説明

子宮頸部画像における組織分類方法

テクスチャ領域のサイズ、不透明度パラメータ、酢酸白化領域のサイズ、粗い赤点斑および細かい赤点斑の数、粗いモザイクおよび細かいモザイクのサイズ、異型血管のサイズおよび人口統計学的データを確定することからなる群から選択された分類子を連続的に適用することにより、子宮頸部組織を分類し、それにより子宮頸部組織を、疾患の所見なし、軽度異形成、高度異形成または癌に分類することができる、ルールベースの教師なし方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医療用画像処理に関し、より詳細には、子宮頸部組織の識別および分類方法を使用する子宮頸癌および前癌病変のコンピュータ支援検出および診断に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明を、子宮頸癌に関連して開示する。子宮頸癌は、世界中で女性では2番目に多い癌であり、毎年約500,000件の新たな症例が発生し270,000人を超える人が死亡している(参照により本明細書に組み込まれるhttp://www−depdb.iarc.fr/globocan2002.htm)。コルポスコピーは、子宮頸部の前癌病変および癌を検出するために用いられる診断方法である(参照により本明細書に組み込まれるB.S.Apgar、Brotzman,G.L.およびSpitzer,M.著、「Colposcopy:Principles and Practice」(W.B.Saunders Company:Philadelphia、2002))。コルポスコピーのためのCAD(「コンピュータ支援診断」)は、医療用画像処理の新たな応用を表す。本発明者らは、異常の重症度を評価するためにコルポスコピスト(colposcopist)が使用する診断プロセスを模倣する、またはまねるCADシステムを開発した(参照により本明細書に組み込まれるLange H.およびFerris,Daron G.著、「Computer−Aided−Diagnosis(CAD) for colposcopy」(SPIE Medical Imaging 2005;SPIE Proc. 5747、2005))。
【0003】
コルポスコピストは、子宮頸部組織内の種々の巨視的な(膜に関する)上皮の特徴に基づいてコルポスコピー所見を形成する。コルポスコピー悪性度分類(grading)システムは、子宮頸部所見を臨床的に分析する構造化された系統的方法を提供する。系統的手法は、学習されかつ習得されると、ルーチンとなり、非常に有益である。コルポスコピー悪性度分類システムにより、コルポスコピストはまた、より正確なコルポスコピー所見を形成することができる。適切に設計されたコルポスコピースコアリングシステムにより、コルポスコピーの再現性が向上する。コルポスコピー悪性度分類システムはまた、特に、子宮頸部の大きく複雑な病変(異常成長)が見つかった場合に、最も適切な生検部位を選択しようと試みる場合にも有用である。
【0004】
リード(Reid’s)コルポスコピー指数のようなスコアリング方式は、病変の縁または輪郭(異常成長)、5%酢酸溶液の塗抹(application)に続く病変の色、病変内の血管特性、およびルゴール・ヨード液の塗抹に対する病変の反応を含むさまざまな特徴に基づく、コルポスコピー診断を行うための補助手段である(参照により本明細書に組み込まれる、Reid RおよびScalzi P.著、「Genital warts and cervical cancer.VII.An improved colposcopic index for differentiating benign papillomaviral infection from high−grade cervical intraepithelial neoplasia」(Am J Obstet Gynecol 1985;153:611−618)、および参照により本明細書に組み込まれる、Reid,R.、Stanhope,C.R.、Herschman,B.R.、Crum,C.P.およびAgronow,S.J.著、「Genital warts and cervical cancer.IV.A colposcopic index for differentiating subclinical papillomaviral infection from cervical intraepithelial neoplasia」(Am.J.Obstet.Gynecol.149(8):815−823.1984))。これらの特徴を個別に評価してスコア化した後、すべての特徴のスコアを組み合わせて疾患重症度を分類する複合スコアを生成する。リード指数は、軽度の子宮頸部疾患を高度の疾患から識別する。したがって、リード・コルポスコピー指数(RCI)は、悪性の子宮頸部腫瘍から前癌状態の子宮頸部腫瘍を識別するようには設計されていない。しかしながら、指数は、子宮頸部腫瘍の評価を標準化する一般的な手段を提供する。
【0005】
RubinおよびBarbo(参照により本明細書に組み込まれる、Rubin,M.M.およびBarbo,C.M.著、「Ch.9a:Rubin and Barbo Colposcopic Assessment System, in Colposcopy:Principles and practice」(Apgar,B.S.、Brotzman,G.L.およびSpitzer,M.編、187〜195ページ、W.B.Saunders Company、Phyladelphia、2002))は、先のコルポスコピー悪性度分類システムのうちのいくつかの最適な記述子を残すが、混乱させる可能性のある数字をなくす評価方法を開発した。さらに、それはシステムを、正常所見に対する記述子を含むように拡張する。より重要なのは、それは、臨床医のパターン認識プロセスが微小浸潤性または浸潤性疾患の可能性に焦点を合わせるようにする記述子を含む。たとえば、それは、酢酸白化(Acetowhite)上皮変化の強度を測定するだけでなく、湿潤癌の存在とより相関する、赤色、黄色および鈍い灰色等、他の色調変化にも対処する。
【0006】
考慮すべき他の因子には、患者の年齢ならびに病変のサイズおよび分布がある。子宮頸部の癌は25歳未満の患者にはまれである。高度の扁平上皮内疾患(特にCIN3)の大部分は、28歳から32歳の女性に見られる。CIN1病変は比較的小さい傾向にある。CIN1病変の平均長さはおよそ2.8mm(ミリメートルすなわち千文の1メートル)である。しかしながら、これら病変は、最大長さが11.5mmに達する可能性がある。相対的に、CIN2病変およびCIN3病変はより大きい。CIN2およびCIN3の平均長さは、それぞれ5.8mmおよび7.6mmである。それらの最大長さは、それぞれ18.2mmおよび20.6mmである。軽度病変は、子宮頸部の1四分円のみかまたは子宮膣部の表面積の数パーセントにしかない可能性がある。CIN1の分布は、単発性(単一位置で発生する病変)から多発性(複数の位置で発生する病変)まで変化する。複数の別個の小さいランダムに分散した病変はCIN1に特有である。
