説明

定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物、並びに定着ロール及び定着ベルト

【課題】定着ロール及び定着ベルト用として、耐熱性に優れるシリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】(A)珪素原子結合アルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、(C)珪素原子結合水素原子を2個以上含有し、更に珪素原子結合アルコキシ基及び/又はアリーロキシ基を2個以上含有し、25℃での粘度が1,000mPa・s以下の液状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(D)無機質充填剤、(E)付加反応触媒、必要により(B)珪素原子結合水素原子を2個以上含有し、その他の官能基を有しない25℃での粘度が1,000mPa・s以下のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有してなり、かつ(B),(C)中のSiH基/(A)中の珪素原子結合アルケニル基=0.2〜2.0で、(C)SiH基に対する(B)SiH基のモル比が(B)/(C)<1である定着ロール又はベルト用シリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリなどに使用する定着ロール及び定着ベルトに関するものである。詳しくは、フッ素樹脂等の表層を有するような密閉状態で高温にさらされても劣化の少ないシリコーンゴムを形成することができる付加硬化型のシリコーンゴム組成物、並びにこの組成物を用いて形成された定着ロール及び定着ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、電気絶縁性、耐熱性、耐候性、難燃性に優れており、複写機やレーザービームプリンターのヒーターロールや加圧ロールなどの定着ロールの被覆材として用いられてきた。最近では、コピーの高速化、カラーコピーの普及に伴い、高耐熱・高離型が求められ、従来の金属又はフッ素樹脂では対応しきれなくなり、高熱伝導性のシリコーンゴムの上にフッ素樹脂を被覆するタイプが多く採用されている。
また、主としてヒートロール用のゴムには、機械立ち上げ時の待ち時間を短くするため、及び機械自体の省エネルギーの観点から、芯金上に被覆するロールタイプだけでなく、ポリイミドなどの耐熱性樹脂や金属製のベルト上にシリコーンゴムを被覆し、更にその上に耐久離型層としてフッ素樹脂層やフッ素ゴム層を設ける定着ベルトタイプも広く使用されている。
【0003】
これら複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリなどの高速化に伴い、定着装置において、定着に要する時間を増加させるため、定着幅(ニップ幅)を確保する目的で、ゴム材料の低硬度化が進んでいる。更に、同じく高速化に対応するため高熱伝導のゴム材料も要求されている。
しかしながら、シリコーンゴムを低硬度化させる方向も、熱伝導性を上げるために高熱伝導性の無機質充填剤を添加する方向も、ゴム強度が低下してしまうため、使用時にゴムが破壊してしまうという問題が生じてしまう場合がある。更に、高速運転に対応するために定着温度が上昇すると、ゴムが熱により軟化劣化し、強度が低下してゴム破壊に至ることが多くなっている。特に、芯金や基材と表層のフッ素樹脂に挟まれた構造をとるロールやベルトにおいては、シリコーンゴム層が密閉状態に近くなるため、より軟化劣化が顕著になる傾向があった。
【0004】
特開2001−183934号公報(特許文献1)には、定着ロール用組成物にアルカリ(土類)水酸化物もしくは酸化物を加えると耐熱性を向上させる旨が記されているが、その効果は不十分であり、逆にこれら充填剤の活性により熱時劣化を促進する可能性さえあった。特許第3592809号公報(特許文献2)には、特定のSiH含有化合物を使用することにより接着性を向上させることができると記されているが、Si原子に結合するアルコキシ基についてはまったく記述がなく、ゴムの劣化にかかわる耐熱性についてもコメントがない。特開平11−12471号公報(特許文献3)には、シリコーンゴム組成物に官能基を有する接着助剤を添加する方法が示され、アルコキシ基及びSi−H基を含有する化合物が例示されているが、Si−H架橋剤との併用であり、その配合比率等は明記されていない。更に、耐熱性についての記述も全くない。
【0005】
【特許文献1】特開2001−183934号公報
【特許文献2】特許第3592809号公報
【特許文献3】特開平11−12471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、定着ロール及び定着ベルト用として、耐熱性、特に密閉状態での耐熱性に優れるシリコーンゴム組成物、及びこの組成物を硬化させて得られた定着ロール及び定着ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、
(A)一分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)一分子中に珪素原子と結合する水素原子(SiH基)を少なくとも2個含有し、その他の官能基を有しない25℃での粘度が1,000mPa・s以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0〜30質量部、
(C)一分子中に珪素原子と結合する水素原子(SiH基)を少なくとも2個含有し、更に珪素原子と結合するアルコキシ基及び/又はアリーロキシ基を少なくとも2個含有し、25℃での粘度が1,000mPa・s以下である液状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜30質量部、
(D)無機質充填剤:0.1〜1,000質量部、
(E)付加反応触媒:触媒量
を含有してなり、かつ(A)成分中の珪素原子結合アルケニル基に対する(B)成分と(C)成分の合計中のSiH基のモル比が、SiH基/アルケニル基=0.2〜2.0であり、更に(B)成分を配合する場合、(C)成分中のSiH基に対する(B)成分中のSiH基のモル比が(B)/(C)<1である付加硬化型シリコーンゴム組成物が、耐熱性、特に密閉状態での耐熱性に優れ、定着ロール又は定着ベルト用として好適であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記に示す定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物、定着ロール及び定着ベルトを提供する。
