説明

孔版印刷用エマルジョンインキ

【課題】 従来よりも経時での分散安定性が向上し、長期放置後の顔料凝集の防止を図ることができる油中水型(W/O型)の孔版印刷用エマルジョンインキの提供。
【解決手段】 油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含んでなり、該油相中に着色剤と、アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物及びポリエステルアミン化合物の少なくともいずれかの分散剤とを含有する孔版印刷用エマルジョンインキである。分散剤の含有量が、着色剤100質量部に対し1〜100質量部である態様、着色剤が、モノアゾレーキ系顔料及びジスアゾ系顔料の少なくともいずれかである態様、着色剤のインキにおける含有量が1質量%以上である態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時での分散安定性が向上し、長期放置後の顔料凝集の防止を図ることができる油中水型(W/O型)の孔版印刷用エマルジョンインキに関する。
【0002】
孔版印刷装置を用いた印刷プロセスは、所定の原稿データをデジタル信号に変換し、該デジタル信号に基づきサーマルヘッド等の熱素子により孔版原紙を穿孔して孔版を作製し、該孔版を印刷ドラム上に巻装する一方、印刷インキは印刷ドラム下部の押圧手段によって巻装された孔版を通過し印刷用紙に転写される工程により行われる。
前記印刷プロセスで用いられる孔版原紙としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等が使用されているが、インキ転移量が多いため、ベタ画像の均一性、用紙巻き上がり、裏移り等の問題がある。そこで、近年、孔版原紙に多孔性の樹脂層を設けて、インキ転移量の少ない領域にコントロールすることにより、前記課題を解決している。
【0003】
しかし、前記多孔性の樹脂層の孔径は20μm程度とかなり小さく、特に凝集性の強い顔料を使用したインキでは前記樹脂層に顔料が詰まってしまい、濃度低下が生じるという不具合がある。
一般的に分散のプロセスは着色剤の比表面積を増大するプロセスであることから、熱力学的には系のエネルギーを増大させる不安定なプロセスである。したがって、ただ単に分散性を向上させただけではインキ作製直後の分散性は良くなるものの、経時での分散安定性という点においては問題がある。
【0004】
前記課題を解決するため、例えば、特許文献1では、顔料粒子の分散微細化を促進するため、顔料表面に対して吸着力の優れたアルミニウムキレート化合物を使用し、更に流動性を保持したまま厚い溶媒和層を形成するために立体障害効果の強いポリグリセリン脂肪酸エステルを併用している。また、特許文献2では、アルミニウムキレート化合物及びポリグリセリン脂肪酸を含有し、特に凝集力の強い黄顔料について顔料凝集を抑え、目詰まりを防止できるW/Oエマルジョンインキが提案されている。
【0005】
しかしながら、現在の孔版印刷のプロセスで使用されている孔版原紙の孔径が20μmと従来のものと比較して非常に小さくなっていることから、これまで使用してきた前記分散剤の添加のみでは、放置後の顔料凝集を防止することができず、濃度低下などの不具合が生じるという問題がある。特に顔料凝集力の強い紅系顔料、黄系顔料を用いた場合には、上記不具合が顕著に発生し、その解決が強く望まれているのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開2000−160082号公報
【特許文献2】特開2001−262029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、油溶性の新規分散剤を使用することによって、経時での分散安定性が向上し、着色剤としての顔料粒子同士の凝集による不具合を解消することができる油中水型(W/O型)の孔版印刷用エマルジョンインキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明者が鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち、油相中に着色剤と、アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物及びポリエステルアミン化合物の少なくともいずれかの分散剤とを含有することによって、経時での分散安定性が向上し、長期放置後の着色剤凝集の防止を図ることができるという知見である。
【0009】
本発明は、本発明者の前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含んでなり、該油相中に着色剤と、アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物及びポリエステルアミン化合物の少なくともいずれかの分散剤とを含有することを特徴とする孔版印刷用エマルジョンインキである。該<1>に記載の孔版印刷用エマルジョンインキにおいては、分散剤としてアンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物を使用すると、該アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物が着色剤としての顔料表面に吸着し、高分子系の分散剤であるポリエステルアミン化合物と顔料との結合剤的な働きをすることによって、ポリエステルアミン化合物の顔料との結合力を強化することが可能となり、従来よりも経時での分散安定性が向上し、顔料凝集の防止を効果的に図ることができる。
【0010】
<2> アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物(A)と、ポリエステルアミン化合物(B)との混合質量比(A:B)が、1:2〜1:9である前記<1>に記載の孔版印刷用エマルジョンインキである。
【0011】
