説明

媒体供給装置

【課題】記録媒体を起立姿勢に保持しつつ、記録媒体の供給を適切に行うことができる媒体供給装置を提供する。
【解決手段】用紙Pに記録を行う印刷部3と、給送ローラー41により印刷部3に供給する用紙Pを起立姿勢で収容するベースケース部81と、ベースケース部81に給送ローラー41と対向するように設けられ、給送ローラー41に対し、ベースケース部81に収容した用紙Pを接触させるように移動するカバーケース部82と、を備え、カバーケース部82は、給送ローラー41が挿通する接触挿通部83を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起立姿勢で収容した記録媒体を給送ローラーに接触させて媒体処理部に記録媒体を供給する媒体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、横置き型の記録装置に用いられる上面が開放されたトレイ状の用紙カセットに組み込まれ、記録媒体(用紙)が載置されると共に支点部を中心に回動可能に設けた押圧板と、押圧板を回動させるための引張りコイルバネと、を備えた媒体供給装置が知られている(特許文献1参照)。
この媒体供給装置は、引張りコイルバネの力により押圧板を回動させることで上部が開放された用紙カセットから記録媒体を突出させ、最上位の記録媒体を給送ローラー(給紙ローラー)に接触させる。これにより、接触した記録媒体は、給送ローラーにより搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−191297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような横置き型の記録装置では、押圧板の上に記録媒体を載置することができるため、押圧板の上方は、給送ローラーに対するアクセス性を考慮して開放しておくことが好ましい。
しかし、これを縦置き型の記録装置に適用すると、起立姿勢となった記録媒体が、給送ローラーに対するアクセスのために開放した部分から、崩れ落ちてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、記録媒体を起立姿勢に保持しつつ、記録媒体の供給を適切に行うことができる媒体供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の媒体供給装置は、記録媒体に記録を行う記録部と、給送ローラーにより記録部に供給する記録媒体を起立姿勢で収容する収容部と、収容部に給送ローラーと対向するように設けられ、給送ローラーに対し、収容部に収容した記録媒体を接触させるように移動する可動部と、を備え、可動部は、給送ローラーが挿通する挿通部を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、記録媒体を収容する収容部には、可動部が設けられており、その可動部には、記録媒体に対して給送ローラーがアクセス(転接)することを許容する挿通部が形成されている。このため、可動部において挿通部が形成されていない部分全体が、記録媒体の起立姿勢を保持するための支えとなる。これにより、起立姿勢で収容した記録媒体が崩れ落ちてしまうことを確実に防止し、給送ローラーによる記録媒体の供給に支障を生ずることがない。
【0008】
この場合、挿通部は、給送ローラーのローラー軸に間隔を存して軸着した複数のローラー本体がそれぞれ挿通する複数の部分挿通部で構成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、記録媒体の適切な搬送を担保するための複数のローラー本体が、それぞれ部分挿通部を挿通して適切に記録媒体に転接することができる。これにより、給送ローラーによる記録媒体の確実な搬送と、記録媒体の起立姿勢の確実な保持と、を両立させることができる。
【0010】