〔1〕 (A)一分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)一分子中に珪素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有し、その他の官能基を有しない25℃での粘度が1,000mPa・s以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0〜30質量部、
(C)一分子中に珪素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有し、更に珪素原子と結合するアルコキシ基及び/又はアリーロキシ基を少なくとも2個含有し、25℃での粘度が1,000mPa・s以下である液状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜30質量部、
(D)無機質充填剤:0.1〜1,000質量部、
(E)付加反応触媒:触媒量
を含有してなり、かつ(A)成分中の珪素原子結合アルケニル基に対する(B)成分と(C)成分の合計中のSiH基のモル比が、SiH基/アルケニル基=0.2〜2.0であり、更に(B)成分を配合する場合、(C)成分中のSiH基に対する(B)成分中のSiH基のモル比が(B)/(C)<1である定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
〔2〕 芯金の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層もしくはフッ素ゴム層が形成されてなる定着ロールであって、該シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが上記シリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ロール。
〔3〕 ベルト基材上にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層もしくはフッ素ゴム層が形成されてなる定着ベルトであって、該シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが上記シリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ベルト。
【発明の効果】
【0009】
本発明の定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物は、耐熱性に優れ、特に密閉状態においても高い耐熱性を示す硬化物を与えるものである。該組成物を硬化させてなるシリコーンゴム層を用いた本発明の定着ロール及び定着ベルトは、耐熱性が非常に良好で、特に表層とロール芯金やベルト基材との間にシリコーンゴム層が密閉状態で形成されていても、シリコーンゴム層が高温下で軟化劣化することなく、長時間の使用を可能にするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳述すると、本発明の定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物は、
(A)一分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン、
(C)一分子中に珪素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有し、更に珪素原子と結合するアルコキシ基及び/又はアリーロキシ基を少なくとも2個含有し、25℃での粘度が1,000mPa・s以下である液状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)無機質充填剤、
(E)付加反応触媒
を含有してなり、好ましくは更に
(B)一分子中に珪素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有し、その他の官能基を有しない25℃での粘度が1,000mPa・s以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
を含有してなる付加硬化型シリコーンゴム組成物である。
【0011】
ここで、(A)成分の一分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンは、室温(25℃)において液状のものでも、自己流動性のない生ゴム状のものであってもよいが、特には25℃での粘度が500,000mPa・s以下のジオルガノポリシロキサンであることが好ましく、下記平均組成式(1)で示されるものを用いることができる。
1aSiO(4-a)/2 (1)
(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05、更に好ましくは1.98〜2.02の範囲の正数である。)
【0012】
上記R1で示される珪素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられるが、全R1の80%以上がメチル基であることが好ましい。
【0013】
また、R1のうち少なくとも2個はアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6であり、特に好ましくはビニル基である。)であることが必要である。なお、アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中1.0×10-6mol/g〜5.0×10-3mol/g、特に5.0×10-6mol/g〜1.0×10-3mol/gとすることが好ましい。アルケニル基の量が1.0×10-6mol/gより少ないと架橋が不十分でゲル状になってしまうおそれがあり、また5.0×10-3mol/gより多いと架橋密度が高くなりすぎて、脆いゴムとなってしまうおそれがある。このアルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。
【0014】
このオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが一般的であるが、部分的には分岐状の構造、環状構造、三次元網状構造のものなどを含んでもよい。分子量については特に制限がなく、室温で液状であっても生ゴム状であってもよいが、好ましくはBL型回転粘度計により測定した(以下、同様)25℃での粘度が500,000mPa・s以下、より好ましくは500〜500,000mPa・s、更に好ましくは1,000〜300,000mPa・s程度のものが望ましい。
【0015】
