置は、宣伝が発信された構成装置に、受諾装置は宣伝されたタスクを受け入れ実行する意向であることを示す通知を送る。構成装置のいくつかは宣伝タスクを行なうことができるので、いくつかの受諾意向通知が、様々な可能な構成装置から来る可能性がある。しかし一つのタスクは好適には一つのピア群に割り当てられるので、好適には一つだけの構成装置が最終的に承認されて、宣伝タスクを受諾して実行する。最初にタスクを宣伝した構成装置は、受諾意向通知のどれを受け入れるか、そして最終的にどの構成装置を承認して宣伝タスクを実行するかを決定する。この判定は、タスクの特質と、タスクに志願した各構成装置の同様のタスクに関する過去の成績に基づいて行なわれる。ステップ1300では、発信装置は、どの装置を承認して、宣伝タスクを受諾して実行するかを判定する。宣伝タスクの開始と実行を承認する宣伝装置からメッセージを構成装置が受信すると、ステップ1400で、その承認された装置は、宣伝タスク(またはサブタスク)の実行のため、その組織化を開始しなければならない。タスクの実行のため、それを組織化する最初に段階は、宣伝タスク(またはサブタスク)の最終的な実行に責任を持つ適切なレベルのピア群を作成することである。
【0072】
タスクを直接実行するため、ピア群が作成されると、そのタスクを実行する資源要件が宣伝される。作成したピア群レベルにより行なわれる作業は単一の作業あるいはいくつかの連続した作業であることがある。いずれにしても、作成したピア群による資源要件の宣伝は、上記で詳述したタスク記述で提供したのと同一または類似の情報を含み、複数の装置が宣伝に応答して、ピア群に参加するように引き付ける。
【0073】
図10は、構成装置が、資源要件を考慮に入れて、宣伝タスクを行なうことができるかどうか、およびそれと関連したタスクを行なうことを承認された、作成されたピア群レベルに構成装置が参加すべきかどうか、を判定する場合を例示するフロー図を提供する。図10に示すように、構成装置はステップ2000で、タスクを行なうための資源要件を記述した宣伝を受け取る。次にステップ2100で、構成装置は、宣伝された資源要件で述べられた目標の信頼性、周波数その他のパラメータ内で、タスクの実行に貢献できるかを判定する。そうであれば、ステップ2200で、構成装置は、そのタスクを行なうことを承認された、作成ピア群に加わる。そうでなければ、宣伝した資源要件の観点から、構成装置のさらなる補充が必要になる。ピア群が作成されれば、ピア群は、目標の信頼性、周波数その他のパラメータ内で、全タスクを完了するのに必要な全ての作業を実行する、十分な量の構成装置が必要となる。先行するデータが同一構成装置により完全に処理される前に、構成装置により処理すべき追加データが生成されると、データと処理の未処理分(バックログ)が、望ましくない信頼性と周波数効果を生じることがある。この場合、パイプライン動作を構成装置間で使用して、先のタスクや機能、動作処理が途上であっても、続いて生成されるデータの処理を続けることができる。そのようなパイプライン動作を使用するということは、作成され、タスクを行なうことを承認された共通レベルのピア群内の装置は、先のデータが完全に処理されていなくても、後続のデータの処理を開始できることを意味する。パイプライン動作の結果、少なく数の構成装置で増大したデータを処理することが要求される。
【0074】
図11は、ピア群に委託されたタスクの管理を例示するフロー図である。ピア群の「マネジャー」装置は、図11のタスク管理フロー図に設けられたステップを定期的に実行する。ステップ3000では、「マネジャー」装置は、タスクが確実に実行されているか、あるいはタスクが行なわれるタイミング上の制約が、ピア群内に存在する現在の構成装置で満たされていないかどうか判定する。タスクが確実にあるいは時間通りに実行されていなければ、「マネジャー」装置はステップ3100で、関連したウェブログから追加の構成装置を選択する。図13でさらに詳細に説明するように、ウェブログとは、所与のタスクを行なうその信頼性に基づいて、格付けあるいは順序付けられた構成装置のリストである。追加構成装置は好適には同じピア群にはなく、したがってその補充により、ピア群の全体的な資源や能力が増大する。追加の信頼できる構成装置を選択した後、「マネジャー」装置はステップ3200で、このピア群のタスクを、既存のピア群内の既存の装置と共働して、新しく補充した構成装置で、ステップ3300〜3370を介して直接実行すべきかどうか、あるいはこのピア群のタスクをステップ3400〜3470で、より小さなサブタスクに分割または分解すべきかを判定する。タスクを直接、既存のピア群により実行すべきならば、ステップ3300で、タスクの実行の資源要件が様々な装置に対して宣伝される。ピア群のタスクを分解すべきならば、ステップ3400で、ピア群のタスクをピア群内の選択された装置に対して宣伝する。
【0075】
直接的な実行が追及される場合、ステップ3310で、「マネジャー」装置は、使用可能な装置からの宣伝に対する応答を待つ。「マネジャー」装置がステップ3320で所与の時間間隔内で様々な構成装置から満足な応答を受けると、ステップ3330で、様々な応答構成装置はピア群に参加して、ピア群の所期のタスクの実行を支援する。他方、ステップ3320で不満足な応答しか得られなかった場合は、ステップ3340で、実行を所期のタスクの資源要求を総合ピア群の全ての装置に対して宣伝する。ステップ3340の資源要件宣伝に対する満足な応答がステップ3350で受ければ、それらの応答構成装置は、ステップ3360でピア群内の他の装置に参加して、所期のピア群タスクの実行を支援する。そうでなければ、ステップ3350で不満足な応答が得られ続けるならば、ステップ3370で「マネジャー」装置は、タスクを組織化できないあるいは実行できないという通知を送る。該通知は、このタスクの宣伝を最初に受けた構成装置に送られる。
【0076】
タスクの実行前に、タスクのさらなる分解が追求される場合、「マネジャー」装置は、ステップ3410で、ウェブログから選択された使用可能な構成装置から、宣伝に対する応答を待つ。「マネジャー」装置がステップ3420で所与の時間間隔内で様々な構成装置から満足な応答を受ければ、ステップ3430で、様々な応答構成装置は受託されてピア群に加わり、ピア群の所期のタスクの実行を支援する。他方、ステップ3420で不満足な応答しか得られない場合、ステップ3440で、実行を所期のタスクが、総合ピア群の全ての装置に対して宣伝される。ステップ3440のタスク宣伝に対して満足な応答をステップ3450で受け取ると、ステップ3460で、それらの応答構成装置は受諾されてピア群内の他の装置に参加して、所期のピア群タスクの実行を支援する。さもなければ、ステップ3450で不満足な応答が続けて得られれば、ステップ3470で「マネジャー」装置は、タスクは組織化できない、または実行できないという通知を送る。前と同様に、通知は、このタスクの宣伝が発せられた構成装置に送られる。
【0077】
