説明

媒体処理装置、及び、媒体処理装置の制御方法

【課題】処理対象媒体を処理する複数の機能部を備えた媒体処理装置において、一部の機能のみを使用する場合のメンテナンスの負担を軽減する。
【解決手段】媒体処理装置1の制御部70は、処理対象媒体の搬送路に配置されたインクジェットプリンターユニット44並びに表面CISユニット47及び裏面CISユニット48のいずれか一方の機能を無効にするコマンドをホストコンピューター5から受信した場合に、指定された機能を無効にする機能無効モードに移行し、この機能無効モードで、無効にされた機能に関する動作エラーが検出されてもホストコンピューター5へエラーを通知しないよう設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置、及び、媒体処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、処理対象媒体に対して、印刷や画像の読み取り等の複数の処理を行うものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−248398号公報
【特許文献2】特開2005−94141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような複数の機能を備えた媒体処理装置は、全ての機能が使用可能な状態であることが要求されるので、一部の機能が使用できない状態は装置全体のエラーとして扱われる。このため、例えば、印刷部と読取部のいずれか一方に動作エラーが発生している状態では、媒体処理装置全体が使用できない状態となり、エラーを起こしていない機能を使用することもできなかった。従って、例えば、媒体処理装置を導入したユーザーが、その一部の機能のみを使用する場合であっても、使用しない他の機能についても常に使用可能な状態を保つ必要があり、メンテナンスの負担が生じてしまう。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、処理対象媒体を処理する複数の機能部を備えた媒体処理装置において、一部の機能のみを使用する場合のメンテナンスの負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、処理対象媒体を搬送する搬送路に、前記処理対象媒体に印刷を行う機能を有する印刷手段と、前記処理対象媒体を読み取る機能を有する読取手段とが配置され、前記印刷手段及び前記読取手段の少なくともいずれかの機能を無効にするコマンドを外部の装置から受信した場合に、当該機能を無効にする機能無効モードに移行し、この機能無効モードにおいて、前記印刷手段及び前記読取手段のうち無効にされた機能に関するエラーを検出しても前記外部の装置へ当該エラーを通知しないよう設定する制御手段を備えたこと、を特徴とする。
本発明によれば、印刷を行う機能と読取を行う機能のいずれか一方の機能を無効とするコマンドを受信すると、無効とされた機能に関するエラーが発生しても、このエラーを解消しないで他方を継続して使用できる。これにより、複数の機能を備えた媒体処理装置において一部の機能のみを使用することができ、使用しない機能に係るメンテナンスの負担を軽減できる。
【0006】
また、本発明は、上記媒体処理装置において、前記印刷手段は、インク貯留部に貯留されたインクを前記処理対象媒体に吐出して記録を行うインクジェット式記録ヘッドを備えることを特徴とする。
本発明によれば、例えばインクジェット式記録ヘッドによる印刷機能を使用せず、読取機能のみを使用する場合に、印刷機能を無効にする機能無効モードが設定されることで、インクジェット式記録ヘッド及びインクの供給に関するエラーが通知されないため、インクに関するメンテナンスを行わなくても読取機能を使用できる。このため、メンテナンスに係る負担を軽減でき、メンテナンスのためだけにインクを供給することがないのでインクの無駄な消費を抑えることができる。
【0007】
また、本発明は、上記媒体処理装置において、前記制御手段は、前記インク貯留部がインクを供給可能となった後は、前記印刷手段の機能を無効にするコマンドを受信した場合には、前記機能無効モードに移行しないことを特徴とする。
本発明によれば、装置構成の仕様上、インク貯留部からインクを供給する経路にインクが供給されるなどしてインクに関するメンテナンスを行う必要が生じる場合に、メンテナンスを必要としない場合のみ機能無効モードへの移行を可能とする。このため、印刷以外の機能を使用する場合のメンテナンスの負担を軽減するとともに、インクの供給が可能となった後は必要なメンテナンスを省略することによる不具合を防止できる。
【0008】
また、本発明は、上記媒体処理装置において、前記制御手段は、前記インク貯留部がインクを供給可能となった後に、前記印刷手段の機能を無効にするコマンドを受信した場合には、前記機能無効モードに移行するとともに、前記印刷手段に係る特定のメンテナンス動作を実行可能とすることを特徴とする。
本発明によれば、装置構成の仕様上、インク貯留部からインクを供給する経路にインクが供給されるなどしてインクに関するメンテナンスを行う必要が生じる場合に、最小限のメンテナンスを実行可能とするので、印刷以外の機能を使用する場合に、インクの消費を抑えるとともに、メンテナンスを省略することによる不具合を防止できる。
【0009】
また、本発明は、上記媒体処理装置において、前記制御手段は、前記機能無効モードで無効にされた機能に関するエラーの一部を無効として通知を行わない一方、他のエラーは前記外部の装置に通知することを特徴とする。
本発明によれば、機能無効モードでは検出されるエラーの一部を無効として、無効とされていない機能のみを継続して使用可能とする一方、一部のエラーについては外部の装置にエラーを通知し、全てのエラーを無効にしない。例えば、無効に設定された機能に関するエラーであっても、放置できないエラーについては通知を行う。これにより、一部の機能を無効とすることでメンテナンスの負担を軽減するとともに、放置できないエラーについては適切にユーザーに報知できる。
【0010】
また、本発明は、処理対象媒体を搬送する搬送路に、前記処理対象媒体に印刷を行う機能を有する印刷手段と、前記処理対象媒体を読み取る機能を有する読取手段とが配置された媒体処理装置を制御し、前記印刷手段及び前記読取手段の少なくともいずれかの機能を無効にするコマンドを外部の装置から受信した場合に、当該機能を無効にする機能無効モードに移行し、この機能無効モードにおいて、前記印刷手段及び前記読取手段のうち無効にされた機能に関するエラーが検出されても前記外部の装置へ当該エラーを通知しないよう設定すること、を特徴とする。
