説明

媒体処理装置

【課題】異なる経路から共通経路に送り込まれる媒体を安定した搬送状態でスキャナーの読取位置に送り込み可能な媒体処理装置を提案すること。
【解決手段】小切手処理装置1は、小切手搬送用の後側経路P12およびカード経路100を選択的に共通経路である下流側経路P13に連通させる経路切替部材200を備えている。後側経路P12のインクジェットヘッド42aのノズル面42cに被せるノズルキャップ62の開口部を封鎖するためのシャッター65が、当該開口部を封鎖している状態では経路切替部材200が後側経路P12を下流側経路P13に連通している第1位置にある。シャッター65がノズルキャップ62の開口部から離れた封鎖解除位置に移動すると、この移動に連動して経路切替部材200が第1位置200Aから第2位置200Bに切り替わり、カード経路100が下流側経路P13に連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲した搬送路に沿って搬送される媒体の画像を読み取る光学式読取部を備えた小切手処理装置等の媒体処理装置に関する。さらに詳しくは、小切手等のように曲げることが容易な第1媒体および運転免許証やカードのように曲げることが困難な第2媒体の双方から画像を読み取ることのできる媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入金処理、出金処理を含む銀行業務においては、小切手を利用した決済方法が利用されている。小切手による決済方法では、銀行窓口で小切手に記載されている日時、署名などを確認し、必要な入金処理、出金処理等を行い、その後に処理済の小切手に裏書きを行う。また、当該小切手処理に関するレシートを顧客に発行する。さらに、小切手処理に当っては、本人確認のために、免許証やIDカードの提示を求め、必要に応じて、複写機でこれらのコピーを取って保管している。銀行窓口においては、このような処理を短時間で大量に行うことが必要である。
【0003】
近年、これらの処理を電子的に行うことのできる小切手処理装置が提案されている。このような小切手処理装置では、小切手の磁気情報を内蔵のMICR(Magnetic-Ink Character Reader)で読み取り、小切手およびIDカードなどの画像を内蔵の光学スキャナーで読み取り、小切手の裏書きを内蔵の印刷装置で行うように構成されている。
【0004】
この構成の装置は特許文献1において提案されている。当該特許文献1に開示のデータ読取装置は、曲げることの困難な身分証明用の免許証を、U字状に湾曲している小切手経路における直線状の経路に配置されている画像読み取りセンサーを利用して読み取ることができる。すなわち、曲げることの容易な小切手はU字状の小切手経路に沿って搬送され、曲げることの困難なカードは直線状のカード経路に沿って搬送され、小切手およびカードの双方が搬送される共通経路は、U字状の小切手経路における直線状の経路部分が用いられている。曲げることの容易な小切手類は、湾曲状の経路に沿って湾曲状態で搬送してスキャナーが配置されている直線状の共通経路に送り込まれるようになっている。この構成のデータ読取装置を用いれば、1台の装置で小切手処理と、その処理のために必要な本人確認処理を効率良く行うことができる。
【0005】
一方、小切手の裏書用の印刷装置としてはスタンパーなどの簡単な機構が用いられているが、インクジェットヘッドを用いれば各種の情報を印刷することができる。インクジェットヘッドを用いる場合には、不使用状態におけるノズル詰まりを防止するためのヘッドメンテナンス機構を搭載する必要がある。ヘッドメンテナンス機構はインクジェットヘッドのノズル面をキャッピングするためのノズルキャップを備えている。この場合、特許文献2、3において提案されているように、ノズルキャップの乾燥を防止するためにノズルキャップ内を保湿するための機構も備わっていることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−297761号公報
【特許文献2】特開2001−18408号公報
【特許文献3】特開2009−226719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1に開示のデータ読取装置のように、直線状の共通経路上においてスキャナーで小切手類およびカード類の画像を読み取る場合には、小切手経路とカード経路が合流して共通経路に繋がる合流点において小切手類およびカード類が詰まる可能性がある。特に、カード類の読取動作において、合流点を経由させて共通経路およびカード経路に沿って往復移動させる場合には、カード類が合流点において詰まり易い。例えば、カード類の先端に反りが付いている場合などにおいては、共通経路から合流点を介してカード経路に送り込まれる際に、合流点においてカード経路および小切手経路を分岐させている分岐部分にカード類の先端が当り、その位置で詰まり易い。
【0008】
また、小切手処理装置等では、装置の小型化を図っているので、小切手長に対して小切手経路を十分に長くできず、小切手は合流点を通過しながらスキャナーによる読取が行われる。同様に、カード長に対してカード経路を十分に長くできないので、カード類は合流点を通過しながらスキャナーによる読取が行われる。このため、カード類、小切手類の先端に反りあるいは折り目が付いている場合等においては、カード経路あるいは小切手経路から合流点を介して共通経路に送り込まれる際に、カード類、小切手類の搬送が不安定になり、共通経路に配置されているスキャナーの読取位置に沿って一定速度で小切手類、カード類を搬送できない場合がある。このような場合には、スキャナーによる読取画像に歪が発生し、正確に画像を読み取ることができなくなってしまう。
【0009】
一方、小切手類の裏書のための印刷装置としてインクジェットヘッドを用いる場合には、上記のようにノズル詰まりを防止するためにヘッドメンテナンス機構(ノズルキャップ)が必要になる。ノズルキャップが乾くとノズル詰まりの原因になるので、ノズルキャップを保湿するための機構を配置する必要がある。このような機構を配置することは、装置の小型化にとっては好ましくない。
【0010】
本発明の課題は、異なる経路から共通経路に送り込まれる媒体の画像を共通のスキャナーで読み取る際に、媒体を安定した搬送状態でスキャナーの読取位置に送り込むことのできる媒体処理装置を提案することにある。
【0011】
また、本発明の課題は、媒体印刷装置としてインクジェットヘッドを備え、当該インクジェットヘッドのヘッドメンテナンス機構の動きを利用した小型でコンパクトな機構により、異なる経路から共通経路の画像読取位置に向けて媒体を安定した搬送状態で送り込むことのできる媒体処理装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の媒体処理装置は、
第1媒体を搬送するための第1経路と、
第2媒体を搬送するための第2経路と、
前記第1経路および前記第2経路の合流点から延びている第1媒体および第2媒体を搬送するための共通経路と、
前記共通経路を通過する前記第1媒体あるいは前記第2媒体の画像を読み取るスキャナーと、
前記第1経路を通過する前記第1媒体に印刷を行うインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドのノズル面に被せて当該ノズル面を保湿状態に維持するキャッピング位置、および、前記ノズル面から離れたキャッピング解除位置に移動可能なノズルキャップと、
前記キャッピング解除位置にある前記ノズルキャップの開口部を封鎖して当該ノズルキャップの内部を保湿状態に維持する封鎖位置、および、前記開口部から離れた封鎖解除位置に移動可能なシャッターと、
前記合流点において、前記第1経路を前記共通経路に連通させる第1位置、および、前記第2経路を前記共通経路に連通させる第2位置に切り替え可能な経路切替部材とを有し、
前記経路切替部材は、前記シャッターの前記封鎖位置から前記封鎖解除位置への移動に連動して前記第1位置から前記第2位置に切り替わり、前記シャッターの前記封鎖解除位置から前記封鎖位置への移動に連動して前記第2位置から前記第1位置に切り替わることを特徴としている。
【0013】
本発明の媒体処理装置では、ノズルキャップがキャッピング解除位置にあり、シャッターが封鎖位置にあり、したがって、シャッターに連動する経路切替部材が第1位置に切り替えられた状態において、第1経路に沿って搬送される第1媒体に対してインクジェットヘッドによって印刷が行われ、印刷後の第1媒体は第1経路から共通経路に送り込まれる。また、共通経路に送り込まれた第1媒体の画像が、共通経路上のスキャナーによって読み取られる。第1経路および第2経路の合流点において、経路切替部材によって第1経路が共通経路に連通した状態が形成されているので、当該合流点において第1媒体の詰まりが発生することがなく、また、第1媒体は合流点を円滑に通過する。よって、第1媒体がインクジェットヘッドによる印刷が行われながら合流点を通過する場合に、当該第1媒体が一定の搬送速度で搬送されるので、印刷に乱れが生ずることがない。また、第1媒体が合流点を通過しながら共通経路上においてスキャナーで画像の読取が行われる場合においても、当該第1媒体が一定の搬送速度で搬送されるので読取画像に歪などの乱れが生ずることがない。
