説明

安全柵転倒防止用固定器

【課題】安全柵を乗客の身体や乗客の所持物の接触、或いは風による転倒から防止し、安全柵を容易に運搬できる安全柵転倒防止用固定器を提供する。
【解決手段】安全柵10を構成するフェンス11の表示板6の下端に取り付けられ、表示板6の両側面に取り付けられる一組の転倒防止用重り2と、一組の転倒防止用重り2相互を接続する長方形の断面を有する重り連結用磁石と、表示板6に取付けられた第1の折り畳み用磁石4aと、転倒防止用重りに取付けられた第2の折り畳み用磁石4bと、表示板6と転倒防止用重り2とを接続し、表示板6に対して転倒防止用重り2を自在に回転させる折り畳み用蝶番3と、を備え、フェンス11に転倒防止用重り2を取付け、一組の転倒防止用重り2を重り連結用磁石5により相互に接続させることで固定させ、安全柵10を構成するフェンス11の重心を低下させて転倒を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全柵転倒防止用固定器に係り、特に、工事現場に用いられる安全柵の転倒を防止する安全柵転倒防止用固定器に関する。
【背景技術】
【0002】
安全柵とは、通常時には乗客の移動手段に使用される、エスカレータやエレベータなどについて保守点検などが行われる際に、出入口付近において乗客に対して安全上進入してはならない範囲を明示するために用いられる柵をいう。
【0003】
図5に、安全柵の使用時の形態の一例を斜視図で示す。安全柵10は、相互に連結された4個或いは6個のフェンス11を屏風状に立て掛けるのが一般的である。安全柵10を構成する個々のフェンス11は、フェンス連結部15により相互に連結されて使用される。フェンス11は、高さが約750mmであり、幅が約680mmである。各フェンス11は、フェンス枠上部13及びフェンス枠脚部14から成るフェンス枠12と、フェンス枠脚部14の間に設けられた表示板6とから構成される。
【0004】
この安全柵10は、保守点検工事ごとに現場に運搬しなければならない。この運搬は専ら作業員によって行われる。そのため、安全柵10の重量は極力軽くなるように設計されている。しかし、例えば、安全柵10が地下鉄駅構内のエスカレータの保守点検時に用いられる場合、電車が走行することで発生する風により転倒する場合がある。また、乗客の身体や所持物に触れることで転倒する場合がある。そこで、運搬用には軽量の安全柵10のままとし、現場において転倒の虞がある場合には、転倒防止用の重りを別途運搬し、現場において安全柵10のフェンス11に取付けられる場合がある。
【0005】
特許文献1には、昇降機の安全柵固定装置が開示されている。ここでは、安全柵の下辺を棒状体とし、その棒状体に嵌合する溝部が取り付いた立方体状の重石体を用意して設置することが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−178933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、保守点検工事に用いられる安全柵は、作業員による運搬を容易にするため軽量化されている。そのため、乗客の身体や乗客の所持物の接触、或いは風などにより転倒する虞がある。この安全柵が転倒すると、乗客に対して安全上進入してはならない範囲を明示するために用いられる柵の役割を果たさなくなる。
【0008】
また、安全柵を運搬する際に、持ち運びが容易でないと作業員の作業に負担がかかってしまう虞がある。
【0009】
本願の目的は、かかる課題を解決し、安全柵を乗客の身体や乗客の所持物の接触、或いは風による転倒から防止し、安全柵を容易に運搬できる安全柵転倒防止用固定器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る安全柵転倒防止用固定器は、工事現場に用いられる安全柵が転倒するのを防止する安全柵転倒防止用固定器において、安全柵を構成するフェンスの両側の脚部の間に設けられた表示板の下端に取り付けられ、表示板の両側面にそれぞれ取り付けられ、磁性を有する一組の転倒防止用重りと、一組の転倒防止用重り相互を接続する長方形の断面を有する重り連結用磁石と、表示板に取付けられた第1の折り畳み用磁石と、転倒防止用重りに取