説明

安定化された薬学的ペプチド組成物

グルカゴン様ペプチドを含有する非経口投与用の薬学的組成物の有効期間を増大させる方法であって、中性pHより高いpHでの処理を受けたペプチド産物から調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は薬学的組成物の分野に関する。より詳細には、本発明は中性pHを超えるpHでの処理を行った原体(バルク)ペプチド産物から調製する安定な薬学的組成物の製造方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
治療用ペプチドは医療において広く使用されている。かかる治療用ペプチドの薬学的組成物は一般的な所用に適したものとするためには数年の有効期間を有していることが必要とされる。しかしながら、ペプチド組成物は化学的及び物理的変性に対する感受性のため本来的に不安定である。化学的変性は、共有結合の変化、例えば酸化、加水分解、ラセミ化又は架橋を含む。物理的変性はペプチドの未変性構造、つまり二次及び三次構造に対する高次構造の変化、例えば凝集、沈殿又は表面への吸着を含む。
【0003】
グルカゴンは糖尿病の医療に数十年使用されてきており、幾つかのグルカゴン様ペプチドが様々な治療適応症に対して開発されている。プレプログルカゴン遺伝子はグルカゴン並びにグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)及びグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)をコードしている。GLP-1アナログ及び誘導体並びに相同のトカゲペプチドのエキセンディン-4が2型糖尿病における高血糖の治療のために開発されている。GLP-2は胃腸疾患の治療に潜在的に有用である。しかしながら、29−39のアミノ酸を包含するこれら全てのペプチドは高度の相同性を持っており、多くの性質、特に凝集し、不溶性のフィブリルを形成する傾向を共有している。この性質は支配的なα-へリックスコンフォメーションからβシートへの転移を包含していると思われる(Blundell T.L. (1983) The conformation of glucagon. :Lefebvre P.J. (編) Glucagon I. Springer Verlag, pp37-55, Senderoff R.I.等, J. Pharm. Sci. 87 (1998)183-189, 国際公開第01/55213号)。グルカゴン様ペプチドの凝集は、主にペプチド溶液が撹拌又は振盪されるときに、溶液と気相(空気)の間の界面と、テフロン(登録商標)のような疎水性表面との接触箇所に見られる。
【0004】
よって、グルカゴン様ペプチドの薬学的組成物にはその安定性を改善するために様々な賦形剤を加えなければならないことがよくある。これらのペプチドの液体非経口製剤の有効期間は少なくとも一年で、好ましくは更に長期でなければならない。製品を輸送し、室温で毎日振盪する場合がある使用中の期間は好ましくは数週間でなければならない。従って、改善された安定性を有するグルカゴン様ペプチドの薬学的組成物に対する必要性が存在している。
【0005】
我々は、予期せぬことに、8.0を超えるpHで処理した原体ペプチド産物がこれら原体ペプチド産物から調製した薬学的組成物の安定性を増加させることを見出した。
【0006】
定義
次は、本明細書において使用される用語の詳細な定義である。
ここで使用される「有効量」という用語は無治療の場合と比較して患者の治療に対して十分に効果的な用量を意味する。
薬学的組成物について言及するここで使用される「再構成された」という用語は、活性な薬学的成分を含む固形物質に水又は適切な水溶液を添加することによって形成された水性組成物を意味する。再構成のための薬学的組成物は許容可能な有効期間を持つ液体組成物を製造することができない場合に利用される。再構成された薬学的組成物の例は、凍結乾燥された組成物に水又は適切な水溶液を添加する場合に生じる溶液である。その溶液はしばしば非経口投与のためのもので、よって注射用の水又は任意の他の適切な溶媒が固形物質を再構成するために使用される。
【0007】
ここで使用される「疾患の治療」という用語は疾患、症状又は障害を持つ患者の管理及びケアを意味する。治療の目的は、疾患、症状又は障害と闘うことである。治療は疾患、症状又は障害を排除し又はコントロールするため、並びに疾患、症状又は障害に伴う徴候又は合併症を軽減するための活性化合物の投与を含む。
ここで使用される「グルカゴン様ペプチド」という用語は、プレプログルカゴン遺伝子から誘導される相同のペプチド、エキセンディン、及びそのアナログ及び誘導体を意味する。プレプログルカゴン遺伝子から誘導されるペプチドはグルカゴン、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)及びオキシントモデュリン(OXM)である。アメリカドクトカゲに見出されるエキセンディンはGLP-1に相同であり、またインスリン分泌促進効果を奏する。エキセンディンの例はエキセンディン-4及びエキセンディン-3である。
【0008】
グルカゴン様ペプチドは次の配列を有している:

【0009】
ペプチドに関してここで使用される「アナログ(類似体)」という用語は、ペプチドの一又は複数のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基によって置換されている、及び/又は一又は複数のアミノ酸残基がペプチドから欠失している、及び/又は一又は複数のアミノ酸残基がペプチドに付加されている、修飾されたペプチドを意味する。そのようなアミノ酸残基の付加又は欠失はペプチドのN末端及び/又はC末端で起こりうる。二つの異なった簡単な系がしばしばアナログを記述するために使用される:例えばArg34-GLP-1(7−37)又はK34R-GLP-1(7−37)は1−6位のアミノ酸残基が欠失されたGLP-1を標記し、34位の天然に生じるリジンがアルギニン(IUPAC-IUB命名法に従ったアミノ酸の標準的な一文字省略形)に置換されている。
【0010】
親ペプチドに関してここで使用される「誘導体」という用語は、少なくとも一の置換基は親タンパク質又はそのアナログには存在していない化学的に修飾された親タンパク質又はそのアナログを意味し、つまり共有結合的に修飾された親タンパク質である。典型的な修飾はアミド、炭水化物、アルキル基、アシル基、エステル、ペグ化等である。GLP-1(7−37)の誘導体の例はArg34,Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7−37)である。
【0011】
