説明

孔路計測方法及び装置

【課題】本発明は、プローブの静止時間の角速度信号を平均化して得た角速度バイアス値を以降の角速度信号から差し引くことにより、角速度計固有のバイアスをキャンセルし、バイアスの大きい角速度計でも高精度の孔路計測を行うことを目的とする。
【解決手段】本発明による孔路計測方法及び装置は、計測の前後又は途中でプローブ(1)を静止させ、静止の期間の角速度信号(r)を計測し、これを平均化して角速度バイアス値(m1…)として演算部(7)に記憶し、以降の角速度信号から角速度バイアス値(m1…)を差し引き、角速度計固有のバイアスをキャンセルする方法と構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔路計測方法及び装置に関し、特に、計測の前後又は途中でプローブを静止させ、この静止期間の角速度信号を平均化して得た角速度バイアス値を以降の角速度信号から差し引くことにより、角速度計固有のバイアスをキャンセルし、バイアスの大きい角速度計でも高精度の孔路計測を行うことができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の孔路計測方法及び装置としては、特許文献等を示していないが、図5から図8で示される構成を挙げることができる。
図5において符号1で示されるものは掘削孔2内に移動自在に設けられたプローブであり、このプローブ1に接続されたケーブル3は、ケーブル中継器4、ケーブル測長器5を介してケーブル巻取器6で巻取るように構成されている。
【0003】
前記ケーブル測長器5からのケーブル速度5a及びケーブル巻取器6からのプローブデータ1aは演算部7に取込まれている。
【0004】
前記プローブ1は、図6のように構成され、3軸の角速度計10と加速度計11がA/D変換器12を介して制御回路13に接続され、この制御回路13からのデータ13aは第1通信回路14からケーブル3を介して演算部7の第2通信回路15に入力されている。
【0005】
前記演算部7では、前記第2通信回路15が、表示器16と記憶回路17を有する演算/表示回路18に接続され、前記ケーブル測長器5からのケーブル速度5aは、入力回路19を経て前記演算/表示回路18に入力されている。
【0006】
前述の構成において、前記プローブ1にて得られた角速度及び加速度のプローブデータ6aに基づいて姿勢・方位角演算を行い、ケーブル測長器5にてケーブル速度5aを計測し、これらを組合わせて演算部7で演算することにより掘削孔2の経路を計測する。
前述の経路演算は、下記式にて実施するが、姿勢・方位角計測で誤差要因として、角速度計のバイアス(δΨ‘)がある。バイアスが小さいほど計測誤差は小さくなるが、バイアスが小さい角速度計は高価であり、高精度計測は高価なシステムとなる。
また、バイアスが小さい角速度計は外形の大きなものが多く小口径の孔路計測装置には搭載できない。
【数1】

