説明

定着制御装置、プログラム

【課題】急激な温度変化が発生しても温度を適正に保つことができる定着制御装置を提供すること。
【解決手段】転写媒体に形成されたトナー像を熱により転写媒体に定着させる定着手段24の定着制御装置100であって、定着手段22を加熱する加熱手段25と、定着手段の温度を検出する温度検出手段26と、前記温度検出手段から検出された温度と目標温度とに応じて、所定の制御周期毎に前記加熱手段を制御する制御手段62と、前記温度検出手段が検出した温度から外的要因による温度変化の発生を検出する外的要因発生検出手段66と、前記外的要因発生検出手段が外的要因による温度変化の発生を検出した際、制御周期の起点を新たに設定する制御周期設定手段69と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ユニットの温度を制御する定着制御装置に関し、特に、外的要因による温度変動を抑制する定着制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いられている定着ユニットの定着制御方法において,制御周期における定着ヒータを点灯する時間的な割合を算出して、その割合に基づいて定着ヒータのON/OFFを制御する定着制御方法(以下、温度制御方法という)が知られている。より具体的には、定着制御装置が制御周期毎に定着ユニットの温度を検出して、温度に応じて次の制御周期における定着ヒータの点灯割合を決定する。したがって、温度の検出周期と制御周期が一致していることになる。
【0003】
定着ユニットの温度は転写媒体へトナーを定着させるため適切な温度に制御されているため、温度が変動すると画質が低下するおそれがある。例えば、定着ヒータが温度制御する定着ユニットの熱容量は通紙の有無により変化するため、定着ユニットの温度は転写媒体の種類や厚みの影響を受ける。
【0004】
そこで、温度変動を抑制する技術が考案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、転写媒体の種類の違い等による温度変動を抑制するため、温度の計測周期と温度の制御周期を変化させる画像形成装置の定着装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された温度の制御方法では、想定されていないタイミングで発生した急激な温度変化に対応できないという問題がある。
【0006】
例えば、定着ユニットの温度変化特性は、転写媒体が定着ユニットのニップ部に接している場合と接していない場合で異なる。図示して説明する。
図1(a)では、転写媒体がニップ部に接している時に制御周期が満了し、定着制御装置は次の制御周期のために定着温度から定着ヒータを点灯する点灯割合を算出している。
【0007】
しかし、図1(b)に示すように、次の制御周期が開始する前に転写媒体の後端がニップ部を通過している。この場合、制御対象の熱容量が変わってしまい、定着制御装置がすでに算出した点灯割合では、温度を適正に保つことができない。
【0008】
逆に、図1(c)のように転写媒体がニップ部に接してない時に制御周期が満了し、定着制御装置は温度から定着ヒータを点灯する割合を算出し、図1(d)に示すように、次の制御周期が開始する前に転写媒体の前端がニップ部を通過する場合も同様の問題を生じる。
【0009】
このように、制御周期ごとに定着割合を算出して、点灯割合に基づいて定着ヒータのON/OFFを切り替える温度制御方法では、外的な要因による温度変化に動的に対応することができなかった。また、このような転写媒体の突入や通過タイミングだけでなく、転写媒体の厚さの違い、モノクロ/カラーの違い、機内の温湿度の変化など、制御周期の途中で定着ユニットの温度が急激に変化することは少なくない。意図しないタイミングで発生した外的要因に起因する急激な温度変化や、予測より大きな温度変化が発生した場合、画像形成装置は温度を適正に保つことができず、画質が低下してしまう。
【0010】