図12は、後継タスクの保全と組織化を例示するフロー図である。後継タスクとは、全ての要求された先行タスクの完了後に実行される次のタスクであると理解される。図11によると、ピア群が作成され、特定のタスクの実行に責任を持つ。典型的に、そのようなタスクは、医療器具の後続または高いレベルのピア群、あるいは総合ピア群により実行される、いくらか大きなタスクの下層レベルから構成されている。したがって、下層のピア群のタスクをうまく実行することで、下層のピア群タスクが実行された後、より大きなタスクの実行を失敗しない尤度を増すことになる。下層タスクが完了すると、下層ピア群はさらに、後継タスクの最初の部分の組織化と保全を始める構成装置を見つける責任を有する。言い換えれば、下層ピア群は、後継タスク全体を組織化する責任を持たない。むしろ、下層ピア群は、それのために作成されたタスクを実行することに加え、後継タスクの最初の部分の確実な実行を組織化する別の装置を補充し、通信する。それにより、装置のネットワークとタスク割り当てモジュラーが分散され、丈夫になる。このように、装置のネットワークにおけるタスクの実行は、一つだけの装置に決して依存しない。
【0078】
図12のフロー図のステップ4000に示すように、「マネジャー」装置は定期的に、後継タスクの一部の最初の部分の実行が確実かつ時間的に実行されていることを検証する。検証をできないあるいは、後継タスクを確実に組織化できないあるいは実行できないという通知を受け取れば、「マネジャー」装置はステップ4100で、そのウェブログから一部の後継装置を選択し、ステップ4200で、ウェブログで識別される構成装置に後継タスクを宣伝する。ステップ4300では、「マネジャー」装置は、宣伝に関して後継装置から応答を待つ。「マネジャー」装置がステップ4400で受諾可能な応答を受信すると、ステップ4500で後継装置は受諾され、後継タスクの実行が組織化され、その実行が始まる。他方、「マネジャー」装置がステップ4400の宣伝に対して満足な応答を受け取らない場合、ステップ4600で、宣伝は総合ピア群の全ての装置に送られる。「マネジャー」装置がステップ4700で満足な応答を受信するならば、ステップ4800で後継装置は受諾され、後継タスクの最初の部分の組織化と実行が始まる。しかし、「マネジャー」装置が依然、ステップ4700の宣伝に対して満足な応答を受信しない場合は、「マネジャー」装置は、「マネジャー」装置が後継タスクの最初の部分の組織化と実行を確実に準備できないという通知を、「マネジャー」装置がタスク記述を受け取った発信装置に送る。通知を受け取る発信装置は、後継タスクの組織化と実行を準備するため、別の装置を補充すべきである。
【0079】
ここで図7を再度、参照すると、医療器具の機能を組織化する一つの例示的な例として、D1は機能1の記述を受け取り、補充して、その機能の組織化を開始した。D1はピア群PG11を作成し、OP1はそれ自身で直接、実行されないと判定した。したがって、D1はPG111を作成し、いくつかのパートナー装置をそのウェブログから選択し、OP1の資源要件をそれらの装置に送った。さらに、D1は、機能1をさらに分解する必要があると判定し、それにより、残りのタスク(OP2〜OP5)を、割り当てられたピア群PG11を有するという事実で宣伝した。必要ならば、宣伝を総合ピア群PG1の全ての他の装置に送った。最終的にD5とD6がピア群PG111に加わり、D1がピア群PG111の「マネジャー」装置となった。この間、D1のタスク宣伝に関して、D2がD1に、後継タスク全体を受諾し組織化する意向で応答した。D1はD2の意向を受諾し、それによりD2はピア群PG112を作成した。D2は、OP2を直接、それ自身で実行することはできないと判定し、それによりPG1121を作成し、一部のパートナー装置を選択し、OP2の資源要件を宣伝した。さらにD2は、タスクOP2の他の部分をさらに分解すべきと判断し、それによりD2は、割り当てられたピア群PG112を有するという事実で残りのタスクを宣伝した。同様に、D3、D4、D5はOP3、OP4、 OP5の実行を組織化し、他の装置は作成されたピア群に参加した。最終的に、機能全体の実行は、SPPプロトコルを備えた装置により確実かつ適時に行なわれ、保全される。
【0080】
装置が壊れる、あるいはともかくネットワークから切断されると、タスクの実行においてその資源に依存するその他の装置はそれに気づく。装置が、それが壊れる可能性があることを検出できれば、例えばそれが壊れる、あるいはそのエネルギー源が枯渇するという通知を他の装置に送るべきである。装置がメッセージに対して応答しない場合、それは作動していないと見なされ、他の装置は、装置がメッセージに応答し始めるまで、その装置を計算に入れない。
【0081】
新しい装置がネットワークに導入されると、その装置は、宣伝タスクを確実に実行あるいは組織化を開始するのに資源を必要とする任意のピア群に参加できる。システムの必要なセキュリティを確保し、悪意の侵入を防ぐため、新規の装置は、装置のネットワークに参加するその権利の証明を提供する必要があることがある。さらに、例えば、AASOCシステムでは、医療器具全体の規則にしたがって作動しない装置を失格させる手順が一般に存在する。それにより、悪意の装置に対抗する医療器具のセキュリティがさらに増大する。
【0082】
図13は、構成装置D1〜D3の通信の自己組織化格付けとタスク実行信頼性パターンを概略的に示す。信頼性パターンは、本発明のシステムと方法の各構成装置のウェブログ(W)に保全されているように示される。図13に示すように、信頼される構成装置のウェブログ(W)は、上記で詳述したように、装置間で確立される公開キー−専用キーあるいは対称キー関係に基づいて、各装置が保全する。このように、他の装置のウェブログWにリストされた各装置は、対応する構成装置との通信やタスク実行に対し、ある程度の信頼性を持っている。しかし、各装置のウェブログWは、信用できる装置を、ウェブログW内において最も信用できる装置を最初にリストし、最も信用できない装置を最後にリストするというように、順位化する。このように、信用が少ない装置は、それぞれの装置のウェブログリストの最初と最後の装置の間で連続的な順番でリストされる。
【0083】
実際には、さらに図13を参照すると、構成装置D1のウェブログWが図示されている。ピア装置D2が、それが装置D1から受けたタスクを完了すると、D1によるD2の信頼性が増えることになる。その信頼性は、装置D1のウェブログWで装置D2を最初の位置に配置することで、装置D1のウェブログWで示される。一方、装置D3が装置D1から受け取ったタスクの実行を失敗すると、D1によるD3の信頼性は減少する。その結果、装置D3は、D1のウェブログW上で装置D2以下に配置される。D3が、D1からそれに伝えられたタスクの実行を引き続き失敗すると、最終的にD3は装置D1のウェブログWから取り除かれ、この場合、D1はタスク宣伝を直接、D3に送らなくなる。様々な信用装置を装置の信用または信頼性の度合いによりリストすることで、医療器具のネットワークを通してデータを処理し通信する効率性を向上できる。さらに、装置の資源(例えばメモリ)により多くのウェブログの記憶や更新が可能になるならば、その装置は各タイプのタスクや通信用の別のウェブログを持つことができ、必要に応じて適切なウェブログから装置を選択できる。
【0084】
図14は、本発明のシステムと方法による、ピア群123内の構成装置間の局所通信方式の実施例を示す。図14に記載する通信方式は、ピア装置D1〜D4を例示している。装置D1とD2は、各々他の通信範囲(それぞれC1、C2)内にあるので、互いに直接通信することを好む。なお、通信範囲(これは物理的概念であるので)は論理的に存在しているピア群に制限されない。図14はこの概念を、D1とD2はピア群PG123内にあるが、D3とD4はそうでないと例示している。代わりに、D3とD4はピア群PG12内にある。それでも、D3とD4はそれぞれ、D1とD2をも含む通信範囲C1とC2の一つの中にある。装置間の通信干渉を避けるため、装置間の通信は、互いに他の通信範囲(C1とC2)にある2つの装置が特定のチャネル、例えばチャネル1、を使って直接通信する場合は、それらの装置の通信範囲(C1とC2)内にある他の装置は、同一チャネルを使用しないように好適にスケジュールされる。