【0007】
CIN2は、常に移行帯(TZ)内で見られる。TZは、円柱上皮が新たな化生扁平上皮に置き換わった子宮頸部の領域である。TZの外側に見られる可能性のあるCIN1とは対照的に、CIN2は多発性である可能性があるが、単発性病変がより一般的である。衛星病変は、通常、CIN2の典型ではない。コルポスコピストは、通常、子宮膣部にまたは子宮頸管内に位置する扁平円柱上皮境界(SCI)に沿ってCIN2を見つける。
【0008】
CIN3病変は、融合性である(まとまって流れるかまたは1つに混合される)傾向にあり、CIN1病変またはCIN2病変より長くかつ幅が広い。CIN3は、通常、外子宮口に向かって内部湾曲内側の子宮頸部の中心部分内に位置する。CIN3は、子宮膣部にある場合、潜在している(目に見えない)ということはめったにない。尾方向(体の後端またはその近く)の縁と頭方向(頭部または体の前方に向かう)の縁との間の組織表面上の距離として定義される、CIN3病変の直線長さは、2mm〜22mmで変化する。平均直線長さは、6mm〜10mmの範囲である。長い直線状病変(特に子宮頸管異形成がある場合、10mmを越える病変)は、常に癌の疑いがある。病変の表面積が40平方mmを上回るまで増大すると、癌と疑うべきである。移行帯(TZ)のサイズ、病変(異常成長)のサイズ、明瞭な辺縁、脈管パターン(血管のパターン)および酢酸白化色(酢酸の塗抹後の色)が、組織学的悪性度に大きく関連していることが報告され、子宮頸部病変のサイズが臨床的に重要である可能性があることが論証された(参照により本明細書に組み込まれる、Kierkegaard,O.、Byralsen,C.、Hansen,K.C.、Frandsen,K.H.およびFrydenberg,M.著、「Association between colposcopic findings and histology in cervical lesions:the significance of the size of the lesion」(Gynecol.Oncol.57(1):66−71.1995))。
【0009】
根拠に基づいた医療(Evidence based medicine)(EBM)は、「個々の患者のケアについての意思決定において、現時点における最良の根拠を良心的に、明確にかつ賢明に用いること」として定義される。EBMでは、人間の知覚および解釈は、診断の解釈において非常に価値があるものとみなされる。しかしながら、人間の評価は、主観的である可能性があり、観察者間の一致性が低い(参照により本明細書に組み込まれる、Ferris,D.G.およびLitaker,M.著、「Interobserver agreement for colposcopy quality control using digitized colposcopic images during the ALTS trial」(J.Low.Genit.Tract Dis.9(1):29−35,2005、および参照により本明細書に組み込まれる、Jeronimo,J.、Massad,L.S.、Castle,P.E.、Wacholder,S.およびSchiffman,M.著、「Interobserver Agreement in the Evaluation of Digitized Cervical Images」(Obstet.Gynecol.110(4):833−840、2007))。
【0010】
コンピュータを、推論タスクを実行するようにプログラムすることができ、診断問題を解決するために使用することができる。コルポスコピー悪性度分類システムは、コルポスコピストにより40年以上、臨床診断を導き出すために使用されてきた。コルポスコピストは、コルポスコープを使用して視覚的検査を介して患者のコルポスコピー特徴を定性的に導き出し、疾患の程度を確定し、自身の経験に基づいて患者管理を開始する。治療は、婦人科医の診療室で約10〜15分間かかる。検査が主観的性質のものであるため、コルポスコピーの精度は、コルポスコピストの経験および専門知識に大きく依存する。定量化されたコルポスコピー特徴を利用するコンピュータ実装コルポスコピースコアリングアルゴリズムは、医師に対し、提案される診断を提供するため望ましい。
【0011】
大部分の既存の組織分類システムは、統計的手法に頼る。一例は、Georgia Tech Vision(GTV)システム(参照により本明細書に組み込まれる、Dickman,E.D.、Doll,T.J.、Chiu,C.K.およびFerris,D.G.著、「Identification of Cervical Neoplasia Using a Simulation of Human Vision」(Journal of Lower Genital Tract Disease 5(3):144−152、2001))、すなわち、正常な子宮頸部特徴および異常な子宮頸部特徴を認識する、人間の視角系の影響を受けた汎用コンピュータビジョンシステムである。別の例は、子宮頸部腫瘍の非侵襲的診断用のMultimodal Hyperspectral Imaging(MHI)システムである(参照により本明細書に組み込まれる、Ferris,D.G.、Lawhead,R.A.、Dickman,E.D.、Holtzapple,N.、Miller,J.A.、Grogan,S.他著、「Multimodal hyperspectral imaging for the noninvasive diagnosis of cervical neoplasia」(J.Low.Genit.Tract Dis.5(2):65−72、2001))。近年、正常なまたは軽度の上皮内病変から高度の上皮内病変を識別するために使用される反射蛍光システムが報告されている(参照により本明細書に組み込まれる、Park,S.Y.、Follen,M.、Milbourne,A.、Rhodes,H.、Malpica,A.、Mackinnon,N.他著、「Automated image analysis of digital colposcopy for the detection of cervical neoplasia」(J.Biomed.Opt.13(1):014029−1−014029−10、2008))。さらに、高度の子宮頸部上皮内腫瘍のインビボ(生体内)検出用の成果を上げた光学システムLUMATMもまた報告されている(参照により本明細書に組み込まれる、Huh,W.K.、Cestero,R.M.、Garcia,F.A.、Gold、M.A.、Guido,R.S.、McIntyre−Seltman,K.他著、「Optical detection of high−grade cervical intraepithelial neoplasia in vivo:results of a 604−patient study」(Am.J.Obstet.Gynecol.190(5):1249−1257.2004、および参照により本明細書に組み込まれる、Kendrick,J.E.、Huh,W.K.およびAlvarez,R.D.著、「LUMA Cervical Imaging System」(Expert Review of Medical Devices 4(2):121−129、2007))。LUMATMシステムでは、酢酸塗抹に続いて、3つの統合された光学測定法、すなわちレーザ誘起蛍光分光法、白色光拡散反射分光法およびビデオ撮像を採用し、人間の子宮頸部全体の診断走査を行う。さらに、特定の光源の種々の子宮頸部組織タイプとの相互作用のスペクトル差を利用する、多変量分類アルゴリズムが含まれていた。