本発明によれば、印刷を行う機能と読取を行う機能のいずれか一方の機能を無効とするコマンドを受信すると、無効とされた機能に関するエラーが発生しても、このエラーを解消しないで他方を継続して使用できる。これにより、複数の機能を備えた媒体処理装置において一部の機能のみを使用することができ、使用しない機能に係るメンテナンスの負担を軽減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の機能を備えた媒体処理装置において一部の機能のみを使用することができ、使用しない機能に係るメンテナンスの負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る媒体処理装置の斜視図である。
【図2】媒体処理装置の平面図である。
【図3】媒体処理システムの構成図である。
【図4】媒体処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】媒体処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】媒体処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】媒体処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係る媒体処理装置1の斜視図である。
図1に示すように、媒体処理装置1は、処理対象媒体であるシート状の小切手や帳票類に対し、この処理対象媒体に記録された磁気インク文字の読み取り、読取対象媒体の両面の光学的読み取り、及び、当該読取対象媒体への文字等の記録を行う装置である。また、媒体処理装置1は、クレジットカード等のカード型の媒体に記録された磁気情報を読み取るリーダーとしての機能、及び、感熱ロール紙に画像を記録して切断することにより、画像が記録された所定の紙片を発行する機能を備えている。
【0014】
本実施形態では、処理対象媒体として小切手4を処理する場合を例に挙げて説明する。小切手4は、図1に示すように、所定の模様や装飾が施されたシート(用紙)に金額、振出人、通し番号、サインなどが印字または記載された帳票である。これら金額、振出人、通し番号、サインなどは表面4aにあり、裏面4bには裏書き欄が設けられている。この裏書き欄には、後述するインクジェットヘッド10によって、裏書きに係る所定の文字または画像が記録される。また、表面4aには小切手4の長辺方向に延びる磁気インク文字列4cが形成されている。磁気インク文字列4cは、磁気インクで印刷された複数の磁気インク文字(MICR文字)が並んだものであり、磁気的または光学的に読み取ることができる。
【0015】
媒体処理装置1は、媒体処理装置1の下部を覆う下部ケース11、及び下部ケース11に被せられるカバー12からなる外装を有し、外装の内部に媒体処理装置1の本体が収容されている。媒体処理装置1の前面には、小切手4を挿入する挿入口14が開口しており、挿入口14の奥には複数の小切手4を積層して貯留できるストッカー15が設けられている。このストッカー15は、前面側へ向かって引き出し自在に構成されており、ストッカー15に貯留すべき小切手4のサイズに応じてストッカー15を引き出した上で、このストッカー15に小切手4を貯留させることが可能である。
また、カバー12には、上面視で略U字形状に、小切手4の搬送路Wとなるスリット18が形成され、スリット18は媒体処理装置1の前面側に設けられたポケット19に達している。ストッカー15に貯留された小切手4は、後述するように1枚ずつ媒体処理装置1の内部に取り込まれ、スリット18を通る間に処理されて、処理後の小切手4はポケット19に排出される。ポケット19には複数の小切手4を溜めることができる。
図1に示すように、ストッカー15の側方には、磁気カードリーダーユニット20が設けられている。磁気カードリーダーユニット20は、カバー12に形成されたカードスリット21と、このカードスリット21に対応して設けられたMCR(Magnetic Card Reader)ヘッド22(図3)とを備え、カードスリット21を通るカード類に磁気的に記録された情報をMCRヘッド22によって読み取る。
【0016】
図2は、媒体処理装置1の外装内部に収容されている本体の構成を示す平面図である。図2に示すように、ストッカー15の一側面にはホッパー25が設けられている。このホッパー25は、ホッパー駆動モーター26(図3)により、図中矢印方向に回動可能に構成されており、ストッカー15に貯留された小切手4を他方の側面側に付勢する。
ストッカー15の他方の側面には、後述するASF(Automatically Sheet Feeder)モーター27(図3)により駆動されるピックアップローラー28が配置されており、ホッパー25がピックアップローラー28側に回動すると、この回動に応じてストッカー15内の小切手4のうち1枚がピックアップローラー28に付勢され、当該ローラーに接触して、当該ローラーの回転に応じて搬送路Wに引き込まれる。
ストッカー15の奥には、一対のローラーで構成されるASFローラー29が配置されている。ASFローラー29の2つのローラーは、搬送路Wの両側に配置され、一方は後述するASFモーター27の動力により回転し、他方のローラーは従動ローラーである。ピックアップローラー28に接した小切手4はASFローラー29に挟まれて、スリット18内を下流側へ搬送される。
【0017】
ストッカー15の所定の位置には、ASF用紙検出器31(図3)が設けられている。ASF用紙検出器31は、例えば透過型光センサーで構成され、ストッカー15における小切手4の有無を検出する。
また、ストッカー15において、ホッパー25の待機位置には、ホッパー位置検出器32(図3)が設けられている。ホッパー位置検出器32は、例えば透過型光センサーで構成され、ホッパー25が待機位置に位置しているか否かを検出する。
ASFローラー29の下流側には、小切手4の表面4aに接して磁気インク文字列4c(図1)を磁気的に読み取るMICR(Magnetic Ink Character Recognition)ヘッド35が配置されている。MICRヘッド35には、MICRローラー36が対向配置される。MICRローラー36はMICRヘッド35側に付勢されており、小切手4をMICRヘッド35に押しつけながら回転して、小切手4を、MICR文字の読み取りに適した定速で搬送する。MICRヘッド35の上流側には、ASFローラー29により繰り出された小切手4をMICRヘッド35に案内する、一対のローラーからなるアシストローラー37が配置されている。
【0018】