<3> 分散剤の含有量が、着色剤100質量部に対し1〜100質量部である前記<1>から<2>のいずれかに記載の孔版印刷用エマルジョンインキである。該<3>に記載の孔版印刷用エマルジョンインキにおいては、アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物及びポリエステルアミン化合物の少なくともいずれかの分散剤を着色剤100質量部に対し1〜100質量部添加することによって、分散剤の添加効果を十分に発揮することが可能となる。
【0012】
<4> 着色剤が、モノアゾレーキ系顔料及びジスアゾ系顔料の少なくともいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の孔版印刷用エマルジョンインキである。該<4>に記載の孔版印刷用エマルジョンインキにおいては、特に顔料凝集力の強いモノアゾレーキ系顔料、又はジスアゾ系顔料に対してアンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物及びポリエステルアミン化合物の少なくともいずれかの分散剤を使用することによって、その効果を十分に発揮することが可能となる。
<5> 着色剤のインキ中における含有量が1質量%以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の孔版印刷用エマルジョンインキである。該<5>に記載の孔版印刷用エマルジョンインキにおいては、インキ中に使用されている着色剤(有彩色顔料又は無彩色顔料)の使用量をインキ中において1質量%以上とすることによって、前記分散剤の効果を十分に発揮することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、油溶性の新規分散剤を使用することによって、従来よりも経時での分散安定性が向上し、長期放置後の顔料凝集の防止を図ることができる孔版印刷用エマルジョンインキを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の孔版印刷用エマルジョンインキは、油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含んでなり、該油相中に着色剤と、アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物及びポリエステルアミン化合物の少なくともいずれかの分散剤とを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0015】
前記孔版印刷用エマルジョンインキは、油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含み、油相20〜50質量%及び水相50〜80質量%が好ましい。
前記油相の混合割合が10質量%未満であると、W/Oエマルジョンとしての形態をとれなくなることがあり、90質量%を超えると、物性的にW/Oエマルジョンとすることの効果が不足してしまうことがある。
【0016】
<油相>
前記油相は、着色剤、及びアンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物及びポリエステルアミン化合物の少なくともいずれかの分散剤を含有してなり、油成分、乳化剤、樹脂、ゲル化剤、酸化防止剤、体質顔料、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0017】
−分散剤−
前記分散剤としては、アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物及びポリエステルアミン化合物の少なくともいずれかが用いられる。
前記アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アンモニウムフタロシアニンスルホン酸塩、などが挙げられる。
前記アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物は、着色剤としての種々の有機顔料表面の極性を上げることができ、高分子系の分散剤としてのポリエステルアミン化合物を用いた際に、アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物が顔料との結合剤的な働きをすることにより、通常の場合よりも分散剤の結合力は強くなり、特に経時での分散安定性が従来に比べて大幅に向上する。
前記アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物は青色の粉体であり、その使用量によっては色調を変化させてしまう可能性もあることから、色調の変化に敏感な場合には極力使用量を抑える、又は使用しない等の検討も必要になる。前記アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、ソルスパーズシリーズの5000(Lubrizol社製)、などが挙げられる。
【0018】
前記ポリエステルアミン化合物は、高分子系の分散剤であることから立体障害効果により着色剤としての顔料粒子同士の凝集を防止することが可能となる。また、前記ポリエステルアミン化合物の末端は櫛型の形状をしており、従来のようなシングルの形状よりも結合力という面においては強くなっている。更に、前記アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物を併用して使用することによって、ポリエステルアミン化合物の顔料に対する結合力がより強くなり、特に経時での分散安定性が従来よりも大幅に向上する。
前記ポリエステルアミン化合物は、フリーのカルボン酸基を持つ(それらは少なくとも2つのポリエステル鎖を持っており、これらは互いにポリ低級アルキレンイミン鎖を有している)ポリエステルと、ポリ低級アルキレンイミンとの反応生成物であり、少なくとも二つのポリエステル鎖を有し、該ポリエステル鎖にそれぞれポリ(低アルキレン)イミン鎖が結合している化合物である。
前記ポリエステルアミン化合物としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、Lubrizol社製のソルスパーズ13940、16000、17000、20000、28000、54000、などが挙げられる。
