説明

定着ベルト用基材、その製造方法、定着ベルト、定着装置、及び、画像形成装置

【課題】低価格でありながら画質への悪影響のない逆クラウン形状のベルト用基材、そのようなベルト用基材の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリイミドまたはポリイミドアミドにより構成される矩形のシートの両端を互いに重ね合わせて無端状に接合してなる定着ベルト用基材において、前記矩形のシートの両端の互いに重ね合わせられた2つの面が、それぞれの先端に向かって薄くなるように前記シートの互いに異なる面が傾斜形状に加工されてなる傾斜面であり、該定着ベルト用基材の中央部での前記重ねあわせの幅が、該定着ベルト用基材の端部での前記重ねあわせの幅に比べ広く設けられ、かつ、前記定着ベルト用基材の全体形状が逆クラウン形状にされている定着ベルト用基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に装着される帯電装置に関する。詳しくは、帯電部材のクリーニングに関するものである。また、本発明はかかる現像装置を有するプロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いる画像形成装置、例えば、レーザプリンタは、回転する感光体ドラムを有し、この感光体ドラムの感光層を一様に帯電させた後にレーザ走査ユニットからのレーザビームによって露光して静電潜像をトナーによって現像してトナー像とし、そのトナー像を転写紙上に転写させ、更にその転写紙を熱定着装置に通過させてトナー像を熱定着する様に構成されている。
【0003】
カラートナー像を熱定着する方法として、図1に示すような、定着ベルト1に定着ローラ5を装着し、定着ベルト1を挟んで定着ローラ5と加圧ローラ6を圧着し、その間(ニップ)を転写紙8が通紙して転写紙上のトナーを定着させる方法が現在一般的となっている。また、定着ベルトの一端に加熱ローラ2を装着し、加熱ローラ2には中空部に回転中心線に沿ってハロゲンランプなどのヒータ3を配置し、その輻射熱によって加熱ローラ2を内側から加熱し、その加熱ローラを介して、定着ベルト1へ画像の定着に必要な熱を伝えるようになっている。
【0004】
符号4は加熱ローラの表面温度を測定し、その温度によってハロゲンランプを点灯させるサーミスタであり、定着ベルト1を回転させた際の撓みを抑える為のテンションローラ7が装着してある。
【0005】
また、定着ベルト1はポリイミドなどの耐熱性樹脂からなるベルト用基材10の外周面にトナーの粘着を防止するためのシリコーンゴムとする弾性層11を設け、その表面にフッ素樹脂層でなる粘着防止層12を設けた定着ベルト1が使用されている。
【0006】
しかし、カラー機の高速化、紙種の多様化に伴って定着時の搬送しわが発生しやすくなっている。
【0007】
このようなしわを解消する手段として、定着ローラ及び加圧ローラにローラ径を中央部より両端部大きくした逆クラウン形状(鼓形状)を設ける方式が採用されている。
【0008】
また、定着ベルトを安価に製造する方法として、耐熱性フィルムの両端部を紫外線レーザにてハーフエッチング加工して段差部を形成し、この段差部同士を耐熱性接着剤にて接合し、無限ベルト状とする技術が特開平5−185519号公報に開示されている。
【0009】
ここで、最近のカラーレーザプリンターの普及により、高品質化と同時に、製造コストをより安価にすることが求められており、これに対応するために構成の簡略化、部品点数の減少、コストの削減が要求されている。
【0010】
上述の熱定着装置においては、定着ベルトが高額部品となっており、その製造コストをより低廉とすることが緊急の課題となっている。
【0011】
定着ベルトに用いるベルト基体は表層に離型層として、フッ素樹脂層を設けるため、フッ素樹脂の溶融温度320〜360℃での耐熱性が求められ、そのような耐熱性樹脂として、ポリイミド樹脂やポリイミドアミド樹脂が好適に用いられる。
【0012】
