説明

安定な抗体処方物

本発明は、抗体の安定化のための処方物および方法を提供する。一実施形態では、本発明は、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合するIgG1抗体の安定な溶液処方物を提供する。別の実施形態では、本発明は、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合するIgG1抗体の安定化方法であって、その抗体の水系処方物を凍結乾燥する工程を含む方法を提供する。この処方物は、加工および保存中に抗体を安定化するために凍結乾燥することができ、その後にこの処方物は、薬理学的投与のために再構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本願は、2007年3月22出願の米国仮特許出願第60/919744号の利益を主張する。この仮特許出願の内容は本明細書の一部を構成する。
【0002】
本発明は、インスリン様増殖因子1受容体に結合する抗体の安定化のための方法および処方物に関する。
【背景技術】
【0003】
液体処方物中の抗体は、ヒンジ領域における加水分解、凝集、酸化、脱アミド化、および断片化を含めて、種々の化学プロセスおよび物理的プロセスを受けやすい。これらのプロセスは、機能抗体の利用可能性を低下させ、抗原結合の特徴を低下または除去することによって、治療抗体の臨床的効力を変更または排除することがある。本発明は、インスリン様増殖因子受容体(IGF−IR)に対するIgG1サブクラスのモノクローナル抗体の安定な処方物に対するニーズに対応し、これらの抗体についての安定な溶液処方物および安定な凍結乾燥処方物を提供する。
【0004】
IGF−IRは、正常な胎児成長および出生後の成長および発育にとって必須である偏在的な膜貫通型チロシンキナーゼ受容体である。IGF−IRは、細胞増殖、細胞分化、細胞の大きさの変化を刺激することができ、かつアポトーシスから細胞を保護することができる。それはまた、細胞形質転換のために準必須(quasi−obligatory)であると考えられてきた(非特許文献1;非特許文献2に概説されている)。IGF−IRは、ほとんどの細胞型の表面に存在し、増殖因子IGF−IおよびIGF−II(以後、集合的にIGFと呼ぶ)のためにシグナル伝達分子としての役割を果たす。IGF−IRはまた、インスリンに結合するが、それがIGFに結合する親和性よりも3桁低い親和性で結合するに過ぎない。IGF−IRは、ジスルフィド結合によって共有結合的に結合している2つのα鎖および2つのβ鎖を含有する、予め形成されたヘテロ四量体である。この受容体サブユニットは、180kdの1本のポリペプチド鎖の一部として合成され、このポリペプチド鎖は、次いでα(130kd)サブユニットおよびβ(95kd)サブユニットへとタンパク質分解的に処理される。α鎖全体は細胞外にあり、リガンド結合のための部位を含有する。β鎖は、膜貫通型ドメイン、チロシンキナーゼドメイン、ならびに細胞分化および形質転換のためには必要であるが、マイトジェンシグナル伝達およびアポトーシスからの保護のためには無くてもよいC末端伸張部を保有する。
【0005】
IGF−IRは、インスリン受容体(IR)に非常に類似している。β鎖配列の内部では特にそうである(70%相同性)。この相同性に起因して、最近の研究は、これらの受容体が1つのIR二量体および1つのIGF−IR二量体を含有するハイブリッドを形成できることを明らかにした(非特許文献3)。ハイブリッドの形成は、正常細胞および形質転換細胞の両方において起こり、ハイブリッド含有量は、その細胞内のこの2つのホモ二量体受容体(IRおよびIGF−IR)の濃度に依存する。39個の乳癌の検体の一研究において、IRおよびIGF−IRはともにすべての腫瘍試料において過剰発現されていたが、ハイブリッド受容体含有量は、常に、両方のホモ受容体のレベルを、およそ3倍超えていた(非特許文献4)。ハイブリッド受容体はIRおよびIGF−IRの対から構成されているが、このハイブリッドは、IGF−IRの親和性と同様の親和性でIGFに選択的に結合し、インスリンとは弱く結合するだけである(非特許文献5)。それゆえ、これらのハイブリッドは、IGFに結合して、正常細胞および形質転換細胞の両方において、シグナルを伝達することができる。
【0006】
第2のIGF受容体、IGF−IIR、またはマンノース−6−リン酸(M6P)受容体もまた、高い親和性でIGF−IIリガンドに結合するが、チロシンキナーゼ活性を欠く(非特許文献6)。それはIGF−IIの分解を生じるため、IGF−IIについてのシンク(sink)であると考えられ、このリガンドの増殖促進効果に拮抗する。腫瘍細胞におけるIGF−IIRの損失は、IGF−IIとIGF−IRとの結合に対するその拮抗作用の解放によって、増殖の可能性を高め得る(非特許文献7)。
【0007】
IGF−Iの内分泌性発現は、主に成長ホルモンによって調節され、肝臓で産生されるが、最近の証拠は、多くの他の組織型もまたIGF−Iを発現することができることを示唆している。それゆえこのリガンドは、内分泌調節およびパラクリン調節を受けやすく、加えて、多くの種類の腫瘍細胞の場合には自己分泌調節を受けやすい(非特許文献8)。
【0008】
IGFに対して特異的結合親和性を有する6つのIGF結合タンパク質(IGFBP)が血清中で同定された(非特許文献8)。IGFBPは、IGFの作用を高めるかまたは阻害するかのいずれかをなすことができ、これは、翻訳後の改変の結果として生じる結合タンパク質の分子構造によって決定される。それらの一次的役割は、IGFの輸送、タンパク質的分解からのIGFの保護、およびIGFとIGF−IRとの相互作用の調節である。血清IGF−Iの約1%のみが遊離リガンドとして存在し、残りはIGFBPと会合している(非特許文献8)。
【0009】
リガンド(IGF)の結合の際に、このIGF−IRは、β鎖の触媒ドメイン内の保存されたチロシン残基で自己リン酸化を受ける。そのβ鎖内のさらなるチロシン残基の引き続くリン酸化は、シグナル伝達カスケードにとって非常に重要な下流分子の動員(recruitment)のためのドッキング部位を提供する。IGFシグナルの伝達のための原則的な経路は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)およびホスファチジルイノシトール 3−キナーゼ(PI3K)である(非特許文献9に概説されている)。このMAPK経路は、IGF刺激後に顕在化されるマイトジェニックシグナルに主に関与し、PI3Kは、抗アポトーシスプロセスまたは生存プロセスのIGF依存性誘発に関与する。
【0010】
IGF−IRシグナル伝達の非常に重要な役割は、その抗アポトーシス機能または生存機能である。活性化されたIGF−IRは、PI3Kおよび下流のAkt、またはタンパク質キナーゼBのリン酸化にシグナル伝達する。Aktは、リン酸化を介して、プログラムされた細胞死の開始のために必須であるBADなどの分子を効果的に遮断することができ、そしてアポトーシスの開始を阻害することができる(非特許文献10)。アポトーシスは、正常な発育プロセスにとって非常に重要な細胞機構である(非特許文献11)。それは、重篤な損傷を受けた細胞の排除を行い、腫瘍形成を促し得る突然変異誘発性損傷の残存の可能性を低下させるための非常に重要な機構である。この目的のために、IGFシグナル伝達の活性化が、マウスのトランスジェニックモデルにおいて自然発症的な腫瘍の形成を促すことができることが明らかになった(非特許文献12)。さらに、IGF過剰発現は、化学療法によって誘発される細胞死から細胞を救うことができ、腫瘍細胞の薬物耐性における重要な要因であり得る(非特許文献13)。結果として、IGFシグナル伝達経路の調節は、化学療法薬に対する腫瘍細胞の感受性を高めることが示された(非特許文献14)。
【0011】
非常に多くの研究および臨床研究が、癌の発生、維持および進行におけるIGF−IRおよびそのリガンド(IGF)の関与を示している。腫瘍細胞では、受容体の過剰発現は、IGFリガンドの過剰発現と呼応することが多いが、これらのシグナルの増強、およびその結果として、細胞増殖および生存の増大につながる。IGF−IおよびIGF−IIは、前立腺癌(非特許文献15;非特許文献16)、乳癌(非特許文献13)、肺癌、結腸癌(非特許文献17)、胃癌、白血病、膵臓癌、脳癌、ミエローマ(非特許文献18)、メラノーマ(非特許文献19)、および卵巣癌(非特許文献20に概説されている)を含めた実に様々な癌細胞株についての強力なマイトジェンであることが示されており、この作用は、IGF−IRによって媒介される。血清中の高濃度のIGF−Iは、乳癌、前立腺癌、および結腸癌の危険性の上昇と関連づけられてきた(非特許文献21)。結腸癌のマウスモデルにおいて、生体内での血中IGF−I濃度の上昇は、腫瘍増殖および転移の発生率の顕著な上昇につながる(非特許文献22)。トランスジェニックマウスの上皮基底細胞におけるIGF−Iの構成的発現が自然発症的な腫瘍形成を促すことが示されている(非特許文献12;非特許文献23)。細胞株および腫瘍におけるIGF−IIの過剰発現は高い頻度で発生し、それはIGF−II遺伝子のゲノム刷り込みの損失から生じ得る(非特許文献24)。受容体の過剰発現は、肺腫瘍(非特許文献25)、乳房の腫瘍(非特許文献26;非特許文献27;非特許文献28)、肉腫(非特許文献29;非特許文献30)、前立腺腫瘍(非特許文献15)、および結腸腫瘍(非特許文献17)を含めた多くの多様なヒトの腫瘍型で明らかにされている。加えて、非常に転移性が高い癌細胞は、転移する傾向が低い腫瘍細胞よりも、高いIGF−IIおよびIGF−IRの発現を保有することが示されている(非特許文献31)。細胞増殖および形質転換におけるIGF−IRの非常に重大な役割が、IGF−IRノックアウト由来のマウスの胚線維芽細胞の実験において明らかにされた。これらの初代細胞は、10%血清を含む培養培地中で顕著に低下した速度で増殖し、SV40ラージTを含めた種々の癌遺伝子によって形質転換することができない(非特許文献32)。最近、いくつかの形態の乳癌における薬物ハーセプチンへの耐性は、それらの癌におけるIGF−IRシグナル伝達の活性化に起因する可能性があることが明らかにされた(非特許文献33)。IGF−IRの過剰発現または活性化は、それゆえ、腫瘍形成能においてだけでなく、腫瘍細胞の薬物耐性においても主要な決定因子である可能性がある。
【0012】
IGF系の活性化はまた、先端巨大症(非特許文献34)、網膜血管新生(非特許文献35)、および乾癬(非特許文献36)を含めた、癌とは別のいくつかの病態にも関係しているとされてきた。後者の研究では、IGF−IRを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド調製物が、マウスモデルにおけるヒト乾癬性皮膚移植片中での上皮細胞の過剰増殖を顕著に阻害することにおいて有効であった。これは、抗IGF−IR療法がこの慢性障害の効果的な治療法である可能性があることを示唆する。
【0013】
種々の戦略が、細胞におけるIGF−IRシグナル伝達経路を阻害するために開発されてきた。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、乾癬について上で示したように、生体外、および実験的マウスモデルにおいて有効であった。加えて、生体外および生体内で抗増殖活性を保有する、IGF−IRを標的とする阻害性ペプチドが生成された(非特許文献37;非特許文献38)。IGF−IRのC末端由来の合成ペプチド配列がアポトーシスを誘発し、腫瘍増殖を顕著に阻害することが示された(非特許文献39)。腫瘍細胞株における過剰発現の際にリガンドについて野生型IGF−IRと競合し、生体外および生体内で腫瘍細胞増殖を効果的に阻害する、IGF−IRのいくつかのドミナントネガティブな変異体もまた、生成された(非特許文献40;非特許文献41)。加えて、IGF−IRの可溶形態も、生体内で腫瘍増殖を阻害することが明らかにされた(非特許文献42)。ヒトIGF−IRに対する抗体もまた、乳癌(非特許文献43)、ユーイング骨肉腫(非特許文献44)、およびメラノーマ(非特許文献45)由来の細胞株を含めた、生体内での腫瘍細胞増殖および生体内での腫瘍形成を阻害することが示された。抗体は、魅力的な治療薬である。その主な理由は、それらが、1)特定のタンパク質抗原に対する高い選択性を保有することができ、2)その抗原への高い親和性結合を示すことができ、3)生体内で長い半減期を有し、そして、それらが天然の免疫産物であるため、4)低い生体内毒性を示すはずだからである(非特許文献46)。しかしながら、非ヒト源、例えばマウス由来の抗体は、反復的な適用後に治療抗体に対して免疫応答をもたらすことがあり、それによって抗体の有効性を無力化することがある。完全ヒト抗体は、天然に存在する免疫応答性抗体と同様に、ヒトにおいてマウス抗体またはキメラ抗体ほどには免疫原性ではないようであるため、ヒトの治療薬として最大の成功の可能性を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Adamsら、Cell.Mol.Life Sci.57:1050−93(2000)