【0085】
例えば、さらに図14を参照すると、装置D1とD2は、通信範囲C1、C2内でチャネル1を介して互いに直接、通信する。このように、D1とD2の通信中、装置D3も通信範囲C1、C2内にあるので、チャネル1を使ってどの装置とも通信できない。D3はD1とD2の両方の通信範囲内にあるので、D1、D2のそれぞれは、通信干渉を容易に避けられるように、D3との直接通信をスケジュールできる。他方、D4はD2の通信範囲の外にあるので、典型的にはD2は、D4がD1を干渉し得るということも知らない。それでもD2とD4は、同一チャネルを使ってD1と同時に通信することはできない。さらに、D1がチャネル1上で通信するならば、D4がその間、チャネル1を使って他の装置と通信することは、D1の通信を干渉することになるので、できない。したがって、例えばD2がD1とチャネル1上で通信するときは、D4はその通信をチャネル1を使わないようにスケジュールしなければならない。例えば、タスクがSPPを使って構成装置の様々なレベルに関して割り当てられ、スケジュールされたのと同様に、通信がスケジュールされ割り当てられるならば、通信干渉を最小のものにすることができる。例えば図7と14に示すように、そのような通信方式を使うことで、装置間の干渉を最小にしつつ、装置間でより信頼できる通信が可能になる。その結果、それぞれのピア群内の構成装置が行なうタスクまたは機能をより確実に行なうことができる。
【0086】
図15は、本発明のシステムと方法による構成装置D1から構成装置D8へのデータを通信する経路選択方式の一実施例を示す。図15で、装置D1〜D8は円で表示される通信範囲を有している。装置D1とD8は互いに他の通信範囲外にあり、実線の対称的な円で表示されている。装置D2〜D4の通信範囲は点線の円で表示されており、装置D6〜D7の通信範囲は二点鎖線で表示されている。図15では3つのピア群PGC18、PGC28とPGC58があり、各ピア群は通信タスク用に作成されている。大きな長方形がPGC18を示し、装置D1とD8間の通信用に作成されている。2つの手書きの太線はそれぞれ、ピア群PGC28とPGC58を示し、D2とD8間、およびD5とD8間の通信用に作成されている。
【0087】
図15をさらに参照すると、例えばD1はD8と通信を望むが、D1とD8は互いの通信範囲外にある。したがってD1はピア群PGC18を作成してD1とD8の間の通信を局所化し、それによりこのピア群に参加する装置だけが通信に貢献できる。D1はD8に対する経路を知らず、それ故にこの通信タスクを全ての装置に宣伝する。装置D2とD5は、D8への経路を知っているので、宣伝に応える。D1はそれらの応答を受諾する。したがってD2とD5はピア群PGC28とPGC58を作成してD8とのそれらの通信を局所化し、通信資源要件の宣伝をD8への経路の装置へ送信する。すなわち、D2は宣伝をD3とD4に送り、D5は宣伝をD3とD4に送る。最終的に、D4とD7は、D8との通信範囲(実線の対称円)内にある。このように、D8はD4とD7を通して、D1がD8と通信したいということを通知される。ここで装置D1とD8は、上述したようにそれらの公開―専用キー対で、互いの間で信用を確立できる。したがって実際には、本発明のシステムと方法の異なる構成装置(C1〜D8)から構成される様々なレベルのピア群(PG1、PG11、PGC18、PGC28)のネットワークから構成される医療器具は、感知した生理的なパラメータに関するデータを通信し、そのようなデータを計算、記憶あるいは分散し、そのようなデータへの対応を始め、ネットワーク内で交換される通信に基づいて患者の状態に対処あるいは治療する。
【0088】
上述のサバイバブル・パイプライン・プロトコルに関し、共働的な装置ネットワークは、課題の資源分割、スケジューリング問題を作る。例えば、図14に関して上述した、構成装置の通信の干渉により提起される課題は、例えば、感知情報を、ネットワーク内の構成装置間あるいは様々なレベルの構成装置間で指定低帯域RFチャネルを通して分散することで解決できる。各段階で得られた情報あるいはデータの分散事前処理により、構成装置間あるいはその様々なレベルで通信される情報量を下げ、所望により、構成装置間およびネットワークのレベル間の通信をより効率的にすることができる。この場合、ネットワークを作動させるには、それぞれが限られた計算能力を有し、異なる可能性のある構成装置の事前処理タスクを完了しなければならない可能性がある。さらに、離れた構成装置間のマルチホップ通信チャネルが、ネットワークの効率を向上するため、好適に保全される。本発明のシステムと方法の関係で使用されるサバイバブル・パイプライン・プロトコル(SPP)は、構成装置内のアルゴリズムの枠組みを提供し、本発明のシステムと方法による複数の構成装置のネットワークから構成される医療器具の、マルチホップメッセージ経路選択、局所通信、タスク割り当てとスケジューリングを行なう。
【0089】
SPPは複数の利点を有し、本発明のネットワーク化した医療器具で有用である。例えばSPPは:
異質で低い処理能力の装置の集団で、構成装置を補充して、個々の装置の能力を超えた複雑でエネルギー的に高価なタスク(例えばセキュリティの増大のためのメッセージの暗号化、復号化)を行い、
通信能力(例えばRF通信)を備えた構成装置に、効率的にスケジューリング通信を行なうことで干渉を削減可能にし、
通信するデータの分散事前処理により通信トラフィックを削減し、
離れた構成装置間のマルチホップ通信を支援し、
装置の損失または導入、あるいは個々の装置の性能変化によりもたらされる装置集団の動的な変化に対応する。
【0090】
図16は、本発明のシステムと方法による患者の姿勢と運動をモニターするのに使用する、構成装置のネットワークの一実施例を示す。例えば図16は、ここに記述するシステムと方法による運動と姿勢モニター装置を構成する、患者の体内、上あるいは周囲に戦略的に配置された一連の構成装置、またはその組み合わせを例示している。姿勢・運動モニター装置は、例えば図16にあるように、手足の端部と頭部近くに配置された構成装置を供えることができるが、技術者は、ここに詳しく記述した箇所以外の場所に装置を配置できることを容易に理解しよう。いずれにしても、構成装置はその距離を、ネットワーク内の少なくとも一つ、好適には一つ以上の他の構成装置に対して測定できる。さらに、各構成装置はそれ自身の加速度、傾斜その他の姿勢と運動パラメータを測定できる。構成装置により得られるデータは間隔をあけてあるいは連続的に得られ、データを分析あるいはデータの分析の管理を課せられた構成装置に伝達される。データの管理には、例えば複数の構成装置間で、その分析を分散することが含まれることがある。そこで一つまたは複数の構成装置は、そのような分析結果に、患者や医師あるいは介護人に警告を発することで反応する、同一ネットワーク内の治療構成装置を活性化して治療措置を取る、あるいは患者内、上あるいは周辺にある他の独立した医療器具と相互作用する機能を有することができる。より複雑なモニタリングタスクを行なう必要があるときに必要となる、より複雑な構成では、構成装置はその感知機能を様々な階層レベルのピア群で行なうことがある。