ここで使用される「GLP-1ペプチド」という用語は、GLP-1(7−37)、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体又はGLP-1アナログの誘導体を意味する。
ここで使用される「GLP-2ペプチド」という用語は、GLP-2(1−33)、GLP-2アナログ、GLP-2誘導体又はGLP-2アナログの誘導体を意味する。
ここで使用される「エキセンディン-4ペプチド」という用語は、エキセンディン-4(1−39)、エキセンディン-4アナログ、エキセンディン-4誘導体又はエキセンディン-4アナログの誘導体を意味する。
ここで使用される「安定なエキセンディン-4化合物」という用語は化学的に修飾されたエキセンディン-4(1−39)、つまり次の方法によって定量した場合に、ヒトにおいて少なくとも10時間のインビボ血漿排出半減期を示すアナログ又は誘導体を意味する。
ヒトにおいてエキセンディン-4の血漿排出半減期を定量するための方法は次の通りである:化合物を等張バッファー、pH7.4、PBS又は任意の他の好適なバッファーに溶解させる。用量を末梢的に、好ましくは腹部又は上部大腿に注射する。活性化合物の定量のための血液試料を頻繁な間隔でまた終端排除部分をカバーするのに十分な期間 (例えば、投薬前、投薬後1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、24(2日目)、36(2日目)、48(3日目)、60(3日目)、72(4日目)及び84(4日目)時間)、採取する。活性化合物の濃度の定量はWilken等, Diabetologia 43(51):A143, 2000に記載されているようにして実施する。誘導された薬物動態学的パラメータは、市販のソフトWinNonlinのバージョン2.1(Pharsight, Cary, NC, USA)を使用し、非コンパートメント法の使用により、各個体被検者の濃度-時間データから計算する。終端排出速度定数は濃度-時間曲線の終端対数線形部分での対数線形回帰によって推定し、排出半減期を計算するために使用する。
【0012】
ここで使用される「DPP-IV保護されたエキセンディン-4化合物」という用語は、血漿ペプチダーゼジペプチジルアミノペプチダーゼ-4(DPP-IV)に対して耐性を有するように化学的に修飾されたエキセンディン-4化合物を意味する。
ここで使用される「免疫調節されたエキセンディン-4化合物」という用語は、エキセンディン-4(1−39)と比較した場合にヒトにおける免疫反応が低減させられたエキセンディン-4(1−39)のアナログ又は誘導体であるエキセンディン-4化合物を意味する。免疫反応を評価する方法は患者の治療の4週間後にエキセンディン-4化合物に反応性である抗体の濃度を測定することである。
ここで使用される「原体(バルク)産物」又は「原体ペプチド産物」という用語は薬学的組成物の製造に使用されることになる精製されたペプチド産物を意味する。よって、原体産物は最終の精製、乾燥又は条件付け工程からの産物として通常は得られる。原体産物は血漿、沈殿物、溶液又は懸濁液でありうる。原体はまた当該分野で製剤原料として知られている。
【0013】
ここで用いられる「等電点」という用語は、ペプチドのような巨細分子の全体の正味の電荷がゼロであるpH値を意味する。ペプチドには、多くの荷電基が存在し得、等電点では、これら電荷の全ての合計がゼロである。つまり、負の電荷が正の電荷の数に平衡する。等電点を超えるpHでは、ペプチドの全体の正味の電荷は負であり、等電点より低いpH値ではペプチドの全体の正味の電荷は正である。ペプチドの等電点は等電点電気泳動法によって定量することができ、又は当該分野で知られているコンピュータプログラムによってペプチド配列から推定することができる。
【0014】
発明の記載
一態様では、本発明は、グルカゴン様ペプチド、薬学的に許容可能なバッファー及び薬学的に許容可能な保存料を含有する薬学的組成物の有効期間を増大させる方法において、上記薬学的組成物を、8.1から9.6の範囲のpHでの処理を受けた原体ペプチド産物から調製することを特徴とする方法に関する。
他の態様では、本発明は、グルカゴン様ペプチド及び薬学的に許容可能な保存料を含有する薬学的組成物の有効期間を増大させる方法において、上記薬学的組成物を、8.1から9.6の範囲のpHでの処理を受けた原体ペプチド産物から調製することを特徴とする方法に関する。
別の態様では、本発明は、ペプチド、薬学的に許容可能なバッファー及び薬学的に許容可能な保存料を含有する薬学的組成物の有効期間を増大させる方法において、上記薬学的組成物を、8.1から9.6の範囲のpHでの処理を受けた原体ペプチド産物から調製することを特徴とする方法に関する。
別の態様では、本発明は、ペプチド及び薬学的に許容可能な保存料を含有する薬学的組成物の有効期間を増大させる方法において、上記薬学的組成物を、8.1から9.6の範囲のpHでの処理を受けた原体ペプチド産物から調製することを特徴とする方法に関する。
【0015】
本発明の他の態様は、グルカゴン様ペプチド、薬学的に許容可能なバッファー及び薬学的に許容可能な保存料を含有する薬学的組成物の有効期間を増大させる方法において、上記薬学的組成物を、8.5から9.6の範囲のpHでの処理を受けた原体ペプチド産物から調製することを特徴とする方法に関する。
一態様では、本発明は、グルカゴン様ペプチド、薬学的に許容可能なバッファー及び薬学的に許容可能な保存料を含有する薬学的組成物の有効期間を増大させる方法において、上記薬学的組成物を、9.0から9.6の範囲のpHでの処理を受けた原体ペプチド産物から調製することを特徴とする方法に関する。
一態様では、本発明は、グルカゴン様ペプチド、薬学的に許容可能なバッファー及び薬学的に許容可能な保存料を含有する薬学的組成物の有効期間を増大させる方法において、上記薬学的組成物を、8.1から11.5の範囲のpHでの処理を受けた原体ペプチド産物から調製することを特徴とする方法に関する。
【0016】
一実施態様では、原体ペプチド産物は8.1から10.0の範囲のpHでの処理を受けている。
他の実施態様では、原体ペプチド産物は8.5から11.5の範囲のpHでの処理を受けている。
他の実施態様では、原体ペプチド産物は8.5から10.0の範囲のpHでの処理を受けている。
本発明の他の実施態様では、原体ペプチド産物は、約1分から約12時間の時間、原体ペプチドの核形成温度(不均一又は均一核形成の何れか)より高い温度から約25℃の温度で、特定された範囲のpHでの処理を受けている。
本発明の他の実施態様では、原体ペプチド産物は、約1分から約30分の時間、約5℃から約25℃の温度で、特定された範囲のpHでの処理を受けている。
【0017】