【非特許文献2】Baserga、Oncogene 19:5574−81(2000)
【非特許文献3】Pandiniら、Clin.Canc.Res.5:1935−19(1999)
【非特許文献4】Pandiniら、Clin.Canc.Res.5:1935−44(1999)
【非特許文献5】SiddleおよびSoos、The IGF System. Humana Press.199−225頁、1999
【非特許文献6】Oatesら、Breast Cancer Res.Treat.47:269−81(1998)
【非特許文献7】Byrdら、J.Biol.Chem.274:24408−16(1999)
【非特許文献8】Yu,H.およびRohan,J.、J.Natl.Cancer Inst.92:1472−89(2000)
【非特許文献9】Blakesleyら、The IGF System.Humana Press.143−163(1999)
【非特許文献10】Dattaら、Cell 91:231−41(1997)
【非特許文献11】Oppenheim、Annu.Rev.Neurosci.14:453−501(1991)
【非特許文献12】DiGiovanniら、Cancer Res.60:1561−70(2000)
【非特許文献13】Goochら、Breast Cancer Res.Treat.56:1−10(1999)
【非特許文献14】Beniniら、Clinical Cancer Res.7:1790−97(2001)
【非特許文献15】Nickersonら、Cancer Res.61:6276−80(2001)
【非特許文献16】Hellawellら、Cancer Res.62:2942−50(2002)
【非特許文献17】HassanおよびMacaulay、Ann.Oncol.13:349−56(2002)
【非特許文献18】GeおよびRudikoff、Blood 96:2856−61(2000)
【非特許文献19】All−Ericssonら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.43:1−8(2002)
【非特許文献20】Macaulay、Br.J.Cancer 65:311−20(1990)
【非特許文献21】Pollak、Eur.J.Cancer 36:1224−28(2000)
【非特許文献22】Wuら、Cancer Res.62:1030−35(2002))
【非特許文献23】Bolら、Oncogene 14:1725−1734(1997)
【非特許文献24】Yaginumaら、Oncology 54:502−7(1997)
【非特許文献25】Quinnら、J.Biol.Chem.271:11477−83(1996)
【非特許文献26】Cullenら、Cancer Res.50:48−53(1990)
【非特許文献27】PeyratおよびBonneterre、Cancer Res.22:59−67(1992)
【非特許文献28】LeeおよびYee、Biomed.Pharmacother.49:415−21(1995)
【非特許文献29】van Valenら、J.Cancer Res.Clin.Oncol.118:269−75(1992)
【非特許文献30】Scotlandiら、Cancer Res.56:4570−74(1996)
【非特許文献31】Guerraら、Int.J.Cancer 65:812−20(1996)
【非特許文献32】Sellら、Mol.Cell.Biol.3604−12(1994)
【非特許文献33】Luら、J.Natl.Cancer Inst.93:1852−57(2001)
【非特許文献34】DrangeおよびMelmed.The IGF System. Humana Press.699−720(1999)
【非特許文献35】Smithら、Nature Med.12:1390−95(1999)
【非特許文献36】Wraightら、Nature Biotech.18:521−26(2000)
【非特許文献37】Pietrzkowskiら、Cancer Res.52:6447−51(1992)
【非特許文献38】Haylorら、J.Am.Soc.Nephrol.11:2027−35(2000)
【非特許文献39】Reissら、J.Cell.Phys.181:124−35(1999)
【非特許文献40】Scotlandiら、Int.J.Cancer 101:11−6(2002)
【非特許文献41】Seelyら、BMC Cancer 2:15(2002)
【非特許文献42】D’Ambrosioら、Cancer Res.56:4013−20(1996)
【非特許文献43】ArtegaおよびOsborne、Cancer Res.49:6237−41(1989)
【非特許文献44】Scotlandiら、Cancer Res.58:4127−31(1998)
【非特許文献45】Furlanettoら、Cancer Res.53:2522−26(1993)
【非特許文献46】ParkおよびSmolen、Advances in Protein Chemistry. Academic Press、360−421頁(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この目的のために、治療用途として、高親和性のヒト抗IGF−IRモノクローナル抗体の安定な処方物を開発するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、抗体調製物の安定化のための処方物および方法に関する。一実施形態では、本発明は、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合するIgG1抗体と、緩衝液とを含む、安定な溶液(または液体)処方物を提供する。さらなる実施形態では、その液体処方物中の抗体濃度は約5mg/ml〜約30mg/mlの範囲にある。好ましくは、その抗体は、IMC−A12またはIMC−2F8である。より好ましくは、その抗体はIMC−A12である。
【0017】
一実施形態では、この安定な抗体溶液処方物は、クエン酸塩緩衝液を含有する。さらなる実施形態では、このクエン酸塩緩衝液は、約5mM〜約50mMの間の濃度である。さらなる実施形態では、このクエン酸塩緩衝液は、約10mMの濃度である。
【0018】
一実施形態では、上記安定な抗体溶液処方物はグリシンを含有する。さらなる実施形態では、グリシン濃度は約75mM〜約150mMである。さらなる実施形態では、このグリシン濃度は約100mMである。
【0019】
一実施形態では、上記安定な抗体溶液処方物はNaClを含有する。さらなる実施形態では、このNaClは、約75〜約150mMの濃度である。さらなる実施形態では、このNaClは約100mMの濃度である。
【0020】
一実施形態では、上記安定な抗体溶液処方物は界面活性剤を含有する。さらなる実施形態では、この界面活性剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80などのポリソルベート(ツイーン(TWEEN)、ポリエチレン−ポリプロピレングルコールとしても公知)である。さらなる実施形態では、この界面活性剤は、約0.001%〜約1.0%(重量/体積)の濃度であるポリソルベート80(ツイーン80)である。さらなる実施形態では、ツイーン80は約0.01%(重量/体積)の濃度である。
【0021】
一実施形態では、上記安定な抗体溶液処方物は、約6.0〜約7.0のpHを有する。さらなる実施形態では、そのpHは約6.0〜約6.5である。さらなる実施形態では、そのpHは約6.5である。
【0022】
一実施形態では、上記安定な抗体溶液処方物は、約5mg/ml IMC−A12、約10mM クエン酸ナトリウム、約100mM グリシン、約100mM NaCl、および約0.01% ツイーン80を含み、前記処方物は約6.5のpHである。
【0023】
一実施形態では、本発明は、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合するIgG1抗体を含み、かつ凍結乾燥されている、安定な、凍結乾燥抗体処方物を提供する。一実施形態では、この抗体はIMC−A12である。さらなる実施形態では、このIMC−A12濃度は、凍結乾燥の前は30mg/mlである。
【0024】
一実施形態では、上記安定な、凍結乾燥した抗体処方物はヒスチジン緩衝液を含有する。さらなる実施形態では、ヒスチジン濃度は、凍結乾燥前は約10mM〜約50mMである。さらなる実施形態では、このヒスチジン濃度は、凍結乾燥の前は、約10mMである。さらなる実施形態では、この緩衝液は、凍結乾燥の前は、約pH6.5である。
【0025】
一実施形態では、上記安定な、凍結乾燥した抗体処方物は凍結保護剤(lyoprotectant)を含有する。さらなる実施形態では、この凍結保護剤は糖類である。さらなる実施形態では、この凍結保護剤はトレハロースである。さらなる実施形態では、このトレハロース濃度は、凍結乾燥の前は、約4.6%である。一実施形態では、抗体濃度に対するトレハロース濃度の比は、凍結乾燥の前は、約200〜約1000の間である。さらなる実施形態では、抗体濃度に対するトレハロース濃度の比は、凍結乾燥の前は、約600である。
【0026】
一実施形態では、上記安定な、凍結乾燥した抗体処方物は増量剤を含有する。さらなる実施形態では、この増量剤はマンニトールまたはグリシンである。
【0027】
一実施形態では、上記安定な、凍結乾燥した抗体処方物は、約30mg/ml IMC−A12、約10mM ヒスチジン、および約4.6% トレハロース(重量/体積)を含み、かつ前記処方物は、約pH6.5である(濃度およびpHは凍結乾燥前のものである)。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】IMC−A12の溶液処方物のpHの関数として、融解温度(Tm1)の変化を示す図である。試験条件におけるIMC−A12についての転移温度(Tm)を評価するために、(表2からの)実験的な処方物中のIMC−A12についての熱融解曲線が、示差走査熱量測定(DSC)によってアッセイされた。
【図2】IMC−A12の溶液処方物中のpHの関数として、不溶性凝集体の形成に起因する損失(%)の変化を示す図である。27.5mLのガラスバイアル中に5mg/mLで5mLのIMC−A12を含む表2に記載される試料は、毎分300回転で、室温で72時間撹拌された。損失(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図3】IMC−A12の溶液処方物中のpHの関数として、単量体の割合(%)の変化を示す図である。27.5mLのガラスバイアル中に5mg/mLで5mLのIMC−A12を含む表2に記載される試料は、毎分300回転で、室温で72時間撹拌された。単量体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図4】IMC−A12の溶液処方物中の40℃でのpHの関数として、単量体の割合(%)の変化を示す図である。(表2に列挙された)種々のpH緩衝液中の5mg/mLのIMC−A12が、40℃で3週間インキュベートされた。単量体の割合(%)に対するpHの効果は、SEC−HPLCによって分析された。
【図5】IMC−A12の溶液処方物中の50℃でのpHの関数として、単量体の割合(%)の変化を示す図である。種々のpH緩衝液(表2)中の5mg/mLのIMC−A12が、50℃で1週間インキュベートされた。単量体の割合(%)に対するpHの効果は、SEC−HPLCによって分析された。