【0019】
前記アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物及び前記ポリエステルアミン化合物は、単独で使用してもよく、又は併用しても構わない。ただし、アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物は単独のみではその効果が十分に発揮されないことから、該アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物と、ポリエステルアミン化合物又はその他の分散剤と併用して使用することが好ましい。
【0020】
前記その他の分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(OTP−75、日光ケミカルズ株式会社製)、アルキルアミン系高分子化合物、アルミニウムキレート系化合物、スチレン-無水マレイン酸系共重合高分子化合物、ポリグリセリン脂肪酸エステル系化合物、ポリエステルアミン系化合物、ポリカルボン酸エステル型高分子化合物、脂肪族系多価カルボン酸、高分子ポリエステルのアミン塩類、エステル型アニオン界面活性剤、高分子量ポリカルボン酸の長鎖アミン塩類、長鎖ポリアミノアミドと高分子酸ポリエステルの塩、ポリアミド系化合物、燐酸エステル系界面活性剤、アルキルスルホカルボン酸塩類;ポリイソプロピルアクリルアミド等のN−アルキル置換アクリルアミド系のポリマー又はその共重合体、α−オレフィンスルホン酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸塩類、ポリエチレンイミン、アルキロールアミン塩、アセチレンジオール系化合物、オリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、などが挙げられる。これら以外にもインキの保存安定性を阻害しない範囲であればイオン性界面活性剤、両性界面活性剤なども使用可能であり、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記分散剤の含有量は、2種以上を併用する場合は合計量で、前記着色剤100質量部に対し1〜100質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましい。前記含有量が1質量部未満であると、本発明の作用効果が十分に発揮されないことがあり、100質量部を超えると、水分離などの問題が生じることがある。
また、アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物(A)と、ポリエステルアミン化合物(B)とを併用する場合には、使用する顔料に応じて異なり一概に規定できないが、混合質量比(A:B)は1:2〜1:9が好ましい。更に詳しくは、黒色顔料では混合質量比(A:B)=1:2程度、青/緑系顔料では混合質量比(A:B)=1:4程度、紅/黄系顔料では混合質量比(A:B)=1:9程度が好ましい。
【0022】
−着色剤−
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック類;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉;弁柄、黄鉛、群青、酸化クロム、酸化チタン等の無機顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、モノアゾレーキ系顔料、ジスアゾ系顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料;無金属フタロシアニン顔料、銅フタロシアニン顔料等のフタロシアニン系顔料;アントラキノン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、イソインドリン系色素、ジオキサンジン系色素、スレン系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、チオインジゴ系色素、キノフタロン系色素、金属錯体等の縮合多環系顔料;酸性又は塩基性染料のレーキ等の有機顔料;ジアゾ染料、アントラキノン系染料等の油溶性染料;蛍光顔料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、モノアゾレーキ系顔料及びジスアゾ系顔料の少なくともいずれかが分散剤の添加による効果が高い点で特に好ましい。前記モノアゾレーキ系顔料としては、例えば、ウォッチングレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、などが挙げられる。
前記ジスアゾ系顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー16、などが挙げられる。
【0023】
前記着色剤としてのカーボンブラックとしては、市販品を用いることができ、例えば、MA−100、MA−7、MA−77、MA−11、#40、#44(いずれも三菱化学株式会社製)、Raven1100、Raven1080、Raven1255、Raven760、Raven410(いずれもコロンビヤンカーボン社製)、などが挙げられる。
【0024】
前記着色剤の孔版印刷用エマルジョンインキにおける添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。なお、インキ中には着色剤を1質量%以上含有することが好ましい。前記着色剤がインキ中に1質量%未満であると、分散剤の効果が十分に発揮されないためである。
【0025】
−油成分−
前記油成分としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、植物油、鉱物油、などが挙げられる。