【0014】
一方、第1媒体の搬送、印刷、画像読取が行われない場合には、ノズルキャップがキャッピング位置にあり、シャッターが封鎖解除位置にあり、したがって、シャッターに連動する経路切替部材が第2位置に切り替えられた状態になる。この状態において、第2経路および共通経路に沿って第2媒体を搬送して当該第2媒体の画像をスキャナーで読み取る場合には、第1経路および第2経路の合流点において、経路切替部材によって第2経路が共通経路に連通した状態が形成されているので、当該合流点において第2媒体の詰まりが発生することがなく、また、第2媒体は合流点を円滑に通過することができる。よって、第2媒体が合流点を通過しながら共通経路上においてスキャナーで画像の読取が行われる場合に、当該第2媒体が一定の搬送速度で搬送されるので読取画像に歪などの乱れが生ずることがない。
【0015】
また、本発明の媒体処理装置では、経路切替部材の切り替えが、シャッターに連動して行われる。したがって、経路切替部材の位置を切り替えるための機構を別途設ける必要がない。また、経路切替部材の切り替え制御を、シャッター、すなわちインクジェットヘッドのヘッドメンテナンス機構とは別個に行う場合には、誤動作によって、シャッターが封鎖位置にある(換言すると、第1経路に沿って第1媒体を搬送してインクジェットヘッドによって印刷する状態にある)にも拘わらず、経路切替部材が第2媒体を通すための第2位置に切り替わった状態のままとなってしまうことがある。本発明ではシャッターの動きに連動させて経路切替部材を切り替えているので、このような誤動作の発生を大幅に抑制できる。
【0016】
さらに、本発明の媒体処理装置では、インクジェットヘッドのノズル面をキャッピングしていない状態において、ノズルキャップの開口部をシャッターによって封鎖することにより、ノズルキャップ内からの水分の蒸散を防止している。よって、保湿手段や洗浄手段を用いることなくノズルキャップ内を適切な保湿状態に維持することができる。また、保湿手段、洗浄手段のように、保湿液、洗浄液のタンク、タンクから保湿液、洗浄液を供給する供給機構、ノズルキャップに供給された保湿液、洗浄液の回収機構などを設ける場合とは異なり、シャッターおよび当該シャッターを移動させるための機構を配置するだけでよいので、インクジェット印刷装置の設置スペースの増加を抑制できる。よって、小型・コンパクト化の要求の高い媒体処理装置に用いるのに適している。
【0017】
本発明の媒体処理装置において、前記ノズルキャップは、前記第1経路を挟み前記インクジェットヘッドの前記ノズル面に対峙している前記キャッピング解除位置から、前記第1経路を横切って前記ノズル面の側に前進して当該ノズル面に被せた前記キャッピング位置までの間を移動可能であり、前記シャッターは、前記第1経路に沿って、前記キャッピング解除位置にある前記ノズルキャップの前記開口部を封鎖する前記封鎖位置から前記封鎖解除位置までの間を移動可能であり、前記経路切替部材は、前記シャッターに対して前記第1経路に沿った方向において隣接配置されていることを特徴としている。
【0018】
第1媒体の搬送路である第1経路は、当該第1経路に沿って配置された媒体ガイド板などによって規定されるので、媒体ガイド板の裏面側に沿ってシャッターの設置スペースおよび移動スペースを確保することが容易である。また、第1経路に沿って経路切替部材をシャッターに対して隣接配置しておくことにより、シャッターの第1経路に沿った方向の移動を利用して経路切替部材を第1位置および第2位置に切り替える連動機構を簡単な機構で設置スペースを多く必要とすることなく設置できる。
【0019】
次に、本発明の媒体処理装置は、
前記インクジェットヘッドに対して前記第1経路を挟み対向配置されている媒体ガイドと、
前記ノズルキャップを前記インクジェットヘッドの前記ノズル面に対して進退させるために、前記媒体ガイドに形成されている媒体ガイド開口部とを有し、
前記シャッターは前記封鎖位置において前記媒体ガイド開口部を遮蔽すると共に、当該シャッターの前記第1経路に面する側のシャッター表面は前記封鎖位置において前記第1媒体をガイドする媒体ガイド面として機能し、
前記経路切替部材における前記第1経路に面する側の第1表面は、前記第1位置において、前記シャッター表面と前記共通経路における当該シャッター表面と同一の側に位置する共通経路ガイド面の間を繋ぐ媒体ガイド面として機能し、
前記経路切替部材における前記第2経路に面する側の第2表面は、前記第2位置において、前記第2経路における前記第2表面と同一の側の第2経路ガイド面と前記共通経路における当該第2経路ガイド面と同一の側に位置する共通経路ガイド面の間を繋ぐ媒体ガイド面として機能することを特徴としている。
【0020】
ノズルキャップを、第1経路を挟み、インクジェットヘッドのノズル面に対向配置した場合には、ノズルキャップをインクジェットヘッドのノズル面に対して進退させるために、インクジェットヘッドのノズル面に対峙している媒体ガイドには媒体ガイド開口部が形成される。媒体ガイド開口部が第1経路に露出した状態で第1媒体が搬送されると、第1媒体の端などが媒体ガイド開口部の縁に引掛り、インクジェットヘッドの印刷位置において媒体詰まりが発生しやすい。
【0021】
本発明によれば、媒体ガイド開口部をシャッターによって封鎖すると共に、当該シャッターによって第1媒体をガイドすることで、このような弊害を確実に防止できる。また、シャッターは、ノズルキャップを保湿状態に維持するための封鎖部材、媒体ガイド開口部を遮蔽するための遮蔽部材、および、印刷位置を通過する媒体をガイドする媒体ガイド(プラテン)として機能するので、複数の部材を用いる場合に比べて、機構が簡単になり、設置スペースが少なくて済み、製造コストの増加も抑制できる。
【0022】
さらに、シャッターに隣接配置されている経路切替部材の第1表面によって、シャッター表面と共通経路の同一側のガイド面の間が繋がれた状態になるので、これらの表面に沿って第1媒体を円滑に第1経路から共通経路にガイドすることができる。また、経路切替部材を第2位置に切り替えた場合には、その第2表面によって、第2経路の同一側のガイド面と共通経路の同一側のガイド面の間が繋がれた状態になるので、これらの表面に沿って第2媒体を円滑に第2経路から共通経路にガイドすることができる。
【0023】
次に、本発明の媒体処理装置では、
前記ノズルキャップは、前記第1経路に対して前記キャッピング解除位置よりも離れた後退位置から、当該キャッピング解除位置を経由して前記キャッピング位置までの間を往復移動可能であり、
前記封鎖位置にある前記シャッターに対して、前記ノズルキャップが前記後退位置から前記キャッピング解除位置まで移動すると、当該ノズルキャップが前記シャッターに当接して、当該ノズルキャップの前記開口部が封鎖された状態が形成され、
前記ノズルキャップが前記キャッピング位置にある状態、および、前記ノズルキャップが前記キャッピング位置から前記後退位置に移動するまでの間は、前記シャッターは前記封鎖解除位置に保持され、前記ノズルキャップが前記後退位置に戻ると前記シャッターは前記封鎖解除位置から前記封鎖位置に移動し、前記シャッターが前記封鎖位置に移動した後に、前記ノズルキャップは前記後退位置から前記キャッピング解除位置に前進して当該ノズルキャップの前記開口が封鎖されることを特徴としている。
【0024】
このようにすれば、シャッターは媒体搬送方向にスライドさせるだけで良く、スライド方向とは異なる方向に向けてノズルキャップに対して接近および離すために移動させる必要がない。よって、シャッターを駆動するための機構を簡単な機構にでき、そのための設置スペースも少なくて済む。
【0025】
次に、経路切替部材をシャッターに連動させるための機構としてはカム機構を用いることができる。例えば、経路切替部材を、予め定めた旋回中心線回りに旋回して、前記第1位置および前記第2位置に切り替え可能とし、カム機構によって、前記シャッターの前記封鎖位置から前記封鎖解除位置までの間の直線往復運動を、前記経路切替部材の前記第1位置から前記第2位置までの間の旋回運動に変換することができる。
【0026】
一方、本発明の媒体処理装置は、身元認証等のために用いるカードスキャン機能を備えた小切手処理装置に適用することができる。この場合には、第1経路には第1媒体の磁気情報を読み取るための磁気読取部が配置され、前記第1経路は小切手類が搬送される小切手経路であり、前記第2経路はカード類が搬送されるカード経路である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の小切手処理装置を示す斜視図である。