(B)成分の一分子中に珪素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有し、その他の官能基を有しない25℃での粘度が1,000mPa・s以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(2)で示され、1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜100個、より好ましくは3〜50個の珪素原子結合水素原子(即ち、SiHで示されるヒドロシリル基)を有するものが好適に用いられる。
2bcSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。)
【0016】
ここで、R2の一価炭化水素基としては、R1で例示したものと同様のものを挙げることができるが、脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。また、bは好ましくは0.8〜2.0、cは好ましくは0.01〜1.0、b+cは好ましくは1.0〜2.5であり、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、一分子中の珪素原子の数(又は重合度)は2〜300個、好ましくは3〜200個、特に4〜150個程度の室温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。なお、珪素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
【0017】
また、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、珪素原子と結合する水素原子以外の他の官能基を有しないものである。このような他の官能基としては、アルコキシシリル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基が挙げられる。
【0018】
更に、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、25℃での粘度が1,000mPa・s以下(通常、0.1〜1,000mPa・s)であり、好ましくは1〜1,000mPa・sであり、より好ましくは5〜500mPa・s、更に好ましくは10〜200mPa・s程度である。粘度が高すぎると硬化反応が速やかに進行しにくくなってしまい、低すぎると硬化反応の進行中に(B)成分が揮発して、所定のゴム物性を有する硬化物が得られない場合がある。
【0019】
上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C653SiO1/2単位とからなる共重合体などや、これら例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基やフェニル基等で置換されたものなどが挙げられる。
【0020】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、必要に応じて配合することができる任意成分であり、その配合量は、(A)成分100質量部に対して0〜30質量部、特に0〜15質量部が好ましく、更に好ましくは0〜10質量部である。なお、(B)成分を配合する場合、その配合量に下限はないが、通常、(A)成分100質量部に対して0.01質量部以上とすることが好ましい。配合量が多すぎると硬化物のゴム物性が低下してしまう。
【0021】
(C)一分子中に珪素原子と結合する水素原子を少なくとも2個、好ましくは3個以上含有し、更に珪素原子と結合するアルコキシ基及び/又はアリーロキシ基を少なくとも2個含有し、25℃での粘度が1,000mPa・s以下である液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(3)で示され、1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜100個、より好ましくは3〜50個の珪素原子結合水素原子を有するものが好適に用いられる。
3deSiO(4-d-e)/2 (3)
(式中、R3は炭素数1〜10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基又はアルコキシ基である。また、dは0.7〜2.1、eは0.001〜1.0で、かつd+eは0.8〜3.0を満足する正数である。)
【0022】
ここで、R3の一価炭化水素基としては、R1で例示したものと同様のものを挙げることができるが、脂肪族不飽和基を有さないものが好ましく、これらに加え、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどの通常、炭素数1〜6程度のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリーロキシ基や、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基などの2価炭化水素基(の炭素結合)を介して該アルコキシシリル基が結合した2−トリメトキシシリルエチル基、2−トリエトキシシリルエチル基、2−メチルジメトキシシリルエチル基などの、トリアルコキシシリル置換アルキル基、オルガノジアルコキシシリル置換アルキル基、ジオルガノアルコキシシリル置換アルキル基等のアルコキシシリル置換アルキル基などが挙げられる。
また、dは好ましくは0.8〜2.0、eは好ましくは0.01〜1.0、d+eは好ましくは1.0〜2.5であり、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよいが、直鎖状、環状構造が好ましく、特に環状構造が好ましい。
【0023】
この場合、一分子中の珪素原子の数(又は重合度)は2〜100個であることが好ましく、より好ましくは4〜30個であり、更に好ましくは4〜15個である。珪素原子に結合する水素原子は、分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。一分子中の珪素原子に結合する水素原子の数は、30個以下が好ましく、20個以下がより好ましく、特に10個以下が好ましい。
【0024】