本発明は、制御周期ごとに定着ヒータを点灯する点灯割合を算出して定着ヒータのON/OFFを切り替える定着制御において、急激な温度変化が発生しても温度を適正に保つことができる定着制御装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑み、本発明は、転写媒体に形成されたトナー像を熱により転写媒体に定着させる定着手段の定着制御装置であって、前記定着手段を加熱する加熱手段と、前記定着手段の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段から検出された温度と目標温度とに応じて、所定の制御周期毎に前記加熱手段を制御する制御手段と、前記温度検出手段が検出した温度から外的要因による温度変化の発生を検出する外的要因発生検出手段と、前記外的要因発生検出手段が外的要因による温度変化の発生を検出した際、制御周期の起点を新たに設定する制御周期設定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
制御周期ごとに定着ヒータを点灯する点灯割合を算出して定着ヒータのON/OFFを切り替える定着制御において、急激な温度変化が発生しても温度を適正に保つことができる定着制御装置及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】温度変化特性について説明する図の一例である。
【図2】定着制御装置の特徴の概略を説明する図の一例である。
【図3】定着制御装置が適用された画像形成装置の構成図の一例を示す。
【図4】画像形成装置の定着制御装置のハードウェア構成を示す図の一例である。
【図5】定着制御装置の機能ブロック図の一例である。
【図6】定着制御装置の制御手順の一例を示すフローチャート図である。
【図7】算出された点灯割合と定着ヒータのON・OFFの関係を模式的に示す図の一例である。
【図8】従来の定着制御の課題を模式的に示す図の一例である。
【図9】定着制御装置の機能ブロック図の一例である(実施例1)。
【図10】定着制御装置の制御方法の変更を模式的に説明する図の一例である(実施例1)。
【図11】定着制御装置の制御手順の一例を示すフローチャート図である(実施例1)。
【図12】定着制御装置の機能ブロック図の一例である(実施例2)。
【図13】定着制御装置の温度変化の検知を模式的に説明する図の一例である(実施例2)。
【図14】定着制御装置の制御手順の一例を示すフローチャート図である(実施例2)。
【図15】定着制御装置の機能ブロック図の一例である(実施例3)。
【図16】定着制御装置の温度変化の検知を模式的に説明する図の一例である(実施例3)。
【図17】定着制御装置の制御手順の一例を示すフローチャート図である(実施例3)。
【図18】定着制御装置の機能ブロック図の一例である(実施例4)。
【図19】定着制御装置の温度変化の検知を模式的に説明する図の一例である(実施例4)。
【図20】定着制御装置の制御手順の一例を示すフローチャート図である(実施例4)。
【図21】定着制御装置の機能ブロック図の一例である(実施例5)。
【図22】温度変化の検知を模式的に説明する図の一例である。
【図23】定着制御装置の制御手順の一例を示すフローチャート図である(実施例5)。
【図24】定着制御装置の機能ブロック図の一例である(実施例6)。
【図25】定着制御装置の温度変化の検知を模式的に説明する図の一例である(実施例6)。
【図26】定着制御装置が制御周期を再設定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図27】定着制御装置の機能ブロック図の一例である(実施例7)。
【図28】定着制御装置の温度変化の検知を模式的に説明する図の一例である(実施例7)。
【図29】本実施例の定着制御装置が制御周期を再設定する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例7)。
【図30】定着制御装置の機能ブロック図の一例である(実施例8)。
【図31】定着制御装置の温度変化の検知を模式的に説明する図の一例である(実施例8)。
【図32】本実施例の定着制御装置が制御周期を再設定する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例8)。
【図33】定着制御装置の機能ブロック図の一例である(実施例9)。
【図34】本実施例の定着制御装置が制御周期を再設定する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例9)。
【図35】定着制御装置の機能ブロック図の一例である(実施例10)。
【図36】定着制御装置が制御周期を元に戻す手順を示すフローチャート図の一例である。
【図37】定着制御装置の機能ブロック図の一例である(実施例11)。
【図38】定着制御装置が制御周期を元に戻す手順を示すフローチャート図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【0015】
