説明

安定な高ビタミンC含量の油中ポリオール乳化系およびその調製

【課題】ビタミンCを輸送し、安定化させるために使用する油中ポリオール組成物を提供する。
【解決手段】組成物はそれぞれ組成物全体の質量を基準として、0.5重量%〜5重量%の乳化剤類、0.1重量%〜5重量%の安定剤、0.01重量%〜20重量%のビタミンC、10重量%〜40重量%の油成分および40重量%〜80重量%のポリオール類を含み、組成物全体中の水の割合が1重量%未満であり、ビタミンCがポリオール類に溶解している組成物および該組成物の使用に向けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定な高ビタミンC含量の油中ポリオール乳化系およびその調製方法に関する。この組成物は、パーソナルケア製品の分野で広く適用することができる。
【背景技術】
【0002】
ビタミンCは、そのさまざまな生物学的機能、例えば、コラーゲン合成の刺激、外部攻撃(紫外線、汚染)に対する皮膚組織の強化、脱色素、抗フリーラジカルなどについてよく知られている。しかしながら、そのα−ケトラクトンの構造のために、ビタミンCは、環境パラメーター、例えば、水、光、酸素、および重金属などの影響に非常に敏感である。水溶液中のビタミンCの劣化が、経時的に起こり、それが化粧品におけるビタミンCの適用を制限している。
【0003】
中国特許出願公開第1466939号は、ビタミンCの安定性を、がプロピレングリコールまたはグリセリンの水との組合せによって改善することができたことを教示している。実際のところ、米国特許第4983382号、米国特許第5981578号、米国特許第5736567号および米国特許第6020367号もこの情報を記載している。一定の効果は検出できるが、該製品の色は、それでも未だ劣化して黄変する。
【0004】
中国特許出願公開第1223567号は、非水媒体中のビタミンCの溶解度は比較的低く、そのような系におけるビタミンCの活性濃度も低いことを記録している。該文献は、ジメチルイソソルビド、ジメチコンおよびアルコール類の組合せがビタミンCの安定性を改善することができることをさらに述べているが、この系はエマルションではなく、これらの成分すべては混合されているにすぎず、従って、化粧品として使用される場合それは時間がたつにつれて安定ではないことがあり得る。また、この系において、ビタミンCは溶解しているのではなく結晶として分散している。したがって、この系は、皮膚への適用に対して良好なビタミンC輸送系ではあり得ない。
【0005】
中国特許出願公開第1251773号は、ジメチコンコポリオール、ABIL(登録商標)EM90、シクロペンタシロキサンおよびグリセリンを使用する、局所用組成物中でのアスコルビン酸またはそのエステルもしくは塩の1つを安定化させるためのシリコーンゴムの使用に関する。しかし、該組成物はいくらかの水も含む。
【0006】
W/O系であって、水がエタノールまたはその他のポリオール類を含むことができる系の乳化剤としてABIL(登録商標)EM90を使用することができることを、多数の参考文献、例えば、中国特許出願公開第1520282号、中国特許出願公開第1260166号、中国特許出願公開第1199608号、中国特許出願公開第1251773号、中国特許出願公開第1466939号、中国特許出願公開第1592603号、中国特許出願公開第1223567号、中国特許出願公開第1370062号、中国特許出願公開第1223569号、中国特許出願公開第1328817号および中国特許出願公開第1471903号が述べている。そして、中国特許出願公開第1520282号は、ABIL(登録商標)EM90をシリコーン系中のポリオール中で使用することができることをはっきりと教示している。
【0007】
疎水性シリカは、W/O系における安定剤として常に使用される(例えば、中国特許出願公開第1471903号および中国特許出願公開第1173125号)。中国特許出願公開第1471903号は、脂肪相、水相、C8〜C22アルキルジメチコンコポリオール類から選択される少なくとも1つの界面活性剤、ジメチコンコポリオール類から選択される少なくとも1つのその他の界面活性剤、および疎水性の被覆顔料を含むW/Oエマルションの形のファンデーションに関する。その記述の中で、C8〜C22アルキルジメチコンコポリオール類の1つはABIL(登録商標)EM90であり得る。該系は、AEROSIL(登録商標)R812のような安定剤、プロピレングリコールおよびグリセリンのようなその他の親水性成分、ならびにビタミンCのような活性成分を含むことができる。
【0008】