更に、この(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に珪素原子と結合するアルコキシ基を2個以上有することが必須である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等の通常、炭素数1〜6、特に炭素数1〜4程度のものが挙げられるが、特にメトキシ基が好ましい。アリーロキシ基としてはフェノキシ基が好適である。このような珪素原子に結合するアルコキシ基及び/又はアリーロキシ基は、骨格のポリシロキサン結合中の珪素原子に直接結合していてもよいし、炭素結合(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等のアルキレン基などの2価炭化水素基)を介してシロキサン骨格に結合した珪素原子に結合したものであってもよい。また、このようなアルコキシ基及び/又はアリーロキシ基は、一分子中に2個以上存在することが必須であるが、好ましくは3個以上であり、また3個のアルコキシ基が同一の珪素原子に結合しているトリアルコキシシリル基を有していることが最も好ましい。アルコキシ基及び/又はアリーロキシ基の数に上限はないが、通常、30個以下、好ましくは20個以下、特には10個以下であればよい。
【0025】
なお、この(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、珪素結合水素原子とアルコキシ基及び/又はアリーロキシ基以外の官能基であるアミノ基、エポキシ基、カルボニル基、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基などを含まないことが好ましい。これら官能基は、反応性が高いため、硬化物の圧縮永久歪を著しく低下させてしまう可能性がある。
【0026】
また、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記式で示されるように、分子中に珪素原子に結合した水素原子が連続して存在するトリシロキサン構造を有することが好ましい。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜8の一価炭化水素基であり、同一でも異なってもよい。)
【0027】
ここで、Rの一価炭化水素基としては、R1で例示したものと同様のものを挙げることができ、脂肪族不飽和基を有さないものが好ましく、中でも、メチル基及びフェニル基が特に好ましい。
【0028】
更に、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、BL型回転粘度計により測定した25℃での粘度が1,000mPa・s以下であり、好ましくは0.3〜1,000mPa・sであり、より好ましくは0.5〜500mPa・sであり、更に好ましくは1〜200mPa・s程度である。粘度が高すぎると硬化物の耐圧縮永久歪性が劣ったものとなってしまい、低すぎると硬化反応進行中に(C)成分が揮発して所定のゴム物性を有する硬化物が得られない場合がある。
【0029】
このような(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化2】

【0030】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜30質量部、特に0.2〜10質量部が好ましく、更に好ましくは0.2〜5質量部である。配合量が少なすぎると架橋密度が低く、硬化が不十分となってしまい、多すぎると硬化物のゴム物性が著しく低下してしまう。
【0031】
ここで、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを配合する場合、この(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合割合は、(C)成分中のSiH基に対する(B)成分中のSiH基のモル比が、(B)成分/(C)成分<1であり、好ましくは(B)成分/(C)成分<0.8であり、より好ましくは(B)成分/(C)成分<0.5である。この数字が1以上では目的とする密閉耐熱性が不十分になってしまう。なお、(B)成分を配合する場合、これらのモル比(B)成分/(C)成分に下限はないが、通常、0.001以上であることが好ましい。
【0032】
また、本発明においては、(A)成分中の珪素原子結合アルケニル基に対する(B)成分と(C)成分の合計中のSiH基のモル比が、SiH基/アルケニル基=0.2〜2.0であることが必須で、好ましくは0.3〜1.8、より好ましくは0.4〜1.5である。0.2未満ではゴムが十分に硬化せず、2.0を超えると圧縮永久歪が高くなりすぎてロールとしては不適になってしまう。
【0033】
(D)成分の無機質充填剤は、硬化ゴムの補強、熱伝導性の向上、その他粘度・ゴム硬度の調整や耐熱向上・着色などの目的で配合されるものである。このようなものとしては、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、珪藻土、粉砕石英、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、カーボンブラックなどがある。無機質充填剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、補強目的としては1〜50質量部、好ましくは5〜50質量部、熱伝導性の向上のためには100〜1,000質量部、耐熱や着色目的としては0.1〜5質量部、その他粘度や硬度調整の目的では任意の量を配合できる。しかしながら、いずれの場合も、(A)成分100質量部に対して1,000質量部以下、好ましくは800質量部以下である。1,000質量部を超えると、ゴム物性が著しく低下するだけでなく、配合も困難になってしまう。
【0035】
なお、このような無機質充填剤は、各種アルコキシシラン及びその加水分解物、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子シロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどのシラザン類、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどの表面処理剤で予め表面処理したものを用いてもよいし、これら表面処理剤を配合する際に同時に添加してもよい。
【0036】
(E)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられる。
なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、白金族金属として(A)、(B)成分の合計質量に対し、0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度である。
【0037】
更に、本発明のシリコーンゴム組成物には、必要に応じて、アセチレンアルコール、アルケニル基含有シロキサンオリゴマーなどの硬化遅延剤、カーボン、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウムなどの耐熱向上剤、有機系,無機系の各種着色顔料などを、本発明の目的を損なわない範囲で適時混合してもよい。
