説明

媒体印字装置

【課題】印字媒体の搬入・搬出時の斜行を防止可能な媒体印字装置を得る。
【解決手段】媒体印字装置1は、通帳12に印字処理を行う印字部23と、通帳12が有する磁気記録部16に記録された磁気データの読み取り・書き込みを行う磁気ヘッド31と、通帳12を挟持して搬送可能に対向配置された一対の駆動ローラ21a及びピンチローラ21bと、駆動ローラ21aが固定されたシャフト34と、このシャフト34に一体固定され、磁気ヘッド31に対向して配置された磁気ヘッド押えローラ32とを有し、磁気ヘッド31と通帳12の磁気記録部16を密着させ、通帳12を搬送しながら通帳12が有する磁気記録部16に記録された磁気データを、読み取り又は、書き込みを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気データの読取部及び書込部を備えた媒体印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば銀行等の金融機関に預けてある預貯金の出し入れには、郵便局や銀行内に設置されているATM(現金自動預け入れ払い機)のカード挿入口にカードを挿入し、さらに通帳挿入口に通帳を挿入して、預貯金の出し入れを行い、通帳に残高を記録していた。
【0003】
通常、カード及び通帳の裏面には、帯状の磁気部が設けられており、この磁気部には例えば口座番号等のIDや、通帳の場合は印字行最終位置などを示すデータが記録されている。
【0004】
この通帳を挿入すると、ATM内部では、先ず通帳を内部に搬送し、磁気ヘッドが通帳の磁気部に当接して、磁気部の記録を読み取り、IDや印字行最終位置を確認する。
次いで、印字ヘッドが通帳への印字を開始するが、このとき、プラテンと印字ヘッドが相対的に密着方向に移動して通帳の印字行部分を挟持する。
【0005】
磁気ヘッドにも、プラテンと同様な機能を有する磁気ヘッド押え部材が設けられており、磁気ヘッドが通帳の磁気部の記録を読取り又は書き込むときは、磁気ヘッドと磁気ヘッド押さえ部材が相対的に密着方向に移動して通帳の磁気部を挟持する。
【0006】
ところで、例えば、図9に示すように、通帳112の磁気部116の読取り又は書き込み時に、通帳112に加わる力は、ローラ121による搬送力uと磁気ヘッド131の摩擦負荷vである。搬送力uと摩擦負荷vは逆方向の力となるので、通帳112には矢印E方向の回転モーメントが発生する。
【0007】
この場合、装置の突き当て面175があるために、通帳112はA点を回転支点として回転を行うが、回転モーメントを発生させる駆動ローラ121’と通帳112の回転支点(A点)までの距離が離れているため、斜行の発生は抑制される。
【0008】
一方、図10に示すように、通帳112の搬出方向での磁気処理(書き込み処理)では、通帳112に矢印F方向の回転モーメントを発生させる駆動ローラ121’と通帳112の回転支点(B点)が近距離にあるため、通帳112が回転しやすい状態となり、斜行(破線参照)が発生する。
【0009】
これに対し、例えば、特許文献1には、磁気ヘッドに対向して押圧ローラが圧接するごとく配置されていて、この磁気ヘッドと押圧ローラ間に通帳を挟持して搬送する技術が開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、固定配置された磁気ヘッドに対向して、回転駆動されるプラテンローラが配置されていて、この磁気ヘッドとプラテンローラとの間に磁気カードを挟持して搬送する旨が開示されている。
【0011】
さらに、特許文献3には、磁気ヘッドに対向して駆動ローラを配置し、磁気カードを挟持して搬送する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公平4−42302号公報(特開昭63−106255公報)
【特許文献2】特開平4−84291号公報
【特許文献3】特開昭60−121569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1では、押圧ローラはピンチローラとは別体であり、押圧ローラは回転しない。このため、押圧ローラは通帳を積極的に搬送する機能を有していない。また、この特許文献1では、搬送時に通帳幅のガイドを使用して通帳の斜行を防止している。このため、通帳専用の装置であれば問題はないが、通帳よりも幅の広い用紙等の記録媒体を扱う場合には、ガイドが使用できないため斜行が発生するおそれがある。さらに、ガイドを設けること自体、製造コストのアップにつながる。