【0091】
上述したように、構成装置は、ピア群の異なるレベルの階層に動的に自己組織化して、様々なタスクを行なう。様々なタスクには、例えば、患者の体部分または体の一部の姿勢と運動を判定することがある。このように、少なくとも一つのレベルのピア群、およびそのようなピア群を構成する構成装置は、患者の体部分または体の一部の姿勢と運動のデータを取得する。そして、得られたデータは、上位のピア群レベルに通信される。上位のピア群レベルは、患者の他の体部分または一部に関する姿勢と運動データを得る責任があってもよい。追加のピア群は、患者の他の体部分または一部に関する姿勢と運動データを得る責任を有してもよい。
【0092】
総合ピア群は、下層のピア群レベルから様々なデータを集め、患者の観察された姿勢と運動が容認可能かどうかを判定する。容認可能ならば、観察サイクルをそれ自身、繰り返す。容認できないならば、少なくとも一つの構成装置が警報その他の信号を生じて、患者、医師または介護人に、容認できない姿勢または運動について忠告する。このように、識別された、患者の容認できない姿勢または運動に対応して、適切な治療措置を取ることが出来る。治療措置は、ネットワークの一つまたは複数の構成装置により開始する、あるいはネットワークに独立的に接続された一つまたは複数の医療器具により開始する、あるいは患者、医師、介護人によりマニュアル的に開始することができる。治療措置または治療効果は、患者または装置の位置の変更、治療の変更、あるいは薬療法や投与量の変更などがある。
【0093】
図16に示す特定の例では、作業OP1〜OP14は、患者の様々な手足や体部分を示し、各作業OP1〜OP14は、構成装置で構成される各ピア群と関連している。ピア群PG111は、OP1と関連した3つの構成装置D2、D15およびD17を有しており、OP2〜OP14と関連したピア群は、それぞれ2つの構成装置を有している。各ピア群の構成装置は、各ピア群が関係した手足あるいは体部分に対応している。各作業OP1〜OP14は、例えばピア群PG111と作業OP1あるいは他の構成装置、ピア群や作業と関連した他の構成装置D1、D15およびD17に対する、各作業と関連した構成装置の、例えば距離などのパラメータを測定する。測定は、例えば患者の胃の周りに位置する中間作業OP1から開始して、図16に示す例に示すように頭、腕、足に行く。例えば距離などの全ての測定パラメータがピア群PG119とOP15に送信されると、測定パラメータに対して任意に必要とされる計算を行い、その後、処理されたデータはピア群PG1110とOP16に送信される。次にピア群PG1110とその構成装置D16、D28、D2、D9とD30、およびOP16はデータをさらに処理し、警報を出すか、あるいは何らかの治療効果を開始または修正する。
【0094】
図16に示す例では、例えば距離などの各パラメータは、3つの構成装置D1、D15およびD17に割り当てられたピア群PG111の最初の作業を除いて、それぞれの手足あるいは体部分と関連したピア群を備える2つの構成装置により複製される。この冗長的な割り当てにより、装置全体がより丈夫で正確なものになる。OP15とOP16は、処理能力などの必要な能力を持つならば、距離測定装置などの適切な装置上で実行できる。
【0095】
ピア群PG1は装置全体のものであるが、PG11はその姿勢と運動測定機能のためのものである。PG111はそのピア群のマネジャーとしての装置D1により作成され、装置D15とD17はOP1を実行でき、患者の胃の近くのD1、D15、D17の位置に関した様々なパラメータを測定するので、最終的にこのピア群PG111に加わる。患者の頭部に関連した装置D2は以前の経験から、そのウェブログにより、患者の腕に関連した装置D3とD6は信頼でき、腕の距離測定を組織化でき判定できることを知っている。したがってD2はピア群PG112を作成し、その中でD2は頭部と両腕に対する距離を測定できる、あるいはその測定を委任し、腕の測定作業はD3とD6にそれぞれ委任される。
【0096】
特にD2はPG1121を頭部の測定のために作成し、D3はPG1122を右腕の全体的な測定のために作成し、D6はPG1123を左腕全体の測定のために作成する。D18は続いてPG1121に加わり、D19は続いてPG1122に加わり、D22は続いてPG1123に加わる。先の経験からおよびウェブログにより、装置D3は、D4とD5が下腕のパラメータを確実に測定できることを知っている。したがってD3はさらに、PG11221を作成して右上腕を測定し、D4とD5はさらにPG11222とPG11223をそれぞれ作成して、右下腕を測定する。D20は続いてPG1122に加わり、D21は続いてPG11223に加わる。装置D6も同様にそのウェブログで、D7とD8は下腕パラメータを確実に測定できることを知っている。したがってD6はさらにPG1123を作成して、左上腕パラメータを測定し、D7とD8はあさらにPG1124とPG1125を作成して左上腕パラメータを測定する。続いてD22はPG1123に加わり、D23はPG1124に加わり、D24はPG1125に加わる。ピア群PG113−PG115およびPG116−PG118も同様に、装置D9−14と後に適切なピア群に加わる装置D25−30を使用して、右足上部と左足下部パラメータを介して足全体を測定する、それと関係したそれぞれの構成装置により作成される。
【0097】
患者の比較マッピングを使用して患者の姿勢と運動をモニターするのに使用する構成装置のネットワークの一実施例において、作業OP15、OP16および追加の必要作業を使用できる。したがって実際は、患者のベースラインまたは基準マッピングを、患者の体内、上あるいは周囲の様々な構成装置を戦略的に位置探索して得て、それらの位置を患者の体の物理的な三次元マップに記録する。様々な構成装置から得られたデータは、例えば静止中の患者の姿勢と運動傾向のベースライン、基準マップに変換される。ベースラインまたは基準マップは、一つまたは複数の構成装置、あるいはネットワークに独立的に接続されたコンピュータやモニターに記憶される。その後、患者が姿勢と運動を生ずると共に引き続きモニターされる。様々な構成装置は姿勢と運動データを入手し、入手したデータをそれら内で伝達し、データを患者の姿勢と運動のリアルタイム・マッピングに変換する。患者のリアルタイム・マッピングは、患者のベースラインあるいは基準マップと比較される。比較マッピング、すなわち患者の、リアルタイム・マッピングとベースラインあるいは基準マッピングとの比較で、一部の姿勢または運動はベースラインまたは基準マッピングを超えて逸脱していると判定すると、そのような逸脱は一つまたは複数の構成装置に伝達され、警報その他の信号を、患者や医師、介護人に出す。そしてその警報その他の信号に対応して、適切な治療措置を取ることができる。治療措置は、ネットワークの一つまたは複数の構成装置からある治療効果を行なうことあるいは、ネットワークに独立的に接続された他の医療器具からある治療効果を行なうことがある。どちらの場合も、治療効果は、例えば、治療の変更、薬物療法や投与量の変更などである。この特定の例では、OP15は測定された距離を患者の実際のマップに変換することに責任を持ち、OP16は必要な治療措置に対して責任を持つ。
【0098】