この場合、可動部を、付勢することで給送ローラーから記録媒体を離間させる離間位置と、給送ローラーに記録媒体を接触させる接触位置と、に移動させる往動機構と、往動機構の付勢力に抗して、可動部を接触位置から離間位置に移動させる復動機構と、動力源からの動力を、記録媒体を1枚ずつ搬送するタイミングで、復動機構に伝達する動力伝達機構と、を有していることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、付勢力を発生させる往動機構およびこの付勢力に抗して押し戻す復動機構により、可動部を、接触位置と離間位置との間で的確に移動させることができる。また、動力伝達機構により、可動部内に複数の記録媒体を収容した場合であっても、接触位置において給送ローラーに接触する1枚の記録媒体を確実に搬送することができる。
【0012】
この場合、往動機構は、基端部を支軸に回動自在に支持され、先端部でベースケース部に当接する押圧アームと、押圧アームを回動付勢するバネと、を有していることが好ましい。
【0013】
また、この場合、復動機構は、カム軸と、カム軸に軸着した板カムと、を有していることが好ましい。
【0014】
これらの構成によれば、往動機構および復動機構を、バネやカム機構などの単純で、かつ、故障の少ない手段で構成することにより、可動部の移動を安定かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】記録装置の外観斜視図である。
【図2】用紙を給送ローラーから離間させた状態の記録装置の側断面図である。
【図3】用紙を給送ローラーに圧接させた状態の記録装置の側断面図である。
【図4】上部外側カバーが閉塞した状態の記録媒体カセットの斜視図である。
【図5】記録媒体カセット、移動手段および給送ローラー等を示した斜視図である。
【図6】記録媒体カセット、移動手段および給送ローラー等を示した正面図である。
【図7】記録媒体カセット、移動手段および給送ローラー等を示した側面図である。
【図8】可動トレイおよび移動手段の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る記録装置について説明する。この記録装置は、起立姿勢で保持した用紙(記録媒体)を搬送しながら所望の記録を行い、排紙した記録済みの用紙を起立状態で保持(ストック)するものである。なお、各図に示す通り、X軸(左右)方向、Y軸(前後)方向およびZ軸(上下)方向を規定して、以降説明する。
【0017】
図1ないし図3に示すように、記録装置1は、X軸およびY軸方向よりもZ軸方向の寸法が大きく形成された薄型の箱状体を成す筐体2によって外観が構成されている。なお、所謂縦置き型の記録装置1は、X軸およびY軸方向の寸法を小さくすることで設置面積が小さくなるように構成されている。また、X軸方向の寸法は、使用する用紙Pの最大幅により決定されるため、Y軸方向の寸法を抑えることにより、設置面積の抑制を図っている。
【0018】
また、記録装置1は、搬送路上に臨む用紙Pにインクジェット方式で印刷処理を行う印刷部3と、枚葉の用紙Pを搬送路に沿って送る搬送部4と、用紙Pを起立姿勢で収容し、筐体2に対し着脱自在に装着される記録媒体カセット5と、記録媒体カセット5の可動トレイ59(後述する。)を移動させる移動手段6(図8参照)と、搬送部4、印刷部3および移動手段6などを支持する装置フレーム(図示省略)と、装置全体を統括制御する制御装置7と、を備えている。
【0019】
筐体2の上面には、操作ボタン等が配置された操作パネル21と、PC等に接続するためのケーブルが接続されるケーブル端子22と、複数のインクカートリッジ(図示省略)を着脱可能に装着するカートリッジ装着部(図示省略)を開閉するカートリッジカバー23と、が設けられている。また、筐体2の上面には、記録が行われた用紙P(記録媒体)を排出するための用紙排出口24を開閉する用紙排出口カバー25が設けられている。なお、用紙排出口カバー25は、ユーザーによって開閉されるものであるが、仮に閉じた状態で記録が実行された場合でも、図外の開閉機構によって自動的に開くようになっている。
【0020】
印刷部3は、後述する一対の搬送ローラー42の下流側に配設されており、インクジェットヘッド32を搭載したキャリッジ31と、インクジェットヘッド32に対向位置に設けられた案内部材33と、を有している。
【0021】
