説明

定着ローラ、定着装置及び画像形成装置

【課題】 本発明は、耐久性が高く、かつ離型性が向上する、定着ローラ、定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】 本発明の定着ローラは、導電性部材からなる発熱層と該発熱層を支持する支持層とから成る多層体を複数積層して構成された多層発熱層(11−3)を有する。よって、耐久性の高い、電磁誘導発熱を利用した定着ローラを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定着ローラ、定着装置及び画像形成装置に関し、詳細には電磁誘導発熱を利用した定着ローラの耐久性向上の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機、ファクシミリ、プリンタ等、トナーを用いた画像形成装置の定着装置としては、一般的に熱ローラ定着装置が用いられる。この熱ローラ定着装置は、内部に熱源を有する定着ローラと、定着ローラに押圧される機構を備えた加圧ローラを用いて構成されている。そして、この熱ローラ定着装置は、定着ローラと加圧ローラから構成される熱ローラ対の間に形成されるニップ部に未定着のトナー像を担持した被加熱体を通過させることにより、トナーを加熱溶融し、トナー像を被加熱体に固定する構成となっている。また、定着ローラの熱源としては、赤外線ヒーターを用いることが一般的であるが、投入した電力の一部が可視光線となってしまうことが避けられないことと、赤外線を受光する定着ローラの内壁での受光ロス等により、効率の限界がある。そこで、これらの問題点を解決するために従来よりいくつかの提案がなされている。
【0003】
その一つとして特許文献1は、発熱ローラとして電磁誘導発熱を利用するものであり、定着ローラは回転駆動されるローラとこのローラを誘導発熱させるための誘導コイルを備えた電磁誘導発熱機構を持つ機構を有している。そして、誘導コイルは外部に設けられた交流電源に接続され、誘導コイルが交流電源により励磁されるとローラの外側に交流渦電流が誘起され、ローラの外側近傍が発熱する仕組みになっている。この場合、外側そのものが発熱源となるため、赤外線ヒーターを用いたときのような損失を無くすことができる。また、特許文献2は、発泡シリコーンゴムの熱伝導率を低くして弾性体層の断熱性を向上させ、その上に金属スリーブを接着させて低熱容量発熱体を形成している。更に、特許文献3は、多層の発熱層形成方法として、金属箔片をポリイミドに含有させたものを用いて形成している。
【特許文献1】特開2003−122152号公報
【特許文献2】特開2002−295452号公報
【特許文献3】特開2004−226822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1によれば、電磁誘導発熱を利用した定着ローラの温度の立ち上がりを早めるには発熱層(金属層)を薄くすればよいが、定着ローラを他のローラに圧接させてシートの搬送を行う場合に、導電層と弾性層での硬さの差が大きく、ニップでの大きい応力時に接着界面に力がかかるため発熱層が破壊しやすいという欠点がある。また、特許文献2でも、硬い金属と弾性体界面で、応力集中のため起こりやすく、筒状の発熱体の場合一カ所の弱点が助長され破壊に至る。更に、特許文献3では、金属の界面が非常に多く、ここから酸化等により、金属とポリマー間での接着力が落ちてベルトの膜破壊に至りやすい。更に、一般的に整磁合金は、抵抗率が高いため電子による熱伝導率が小さく局所的な高温になりやすい。
【0005】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、発熱層を多層にし、耐久性が高く、かつ離型性が向上する、定着ローラ、定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明の定着ローラは、導電性部材からなる発熱層と該発熱層を支持する支持層とから成る多層体を複数積層して構成された多層発熱層を有することに特徴がある。よって、耐久性が高く、電磁誘導発熱を利用した定着ローラを提供できる。
【0007】
また、多層発熱層は、発熱層となる金属箔上に支持層となる金属に対する接着性を有する接着剤を塗布した金属箔体を、芯金に複数回巻き付けて形成することにより、多層発熱層の均一性が上がり、温度ムラを抑え、連続した金属のため円周方向の力を分散でき、耐久性を向上できる。また、容易に多層構造を持った定着ローラを作製できる。
【0008】
更に、発熱層は、金、銀、銅、鉛、ニッケル、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズの導電性部材で構成されることにより、5〜20μmの厚さにすることができ、多層発熱層を容易に多層構造とすることができる。