前記植物油としては、例えば、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、なたね油、サフラワー油、ごま油、ひまし油、脱水ひまし油、つばき油、オリーブ油、やし油、米油、綿実油、パーム油、あまに油、パーム核油、桐油、カメリアオイル、グレープシード油、スイートアルモンド油、ピスタチオナッツ油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、メドウホーム油、などが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記エステル化植物油としては、前記植物油をエステル化したものが挙げられ、前記エステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル等が挙げられる。該エステル化植物油としては、例えば、エステル化大豆油が特に好ましい。
前記アルキド樹脂として、油脂が大豆油である大豆油脂肪酸アルキド樹脂を用い、エステル化大豆油を使用することにより、大豆油由来成分の合計が6%を超えることで、アメリカ大豆協会のSOYマークの認定を受けることができ、安全性の点でも有利となる。
【0026】
前記植物油の孔版印刷用エマルジョンインキにおける添加量は、1〜35質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましい。
【0027】
前記鉱物油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、石油系溶剤、スピンドル油、流動パラフィン、軽油、灯油、マシン油、ギヤー油、潤滑油、モーター油、等が挙げられ、これらの中でも、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、石油系溶剤が特に好ましい。
前記パラフィン系オイルとしては、市販品を用いることができ、例えば、モービル石油社製のガーゴオイルアークティックシリーズ、新日本石油株式会社製の日石スーパーオイルシリーズ、出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイル、ダイアナフレシアシリーズ等が挙げられる。
前記ナフテン系オイルとしては、環分析によるナフテン成分の炭素含有量(CN)が30%以上であり、芳香族成分の炭素の含有量(CA)が20%以下であり、かつパラフィン成分の炭素含有量(CP)が55%以下であるものが好適であり、例えば、モービル石油社製のガーゴオイルアークティックオイル155及び300ID、ガーゴオイルアークティックオイルライト、ガーゴオイルアークティックオイルCヘビー;出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイル、ダイアナフレシアシリーズ;日本サン石油株式会社製のサンセンオイルシリーズなどが挙げられる。
前記石油系溶剤としては、市販品を用いることができ、例えば、エクソン化学社製のアイソパーシリーズ(C、E、G、H、L、M等)及びエクソール(D30、D40、D80、D110、D130等);新日本石油株式会社製のAFソルベントシリーズ(4号、5号、6号、7号等)、などが挙げられる。
【0028】
これらの鉱物油は、インキの安定性等を考慮した場合、3環以上の縮合芳香族環を含む芳香族炭化水素である多環芳香族成分が3質量%未満のものを使用することが好ましい。また、変異原性指数(MI)が1.0未満、アロマ分(%C)が20〜55%、アニリン点が100℃以下であって、かつオイル全質量基準でベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[a]ピレン、ジベンゾ[a,j]アクリジン等の多環芳香族の含有量がそれぞれ10ppm以下であり、かつ合計含有量が50ppm以下である。
なお、必要に応じて安全性の高いアロマ系オイル(例えば、特開平11−80640号公報)を使用することもできる。
【0029】
前記鉱物油の前記孔版印刷用エマルジョンインキにおける添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜35質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましい。
【0030】
−乳化剤−
前記乳化剤としては、油中水型のエマルジョンを形成することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、非イオン系界面活性剤が好ましい。該非イオン系界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、などが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記乳化剤の前記孔版印刷用エマルジョンインキにおける添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.5〜15質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましい。
【0031】
−樹脂−
前記樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキド樹脂、ロジン;重合ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル、ロジンポリエステル樹脂、水素化ロジンエステル等のロジン系樹脂;ロジン変性アルキド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等のロジン変性樹脂;マレイン酸樹脂;フェノール樹脂;石油樹脂;環化ゴム等のゴム誘導体樹脂;テルペン樹脂;重合ひまし油、などが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルキド樹脂が特に好ましい。
【0032】
前記樹脂の重量平均分子量は、定着性及び印刷適性から8000〜16万が好ましく、3万〜8万がより好ましい。
前記樹脂の前記油相における添加量は、インキのコスト及び印刷適正の点から2〜50質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