キャリッジ31は、X軸方向に延びるキャリッジガイド軸34に沿って、図外のモーターにより往復移動可能に設けられている。なお、図2に示すように、キャリッジ31は、傾斜姿勢で設けられるため、キャリッジガイド軸34を中心として回動しようとする力が生じる。そこで、キャリッジ31の上方に設けられた被ガイド部35が、X軸方向に延びるキャリッジガイド板36を挟み込むことで、キャリッジ31の姿勢を一定に保持している。
【0022】
案内部材33は、搬送経路の一部を構成すると共に、用紙Pの記録面とインクジェットヘッド32との間のギャップ(ワークギャップ)を規定する。また、案内部材33には、インクジェットヘッド32と対向する位置に縁無し印刷の際、用紙P端から外れた領域に吐出されるインクを受ける凹部が形成されている。この凹部の中には、インクを吸収するインク吸収材(図示省略)が設けられている。そして更に、案内部材33の下方には、打ち捨てられたインクを貯留する廃液タンク(図示省略)が配置されている。
【0023】
なお、本実施形態は、インクカートリッジがキャリッジ31から独立して設けられたいわゆるオフキャリッジ型であるが、インクカートリッジがキャリッジ31に搭載された、いわゆるオンキャリッジ型であってもよい。また、本実施形態では、キャリッジ31がX軸方向に移動しながら記録を行ういわゆるシリアルプリンターであるが、用紙P幅をカバーする固定式のインクジェットヘッド32を用いてもよい。さらに、インクジェット方式に限らず、その他の記録方式であってもよい。
【0024】
搬送部4は、上流側から、装着された記録媒体カセット5の先端に対向する位置に設けられ、記録媒体カセット5から供給された用紙Pを下流側へと送り出す給送ローラー41と、用紙Pを印刷部3へと搬送する一対の搬送ローラー42と、印刷部3の案内部材33から用紙Pの浮き上がりを防止する案内ローラー43と、記録の行われた用紙Pを印刷部3から排出する一対の排紙ローラー44と、を有している。
【0025】
給送ローラー41は、X軸方向に延びるローラー軸45と、ローラー軸45に適宜の間隔で複数軸着したローラー本体46と、を有している。ローラー軸45の一端には、図外のモーター(減速機構付き)が接続されている。各ローラー本体46は、用紙Pの先端と接した状態で、モーターを駆動し回転させることで用紙Pを下方へと送り出す。給送ローラー41の外周面に対向位置には、用紙Pが湾曲反転する略U字状の搬送経路を形成するガイド部材47が配設されている。なお、符号48は、各ローラー本体46による用紙Pの送り出しを補助する補助従動ローラーである。すなわち、各ローラー本体46と各補助従動ローラー48とでニップローラーの形態を為している。
【0026】
一対の搬送ローラー42は、図外の駆動モーターにより回転駆動される搬送駆動ローラー42aと、図外の付勢手段により搬送駆動ローラー42aに向かって付勢されている搬送従動ローラー42bと、を有し、ニップローラーの形態を為している。搬送従動ローラー42bは、搬送駆動ローラー42aとの間で用紙Pを挟圧することで従動回転する。なお、図示は省略するが、一対の搬送ローラー42、案内ローラー43および一対の排紙ローラー44は、上記した給送ローラー41と同様に、それぞれ、X軸方向に延びる回転軸と、回転軸に適宜の間隔で複数軸着した回転ローラーと、から構成されている。
【0027】
一対の排紙ローラー44は、図外の駆動モーターにより回転駆動される排紙駆動ローラー44aと、図外の付勢手段により排紙駆動ローラー44aに向かって付勢されている排紙従動ローラー44bと、を有し、ニップローラーの形態を為している。排紙駆動ローラー44aは、その表面がゴム等により形成されている。排紙従動ローラー44bは、拍車状(スターホイール)に形成され、排紙駆動ローラー44aとの間で用紙Pを挟圧することで従動回転する。
【0028】
下方へと送り出された用紙Pは、給送ローラー41およびガイド部材47によって上向きに反転させられ、一対の搬送ローラー42へと送られる。用紙Pは、一対の搬送ローラー42の間に挟まれて、印刷部3に送られる。印刷部3で記録の行われた用紙Pは、案内ローラー43および一対の排紙ローラー44を介して、記録媒体カセット5の保持面61(後述する。)に摺接しながら上方に移動する(図3の破線参照)。排紙された用紙Pは、その下端が排紙駆動ローラー44aの近傍の装置フレームに設けられた受容部62に起立姿勢で支持される。なお、案内ローラー43は、拍車状のローラー(スターホイール)により構成されている。