また、搬送路W上においてアシストローラー37とMICRヘッド35との間には、用紙長検出器38が配置されている。用紙長検出器38は、例えば反射型光センサーで構成され、搬送路W上を通る小切手4の検出位置における有無を検出することにより、小切手4の先端及び後端を検出する。用紙長検出器38の検出値は後述する制御部70(制御手段)により取得され、この検出値の変化に基づいて小切手4の長さが求められる。
搬送路W上でMICRヘッド35の下流側には、搬送路Wを挟んで対向する一対のローラーを有する第1搬送ローラー40が設けられ、さらに、この第1搬送ローラー40の下流側には第2搬送ローラー41が設けられている。これら第1搬送ローラー40、及び、第2搬送ローラー41は、搬送モーター42(図3)によって回転駆動されるローラーであり、これらローラーによって小切手4はインクジェットプリンターユニット44(印刷手段)へ搬送される。
インクジェットプリンターユニット44は、インクジェットヘッド10(インクジェット式記録ヘッド)を備えている。インクジェットヘッド10は、媒体処理装置1の前部に収容されているインクカートリッジ45(インク貯留部)からインクの供給を受けて、小切手4にインクを吐出するインクジェット方式の記録ヘッドである。本実施形態においてインクジェットヘッド10は小切手4の裏面4bに、いわゆる裏書きと呼ばれる文字や画像を記録する。
インクジェットヘッド10と、第2搬送ローラー41との間には、中間検出器46が設けられている。中間検出器46は、例えば反射型光センサーで構成され、検出位置における小切手4の有無を検出する。
【0019】
インクジェットヘッド10の下流には、小切手4を光学的に読み取るCIS(Contact Image Sensor)ユニットが配置されている。このCISユニットは、小切手4の表面4aを読み取る表面CISユニット47(読取手段)と、裏面4bを読み取る裏面CISユニット48(読取手段)とを有し、小切手4の両面を光学的に読み取り可能である。表面CISユニット47と裏面CISユニット48は搬送路Wを挟んで対向配置されており、これらユニットの上流側には第1CISローラー50が配置され、また、下流側には第2CISローラー51が配置されている。これら第1CISローラー50、及び、第2CISローラー51は、搬送モーター42によって回転駆動されるローラーであり、これらローラーによってCISユニットによって読み取り中の小切手4が安定して搬送される。
第2CISローラー51の下流には、排出検出器52が設けられている。排出検出器52は、例えば反射型光センサーで構成され、検出位置における小切手4の有無を検出する。
【0020】
表面CISユニット47、裏面CISユニット48の下流側には上述したポケット19が設けられている。ポケット19は、メインポケット19aと、サブポケット19bとに区画されており、スリット18が分岐して、それぞれのポケット19に繋がっている。これらメインポケット19a、及び、サブポケット19bには、それぞれ複数の小切手4を収容できる。
そして、スリット18が分岐した位置には、小切手4を排出すべきポケット19を、メインポケット19aとサブポケット19bとのいずれかに切り替える切替板54が配置されている。切替板54は、メインポケット19aに繋がる経路とサブポケット19bに繋がる経路のいずれか一方を塞ぐことで小切手4を他方に案内するガイドであり、切替板駆動モーター55によって駆動される。切替板54からメインポケット19aに繋がる経路には排出ローラー56が設けられ、また、切替板54からサブポケット19bに繋がる経路には排出ローラー57が設けられており、小切手4は、これらローラーにより切替板54に案内されたいずれかのポケット19にスムーズに排出される。
後述するように、媒体処理装置1は、MICRヘッド35による磁気インク文字列4cの読み取り結果に基づいて、小切手4が正しくセットされていると判別した場合は、小切手4をメインポケット19aに排出し、一方、小切手4が正しくセットされていないと判別した場合は、サブポケット19bに排出する。
【0021】
また、図1及び図2に示すように、媒体処理装置1の中央部には、画像が記録された紙片を発行するサーマルプリンターユニット60が設けられている。
図1に示すように、サーマルプリンターユニット60は、媒体処理装置1の上部を覆うプリンターカバー61を備えている。このプリンターカバー61は、カバー12に対して開閉自在に取り付けられており、プリンターカバー61を開くと、感熱ロール紙を収容可能な空間であるロール紙収容部62が露出し、感熱ロール紙の補充や交換が可能となる。プリンターカバー61には、排紙口63が形成されており、ロール紙収容部62に収容された感熱ロール紙は、排紙口63を介して、排出される。
【0022】
サーマルプリンターユニット60は、ロール紙収容部62に収容した感熱ロール紙を繰り出して搬送路W上を搬送させるローラー状のプラテン(不図示)と、プラテンに対向配置されたサーマルヘッド65(図3)と、搬送方向に対し直交する方向に感熱ロール紙を切断するカッターユニット66とを備えている。紙片の発行に際し、サーマルプリンターユニット60は、プラテンを駆動して感熱ロール紙を搬送方向に搬送しつつ、サーマルヘッド65により感熱ロール紙に画像を記録し、カッターユニット66によって所定の位置で感熱ロール紙を切断することにより、紙片を発行する。
【0023】
図3は、媒体処理装置1と、外部の装置としてのホストコンピューター5とを接続して構成される媒体処理システム8の機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、媒体処理装置1は、媒体処理装置1全体を制御するCPU、RAM、フラッシュROM等により構成される制御部70と、インクジェットプリンターユニット44及びサーマルプリンターユニット60を制御するプリンター制御部71と、ヘッド駆動回路72と、モータードライバー73と、読取制御回路74と、センサー駆動回路75と、インターフェース部76とを有し、これらの各部は相互に通信可能に接続されている。
【0024】
制御部70は、フラッシュROMに記憶されている制御プログラムをCPUにより読み出して実行することにより、媒体処理装置1の各部を制御する。制御部70は、RAMを備え、CPUが実行するプログラム及び処理対象のデータを一時的に保持するメモリーである。制御部70は、制御部70が処理するデータ等を一時的に格納するメモリー77を備えている。メモリー77は、制御部70が備えるRAMとは別に設けられる記憶装置であってもよいし、RAMの一部領域を用いて構成してもよい。メモリー77は、ホストコンピューター5から受信した制御コマンドや印刷用のデータを一時的に格納する領域や、制御部70が小切手4に記録を行う際に印刷イメージを展開する領域を有する。