付けられた第2の折り畳み用磁石と、表示板と転倒防止用重りとを接続し、表示板に対して転倒防止用重りを自在に回転させる折り畳み用蝶番と、を備え、フェンスに転倒防止用重りを取付け、一組の転倒防止用重りを重り連結用磁石により相互に接続させることで固定させ、安全柵を構成するフェンスの重心を低下させて転倒を防止することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る安全柵転倒防止用固定器は、工事現場に用いられる安全柵が転倒するのを防止する安全柵転倒防止用固定器において、安全柵を構成するフェンスの両側の脚部の間に設けられた表示板の下端に取り付けられ、表示板の両側面にそれぞれ取り付けられる一組の転倒防止用重りと、一組の転倒防止用重り相互を接続する三角形の断面を有する重り固定片と、表示板に設けられた第1の折り畳み用磁石と、転倒防止用重りに取付けられた第2の折り畳み用磁石と、表示板及び転倒防止用重りに接続し、表示板に対して各転倒防止用重りを自在に回転させる折り畳み用蝶番と、を備え、フェンスに転倒防止用重りを取付け、一組の転倒防止用重りを相互に八の字を形成させ、転倒防止用重り相互間に三角形の断面を有する重り固定片を挿入することで、安全柵を構成するフェンスを床面に支持させて転倒を防止することを特徴とする。
【0012】
また、安全柵転倒防止用固定器は、一組の転倒防止用重りが磁性を有し、重り固定片が磁石であることが好ましい。
【0013】
また、安全柵転倒防止用固定器は、フェンスに取付けられた第1の折り畳み用磁石と、転倒防止用重りに取付けられた第2の折り畳み用磁石と、を引き付けて転倒防止用重りを折り畳むことで、収納された状態でフェンスを運搬することが好ましい。
【0014】
また、安全柵転倒防止用固定器は、転倒防止用重りと蝶番とが接続ボルトにより固定され、転倒防止用重りは接続ボルトによりフェンスに自在に着脱されることが好ましい。
【0015】
さらに、安全柵転倒防止用固定器は、フェンスの表示板と表示板の両側の蝶番とが通しボルトにより固定され、転倒防止用重りは通しボルトによりフェンスに自在に着脱されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成により、安全柵転倒防止用固定器は、安全柵に取付けられた転倒防止用重りを重り連結用磁石により相互に接続させることで固定させ、安全柵の重心を低下させて転倒を防止することが可能となる。
【0017】
また、安全柵転倒防止用固定器は、安全柵に取付けられた第1の折り畳み用磁石と、転倒防止用重りに取付けられた第2の折り畳み用磁石と、を引き付けて転倒防止用重りを折り畳むことで、収納された状態で安全柵を運搬することが可能となる。
【0018】
以上のように、本発明に係る安全柵転倒防止用固定器によれば、安全柵を乗客の身体や乗客の所持物の接触、或いは風による転倒から防止し、安全柵を容易に運搬することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、図面を用いて本発明に係る安全柵転倒防止用固定器の実施の形態につき、詳細に説明する。
【0020】
図1に、安全柵転倒防止用固定器の1つの実施形態の概略構成を正面図により示す。また、図2に、図1の安全柵転倒防止用固定器のA−A断面図を示す。さらに、図3に、図1の安全柵転倒防止用固定器の拡大した図2のB−B側面図を示す。安全柵10は、相互に連結された4個或いは6個のフェンス11から構成される。1つのフェンス11は、フェンス枠上部13とフェンス枠脚部14とからなるフェンス枠12、及び両側のフェンス枠脚部14を連結する表示板6から構成される。安全柵転倒防止用固定器1は、この表示板6の下端に設けられ、一組の転倒防止用重り2、折り畳み用蝶番3、折り畳み用磁石4a,4b、及び図2に示す重り連結用磁石5から構成される。
【0021】