【0009】
また、発熱層は、整磁合金で構成されることにより、局所的な高温を抑え、発熱層の均一性が向上し、温度ムラが抑えられる。
【0010】
更に、発熱層は、整磁合金と非磁性導電体で構成されることにより、高熱部の熱を分散でき、よって発熱層の均一性がより一層向上し、温度ムラが抑えられる。
【0011】
また、導電性部材の金属箔の厚さは5〜20μmであることが好ましい。更には、支持層となる接着剤は金属に対する接着性を有する高分子材料から形成され、少なくとも柔らかく、少なくとも150℃以上で長時間の耐久性のあるものがよく、例えばシリコーンゴムなどがある。また、高分子材料は、シロキサン結合を有することが好ましい。
【0012】
更に、多層発熱層を有するローラの表面の粗さは5μm以下であることが好ましい。また、多層発熱層を有するローラの最表面に離型剤を塗布することにより、あるいは多層発熱層を有するローラの最表面にフッ素系高分子の離型層を設けることにより、離型性が向上する。
【0013】
また、別の発明としての定着装置は、上記の定着ローラと、該定着ローラの多層発熱層を加熱する誘導加熱手段とを具備することに特徴がある。よって、耐久性が高く、かつ離型性が向上する定着装置を提供できる。
【0014】
更に、定着ローラに圧接する接触部分の1cmあたりの被加熱体に対する加圧力は49.0(kPa)以上392.2(kPa)未満とすることが好ましい。
【0015】
また、別の発明としての画像形成装置は、上記定着装置と、被加熱体上にトナー画像を形成する画像形成部とを有していることに特徴がある。よって、信頼性の高い、かつエネルギー効率の良い画像形成装置を提供できる。更には、トナー画像を形成するトナーはワックスを含有することにより、離型性が向上してジャムの発生を防止する画像形成装置を提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の定着ローラは、導電性部材からなる発熱層を多層構造とした多層発熱層を有し、支持層の変形を抑え、界面での剥離破壊を防止して、耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の一実施の形態例に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。同図に示す本実施の形態例の定着装置1は、定着ローラ11と加圧ローラ12とIH磁界発生手段13を含んで構成されている。また、定着ローラ11は、芯金11−1と、当該芯金11−1の上に設けられた発泡シリコーンゴムの弾性体層11−2と、当該弾性体層11−2の上にIH(Induction Heating)発熱層である金属箔とシリコーン樹脂等の支持層の多層体を複数積層して構成された多層発熱層11−3との多層構造体で構成されており、更に最表面は通常離型性を有するフッ素系高分子よりなる例えばフッ素樹脂の離型層11−4で覆われている。このような多層構造の定着ローラ11の表面に対向するように外部に配置した加熱手段であるIH磁界発生手段13により定着ローラ11は加熱される。このIH磁界発生手段13はIH用コイルで構成されている。一定温度で加熱された定着ローラ11と加圧ローラ12とのニップ部に未定着のトナー像14を有する用紙15を通紙することで用紙に画像を定着させるものである。また、図1の定着ローラ11における多層発熱層11−3は、後述するように、例えば金、銀、銅、鉛、ニッケル、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズ又はその合金(整磁合金)等の導電性部材からなる金属箔と、当該層を多層にする際接着性を有するシリコーン樹脂等の支持層とを積層して構成するIH発熱層を多層構造体にして形成されている。
【0018】
図2は本実施の形態例の定着装置における定着ローラの多層発熱層の構造の一例を示す断面図である。同図に示す多層発熱層11−3は、導電性部材からなる膜厚5〜20μmの金属箔21と、シリコーン系接着剤又はアクリル系の接着剤であって10〜20μmの膜厚の支持層22とを積層して構成するIH発熱層23を多層に形成した多層構造体を成している。
【0019】
図3は本実施の形態例の定着装置における定着ローラの多層発熱層の構造の他の例を示す断面図である。同図に示す多層発熱層11−3は、膜厚5〜20μmの整磁合金の第1の金属箔24と、膜厚10μmのアルミニウムの第2の金属箔25とを含む金属箔26と、シリコーン系接着剤又はアクリル系の接着剤であって10〜20μmの膜厚の支持層22とを積層して構成するIH発熱層23を多層に形成した多層構造体を成している。
【0020】