【0014】
また、特許文献2では、磁気ヘッドが固定配置されているため、この磁気ヘッドとプラテンローラとの間に搬入される磁気カードの挟持力は、磁気カードの厚みによって変化してしまう。この場合、磁気カードのみを対象とする場合はよいが、通帳等をも対象とする場合には、搬送位置によって搬送速度も変化する。このため、磁気ヘッドによる読取り又は書き込みが不安定となる。
【0015】
さらに、特許文献3では、磁気ヘッドを常にコイルバネにより所定圧で媒体側に付勢しているが、これでは、磁気カードのように剛性が高くかつ横幅が狭い媒体を対象とする場合はよいが、通帳等のように撓みやすい媒体を対象とするときは、媒体搬送時に斜行の問題が発生する。また、特許文献3では、斜行防止に関しては全く言及されていない。
【0016】
本発明は、斯かる課題を解決するためになされたもので、印字媒体の搬入・搬出時の斜行を防止可能な媒体印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の媒体印字装置は、
印字媒体に印字処理を行う印字部と、
前記印字媒体が有する磁気記録部に記録された磁気データの読み取り及び、書き込みを行う磁気ヘッドと、
前記印字媒体を挟持して搬送可能に対向配置された少なくとも一対の第1の駆動ローラ及び第1の従動ローラと、
前記第1の駆動ローラが固定されたシャフトと、
前記シャフトに一体固定され、前記磁気ヘッドに対向して配置された第2の駆動ローラと、を有し、
前記磁気ヘッドと前記印字媒体の磁気記録部を密着させ、前記印字媒体を搬送しながら前記印字媒体が有する磁気記録部に記録された磁気データを、読み取りまたは、書き込みを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、通帳などの印字媒体の搬入・搬出時の斜行を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】媒体印字装置の内部の主要部の構成を示す図である。
【図2A】印字媒体の見開き状態の印字面を示す図である。
【図2B】印字媒体の見開き状態の側面を示す図である。
【図2C】印字媒体の見開き状態の背面を示す図である。
【図3】印字部、プラテン、磁気読み取り・書き込み装置を取り出して示す斜視図である。
【図4A】図3を矢印e方向に見た図である。
【図4B】図3を矢印b方向に見た図である。
【図5A】図3を矢印e方向に見た図である。
【図5B】図3を矢印b方向に見た図である。
【図6】本実施の形態のフローチャートを示す図である。
【図7A】本実施の形態の動作状態の説明図である。
【図7B】本実施の形態の動作状態の説明図である。
【図7C】本実施の形態の動作状態の説明図である。
【図7D】本実施の形態の動作状態の説明図である。
【図8】斜行発生を抑制する説明図である。
【図9】従来の斜行発生原因の説明図である。
【図10】従来の斜行発生原因の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、媒体印字装置の内部の主要部の構成を示す図である。また、図2Aは、印字媒体(通帳)の見開き状態の印字面を示す図、図2Bは、印字媒体の見開き状態の側面を示す図、図2Cは、印字媒体の見開き状態の背面を示す図である。
【0021】
この媒体印字装置1は、図1に示すように、斜め下方に急傾斜する前面9と、その下方にほぼ水平な案内面10を有している。この前面9の下端部と案内面10との間には、印字媒体としての通帳12の搬入/搬出口11が形成されている。
【0022】
この通帳12は、例えば銀行等の預金通帳であり、案内面10により案内され、搬入/搬出口11から筐体3の内部に搬入され、また、媒体処理後は筐体3から外部に搬出される。
【0023】
また、筐体3の背面に、通帳12の搬入位置が最大移動位置となったときの搬送前端部の逃げ部となる搬送逃げ口17を備えている。そして、搬入/搬出口11と搬送逃げ口17との間に、通帳12の搬送を案内する上下二枚の板からなる前部案内部18と後部案内部19を備えている。
【0024】