本発明はpH値、温度及び時間の様々な組合せによって実施することができることが理解される。これらの三種の変数は上述の範囲内で組み合わせることができる。しかしながら、変数の一又は二についてその範囲の上限値が選択される一方、残りの一又は二の変数は典型的にはより低い。例えば、pH10のような高いpH値が使用される場合、低温度、例えば約5−10℃及び/又は約1分から約6時間より少ない時間のように短い時間と組み合わせるのが好ましい。変数の有用な組合せは次の通りである:約3時間、5℃でpH10.0;約1時間、15℃でpH10.0、又は約1時間、5℃でpH11.0。
単結晶としてであろうと多結晶としてであろうと、氷晶の成長は初期の核形成プロセスであり、遅い凍結及び迅速な凍結の何れにおいても、低圧での水又は水溶液の凍結で氷だけが生成される。溶液の核形成は溶質濃度及び温度に依存して二方法で起こりうる。飽和溶液が冷却されるならば、氷相に対して過冷状態になるばかりではく、溶質に対してもまた過冷状態になる。適切な凍結核が存在しないと、溶液は過冷されうる。従って、高pHでのペプチドの処理の間に使用される温度は一般的な条件でペプチドの核形成温度を超えて維持されなければならない。核形成温度は当業者に知られており、異なった温度での実験によって関連するペプチドに対して常套的に決定することができる。
【0018】
一実施態様では、薬学的組成物は溶液である。
他の実施態様では、薬学的組成物は懸濁液である。
他の実施態様では、薬学的組成物は固形、例えば、医師又は患者が使用前に溶媒を添加する凍結乾燥製剤である。再構成に使用される溶媒は、注射用水又は他の適切な溶媒でありうる。
他の実施態様では、原体ペプチド産物は、上記pHで上記グルカゴン様ペプチドの溶液又は懸濁液を凍結乾燥させることによって調製する。
他の実施態様では、原体ペプチド産物は、上記薬学的組成物の製造中に上記pHで処理する。
他の実施態様では、原体ペプチド産物は、製造プロセスの最終精製工程後に上記pHで処理する。
他の実施態様では、原体ペプチド産物を、上記薬学的に許容可能なバッファーと混合する前に上記pHで処理する。
他の実施態様では、薬学的組成物のpHは、原体ペプチドの溶液又は懸濁液を処理するpHより低い。
他の実施態様では、薬学的組成物のpHは、原体ペプチドの溶液又は懸濁液を処理するpHより少なくとも0.8pH単位低い。
他の実施態様では、薬学的組成物のpHは、原体ペプチドの溶液又は懸濁液を処理するpHより少なくとも1.5pH単位低い。
【0019】
本発明に係るグルカゴン様ペプチドを含有する薬学的組成物は、治療を必要とする患者に非経口的に投与されうる。非経口投与は、皮下注射、筋肉内注射、又は静脈内注射で、シリンジ、場合によってはペン状シリンジによるものによって実施することができる。他の投与は注入、例えば注入ポンプの使用によることができる。
一実施態様では、上記薬学的組成物又は上記薬学的組成物の再構成溶液のpHはpH7.0からpH8.0、好ましくはpH7.2からpH7.8である。
他の実施態様では、上記薬学的組成物又は上記薬学的組成物の再構成溶液のpHはpH7.2からpH7.6である。他の実施態様では、上記薬学的組成物又は上記薬学的組成物の再構成溶液のpHはpH7.4からpH7.8である。
他の実施態様では、上記グルカゴン様ペプチドの等電点は3.0から7.0、好ましくは4.0から6.0である。
一実施態様では、上記グルカゴン様ペプチドは、グルカゴン、グルカゴンアナログ又はその誘導体である。
他の実施態様では、上記グルカゴン様ペプチドはオキシンソモジュリン(oxynthomodulin)である。
【0020】
一実施態様では、上記グルカゴン様ペプチドが、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1の誘導体又はGLP-1アナログの誘導体である。
他の実施態様では、上記GLP-1アナログは、Gly-GLP-1(7-36)-アミド、Gly-GLP-1(7-37)、Val-GLP-1(7-36)-アミド、Val-GLP-1(7-37)、ValAsp22-GLP-1(7-36)-アミド、ValAsp22-GLP-1(7-37) 、ValGlu22-GLP-1(7-36)-アミド 、ValGlu22-GLP-1(7-37)、ValLys22-GLP-1(7-36)-アミド、ValLys22-GLP-1(7-37)、ValArg22-GLP-1(7-36)-アミド、ValArg22-GLP-1(7-37)、ValHis22-GLP-1(7-36)-アミド、ValHis22-GLP-1(7-37)、ValTrp19Glu22-GLP-1(7-37)、ValGlu22Val25-GLP-1(7-37)、ValTyr16Glu22-GLP-1(7-37)、ValTrp16Glu22-GLP-1(7-37)、ValLeu16Glu22-GLP-1(7-37)、ValTyr18Glu22-GLP-1(7-37)、ValGlu22His37-GLP-1(7-37)、ValGlu22Ile33-GLP-1(7-37)、ValTrp16Glu22Val25Ile33-GLP-1(7-37)、ValTrp16Glu22Ile33-GLP-1(7-37)、ValGlu22Val25Ile33-GLP-1(7-37)、ValTrp16Glu22Val25-GLP-1(7-37)、及びそれらのアナログからなる群から選択される。
他の実施態様では、GLP-1アナログの上記誘導体はArg34,Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7−37)である。
GLP-1、そのアナログ並びにGLP-1誘導体の製造方法は例えば国際公開第99/43706号、国際公開第00/55119号、国際公開第00/34331号及び国際公開第03/18516号に見出すことができる。
【0021】
他の実施態様では、原体ペプチド産物の上記溶液又は懸濁液を、pH9.5での処理にかけ、上記薬学的組成物のpHが7.4である。
他の実施態様では、グルカゴン様ペプチドはGLP-1ペプチドであり、薬学的組成物中又はその再構成された組成物は、0.1mg/mLから50mg/mL、0.1mg/mLから25mg/mL、1mg/mLから25mg/mL、1mg/mLから10mg/mL、又は3mg/mLから8mg/mLのグルカゴン様ペプチドの濃度を有している。
【0022】
一実施態様では、グルカゴン様ペプチドは、GLP-2、GLP-2アナログ、GLP-2の誘導体又はGLP-2アナログの誘導体である。
他の実施態様では、GLP-2の誘導体又はGLP-2アナログの誘導体は一のリジンのようなリジン残基を有し、スペーサーを介していてもよい親油性置換基が上記リジンのεアミノ基に結合している。