図2は、本実施形態の定着制御装置の特徴の概略を説明する図の一例である。図2において1つの四角形が1つの制御周期を表す。図2(a)では、目標温度に対し適切な温度制御が達成されている。
【0016】
これに対し、図2(b)では、2つめの制御周期で急激な温度変動が生じた。本実施形態の定着制御装置は、急激な温度変動をトリガーに制御周期の起点を再設定することが特徴の1つである。再設定とは、それまでの制御周期の起点と異なる起点を設定することをいう。
【0017】
図示するように、急激な温度変動が検出された時点で制御周期2が打ち切られ、制御周期3の起点が同じ制御周期のまま早まっている。制御周期の起点が早まることで、想定されないタイミングで急激な温度変化が生じても、早期に温度変動に対応することができ、画質の低下を防ぐことができる、
また、図2(c)に示すように、制御周期の起点を再設定することに加え、制御周期を変化させることもできる。図2(c)では制御周期2の途中で制御周期3が開始され、制御周期3〜5は、制御周期1よりも短い同じ制御周期になっている。制御周期を短くすることで、温度リップルを小さくすることができ、制御周期の起点の再設定をさらに有効にすることができる。
【0018】
図3は、本実施例の定着制御装置100が適用された画像形成装置200の構成図の一例を示す。画像形成装置200は、4つのトナーボトル11Y、11C、11M、11K(以下、区別しない場合トナーボトル11という)、4つのプリンタエンジン14Y、14C、14M、14K(以下、区別しない場合プリンタエンジン14という)、光書込装置18、中間転写ベルト12、給紙トレイ19、定着ユニット22等を有する。
【0019】
光書込装置18は、不図示の端末から送信された画像データから各色の色画像データを生成し、色画像データにより変調したレーザ光をプリンタエンジン14に照射する。
【0020】
プリンタエンジン14は、それぞれ中間転写ベルト12に各色のトナー画像を形成する。各プリンタエンジン14は、矢印方向へ回転駆動される感光体16Y、16C、16M、16K(以下、区別しない場合、感光体16という)の周囲に配置された帯電部27、現像部28、クリーニング部17等を有する。
【0021】
帯電部27は、ローラ状に形成された導電性部材を有し、この帯電部27にバイアス電圧が電源装置から供給されることにより感光体16の外周面が一様に帯電される。
【0022】
感光体16は、不図示のモータにより中間転写ベルト12と同じ表面速度に回転駆動される。光書込装置18から照射されたレーザ光は感光体16の円筒の軸方向(主走査方向)を走査することで、感光体16の外周面に色画像データに応じた静電潜像が書き込まれる。
【0023】
現像部28は、感光体16へトナーボトル11が供給するトナーを感光体16の外周面に付着させることにより、感光体16上の静電潜像をトナー画像として顕像化する。
【0024】
中間転写ベルト12は、樹脂フィルム又はゴムを基体として形成されたループ状の無端ベルトである。中間転写ベルト12は、ローラにより支持されてローラを駆動するモータにより回転駆動される。中間転写ベルト12の内周面側には、各感光体16と対向する位置に4個の転写ローラ15Y、15C、15M、15Kが配置されている。
【0025】
中間転写ベルト12と感光体16Kは常時接触しているが、中間転写ベルト12と感光体16Y、16C、16Mは、不図示の接離機構により、接続状態と離間状態が制御される。転写ローラ15は、電源装置から供給される電力により転写電圧により電位差を生じさせ、各色のトナー画像を中間転写ベルト12上に転写させる。各色のトナー画像が中間転写ベルト12上に順次転写されることにより、中間転写ベルト12上にはカラーのトナー画像が担持される。
【0026】
クリーニング部18は感光体16から中間転写ベルト12にトナー画像が転写された後に残留したトナーを除去する。また、中間転写ベルト12の外周面側には転写媒体にカラーのトナー画像が転写された後に、残留したトナーや紙粉等をクリーニングするクリーニング装置13が配置されている。
【0027】
画像形成装置200の下方には、転写媒体(印刷用紙)を積層する給紙トレイ19が配置されている。給紙トレイ19内に積層されている転写媒体は、給紙ローラ20により最上位のものから順に分離給紙される。また、画像形成装置200の右側面には、開閉式の給紙トレイ19が設けられており、手差しされた転写媒体を積層するために使用される。
【0028】