搬入/搬出口11の内側近傍には、第1の駆動ローラ及び第1の従動ローラとしての駆動ローラ21a、21a’及びピンチローラ21bの複数対(本実施の形態では5対、図7A参照)からなる前部搬送ローラ部21が配設されている。なお、駆動ローラ21a’は、軸方向の端部に位置するローラである。駆動ローラ21a、21a’とピンチローラ21bは、同一径の円柱状の弾性体からなる。この前部搬送ローラ部21は、前部案内部18を上下に一部突き抜けて配置されており、搬入/搬出口11から、挿入される通帳12を挟持して搬送する。
【0025】
また、この前部搬送ローラ部21は、駆動ローラ21a、21a’の駆動軸としてのシャフト34と同軸状に一体固定された第2の駆動ローラとしての磁気ヘッド押えローラ32を有している。この磁気ヘッド押えローラ32は、後述する磁気ヘッド31に対向して配置されている。そして、この磁気ヘッド押えローラ32と磁気ヘッド31との間に通帳12が挟持される。
【0026】
また、この前部搬送ローラ部21よりも搬送逃げ口17に近い位置に、駆動ローラ22aとピンチローラ22bの対からなる後部搬送ローラ部22が配設されている。
この後部搬送ローラ部22は、後部案内部19を上下に一部突き抜けて配置されており、前部搬送ローラ部21と協働して通帳12を挟持して搬送する。
【0027】
この前部搬送ローラ部21及び後部搬送ローラ部22は、装置の前方内部に配置されたステッピングモータ20により、ギアやベルト等の駆動系を介して回転駆動される。
前部案内部18と後部案内部19の間には、印字部23が配置されている。この印字部23は、印字ヘッド24、印字ヘッド24を保持するキャリッジ25、キャリッジ25を摺動自在に保持するボールネジ26等からなる。
【0028】
ボールネジ26は、印字部23よりも紙面奥行き方向の一端に配置されたステッピングモータ27により不図示の駆動系を介して回転駆動される。これにより、キャリッジ25は紙面奥行き方向に往復移動する。
【0029】
また、前部案内部18と後部案内部19で形成される通帳12の搬送路を挟み、印字部23の印字ヘッド24と対向して、プラテン29が、紙面奥行き方向に延設されている。
プラテン29は、不図示の駆動系により印字ヘッド24に対し密着方向と乖離方向とに駆動されて上下方向に移動する。
【0030】
また、前部搬送ローラ部21の軸線に沿う所定の位置に、磁気読み取り・書き込み装置30が配置されている。
この磁気読み取り・書き込み装置30は、磁気ヘッド31と、磁気ヘッド押えローラ32と、印字ヘッド24に対して、密着方向または乖離方向に移動するプラテン29の移動に連動して磁気ヘッド31を磁気ヘッド押えローラ32に対し乖離方向又は密着方向に移動させる連動機構33とを備えている。
【0031】
磁気ヘッド押えローラ32は、駆動ローラ21a、21a’と共通のシャフト34に一体固定されて前部搬送ローラ部21を構成している。この磁気ヘッド押えローラ32を配置することで、通帳12の搬送時に搬送力が発生し、この搬送力が、磁気ヘッド31による通帳12に加わる摩擦負荷と相殺されて、搬入・搬出時の通帳12に対する回転モーメントの発生が抑制される。
【0032】
この磁気ヘッド押えローラ32は、駆動ローラ21a、21a’と同一径及び同材質でもよいが、搬送力を増すために駆動ローラ21a、21a’よりも大径にするとよい。また、磁気ヘッド押えローラ32の材質として、駆動ローラ21a、21a’よりも摩擦係数の大きい材質を用いてもよい。
【0033】
磁気ヘッド31は、磁気ヘッド押えローラ32に対向する位置で、印字装置本体フレームに回動可能に固定されている。連動機構33は、連動回転軸35に嵌合し、連動回転軸35により摺動可能かつ回動可能に支持されている。
【0034】
この連動機構33は、印字ヘッド24に対してプラテン29の乖離方向に配置され、プラテン29が印字部23に対し乖離方向に移動するとき、プラテン29の下面29aに当接して乖離方向に押される当接部36を備えている。
【0035】
また、連動機構33は、当接部36が正逆両方向に回動する際の連動回転軸35に対して当接部36と反対方向に延設され、当接部36と一体をなす引き上げ部37を備えている。
【0036】
引き上げ部37は、当接部36が印字ヘッド24に対してプラテン29の乖離方向に押されることに応じて、連動回転軸35を支点にして当接部36と同じ時計方向に回動し、磁気ヘッド31を磁気ヘッド押えローラ32の方向に付勢する。
