説明

子宮内膜症細胞ターゲティングペプチドおよびその使用

子宮内膜症細胞を選択的に標的とするための組成物および方法が本明細書において提供される。具体的には、本発明は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を被験体に投与する工程を包含する方法を提供する。また、被験体において子宮内膜症細胞を標的とする方法、被験体において子宮内膜症を検出する方法、被験体において子宮内膜症を診断する方法、被験体において子宮内膜症の予後を決定する方法、被験体において子宮内膜症の進行を決定する方法、被験体において子宮内膜症の処置の進行を決定する方法なども本明細書において提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本願は、2005年12月23日に出願された、米国仮特許出願第60/753,677号の利益を主張し、この仮出願は、その全体が本明細書において参考として援用される。
【0002】
(政府に支援された研究に関する陳述)
本発明は、National Institutes of Healthからの助成金番号5P01 CA071932、およびDepartment of Defenseからの助成金番号DAMD17−02−1−0311の下、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
子宮内膜症は、医療および/または外科治療を必要とする、一般に遭遇する婦人科疾患であり、先進国における再生産年齢の女性においてかなりの罹患率を伴う(非特許文献1;非特許文献2)。子宮内膜症は、骨盤内、最も一般的には、卵巣および腹膜で覆われる領域に生じる。生殖管子宮内膜症の最も頻繁な症状は、月経困難、性交疼痛、慢性骨盤痛、および不妊症である。いくつかの症状および病理が、子宮内膜症患者において見られる:広範囲にわたる子宮内膜症を有する女性は、痛みをほとんど感じないか、または全く感じない可能性があるが、最小の子宮内膜症を有する女性は、無力になるほどの骨盤痛を有し得る。子宮内膜症が不妊症と因果関係があるかどうかははっきりしていないが、腹膜、卵管および子宮内膜の機能における多くの異常が、妊娠を阻害すると考えられる。多くの女性がこの状態に苦しんでいるという事実にもかかわらず、その原因または結果についてはほとんど知られていない。
【0004】
月経周期の間に、ファローピウス管を通る骨盤腔内への逆行性月経は、子宮内膜症の病理に対する主要な寄与因子である。弱いナチュラルキラー細胞活性、自己免疫、環境的リスクファクター、および遺伝的リスクファクターのようなさらなる因子が、これらの疾患の発症および進行に寄与する(非特許文献3)。しかし、これらの因子のいずれかが、子宮内膜症に対する主な原因となるかどうかははっきりとしていない。子宮内膜症は癌細胞と類似する様式で侵入するが(非特許文献4)、子宮内膜症の組織学は、子宮内膜症病巣が全くの正常な子宮内膜細胞から構成されることを示す。したがって、子宮内膜症は、正常な子宮内膜の異所性移植を表すようである。それにもかかわらず、生化学的な分析は、子宮内膜症と正常な子宮内膜との間でのタンパク質発現パターンにおける差を示唆する(非特許文献5;非特許文献6)。本明細書においては、子宮内膜症細胞を特異的に標的とするための組成物および方法が提供される。
【非特許文献1】Murphy,A.A.(2002)Ann NY Acad Sci 955,1−10;discussion 34−6,396−406
【非特許文献2】Barbieri,R.L.およびMissmer,S.(2002)Ann NY Acad Sci 955,23−33;discussion 34−6,396−406
【非特許文献3】Cramer,D.W.およびMissmer,S.A.(2002)Ann NY Acad Sci 955,11−22;discussion 34−6,396−406
【非特許文献4】Thomas,E.J.およびCampbell,I.G.(2000)Gynecol Obstet Invest 50 補遺1,2−10
【非特許文献5】Arici,A.,Matalliotakis,I.,Goumenou,A.,Koumantakis,G.,Fragouli,Y.およびMahutte,N.G.(2003)Am J Reprod Immunol 49,70−4
【非特許文献6】Vigano,P.,Gaffuri,B.,Somigliana,E.,Busacca,M.,Di Blasio,A.M.およびVignali,M.(1998)Mol Hum Reprod 4,1150−6
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(簡単な要約)
子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物が本明細書において提供される。
【0006】
また、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を被験体に投与する工程を包含する方法も本明細書において提供される。
【0007】
また、被験体において子宮内膜症細胞を標的とする方法が本明細書において提供され、この方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物をこの被験体に投与する工程を包含する。
【0008】
また、被験体において子宮内膜症を検出する方法が本明細書において提供され、この方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物をこの被験体に投与する工程、および、この被験体においてこの組成物を検出し、それによって、子宮内膜症を検出する工程を包含する。
【0009】
また、被験体において子宮内膜症を診断する方法が本明細書において提供され、この方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物をこの被験体に投与する工程、および、この被験体においてこの組成物を検出し、それによって、この被験体において子宮内膜症を診断する工程を包含する。
【0010】
また、被験体において子宮内膜症の予後を決定する方法が本明細書において提供され、この方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物をこの被験体に投与する工程、および、この被験体においてこの組成物を検出する工程を包含し、この被験体内の子宮内膜症組織へのこの組成物の結合のレベル、量、濃度または組み合わせは、この被験体における子宮内膜症の予後を示す。
【0011】
また、被験体において子宮内膜症の進行を決定する方法が本明細書において提供され、この方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物をこの被験体に投与する工程、ならびに、後の時点で、投与および検出を繰り返す工程を包含し、この被験体内の子宮内膜症組織へのこの組成物の結合のレベル、量、濃度または組み合わせは、この被験体における子宮内膜症の進行を示す。
【0012】
また、被験体において子宮内膜症の処置の進行を決定する方法が本明細書において提供され、この方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物をこの被験体に投与する工程、この被験体においてこの組成物を検出する工程、ならびに、処置後に、投与および検出を繰り返す工程を包含し、この被験体内の子宮内膜症組織へのこの組成物の結合のレベル、量、濃度または組み合わせは、この被験体における子宮内膜症の処置の進行を示す。
【0013】
開示される方法および組成物のさらなる利点は、一部は以下の明細書に示され、そして、一部は、明細書から理解されるか、または、開示される方法および組成物を実施することによって習得され得る。開示される方法および組成物の利点は、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘される要素および組み合わせによって実現および達成される。上記の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、単に例示的かつ説明的なものであり、特許請求される本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0014】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、開示される方法および組成物のいくつかの実施形態を示し、そして、明細書と共に、開示される方法および組成物の原理を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(詳細な説明)
開示される方法および組成物は、以下の特定の実施形態の詳細な説明および本明細書中に含まれる実施例、ならびに、図面および以下の図面に関する詳細な説明と図面の簡単な説明とを参照することによってより容易に理解され得る。
【0016】
開示される方法および組成物のために使用され得るか、開示される方法および組成物と組み合わせて使用され得るか、開示される方法および組成物を調製する際に使用され得るか、または、開示される方法および組成物の生成物である、材料、組成物および成分が開示される。これらおよび他の材料は、本明細書中に開示され、そして、これらの材料の組み合わせ、部分集合、相互作用、グループなど(これらの化合物の種々の個々および全体的な組み合わせおよび交換の各々について具体的な参照が明白に開示されなくてもよい)が開示されるとき、この各々は、本明細書において具体的に企図および記載される。例えば、ペプチドが開示され、考察され、そして、このペプチドを含む多数の分子に対してなされ得る多数の改変が考察される場合、具体的にそうでないと示されない限り、このペプチドの組み合わせおよび交換の各々および全て、ならびに可能な改変が、具体的に企図される。したがって、分子A、BおよびCのクラスが開示され、同様に、分子D、EおよびFのクラスと、組み合わせ分子の例A−Dが開示される場合、各々が個々には言及されない場合でさえも、各々は、個別に、そして、全体的に企図される。したがって、この例では、A−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−EおよびC−Fの組み合わせの各々が具体的に企図され、そして、これらの組み合わせの各々は、A、BおよびC;D、EおよびF;ならびに例えばA−Dの組み合わせの開示から開示されるものとして考慮されるべきである。同様に、任意のこれらの部分集合または組み合わせがまた、具体的に企図および開示される。したがって、例えば、A−E、B−FおよびC−Eの下位グループが具体的に企図され、そして、これらの下位グループは、A、BおよびC;D、EおよびF;ならびに、例えばA−Dの組み合わせの開示から開示されるものとして考慮されるべきである。この概念は、本願のあらゆる局面(開示される組成物の作製方法および使用方法における工程が挙げられるがこれらに限定されない)に適用される。したがって、実施され得る種々のさらなる工程が存在する場合、これらのさらなる工程の各々は、開示される方法のあらゆる特定の実施形態または実施形態の組み合わせと共に実施され得ること、そして、このような組み合わせの各々が具体的に企図され、かつ、開示されるものとして考慮されるべきであることが理解される。
【0017】
当業者は、慣用的なものに過ぎない実験を用いることで、本明細書中に記載される方法および組成物の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または、確認することが可能である。このような等価物は、添付の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【0018】
開示される方法および組成物は、記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されないことが理解される。というのも、これらの方法論、プロトコルおよび試薬は変化し得るからである。また、本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、本発明の範囲を制限することは意図されず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることが理解されるべきである。
【0019】
本願全体を通して、種々の刊行物に対して参照がなされる。本発明が属する分野の技術水準をより完全に説明するために、これらの刊行物のその全体にわたる開示は、本願中で本明細書により参考として援用される。開示される参考文献はまた、これらの参考文献に含まれる要素(この要素は、その参考文献に頼る文章において考察される)について、個別に、そして具体的に、本明細書中に参考として援用される。
【0020】
(A.定義)
そうでないと規定されない限り、本明細書において使用されるあらゆる科学技術用語は、開示される方法および組成物が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似するか、または、これらと等価なあらゆる方法および材料が、本発明の方法および組成物の実施または試験において使用され得るが、特に有用な方法、デバイスおよび材料は、記載されるものである。本明細書中で引用される刊行物、および、それらの刊行物が引用される理由となる要素は、本明細書により具体的に参考として援用される。本明細書中の記載は、本発明が先行技術発明の観点からこのような開示を先行する権利を与えられないという了解としてみなされるべきでない。あらゆる参考文献が先行技術を構成するという自認はなされない。参考文献の考察は、それぞれの著者らが主張するものを記述しており、出願人は、引用される文献の正確性および適切性に対して意義を申し立てる権利を留保する。
【0021】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確にそうでないと示さない限り、複数に対する参照を含むことに注意しなければならない。したがって、例えば、「ペプチド(a peptide)」に対する参照は、複数のこのようなペプチドを含み、「ペプチド(the peptide)」に対する参照は、1以上のペプチドおよび当業者に公知のペプチドの等価物に対する参照である、などである。
【0022】
「必要に応じた」または「必要に応じて」は、その後に続けて記載される事象、状況または要素が、起こっても起こらなくても、または、存在しても存在しなくてもよく、この記載は、その事象、状況または要素が起こるかまたは存在する場合と、その事象、状況または要素が起こらないかまたは存在しない場合とを含むことを意味する。
【0023】
範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値〜「約」別の特定の値として表され得る。このような範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値〜他の特定の値を含む。同様に、先行詞「約」を使用することによって値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形づくることが理解される。さらに、これらの範囲の各々の終点は、もう一方の終点に関して、そして、もう一方の終点とは独立して、有意であるものと理解される。また、本明細書中に開示される多数の値が存在し、これらの値の各々がまた、値自体に加えて、「約」その特定の値として本明細書において開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。また、値が「その値未満またはその値に等しい」として開示される場合、当業者により適切に理解されるように、「その値を超えるまたはその値に等しい」、および、これらの値の間の可能な範囲もまた開示されることが理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「10未満または10に等しい」ならびに「10を超えるまたは10に等しい」もまた開示される。また、本願全体を通して、データは、多数の異なる形式で提供され、そして、このデータは、終点および始点、ならびに、データ点のあらゆる組み合わせについての範囲を表すことが理解される。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点「15」が開示される場合、10および15を超える点、10および15を超えるかまたは10および15に等しい点、10および15未満の点、10および15未満または10および15に等しい点、ならびに、10および15に等しい点、ならびに、10と15との間の点が開示されるものと考慮されることが理解される。また、2つの特定の単位の間の単位の各々もまた開示されることが理解される。例えば、10および15が開示される場合、11、12、13および14もまた開示される。
【0024】
本願の明細書および特許請求の範囲の全体にわたり、用語「含む(comprise)」およびこの用語の変形(例えば、「含むこと」および「含む(comprises)」)は、「〜が挙げられるがこれらに限定されない」を意味し、そして、例えば、他の添加物、成分、整数または工程を除外することは意図されない。
【0025】