【図6】IMC−A12の溶液処方物中の−20℃および−70℃でのpHの関数として、単量体の割合(%)の変化を示す図である。(表2に列挙された)種々のpH緩衝液中の5mg/mLのIMC−A12が、−20℃および−70℃で3週間インキュベートされた。単量体の割合(%)に対するpHの効果は、SEC−HPLCによって分析された。
【図7】IMC−A12の溶液処方物のDSC試験について予測プロファイラを示す図である。転移温度に及ぼす緩衝液の種類、pH、ツイーン80の濃度、NaCl濃度、およびグリシン濃度の影響について予測プロファイラを試験した。タンパク質濃度は5mg/mLであり、温度変化は、1.5℃/分の走査速度で5℃〜95℃であった。メインの転移ピークに対応する融解温度は線形回帰モデルにフィッティングされ、試験された変数の効果が評価された。
【図8】IMC−A12の溶液処方物の撹拌試験について予測プロファイラを示す図である。27.5mLのガラスバイアル中に5mg/mLで5mLのIMC−A12を有する表3に記載された試料は、プラットフォームシェーカー上で毎分300回転で撹拌された。この試験は、室温で72時間まで実施された。溶液濁度および単量体の割合(%)は、撹拌時間の関数として測定された。濁度および単量体の割合(%)に及ぼす試験された変数の影響は、JMPソフトウェアを用いて、応答を線形回帰モデルにフィッティングすることにより、評価された。
【図9】40℃での4週間のインキュベーション後にIMC−A12の溶液処方物中に残っている単量体の割合(%)を示す図である。表3の処方物中の5mg/mLのIMC−A12は、40℃で4週間インキュベートされた。出発物質および40℃で4週間のインキュベーション後の試験された処方物の単量体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図10】50℃で2週間のインキュベーション後にIMC−A12の溶液処方物中に残っている単量体の割合(%)を示す図である。表3の処方物中の5mg/mLのIMC−A12は、50℃で2週間インキュベートされた。出発物質および50℃で2週間のインキュベーション後の試験された処方物の単量体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図11】IMC−A12の溶液処方物のリアルタイム加速温度安定性について予測プロファイラを示す図である。単量体の割合(%)、凝集体の割合(%)、および分解生成物の割合(%)に及ぼすpH、NaCl濃度、グリシン濃度、時、および温度の影響について予測プロファイラを試験した。
【図12】撹拌時間の関数として、IMC−A12のクエン酸塩処方物およびPBS処方物の溶液濁度の比較を示す図である。27.5mLのガラスバイアル中に5mg/mLのIMC−A12を含有する試料は、プラットフォームシェーカー上で、毎分300回転で撹拌された。この試験は、室温で72時間まで実施された。濁度は、Shimatzu 1601 biospec分光光度計を用いて、350nmでの吸光度によってアッセイされた。
【図13】撹拌時間の関数として、クエン酸塩処方物およびPBS処方物のIMC−A12の損失の割合(%)の比較を示す図である。27.5mLのガラスバイアル中に5mg/mLのIMC−A12を含有する試料は、プラットフォームシェーカー上で、毎分300回転で撹拌された。この試験は、室温で72時間まで実施された。(不溶性凝集体の形成に起因する)物質損失の割合(%)は、SEC−HPLCによって測定された。
【図14】撹拌時間の関数として、クエン酸塩処方物およびPBS処方物中のIMC−A12単量体の割合(%)の比較を示す図である。27.5mLのガラスバイアル中に5mg/mLのIMC−A12を含有する試料は、プラットフォームシェーカー上で、毎分300回転で撹拌された。この試験は、室温で72時間まで実施された。単量体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図15】40℃でのインキュベーション時間の関数として、PBS処方物およびクエン酸塩処方物中のIMC−A12について単量体の割合(%)の比較を示す図である。単量体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図16】40℃でのインキュベーション時間の関数として、PBS溶液処方物およびクエン酸塩溶液処方物中のIMC−A12について凝集体の割合(%)の比較を示す図である。凝集体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図17】40℃でのインキュベーション時間の関数として、PBS溶液処方物およびクエン酸塩溶液処方物中のIMC−A12について分解生成物の割合(%)の比較を示す図である。分解生成物の割合(%)は、SEC−HPLCによって測定された。
【図18】40℃で3ヶ月間のインキュベーション後の、PBS溶液処方物およびクエン酸塩溶液処方物中のIMC−A12についてSDS−PAGE(還元)を示す図である。還元性SDS−PAGEは、4−20%トリス−グリシン勾配ゲル上で流された。1レーンあたり10μgの試料が、10μlの体積で充填された。このゲルは、クーマシーブルーで染色された。レーン4の「クエン酸塩」は、5mg/mL IMC−A12、10mM クエン酸塩、100mM グリシン、100mM NaCl、0.01% ツイーン80、pH6.5]である。レーン2およびレーン3の「PBS」は、リン酸緩衝食塩水である[以下の表3および表4を参照]。
【図19】40℃で3ヶ月間のインキュベーション後の、PBS溶液処方物およびクエン酸塩溶液処方物中のIMC−A12についてSDS−PAGE(非還元)を示す図である。非還元性SDS−PAGEは、4−20% トリス−グリシン勾配ゲルを用いて流された。10μgの試料が、10μlの体積で充填された。このゲルは、クーマシーブルーで染色された。レーン4の「クエン酸塩」は、5mg/mL IMC−A12、10mM クエン酸塩、100mM グリシン、100mM NaCl、0.01% ツイーン80、pH6.5]である。レーン2およびレーン3の「PBS」は、リン酸緩衝食塩水である[以下の表3および表4を参照]。
【図20】40℃で3ヶ月間のインキュベーション後の、PBS溶液処方物およびクエン酸塩溶液処方物中のIMC−A12について等電点電気泳動法(IEF)ゲルを示す図である。IEFは、6.0〜10.5の範囲のpHでアイソゲル(IsoGel)(登録商標)アガロース IEFプレートを用いて実施された。試験試料は、0.5% ツイーン80を含有するmilliQ水へと緩衝液交換された。10μgの試料が、10μlの体積で充填された。このゲルは、クーマシーブルーで染色された。レーン4の「クエン酸塩」は、5mg/mL IMC−A12、10mM クエン酸塩、100mM グリシン、100mM NaCl、0.01% ツイーン80、pH6.5]である。レーン2およびレーン3の「PBS」は、リン酸緩衝食塩水である[以下の表3および表4を参照]。
【図21】−20℃での時間の関数として、単量体の割合(%)の変化を示す図である。PBS溶液処方物またはクエン酸塩溶液処方物中の5mg/mLのIMC−A12は、−20℃で3ヶ月までインキュベートされた。インキュベーション後、単量体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図22】−70℃でのインキュベーション時間の関数として、単量体の割合(%)の変化を示す図である。PBS溶液処方物またはクエン酸塩溶液処方物中の5mg/mLのIMC−A12は、−70℃で3ヶ月間までインキュベートされた。インキュベーション後、単量体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図23】−20℃での凍結−解凍サイクル数の関数として、単量体の割合(%)の変化を示す図である。IMC−A12の凍結−解凍安定性は、試験試料を凍結乾燥機中で−20℃まで、1℃/分の温度変化率で凍結させることによって評価された。この試料は、1時間インキュベートされ、1℃/分の温度変化率で4℃で解凍された。この凍結−解凍プロセスは15回まで繰り返され、単量体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図24】−70℃での凍結−解凍サイクル数の関数として、単量体の割合(%)の変化を示す図である。IMC−A12の凍結−解凍安定性は、試験試料を凍結乾燥機中で−70℃まで、1℃/分の温度変化率で凍結させることによって評価された。この試料は、1時間インキュベートされ、1℃/分の温度変化率で4℃で解凍された。凍結−解凍プロセスは15回まで繰り返され、単量体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図25】緩衝液の種類、冷却および凍結保護剤、増量剤、時間、ならびに温度の関数として、単量体の割合(%)の変化を示す図である。
【図26】緩衝液の種類、冷却および凍結保護剤、増量剤、時間、ならびに温度の関数として、凝集体の割合(%)の変化を示す図である。
【図27】緩衝液の種類、冷却および凍結保護剤、増量剤、時間、ならびに温度の関数として、分解生成物の割合(%)の変化を示す図である。
【図28】緩衝液の種類、冷却および凍結保護剤、増量剤、時間、ならびに温度の関数として、溶液濁度の変化を示す図である。
【図29】IMC−A12の凍結乾燥した処方物について単量体の割合(%)の変化を示す図である。表6の凍結乾燥した処方物5、6、9および10中の単量体の割合(%)に及ぼす40℃および50℃での3ヶ月間のインキュベーションの効果が、検討された。単量体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図30】IMC−A12の凍結乾燥した処方物について凝集体の割合(%)の変化を示す図である。表6の凍結乾燥した処方物5、6、9および10中の凝集体の割合(%)に及ぼす40℃および50℃での3ヶ月間のインキュベーションの効果が、分析された。凝集体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された
【図31】IMC−A12の凍結乾燥した処方物について分解生成物の割合(%)の変化を示す図である。表6の凍結乾燥した処方物5、6、9および10中の分解生成物の割合(%)に及ぼす40℃および50℃での3ヶ月間のインキュベーションの効果が、分析された。分解生成物の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図32】IMC−A12の凍結乾燥した処方物について溶液濁度の変化を示す図である。表6の凍結乾燥した処方物5、6、9および10中の濁度に及ぼす40℃および50℃での3ヶ月間のインキュベーションの効果が、Mili−Q水を用いて5mg/mLへと再構成した後に、分析された。濁度は、Shimatzu 1601 biospec分光光度計を用いて、350nmでの吸光度によってアッセイされた。
【図33】4ヶ月間のインキュベーション後に残っている単量体の割合(%)の変化を示す図である。表7からの凍結乾燥したIMC−A12処方物は、4℃、40℃および50℃で4ヶ月までインキュベートされた。この凍結乾燥した試料は、Milli−Q水を用いて5mg/mLまで再構成され、残っている単量体の割合(%)を測定するためにSEC−HPLCによって分析された。
【図34】凍結乾燥前(点線)および凍結乾燥後(実線)のIMC−A12の円二色性スペクトルを示す図である。この凍結乾燥プロセスがA12の二次構造を変化させないことを確認するために、凍結乾燥前後のIMC−A12の二次構造を円二色性によって検討した。IMC−A12は、miliQ水中に0.1mg/mLまで希釈または再構成され、円二色性スペクトルは、Jasco 810円二色性分光光度計を用いて収集された。