【0029】
受容部62は、排紙駆動ローラー44a側の先端部分が上方に屈曲しており、支持した用紙Pの下端が脱落したり、排紙駆動ローラー44aに接触しないようになっている。また、受容部62は、適宜の間隔で複数配置された排紙駆動ローラー44aの間に入り込むようにして、X軸方向に適宜の間隔で複数配置されている。つまり、受容部62は、全体として略櫛歯形状に形成されている。
【0030】
続いて、図2ないし図7を参照して、記録媒体カセット5について説明する。記録媒体カセット5は、筐体2に対してZ軸方向にスライドすることで着脱可能に構成されており、装着することで記録装置1の外観を構成する。また、記録媒体カセット5を取り外すことで記録装置1の内部が露出するため、搬送経路に用紙Pが詰まった等の不具合を容易に解消することができる。
【0031】
記録媒体カセット5は、装着時に筐体2と面一になり、記録装置1の概観をなすカセット筐体部53と、全体としてトレイ状に形成された本体トレイ54と、用紙Pを収容する用紙収容空間Sを開閉する上部外側カバー55と、上部外側カバー55に対し、本体トレイ54の上端から突出するようにスライド可能に設けられた上部内側カバー56と、本体トレイ54に対し、本体トレイ54の上端から突出するようにスライド可能に設けられた上部スライドトレイ57と、上部外側カバー55に対し、X軸方向にスライド可能に設けられたエッジガイド58と、用紙収容空間Sに収容した用紙Pの先端を揺動させる可動トレイ59と、を備えている。
【0032】
本体トレイ54の下端部には、収容した用紙Pの先端を支持する用紙先端支持壁54aが形成されている。記録媒体カセット5が装着された状態において収容された用紙Pは、その先端が用紙先端支持壁54aに当接した状態で支持される。また、用紙先端支持壁54aには、後述する各紙戻しレバー87が挿通する複数(図4では3つ)のレバー挿通部54bが、給送ローラー41側から切り込まれて形成されている。
【0033】
上部外側カバー55は、本体トレイ54の上下方向略中央部に設けられた左右一対の回動支点55a(図4ないし図6参照)を中心に回動するようになっている。上部外側カバー55を開放することにより、用紙収容空間Sが表れて、用紙Pの収容が可能となる。また、上部外側カバー55の外面(装着時に装置内側に向く面)は、記録済みの用紙Pを保持する(蓄える)ための保持面61として機能している。
【0034】
図2および図3に示すように、上部内側カバー56は上部外側カバー55に対し、また、上部スライドトレイ57は本体トレイ54に対し、それぞれスライドすることで、用紙PのZ軸方向の長さに合わせて、用紙収容空間Sを伸縮させることができる。また、上部内側カバー56を延ばした場合は、上部外側カバー55の外面から連なるように上部内側カバー56の外面が延在し、保持面61がZ軸方向に延長される。
【0035】
図2ないし図6に示すように、エッジガイド58は、用紙収容空間Sに収容された用紙Pをガイドする供給側ガイド64と、保持面61に保持された用紙Pをガイドする排出側ガイド65と、上部外側カバー55を貫通して形成された長穴55bを通して供給側ガイド64と排出側ガイド65とを連結する連結部66と、を有している。
【0036】
エッジガイド58は、連結部66の部分で、長穴55bに沿ってスライド自在に設けられており、図6において右側から用紙Pの端に接触して、用紙Pの搬送方向(Z軸方向)への移動をガイドする。これにより、用紙Pは、幅方向に整えられた状態で用紙収容空間Sにセットされ、幅方向にずれることなく正常に搬送される。
【0037】
供給側ガイド64には、上記した左右一対の回動支点55aと同軸にガイド回動支点73が設けられている。したがって、ガイド回動支点73より上側の供給側ガイド64は、上部外側カバー55と共に回動する。また、上記した左右一対の揺動支点59aは、回動支点55aおよびガイド回動支点73よりも僅かに下方かつ後方に位置ずれして設けられている(図2および図3参照)。これにより、ガイド回動支点73より下側の供給側ガイド64は、可動トレイ59と共に回動可能となっている。