用語「ターゲティング」または「ホーミング」とは、本明細書において使用される場合、標的化されていない化合物または組成物と比べて、ある部位もしくは位置における標的化された化合物もしくは組成物(例えば、開示される組成物)の優先的な移動、結合および/または蓄積を指し得る。例えば、被験体に対してインビボで投与される文脈において、「ターゲティング」または「ホーミング」は、非標的組織、非標的細胞および/または非標的構造と比べて、例えば、標的組織、標的細胞および/もしくは標的構造内、または、標的組織、標的細胞および/もしくは標的構造における、開示される組成物のような化合物もしくは組成物の、優先的な移動、結合および/または蓄積を指し得る。
【0026】
用語「標的組織」とは、本明細書において使用される場合、被験体への投与の後に、開示される組成物のような標的化された化合物もしくは組成物を蓄積させることが意図された部位をいう。例えば、本開示の主題の方法は、子宮内膜症を含む標的組織を用いる。
【0027】
本明細書において使用される場合、「被験体」としては、動物、植物、細菌、ウイルス、寄生虫、および核酸を有するあらゆる他の生物もしくは実体が挙げられるがこれらに限定されない。被験体は、脊椎動物、より具体的には、哺乳動物(例えば、ヒト、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、非ヒト霊長類、ウシ、ネコ、モルモットまたはげっ歯類)、魚類、鳥類または爬虫類または両生類であり得る。被験体は、無脊椎動物、より具体的には、節足動物(例えば、昆虫および甲殻類)であり得る。この用語は、特定の年齢または性別を示さない。したがって、成体(成人)および新生仔(新生児)の被験体、ならびに、胎仔(胎児)は、雄性であれ雌性であれ、包含されることが意図される。患者は、疾患または障害に苦しむ被験体をいう。用語「患者」は、ヒトおよび獣医学上の被験体を包含する。子宮内膜症および子宮内膜症細胞の文脈において、被験体は、子宮内膜症および/もしくは子宮内膜症細胞を有するか、または、子宮内膜症および/もしくは子宮内膜症を有し得る被験体であることが理解される。
【0028】
(B.ターゲティングペプチド)
細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物が、本明細書において提供される。いくつかの局面において、細胞は、子宮内膜症細胞である。本明細書において使用される場合、「子宮内膜症細胞」は、異所性に位置する子宮内膜細胞をいう。子宮内膜症は、大いに、子宮内膜から剥脱した生存細胞の異所性の位置への移植の結果であると考えられる。この逆行性月経理論は、子宮内膜の生存細胞が、卵管を通る逆行性月経によって腹腔へと導入されるという仮説に基づく。
【0029】
ある細胞が標的とされる場合、その細胞は、特異的または非特異的に標的とされ得る。すなわち、細胞は、組成物の一標的であり得るか、または、実質的に唯一の標的であり得る。例えば、子宮内膜症細胞が標的とされる場合、子宮内膜症細胞は、特異的に(例えば、子宮内膜症細胞ではない子宮内膜細胞を実質的に標的とすることはない)、または、非特異的に(子宮内膜細胞および子宮内膜症細胞を標的とする)標的とされ得る。したがって、いくつかの局面においては、細胞は子宮内膜細胞ではない。
【0030】
本明細書において使用される場合、「ターゲティングペプチド」は、細胞のような標的に結合するペプチドまたはポリペプチドである。例えば、ターゲティングペプチドは、選択的なターゲティング活動を示し得る。用語「選択的なターゲティング」または「選択的なホーミング」とは、本明細書において使用される場合、各々が、開示される組成物のような化合物もしくは組成物の優先的な局在化をいい、これは、標的組織においてある量(例えば、コントロール組織におけるペプチドの量の約2倍以上の量、約5倍以上の量、または約10倍以上の量である)の化合物もしくは組成物をもたらす。例えば、用語「選択的なターゲティング」および「選択的なホーミング」は、同時に、あるコントロール組織へのターゲティングがないか、または、あらゆるコントロール組織へのターゲティングがない状態での、開示される組成物のような化合物もしくは組成物の標的組織における結合または蓄積を指し得る。
【0031】
一般に、ターゲティングペプチドまたはそのセグメントは、特異性および親和性を与える少なくとも5個、6個、7個、8個、9個の連続するアミノ酸を含まなければならない。ターゲティングペプチドは、例えば、配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列を含み得る。ターゲティングペプチドは、配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有し得る。
【0032】
ターゲティングペプチドは、例えば、配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列を有するアミノ酸セグメントを含み得る。ターゲティングペプチドは、アミノ酸セグメントを含み得、このセグメントは、配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。アミノ酸セグメントは、少なくとも5個、6個、7個、8個または9個の連続するアミノ酸を有し得る。したがって、アミノ酸セグメントは、本質的に5個、6個、7個、8個または9個の連続するアミノ酸から構成され得る。したがって、ターゲティングペプチドは、本質的に、少なくとも5個、6個、7個、8個または9個の連続するアミノ酸から構成され得る。
【0033】
開示されるターゲティングペプチドは、人工配列であり得、そして、インビトロ合成されても、そして/または、組み換え合成されてもよい。開示されるターゲティングペプチドは、天然に存在するタンパク質ではないペプチドであり得、そして、天然に存在するタンパク質においては連続していない、少なくとも2個の連続する配列を有するペプチドであり得る。開示されるターゲティングペプチドは、5アミノ酸〜約50アミノ酸の長さであり得る。開示されるターゲティングペプチドは、約50アミノ酸、約49アミノ酸、約48アミノ酸、約47アミノ酸、約46アミノ酸、約45アミノ酸、約44アミノ酸、約43アミノ酸、約42アミノ酸、約41アミノ酸、約40アミノ酸、約39アミノ酸、約38アミノ酸、約37アミノ酸、約36アミノ酸、約35アミノ酸、約34アミノ酸、約33アミノ酸、約32アミノ酸、約31アミノ酸、約30アミノ酸、約29アミノ酸、約28アミノ酸、約27アミノ酸、約26アミノ酸、約25アミノ酸、約24アミノ酸、約23アミノ酸、約22アミノ酸、約21アミノ酸、約20アミノ酸、約19アミノ酸、約18アミノ酸、約17アミノ酸、約16アミノ酸、約15アミノ酸、約14アミノ酸、約13アミノ酸、約12アミノ酸、約11アミノ酸、約10アミノ酸、約9アミノ酸、約8アミノ酸、約7アミノ酸または約6アミノ酸の長さであり得る。
【0034】
(C.配列の類似性)
本明細書において考察されるように、用語「相同性」および「同一性」の使用は、類似性と同じことを意味することが理解される。したがって、例えば、2つの非天然配列の間で用語「相同性」が使用される場合、これは、必ずしもこれらの2つの配列の間の進化的な関係性を示すわけではなく、それらの核酸配列の間の類似性または関係性に注目することが理解される。進化的に関連する2つの分子間の相同性を決定するための多くの方法は、これらが進化的に関連するか否かにかかわらず、配列の類似性を測定する目的で、任意の2以上の核酸またはタンパク質に対して慣用的に適用される。
【0035】
一般に、本明細書において開示される遺伝子およびタンパク質のあらゆる公知の改変体および誘導体、または生じ得るものを規定する1つの方法は、特定の公知配列に対する相同性の観点から改変体および誘導体を規定することによるものであることが理解される。本明細書において開示される特定の配列のこの同一性はまた、本明細書の別の部分において考察される。一般に、本明細書において開示される遺伝子およびタンパク質は、代表的に、出発配列または天然配列に対して、少なくとも約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%の相同性を有する。当業者は、2つのタンパク質または核酸(例えば、遺伝子)の相同性を決定する方法を容易に理解する。例えば、相同性は、その相同性が最も高いレベルになるように2つの配列を整列した後に計算され得る。
【0036】
相同性を計算する別の方法は、公開されたアルゴリズムによって実施され得る。比較のための配列の最適なアラインメントは、SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム(Adv.Appl.Math.2:482(1981))によって、NeedlemanおよびWunschの相同性アラインメントアルゴリズム(J.Mol.Biol.48:443(1970))によって、PearsonおよびLipmanの類似性検索方法(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444(1988))によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実施(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)におけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)によって、または、目視(inspection)によって行われ得る。
【0037】
同じ型の相同性は、例えば、Zuker,M.、Science 244:48−52,1989;Jaegerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7706−7710,1989;Jaegerら、Methods Enzymol.183:281−306,1989(これらは、少なくとも、核酸のアラインメントに関する要素について、本明細書において参考として援用される)において開示されるアルゴリズムによって核酸について得られ得る。代表的には任意の方法が使用され得、そして、特定の状況において、これらの種々の方法の結果は異なり得ることが理解されるが、当業者は、これらの方法のうちの少なくとも1つにより同一性が見出された場合、その配列は、所定の同一性を有し、そして、本明細書において開示されると言われることを理解する。
【0038】
例えば、本明細書において使用される場合、別の配列に対して特定の%相同性を有すると記載される配列は、任意の1以上の上記の計算方法によって計算されるときに、記載された相同性を有する配列をさす。例えば、本明細書において規定されるとき、第一の配列がZukerの計算法を用いたときに第二の配列に対して80%の相同性を有すると計算される場合、第一の配列が、任意の他の計算方法によって計算されたときに第二の配列に対して80%の相同性を有さない場合でさえも、第一の配列は第二の配列に対して80%の相同性を有する。別の例として、本明細書において規定されるとき、第一の配列がZukerの計算方法ならびにPearsonおよびLipmanの計算方法の両方を用いたときに第二の配列に対して80%の相同性を有すると計算される場合、第一の配列が、SmithおよびWatermanの計算方法、NeedlemanおよびWunschの計算方法、Jaegerの計算方法、または、任意の他の計算方法によって計算されたときに第二の配列に対して80%の相同性を有さない場合でさえも、第一の配列は第二の配列に対して80%の相同性を有する。なお別の例として、本明細書において規定されるとき、第一の配列が計算方法の各々を用いたときに第二の配列に対して80%の相同性を有すると計算される場合、第一の配列は第二の配列に対して80%の相同性を有する(実際は、異なる計算方法がしばしば異なる相同性%の計算値を生じるが)。
【0039】
(D.タンパク質改変体)
ターゲティングペプチドは、1以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列を含み得る。したがって、ターゲティングペプチドは、1、2または3の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列を含み得る。一例として、ターゲティングペプチドは、1つの保存的アミノ酸置換を有する配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列を含み得る。ターゲティングペプチドはまた、1以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列を有するアミノ酸セグメントを含み得る。したがって、ターゲティングペプチドは、1、2または3の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列を有するアミノ酸セグメントを含み得る。一例として、ターゲティングペプチドは、1つの保存的アミノ酸置換を有する配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列を有するアミノ酸セグメントを含み得る。ターゲティングペプチドは、配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列からの少なくとも6個の連続するアミノ酸を含み得る。ターゲティングペプチドは、少なくとも5個、6個、7個、8個または9個の連続するアミノ酸を有し得る。したがって、ターゲティングペプチドは、5個、6個、7個、8個または9個の連続するアミノ酸から構成され得る。
【0040】
本明細書において考察される場合、ターゲティングペプチドは、出発のターゲティングペプチドに基づく多数の改変体を包含し得る。タンパク質およびペプチドの改変体および誘導体は、当業者に十分に理解され、そして、アミノ酸配列の修飾を含み得る。例えば、アミノ酸配列の修飾は、代表的には、以下の3つの分類のうちの1以上に該当する:置換改変体、挿入改変体または欠失改変体。挿入は、アミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を包含する。挿入は通常、例えば、1〜4の残基のオーダーで、アミノ末端融合またはカルボキシル末端融合の挿入よりも小さい挿入である。実施例に記載されるもののような免疫原性の融合タンパク質誘導体は、インビトロで架橋させるか、または、融合タンパク質をコードするDNAを用いて形質転換した組換え細胞培養によって、標的配列へと免疫原性を付与するために十分大きなポリペプチドを融合することにより作製される。欠失は、タンパク質配列からの1以上のアミノ酸残基の除去により特徴付けられる。代表的には、約2〜6以下の残基が、タンパク質分子内の任意の1つの部位において欠失される。これらの改変体は通常、タンパク質をコードするDNA内のヌクレオチドの部位特異的な変異誘発を起こし、それによって、改変体をコードするDNAを生成し、その後、組換え細胞培養においてそのDNAを発現させることによって調製される。公知配列を有するDNAにおける所定の部位に置換変異を作製するための技術は周知であり、例えば、M13プライマー変異誘発およびPCR変異誘発がある。アミノ酸置換は、代表的には単一の残基であるが、一度に多数の異なる位置において生じ得る;挿入は通常、約1〜10のオーダーのアミノ酸残基において生じる;そして、欠失は、約1〜30の範囲の残基に及ぶ。欠失または挿入は、好ましくは、隣接する対において作製される:すなわち、2残基の欠失または2残基の挿入。置換、欠失、挿入、またはこれらの任意の組み合わせは、最終的な構築物において到達するように組み合わされ得る。変異は、読み取り枠から外れて配列を配置してはならず、好ましくは、mRNAの二次構造を生成し得る相補的な領域を生成しない。置換改変体は、少なくとも1つの残基が除去され、そして、その場所に異なる残基が挿入されたものである。このような置換は一般に、以下の表2にしたがって作製され、そして、保存的置換と呼ばれる。
【0041】
【数1】

機能または免疫学的同一性における実質的な変化は、表2における保存的置換よりも保存性が低い置換を選択することによって、すなわち、(a)置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造(例えば、シートまたはらせん状のコンフォメーション)、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩を維持することに関して、これらの作用がより有意に異なる残基を選択することによって作製される。一般に、タンパク質の特性において最大の変化を生成することが予想される置換は、(a)親水性残基(例えば、セリル残基またはスレオニル残基)が疎水性残基(例えば、ロイシル残基、イソロイシル残基、フェニルアラニル残基、バリル残基またはアラニル残基)で置換される置換;(b)システインまたはプロリンが任意の他の残基で置換される置換;(c)電気陽性側鎖を有する残基(例えば、リシル残基、アルギニル残基またはヒスチジル残基)を電気陰性残基(例えば、グルタミル残基またはアスパルチル残基)で置換する置換;あるいは、(d)嵩高い側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン残基)を側鎖を持たない残基(例えば、グリシン)で置換する置換であり、そしてこの場合、(e)硫酸化および/またはグリコシル化のための部位の数を増やすことによる置換である。
