説明

官能基化ケイ素化合物

官能基化カルボ-ケイ素化合物を、ヒドロシリル化触媒存在下、ヒドロシリル化促進条件下で、少なくとも1つのSi-H官能基を有する加水分解可能ケイ素反応体;ならびに、第三炭素原子に付着していない場合、少なくとも1つの末端オレフィン官能基、および実質上ヒドロシリル化反応を妨げる能力を有することを特徴とする第二メチル官能基または炭素官能基を結合している第三炭素原子、を含む官能基化オレフィン反応体;を接触させる工程を含む製造方法によって、提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明は、カルボ-シランおよびカルボ-シロキサンの合成における不飽和炭化水素のヒドロシリル化(hydrosilation)の方法ならびにそれによって製造されるカルボ-シランおよびカルボ-シロキサンに関する。
関連技術の記述
カルボ-シランおよびカルボ-シロキサン化合物は、有用な表面活性特性を有し、様々な親水性および親油性溶媒システム内で界面活性剤としての広範な用途が認められる。さらに、カルボ-シランおよびカルボ-シロキサン化合物、特に反応性官能基を有する該化合物は、広範な親水性および親油性素材と相互作用するであろう様々な部位を有するダイマー、オリゴマー、およびポリマー化合物製造の中間体として広範な用途が認められる。ヒドロシリル化反応を用いるカルボ-シランおよびカルボ-シロキサンの製造、即ち、ケイ素反応体内に含まれるSi−H(シラン)官能基をオレフィン反応体内の不飽和官能基に付加することを含む反応は、一般に知られており、例えば、A.J.ChalkおよびJ.F.Harrod、Journal of the American Chemical Society(1965)87(1),16−21頁を参照されたい。そのようなヒドロシリル化反応の例としては、オレフィン、例えば1-ブテン、にトリメチルシラン(H-Si(CH3)3)を付加するとトリメチルシリルブタン[(CH3)3Si(CH2)3-CH3]が形成されることが挙げられる。この型の反応は、カルボ-シランおよびカルボ-シロキサン化合物の準備の基礎になると考えられる。
【0002】
一般に、ヒドロシリル化反応は、化学量論的に過剰なオレフィン反応体およびヒドロシリル化触媒、例えばヘキサクロロ白金(IV)酸を含む反応混合物を加熱し、さらにケイ素反応体を小アリコートで混合物に加えることによって、行われる。オレフィン反応体が末端にオレフィンを含む場合のヒドロシリル化反応の予想される経路は、ケイ素反応体内のシラン官能基のケイ素原子が水素原子を失い、オレフィン反応体のオレフィン官能基の末端炭素に結合し、それに付随して水素原子が末端オレフィン官能基のβ-炭素に結合される経路をたどる。本明細書中では、便宜上、この結果を典型的ヒドロシリル化反応と呼ぶことがある。
【0003】
しかしながら、オレフィン反応体がある官能基を含む場合、ヒドロシリル化反応は、上記の予想される付加生成物を生じないか、あるいは提供しないかのどちらかである。即ち、あるヒドロシリル化反応は、不飽和炭素官能基の予想されるヒドロシリル化が達成されないために失敗し、あるその他のヒドロシリル化反応は、望ましくない量のオレフィン反応体が副産物生成反応に消費されるために失敗する。ヒドロシリル化反応を実質上妨げる可能性を有する官能基の例としては、限定するものではないが、ヒドロシリル化条件下では還元剤(reducent)となる基、例えばアルデヒド、が含まれる。このことは、特に、そのような官能基が、ヒドロシリル化を受けるオレフィン官能基との結合が可能である炭素に付加されている場合に、真実である。この後者の結合パターンの例は、限定するものではないが、例えばアクロレイン(H2C=CH-CHO)に認められる。また、オレフィン反応体では、典型的ヒドロシリル化反応を試みる場合にこのような結果を得るその他の機能および結合配列も知られている。
【0004】
これまで、この問題は、ヒドロシリル化反応を妨げる官能基の可能性を減少させる「保護基」でオレフィン反応体の1以上の官能基を誘導体化することによって、いくつかのオレフィン反応体について解決されてきた。誘導体化オレフィン反応体を用いるヒドロシリル化反応スキームの例は、Dennisら、Journaol of Organic Chemistry,35(12),4180-4183(Dennis文献)(the Dennis publication)によって報告されている。Dennis文献は、オレフィン反応体として、アクロレインジメチルアセタール(アクロレインのアルデヒド官能基から製造されたアセタール誘導体)の製造について記載しており、該反応体を1,1,2,2,2-ペンタメチルジシロキサン(ケイ素反応体、(CH3)3SiO(CH3)2Si-H)とのヒドロシリル化反応に用いる。Dennis文献に記載されたこのヒドロシリル化反応は、誘導体化オレフィン反応体(アクロレインジメチルアセタール)を期待されるヒドロシリル化製造物へ実質的に転化する(約65モル%)、即ち、オレフィン反応体のオレフィン官能基へのケイ素反応体のシラン官能基の付加が起こる。また、Dennis文献は、製造物カルボ-シランのアセタール官能基の加水分解がアルデヒド官能基を含むカルボ-シラン生成物を提供すると記載している。しかしながら、この反応は、ケイ素反応体としてトリクロロシラン(H-SiCl3)を用いて行った場合には、期待されるヒドロシリル化付加反応を起こさないとも、Dennis文献は記している。トリクロロシランは、シラン官能基のケイ素原子と結合した加水分解可能な置換基(Cl)を有するケイ素反応体であると考えられるであろう。
【0005】
Dennisらは、予想されるヒドロシリル化生成物、即ちケイ素上に加水分解可能な官能基を含むカルボ-シラン、を提供するであろう炭化水素試薬を同定したが、ケイ素上の官能基もまた加水分解されるであろう故に、アセチル「保護」基は加水分解されずにアルデヒドを再生成できないことが、前記述から分かるであろう。従って、Dennisらによって記載されている合成スキームは、実質上ヒドロシリル化反応を妨げる可能性を有する官能性を含み、またその中のシリコン原子上に加水分解可能な置換基を含むカルボ-シランおよび-シロキサンの製造には不適切である。
【0006】
さらに、Dennis文献内に記載された合成スキームは、ヒドロシリル化反応を実質上妨げる官能基を含むカルボ-シランおよびカルボシロキサンを製造するために、製造過程内に、ヒドロシリル化反応の前に所望の官能基誘導体を形成する工程、およびヒドロシリル化反応後に誘導体を所望の官能基に戻す工程を含むことによる、更なる工程を必要とすることが分かるであろう。このような更なる工程は、製造過程の効率および対価に悪い影響を与える。
【0007】
このように、出願人らは、シランおよびシロキサン化合物が典型的ヒドロシリル化反応を実質上妨げる可能性を有する官能性を含むことを特徴とする、官能基化カルボ-シラン、-シロキサンならびにそのオリゴマー、ポリマーおよびコポリマーの直接製造を提供する方法が必要であることを正しく認識するに至った。また、出願人らは、シリコン原子に結合した1以上の加水分解可能な官能基を有するケイ素含有部分を有する、およびヒドロシリル化反応を実質上妨げる可能性を有する官能性を含む炭化水素部分を有する、カルボ-シランおよびカルボ-シロキサンの直接製造を提供する方法が必要であると認識するに至った。必要なのは、ヒドロシリル化反応を実質上妨げる可能性を有する機能性を含み、またその中にケイ素原子と結合した加水分解可能な官能基を含む、カルボ-シランおよびカルボ-シロキサンである。
【0008】
特に、本発明はこれらの必要性に直面しており、本発明のその他の特徴および実施態様は、以下の記載から明らかになるであろう。
発明の要約
出願人らは、たとえ不可能ではないにしろ、以前は生成することが難しかった官能基化カルボ-シランおよびカルボ-シロキサンを合成する方法を発見した。本明細書中で用いられている用語「官能基化カルボ-シラン」および「官能基化カルボ-シロキサン」は、それぞれ、例えばアルデヒドまたはニトリル基のような反応性官能基を有するシランおよびシロキサンを指す。
【0009】
一般に、一方の末端に望ましい官能基およびもう一方の末端にオレフィン基を含む反応体とシランまたはシロキサンを反応させることによって、官能基化カルボ-シランおよびカルボ-シロキサンを合成することが好ましい。ある条件下では、ヒドロシリル化反応は、反応体の炭素-炭素二重結合とシランまたはシロキサンのSi-H部分の間で起こり、好ましい官能基を有するカルボ-シランまたはカルボ-シロキサンを生成し、この反応は以下のように表すことができる。
【0010】
【化1】