プリンター制御部71は、制御部70の制御の下、ヘッド駆動回路72を介してインクジェットヘッド10(インクジェット式記録ヘッド)に駆動電流を供給し、小切手4への記録を行う。また、プリンター制御部71は、制御部70の制御の下、ヘッド駆動回路72を介してサーマルヘッド65に駆動電流を供給し、感熱ロール紙への記録を行う。
モータードライバー73は、ホッパー駆動モーター26に接続され、制御部70の制御に従ってホッパー25を回動させる。
また、モータードライバー73は、ASFモーター27、搬送モーター42、及び、切替板駆動モーター55に接続され、これら各モーターに駆動電流や駆動パルスを出力して、制御部70の制御に従い各モーターを動作させる。
【0025】
読取制御回路74は、MCRヘッド22、MICRヘッド35、表面CISユニット47、及び、裏面CISユニット48に接続されている。読取制御回路74は、制御部70の制御に従って、カードスリット21(図1)にカード類が通される際にMCRヘッド22によって磁気情報を読み取らせ、MCRヘッド22が出力する読取信号をデジタル化して制御部70に出力する。同様に、読取制御回路74は、制御部70の制御に従ってMICRヘッド35によって磁気情報を読み取らせ、MICRヘッド35が出力する読取信号をデジタル化して制御部70に出力する。また、読取制御回路74は、制御部70の制御に従って、表面CISユニット47及び裏面CISユニット48に、小切手4の表面4a及び裏面4bの読み取りを実行させる。この際、表面CISユニット47及び裏面CISユニット48の各々から出力される信号をデジタルデータ化し、制御部70に出力する。
センサー駆動回路75は、ASF用紙検出器31、ホッパー位置検出器32、用紙長検出器38、中間検出器46、及び、排出検出器52に接続され、これらの各検出器に電流を供給して、所定周期で出力値を取得し、取得した出力値をデジタルデータに変換して制御部70に出力する。
インターフェース部76は、ホストコンピューター5に対して有線または無線で接続され、制御部70の制御に従って、ホストコンピューター5との間で制御データを含む各種データを送受信する。
【0026】
制御部70は、ホストコンピューター5から送信される処理指示コマンド(各処理を指示するコマンド)を受信して、小切手4に対する処理を実行する。
制御部70は、小切手4の処理を指示するコマンドに従って、センサー駆動回路75を介してASF用紙検出器31の検出値を取得し、ストッカー15における小切手4を検出する。小切手4がセットされている場合は、センサー駆動回路75によりホッパー位置検出器32の検出値を取得して、ホッパー25が初期位置にあることを確認し、モータードライバー73を制御してホッパー駆動モーター26及びASFモーター27を動作させ、1枚の小切手4をピックアップして搬送路Wに取り込む。その後、制御部70は、モータードライバー73を制御して搬送モーター42を動作させることにより、ASFローラー29、MICRローラー36、アシストローラー37、第1搬送ローラー40、第2搬送ローラー41、第1CISローラー50、第2CISローラー51、及び、排出ローラー56、57を動かして、小切手4を搬送する。さらに、モータードライバー73を制御して切替板駆動モーター55を動作させることにより、切替板54を動かして、媒体処理装置1による処理が完了した小切手4の排出先を、メインポケット19aまたはサブポケット19bのいずれかに設定し、排出ローラー56、57により排出させる。ここで、制御部70の制御によって小切手4を搬送する上記各モーター及び各ローラーは、搬送手段として機能する。
【0027】
制御部70は、小切手4の磁気インク文字列4cの読み取りを指示するコマンドに従って、読取制御回路74を制御してMCRヘッド22による読み取りを実行させ、MCRヘッド22が読み取った磁気波形を取得し、この磁気波形のデータまたは磁気波形を認識した認識結果をホストコンピューター5に送信する。
また、制御部70は、小切手4への印刷を指示するコマンドに従って、このコマンドとともに送信された印刷データに基づいて、文字や画像を配置した印刷イメージをメモリー77に設けられる印刷バッファーに展開し、プリンター制御部71を制御することにより、印刷イメージに基づく文字や画像をインクジェットヘッド10によって小切手4の表面4aまたは裏面4bに印刷する。
制御部70は、小切手4の光学読取を指示するコマンドに従って、表面CISユニット47及び裏面CISユニット48によって小切手4の表面4aと裏面4bを読み取り、表面4aの読取画像データと裏面4bの読取画像データをそれぞれホストコンピューター5に送信する。
さらに、制御部70は、感熱ロール紙に対する印刷を指示するコマンドに従って、このコマンドとともに送信された印刷データに基づいて、文字や画像を配置した印刷イメージをメモリー77に設けられる印刷バッファーに展開する。制御部70は、プリンター制御部71及びモータードライバー73を制御して、印刷イメージに基づく文字や画像をサーマルヘッド65によって感熱ロール紙に印刷し、印刷後の感熱ロール紙を排紙口63から排出し、カッターユニット66により切断する。
【0028】
このように、媒体処理装置1は、制御部70によって複数の処理部(MICRヘッド35、インクジェットプリンターユニット44、表面CISユニット47及び裏面CISユニット48、並びにサーマルヘッド65)を各々制御し、ホストコンピューター5から送信されるコマンドに従って、小切手4に対するMICR機能、印刷機能、光学読取機能、及び、感熱ロール紙への印刷機能を実行できる。媒体処理装置1は、これらの機能のうち複数を連続して実行することも、個別に実行することも可能である。
【0029】
図4は、1枚の小切手4に対して複数の処理を連続的に実行する動作を示すフローチャートである。
この図4に示す動作では、MICR機能、印刷機能及び光学読取機能を一つのシーケンスとして実行する。媒体処理装置1の制御部70は、ホストコンピューター5から小切手4の処理開始を指示するコマンドを受信すると(ステップS11)、ホッパー駆動モーター26及びASFモーター27を駆動して小切手4を搬送路Wに繰り出し、小切手4の搬送を開始する(ステップS12)。制御部70は、用紙長検出器38の検出値を監視することにより小切手4の位置を管理しつつ、MICRヘッド35によって、小切手4の磁気インク文字列4cを読み取る(ステップS13)。制御部70は、MICRヘッド35が読み取った磁気波形に基づいて、小切手4の上下および裏表が正しくセットされているか否かを判別し(ステップS14)、この判別結果に基づいて、小切手4の排出先をメインポケット19aにするかサブポケット19bにするかを決定し、切替板駆動モーター55を駆動して切替板54を切り替える(ステップS15)。具体的には、制御部70は、小切手4がセットされた向きが正しいと判別した場合は切替板54をメインポケット19a側に切り替え、小切手4の向きが正しくないと判別した場合は、切替板54をサブポケット19b側に切り替える。