【0042】
例えば、1つのアミノ酸残基の、生物学的および/または化学的に類似する別の残基での置き換えは、保存的置換として当業者に公知である。例えば、保存的置換は、1つの疎水性残基を別の残基で、または、1つの極性残基を別の残基で置き換える。この置換は、例えば、Gly,Ala;Val,Ile,Leu;Asp,Glu;Asn,Gln;Ser,Thr;Lys,Arg;およびPhe,Tyrのような組み合わせを含む。明確に開示された配列の各々のこのような保存的に置換された改変体は、本明細書に提供されるモザイクポリペプチド内に包含される。
【0043】
置換変異誘発または欠失変異誘発は、N−グリコシル化(Asn−X−Thr/Ser)またはO−グリコシル化(SerまたはThr)のための部位を挿入するために用いられ得る。システインまたは他の不安定な残基の欠失もまた望ましくあり得る。潜在的なタンパク質分解の部位(例えば、Arg)の欠失または置換は、例えば、塩基性残基のうちの1つを欠失するか、または、1つの残基をグルタミニル残基もしくはヒスチジル残基で置換することによって達成される。
【0044】
特定の翻訳後誘導体化は、発現されるポリペプチドに対する組換え宿主細胞の作用の結果である。グルタミニル残基およびアスパラギニル残基は、頻繁に翻訳後脱アミド化を受けて、対応するグルタミル残基およびアスパリル残基になる。あるいは、これらの残基は、穏やかな酸性条件下で脱アミド化を受ける。他の翻訳後修飾としては、プロリンおよびリジンの水酸化、セリル残基またはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のo−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton、Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco pp79−86[1983])、N末端アミンのアセチル化、ならびに、ある場合においては、C末端カルボキシルのアミド化が挙げられる。
【0045】
保存的な変異および相同性の説明は、特定の配列に対して少なくとも70%の相同性を有し、そこで、改変が保存的変異である実施形態のような、あらゆる組み合わせにおいて、一緒に組み合わされ得ることが理解される。
【0046】
本明細書は、種々のペプチド配列を考察する場合、これらのタンパク質配列をコードし得る核酸もまた開示されることが理解される。これは、特定のタンパク質配列に関連する全ての変性配列、すなわち、1つの特定のタンパク質配列をコードする配列を有する全ての核酸、ならびに、そのタンパク質配列の開示される改変体および誘導体をコードする全ての核酸(変性核酸を含む)を含む。したがって、各々の特定の核酸配列は本明細書において詳しく記載されていないかもしれないが、各々、そして全ての配列は、事実上、開示されるタンパク質配列により、本明細書において開示され、そして記載されることが理解される。
【0047】
開示される組成物中に組み込まれ得る多数のアミノ酸およびペプチドのアナログが存在することが理解される。例えば、多数のDアミノ酸、または、表2に示されるアミノ酸とは異なる機能的置換を有するアミノ酸が存在する。天然に存在するペプチドの反対の立体異性体が開示され、同様に、ペプチドアナログの立体異性体も開示される。これらのアミノ酸は、選択したアミノ酸でtRNA分子を荷電し、そして、例えば、アンバーコドンを利用する遺伝的構築物を部位特異的な方法でペプチド鎖中にアミノ酸アナログを挿入するように操作することによって、ポリペプチド鎖中に容易に組み込まれ得る(Thorsonら、Methods in Molec.Biol.77:43−73(1991)、Zoller、Current Opinion in Biotechnology,3:348−354(1992);Ibba、Biotechnology & Genetic Engineering Reviews 13:197−216(1995)、Cahillら、TIBS,14(10):400−403(1989);Benner、TIB Tech,12:158−163(1994);IbbaおよびHennecke、Bio/technology,12:678−682(1994);これらの文献は全て、少なくともアミノ酸アナログに関連する要素について本明細書において参考として援用される)。
【0048】
ペプチドに似ているが、天然のペプチド結合によって接続されない分子が生成され得る。例えば、アミノ酸またはアミノ酸アナログのための結合としては、以下が挙げられ得る:−−CHNH−−、−−CHS−−、−−CH−CH−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH−−、−−CH(OH)CH−−および−−CHHSO−−(これらおよび他の結合は、以下に見出され得る:Spatola,A.F.、Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins,B.Weinstein編、Marcel Dekker,New York,p.267(1983);Spatola,A.F.、Vega Data(1983年3月),Vol.1,Issue 3,Peptide Backbone Modifications(一般的な総説);Morley、Trends Pharm Sci(1980)pp.463−468;Hudson,D.ら、Int J Pept Prot Res 14:177−185(1979)(−−CHNH−−、−−CH−CH−−);Spatolaら、Life Sci 38:1243−1249(1986)(−CH H−−S−−);Hann J.、Chem.Soc Perkin Trans.I 307−314(1982)(−−CH=CH−−、シスおよびトランス);Almquistら、J.Med.Chem.23:1392−1398(1980)(−−COCH−−);Jennings−Whiteら、Tetrahedron Lett 23:2533(1982)(−−COCH−−);Szelkeら、European Appln,EP 45665 CA(1982):97:39405(1982)(−−CH(OH)CH−−);Holladayら、Tetrahedron.Lett 24:4401−4404(1983)(−−C(OH)CH−−);およびHruby、Life Sci 31:189−199(1982)(−−CH−−S−−);この文献の各々は、本明細書中に参考として援用される)。特に好ましい非ペプチド結合は、−−CHNH−−である。ペプチドアナログは、結合原子の間に1以上の原子を有し得る(例えば、β−アラニン、γ−アミノ酪酸など)ことが理解される。
【0049】
アミノ酸アナログおよびペプチドアナログは、しばしば、より経済的な生産、より高い化学的安定性、増強された薬理学的特性(半減期、吸収、効力、効能など)、変更された特異性(例えば、生物学的活性の広域スペクトル)、減少した抗原性などのような、増強されたかもしくは所望される特性を有する。
【0050】
D−アミノ酸は、より安定なペプチドを生成するために使用され得る。なぜならば、D−アミノ酸は、ペプチダーゼなどによって認識されないからである。コンセンサス配列の1以上のアミノ酸を同じ型のD−アミノ酸で系統的に置換すること(例えば、L−リジンの代わりにD−リジン)が、より安定なペプチドを生成するために使用され得る。システイン残基は、2以上のペプチドを一緒に環化または結合するために使用され得る。これは、ペプチドを特定のコンフォメーションへと強制するのに有益であり得る(RizoおよびGierasch、Ann.Rev.Biochem.61:387(1992)(本明細書において参考として援用される))。
【0051】
(E.内在化配列)
提供される組成物はさらに、細胞内在化トランスポーターまたは細胞内在化配列を含み得る。この内在化配列は、例えば、ターゲティングペプチドに対して結合され得るか、または、ターゲティングペプチドを含む組成物中に含まれ得る。細胞内在化配列は、当該分野において公知であるか、もしくは、新たに発見されるあらゆる内在化配列、または、その保存的改変体であり得る。細胞内在化トランスポーターおよび細胞内在化配列の非限定的な例としては、以下が挙げられる:アンテナペディア(Antennapedia)配列、TAT、HIV−Tat、ペネトラチン(Penetratin)、Antp−3A(Antp変異体)、ブフォリン(Buforin)II、トランスポータン(Transportan)、MAP(モデル両親媒性ペプチド(model amphipathic peptide))、K−FGF、Ku70、プリオン、pVEC、Pep−1、SynB1、Pep−7、HN−1、BGSC(ビス−グアニジニウム−スペルミジン−コレステロール)およびBGTC(ビス−グアニジニウム−トレン(Tren)−コレステロール)(表1を参照のこと)。
【0052】
【数2】

したがって、提供されるターゲティングペプチドはさらに、以下のアミノ酸配列を含み得る:配列番号10、配列番号11(Bucci,M.ら、2000.Nat.Med.6,1362−1367)、配列番号12(Derossi,D.ら、1994.Biol.Chem.269,10444−10450)、配列番号13(Fischer,P.M.ら、2000.J.Pept.Res.55,163−172)、配列番号14(Frankel,A.D.& Pabo,C.O.1988.Cell 55,1189−1193;Green,M.& Loewenstein,P.M.1988.Cell 55,1179−1188)、配列番号15(Park,C.B.ら、2000.Proc.Natl Acad.Sci.USA 97,8245−8250)、配列番号16(Pooga,M.ら、1998.FASEB J.12,67−77)、配列番号17(Oehlke,J.ら、1998.Biochim.Biophys.Acta.1414,127−139)、配列番号18(Lin,Y.Z.ら、1995.J.Biol.Chem.270,14255−14258)、配列番号19(Sawada,M.ら、2003.Nature Cell Biol.5,352−357)、配列番号20(Lundberg,P.ら、2002.Biochem.Biophys.Res.Commun.299,85−90)、配列番号21(Elmquist,A.ら、2001.Exp.Cell Res.269,237−244)、配列番号22(Morris,M.C.ら、2001.Nature Biotechnol.19,1173−1176)、配列番号23(Rousselle,C.ら、2000.Mol.Pharmacol.57,679−686)、配列番号24(Gao,C.ら、2002.Bioorg.Med.Chem.10,4057−4065)、または配列番号25(Hong,F.D.& Clayman,G.L.2000.Cancer Res.60,6551−6556)。提供されるポリペプチドはさらに、BGSC(ビス−グアニジニウム−スペルミジン−コレステロール)またはBGTC(ビス−グアニジニウム−トレン−コレステロール)(Vigneron,J.P.ら、1998.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.93,9682−9686)を含み得る。前出の参考文献は、その全体、および、細胞内在化ベクターおよび細胞内在化配列のその教示について、本明細書により参考として援用される。現在公知であるか、または、後に同定される、任意の他の内在化配列は、本明細書において開示されるポリペプチドと組み合わされ得る。
【0053】
(F.エフェクター)
本明細書において提供される組成物はさらに、エフェクター分子を含み得る。「エフェクター分子」とは、標的細胞または標的組織に対して作用し、所望の効果をもたらす物質を意味する。この効果とは、例えば、標的細胞または標的組織の標識、活性化、抑制、または殺傷であり得る。したがって、エフェクター分子は、例えば、低分子、薬学的な薬物(pharmaceutical drug)、毒素、脂肪酸、検出可能なマーカー、結合タグ、ナノ粒子(nanoparticle)または酵素であり得る。
【0054】
ターゲティングペプチドに結合され得る低分子および薬学的な薬物の例は、当該分野で公知である。エフェクターは、標的細胞を殺傷する細胞傷害性の低分子または薬物であり得る。低分子または薬物は、あらゆる決定的な細胞の機能または経路に作用するように設計され得る。例えば、低分子または薬物は、細胞周期を阻害し得るか、タンパク質の変性を活性化し得るか、アポトーシスを誘導し得るか、キナーゼ活性を調節し得るか、または、細胞骨格タンパク質を改変し得る。あらゆる公知であるかまたは新たに発見される細胞傷害性の低分子または薬物が、ターゲティングペプチドと共に使用するために企図される。
【0055】
エフェクターは、標的とされた細胞を殺傷する毒素であり得る。毒素の非限定的な例としては、アブリン、モデシン、リシンおよびジフテリア毒素が挙げられる。他の公知であるかまたは新たに発見される毒素が、ターゲティングペプチドと共に使用するために企図される。
【0056】
ターゲティングペプチドに結合され得る脂肪酸(すなわち、脂質)としては、リポソーム内にペプチドを効率的に組み込むことを可能にするものが挙げられる。一般に、脂肪酸は、極性の脂質である。したがって、脂肪酸は、リン脂質であり得る。提供される組成物は、天然のリン脂質または合成のリン脂質のいずれかを含み得る。リン脂質は、飽和または不飽和で、一置換または二置換の、脂肪酸を含むリン脂質およびこれらの組み合わせから選択され得る。これらのリン脂質は、以下であり得る:ジオレオイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルセリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイルオレオイルホスファチジルセリン、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチジン酸、パルミテライドイル(palmitelaidoyl)オレオイルホスファチジルコリン、パルミテライドイルオレオイルホスファチジルセリン、パルミテライドイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン、パルミテライドイルオレオイルホスファチジルグリセロール、パルミテライドイルオレオイルホスファチジン酸、ミリストレオイルオレオイルホスファチジルコリン、ミリストレオイルオレオイルホスファチジルセリン、ミリストレオイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(ethanoamine)、ミリストレオイルオレオイルホスファチジルグリセロール、ミリストレオイルオレオイルホスファチジン酸、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルセリン、ジリノレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジリノレオイルホスファチジルグリセロール、ジリノレオイルホスファチジン酸、パルミチン酸リノレオイルホスファチジルコリン、パルミチン酸リノレオイルホスファチジルセリン、パルミチン酸リノレオイルホスファチジルエタノールアミン、パルミチン酸リノレオイルホスファチジルグリセロール、パルミチン酸リノレオイルホスファチジン酸。これらのリン脂質はまた、ホスファチジルコリン(リゾホスファチジルコリン(lysophophatidylidylcholine))、ホスファチジルセリン(リゾホスファチジルセリン)、ホスファチジルエタノールアミン(リゾホスファチジルエタノールアミン)、ホスファチジルグリセロール(リゾホスファチジルグリセロール)およびホスファチジン酸(リゾホスファチジン酸)のモノアシル化誘導体であり得る。これらのリゾホスファチジル誘導体におけるモノアシル鎖は、パルミトイル(palimtoyl)、オレオイル、パルミトレオイル、リノレオイル、ミリストイル、またはミリストレオイルであり得る。リン脂質はまた合成であり得る。合成リン脂質は、AVANTI Polar Lipids(Albaster,Ala.);Sigma Chemical Company(St.Louis,Mo.)のような種々の供給源から容易に市販品を入手可能である。これらの合成化合物は、多様であり得、そして、その脂肪酸側鎖において天然に存在するリン脂質においては見出されない変化を有し得る。脂肪酸は、PSまたはPCのいずれかまたは両方において、C14、C16、C18またはC20の鎖長を有する、不飽和脂肪酸側鎖を有し得る。合成リン脂質は、ジオレオイル(18:1)−PS;パルミトイル(16:0)−オレオイル(18:1)−PS、ジミリストイル(14:0)−PS;ジパルミトレオイル(16:1)−PC、ジパルミトイル(16:0)−PC、ジオレオイル(18:1)−PC、パルミトイル(16:0)−オレオイル(18:1)−PC、およびミリストイル(14:0)−オレオイル(18:1)−PC(続く...)を有し得る。従って、一例として、提供される組成物は、パルミトイル16:0を含み得る。
【0057】
検出可能なマーカーは、標的組織または標的細胞を標識または染色するために使用され得るあらゆる物質を含む。検出可能なマーカーの非限定的な例としては、放射性同位元素、酵素、蛍光色素、および量子ドット(Qdot(登録商標))が挙げられる。他の公知であるかまたは新たに発見される検出可能なマーカーが、ターゲティングペプチドと共に使用するために企図される。