【0011】
しかしながら、出願人らは、この方法は、ヒドロシリル化中の反応性がビニル基と同様かそれより大きい官能基を有する官能基化カルボ-シランおよびカルボ-シロキサンの合成に有効ではないことを発見した。そのようは場合、官能基は、シランまたはシロキサンに直接結合する傾向にあるか、またはその他の何らかの非所望の反応を受ける可能性がある。この問題を解決するために、出願人らは、第三炭素を反応性官能基と反応体残部の間に配置し、そうすることによって反応性官能基の反応性を邪魔する(hinder)または妨げる(impede)ことができることを発見した。本明細書中で用いられている用語「第三炭素部分」は、該炭素に直接結合したプロトンを持たない、と言うよりむしろ前述の官能基の他3つのアルキレン置換基と結合している炭素である。
【0012】
いかなる特別の理論に結びつくわけではないが、出願人らは、第三炭素原子が少なくとも1または2の方法でヒドロシリル化中の官能基の反応性を減じるのではないかと考えている。第一に、第三炭素が官能基とオレフィン基の間に位置すると、末端オレフィン基と結合する官能基の能力はなくなる。第二に、出願人らは、2つのアルキレン置換基が第三炭素上の保護基として働いて官能基に群がり、それによってヒドロシリル化中の官能基との反応を立体的に妨げうると想像する。この点に関しては、R2およびR3(例えばフェニル対メチル)置換基の大きさが大きくなると、ヒドロシリル化中の官能基の反応性はむしろ減少する傾向にある。
【0013】
この方法は、一般的に以下のように表すことができる。
【0014】
【化2】

【0015】
本発明の一つの態様は、保護基を有する第三炭素によって不飽和結合から反応官能性が引き離されてヒドロシリル化中の官能基の反応性を妨げる官能基化オレフィンと、反応体を含むケイ素を反応させることによって、官能基化カルボ-シランおよびカルボ-シロキサンの製造方法である。
【0016】
好ましい実施態様では、官能基化カルボ-シランまたはカルボ-シロキサン化合物の製造方法は、ヒドロシリル化触媒存在下およびヒドロシリル化促進条件下で、少なくとも一つのSi-H官能基を含むケイ素反応体と、
・ 少なくとも一つの末端オレフィン官能基;
・ 該末端オレフィン官能基に対してもう一方の末端に結合したアルキレンセグメント;および
・ アルキレンセグメントのもう一方の末端に結合し、2つの保護基と共に反応性官能基を含み、ヒドロシリル化中の官能基の反応性を妨げる、第三炭素部分:
を含む官能基化オレフィン反応体を接触させることを含む。しかしながら、保護基に関しては、反応性官能基の特徴および結合位置は、典型的ヒドロシリル化反応を実質上妨げる可能性を有するようなものである。
【0017】
本発明のこの態様のある好ましい実施態様では、官能基化カルボ-シランまたはカルボ-シロキサン化合物を製造するための方法が提供され、該方法は、ヘキサクロロ白金(IV)酸触媒存在下、およびヒドロシリル化促進条件下で、ケイ素反応体および官能基化オレフィン反応体を接触させることを含み、該ケイ素反応体は、一般式:
Si(Z)b(H)a(R1)4-b-a
式中、Zは、例えばアルコキシ、ハロゲン、ケトキミノ、ジアルキルアミン、アセトアミド、アルキルチオ、N,N-ジアルキルアミノキシ、ベンズアミド、アシルオキシおよびエノキシを含む、加水分解可能な置換基であり;
1は、例えば、(i)シラン、カルボシラン、線状、分枝および環状シロキサン、カルボシロキサンならびにそれらの2以上のオリゴマー、ポリマーおよびコポリマーからなる群より選択されるケイ素ベース部であって、所望によりその1以上のケイ素原子上を1以上の加水分解可能な官能基で置換されている該ケイ素ベース部;および(ii)飽和または不飽和、線状、分枝または環状、脂肪族または芳香族、の炭化水素部分であって、所望により、その任意の炭素上をアルキル、アリール、ヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲン部分で置換されている該炭化水素部:からなる群より独立的に選択された部を含む置換基であり;a+b≦4である限りにおいて、
aは、1、2または3に等しい整数であり;
bは、0、1、2または3に等しい整数である:
を有し、該官能基化オレフィン反応体は、一般式:
【0018】
【化3】

【0019】
式中、区分Uは、不飽和炭化水素官能基と呼ばれ;
区分Vは、アルキレン部分と呼ばれ;
区分Wは、1つの第二官能基および2つのブロッキング基を有する第三炭素部分と呼ばれ;
Aは、例えば、-[CH2]c-S-[CH2]d、-[CH2]c-O-[CH2]dおよび-[CH2]c-N(R4)[CH2]d-を含むアルキレン部分であり、cは0を含む整数であり、dは少なくとも1であり、R4は約3未満の炭素原子を有するアルキル部分であり;
2は、例えば、メチル、エチルおよびフェニルを含む、飽和または不飽和、線状、分枝状または環状、脂肪族、芳香族、および置換芳香族炭化水素部分からなる基から選択され;
3は、例えば、メチルおよびフェニルを含む、飽和または不飽和、線状、分枝状または環状、脂肪族、芳香族、および置換芳香族炭化水素部分からなる群より選択され;
Qは、区分W内に第三炭素部分なければ、ヒドロシリル化反応を実質上妨げる可能性をする第二官能基であり;さらに、
nは0または1に等しい整数:
を有する。
【0020】
本発明のその他の態様は、この方法から作り出された官能基化カルボ-シランおよびカルボ-シロキサン化合物である。所望であれば、加水分解可能官能基を、カルボ-シランまたはカルボ-シロキサン内の1以上のケイ素原子に付着する。ある好ましい実施態様では、式:
【0021】
【化4】