ここで、従来のベルト基体の製法は金属製の円筒状金型の内面にポリイミド前駆体液を塗布し、円筒状金型を回転、外周より加熱させ、乾燥させた後、300℃にて数時間加熱させ、硬化して成膜し、金型より取り出し得ている。この際、金型より成膜したポリイミド基体を抜けやすくする為、円筒状金型の内面をより、細かく均一に磨きを行わなければならない。
【0013】
また、ディスペンサー塗布方式で逆クラウン形状の型材を用いることで上述の効果が得られる逆クラウン形状のベルト用基材を得ることができた(特開2000−94461公報:特許文献1)。
【0014】
一方、遠心成形法やディスペンサー塗布方式におけるベルト基体の製造コストを抑える手段として、耐熱性フィルムの両端部を紫外線レーザにてハーフエッチング加工して段差部を形成し、この段差部同士を耐熱性接着剤にて接合し、管状にする事が特開平5−185519号公報(特許文献2)に開示されている。
【0015】
しかしながら、このようなフィルムを用いる低コストな製造方法で、優れた逆クラウン形状のベルト用基材を得ることができなかった。
【特許文献1】特開2000−94461公報
【特許文献2】特開平5−185519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、低価格でありながら画質への悪影響のない逆クラウン形状のベルト用基材、そのようなベルト用基材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の定着ベルト用基材は上記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、 ポリイミドまたはポリイミドアミドにより構成される矩形のシートの両端を互いに重ね合わせて無端状に接合してなる定着ベルト用基材において、(イ)前記矩形のシートの両端の互いに重ね合わせられた2つの面が、それぞれの先端に向かって薄くなるように前記シートの互いに異なる面が傾斜形状に加工されてなる傾斜面であり、(ロ)該定着ベルト用基材の中央部での前記重ねあわせの幅が、該定着ベルト用基材の端部での前記重ねあわせの幅に比べ広く設けられ、かつ、(ハ)前記定着ベルト用基材の全体形状が逆クラウン形状にされていることを特徴とする定着ベルト用基材である。
【0018】
本発明の定着ベルト用基材の製造方法は、請求項2に記載の通り、ポリイミドまたはポリイミドアミドにより構成される矩形のシートの両端を重ね合わせて無端状に接合して定着ベルト用基材とする定着ベルト用基材の製造方法において、前記定着ベルト用基材の中央部での前記重ねあわせの幅が前記定着ベルト用基材の端部での前記重ねあわせの幅に比べ広くなるように、それぞれ先端に向かって薄くなるように前記シートの互いに異なる面を傾斜形状に加工された両端の傾斜面同士を重ね合わせて接合することを特徴とする定着ベルト用基材の製造方法である。
【0019】
また、本発明の定着ベルト用基材の製造方法は、請求項3に記載の通り、請求項2に記載の定着ベルト用基材の製造方法において、フライス盤による切削加工によって、前記矩形のシートの両端の傾斜形状への加工を行うことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の定着ベルト用基材の製造方法は、請求項4に記載の通り、請求項2または請求項4に記載の定着ベルト用基材の製造方法において、前記接合を、前記矩形のシートを逆クラウン形状のローラ状母型に巻き付けた状態でおこなうことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の定着ベルト用基材の製造方法は、請求項5に記載の通り、請求項4に記載の定着ベルト用基材の製造方法において、前記矩形のシートを前記逆クラウン形状のローラ状母型に巻き付ける際に、クラウン形状のローラによって前記矩形のシートを前記逆クラウン形状のローラ状母型に押しつけながら巻き付けることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の定着ベルト用基材の製造方法は、請求項6に記載の通り、請求項4または請求項5に記載の定着ベルト用基材の製造方法において、前記接合を、前記重ね合わせ部分に前記逆クラウン形状のローラ状母型の側面に対応する凹面を有する雌型を圧接させながら行うことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の定着ベルトは、請求項7に記載の通り、請求項1に記載の定着ベルト用基材から構成されることを特徴とする定着ベルトである。