【図2】図1の小切手処理装置の上面の二つのカバーを開けた状態の斜視図である。
【図3】図1の小切手処理装置を上方から見た場合の斜視図である。
【図4】図1の小切手処理装置の小切手搬送機構を主に示す構成図である。
【図5】図1の小切手処理装置のレシート発行機構を示す縦断面図である。
【図6】図1の小切手処理装置の印刷部を示す説明図である。
【図7】シャッターが封鎖解除位置にあるヘッドメンテナンス機構の説明図である。
【図8】シャッターが封鎖位置にあるヘッドメンテナンス機構の説明図である。
【図9】キャッピング状態の印刷部を示す説明図である。
【図10】ノズルキャップが後退位置にある状態の説明図である。
【図11】シャッターによってノズルキャップが封鎖されている状態の説明図である。
【図12】ノズルキャップ、シャッター、経路切替部材の動作のフローチャートである。
【図13】キャッピング駆動機構、シャッター駆動機構の概略構成図である。
【図14】図13の機構を背面側から見た場合の概略構成図である。
【図15】円筒カムのカム溝のカム面形状を示す説明図である。
【図16】円筒カムの回転に伴う各部の動きを示す円筒カム線図である。
【図17】印刷開始後の円筒カムの回転に伴う各部動作の概略フローチャートである。
【図18】円筒カムが50°の回転位置にある状態を示す概略構成図である。
【図19】円筒カムが160°の回転位置にある状態を示す概略構成図である。
【図20】円筒カムが297°の回転位置にある状態を示す概略構成図である。
【図21】シャッターによる経路切替部材の連動機構の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した媒体処理装置の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る媒体処理装置は、曲げることの容易な第1媒体である小切手を処理する小切手処理装置である。また、小切手処理装置には、小切手処理に当っての本人確認などのために曲げることの困難な第2媒体である運転免許証やその他のカードの画像情報を読み取るカードスキャン機構と、小切手の処理済情報などが印刷されたレシートを発行するレシート発行機構とが備わっている。なお、本発明は、小切手以外の曲げることの容易な第1媒体を処理する媒体処理装置に対しても同様に適用できることは勿論である。また、レシート発行機構の備わっていない媒体処理装置に対しても適用可能なことは勿論である。
【0029】
(全体構成)
図1は本実施の形態に係る小切手処理装置を前方右側の斜め上方から見た場合の斜視図である。図2は小切手処理装置を前方左側の斜め上方から見た場合の斜視図であり、上面に配置されている前後のカバーを開けた状態のものである。また、図3は小切手処理装置を上方前側から見た場合の斜視図である。
【0030】
これらの図を参照して説明すると、小切手処理装置1の装置筐体1aは、矩形輪郭をした一定厚さの下側筐体部2と、この上に配置されている上側筐体部3とを備えている。上側筐体部3には、処理対象の小切手S1を挿入する入口ポケット4と、入口ポケット4から送り出される小切手S1を搬送する小切手経路P1(第1経路)と、小切手経路P1から送り出される小切手S1を回収する回収ポケット5が形成されている。小切手経路P1に沿って搬送される間に、小切手S1の磁気情報の読み取り、小切手S1の裏書き印刷、および小切手S1の両面の画像情報の読み取りがこの順序で行われる。
【0031】
なお、以下の説明においては、図1に示すように、小切手処理装置1を水平な平面に正立状態で置いた通常の使用状態において、当該小切手処理装置1(装置筐体1a)における操作者の側に向ける側を前面とし、反対側を後面とすると、これら前面および後面が位置する方向を装置前後方向Yとし、平面に平行で装置前後方向Yに直交する方向を装置幅方向Xとし、平面に垂直な方向を装置上下方向Zとする。
【0032】
入口ポケット4から小切手経路P1を経由して回収ポケット5に至る小切手の搬送経路は、上側筐体部3に形成した装置上下方向Zの上方に開口している所定幅の縦溝によって規定されている。小切手S1は、図1に示すように、その長辺縁が上下となる立てた状態で入口ポケット4に挿入され、その状態のまま小切手経路P1を搬送されて回収ポケット5に排出される。この小切手の搬送経路は平面視で装置前方に開く略U字形状の経路である。
【0033】
すなわち、図3から分かるように、入口ポケット4は上側筐体部3における装置幅方向Xの右側の前端から装置後方に延びており、この入口ポケット4の装置後端に形成されている小切手挿入口4aからは、小切手経路P1の上流側経路P11が装置後方に向けて直線状に延びている。上流側経路P11の下流端部分は装置幅方向Xの内側に向けて湾曲して、小切手経路P1の後側経路P12に繋がっている。後側経路P12は装置幅方向にほぼ直線状に延びており、その下流端部分は装置前方に向けて湾曲して、小切手経路P1の下流側経路P13に繋がっている。下流側経路P13は直線状経路であり、装置前後方向Yに対して装置幅方向の内側に鋭角θで傾斜した方向、例えば10〜20度程度傾斜した方向に延びている。下流側経路P13の下流端は小切手排出口5aを介して回収ポケット5に繋がっている。回収ポケット5は装置前後方向Yに沿って装置前端まで延びている。
【0034】
上側筐体部3は、このU字形状の小切手の搬送経路によって、右側筐体部分6、後側筐体部分7および左側筐体部分8と、これらの内側に位置する内側筐体部分9に分かれている。内側筐体部分9の上面には、前側カバー11、後側カバー12、後述のレシート発行機構のレシート発行口13および操作面14が配置されている。また、後述のカードスキャン機構による読み取り対象のカードCを挿入するためのカード挿入路15が形成されている。
【0035】
図2から分かるように、前側カバー11は装置前端側の部位を中心として装置前方に開けることができ、後側カバー12は装置後端側の部位を中心として装置後方に開けることができる。レシート発行口13は、前側カバー11の開閉側の縁と後側カバー12の開閉側の縁との間に形成されており、装置幅方向に細長い矩形状をしている。操作面14は、後側カバー12の左側における装置後側部分に形成されており、一段高い位置に形成されたほぼ平坦な面であり、ここには、複数の操作スイッチ14a、動作表示用の複数のLED表示部14bなどが配列されている。
【0036】
内側筐体部分9における後側カバー12によって覆われている部分には、ロール紙収納部16が設けられている。後側カバー12を開けるとロール紙収納部16が装置上方に開口し、不図示のロール紙の交換作業などを行うことができる。内側筐体部分9の前側カバー11によって覆われている部分には、ロール紙収納部16に収納したロール紙から繰り出された連続紙を幅方向に切断するためのオートカッター17が配置されている。ロール紙収納部16に収納されたロール紙から繰り出される連続紙に小切手情報に対応する情報などが印刷され、印刷された部分の後端が切断されて所定長さのレシートとしてレシート発行口13から発行される。また、オートカッター17の装置前側にはインクカートリッジ装着部18が配置されており、ここには小切手印刷用のインク供給源であるインクカートリッジ19が装着されている。前側カバー11を開けると、オートカッター17の駆動ユニット17cが露出すると共に、インクカートリッジ装着部18が上方に開口するので、オートカッター17の点検作業等やインクカートリッジの交換作業などを装置上方から簡単に行うことができる。
【0037】
一方、カード挿入路15は、図2、図3から分かるように、内側筐体部分9の上面における前側カバー11の左側の平坦な装置上面部分20に形成されている。装置上面部分20は、その後側の操作面14に比べて低い位置にある。カード挿入路15は、この装置上面部分20において、装置上方に開口している一定幅で一定深さの直線状の溝である。カード挿入路15の装置後側の後端は、小切手経路P1の下流側経路P13における装置前方に開口している下流端開口P13aにおける上側の部分に繋がっており、その装置前側の前端は前側カバー11の側縁近傍に位置している。また、カード挿入路15は、図3から分かるように、直線状搬送路である下流側経路P13の装置前方への延長線に沿って延びる直線状の挿入路である。すなわち、装置前後方向Yに対して装置内側に鋭角θで傾斜した方向に延びている。
【0038】
また、下流側経路P13の後側には、当該下流側経路P13の装置後方への延長線に沿って延びる直線状のカード経路100が形成されており、このカード経路100の後端は後方に開口している。このカード経路100の装置前側の端は、小切手経路P1における後側経路P12における小切手搬送方向の下流端の合流点Mで合流して下流側経路P13に繋がっている。このように、カード挿入路15、下流側経路P13およびカード経路100によって、直線状に延びるカードCの経路が形成されており、下流側経路P13は小切手S1およびカードCを搬送するための共通経路とされている。
【0039】