国際公開第2006/012723号には、ポリオール/油相組成物が記載されており、ここで、ビタミンCを、高温でポリオール相中に溶解し、室温まで冷却した後、油相をポリオール相に加えている。この組成物の欠点は、相対的に大量の乳化剤が必要なことである。したがって、ビタミンCを十分に溶解し安定化し、塗布したとき心地よい皮膚の感覚を有し、保管寿命に関して安定しており、扱いやすい工業プロセスの、最適化された系への要望が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、従来技術の1つまたは複数の不都合がなく、多量のビタミンCを溶解することができる組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
意外にも我々は、最適化した乳化剤を選択することにより請求項で明らかにされているような油中ポリオール組成物を含むエマルション系を見出した。このエマルションは、従来の白くて輝きのある外観を有しており、内部のビタミンCは、水中ではなくポリオール中に溶解しており、それによって酸素および金属イオンのビタミンCとの接触を低下させる。
【0011】
ポリオール中での酸素および金属イオンの接触は水中でのそれよりはるかに低いために、溶解したビタミンCの安定性は、少ない酸化のためにこの系においては劇的に増大することができる。本発明の系は、本質的に水なしであるかまたはなしとすることができるので、保存料を使用する必要が無く、したがって、それは皮膚に対して、より害が少ない。最適化した乳化剤セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン(ABIL(登録商標)EM90)は、最適化した疎水性アエロジルと一緒に、この系によってできたクリームを輝きのある白い外観にする。このクリームは、経時的に非常に安定であり、パーソナルケア分野で容易に使用することができる。
【0012】
その上、ポリオール類の粒子(液滴)はエマルション系中で油成分に封入されており、従って酸化の危険性はさらに減少している。
【0013】
本発明は、標準的な化粧品においてビタミンCが急速に劣化する問題を解決する。本発明は、また、水のない油中ポリオールエマルションであり、安定な化粧品処方であり得る革新的な乳化系を提供する。
【0014】
油中のポリオールの概念は、中国特許出願公開第1520282号に提案されているが、それは最終処方の一部である事前組成物に対してのみ使用されている。そしてこの特許においては乳化剤類対ポリオール類の重量比は、100:1〜2:8である。ポリオール類の含量が50重量%に近い場合、乳化剤量は、化粧品処方に対しては明らかに高すぎる13重量%前後となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1ならびに比較例1および2の組成物についての1カ月にわたる50℃での安定性挙動を明らかにするグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ビタミンCを輸送し、安定化させるのに有用な本発明による請求の範囲に記載される油中ポリオール組成物(油中ポリオールエマルション系)は、それぞれ組成物全体の質量を基準として、0.5重量%〜5重量%、好ましくは1重量%〜4.5重量%、より好ましくは2.5重量%〜3.5重量%の乳化剤類、0.1重量%〜5重量%、好ましくは1重量%〜4重量%の安定剤類、0.01重量%〜20重量%、好ましくは5重量%〜15重量%のアスコルビン酸(ビタミンC)、10重量%〜40重量%の油成分、および40重量%〜80重量%、好ましくは45重量%〜70重量%、より好ましくは50重量%〜65重量%のポリオール類を含み、全組成物中の水の割合は、1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満であり、ビタミンCはポリオール類中に溶解している。好ましくは、組成物中の水の量は本質的に0重量%である。より好ましくは、測定可能な量の水は本発明の組成物には含まれていない。組成物中のビタミンCの最適含量は、10重量%〜15重量%である。
【0017】
本発明の油中ポリオール組成物において使用される乳化剤(1つ以上)は、セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン(例えばEvonik Goldschmidt GmbHのABIL(登録商標)EM 90)と、ポリグリセリルアルキルエステル類の組合せとから好ましくは選択される。ポリグリセリルアルキルエステル類の好ましい組合せは、1重量部のポリグリセリル−4ジイソステアレート/ポリヒドロキシステアレート/セバケートおよび0.25〜4重量部のポリグリセリル−4ステアレートを含有するポリグリセリルアルキルエステル類の組合せ、ならびに1重量部のジイソステアロイルポリグリセリル−3ダイマージリノレートおよび0.25〜4重量部のポリグリセリル−4ステアレートを含有する組合せから選択される。好ましいセチルPEG/PPG−10/1ジメチコン(Evonik Goldschmidt GmbH、ABIL(登録商標)EM 90)の分子量は、約14000g/モルである。好ましいセチルPEG/PPG−10/1ジメチコンの構造は、式(I)、
【0018】
【化1】