そのようなマッピングにより、モニターデータを変換して、手足、頭部その他の体部分の実際の運動として、患者の仮想ディジタル表示により表示できる。この仮想表示は、患者の姿勢と運動が生じたとき、患者や医師、介護人が、ネットワークにより得られたデータによりそれを理解する助けとなる。そのような、患者の姿勢と運動の比較マッピング仮想表示により、理想的には、患者の不適切あるいは望ましくない姿勢や運動を識別し、診断を補正し、あるいは患者のために有効な治療を始める。さらに、患者の仮想表示との相互作用は、患者や医師、介護人が容認できるおよび容認できない姿勢と運動を識別し、医療器具を慣らしてそれらのパラメータを認識する一つの有効な方法である。患者の体を最初にマッピングすること、およびこの表示でセンサー位置を限定することも、医療器具の自立的なデータ処理をサポートし、これは、介護人へのアクセスが地理的あるいは患者の不動状態により限られている、あるいは、治療措置を厳密な制限時間内に取らなければならないときに望ましい。
【0099】
患者の姿勢と運動をモニターするのに使用する構成装置のネットワークの別の実施例によると、構成装置は、患者の容認できる姿勢と運動の事前に設定した範囲を備えている。構成装置が、患者の姿勢と運動が容認レベルを超えると判定すると、一つまたは複数の構成装置は警報その他の信号を、患者や医師あるいは介護人に発することが出来る。前述のように、その警報その他の信号に対応して適切な治療措置を取ることができる。先の実施例とこの実施例間の相違は、ここでマッピングは生じないということである。それ以外の、データの入手と様々なレベルの構成装置間のその通信は、上述したものと、全般的に同じか、少なくとも類似している。取ることのできる治療措置は、上述のように、例えば作業OP15とOP16によりもたらされる、治療効果を出すことあるいは薬や治療方法の変更がある。
【0100】
患者の姿勢と運動をモニターするのに使用する構成装置のネットワークのさらに別の実施例では、別の医療器具をネットワークに独立的に接続して、患者に対する治療効果をもたらす、あるいはその調節を行なう。治療効果としては、治療の変更、薬物療法や投与量の変更などがあり、本発明のシステムと方法によるネットワークを構成する様々な構成装置間で入手して通信されるデータに対応して判断される。したがって、ネットワークに独立的に接続する医療器具は、患者に対する治療を提供あるいは変更する電気的あるいは化学的刺激装置、あるいは例えば患者に渡される薬の量や種類、タイミングを変えるポンプや注入装置がある。代わりに、ネットワークに独立的に接続される医療器具は、構成装置のネットワークから入手され伝達されたデータに対応して位置を変える整形外科的に調節可能な椅子、ベッド、歩行器その他の装置とすることができる。この場合、作業OP15は、必要な治療措置を計算する責任を持ち、作業OP16は決定した治療措置を行なう責任を持つ。
【0101】
本発明の好適な実施例と見なされるものを示して説明したが、本発明の趣旨や範囲から逸脱せずに、様々な修正や変更を形の上でも詳細でも容易に行えることを理解すべきである。したがって、本発明はここに説明または例示した厳密な形に限定されないことを意図しており、添付の特許請求項の趣旨と範囲に入り得る全ての修正を網羅していると解釈すべきである。
【0102】
〔実施の態様〕
(1)患者用の姿勢・運動モニターシステムにおいて、
複数の構成装置を含む、階層的ピア群の自己組織化ネットワークであって、
前記装置はそれぞれ、センサー、通信器、コンピュータ、データ・ディストリビューター、エネルギー源、警報あるいは治療効果器としての一つまたは複数の機能を有し、
前記装置は、患者内に位置する内的に植え込まれた装置、患者上に配置した外的な装置、患者が位置する環境内に配置した外的な装置、あるいはその任意の組み合わせに分散された装置である、
ネットワークと、
暗号および通信プロトコルを介した装置間の直接通信リンク、または、中間装置を介した装置間の間接通信リンク、の少なくとも一つと、
を備え、
装置のそれぞれは、データ、アルゴリズム、および、プロトコルを備え、以下の機能、すなわち、
生理的パラメータを感知すること、
前記システム内で分散されたデータを処理すること、
前記システム内のデータ、アルゴリズム、プロトコルを交換、修正、再構築すること、
前記システム内の前記装置間で、データ記憶、計算、通信、エネルギー供給、感知、警報および治療タスクを自律的に割り当てること、
のうちの少なくとも一つを行い、
前記ネットワークのピア群の下層レベルのタスクまたは機能を完了した際に、前記治療効果器が所期の治療効果をもたらす、
システム。
(2)実施態様1のシステムにおいて、
前記所期の治療効果は、機械的支援、電気的刺激、化学的刺激、起動、および、薬の投与のいずれかである、システム。
(3)医療器具において、
複数の構成装置を含む、様々なレベルの自己組織化ピア群の階層ネットワークであって、
前記装置は、患者内、患者上、または、患者の周囲に配置され、かつ、匿名性および責任性の通信機能を有し、
各前記装置は、前記装置に割り当てられた、少なくとも一つのタスクをさらに有し、
前記ネットワークは、装置の自己組織化ピア群の前記様々なレベルで割り当てられたタスクが完了すると、警報または治療効果の少なくとも一つをもたらす、
ネットワーク、
を備えた、医療器具。
(4)実施態様3の医療器具において、
前記タスクは、生理的データの感知、データの計算、データの分散、通信、エネルギー管理、タスク割り当て、および、スケジューリングのいずれかであって、警報および治療効果の少なくとも一つをもたらす、
医療器具。
(5)実施態様4の医療器具において、
前記通信機能は、装置間の直接的な対称および非対称の暗号、中間装置を介した間接的な通信、および、パイプライン・プロトコルを備える、医療器具。
【0103】
(6)医療器具において、
患者の姿勢および運動をモニターするネットワークであって、
階層的に様々なレベルのピア群を構成して一つまたは複数の総合ピア群を形成する複数の構成装置の自己組織化ピア群を含み、
各総合ピア群は、それぞれのピア群を含む前記構成装置のピア群の様々な下層レベルの下層タスクまたは機能が完了した際に行なうタスクまたは機能を有し、
各ピア群の機能のタスクの完了により、感知した姿勢および運動のパラメータが容認レベルを超えている場合は、前記ネットワークが警報または治療効果の少なくとも一つをもたらす、
ネットワークと、
所定の通信範囲内の前記構成装置間の範囲内通信リンクと、
前記所定の通信範囲を超えた前記構成装置間の範囲外通信リンクと、
を備える、医療器具。
(7)実施態様6の医療器具において、
前記治療効果は、機械的支援、電気的刺激、化学的刺激、起動、および、薬剤の投与のいずれかである、医療器具。
(8)実施態様7の医療器具において、
前記構成装置の各々は、生理的データの感知、データの計算、データの分散、通信、タスク割り当て、および、スケジューリングのタスクまたは機能の少なくとも一つを可能にし、かつ、警報または治療効果をもたらす、データ、アルゴリズム、または、プロトコルを備える、医療器具。
(9)実施態様8の医療器具において、
前記範囲内通信リンクは、対称および非対称の暗号をさらに備える、医療器具。
(10)実施態様9の医療器具において、
前記非対称暗号は、構成装置間の信用を確立し、
前記対称暗号は、信用する構成装置間の通信を承認する、医療器具。
【0104】
(11)実施態様9の医療器具において、
前記範囲外通信は、中間構成装置およびパイプライン・プロトコルを介した通信を含む、医療器具。
(12)実施態様11の医療器具において、