【0012】
近年、DySISTM(Dynamic Spectral Imaging System)と呼ばれる別のインビボ検出および定量的分類システムが報告されている(参照により本明細書に組み込まれる、Forthphotonics、DySIS:Dynamic Spectral Imaging System、http://www.forthphotonics.gr/dysis.php?page=dysis−trials2008、および参照により本明細書に組み込まれる、Soutter,W.P.、Diakomanolis,E.、Lyons,D.およびHaidopoulos,D.著、「Dynamic Spectral Imaging−In Vivo Detection and Quantitative Grading of Cervical Neoplasia」(ASCCP 2008 Meeting Abstract.Journal of Lower Genital Tract Disease 12(2):160、2008))。DySISTMは、インビボでの子宮頸部腫瘍(病変または腫瘍(tumor))の自動(かつユーザ独立)検出およびマッピングを支援するために、デジタル画像処理技術および動的スペクトル画像処理技術の両方を利用する、最初にCEマークが付された(CEマークは、欧州経済領域(EEA)の単一市場に出される多くの製品の義務的な適合性マークであり、CEマーキングは、製品が、消費者の安全を保証するEU健康、安全および環境要件を満たしたことを証明する)装置である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、コルポスコピー悪性度分類システムに基づいて、軽度病変、高度病変および癌を正確に評価し識別するコンピュータ支援検出技術である。それは、従来技術に列挙した統計的学習手法とは異なる。本発明は、上皮および血管の形態学的評価を用いて疾患の根拠を蓄積するコルポスコピーに続くルールベースの手法である。統計的学習では、診断は、交差検定を介して大量の訓練データから導出された統計的特徴に基づく。したがって、それは、訓練データおよび統計学理論に基づく教師あり学習手法である。本発明は、最新のコルポスコピーにおける定性的分類ルールを定量化コンピュータプログラムに移行する。それには、データからのいかなる訓練も不要である。従来の医療知識に基づく教師なし手法である。本発明の概要を示すフローチャートを図1に示す。本発明の組織分類アルゴリズムを適用する前に、まず他の方法を適用して、組織分類アルゴリズムへの入力として使用される情報を抽出する。他の方法には、解剖学的特徴アルゴリズム、酢酸白化特徴抽出アルゴリズム、モザイクおよび赤点斑検出アルゴリズム(たとえば、参照により本明細書に組み込まれる、W.LiおよびA.Poirson著、「Detection and characterization of abnormal vascular patterns in automated cervical image analysis」(Lecture Notes in Computer Science−Advances in Visual Computing 4292、Second International Symposium、ISVC 2006、Lake Tahoe、NV.November 2006 Proceedings、Part II、627−636(Springer 2006)))および(参照により本明細書に組み込まれる、「Methods for Detection and Characterization of Atypical Vessels in Cervical Imagery」と題する、2008年8月1日に出願された、同時係属の本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/221328号に開示されているような)異型血管抽出アルゴリズムが含まれる。これら方法の出力は、本明細書に記載する本組織分類方法に対する入力としての役割を果たす。この組織分類方法を、臨床検査中にリアルタイムで酢酸を塗抹する前にかつ後に取得された子宮頸部の画像データとともに、年齢等の患者の人口統計学的データに適用する。組織分類方法の出力には、以下の所見を含む診断が含まれる。すなわち、病変のタイプ(正常/NED(「疾患の所見なし」)、軽度異形成、高度異形成または癌)、疾患位置または高度(CIN2およびCIN3)病変の位置および判断の信頼性レベルが含まれる。
【0014】
以下の特許および特許出願を、本発明の分野に関連するものとみなすことができる。
参照により本明細書に組み込まれる、Costa他に対する米国特許第7,309,867号は、組織試料の所与の領域がCIN、CIN II/III、正常扁平、正常円柱および化生等の所与のカテゴリの組織を含む可能性を、統計的分類技法および非統計的分類技法の組合せを利用することにより、かつスペクトルデータおよび画像データを組み合わせることにより確定する方法を開示する。
【0015】
参照により本明細書に組み込まれる、Zelenchukに対する米国特許第7,310,547号は、健常組織および疾患組織をインサイチュで識別するシステムおよび方法を開示する。それは、組織試料に紫外線照射を向け、かつ蛍光応答放射線を収集する光ファイバプローブを有する。応答放射線は、3つの選択された波長で観察され、そのうちの1つは等吸収点に対応する。一例では、等吸収点は約431nmで発生する。観察される信号の強度は、431nm強度を用いて正規化される。判別分析における比を用いてスコアが確定される。検査対象の組織は、判別分析の結果に従って、疾患または健常の診断に基づいて再切除されるかまたはされない。
【0016】