【0038】
排出側ガイド65は、保持面61側に設けられ、連結部66から上方に延設されたガイドバー74と、ガイドバー74の上端部に接続された板状部75と、を有している。板状部75は、排紙された用紙Pに、図6において右側から臨むように設けられている。また、ガイドバー74および板状部75は、ユーザーがエッジガイド58のスライド操作を行うための操作子となる。
【0039】
本実施形態では、連結部66で連結された供給側ガイド64または排出側ガイド65のうち一方を変位させると、他方も同時に変位する。これにより、用紙収容空間Sを上部外側カバー55で閉塞したまま、エッジガイド58のスライドを操作することができる。
【0040】
なお、図4に示すように、上部外側カバー55の長穴55bの下側近傍には、例えばJIS規格A4判サイズなどに対応した用紙PのX軸方向の端を指標する目盛55cが設けられている。
【0041】
可動トレイ59は、用紙Pを収容するベースケース部81と、収容された用紙Pを覆うように設けられたカバーケース部82と、で一体に形成されている。また、可動トレイ59は、本体トレイ54に対し、左右一対の揺動支点59a(図4および図6参照)を中心にして回動自在に支持されている。すなわち、可動トレイ59は、いわゆるホッパーとして機能するものであり、後述する移動手段6を駆動することにより、各揺動支点59aを中心に回動し、用紙Pの先端を接触位置(図3参照)と離間位置(図2参照)との間で揺動させる。なお、請求項に言う「収容部」とは、ベースケース部81を指し、「可動部」とは、カバーケース部82を指す。
【0042】
また、図4に示すように、カバーケース部82には、用紙Pの先端に対応する位置に、給送ローラー41が挿通して用紙Pに圧接できるように接触挿通部83が形成されている。接触挿通部83は、給送ローラー41が有する複数のローラー本体46にそれぞれ対応する位置に設けられた複数の部分挿通部83aが設けられている。すなわち、複数の部分挿通部83aは、X軸方向に沿って適宜の間隔で形成されている。このため、用紙収容空間Sに起立姿勢で収容した用紙Pは、カバーケース部82において複数の部分挿通部83aが形成されていない内面により支持される。したがって、用紙収容空間Sに起立姿勢で収容した用紙Pの崩れ落ちを確実に防止することができる。また、可動トレイ59を接触位置に移動させることで、用紙Pの適切な搬送を担保するための複数のローラー本体46が、それぞれ部分挿通部83aを挿通して適切に用紙Pに転接することができる。これにより、給送ローラー41による用紙Pの確実な搬送と、用紙収容空間Sにおける用紙Pの起立姿勢の確実な保持と、を両立させることができる。
【0043】
次に、図4ないし図8を参照して、移動手段6について説明する。移動手段6は、給送ローラー41に対し、可動トレイ59に収容した用紙Pを接触(圧接)させる接触位置と離間させる離間位置との間で、可動トレイ59を移動させる。なお、請求項にいう「媒体供給装置」とは、可動トレイ59および移動手段6を指す。
【0044】
移動手段6は、可動トレイ59を付勢することで離間位置から接触位置に移動させる往動機構84と、往動機構84の付勢力に抗して、可動トレイ59を接触位置から離間位置に移動させる復動機構85と、給送ローラー41との間に用紙Pを挟んで送り出すニップ機構86と、供給される用紙Pに続く次の用紙Pを可動トレイ59内に押し戻す複数の紙戻しレバー87と、モーター(図示省略)からの駆動力を、用紙Pを1枚ずつ供給搬送するタイミングで、復動機構85に伝達する動力伝達機構88と、を有している。
【0045】
図7および図8に示すように、往動機構84は、基端部を押圧支軸84aに自由回動するように軸支され、先端部でベースケース部81に当接する押圧アーム84bと、押圧アーム84bを回動付勢する捻りバネ84cと、を有している。
【0046】
押圧アーム84bは、先端部がベースケース部81の背面(本体トレイ54側の面)の下端部に係合している。捻りバネ84cは、押圧支軸84aに嵌合して設けられ、押圧アーム84bを離間位置から接触位置に向かって付勢している。これにより、可動トレイ59は、押圧アーム84bを介して捻りバネ84cの付勢力により離間位置から接触位置に向かって常に付勢されている。