【0038】
本発明のシリコーンゴム組成物は、上記各成分の所定量を常法に準じて混合することにより調製することができる。
本発明のシリコーンゴム組成物の硬化方法は、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の定着装置に使用されるロールやベルトが成形可能な方法であればいかなる方法でもかまわない。例えば、注入成形、移送成形、圧縮成形、射出成形、コーティングなど種々の方法がある。硬化条件としては60〜350℃の温度で10秒〜4時間の範囲が好適に採用される。また、硬化物の圧縮永久歪を低下させる、低分子シロキサン成分を低減する等の目的で、成形後、更に120〜250℃のオーブン内で30分〜70時間程度のポストキュア(2次キュア)を行ってもよい。
【0039】
本発明の定着ロール及び定着ベルトは、ロール軸(芯金)の外周面又はベルト基材上に、上記シリコーンゴム組成物の硬化物層(シリコーンゴム層)を介してフッ素樹脂層もしくはフッ素ゴム層が形成されてなるものである。
ここで、本発明の定着ロール及び定着ベルトは、硬度や熱伝導の異なる2種以上のシリコーンゴム層を設けてもよい。その場合、シリコーンゴム2層の成形は、内層を形成するシリコーンゴム組成物を型内あるいはコーティングなどの方法で硬化させた後、更に外層を形成するシリコーンゴム組成物を型内あるいはコーティングにより成形、硬化する方法が好ましい。この場合、内層のシリコーンゴム組成物を硬化後、外層のシリコーンゴム組成物を硬化させる際に、プライマーを用いたり、接着剤を塗布するなどの方法を用いて、内層と外層のシリコーンゴムをより強固に接着させてもよい。
【0040】
本発明の定着ロールあるいは定着ベルトは、ステンレス、鉄、ニッケル、アルミニウムなどの芯金(ロール軸)、又はポリイミドなどの耐熱性樹脂のベルト基材上に、上記シリコーンゴム組成物の硬化物層を形成するものであるが、この場合、芯金やベルトの材質、寸法等はロールやベルトの種類に応じて適宜選定し得る。
また、シリコーンゴム組成物の成形、硬化方法も適宜選定し得、上述した成形方法及び硬化条件により硬化される。
【0041】
次に、シリコーンゴム層の外周に、更にフッ素樹脂層やフッ素ゴム層を設ける。この場合、フッ素系樹脂層は、フッ素系樹脂コーティング材やフッ素系樹脂チューブなどにより形成され、上記シリコーンゴム層を被覆する。ここで、フッ素系樹脂コーティング材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)のラテックスや、ダイエルラテックス(ダイキン工業社製、フッ素系ラテックス)等が挙げられ、またフッ素系樹脂チューブとしては市販品を使用し得、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、フッ化エチレン−ポリプロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル樹脂などが挙げられるが、これらのうちで特にPFAが好ましい。
【0042】
また、本発明の定着ロール及び定着ベルトは、通常使用されるいかなる複写機、レーザープリンター、ファクシミリマシンなどの定着部位にも使用可能であるが、特に内部にヒーターを有し、高温にさらされる条件において好適に使用できる。このような定着部位の温度としては、トナー定着動作作動時のロール軸(芯金)又はベルトの温度が200℃以上、好ましくは230℃以上、ロール又はベルト表面の温度としては180℃以上、好ましくは200℃以上である。更に、ロール軸とロール表面あるいはベルト基材とベルト表面の温度差が20℃以上、より好ましくは30℃以上になる時に、本発明の定着ロールは好適に用いられる。
【0043】
更に、本発明の定着ロール及び定着ベルトは、特に印字速度が速い場合に好適で、モノクロの場合、A4紙で通紙速度が30枚/分以上、好ましくは40枚/分以上であり、カラー印字の場合、同じくA4紙で通紙速度が10枚/分以上、好ましくは15枚/分以上の時、好適に用いられる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、下記例で、粘度はBL型回転粘度計により測定した25℃の値である。
【0045】
[実施例1]
両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され側鎖にビニル基を有し、25℃での粘度が20,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量 0.0001mol/g)80質量部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され側鎖にビニル基を有し、25℃での粘度が5,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量0.000055mol/g)20質量部、平均粒子径が5μmの石英粉80質量部、平均粒子径が0.15μmの酸化鉄1質量部、比表面積が180m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(トクヤマ社製、レオロシールDM20S)0.5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、室温(23℃)で30分撹拌を行った。この混合物を3本ロールにかけてヒュームドシリカの分散を行った後、再びプラネタリーミキサーに戻し、下記式で示され、25℃での粘度が2mPa・sである珪素結合アルコキシ基含有メチルハイドロジェンポリシロキサン(C−1)を0.8質量部[SiH基/アルケニル基=0.7]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物をシリコーンゴム組成物(実−1)とした。
【0046】
【化3】

【0047】
このシリコーンゴム組成物(実−1)を120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアを行って、厚さ2.0mmのゴムシートを得た後、JIS K6301に従い、硬さ(デュロメータA)を測定した。このゴムシートより約50mm×50mmの試験片を切り出し、厚さ200μmで60mm×60mmのポリテトラフルオロエチレンシートで上下をはさんだ後、更に厚さ約2mmの金属板(SUS板)で上下をはさんだ。これを250℃のオーブンに入れ、30時間後、100時間後のゴム硬度を測定した。これらの結果を表1に記した。
【0048】
[実施例2]