参照により本明細書に組み込まれる、Kaufman他に対する米国特許第7,260,248号は、類似性の測度に基づいて複数の画像を関連付ける方法を開示する。この方法は、組織の一続きのコルポスコピー画像をセグメント化するのに有用である。この方法を適用して、子宮頸部組織の酢酸白化試験において組織性状を確定することができる。それは、組織の複数の画像を取得することと、画像における2つ以上の領域間の関係を確定することと、その関係に基づいて画像をセグメント化することと、セグメント化に基づいて組織の性状を確定することとを含む組織性状を確定する方法を開示する。確定するステップは、正常、CIN I、CIN II、CIN IIIまたはCIN II/IIIのいずれかとして組織性状を診断することを含む。
【0017】
参照により本明細書に組み込まれる、Utzinger他に対する米国特許第6,766,184号は、組織のマルチスペクトル画像を生成する方法および装置を開示する。画像を、子宮頸癌検出に使用することができる。一次放射線が照明源によって生成され、第1の波長および第1の偏光を選択するようにフィルタリングされる。組織がフィルタリングされた一次放射線によって照射されることにより二次放射線が生成され、それは第2の波長および第2の偏光を選択するようにフィルタリングされる。フィルタリングされた二次放射線が検出器によって収集され、第1の波長および第1の偏光ならびに第2の波長および第2の偏光の種々の組合せに従って、組織の複数のマルチスペクトル画像が生成される。
【0018】
参照により本明細書に組み込まれる、Roehrig他に対する米国特許第6,198,838号は、デジタルマンモグラムの疑わしい部分を、独立して計算された腫瘤および棘状突起情報を使用することによって検出する方法およびシステムを開示する。本方法は、放射線技師または他の医療専門家に、乳腺線維組織における疑わしいかまたは癌の可能性がある病変を気付かせるように設計されたコンピュータ支援診断システムで使用される。好ましい実施形態では、棘状突起情報および腫瘤情報は独立して計算され、計算された棘状突起情報は、腫瘤情報計算の結果に依存せず、したがって信頼性がより高くなる。
【0019】
参照により本明細書に組み込まれる、Tumer他に対する米国特許第6,135,965号は、ニューラルネットワークを用いて蛍光スペクトルのインビボ測定を分析することによる、子宮頸部組織の組織異常の分光検出装置および方法を開示する。
【0020】
参照により本明細書に組み込まれる、Gaborski他に対する米国特許第5,857,030号は、フィルタリングの前処理段階、セグメント化の予備選択段階、およびニューラルネットワーク分類を含むパターン分類段階を含む、放射線画像のデジタル画像処理の自動方法およびシステムを開示する。
【0021】
参照により本明細書に組み込まれる、Clarke他に対する米国特許第5,982,917号は、デジタルX線画像における疑わしい領域の強調および検出のコンピュータ支援診断(CAD)方法および装置を開示する。
【0022】
参照により本明細書に組み込まれる、Balasに対する米国特許出願公開第2006/0141633号は、癌の進行中に上皮組織の生化学性状および/または機能性状によってもたらされる変化のインビボ検出およびマッピングの方法および装置を開示する。
【0023】
参照により本明細書に組み込まれる、Keller他に対する米国特許出願公開第2006/0184040号は、組織異常を検出する方法および装置を開示し、それにより、本方法は、光源から組織に光を放射することと、組織から反射した放射光を、光学部品を介して複数の多波長結像光学系に向け、対象の1つまたは複数の波長または波長帯域を隔離することと、対象の1つまたは複数の波長または波長帯域を1つまたは複数の撮像装置に向け、その装置を用いて、対象の1つまたは複数の波長または波長帯域の画像を記録することと、画像からの画像データをコンピュータシステムに転送することと、組織異常に関連する1つまたは複数のスペクトルパターンに対して画像を分析することとを含む。
【0024】
参照により本明細書に組み込まれる、Gu他による米国特許出願公開第2008/0058593号は、内視鏡による検査中に臓器の映像データからコンピュータ支援診断を提供する方法であって、映像から画像フレームを解析しかつ強調することと、検査中に画像フレームにおける任意の病変をリアルタイムで検出し診断することとを含む方法を開示する。さらに、画像データを用いて、臓器の3次元再構成を形成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
ここでかつ後により完全に説明する本発明は、子宮頸部組織をクラスに分類するルールベースの教師なし方法であって、子宮頸部組織に、分類子ルールのセットを含む分類子を適用するステップと、選択された分類子ルールを連続的に適用することにより最終的な予測を取得するステップと、を含み、適用するステップが、テクスチャ領域のサイズ、不透明度パラメータ、酢酸白化領域のサイズ、粗い赤点斑および細かい赤点斑の数、粗いモザイクおよび細かいモザイクのサイズ、異型血管のサイズおよび人口統計学的データを確定することからなる群から選択された分類子ルールを使用して行われ、子宮頸部組織を、疾患の所見なし、軽度異形成、高度異形成または癌に分類することができる方法を含む。
【0026】
テクスチャ領域が子宮頸部の面積のおよそ1%を上回り、かつ不透明度パラメータが画素値のおよそ4%を下回るかまたは画素値のおよそ12%を上回る場合、疾患の所見なしという最終的な予測が得られる。
【0027】
テクスチャ領域が子宮頸部の面積のおよそ1%を上回り、前記不透明度パラメータが画素値のおよそ4%と画素値のおよそ12%との間であり、酢酸白化領域のサイズが子宮頸部の面積の7%を上回り、かつ子宮口に近い酢酸白化領域のサイズが子宮頸部の面積の0%を上回る場合、高度異形成という最終的な予測が得られる。
【0028】
テクスチャ領域が子宮頸部の面積のおよそ1%を上回り、前記不透明度パラメータが画素値のおよそ4%と画素値のおよそ12%との間であり、酢酸白化領域のサイズが子宮頸部の面積の7%を下回り、かつ子宮口の近くに酢酸白化領域がない場合、軽度異形成という最終的な予測が得られる。
【0029】
テクスチャ領域が子宮頸部の面積のおよそ1%を下回り、不透明度パラメータが画素値の5%を下回り、粗い赤点斑の数が2を下回り、かつ粗いモザイク血管がない場合、軽度異形成という最終的な予測が得られる。
【0030】
テクスチャ領域が子宮頸管の面積のおよそ1%を下回り、不透明度パラメータが画素値の10%を上回り、かつ子宮口に近い酢酸白化領域のサイズが、子宮頸部(cervix)の面積の15%を上回る場合、癌という最終的な予測が得られる。
【0031】
テクスチャ領域が子宮頸部の面積のおよそ1%を下回り、不透明度パラメータが画素値の8%を上回り、子宮口に近い酢酸白化領域のサイズが、子宮頸部(cervix)の面積の0.5%を上回り、粗い赤点斑の数が100を上回り、粗いモザイク血管がなく、かつ異常血管のサイズが0.5ミリメートルを上回る場合、癌という最終的な予測が得られる。
【0032】