図4は本実施の形態例の定着装置における定着ローラの多層発熱層の作製工程の一例を示す図である。同図において、図1〜図3と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図の(a)に示すように、図2に示す多層発熱層を形成するために、先ず膜厚5〜20μmの金属箔21にシリコーン系接着剤又はアクリル系の接着剤を10〜20μmの膜厚で塗布して形成する支持層22から構成する金属箔テープ27を作成する。また、同図の(b)に示すように、図3に示す多層発熱層を形成するために、膜厚5〜20μmの第1の金属箔24と、膜厚10μmの第2の金属箔25と、シリコーン系接着剤又はアクリル系の接着剤を10〜20μmの膜厚で第2の金属箔25に塗布して形成する支持層22から構成する金属箔テープ27を作成する。なお、この金属箔テープ27には、接着剤に対し離型性のあるセパレータを有するものを用い、製造効率を上げることができる。次に、同図の(c)に示すように、アルミニウム管等の芯金11−1の周りに断熱性の高い発泡シリコーンの弾性体層11−2を形成し、更に弾性体層11−2の上に同図の(a),(b)に示す金属箔テープ27を複数回巻き付ける。これにより、図1の多層構造体の多層発熱層11−3が形成される。この上に、必要であれば、さらにシリコーンゴムの弾性層を形成してもよい。更に、離型性向上から鑑みてローラの最外部には離型層としてのフッ素系高分子の材料を用いたフッ素樹脂層を形成することが好ましい。フッ素樹脂層の形成は、液体又は粉体塗料を塗布後に焼成する。または、フッ素樹脂チューブ(PFA樹脂等)を、接着層を介して接着してもよい。このようにして、本実施の形態例の定着装置における定着ローラを形成する。
【0021】
なお、本実施の形態例の定着装置において用いられるフッ素樹脂としては、焼成による溶融成膜性のよい、比較的融点の低いもの(250〜300℃)が好ましく選択される。具体的には、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフロオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアアルキアルビニルエーテル共重合体(PFA)の微粉末が挙げられる。低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末は、ルブロンL−5、L−2(ダイキン工業製)、MP1100、1200、1300、TLP−10F−1(三井デュポンフロロケミカル製)が知られている。テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)粉末は、532−8000(デュポン製)が知られている。テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)は、MP−10、MP102、(三井デュポンフロロケミカル社製)が知られている。特にMFR(メルトフローレート製)が小さい流動性の低いものとして、MP103、MP300(三井デュポンフロロケミカル製)、AC−5600、AC5539(ダイキン工業製)等が適している。
【0022】
このような本実施の形態例の定着装置を搭載した画像形成装置を図5に示す。同図に示すように、デジタル複写機30は、主に、複写機本体31と、原稿自動送り装置(以下、ADFという)32と、自動仕分け装置33とを有する。また、複写機本体31は、原稿を読み取るスキャナ部34と、書込ユニット35、エンジン部36及び給紙ユニット37を有するプリンタ部38とを含んで構成されている。更に、ADF32は、読み取る原稿をスキャナ部34に送り、スキャナ部34で読み取った原稿を回収する。また、スキャナ部34は、光源と複数のミラーとを有するキャリッジ39、レンズ40及びCCD41を有し、ADF32で送られた原稿を走査して読み取る。書込ユニット35は、レーザ光源やポリゴンミラー等を有し、画像情報を含むレーザビーム42をエンジン部36に出射する。エンジン部36は、画像形成ユニット43、1次転写ユニット44、2次転写ユニット45、そして図1に示す本発明の定着装置46を有する。また、画像形成ユニット43は、感光体47の周囲に配置された帯電チャージャ48、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)からなるカラー現像部49及びドラムクリーニング部50を有し、帯電チャージャ48で帯電した感光体47上に書込みユニット35から出射されるレーザビーム42で静電潜像を形成し、形成した静電潜像をカラー現像部49で可視化してトナー像を形成する。更に、1次転写ユニット44は、中間転写ベルト51、1次転写部52、テンションローラ53、2次転写ローラ54、クリーニング部55及び基準位置センサ56を有し、感光体47に形成されたトナー像を中間転写ベルト51に1次転写して各色のトナー像を重ね合わす。中間転写ベルト51は感光体47上のトナー像を1次転写するとき以外は接離機構によって感光体47の表面から離れ、中間転写ベルト51に画像を1次転写するときだけ感光体47の表面に圧接される。2次転写ユニット45は中間転写ベルト51に転写されたトナー像を記録紙に2次転写する。定着装置46は記録紙に転写されたトナー像を熱と圧力で定着する。また、給紙ユニット37は複数の給紙カセット57a〜57cと手差トレイ58を有し、記録紙を2次転写ユニット45に送る。更に、自動仕分け装置33は複数段の仕分けビン59a〜59nを有し、画像が形成された記録紙を仕分けして排出する。