両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にビニル基を有し、25℃での粘度が5,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量 0.00008mol/g)70質量部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されビニル基を含有しないジメチルポリシロキサン(重合度500)30質量部、平均粒子径が5μmのアルミナ250質量部、平均粒子径が0.15μmの酸化鉄1質量部をプラネタリーミキサーに入れ、室温で30分撹拌を行った。この混合物を3本ロールにかけて充填剤の分散を行った後、再びプラネタリーミキサーに戻し、下記式で示され、25℃での粘度が15mPa・sである珪素結合アルコキシ基含有メチルハイドロジェンポリシロキサン(C−2)0.5質量部[SiH基/アルケニル基=1.0]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物をシリコーンゴム組成物(実−2)とした。
【0049】
【化4】

【0050】
このシリコーンゴム組成物(実−2)を120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアを行って、厚さ2.0mmのゴムシートを得た後、実施例1と同様に初期硬度及び耐熱試験後の硬度を測定し、結果を表1に記した。
【0051】
[実施例3]
両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にビニル基を有し、25℃での粘度が50,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量 0.00009mol/g)100質量部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本エアロジル社製、R−972)2質量部、平均粒子径が4μmの石英粉50質量部、平均粒子径が1.5μmの酸化セリウム粉末0.5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、室温で30分撹拌を行った。この混合物を3本ロールにかけて充填剤の分散を行った後、再びプラネタリーミキサーに戻し、実施例1のメチルハイドロジェンポリシロキサン(C−1)1.2質量部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSi−H基を有し、25℃での粘度が20mPa・sであり、重合度が30であるメチルハイドロジェンポリシロキサン(B−1)(Si−H量0.0038mol/g)を1.1質量部[(C−1)、(B−1)合計のSiH基/アルケニル基=1.5、SiH(B−1)/SiH(C−1)=0.45]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物をシリコーンゴム組成物(実−3)とした。
このシリコーンゴム組成物(実−3)を120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアを行って、厚さ2.0mmのゴムシートを得た後、実施例1と同様に初期硬度及び耐熱試験後の硬度を測定し、結果を表1に記した。
【0052】
[実施例4]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃での粘度が10,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン100質量部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本エアロジル社製、R−972)2質量部、平均粒子径が12μmの石英粉150質量部、平均粒子径が0.2μmの酸化鉄2質量部、平均粒子径が0.8μmの酸化セリウム粉末1.5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、室温で30分撹拌を行った。この混合物を3本ロールにかけて充填剤の分散を行った後、再びプラネタリーミキサーに戻し、下記式で示され、25℃での粘度が18mPa・sである珪素結合アルコキシ基含有メチルハイドロジェンポリシロキサン(C−3)1.0質量部、実施例3のメチルハイドロジェンポリシロキサン(B−1)(Si−H量0.0038mol/g)を0.5質量部[(C−3)、(B−1)合計のSiH基/アルケニル基=1.2、SiH(B−1)/SiH(C−3)=0.36]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物をシリコーンゴム組成物(実−4)とした。
【0053】
【化5】

【0054】
このシリコーンゴム組成物(実−4)を120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアを行って、厚さ2.0mmのゴムシートを得た後、実施例1と同様に初期硬度及び耐熱試験後の硬度を測定し、結果を表1に記した。
【0055】
[実施例5]
直径10mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトの表面に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーC(信越化学工業社製)を塗付した。内面をプライマー処理した50μmのフッ素PFAチューブとアルミニウムシャフトとの間に実施例1のシリコーンゴム組成物(実−1)を5kg/cm2充填し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアし、外径18mm×長さ250mmのPFA樹脂被覆シリコーンゴムロールを作製した。
この定着ロールを電子写真複写機に装着してA4サイズの複写紙を50枚/分の速度で連続通紙した。この時、表層付近は約200℃、芯金付近は約240℃であった。通紙を10,000枚連続したが、複写された画像はすべて鮮明であった。
【0056】
[実施例6]
ニッケル製のベルト基材(厚さ50μm、形状:内径φ55mm、幅250mm)の外周面に、付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーX−33−183−2A/B(信越化学工業社製)を塗布し、乾燥後焼付け(150℃×15分)を行った。この上に、実施例2のシリコーンゴム組成物(実−2)をコーティングし(厚さ約300μm)、150℃で15分加熱し、更に200℃で2時間ポストキュアを行った。この硬化物表面にダイエルラテックスとシリコーンゴム用プライマーGLP−103SR(ダイキン社製)を均一に塗付し、80℃で10分加熱し、更にダイエルラテックスGLS−213を均一にスプレー塗付し、300℃で1時間加熱焼成し、フッ素樹脂コーティングシリコーンゴム製定着ベルトを作製した。