【0024】
また、本発明の定着装置は請求項8に記載のように、請求項7に記載の定着ベルトを備え、かつ、該定着ベルトを縣架する定着ローラが逆クラウン形状であることを特徴とする定着装置である。
【0025】
また、本発明の画像形成装置は、請求項9に記載の通り、請求項8に記載の定着装置を備えていることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の定着ベルト用基材によれば、定着ベルト用基材の中央部での重ねあわせの幅が、定着ベルト用基材の端部での重ねあわせの幅に比べ広くなっており、定着ベルト用基材の全体形状が逆クラウン形状にされているために、加工が容易な矩形のシートを用いながらも、逆クラウン形状の定着ベルト用基材が得られ、その製造コストも低廉である。
【0027】
さらに前記矩形のシートの両端の互いに重ね合わせられた2つの面が、それぞれの先端に向かって薄くなるように前記シートの互いに異なる面が傾斜形状に加工されてなる傾斜面であるために、重ね合わせ部が段とならず、かつその部分の厚さが他の部分と大きく異ならずに接合することができるために、定着ベルトとしたときの重ね合わせ部による画像への影響が極めて小さいものとすることができる。
【0028】
また、本発明の定着ベルト用基材の製造方法によれば、ポリイミドまたはポリイミドアミドにより構成される矩形のシートの両端を重ね合わせて無端状に接合して定着ベルト用基材とする定着ベルト用基材の製造方法において、前記定着ベルト用基材の中央部での前記重ねあわせの幅が前記定着ベルト用基材の端部での前記重ねあわせの幅に比べ広くなるように、それぞれ先端に向かって薄くなるように前記シートの互いに異なる面を傾斜形状に加工された両端の傾斜面同士を重ね合わせて接合するので、裁断が容易な矩形のシートを用いながらも、逆クラウン形状の定着ベルト用基材が得られ、そのときのコストも低廉となるとともに、かつ、重ね合わせ部の厚さが他の部分と大きく異ならずに接合することができ、画像への悪影響を未然に防止することができる。
【0029】
また、請求項3に記載の定着ベルト用基材の製造方法によれば、フライス盤による切削加工によって、前記矩形のシートの両端の傾斜形状への加工を行うために、高価なレーザ設備が不要となることができるために、定着ベルトとしたときの重ね合わせ部による画像への影響が極めて小さいものとすることができる。
【0030】
また、請求項4に記載の定着ベルト用基材の製造方法によれば、前記接合を、前記矩形のシートを逆クラウン形状のローラ状母型に巻き付けた状態でおこなうために、容易に、生産性よく、かつ、精度良く定着ベルト用基材を得ることができる。
【0031】
また、請求項5に記載の定着ベルト用基材の製造方法によれば、前記矩形のシートを前記逆クラウン形状のローラ状母型に巻き付ける際に、クラウン形状のローラによって前記矩形のシートを前記逆クラウン形状のローラ状母型に押しつけながら巻き付けるために、簡単に、かつ、精度良く、巻き付けることができる。
【0032】
また、請求項6に記載の定着ベルト用基材の製造方法によれば、前記接合を、前記重ね合わせ部分に前記逆クラウン形状のローラ状母型の側面に対応する凹面を有する雌型を圧接させながら行うために、非常に容易に、生産性良く、かつ、確実な接合が可能となる。
【0033】
また、請求項7に記載の定着ベルトによれば、請求項1または請求項2に記載の定着ベルト用基材から構成されるために、加工が容易な矩形のシートを用いながらも、逆クラウン形状の定着ベルトとすることができ、その製造コストも低廉となる。
【0034】
また、請求項8に記載の定着装置によれば、前記記載の定着ベルトを備え、かつ、該定着ベルトを縣架する定着ローラが逆クラウン形状であるために、カラー機の高速化や、紙種の多様化によっても定着時の搬送シワが起こりにくく、高品質の画像を常に得ることができる。