【0023】
次に、本実施の形態例の定着装置における定着ローラの具体例を列記する。
(具体例1)
図4の(a)に示す金属箔テープとして、金、銀、銅、鉛、ニッケル、亜鉛、鉄、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズの厚さ10μmの金属箔に、シリコーン接着剤を約10μm塗布した箔テープ(以下塗布箔テープと呼ぶ)を作成する。アルミニウムの中空芯金に発泡シリコーンゴムを形成したものを準備し、金属箔テープを3層巻き付けて加熱硬化する。その後、その上に少なくとも柔らかく150℃程度で長時間耐久性のあるものとしてシリコーンゴムを加熱硬化させる。その外側にPFA樹脂を塗装し、加熱により最外層を形成する。各金属箔を用い、外径をφ40にしたものをそれぞれ作製した。これを、リコー製の複写機 MF4570をIH発熱用に改造した定着部を持つものに200℃設定で、白紙を200,000枚連続通紙したが、特に壊れたものはなかった。比較例として、付加型のシリコーンを用いた同様の構成では、10,000枚で発泡シリコーンとの界面で破壊した。
【0024】
(具体例2)
図4の(a)に示す金属箔テープとして、金、銀、銅、鉛、ニッケル、亜鉛、鉄、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズの厚さ20μmの金属箔に、シリコーン接着剤を約10μm塗布した塗布箔テープを作成する。アルミニウムの中空芯金に発泡シリコーンゴムを形成したものを準備し、金属箔テープを2層巻き付けて、加熱硬化する。その後、その上にシリコーンゴム加熱硬化させる。その外側にPFA樹脂を塗装し、加熱により最外層を形成する。金属箔により、外径をφ40にしたものをそれぞれ作成した。これを、(株)リコー製複写機 MF4570をIH発熱用に改造した定着部を持つものに200℃設定で、白紙を100,000枚連続通紙したが、特に壊れたものはなかった。
【0025】
(具体例3)
図4の(a)に示す金属箔テープとして、金、銀、銅、鉛、ニッケル、亜鉛、鉄、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズの厚さ5μmの金属箔に、シリコーン接着剤を約10μm塗布した塗布箔テープを作成する。アルミニウムの中空芯金に発泡シリコーンゴムを形成したものを準備し、金属箔テープを6層巻き付ける。加熱硬化する。その後、その上にシリコーンゴム加熱硬化させる。その外側にPFA樹脂を塗装し、加熱により最外層を形成する。金属箔により、外径をφ40にしたものをそれぞれ作成した。これを、(株)リコー製複写機 MF4570をIH発熱用に改造した定着部を持つものに200℃設定で、白紙を100,000枚連続通紙したが、特に壊れたものはなかった。
【0026】
(具体例4)
図4の(a)に示す金属箔テープとして、金、銀、銅、鉛、ニッケル、亜鉛、鉄、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズの厚さ10μmの金属箔に、縮合型シリコーン接着剤を約10μm塗布した塗布箔テープを作成する。ここで、縮合型シリコーン接着剤の他に、シリコーン接着剤で触媒を使用する付加型シリコーン接着剤があるが、この付加型シリコーン接着剤は天然ゴム、合成ゴム、軟質塩ビ、アミン硬化エポキシ樹脂、ハンダフラックス等の硫黄、りん、窒素、錫などを含有する物質により触媒毒が発生し、硬化阻害を起こすためプロセス的に使いにくい。そして、アルミニウムの中空芯金発泡シリコーンゴムを形成したものを準備し、金属箔テープを3層巻き付ける。これを24時間常温放置する。その後、その上にシリコーンゴム加熱硬化させる。その外側にPFA樹脂を塗装し、加熱により最外層を形成する。金属箔により、外径をφ40にしたものをそれぞれ作成した。これを、リコー製複写機 MF4570をIH発熱用に改造した定着部を持つものに200℃設定で、白紙を100,000枚連続通紙したが、特に壊れたものはなかった。
【0027】
(具体例5)