テクスチャ領域が子宮頸部の面積のおよそ1%を下回る場合、かつ不透明度パラメータが画素値の5%を上回り、子宮口に近い酢酸白化領域のサイズが子宮頸部の面積の0.5%を下回り、粗い赤点斑血管の数が100を下回り、粗いモザイク血管が存在せず、かつ異型血管のサイズが0.5mmを下回る場合、高度異形成という最終的な予測が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の概要を示すフローチャートである。
【図2】組織分類方法に対する入力パラメータのリストの図である。
【図3】組織診断方式の第1部の図である。
【図4】組織診断方式の第2部の図である。
【図5】NED(疾患の所見なし)患者の一例の写真である。
【図6】図6(a)は軽度疾患患者の一例の写真である。図6(b)は図6(a)の患者の対応する軽度疾患位置の画像処理した写真である。
【図7】図7(a)は癌患者の一例の写真である。図7(b)は図7(a)の患者の対応する高度疾患位置の画像処理した写真である。図7(c)は図7(a)の患者の対応する軽度疾患位置の画像処理した写真である。
【図8】図8(a)は高度疾患患者の一例の写真である。図8(b)は図8(a)の患者の対応する高度疾患位置の画像処理した写真である。図8(c)は図8(a)の患者の対応する軽度疾患位置の画像処理した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(1)方法前の適用
本明細書に記載する発明の目下好ましい実施形態は、好ましくは、組織分類方法の入力として、いくつかの方法前の適用の出力(出力は図2に示すいくつかのパラメータである)を使用する。パラメータまたは変数の多くを、画像における子宮頸部の総面積に対するその特定の特徴の領域の割合として説明する。赤点斑特徴を、画像に存在する赤点斑の数として定義する。異型血管のサイズを、好ましくはミリメートル(mm)で計算する。
【0035】
プロセスは、子宮頸部のデジタルカラー画像を(赤チャネル、緑チャネルおよび青チャネルすなわちRGBを用いて)、酢酸の塗抹前に1回かつ塗抹後に1回収集することによって開始する。好ましくは、画像を、鏡面反射(グリント)を抑制するように交差偏光しかつ較正する。次に、解剖学的特徴抽出、酢酸白化特徴抽出、モザイクおよび赤点斑検出ならびに異型血管抽出を含むいくつかの方法前の適用を行う。
【0036】
解剖学的特徴抽出は、好ましくは、子宮頸部の検出、膣壁の除去(垂直および水平両方)、子宮口検出、円柱上皮検出およびテクスチャ領域(異常/化生)検出を含む。
酢酸白化特徴抽出は、好ましくは、対象の解剖学的領域に酢酸を塗抹して酢酸白化領域を生成することと、酢酸白化領域の少なくとも1つの酢酸加工後の画像を取得することと、上皮細胞を有する対象の解剖学的領域を検出することと、酢酸加工後の画像からテクスチャ情報を抽出してテクスチャ領域を定義することと、酢酸加工後の画像から色情報を抽出して色領域を定義することと、テクスチャ領域と色領域とを結合して候補酢酸白化領域を生成することとを含む。好ましくは、それはまた、参照により本明細書に組み込まれる、「Computerized Image Analysis for Acetic Acid Induced Cervical Intraepithelial Neoplasia」と題する、2008年8月4日に出願された、同時係属の本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/221645号に開示されているように、上皮細胞の少なくとも1つの酢酸加工前の画像を取得することと、酢酸加工前の画像のうちの1つおよび酢酸加工後の画像のうちの1つにおける酢酸白化領域を見当合わせして、酢酸白化領域の見当合わせされた画像を形成することと、酢酸白化領域の見当合わせされた画像から不透明度パラメータを抽出することとを含む。上記出願は、見当合わせされた酢酸加工前の画像と酢酸加工後の画像との時間的な変化の差をクラスタリングすることによって生成された不透明度パラメータを開示している。不透明度パラメータは、病変診断に対し高精度の予測値を提供し、正常な病変および軽度の病変は、高度の病変および癌の症例よりはるかに不透明度が低い。異なる色空間におけるレシオイメージング(ratio imaging)を含む、他の不透明度パラメータ抽出方法を用いることも可能である。
【0037】
本発明の1つの好ましい実施形態では、不透明度パラメータ抽出に対し、CIE−Lab色空間におけるaチャネルの色差が使用される。本発明の別の好ましい実施形態では、不透明度パラメータ抽出に対し、RGB色空間におけるgチャネルの色差が使用される。未熟化生(immature metaplasia)および円柱上皮組織は、酢酸塗抹後に一時的に白色になるが、異形成組織変化は示さないため、対象の酢酸白化領域から排除されるべきではない。これら組織領域は、通常、わずかな不透明度変化を示す。したがって、本発明は、色差特徴空間に2ステップ平均シフト(mean shift)クラスタリングアルゴリズムを適用する。第1のステップは、主な不透明度変化をセグメント化すること、およびわずかな不透明度変化を除去することである。第2のステップは、第1のステップで得られた前景領域から最大不透明度変化をセグメント化することである。不透明度パラメータは、最大不透明度領域の平均色差として計算される。最大不透明度領域は、平均色差が最大の領域として定義される。不透明度パラメータは以下の公式によって表される。
【0038】
【数1】

【0039】
ここで、nは画像のビットの数であり、fは見当合わせされた酢酸加工前の画像であり、gは選択された酢酸加工後の画像であり、ともにkバンド(k=1、2、3)である。符号rは、2進数形式での、クラスタリングアルゴリズムから抽出された最大不透明度領域である。符号Ωは、不透明度領域rにおける前景画素の数である。この式では、pノルム距離が使用される。目下好ましい実施態様では、pは1に設定され、aバンドCIE−Lab色空間が使用される。
【0040】
不透明度パラメータは、一対の見当合わせされた子宮頸部画像のある対象領域におけるある色空間の画像値(またはDNすなわちデジタル値)の変化の割合を取得する。
モザイクおよび赤点斑検出は、好ましくは、モザイク血管の検出と、平均毛細血管間間隔に基づくモザイク血管の粗および細への分類と、赤点斑血管の検出と、平均毛細血管間間隔に基づく赤点斑血管の粗および細への分類とが含まれる(参照により本明細書に組み込まれる、W.LiおよびA.Poirson著、「Detection and characterization of abnormal vascular patterns in automated cervical image analysis」(Lecture Notes in Computer Science−Advances in Visual Computing 4292、Second International Symposium、ISVC 2006、Lake Tahoe、NV、November 2006 Proceedings、Part II、627−636(Springer 2006))。