前記構成装置の様々なレベルの階層的に構成されたピア群が、順位をつけたタスクまたは機能を実行し、構成装置間の関係を更新して、下層のタスクおよび機能が完了すると前記ネットワークにより前記警報または治療効果をもたらすように構成された、医療器具。
(13)実施態様12の医療器具において、
前記範囲内通信リンクの各々は、チャネルをさらに備え、
前記構成装置の2つまたはそれ以上の間の通信は、前記範囲内構成装置間の通信を同一チャネルに割り当てることで、通信干渉を避けるようにスケジュールされる、医療器具。
(14)実施態様13の医療器具において、
前記構成装置間のタスク割り当ては、それぞれのタスクが割り当てられる前記構成装置の効率にしたがって順位付けされる、医療器具。
(15)実施態様6の医療器具において、
それぞれのピア群内の一連の構成装置、
をさらに備える、医療器具。
【0105】
(16)実施態様15の医療器具において、
ピア群内の少なくとも2つの構成装置間の共通タスクまたは機能の少なくとも一つ、
をさらに備える、医療器具。
(17)実施態様16の医療器具において、
ピア群は、前記ピア群を含む前記構成装置のピア群の様々な下層レベルのタスクまたは機能を完了すると、前記タスクまたは機能を行なう、医療器具。
(18)実施態様6の医療器具において、
1回限りのタスクまたは機能であって、
構成装置の様々なレベルのピア群は、一回限りのタスクまたは機能の先行する一つが完了すると、後続レベルまたは構成装置が前記タスクまたは機能を行なうことを承認する、
前記タスクまたは機能、
をさらに備える、医療器具。
(19)実施態様6の医療器具において、
繰り返し可能なタスクまたは機能であって、
様々なレベルの前記構成装置は、一部または全ての前記構成装置間でパイプライン通信を備え、別の繰り返し可能なタスクまたは機能が行なわれても、前記繰り返し可能タスクまたは機能の一つの進行中の処理を可能にする、
前記タスクまたは機能、
をさらに備える、医療器具。
(20)実施態様19の医療器具において、
前記ネットワークは、それぞれのピア群内の前記構成装置の変更、または、前記タスクもしくは機能要件の変更にしたがって、それぞれの前記ピア群内の様々なレベルの前記構成装置を再組織する、医療器具。
【0106】
(21)実施態様20の医療器具において、
前記様々なレベルの構成装置は、タスクまたは機能の完了、前記構成装置のいずれかの性能不良、または、前記ネットワークに対する構成装置の追加もしくは削除により、互いに更新する、医療器具。
(22)実施態様6の医療器具において、
前記通信リンクは、無線である、医療器具。
(23)実施態様6の医療器具において、
それぞれのピア群レベルで前記構成装置から指定されたマネジャー装置であって、
前記それぞれのピア群を構成する前記構成装置の信頼性を連続的に評価して、下層レベルのタスクまたは機能が確実かつ適時に実行されるようにする、
前記マネジャー装置、
をさらに備える、医療器具。
(24)実施態様6の医療器具において、
ピア群を構成する前記構成装置は、所期のタスク、機能、または、前記タスクまたは機能を行なう資源要件を記述した宣伝に対する受諾可能な応答を受け取ると、それぞれのピア群に対応する前記所期のタスクまたは機能を実行するために、組織化され、かつ、承認がなされる、医療器具。
(25)患者の姿勢と運動をモニターする方法であって、
2つ以上の構成装置を含むピア群のネットワークを、前記患者内、前記患者上、または、前記患者の周囲に配置するステップであって、
各構成装置は、感知、データの計算、データの分散、通信、タスク割り当て、および、スケジューリングの少なくとも一つを行って治療効果をもたらす、
ステップと、
前記2つ以上の構成装置の前記ピア群を様々なレベルに階層的に配備するステップであって、
前記ピア群および構成装置の前記様々なレベルは、総合ピア群、および、下層ピア群を備え、
各レベルには、実行するタスクまたは機能が割り当てられる、
ステップと、
全てのピア群レベルが、割り当てられたタスクまたは機能を実行するまで、下層タスクまたは機能の完了を一つのピア群レベルから後継ピア群レベルに伝達し、それにより総合ピア群が警報または治療効果を前記患者にもたらすステップと、
を含む、方法。
【0107】
(26)実施態様25の方法において、
前記治療効果は、機械的支援、電気的刺激、化学的刺激、起動、および、薬剤の投与のいずれかである、方法。
(27)実施態様26の方法において、
それぞれのピア群レベルの前記タスクまたは機能は、前記それぞれのピア群を備えることを承認された構成装置により直接的に行なう、方法。
(28)実施態様26の方法において、
それぞれのピア群レベルの前記タスクまたは機能は、小さなタスクまたは機能に分解されて追加の構成装置を含む別のレベルのピア群を形成し、
前記追加ピア群レベルのタスクまたは機能は、最初のそれぞれのピア群レベルの実行前に実行される、方法。
(29)実施態様27の方法において、
それぞれのピア群レベルにより行なわれる前記タスクまたは機能を記述した宣伝に対応して、前記宣伝のタスクまたは機能を行なう最も信頼できる構成装置がピア群を含むように、各ピア群レベルが形成される、方法。
(30)実施態様28の方法において、
それぞれのピア群レベルにより行なわれる前記タスクまたは機能を記述した宣伝に対応して、前記宣伝のタスクまたは機能を行なう最も信頼できる構成装置がピア群を含むように、各ピア群レベルが形成される、方法。
【0108】
(31)実施態様29の方法において、
それぞれのピア群レベルを含む前記構成装置からマネジャー装置を指定することを含み、前記マネジャー装置は、前記それぞれのピア群レベルの前記構成装置の信頼性を連続的に評価して、前記信頼性を維持するため、構成装置を変更または前記ピア群に追加する、方法。
(32)実施態様30の方法において、
それぞれのピア群レベルを含む前記構成装置からマネジャー装置を指定することを含み、前記マネジャー装置は、前記それぞれのピア群レベルの前記構成装置の信頼性を連続的に評価して、前記信頼性を維持するため、構成装置を変更または前記ピア群に追加する、方法。
(33)姿勢・運動モニターシステムにおいて、
患者内、患者上、または患者の周囲に配設され、前記患者の姿勢および運動のパラメータが容認範囲を超えるときを判定する、複数の構成装置を含むピア群の階層的ネットワークと、
前記患者の前記姿勢および運動のパラメータが、前記容認範囲を超えたとき、前記患者に対して、警報または治療効果を提供するように構成された少なくとも一つのピア群と、
を備えた、システム。
(34)実施態様33のシステムにおいて、
静止した前記患者の姿勢および運動のパラメータのベースラインマッピングであって、
前記ネットワークで得られた前記患者の引き続きの姿勢および運動との比較のために、構成され、記憶された、
前記マッピング、
をさらに備える、システム。
(35)実施態様33のシステムにおいて、
前記ネットワークに接続され、前記治療効果をもたらす独立した医療器具、
をさらに備える、システム。
【0109】
(36)実施態様35のシステムにおいて、
前記治療効果は、感知したパラメータに対応し、診断、薬剤療法、治療療法、電気的または化学的刺激、ポンプまたは注入の療法、および、整形外科的な調節の少なくとも一つを含む、システム。
(37)実施態様33のシステムにおいて、
前記治療効果は、前記警報に対応して施され、診断、薬物療法、治療療法、電気的または化学的刺激、ポンプまたは注入療法、および、整形外科的な調節の少なくとも一つを含む、システム。
(38)実施態様33のシステムにおいて、