図4の(b)に示す金属箔テープとして、Fe−Ni33%の15μmの第1の金属箔とアルミニウムの10μmの第2の金属箔とに、シリコーン接着剤を約10μm塗布した塗布箔テープを作成する。アルミニウムの中空芯金に発泡シリコーンゴムを形成したものを準備し、金属箔テープを2つ重ねにして2層巻き付ける。加熱硬化する。その後、その上にシリコーンゴム加熱硬化させる。その外側にPFA樹脂を塗装し、加熱により最外層を形成する。外径をφ40にしたものをそれぞれ作製した。これを、(株)リコー製複写機 MF4570をIH発熱用に改造した定着部を持つものに200℃設定で、白紙を200,000枚連続通紙したが、特に壊れたものはなかった。比較として、30μmの電鋳ニッケルスリーブを同じシリコーン接着剤により接着したものは、100,000枚程度で接着界面からずれて、破壊した。また、30μmの電鋳ニッケルスリーブをローラの両端で固定したものは、80,000枚程度で破壊した。
【0028】
(具体例6)
図4の(b)に示す金属箔テープとして、Fe−Ni37−Cr10%の15μmの金属箔に、シリコーン接着剤を約10μm塗布した塗布箔テープを作成する。アルミニウムの中空芯金に発泡シリコーンゴムを形成したものを準備し、金属箔テープを3層巻き付ける。加熱硬化する。その後、その上にシリコーンゴム加熱硬化させる。その外側にPFA樹脂を塗装し、加熱により最外層を形成する。外径をφ40にしたものをそれぞれ作成した。これを、(株)リコー製複写機 MF4570をIH発熱用に改造した定着部を持つものに200℃設定で、白紙を100,000枚連続通紙したが、特に壊れたものはなかった。なお、同様に箔として、5、10,20,25,30μmのものを作製した。その結果、25μmのものは、50,000枚、30μmのものは、10,000枚にして、ローラの端から亀裂が入った。
【0029】
(具体例7)
図4の(b)に示す金属箔テープとして、Fe−Ni40%の15μmの金属箔に、シリコーン接着剤を約10μm塗布した塗布箔テープを作成する。アルミニウムの中空芯金に発泡シリコーンゴムを形成したものを準備し、金属箔テープを3層巻き付ける。加熱硬化する。その後、その上にシリコーンゴム加熱硬化させる。その外側にPFA樹脂を塗装し、加熱により最外層を形成する。外径をφ40にしたものを作製した。これを、(株)リコー製複写機 MF4570をIH発熱用に改造した定着部を持つものに200℃設定で、白紙を100,000枚連続通紙したが、特に壊れたものはなかった。
【0030】
(具体例8)
図4の(b)に示す金属箔テープとして、Fe−Ni40%の20μmの金属箔に、シリコーン接着剤を約10μm塗布した塗布箔テープを作成する。アルミニウムの中空芯金に発泡シリコーンゴムを形成したものを準備し、塗布箔を3層巻き付ける。加熱硬化する。その後、その上にシリコーンゴム加熱硬化させる。その外側にPFA樹脂を塗装し、加熱により最外層を形成する。外径をφ40にしたものを作製した。これを、(株)リコー製複写機 MF4570をIH発熱用に改造した定着部を持つものに200℃設定で、白紙を100,000枚連続通紙したが、特に壊れたものはなかった。
【0031】
以上の具体例1〜8の結果によれば、金属箔の厚さは5〜20μmとすることが好ましいことがわかる。
【0032】
(具体例9)
具体例9として、具体例1又は具体例5の金属箔テープを用いて作成した定着ローラを(株)リコー製 MF4570に装着し、10,000枚、黒ベタ画像を通し、ローラ表面のトナーの付着状態を観察した。また、この定着ローラを(株)リコー製 MF4570に装着し、10,000枚、黒ベタ画像を通し、ローラ表面のトナー付着量と紙の巻き付きを見た。この結果である下記の表1からわかるように、表面粗さRzで5μm以下であれば、効果があることが確認された。なお、7μmのものは、8760枚で、ジャムが多発したため実験を取りやめている。
【0033】
【表1】

【0034】
(具体例10)
具体例10は上述しました具体例1又は具体例5の金属箔テープを用いた作成した定着ローラを用い、(株)リコー製 IPSIO Color 8100で作成した未定着画像の通紙テストを行った例である。このIPSIO Color 8100のトナーは、離型性が不十分なため定着ローラにシリコンオイルを塗布するシリコンオイル含侵されたオイル塗布部材を追加している。このIPSIO Color 8100に10,000枚、黒ベタ画像を通し、ローラ表面のトナーの付着状態を観察した。特に大きな付着は観察されず。通常のものと何ら変わりがなかった。塗布部材を外したものは、60,000枚でローラへのトナーの顕著な付着がみられた。
【0035】
(具体例11)