【図35】40℃での時間の関数として、単量体の割合(%)の変化を示す図である。PBSおよびクエン酸塩緩衝液中のIMC−A12溶液処方物、ならびに好ましい凍結乾燥した処方物中のIMC−A12は、40℃で4ヶ月間インキュベートされた。この凍結乾燥した試料は、Milli−Q水中で再構成され、単量体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図36】50℃での時間の関数として、単量体の割合(%)の変化を示す図である。PBSおよびクエン酸塩緩衝液中のIMC−A12溶液処方物、ならびに好ましい凍結乾燥した処方物中のIMC−A12は、50℃で4ヶ月間インキュベートされた。この凍結乾燥した試料は、Milli−Q水中で再構成され、単量体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図37】40℃での時間の関数として、凝集体の割合(%)の変化を示す図である。PBSおよびクエン酸塩緩衝液中のIMC−A12溶液処方物、ならびに好ましい凍結乾燥した処方物中のIMC−A12は、40℃で4ヶ月間インキュベートされた。この凍結乾燥した試料は、Milli−Q水中で再構成され、凝集体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図38】50℃での時間の関数として、凝集体の割合(%)の変化を示す図である。PBSおよびクエン酸塩緩衝液中のIMC−A12溶液処方物、ならびに好ましい凍結乾燥した処方物中のIMC−A12は、50℃で4ヶ月間インキュベートされた。この凍結乾燥した試料は、Milli−Q水中で再構成され、凝集体の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図39】40℃での時間の関数として、分解生成物の割合(%)の変化を示す図である。PBSおよびクエン酸塩緩衝液中のIMC−A12溶液処方物、ならびに好ましい凍結乾燥した処方物中のIMC−A12は、40℃で4ヶ月間インキュベートされた。この凍結乾燥した試料は、Milli−Q水中で再構成され、分解生成物の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図40】50℃での時間の関数として、分解生成物の割合(%)の変化を示す図である。PBSおよびクエン酸塩緩衝液中のIMC−A12溶液処方物、ならびに好ましい凍結乾燥した処方物中のIMC−A12は、40℃および50℃で4ヶ月間インキュベートされた。この凍結乾燥した試料は、Milli−Q水中で再構成され、分解生成物の割合(%)は、SEC−HPLCによって分析された。
【図41】4ヶ月間インキュベートされた試料のSDS−page(還元)分析を示す図である。PBSおよびクエン酸塩緩衝液中のIMC−A12溶液処方物、ならびに好ましい凍結乾燥した処方物中のIMC−A12は、4℃、40℃および50℃で4ヶ月間インキュベートされた。この凍結乾燥した試料は、Milli−Q水中で再構成され、10μgが4−20% トリス−グリシンゲルへと充填された。ゲルはクーマシーブルーで染色された。
【発明を実施するための形態】
【0029】
液体処方物中の抗体は、ヒンジ領域における加水分解、凝集、酸化、脱アミド化、および断片化を含めて、種々の化学プロセスおよび物理的プロセスを受けやすい。これらのプロセスは、機能抗体の利用可能性を低下させ、抗原結合の特徴を低下または除去することによって、治療抗体の臨床的効力を変化または排除することがある。本発明は、モノクローナル抗体の安定な処方物に対するニーズに対処し、これらの抗体を凍結乾燥するための方法および処方物を提供する。
【0030】
一実施形態では、本発明は、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合するIgG1抗体と、緩衝液とを含む安定な溶液処方物(本願明細書において「液体処方物」とも呼ばれる)を提供する。さらなる実施形態では、この抗体はIMC−A12である。別の実施形態では、この抗体はIMC−2F8である。
【0031】
IMC−A12は、インスリン様増殖因子1受容体(IGF−1R)に対するIgGサブクラスの完全ヒトモノクローナル抗体である。このIMC−A12抗体は、本明細書の一部を構成する国際公開第2005/016970号に開示されている。IMC−A12についての重鎖のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1および配列番号2に表されている。IMC−A12についての軽鎖のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号3および配列番号4に表されている。IMC−A12を用いた骨癌の治療方法は、本明細書の一部を構成する国際公開第2006/138729号に開示されている。
【0032】
IMC−2F8は、同様にインスリン様増殖因子1受容体(IGF−1R)に対するIgGサブクラスの完全ヒトモノクローナル抗体である。IMC−A12抗体は、本明細書の一部を構成する国際公開第2005/016970号に開示されている。IMC−2F8についての重鎖のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1および配列番号2に表されている。IMC−2F8についての軽鎖のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号5および配列番号6に表されている。
【0033】
初期処方物、pH7.2のリン酸緩衝食塩水(PBS)の構造安定性(robustness)を測定するために、処方物スクリーニングが実施された。スクリーニング試験から、PBS中のIMC−A12は凝集、沈殿、分解、加水分解および光に対して感受性を有することが決定的となった。これに加えて、それは、少量の注射液に関する微粒子の問題の試験に合格することができなかった。pH6.5の、5mg/mL IMC−A12、10mM クエン酸ナトリウム、100mM グリシン、100mM NaClおよび0.01% ツイーン80からなる改良された溶液処方物が開発された。このクエン酸塩処方物は、PBS処方物とは異なり、微粒子を含まず、改善された安定性を有する。
【0034】
ヒンジ領域で起こる加水分解を最少にするさらなる改良品では、凍結乾燥された処方物は、30mg/mL IMC−A12、10mM ヒスチジン pH6.5、および4.6% トレハロースを含有する。加水分解は、凍結乾燥された処方物中のIMC−A12では停止した。
【0035】
本発明は、上記抗体の分解を減少または排除する溶液処方物を提供する。この処方物は、以下のものの1種以上を含むことができる:特定のpHの緩衝液、塩、界面活性剤、安定剤、保存料、還元剤、およびキレート剤。
【0036】
本発明は、非酵素的切断を受けやすい抗体(その機能的断片を含む)の凍結乾燥のための処方物を提供する。この処方物は、安定剤、界面活性剤、還元剤、担体、保存料、アミノ酸、およびキレート剤などのさらなる要素を含んでいてよい。本発明はまた、抗体組成物を安定化する方法であって、凍結保護剤の存在下で抗体の水系処方物を凍結乾燥する工程を含む方法をも提供する。この処方物は、加工および保存中に抗体を安定化するために凍結乾燥され、次いで薬理学的投与に先立って再構成されてもよい。好ましくは、この抗体は、製造から投与までその物理的および化学的安定性、ならびに完全性を実質的に保持する。本発明に従って安定性を高めるために、緩衝液、界面活性剤、糖類、糖アルコール、糖誘導体、およびアミノ酸を含めた種々の処方物成分が適切であり得る。本発明に従って安定性を高めるために、pHおよび処方物成分の濃度を含めた種々の処方物特性が適切であり得る。
【0037】
本発明によれば、上記処方物のpHを維持するために、緩衝液が用いられてもよい。この緩衝液は、外的な変化に起因するpHの変動を最少にする。本発明の処方物は、適切なpH、好ましくは約6.0〜約7.0、より好ましくは約6.0〜約6.5、最も好ましくは約6.5の処方物を提供するための1種以上の緩衝液を含有する。例示的な緩衝液としては、ヒスチジン、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、および酢酸塩などの有機緩衝液一般が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、緩衝液濃度は約5mM〜約50mMである。さらなる実施形態では、緩衝液濃度は約10mMである。
【0038】
本発明の処方物は、抗体の凝集および分解を防止するのを助け得る1種以上の安定剤を含有してよい。適切な安定剤としては、多価糖類、糖アルコール、糖誘導体、およびアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい安定剤としては、アスパラギン酸、ラクトビオン酸、グリシン、トレハロース、マンニトール、およびスクロースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明の処方物は、1種以上の界面活性剤を含んでいてよい。抗体溶液は、空気−水界面において高表面張力を有する。この表面張力を低下させるために、抗体は空気−水界面に凝集する傾向がある。界面活性剤は、空気−水界面での抗体の凝集を最少にし、それによって溶液中での抗体の生物活性を維持するのを助ける。例えば、0.01%のツイーン80を加えると、溶液中での抗体の凝集を低下させることができる。この処方物が凍結乾燥された場合、この界面活性剤はまた、再構成された処方物における微粒子の形成を減少させ得る。本発明の凍結乾燥した処方物では、この界面活性剤は、凍結乾燥前の処方物、凍結乾燥した処方物、および再構成された処方物の1種以上に加えることができるが、凍結乾燥前の処方物に加えることが好ましい。例えば、0.01%のツイーン80は、凍結乾燥前に抗体溶液に加えることができる。界面活性剤としては、ポリソルベート20(ツイーン20)、ポリソルベート80(ツイーン80)、ポリエチレン−ポリプロピレングルコール(プルロニック(PLURONIC)F−68、CAS番号9003−11−6)、および胆汁酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、界面活性剤濃度は約0.001%〜約1.0%である。
【0040】
凍結乾燥プロセスは、タンパク質またはポリペプチドを変性し得る種々のストレスを発生し得る。これらのストレスとしては、温度低下、氷の結晶の形成、イオン強度の上昇、pH変化、相分離、水和殻(hydration shell)の除去、および濃度変化が挙げられる。凍結および/または乾燥プロセスのストレスに対して感受性を有する抗体は、1種以上の凍結保護剤を添加することによって、安定化できる。凍結保護剤は、凍結乾燥に伴うストレスから保護する化合物である。それゆえ、凍結保護剤は、1つの種類として、凍結プロセスから保護する冷却保護剤(cryoprotectant)を含む。1種以上の凍結保護剤が、凍結乾燥に伴うストレスから保護するために使用されてもよく、それらは、例えば、スクロースまたはトレハロースなどの糖類;グルタミン酸一ナトリウムまたはヒスチジンなどのアミノ酸;ベタインなどのメチルアミン;硫酸マグネシウムなどの離液性塩(lyotropic salt);三価またはより多価の糖アルコールなどのポリオール、例えば、グリセリン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトール;プロピレングルコール;ポリエチレングルコール;プルロニック;ならびにこれらの組み合わせであってよい。好ましい凍結保護剤の例としては、上記の安定剤および界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明は、凍結乾燥のプロセスによって調製できる安定化された処方物を提供する。凍結乾燥は、物質がまず凍結され、次いで、まず昇華(一次乾燥プロセス)によって、次いで脱着(二次乾燥プロセス)によって、生物活性または化学反応をもはや支えない値まで溶媒の量が減らされる、安定化プロセスである。凍結乾燥した処方物では、溶液に関連した加水分解、脱アミド化、酸化および断片化反応は、回避または顕著に緩慢化できる。凍結乾燥した処方物はまた、運搬中の短期の温度変動に起因する損傷を回避することができ、そして室温での保存を可能にする。本発明の処方物は、噴霧乾燥および気泡乾燥(bubble drying)などの当該技術分野で公知の他の方法によって乾燥されてもよい。特記しない限り、本発明の処方物は、凍結乾燥前の処方物中で測定された成分濃度によって記載される。
【0042】
一実施形態では、本発明は、ヒンジ領域で起こり得る非酵素的分解を受けやすい抗体を安定化するための方法および処方物を提供する。抗体を非酵素的に切断される要因としては、アミノ酸配列、コンホメーションおよび翻訳後の処理が挙げられる。
【0043】
抗体がヒンジ領域で加水分解、凝集、酸化、脱アミド化、沈殿、および/または断片化されるのは、水系溶液中での抗体のインキュベーションによって測定できる。典型的には、このインキュベーションは、試験の継続時間を短くするために、高温で実施される。例えば、40℃または50℃で3ヶ月間のインキュベーション。インキュベーション後、分解生成物は、サイズ排除クロマトグラフィ−高性能液体クロマトグラフィ(SEC−HPLC)を用いて分析することができる。