曲げることの困難なカードCの画像情報を読み取る場合には、図2に示すように、当該カードCをカード挿入路15に対して装置前側から挿入して装置後方に押し込む。カード挿入路15に押し込まれたカードCは、カード挿入路15から下流側経路P13を通ってカード経路100に送り込まれる間にカード長が検出される。次に、カード経路100から下流側経路P13を通ってカード挿入路15に送り出される間に、下流側経路P13に配置されている後述の小切手読取用の光学式読取部43(図4参照)によって画像情報が読み取られる。
【0040】
なお、本例の小切手処理装置1では、曲げることの困難なカードCの磁気情報を読み取るためのカードスロット21も形成されている。カードスロット21は上側筐体部3の右側筐体部分6の上面部分に形成されている。この右側筐体部分6の内部には不図示の磁気読取部が配置されており、カードCを当該カードスロット21に沿って引き抜くことにより、カードCに担持されている磁気情報が読み取られる。
【0041】
(内部構成)
図4はU字状の小切手の搬送経路に沿って小切手S1を搬送するための小切手搬送機構を中心に示す小切手処理装置1の内部構成図である。この図を参照して小切手処理装置1の内部構成を、小切手搬送機構を中心に説明する。まず、入口ポケット4には、その右側筐体部分6の側の側面に給紙ローラー30aが配置され、内側筐体部分9の側の側面に押圧部材30bが配置されている。押圧部材30bは入口ポケット4に挿入された小切手S1を給紙ローラー30aの側に押圧する。送り出しモーター22により駆動される給紙ローラー30aによって小切手S1は小切手経路P1の上流側経路P11に送り出される。本例では、小切手S1は、その裏面が装置内側(内側筐体部9の側)を向くように、入口ポケット4に立てた状態で挿入される。
【0042】
小切手経路P1の上流側経路P11には、入口ポケット4から送り出された小切手S1を送り出す送り出しローラー31bと、上流側経路P11を介して当該送り出しローラー31bに向かい合うリタードローラー31aとが設けられている。送り出しローラー31bは、送り出しモーター22により駆動され、給紙ローラー30aと同期して回転される。リタードローラー31aは送り出しローラー31bの側に付勢されており、小切手S1を一枚ずつ分離しながら下流側に送り出す。
【0043】
小切手経路P1における送り出しローラー31bの下流側の搬送路部分には、複数の搬送ローラー対32〜36が配置されている。上流側経路P11には搬送ローラー対32が配置されており、後側経路P12には搬送ローラー対33、34が配置されており、下流側経路P13には残りの搬送ローラー対35、36が配置されている。これらの搬送ローラー対32〜36はそれぞれ、内側筐体部分9の側に配置されている駆動ローラー32a、33a、34a、35a、36aと、外側の右側筐体部分6、後側筐体部分7および左側筐体部分8の側において、小切手経路P1を介して対向するように設けられた従動ローラー32b、33b、34b、35b、36bとを備えている。駆動ローラー32a、33a、34a、35a、36aは、無端ベルト37を介して、駆動モーター40によりそれぞれが同期して回転駆動される。また、従動ローラー32b、33b、34b、35b、36bは、不図示の付勢部材により、対向する駆動ローラー32a〜36aの側に付勢されている。
【0044】
小切手経路P1の上流側経路P11には磁気読取部41が配置されている。磁気読取部41は、小切手S1に磁気インク等で書き込まれた磁気情報を読み取り可能な磁気スキャナー41aを備え、磁気スキャナー41aは、その磁気読取面が上流側経路P11の側を向く姿勢で右側筐体部分6に配置されている。また、磁気スキャナー41aの磁気読取面には、上流側経路P11を挟み、押し付けローラー41bが対向配置されている。押し付けローラー41bによって、搬送される小切手S1が磁気スキャナー41aの磁気読取面に押し付けられて、磁気スキャナー41aによって確実に磁気情報が読み取られる。
【0045】
上流側経路P11の下流端に連続して装置幅方向に延びている後側経路P12には、その装置左隅の側の部分に、小切手S1の裏面に裏書き印刷を行う印刷部42が設けられている。印刷部42は装置上下方向に延びる状態に配置されたライン型のインクジェットヘッド42aを備え、当該インクジェットヘッド42aのノズル面が後側経路P12の側を向く状態に配置されている。後側経路P12を挟み、このノズル面に対峙する後側筐体部分7の部位には、インクジェットヘッド42aのヘッドメンテナンス機構42bが配置されている。インクジェットヘッド42aのインク供給源は、図2を参照して説明したように、インクカートリッジ装着部18に装着したインクカートリッジ19である。本例のようにライン型のヘッドを用いると、シリアル型のヘッドを用いる場合に比べて、当該印刷部42をコンパクトに形成できるので好ましい。
【0046】
小切手経路P1の後側経路P12とカード経路100の合流点Mには、ヘッドメンテナンス機構42bに連動して切り替わる経路切替部材200が配置されている。詳細については後述するが、経路切替部材200は、後側経路P12を下流側経路P13(共通経路)に連通させた第1位置と、カード経路100を下流側経路P13(共通経路)に連通させた第2位置に切り替え可能である。本例では、第1位置においては、カード経路100が封鎖され、第2位置においては後側経路P12の下流端が封鎖された状態になる。
【0047】
次に、下流側経路P13(共通経路)には、搬送ローラー対35、36が配置されており、これらの間の搬送路部分には、小切手S1の両面の画像情報を読み取る光学式読取部43が設けられている。光学式読取部43は、小切手S1の裏面読取用の光学スキャナー43aと表面読取用の光学スキャナー43bとを備えており、互いの読取面が下流側経路P13を挟んで向かい合うように設けられている。
【0048】
下流側経路P13の下流端は、磁気情報の読取、裏書き印刷、および画像情報の読取が終了した処理済みの小切手S1を回収ポケット5に排出する小切手排出口5aに繋がっている。回収ポケット5は上方に開口しており、当該回収ポケット5に回収された小切手S1を上方から取り出すことができる。入口ポケット4および回収ポケット5のいずれもが上方に開口しているので、操作者は常に小切手処理装置1の手前上方から小切手S1を扱うことができる。
【0049】
(レシート発行機構)
次に、図5は小切手処理装置1の縦断面図である。この図を主に参照して上側筐体部3の内側筐体部分9に組み込まれているレシート発行機構を説明する。レシート発行機構は先に述べたロール紙Rが収納されるロール紙収納部16を備えている。ロール紙収納部16は、ロール紙Rを装置幅方向に横置き姿勢で転動自在の状態に収納するものである。ロール紙Rから繰り出される連続紙S2をレシート発行口13に導く連続紙搬送路P2は、その搬送路幅方向が装置幅方向を向く状態で、ロール紙収納部16から装置前方に延びている。
【0050】
ロール紙収納部16は、その底面が凹円弧状断面の底板51によって規定されており、その天面開口が後側カバー12によって封鎖されている。後側カバー12の後端部は装置幅方向に延びる回動中心線を中心軸線とするヒンジ52によって支持されており、このヒンジ52を中心として開閉することができる。
【0051】
ロール紙収納部16のロール紙Rから繰り出される連続紙S2は、底板51の装置前側の縁部分に取り付けた紙ガイド53によって前方に案内され、連続紙印刷部54に導かれる。なお、ロール紙収納部16の底部にロール紙Rの回転摩擦抵抗を軽減するために回転自在なガイドローラーを取り付け、この上にロール紙Rを載せるようにしてもよい。
【0052】
連続紙印刷部54は、ライン型のサーマルヘッド54aと、このサーマルヘッド54aのヘッド面に連続紙S2を押し付けながら搬送するプラテンローラー54bとを備えている。本例では、内側筐体部分9の側にサーマルヘッド54aが取り付けられ、プラテンローラー54bは後側カバー12の先端側の部位に搭載されている。
【0053】
連続紙印刷部54の上側にはオートカッター17が配置されている。オートカッター17は固定刃17aと、可動刃17bを備えた駆動ユニット17cからなる。固定刃17aは後側カバー12の側に搭載されており、可動刃17bおよび駆動ユニット17cは内側筐体部分9の側に搭載されている。連続紙S2は、連続紙印刷部54の印刷位置を経由した後にオートカッター17の切断位置を通り、その上側に開口しているレシート発行口13から上方に排出される。
【0054】
(カードスキャン機構)
小切手処理装置1はカード挿入路15から挿入されるカードCの画像情報を読み取るためのカードスキャン機構を備えている。図4を参照して説明すると、カードスキャン機構のカードの搬送経路は、カード挿入路15と下流側経路P13(共通経路)とカード経路100からなる。カード挿入路15には、ここに挿入されたカードCを検出するカードセンサー57が配置されている。カードセンサー57として、ホトカプラーなどの光学式センサー、メカニカルスイッチなどのセンサーを用いることができる。