【0030】
次に、制御部70は、中間検出器46の検出値に基づき小切手4の位置を監視しながら、小切手4を搬送し、インクジェットヘッド10によって小切手4の裏面4bに所定の画像を記録する(ステップS16)。制御部70は、表面CISユニット47によって小切手4の表面4aをスキャンすると共に、裏面CISユニット48によって裏面4bをスキャンし(ステップS17)、読取画像データをホストコンピューター5に送信する。なお、小切手4が正しくセットされていない場合は、ステップS17の読取動作をスキップしてもよい。制御部70は、排出検出器52の検出値を監視することにより小切手4が正常に排紙されたか否かを監視しつつ、搬送モーター42を駆動して小切手4をポケット19に排出し(ステップS18)、本処理を終了する。なお、ステップS14、S15の処理は、ステップS16〜S18の処理と並行して行ってもよい。
【0031】
また、制御部70は、フラッシュROMに記憶されている制御プログラムを実行することにより、エラー検出部70a(図3)の機能を実現する。エラー検出部70aは、センサー駆動回路75を介して検出した各検出器の検出状態に基づいて、媒体処理装置1のエラー要因を検出し、エラー要因の内容により、エラーが発生したか否かを判別する。エラー(異常)が発生したと判別した場合、エラー検出部70aは、媒体処理装置1の全体の動作を停止して、ホストコンピューター5に対してエラー発生を通知する。
エラー検出部70aが検出するエラー要因のうち主なものについて説明する。媒体処理装置1全体に関しては、例えば、カバーオープン検出器(図示略)によりカバー12またはプリンターカバー61の開放を検出したこと(カバーオープン)、初期状態でホッパー位置検出器32によりホッパー25が初期位置に戻っていないと検出したこと等がエラー要因となる。小切手4に関するエラーとしては、コマンド受信後にストッカー15に小切手4が無い、小切手4の搬送ジャム等が挙げられる。小切手4のジャムは、例えば、小切手4の搬送量が所定以上であるのに用紙長検出器38で小切手4の先端または後端が検出されない、搬送量に対して中間検出器46または排出検出器52で小切手4の先端または後端が検出されるタイミングが遅い等の事象に基づき検出される。
また、インクジェットプリンターユニット44に関連するエラー要因としては、インクカートリッジ45のインク切れ、インクジェットヘッド10のクリーニングやフラッシングにより排出されたインクを貯留する廃液タンクの容量超過、インクジェットヘッド10のノズルチェックにより基準を超える不良ノズルが検出された、インクジェットヘッド10の温度異常等が挙げられる。
他の処理部に関するエラー要因としては、例えば、サーマルヘッド65の温度異常、表面CISユニット47及び裏面CISユニット48の読取画像データをメモリー77に格納する際のバッファーエラー、ロール紙収容部62の紙切れ等が挙げられる。
【0032】
これらのエラー要因のうち、インクカートリッジ45のインク切れ、インクジェットヘッド10の温度異常、廃液タンクの容量超過、サーマルヘッド65の温度異常、小切手4のジャム、バッファーエラー等は、故障を防止するため速やかにエラー要因を解消する必要があり、或いは、エラー要因を解消して処理をやり直す必要があることから、緊急性の高いエラーである。
その他のロール紙収容部62の紙切れ、インクジェットヘッド10の不良ノズルの検出、カバーオープン等のエラーは、そのまま放置しても、不可逆的な故障を招く可能性が低いので、緊急性が高くないエラーといえる。
エラーが発生した場合、媒体処理装置1は、エラー検出部70aの制御によってホストコンピューター5からのコマンドを受信できない、或いはコマンドを実行できない状態(ビジー状態或いはオフライン状態)に移行する。エラー検出部70aは、エラーによるビジー或いはオフライン状態において、エラーの要因が解消したか否かを監視し、エラー要因が解消された場合に自動的にオンラインに復帰してもよい。
【0033】
ところで、媒体処理装置1は、上述したように各処理部(MICRヘッド35、インクジェットプリンターユニット44、表面CISユニット47及び裏面CISユニット48、並びにサーマルヘッド65)による処理を個別に実行できるので、例えば、インクジェットプリンターユニット44による印刷を全く使用しないといった使い方が可能である。仮に、媒体処理装置1を購入してから全くインクジェットヘッド10を使用しないで、MICRヘッド35や表面CISユニット47または裏面CISユニット48による読取機能のみを使用する場合には、印刷用途でインクを使う必要はない。
【0034】
しかしながら、媒体処理装置1は、インクジェットヘッド10のノズルのメンテナンスを行う必要がある。インクジェットヘッド10のメンテナンスとしては、定期的に行われるフラッシング、ワイピング、及び、クリーニングが挙げられる。フラッシングは、インクジェットヘッド10の全部または一部のノズルから少量のインクを噴射して、乾燥により粘度を増したインクを除去してノズルの詰まりを防止する機能である。ワイピングは、インクジェットヘッド10のノズル面に対向して設けられたワイパー(図示略)によりノズル面を拭うことで、ノズルのメニスカスを整える機能であり、ワイパーがインクを掻き取るので少量のインクが消費される。クリーニングは、インクジェットヘッド10のノズル面を覆うキャップ(図示略)に内蔵されたインク吸引ラインに負圧を与えて、ノズルからインクを吸い出すことにより、ノズルおよびインクカートリッジ45からノズルに至るインク供給路にインクを流し、ノズルの詰まりの解消とインク供給路の洗浄を行う機能である。これらのメンテナンス動作はインクを必要とし、全くインクジェットヘッド10による印刷機能を実行しないとしても実行しなければならないので、インクカートリッジ45のインクを適宜補充する必要がある。
このため、従来の媒体処理装置は、ユーザーがインクジェットヘッドによる印刷機能を実行させるか否かにかかわらず、インクカートリッジが空になっていること、或いは、インクカートリッジが装着されていないことを検出した場合には、エラー検出部がエラーを報知する構成となっている。エラーが報知されると、媒体処理装置はオフラインとなって他の機能も使用できない。