【0007】
また、実際の孔位置の算出は、図7及び図8の計測座標に示されるように、プローブ1で計測した姿勢角(ピッチ角:θ)及び方位角(Ψ)とケーブル測長器5より得られたケーブル速度(単位時間当たりの移動距離:V)データより、下式により、孔位置を算出する。
【数2】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の孔路計測方法及び装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、角速度計が有するバイアスが誤差要因となり、このバイアスを小さくするには、高価となり、高精度な計測を安価に行うことは困難であった。
また、バイアスを小さくすると、角速度計は外形が大きいものとなり、小口径の孔路計測装置には搭載が不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による孔路計測方法は、掘削孔内を移動し角速度計及び加速度計を有するプローブにより姿勢・方位角演算を演算部で行い、前記プローブに接続されたケーブルのケーブル速度をケーブル測長器にて計測し、前記姿勢・方位角及びケーブル速度の演算により前記掘削孔の計測を行うようにした孔路計測方法において、前記計測の前後又は途中で前記プローブを静止させ、前記静止の期間の角速度信号を計測し、前記角速度信号を平均化して角速度バイアス値として前記演算部に記憶し、以降の前記角速度信号から前記角速度バイアス値を差し引くことにより、前記角速度計固有のバイアスをキャンセルする方法であり、また、前記ケーブル速度をモニターし、このケーブル速度がゼロの期間が予め設定したシステム設定値(n秒)以上連続した時、前記プローブが静止していると判断する方法であり、また、算出した多点の前記角速度バイアス値から、時間軸に対する角速度バイアスの回帰を行い、検出角速度のバイアス補正を行う方法であり、また、本発明による孔路計測装置は、掘削孔内を移動し角速度計及び加速度計を有するプローブにより姿勢・方位角演算を演算部で行い、前記プローブに接続されたケーブルのケーブル速度をケーブル測長器にて計測し、前記姿勢・方位角及びケーブル速度の演算により前記掘削孔の計測を行うようにした孔路計測装置において、前記計測の前後又は途中で前記プローブを静止させ、前記静止の期間の角速度信号を計測し、前記角速度信号を平均化して角速度バイアス値として前記演算部に記憶し、以降の前記角速度信号から前記角速度バイアス値を差し引くことにより、前記角速度計固有のバイアスをキャンセルするようにした構成であり、また、前記ケーブル速度をモニターし、このケーブル速度がゼロの期間が予め設定したシステム設定値(n秒)以上連続した時、前記プローブが静止していると判断するようにした構成であり、また、算出した多点の前記角速度バイアス値から、時間軸に対する角速度バイアスの回帰を行い、検出角速度のバイアス補正を行うバイアス補正手段を有するようにした構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明による孔路計測方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、計測の前後又は途中でプローブを静止させ、静止の期間の角速度信号を計測し、前記角速度信号を平均化して角速度バイアス値として演算部に記憶し、以降の角速度信号から前記角速度バイアス値を差し引くことにより、角速度計固有のバイアスをキャンセルすることにより、バイアスの大きい角速度計を用いて安価で小型の孔路計測装置を得ることができる。
また、プローブの静止、すなわち、停止を自動検出することで、停止に対する別途の信号を付加する等の手段が不要となる。
さらに、バイアス補正手段を多岐にわたって持つことにより、リアルタイム計測から後処理解析まで目的に応じて、高精度の計測を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、計測の前後又は途中でプローブを静止させ、この静止期間の角速度信号を平均化して得た角速度バイアス値を以降の角速度信号から差し引くことにより、角速度計固有のバイアスをキャンセルし、バイアスの大きい角速度計でも高精度の孔路計測を行うことができるようにした孔路計測方法及び装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0012】
以下、図面と共に本発明による孔路計測方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一部分には同一符号を付し、図5〜図8の構成は、本発明においても同一であるため、本発明に対しても援用するものとする。
図1は第1実施形態を示すもので、掘削孔2内でプローブ1を動かし、センサデータ及びケーブル速度5aの計測を記憶回路17に記録する。
【0013】
記録したケーブル速度5から、演算部7が計測の途中又は前後でプローブ1が静止する静止区間(速度以下│a│がn秒間連続)を探し出し、その区間の角速度信号の平均化処理を行い、角速度計10の角速度バイアス値(m1・・・)を算出する。
この算出した角速度バイアス値(m1・・・)を用いて、計測区間20、21の角速度信号を補正し、バイアス量の小さい角速度信号を得ることにより、高精度の計測を行う。
すなわち、具体的には、図2のように、角速度信号補正値=計測区間2の角速度検出値−計測区間直前の角速度バイアス値(m1)である。
【0014】
また、図3の場合には、角速度信号補正値=計測区間2の角速度検出値−[m1+(m2−m1)/T1×t)となる。
尚、前述の場合、ケーブル速度5aを演算部7でモニターし、このケーブル速度5aがゼロの期間が予め設定したシステム設定値(n秒)以上連続した時、プローブ1が静止していると判断している。
【0015】
また、図4に示されるように、多くの地点(多点)の静止区間1〜kにおける角速度バイアス値(m1〜mk)から、時間軸に対する角速度バイアス値の回帰を行い、検出角速度のバイアス補正を行う演算手段(図示せず)からなるバイアス補正手段を前記演算部7に有している。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、角速度計の精度向上だけではなく、一般のセンサにおける検出データに対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による孔路計測方法及び装置の計測方法を示す構成図である。
【図2】図1の方法を具体的に示す構成図である。
【図3】図2の他の形態を示す構成図である。
【図4】図3の他の形態を示す構成図である。
【図5】従来の計測システムを示す構成図である。
【図6】図5の要部の具体的ブロック図である。
【図7】従来の掘削孔の水平位置の計測座標を示す説明図である。
【図8】従来の掘削孔の垂直位置の計測座標を示す説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1 プローブ
2 掘削孔
3 ケーブル
5 ケーブル測長器
5a ケーブル速度
7 演算部
r 角速度信号
m1… 角速度バイアス値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔(2)内を移動し角速度計(10)及び加速度計(11)を有するプローブ(1)により姿勢・方位角演算を演算部(7)で行い、前記プローブ(1)に接続されたケーブル(3)のケーブル速度(5a)をケーブル測長器(5)にて計測し、前記姿勢・方位角及びケーブル速度(5a)の演算により前記掘削孔(2)の計測を行うようにした孔路計測方法において、
前記計測の前後又は途中で前記プローブ(1)を静止させ、前記静止の期間の角速度信号(r)を計測し、前記角速度信号(r)を平均化して角速度バイアス値(m1…)として前記演算部(7)に記憶し、以降の前記角速度信号から前記角速度バイアス値(m1…)を差し引くことにより、前記角速度計固有のバイアスをキャンセルすることを特徴とする孔路計測方法。
【請求項2】
前記ケーブル速度(5a)をモニターし、このケーブル速度(5a)がゼロの期間が予め設定したシステム設定値(n秒)以上連続した時、前記プローブ(1)が静止していると判断することを特徴とする請求項1記載の孔路計測方法。
【請求項3】
算出した多点の前記角速度バイアス値(m1…)から、時間軸に対する角速度バイアスの回帰を行い、検出角速度のバイアス補正を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の孔路計測方法。
【請求項4】
掘削孔(2)内を移動し角速度計(10)及び加速度計(11)を有するプローブ(1)により姿勢・方位角演算を演算部(7)で行い、前記プローブ(1)に接続されたケーブル(3)のケーブル速度(5a)をケーブル測長器(5)にて計測し、前記姿勢・方位角及びケーブル速度(5a)の演算により前記掘削孔(2)の計測を行うようにした孔路計測装置において、
前記計測の前後又は途中で前記プローブ(1)を静止させ、前記静止の期間の角速度信号(r)を計測し、前記角速度信号(r)を平均化して角速度バイアス値(m1…)として前記演算部(7)に記憶し、以降の前記角速度信号から前記角速度バイアス値(m1…)を差し引くことにより、前記角速度計固有のバイアスをキャンセルするように構成したことを特徴とする孔路計測装置。
【請求項5】
前記ケーブル速度(5a)をモニターし、このケーブル速度(5a)がゼロの期間が予め設定したシステム設定値(n秒)以上連続した時、前記プローブ(1)が静止していると判断するように構成したことを特徴とする請求項4記載の孔路計測装置。
【請求項6】
算出した多点の前記角速度バイアス値(m1…)から、時間軸に対する角速度バイアスの回帰を行い、検出角速度のバイアス補正を行うバイアス補正手段を有するように構成したことを特徴とする請求項4又は5記載の孔路計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−155583(P2007−155583A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353285(P2005−353285)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】