【0037】
図2Aに示すように、通帳12の印字面(見開き印字面)13には、図の横方向に印字行が形成され、その印字行には、例えば、日付、備考、預貯金の預け入れ金額、引き出し金額、及び残高が印字される。また、図2B及び図2Cに示すように、通帳12の見開き背面は、図の上が表表紙14、下が裏表紙15となっており、裏表紙15の所定の位置に、印字面13の印字行に直交する方向に磁気記録部16が形成されている。
【0038】
図3は、印字部23、プラテン29、磁気読み取り・書き込み装置30を取り出して示す斜視図である。
また、図4A及び図4Bは、それぞれ図3を矢印e方向及び矢印b方向に見た図、図5A及び図5Bは、それぞれ図3を矢印e方向及び矢印b方向に見た図である。
【0039】
図3、図4B、図5Bにおいて、プラテン29は、ステッピングモータ20の駆動伝達系の切替により駆動されて、印字ヘッド24に対し矢印c(図3)で示す密着方向と、矢印d(図3)で示す乖離方向とに移動する。この移動は、不図示のプラテンセンサによって検知され、これにより、プラテン29は所定の位置に設定される。
【0040】
図4A及び図4Bに示すように、プラテン29が印字ヘッド24から乖離する方向に移動すると、プラテン29の下面29aに当接する連動機構33の当接部36がプラテン29の乖離方向に押される。これにより、当接部36及びこれと一体の引き上げ部37が、連動回転軸35を支点にして、図の時計方向に回動する。
【0041】
連動機構33が時計回りに回動することにより、引き上げ部37の端部に上端が係止する付勢部材(コイルバネ)41が上方に引き伸ばされる。
付勢部材41の下端部は、回動支持部材42の係止部43に係止されている。従って、付勢部材41が上方に引き伸ばされることによる復帰力により、回動支持部材42が上方に引き上げられる。
【0042】
これにより、回動支持部材42は、支持軸44を支点にして時計方向に回動する。支持軸44は固定部に係合されている。
また、支持軸44を支点にして、時計方向に回動する回動支持部材42の回動自由端には、磁気ヘッド31を保持する磁気ヘッド保持部材48が他の支持軸47により支持されている。
【0043】
これにより、付勢部材41の復帰力により、上方に引き上げられて矢印h方向(図4A)に付勢されて回動する支持部材42により、磁気ヘッド31は、磁気ヘッド保持部材48を介して磁気ヘッド押えローラ32に密着する方向に付勢される(図4Aの矢印i参照)。
【0044】
また、これとは逆に、図5A及び図5Bに示すように、プラテン29が印字ヘッド24に密着する方向に移動すると、プラテン29の下面29aに当接する連動機構33の当接部36がプラテン29の押圧から開放される。
【0045】
これにより、連動機構33の引き上げ部37に係合する付勢部材41の復帰力により、連動機構33が矢印j(図5B)で示すように、反時計方向に回動する。
これとともに、連動機構33からの引き上げ付勢力から開放された支持部材42は、磁気ヘッド31を伴って、不図示の付勢部材により矢印k(図5A)で示すように、反時計方向に回動する。これにより、磁気ヘッド31が、矢印m(図5A、図5B)で示すように、磁気ヘッド押えローラ32から乖離する方向に移動する。
【0046】
ここで、図4Aに示す状態は、通帳12の裏表紙15に設けられている磁気記録部16に対して、磁気読み取り・書き込み装置30により磁気データを読み取る又は書き込む場合の設定状態を示している。
【0047】
そして、図5Bに示すように、プラテン29が印字ヘッド24と密着した状態は、通帳12の印字面13に、印字部23によりプラテン29と協働して、日付、備考、預貯金の預け入れ金額、引き出し金額、残高等を印字する場合の設定状態を示している。
【0048】
また、図4Bに示すように、プラテン29が媒体搬送路を塞がない状態は、通帳12を搬送路で搬送する搬送状態を示している。
【0049】
次に、図6は、本実施の形態のフローチャートを示す図であり、図7A〜図7Dは、本実施の形態の動作状態の説明図であり、以下、これらの図に基づき本実施の形態の動作を説明する。
【0050】
(1)初期設定動作
先ず、処理Aの初期設定動作について説明する。
渉外員の手によって媒体印字装置1の電源がオンになると(ステップS1)、プラテン29の位置が検知される(ステップS2)。この処理は、不図示のプラテンセンサにより、プラテン29がホームポジションにあるか否かを検出する処理である。