【0035】
そこで、本実施形態に係る媒体処理装置1は、複数の処理部によるMICR機能、印刷機能、光学読取機能、及び、感熱ロール紙への印刷機能のうち、全ての機能を有効にする通常モードと、一部の機能を無効とする無効モードを備える構成とした。無効モードでは、一部の機能が無効とされるので、この機能に関するコマンドをホストコンピューター5から受信しても機能を実行しない。また、無効モードでは、エラー検出部70aが、無効にした機能に関するエラーを検出しないので、無効にした機能に関するエラーが検出されてオフラインになってしまうことがない。
無効モードは、媒体処理装置1が備える機能毎に設けることが可能であるが、本実施形態では、インクジェットヘッド10による印刷機能を無効にする印刷無効モードを例に挙げて説明する。
【0036】
図5は、媒体処理装置1の動作を示すフローチャートであり、ホストコンピューター5からの処理コマンドを受信した場合に処理を開始するまでの動作を示す。
制御部70は、ホストコンピューター5から送信された処理コマンドを受信すると(ステップS21)、受信したコマンドが、印刷機能の実行を指示する印刷コマンドか否かを判別する(ステップS22)。受信したコマンドが印刷コマンドでない場合(ステップS22;No)、制御部70は、受信したコマンドに従って処理を実行する(ステップS23)。
一方、受信したコマンドが印刷コマンドであった場合(ステップS22;Yes)、制御部70は、現在の動作モードが印刷無効モードであるか否かを判別し(ステップS24)、印刷無効モードでなければ(ステップS24;No)、ステップS23に移行して印刷コマンドに従って処理を実行する。また、印刷無効モードであった場合は(ステップS24;Yes)、受信したコマンドを破棄して(ステップS25)、本処理を終了する。なお、受信したコマンドを破棄する際に、ホストコンピューター5に対して印刷機能を実行しないことを示すステータスを通知してもよい。
この印刷無効モードにおいては、インクジェットヘッド10に係るエラー要因が発生しても、そのエラー要因が印刷機能に関するエラー要因である場合には、エラー検出部70aがエラーを検出しない構成となっている。
【0037】
図6は、媒体処理装置1の動作を示すフローチャートであり、特に、エラー検出部70aがエラーを検出する動作を示す。
エラー検出部70aは、センサー駆動回路75を介して各検出器の検出値あるいは検出状態を取得し、エラー要因が発生したことを検知すると(ステップS31)、現在の動作モードが印刷無効モードであるか否かを判別する(ステップS32)。印刷無効モードでなければ(ステップS32;No)、検知したエラー要因に基づいてエラー発生を検出市(ステップS33)、ホストコンピューター5に対してエラー発生を通知するとともにオフラインに移行し(ステップS34)、本処理を終了する。その後は、エラー要因が解消し、オフラインから復帰するための操作が行われると、オンライン状態に復帰する。
また、現在の動作モードが印刷無効モードであった場合は(ステップS32;Yes)、エラー検出部70aは、発生したエラー要因が印刷機能に関係するエラー要因であるか否かを判別する(ステップS35)。ここで、印刷機能に関するエラー要因でない場合(ステップS35;No)、エラー検出部70aはステップS33に移行してエラーを検出する。これに対し、検知したエラー要因が印刷機能に関するエラー要因であった場合(ステップS35;Yes)、エラー検出部70aはエラーを検出せずに本処理を終了する。
【0038】
このように、制御部70は、印刷無効モードにおいては印刷機能の実行を指示するコマンドを受信しても印刷機能を実行せず、印刷機能に関するエラー要因が発生してもエラーを検出しないので、インクジェットプリンターユニット44に関するメンテナンスを行っていなくてもオフラインにならず、印刷機能以外の機能を継続して使用できる。このため、使用しない機能に関するメンテナンスの手間を省くことができる。また、無効にされた機能に関するものでなければエラー要因が発生するとエラーを検出するので、無効にされていない機能については通常の動作モードと同様に、エラーを的確に検出して、装置の故障や小切手4の汚損等のトラブルを防止できる。さらに、印刷無効モードにおいてはインクジェットプリンターユニット44が駆動されないため、メンテナンスを行っていなくても故障の要因となることがない。
【0039】
通常印刷モードから印刷無効モードへの切替は、ホストコンピューター5から媒体処理装置1に送信するコマンドにより指示することができる。
図7は、媒体処理装置1の動作を示すフローチャートであり、特に、印刷無効モードの設定に係る動作を示す。図7(a)は通常時の印刷無効モードの設定に係る動作を示し、(b)は特定の場合のみ印刷無効モードの設定を可能とする場合の動作を示す。
図7(a)に示すように、制御部70は、ホストコンピューター5から、印刷無効モード設定コマンドを受信すると(ステップS41)、このコマンドに従って、媒体処理装置1の動作モードを印刷無効モードに設定する(ステップS42)。また、印刷無効モードを終了して通常動作モードに戻る場合も、ホストコンピューター5から、印刷無効モード設定解除コマンドを送信し、媒体処理装置1の制御部70が印刷無効モード設定解除コマンドを受信して、動作モードを通常動作モードに切り替える。
【0040】
ところで、フラッシング、ワイピング、及びクリーニングについて上述したように、インクジェットヘッド10のメンテナンスは欠かせないものであるが、媒体処理装置1に一度もインクカートリッジ45を装着したことがない場合、インクの乾燥や固着の心配が無く、メンテナンスを行う必要がない。このため、インクカートリッジ45をセットせず、インクを消費するメンテナンスをしなくても問題が生じない。言い換えれば、印刷無効モードにおいて、インクカートリッジ45の補充を含むメンテナンスを全く行わず、インク切れを含む印刷機能に関する全てのエラー要因を無視することもできるが、これは一度もインクカートリッジ45を装着していない場合に可能である。
そこで、媒体処理装置1において、一度もインクカートリッジ45を装着していない場合に限って印刷無効モードへの切り替えを可能とすることができる。
【0041】
図7(b)に示すように、制御部70は、媒体処理装置1の最初の電源投入からインクカートリッジ45の装着状態を監視し(ステップS51)、インクカートリッジ45が装着されると(ステップS51;Yes)、印刷無効モード設定不可フラグをONに設定する(ステップS52)。印刷無効モード設定不可フラグは、例えば、制御部70が有するフラッシュROMに記憶される。インクカートリッジ45が装着されない間は(ステップS51;No)、ステップS52の処理は行われない。また、いったんインクカートリッジ45が装着され、ステップS52で印刷無効モード設定不可フラグをONにした後は、ステップS51〜S52の処理は行われない。