具体例11では具体例1又は具体例5の金属箔テープを用いて作成したローラで、表面粗さRzで、2μm以下としたものを作製した。(株)リコー製 MF4570の定着ユニットを用いたIH定着試験機を作製し、MF4570の未定着画像に加圧力を変えて、この定着ローラに対して通紙した。この結果、下記の表2に示すように、定着ローラに圧接する接触部分の用紙に対する加圧力が29.4(kPa)であるときは、トナー付着は見られずジャムも発生しなかったが、定着性(表2には記していない)が非常に悪くなった。また、392.2(kPa)の加圧力では、定着ローラへのトナー付着が見られ、かつジャムが多発した。定着性は、定着後のべた画像に面の布を擦りつけ顕著に布にトナーが付いているものを定着不良とした。よって、定着ローラに圧接する接触部分の1cm2あたりの用紙に対する加圧力は、49.0(kPa)以上で、392.2(kPa)未満が好ましい。
【0036】
【表2】

【0037】
なお、本発明は上記実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態例に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】本実施の形態例の定着装置における定着ローラの多層発熱層の構造の一例を示す断面図である。
【図3】本実施の形態例の定着装置における定着ローラの多層発熱層の構造の他の例を示す断面図である。
【図4】本実施の形態例の定着装置における定着ローラの多層発熱層の作製工程の一例を示す図である。
【図5】本実施の形態例の定着装置を搭載した画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1;定着装置、11;定着ローラ、11−1;芯金、
11−2;弾性体層、11−3;多層発熱層、11−4;離型層、
12;加圧ローラ、13;IH磁界発生手段、14;トナー像、
15;用紙、21,26;金属箔、22;支持層、23;IH発熱層、
24;第1の金属箔、25;第2の金属箔、27;金属箔テープ、
30;画像形成装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性部材からなる発熱層と、該発熱層を支持する支持層とから成る多層体を複数積層して構成された多層発熱層を有することを特徴とする定着ローラ。
【請求項2】
前記多層発熱層は、前記発熱層となる金属箔上に前記支持層となる金属に対する接着性を有する接着剤を塗布した金属箔体を、芯金に複数回巻き付けて形成する請求項1記載の定着ローラ。
【請求項3】
前記発熱層は、金、銀、銅、鉛、ニッケル、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズの導電性部材で構成される請求項1又は2に記載の定着ローラ。
【請求項4】
前記発熱層は、整磁合金の導電性部材で構成される請求項1又は2に記載の定着ローラ。
【請求項5】
前記発熱層は、整磁合金の導電性部材と非磁性導電体で構成される請求項1又は2に記載の定着ローラ。
【請求項6】
前記金属箔の厚さは、5〜20μmである請求項2記載の定着ローラ。
【請求項7】
前記支持層となる接着剤は、金属に対する接着性を有する高分子材料から形成される請求項1又は2に記載の定着ローラ。
【請求項8】
前記高分子材料は、シロキサン結合を有する請求項7記載の定着ローラ。
【請求項9】
前記多層発熱層を有するローラの表面の粗さは5μm以下である請求項1又は2に記載の定着ローラ。
【請求項10】
前記多層発熱層を有するローラの最表面に離型剤を塗布する請求項1〜9のいずれかに記載の定着ローラ。
【請求項11】
前記多層発熱層を有するローラの最表面にフッ素系高分子の離型層を設ける請求項1又は2に記載の定着ローラ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の定着ローラと、該定着ローラの多層発熱層を加熱する誘導加熱手段を具備することを特徴とする定着装置。
【請求項13】
前記定着ローラに圧接する接触部分の1cmあたりの被加熱体に対する加圧力は、49.0(kPa)以上392.2(kPa)未満とする請求項12記載の定着装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の定着装置と、被加熱体上にトナー画像を形成する画像形成部とを有し、該画像形成部により被加熱体に形成されたトナー画像を前記定着装置により被加熱体に定着させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
前記トナー画像を形成するトナーはワックスを含有する請求項14記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−313304(P2006−313304A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311118(P2005−311118)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】