【0051】
なお、プラテン20のホームポジションは、図7Bに示すように、プラテン29の上面が媒体搬送路と同じ高さになる位置、かつ、磁気ヘッド31は印字媒体搬送路に突出しない位置である。
【0052】
そして、プラテン29がまだホームポジションにないときは、プラテン28を下降させて(ステップS3)、再びプラテン29の検知処理を繰り返す。
プラテン29がホームポジションにきたことが検知されると、初期設定が完了する。
【0053】
なお、搬入/搬出口11から挿入された通帳12は、図7A〜図7Cの矢印nで示すように、左右両方向に搬送される。
また、プラテン29がホームポジションにあるときは、連動機構33の当接部36は、プラテン29の押圧から開放されており、従って、磁気ヘッド31は、図5Bで説明したように、磁気ヘッド押えローラ32から乖離する方向へ移動している。
【0054】
これにより、前部案内部18及び後部案内部19で形成された印字媒体搬送路は、印字媒体搬送のためにプラテン29からも磁気ヘッド31からも開放される。
ここで、ステッピングモータ20の駆動伝達系が切替えられると、プラテン29がホームポジションで停止し、前部搬送ローラ部21及び後部搬送ローラ部22により通帳12の搬送が可能となる。
【0055】
(2)磁気読み取り動作
次に、処理Bの磁気読み取り動作について説明する。
前部案内部18の近傍に設置された不図示の光学センサが通帳12の搬入を検知すると、通帳12の搬入動作が開始される(ステップS4)。そして、光学センサ71(図1参照)により、通帳12の磁気記録部16の記録読み取り開始位置が磁気ヘッド31の位置にきたことが検知されると、ステッピングモータ20の駆動伝達系が切替えられ、搬入動作が停止する(ステップS5)。
【0056】
図7A、図7Bにおける通帳12の位置は、磁気記録部16の記録読み取り開始位置が磁気ヘッド31の位置にきて停止した状態を示している。
続いて、プラテン29が下降する(ステップS6)。この処理では、矢印o(図7C)で示すように、プラテン29が下降して連動機構33の当接部36を押し下げる。これにより、連動機構33が矢印p(図7C)で示す時計方向に回動し、磁気ヘッド31が矢印q(図7C)で示すように、磁気ヘッド押えローラ32に密着する方向に付勢される。
【0057】
ここで通帳12の搬入動作が再開され、プラテン29と印字ヘッド24が離れて通帳12は低速で搬送され、磁気ヘッド31による磁気記録部16の磁気部16aから磁気記録データを読み取る処理が開始される(ステップS7)。
【0058】
このとき、前述したように、本実施の形態では、前部搬送ローラ部21として、駆動ローラ21a、21a’の他に、磁気ヘッド押えローラ32を配置したので、搬入・搬出時の通帳12に搬送力が発生し、この搬送力が、磁気ヘッド31による搬送方向の摩擦負荷と相殺されて、通帳12に対する回転モーメントの発生が抑制される。
【0059】
また、通帳12の搬入時には、例えば、一対の駆動ローラ21a’とピンチローラ21bとにより、通帳12に図7AのE方向の回転モーメントが発生したとしても、突き当て面75があるために斜行の発生は抑制される。
【0060】
そして、通帳12の搬入方向後端部が前部搬送ローラ部21の位置まできたときに、磁気部16aの記録読取終了位置が磁気ヘッド31の位置にくる。
また、このとき、通帳12の搬入方向の先端にある表表紙14及びこれと重なる印字面13の部分は、搬送逃げ口17(図1参照)から外部に突出する。
【0061】
この状態で、ステッピングモータ20の駆動伝達系が切り替えられ、通帳12の搬入動作が停止され(ステップS8)、プラテン29が再びホームポジション、すなわち印字媒体搬送路を遮らない高さまで上昇する(ステップS9)。
これにより、磁気ヘッド部31が下降し、印字媒体搬送路は、再び通帳12の搬送のためにプラテン29からも磁気ヘッド31からも開放される。
【0062】
(3)印字動作
続いて、処理Cの印字動作が開始される。
この場合、ステッピングモータ20の駆動伝達系が、プラテン29を上昇駆動し、所定の位置に停止させる。次に、不図示の搬送モータが駆動され、第1及び第2の搬送ローラ部21、22の回転方向の切り替えにより、通帳12の移動が開始され(ステップS10)、所定の位置で停止する(ステップS11)。