で示され、式中、Rは、セチル基であり、X=10、Y=1、n=1〜200、o=1〜100、m=1〜40である。
【0019】
本発明の組成物に含まれている前記安定剤類は、疎水性ベントナイトまたは疎水性シリカ、特に疎水性焼成シリカ(Evonik Degussa GmbHから商標名AEROSIL(登録商標)で入手できる)から好ましくは選択される。好ましくは、安定剤類は、ナノメートルサイズまたはマイクロメートルサイズの粒子の疎水性ベントナイトまたは疎水性シリカから選択される。好ましい焼成シリカのBET値は、200m/g〜300m/gである。好ましい焼成シリカのメタノール湿潤性は、50〜70である。好ましい安定剤類は、Evonik Degussa GmbHからのAEROSIL(登録商標)R 812 S(疎水性焼成シリカ)または商標名Bentone(登録商標)38Vで入手できるElementis Specialties社からのベントナイト安定剤の疎水性ベントナイトである。本発明における上述の焼成シリカは、好ましくは熱分解法によって製造される。
【0020】
前記安定剤が、ナノメートルサイズまたはマイクロメートルサイズの粒子の疎水性ベントナイトまたは疎水性シリカから選択される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【0021】
前記疎水性シリカのBET値が、200m/g〜300m/gであり、そのメタノール湿潤性が50〜70である、請求項6に記載の組成物。
【0022】
本発明の組成物の好ましい油成分は、シリコーン類、有機変性シリコーン類、脂肪族(fatty)炭化水素類、脂肪族アルコール類および/または脂肪族エステル類を含む。好ましいシリコーン類および有機変性シリコーン類は、シクロメチコン(Dow Corning(登録商標)345)、ジメチコン(Goldschmidt、ABIL(登録商標)350)またはシリコーンコポリマー(Dow Corning(登録商標)9040)あるいはそれらの混合物から選択される。脂肪族炭化水素類、脂肪族アルコール類、脂肪族エステル類は、好ましくは、パラフィン油、ポリイソブテン、セチルアルコール、ステアリルアルコールまたはそれらの混合物、オクチルドデカノール、セテアリルイソノナノエート、セチルエチルヘキサノエート、セチルリシノレート、トリカプリル・カプリン酸グリセリル、デシルオレエート、ジエチルヘキシルカーボネート、デシルココエート、イソセチルパルミテート、セテアリルエチルヘキサノエート、イソプロピルミリステート、ミリスチルミリテート(myristyl myritate)、オクチルパルミテート、オクチルステアレート、イソプロピルパルミテート、トリイソステアリン、ステリルヘプタノエート、12〜15アルキルベンゾエート、PPG−15ステアリルエーテル、PPG−14ブチルエーテル、PPG−3ミリスチルエーテルまたはPPG−11ステアリルエーテルあるいはそれらの混合物から選択される。
【0023】
本発明において使用されるポリオール類は、好ましくは一価、二価または三価アルコール類であり、好ましくは5個未満の炭素を含む。より好ましくは、ポリオールは、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールおよびエタノールまたはそれらの混合物から選択される。従来、一価アルコール類とポリオール類とは全く異なる物質である。しかし本発明においては、便宜上、一価アルコール、特にエタノールは、ポリオール類の一部とみなす。
【0024】
本発明の油中ポリオール組成物に一価アルコールとしてのエタノールを添加することは有利であり得る。本発明の組成物におけるモノアルコール、特にエタノールの量は、好ましくは、0重量%〜10重量%または1重量%〜10重量%、より好ましくは2.5重量%〜5重量%である。
【0025】
本発明の油中ポリオール組成物(エマルション系)は、技術分野で既知の任意の方法によって製造することができる。好ましくは、本発明の油中ポリオール組成物(エマルション系)は、以下のステップ:
a.)油成分、乳化剤類および安定剤類のすべてを、好ましくは室温(20℃〜30℃)で、好ましくは撹拌下で混合するステップであって、これにより均一相を得るステップと、
b.)ビタミンCを1つまたは複数のポリオールに加え、この混合物を室温より高い温度まで、好ましくは90℃以上の温度に、より好ましくは約90℃〜100℃の温度に、ビタミンCが完全に溶解するまで加熱するステップであって、均一な混合物を得てそれを次いで室温まで下げるステップと、
c.)ステップb.)で得られたポリオール類の相を、ステップa.)で得られた油相に、好ましくはゆっくりとした撹拌下で、より好ましくは400〜600rpmの撹拌速度で加え、次いでその混合物をより高い撹拌速度で、好ましくは1000〜16000rpmで、好ましくは数分間、より好ましくは15〜30分間にわたって均一化するステップであって、ビタミンCを含む油中ポリオールエマルションを得るステップと、