GLP-2、そのアナログ並びにGLP-2誘導体の製造方法は例えば国際公開第99/43361号及び国際公開第00/55119号に見出すことができる。
他の実施態様では、グルカゴン様ペプチドはGLP-2ペプチドであり、薬学的組成物中又はその再構成された組成物は、0.1mg/mLから100mg/mL、0.1mg/mLから25mg/mL、又は1mg/mLから25mg/mLのグルカゴン様ペプチドの濃度を有している。
【0023】
一実施態様では、グルカゴン様ペプチドは、エキセンディン-4、エキセンディン-4アナログ、エキセンディン-4の誘導体又はエキセンディン-4アナログの誘導体である。
他の実施態様では、グルカゴン様ペプチドはエキセンディン-4である。他の実施態様では、グルカゴン様ペプチドは安定なエキセンディン-4化合物である。他の実施態様では、グルカゴン様ペプチドはDPP-IV保護エキセンディン-4化合物である。他の実施態様では、グルカゴン様ペプチドは免疫調節されたエキセンディン-4化合物である。他の実施態様では、グルカゴン様ペプチドはZP-10、つまり[Ser38Lys39]エキセンディン-4(1−39)LysLysLysLysLys-アミドである。
エキセンディン-4、そのアナログ並びにエキセンディン-4誘導体の製造方法は例えば国際公開第99/43708号、国際公開第00/41546号及び国際公開第00/55119号に見出すことができる。
他の実施態様では、グルカゴン様ペプチドはエキセンディン-4ペプチドであり、薬学的組成物中又はその再構成された組成物は、5μg/mLから10mg/mL、5μg/mLから5mg/mL、5μg/mLから5mg/mL、0.1mg/mLから3mg/mL、又は0.2mg/mLから1mg/mLのグルカゴン様ペプチドの濃度を有している。
【0024】
薬学的組成物において使用するのに適したバッファーは当業者に知られており、限定するものではないが、オルト-ホスフェート、TRIS(トリス)、グリシン、N-グリシルグリシン、シトレートナトリウムアセテート、炭酸ナトリウム、グリシルグリシン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、リン酸ナトリウム、及びクエン酸ナトリウム又はそれらの混合物を含む。一実施態様では、薬学的組成物はTrisであるバッファーを含む。他の実施態様では、薬学的組成物はビシン(Bicine)であるバッファーを含む。
薬学的組成物に使用される保存料は当業者に知られており、限定するものではないが、フェノール、m-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、2-フェノキシエタノール、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール及びチオメロサル(thiomerosal)、又はそれらの混合物を含む。
【0025】
一実施態様では、薬学的組成物は等張剤を含有する。
他の実施態様では、薬学的組成物は、塩化ナトリウム、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、グルコース、マルトース、スクロース、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン、ジメチルスルホン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール又はそれらの混合物である等張剤を含有する。
【0026】
本発明の他の実施態様では、薬学的組成物は安定剤を更に含有する。
本発明の更なる実施態様では、製剤は高分子量ポリマー又は低分子化合物の群から選択される安定剤を更に含有する。
本発明の更なる実施態様では、安定剤は、ポリエチレングリコール(例えばPEG3350)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、異なった塩(例えば塩化ナトリウム)、L-グリシン、L-ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリオプトファン、スレオニン及びそれらの混合物から選択される。これらの特定の安定剤のそれぞれが本発明の他の実施態様を構成する。本発明の好適な実施態様では、安定剤はL-ヒスチジン、イミダゾール及びアルギニンからなる群から選択される。
本発明の他の実施態様では、安定剤は、PEG3350、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシ-メチルセルロース、塩化ナトリウム、L-グリシン、L-ヒスチジン、イミダゾール、L-アルギニン、L-リジン、L-イソロイシン、L-アスパラギン酸、L-トリオプトファン、L-スレオニン及びそれらの混合物から選択される。
本発明の更なる実施態様では、製剤はキレート剤を更に含有する。本発明の更なる実施態様では、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸及びアスパラギン酸、及びそれらの混合物から選択される。これらの特定のキレート剤のそれぞれが本発明の他の実施態様を構成する。
【0027】
本発明の他の実施態様では、薬学的組成物は界面活性剤を更に含有する。本発明の更なる実施態様では、界面活性剤は、洗浄剤、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマー、例えば188及び407、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、例えばアルキル化及びアルコキシル化誘導体(トゥイーン、例えばTween-20、又はTween-80)、モノグリセリド又はそのエトキシル化誘導体、ジグリセリド又はそのポリオキシエチレン誘導体、グリセロール、コール酸又はその誘導体、レシチン、アルコール及びリン脂質、グリセロリン脂質(レシチン、ケファリン、ホスファチジルセリン)、グリセロ糖脂質(ガラクトピラノシド)、スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリン)、及びスフィンゴ糖脂質(セラミド、ガングリオシド)、DSS(ドキュセートナトリウム、CAS登録番号[577−11−7])、ドキュセートカルシウム、CAS登録番号[128−49−4])、ドキュセートカリウム、CAS登録番号[7491−09−0])、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウム)、ホスファチジン酸ジパルミトイル、カプリル酸ナトリウム、胆汁酸とその塩及びグリシン又はタウリンコンジュゲート、