【0055】
カードセンサー57によってカードCがカード挿入路15に挿入されたことが検出されると、小切手搬送機構の下流側経路P13に配置されている搬送ローラー対35、36が回転して、カード挿入路15から挿入されたカードCを下流側経路P13からカード経路100に送り込むカード送り込み動作と、送り込まれたカードCを装置前方側に送り出してカード挿入路15に戻すカード送り出し動作が行われる。また、カード経路100から下流側経路P13を通ってカード挿入路15に送り出されるカードCの画像を、小切手読取用の光学式読取部43を利用して読み取るカード画像読み取り動作が行われる。
【0056】
(小切手処理装置の制御系および動作)
小切手処理装置1の動作はMPU等の制御部61によって制御される。制御部61は、図4に示すように、下側筐体部2の上面に配置した基板60に搭載されている。単一の制御部61により小切手処理装置1の小切手搬送機構、レシート発行機構およびカードスキャン機構を制御することにより、例えばドライバーのアップデートなどのメンテナンス性が向上する。なお、制御部61は、図4に示すように基板60の上面に設けるほか、基板60の裏面(小切手経路P1が形成される側とは反対側)に、制御基板として取り付けても良い。
【0057】
小切手S1が装置前側から入口ポケット4に挿入されると、制御部61は小切手搬送機構の送り出しモーター22を駆動制御して小切手S1を給紙ローラー30a等により小切手経路P1に送り出す。これに同期させて駆動モーター40を駆動制御してリタードローラー31aと送り出しローラー31bにより小切手S1を一枚ずつ上流側経路P11に沿って搬送する。
【0058】
制御部61は、小切手S1が上流側経路P11を搬送されてくると、まず磁気読取部41を制御して小切手S1の磁気情報を読み取り、読み取られた磁気情報を取得する。次に制御部61は、印刷部42により小切手S1の裏面に裏書き印刷を実行する。また、制御部61は光学式読取部43を制御して小切手S1の両面の画像を読み取り、読み取られた画像情報を取得する。さらに、画像情報が読み取られた小切手S1は搬送ローラー対36により回収ポケット5に排出される。
【0059】
このように、小切手処理装置1の小切手搬送機構によれば、磁気情報の読み取り、裏書き印刷、画像情報の読み取りといった一連の処理を一括して行うことができるので、ユーザーの負担を軽減することができる。
【0060】
また、制御部61はレシート発行機構の送り出しモーター22を制御してプラテンローラー54bを回転駆動し、ロール紙Rから連続紙S2を繰り出して連続紙搬送路P2に沿って送り出す。送り出された連続紙S2はサーマルヘッド54aとプラテンローラー54bの間を通って搬送される間に、制御部61の制御のもとに必要な情報が連続紙S2に印刷される。印刷された連続紙S2は更にプラテンローラー54bによってレシート発行口13から装置外部に排出される。連続紙S2における印刷済の先端部分が排出されて、印刷部分の後端がオートカッター17の切断位置に至ると連続紙S2の搬送が停止され、制御部61によってオートカッター17が駆動されて連続紙S2の印刷部分が幅方向に切断されて切り取られる。切り取られた一定長さの印刷済のシート片がレシートとして発行される。
【0061】
さらに、制御部61はカード挿入路15にカードCが挿入されたことをカードセンサー57からの出力によって検出すると、小切手搬送機構の駆動モーター40を駆動制御して小切手搬送用の搬送ローラー対35、36を駆動して、カード挿入路15に挿入されたカードCを下流側経路P13に送り込むカード送り込み動作を行わせる。カード送り込み動作時にカードCの搬送方向の長さ寸法がカードセンサー57の出力に基づき検出される。
【0062】
カードCの送り込み方向の後端が光学式読取部43の読取位置を通過し終えた時点でカード送り込み動作を終了し、次に、搬送ローラー対35、36を逆方向に回転駆動して、カードCを送り出すカード送り出し動作を開始する。カード送り出し動作において、光学式読取部43を駆動して、その読取位置を通過するカードCの表裏の画像情報の読み取り動作を行わせる。カードCの送り出し方向の後端がカードセンサー57によって検出されると、所定量だけカードCを送り出した後にカード送り出し動作を終了させる。このようにして、カードCの画像情報が読み取られる。
【0063】
ここで、小切手S1を小切手経路P1に沿って搬送する小切手処理動作においては、小切手経路P1の後側経路P12とカード経路100の合流点Mに配置されている経路切替部材200が第1位置に切り替えられ、後側経路P12と下流側経路P13が連通し、カード経路100と下流側経路P13の間は遮断される。逆に、カードCをカード挿入路15に挿入してカードスキャン動作を行う場合には、経路切替部材200が第2位置に切り替わり、カード経路100が下流側経路P13と連通し、後側経路P12と下流側経路P13の間は遮断される。本例では、経路切替部材200の切り替えは、後述のように、ヘッドメンテナンス機構42bのシャッター65の動きに連動して行われる。以下に、印刷部42のヘッドメンテナンス機構42bおよび経路切替部材200の構成および動作を説明する。
【0064】
(ヘッドメンテナンス機構と経路切替部材)
図6は、印刷部42におけるインクジェットヘッド42aおよびヘッドメンテナンス機構42bの周辺部を取り出して示す説明図である。印刷部42のヘッドメンテナンス機構42bは、インクジェットヘッド42aのノズル面42cを封止するノズルキャップ62、ノズルキャップ62が収納されているノズルキャップ収納部63、および、ノズルキャップ62の開口部を封鎖するためのシャッター65を備えている。ノズルキャップ62は、キャッピング駆動機構64によって、ノズルキャップ収納部63に収納された後退位置からキャッピング解除位置を経由して、インクジェットヘッド42aのノズル面42cを封止したキャッピング位置までの間を往復移動する。シャッター65はシャッター駆動機構66によって、ノズルキャップ収納部63の開口部を封鎖する封鎖位置(ノズルキャップ62の開口部を封鎖する封鎖位置)から、当該開口部から離れた封鎖解除位置(ノズルキャップ62の開口部から離れた封鎖解除位置)までの間を往復移動する。これらキャッピング駆動機構64およびシャッター駆動機構66によるノズルキャップ62、シャッター65の移動は制御部61によって制御される。
【0065】
図7はシャッター65が封鎖解除位置65Bにあるときのヘッドメンテナンス機構42bおよび経路切替部材200を示す説明図であり、図8はシャッター65が封鎖位置65Aにあるときのヘッドメンテナンス機構42bおよび経路切替部材200を示す説明図である。また、図9はインクジェットヘッド42aのノズル面42cがノズルキャップ62によってキャッピングされて経路切替部材200が第2位置200Bに切り替わっている状態を示す概略構成図であり、図10はノズルキャップ62が後退位置にある状態を示す概略構成図であり、図11は封鎖位置65Aに移動したシャッター65によってノズルキャップ62が封鎖されて経路切替部材200が第1位置200Aに切り替わっている状態を示す概略構成図である。
【0066】
これらの図を参照して説明すると、インクジェットヘッド42aは、そのノズル面42cが小切手経路P1の後側経路P12上を搬送される小切手S1の印刷面と対向するように配置されている。インクジェットヘッド42aはライン型のインクジェットヘッドであり、与えられる印刷データに基づいてノズル面42cに形成されている複数のノズルから小切手S1の印刷面にインク液滴を吐出することにより、当該印刷面に印刷を行う。
【0067】
ノズルキャップ62は、その開口部62Bがインクジェットヘッド42aのノズル面42cに対向する状態でノズルキャップ収納部63内に配置されている。ノズルキャップ収納部63は後側経路P12の側に開口部63Aを備えており、ここを介して、ノズルキャップ62がノズル面42cに接近する方向に突出してノズル面42cのキャッピングを行う。すなわち、ノズルキャップ62は、キャッピング駆動機構64による駆動力によって、開口部62Bがインクジェットヘッド42aのノズル面42cから離れる方向およびノズル面42cに近づく方向に移動可能である。ノズルキャップ収納部63の開口部63Aは、小切手搬送用の後側経路P12におけるインクジェットヘッド42aのノズル面42cに対峙している部分はガイド開口部68Aとなっており、ここにノズルキャップ収納部63の開口部63Aが位置している。ガイド開口部68Aの上流側には後側経路P12の一方のガイド面を規定しているガイド部材68が配置されており、その下流側にはシャッター65および経路切替部材200が配置されている。
【0068】