【0035】
また、請求項9に記載の画像形成装置によれば、前記記載の定着装置を備えているために、カラー機の高速化や、紙種の多様化によっても定着時の搬送シワが起こりにくく、高品質の画像を常に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は上述の通り、ポリイミドまたはポリイミドアミドにより構成される矩形のシートの両端を互いに重ね合わせて無端状に接合してなる定着ベルト用基材において、前記矩形のシートの両端の互いに重ね合わせられた2つの面が、それぞれの先端に向かって薄くなるように前記シートの互いに異なる面が傾斜形状に加工されてなる傾斜面であり、該定着ベルト用基材の中央部での前記重ねあわせの幅が、該定着ベルト用基材の端部での前記重ねあわせの幅に比べ広く設けられ、かつ、前記定着ベルト用基材の全体形状が逆クラウン形状にされていることを特徴とする定着ベルト用基材である。
【0037】
原料のシートとしては、ポリイミドまたはポリイミドアミドからなることが必要である。これら以外のものからなる場合、表層に離型層として、フッ素樹脂層を設ける際の、フッ素樹脂の溶融温度320〜360℃での温度処理に対して充分な体勢が得られない。
【0038】
これら樹脂からなるシートの厚さは50μm以上150μm以下であることが好ましい。50μm未満であると強度や耐久性が不足する場合があり、一方、厚さが150μm超であると、基材の腰が強くなって駆動回転に斑が生じやすくなり、かつ、コスト高となる。
【0039】
本発明ではこのようなシートを矩形に裁断する(図2にロール状のポリイミドシートから所定の大きさのベルト用シートαを裁断する様子をモデル的に表す。図中点線は裁断線)。このため、裁断加工が容易であり、また、シートの有効利用が可能となる。
【0040】
このような矩形のシートの両端を重ね合わせて無端状に接合するが、重ね合わせ部分が厚くなって、その結果、最終的に画像形成装置の定着ベルトとして用いた場合に得られる画像に影響を与えるおそれがある。このときシート全体の厚さを薄くすることでも対応ができるが、その場合、耐久性が損なわれるおそれがある。
【0041】
このとき、矩形のシートの重ね合わせた両端がそれぞれ先端に向かって薄くなっていると、重ね合わせによる厚さの増加を抑制することが可能となる。
【0042】
ここで、両端部を紫外線レーザにてハーフエッチング加工して段差部を形成し、この段差部同士を耐熱性接着剤にて接合し、無限ベルト状とする特開平5−185519号公報に係る技術を逆クラウン状のベルト用基材を形成する分野に応用した場合、次のような問題が生じる。
【0043】
すなわち、図8(a)のように、矩形のシートα”の両端の互いに異なる面をエッチングし、その後、この両端のエッチング面同士を接合するが、逆クラウン形状になるように接合すると、中央部では図8(b)に示したように段部同士の隙間(図中L1)がほとんどなく接合されるが、端部では図8(c)に示したように大きな隙間(図中L2)が形成されてしまい、この部分で強度的に弱くなり。図8(d)及びその部分拡大図に示したように屈曲部ができて、その結果、形成される画像に悪影響が及ぶおそれがある。
【0044】
しかし、矩形のシートの重ね合わせた両端がそれぞれ先端に向かって薄くなっていると、このような極端の厚さの減少も防止できる。これにより本発明では、矩形の原料シートを用いるのにもかかわらず、逆クラウン形状としても接合部分の厚さの変化が少なくて済むために、最終的に良好な画像を得ることができる。
【0045】
ここでこのように矩形のシートの重ね合わせた両端がそれぞれ先端に向かって薄くなっているように加工する方法について説明する。
【0046】