前記樹脂の重量平均分子量が低い場合及び添加量が少ない場合には、定着性への効果が小さいことがあり、一方、重量平均分子量が高すぎたり、樹脂の添加量が多い場合にはインキの粘度が高くなり、ドラム後端からインキが漏れるなどの印刷適性の問題が生じることがある。
前記樹脂としては、市販品を用いることができ、荒川化学工業株式会社製のKG−836、KG−846、KG−1801、KG−1832、KG−1829、KG−1804、KG−1828、KG−1808−1、KG−1834、KG−1831、KG−1833、タマノル353、タマノル403、タマノル371、タマノル394;ハリマ化成株式会社製のハリフェノール(561、564、582、173、T3120、T3040、P637、295などが挙げられる。また、環化ゴムも定着性に対し効果があり、例えばコロンビヤンカーボン日本社製の商品名ALSYNOL RS47、ALSYNOL RS44、SYNTEX 800;ヘキスト社製のALPEX CK 450、ALPEX CK514等が挙げられる。
【0033】
前記アルキド樹脂は、通常、油脂と多塩基酸と多価アルコールから構成される。前記油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、オリーブ油、ひまし油、米糠油、綿実油、大豆油、アマニ油、キリ油などが挙げられ、これらの中でも、大豆油が特に好ましい。前記多塩基酸としては、飽和多塩基酸及び不飽和多塩基酸のいずれかを用いることができる。前記飽和多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸等が挙げられる。前記不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリット、ジペンタエリスリット、マンニット、ソルビットなどが挙げられる。
【0034】
前記アルキド樹脂は、酸価が15以下であり、10以下がより好ましい。また、ヨウ素価が80以下が好ましく、80〜110がより好ましい。また、前記アルキド樹脂の油長は、前記油脂中の脂肪酸がトリグリセライドで存在したときの樹脂中の質量%で表され、通常60〜90質量%が好ましい。前記アルキド樹脂の重量平均分子量は3万以下が好ましく、1万以下がより好ましい。
ここで、前記アルキド樹脂の酸価は、例えば、JIS K0070により測定することができる。前記アルキド樹脂のヨウ素価は、例えば、JIS K0070により測定することができる。
【0035】
−ゲル化剤−
前記ゲル化剤は、油相に含まれる樹脂をゲル化してインキの保存安定性、定着性、及び流動性等を向上させる役割を有し、油相中の樹脂と配位結合する化合物が好ましい。該ゲル化剤としては、例えば、Li、Na、K、Al、Ca、Co、Fe、Mn、Mg、Pb、Zn、Zr等の金属を含む有機酸塩、有機キレート化合物、金属石鹸オリゴマー等が挙げられる。具体的には、オクチル酸アルミニウム等のオクチル酸金属塩、ナフテン酸マンガン等のナフテン酸金属塩、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸塩、アルミニウムジイソプロポキシドモノエチルアセトアセテート等の有機キレート化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ゲル化剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、油相中の樹脂の総量に対し15質量%以下が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
【0036】
−酸化防止剤−
前記酸化防止剤は、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、例えば、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、クエン酸エステル、抽出トコフェロール、トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸塩類、チオ硫酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸誘導体等が挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酸化防止剤の前記油相における添加量は、例えば2質量%以下が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。
【0037】
−体質顔料−
前記体質顔料は、インキ中には滲み防止、粘度調整のために油相、水相、又は両相に添加することができ、無機微粒子及び有機微粒子のいずれかが好ましい。前記無機微粒子としては、例えば、白土、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナホワイト、ケイソウ土、カオリン、マイカ、水酸化アルミニウム等が挙げられる。前記有機微粒子としては、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリシロキサン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はこれらの共重合体、などが挙げられる。
前記体質顔料の前記孔版印刷用エマルジョンインキにおける添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜50質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0038】
<水相>
前記水相は、水、水溶性高分子化合物、水の蒸発抑制剤又は凍結防止剤、電解質、O/W樹脂エマルジョン、防腐剤又は防かび剤、pH調整剤などのその他の成分を含有してなる。
【0039】
前記水としては、清浄であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水道水、イオン交換水、蒸留水等を使用することができる。
【0040】
−水溶性高分子化合物−