ノズルキャップ62は、小切手処理装置1が電源オフの状態にあるとき、あるいは、電源が投入されてからも印刷部42による印刷動作が開始されるまでは、図9に示すキャッピング位置にある。この状態では、インクジェットヘッド42aのノズル面42cはノズルキャップ62によって封止されて保湿状態に維持されている。
【0069】
印刷部42による印刷動作が開始されると、ノズルキャップ62は、キャッピング位置から図10に示す後退位置まで後退する。しかる後に、図11に示すように、封鎖解除位置65Bに待機しているシャッター65が、ガイド開口部68Aを封鎖する位置、すなわち、ノズルキャップ収納部63の開口部63Aを封鎖する封鎖位置65Aまでスライドする。次に、ノズルキャップ62が当該シャッター65の背面に当接するキャッピング解除位置まで前進する。これにより、ノズルキャップ62が封鎖された状態になる。
【0070】
ここで、シャッター65が封鎖解除位置65Bから封鎖位置65Aにスライドすると、このスライドに連動して、図10に示すように第2位置200Bに待機していた経路切替部材200が、図11に示すように第1位置200Aに切り替わる。この結果、後側経路P12が下流側経路P13に連通して小切手S1の搬送経路が形成される。また、インクジェットヘッド42aのノズル面42cに対峙しているシャッター65のシャッター表面65aは小切手S1のプラテン面(ガイド面)として機能し、経路切替部材200における後側経路P12に面している小切手ガイド面201(第1表面)がシャッター65のシャッター表面65aに滑らかに連続すると共に、下流側経路P13における同一側のガイド面69aに滑らかに連続した状態になる。
【0071】
印刷部42が小切手S1の印刷を終了した後に次の小切手S1が搬送されるのを待つ休止状態で一定時間が経過したとき、あるいは、電源オフなどにより小切手処理装置1の動作が停止したときには、ノズルキャップ62は、再び図9に示すキャッピング位置に移動して、インクジェットヘッド42aのノズル面42cをキャッピングする。この場合においては、シャッター65が封鎖位置65Aから封鎖解除位置65Bに移動する。シャッター65が移動すると、これに連動して経路切替部材200が第1位置200Aから第2位置200Bに切り替わり、後側経路P12と下流側経路P13の間が遮断され、代わりに、カード経路100と下流側経路P13が連通して、カードCのスキャン用の経路が形成された状態になり、カードCのスキャンが可能になる。この状態では、図9から分かるように、経路切替部材200におけるカード経路100の側に形成されているカードガイド面202が、下流側経路P13における同一側のガイド面69bに滑らかに連続した状態になる。
【0072】
このように、小切手S1の印刷中にはノズルキャップ62の開口部62Bがシャッター65によって封鎖されているので、ノズルキャップ62の内部はシャッター65によって外部空間から遮蔽される。すなわち、シャッター65はノズルキャップ62の開口部62Bを封鎖して、その内部を保湿状態に維持するためのキャップカバーとして機能する。
【0073】
また、シャッター65は、図11に示すように、小切手S1の搬送時(あるいは逆搬送時)には、その封鎖位置65Aにおいて、ノズル面42cに対峙しているガイド開口部68Aとノズルキャップ収納部63の開口部63Aを遮蔽する遮蔽部材として機能する。同時に、そのシャッター表面65aが、小切手S1の印刷位置を規定するガイド面(プラテン面)としても機能する。よって、紙詰まり等が発生しにくく、円滑な搬送が可能となる。
【0074】
なお、シャッター65を、ノズルキャップ62に接近する方向に移動して、ノズルキャップ62の開口縁62Aに当接させて、当該ノズルキャップ62の封鎖状態を形成することも可能である。
【0075】
次に、図12は、制御部61の制御の下に行われるヘッドメンテナンス機構42bのノズルキャップ62およびシャッター65の動作と、経路切替部材200の動作とを中心に示す印刷動作のフローチャートである。印刷開始前においては、各部は図9に示す状態にある。印刷開始とともに、キャッピング駆動機構64によってノズルキャップ62が図9に示すキャッピング位置から図10に示す後退位置まで移動する(ステップST1)。
【0076】
シャッター駆動機構66によりシャッター65が図10に示す封鎖解除位置65Bから図11に示す封鎖位置65Aまでスライドする(ステップST2)。また、シャッター65のスライドに連動して経路切替部材200が第2位置200Bから図11に示す第1位置200Aに切り替わる。この結果、後側経路P12と下流側経路P13が連通して小切手の搬送経路が形成される。この後は、後退位置にあるノズルキャップ62が、キャッピング駆動機構64によって、シャッター65の背面に当接する位置まで移動する(ステップST3)。この状態で、小切手S1の印刷が開始される(ステップST4)。
【0077】
小切手S1の印刷が終了すると(ステップST5)、制御部61は、印刷終了からの時間をカウントする(ステップST6)。カウント時間が予め設定した時間に達する前に再び印刷が始まると(ステップST7:YES)、カウント時間はリセットされて再び小切手S1の印刷が開始される(ステップST4)。
【0078】
カウント時間が予め設定した時間に達すると(ステップST7:NO)、ノズルキャップ62がキャッピング駆動機構64によってシャッター65の背面に当接している位置(図11)から後退位置(図10)まで移動し(ステップST8)、シャッター駆動機構66によりシャッター65が封鎖位置65A(図11)から封鎖解除位置65B(図10)までスライドする(ステップST9)。また、シャッター65に連動して、経路切替部材200が第1位置200A(図11)から第2位置200B(図10)に切り替わる。この結果、後側経路P12と下流側経路P13の間が遮断され、代わりに、カード経路100が下流側経路P13に連通して、カードCの搬送経路が形成される。この後は、キャッピング駆動機構64がノズルキャップ62を後退位置からキャッピング位置まで前進させることにより、ノズル面42cがノズルキャップ62によって封止される(ステップST10)。
【0079】
(キャッピング駆動機構およびシャッター駆動機構の例)
図13はノズルキャップ62およびシャッター65を駆動する駆動制御機構の一例を示す概略構成図であり、ノズルキャップ62がキャッピング位置にあり、シャッター65が封鎖解除位置にある状態を示してある。図14は、図13に示す駆動制御機構を小切手搬送路である後側経路P12の反対側から見た場合の概略構成図である。駆動制御機構70はキャッピング駆動機構64Aとシャッター駆動機構66Aを有している。キャッピング駆動機構64Aは、駆動モーター71(キャップモーター)と、駆動モーター71の出力回転をノズルキャップ62の後退位置からキャッピング位置までの間の直線往復運動に変換する円筒カム72を備えている。シャッター駆動機構66Aは、円筒カム72の回転をシャッター65の封鎖位置から封鎖解除位置までの間の直線往復運動に変換する間欠歯車73およびラック・ピニオン74を備えている。
【0080】
制御部61の制御の下に、駆動制御機構70は、ノズルキャップ62によるノズルキャッピング動作、シャッター65によるノズルキャップ収納部63の開口部63Aの遮蔽動作、および、シャッター65によるノズルキャップ封鎖動作を次のように行う。まず、ノズルキャップ62がキャッピング位置にある状態、および、ノズルキャップ62がキャッピング位置から後退位置に移動するまでの間は、シャッター65を封鎖解除位置に保持する。また、ノズルキャップ62が後退位置に戻るとシャッター65を封鎖解除位置から封鎖位置に移動して、ノズルキャップ収納部63の開口部63Aを封鎖する。さらに、シャッター65が封鎖位置にある状態では、ノズルキャップ62をシャッター65の背面に当接する位置まで前進させてノズルキャップ62の封鎖状態を形成する。
【0081】
詳細に説明すると、キャッピング駆動機構64Aは、駆動モーター71(キャップモーター)の出力回転を減速して円筒カム72に伝達する減速歯車列75を備えている。円筒カム72は、外周面に沿って円周方向にカム溝76が形成されている水平に配置された円筒部77と、この円筒部77の一方の端に同軸状態に一体形成した大径の間欠歯車73aと、円筒部77の他方の端に同軸状態に一体形成した小径の間欠歯車73bとを備えている。間欠歯車73a、73bは、所定の角度範囲に亘って外歯が形成されていない外歯欠如部分を備えた歯車である。
【0082】
円筒カム72のカム溝76には、下側から垂直に延びているカムフォロワーとしての垂直ピン78がスライド可能な状態で挿入されている。垂直ピン78は、ノズルキャップ62の上端面に一体形成されており、ノズルキャップ62は、不図示のノズルキャップ収納部63によって、円筒カム72の中心軸線の方向に往復直線移動可能な状態で支持されている。円筒カム72が回転すると、そのカム溝76に挿入されている垂直ピン78は円筒カム72の中心軸線の方向に移動し、垂直ピン78が取り付けられているノズルキャップ62も同一方向に移動する。ノズルキャップ62が、ノズルキャップ収納部63に収納されている後退位置からキャッピング位置までの間を移動するように、円筒カム72のカム溝76が形成されている。