【0063】
この処理では、処理Bの磁気読取り動作において、通帳所有者IDや預貯金の磁気データと共に、印字面13の記録最終行を示すデータも読み取られており、この記録最終行を示すデータに基づいて、通帳12の今回の記録開始行が認識される。そして、その記録開始行が印字部23の印字ヘッド24に対向する位置にきた時点で通帳12の搬送が停止される。
【0064】
ここで、プラテン29が、ホームポジションから、矢印r(図7D)で示すように、印字媒体搬送路の中を印字ヘッド24の不図示の突き当て部に当接するまで上昇する(ステップS12)。これにより、ステッピングモータ20を停止させ、プラテン29も停止する(ステップS13)。
【0065】
その後、ステッピングモータ20が回転して、プラテン29が印字ヘッド24から規定距離だけ離れた位置まで下降させ、印字ヘッド24とプラテン29が適正な圧力となる位置に移動させる(ステップS14)。これにより、印字ヘッド24とプラテン29との間に所定の間隙が形成され、この間隙に通帳12の印字面13の記録開始行の部分が挟持される。
【0066】
続いて、印字動作が実行される(ステップS15)。この処理では、印字部23は通帳12の記録開始行に沿って移動しながら、印字ヘッド24により、記録開始行に、例えば、日付、備考、預け入れ金額又は引き出し金額、及び残高等が印字される。
【0067】
また、この処理では、記録行が記録開始行の他に数行に及ぶときは、記録行の行数だけ搬送と印字動作が繰り返される。そして、必要な記録の印字が全て終了すると、印字動作が停止する。このとき、磁気ヘッド31が通帳12から乖離しているため、スムーズに改行動作が行なわれる。また、通帳12は前部搬送ローラ部21と後部搬送ローラ部22により挟持搬送されるため、斜行などの影響を受けることはない。
【0068】
続いて、プラテン29が、ホームポジション(印字媒体搬送路を遮らない位置)まで下降する(ステップS16)。
これにより、磁気ヘッド31は下降したままの位置にあり、印字媒体搬送路は、再び通帳12の搬送のためにプラテン29からも磁気ヘッド31からも開放される。
【0069】
(4)磁気書き込み動作
次に、処理Dの磁気書込み動作が開始される。
先ず、前部及び後部の搬送ローラ部21、22による通帳12の搬入方向への搬送が開始される(ステップS17)。
【0070】
なお、磁気記録部16の記録書込開始位置は、図7A、図7Bに示す記録読取開始位置とは反対側端部になっている。つまり、磁気部16aの記録読取終了位置が記録書込開始位置となっている。
【0071】
したがって、処理Cの印字動作における最終印字位置がどの行であっても、磁気書き込み処理では、最初の通帳12の搬送は搬入方向への搬送となる。
そして、光学センサ71により、磁気記録部16の記録書込開始位置が磁気ヘッド31の位置にきたことが検知されることによって、搬送動作が停止される(ステップS18)。
【0072】
この場合も、通帳12の搬入方向にある表表紙14及びこれと重なる印字面13の部分は、搬送逃げ口17から外部に突出する。
続いて、プラテン29が下降する(ステップS19)。そして、連動機構33により、磁気ヘッド部31が、磁気ヘッド押えローラ32に密着する方向に付勢される。
【0073】
ここで、搬出動作が開始され、磁気ヘッド部31による通帳12の磁気部16aへの磁気記録データの書込み処理が開始される(ステップS20)。尚、この処理では、磁気データは、逆方向に並べ替えられて書き込まれていく。
【0074】
この場合、斜行発生を抑制する図8に示すように、磁気ヘッド押えローラ32も前部搬送ローラ部21の一員として一体で駆動されるので、例えば磁気ヘッド押えローラ32の搬送力uは磁気ヘッド31の摩擦負荷vと相殺される。このため、通帳12は平行に搬送されて矢印F方向への回転モーメントの発生が抑制され、通帳12の斜行が防止される。
【0075】
そして、磁気ヘッド31が磁気部16aの記録書込終了位置にくると、搬出動作が停止する(ステップS21)。
続いて、再び搬入動作が開始され、磁気ヘッド31によって、磁気部16aの磁気データの記録が読み取られる(ステップ22)。そして、読み取りが終了すると搬入が停止する(ステップS23)。これにより、いま書き込まれた磁気データの記録が正しく書き込まれているかが読取り・確認される。