【0041】
異型血管抽出は、好ましくは、コントラスト強調の前処理段階と、対象領域を特定するセグメント化段階と、最終対象領域を確定する後処理段階とを適用することによって異型血管を検出する。前処理段階は、好ましくは、画像を平滑化し、トップハットフィルタを使用して高輝度成分を抑制し、トップハットフィルタおよびボトムハットフィルタを使用して画像のコントラストを強調し、画像の赤色成分を強調し、その後、画像の赤色成分のコントラストを強調する。セグメント化段階は、好ましくは、画像における最大テクスチャおよび最大勾配情報の領域の位置を特定し、その情報の共通部分を計算することにより、異型血管に対する対象領域を特定する。後処理段階は、好ましくは、(参照により本明細書に組み込まれる、「Methods for Detection and Characterization of Atypical Vessels in Cervical Imagery」と題する、2008年8月1日に出願された、同時係属の本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/221328号に記載されているように)異型血管に関連しない特徴を特定して除去し、さらに、異型血管に関する既知の色、形状およびサイズ情報を使用して画像を精緻化することにより、最終対象領域を含む出力画像を作成する。
【0042】
解剖学的特徴抽出、酢酸白化特徴抽出、モザイクおよび赤点斑の出力は、組織分類方法(後述)の入力としての役割を果たす(図2に示すような)いくつかの変数である。
(2)組織分類方法
設計
好ましくは、この組織分類方法の設計は、ルールベース分類子を使用する。概念は、単一分類子に頼るのではなく、分類子ルールのセットを使用し、複数の分類子ルールの予測を結合するというものである。複数分類子方式の目的は、分散および偏りを低減することである。分類子のすべてが子宮頸部組織に適用され、選択された分類子を連続的に適用することにより、最終的な予測が得られる。本発明を任意の統計的学習手法と組み合わせることにより、サポートベクトルマシンおよび条件付き確率場(CRF)(参照により本明細書に組み込まれる、Laffery,J.、McCallum,A.、Pereira,F.著、「Conditional random fields:Probabilistic models for segmenting and labeling sequence data」(In:Proc.18th International Conf. on Machine Learning、Morgan Kaufmann、San Francisco、CA(2001)282−289)等、分類子集合を形成することができる。
シミュレートされたコルポスコピー指標(Simulated colposcopic index)(SCI)
この組織分類方法は、図2に記載する変数に基づいて、各患者に対する基本診断を提供するように設計されている、シミュレートされたコルポスコピー指標(SCI)を提供する。出力は、画像における病変のタイプの確定である。図3および図4に、2部診断方式を概説する。第1部(図3)では、まず、テクスチャ領域のサイズ(子宮頸部の領域の割合として表される)を評価する。テクスチャ領域が子宮頸部の面積のおよそ1%未満である場合、ユーザを分析の第2部(図4)に向ける。そうでない場合、不透明度パラメータを評価する。不透明度パラメータが、画素値(デジタル画像の輝度、輝度が0および1の8桁によって定義される8ビット画像の場合、画素値は0(暗黒)から255(あり得る最高の輝度)の範囲であり、輝度が0および1の16桁によって定義される16ビット画像の場合、画素値は0から65535の範囲であり、画素値は「デジタル値」または「DN」と呼ばれる場合がある)のおよそ4%を下回るか、または画素値のおよそ12%を上回る場合、「NED」(疾患の所見なし)という診断を与える。そうでない場合、酢酸白化領域のサイズおよび子宮口領域近くの酢酸白化領域を評価する。酢酸白化領域のサイズが子宮頸部の面積の7%を上回る場合、かつ子宮口近くの酢酸白化領域のサイズが子宮頸部の面積の0%を上回る場合、「高度」(高度の病変)という判断を与える。そうでない場合、「軽度」(軽度の病変)という判断を与える。
【0043】
第2部において、第1ステップは、不透明度パラメータが画素値の5%を下回り、粗い赤点斑の数が2を下回り、かつ粗いモザイクのサイズが子宮頸部の総面積の0%に等しいか否かを評価する。答えが肯定である場合、「軽度」の判断を与える。答えが否定である場合、本方法は第2ステップに進む。
【0044】
第2ステップでは、不透明度パラメータが10%を上回り、かつ子宮口領域近くに15%を上回る酢酸白化領域がある場合、判断は「癌」である。または不透明度パラメータが8%を上回り、子宮口領域の近くに0.5%を上回る酢酸白化領域があり、粗い赤点斑血管の数が100を上回り、いくつかの粗いモザイク血管があり、かつ異型血管のサイズが0.5mmを上回る場合もまた、判断は「癌」である。
【0045】
答えが肯定である場合、判断は「癌」である。答えが否定である場合、判断は「高度」である。
図5は、テクスチャ領域が子宮頸部の総面積の1%を下回り、かつ不透明度パラメータが画素値の4%を下回るNED患者の一例を示す。図6(a)は、テクスチャ領域のサイズが子宮頸部の総面積の1%を上回る軽度患者の一例を示す。図7(a)は、テクスチャ領域のサイズが子宮頸部の総面積の1%を上回り、不透明度パラメータが画素値の10%を上回り、かつ子宮口領域の近くの酢酸白化領域のサイズが子宮頸部の総面積の15%を上回る、癌患者の一例である。図8(a)は、テクスチャ領域のサイズが子宮頸部の総面積の1%を上回る高度患者の一例である。
【0046】
本発明では、不透明度パラメータが、モザイク、赤点斑および異型血管を含む他の分類子と組み合わされて診断を形成することが留意されるべきである。したがって、本発明では、不透明度パラメータの閾値は(より詳細かつ正確な診断を行うために)、不透明度パラメータを開示した上述した特許出願における5%閾値から変更される。しかしながら、不透明度パラメータは、高精度な予測可能性を提供し、したがってより低コストかまたは単純な装置またはプロセスにおいて、5%閾値で単独で使用することができる。
疾患位置