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、アニオン性(アルキル-アリール-スルホネート)一価界面活性剤、パルミトイルリゾホスファチジル-L-セリン、リゾリン脂質(例えば、エタノールアミンの1-アシル-sn-グリセロ-3-ホスフェートエステル、コリン、セリン又はスレオニン)、リゾホスファチジルコリン及びホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)-誘導体、例えばリゾホスファチジルコリンのラウロイル及びミリストイル誘導体、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及びコリンである極性ヘッド部の修飾体、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトール、及び正に荷電したDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリン及びリゾホスファチジルスレオニン、双性イオン性界面活性剤(例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート、3-コラミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート、ドデシルホスホコリン、ミリストイルリゾホスファチジルコリン、ニワトリ卵リゾレシチン)、カチオン性界面活性剤(第4級アンモニウム塩基)(例えばセチル-トリメチルアンモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド)、非イオン性界面活性剤、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(Pluronics/Tetronics、トリトン(Triton)X-100、ドデシルβ-D-グルコピラノシド)又はポリマー性界面活性剤(Tween-40、Tween-80、Brij-35)、フシジン酸誘導体-(例えばタウロ-ジヒドロフシジン酸ナトリウム等)、長鎖脂肪酸とその塩でC6−C12のもの(例えばオレイン酸及びカプリル酸)、アシルカルニチンと誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジンのNα-アシル化誘導体、又はリジン又はアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジン及び中性又は酸性アミノ酸の任意の組合せを含むジペプチドのNα-アシル化誘導体、中性アミノ酸と二つの電荷を持つアミノ酸の任意の組合せを含むトリペプチドのNα-アシル化誘導体から選択され、又は界面活性剤はイミダゾリン誘導体、又はその混合物の群から選択されうる。これらの特定の界面活性剤のそれぞれが本発明の他の実施態様を構成する。
薬学的組成物中における保存料、等張剤及び界面活性剤のような賦形剤の使用は当業者によく知られている。簡便には、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19版 1995を参考にすることができる。
【0028】
更なる態様では、本発明は、グルカゴン様ペプチド、薬学的に許容可能なバッファー及び薬学的に許容可能な保存料を含有する薬学的組成物において、本発明に係る方法によって調製されることを特徴とする薬学的組成物に関する。
更なる態様では、本発明は、約7.2から約7.8のpHを有する薬学的組成物であって、グルカゴン様ペプチドと少なくとも一種の薬学的に許容可能な賦形剤を含有し、該組成物が、37℃で一ヶ月の組成物の貯蔵後に組成物中に含まれるグルカゴン様ペプチドのチオフラビンT-試験で測定した蛍光増加が2倍未満の貯蔵安定性である薬学的組成物に関する。
更なる態様では、本発明はペプチド、薬学的に許容可能なバッファー及び薬学的に許容可能な保存料を含有する薬学的組成物において、本発明に係る方法によって調製されることを特徴とする薬学的組成物に関する。
更なる態様では、本発明は本発明に係る薬学的組成物の有効量を非経口投与することを含んでなる高血糖の治療方法に関する。
【0029】
親のグルカゴン様ペプチドはペプチド合成、例えばt-Boc又はF-Moc化学又は他の十分に確立された技術を使用する固相ペプチド合成法によって製造することができる。親グルカゴン様ペプチドはまたポリペプチドをコードするDNA配列を含み、ペプチドの発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中にポリペプチドを発現することができる宿主細胞を培養し、その後に得られたペプチドを培養物から回収する方法によって製造することができる。
細胞を培養するために使用される培地は、適切な補助物質を含む最少又は複合培地のような、宿主細胞を成長させるのに適した任意の一般的な培地でありうる。好適な培地は商業的供給者から入手することができ、又は公開された処方(例えばアメリカンタイプカルチャーコレクションのカタログ)に従って調製することができる。ついで、細胞によって産生されたペプチドは、対象ペプチドのタイプに応じて、遠心分離又は濾過によって培地から宿主細胞を分離し、上清又は濾液のタンパク様成分を塩、例えば硫酸アンモニウムによって沈殿させ、様々なクロマトグラフィー法、例えばイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等によって精製することを含む一般的な手順によって培養培地から回収することができる。
【0030】
親ペプチドをコードするDNA配列は、好適には、例えば標準的な方法に従ってゲノム又はcDNAライブラリーを調製し、合成オリゴヌクレオチドプローブを使用してハイブリダイゼーションによってペプチドの全て又は一部をコードするDNA配列をスクリーニングすることによって得られる、ゲノム又はcDNA由来のものでありうる(例えば、Sambrook, J, Fritsch, EF and Maniatis, T, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989を参照のこと)。ペプチドをコードするDNA配列はまた確立された標準的な方法、例えばBeaucage及びCaruthers, Tetrahedron Letters 22 (1981), 1859-1869によって記載された亜リン酸アミダイト法、又はMatthes等, EMBO Journal 3 (1984), 801-805によって記載された方法によって合成的に調製することもできる。DNA配列はまた例えば米国特許第4683202号又はSaiki等, Science 239 (1988), 487-491に記載されたように、特異的プライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって調製することもできる。