【0042】
その後、制御部70は、ホストコンピューター5から、印刷無効モード設定コマンドを受信すると(ステップS53)、印刷無効モード設定不可フラグの値を参照し(ステップS54)、印刷無効モード設定不可フラグがOFFの場合は(ステップS54;No)、媒体処理装置1の動作モードを印刷無効モードに設定する(ステップS55)。一方、印刷無効モード設定不可フラグがONの場合は(ステップS54;Yes)、印刷無効モードの設定が不可であることをホストコンピューター5に通知し(ステップS56)、通常動作モードのまま本処理を終了する。ステップS53〜S56の動作は、媒体処理装置1の電源がONになっている間は所定周期で実行される。
【0043】
なお、上記の動作において、図5に示した動作において、媒体処理装置1は、印刷機能の実行を指示するコマンドに対しては、そのコマンドを破棄する構成としたが、図5のステップS22において、インクジェットプリンターユニット44のメンテナンスに関するコマンドであれば当該コマンドに従って実行することも可能である。この場合、インクジェットプリンターユニット44のメンテナンスに関するコマンドがホストコンピューター5から送信された場合、インクジェットプリンターユニット44のメンテナンスを行うことで、インクジェットプリンターユニット44の状態を使用可能な状態に保持することもできる。
また、図6のステップS35において、印刷機能に関するエラーであっても、インクカートリッジ45のインク切れ、インクジェットヘッド10の温度異常、廃液タンクの容量超過、サーマルヘッド65の温度異常、小切手4のジャム、バッファーエラー等、緊急性の高いエラー要因については、エラーを検出することもできる。この場合、放置すると媒体処理装置1の不可逆的な故障を招くようなエラー要因のみを通知するので、無効にされた機能についても必要最小限の監視を行うことができる。この場合、インクジェットプリンターユニット44に係る印刷機能に関係する全てのエラー要因のうち、緊急性の高いエラー要因に限ってエラーが検出されることから、通常動作モードに比べてインクジェットプリンターユニット44に係るメンテナンスの手間を軽減できる。従って、印刷機能を使用しないユーザーにとっては有用である。
【0044】
さらに、印刷無効モードにおいて、インクジェットプリンターユニット44に係る機能のうち、インクジェットプリンターユニット44のメンテナンスに係る機能に限定して実行可能としてもよい。また、インクジェットプリンターユニット44のメンテナンスに係る機能を最小限の機能に限定することも可能である。通常、インクジェットプリンターユニット44については上述したフラッシング、ワイピング、クリーニングを含むメンテナンスが行われ、フラッシングは、インクジェットヘッド10のノズル面からキャップ(図示略)が外れている間、所定時間(例えば、数秒)毎に実行される。ワイピングは、毎回の印刷時または印刷を所定回数実行する毎に、キャップを外して印刷を開始する際に実行される。クリーニングは、印刷時間が所定時間経過する毎、或いは、媒体処理装置1の電源が投入された状態が所定時間経過する毎に実行される。ここで、フラッシング、ワイピング、及びクリーニングを実行する間隔(上記の所定時間)は、予め機能毎に設定されて、制御部70を構成するフラッシュROMに記憶されている。
ここで、フラッシング、ワイピング、及びクリーニングを実行する間隔を、通常動作モードにおける間隔と、印刷無効モードにおける間隔との少なくとも2種類記憶しておき、図7(a)に示す動作により動作モードを印刷無効モードに切り替える際に、フラッシング、ワイピング、及びクリーニングを実行する間隔を切り替える構成としてもよい。この構成によれば、いったんインクカートリッジ45をセットした後に、印刷無効モードを実行する場合に、インクジェットプリンターユニット44の状態を良好に保持しながら、インクの消費量及びメンテナンス動作に要する待機時間を最小限に抑えることができ、メンテナンスの負荷を、通常動作モードに比べて大幅に軽減できる。
【0045】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態に係る媒体処理装置1は、小切手4を搬送する搬送路Wに、小切手4に印刷を行う機能を有するインクジェットプリンターユニット44と、小切手4を読み取る機能を有する表面CISユニット47及び裏面CISユニット48とが配置された構成を有し、制御部70は、インクジェットプリンターユニット44、若しくは、表面CISユニット47及び裏面CISユニット48の少なくともいずれかの機能(ここでは印刷機能)を無効にするコマンドをホストコンピューター5から受信した場合に、コマンドにより指定された機能(ここでは印刷機能)を無効にする印刷無効モードに移行し、この印刷無効モードで、無効にされた機能に関するエラーが検出されてもホストコンピューター5へ当該エラーを通知しないよう設定する。これにより、複数の機能を備えた媒体処理装置1において、一部の機能のみを使用することができ、使用しない機能に関してエラーが検出されても、そのエラーを解消する操作を行わずに継続して媒体処理装置1を使用できる。このため、例えば、インクジェットヘッド10による印刷機能を使用しない場合に、この使用しない印刷機能に係るメンテナンスの負担を軽減できる。
【0046】
また、インクジェットプリンターユニット44は、インクカートリッジ45に貯留されたインクを小切手4に吐出して記録を行うインクジェットヘッド10を備え、インクジェットプリンターユニット44を使用せず、表面CISユニット47及び裏面CISユニット48のみを使用する印刷無効モードが設定されると、インクジェットヘッド10及びインクの供給に関するエラーが通知されない。このため、インクに関するメンテナンスを行わなくても表面CISユニット47及び裏面CISユニット48を使用でき、メンテナンスに係る負担を軽減できる上、インクの消費を抑えることができる。
【0047】
また、制御部70は、いったんインクカートリッジ45が装着されてインクを供給可能となった後に、印刷無効モード設定コマンドを受信した場合には、印刷無効モードに移行しないので、インクジェットプリンターユニット44以外の機能を使用する場合のメンテナンスの負担を軽減するとともに、インクの供給が可能となった後は必要なメンテナンスを省略することによる不具合を防止できる。