【0058】
エフェクター分子は、熱生成ナノシェル(heat generating nanoshell)のようなナノ粒子であり得る。本明細書において使用される場合、「ナノシェル(nanoshell)」は、1以上の電導性シェル層によって囲まれた、別個の誘電体または半導体のコア部分を有するナノ粒子である。米国特許第6,530,944号は、その金属ナノシェルの作製方法および使用方法の教示について、その全体が本明細書により参考として援用される。ナノシェルは、シリコンのような誘電性または不活性な材料のコアで形成され、近赤外光(約800nm〜1300nm)のような放射線を用いて励起され得る高電導性の金属のような材料でコーティングされ得る。励起されると、ナノシェルは熱を発する。得られる過温症は、周囲の細胞または組織を殺傷し得る。ナノシェルのシェルとコアとを組み合わせた直径は、数十ナノメートル〜数百ナノメートルの範囲である。近赤外光は、その組織に透通する能力について有益である。ナノ粒子のコーティングおよび標的細胞の選択に依存して、他の型の放射線もまた使用され得る。例としては、X線、磁場、電場および超音波が挙げられる。特に、癌治療において使用するための、過温症のための既存の方法(例えば、加熱プローブ、マイクロ波、超音波、レーザ、灌流、高周波エネルギー、放射熱の使用)に関する問題が回避される。というのも、本明細書に記載されるようにして使用される放射線のレベルは、ナノ粒子の表面以外において過温症を誘導するには不十分であり、ナノ粒子の表面においては、誘電体上の金属表面によってエネルギーがより効率的に集中させられるからである。粒子はまた、特に、赤外拡散光子画像化法を用いる画像化を増強するために使用され得る。ターゲティング分子は、抗体またはそのフラグメント、特定のレポーターに対するリガンド、または、標的とされた細胞の表面に特異的に結合する他のタンパク質であり得る。
【0059】
エフェクター分子は、ターゲティングペプチドに共有結合され得る。エフェクター分子は、ターゲティングペプチドのアミノ末端に結合され得る。エフェクター分子は、ターゲティングペプチドのカルボキシ末端に結合され得る。エフェクター分子は、ターゲティングペプチド内のアミノ酸に結合され得る。本明細書において提供される組成物はさらに、エフェクター分子とターゲティングペプチドとを接続するリンカーを含み得る。ターゲティングペプチドはまた、ペプチドを含むナノシェルをコーティングするために使用され得るウシ血清アルブミン(BSA)(Tkachenkoら、(2003)J Am Chem Soc,125,4700−4701を参照のこと)のようなコーティング分子に結合体化され得る。
【0060】
エフェクター分子をターゲティングペプチドに架橋するために使用され得るタンパク質クロスリンカーは、当該分野で公知であり、そして、有用性および構造に基づいて規定され、そして、以下が挙げられる:DSS(スベリン酸ジスクシンイミジル)、DSP(ジチオビス(プロピオン酸スクシンイミジル))、DTSSP(3,3’−ジチオビス(プロピオン酸スルホスクシンイミジル))、SULFO BSOCOES(ビス[2−(スルホスクシンイミドキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン)、BSOCOES(ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン)、SULFO DST(酒石酸ジスルホスクシンイミジル)、DST(酒石酸ジスクシンイミジル)、SULFO EGS(エチレングリコールビス(コハク酸スクシンイミジル))、EGS(エチレングリコールビス(コハク酸スルホスクシンイミジル))、DPDPB(1,2−ジ[3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン)、BSSS(ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)、SMPB(スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート)、SULFO SMPB(スルホスクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート)、MBS(3−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、SULFO MBS(3−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル)、SIAB(N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸)、SULFO SIAB(N−スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸)、SMCC(スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、SULFO SMCC(スルホスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、NHS LC SPDP(スクシンイミジル−6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド)ヘキサノエート)、SULFO NHS LC SPDP(スルホスクシンイミジル−6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド)ヘキサノエート)、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、NHS BROMOACETATE(N−ヒドロキシスクシンイミジルブロモアセテート)、NHS IODOACETATE(N−ヒドロキシスクシンイミジルヨードアセテート)、MPBH(4−(N−マレイミドフェニル)酪酸ヒトラジン塩酸塩)、MCCH(4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸ヒドラジン塩酸塩)、MBH(m−マレイミド安息香酸ヒドラジン塩酸塩)、SULFO EMCS(N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)スルホスクシンイミド)、EMCS(N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミド)、PMPI(N−(p−マレイミドフェニル)イソシアネート)、KMUH(N−(κ−マレイミドウンデカン酸)ヒドラジン)、LC SMCC(スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ(6−アミドカプロン酸))、SULFO GMBS(N−(γ−マレイミドブチルオキシ(butryloxy))スルホスクシンイミドエステル)、SMPH(スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンアミドヘキサン酸))、SULFO KMUS(N−(κ−マレイミドウンデカノイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル)、GMBS(N−(γ−マレイミドブチルオキシ)スクシンイミド)、DMP(ジメチルピメルイミデート(pimelimidate)塩酸塩)、DMS(ジメチルスベルイミデート(suberimidate)塩酸塩)、MHBH(Wood試薬)(メチル−p−ヒドロキシベンゾイミデート(benzimidate)塩酸塩、98%)、DMA(ジメチルアジプイミデート(adipimidate)塩酸塩)。
【0061】
本明細書において提供される組成物はさらに、プロゲステロン製剤を含み得る。したがって組成物は、Danazol、酢酸メドロキシプロゲステロン、ノルエチノドレル、酢酸メゲストロール、ジドロゲステロン、ノルエチステロンまたはリネストレノールを含み得る。提供される組成物はさらに、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、GnRHアナログまたはGnRHアゴニストを含み得る。したがって組成物は、リュープロレリン、ナファレリン、ゴセレリン、ブセレリンまたはトリプトレリンを含み得る。組成物はさらに、アロマターゼインヒビターを含み得る。したがって、組成物は、レトロゾールまたはアナスロゾールを含み得る。組成物はさらに、麻酔薬を含み得る。組成物はさらに、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含み得る。したがって、組成物は、イブプロフェン、ナプロキセン、ニューロフェン、ポンスタンまたはボルタレンを含み得る。
【0062】
(1.薬学的キャリア)
本明細書において開示されるターゲティングペプチドは、薬学的に受容可能なキャリアにおいてインビボで投与され得る。したがって、提供される組成物はさらに、薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、生物学的または他に望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、これらの材料は、あらゆる望ましくない生物学的作用を引き起こすことも、これらの材料が含まれる薬学的組成物のあらゆる他の成分と有害な様式で相互作用することもなく、核酸またはベクターと共に被験体に投与され得る。当業者に周知であるように、キャリアは、本来、活性成分のあらゆる分解を最小限にし、そして、被験体におけるあらゆる有害な副作用を最小限にするように選択される。
【0063】
提供される組成物は、溶液、懸濁液中にあり得る(例えば、マイクロ粒子、リポソームまたは細胞中に組み込まれ得る)。提供される組成物はさらに、標的とされた子宮内膜症細胞内へと組成物の内在化を指向するために、抗体、レセプターまたはレセプターリガンドと組み合わされ得る。一般に、レセプターは、構成的であるか、リガンドにより誘導されたかのいずれかのエンドサイトーシスの経路に関与する。クラスリンでコーティングされた小窩におけるこれらのレセプタークラスターは、クラスリンでコーティングされた小胞を介して細胞内に入り、レセプターが分類される酸性化エンドソームを通過し、次いで、細胞表面へとリサイクルされるか、細胞内に貯蔵されるか、または、リソソーム内で分解されるかのいずれかである。内在化経路は、栄養分の取り込み、活性化タンパク質の除去、高分子のクリアランス、ウイルスおよび毒素の日和見性の進入、リガンドの解離および分解、ならびに、レセプターレベルの調節のような、種々の機能を果たす。多くのレセプターは、細胞の型、レセプター濃度、リガンドの型、リガンド価、およびリガンド濃度に依存して、1以上の細胞内経路に従う。レセプターが媒介するエンドサイトーシスの分子および細胞の機構が総説されている(BrownおよびGreene、DNA and Cell Biology 10:6,399−409(1991))。
【0064】
適切なキャリアおよびその処方物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版)、A.R.Gennaro編、Mack Publishing Company,Easton,PA 1995に記載される。代表的には、適切な量の薬学的に受容可能な塩が、処方物を等張にするために処方物において使用される。薬学的に受容可能なキャリアの例としては、生理食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液が挙げられるがこれらに限定されない。この溶液のpHは、好ましくは、約5〜約8であり、より好ましくは、約7〜約7.5である。さらなるキャリアとしては、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスのような持続放出調製物が挙げられ、このマトリックスは、成形された物品の形状(例えば、フィルム、リポソームまたはマイクロ粒子)である。例えば、投与経路および投与される組成物の濃度に依存して、特定のキャリアがより好ましくあり得ることは、当業者に明らかである。
【0065】
薬学的なキャリアは当業者に公知である。これらは、最も代表的には、ヒトに薬物を投与するための標準的なキャリアであり、滅菌水、生理食塩水および生理学的pHの緩衝化溶液などの溶液が挙げられる。組成物は、筋肉内または皮下で投与され得る。他の化合物は、当業者により使用される標準的な手順に従って投与される。
【0066】
薬学的組成物は、選択した分子に加えて、キャリア、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、表面活性剤などを含み得る。薬学的組成物はまた、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬などのような1以上の活性成分を含み得る。
【0067】
非経口投与のための調製物としては、滅菌の水性または非水性の、溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、および注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)である。水性キャリアとしては、水、アルコール性/水性の溶液、エマルジョンまたは懸濁剤(生理食塩水および緩衝化媒体を含む)が挙げられる。非経口投与用ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーのデキストロース溶液、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガー溶液、または、不揮発性油が挙げられる。静脈内投与用ビヒクルとしては、流体および栄養分の補充物、電解質補充物(例えば、リンガーのデキストロース溶液をベースとするもの)などが挙げられる。例えば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、および不活性なガスなどのような保存剤および他の添加物もまた存在し得る。
【0068】
局所投与のための処方物としては、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐剤、スプレー、液体および粉末が挙げられ得る。従来の薬学的キャリア、水性基剤、粉末基剤または油性基剤、増粘剤などが、必要であるか、または望ましくある場合がある。
【0069】
経口投与のための組成物としては、散剤もしくは顆粒剤、水もしくは非水性媒体中の懸濁液もしくは溶液、カプセル剤、サシェ剤、または錠剤が挙げられる。増粘剤、矯味矯臭薬、希釈剤、乳化剤、分散補助剤、または結合剤が望ましくあり得る。
【0070】
いくつかの組成物は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、およびリン酸)および有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸およびフマル酸)との反応によって、または、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム)および有機塩基(例えば、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミンおよびアリールアミン、ならびに、置換エタノールアミン)との反応によって形成された、薬学的に受容可能な酸付加塩または塩基付加塩として投与される可能性があり得る。
【0071】
(2.核酸)
子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドをコードする核酸配列を含む単離された核酸が、本明細書において提供される。この核酸配列は、配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列をコードし得る。
【0072】
この核酸はさらに、エフェクター分子をコードする核酸配列を含み得る。例えば、エフェクター分子は、本明細書中に開示されるあらゆるポリペプチドエフェクターであり得る。エフェクター分子をコードする核酸配列は、ターゲティングペプチドをコードする核酸配列に対して5’側にあり得る。エフェクター分子をコードする核酸配列は、ターゲティングペプチドをコードする核酸配列に対して3’側にあり得る。核酸は、ターゲティングペプチドおよびエフェクター分子を含む融合タンパク質をコードし得る。
【0073】
(3.抗体)
また、本明細書において提供されるターゲティングペプチドに特異的な抗体も、本明細書において提供される。用語「抗体」は、本明細書中で広い意味において使用され、そして、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方を包含する。用語「抗体」には、インタクトな免疫グロブリン分子に加えて、ターゲティングペプチドが標的細胞と相互作用することを防止されるように、ターゲティングペプチドと相互作用する能力について選択される限り、これらの免疫グロブリン分子のフラグメントまたはポリマー、免疫グロブリン分子のヒトバージョンもしくはヒト化バージョンまたはこれらのフラグメントも包含される。抗体は、本明細書中に記載されるインビトロアッセイを用いて、または、類似する方法によって、その所望の活性について試験され得、その後、これらの抗体のインビボでの治療的および/または予防的な活性が、公知の臨床試験方法にしたがって試験される。