【0044】
加えて、機械的ストレスによって誘発される抗体の分解、凝集、および沈殿に対する処方物成分の保護効果を検討するため、抗体処方物は撹拌してもよい。
【0045】
当該技術分野で公知の種々の分析手法によって、溶液処方物の抗体安定性または再構成された凍結乾燥処方物の抗体安定性を測定することができる。かかる手法としては、例えば、(i)メインの融解温度(Tm)を測定するための示差走査熱量測定(DSC)を用いて熱安定性を;(ii)室温での制御された撹拌を用いて機械的安定性を;(iii)約−20℃、約4℃、室温(約23℃−27℃)、約40℃、および約50℃の温度でのリアルタイム等温加速温度安定性(isothermal accelerated temperature stability)を;(iv)約350nmで吸光度をモニターすることにより溶液濁度を、ならびに(v)SEC−HPLCを用いて単量体、凝集体および分解生成物の量を、測定することが挙げられる。安定性は、選択された温度で選択された時間の間測定することができる。
【0046】
一実施形態では、上記凍結乾燥した処方物は、再構成の際に、高濃度の抗体を提供する。さらなる実施形態では、安定な凍結乾燥した処方物は、液体を用いて再構成可能であり、凍結乾燥前の処方物の抗体濃度よりも約1−10倍高い抗体濃度を有する溶液を形成できる。例えば、一実施形態では、この凍結乾燥した処方物は、1mL以下の水を用いて再構成され、約50mg/mL〜約200mg/mLの抗体濃度を有する粒子を含まない再構成された処方物が得られる。
【0047】
天然に存在する抗体は、典型的には、2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖を有し、各軽鎖は、鎖間ジスルフィド結合によって重鎖に共有結合されている。多数のジスルフィド結合がさらに、2つの重鎖を互いに結合している。個々の鎖は、類似の大きさ(110−125個のアミノ酸)および構造を有するが異なる機能を有するドメインへと折り重なることができる。軽鎖は、1つの可変ドメイン(V)および/または1つの定常ドメイン(C)を含むことができる。重鎖もまた、1つの可変ドメイン(V)および/または、抗体の種類またはアイソタイプに依存して、3つまたは4つの定常ドメイン(C1、C2、C3およびC4)を含むことができる。ヒトでは、このアイソタイプは、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMであり、IgAおよびIgGはさらにサブクラスまたはサブタイプ(IgA1−2およびIgG1−4)に細分される。
【0048】
一般に、可変ドメインは、抗体ごとにかなりのアミノ酸配列の変動性を示し、特に抗原結合部位の場所ではそうである。高頻度可変領域または相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの領域が、VおよびVの各々において見出され、これらの領域は、フレームワーク可変領域(framework variable region)と呼ばれる、さほど可変的でない領域によって支持されている。
【0049】
ドメインおよびVドメインからなる抗体の一部分は、Fv(可変断片(fragment variable))と表され、抗原−結合部位を構成する。単鎖Fv(scFv)は、1本のポリペプチド鎖上にVドメインおよびVドメインを含有する抗体断片であり、一方のドメインのN末端および他方のドメインのC末端は、柔軟性のあるリンカーによって繋がれている(例えば、米国特許第4,946,778号(Ladnerら);国際公開第88/09344号(Hustonら)を参照)。国際公開第92/01047号(McCaffertyら)は、バクテリオファージなどの可溶性組換え型遺伝子ディスプレイパッケージ(soluble recombinant genetic display package)の表面上のscFv断片のディスプレイを記載している。
【0050】
単鎖抗体は、それらが由来する全抗体の定常ドメインの一部またはすべてを欠く。それゆえ、それらは全抗体の使用に伴う問題のいくつかを克服することができる。例えば、単鎖抗体は、重鎖定常部と他の生体分子との間の特定の所望されない相互作用を有しない傾向がある。加えて、単鎖抗体は、全抗体よりもかなり小さく、全抗体よりも大きい透過性を有することができ、このため、単鎖抗体は標的抗原結合部位により効率よく局在化し結合することができる。さらに、単鎖抗体は、比較的小さいサイズのゆえに、全抗体よりも、レシピエントにおいて望まれない免疫応答を引き起こす可能性が少なくなる。
【0051】
各単鎖が、第1のペプチドリンカーによって共有結合されている1つのVドメインおよび1つのVドメインを有する多数の単鎖抗体は、少なくとも1種以上のペプチドリンカーによって共有結合され、単一特異的、または多重特異的である多価の単鎖抗体を形成できる。多価の単鎖抗体の各鎖は、可変軽鎖断片および可変重鎖断片を含み、ペプチドリンカーによって少なくとも1つの他の鎖に結合されている。このペプチドリンカーは、少なくとも15個のアミノ酸残基から構成される。アミノ酸残基の最大数は、約100である。
【0052】
2つの単鎖抗体は、組み合わさって、二価の二量体として公知の二重抗体を形成することができる。二重抗体は、2本の鎖および2つの結合部位を有し、単一特異的または二重特異的となることができる。この二重抗体の各鎖は、Vドメインに連結されたVドメインを含む。これらのドメインは同一鎖上のドメイン間の対合を妨げるのに十分短いリンカーで連結され、従って、異なる鎖上の相補的ドメイン間の対合を促して、2つの抗原結合部位を作り直す。
【0053】
3つの単鎖抗体は組み合わさって、三価の三量体としても公知の三重抗体を形成できる。三重抗体は、VドメインまたはVドメインのアミノ酸末端がVドメインまたはVドメインのカルボキシル末端に直接融合することにより、すなわち、何らのリンカー配列を有さずに、構築される。この三重抗体は、ポリペプチドが環状の、頭−尾様式で配列した、3つのFv頭部を有する。この三重抗体の可能なコンホメーションは平面状であり、3つの結合部位が、互いから120°の角度で1つの平面上に存在する。三重抗体は単一特異的、二重特異的または三重特異的となることができる。
【0054】
Fab(断片、抗原結合)は、VおよびC1ドメインからなる抗体の断片を指す。パパイン消化後に生成されるものは、単にFabと呼ばれ、重鎖ヒンジ領域を保持しない。ペプシン消化後、重鎖ヒンジを保持する種々のFabが生成される。鎖間ジスルフィド結合が無傷のままであるそれらの二価の断片は、F(ab’)と呼ばれるが、ジスルフィド結合が保持されない場合は、一価のFab’が生じる。F(ab’)断片は、一価のFab断片よりも、抗原に対して高い結合活性を有する。
【0055】
Fc(結晶性断片)は、対合した重鎖定常ドメインを含む抗体の一部分または断片についての記号表示である。IgG抗体では、例えば、Fcは、C2ドメインおよびC3ドメインを含む。IgAまたはIgM抗体のFcはさらに、CH4ドメインを含む。Fcは、Fc受容体結合、補体媒介性細胞傷害性の活性化、および抗体依存性細胞傷害性(ADCC)に関連する。多数のIgG様タンパク質の複合体であるIgAおよびIgMなどの抗体については、複合体形成は、Fc定常ドメインを必要とする。
【0056】
最後に、ヒンジ領域は、その抗体のFab部分とFc部分とを分離し、Fab同士の可動性、およびFcに対するFabの可動性を提供し、加えて2つの重鎖の共有結合のための多数のジスルフィド結合を含む。
【0057】
従って、本発明の抗体としては、抗原と特異的に結合する、天然に存在する抗体、(Fab’)などの二価の断片、Fabなどの一価の断片、単鎖抗体、単鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体、多価の単鎖抗体、二重抗体、三重抗体などが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明の抗体、またはその断片は、例えば、単一特異的または二重特異的であってよい。二重特異的抗体(BsAb)は、2つの異なる抗原結合特異性または部位を有する抗体である。抗体が複数の特異性を有する場合、認識されたエピトープは、単一の抗原と会合するものであってもよいし、複数の抗原と会合するものであってもよい。従って、本発明は、2つの異なる抗原に結合する二重特異的抗体またはその断片を提供する。
【0059】
抗体またはその断片の特異性は、親和性および/または結合活性に基づいて決定することができる。抗体からの抗原の解離についての平衡定数(K)によって表される親和性は、抗原の決定基と抗体結合部位との間の結合の強さの尺度となる。結合活性は、抗体とその抗原との間の結合の強さの尺度である。結合活性は、エピトープと抗体上のその抗原結合部位との間の親和性、および抗体の価数(特定のエピトープの抗原結合部位の数を指す)の両方に関連する。抗体は、典型的には、10−5〜10−11リットル/molの解離定数(K)で結合する。10−4リットル/mol未満のあらゆるKは、一般に非特異的結合を示すとみなされる。Kの値が小さいほど、抗原決定基と抗体結合部位との間の結合の強さは強い。
【0060】
本願明細書で使用する場合、「抗体」および「抗体断片」は、特異的抗原への特異性を保持する改変を含む。かかる改変としては、化学療法薬(例えば、シスプラチン、タキソール、ドキソルビシン)などのエフェクター分子、または細胞毒(例えば、タンパク質もしくは非タンパク質の有機化学療法薬)への接合が挙げられるが、これらに限定されない。抗体は、検出できるレポーター部分への接合によって改変することができる。半減期などの非結合的特徴に影響を及ぼす変更(例えば、ペグ化)を有する抗体もまた含まれる。
【0061】
タンパク質剤および非タンパク質剤は、当該技術分野で公知の方法によって上記抗体に接合してよい。接合方法としては、直接結合、共有結合されたリンカーを介する結合、および特異的結合対のメンバーを介する結合(例えば、アビジン−ビオチン)が挙げられる。かかる方法としては、例えば、ドキソルビシンの接合についてGreenfieldら、Cancer Research 50,6600−6607(1990)に記載される方法、ならびに白金化合物の接合についてArnonら、Adv.Exp.Med.Biol.303,79−90(1991)およびKiselevaら、Mol.Biol.(USSR)25,508−514(1991)によって記載される方法が挙げられる。
【0062】
本発明の抗体はさらに、結合の特徴が直接的な変異、親和性成熟の方法、ファージディスプレイ、またはチェーンシャフリング(chain shuffling)によって改良されたものを含む。親和性および特異性は、CDRを変異させて、所望の特徴を有する抗原結合部位についてスクリーニングすることにより、改変または改良することができる(例えば、Yangら、J.Mol.Biol.,254:392−403(1995)を参照)。CDRは種々の方法で変異される。1つの方法は、個々の残基または残基の組合せをランダム化して、本来は同一である抗原結合部位の集団において、20個のアミノ酸すべてが特定の位置で見出されるようにすることである。あるいは、変異は、エラープローンPCR法によってある範囲のCDR残基にわたって誘導される(例えば、Hawkinsら、J.Mol.Biol.,226:889−896(1992)を参照)。例えば、重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子を含有するファージディスプレイベクターを、E.coliの突然変異誘発株(mutator strain)で増殖させることができる(例えば、Lowら、J.Mol.Biol.,250:359−368(1996)を参照)。これらの変異原性法は、当業者に公知の多くの方法の一例である。
【0063】
抗体はまた、Fc受容体への結合を変え、従って抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性および補体依存性細胞傷害性などのエフェクター機能を高めるかまたは低下させることになる、Fc領域の1種以上のアミノ酸置換を含むように改変してもよい。
【0064】