【0022】
式中、aおよびbは、0を含み、a+b≦3であるように独立的に選択された整数であり、の整数であり、さらに、
Z、Q、A、n、R1、R2、およびR3は上に定義した通りである:
を有する新規化合物が提供される。
発明の詳細な説明
末端不飽和官能基および第二末端官能基を有する反応体は、通常はヒドロシリル化反応を妨げると考えられる組み合わせであるが、不飽和官能基と第二官能基の間に第三炭素部分を配置することによってヒドロシリル化反応に成功裡に用いうることを、発明者らは驚きを持って発見した。従って、本発明の方法は、ケイ素反応体のシラン官能基と官能基化オレフィン反応体の末端オレフィン基の間のヒドロシリル化反応を含む。本発見は、末端オレフィン基およびある官能基を有するオレフィン反応体は、ヒドロシリル化条件下で還元剤であるそれらのように、競争反応の存在、非所望の副産物の生成、および/または望ましいヒドロシリル化反応部位の不活性化により、典型的ヒドロシリル化反応を妨げるであろうと言う従来の考え型とは対照的である。
【0023】
ケイ素反応体として単純なシランおよびシロキサンならびに官能基化オレフィン反応体としてアルデヒドおよびニトリル官能基を有する官能基化されたいくつかの低分子量オレフィンを用いる、本発明の方法および化合物を以下に記載し例示するが、本発明は、ケイ素および官能基化オレフィン反応体ならびにそれぞれに含まれる官能基の構造に関して、より広い適応性を有すると予想される。
【0024】
本明細書中に用いられている用語「ヒドロシリル化反応」は、反応が起こるいかなる特別なメカニズムにも関係なく、一般に、オレフィン反応体の末端炭素-炭素二重結合へのシランまたはシロキサンの付加を含む、シランまたはシロキサンケイ素反応体のケイ素-水素結合での反応を特徴とする。
【0025】
本明細書中に用いられている用語「シラン」は、Si-H官能基またはSi-H官能基を含む化合物を指す。本明細書中に用いられている用語「シロキサン」は、少なくとも一つのSi-O-Si部分を含む化合物を指し、さらに1以上のSi-H官能基を含んでいても良い。本明細書中に用いられている用語「カルボ-シラン」は、ケイ素原子に結合した少なくとも一つの炭素部分(Si-C)を含む化合物を指し、さらに1以上のSi-H官能基を含んでいても良い。本明細書中に用いられている用語「カルボ-シロキサン」は、少なくとも1つのSi-O-Si部分を含み、その少なくとも一つのケイ素原子に少なくとも一つの炭化水素部分を結合した、化合物を指す。本明細書中に用いられている用語「カルボ-ケイ素化合物」は、便宜上、カルボ-シランおよびカルボ-シロキサンの両方を指す。任意の上記化合物は、化合物のそれらの特徴とは異なる化合物と相容する更なる官能基を含んでも良いことが、分かるであろう。
A. カルボ-シロキサン化合物の製造方法
本発明のある好ましい実施態様に従って、カルボ-シリコーン化合物の製造方法が提供され、該方法は、ヒドロシリル化触媒存在下、ヒドロシリル化促進条件下で、ケイ素反応体と官能基化オレフィン反応体を接触させることを含む。
【0026】
ケイ素反応体
本発明の方法に用いられるケイ素反応体は、少なくとも一つのシラン官能基、即ちSi-H官能基を有することを特徴とする。所望により、シラン官能基のケイ素原子に、1以上の加水分解可能な置換基、例えばハロゲン、例えば塩素、およびアルコキシ、例えばメトキシ、を結合させる。本明細書中に示すように、ケイ素反応体は、さらに、シランケイ素原子上に、その他の置換基、例えば炭化水素部分、ならびにシロキサンおよび/または炭化水素部分で置換された別のケイ素原子を含むことができる。
【0027】
本発明の方法での使用に適当なケイ素反応体は、1より多いシラン官能基を含むことができ、それぞれの該シラン官能基は、所望により、そのケイ素原子に1以上の加水分解可能な置換基(本明細書中では、便宜上、官能基化シラン官能基と呼ぶこともある)を結合でき、2以上のこれらの様々なシランおよび官能基化シラン官能基のそれら構造混合物内に含むことができる。従って、少なくとも1のシラン官能基、所望により1より多いシラン官能基、1以上であり最大で所望による全官能基化シラン官能基を有する、ダイマー、オリゴマーおよびポリマー化合物は、本発明の方法でケイ素反応体としての使用に適している。適当なケイ素反応体は、その他の置換基、例えば、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、シランおよびシロキサン置換基、の混合物を含む、更なるその他の置換基を含むことができる。適当な置換基には、線状、分枝状のシラン、カルボ-シラン、シロキサンおよびカルボ-シロキサンポリマーを含む、シラン、カルボ-シラン、シロキサンまたはカルボ-シロキサン部分が含まれる。
【0028】
本発明のいくつかの方法では、好ましいケイ素反応体は、構造Iの化合物の一般式:
【0029】
【化5】

【0030】
式中、aは1、2または3であり、bは0、1、2または3であり、それらは、a+bが4以下であるように独立的に選択され、;
Zは加水分解可能な置換基であり、;さらに、
1は、(i)シラン、カルボシラン、線状、分枝状および環状シロキサン、カルボシロキサン、ならびにその2以上のオリゴマー、ポリマーおよびコポリマーからなる群より選択されるケイ素ベース部分であって、所望によりその1以上のケイ素原子上を1以上の加水分解可能官能基で置換されている該ケイ素ベース部分、および(ii)飽和または不飽和、線状、分枝状または環状、脂肪族または芳香族の炭化水素部分であり、所望によりその任意の炭素上をアルキル、アリール、ヒドロキシル、アルコキシ、またはハロゲン部分で置換されている、該炭化水素部;からなる群より独立的に選択される:
を有する該反応体である。
(a) ケイ素反応体内の加水分解可能な置換基(Z)
構造Iに関して、本発明のケイ素反応体内の随意の加水分解可能置換基(Z)は、水の存在下で加水分解されてシラノール官能基が得られるが、ヒドロシリル化条件下でヒドロシリル化触媒と反応しないであろう特徴を有する。
【0031】
いくつかの好ましいケイ素反応体化合物では、加水分解可能置換基は、アルコキシド(R*-O)およびハロゲンからなる群より、各々の事例について独立的に選択される。アルコキシド部分(R*)は、飽和または不飽和、線状、分枝状または環状アルキル部分を含むことができる。R*部が有意の立体障害を示さないことが一般に好ましく、従って、いくつかの好ましいケイ素反応体化合物では、アルコキシ基は好ましくは5未満の炭素原子を含む。いくつかの特別に好ましいケイ素反応体では、加水分解可能置換基は、塩化物およびメトキシ置換基からなる群より選択される。
【0032】
本発明の方法での使用に適したケイ素反応体内に存在することのできる加水分解可能置換基の例としては、限定するものではないが、アルコキシ、ハロゲン、シロキシ、水素化物、ケトキシミノ、ジアルキルアミノ、アセトアミド、アルキルチオ、N,N-ジアルキルアミノキシ、ベンズアミド、アシルオキシ、エノキシ等が含まれる。本発明の方法での使用に適したケイ素反応体内に含まれ得る加水分解可能置換基は、現在知られている任意の合成方法の製造物として入手できる、または後に入手できるようになる、任意の置換基であると分かるであろう。このように、本発明の方法に関して加水分解可能置換基を含む適当なケイ素反応体は、ヒドロシリル化反応混合物内に存在するケイ素反応体およびオレフィン反応体上に存在する官能基の化学的相容性をベースに選択される。
【0033】
同一化合物内のその他の官能基と共存できるいくつかの加水分解可能基は、ヒドロシリル化反応条件下で異なる試薬に呈示される場合、化学的に相容でない場合もあることが分かるであろう。このように、ケイ素反応体上の加水分解可能置換基は、反応混合物内でオレフィン反応体内に存在できる官能基を考慮して選択されねばならない。例えば、トリアセトキシシランは、ヒドロシリル化条件下でオレフィン反応体上のアミン官能性とは相容ではないであろう。また、その他の適当でない組み合わせも明らかであろう。
【0034】
(b) ケイ素反応体内の置換基(R1)
加水分解可能置換基に加えて、本発明の方法での使用に適当なケイ素反応体は、所望により、その中のシラン官能基のケイ素原子と結合したその他の置換基を含むことができる。構造Iでは、この様な所望による置換基を、R1基と名付けた。R1基は、炭化水素部分またはケイ素部分を含むことができる。
【0035】
炭化水素部を含む適当なR1基には、線状、分枝状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換のアルキル基、ならびにアリールおよび置換アリール置換基を含む芳香族および置換芳香族基が含まれる。ある好ましいケイ素反応体では、R1基は、メチルおよびエチルであり、その他の好ましいケイ素反応体では、R1基は、フェニルのような非置換のアリール官能基である。所望により、炭化水素基を置換することもできる。炭化水素基として適当な置換基には、アルコキシおよびハロゲン置換基が含まれる。
【0036】
1置換基がケイ素部分を含む場合、該置換基は、カルボ-シラン部分、例えばアルキレン部分上のトリメチルシラン置換基、カルボ-シロキサン部分、例えばトリメチルシロキサンおよびテトラメチルジシロキサン、ならびにより複雑なカルボ-シロキサン部分、例えば構造IIの部分:
構造II
【0037】
【化6】