【0074】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において使用される場合、抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体をいう:すなわち、この集団内の個々の抗体は、抗体分子の小さな下位集団において存在し得る潜在的な天然に存在する変異を除き、同一である。本明細書におけるモノクローナル抗体は、具体的には、所望の拮抗活性を示す限りは、「キメラ」抗体ならびにこのような抗体のフラグメントを含み、この「キメラ」抗体においては、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体、または、特定の抗体の分類もしくは下位分類に属する抗体における対応する配列と同一であるか、または、これと相同であり、一方で、鎖の残りの部分は、別の種に由来する抗体、または、別の抗体の分類もしくは下位分類に属する抗体における対応する配列と同一であるか、または、これと相同である(米国特許第4,816,567号およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)を参照のこと)。
【0075】
開示されるモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体を生成するあらゆる手順を用いて作製され得る。例えば、開示されるモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、Nature,256:495(1975)により記載される方法のような、ハイブリドーマ法を用いて調製され得る。ハイブリドーマ法において、マウスまたは他の適切な宿主動物が、代表的に、免疫剤を用いて免疫されて、抗体を生成するかまたは生成し得るリンパ球を惹起し、この抗体は、免疫剤に特異的に結合する。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫され得る。
【0076】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号(Cabillyら)に記載される方法のような組換えDNA法によって作製され得る。開示されるモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離および配列決定され得る。抗体または活性な抗体フラグメントのライブラリーがまた、例えば、Burtonらに対する米国特許第5,804,440号およびBarbasらに対する米国特許第6,096,441号に記載されるようなファージディスプレイ技術を用いて、生成およびスクリーニングされ得る。
【0077】
インビトロ法はまた、一価の抗体を調製するために適切である。抗体のフラグメント、特に、Fabフラグメントを生成するための抗体の消化は、当該分野で公知の慣用的な技術を用いて達成され得る。例えば、消化は、パパインを用いて行われ得る。パパイン消化の例は、1994年12月22日に公開されたWO 94/29348および米国特許第4,342,566号に記載される。抗体のパパイン消化は、代表的には、Fabフラグメントと呼ばれる、2つの同一な抗原結合フラグメントと、残りのFcフラグメントとを生成し、このFabフラグメントの各々は、単一の抗原結合部位を有する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋し得るフラグメントをもたらす。
【0078】
フラグメントはまた、他の配列に結合されていても、されていなくても、修飾されていない抗体または抗体フラグメントと比較して、その抗体または抗体フラグメントの活性が、有意に変更されることも損ねられることもないという条件で、特定の領域または特定のアミノ酸残基の挿入、欠失、置換または他の選択された修飾を含み得る。これらの修飾は、ジスルフィド結合し得るアミノ酸を除去/追加する、その生物学的寿命を延長する、その分泌特性を変更する、などのような、いくつかのさらなる特性を提供し得る。どの場合においても、抗体または抗体フラグメントは、その同族抗原に対する特異的な結合のような、生物活性特性を有さなければならない。抗体または抗体フラグメントの機能領域または活性領域は、タンパク質の特異的な領域の変異誘発、その後の、発現および発現されたポリペプチドの試験によって同定され得る。このような方法は、当業者に容易に明らかであり、そして、抗体または抗体フラグメントをコードする核酸の部位特異的な変異誘発を含み得る(Zoller,M.、J.Curr.Opin.Biotechnol.3:348−354,1992)。
【0079】
(G.方法)
(1.細胞のターゲティングおよび検出)
また、細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を被験体に投与する工程を包含する方法も本明細書において提供される。1つの局面においては、細胞は子宮内膜症細胞である。別の局面においては、細胞は子宮内膜症細胞ではない。被験体は細胞を含み得る。したがって、被験体は子宮内膜症細胞を含み得る。
【0080】
提供される方法のターゲティングペプチドは、本明細書において開示されるあらゆるターゲティングペプチドであり得る。したがって、ターゲティングペプチドは、配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列を含み得る。ターゲティングペプチドは、配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有し得る。ターゲティングペプチドは、1以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸を含み得る。提供される方法の組成物はさらに、エフェクター分子を含み得る。したがって、エフェクター分子は、低分子、薬学的な薬物、毒素、脂肪酸、検出可能なマーカー、ナノ粒子または酵素である。
【0081】
また、被験体において子宮内膜症細胞を標的とする方法も本明細書において開示され、この方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を上記被験体に投与する工程を包含する。細胞は子宮内膜症細胞であり得る。ターゲティングペプチドは、配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列を含み得る。ターゲティングペプチドは、配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有し得る。ターゲティングペプチドは、1以上の保存的アミノ酸置換を有する配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0082】
提供される方法の組成物はさらに、エフェクター分子を含み得る。したがって、エフェクター分子は、低分子、薬学的な薬物、毒素、脂肪酸、検出可能なマーカー、ナノ粒子または酵素であり得る。上記方法の組成物は、プロゲステロン製剤を含み得る。したがって、組成物は、Danazol、酢酸メドロキシプロゲステロン、ノルエチノドレル、酢酸メゲストロール、ジドロゲステロン、ノルエチステロンまたはリネストレノールを含み得る。提供される組成物はさらに、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、GnRHアナログまたはGnRHアゴニストを含み得る。したがって組成物は、リュープロレリン、ナファレリン、ゴセレリン、ブセレリンまたはトリプトレリンを含み得る。組成物はさらに、アロマターゼインヒビターを含み得る。したがって、組成物は、レトロゾールまたはアナスロゾールを含み得る。組成物はさらに、麻酔薬を含み得る。組成物はさらに、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含み得る。したがって、組成物は、イブプロフェン、ナプロキセン、ニューロフェン、ポンスタンまたはボルタレンを含み得る。
【0083】
また、被験体において子宮内膜症を検出する方法も本明細書において提供され、この方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を上記被験体に投与する工程、および、上記被験体において上記組成物を検出し、それによって、子宮内膜症を検出する工程を包含する。例えば、組成物は、標識または他の検出可能な部分もしくは分子を(例えば、エフェクターとして)含み得、そして、組成物は、例えば、標識または他の検出可能な部分もしくは分子を検出することによって検出され得る。検出される組成物の存在、位置、パターンまたは他の特徴は、被験体が子宮内膜症を有するという指標として使用され得る。
【0084】
また、被験体において子宮内膜症を診断する方法も本明細書において提供され、この方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を上記被験体に投与する工程、および、上記被験体において上記組成物を検出し、それによって、上記被験体における子宮内膜症を診断する工程を包含する。例えば、組成物は、標識または他の検出可能な部分もしくは分子を(例えば、エフェクターとして)含み得、そして、組成物は、例えば、標識または他の検出可能な部分もしくは分子を検出することによって検出され得る。検出される組成物の存在、位置、パターンまたは他の特徴は、被験体が子宮内膜症を有するという指標として使用され得る。
【0085】
また、被験体において子宮内膜症の予後を決定する方法も本明細書において提供され、この方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を上記被験体に投与する工程、および、上記被験体において上記組成物を検出する工程を包含し、ここで、被験体における子宮内膜症細胞への組成物の結合のレベル、量、濃度または組み合わせは、被験体における子宮内膜症の予後を示す。例えば、組成物は、標識または他の検出可能な部分もしくは分子を(例えば、エフェクターとして)含み得、そして、組成物は、例えば、標識または他の検出可能な部分もしくは分子を検出することによって検出され得る。検出される組成物の存在、位置、パターンまたは他の特徴は、子宮内膜症の重篤度および/またはさらなる進行の指標として使用され得る。
【0086】
また、被験体において子宮内膜症の進行を決定する方法も本明細書において提供され、この方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を上記被験体に投与する工程、上記被験体において上記組成物を検出する工程、ならびに、後の時間に、投与および検出を繰り返す工程を包含し、ここで、上記被験体における子宮内膜症組織への上記組成物の結合のレベル、量、濃度または組み合わせの変化は、上記被験体における子宮内膜症の進行を示す。例えば、組成物は、標識または他の検出可能な部分もしくは分子を(例えば、エフェクターとして)含み得、そして、組成物は、例えば、標識または他の検出可能な部分もしくは分子を検出することによって検出され得る。検出される組成物の存在、位置、パターンまたは他の特徴は、子宮内膜症の進行の指標として使用され得る。
【0087】
また、被験体において子宮内膜症の処置の進行を決定する方法も本明細書において提供され、この方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲンティングペプチドを上記被験体に投与する工程、上記被験体において上記組成物を検出する工程、ならびに、処置後に、投与および検出を繰り返す工程を包含し、ここで、上記被験体における子宮内膜症組織への上記組成物の結合のレベル、量、濃度または組み合わせの変化は、上記被験体における子宮内膜症の処置の進行を示す。例えば、組成物は、標識または他の検出可能な部分もしくは分子を(例えば、エフェクターとして)含み得、そして、組成物は、例えば、標識または他の検出可能な部分もしくは分子を検出することによって検出され得る。検出される組成物の存在、位置、パターンまたは他の特徴は、子宮内膜症の処置の進行の指標として使用され得る。
【0088】
本明細書において提供される検出方法および診断方法のターゲティングペプチドは、当分野で公知のもの、または本明細書に開示されるもののような、検出可能なマーカーに連結され得る。検出可能なマーカーは、当該分野で公知の標準的な方法を用いて検出され得る。
【0089】
開示される組成物はまた、研究ツールとして種々の方法で使用され得る。例えば、配列番号1、2、3または4のような開示される組成物は、子宮内膜症細胞によるタンパク質の発現を研究するために使用され得る。これは、例えば、開示される組成物の細胞への結合に基づいて細胞を単離または選別することによって達成され得る。開示される組成物はまた、子宮内膜症に関連する診断ツールとして使用され得る。開示される組成物はまた、マイクロアレイにおける試薬、または、既存のマイクロアレイを探索もしくは分析するための試薬のいずれかとして使用され得る。
【0090】
(2.投与)
組成物は、経口、非経口(例えば、静脈内)、筋肉内注射、腹腔内、経皮、体外、局所など(局所的な鼻腔内投与または吸入による投与を含む)により投与され得る。例えば、提供される組成物は、腹腔鏡手順の間に、被験体の腹腔内へと投与され得る。組成物の非経口投与は、使用される場合、一般に、注射により特徴付けられる。注射は、液体の溶液もしくは懸濁液、注射前に液体中の懸濁溶液とするのに適した固体形態、または、エマルジョンのいずれかのような従来の形態で調製され得る。非経口投与のためのより近年に修正された手段は、低速放出または一定量の投薬量が維持されるような持続放出のシステムを使用することを含む。例えば、米国特許第3,610,795号(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0091】
組成物を投与するための有効な投薬量およびスケジュールは、経験的に決定され得、このような決定を行うことは、当業者の技術範囲内である。組成物の投与のための投薬量の範囲は、障害の症状が影響を受けるという所望の効果を生じるに十分多い範囲である。投薬量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などのような有害な副作用を生じるほど多いべきではない。一般に、投薬量は、患者の年齢、状態、患者における疾患の程度、ホルモンの状態、投与経路、または、他の薬物が投与計画に含まれているかどうかによって変化し、そして、当業者により決定され得る。投薬量は、あらゆる反作用(counterindication)が生じる場合、個々の医師によって調節され得る。投薬量は、1日または数日にわたって変化し得る。所定の分類の薬学的製品のための適切な投薬量についての文献において手引きが見出され得る。治療剤として使用されるターゲティングペプチド(例えば、ナノシェル結合体)の代表的な1日の投薬量は、上述の要因に依存して、1日あたり、体重1kgあたり、約1μgから1mgまでの範囲、またはそれ以上であり得る。
【0092】
子宮内膜症を処置、阻害または防止するための開示される組成物の投与の後、治療用組成物の効果が、当業者に周知の種々の方法で評価され得る。例えば、当業者は、患者の血清中のCA19−9抗原およびCA125抗原を評価することによって、本明細書において開示される組成物が、被験体における子宮内膜症を処置または阻害することにおいて有効であることを理解する。血清中のCA19−9抗原およびCA125抗原は、子宮内膜症についての診断マーカーとしてはたらき得る(Harada T.ら、2002.Usefulness of CA19−9 versus CA125 for the diagnosis of endometriosis.Fertil.Steril.78:733−739)。抗原レベルもまた、患者の進行をモニターするために使用され得る。処置を評価するための代替的な方法は、腹腔鏡により回収された生検サンプルの病理学的試験を含む。
【0093】
本明細書において開示される組成物、および、開示される方法を実施するために必須の組成物は、そうでないと具体的に述べられない限り、その特定の試薬または化合物についての当業者に公知のあらゆる方法を用いて作製され得る。
【0094】