【0031】
DNA配列は組換えDNA手順に簡便に使用することができる任意のベクターに挿入することができ、ベクターの選択はしばしばそれが導入される宿主細胞に依存する。よって、ベクターは、自己複製ベクター、つまり染色体外体として存在し、その複製が染色体複製に独立であるベクター、例えばプラスミドでありうる。あるいは、ベクターは、宿主細胞中に導入されたときに宿主細胞ゲノム中に組み込まれ、それが組み込まれた染色体(群)と共に複製されるものであってもよい。
ベクターは好ましくはペプチドをコードするDNA配列がプロモーターのようなDNAの転写に必要とされる更なるセグメントに作用可能に結合している発現ベクターである。プロモーターは選択された宿主細胞において転写活性を示す任意のDNA配列であり得、宿主細胞に相同的又は異種性のタンパク質コード遺伝子から誘導されうる。様々な宿主細胞において本発明のペプチドをコードするDNAの転写を指示する好適なプロモーターの例は、例えば上掲のSambrook等において公知である。
【0032】
ペプチドをコードするDNA配列はまた、必要に応じて、好適なターミネーター、ポリアデニル化シグナル、転写促進配列、及び翻訳促進配列に作用可能に結合されうる。本発明の組換えベクターは更に対象の宿主細胞においてベクターが複製することを可能にするDNA配列を含みうる。
ベクターはまた選択可能マーカー、例えばその産物が宿主細胞における欠陥を補完する遺伝子、又は薬剤、例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ハイグロマイシン又はメトトレキセートに対する耐性を賦与するものを含んでいてもよい。
本発明の親ペプチドを宿主細胞の分泌経路中に向けるために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列又はプレ配列としても知られている)を組換えベクター中に配することができる。分泌シグナル配列は正しい読み枠にあるペプチドをコードするDNA配列に結合される。分泌シグナル配列は一般にペプチドをコードするDNA配列の5'に位置している。分泌シグナル配列はペプチドに通常関連するものであってもよく、又は他の分泌タンパク質をコードする遺伝子由来のものであってもよい。
【0033】
本発明のペプチドをコードしているDNA配列とプロモーターと場合によってはターミネーター及び/又は分泌シグナル配列をそれぞれ結合させ、複製のために必要な情報を含んでいる適切なベクター中にそれらを挿入するために使用される手順は当業者によく知られている(例えば上掲のSambrook等を参照)。
DNA配列又は組換えベクターが導入される宿主細胞は、本ペプチドを生成可能な任意の細胞であり得、細菌、酵母菌、真菌及び高等真核細胞を含む。よく知られ当該分野で使用される好適な宿主細胞の例は限定するものではないが、大腸菌、サッカロマイセス・セレヴィシエ、又は哺乳動物BHK又はCHO株価細胞である。
【0034】
本発明を次の実施例によって更に説明するが、これら実施例は保護範囲を限定するものと考えてはいけない。次の説明及び次の実施例において開示されている特徴は、別個にもその組合せでも、本発明をその様々な形で実現するための材料でありうる。
【実施例】
【0035】
以下において、「化合物1」は次のものを意味することを意図する:Arg34,Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7−37)。
ペプチドの溶液又は懸濁液を凍結乾燥する前に、それを目標のpHに調節した。凍結乾燥後、薬学的製剤を一般手順1及び2に従って調製した。
一般手順1
保存料、等張剤及びバッファーを水に溶解させ、pHを7.4に調節した。その後に、凍結乾燥ペプチドをゆっくり撹拌しながら溶解させた。水酸化ナトリウム及び/又は塩酸を使用してpHを7.4に調節した。最後に、製剤を0.22μmフィルターを通して濾過した。
一般手順2
保存料、等張剤及びバッファーを水に溶解させ、pHを7.4に調節した。ペプチドをゆっくり撹拌しながら水に溶解させた。二種の溶液を混合し、水酸化ナトリウム及び/又は塩酸を使用してpHを7.4に調節した。最後に、製剤を0.22μmフィルターを通して濾過した。
安定な薬学的製剤を調製する他の方法は、製剤原料を含む溶液においてpHを中性pHより高くする(>8)ことである。薬学的製剤は一般手順3に記載されたようにして調製する。
一般手順3
保存料、等張剤及びバッファーを水に溶解させ、pHを7.4又はそれ以下に調節した。化合物1をゆっくり撹拌しながら水に溶解させ、水酸化ナトリウムを添加してpHを11.5に調節した。およそ5分後に、二種の溶液を混合し、水酸化ナトリウム及び/又は塩酸を使用してpHを7.4に調節した。最後に、製剤を0.22mmフィルターを通して濾過した。
【0036】
製剤の物理的安定性を、チオフラビンT-試験によって評価する。異なった製剤の物理的安定性はフィブリルを形成するその傾向によって特徴付けられる。フィブリルの存在を決定する方法はチオフラビンT-試験である。組織学的チアゾール染料チオフラビンT(ThT)を、アミロイドフィブリルの形成の指標として使用する。この方法は、ThTの蛍光特性に基づいている。アミロイドフィブリルが存在すると、ThTの蛍光は450nmで最大励起を、482nmで向上した発光を示す。ThT蛍光強度はアミロイドフィブリル濃度の増加と線形関係になることが示されている。製剤の物理的安定性は、製剤をガラスカートリッジに上部から充填した後の様々な時点でThT-試験によって評価される。
【0037】
凍結乾燥前に中性pH(>8)を越えるpHに調節した製剤原料で製造した薬学的製剤からの結果
開始時点(t=0)と37℃での1ヶ月の保存後のThT-試験の結果は表1に見ることができる。

凍結乾燥前にpH9.5及び11.5に調節した化合物1で製造した薬学的製剤は、凍結乾燥前にpH8.0に調節した化合物1で製造した薬学的製剤(ThTの増加が見られる)と比較して、37℃での1週間及び1ヶ月の貯蔵後により物理的に安定している(ThTの増加は見られない)ことが分かる。
【0038】
製剤原料を含む溶液においてpHを中性pH(>8)を越えて上げることによって製造した薬学的製剤の結果