患者の診断時、疾患位置が、病変の種々の悪性度に対するコルポスコピー指標の組合せとして定義される。マスクが白黒画像である。白色(明るい)領域は、病変の場所を示す前景であり、黒色領域は背景である。高度病変のマスクは、酢酸白化、粗いモザイク、粗い赤点斑および異型血管のマスク画像の結合として定義される。酢酸白化マスクのレベルは、不透明度パラメータおよび患者診断によって決まる。同様に、軽度病変のマスクは、酢酸白化、細かいモザイクおよび細かい赤点斑のマスク画像の結合として定義される。酢酸白化マスクのレベルは、不透明度パラメータおよび患者診断によって決まる。高度マスクの例を、図7(b)および図8(b)に示し、明るい領域として表示する。軽度マスクの例を上記図7(b)、図7(c)および図8(c)に示し、明るい領域として表示する。
信頼性レベル
信頼性レベルを3つの態様、すなわち画質、特徴抽出の精度および患者の人口統計学的データを通して確定することができる。本発明は、(参照により本明細書に組み込まれる、「Method to Provide Automated Quality Feedback to Imaging Devices to Achieve Standardized Images」と題する、2008年3月14日に出願された、同時係属の本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/075890号に記載されているように)IQA手続きによる高品質画像データの取得を想定するが、高品質画像を取得する他の任意の方法を使用することができる。したがって、特徴抽出の妥当性および患者の人口統計学的データのみが考慮される。妥当性は、好ましくは、特徴抽出ステータスを評価して以下のカテゴリを含む配列にすることによって計算される。すなわち、画像平面のサイズに対する子宮頸部領域の比、子宮頸部領域に対する扁平領域の比、子宮口領域のサイズおよび位置、ならびに粘液およびIUD(子宮内避妊器具)のような他の障害物のあり得る存在である。出力(数字)が事前定義された範囲内である場合、それは「合格」である。出力が事前定義された範囲内でない場合、それは「不合格」である。たとえば、画像平面のサイズに対する子宮頸部領域の比が30%〜80%の範囲である場合、それは「合格」であるが、そうでない場合、このカテゴリでは「不合格」である。信頼性レベルは、カテゴリのすべてにおける「合格」の割合によって導出される。最終的な信頼性レベルは、患者が非常に若い(25歳を下回る)かまたは非常に年配である(60歳を上回る)か、または検査の前に手術を受けていた場合、パーセント係数(10〜20%)だけ低下する。癌等、重症な症例は、25歳未満の患者ではめったに発生しない。観察された特徴の生物学的基礎により、年配の患者ほど顕著な変化を示さない傾向にある。
【0047】
本発明を、特に、詳細な説明に記載しかつ図面に示した実施形態に関連して示しかつ説明したが、当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、そこに細部のさまざまな変更を行ってもよいことが理解されよう。したがって、特許請求の範囲において明確にかつ明示的に示すもの以外は、いかなる限定も暗示されまたは推測されるべきではない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明を用いて、信頼性の高いコルポスコピースコアリング特徴を利用して、「疾患の所見なし」、軽度異形成、高度異形成または癌という診断を提供し、かつ高度の病変の位置および診断の信頼性レベルも提供する、教師なしのルールベースの組織分類方法を提供することができる。この診断を直接使用するか、または医師もしくは他の医療従事者に提案することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮頸部組織(cervical tissue)をクラスに分類する(classifying)ルールベースの教師なし(unsupervised)方法であって、
前記子宮頸部組織に、分類子ルール(classifier rules)のセット(set)を含む分類子(classifier)を適用する(applying)ステップと、
前記セットにおける選択された分類子ルールを連続的に(serially)適用することにより最終的な予測(prediction)を取得するステップと、
を含み、
前記適用するステップが、
テクスチャ領域(texture region)のサイズ、不透明度(opacity)パラメータ、酢酸白化領域(acetowhite regions)のサイズ、粗い(coarse)赤点斑(punctuations)および細かい(fine)赤点斑の数、粗いモザイクおよび細かいモザイク(mosaics)のサイズ、異型血管(atypical blood vessels)のサイズおよび人口統計学的(demographic)データを確定する(determining)ことからなる群から選択された分類子ルールを使用して行われ、
前記子宮頸部組織を、疾患の所見なし(no evidence of disease)、軽度(low-grade)異形成(dysplasia)、高度(high-grade)異形成または癌に分類することができる方法。
【請求項2】
前記テクスチャ領域が前記子宮頸部の面積のおよそ1%を上回り、かつ前記不透明度パラメータが画素値(pixel value)のおよそ4%を下回るかまたは前記画素値のおよそ12%を上回る場合、疾患の所見なしという最終的な予測が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テクスチャ領域が前記子宮頸部の面積のおよそ1%を上回り、前記不透明度パラメータが画素値のおよそ4%と前記画素値のおよそ12%との間であり、前記酢酸白化領域のサイズが前記子宮頸部(cervix)の面積の7%を上回り、かつ子宮口(os)に近い前記酢酸白化領域のサイズが前記子宮頸部の面積の0%を上回る場合、高度異形成(high grade dysplasia)という最終的な予測(final prediction)が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記テクスチャ領域が前記子宮頸部の面積のおよそ1%を上回り、前記不透明度パラメータが画素値のおよそ4%と前記画素値のおよそ12%との間であり、前記酢酸白化領域のサイズが前記子宮頸部の面積の7%を下回り、かつ子宮口の近くに酢酸白化領域がない場合、軽度異形成(low grade