本発明の抗体の各ドメインは、完全免疫グロブリンドメイン(例えば、重鎖もしくは軽鎖の可変または定常ドメイン)であってよいし、あるいはそれは、天然に存在するドメインの機能的等価体もしくは変異体もしくは誘導体、または例えば、国際公開第93/11236号(Griffithsら)に記載されている手法などを用いて生体外で構築された合成ドメインであってもよい。例えば、少なくとも1つのアミノ酸を欠いている抗体可変ドメインに対応するドメインを一緒に繋ぐことが可能である。この抗体の重要な特徴は、抗原結合部位の存在である。可変の重鎖断片および軽鎖断片という用語は、特異性に対して重要な効果を有しない変種を排除すると解釈されるべきではない。
【0065】
本発明の抗体および抗体断片は、例えば、天然に存在する抗体、またはFabもしくはscFvファージディスプレイライブラリから得ることができる。VドメインおよびVドメインを含む抗体から単一ドメインの抗体を作製するため、CDRの外部の特定のアミノ酸置換を所望し、結合、発現または溶解性を高めてもよいことは理解されている。例えば、本来V−V界面に埋もれているアミノ酸残基を改変するのが望ましい場合がある。
【0066】
さらに、本発明の抗体および抗体断片は、ヒト免疫グロブリンγ重鎖およびκ軽鎖を産生するトランスジェニックマウス(例えば、カリフォルニア州、サンノゼのメダレックス社(Medarex)より入手のKMマウス)を使用して、標準的なハイブリドーマ技術(本明細書の一部を構成する、HarlowおよびLane編、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、211−213(1998))によって得ることができる。好ましい実施形態では、ゲノムを産生するヒト抗体の実質的な部分がマウスのゲノムに挿入され、内因性マウス抗体の産生が欠失するようにする。かかるマウスは、完全フロイントアジュバント中の標的分子の一部またはすべてを用いて、皮下的に(s.c.)免疫化してもよい。
【0067】
本発明はまた、再構成された処方物を投与することを含む、治療方法をも提供する。この再構成された処方物は、本発明の凍結乾燥した処方物を、例えば1mLの水を用いて再構成することにより調製される。再構成時間は、好ましくは1分未満である。濃い再構成された処方物は、投与の際に融通性を与える。例えば、再構成された処方物は、希釈した形で静脈内投与することができ、またはより濃縮された形で注射投与することもできる。本発明の濃い再構成された処方物は、特定の被験者および/または特定の投与経路に適合する濃度へと希釈することができる。従って、本発明は、治療有効量の抗体を、それを必要とする哺乳動物、特にヒトに投与することを含む、治療方法を提供する。本願明細書で使用する場合、投与という用語は、求められる結果を成就することができる任意の方法によって、本発明の抗体組成物を哺乳動物に送達することを意味する。再構成された処方物は、例えば、静脈内または筋肉内に投与することができる。一実施形態では、濃い再構成された処方物は、注射によって投与される。
【0068】
本発明の処方物における抗体は、好ましくはヒト用である。一実施形態では、本発明の組成物は、固形腫瘍および非固形腫瘍を含めた腫瘍性疾患を治療するため、過剰増殖性障害を治療するため、肥満症を治療するために、使用することができる。
【0069】
治療有効量とは、哺乳動物に投与されたときに、IGF−IR活性を低下させるかまたは無力化する、腫瘍増殖の阻害、非癌性の過剰増殖性疾患を治療する、肥満症を治療するなどの、所望の治療効果を生み出すのに有効である本発明の抗体の量を意味する。上記のような抗体の投与は、他の抗体または任意の従来の治療薬(例えば、抗悪性腫瘍薬)の投与と組合わせることができる。
【0070】
本発明の一実施形態では、上記組成物は、1種以上の抗悪性腫瘍薬と組合せて投与することができる。化学療法薬、放射線およびこれらの組合せなどの任意の適切な抗悪性腫瘍薬が使用できる。抗悪性腫瘍薬は、アルキル化剤または代謝拮抗薬であってもよい。アルキル化剤の例としては、シスプラチン、シクロホスファミド、メルファラン、およびダカルバジンが挙げられるが、これらに限定されない。代謝拮抗薬の例としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、パクリタキセル、イリノテカン(CPT−11)、およびトポテカンが挙げられるが、これらに限定されない。抗悪性腫瘍薬が放射線である場合、放射線源は、治療されている患者にとって外部(外照射療法−EBRT)または内部(近接照射療法−BT)のいずれかであってよい。投与される抗悪性腫瘍薬の用量は、例えば、薬剤の種類、治療されている腫瘍の種類および重症度、ならびにその薬剤の投与経路を含めた多くの要因に依存する。しかしながら、本発明はいずれかの特定の用量に限定されないということを強調しておきたい。
【0071】
本発明の抗体、またはその断片の等価体はまた、本発明で提供される全長IMC−A12抗体の可変領域または高頻度可変領域のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをも含む。実質的に同じアミノ酸配列は、本願明細書においては、PearsonおよびLipmanによるFASTA検索法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,2444−8(1988))によって決定した場合に、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の相同性を有する配列として定義される。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は本発明をさらに例証するが、本発明の範囲を限定するとは決して解釈されるべきではない。タンパク質の分析において用いられるものなどの従来の方法の詳細な説明は、本明細書の一部を構成するCurrent Protocols in Immunology((ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons))などの多くの刊行物から得ることができる。
【0073】
すべての液体処方物スクリーニング試験について、タンパク質濃度を5mg/mLに固定した。10mM リン酸ナトリウム、10mM クエン酸ナトリウム、10mM 酢酸ナトリウム、10mM L−ヒスチジンおよび125mM 塩化ナトリウムからなる多成分緩衝液を、最適のpHについてスクリーニングするために使用した。緩衝液の種類、ツイーン80、グリシン濃度、およびNaCl濃度についての必要条件を、実験計画法のアプローチ(DOE、JMPソフトウェア)を用いて検討した。線形回帰分析を実施して、試験された変数の有意性を決定した。予測した処方物を、慣用的な一時一事法(one−factor−at−a−time methodology)を用いて確認した。熱安定性に及ぼす試験された変数の効果を、示差走査熱量測定(DSC)およびリアルタイム等温試験(real−time isothermal study)を用いて検討した。室温での毎分300回転の制御された撹拌を、機械的安定性についての試験として用いた。液体処方物の光安定性を、ICH指針に基づき検討した。凍結−解凍安定性を、試験試料を−20℃および−70℃に冷却して4℃で解凍することにより決定した。
【0074】
凍結乾燥したIMC−A12処方物について、緩衝液の種類、安定剤、および増量剤を、20mg/mLのA12濃度での実験計画法の一部実施モデル(fractional factorial model)を用いて検討した。IMC−A12の濃度、IMC−A12濃度に対するトレハロース濃度の比、およびツイーン80の濃度を、混合計画モデル(mixture design model)を用いて最適化した。予測した最適の凍結乾燥処方物を、一時一事法を用いて、PBSおよびクエン酸塩溶液処方物と比較した。熱安定性に及ぼす変数の効果を、リアルタイム等温試験によって検討した。凍結乾燥した処方物の光安定性を、ICH指針に基づき検討した。
【0075】
【表1】

【0076】
スクリーニング試験において使用するためのIMC−A12を、50Kカットオフ(YM 50)centriprep遠心濾過装置およびAllegra X−12R遠心分離機(ベックマン(Beckman))を用いて、実験的緩衝液に緩衝液交換することによって、調製した。タンパク質濃度を、1.50の吸光係数および適切な緩衝液で5mg/mLに調製した濃度を用いて280nmでの吸光度によって測定した。ツイーン80を、タンパク質濃度調整後に、10%(重量/体積)原液から加えた。PBS処方物中の5mg/mLのIMC−A12を対照として使用した。すべての試料を、シリンジフィルター(Durapore PVDF膜)を通して0.22μmで濾過した。
【0077】
凍結乾燥プロセスを、Lyostar II凍結乾燥機を用いて実施した。生成物を室温で凍結乾燥機に充填した。棚温度を、0.5℃/分の冷却速度で−50℃まで冷却した。−50℃での保持時間は2時間であった。一次乾燥および二次乾燥を、−30℃および20℃で各々12時間実施した。温度を0.5℃/分で変化させた。一次乾燥中および二次乾燥中のチャンバ圧は50mT(約6.7Pa)であった。凍結乾燥が完了した後、凍結乾燥機のチャンバを、N2を用いて大気圧の半分まで戻し、蓋をした。
【0078】
(実施例1:pH最適化試験)
10mM リン酸ナトリウム、10mM クエン酸ナトリウム、10mM 酢酸ナトリウム、10mM L−ヒスチジンおよび125mM 塩化ナトリウムからなる多成分緩衝液(MCB)を使用して、最適pHを決定した。この緩衝系は、pHのみより大きい影響を及ぼし得る対イオン(塩効果)の最少化を意図していた。このpHスクリーニング計画マトリクスを表2に示す。IMC−A12濃度を5mg/mLに保った。検討したpH範囲は、0.5pH単位の間隔で5.0−8.0であった。熱安定性および機械的安定性に及ぼすpHの影響を試験した。結果を以下に提示する。
【表2】

【0079】
(示差走査熱量測定(DSC)試験)
試験条件下におけるIMC−A12についての転移温度(Tm)を評価するため、(表2に示す)実験的処方物中のIMC−A12についての熱融解曲線を、示差走査熱量測定(DSC)によってアッセイした。タンパク質濃度は5mg/mLであり、温度変化は、1.5℃/分の走査速度で、5℃〜95℃であった。融解曲線を、3つのTmの合計にフィッティングした。pHの関数として最初の転移ピークに対応する融解温度であるTm1を図1に示す。Tm1は、pH6.5−8.0の間ではほとんど同じであった。
【0080】
(撹拌試験)
試料に、プラットフォームシェーカー上での撹拌によってストレスを加えた。27.5mLのガラスバイアル中に5mg/mLのIMC−A12の5mLを含む表2に記載した試料を、ヘッドスペースを81.8%であるように設定して、毎分300回転で撹拌した。この試験を、室温で72時間実施した。pHの関数として、不溶性凝集体の形成に起因する損失の割合(%)および残っている単量体の割合(%)を、それぞれ図2および図3に示す。pH6.0−7.0の間で、損失の割合(%)は最少であり、単量体の割合(%)は最も高かった。
【0081】
(40℃および50℃でのリアルタイム加速温度安定性)
種々のpH緩衝液(表2)中の5mg/mLのIMC−A12を、40℃で3週間、および50℃で1週間インキュベートした。単量体の割合(%)に及ぼすpHの影響を、SEC−HPLCによって分析した。40℃で3週間のインキュベーション後(図4)、および50℃で1週間のインキュベーション後(図5)の残存した単量体の割合(%)の変化が、pHの関数として示されている。pH6.0−6.5の間で、残っている単量体の割合(%)は最も大きかった。
【0082】
(−20℃および−70℃でのリアルタイム凍結温度安定性)
(表2に列挙した)種々のpH緩衝液中の5mg/mLのIMC−A12を、−20℃および−70℃で3週間インキュベートした。単量体の割合(%)に対するpHの効果を、SEC−HPLCによって分析した。3週間のインキュベーション後の単量体の割合(%)の変化をpHの関数として図6に示す。−20℃または−70℃のいずれにおいても、pHは、単量体の割合(%)に有意な影響は及ぼさなかった。
【0083】
(pH最適化の総括)
5mg/mLのIMC−A12の最適のpHは、6.0〜6.5の間であることが判明した。
【0084】
(実施例2:溶液処方物についての賦形剤スクリーニング試験)