シートα(上面図を図3(a)に、両端部α2付近の断面図を図3(b)に示す)の両端α2の一方をフライス盤のエンドミル211の軸方向に対して角度θの斜面を有するシート固定台金210に両面粘着テープなどを用いて貼り合わせ、フライス盤を用いて先端に向かって薄くなるように加工する。両端α2のうち、他方の端を加工するときには、上記一方α2とは異なる側の面を加工(図3(c)のモデル断面図参照)し、両端α2をモデル断面図(図3(d))と示したように、矩形のシートαの重ね合わせた両端αがそれぞれ先端に向かって薄くなるようにする。
【0047】
このようにフライス盤を用いることにより、レーザなどの高価な設備が不要となり、その結果、設備コストを低廉とすることができる。
【0048】
次いで、このように両端部をそれぞれ先端に向かって薄くなるようにしたシートαを接合する。その際には図3(e)(モデル断面図)及び図3(f)(モデル上面図)に示したように両端部α2の一方(両方でも良い)に耐熱性接着剤βを接合に適した量となるよう塗布する。
【0049】
耐熱性接着剤βとしては、フッ素樹脂の溶融温度320〜360℃に対して耐熱性を有し、かつ、ポリイミドまたはポリイミドアミドを接着できるものであればよいが、このようなものとしてシリコーン系の接着剤等が挙げられる。
【0050】
接合は、定着ベルト用基材の中央部での重ねあわせの幅が、定着ベルト用基材の端部での重ねあわせの幅に比べ広く、定着ベルト用基材の全体形状が逆クラウン形状となるように接合するが、このとき、接合を逆クラウン形状のローラ状母型に巻き付けた状態でおこなうと容易にかつ精度良く行うことができる。
【0051】
ここで、効率及び精度よく、接合するために図4(a)に示すジグγのようなジグを用いることができる。
【0052】
ジグγには逆クラウン形状のローラ状母型γ1が設けられている。逆クラウン形状のローラ状母型は中央部、すなわち最小径部で2つに分割可能となっており、両端からジグベースγ2によって支えられている。
【0053】
このローラ状母型γ1の側面に矩形のシートαを巻き付ける。このとき、図4(a)及び図4(b)にモデル的に示すようにクラウン形状のガイドローラγ3を用いて、このガイドローラγ3によって矩形のシートαを逆クラウン形状のローラ状母型γ1に押しつけながら巻き付けると、より簡単に、かつ、精度良く巻き付けることができる。ここで、クラウン形状のガイドローラγ3の形状は、逆クラウン形状のローラ状母型γ1の端部直径と中央部直径との差より、端部直径と中央部直径との差が等しいかより大きいクラウン形状となっていることが、得られる基材の形状精度が高くなるので好ましい。
【0054】
図4(c)にモデル的示すように逆クラウン形状のローラ状母型γ1に矩形のシートαを巻き付け終わったら、クラウン形状のガイドローラγ3を除去する。このとき、この例では矩形のシートαの重ね合わせ部分はクラウン形状のローラγ3の最も上側になるように巻き付けた。
【0055】
次いで接合を行う。ジグγの逆クラウン形状のローラ状母型γ1の上方に設けられた、逆クラウン形状のローラ状母型γ1の側面に対応する凹面を有する雌型γ4を矩形のシートαの重ね合わせ部に接触させ(図4(d)参照)、次いでねじ部を有する加圧ハンドルγ5によって、矩形のシートαの重ね合わせ部分に逆クラウン形状のローラ状母型に対応する凹面を有する雌型(加圧板)を圧接させる。
【0056】
このように矩形のシートαがセットされたジグγを図5にモデル的に示すように加熱炉δに入れて、接着剤βによる接着に適した温度に加熱することにより逆クラウン形状となった無端ベルト状に接合させる。
【0057】
接合完了後に加熱炉δから取り出し、凹面を有する雌型γ4を圧接機構γ5を解除させることにより離型させ、ついで逆クラウン形状のローラ状母型γ1をその最小径部で2つに分割させて(図6参照)、本発明にかかる定着ベルト用基材α’を得る。
【0058】
このようにして得られた本発明にかかる定着ベルト用基材α’を図7(a)(斜視図)及び図7(b)(重ね合わせ部が正面となる正面図)に示す。また、中央部の重ね合わせ部分のモデル断面図を図7(b)に、端部での前記重ねあわせ部分のモデル断面図を図7(c)に、それぞれ示す。
【0059】
これらによって示されるように、定着ベルト用基材α’は、その中央部での重ねあわせの幅W1が、定着ベルト用基材α’の端部での重ねあわせの幅W2に比べ広くなっており、その全体形状が逆クラウン形状にされている。