それぞれのピア群の様々な前記構成装置は、前記患者の対応する手足または体部分上に配設され、前記患者の姿勢または運動を、前記それぞれのピア群の前記構成装置に提供された姿勢および運動の事前に設定した容認範囲と比較して、判定する、システム。
(39)実施態様33のシステムにおいて、
少なくとも一つの構成装置は、前記患者の姿勢および運動の比較が、前記事前に設定した容認範囲を超えている場合は、前記警報を鳴らす、または、前記治療効果をもたらすように構成されている、システム。
(40)実施態様33のシステムにおいて、
前記治療効果は、薬のタイプ、投与量、または、投与タイミングを変えることをさらに含む、システム。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明のシステムと方法による、少なくとも一つのピア群を形成する構成装置から構成されるネットワークの実施例を示す図である。
【図2】構成装置間の直接(範囲内)および複数ホップ(範囲外または間接)通信を例示する図である。
【図3a】構成装置がその通信範囲を変更する際のそれぞれの例を示す図である。
【図3b】構成装置がその通信範囲を変更する際のそれぞれの例を示す図である。
【図4】全ての構成装置が総合ピア群PG1を通して通信できることが好ましいが、できるだけ近い(または最も低い)ピア群を通して好適に通信する構成装置を例示する図である。
【図5】本発明のシステムと方法による、構成装置間の一般に直接的な暗号化通信方式を例示する図である。
【図6】構成装置間の信用の伝播を例示し、それにより信用される構成装置のチェーンを通して2つの構成装置間の信用を確立できる図である。
【図7】医療器具の機能を実行する1組の構成装置を例示し、該機能を実行、保全するために作られた例示的なピア群階層も示されている図である。
【図8a】ピア群内で十分な「保全」装置が得られることを保証し、「マネジャー」装置がピア群内に存在して、ピア群内の装置間の通信、データ処理その他の機能スケジュールを管理することを保証する過程を示す図である。
【図8b】ピア群内で十分な「保全」装置が得られることを保証し、「マネジャー」装置がピア群内に存在して、ピア群内の装置間の通信、データ処理その他の機能スケジュールを管理することを保証する過程を示す図である。
【図9】装置のネットワークが実行する必要のあるタスクの宣伝に、構成装置がどのように反応するかを例示する図である。
【図10】装置のネットワークが実行する必要のあるサブタスクに対する資源要件の宣伝に、どのように構成装置が反応するかを例示する図である。
【図11】「マネジャー」装置が、ピア群内のサブタスクの資源割り当てや実行を監督する方法を例示する図である。
【図12】後継サブタスクの実行に責任を持つようになる別の構成装置に、「後継サブタスク」を割り当てる方法を例示する図である。
【図13】本発明のシステムと方法による、構成装置のウェブログ格付けを例示する図である。
【図14】本発明のシステムと方法による、最小の干渉で構成装置間の通信をスケジュールする局所通信方式を例示する図である。
【図15】本発明のシステムと方法による、中間構成装置を用いて一つの構成装置から他のものへデータを通信する経路選択方式を例示する図である。
【図16】本発明のシステムと方法による、患者の姿勢と運動をモニターするのに使用される構成装置のネットワークの実施例を例示する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者用の姿勢・運動モニターシステムにおいて、
複数の構成装置を含む、階層的ピア群の自己組織化ネットワークであって、
前記装置はそれぞれ、センサー、通信器、コンピュータ、データ・ディストリビューター、エネルギー源、警報あるいは治療効果器としての一つまたは複数の機能を有し、
前記装置は、患者内に位置する内的に植え込まれた装置、患者上に配置した外的な装置、患者が位置する環境内に配置した外的な装置、あるいはその任意の組み合わせに分散された装置である、
ネットワークと、
暗号および通信プロトコルを介した前記装置間の直接通信リンク、または、中間装置を介した前記装置間の間接通信リンク、の少なくとも一つと、
を備え、
前記装置のそれぞれは、データ、アルゴリズム、および、プロトコルを備え、以下の機能、すなわち、
生理的パラメータを感知すること、
前記システム内で分散されたデータを処理すること、
前記システム内のデータ、アルゴリズム、プロトコルを交換、修正、再構築すること、
前記システム内の前記装置間で、データ記憶、計算、通信、エネルギー供給、感知、警報および治療タスクを自律的に割り当てること、
のうちの少なくとも一つを行い、
前記ネットワークのピア群の下層レベルのタスクまたは機能を完了した際に、前記治療効果器が所期の治療効果をもたらす、
システム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記所期の治療効果は、機械的支援、電気的刺激、化学的刺激、起動、および、薬の投与のいずれかである、システム。
【請求項3】
医療器具において、
複数の構成装置を含む、様々なレベルの自己組織化ピア群の階層ネットワークであって、
前記装置は、患者内、患者上、または、患者の周囲に配置され、かつ、匿名性および責任性の通信機能を有し、
各前記装置は、前記装置に割り当てられた、少なくとも一つのタスクをさらに有し、
前記ネットワークは、装置の自己組織化ピア群の前記様々なレベルで割り当てられたタスクが完了すると、警報または治療効果の少なくとも一つをもたらす、
ネットワーク、
を備えた、医療器具。
【請求項4】
請求項3の医療器具において、
前記タスクは、生理的データの感知、データの計算、データの分散、通信、エネルギー管理、タスク割り当て、および、スケジューリングのいずれかであって、警報および治療効果の少なくとも一つをもたらす、
医療器具。
【請求項5】
請求項4の医療器具において、
前記通信機能は、装置間の直接的な対称および非対称の暗号、中間装置を介した間接的な通信、および、パイプライン・プロトコルを備える、医療器具。
【請求項6】
医療器具において、
患者の姿勢および運動をモニターするネットワークであって、
階層的に様々なレベルのピア群を構成して一つまたは複数の総合ピア群を形成する複数の構成装置の自己組織化ピア群を含み、
各総合ピア群は、それぞれのピア群を含む前記構成装置のピア群の様々な下層レベルの下層タスクまたは機能が完了した際に行なうタスクまたは機能を有し、
各ピア群の機能のタスクの完了により、感知した姿勢および運動のパラメータが容認レベルを超えている場合は、前記ネットワークが警報または治療効果の少なくとも一つをもたらす、
ネットワークと、
所定の通信範囲内の前記構成装置間の範囲内通信リンクと、
前記所定の通信範囲を超えた前記構成装置間の範囲外通信リンクと、
を備える、医療器具。
【請求項7】
請求項6の医療器具において、
前記治療効果は、機械的支援、電気的刺激、化学的刺激、起動、および、薬剤の投与のいずれかである、医療器具。
【請求項8】
請求項7の医療器具において、
前記構成装置の各々は、生理的データの感知、データの計算、データの分散、通信、タスク割り当て、および、スケジューリングのタスクまたは機能の少なくとも一つを可能にし、かつ、警報または治療効果をもたらす、データ、アルゴリズム、または、プロトコルを備える、医療器具。
【請求項9】
請求項8の医療器具において、
前記範囲内通信リンクは、対称および非対称の暗号をさらに備える、医療器具。