給紙トレイ19又は開閉式の給紙トレイ19から分離給紙された転写媒体は搬送経路を搬送され、ニップ部29、定着ユニット22、及び、排紙トレイ23へと搬送される。
【0029】
レジストローラ30は、所定のタイミングで間欠的に回転駆動されるローラである。レジストローラ30は、レジストローラ30の位置まで搬送された転写媒体を、中間転写ベルト12上のトナー画像がニップ部29に到着するタイミングで、ニップ部29へ搬送する。転写媒体がニップ部29を通過する過程において、二次転写ローラ21が圧力と静電力により中間転写ベルト上12のトナー画像を転写媒体に転写する。
【0030】
定着ユニット22は、内部に定着ヒータ25を備えた定着ローラ24と、加圧ローラ9を有し、トナー画像が転写された転写媒体に対して熱と圧力を加えてトナーを溶融し、トナー画像を転写媒体に定着させる。定着ローラ24の表面の温度がサーミスタ26により検出されている。定着ユニット22を通過した転写媒体は、画像形成装置200の上面部に形成されている排紙トレイ23に排紙される。
【0031】
図4は、画像形成装置200の定着制御装置100のハードウェア構成を示す図の一例である。定着制御装置は、図3で説明した画像形成装置200の各部を制御するもので、この制御を総称してエンジン制御と呼ぶことがある。定着制御装置100は、エンジンサブボード(IOB)38、エンジンメインボード(EGB)41及びコントローラ(Controller)47が協働することで実現されている。
【0032】
エンジンメインボード41は、CPU、DSP、RAM、等を有し、レーザダイオードボード42、ファン43、高電圧供給部44、エンジンサブボード38及びコントローラ47と接続されている。レーザダイオードボード42は、光書込装置が照射するレーザ光を生成する専用の基板である。ファン43は、画像形成装置200の各部の加熱を抑制するための送風機である。高電圧供給部44は、例えば、DC/DCコンバータ等、高圧電源を生成するボードであり、エンジンメインボード41は必要な高電圧の供給を受ける。
【0033】
エンジンサブボード38は、各種のモータ、各種のセンサ、各種のクラッチなどの負荷を制御する。エンジンサブボード38には、メモリーチップ31、モータ32、ポリゴンミラー33、同期検出器34、サーミスタ26、オペレーションパネル35、センサ36、クラッチ37、電源装置39、及び、エンジンメインボード41と接続されている。
【0034】
メモリーチップ31は一般にトナーボトルに貼付されたICであり、トナーボトルの装着の有無や色、販売会社等を識別するために用いられる。モータ32は、転写媒体を搬送するためのモータ、レジストローラ30を駆動するモータ、中間転写ベルト12を駆動するモータ、感光体16を駆動するモータ等である。ポリゴンモータ33は光書込装置18が有するポリゴンミラーを回転駆動するモータである。同期検出器34は、なんらかのセンサの検出やクロック信号のカウントにより同期すべきタイミングを検出しエンジンサブボード38に供給する。同期すべきタイミングとしては、例えば、各感光体16にレーザ光を照射するタイミング、中間転写ベルト12と感光体16の接離のタイミング、レジスタローラ30を駆動するタイミング等である。
【0035】
サーミスタ26は、温度を検出する温度センサである。定着ユニット22の表面の温度(以下、定着温度という)を検出するほか、画像形成装置200内の各部位の温度を検出する。オペレーションパネル35は、操作メニューを表示するディスプレー、ディスプレーと一体のタッチパネル、その他のハードキーを有し、ユーザの操作を受け付ける。センサ36は、給紙トレイ18から供給された転写媒体の先端が所定の位置に到達したことを検出するセンサ、ドアの開閉を検出するセンサ、異常を検出するセンサ等である。クラッチ37は、給紙モータ20と転写媒体との接離、中間転写ベルト12と感光体16の接離、定着ローラ21と中間転写ベルト12の接離、等を切り替えるクラッチである。
【0036】
電源装置39は、定着ヒータ25と接続されている。定着ヒータ25はランプ(例えばハロゲンランプ)と称されることもある。定着ヒータ25が、定着ユニット22の温度を昇温させる熱源となる。エンジンサブボード38は、サーミスタ26が検出した温度に応じて、定着ヒータ25と電源装置39の接続をON・OFFすることで、定着ヒータ25がON・OFFされる。
【0037】