【0060】
このような定着ベルト用基材α’は図1(b)のベルト用基材10として、その外周面に、一般的な定着ベルト同様に、図1(b)に示すようにトナーの粘着を防止するためのシリコーンゴムからなる弾性層11を設け、さらにその表面にフッ素樹脂層でなる粘着防止層12を設けて定着ベルト1とし、図1(a)に示すように定着装置に組み込む。このときの定着ローラ5を逆クラウン形状とすることにより、カラー機の高速化、紙種の多様化に伴って発生しやすくなる定着時の搬送しわを効果的に防止することができ、同時に、定着ベルトの偏りも防止できる。
【0061】
このときの定着ローラの逆クラウン量は、定着ベルトの逆クラウン量とおなじか、定着ベルトの逆クラウン量よりも大きくすることが好ましい。
【実施例】
【0062】
<実施例1>
厚み75μmからなるポリイミドシートを、最終的に外周寸法が70mmで、かつ、全長330mmの定着ベルト基体が形成されるように矩形にカットした後、図2(b)に示すようなフライス盤のエンドミルの軸方向に対して角度θ=0.3°の斜面を有するシート固定台金を用いて両端を汎用のフライス盤を用いてエンドミルで、先端厚みが20μmで加工幅5mmで、両端がそれぞれ先端に向かって薄くなるように切削加工を行った。
【0063】
次に切削加工を行った傾斜面の一方にシリコーン系接着剤(GE東芝シリコーン社製TSE387)を塗布し、上記ジグγを用いて図4(a)〜図4(d)に示す逆クラウン形状のローラ状母型(中央部の外径:69.15mm、最端部の外径:
69.35mm)に巻き付け、両端の切削加工部を重ね合わせて圧接保持し、図5に示したように加熱炉内の250℃の雰囲気で30分間加熱処理する。放冷後、図6に示すように逆クラウン形状のローラ状母型γ1から抜き取って、本発明に係るポリイミドからなる逆クラウン状の定着ベルト基体Aを得た。
【0064】
この定着ベルト用基材Aにおける中央部の重ね合わせでの突き合せで隙間(L1)(図7(b)参照)を0mmとした場合、両端部で重ね合わせを行うと、隙間(L2)(図7(c)参照)は0.63mmとなり、その中央部での重ねあわせの幅(W1)は5.0mmで、その端部での重ねあわせの幅(W2)の4.37mmに比べ広いものとなっていた。
【0065】
次に定着ベルト基体Aの表面に、シリコーンゴム用プライマをスプレーガンにて吹き付け、次いで、液状のシリコーンゴムをやはりスプレーガンにて最終厚さが200μmとなるように吹き付けた。その後、150℃の雰囲気で30分間熱処理をした後、二次加硫を200℃の雰囲気内で4時間加熱することによりおこなって、シリコーンゴム層を形成した。
【0066】
更に、このシリコーンゴム層の表面にフッ素樹脂用プライマ処理をおこなったのち、その表面にフッ素樹脂塗料を吹き付け、340℃の雰囲気で30分間の加熱処理を行って、本発明に係る定着ベルトA1(両端部内径:φ69.4mm、中央部内径:φ69.2mm、逆クラウン量0.2mm、ベルト全長330mm、このとき定着ベルトの周長は両端部で224.91mm、中央部では224.28mmとなり、その差は0.63mmであった)を得た。
【0067】
熱定着装置の構成部品として、この定着ベルトA1を図1にモデル的示した定着装置にセットした。
【0068】
この定着装置の定着ローラは鉄からなる胴部外径が30mm、胴部長が320mmの芯金に、シリコーンゴム弾性層が、端部で10mm厚、中央部で9.9mmの厚さで、逆クラウン量が0.2mmとなるよう逆クラウン状に形成されている。
【0069】
一方、加熱ローラは胴部外径が30mmで胴部長が322mmのアルミ合金からなる芯金表面にフッ素樹脂が厚さ20μmになるよう被覆されているものを用いた。
【0070】
また、定着ベルト1を介して定着ローラ1に圧接する加圧ローラは、その胴部両端の外径が46.0mm、中央部の外径が45.8mmで逆クラウン量が0.2mmで、胴部長が320mmのアルミ合金製芯金上に、厚さが2mmのシリコーンゴム層を介して厚さが20μmのフッ素樹脂製チューブにより被覆されている。