配列番号1、2、3または4のような開示されるペプチドを生成する1つの方法は、タンパク質化学技術によって2以上のペプチドまたはポリペプチドを一緒に連結することである。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)化学またはBoc(tert−ブチルオキシカルボニル)化学のいずれかを用い、現在利用可能な研究室の装置を用いて化学合成され得る。(Applied Biosystems,Inc.,Foster City,CA)。当業者は、開示されるタンパク質に対応するペプチドまたはポリペプチドが、例えば、標準的な化学反応によって合成され得ることを容易に理解し得る。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、合成され、そして、その合成樹脂から切断されなくてもいいが、ペプチドまたはタンパク質の他のフラグメントは、合成されて、その後、樹脂から切断され、それによって、他のフラグメントにおいて機能的にブロックされる末端基を露出してもよい。ペプチド縮合反応によって、これらの2つのフラグメントが、それぞれ、そのカルボキシル末端およびアミノ末端においてペプチド結合によって共有結合されて、抗体またはそのフラグメントを形成し得る。(Grant GA(1992)Synthetic Peptides:A User Guide.W.H.Freeman and Co.,N.Y.(1992);Bodansky MおよびTrost B.編(1993)Principles of Peptide Synthesis.Springer−Verlag Inc.,NY(これらの文献は、少なくとも、ペプチド合成に関する要素について、本明細書中に参考として援用される))。あるいは、ペプチドまたはポリペプチドは、本明細書中に記載されるように、インビボで独立して合成される。いったん単離されると、これらの独立したペプチドまたはポリペプチドは、類似のペプチド縮合反応によって連結されて、ペプチドまたはそのフラグメントを形成し得る。
【0095】
例えば、クローニングされたかまたは合成されたペプチドセグメントの酵素的連結は、比較的短いペプチドフラグメントを結合して、より大きなペプチドフラグメント、ポリペプチド、または全タンパク質ドメインを生成することを可能にする(Abrahmsen Lら、Biochemistry,30:4151(1991))。あるいは、合成ペプチドの天然の化学的連結が、より短いペプチドフラグメントから大きなペプチドまたはポリペプチドを合成的に構築するために利用され得る。この方法は、2段階の化学反応から構成される(Dawsonら、Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation.Science,266:776−779(1994))。最初の段階は、最初の共有結合生成物としてチオエステル連結中間体をもたらすための、保護されていない合成ペプチド−−アミノ末端Cys残基を含む別の保護されていないペプチドセグメントを有するチオエステルの化学選択的な反応である。反応条件における変更なしに、この中間体は、自発的かつ迅速な分子内反応を受けて、連結部位において天然のペプチド結合を形成する(Baggiolini Mら(1992)FEBS Lett.307:97−101;Clark−Lewis Iら、J.Biol.Chem.,269:16075(1994);Clark−Lewis Iら、Biochemistry,30:3128(1991);Rajarathnam Kら、Biochemistry 33:6623−30(1994))。
【0096】
あるいは、保護されていないペプチドセグメントは、化学的に連結され、この場合、化学連結の結果としてペプチドセグメント間に形成される結合は、非天然(非ペプチド)結合である(Schnolzer,Mら、Science,256:221(1992))。この技術は、タンパク質ドメインのアナログ、ならびに、大量の、完全な生物学的活性を有する比較的純粋なタンパク質を合成するために使用されている(deLisle Milton RCら、Techniques in Protein Chemistry IV.Academic Press,New York,pp.257−267(1992))。
【0097】
(H.組成物の作製方法)
本明細書において開示される組成物、および、開示される方法を実施するために必須の組成物は、そうでないと具体的に述べられない限り、その特定の試薬または化合物についての当業者に公知のあらゆる方法を用いて作製され得る。
【0098】
組成物を作製するためのプロセス、ならびに、組成物をもたらす中間体を作製するためのプロセスが開示される。例えば、配列番号1、2、3または4に示されるペプチドをコードする配列を含む核酸と、核酸分子の発現を制御する配列とを作動可能な方法で連結する工程を包含するプロセスによって生成される核酸分子が開示される。
【0099】
配列番号1、2、3または4に示されるペプチドに対して80%の同一性を有するペプチドをコードする配列を含む核酸分子と、核酸分子の発現を制御する配列とを作動可能な方法で連結する工程を包含するプロセスによって生成される核酸分子が開示される。
【0100】
配列番号1、2、3または4に示されるペプチドに対して80%の同一性を有するペプチドをコードする配列を含む核酸分子(この分子におけるあらゆる変更は保存的な変更である)と、核酸分子の発現を制御する配列とを作動可能な方法で連結する工程を包含するプロセスによって生成される核酸分子が開示される。
【0101】
開示される核酸のいずれかを用いて細胞を形質転換するプロセスによって生成される細胞が開示される。天然に存在しない開示される核酸のいずれかを用いて細胞を形質転換するプロセスによって生成される細胞が開示される。
【0102】
開示される核酸のいずれかを発現させるプロセスによって生成される、開示されるペプチドのいずれかが開示される。開示される核酸のいずれかを発現させるプロセスによって生成される、天然に存在しない開示される核酸のいずれかが開示される。天然に存在しない開示される核酸を発現させるプロセスによって生成される、開示されるペプチドのいずれかが開示される。
【0103】
本明細書において開示される核酸分子のいずれかを用いて動物内の細胞をトランスフェクションするプロセスにより生成される動物が開示される。本明細書において開示される核酸分子のいずれかを用いて動物内の細胞をトランスフェクションするプロセスにより生成される動物が開示され、この動物は哺乳動物である。また、本明細書において開示される核酸分子のいずれかを用いて動物内の細胞をトランスフェクションするプロセスにより生成される動物が開示され、ここで哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタまたは霊長類である。
【0104】
また、本明細書において開示される細胞のいずれかを動物に加えるプロセスにより生成される動物も開示される。
【0105】
(1.核酸合成)
開示される核酸(例えば、プライマーとして使用されるべきオリゴヌクレオチド)は、標準的な化学合成法を用いて作製され得るか、または、酵素的方法もしくは任意の他の公知の方法を用いて生成され得る。このような方法は、標準的な酵素消化に続き、ヌクレオチドフラグメントの単離(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)第5章、第6章を参照のこと)から、例えば、MilligenまたはBeckman System 1Plus DNA合成装置(例えば、Milligen−Biosearch(Burlington,MA)のModel 8700自動合成装置またはABI Model 380B)を用いるシアノエチルホスホラミダイト法による純粋な合成法までに及び得る。オリゴヌクレオチドを作製するために有用な合成方法はまた、Ikutaら、Ann.Rev.Biochem.53:323−356(1984)(リン酸トリエステルおよび亜リン酸トリエステル法)およびNarangら、Methods Enzymol.,65:610−620(1980)(リン酸トリエステル法)により記載される。タンパク質核酸分子は、Nielsenら、Bioconjug.Chem.5:3−7(1994)により記載される方法のような公知の方法を用いて作製され得る。
【0106】
(2.ペプチド合成)
配列番号1、2、3または4のような開示されるペプチドを生成する1つの方法は、タンパク質化学技術によって2以上のペプチドまたはポリペプチドを一緒に連結することである。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)化学またはBoc(tert−ブチルオキシカルボニル)化学のいずれかを用い、現在利用可能な研究室の装置を用いて化学合成され得る。(Applied Biosystems,Inc.,Foster City,CA)。当業者は、開示されるタンパク質に対応するペプチドまたはポリペプチドが、例えば、標準的な化学反応によって合成され得ることを容易に理解し得る。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、合成され、そして、その合成樹脂から切断されなくてもいいが、ペプチドまたはタンパク質の他のフラグメントは、合成されて、その後、樹脂から切断され、それによって、他のフラグメントにおいて機能的にブロックされる末端基を露出してもよい。ペプチド縮合反応によって、これらの2つのフラグメントが、それぞれ、そのカルボキシル末端およびアミノ末端においてペプチド結合によって共有結合されて、抗体またはそのフラグメントを形成し得る。(Grant GA(1992)Synthetic Peptides:A User Guide.W.H.Freeman and Co.,N.Y.(1992);Bodansky MおよびTrost B.編(1993)Principles of Peptide Synthesis.Springer−Verlag Inc.,NY(これらの文献は、少なくとも、ペプチド合成に関する要素について、本明細書中に参考として援用される))。あるいは、ペプチドまたはポリペプチドは、本明細書中に記載されるように、インビボで独立して合成される。いったん単離されると、これらの独立したペプチドまたはポリペプチドは、類似のペプチド縮合反応によって連結されて、ペプチドまたはそのフラグメントを形成し得る。
【0107】
例えば、クローニングされたかまたは合成されたペプチドセグメントの酵素的連結は、比較的短いペプチドフラグメントを結合して、より大きなペプチドフラグメント、ポリペプチド、または全タンパク質ドメインを生成することを可能にする(Abrahmsen Lら、Biochemistry,30:4151(1991))。あるいは、合成ペプチドの天然の化学的連結が、より短いペプチドフラグメントから大きなペプチドまたはポリペプチドを合成的に構築するために利用され得る。この方法は、2段階の化学反応から構成される(Dawsonら、Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation.Science,266:776−779(1994))。最初の段階は、最初の共有結合生成物としてチオエステル連結中間体をもたらすための、保護されていない合成ペプチド−−アミノ末端Cys残基を含む別の保護されていないペプチドセグメントを有するチオエステルの化学選択的な反応である。反応条件における変更なしに、この中間体は、自発的かつ迅速な分子内反応を受けて、連結部位において天然のペプチド結合を形成する(Baggiolini Mら(1992)FEBS Lett.307:97−101;Clark−Lewis Iら、J.Biol.Chem.,269:16075(1994);Clark−Lewis Iら、Biochemistry,30:3128(1991);Rajarathnam Kら、Biochemistry 33:6623−30(1994))。
【0108】
あるいは、保護されていないペプチドセグメントは、化学的に連結され、この場合、化学連結の結果としてペプチドセグメント間に形成される結合は、非天然(非ペプチド)結合である(Schnolzer,Mら、Science,256:221(1992))。この技術は、タンパク質ドメインのアナログ、ならびに、大量の、完全な生物学的活性を有する比較的純粋なタンパク質を合成するために使用されている(deLisle Milton RCら、Techniques in Protein Chemistry IV.Academic Press,New York,pp.257−267(1992))。
【0109】
(I.キット)
上述の材料ならびに他の材料は、開示される方法を実施するか、または、開示される方法の遂行を補助するために有用なキットとして、あらゆる適切な組み合わせで一緒に包装され得る。所定のキット内のキット構成要素は、開示される方法において一緒に使用するために設計および適合されることが有用である。例えば、子宮内膜症を診断するためのキットが開示される。キットは、検出可能なマーカーに結合体化されたターゲティングペプチドを含む組成物と、検出手段とを含み得る。検出可能なマーカーは当該分野で公知であり、例えば、酵素、蛍光分子およびタンパク質、ならびに、放射性同位元素が挙げられる。検出手段もまた当該分野で公知であり、そして、選択されるマーカーに依存する。
【0110】
(J.システム)
開示される方法を実施するか、または、開示される方法の遂行を補助するために有用なシステムが開示される。システムは、一般に、構造体、機械、デバイスなどのような製造品と、組成物、化合物、材料などとの組み合わせを含む。開示され、そして、本開示から明らかであるこのような組み合わせが企図される。例えば、ナノシェルに結合体化されたターゲティングペプチドを含む組成物と、ナノシェルを励起させるための手段とを含むシステムが開示および企図される。このような手段は当該分野で公知である。
【実施例】
【0111】
(1.実施例1)
(材料および方法)
ファージライブラリーおよび抗体。T7 Select 415−1bベクター(Novagen)において構築したランダムな9マーのペプチド配列を提示するT7ファージライブラリー(Essler,M.およびRuoslahti,E.、2002)。ポリクローナルウサギ抗T7ファージ抗体は、正常なヒトおよびマウス組織の凍結パラフィン包埋切片と交差反応しない(Essler,M.およびRuoslahti,E.、2002)。
【0112】
合成ペプチド。以下のペプチドを、AnaSpec(San Jose,CA)により合成した:z13、VRRADNRPG(配列番号3);cys−z13、CVRRADNRPG(配列番号6);cys−m2、CRGMSDTTAL(配列番号5);蛍光FITC−z13および脂肪酸を結合体化したC16−z13。cys−Z13およびcys−m2の各々は、Qdot抗体結合キット(Quantum Dot,Hayward,CA)を製造業者のプロトコルに従って使用して、蛍光ナノ結晶であるQdot605に結合した。
【0113】
リポソームの調製。20μlのC16−z13ペプチド(クロロホルム:メタノール=2:1中10mM)を、丸底フラスコ内で20μlのホスファチジルコリン(クロロホルム中100mM)および10μlのコレステロール(クロロホルム中100mM)と混合し、そして、ロータリーエバポレーターでエバポレートした。このサンプルを真空中で乾燥させ、500μlの0.3Mクエン酸に溶解し、そして、3回凍結乾燥し、その後、10分間超音波処理した。500μlの0.2M NaCOおよび20μlの1μM Qdot605ストレプトアビジンを添加し、そして、60℃で1時間加熱した。1mlの20mM Hepes緩衝液(pH7.2)を添加した後、このリポソーム溶液を4℃にて90,000rpmで30分間遠心分離し、そして、ペレットをPBS中に溶解した。
【0114】
細胞株および細胞培養。ヒト子宮内膜腺癌細胞株であるIshikawa(Lessey,B.A.ら、1996;Castelbaum,A.J.ら、1997)を入手した。ヒト子宮内膜上皮細胞株であるHES(Desai,N.N.ら、1994)を入手した。子宮内膜腺癌であるSNG−IIについては、以前に記載した(Nozawa,S.ら、1989)。子宮内膜腺癌株RL95−2およびHec1 A;ヒト扁平上皮細胞癌A431;ならびにヒト子宮頚部癌HeLa細胞を、American Tissue Culture Collection,Manassas,VAから入手した。全ての細胞を、10%胎仔ウシ血清、2mMグルタミン、1mMピルビン酸、100単位/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを補充した、高グルコース濃度のDulbeccoの改変Eagle培地中、5% COの加湿インキュベーター内で37℃において培養した。
【0115】
ファージライブラリースクリーニング。6週齢のC57/BL6雌性マウスをアベルチンで麻酔し、合計1011クローンを含む1mlのT7ファージライブラリーを腹腔内に注射した。30分後、腹腔を10mlのPBSで洗浄することにより、ライブラリーを回収した。このサブトラクションライブラリーを、3.5cm組織培養プレートにおいて増殖させた単層のIshikawa細胞に加え、そして、37℃にて30分間インキュベートして、結合したファージをエンドサイトーシスにより内在化させた。細胞をDMEで6回洗浄し、そして、トリプシン処理により剥離した。細胞を、PBS中1%のNP−40により可溶化し、そして、コンピテントなBL21細菌をこの解放されたファージで感染させた。細胞溶解が起こるまで、T7ファージをBL21細胞中で増幅させた。増幅したファージ1×10クローン(1ml)を、マウスの腹腔により再度サブトラクションし、そして、上記のようにIshikawa細胞と共にインキュベートすることにより選択した。このサイクルを3回繰り返した。クローニングしたファージの各々の標的細胞への結合を、ポジティブコントロールとしてIshikawa細胞から、または、ネガティブコントロールとしてA431細胞から回収したファージプラークの数を計数することによって決定した。ファージクローンの配列決定を、記載されるように行った(Hoffman,J.A.ら、2002)。
【0116】