【0083】
一方、シャッター駆動機構66Aは、円筒カム72の小径の間欠歯車73bに噛み合っている伝達歯車列80を備えている。伝達歯車列80の最終段歯車81には駆動側傘歯車82が同軸状態に取り付けられており、駆動側傘歯車82には、垂直軸線回りに回転する従動側傘歯車83が噛み合っている。従動側傘歯車83が上端に取り付けられている垂直軸84は、シャッター65の背面に沿って垂直に延びている。この垂直軸84の上下の部位には一対のピニオン74aが同軸状態に取り付けられている。これらのピニオン74aはシャッター65の背面に形成されている一対のラック74bに噛み合っている。
【0084】
円筒カム72が回転してノズルキャップ62が移動すると、これに所定の同期をとってピニオン74aが所定の方向に回転し、これに噛み合っているラック74bが小切手搬送用の後側経路P12に沿った方向に直線往復移動し、ラック74bが形成されているシャッター65がノズルキャップ収納部63の開口部63Aを遮蔽した封鎖位置から封鎖解除位置までの間を直線往復移動する。
【0085】
図15は円筒カム72のカム溝76を規定しているカム面76Aを示す斜視図であり、図16は円筒カム72の回転角に対するノズルキャップ62の位置(キャッピング位置)およびシャッター65の位置(シャッターストローク)を示す円筒カム線図である。本例の駆動制御機構70では、円筒カム72の位相(回転角)により、ノズルキャップ62およびシャッター65の位置が決まるようになっている。また、本例では、円筒カム72が原点位置(回転角0°)から時計方向(CW)に50°回転した位置が待機位置であり、297°回転した位置が印刷実行位置である。
【0086】
待機位置では、ノズルキャップ62がインクジェットヘッド42aのノズル面42cを覆っているキャッピング位置にあり、シャッター65が封鎖解除位置にある。印刷実行位置では、シャッター65が封鎖位置にあり、このシャッター65の背面にノズルキャップ62が当接した封鎖位置にある。なお、図16においては、ノズルキャップ62の位置を、後退位置を「0:オープン」、キャッピング位置を「9:クローズ」として示してある。また、シャッター65の位置を、非封鎖位置から封鎖方向へのストローク量(mm)で示してあり、封鎖解除位置をストローク量が「0」のシャッター開ポジションとして示し、封鎖位置をシャッター閉ポジションとして示してある。
【0087】
図17は印刷開始後の各部の動作を示す概略フローチャートである。また、図18は円筒カム72が50°の位置にある状態を示す説明図であり、図19は円筒カム72が160°の位置にある状態を示す説明図であり、図20は円筒カム72が297°の位置にある状態を示す説明図である。
【0088】
図17のフローチャートに従って各部の動作を説明する。印刷開始前の待機状態においては、円筒カム72が50°の待機位置にあり(図18参照)、ノズルキャップ62によってインクジェットヘッド42aのノズル面42cがキャッピングされており(キャップクローズポジション)、シャッター65が封鎖解除位置にある(シャッター開ポジション)。
【0089】
印刷動作の開始指令を受けると、例えば、制御部61(図9〜図11参照)が上位のコンピューターから印刷開始指令を受けると、動作1が開始する。動作1では、図16から分かるように、例えば駆動モーター71が時計方向(CW)に回転駆動して、円筒カム72が50°から95°まで回転し、この間に、ノズルキャップ62がキャッピング位置から後退位置に向けて所定量後退し、シャッター65は封鎖解除位置(シャッター開ポジション)に保持される。
【0090】
円筒カム72が95°の回転位置に至ると動作2が開始され、円筒カム72が160°の位置まで回転する間にフラッシングが行われる。フラッシングは、インクジェットヘッド42aの各ノズルからインク液滴をノズルキャップ62に向けて吐出しノズル内の増粘したインクを排出する動作であり、これによって不良状態にあるノズルを回復させる。円筒カム72が160°の位置に至ると、ノズルキャップ62が後退位置に至る(キャップ開ポジション、図19参照)。
【0091】
円筒カム72が160°の回転位置に至った後は動作3が開始される。動作3においては円筒カム72が160°の位置から297°の位置に向けて回転する。動作3において、ノズルキャップ62は後退位置に保持される。シャッター65は封鎖解除位置から封鎖位置に向けてスライドし、円筒カム72が275°の回転位置に至ると、ノズルキャップ収納部63の開口部63Aを完全に遮蔽した遮蔽位置に至る。また、その手前の円筒カム72が260°の回転位置を通過した時点から、後退位置にあるノズルキャップ62が前進して封鎖位置にあるシャッター65の背面に当接したノズルキャップ62の封鎖状態が形成される(キャップ当接ポジション、図20参照)。
【0092】
円筒カム72が297°の回転位置に至った後は、動作4が開始される。すなわち、印刷動作が実行され、印刷位置を通過する小切手S1の裏面にインクジェットヘッド42aによって裏書印刷が行われる。
【0093】
印刷が終了した後は動作5が開始される。動作5では、例えば駆動モーター71(キャップモーター)が反時計方向(CCW)に回転され、円筒カム72が待機位置である50°の回転位置まで戻る。これにより、まず、ノズルキャップ62がシャッター65の背面に当接している位置から後退位置に向けて後退する。次に、シャッター65が封鎖位置から封鎖解除位置に向けてスライドを開始する。シャッター65が封鎖解除位置にスライドした後に、ノズルキャップ62が後退位置から、ノズルキャップ収納部63の開口部63Aを通って、キャッピング位置に向けて前進して、インクジェットヘッド42aのノズル面42cを封止した状態に戻る(図18参照)。
【0094】
このように本例の駆動制御機構70では、単一の駆動モーター71(キャップモーター)によって、間欠歯車73および円筒カム72を回転させ、ノズルキャップ62およびシャッター65を所定の同期をとって動作させることができる。よって、キャッピング駆動機構64およびシャッター駆動機構66をコンパクトに構成できる。
【0095】
(シャッター65と経路切替部材200の連動機構の例)
図21は、シャッター65のスライドに連動させて経路切替部材200を第1位置200Aおよび第2位置200Bに切り替えるための連動機構の一例を示す説明図である。シャッター65に連動させて経路切替部材200の位置を切り替える連動機構としては各種の構造を採用することができ、以下に述べる構造に限定されるものではない。
【0096】
図21に示す例では、経路切替部材200はプラスチック成形品からなり、予め定めた旋回軸203を中心として旋回して、第1位置200Aおよび第2位置200Bに切り替わる。経路切替部材200には、旋回軸203から半径方向に離れた位置に、当該旋回軸203と平行に延びるカムピン204が一体成形されている。
【0097】
経路切替部材200とシャッター65の間には旋回部材91が配置されている。旋回部材91には、旋回軸203と平行に延びる旋回軸部92が形成されており、当該旋回軸部92を中心として旋回可能である。旋回軸部92には、そこから半径方向に突出した旋回腕93が一体形成されており、当該旋回腕93における旋回中心線92aに沿った方向(図示の例では上方)を向いている表面にカム溝94が形成されている。このカム溝94には、経路切替部材200の側に形成されているカムピン204の先端部がスライド可能な状態で差しこまれている。
【0098】
ここで、旋回部材91の旋回軸部92には捩りコイルバネ95が取り付けられており、当該捩りコイルバネ95のバネ力によって旋回部材91の旋回腕93の側面93aが常にシャッター65に当接した状態に保持されている。すなわち、シャッター65に対して封鎖解除位置65Bから封鎖位置65Aに向かうバネ力によって、旋回部材91の旋回腕93の側面93aが常に押し付けられている。
【0099】
シャッター65が図21に示す封鎖位置から矢印96で示す封鎖解除位置に向かう方向にスライドすると、シャッター65のスライド方向の先端部65bによって旋回部材91がバネ力に逆らって同一方向に旋回する。旋回部材91が旋回すると、そのカム溝94を規定している溝内周面に形成したカム面94aによってカムピン204が押され、当該カムピン204がカム面94aに沿って移動する。この結果、カムピン204が一体形成されている経路切替部材200が旋回軸203を中心として、図21に示す第1位置200Aから第2位置200Bに向けて旋回する。シャッター65が封鎖解除位置65Bに移動すると、経路切替部材200が第2位置200Bに位置決めされる。
【0100】