【0038】
式中、R1およびZが、互いにまたはSi-IIと、化学的に相容であるように選択される限りにおいて、
ZおよびR1は上記の通りであり、さらに、好ましくはR1はメチルであり;、
n、mおよびpは0を含む整数であり、個々の事例について独立的に選択されるが、p=1である少なくとも一つの事例についてはm=1であり、;さらに、
aおよびbは0、1、2または3より独立的に選択される整数であり、a+b≦3であるように選択され、;
cは、0、1または2より独立的に選択される整数であり;
dは、0または1より独立的に選択される整数である:
を含むことができる。
【0039】
複数のR1置換基を有するある実施態様では、個々のR1置換基を、互いに独立的に選択して良い。また、ある好ましい実施態様では、nは約1から約8であり、mは約1から約2であり、R1はメチルであり、また、任意のケイ素原子は所望により1以上のアルコキシまたはそのメチル置換基を置き換えたクロル官能基で置換されている。
【0040】
その他のケイ素原子含有置換基は、当業者らには明らかであろう。例えば、構造IIに示した一般構造は、環状シロキサンポリマーであると考えられることが分かるであろう。このように、例えば、構造Iに示した任意の2つのR1置換基は、環状シロキサンポリマーの部分、例えば、2つのR1基が示したシクロシロキサン構造を構成する、以下の構造XIに示した該部分であっても良い。
構造XI
【0041】
【化7】

【0042】
式中、R1、Z、m、nおよびpは上記の通りであり、安定なシロキササイクルを提供する値を有するように選択され、
aおよびbは各々の事例について独立的に選択され、その値は0、1または2であり、与えられた事例ではa+bが2以下であるように選択される。
【0043】
さらに、構造IIは、構造XIIIの構造を有するカルボシロキサン置換基を期待することが分かるであろう。
構造XIII
【0044】
【化8】

【0045】
式中、n、mおよびpは上記の通りである。
上記の置換基に加えて、これらおよびその他の炭化水素のオリゴマー、ポリマーならびにコポリマー、カルボ-シランおよびカルボ-シロキサン部分ならびにこれらの任意の2以上のコポリマーは、本発明の方法での使用に適当なケイ素反応体内の官能基化シラン官能基内の1以上のケイ素原子上の置換基であって良いことが分かるであろう。
【0046】
任意のシラン、シロキサン、および望ましい炭化水素試薬と化学的に相容である反応性Si-H官能基を有するカルボ-シラン部分を、本発明の反応に用いうることが分かるであろう。
さらに、ケイ素、および存在するのであればこれらの部分の炭化水素部分を、予定されたオレフィン反応体と化学的に相容である上記の加水分解可能官能基とさらに置換できることが分かるであろう。
【0047】
ヒドロシリル化条件下で反応性であり、かつ、反応混合物内に存在するオレフィン反応体と化学的に相容である、その中に存在するシラン官能基(Si-H)を有する任意のケイ素含有化合物を、本発明の反応に用いることができる。これは、現在知られている合成方法によって入手できる、または入手できるようになる、任意のそのようなケイ素含有化合物を含むことが分かるであろう。
【0048】
官能基化オレフィン反応体
官能基化オレフィン反応体は、次の部分:(a)少なくとも1つの炭素原子を含むアルキレン部分(即ち最少でメチレン部分)と結合している末端不飽和炭素官能基またはオレフィン基;および(b)第二末端官能基を結合している第三炭素部分:を含むことを特徴とする。第二官能基は、以下に記載するように、典型的ヒドロシリル化反応を妨げるまたは該反応と競合する実質的な可能性を有する官能性によって、特徴付けられる。一般に、官能基化炭化水素は、構造IIIの炭化水素であろう。
構造III
【0049】
【化9】

【0050】
式中、区分Uは、不飽和炭化水素官能基と称し;
区分Vは、アルキレン部分と称し;
区分Wは、第二官能基Qならびに保護基R2およびR3を有する第三炭素部部分と称し;
nは0または1に等しい整数であり;さらに、
A、Q、R2およびR3は以下の通りである。
【0051】
構造IIIの化合物は、領域VおよびWのそれぞれを1より多く含むことができ、出願人の発明の態様と共にあるであろう。これら領域の各々を、順に記載する。
(a) オレフィン反応体のアルキレン部分(領域V)
構造IIIの領域Vは、官能基化オレフィン反応体のアルキレン部分を含む。アルキレン部分は、少なくとも1つの末端不飽和官能基(領域U)をその炭素原子に結合した、飽和または不飽和、線状または分枝状、脂肪族または脂環式部分(これらの用語は、Hack’s Chemical Dictionary、第4版に定義されている)を含むことを特徴とする。また、領域Vは、少なくとも1つの第三炭素原子(領域W内の炭素C*、以下に定義する)に結合していることを特徴としている。
【0052】
さらに構造IIIに関して、官能基化オレフィン反応体の領域Vのアルキレン部分は、最低でも、1つのメチレン炭素、即ち-CH2- 部分、を含む。その場合、n=0であり、第三炭素原子(領域VのC*)は、末端不飽和官能基(領域U)に対してアリル位にある炭素と結合している。いくつかの好ましい実施態様では、n=1であり、Aはアルキレン部分である。いくつかの好ましい反応体では、官能基化オレフィン反応体のアルキレン部分は、所望により、ヘテロ原子官能基を含む。いくつかの好ましい官能基化オレフィン反応体では、構造IIIのA部分は、-[CH2]c-S-[CH2]d、-[CH2]c-O-[CH2]dおよび-[CH2]c-N(R4)[CH2]d(式中、cは0を含む整数であり、dは少なくとも1であり、R4は約3未満の炭素原子を有するアルキル部分である)からなる群より選択されるヘテロ原子含有部分を含むことができる。
(b) オレフィン反応体の末端不飽和炭素部分(領域U)
さらに、構造IIIに関して、本発明の官能基化オレフィン反応体は、構造III内で領域Uと称される末端不飽和炭素官能基も含む。不飽和炭素官能基は、2つの炭素原子の間に少なくとも1つの多重結合を含む。いくつかの好ましい官能基化オレフィン反応体では、不飽和炭素官能基は、炭素-炭素二重結合、即ち、オレフィンであり、より好ましくは、不飽和炭素官能基は、末端オレフィンである。ヒドロシリル化反応条件下でケイ素反応体内のシラン官能基の付加を受けうる任意の不飽和炭素官能基を、不飽和炭素官能基として用いうることが分かるであろう。また、官能基化オレフィン反応体のアルキレン部分(領域V)は、1以上の不飽和炭化水素官能基と結合でき、複数部位でヒドロシリル化反応が起こりうることが分かるであろう。
【0053】
(c) オレフィン反応体の第二官能基(領域W)
さらに、構造IIIに関して、構造の領域Wは、第二の官能基(構造III内でQと称する)に結合している第三炭素原子(構造III内、C*で表す)を含む。第三炭素原子の特徴は、該炭素に直接結合するプロトンを持たないことである。構造IIIに示すように、C*炭素は、オレフィン反応体のアルキレン部分(領域V)、R2基、R3基およびQ基に結合している。
【0054】
本発明の方法のいかなる特別な推論とも結び付かない、または同意がなくても、末端不飽和炭素官能基と第二の官能基の間に位置する第三炭素原子の存在は、Q基がヒドロシリル化反応を妨げる可能性を減少または除去すると考えられる。第三炭素原子は、Q基が末端不飽和炭素官能基と結合する能力を除去することによって、および/またはQ基上への化学攻撃を立体的に障害することによって、この可能性を減少または除去すると考えられる。さらに、R2およびR3(例えばフェニル対メチル)置換基の大きさが増加すればするほど、この可能性は減少する。
【0055】
2置換基は、飽和または不飽和、線状、分枝状または環状、脂肪族、芳香族および置換芳香族炭化水素部分(ビニルを含む)、ならびに構造IV:
構造IV
【0056】
【化10】