図2に示すように、一組の転倒防止用重り2は、表示板6の両側面にそれぞれ取り付けられる。表示板6と転倒防止用重り2とは、表示板6に対して転倒防止用重り2を自在に回転させる折り畳み用蝶番3により接続される。この転倒防止用重り2は、折り畳み用蝶番3により回転して開閉し、図2(a)に示す開いた状態と、図2(b)に示す閉じた状態で固定される。すなわち、各転倒防止用重り2は磁性を有し、開いた状態では一組の転倒防止用重り2相互を接続する重り連結用磁石5により引き付けられ、略直列状態となって固定される。また、転倒防止用重り2は、閉じた状態では表示板6に取付けられた第1の折り畳み用磁石4aと、転倒防止用重り2に取付けられた第2の折り畳み用磁石4bと、が磁力により引き付けあって固定される。各転倒防止用重り2は、磁性を有する材料、例えば鉄板などであれば良い。
【0022】
このように、転倒防止用重り2は、開いた状態ではフェンス11の重心を低下させ、安全柵10の転倒を防止する。また、転倒防止用重り2は、閉じた状態ではフェンス11に密着する。すなわち、フェンス11に取付けられた折り畳み用磁石4aと、転倒防止用重り2に取付けられた折り畳み用磁石4bと、を引き付け合わせ、転倒防止用重り2を折り畳むことができる。これにより、転倒防止用重り2を収納した状態で安全柵10を運搬することや保管することができる。
【0023】
図1には、1つのフェンス11について2個の安全柵転倒防止用固定器1が取り付いているが、1つの安全柵転倒防止用固定器1を表示板6に取付けてもよい。また、図1及び図2に示すように、安全柵転倒防止用固定器1は、開いた状態で床面(FL)から離間した位置に浮かせるタイプ、又は、フェンス11のフェンス枠脚部14の長さを調節して床面(FL´)に接地するタイプのいずれであっても良い。前者では、フェンス11の重心を低下させ、安全柵10の転倒を防止する。後者では、さらに、フェンス11が傾いた際に、安全柵転倒防止用固定器1の重り連結用磁石5の磁力による踏ん張りでその傾きが修正されるという効果が生じる。
【0024】
図3に示すように、転倒防止用重り2と蝶番3とは接続ボルト9により固定され、転倒防止用重り2は接続ボルト9によりフェンス11に自在に着脱される。また、フェンス11の表示板6と表示板6の両側の蝶番3とは通しボルト8により固定され、転倒防止用重り2は通しボルト8によりフェンス11に自在に着脱される。これらの接続ボルト9或いは通しボルト8を取り外すことで転倒防止用重り2をフェンス11から取り外し、個別に運搬したり保管したりできる。
【0025】
図4に、本発明に係る安全柵転倒防止用固定器の他の実施形態の概略構成を示す。この実施形態では、転倒防止用重り2を相互に八の字を形成する方向に開き、転倒防止用重り2相互間に重り固定片7を挿入することで、安全柵10のフェンス11を床面に支持させて転倒を防止する。
【0026】
この固定片7は、断面が三角形である。この形状は、転倒防止用重り2が相互に八の字を形成し、転倒防止用重り2の先端部16が接地した状態となるように決定される。また、この固定片7は磁石から成り、磁性を有する転倒防止用重り2相互を引き付けて固定するものであっても良い。
【0027】
このように、転倒防止用重り2は、開いた状態ではフェンス11の重心を低下させると共に、転倒防止用重り2が接地することで安全柵10の転倒を防止する。また、転倒防止用重り2は、閉じた状態ではフェンス11に密着する。すなわち、フェンス11に取付けられた折り畳み用磁石4aと、転倒防止用重り2に取付けられた折り畳み用磁石4bと、を引き付け合わせ、転倒防止用重り2を折り畳むことができる。これにより、転倒防止用重り2を収納した状態で安全柵10を運搬することや保管することができる。
【0028】
また、転倒防止用重り2と蝶番3とは接続ボルト9により固定され、転倒防止用重り2は接続ボルト9によりフェンス11に自在に着脱される。また、フェンス11の表示板6と表示板6の両側の蝶番3とは通しボルト8により固定され、転倒防止用重り2は通しボルト8によりフェンス11に自在に着脱される。これらの接続ボルト9或いは通しボルト8を取り外すことで転倒防止用重り2をフェンス11から取り外し、個別に運搬したり保管したりできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る安全柵転倒防止用固定器の1つの実施形態の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1の安全柵転倒防止用固定器のA−A断面図である。
【図3】図2の安全柵転倒防止用固定器を拡大したB−B側面図である。