蛍光顕微鏡検査法。Ishikawa細胞およびA431細胞を、3.5cmの組織培養プレート内のカバーガラスの上で増殖させた。z13を含む各ファージクローンをこれらの細胞に添加し、4℃にて15分間インキュベートし、冷PBSで洗浄し、そして、PBS中1%のパラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。ウサギ抗T7抗体およびFITC結合体化ヤギ抗ウサギIgG抗体を用いて、ファージを検出した。PBSで3回洗浄した後、細胞をPBS中1%のパラホルムアルデヒドで固定し、Zeiss Axioplan蛍光顕微鏡下で観察した。カバーガラス上で増殖させたIshikawa細胞を、FITC−z13ペプチド(1μg/ml)を含む培地中で37℃にて15分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、細胞をPBS中1%のPFAで固定し、そして、蛍光顕微鏡下で観察した。Qdot被包化リポソームおよびC16−z13ペプチドでコーティングしたリポソームを、上述のようにして調製した。Ishikawa細胞をこれらのリポソームと共に37℃にて15分間インキュベートし、PBSで洗浄し、1% PFAで固定し、そして、蛍光顕微鏡下で観察した。Qdot605結合体化ペプチド、Qdot−cys−z13またはコントロールペプチドであるQdot−cys−m2を100nMでこの培養物に添加し、37℃にて15分間置いた。
【0117】
インビボターゲティングについて、Qdot−cys−z13またはQdot−cys−m2(200μlのPBS/マウス中200nmol)を、ヒト子宮内膜組織の腹腔内移植を受けたSCIDマウスの腹腔内に注射した。このマウスの腹部を、やさしくマッサージし、注射した物質を腹腔全体へと拡散させた。30分後、マウスを屠殺し、そして、子宮内膜移植片と腹膜に面する臓器を単離した。組織をPBS中で洗浄し、O.C.T.化合物(Sakura Finetechnical,Tokyo,Japan)内で包埋し、凍結切片を作製した。切片を冷メタノールで固定し、DAPIを含むVectaシールド(Vector)で覆い、そして、蛍光顕微鏡で観察した。
【0118】
プロゲステロンレセプター(PR)についての免疫組織化学を以下のようにして行った:Qdot−cys−z13を注射したマウス、Qdot−cys−m2を注射したマウス、および注射を行わなかったコントロールマウスから調製した凍結マウス組織切片を、冷メタノール中で15分間固定した。組織切片をPBS中のアビジン(5μg/ml)を用いて室温にて15分間ブロッキングし、その後、ビオチン(5μg/ml)を含む10%ヤギ血清と共に1時間インキュベートした。この組織切片を、次いで、希釈した(1:100)抗PR抗体(DAKO,Carpinteria,CA)を用いて4℃にて20時間の免疫組織化学に適用した。PBSで洗浄した後、切片をビオチン化した抗ウサギIgG抗体(Zymed)およびストレプトアビジン結合体化Qdot565と共にインキュベートした。
【0119】
凍結ヒト組織切片におけるファージの免疫組織化学。各患者から文書でのインフォームドコンセントを得た後に、子宮内膜症(腺筋症)を含むヒト組織を患者から入手した。信州大学医学部の倫理調査委員会は、この研究のためにヒト被験体を使用することを承認した。これらの組織生検を、20%緩衝化ホルマリン(pH7.4)で48時間固定し、次いで、0.88M 高張性ガムショ糖溶液(hypertonic gum sucrose solution)と共に一晩インキュベートした。これらを、O.C.T.化合物中−80℃において急速凍結し、そして、6μmの厚さに薄切した。この凍結切片をスライド上に置き、そして、使用まで凍結状態に保管した。ファージをこの切片上に室温にて30分間重ね、PBSで洗浄し、そして、PBS中1%のパラホルムアルデヒドで固定した。ウサギ抗T7ファージ抗体と、その後の、免疫ペルオキシダーゼ反応を用いて、組織切片の免疫組織化学を行った。染色をDABにより可視化し、対比染色にはヘマトキシリンを用いた。
【0120】
腹腔内子宮内膜症のためのマウスモデル。子宮内膜組織を腹壁に移植したことを除いて、記載されたようにしてSCIDマウスおよびヒト子宮内膜症組織を用いて、子宮内膜症のマウスモデルを構築した(Aoki,D.ら、1994)。簡単に述べると、子宮筋腫および卵巣嚢腫のための外科手術を受けた患者からの子宮摘出術の間にヒト正常子宮内膜生検を入手した。各患者から、文書によるインフォームドコンセントを得た。この研究のためのヒト被験体の使用は、慶応大学医学部の倫理調査委員会により承認された。やさしく掻爬することによって各生検から子宮筋層を除いた後、残りの子宮内膜を、安全剃刀で2mm角に切断した。使用時まで、生検を、30ng/mlのペニシリンGを含む滅菌培地(pH7.4)中に維持した。アバーチン(50mg/kg)での腹腔内麻酔下の各マウスを、仰向けに置き、そして、腹部に約2cmの長さの切開をつくった。各々が2mm角の2片の子宮内膜組織を、吸収性の縫合材料を用いて腹壁に移植した。動物を10週まで維持した。
【0121】
(結果)
ファージクローンの同定。子宮内膜腺癌Ishikawa株は子宮内膜上皮の特徴を示す(Lessey,B.A.ら、1996;Castelbaum,A.J.ら、1997;Gong,Y.ら、1994)ので、Ishikawa細胞をライブラリースクリーニングにおける標的として使用した。
【0122】
目的は、腹腔内子宮内膜症を標的とするために使用され得るペプチドを同定することであったので、マウスの腹腔によるサブトラクション工程は、ライブラリースクリーニングの間に含めた(Stausbol−Gron,B.ら、1996;Rasmussen,U.B.ら、2002)。したがって、直鎖上の9マーのペプチドについてのファージライブラリー(1011pfu)を雌性マウスの腹腔内に注射した。やさしくマッサージすることにより、ファージを腹膜組織と共にインキュベートした。30分後、マウスを屠殺し、そして、次の工程のために、ファージライブラリーを腹腔から回収した。このサブトラクション工程は、ライブラリースクリーニングの各サイクルに含めた(図1A)。子宮内膜の腺上皮細胞の細胞質へと局在化するペプチドを同定し、その結果として、このペプチドに結合体化した薬物が効率的に子宮内膜細胞を殺傷し得るように、ファージライブラリーを室温または37℃にてIshikawa細胞と共にインキュベートして、細胞表面に結合したときに、ファージの内在化を促進することによってスクリーニングした。このストラテジーによって3ラウンドのライブラリースクリーニングを行った後、Ishikawa細胞に結合したファージの数は、加えたファージの総数に対して、10,000倍増加した(図1B)。
【0123】
このファージプールを、子宮内膜症を含む凍結ヒト組織切片上に重ね、そして、ファージの切片への結合を、抗T7ファージ抗体を用いる免疫ペルオキシダーゼ法により可視化した。子宮内膜症の腺上皮細胞において、特に、先端の細胞表面において強いシグナルを検出し(図1C)、そして、同じ切片の平滑筋細胞、血管、または間質細胞において比較的弱いシグナルが見られた。ヒトの肺、結腸、心臓および肝臓からの切片上に重ねたファージについては、明らかなシグナルは存在しなかった(図1D)。これらの結果は、ファージプールが、子宮内膜症の子宮内膜線上皮細胞に特異的に結合するクローンを含むことを示す。それゆえ、このプールにおける各ファージクローンを配列決定して、ファージ上に表示されるペプチド配列を決定した(表I)。
【0124】
クローニングしたファージの結合特異性。いくつかの選択したファージクローンは、コンセンサス配列を示した(表3)。z12クローン、z13クローンおよびz15クローンにおけるペプチド配列は、VRRAPG(配列番号1)であり、ここで、Xは、これらのクローンの間で変化し得るアミノ酸残基を表す。z12クローン、z13クローンおよびz15クローンを、個々に凍結子宮内膜切片に重ねたとき、抗ファージ抗体による免疫組織化学は、図1Cに示される染色パターンと同様の染色パターンを示した。Ishikawa細胞およびコントロールのA431細胞を用いたクローンのインビトロ結合アッセイは、z12ファージ、z13ファージおよびz15ファージは、A431細胞よりも有意に高い効率でIshikawa細胞に結合することを示した(図2A)。この結合アッセイはまた、z13が、Ishikawa細胞に対する3つのうちで最も強い結合物質であることを示した。Ishikawa細胞に加えて、z13ファージは、子宮内膜腺癌、SNG−II細胞、RL95−2細胞、Hec1A細胞およびHES細胞には結合するが、A431細胞、前立腺癌PC−3細胞および子宮頚部癌HeLa細胞には結合しないことを決定し(図2B)、この結合は、子宮内膜細胞に特異的であることを示唆した。これらの結果は、本発明者らに、ペプチド配列VRRADNRPG(配列番号3)を表示するz13ファージに焦点をしぼらせた。
【0125】
【数3】

合成z13ペプチドのインビトロターゲティング活性。Ishikawa細胞にz13ファージを重ね、そして、抗ファージ抗体と反応させたとき、免疫蛍光顕微鏡検査法は、陽性シグナルを示したが(図2C)、z13ファージを重ねたA431細胞は陽性シグナルを示さなかった(図2D)。FITC−z13、すなわち、そのアミノ末端にFITCを結合体化させた合成蛍光タグ化Z13ペプチドはIshikawa細胞に結合したが(図2E)、FITC−z13は、A431細胞においては蛍光を示さなかった(図2F)。これらの結果は、z13ファージ上に表示されるペプチド配列が、Ishikawa細胞に対する結合活性を有することを示す。
【0126】
続いて、z13ペプチドを化学的に合成し、そして、ペプチドがリポソーム内に効率的に取り込まれるように、そのアミノ末端においてパルミトイルC16脂肪酸と結合体化させた。蛍光試薬(Qdotストレプトアビジン)を、ペプチドでコーティングしたリポソーム内に封入し、蛍光顕微鏡下で追跡することを可能にした。z13ペプチドでコーティングしたリポソームを生きたIshikawa細胞上に加えるとき、細胞表面に強い蛍光シグナルが検出された(図2G)。対照的に、コントロール(RGMSDTTAL;配列番号9)ペプチド(C16−m2)でコーティングした蛍光リポソームは、蛍光シグナルを示さなかった。これらの結果は、C16−z13でコーティングされたリポソームが、Ishikawa細胞を特異的に標的とすることを示す。
【0127】
合成cys−z13ペプチドであるCVRRADNRPG(配列番号6)を、Qdotに結合体化させた。Qdot−cys−z13をIshikawa細胞培養物に加えたとき、Ishikawa細胞上に強い蛍光が検出されたが(図2I)、Qdot−cys−m2すなわちコントロールペプチドのQdot結合体は、Ishikawa細胞上に蛍光シグナルを示さなかった(図2J)。これらの結果は、z13ペプチドが、そのアミノ末端における改変にもかかわらず、効率的にIshikawa細胞に結合することを示す。
【0128】
合成z13ペプチドを用いた子宮内膜症のインビボターゲティング。z13ファージのインビボターゲティング活性を、SCIDマウスにおける実験的な子宮内膜症モデルを用いて評価した。SCIDマウスの腹壁に移植されたヒト子宮内膜生検を、記載されるように調製した(Aoki,D.ら、1994)(上の実験手順を参照のこと)。移植された子宮内膜組織の組織学は、間質細胞と子宮内膜症患者において見られる病巣に似た炎症性細胞との混合したバックグラウンドの中に、子宮内膜腺組織の存在を示した。Qdot−z13を子宮内膜症モデルマウスの腹腔に注射した。30分後、マウスを屠殺し、そして、子宮内膜病巣ならびに腹膜に面する組織を単離した。組織切片の蛍光顕微鏡検査法は、子宮内膜症病巣の表面上皮において明確な蛍光シグナルを示した(図3A)。ときおり、認識可能な子宮内膜症のないマウスの腹膜表面において強い蛍光が検出された(図3B)。比較的頻度は高くないが、マウスの子宮、卵巣および卵管の表面においても蛍光が検出された(図3C)。肝臓の表面においては蛍光は検出されなかった(図3D)。子宮内膜症マウスモデルに注射されたコントロールのQdot−cys−m2は、子宮内膜症病巣においても(図3E)、他の腹膜に面するマウス組織においても(図3F、G、H)蛍光を示さなかった。Qdot−cys−z13をヒト子宮内膜症を有さないSCIDマウスに注射したとき、腹腔に面するマウス組織内に蛍光シグナルは検出されなかった。
【0129】
マウス腹膜におけるヒト子宮内膜細胞の同定。Qdot−cys−z13の結合パターン(図3)は、ヒト子宮内膜細胞が、腹腔全体に拡がり、そして、種々の位置において増殖していることを示した。ヒトPRに特異的なウサギ抗体(Traish,A.M.およびWotiz,H.H.、1990)を用いた免疫組織化学は、移植片におけるヒト子宮内膜の間質細胞および腺上皮細胞の強い核染色を示した(図4A)。これらの細胞の細胞質もまた、この抗体により染色された。この抗体を子宮内膜移植を受けていないコントロールマウスからの生検と反応させたとき、この抗体はマウスの子宮および卵管の細胞を染色し、これは、マウスPRに対するこの抗体の交差免疫反応性を示唆した。対照的に、コントロールマウスからの腹膜細胞は、この抗体では染色されなかった(図4B)。
【0130】
ヒト子宮内膜移植を受けたマウスの腹膜は主としてPRに対して陰性であったが、腹膜の外側層における細胞の細胞質において(図4C)、そして、腹膜の核において(図4D)は、陽性染色が見られた。この抗体は、コントロールマウスにおいて腹膜細胞と反応しなかったので(図4B)、これらの結果は、免疫反応性細胞(図4C、D)が、ヒト子宮内膜移植片起源のものであることを示す。免疫組織化学を、Qdot−cys−z13を注射した子宮内膜症モデルマウスにおいて行ったとき、赤色のQdot−cys−z13シグナルおよび緑色のPRシグナルはしばしば重なっていた(図4E、F)。これらの結果は、ヒト子宮内膜細胞に対して標的化されたQdot−cys−z13が、マウスにおいて、インビボで腹膜に付着したことを示す。
【0131】
(2.実施例2)
C16脂肪酸を結合体化したz13ペプチド、アポトーシス誘導性糖脂質であるGD3(De Maria,R、1997;Malisan,F.、2002)、またはこれらの両方を含むリポソームを作製した。GD3は、天然かつ広く発現されるグリコスフィンゴリピドである。GD3は、原形質膜に局在化する。しかし、GD3が細胞質に局在化するとき、GD3は、ミトコンドリア膜に結合して、アポトーシスを誘導する。GD3のみを含むリポソームをヒト子宮内膜Ishikawa細胞に加えたとき、これらの細胞は、効率的ではないが、アポトーシスにより殺傷された。しかし、z13およびGD3の両方を含むリポソームをIshikawa細胞に加えたとき、細胞は殺傷されなかった。これらの結果は、z13ペプチドに対するレセプターが、選別経路の膜タンパク質であること;すなわち、レセプターは、z13/GD3リポソームに結合し、エンドソームへと内在化し、次いで、細胞表面へと循環して戻ったことを示す。それゆえ、z13を含むリポソームにおいてGD3は、標的細胞の細胞質へと送達されなかった。リポソーム内および/またはターゲティングペプチド上に内在化配列を含めることは、ターゲティングペプチド、および、ターゲティングペプチドを含む組成物中の物質の内在化を補助し得る。例えば、C16脂肪酸を結合体化したTATペプチド、C16脂肪酸を結合体化したz13ペプチドおよびGD3を含むリポソームは、内在化を評価するために子宮内膜細胞へと適用され得る。このことは、標的とされた細胞の細胞質へのGD3の内在化、および、アポトーシスの誘導を可能にし得る。
【0132】
(B.参考文献)
【0133】
【数4】

【0134】
【数5】

【0135】
【数6】


【0136】
(C.配列)
【0137】
【数7】

【0138】
【数8】

【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1A】図1は、ペプチドを表示するファージライブラリーのスクリーニングを示す。図1Aは、マウス腹膜によるサブトラクション、および、Ishikawa細胞の単層における接着/内在化を含むライブラリースクリーニングの工程を示す。
【図1B】図1は、ペプチドを表示するファージライブラリーのスクリーニングを示す。図1Bは、ライブラリースクリーニングの各ラウンドの後に得られるファージプールのIshikawa細胞への結合効率を示す。
【図1C】図1は、ペプチドを表示するファージライブラリーのスクリーニングを示す。図1Cは、ヒト子宮内膜症の凍結切片の上にファージを重ねたものを示す。3ラウンドのライブラリースクリーニングの後に得られるファージプールを凍結切片の上に重ねた。ファージの結合を、免疫ペルオキシダーゼ法によりウサギ抗T7ファージ抗体を用いて免疫組織化学により可視化した。対比染色はヘマトキシリンを用いて行った。矢印は、子宮内膜腺上皮の先端の膜の陽性染色を示す。アスタリスクは、子宮筋層の平滑筋細胞を示す。目盛棒は100μmである。
【図1D】図1は、ペプチドを表示するファージライブラリーのスクリーニングを示す。図1Dは、ヒト肝臓の凍結切片の上にファージを重ねたものを示す。3ラウンドのライブラリースクリーニングの後に得られるファージプールを凍結切片の上に重ねた。ファージの結合を、免疫ペルオキシダーゼ法によりウサギ抗T7ファージ抗体を用いて免疫組織化学により可視化した。対比染色はヘマトキシリンを用いて行った。矢印は、子宮内膜腺上皮の先端の膜の陽性染色を示す。アスタリスクは、子宮筋層の平滑筋細胞を示す。目盛棒は100μmである。