前記水溶性高分子化合物としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然高分子化合物、半合成高分子化合物、合成高分子化合物、などが挙げられる。
前記天然高分子化合物としては、例えば、デンプン、マンナン、アルギン酸ソーダ、ガラクタン、トラガントガム、アラビアガム、プルラン、デキストラン、キサンタンガム、ニカワ、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン等が挙げられる。
前記半合成高分子化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等が挙げられる。
前記合成高分子化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸トリエタノールアミン等のアクリル酸樹脂誘導体;ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル等の合成高分子化合物等が挙げられる。
前記水溶性高分子化合物の前記水相における添加量は、25質量%以下が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
【0041】
前記水の蒸発抑制剤又は凍結防止剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、例えば、低級飽和一価アルコール、グリコール、多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記低級飽和一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。前記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。
前記水の蒸発抑制剤又は凍結防止剤の前記水相における添加量は、1〜15質量%が好ましく、4〜12質量%がより好ましく、5〜9質量%が特に好ましい。
【0042】
前記電解質は、エマルジョンの安定性を高めるために添加され、エマルジョンの安定度向上に有効な離液順列が高いイオンで構成された電解質を添加するのが好ましい。離液順列が高い陰イオンとしては、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン等であり、離液順列が高い陽イオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンである。ここで添加される電解質としては少なくとも陰イオンか陽イオンの一方が前記イオンよりなる塩が好ましく、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、等が挙げられる。これらの中でも、2価の陰イオン含有化合物が好ましく、硫酸マグネシウムが特に好適である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電解質の前記水相における添加量は、例えば、0.1〜2質量%が好ましく、0.5〜1.5質量%がより好ましい。
【0043】
前記水中油型(O/W)樹脂エマルジョンとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、合成高分子化合物でも天然高分子化合物でもよい。前記合成高分子化合物としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂等が挙げられる。前記天然高分子化合物としては、孔版印刷用エマルジョンインキに普通に用いられる油相に添加できる高分子化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記水中油型樹脂エマルジョンの分散方法についても特に制限はなく、分散剤、保護コロイド、界面活性剤を添加していてもよく、またソープフリー乳化重合によって合成したものでもよい。前記水中油型樹脂エマルジョンの最低造膜温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、40℃以下が好ましい。
【0044】
前記防腐剤又は防かび剤は、エマルジョン内で細菌やかびが繁殖するのを防ぐために添加され、エマルジョンを長期間保存する場合に有効である。該防腐剤又は防かび剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、例えば、サリチル酸、フェノール類、p−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安息香酸エチル等の芳香族ヒドロキシ化合物又はその塩素化合物、ソルビン酸、デヒドロ酢酸等が挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記防腐剤又は防かび剤の前記水相における添加量は、3質量%以下が好ましく、0.1〜1.2質量%がより好ましい。
【0045】
前記pH調整剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、例えば、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、トリアミルアミン等が好適に挙げられる。必要に応じてこれらのpH調整剤を添加して水相のpHを6〜8に保つことができる。水相のpHが前記範囲からはずれると、水溶性高分子化合物が添加されている場合にその効果が損なわれてしまうことがある。
【0046】
なお、本発明の孔版印刷用エマルジョンインキには、印刷時に印刷用紙と印刷ドラムとの分離をよくするため、或いは印刷用紙の巻き上がり防止等のために油相にワックスを添加することができる。また、水相には、トリエタノールアミンや水酸化ナトリウム等を添加して、水溶性高分子化合物を添加することにより高粘度化を更に増進させることができる。さらに、水相に防錆剤や消泡剤を添加して印刷の際に印刷機がインキによって錆びたり、インキが泡立つことを防止することができる。これらの添加剤は、孔版印刷用エマルジョンインキに添加されている公知品を必要に応じて添加すればよく、その添加量は従来品の場合と同程度でよい。