を含む方法を用いて調製する。ステップb.)におけるポリオール相中のビタミンCの溶解の後であってステップc.)の前に、ステップb.)で用いられる最高プロセス温度より低い沸点、好ましくは90℃より低い沸点を有する、1つまたは複数のアルコール類を、該ポリオール類の混合物に加えることが有利であり得る。好ましくは、ポリオール相は、低沸点アルコールを加える前に45℃以下の温度に冷却する。加えられる該アルコールは、好ましくはエタノールである。本発明の方法において好ましく使用される成分の量は、本発明の組成物、特に好ましい実施形態の組成物の、成分の含量から直接選び取ることができる。
【0026】
ステップb.)の始めに使用するポリオール類は、好ましくはジオール類またはポリオール類から選択され、より好ましくはグリセリン、プロピレングリコールおよび1,3−ブチレングリコールまたはそれらの混合物から選択される。
【0027】
上で述べた技術的方法によって、ビタミンCは、ポリオール類の相中に首尾よく溶解され、それはまた、本発明の組成物中の油成分によって十分に封入される。ポリオール類または油成分中の酸素の溶解性は水中よりはるかに低いために、本発明の乳化系は、ビタミンCを酸素から極度に保護し、したがって、それをより安定にする。その上、本発明の組成物は、本質的に水を含まず、水中に痕跡量でしばしば存在する微量の金属イオン類(即ち鉄イオン、第二銅イオン)によって触媒される酸化を回避する。
【0028】
本発明の組成物は、(本質的に)水を含まないために、何らかの保存料を添加することは必須ではない。したがって、水および保存料類を含む製品よりも、皮膚に対してより害が少ない。
【0029】
好ましい乳化剤のセチルPEG/PPG−10/1ジメチコン(ABIL(登録商標)EM 90)を好ましい安定剤の疎水性焼成シリカと一緒に使用することにより、輝きのある白い外観を有するクリームを得ることができる。このクリームは、長期にわたって非常に安定であり、パーソナルケア分野で容易に使用することができる。したがって、本発明のもう1つの態様は、パーソナルケア製品であり、特に本発明による油中ポリオール組成物を含む化粧品である。パーソナルケア製品および化粧品は、パーソナルケア製品および化粧品に使用されることが知られている1つまたは複数の化合物を含むことができる。
【0030】
本発明によるパーソナルケア製品および化粧品は、例えば、
皮膚軟化剤、
乳化剤および界面活性剤
増粘剤/粘度調整剤/安定剤
紫外線スクリーニング剤
酸化防止剤
固体
真珠光沢添加剤
防虫剤
保存料
香料
着色剤
生体活性成分
ケア添加剤
からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含むことができる。
【0031】
これらの成分の好ましい例は、参照により組み込まれるDE102005011785およびEP2000124に列記されている。
【0032】
(図面)
以下の図面により、本発明に説明を加えるが本発明は該図面のものに限定されない。
【0033】
図1、セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン(ABIL(登録商標)EM 90)の化学構造。
【0034】
図1、実施例1ならびに比較例1および2の組成物についての1カ月にわたる50℃での安定性挙動を明らかにするグラフを示す。
【0035】
本発明を以下の実施例により詳細に説明する。本発明の範囲は、実施例の実施形態に結び付けられるべきではなく、特許請求の範囲によって与えられる。
【実施例】
【0036】
実施例1ならびに比較例1および2
実施例1の組成物を、上記の本発明の方法に従って調製した。
a.)25.4重量%のシクロメチコン(Dow Corning(登録商標)345)、5.5重量%のジメチコン(ABIL(登録商標)350)、3重量%の乳化剤(ABIL(登録商標)EM 90)、および3重量%の安定剤(AEROSIL R 812 S)を、撹拌することによって室温で混合し、均一相を得た。
b.)10.5重量%のビタミンCを、45重量%のグリセリンと7.6重量%のプロピレングリコールとのポリオール類の混合物に加えた。該ポリオール相を約90℃に加熱し、全体の相が澄んで透明になるまで30〜45分間そのまま保った。
c.)該ポリオール類の相を、ステップa.)で得た油成分の相に約5000rpmの撹拌速度でゆっくりと加えた。次いで、全体の系を1000〜16000rpmの速度で均一なクリームが得られるまで混合した。
【0037】
比較例1および2についての調製プロセスは、実施例1のそれと同様に行った。違いは、ステップb.)の後に、異なる量の水を加えたことである。
【0038】
【表1】

【0039】