【0057】
式中、Aは構造IIIについて上記した通りである:
の構造の部分からなる群より選択される。置換基の選択は、温度安定性または他の素材との相容性のような望ましい物理的性質によって、支配される。いくつかの好ましい官能基化オレフィン反応体では、R2置換基は、メチル、エチルまたはフェニル基である。
【0058】
3置換基は、飽和または不飽和、線状、分枝状または環状、脂肪族または芳香族、炭化水素部分からなる群より選択される。一般に、立体的理由から、R3は7未満の炭素原子を有するように選択され、より好ましくは、メチルおよびフェニル置換基から選択される。
【0059】
Q基は、本明細書中に定義したように、実質上ヒドロシリル化反応を妨げる可能性を有する官能性を提供することが知られている官能基から選択される。本明細書中に用いられている句「実質上ヒドロシリル化反応を妨げる可能性」を有する官能性とは、実質上どのような程度でも、炭化水素がヒドロシリル化反応から望ましい生成物を作す能力を持たないことを表現している。
【0060】
望ましい生成物とは、一般に、反応内で用いられたオレフィン反応体の不飽和官能基内の炭素原子と、反応内で用いられたケイ素反応体のSi-H官能器内のケイ素原子との間の炭素-ケイ素結合の形成物である。また、上記のように、ある第二官能基も含む典型的なオレフィン反応体を用いる慣用のヒドロシリル化反応は、期待される生成物または有用量の期待生成物を得ることができない。
【0061】
実質上ヒドロシリル化反応を妨げる可能性を有する官能性を与える第二の官能基を同定する一つの方法は、一つの末端にオレフィン官能基(H2C=CH-)を有し、他の末端に興味ある第二の官能基を有する線状アルキレン部分、即ち(CH2n、を含む炭化水素試薬を用いて、ヒドロシリル化反応試験を行うことである。期待されるヒドロシリル化生成物を提供できないか、または実質上同様のヒドロシリル化条件下で同一の第二官能基を含む本発明の官能基化オレフィン反応体と同一のシランとの反応によって提供されるヒドロシリル化生成物より実質上低い収率の期待された生成物を提供するテスト試薬は、実質上ヒドロシリル化反応を妨げる能力を有する官能性を与える試薬である。テストオレフィン反応体は、nが4以下のアルキレン部分を有することが好ましく、より好ましくは、テストオレフィン反応体は、n=1のアルキレン部分を有する。ヒドロシリル化反応を実質上妨げる能力を有する官能性を与える第二の官能基を同定するその他の方法は、当業者らには明らかであろう。
【0062】
Q基は、選択された官能基化オレフィン反応体が接触するシラン反応体内のケイ素原子に所望によって付けられる任意の加水分解可能置換基と反応しないように選択される。好ましいQ官能基の例としては、アルデヒド、ニトリルおよびイミノ官能基が含まれる。本発明の方法での使用に適した官能基化炭化水素内に含まれうる多数のその他のQ官能基が存在することが分かるであろう。例えば、その他の官能基には、エステル、アミド、エポキシド、アミノ、アミノメチルベンジルアミン、酸性ハロゲン化物、線状および環状-酸無水物、メルカプト、アクリレート、メチルアクリレート、カルバミド、ヒドロキシル、α-およびβ-ヒドロキシ酸、フッ素置換アリールケトン、ニトリル、イミノ、イソシアネート、メチルアクリルオキシ、カルボン酸、ウレイド、フルオロフェノキシ、アミノフェノキシフェニル、シッフ塩基、マレイド、および以下の構造:
【0063】
【化11】

【0064】
式中、RはC1からC6の分枝鎖、直鎖あるいは環状のアルキルまたはアリールである:
を有する官能基が含まれる。
これらの様々な官能基を製造する方法の一つは、アルデヒド官能基の転化によるものであることが分かるであろう。従って、これらの基は、ヒドロシリル化反応に反応体を用いる前に、アルデヒド置換官能基化オレフィン反応体内のアルデヒド官能基を転化することによって官能基化オレフィン反応体内に提供されて良い。代替法として、アルデヒド基を含む官能基化オレフィン反応体から本発明の方法によって製造された炭素-ケイ素化合物を誘導化して、アルデヒド官能基部位にこれらの官能基の一つを提供することもできる。いずれかの経路でそのような官能基化炭化水素化合物を提供する可能性は、上記の原理によって、また、特定のケイ素内に存在するその他の官能基、および選択された官能基化オレフィン反応体ならびに本発明の方法によって製造された炭素-ケイ素生成化合物を考慮することによって、当業者らには分かるであろう。
【0065】
多くの合成経路を用いて官能基化オレフィン反応体を提供できることは明らかであろうが、構造IIIの様々なアリリック-2,2-二置換、官能基化オレフィン反応体を製造する一つの便利な方法は、Brannockによって、Journal of the American Chemical Society,第81巻(1959)、3379-3383頁、に記載されている。従って、アルデヒド官能基に対してβ位にある炭素上に望ましいR2置換基を有するアルデヒドとアリルアルコールを縮合することは、(これにより、R3官能基は、アルデヒド官能基に対してβ位の炭素に結合した親のアルデヒド炭素鎖の残部によって提供され)、親のアルデヒドのβ-炭素へのアリリック炭素のカップリングを提供する。このように、事実上、任意のR2−R3置換基のアルデヒド官能基化オレフィン反応体を、適当な開始アルデヒドを選択することを通して、製造できる。
【0066】
(図IIIでは、官能基化オレフィン反応体のV部内のA基と同定される)反応体のアルキレン部内にヘテロ原子を含む官能基化オレフィン反応体を提供することが好ましい場合、これら反応体を、例えば、Chemistry and Industry、第16巻、1978年9月、731頁より、に記載されているSubramanianらの方法(参照として本明細書中に採用する)を用いて、適当なイソアルデヒドと臭化アリルオキシエチルを縮合することによって提供できる。この縮合では、ヨウ化テトラブチルアンモニウムを、固体水酸化ナトリウム上で、ベンゼン内の相移動触媒として用いる。適当な官能基化オレフィン反応体を提供するその他の合成方法も明らかであろう。
【0067】
理解されると思うが、上記の原理と一致するQ基の構造を変えることにより、本発明の方法は、選択されたケイ素および官能基化オレフィン反応体の直接反応によって、広範な官能基化炭素-ケイ素化合物を提供できる。
【0068】
ヒドロシリル化反応
上記のように、出願人らは、ヒドロシリル化の方法を、ケイ素反応体と官能基化オレフィン反応体の間で実行し、直接、官能基化炭素-ケイ素化合物を得ることができることを、驚きを持って発見した。一般に、ヒドロシリル化触媒は、金属錯体であり、速度を増加する、および/またはヒドロシリル化反応の平衡をシフトさせる触媒量で用いられる。さらに、好ましくは、本発明の方法で用いられる反応体上の官能基と相容であるヒドロシリル化触媒が選択されるであろう。いくつかの好ましい反応体では、ヘキサクロロ白金(IV)酸をヒドロシリル化触媒として用いる。用いることのできるその他のヒドロシリル化触媒には、トリス(トリフェニルホスフィン)Rh(1)クロリド、ビス(ジフェニルホスフィノ)ビナフチルパラジウムジクロリド、およびジコバルトジオクチルカルボニルが含まれる。現在知られている、もしくは本発明のヒドロシリル化反応の促進に用いうることが知られるようになるであろう、その他の触媒も存在することが分かるであろう。一般に、これらは、任意のその他のヒドロシリル化反応での触媒の選択に用いられるのと同じ既知基準を用いて選択され、触媒の価格、生成に好都合に平衡を促進するその能力、および望ましい生成物についてのその選択性を含むであろう。
【0069】
明らかなように、ヒドロシリル化反応を促進する任意の条件を用いることができる。一般に、これは、ヒドロシリル化触媒存在下で、上記のような少なくとも一つのケイ素反応体と、上記のような少なくとも一つの官能基化オレフィン反応体を接触させることを含む。好ましくは、反応を容易にするために、反応体を周辺温度より高い温度に、即ち約25℃より高く加熱する。より好ましくは、反応体を約50℃から約170℃の温度に、またはオレフィンの反応生成物への転化を得るために必要なように、加熱する。当業者らに既知であるように、もし反応が低すぎる温度で行われるならば、その後、反応はほとんど又は全く起こらないであろう。例えば、テトラメチルジシロキサンを、白金触媒存在下、85℃で48時間、2,2-ジメチル-4-ペンテナールと反応させる場合、ハイブリッド含有ジシロキサンへのオレフィンの転化または付加はほとんど全く起こらない。しかしながら、反応を125℃で行う場合、有意な転化が起こる。
【0070】
いくつかの好ましい反応方法では、官能基化オレフィン反応体を、官能基化オレフィン反応体内に存在する不飽和炭素官能基のモル数が、反応に用いられるケイ素反応体の全体量内に存在するシラン官能基のモル数より多いような量で用いる。本発明のその他の好ましい反応方法では、用いられる官能基化オレフィン反応体の量は、反応中に用いられるケイ素反応体の全体量に含まれるシラン官能基のモル数と比較して、等モル量の不飽和炭化水素官能基を提供する。
【0071】
いくつかの好ましい反応方法では、ヒドロシリル化触媒を溶解する、または懸濁する反応溶媒として供給できる量の官能基化オレフィン反応体を用いる。この量の官能基化オレフィン反応体を用いる場合、反応体およびヒドロシリル化触媒の混合物を加熱し、反応が進行するに伴って、小アリコートでケイ素反応体を加える。
【0072】
化学原理を広く認識することによって導かれるように、様々な反応体に共通な溶媒を用いることを含む、多数のその他の反応の取り決めを用いうることが明らかであろう。本発明の方法は、広範なヒドロシリル化条件下で行うことができる。本発明のいくつかの好ましい反応方法では、官能基化オレフィン反応体は、用いられるケイ素反応体内のシラン官能基の量と比較して1.1倍の化学量論的過剰量で存在し、ヘキサクロロ白金(IV)酸をヒドロシリル化触媒として用い、さらに、反応は、約50℃から約170℃までの温度で、官能基化オレフィン反応体とケイ素反応体を接触させることによって行われるであろう。
【0073】
本発明のいくつかの好ましい方法は、ヒドロシリル化促進条件下で、ヒドロシリル化触媒および少なくとも1つの官能基化オレフィン反応体を含む溶媒を含む反応混合物を接触させる工程、および、ヒドロシリル化反応を促進する温度で少なくとも1つのケイ素反応体を、等モル量のシラン官能基および不飽和炭化水素官能基を提供する量でそれに加える工程、を含む。
2. 新規のカルボ-ケイ素化合物
また、本発明は、上記の方法に従って製造したカルボ-ケイ素反応生成物を提供する。これらの生成物は、官能基化オレフィン反応体の不飽和炭素官能基(例えば上記構造IIIのそれら)への、ケイ素反応体のシラン官能基(例えば上記構造Iのそれら)の付加生成物を実質上含む。このように、本開発は、以下の構造Vの式:
構造V
【0074】
【化12】