製剤原料を含む溶液中でpHを中性pH(>8)を越えて上げることによって製造した薬学的製剤は、pHを中性pH(>8)を越えて上げないで製造した薬学的製剤と比較して、37℃での1ヶ月の貯蔵後により物理的に安定している(ThTの増加は見られない)ことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルカゴン様ペプチド、薬学的に許容可能なバッファー及び薬学的に許容可能な保存料を含有する薬学的組成物の有効期間を増大させる方法において、上記薬学的組成物を、8.1から9.6の範囲のpHでの処理を受けた原体ペプチド産物から調製することを特徴とする方法。
【請求項2】
グルカゴン様ペプチド、薬学的に許容可能なバッファー及び薬学的に許容可能な保存料を含有する薬学的組成物の有効期間を増大させる方法において、上記薬学的組成物を、8.5から9.6の範囲のpHでの処理を受けた原体ペプチド産物から調製することを特徴とする方法。
【請求項3】
上記pHが9.0から9.6の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記原体ペプチド産物が、10分から12時間の時間、約5℃から約25℃の温度で、特定された範囲のpHでの処理を受けている、請求項1ないし3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記原体ペプチド産物が、1分から30分の時間、約5℃から約25℃の温度で、特定された範囲のpHでの処理を受けている、請求項1ないし3の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記薬学的組成物が溶液である、請求項1ないし5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
上記薬学的組成物が懸濁液である、請求項1ないし5の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
上記薬学的組成物が固形である、請求項1ないし5の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
上記薬学的組成物を、注射用水又は他の適切な溶媒で再構成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記原体ペプチド産物を、上記pHで上記グルカゴン様ペプチドの溶液又は懸濁液を凍結乾燥させることによって調製する、請求項1ないし9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
上記原体ペプチド産物を、上記薬学的組成物の製造中に上記pHで処理する、請求項1ないし9の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
上記原体ペプチド産物を、上記薬学的に許容可能なバッファーと混合する前に上記pHで処理する、請求項1ないし9の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
上記薬学的組成物のpHが、原体ペプチドの溶液又は懸濁液を処理するpHより低い、請求項1ないし12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
上記薬学的組成物のpHが、原体ペプチドの溶液又は懸濁液を処理するpHより少なくとも0.8pH単位低い、請求項1ないし13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
上記薬学的組成物のpHが、原体ペプチドの溶液又は懸濁液を処理するpHより少なくとも1.5pH単位低い、請求項1ないし14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
薬学的組成物が、例えば注射又は点滴による、非経口投与に適している、請求項1ないし15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
上記薬学的組成物又は上記薬学的組成物の再構成溶液のpHがpH7.0からpH8.0、好ましくはpH7.2からpH7.8である、請求項1ないし16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
上記グルカゴン様ペプチドの等電点が3.0から7.0、好ましくは4.0から6.0である、請求項1ないし17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
上記グルカゴン様ペプチドが、グルカゴン、グルカゴンアナログ又はその誘導体である、請求項1ないし18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
上記グルカゴン様ペプチドが、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1の誘導体又はGLP-1アナログの誘導体である、請求項1ないし18の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
上記GLP-1アナログが、Gly-GLP-1(7-36)-アミド、Gly-GLP-1(7-37)、Val-GLP-1(7-36)-アミド、Val-GLP-1(7-37)、ValAsp22-GLP-1(7-36)-アミド、ValAsp22-GLP-1(7-37) 、ValGlu22-GLP-1(7-36)-アミド 、ValGlu22-GLP-1(7-37)、ValLys22-GLP-1(7-36)-アミド、ValLys22-GLP-1(7-37)、ValArg22-GLP-1(7-36)-アミド、ValArg22-GLP-1(7-37)、ValHis22-GLP-1(7-36)-アミド、ValHis22-GLP-1(7-37)、ValTrp19Glu22-GLP-1(7-37)、ValGlu22Val25-GLP-1(7-37)、ValTyr16Glu22-GLP-1(7-37)、ValTrp16Glu22-GLP-1(7-37)、ValLeu16Glu22-GLP-1(7-37)、ValTyr18Glu22-GLP-1(7-37)、ValGlu22His37-GLP-1(7-37)、ValGlu22Ile33-GLP-1(7-37)、ValTrp16Glu22Val25Ile33-GLP-1(7-37)、ValTrp16Glu22Ile33-GLP-1(7-37)、ValGlu22Val25Ile33-GLP-1(7-37)、ValTrp16Glu22Val25-GLP-1(7-37)、及びそれらのアナログからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
GLP-1アナログの上記誘導体がArg34,Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7−37)である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