実施例1でのpH最適化試験は、IMC−A12が、pH6.0〜6.5の間で最も大きい安定性を有することを明らかにした。この実施例では、本発明者らは、pH6.0および6.5でのIMC−A12の安定性に対する緩衝液の種類、クエン酸塩およびヒスチジンの影響を試験した。ツイーン80およびNaClおよびグリシンの濃度の必要条件もまた検討した。タンパク質濃度を、5mg/mLに一定に保った。賦形剤スクリーニングの計画マトリクスを表3に示す。
【表3】

【0085】
(浸透圧測定)
表3の処方物の浸透圧を、Wescor蒸気圧浸透圧計を用いて測定した。結果を表4に示す。試験した処方物の浸透圧は、260−320mOsm/Kgという所望の範囲内であった。
【表4】

【0086】
(示差走査熱量測定による試験)
(表3に列挙した)実験的処方物中のIMC−A12についての熱融解曲線を、試験条件下におけるIMC−A12についての転移温度(Tm)を評価するため、DSCを用いてアッセイした。タンパク質濃度は5mg/mLであり、温度変化は、1.5℃/分の走査速度で、5℃〜95℃であった。メインの転移ピークに対応する融解温度を線形回帰モデルにフィッティングし、試験された変数の効果を評価した。このフィッティングについてのpおよびRsqは、それぞれ0.003および0.99であった。転移温度に及ぼす緩衝液の種類、pH、ツイーン80濃度、NaCl濃度、グリシン濃度の影響について、予測プロファイラ(prediction profiler)を図7に示す。最適緩衝液は、pH6.5のクエン酸塩緩衝液であると決定した。グリシンは、融解温度を上昇させ、ツイーン80は融解温度をわずかに低下させた。NaClは、融解温度に対して有意な効果を与えなかった。
【0087】
(撹拌試験)
試料に、プラットフォームシェーカー上での撹拌によってストレスを加えた。表3に記載した試料を、27.5mLのガラスバイアル中の5mg/mLのIMC−A12の5mLとともに、毎分300回転で撹拌した。この試験を、室温で72時間まで実施した。溶液濁度および単量体の割合(%)を、撹拌時間の関数として測定した。濁度および単量体の割合(%)に及ぼす試験された変数の影響を、応答をJMPソフトウェアを用いて線形回帰モデルにフィッティングすることによって評価した。濁度および単量体の割合(%)の両方に及ぼす実測対予測プロットのp値は、<0.001であった。統計的に有意な変数は、緩衝液、ツイーンおよび時間であった。濁度および単量体の割合(%)に及ぼす緩衝液、ツイーン80、および時間の影響についての予測プロファイラを、図8に示す。0.01% ツイーンを含むクエン酸塩緩衝液は、最少の濁度および最高の単量体含有量を有していた。
【0088】
(40℃および50℃におけるリアルタイム加速温度安定性)
表3の処方物中の5mg/mLのIMC−A12を、40℃で4週間、および50℃で2週間インキュベートした。出発物質ならびに40℃で4週間のインキュベーション後および50℃で2週間のインキュベーション後の試験処方物の単量体の割合(%)を、それぞれ図9および図10に示す。温度ストレスを加えた試料のDOE分析も、図11に示した。40℃では、試験した処方物のほとんどで、単量体の割合(%)は、ほとんど同じであったが、PBSよりは良好であった。50℃では、クエン酸塩緩衝液中の処方物(処方物6−10)は、ヒスチジン緩衝液(処方物1−5)よりも優れていた。図11のDOE分析は、IMC−A12がpH6.0−6.5の間でほとんど同じ安定性を有し、NaClが不安定化作用を有するが、他方、グリシンは比較的小さい影響を及ぼすことを示す。処方物9および10は、ほとんど同じであることが判明した。しかしながら、処方物10はより低いグリシン濃度(生理的条件により近い)を有するため、処方物10の方が好ましい。
【0089】
(賦形剤スクリーニング試験の総括)
DSC試験は、クエン酸塩緩衝液、グリシンおよびpH6.5がIMC−A12の熱安定性を高めることを示した。ツイーン80はわずかに安定性を低下させたが、NaClは大きな影響を及ぼさなかった。IMC−A12は、機械的ストレスに対して感受性を有する。従って、ツイーン80は、機械的ストレスに対する安定化に必要である。IMC−A12は、加速された温度で、クエン酸塩処方物中では、ヒスチジン中よりも良好な安定性を有する。ヒスチジンおよびクエン酸塩緩衝液はともに、PBS処方物よりも優れている。5mg/mL IMC−A12、10mM クエン酸塩、100mM グリシン、100mM NaCl、0.01% ツイーン80、pH6.5(クエン酸塩)を含有する処方物10を、最適の処方物として選択した。
【0090】
(実施例3:PBS溶液処方物とクエン酸塩溶液処方物との間の比較)
上で考察したとおり、本発明者らは、pH6.5(クエン酸塩)で5mg/mL IMC−A12、10mM クエン酸ナトリウム、100mM グリシン、100mM NaCl、0.01% ツイーン80を含有するIMC−A12についての新しい溶液処方物を開発した。この実施例では、本発明者らは、クエン酸塩処方物中のIMC−A12の安定性をPBS処方物と比較した。
【0091】
(撹拌試験)
試料に、プラットフォームシェーカー上での撹拌によってストレスを加えた。27.5mLのガラスバイアル中に5mg/mLのIMC−A12を含む試料を、毎分300回転で撹拌した。この試験を、室温で72時間まで実施した。濃度および濁度測定を、Shimatzu 1601 biospec分光光度計を用いて実施した。IMC−A12溶液の濃度は、吸光係数1.5を用いて、280nmでの吸光度から算出した。溶液濁度は、350nmでの吸光度によって測定した。撹拌時間の関数として、溶液濁度、(不溶性凝集体の形成に起因する)物質損失の割合(%)、および残っている単量体の割合(%)を、それぞれ図12、図13および図14に示す。IMC−A12のPBS処方物については、溶液濁度および損失の割合(%)は撹拌時間とともに上昇したが、単量体の割合(%)は減少した。濁度、損失の割合(%)および単量体の割合(%)のすべてが、クエン酸塩処方物では変化しないままであった。
【0092】
(40℃でのリアルタイム加速温度安定性)
PBSまたはクエン酸塩処方物中の5mg/mLのIMC−A12を、40℃で3ヶ月までインキュベートした。インキュベーション後、試料をSEC−HPLC、SDS−PAGEおよびIEFによって分析した。結果を以下に示す。
【0093】
SEC−HPLC分析:サイズ排除クロマトグラフィは、Agilent 1100シリーズ LC クロマトグラフおよびTosoh Biosep G3000SWXLカラムを用いて実施した。移動相は、10mM リン酸ナトリウム、0.5M CsCl、pH7.0であった。50μgの試料を、10μLの体積で注入した。インキュベーション時間の変化の関数として、単量体、凝集体、および分解生成物の割合(%)の変化を、それぞれ図15、図16、および図17に示す。両方の処方物で、単量体の割合(%)は減少し、凝集体および分解生成物の割合(%)は上昇したが、速度は、クエン酸塩処方物ではPBS処方物と比べて緩やかであった。
【0094】
SDS−PAGE分析:40℃で3ヶ月間のインキュベーション後のPBSおよびクエン酸塩処方物中のIMC−A12を、4−20% トリス−グリシン勾配ゲル上で還元および非還元のSDS−PAGEによって分析した。10μgの試料を10μlの体積で充填した。ゲルをクーマシーブルーで染色した。結果を、それぞれ図18および図19に示す。比較すると、クエン酸塩処方物中よりもPBS処方物中のほうが、より強い不純物バンドが検出された。
【0095】
IEF分析:等電点電気泳動法(IEF)は、6.0〜10.5のpH範囲でアイソゲル(登録商標)アガロースIEFプレートを用いて実施した。試験試料を、0.5% ツイーン80を含有するmiliQ水へと緩衝液交換した。10μgの試料を10μlの体積で充填した。ゲルをクーマシーブルーで染色した。40℃で3ヶ月間のインキュベーション後のPBSおよびクエン酸塩処方物中のIMC−A12を、IEFによって分析した。結果を図20に示す。比較すると、クエン酸塩処方物中よりもPBS処方物で、より拡散したより明確でないバンドが検出された。
【0096】
(−20℃および−70℃でのIMC−A12の凍結温度安定性)
PBSおよびクエン酸塩処方物中の5mg/mLのIMC−A12を、−20℃および−70℃で3ヶ月までインキュベートした。インキュベーション後の単量体の割合(%)を、SEC−HPLCによって分析した。−20℃および−70℃での時間の関数として、単量体の割合(%)の変化を、それぞれ図21および図22に示す。単量体の割合(%)は、いずれの処方物においても、時間とともに変化しなかった。
【0097】
(−20℃および−70℃でのIMC−A12の凍結−解凍安定性)
IMC−A12の凍結−解凍安定性を、試験試料を、凍結乾燥機(FTSによって製造されたLyo−star II)中で、1℃/分の温度変化率で−20℃または−70℃のいずれかまで凍結させることによって評価した。この試料を、1時間インキュベートし、1℃/分の温度変化率で、4℃で解凍した。この凍結−解凍プロセスを15回まで繰り返した。−20℃および−70℃での凍結−解凍サイクルの数の関数として、単量体の割合(%)の変化を、それぞれ図23および図24に示す。図示するように、クエン酸塩処方物中のIMC−A12は、PBS処方物中よりも良好な凍結−解凍安定性を有する。PBS処方物での単量体の割合(%)の減少は、主に凝集体の割合(%)の減少に起因するものであった。
【0098】
(IMC−A12溶液処方物の光安定性)
IMC−A12の光安定性試験を、ICH指針に基づき実施した。PBSおよびクエン酸塩処方物中の5mg/mLのIMC−A12を室温で光に曝露した。総露光量は、200ワット時/m2の近紫外+120万ルクス時の蛍光であった。対照試料は、光を遮断するために、黒い紙で包んだ。対照試料および試験試料を、光安定性チャンバ(Caron 6500シリーズ、Caron、オハイオ州、マリエッタ)の内部に置いた。光への曝露後、対照試料および試験試料の両方をSEC−HPLCによって分析した。対照および光に曝露した試料について、単量体、凝集体、および分解生成物の割合(%)を、表5に示す。IMC−A12は、両方の処方物において光に敏感であることが見出された。しかしながら、光安定性は、PBS処方物よりも、クエン酸塩処方物において有意に改善された。
【表5】

【0099】
(PBSとクエン酸塩処方物との間の比較の総括)
IMC−A12は、10mM クエン酸ナトリウム、100mM グリシン、100mM NaCl、0.01% ツイーン80、pH6.5(クエン酸塩)の処方物中では、PBS処方物中よりも有意に良好な安定性を示した。クエン酸塩は、粒子を含まず、機械的に誘発される凝集または沈殿に対して安定であり、温度によって誘発される凝集および分解が最少であり、凍結−解凍不安定性に対して安定化されており、かつ高められた光安定性を有する等張性処方物である。
【0100】
(実施例4:凍結乾燥した処方物についての緩衝液、冷却保護剤および凍結保護剤ならびに増量剤のスクリーニング)
凍結乾燥した処方物について、緩衝液の種類、安定剤および増量剤を、20mg/mLのIMC−A12濃度で検討した。計画マトリクスを表6に示す。一部実施要因計画モデルを使用した。IMC−A12の濃度最適化、IMC−A12濃度に対するトレハロース濃度の比、およびツイーン80濃度についての計画マトリクスを、表7に示す。混合計画モデルを使用した。
【表6】

【表7】

【0101】
凍結乾燥のために、IMC−A12を、実験室スケールのTFFおよびペリコン(Pellicon)(登録商標)XLフィルター、50Kカットオフフィルター(ミリポア社(Millipore、Corporation))を用いて、無希釈のpH6.5の10mM ヒスチジン、またはpH6.5の10mM クエン酸塩のいずれかへと緩衝液交換した。緩衝液交換を行った後に、凍結保護剤および冷却保護剤を濃厚な原液から加えた。タンパク質濃度を、吸光係数1.50を用いて、280nmでの吸光度によって測定した。タンパク質濃度調整後に、ツイーン80を10%(重量/体積、DI水中)原液から加えた。すべての試料を、0.22μmカットオフ(Durapose PVDF膜)シリンジフィルターを通して濾過した。
【0102】
緩衝液の種類、冷却保護剤および凍結保護剤ならびに増量剤を、表6に示した処方物中の20mg/mLのIMC−A12の単量体、凝集体、分解生成物および濁度に及ぼす影響について、スクリーニングした。凍結乾燥した薬物生成物を、40℃および50℃で3ヶ月間インキュベートした。インキュベーション後、凍結乾燥した薬物生成物をmiliQ水に5mg/mLまで再構成した。再構成した生成物を、SEC−HPLCおよび濁度分析によって分析した。結果を、統計ソフトウェアJMPを用いてフィッティングした。結果を以下にまとめる。