【0071】
上記の工程にて製作した定着ベルトA1と逆クラウン状の定着ロールとを有する定着装置を高速フルカラーコピー機(リコー製 Imagio Neo C600:コピー速度A4横45枚/分)に装着し、転写紙に再生紙(NBSリコー製マイリサイクルペーパー100W)にマゼンダ、イエロー、シアンの3色からなる赤系配色の全域画像を両面印刷で連続20枚を行い、定着後のしわの発生数及び光沢むらの有無を調べた。
【0072】
また、上記定着ベルトA1を組み込んだ、逆クラウン量が0.1mmとなった定着ローラを有する定着装置を上記同様に評価を行った。
【0073】
<実施例2>
実施例1と同様に、ただし定着ベルトの逆クラウン量が0.1mmとなるようにして得た定着ベルトB1を得て、上記同様に、印刷評価を行った。また、逆クラウン量が0mm、すなわち、円柱形の定着ローラを有する定着装置に定着ベルトB1を組み込んで上記同様に評価を行った。
【0074】
このときの定着ベルト用基材のB1の中央部での重ねあわせの幅は5.0mmで、その端部での重ねあわせの幅の4.69mmに比べ、広いものとなっていた。
【0075】
<比較例>
内径が70mmの円筒状の金型をその円筒の軸を中心に45rpmで回転させつつ、この内面にポリアミド酸溶液中に導電性カーボンを分散させた塗布液を塗布したのち、金型の回転を400rpmまで上げ、次いで100℃で30分加熱した後、300℃の雰囲気中で180分加熱処理を行い、冷却後、金型内面より成形されたポリイミドベルトを取り出し、この表面にシリコーン層を厚さ200μmとなるよう形成し、次いでフッ素樹脂層を厚さが20μmとなるように形成して定着ベルトC1を得た。
【0076】
この定着ベルトC1を上記同様の定着装置、ただし定着ローラ形状は円筒状であって逆クラウン形状となっていないもの、にセットした後、印刷評価を行った。ここで、しわの発生は極めて厳密に評価し、後端部に生じやすい軽微なしわについても厳しくチェックした。
【0077】
これら結果を表1に併せて示した。なお、表1中、総合評価としては、20枚中1枚もしわの発生もなく、かつ、光沢むらが生じなかった場合を充分であるとして”◎”、20枚中1枚もしわの発生もなく、かつ、許容できる程度の光沢むらが生じた場合を充分であるとして”○”、しわの発生があった場合には不充分であるとして”×”として評価した。
【0078】
【表1】

【0079】
表1により明らかなように、本発明に係る定着ベルトA1及びB1を逆クラウン形状の定着ローラと共に用いれば、転写紙のしわ発生がなく、かつ、画像の光沢むら発生を抑えることができる。一方、定着ローラを逆クラウン形状としても逆クラウン形状を有しない定着ベルトを用いた場合には充分な効果が得られないことも判る。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】定着装置の構造を示すモデル図である。
【図2】シートからの切り出し方法をモデル的に示す図である。
【図3】定着ベルト用基材の製作方法を示すモデル図である。(a)原料シート上面図である。(b)端部付近の部分モデル断面図である。(c)端部の切削方法を示すモデル図である。(d)それぞれ先端に向かって薄くなるように加工された状態を示す部分モデル断面図である。(e)一方の切削面に接着剤が塗布された状態を示す部分モデル断面図である。(f)一方の切削面に接着剤が塗布された状態を示すモデル上面図である。
【図4】ジグγを用いる作業を示すモデル図である。(a)逆クラウン形状のローラ状母型γ1に矩形のシートαを巻き付ける作業状態を示す図(その1)である。(b)逆クラウン形状のローラ状母型γ1に矩形のシートαを巻き付ける作業状態を示す図(その2)である。(c)逆クラウン形状のローラ状母型γ1に矩形のシートαを巻き付け終わった状態を示す図である。(d)雌型γ4を矩形のシートαの重ね合わせ部に接触させた状態を示す図である。
【図5】逆クラウン形状のローラ状母型γ1に矩形のシートαを巻き付けた状態でジグγを加熱炉δに入れた状態を示す図である。
【図6】逆クラウン形状のローラ状母型γ1から矩形のシートαを外す作業を示すモデル図である。