【0048】
また、制御部70は、いったんインクカートリッジ45が装着されてインクを供給可能となった後に、印刷無効モード設定コマンドを受信した場合には、機能無効モードに移行するとともに、インクジェットプリンターユニット44のメンテナンス動作を実行可能とすることもでき、この場合、インクの消費を抑えるとともに、メンテナンスを省略することによる不具合を防止できる。
【0049】
また、印刷無効モードにおいて、印刷機能に関するエラー要因のうち緊急性の高いエラー要因はエラーを検出してホストコンピューター5への報知を行い、他のエラー要因は無視するので、無効となった機能に関するエラー検出を抑えてメンテナンスの負担を軽減するとともに、放置できないエラーは適切にユーザーに報知できる。
【0050】
なお、上記実施形態は本発明を適用した一例を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。上記実施形態においては、媒体処理装置1において、インクジェットヘッド10による印刷機能を無効とする印刷無効モードと、通常動作モードとを切り替え可能な構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、サーマルヘッド65による印刷を無効にするモード等、他の機能について、無効にする動作モードに切り替えることも可能であり、この場合に、無効にされた機能に関するエラー要因についてエラーを検出しない構成としてもよい。また、上述した緊急性の高いエラー要因や、緊急性が低いといえるエラー要因はあくまで一例であって、媒体処理装置1の細部構成に従って適宜変更可能である。さらにまた、媒体処理装置1が、固定的に配置されたインクカートリッジ45からインクジェットヘッド10にインクを供給する構成を例に挙げて説明したが、例えば、インクジェットヘッド10がキャリッジに搭載され、キャリッジとともに走査される構成において、オンキャリッジのインクカートリッジを用いる構成としてもよく、インクジェットプリンターユニット44の細部構成については任意である。
また、図3のブロック図に示した各機能部は機能的構成を示すものであって、各機能部を独立したハードウェアにより構成する必要はなく、ソフトウェアとハードウェアとの協働により、複数の機能部の機能を1つのハードウェアに集約して実現することも、一つの機能部を複数のハードウェアにより実現することも勿論可能である。
また、上述の動作を行う制御部70のCPUが実行するプログラムは、制御部70を構成する不揮発性メモリーが記憶する構成に限らず、可搬型の記録媒体に記憶されている構成であってもよいし、或いは、通信回線を介して接続された他の装置にダウンロード可能に記憶され、これらの装置から媒体処理装置1が上記プログラムをダウンロードして実行してもよく、その他の構成についても任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…媒体処理装置、4…小切手(処理対象媒体)、5…ホストコンピューター(外部の装置)、8…媒体処理システム、10…インクジェットヘッド(インクジェット式記録ヘッド)40…第1搬送ローラー、41…第2搬送ローラー、42…搬送モーター、44…インクジェットプリンターユニット(印刷手段)、45…インクカートリッジ(インク貯留部)、47…表面CISユニット(読取手段)、48…裏面CISユニット(読取手段)、50…第1CISローラー、51…第2CISローラー、65…サーマルヘッド、70…制御部(制御手段)、70a…エラー検出部、77…メモリー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象媒体を搬送する搬送路に、前記処理対象媒体に印刷を行う機能を有する印刷手段と、前記処理対象媒体を読み取る機能を有する読取手段とが配置され、
前記印刷手段及び前記読取手段の少なくともいずれかの機能を無効にするコマンドを外部の装置から受信した場合に、当該機能を無効にする機能無効モードに移行し、この機能無効モードにおいて、前記印刷手段及び前記読取手段のうち無効にされた機能に関するエラーを検出しても前記外部の装置へ当該エラーを通知しないよう設定する制御手段を備えたこと、
を特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記印刷手段は、インク貯留部に貯留されたインクを前記処理対象媒体に吐出して記録を行うインクジェット式記録ヘッドを備えることを特徴とする請求項1記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記インク貯留部がインクを供給可能となった後は、前記印刷手段の機能を無効にするコマンドを受信した場合には、前記機能無効モードに移行しないことを特徴とする請求項2記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記インク貯留部がインクを供給可能となった後に、前記印刷手段の機能を無効にするコマンドを受信した場合には、前記機能無効モードに移行するとともに、前記印刷手段に係る特定のメンテナンス動作を実行可能とすることを特徴とする請求項2記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記機能無効モードで無効にされた機能に関するエラーの一部を無効として通知を行わない一方、他のエラーを前記外部の装置に通知することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の媒体処理装置。
【請求項6】
処理対象媒体を搬送する搬送路に、前記処理対象媒体に印刷を行う機能を有する印刷手段と、前記処理対象媒体を読み取る機能を有する読取手段とが配置された媒体処理装置を制御し、
前記印刷手段及び前記読取手段の少なくともいずれかの機能を無効にするコマンドを外部の装置から受信した場合に、当該機能を無効にする機能無効モードに移行し、この機能無効モードにおいて、前記印刷手段及び前記読取手段のうち無効にされた機能に関するエラーが検出されても前記外部の装置へ当該エラーを通知しないよう設定すること、
を特徴とする媒体処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−73440(P2013−73440A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212332(P2011−212332)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】