上記原体ペプチド産物の溶液又は懸濁液を、pH9.5での処理にかけ、上記薬学的組成物のpHが7.4である、請求項1ないし22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
薬学的組成物中の上記グルカゴン様ペプチドの濃度が、0.1mg/mLから50mg/mL、0.1mg/mLから25mg/mL、1mg/mLから25mg/mL、1mg/mLから10mg/mL、又は3mg/mLから8mg/mLである、請求項19ないし23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
上記グルカゴン様ペプチドが、GLP-2、GLP-2アナログ、GLP-2の誘導体又はGLP-2アナログの誘導体である、請求項1ないし18の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
上記GLP-2の誘導体又はGLP-2アナログの誘導体が一のリジンのようなリジン残基を有し、スペーサーを介していてもよい親油性置換基が上記リジンのεアミノ基に結合している、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
薬学的組成物中の上記グルカゴン様ペプチドの濃度が、0.1mg/mLから100mg/mL、0.1mg/mLから25mg/mL、又は1mg/mLから25mg/mLである、請求項25ないし26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
上記グルカゴン様ペプチドが、エキセンディン-4、エキセンディン-4アナログ、エキセンディン-4の誘導体又はエキセンディン-4アナログの誘導体である、請求項1ないし18の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
上記ペプチドがエキセンディン-4である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
上記ペプチドが安定なエキセンディン-4化合物である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
上記ペプチドがDPP-IV保護エキセンディン-4化合物である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
上記ペプチドが免疫調節されたエキセンディン-4化合物である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
上記ペプチドがZP-10、つまり[Ser38Lys39]エキセンディン-4(1−39)LysLysLysLysLys-アミドである、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
薬学的組成物中の上記ペプチドの濃度が、5μg/mLから10mg/mL、5μg/mLから5mg/mL、5μg/mLから5mg/mL、0.1mg/mLから3mg/mL、又は0.2mg/mLから1mg/mLである、請求項28から33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
上記バッファーが、オルト-ホスフェート、TRIS、グリシン、N-グリシルグリシン、シトレートナトリウムアセテート、炭酸ナトリウム、グリシルグリシン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、リン酸ナトリウム、及びクエン酸ナトリウム又はそれらの混合物から選択される、請求項1ないし34の何れか一項に記載の方法。
【請求項36】
上記保存料が、フェノール、m-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、2-フェノキシエタノール、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール及びチオメロサル、又はそれらの混合物から選択される、請求項1ないし35の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
等張剤を含有する、請求項1ないし36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
上記等張剤が、塩化ナトリウム、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、グルコース、マルトース、スクロース、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン、ジメチルスルホン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール又はそれらの混合物である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
界面活性剤を含む、請求項1ないし38の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
グルカゴン様ペプチドを含有する薬学的組成物において、請求項1ないし39の何れか一項に記載の方法に従って調製されることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項41】
約7.2から約7.8のpHを有する薬学的組成物であって、グルカゴン様ペプチドと少なくとも一種の薬学的に許容可能な賦形剤を含有し、該組成物が、37℃で一ヶ月の組成物の貯蔵後に組成物中に含まれるグルカゴン様ペプチドのチオフラビンT試験で測定した蛍光増加が2倍未満の貯蔵安定性である薬学的組成物。
【請求項42】
請求項40又は41の何れか一項に記載の薬学的組成物の有効量を非経口投与することを含んでなる高血糖の治療方法。

【公表番号】特表2008−500262(P2008−500262A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508132(P2006−508132)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000380
【国際公開番号】WO2004/105781
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(596113096)ノボ・ノルデイスク・エー/エス (241)
【Fターム(参考)】