【図4】安全柵転倒防止用固定器の他の実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図5】安全柵の使用時の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 安全柵転倒防止用固定器、2 転倒防止用重り、3 折り畳み用蝶番、4,4a,4b 折り畳み用磁石、5 重り連結用磁石、6 表示板、7 重り固定片、8 通しボルト、9 接続ボルト、10 安全柵、11 フェンス、12 フェンス枠、13 フェンス枠上部、14 フェンス枠脚部、15 フェンス連結部、16 先端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事現場に用いられる安全柵が転倒するのを防止する安全柵転倒防止用固定器において、
安全柵を構成するフェンスの両側の脚部の間に設けられた表示板の下端に取り付けられ、
表示板の両側面にそれぞれ取り付けられ、磁性を有する一組の転倒防止用重りと、
一組の転倒防止用重り相互を接続する長方形の断面を有する重り連結用磁石と、
表示板に取付けられた第1の折り畳み用磁石と、
転倒防止用重りに取付けられた第2の折り畳み用磁石と、
表示板と転倒防止用重りとを接続し、表示板に対して転倒防止用重りを自在に回転させる折り畳み用蝶番と、
を備え、
フェンスに転倒防止用重りを取付け、一組の転倒防止用重りを重り連結用磁石により相互に接続させることで固定させ、安全柵を構成するフェンスの重心を低下させて転倒を防止することを特徴とする安全柵転倒防止用固定器。
【請求項2】
工事現場に用いられる安全柵が転倒するのを防止する安全柵転倒防止用固定器において、
安全柵を構成するフェンスの両側の脚部の間に設けられた表示板の下端に取り付けられ、
表示板の両側面にそれぞれ取り付けられる一組の転倒防止用重りと、
一組の転倒防止用重り相互を接続する三角形の断面を有する重り固定片と、
表示板に設けられた第1の折り畳み用磁石と、
転倒防止用重りに取付けられた第2の折り畳み用磁石と、
表示板及び転倒防止用重りに接続し、表示板に対して各転倒防止用重りを自在に回転させる折り畳み用蝶番と、
を備え、
フェンスに転倒防止用重りを取付け、一組の転倒防止用重りを相互に八の字を形成させ、転倒防止用重り相互間に三角形の断面を有する重り固定片を挿入することで、安全柵を構成するフェンスを床面に支持させて転倒を防止することを特徴とする安全柵転倒防止用固定器。
【請求項3】
請求項2に記載の安全柵転倒防止用固定器であって、一組の転倒防止用重りは磁性を有し、重り固定片は磁石であることを特徴とする安全柵転倒防止用固定器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の安全柵転倒防止用固定器であって、フェンスに取付けられた第1の折り畳み用磁石と、転倒防止用重りに取付けられた第2の折り畳み用磁石と、を引き付けて転倒防止用重りを折り畳むことで、収納された状態でフェンスを運搬することを特徴とする安全柵転倒防止用固定器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1に記載の安全柵転倒防止用固定器であって、転倒防止用重りと蝶番とは接続ボルトにより固定され、転倒防止用重りは接続ボルトによりフェンスに自在に着脱されることを特徴とする安全柵転倒防止用固定器。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1に記載の安全柵転倒防止用固定器であって、フェンスの表示板と表示板の両側の蝶番とは通しボルトにより固定され、転倒防止用重りは通しボルトによりフェンスに自在に着脱されることを特徴とする安全柵転倒防止用固定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−196772(P2009−196772A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40958(P2008−40958)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】