【図2A】図2は、クローニングしたファージおよび合成z13ペプチドの培養細胞へのインビトロ結合を示す。図2Aは、ファージz11クローン、z12クローン、z13クローン、z15クローンおよびz24クローンを用いた場合の、Ishikawa細胞およびコントロールのA431細胞へのファージの結合を示す。図2Aにおいて、37℃にて30分間、ファージを各細胞株の単層に加えた。内在化したファージを、プラーク形成アッセイにより計数した。
【図2B】図2は、クローニングしたファージおよび合成z13ペプチドの培養細胞へのインビトロ結合を示す。図2Bは、子宮内膜細胞(1〜5)およびコントロール細胞(6〜8)へのz13ファージの結合を示す。1,Ishikawa細胞;2,SNG−II細胞;3,RL95−2細胞;4,Hec1A細胞;5,HES細胞;6,A431細胞;7,PC−3細胞;8,HeLa細胞。図2Bにおいて、37℃にて30分間、ファージを各細胞株の単層に加えた。内在化したファージを、プラーク形成アッセイにより計数した。
【図2C】図2は、クローニングしたファージおよび合成z13ペプチドの培養細胞へのインビトロ結合を示す。図2Cは、z13ファージを重ね、その後に、抗ファージ抗体およびFITCを結合体化した抗ウサギIgG抗体を用いて免疫染色した、Ishikawa細胞の蛍光顕微鏡写真を示す。目盛棒は10μmである。
【図2D】図2は、クローニングしたファージおよび合成z13ペプチドの培養細胞へのインビトロ結合を示す。図2Dは、z13ファージを重ね、その後に、抗ファージ抗体およびFITCを結合体化した抗ウサギIgG抗体を用いて免疫染色した、A431細胞の蛍光顕微鏡写真を示す。目盛棒は10μmである。
【図2E】図2は、クローニングしたファージおよび合成z13ペプチドの培養細胞へのインビトロ結合を示す。図2Eは、Ishikawa細胞に重ねたFITC−z13ペプチドを示す。目盛棒は10μmである。
【図2F】図2は、クローニングしたファージおよび合成z13ペプチドの培養細胞へのインビトロ結合を示す。図2Fは、A431細胞に重ねたFITC−z13ペプチドを示す。目盛棒は10μmである。
【図2G】図2は、クローニングしたファージおよび合成z13ペプチドの培養細胞へのインビトロ結合を示す。図2Gは、Ishikawa細胞に重ねた、C16−z13ペプチドでコーティングしたQdotを封入したリポソームを示す。蛍光の像を示す。目盛棒は10μmである。
【図2H】図2は、クローニングしたファージおよび合成z13ペプチドの培養細胞へのインビトロ結合を示す。図2Hは、Ishikawa細胞に重ねた、C16−z13ペプチドでコーティングしたQdotを封入したリポソームを示す。位相コントラスト像を示す。目盛棒は10μmである。
【図2I】図2は、クローニングしたファージおよび合成z13ペプチドの培養細胞へのインビトロ結合を示す。Ishikawa細胞の上に重ねたQdot−cys−z13。目盛棒は10μmである。
【図2J】図2は、クローニングしたファージおよび合成z13ペプチドの培養細胞へのインビトロ結合を示す。Ishikawa細胞の上に重ねたQdot−cys−m2。目盛棒は10μmである。
【図3】図3は、SCIDマウスにおけるz13ペプチドによるヒト子宮内膜症のターゲティングを示す。Qdot−z13(A〜D)またはコントロールのQdot−m2(E〜H)を、子宮内膜症マウスモデルの腹腔内に注射し、注射から30分後に、Qdotの分布を蛍光顕微鏡検査法により決定した。図3Aおよび3Eは、ヒト子宮内膜症移植片を示し;図3Bおよび3Fは、腹膜を示し;図3Cおよび3Gは、卵管および卵巣を示し;そして、図3Dおよび3Hは、肝臓を示す。矢印は、マウスの臓器における陽性のQdotシグナルを示す;oviは卵管を示し;ovaは卵巣を示す。目盛棒は20μmである。
【図4】図4は、SCIDマウスにおけるヒト子宮内膜細胞の局在化とQdot−z13のターゲティングを示す。図4Aは、抗PR抗体を用いたヒト子宮内膜症移植片の免疫染色を示す。図4Bは、抗PR抗体を用いたコントロールマウスの腹膜の陰性染色を示す。図4Cおよび4Dは、子宮内膜症モデルマウスの腹膜に見られる陽性の免疫染色を示す。図4Eおよび4Fは、子宮内膜症モデルマウスの腹膜に見られるQdot−z13およびPRの免疫染色の重ね合わせを示す。目盛棒は10μmである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物。
【請求項2】
前記ターゲティングペプチドが、配列番号1、2、3または4に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ターゲティングペプチドが、配列番号1、2、3または4に示される前記アミノ酸配列と少なくとも65%の配列同一性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ターゲティングペプチドが、配列番号1、2、3または4に示される前記アミノ酸配列と少なくとも75%の配列同一性を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ターゲティングペプチドが、配列番号1、2、3または4に示される前記アミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ターゲティングペプチドが、配列番号1、2、3または4に示される前記アミノ酸配列を有する少なくとも6個の連続するアミノ酸のアミノ酸セグメントを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ターゲティングペプチドが、配列番号1、2、3または4に示される前記アミノ酸配列と少なくとも65%の配列同一性を有する少なくとも6個の連続するアミノ酸のアミノ酸セグメントを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記アミノ酸セグメントが、9個の連続するアミノ酸から本質的になる、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
配列番号1、2、3または4からの任意の変化が、保存的アミノ酸置換である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記ターゲティングペプチドが、少なくとも6個のアミノ酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ターゲティングペプチドが、少なくとも7個のアミノ酸を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ターゲティングペプチドが、少なくとも8個のアミノ酸を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ターゲティングペプチドが、少なくとも9個のアミノ酸を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
エフェクター分子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記エフェクター分子が、低分子、薬学的な薬物、毒素、脂肪酸、検出可能なマーカー、結合タグ、ナノシェルまたは酵素である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記エフェクター分子が、前記ターゲティングペプチドに共有結合される、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記エフェクター分子が、前記ターゲティングペプチドのアミノ末端に結合される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記エフェクター分子が、前記ターゲティングペプチドのカルボキシ末端に結合される、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記エフェクター分子が、前記ターゲティングペプチド内のアミノ酸に結合される、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記エフェクター分子と前記ターゲティングペプチドとを接続するリンカーをさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
プロゲステロン製剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、GnRHアナログまたはGnRHアゴニストをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
アロマターゼインヒビターをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
麻酔薬をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドをコードする核酸配列を含む、単離された核酸。
【請求項28】
前記ターゲティングペプチドが、配列番号1、2、3または4に示される前記アミノ酸配列を含む、請求項27に記載の単離された核酸。
【請求項29】
前記核酸がさらに、エフェクター分子をコードする核酸配列を含む、請求項27に記載の単離された核酸。
【請求項30】
前記エフェクター分子をコードする核酸配列が、前記ターゲティングペプチドをコードする核酸配列に対して5’側にある、請求項29に記載の単離された核酸。
【請求項31】
前記エフェクター分子をコードする核酸配列が、前記ターゲティングペプチドをコードする核酸配列に対して3’側にある、請求項29に記載の単離された核酸。
【請求項32】
前記核酸が、前記ターゲティングペプチドと前記エフェクター分子とを含む融合タンパク質をコードする、請求項29に記載の単離された核酸。
【請求項33】
子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を被験体に投与する工程を包含する方法。
【請求項34】
前記被験体が細胞を含み、該細胞が子宮内膜症細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ターゲティングペプチドが、配列番号1、2、3または4に示される前記アミノ酸配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記ターゲティングペプチドが、配列番号1、2、3または4に示される前記アミノ酸配列と少なくとも65%の配列同一性を有する少なくとも6個の連続するアミノ酸を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
配列番号1、2、3または4からの任意の変化が、保存的アミノ酸置換である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記組成物がさらに、エフェクター分子を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記エフェクター分子が、低分子、薬学的な薬物、毒素、脂肪酸、検出可能なマーカー、ナノシェルまたは酵素である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
被験体における子宮内膜症細胞を標的とする方法であって、該方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項41】
前記細胞が子宮内膜症細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ターゲティングペプチドが、配列番号1、2、3または4に示される前記アミノ酸配列を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記ターゲティングペプチドが、配列番号1、2、3または4に示される前記アミノ酸配列と少なくとも65%の配列同一性を有する少なくとも6個の連続するアミノ酸を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
配列番号1、2、3または4からの任意の変化が、保存的アミノ酸置換である、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物がさらに、エフェクター分子を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記エフェクター分子が、低分子、薬学的な薬物、毒素、脂肪酸、検出可能なマーカー、または酵素である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記エフェクター分子がプロゲステロン製剤を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記組成物がさらに、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、GnRHアナログまたはGnRHアゴニストを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
前記組成物がさらにアロマターゼインヒビターを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物がさらに麻酔薬を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項51】
前記組成物がさらに非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項52】
前記組成物が前記被験体に腹腔内投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項53】
被験体において子宮内膜症を検出する方法であって、該方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を該被験体に投与する工程、および、該被験体において該組成物を検出し、それによって子宮内膜症を検出する工程を包含する、方法。
【請求項54】
被験体において子宮内膜症を診断する方法であって、該方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を該被験体に投与する工程、および、該被験体において該組成物を検出し、それによって該被験体において子宮内膜症を診断する工程を包含する、方法。
【請求項55】
被験体において子宮内膜症の予後を決定する方法であって、該方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を該被験体に投与する工程、および、該被験体において該組成物を検出する工程を包含し、該被験体内の子宮内膜症組織への該組成物の結合のレベル、量、濃度または組み合わせは、該被験体における子宮内膜症の予後を示す、方法。
【請求項56】
被験体において子宮内膜症の進行を決定する方法であって、該方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を該被験体に投与する工程、該被験体において該組成物を検出する工程、ならびに、後の時点で、該投与および該検出を繰り返す工程を包含し、該被験体内の子宮内膜症組織への該組成物の結合のレベル、量、濃度または組み合わせにおける変化は、該被験体における子宮内膜症の進行を示す、方法。
【請求項57】
被験体において子宮内膜症の処置の進行を決定する方法であって、該方法は、子宮内膜症細胞に選択的に結合するターゲティングペプチドを含む組成物を該被験体に投与する工程、該被験体において該組成物を検出する工程、ならびに、処置後に該投与および該検出を繰り返す工程を包含し、該被験体内の子宮内膜症組織への該組成物の結合のレベル、量、濃度または組み合わせにおける変化は、該被験体における子宮内膜症の該処置の進行を示す、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C−J】
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【図3A−H】
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【図4A−F】
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【公表番号】特表2009−521512(P2009−521512A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547791(P2008−547791)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/062601
【国際公開番号】WO2007/076501
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(507293516)ザ バーナム インスティテュート フォー メディカル リサーチ (4)
【出願人】(598121341)学校法人慶應義塾 (6)
【Fターム(参考)】