ビタミンCの含量を、中国薬局方2000年版、第2節、791頁(ISDN: 7502527362、Chemical Industry Press)に公開されている方法に従って分析した。ステップ3の後、ビタミンCの含量は、実施例1において10.3重量%であると分析された。実施例1の組成物の一部を室温(20℃〜25℃)で3カ月にわたって保持し、次いでビタミンCの含量を再度分析した。その結果はビタミンCの劣化を示さなかった。実施例1の組成物の別の一部を、完全に充填して密閉した瓶の中に保った。この瓶を45℃の温度のオーブン中で4カ月にわたって保存した。この処理が終わった後、該組成物を分析した。ビタミンC含量は、依然としてもとの含量の97.1重量%であり、その劣化が3%未満であることを意味する。上述の試料は、依然として安定しており、分離、粗さおよび明らかな色の変化は観察されなかった。
【0040】
比較例1および2におけるビタミンCの含量を、実施例1と同様の条件下で処理して分析した。図1において、グラフは安定性測定の結果を示している。ビタミンCの安定性は、含水量に非常に敏感であることを容易に見て取ることができる:比較例1の組成物中の1重量%の含水量が、50℃で、1カ月後6%の劣化を与え、この劣化は明らかな色の変化を既に引き起こしている。組成物中の5重量%の含水量(比較例2)は、1カ月後14%の劣化を与えている。
【0041】
上の試験データは、実施例1におけるビタミンCの完全な安定性を実証している。その上、この組成物は、熱安定性試験(45℃中で4カ月)、低温安定性試験(−25℃中で1カ月)および3000rpmで30分の遠心分離試験もパスし、その非常に良好な安定性を示している。
【0042】
実施例2
実施例2の組成物を調製するための調製プロセスは、実施例1のそれと同様に行った。違いは、ステップa.)における油成分相を得るために異なる成分(表2に従う)を使用したことである。
【0043】
【表2】

【0044】
この組成物も熱安定性試験(45℃中で4カ月)、低温安定性試験(−25℃中で1カ月)および3000rpmで30分の遠心分離試験をパスし、その非常に良好な安定性を示している。
【0045】
実施例3および4
実施例3および4の組成物を調製するための調製プロセスは、実施例1のそれと同様に行った。違いは、ステップa.)における油成分相を得るために異なる成分(表3に従う)を使用したことである。
【0046】
【表3】

【0047】
実施例3で得られたポリグリセリル−4ジイソステアレート/ポリヒドロキシステアレート/セバケート(Isolan(登録商標)GPS)およびポリグリセリル−4イソステアレート(Isolan(登録商標)GI 34)の乳化剤混合物は、良好な安定性を示した。実施例4で得られたジイソステアロイルポリグリセリル−3ダイマージリノレート(Isolan(登録商標)PDI)およびポリグリセリル−4イソステアレート(Isolan(登録商標)GI 34)の乳化剤混合物は、輝きのある白の外観を示し、同様に安定な系であった。
【0048】
実施例5
実施例5の組成物を、上記の本発明の方法に従って調製した。
a.)25.4重量%のシクロメチコン(Dow Corning(登録商標)345)、5.5重量%のジメチコン(ABIL(登録商標)350)、3重量%の乳化剤(ABIL(登録商標)EM 90)、および3重量%の安定剤(AEROSIL R 812 S)を、撹拌によって室温(20〜30℃)で混合し、均一相を得た。
b.)10.5重量%のビタミンCを、21重量%のグリセリン、7.6重量%のプロピレングリコールおよび20重量%の1,3−ブチレングリコールのポリオール類の混合物に加えた。このポリオール相を約95℃に加熱し、全体の相が澄んで透明になるまで30〜45分間そのまま保った。該相を次いで45℃未満に冷却し、次いで4重量%のエタノールを撹拌しながら加えた。
c.)該ポリオール類の相を、ステップa.)の油成分の相に約500rpmの速度でゆっくりと加え、全体の系を、次いで、1000〜16000rpmの速度で均一なクリームが得られるまで混合した。
【0049】
実施例5で使用した成分を表4に示す。
【0050】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンCを輸送し、安定化させるために使用する油中ポリオール組成物であって、それぞれ組成物全体の質量を基準として、0.5重量%〜5重量%の乳化剤類、0.1重量%〜5重量%の安定剤、0.01重量%〜20重量%のビタミンC、10重量%〜40重量%の油成分および40重量%〜80重量%のポリオール類を含み、組成物全体中の水の量が1重量%未満であり、ビタミンCがポリオール類に溶解している、組成物。
【請求項2】
組成物全体中の水の割合が0.1重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物中のビタミンCの含量が5重量%〜15重量%である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記乳化剤が、セチルPEG/PPG−10/1ジメチコンまたはポリグリセリルアルキルエステル類の組合せを含む群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