この定着ベルトを電子写真複写機に装着してA4サイズの複写紙を60枚/分の速度で連続通紙した。この時、表層付近は約220℃、ベルト基材付近は約240℃であった。通紙を10,000枚連続したが、複写された画像はすべて鮮明であった。
【0057】
[実施例7]
直径10mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトの表面に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーC(信越化学工業社製)を塗付した。内面をプライマー処理した50μmのフッ素PFAチューブとアルミニウムシャフトとの間に実施例3のシリコーンゴム組成物(実−3)を5kg/cm2充填し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアし、外径18mm×長さ250mmのPFA樹脂被覆シリコーンゴムロールを作製した。
この定着ロールを電子写真複写機に装着してA4サイズの複写紙を60枚/分の速度で連続通紙した。この時、表層付近は約210℃、芯金付近は約250℃であった。通紙を10,000枚連続したが、複写された画像はすべて鮮明であった。
【0058】
[比較例1]
両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され側鎖にビニル基を有し、25℃での粘度が20,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量 0.0001mol/g)80質量部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され側鎖にビニル基を有し、25℃での粘度が5,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量0.000055mol/g)20質量部、平均粒子径が5μmの石英粉80質量部、平均粒子径が0.15μmの酸化鉄1質量部、比表面積が180m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(トクヤマ社製、レオロシールDM20S)0.5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、室温(23℃)で30分撹拌を行った。この混合物を3本ロールにかけてヒュームドシリカの分散を行った後、再びプラネタリーミキサーに戻し、実施例3のメチルハイドロジェンポリシロキサン(B−1)1.6質量部[SiH基/アルケニル基=0.7]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物をシリコーンゴム組成物(比−1)とした。
このシリコーンゴム組成物(比−1)を120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアを行って、厚さ2.0mmのゴムシートを得た後、実施例1と同様に初期硬度及び耐熱試験後の硬度を測定し、結果を表2に記した。
【0059】
[比較例2]
両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にビニル基を有し、25℃での粘度が5,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量 0.00008mol/g)70質量部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されビニル基を含有しないジメチルポリシロキサン(重合度500)30質量部、平均粒子径が5μmのアルミナ250質量部、平均粒子径が0.15μmの酸化鉄1質量部をプラネタリーミキサーに入れ、室温で30分撹拌を行った。この混合物を3本ロールにかけて充填剤の分散を行った後、再びプラネタリーミキサーに戻し、実施例3のメチルハイドロジェンポリシロキサン(B−1)1.5質量部[SiH基/アルケニル基=1.0]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物をシリコーンゴム組成物(比−2)とした。
このシリコーンゴム組成物(比−2)を120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアを行って、厚さ2.0mmのゴムシートを得た後、実施例1と同様に初期硬度及び耐熱試験後の硬度を測定し、結果を表2に記した。
【0060】
[比較例3]
両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にビニル基を有し、25℃での粘度が50,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量 0.00009mol/g)100質量部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本エアロジル社製R−972)2質量部、平均粒子径が4μmの石英粉50質量部、平均粒子径が1.5μmの酸化セリウム粉末0.5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、室温で30分撹拌を行った。この混合物を3本ロールにかけて充填剤の分散を行った後、再びプラネタリーミキサーに戻し、実施例1のメチルハイドロジェンポリシロキサン(C−1)0.3質量部、実施例3のメチルハイドロジェンポリシロキサン(B−1)2.9質量部[(C−1)、(B−1)合計のSiH基/アルケニル基=1.5、SiH(B−1)/SiH(C−1)=4.8]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物をシリコーンゴム組成物(比−3)とした。
このシリコーンゴム組成物(比−3)を120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアを行って、厚さ2.0mmのゴムシートを得た後、実施例1と同様に初期硬度及び耐熱試験後の硬度を測定し、結果を表2に記した。
【0061】