【0047】
図5ないし図7に示すように、復動機構85は、可動トレイ59側で、かつ、給送ローラー41の上方においてX軸方向に延在するカム軸85aと、カム軸85aに軸着した2つの板カム85bと、を有している。
【0048】
各板カム85bは、所定の間隔で同じ向きでカム軸85aに軸着している。各板カム85bは、カバーケース部82にZ軸方向に延在して設けられた一対のレール状のカムフォロア85cに当接している。各カムフォロア85cに非接触状態となるように各板カム85bを回転させることで、可動トレイ59は、往動機構84の付勢力により接触位置へと移動する。他方、各カムフォロア85cに接触させ、可動トレイ59を押し込むように各板カム85bを回転させると、可動トレイ59は、往動機構84の付勢力に抗して離間位置へと移動する。
【0049】
図8に示すように、ニップ機構86は、可動トレイ59側で、かつ、下方から給送ローラー41の1のローラー本体46に接触して従動回転するリタードローラー86aと、リタードローラー86aを軸支するリタードフレーム86bと、を有している。リタードフレーム86bは、基端部をリタード支軸86cに回動自在に軸支されている。リタードローラー86aは、リタード支軸86cを中心にリタードフレーム86bを回動させることで、ローラー本体46に転接する。1枚の用紙Pは、リタードローラー86aとローラー本体46との間に挟み込まれて下流へと搬送される。
【0050】
図8に示すように、各紙戻しレバー87は、基端部を上記の押圧支軸84aに回動自在に軸支されている。各紙戻しレバー87は、先端部が、用紙先端支持壁54aに切り込まれたレバー挿通部54bに臨むように配設されている。各紙戻しレバー87の先端部は、用紙Pの下端部に対し、接触位置側から接触するように切り欠かれている。
【0051】
ここで、用紙収容空間Sに複数の用紙Pが収容されている場合には、供給される1枚の用紙P(給送ローラー41に接触している用紙P)に続くように次の用紙Pもリタードローラー86aとローラー本体46との間のニップ点に引き出される。
しかし、詳細は後述するが、離間位置へと移動する可動トレイ59と共に各紙戻しレバー87が、離間位置へと移動することでニップ点に引き出された次の用紙Pを適切に用紙収容空間Sへと押し戻すことができる。
【0052】
図6に示すように、動力伝達機構88は、図外のモーターおよび減速ギヤ列を有し、減速ギヤ列の出力端に接続された押圧支軸84a、カム軸85aおよびリタード支軸86cを、それぞれ回動させる。これにより、各紙戻しレバー87、各板カム85bおよびリタードフレーム86b(リタードローラー86a)が、所定の回転方向に必要な量(角度)だけ回動する。なお、動力伝達機構88は、押圧アーム84bの接触位置に方向への回動を阻止するカム(図示省略)を有している。このカムは、記録媒体カセット5を取り外した状態であっても、押圧アーム84bの回動を阻止するようになっている。
【0053】
次に、図8を参照して、可動トレイ59および移動手段6の動作について説明する。はじめに、記録装置1が停止している状態では、可動トレイ59は離間位置に在る(図8(a)参照)。ユーザーからの記録(印刷)指示があると制御装置7は、動力伝達機構88を駆動して、各板カム85bを、各カムフォロア85cから離れる方向に回転させる(図8(b)参照)。このとき、各紙戻しレバー87も、給送ローラー41側に向かって回動を開始する。
【0054】
さらに、各板カム85bを回動させると、各板カム85bが各カムフォロア85cから離れて、捻りバネ84cの付勢力が作用する押圧アーム84bに押されて、可動トレイ59が接触位置へと回動する(図8(c)参照)。このとき、リタードローラー86aは、ローラー本体46(給送ローラー41)に斜め下側から転接した状態となる。また、各紙戻しレバー87は、用紙Pの給送を妨げない位置まで回動する。可動トレイ59内に収容された用紙Pは、接触挿通部83(各部分挿通部83a)を通して給送ローラー41(各ローラー本体46)に接触する。接触した1枚の用紙Pは、給送ローラー41の回転方向に繰り出され、リタードローラー86aとローラー本体46との間(ニップ点)に挟み込まれて搬送経路に供給される。