【0047】
本発明の孔版印刷用エマルジョンインキの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができるが、例えば、常法により油相及び水相液を予め別々に調製し、前記油相中に水相を添加して、ディスパーミキサー、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー等の公知の乳化機内で乳化させることにより製造することができる。
具体的には、着色剤、分散剤、油成分、及び乳化剤を混合し、高速ディゾルバーにて攪拌する。その後、ビーズミルを用いて分散処理を行って油相を調製する。一方、電解質、凍結防止剤、及び抗菌剤を混合し、この混合液を水に良く溶解させて水相を調製する。次いで、乳化機を使用し、前記油相液を仕込んで液を撹拌しながら、徐々に前記水相液を添加して乳化させることにより、孔版印刷用エマルジョンインキを製造することができる。
【0048】
本発明の孔版印刷用エマルジョンインキは、ずり速度20sec−1の時の粘度が3〜40Pa・sが好ましく、10〜30Pa・sがより好ましい。
以上説明したように、本発明の孔版印刷用エマルジョンインキは、水相中に水不溶性着色剤を添加したインキにおける放置後の不溶性着色剤の固着による目詰まりが改善され、機上放置性に優れているので、例えば、輪転孔版印刷機による孔版印刷に好適に用いられる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
−孔版印刷用エマルジョンインキの調製−
まず、表1に記載の処方により着色剤、分散剤、油成分、及び乳化剤を混合し、高速ディゾルバーにて攪拌した。その後、ビーズミル(LMZ2、アシザワ・ファインテック株式会社製)を用いて分散処理を行って油相を調製した。
次に、表1に記載の処方により電解質、凍結防止剤、及び抗菌剤を混合し、この混合液を水に良く溶解させて水相を調製した。
次いで、乳化機(日光ケミカルズ株式会社製、乳化試験機ET−3A型)を使用し、前記油相液を仕込んで液を撹拌しながら、徐々に前記水相液を添加した。以上により、実施例1の孔版印刷用エマルジョンインクを作製した。
【0051】
(実施例2〜4)
−孔版印刷用エマルジョンインキの調製−
実施例1において、表1及び表2に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4の孔版印刷用エマルジョンインクを作製した。
【0052】
(比較例1)
−孔版印刷用エマルジョンインキの調製−
実施例1において、表1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の孔版印刷用エマルジョンインクを作製した。
【0053】
(比較例2)
−孔版印刷用エマルジョンインキの調製−
実施例1において、表2に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の孔版印刷用エマルジョンインクを作製した。
【0054】
次に、得られた各孔版印刷用エマルジョンインキについて、作製直後のインキ及び60℃にて15日間放置後のインキを、それぞれ400rpmで20分間攪拌した後、該インキの状態を光学顕微鏡で観察し、顔料の凝集の有無を確認した。結果を表1及び表2に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表1及び表2の結果から、実施例1〜4及び比較例1〜2のいずれの場合においてもインキ作製直後の攪拌では、ほとんど顔料凝集は見られなかった。アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物及びポリエステルアミン化合物を添加していない比較例1及び比較例2では、60℃にて15日間後の攪拌においては全て顔料凝集が発生した。
これに対し、アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物及びポリエステルアミン化合物を添加した実施例1〜4では、一部にやや顔料凝集が見られたが、いずれも比較例1及び2に比べて顔料凝集が効果的に防止できることが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の孔版印刷用エマルジョンインキは、油溶性の分散剤を添加することによって、従来よりも経時での分散安定性が向上し、長期放置後の顔料凝集の防止を図ることができるので、例えば、輪転孔版印刷機による孔版印刷に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含んでなり、該油相中に着色剤と、アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物及びポリエステルアミン化合物の少なくともいずれかの分散剤とを含有することを特徴とする孔版印刷用エマルジョンインキ。
【請求項2】
アンモニウムフタロシアニンスルホン酸化合物(A)と、ポリエステルアミン化合物(B)との混合質量比(A:B)が、1:2〜1:9である請求項1に記載の孔版印刷用エマルジョンインキ。
【請求項3】
分散剤の含有量が、着色剤100質量部に対し1〜100質量部である請求項1から2のいずれかに記載の孔版印刷用エマルジョンインキ。
【請求項4】
着色剤が、モノアゾレーキ系顔料及びジスアゾ系顔料の少なくともいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の孔版印刷用エマルジョンインキ。
【請求項5】
着色剤のインキ中における含有量が1質量%以上である請求項1から4のいずれかに記載の孔版印刷用エマルジョンインキ。

【公開番号】特開2006−131773(P2006−131773A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322931(P2004−322931)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】