【0075】
式中、aおよびbは0を含む整数であり、a+bが3以下であるように独立的に選択される;
Z、Q、A、n、R1、R2およびR3は上記の通りである:
を有する新規化合物を提供する。
【0076】
理論および本明細書中に記載の方法に基づき、化学的相容性理論によって導かれるように、本発明の化合物は、任意の次のZ置換基;(a)ハロゲン;(b)アルコキシ;(c)ケトキシミノ;(d)ジアルキルアミノ;(e)アセトアミド;(f)アルキルチオ;(g)N,N-ジアルキルアミノキシ;(h)ベンズアミド;(i)アシルオキシ;および(j)エノキシ置換基(表1の縦列に関連文字でそのそれぞれを表した)が、次のQ官能基:(1)エステル;(2)アミド;(3)エポキシ;(4)アミド;(5)アミノメチルベンジルアミン;(6)酸ハロゲン化物;(7)酸無水物;(8)メルカプト;(9)アクリレート;(10)メチルアクリルオキシ:(11)カルバミド;(12)ヒドロキシル;(13)α-ヒドロキシ酸;(14)β-ヒドロキシ酸;(15)フッ素置換アリールケトン;(16)ニトリル;(17)イミノ;(18)イソシネナート:(19)アルデヒド;(20)カルボン酸;(21)ウレイド;(22)フルオロフェノキシ;(23)アミノフェノキシフェニル;(24)シッフ塩基;(25)マレイド;(26)構造VIの官能基;(27)構造VIIの式の官能基;(28)構造VIIIの官能基;(29)構造IXの官能基;および、(30)構造Xの官能基(以下の表1の列に、関連番号でそのそれぞれを表す)と共に存在できるそれらであり、構造VI、VII、VIII、IXおよびXの官能基は、以下の構造を有する。
構造VI
【0077】
【化13】

【0078】
構造VII
【0079】
【化14】

【0080】
構造VIII(グリシドキシ)
【0081】
【化15】

【0082】
構造IX
【0083】
【化16】

【0084】
構造X
【0085】
【化17】

【0086】
また、これらの基のそれぞれの相容性は、分子中に存在する他の置換基に依存して変化するであろうが、一般に、表1は、示した官能基を含む化合物が、ヒドロシル化条件下で化学的に相容でないことにより、本発明の方法によって直接形成できない場合、(即ち、様々なこれらの官能基を含む列およびカラムの交差するボックス内に)Xで示している。これらの組み合わせいくつかは、化学的に相容なケイ素と官能基化オレフィン反応体から本発明の化合物を製造すること、および次の反応で官能基の型の一方または両方を誘導化することにより、間接的に製造できることも明らかであろう。
【0087】
【表1】

【0088】
さらに、上記の表1に示した相容性を有する加水分解可能置換基とQ官能基の任意のセットは、任意の上記R1官能基またはR2あるいはR3置換基を有する構造Vの式の化合物内にあって良いことが分かるであろう。
【0089】
好ましい実施態様では、本発明によるカルボ-シリコーン化合物には、例えば、式:
【0090】
【化18】