【0103】
(予測した単量体、凝集体、分解生成物および濁度に及ぼす変数の効果)
再構成した薬物生成物を、SEC−HPLCおよび濁度分析によって分析した。緩衝液の種類、冷却保護剤および凍結保護剤、ならびに増量剤の関数として、単量体、凝集体、分解生成物の割合(%)および濁度の変化を、それぞれ図25、図26、図27、および図28に示す。結果は、以下のことを明らかにした。(1)ヒスチジン緩衝液は、クエン酸塩緩衝液よりも多くの単量体およびより少ない凝集体をもたらす。(2)トレハロースおよびスクロースは、単量体含有量を上昇させ、凝集を低下させる。(3)増量剤、マンニトールおよびグリシンは、単量体または凝集体の割合(%)に対して有意な効果は示さなかった。試験した変数のうちで、分解生成物に対して有意な効果を示すものはなかった。
【0104】
(一時一事法のアプローチによる予測した結果の確認)
統計的な予測結果を確認するために、表6の処方物5、6、9および10を、一時一事法のアプローチを用いて分析した。単量体、凝集体、分解生成物の割合(%)および濁度に及ぼす40℃および50℃での3ヶ月までのインキュベーションの効果を、それぞれ図29、図30、図31、および図32に示す。結果は、(1)ヒスチジンはクエン酸塩よりも優れた緩衝液であり、(2)トレハロースはスクロースよりも良好な安定剤であることを確認した。
【0105】
(緩衝液の種類、冷却保護剤および凍結保護剤、および増量剤スクリーニングの総括)
凍結乾燥したIMC−A12処方物は、ヒスチジン緩衝液中でクエン酸塩緩衝液よりもより大きい安定性を有する。トレハロースは、スクロースよりも良好な安定化効果を有する。増量剤、マンニトールおよびグリシンが存在しても、有意に安定性はもたらさない。
【0106】
(実施例5:最適の凍結乾燥した処方物のためのIMC−A12、トレハロースおよびツイーン80濃度の最適化)
混合計画モデルを用いて、最適処方物のために、IMC−A12濃度、トレハロース:IMC−A12の比、およびツイーン80の濃度を最適化した。実験計画マトリクスを表7に示す。凍結乾燥したIMC−A12を、4℃、40℃および50℃で4ヶ月までインキュベートした。結果を以下で考察する。
【0107】
(処方物の関数としての単量体の割合(%)の変化)
表7からの凍結乾燥したIMC−A12処方物を、4℃、40℃および50℃で4ヶ月までインキュベートした。凍結乾燥した試料を、MiliQ水を用いて5mg/mLまで再構成した。再構成した試料を、SEC−HPLCによって分析し、残っている単量体の割合(%)を測定した。結果を図33に示す。
【0108】
(単量体変化の速度に及ぼすIMC−A12濃度、トレハロース:A12の比およびツイーン80の濃度の効果)
単量体変化の速度を、時間の関数としての単量体変化の傾きとして定義する。エクセルソフトウェアを用いて、その傾きを算出した。単量体変化の速度は、最も低いIMC−A12濃度および最も高いトレハロース:IMC−A12比で最小であった。ツイーン80は、有意な効果を示さなかった。
【0109】
(最適化試験の総括)
予測した単量体含有量は、IMC−A12濃度の減少およびトレハロース:IMC−A12比の増加とともに増加した。一定のIMC−A12濃度では、単量体含有量は、トレハロース:IMC−A12比を大きくすることによって増加した。ツイーン80は、単量体の割合(%)に対して最小の効果しか示さなかった。30mg/mLのIMC−A12および600のトレハロース:IMC−A12比を有する処方物4を、好ましい処方物として選択した。
【0110】
(実施例6:凍結乾燥したIMC−A12の特性解析)
カールフィッシャー分析により測定した場合の凍結乾燥した生成物の水分含量は、約1.0%であることが判明した。凍結乾燥したIMC−A12を、miliQ水を用いて5mg/mLまで再構成した。再構成時間は約1−2分であった。
【0111】
(IMC−A12の安定性に及ぼす凍結乾燥の影響)
凍結乾燥プロセスがIMC−A12の安定性を変化させていないことを確認するために、IMC−A12を、凍結乾燥の前後でSEC−HPLCによって分析した。凍結乾燥したIMC−A12を、SEC−HPLC分析に先立って再構成した。凍結乾燥前および凍結乾燥後のA12についての単量体、凝集体および分解生成物の割合(%)を表8に示す。
【表8】

【0112】
(IMC−A12のコンホメーション安定性に及ぼす凍結乾燥の影響)
凍結乾燥プロセスがA12の二次構造を変えていないことを確認するために、凍結乾燥前および凍結乾燥後のIMC−A12の二次構造を円二色性によって検討した。このCDスペクトルはJasco 810円二色性分光光度計を用いて収集し、IMC−A12濃度は、0.1mg/mLであった。凍結乾燥前ならびに凍結乾燥および再構成後のCDスペクトルを図34に示す。IMC−A12の二次構造は、凍結乾燥によっては変わらなかった。
【0113】
(IMC−A12についての微粒子総数に及ぼす凍結乾燥の影響)
IMC−A12の微粒子総数に対する凍結乾燥の効果を、ハイアック・ロイコモデル(HIAC ROYCO MODEL)9703液中微粒子システムを用いて測定した。凍結乾燥前後のIMC−A12を5mg/mLまで希釈/再構成した。結果を表9に示す。微粒子総数は、有意には変化しなかった。
【表9】

【0114】
(実施例7:溶液IMC−A12処方物と凍結乾燥したIMC−A12処方物との間の比較)
以下の処方物を比較した。
(1)PBS溶液処方物、PBS中5mg/mLのIMC−A12。
(2)クエン酸塩溶液処方物、10mM クエン酸ナトリウム、100mM NaCl、100mM グリシン、0.01% ツイーン80(重量/体積)、pH6.5中の5mg/mL IMC−A12。
(3)凍結乾燥した処方物、30mg/mL IMC−A12、10mM L−ヒスチジン、4.6%トレハロース、pH6.5。
【0115】
(リアルタイム加速温度安定性)
PBSおよびクエン酸塩溶液処方物、ならびに凍結乾燥した処方物を、4℃、40℃、50℃でインキュベートした。凍結乾燥したIMC−A12を、分析に先立って、milli−Q水を用いて5mg/mLまで再構成した。この溶液処方物および再構成した凍結乾燥した処方物を、SEC−HPLCおよびSDS−PAGEによって分析した。
【0116】
PBSおよびクエン酸塩緩衝液中のIMC−A12溶液処方物、ならびに好ましい凍結乾燥した処方物中のIMC−A12を、40℃および50℃で4ヶ月間インキュベートした。凍結乾燥した試料をMilli−Q水中で再構成し、単量体の割合(%)をSEC−HPLCによって分析した。40℃および50℃で4ヶ月インキュベーション後の単量体の割合(%)を、それぞれ図35および図36に示す。40℃および50℃で4ヶ月インキュベーション後の凝集体の割合(%)をそれぞれ図37および図38に示す。40℃および50℃で4ヶ月インキュベーション後の分解生成物の割合(%)を、それぞれ図39および図40に示す。
【0117】
4℃、40℃および50℃で4ヶ月インキュベーション後の試料のSDS−page(還元)分析を図41に示す。PBSおよびクエン酸塩緩衝液中のIMC−A12溶液処方物、ならびに好ましい凍結乾燥した処方物中のIMC−A12を、4℃、40℃および50℃で4ヶ月間インキュベートした。凍結乾燥した試料をMilli−Q水中で再構成し、10μgを4−20% トリス−グリシンゲルに充填した。このゲルをクーマシーブルーで染色した。
【0118】
(凍結乾燥した処方物の光安定性)
光安定性を上に記載したようにして実施した。凍結乾燥したIMC−A12ならびに溶液処方物PBSおよびクエン酸塩を室温で光に曝露した。総露光量は200ワット時/m2の近紫外+120万ルクス時の蛍光であった。対照の試料は、光を遮断するために、黒い紙で包んだ。対照試料および試験試料を、光安定性チャンバ(Caron 6500シリーズ、Caron、オハイオ州、マリエッタ)の内部に置いた。光への曝露後、対照試料および試験試料の両方をSEC−HPLCによって分析した。対照および光に曝露した試料について、単量体、凝集体、および分解生成物の割合(%)を、表10に示す。IMC−A12は、両方の処方物において光に敏感であることが見出された。しかしながら、光安定性は、PBS処方物よりも、クエン酸塩処方物において有意に良好であった。
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体処方物であって、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合するIgG1抗体と、pH約6.0〜約7.0の範囲の薬理学的に許容できる緩衝液と、薬理学的に許容できる塩と、薬理学的に許容できる安定剤と、薬理学的に許容できる界面活性剤とを含む、液体処方物。
【請求項2】
前記IgG1抗体濃度が約5mg/ml〜約30mg/mlの範囲にある、請求項2に記載の液体処方物。
【請求項3】
前記IgG1がIMC−A12またはIMC−2F8である、請求項1に記載の液体処方物。
【請求項4】
前記緩衝液が、約5mM〜約50mMの濃度の範囲にある、ヒスチジン、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、および酢酸塩の緩衝液からなる群から選択される有機緩衝液である、請求項1に記載の液体処方物。
【請求項5】
前記緩衝液が約10mMの濃度である、請求項4に記載の液体処方物。
【請求項6】
前記安定剤が、アスパラギン酸、ラクトビオン酸、グリシン、トレハロース、マンニトールおよびスクロースからなる群から選択される、請求項1に記載の液体処方物。
【請求項7】
前記安定剤が約75mM〜約150mMの濃度の範囲にある、請求項6に記載の液体処方物。
【請求項8】
前記安定剤の濃度が約100mMである、請求項7に記載の液体処方物。
【請求項9】
前記安定剤が、トレハロースである、請求項6に記載の液体処方物。
【請求項10】
前記安定剤がヒスチジンである、請求項6に記載の液体処方物。
【請求項11】
前記塩が、約75〜約150mMの濃度の範囲にあるNaClである、請求項1に記載の液体処方物。
【請求項12】
前記NaClが約100mMの濃度である、請求項11に記載の液体処方物。
【請求項13】
前記界面活性剤が、約0.001%〜約1.0%(重量/体積)の濃度の範囲にある、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリエチレン−ポリプロピレングルコールおよび胆汁酸塩からなる群から選択される、請求項1に記載の液体処方物。
【請求項14】
前記界面活性剤が、約0.01%(重量/体積)の濃度である、請求項13に記載の液体処方物。
【請求項15】
pHが約6.0〜約6.5の範囲にある、請求項1に記載の液体処方物。
【請求項16】
pHが約6.5である、請求項13に記載の液体処方物。
【請求項17】
約5mg/mlのIMC−A12抗体、約10mMのクエン酸ナトリウム緩衝液、約100mMのグリシン安定剤、約100mMのNaCl、および約0.01%のポリソルベート80を含み、pHが約6.5である、請求項1に記載の液体処方物。
【請求項18】
凍結乾燥されて凍結乾燥処方物を形成している、請求項1に記載の液体処方物。
【請求項19】
さらに増量剤を含む、請求項18に記載の凍結乾燥処方物。
【請求項20】
前記増量剤がマンニトールまたはグリシンである、請求項19に記載の凍結乾燥処方物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公表番号】特表2010−522208(P2010−522208A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554753(P2009−554753)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/057718
【国際公開番号】WO2008/116103
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(508188662)イムクローン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (23)
【氏名又は名称原語表記】Imclone LLC
【Fターム(参考)】