次に、捩りコイルバネ95のバネ力によって旋回部材91はシャッター65に押し付けられている。また、カムピン204とカム溝94からなるカム機構を介して、旋回部材91は経路切替部材200に連結されている。したがって、シャッター65が封鎖解除位置65Bから図21に示す封鎖位置にスライドすると、これに追従して、バネ力によって旋回部材91がスライド方向に旋回する。この結果、旋回部材91のカム面94aによって経路切替部材200のカムピン204が押され、当該経路切替部材200が第2位置200Bから図21に示す第1位置200Aに旋回して、当該第1位置200Aに切り替わる。
【符号の説明】
【0101】
S1・・小切手、S2・・連続紙、R・・ロール紙、P1・・小切手経路、P11・・上流側経路、P12・・後側経路、P13・・下流側経路、P2・・連続紙搬送路、C・・カード、X・・装置幅方向、Y・・装置前後方向、Z・・装置上下方向、1・・小切手処理装置、1a・・装置筐体、2・・下側筐体部、3・・上側筐体部、4・・入口ポケット、4a・・小切手挿入口、5・・回収ポケット、5a・・小切手排出口、6・・右側筐体部分、7・・後側筐体部分、8・・左側筐体部分、9・・内側筐体部分、11・・前側カバー、12・・後側カバー、13・・レシート発行口、14・・操作面、14a・・操作スイッチ、14b・・LED表示部、15・・カード挿入路、16・・ロール紙収納部、17・・オートカッター、17a・・固定刃、17b・・可動刃、17c・・駆動ユニット、18・・インクカートリッジ装着部、19・・インクカートリッジ、20・・装置上面部分、21・・カードスロット、22・・送り出しモーター、30a・・給紙ローラー、30b・・押圧部材、31a・・リタードローラー、31b・・送り出しローラー、32,33,34,35,36・・搬送ローラー対、32a,33a,34a,35a,36a・・駆動ローラー、32b,33b,34b,35b,36b・・従動ローラー、37・・無端ベルト、40・・駆動モーター、41・・磁気読取部、41a・・磁気スキャナー、41b・・押し付けローラー、42・・印刷部、42a・・インクジェットヘッド、42b・・ヘッドメンテナンス機構、42c・・ノズル面、43・・光学式読取部、43a,43b・・光学スキャナー、51・・底板、52・・ヒンジ、53・・紙ガイド、54・・連続紙印刷部、54a・・サーマルヘッド、54b・・プラテンローラー、57・・カードセンサー、60・・基板、61・・制御部、62・・ノズルキャップ、62A・・開口縁、62B・・開口部、63・・ノズルキャップ収納部、63A・・開口部、64,64A・・キャッピング駆動機構、65・・シャッター、65A・・封鎖位置、65B・・封鎖解除位置、65a・・シャッター表面、65b・・先端部、66,66A・・シャッター駆動機構、68・・ガイド部材、69a,69b・・ガイド面、70・・駆動制御機構、71・・駆動モーター、72・・円筒カム、73,73a,73b・・間欠歯車、74・・ラック・ピニオン、74a・・ピニオン、74b・・ラック、75・・減速歯車列、76・・カム溝、77・・円筒部、78・・垂直ピン、80・・伝達歯車列、81・・最終段歯車、82・・駆動側傘歯車、83・・従動側傘歯車、84・・垂直軸、91・・旋回部材、92・・旋回軸部、92a・・旋回中心線、93・・旋回腕、93a・・側面、94・・カム溝、94a・・カム面、95・・捩りコイルバネ、100・・カード経路、200・・経路切替部材、200A・・第1位置、200B・・第2位置、201・・小切手ガイド面、202・・カードガイド面、203・・旋回軸、204・・カムピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1媒体を搬送するための第1経路と、
第2媒体を搬送するための第2経路と、
前記第1経路および前記第2経路の合流点から延びている前記第1媒体および前記第2媒体を搬送するための共通経路と、
前記共通経路を通過する前記第1媒体あるいは前記第2媒体の画像を読み取るスキャナーと、
前記第1経路を通過する前記第1媒体に印刷を行うインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドのノズル面に被せて当該ノズル面を保湿状態に維持するキャッピング位置、および、前記ノズル面から離れたキャッピング解除位置に移動可能なノズルキャップと、
前記キャッピング解除位置にある前記ノズルキャップの開口部を封鎖して当該ノズルキャップの内部を保湿状態に維持する封鎖位置、および、前記開口部から離れた封鎖解除位置に移動可能なシャッターと、
前記合流点において、前記第1経路を前記共通経路に連通させる第1位置、および、前記第2経路を前記共通経路に連通させる第2位置に切り替え可能な経路切替部材とを有し、
前記経路切替部材は、前記シャッターの前記封鎖位置から前記封鎖解除位置への移動に連動して前記第1位置から前記第2位置に切り替わり、前記シャッターの前記封鎖解除位置から前記封鎖位置への移動に連動して前記第2位置から前記第1位置に切り替わることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ノズルキャップは、前記第1経路を挟み前記インクジェットヘッドの前記ノズル面に対峙している前記キャッピング解除位置から、前記第1経路を横切って前記ノズル面の側に前進して当該ノズル面に被せた前記キャッピング位置までの間を移動可能であり、
前記シャッターは、前記第1経路に沿って、前記キャッピング解除位置にある前記ノズルキャップの前記開口部を封鎖する前記封鎖位置から前記封鎖解除位置までの間を移動可能であり、
前記経路切替部材は、前記シャッターに対して前記第1経路に沿った方向において隣接配置されていることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記インクジェットヘッドに対して前記第1経路を挟み対向配置されている媒体ガイドと、
前記ノズルキャップを前記インクジェットヘッドの前記ノズル面に対して進退させるために、前記媒体ガイドに形成されている媒体ガイド開口部とを有し、
前記シャッターは前記封鎖位置において前記媒体ガイド開口部を遮蔽すると共に、当該シャッターの前記第1経路に面する側のシャッター表面は前記封鎖位置において前記第1媒体をガイドする媒体ガイド面として機能し、
前記経路切替部材における前記第1経路に面する側の第1表面は、前記第1位置において、前記シャッター表面と前記共通経路における当該シャッター表面と同一の側に位置する共通経路ガイド面の間を繋ぐ媒体ガイド面として機能し、
前記経路切替部材における前記第2経路に面する側の第2表面は、前記第2位置において、前記第2経路における前記第2表面と同一の側の第2経路ガイド面と前記共通経路における当該第2経路ガイド面と同一の側に位置する共通経路ガイド面の間を繋ぐ媒体ガイド面として機能することを特徴とする媒体処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記ノズルキャップは、前記第1経路に対して前記キャッピング解除位置よりも離れた後退位置から、当該キャッピング解除位置を経由して前記キャッピング位置までの間を往復移動可能であり、
前記封鎖位置にある前記シャッターに対して、前記ノズルキャップが前記後退位置から前記キャッピング解除位置まで移動すると、当該ノズルキャップが前記シャッターに当接して、当該ノズルキャップの前記開口部が封鎖された状態が形成され、
前記ノズルキャップが前記キャッピング位置にある状態、および、前記ノズルキャップが前記キャッピング位置から前記後退位置に移動するまでの間は、前記シャッターは前記封鎖解除位置に保持され、前記ノズルキャップが前記後退位置に戻ると前記シャッターは前記封鎖解除位置から前記封鎖位置に移動し、前記シャッターが前記封鎖位置に移動した後に、前記ノズルキャップは前記後退位置から前記キャッピング解除位置に前進して当該ノズルキャップの前記開口が封鎖されることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記経路切替部材は、予め定めた旋回中心線回りに旋回して、前記第1位置および前記第2位置に切り替え可能であり、
前記シャッターの前記封鎖位置から前記封鎖解除位置までの間の直線往復運動を、前記経路切替部材の前記第1位置から前記第2位置までの間の旋回運動に変換するカム機構を有していることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項において、
前記第1経路を搬送される前記第1媒体の磁気情報を読み取る磁気読取部を有しており、
前記第1経路は小切手経路であり、
前記第2経路はカード経路であることを特徴とする媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−56491(P2013−56491A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196893(P2011−196893)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】