dysplasia)という最終的な予測が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記テクスチャ領域が前記子宮頸部の面積のおよそ1%を下回り、前記不透明度パラメータが画素値の5%を下回り、前記粗い赤点斑の数が2を下回り、かつ粗いモザイク血管がない場合、軽度異形成という最終的な予測が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記テクスチャ領域が前記子宮頸管の面積のおよそ1%を下回り、前記不透明度パラメータが画素値の10%を上回り、かつ子宮口に近い前記酢酸白化領域のサイズが前記子宮頸部の面積の15%を上回る場合、癌という最終的な予測が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記テクスチャ領域が前記子宮頸部の面積のおよそ1%を下回り、前記不透明度パラメータが画素値の8%を上回り、子宮口に近い前記酢酸白化領域のサイズが前記子宮頸部の面積の0.5%を上回り、粗い赤点斑の数が100を上回り、粗いモザイク血管がなく、かつ異常血管のサイズが0.5ミリメートルを上回る場合、癌という最終的な予測が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記テクスチャ領域が前記子宮頸部の面積のおよそ1%を下回り、前記不透明度パラメータが画素値の5%を上回り、子宮口に近い酢酸白化領域のサイズが前記子宮頸部の面積の0.5%を下回り、粗い赤点斑血管の数が100を下回り、粗いモザイク血管が存在せず、かつ異型血管のサイズが0.5mmを下回る場合、高度異形成という最終的な予測が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
患者が25歳を下回るかまたは60歳を上回る場合、癌という最終的な予測における前記信頼性レベル(confidence level)をおよそ10%〜およそ20%低下させるステップ
をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
子宮頸部組織をクラスに分類するルールベース(rule-based)の教師なし(unsupervised)方法であって、
前記子宮頸部組織に、分類子ルールのセットを含む分類子を適用するステップと、
前記セットにおける選択された分類子ルールを連続的に適用することにより最終的な予測を取得するステップと、
を含み、
前記適用するステップが、
テクスチャ領域のサイズ、不透明度パラメータ、酢酸白化領域のサイズ、粗い赤点斑および細かい赤点斑の数、粗いモザイクおよび細かいモザイクのサイズ、異型血管のサイズおよび人口統計学的データを確定することからなる群から選択された分類子ルールを使用して行われ、
前記子宮頸部組織を、疾患の所見なし、軽度異形成、高度異形成または癌に分類することができ、
前記テクスチャ領域が前記子宮頸部の面積のおよそ1%を上回り、かつ前記不透明度パラメータが画素値のおよそ4%を下回るかまたは前記画素値のおよそ12%を上回る場合、疾患の所見なしという最終的な予測が得られ、
前記テクスチャ領域が前記子宮頸部の面積のおよそ1%を上回り、前記不透明度パラメータが前記画素値のおよそ4%と前記画素値のおよそ12%との間であり、前記酢酸白化領域のサイズが前記子宮頸部の面積の7%を上回り、かつ子宮口に近い前記酢酸白化領域のサイズが前記子宮頸部の面積の0%を上回る場合、高度異形成という最終的な予測が得られ、
前記テクスチャ領域が前記子宮頸部の面積のおよそ1%を下回り、前記不透明度パラメータが前記画素値の5%を上回り、前記子宮口に近い酢酸白化領域のサイズが前記子宮頸部の面積の0.5%を下回り、粗い赤点斑血管の数が100を下回り、粗いモザイク血管が存在せず、かつ異型血管のサイズが0.5mmを下回る場合、高度異形成という最終的な予測が得られ、
前記テクスチャ領域が前記子宮頸部の面積のおよそ1%を上回り、前記不透明度パラメータが前記画素値のおよそ4%と前記画素値のおよそ12%との間であり、前記酢酸白化領域のサイズが前記子宮頸部の面積の7%を下回り、かつ前記子宮口の近くに酢酸白化領域がない場合、軽度異形成という最終的な予測が得られ、
前記テクスチャ領域が前記子宮頸部の面積のおよそ1%を下回り、前記不透明度パラメータが前記画素値の5%を下回り、粗い赤点斑の数が2を下回り、かつ粗いモザイク血管がない場合、軽度異形成という最終的な予測が得られ、
前記テクスチャ領域が前記子宮頸管の面積のおよそ1%を下回り、前記不透明度パラメータが前記画素値の10%を上回り、かつ前記子宮口に近い前記酢酸白化領域のサイズが前記子宮頸部の面積の15%を上回る場合、癌という最終的な予測が得られ、
前記テクスチャ領域が前記子宮頸部の面積のおよそ1%を下回り、前記不透明度パラメータが前記画素値の8%を上回り、前記子宮口に近い酢酸白化領域のサイズが前記子宮頸部の面積の0.5%を上回り、粗い赤点斑の数が100を上回り、粗いモザイク血管がなく、かつ異常血管のサイズが0.5ミリメートルを上回る場合、癌という最終的な予測が得られる方法。
【請求項11】
患者が25歳を下回るかまたは60歳を上回る場合、癌という最終的な予測における前記信頼性レベルをおよそ10%〜およそ20%低下させるステップ
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
子宮頸部組織をクラスに分類するルールベースの教師なし方法であって、
不透明度パラメータを確定する分類子ルールを含む分類子を適用するステップを含み、
前記子宮頸部組織を、疾患の所見なし、軽度異形成、高度異形成または癌に分類することができる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(A)】
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【図6(B)】
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【図7(A)】
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【図7(B)】
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【図7(C)】
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【図8(A)】
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【図8(B)】
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【図8(C)】
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【公表番号】特表2012−505028(P2012−505028A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531023(P2011−531023)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/005547
【国際公開番号】WO2010/042211
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(509050236)エスティーアイ・メディカル・システムズ・エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】