[比較例4]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃での粘度が10,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン100質量部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本エアロジル社製、R−972)2質量部、平均粒子径が12μmの石英粉150質量部、平均粒子径が0.2μmの酸化鉄2質量部、平均粒子径が0.8μmの酸化セリウム粉末1.5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、室温で30分撹拌を行った。この混合物を3本ロールにかけて充填剤の分散を行った後、再びプラネタリーミキサーに戻し、実施例4のメチルハイドロジェンポリシロキサン(C−3)0.4質量部、実施例3のメチルハイドロジェンポリシロキサン(B−1)を1.4質量部[(C−3)、(B−1)合計のSiH基/アルケニル基=1.2、SiH(B−1)/SiH(C−3)=2.4]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物をシリコーンゴム組成物(比−4)とした。
このシリコーンゴム組成物(比−4)を120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアを行って、厚さ2.0mmのゴムシートを得た後、実施例1と同様に初期硬度及び耐熱試験後の硬度を測定し、結果を表2に記した。
【0062】
[比較例5]
実施例5で、シリコーンゴム組成物(実−1)に替えて(比−1)を使用した以外は同様にロールを作製し、電子複写機に装着してA4サイズの複写紙を50枚/分で同様に連続通紙したところ、7,000枚目くらいから画像が不鮮明になってしまった。8,000枚通紙後、ロールを取り出してみると、芯金付近のゴムが破壊していることが確認された。
【0063】
[比較例6]
実施例6で、シリコーンゴム組成物(実−2)に替えて(比−2)を使用した以外は同様に定着ベルトを作製し、電子複写機に装着してA4サイズの複写紙を60枚/分で同様に連続通紙したところ、8,000枚目くらいからベルト表層にしわが発生し、不鮮明な画像になってしまった。8,300枚で通紙を停止し、ベルトを切断し、観察してみるとシリコーンゴムが一部破壊していることが確認できた。
【0064】
[比較例7]
実施例7で、シリコーンゴム組成物(実−3)に替えて(比−3)を使用した以外は同様にロールを作製し、電子複写機に装着してA4サイズの複写紙を60枚/分で同様に連続通紙したところ、9,800枚目くらいから画像が不鮮明になってしまった。10,000枚通紙後、ロールを取り出してみると、芯金付近のゴムが破壊していることが確認された。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)一分子中に珪素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有し、その他の官能基を有しない25℃での粘度が1,000mPa・s以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0〜30質量部、
(C)一分子中に珪素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有し、更に珪素原子と結合するアルコキシ基及び/又はアリーロキシ基を少なくとも2個含有し、25℃での粘度が1,000mPa・s以下である液状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜30質量部、
(D)無機質充填剤:0.1〜1,000質量部、
(E)付加反応触媒:触媒量
を含有してなり、かつ(A)成分中の珪素原子結合アルケニル基に対する(B)成分と(C)成分の合計中のSiH基のモル比が、SiH基/アルケニル基=0.2〜2.0であり、更に(B)成分を配合する場合、(C)成分中のSiH基に対する(B)成分中のSiH基のモル比が(B)/(C)<1である定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(C)成分の液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの重合度が30以下で、一分子中の珪素原子と結合する水素原子の数が20以下である請求項1記載の定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(C)成分の液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンが、分子内に下記式
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜8の一価炭化水素基であり、同一でも異なってもよい。)
で示されるトリシロキサン構造を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(C)成分の液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンが、アルコキシ基及び/又はアリーロキシ基以外の官能基を有しないことを特徴とする請求項1,2又は3記載の定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
(C)成分の液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンが、環状構造であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
(C)成分の液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンが、同一の珪素原子に3個の同一又は異種のアルコキシ基を結合しているトリアルコキシシリル基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
芯金の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層もしくはフッ素ゴム層が形成されてなる定着ロールであって、該シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ロール。
【請求項8】
定着ロールが、芯金内部に熱源を有するロールであることを特徴とする請求項7記載の定着ロール。
【請求項9】
ベルト基材上にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層もしくはフッ素ゴム層が形成されてなる定着ベルトであって、該シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ベルト。

【公開番号】特開2008−255283(P2008−255283A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101320(P2007−101320)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】