コントローラ47は、外部とのインターフェイス制御や外部から入力されたデータの画像処理などを受け持つ。コントローラ47はCPUやメモリ、入出力インターフェイスを備えたコンピュータを実体とし、ブート用のSDカード48、オプションのSDカード49、DIMMメモリ50、IEEE1284(51)、IEEE1394(52)、IEEE802.11b(無線LAN)53、Bluetooth54、HDD45、及び、NVRAM46が接続されている。
【0038】
HDD45にはプログラム300が記憶されている。このプログラム300は、例えばSDカード48、49に記憶された状態又は不図示のサーバからIEEE802.11b等を介して配布される。
【0039】
コントローラ47は、コピーアプリ、スキャナプリ、FAXアプリ等、画像形成装置100が提供するジョブに対応したアプリケーションを起動し、ユーザの操作を検出して各アプリケーションに対応したジョブを実行する。
【0040】
〔従来の温度制御〕
まず、図5,6を用いて、従来の温度制御について説明する。図5は、定着制御装置100の機能ブロック図の一例であり、図6は定着制御装置100の制御手順の一例を示すフローチャート図である。
【0041】
図5の機能ブロックは、例えば、エンジンメインボード41のCPUが実行するプログラム300、エンジンサブボードのロジック回路、又は、これらを組み合わせて実現される。
【0042】
定着ヒータ25の制御は、一定周期ごとに点灯制御を実施することで行われる。この一定周期が制御周期である。図6(a)に示すように、制御周期が満了する毎に、点灯制御が開始される。制御周期検出部61は、制御周期の満了を検出する。制御周期は一定なので、制御周期検出部61は、例えばクロックのパルスをカウントして、所定のカウント毎に制御周期を検出する。制御周期は例えば100ミリ秒などであるが、以下、制御周期をTIMEとする。
【0043】
制御周期検出部61は、制御周期TIMEの満了を検出すると(S10のYes)、点灯制御部62に通知する。これにより、点灯制御部62は点灯制御を開始する(S20)。実際には、下記の点灯割合の算出の時間を考慮して、制御周期TIMEの満了の少し前に制御周期の満了が検出されるとしてもよい。
【0044】
図6(b)は点灯制御の手順を示すフローチャート図の一例である。まず、点灯割合算出部63は、点灯割合を算出する(S110)。
【0045】
点灯割合算出部63は、次の制御周期TIME〔ms〕の間に定着ヒータ25をONする期間の割合である点灯割合D(%)を算出する。点灯割合Dの算出方法には,次の2つの方法等、様々な方法が知られている。
(1)現在の定着温度が目標温度より低い場合にはD=100、高い場合にはD=0とする方法
(2)現在の定着温度、前回の制御周期の定着温度、及び、目標温度などから適切な算出方法で点灯割合Dを算出する方法
点灯割合Dが算出されると、ヒータON・OFF部64は、点灯割合Dに応じて定着ヒータ25をON・OFFする。
【0046】
まず、点灯割合「D=0%」の場合は(S120のYes)、ヒータON・OFF部64は、制御周期の全期間、定着ヒータ25をOFFする(S130)。
【0047】
点灯割合「D=0%」でない場合(S120のNo)、ヒータON・OFF部64は、制御周期の開始時から、定着ヒータ25をONする(S140)。また、ヒータON・OFF部64は、定着ヒータ25のONを開始するとON時間の計測を開始する。
【0048】
点灯割合「D=100%」の場合(S150のYes)、ヒータON・OFF部64は制御周期の間、定着ヒータ25をONにしたままにする。
【0049】
点灯割合「D≠0%,D≠100%」の場合(S150のNo)、ヒータON・OFF部64は定着ヒータ25のOFFタイミングになるまで待機して(S160)、定着ヒータ25のOFFタイミングになると定着ヒータ25をOFFする(S170)。下記するように、定着ヒータ25のOFFタイミングは点灯割合Dから決定されるので、ヒータON・OFF部64は点灯割合Dに応じた時間だけ定着ヒータ25をONすることができる。
【0050】
定着ヒータ25をONする時間ton(ms)は、制御周期TIME〔ms〕と点灯割合D〔%〕から、
ton = TIME × D ÷ 100 …(1)
によって表される。したがって、定着ヒータ25のOFFタイミングは、制御周期TIMEから時間tonだけ満了した時である。
【0051】
逆に、制御周期TIMEのうち、定着ヒータ25がOFFされている時間toff〔ms〕は,
toff = TIME - ton
= TIME × (1 -(D ÷ 100))
によって表される.