【0076】
上記の読取り・確認により、磁気データの記録が正しく書き込まれていると判断されたときは、プラテン29が図7Cの位置から、図7Bに示す印字媒体搬送路を遮らない位置まで上昇する(ステップS24)。また、磁気データが正しく書き込まれなかったと判断された場合は、再度、磁気記録データの書込み処理が行われる。
【0077】
これにより、磁気ヘッド31は下降し、印字媒体搬送路は、再び印字媒体の搬送(移動)のためにプラテン29からも磁気ヘッド31からも開放される。
そして、前部及び後部の搬送ローラ部21、22が回転駆動され、通帳12が搬入/搬出口11から外部に排出されて(ステップS25)、搬出動作が停止する(ステップS26)。
【0078】
以上説明した通り、本実施の形態によれば、駆動ローラ21a、21a’と同軸状に一体固定され、磁気ヘッド31に対向して配置された磁気ヘッド押えローラ32を備えたことにより、搬入・搬出時の通帳12に搬送力が発生し、この搬送力が、磁気ヘッド31による搬送方向の摩擦負荷と相殺されて、通帳12に対する回転モーメントの発生が抑制される。その結果、斜行の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 媒体印字ヘッド
3 筐体
9 前面
10 案内面
11 搬入/搬出口
12 通帳(印字媒体)
13 印字面
14 表表紙
15 裏表紙
16 磁気記録部
16a 磁気部
17 搬送逃げ口
18 前部案内部
19 後部案内部
20 ステッピングモータ
21 前部搬送ローラ部
21a 駆動ローラ
21b ピンチローラ
22 後部搬送ローラ部
22a 駆動ローラ
22b ピンチローラ
23 印字部
24 印字ヘッド
25 キャリッジ
26 ボールネジ
27 ステッピングモータ
29 プラテン
29a 下面
30 磁気読み取り・書き込み装置
31 磁気ヘッド
32 磁気ヘッド押えローラ
33 連動機構
34 シャフト
35 連動回転軸
36 当接部
37 引き上げ部
41 付勢部材
42 回動支持部材
43 係止部
44 支持軸
47 支持軸
48 磁気ヘッド保持部材
71 光学センサ
75 突き当て面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体に印字処理を行う印字部と、
前記印字媒体が有する磁気記録部に記録された磁気データの読み取り及び、書き込みを行う磁気ヘッドと、
前記印字媒体を挟持して搬送可能に対向配置された少なくとも一対の第1の駆動ローラ及び第1の従動ローラと、
前記第1の駆動ローラが固定されたシャフトと、
前記シャフトに一体固定され、前記磁気ヘッドに対向して配置された第2の駆動ローラと、を有し、
前記磁気ヘッドと前記印字媒体の磁気記録部を密着させ、前記印字媒体を搬送しながら前記印字媒体が有する磁気記録部に記録された磁気データを、読み取り又は、書き込みを行うことを特徴とする媒体印字装置。
【請求項2】
前記印字部が前記印字処理を行うに際し、前記印字媒体を前記印字部とで挟み込むプラテンと、
前記プラテンを前記印字部に対して密着方向又は乖離方向に移動させる駆動部と、
前記プラテンが前記印字部に対して乖離方向へ移動するに伴い、前記磁気ヘッド部が前記第2の駆動ローラに対して密着方向に移動、又は、前記プラテンが前記印字部に対して密着方向へ移動するに伴い、前記磁気ヘッド部が前記磁気ヘッド押さえ部材に対して乖離方向に移動する連動機構と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の媒体印字装置。
【請求項3】
前記第2の駆動ローラは、前記第1の駆動ローラと同一径の円柱形状の弾性体からなることを特徴とする請求項1に記載の媒体印字装置。
【請求項4】
前記第2の駆動ローラは、前記第1の駆動ローラよりも径大の円柱形状の弾性体からなることを特徴とする請求項1に記載の媒体印字装置。

【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−136423(P2011−136423A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295949(P2009−295949)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】