【図7】得られた本発明に係る逆クラウン形状の定着ベルト用基材を示す図である。(a)斜視図である。(b)正面図である。(c)中央部でのモデル断面図である。(d)端部でのモデル断面図である。
【図8】従来技術を説明するための説明図である。(a)両端部がハーフエッチングされた状態を示す部分モデル断面図である。(b)得られた逆クラウン形状の定着ベルト用基材の中央部でのモデル断面図である。(c)得られた逆クラウン形状の定着ベルト用基材の端部でのモデル断面図である。(d)得られた逆クラウン状の定着ベルト用基材の欠点を示すモデル図である。(e)図8(d)の接合部付近の部分拡大モデル断面図である。
【符号の説明】
【0081】
α 矩形のシート
α2 矩形のシートαの両端
α’ 本発明にかかる定着ベルト用基材
β 接着剤
W1 中央部での重ねあわせの幅
W2 端部での前記重ねあわせの幅
210 シート固定台金
211 フライス盤のエンドミル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドまたはポリイミドアミドにより構成される矩形のシートの両端を互いに重ね合わせて無端状に接合してなる定着ベルト用基材において、
(イ)前記矩形のシートの両端の互いに重ね合わせられた2つの面が、それぞれの先端に向かって薄くなるように前記シートの互いに異なる面が傾斜形状に加工されてなる傾斜面であり、
(ロ)該定着ベルト用基材の中央部での前記重ねあわせの幅が、該定着ベルト用基材の端部での前記重ねあわせの幅に比べ広く設けられ、かつ、
(ハ)前記定着ベルト用基材の全体形状が逆クラウン形状にされていることを特徴とする定着ベルト用基材。
【請求項2】
ポリイミドまたはポリイミドアミドにより構成される矩形のシートの両端を重ね合わせて無端状に接合して定着ベルト用基材とする定着ベルト用基材の製造方法において、前記定着ベルト用基材の中央部での前記重ねあわせの幅が前記定着ベルト用基材の端部での前記重ねあわせの幅に比べ広くなるように、それぞれ先端に向かって薄くなるように前記シートの互いに異なる面を傾斜形状に加工された両端の傾斜面同士を重ね合わせて接合することを特徴とする定着ベルト用基材の製造方法。
【請求項3】
フライス盤による切削加工によって、前記矩形のシートの両端の傾斜形状への加工を行うことを特徴とする請求項2に記載の定着ベルト用基材の製造方法。
【請求項4】
前記接合を、前記矩形のシートを逆クラウン形状のローラ状母型に巻き付けた状態でおこなうことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の定着ベルト用基材の製造方法。
【請求項5】
前記矩形のシートを前記逆クラウン形状のローラ状母型に巻き付ける際に、クラウン形状のローラによって前記矩形のシートを前記逆クラウン形状のローラ状母型に押しつけながら巻き付けることを特徴とする請求項4に記載の定着ベルト用基材の製造方法。
【請求項6】
上記接合を、上記重ね合わせ部分に前記逆クラウン形状のローラ状母型の側面に対応する凹面を有する雌型を圧接させながら行うことを特徴とする請求項6または請求項6に記載の定着ベルト用基材の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の定着ベルト用基材から構成されることを特徴とする定着ベルト。
【請求項8】
請求項7に記載の定着ベルトを備え、かつ、該定着ベルトを縣架する定着ローラが逆クラウン形状であることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項8に記載の定着装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−157066(P2009−157066A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334753(P2007−334753)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】