【請求項10】
請求項9の医療器具において、
前記非対称暗号は、構成装置間の信用を確立し、
前記対称暗号は、信用する構成装置間の通信を承認する、医療器具。
【請求項11】
請求項9の医療器具において、
前記範囲外通信は、中間構成装置およびパイプライン・プロトコルを介した通信を含む、医療器具。
【請求項12】
請求項11の医療器具において、
前記構成装置の様々なレベルの階層的に構成されたピア群が、順位をつけたタスクまたは機能を実行し、前記構成装置間の関係を更新して、下層のタスクおよび機能が完了すると前記ネットワークにより前記警報または治療効果をもたらすように構成された、医療器具。
【請求項13】
請求項12の医療器具において、
前記範囲内通信リンクの各々は、チャネルをさらに備え、
前記構成装置の2つまたはそれ以上の間の通信は、前記範囲内構成装置間の通信を同一チャネルに割り当てることで、通信干渉を避けるようにスケジュールされる、医療器具。
【請求項14】
請求項13の医療器具において、
前記構成装置間のタスク割り当ては、それぞれのタスクが割り当てられる前記構成装置の効率にしたがって順位付けされる、医療器具。
【請求項15】
請求項6の医療器具において、
それぞれのピア群内の一連の構成装置、
をさらに備える、医療器具。
【請求項16】
請求項15の医療器具において、
ピア群内の少なくとも2つの前記構成装置間の共通タスクまたは機能の少なくとも一つ、
をさらに備える、医療器具。
【請求項17】
請求項16の医療器具において、
ピア群は、前記ピア群を含む前記構成装置のピア群の様々な下層レベルのタスクまたは機能を完了すると、前記タスクまたは機能を行なう、医療器具。
【請求項18】
請求項6の医療器具において、
1回限りのタスクまたは機能であって、
前記構成装置の様々なレベルのピア群は、一回限りのタスクまたは機能の先行する一つが完了すると、後続レベルまたは構成装置が前記タスクまたは機能を行なうことを承認する、
前記タスクまたは機能、
をさらに備える、医療器具。
【請求項19】
請求項6の医療器具において、
繰り返し可能なタスクまたは機能であって、
様々なレベルの前記構成装置は、一部または全ての前記構成装置間でパイプライン通信を備え、別の繰り返し可能なタスクまたは機能が行なわれても、前記繰り返し可能タスクまたは機能の一つの進行中の処理を可能にする、
前記タスクまたは機能、
をさらに備える、医療器具。
【請求項20】
請求項19の医療器具において、
前記ネットワークは、それぞれのピア群内の前記構成装置の変更、または、前記タスクもしくは機能要件の変更にしたがって、それぞれの前記ピア群内の様々なレベルの前記構成装置を再組織する、医療器具。
【請求項21】
請求項20の医療器具において、
前記様々なレベルの構成装置は、タスクまたは機能の完了、前記構成装置のいずれかの性能不良、または、前記ネットワークに対する構成装置の追加もしくは削除により、互いに更新する、医療器具。
【請求項22】
請求項6の医療器具において、
前記通信リンクは、無線である、医療器具。
【請求項23】
請求項6の医療器具において、
それぞれのピア群レベルで前記構成装置から指定されたマネジャー装置であって、
前記それぞれのピア群を構成する前記構成装置の信頼性を連続的に評価して、下層レベルのタスクまたは機能が確実かつ適時に実行されるようにする、
前記マネジャー装置、
をさらに備える、医療器具。
【請求項24】
請求項6の医療器具において、
ピア群を構成する前記構成装置は、所期のタスク、機能、または、前記タスクまたは機能を行なう資源要件を記述した宣伝に対する受諾可能な応答を受け取ると、それぞれのピア群に対応する前記所期のタスクまたは機能を実行するために、組織化され、かつ、承認がなされる、医療器具。
【請求項25】
患者の姿勢と運動をモニターする方法であって、
2つ以上の構成装置を含むピア群のネットワークを、前記患者内、前記患者上、または、前記患者の周囲に配置するステップであって、
各構成装置は、感知、データの計算、データの分散、通信、タスク割り当て、および、スケジューリングの少なくとも一つを行って治療効果をもたらす、
ステップと、
前記2つ以上の構成装置の前記ピア群を様々なレベルに階層的に配備するステップであって、
前記ピア群および構成装置の前記様々なレベルは、総合ピア群、および、下層ピア群を備え、
各レベルには、実行するタスクまたは機能が割り当てられる、
ステップと、
全てのピア群レベルが、割り当てられたタスクまたは機能を実行するまで、下層タスクまたは機能の完了を一つのピア群レベルから後継ピア群レベルに伝達し、それにより総合ピア群が警報または治療効果を前記患者にもたらすステップと、
を含む、方法。
【請求項26】
姿勢・運動モニターシステムにおいて、
患者内、患者上、または患者の周囲に配設され、前記患者の姿勢および運動のパラメータが容認範囲を超えるときを判定する、複数の構成装置を含むピア群の階層的ネットワークと、
前記患者の前記姿勢および運動のパラメータが、前記容認範囲を超えたとき、前記患者に対して、警報または治療効果を提供するように構成された少なくとも一つのピア群と、
を備えた、システム。
【請求項27】
請求項26のシステムにおいて、
静止した前記患者の姿勢および運動のパラメータのベースラインマッピングであって、
前記ネットワークで得られた前記患者の引き続きの姿勢および運動との比較のために、構成され、記憶された、
前記マッピング、
をさらに備える、システム。
【請求項28】
請求項26のシステムにおいて、
前記ネットワークに接続され、前記治療効果をもたらす独立した医療器具、
をさらに備える、システム。
【請求項29】
請求項28のシステムにおいて、
前記治療効果は、感知したパラメータに対応し、診断、薬剤療法、治療療法、電気的または化学的刺激、ポンプまたは注入の療法、および、整形外科的な調節の少なくとも一つを含む、システム。
【請求項30】
請求項26のシステムにおいて、
前記治療効果は、前記警報に対応して施され、診断、薬物療法、治療療法、電気的または化学的刺激、ポンプまたは注入療法、および、整形外科的な調節の少なくとも一つを含む、システム。
【請求項31】
請求項26のシステムにおいて、
それぞれのピア群の様々な前記構成装置は、前記患者の対応する手足または体部分上に配設され、前記患者の姿勢または運動を、前記それぞれのピア群の前記構成装置に提供された姿勢および運動の事前に設定した容認範囲と比較して、判定する、システム。
【請求項32】
請求項31のシステムにおいて、
少なくとも一つの構成装置は、前記患者の姿勢および運動の比較が、前記事前に設定した容認範囲を超えている場合は、前記警報を鳴らす、または、前記治療効果をもたらすように構成されている、システム。
【請求項33】
請求項26のシステムにおいて、
前記治療効果は、薬のタイプ、投与量、または、投与タイミングを変えることをさらに含む、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−296326(P2007−296326A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−93587(P2007−93587)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(597041828)コーディス・コーポレイション (206)
【氏名又は名称原語表記】Cordis Corporation
【Fターム(参考)】