【0091】
を有する2,2-ジメチル-4-ペンタン酸-酢酸無水物-トリアセトキシ-シランが含まれる。
【実施例】
【0092】
以下の実施例は、本発明のヒドロシリル化方法およびカルボ-ケイ素生成物を示しているが、その範囲を限定するものではない。当業者らは、本明細書中に記載された任意の実施例または具体的実施態様を容易に変更して、最適な収率を得るように方法を最適化することができる。そのような変更は、本開示によって明らかになるため、本明細書中に特に記載されていなくても、本記述の一部分であり、また、本発明の精神および範囲内にあるであろう。
実施例1−6
実施例の方法は、外部熱源、還流冷却器、撹拌装置および滴下漏斗を備えた反応フラスコ内に、選択された官能基化オレフィン反応体のアリコートを入れることによって、実施される。このような充填反応フラスコは、窒素パージされ、不活性雰囲気および選択されたケイ素反応体を充填した滴下漏斗を保持している。反応は、不活性雰囲気下で保持され、0.025モルのヘキサクロロ白金(IV)酸を、イソプロパノール中の0.1M溶液としてオレフィン反応体に加える。反応フラスコを最初に約110℃に加熱する。初発温度に到達した後に、ケイ素反応体を連続攪拌しながら滴下する。反応温度を、連続加熱あるいはケイ素試薬の付加速度の調整または両者の組み合わせのいずれかにより、約100℃から約120℃の温度に維持する。全ケイ素反応体を加えた後、反応温度をさらに3時間攪拌しながら加熱を続けることによって維持する。反応期間の終わりに、残余官能基化オレフィン反応体およびカルボ-ケイ素生成物について、反応混合物を、公表された方法を用いるガスクロマトグラフィー分析(GC)によってアッセイすることによって、反応の終了を確認した。いくつかの反応では、170℃位の温度にさらに加熱することによって、初発収率または転化の増加を達成した。
【0093】
全例とも、形成された生成物を、必要に応じて減圧で、分別蒸留することによって単離し、単離した生成物を公開されている赤外分光法によって分析し、反応で形成された生成物を確認した。
【0094】
下記の方法に従って製造された反応体に加え、トリクロロシラン(純度99%)、ジメチルクロロシラン(純度99%)およびテトラメチルジシロキサン純度97%(ケイ素反応体)はAldrichから入手し、入手直後のものを使用した。その他の全試薬は、市販品から得られるACSグレードの試薬商品であった。
(a) 官能基化オレフィン反応体の製造
Brannock、the Journal of the American Chemical Society、第81巻(1959)、3379−3393頁に記載の方法を用いて、次のオレフィン反応体:2,2-ジメチル-4-ペンタノール;および2-アリル-2-エチル-4-ペンタナール:を製造した。
【0095】
2,2-ジメチル-4-ペンタノールの一部分を、反応容器内に、11.2gのアルデヒド、6.9gのヒドロキシルアミン塩酸塩(純度99%、Aldrich)、および75mlのN-メチルピロリドン(純度99%、Aldrich;M-PYROL(登録商標))を入れ、攪拌しながら温度約90℃まで加熱し、反応を開始することによって、対応する2,2-ジメチル-4-ペンテノニトリルに転化した。発熱が収まるまで反応混合物を攪拌し続け、その後、内容物を10倍容量の水の中に注いだ。有機層を分離し、分留を行って温度約146℃から約148℃の蒸留留分を集めることによって、ニトリルを単離した。
【0096】
2,2-ジメチル-4-アリルオキシブテナールを、アリルアルコールと臭化エチレンから、公表された方法で製造した。得られたアリル中間体を公表された方法(Subramanianら、Chemistry and Industry、第16巻(1978)731頁)に従ってイソブチルアルデヒドと反応させて、アリルオキシアルデヒドを得た。
【0097】
(b) カルボ-シランの製造
本発明のカルボ-シランは、本発明の方法を用いて、以下の表IIの列1から3に示された官能基化オレフィン反応体を、示したシランケイ素反応体と反応させることによって製造され、上記方法に従って生成物を得た。
【0098】
カルボ-シロキサンは、本発明の方法を用いて、表IIの列4に示した官能基化オレフィン反応体を、示したシロキサンケイ素反応体と反応させることによって製造され、示した生成物を得た。実施例4の生成物は上記方法に従って製造された。
【0099】
各々の実施例に於いて、表中に示した官能基化オレフィン反応体のモル%転化率を、上記のように、GCによっ定量した。
表II
【0100】
【表2】

【0101】
これらの実施例は、本発明の方法が、誘導体経由では提供できない置換基およびヒドロシリル化反応を実質上妨げる能力を有する置換基、を含む混合置換基を有するカルボ-ケイ素化合物を直接生成する簡単で高収率の経路を提供することを示している。
実施例7
実施例4で製造した生成物(1,1-ジメチル-5-(ジメチルクロロ-シリル)-ペンタノニトリル)の一部分をシロキサンに転化するため、次に以下の方法を行った。容器中に水/エタノール混合物(80:20 v/v)からなる溶媒175ml中に溶解した19.1gの水酸化カリウムを入れた。この溶液に、17gのニトリルを(約30分以上かけて)ゆっくり加え、その結果、乳白色のエマルジョンを得た。エマルジョンを約25時間還流させた。還流冷却器からのアンモニア蒸発がpH紙で検出できなくなったら、反応混合物を周辺温度まで冷却し、HCl水溶液で酸性にした。酸性化時に形成された上層を単離し、100mlアリコートのクロロホルムで抽出した。抽出物を合わせて、クロロホルムをロータリーエバポレーター内にストリップし、強粘液を残した。赤外分析を行い、得られた生成物が1,3-ビス[5-(2,2-ジメチル-ペンタン酸)]-1,1,3,3-テトラメチル-ジシロキサン(シアナイド官能基のカルボン酸官能基への付随酸化を伴うカルボ-シラン開始化合物のシロキサンダイマー)であることを確認した。
【0102】
この実施例で、本発明のカルボ-ケイ素化合物は、シロキサンオリゴマー形成の中間体としての用途を有しうることが示された。
実施例8−12
Brannock、the Journal of the American Chemical Society、第81巻(1959)、3379−3383頁に記載の方法を用いて、2,2-ジメチル-4-ペンタン酸を製造することができる。該酸を、公開された方法を用いて炭酸カリウム存在下で塩化チオニルと反応させると、相当する2,2-ジメチル-4-ペンテノイルクロリドが得られた。
【0103】
本発明のカルボ-シランは、上記の手順を用いる本発明の方法に従って、製造されるであろう。このように、実施例8から11に示した官能基化オレフィン反応体(下の表III)を表IIIに示したようなケイ素反応体と反応させると、上記の手順に従って、表IIIに示した生成物が形成されることが分かるであろう。
表III
【0104】
【表3】

【0105】
また、表IIIの実施例12に示したカルボ-シロキサンは、実施例12に示したシロキサンケイ素反応体と官能基化オレフィン反応体を以下の手順を用いて反応させることによって製造されることが分かるであろう。
【0106】
実施例12のシロキサン反応体、構造IXの平均的構造に相当する式を有するトリメチルシリルキャップを有するジメチルシロキシ/メチルシランシリコーン流体を、公開された方法を用いて製造できるであろう。
構造IX
【0107】
【化19】

【0108】
この手順によって形成されるであろう化合物を、本明細書中では、便宜上、ジシラン-10-マー-ジメチル-シロキサンと称する。
実施例12のカルボシロキサンは、上記の手順を用いて製造されるが、強粘液になると考えられるシリコン反応体を溶解するための溶媒(200mlトルエン)を含むように修正されるであろう。反応は、反応物のアリコートの赤外(IR)分析を用いて反応混合物の還流を定期的にモニターし、Si-H官能基が反応混合物内に検出できないようになるまで還流を続けることによって行われるであろう。
【0109】
前述の実施例8−12は、消費されたオレフィン反応体をベースにした収率で示された生成物を提供するであろうと予想され、反応に用いられたオレフィン反応体が炭化水素試薬の2位の第三炭素原子を置換したメチレン(CH2)基を有する場合に得られるであろう過剰のそれである。
【0110】
このように、本発明のほんの少しの特定の実施態様についてのみ記載したが、様々な変更、修正および改良は、当業者らによって容易に行われるであろう。そのような変更、修正および改良は、この開示によって明らかになるように、本明細書中で特に供述されることはないが、この記載の一部分であるつもりであり、また、本発明の精神および範囲内にあるつもりである。従って、前述の記載は、単に例のつもりであり、制限するものではない。本発明は、記載されたクレイムおよびそれと等価なものによってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基化(functionalized)カルボ-ケイ素(carbo-silicon)化合物を製造する方法であって、ヒドロシリル化(hydrosilation)触媒存在下、ヒドロシリル化促進条件下で:
a.少なくとも1つのシラン(Si-H)官能基を含むケイ素反応体および所望により少なくとも1つの加水分解可能な置換基;ならびに
b.(i)少なくとも1つの末端オレフィン官能基;
(ii)該末端オレフィン基に結合したアルキレンセグメント;および
(iii)該アルキレンセグメントに結合した第三炭素部分:
を含む官能基化オレフィン反応体であって、且つ、第二官能基および2つのアルキレン基を含み、2つの該アルキレン基が官能基化オレフィン反応体のヒドロシリル化中の第二官能基の反応性を減少させる、該官能基化オレフィン反応体:
を接触させることを含む、該方法。
【請求項2】
官能基化カルボ-ケイ素化合物を製造する方法であって、ヒドロシリル化触媒存在下、ヒドロシリル化促進条件下で、構造Iのケイ素反応体を構造IIIの不飽和オレフィン反応体を接触させることを含み、構造Iの化合物は次の式:
構造I
【化1】