【0055】
動力伝達機構88の駆動は継続され、各板カム85bがさらに回動すると、各板カム85bが各カムフォロア85cに再び接触する(図8(d)参照)。ここで、1枚目の用紙Pの供給搬送が終了すると、2枚目の用紙Pが給送ローラー41に接触することになる。
しかし、本実施形態の移動手段6は、供給された用紙Pが一対の搬送ローラー42の間に挟み込まれる位置まで搬送されると、リタードローラー86aがローラー本体46から離間する方向に回動する。これと共に、各紙戻しレバー87は、可動トレイ59側に向かって回動し、先端部で、ニップ点に残った2枚目の用紙Pを引っ掛けて、可動トレイ59内に押し込むことができるようになっている。
【0056】
さらに各板カム85bを回転が進むと、各板カム85bは、捻りバネ84cの付勢力に抗して押圧アーム84bおよび可動トレイ59を離間位置に押し戻すと共に、各紙戻しレバー87が2枚目の用紙Pを可動トレイ59内に押し込む(図8(e)参照)。そして、可動トレイ59は、再び記録(印刷)開始前の状態に(離間位置)に戻る(図8(a)参照)。
【0057】
以上の構成によれば、給送ローラー41に対するアクセスのために開放した部分から、起立姿勢で収容した用紙Pの崩れ落ちを適切に防止しつつ、用紙Pを搬送し、適切な記録(印刷)を実施することができる。また、動力伝達機構88により、可動トレイ59(用紙収容空間S)内に複数の用紙Pを収容した場合であっても、接触位置において給送ローラー41に接触する1枚の用紙Pを確実に搬送することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:記録装置、3:印刷部、6:移動手段、41:給送ローラー、54:本体トレイ、59:可動トレイ、81:ベースケース部、82:カバーケース部、83:接触挿通部、83a:部分挿通部、84:往動機構、84b:押圧アーム、84c:捻りバネ、85:復動機構、85b:カム軸、85c:板カム、88:動力伝達機構、P:用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録を行う記録部と、
給送ローラーにより前記記録部に供給する前記記録媒体を起立姿勢で収容する収容部と、
前記収容部に前記給送ローラーと対向するように設けられ、前記給送ローラーに対し、前記収容部に収容した前記記録媒体を接触させるように移動する可動部と、を備え、
前記可動部は、前記給送ローラーが挿通する挿通部を有することを特徴とする媒体供給装置。
【請求項2】
前記挿通部は、前記給送ローラーのローラー軸に間隔を存して軸着した複数のローラー本体がそれぞれ挿通する複数の部分挿通部で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の媒体供給装置。
【請求項3】
前記可動部を、付勢することで前記給送ローラーから前記記録媒体を離間させる離間位置と、前記給送ローラーに前記記録媒体を接触させる接触位置と、に移動させる往動機構と、
前記往動機構の付勢力に抗して、前記可動部を前記接触位置から前記離間位置に移動させる復動機構と、
動力源からの動力を、前記記録媒体を1枚ずつ搬送するタイミングで、前記復動機構に伝達する動力伝達機構と、を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の媒体供給装置。
【請求項4】
前記往動機構は、基端部を支軸に回動自在に支持され、先端部で前記ベースケース部に当接する押圧アームと、
前記押圧アームを回動付勢するバネと、を有していることを特徴とする請求項3に記載の媒体供給装置。
【請求項5】
前記復動機構は、カム軸と、前記カム軸に軸着した板カムと、を有していることを特徴とする請求項3または4に記載の媒体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−171717(P2012−171717A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32930(P2011−32930)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】