ポリグリセリルアルキルエステル類の組合せが、1重量部のポリグリセリル−4ジイソステアレート/ポリヒドロキシステアレート/セバケートおよび0.25〜4重量部のポリグリセリル−4ステアレート、または1重量部のジイソステアロイルポリグリセリル−3ダイマージリノレートおよび0.25〜4重量部のポリグリセリル−4ステアレートを含有するポリグリセリルアルキルエステル類の組合せから選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記安定剤類が、ナノメートルサイズまたはマイクロメートルサイズの粒子の疎水性ベントナイトまたは疎水性シリカから選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記疎水性シリカのBET値が200m/g〜300m/gであり、そのメタノール湿潤性が50〜70である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記油成分が、シリコーン類、脂肪族炭化水素類、脂肪族アルコール類および/または脂肪族エステル類を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
シリコーン類が、シクロメチコン、ジメチコンおよびシリコーンコポリマーまたはそれらの混合物から選択され、脂肪族炭化水素類、脂肪族アルコール類および/または脂肪族エステル類が、パラフィン油、ポリイソブテン、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、セテアリルイソノナノエート、セチルエチルヘキサノエート、セチルリシノレート、トリカプリル・カプリン酸グリセリル、デシルオレエート、ジエチルヘキシルカーボネート、デシルココエート、イソセチルパルミテート、セテアリルエチルヘキサノエート、イソプロピルミリステート、ミリスチルミリテート、オクチルパルミテート、オクチルステアレート、イソプロピルパルミテート、トリイソステアリン、ステリルヘプタノエート、12〜15アルキルベンゾエート、PPG−15ステアリルエーテル、PPG−14ブチルエーテル、PPG−3ミリスチルエーテル、PPG−11ステアリルエーテルまたはそれらの混合物から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリオール類が、5個未満の炭素を含む、一価、二価、三価アルコール類である、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
ポリオールが、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールおよびエタノールから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の油中ポリオール組成物の製造方法であって、
a.)油成分、乳化剤類および安定剤類のすべてを混合するステップであって、均一相を得るステップと、
b.)ビタミンCを1つまたは複数のポリオールに加え、この混合物を室温より高い温度までビタミンCが完全に溶解するまで加熱するステップであって、均一な混合物を得てそれを次いで室温まで下げるステップと、
c.)ステップb.)で得られたポリオール類の相を、ステップa.)で得られた油相に加え、次いでその混合物を均一化するステップであって、ビタミンCを含む油中ポリオールエマルションを得るステップと
を含む方法。
【請求項13】
a.)油成分、乳化剤類および安定剤類のすべてを、撹拌下、20℃〜30℃で混合するステップであって、均一な相を得るステップと、
b.)ビタミンCをポリオール類に加え、この混合物を90℃〜100℃までビタミンCが溶解するまで加熱するステップであって、均一な混合物を得てそれを次いで室温まで下げるステップと、
c.)ステップb.)で得られたポリオール類の相を、ステップa.)で得られた油相中に、撹拌下、ゆっくりと加え、次いで該混合物をより高い撹拌速度の下で均一化するステップであって、ビタミンCを含む油中ポリオールエマルションを得るステップと
を含む、ステップ12に記載の方法。
【請求項14】
ステップb.)におけるポリオール相中のビタミンCの溶解後であってステップc.)の前に、ステップb.)の最高プロセス温度より低い沸点を有する1つまたは複数のアルコール類を該ポリオール類の混合物に加える、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の油中ポリオール組成物を含む化粧品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−280578(P2009−280578A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−119620(P2009−119620)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】