式中、aは1、2または3であり、bは0、1、2または3 であり、a+bが4以下であるように選択され、
Zは、加水分解可能置換基であり、
1は、(i)カルボシラン、シロキサン、カルボシロキサンからなる群より選択されるケイ素ベース部分およびその重合体(polymeric cognitor)であり、所望により1以上の該ケイ素原子上を1以上の加水分解可能置換基で置換されている;ならびに、(ii)飽和または不飽和、線状、分枝状または環状、脂肪族または芳香族の炭化水素部分であって、所望により、アルキル、アリール、ヒドロキシル、アルコキシおよびハロゲン部分からなる群より個々の例で独立的に選択される1以上の該基で該炭化水素部分の任意の炭素上を置換されている:
からなる群より独立的に選択され、複数のR1置換基はシクロシロキサン構造の一部分であって良い:
を有し、構造IIIの化合物は、次の式:
構造III
【化2】

式中、nは0または1であり;
Qは、実質上ヒドロシリル化反応を妨げる潜在能力を有することを特徴とする第二の官能基であり;
Aは、-[CH2]c-S-[CH2]d、-[CH2]c-O-[CH2]d、または-[CH2]c-N(R4)-[CH2]dから選択され、上式中、cは0を含む整数であり、dは少なくとも1であり、R4は3未満の炭素原子を有するアルキル部分であり;
2は、飽和または不飽和、線状、分枝状または環状、脂肪族または芳香族の炭化水素部分および構造IVの構造部分からなる群から選択され;さらに、
構造IV
【化3】

3およびR4の一方のみが不飽和部分であるように選択される限りにおいて、
は、不飽和、線状、分枝状または環状、脂肪族または芳香族、炭化水素部から選択される:
を有する、該製造方法。
【請求項3】
Zが、アルコキシ、ハロゲン、ヒドリド、ケトキシミノ、ジアルキルアミノ、アセトアミド、アルキルチオ,N,N-ジアルキルアミノキシ、ベンズアミド、アクリルオキシおよびエノキシからなる群より選択される、請求項2の方法。
【請求項4】
Zが、クロリド、メトキシおよびエトキシからなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
Qが、アルデヒド、エステル、アミド、エポキシド、アミノ、アミノメチルベンジルアミン、酸ハロゲン化物、線状および環状酸無水物、メルカプト、アクリレート、メチルアクリレート、カルバミド、ヒドロキシル、α-およびβ-ヒドロキシ酸、フッ素置換アリールケトン、ニトリル、イミノ、イソシアネート、カルボン酸、ウレイド、フルオロフェノキシ、アミノフェノキシフェニル、シッフ塩基、マレイドおよび以下の構造:
【化4】

式中、RはC1からC6の分枝鎖、直鎖または環状のアリキルまたはアリールである:
を有する官能基からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項6】
Qが、アルデヒド、ニトリル、アミノおよびイミノからなる群より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
3がフェニルである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
該ケイ素反応体がクロロ官能基化モノシランである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ケイ素反応体化合物がトリクロロシラン、メチルジクロロシランおよびジメチルクロロシランからなる群より選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
官能基化オレフィン反応体が2,2-ジメチル-4-ペンテナールである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ケイ素反応体が、8のジメチルシロキサン構造繰り返し単位、2のメチルシロキサン構造繰り返し単位および2のトリメチルシラン末端キャップ部分を含む線状部分を含む平均構造を有するシロキサンである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
シリコーン反応体がテトラメチルジシロキサンであり、官能基化オレフィン反応体が2,2-ジメチル-4-ペンテナールである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
シリコーン反応体がテトラメチルジシロキサンであり、官能基化オレフィン反応体が2,2-ジメチル-4-ペントニトリルである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
該ケイ素反応体がトリメチオキシシランおよびトリエチオキシシランからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
請求項1記載の方法に従って製造したカルボ-ケイ素化合物。
【請求項16】
カルボ-シランを含む、請求項2記載のカルボ-ケイ素化合物。
【請求項17】
カルボ-シロキサンを含む、請求項2記載のカルボ-ケイ素化合物。
【請求項18】
構造V:
構造V
【化5】

式中、aおよびbは、0を含む整数であり、a+bが3以下であるように独立的に選択され;
Zは、加水分解可能な置換基であり;
Qは、ヒドロシリル化反応を実質上妨げる潜在能力を有することを特徴とする官能基であり;
Aは、-[CH2]c-S-[CH2]d、-[CH2]c-O-[CH2]dまたは-[CH2]c-N(R4)-[CH2]dであり、式中、cは0を含む整数であり、dは少なくとも1であり、R4は3未満の炭素原子を有するアルキル部分であり;
nは、0または1であり;
1は、(i)カルボシラン、シロキサン、カルボシロキサンおよびその重合体からなる群より選択されたケイ素ベース部分であって、所望によりその1以上のケイ素原子上が1以上の加水分解可能官能基で置換されている;ならびに(ii)飽和または不飽和、線状、分枝状または環状、脂肪族または芳香族の炭化水素部分であって、所望によりその任意の炭素上を、アルキル、アリール、ヒドロキシル、アルコキシおよびハロゲン部分からなる群より個々の事例について独立的に選択される1以上のメンバーで置換されている;からなる群より選択され、その中で複数のR1置換基は、シクロシロキサン構造の一部分であって良く;
2は、飽和または不飽和、線状、分枝状または環状、脂肪族または芳香族の炭化水素部分および構造IV;
構造IV
【化6】

の構造部分からなる群より選択され;
さらに、R3およびR4の一方のみが不飽和部であるように選択される限りにおいて、
3は、飽和または不飽和、線状、分枝状または環状、脂肪族または芳香族、の炭化水素部分からなる群より選択される:
の構造を有する化合物。
【請求項19】
Zが、アルコキシ、ハロゲン、ヒドリド、ケトキシミノ、ジアルキルアミノ、アセトアミド、アルキルチオ、N,N-ジアルキルアミノキシ、ベンズアミド、アシルオキシおよびエノキシからなる群より選択される、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
Zが、クロリド、メトキシおよびエトキシからなる群より選択される、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
Qが、アルデヒド、エステル、アミド、エポキシド、アミノ、アミノメチルベンジルアミン、酸ハロゲン化物、線状および環状酸無水物、メルカプト、アクリレート、メチルアクリレート、カルバミド、ヒドロキシル、α-およびβ-ヒドロキシ酸、フッ素置換アリールケトン、ニトリル、イミノ、イソシアネート、カルボン酸、ウレイド、フルオロフェノキシ、アミノフェノキシフェニル、シッフ塩基、マレイド、および以下の構造:
【化7】

式中、Rは、C1からC6の分枝鎖、直鎖あるいは環状のアルキルまたはアリールである:
を有する官能基からなる群より選択される、請求項18記載の化合物。
【請求項22】
Qが、アルデヒド、カルボン酸、ウレイド、フルオロフェノキシ、アミノフェノキシフェニル、シッフ塩基、マレイド、および以下の構造
【化8】

を有する官能基からなる群より選択される、請求項19記載の化合物。
【請求項23】
Qが、アルデヒド、ニトリル、アミノおよびイミノからなる群より選択される、請求項19記載の化合物。
【請求項24】
3がフェニルである、請求項18記載の化合物。
【請求項25】
1,2-ビス(2,2-ジメチル-4-ペンテナール)-テトラメチルジシロキサン、
1,(2,2-ジメチル-4-ペンテナール)-テトラメチルジシロキサン、
1,2-ビス(2,2-ジメチル-4-ペンテニトリル)-テトラメチルジシロキサン、および
1,(2,2-ジメチル-4-ペンテニトリル)-テトラメチルジシロキサン、
からなる群より選択される、請求項18記載の化合物。
【請求項26】
構造:
【化9】

を有する、請求項18記載の化合物。
【請求項27】
官能基化カルボ-ケイ素化合物を製造する方法であって、
(a)アルデヒド部を含む官能基化オレフィン反応体を製造する工程;および
(b)ヒドロシリル化反応を通して、該オレフィン反応体を該カルボ-ケイ素化合物に結びつける工程:
を含む、該化合物の製造方法。

【公表番号】特表2008−505185(P2008−505185A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520412(P2007−520412)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/023597
【国際公開番号】WO2006/014367
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】