以上から、時間tonと時間toffは以下のようになる。
【0052】
「D=0%」の場合 :ton = 0,toff = TIME
「D=100%」の場合: ton = TIME,toff = 0
「D≠0%,D≠100%」の場合:ton = TIME×D÷100,toff = TIME×(1 -(D ÷ 100))
図7は、算出された点灯割合Dと定着ヒータ25のON・OFFの関係を模式的に示す図の一例である。図7の横軸は時間の経過を示し、縦軸は定着ヒータ25のONとOFFを示す。制御周期毎に算出された点灯割合Dは、「D=100%」「D=50%」「D=0%」「D=100%」である。
【0053】
最初の制御周期TIMEでは「D=100%」なので、時間ton=TIMEであるので、次の制御周期TIMEがはじまるまで、継続して定着ヒータ25はONになっている。
【0054】
次の制御周期TIMEでは「D=50%」となっているので、時間ton=(1/2)×TIMEとなり、次の制御周期TIMEが開始するまでの期間のなかで、TIME/2〔ms〕までの期間は定着ヒータ25がONされており、残りのTIME /2〔ms〕の期間は定着ヒータ25がOFFされている。
【0055】
最後の制御周期TIMEでは「D=0%」なので、時間ton=0となり、次の制御周期TIMEがはじまるまで、継続して定着ヒータ25はOFFになっている。
【0056】
〔従来の定着制御の課題〕
図8は、このような従来の定着制御の課題を模式的に示す図の一例である。従来の定着制御では、外的要因に起因する急激な温度変化により、定着不良が発生するメカニズムを表している。
【0057】
定着制御では、定着性を確保するために、ある一定の範囲内(図中の下限〜上限の間)で温度が遷移するようにする必要があるため、その範囲内のある温度を目標温度に設定して、範囲を超えないように制御している(温度が上下動することを温度リップルという場合がある)。図では目標温度に対する下限と上限の範囲を逸脱しないように定着温度が制御される。
【0058】
しかし、定着温度に影響する外的要因が発生すると、定着温度が急激に変化する場合がある。例えば、転写媒体が定着ユニット22のニップ部28に突入した場合には,定着ユニット22の熱が転写媒体に奪われるため、急激な温度低下が発生する。下限値は、定着性を確保するために必要な温度であり、温度低下により下限値を下回ることをアンダーシュートという。アンダーシュートが生じると、トナーを転写媒体に定着しきれない「コールドオフセット」が発生する要因になる。
【0059】
逆に、転写媒体の後端がニップ部28を通過した場合には、定着ユニット22の熱容量が小さくなるため、急激な温度上昇が発生する。上限値は、定着性を確保するために必要な温度であり、温度上昇により上限値を上回ることをオーバーシュートという。オーバーシュートが生じると、温度上昇によりトナーが剥がれ落ちる「ホットオフセット」が発生する要因になる。
【0060】
更に、転写媒体の温度や機内の温度などの様々な要因により、この変動が大きくなることも知られている。
【0061】
図8(a)は、外的要因に起因する急激な温度低下により、コールドオフセットが発生するメカニズムを表している。制御周期1と2では定着ヒータ25がOFFされているが、制御周期2において外的要因(例えば転写媒体の突入)が発生して、急激な温度低下が始まっている。点灯割合算出部63は、温度が低下した制御期間2の終わりに、制御周期3の点灯割合Dを算出するので、次の制御周期3では定着ヒータ25のONにより温度が上昇する。しかし、制御周期2までの温度低下が大きく、制御周期3が始まるまでに、定着温度が下限値を下回っているため(アンダーシュート)、トナーを転写媒体に定着しきれないコールドオフセットが発生するおそれがある。
【0062】
図8(b)は、外的要因に起因する急激な温度上昇により、ホットオフセットが発生するメカニズムを表している。制御周期3で定着温度が目標値より下がったため、制御周期4では定着ヒータ25がONされている。しかし、定着ヒータ25がONされている制御周期4にて外的要因(例えば転写媒体の後端の通過)が発生して、急激な温度上昇が始まっている。
【0063】
点灯割合算出部63は、温度が上昇した制御期間4の終わりに、制御周期5の点灯割合Dを算出するので、次の制御周期5では定着ヒータ25のOFFにより温度が低下する。しかし、制御周期4までの温度上昇が大きく、制御周期4が始まるまでに、定着温度が上限値を上回っているため(オーバーシュート)、転写媒体に定着されたトナーが剥がれ落ちるホットオフセットが発生するおそれがある。
【0064】
このように、従来の制御周期ごとに定着ヒータ25を点灯する割合を算出して、その割合に基づいて定着ヒータ25のON/OFFを切り替える定着制御方法では、定着温度の応答性が十分でなかった。そこで、本実施形態の定着制御装置100は、温度の急激な変化を検出して1つの制御周期が満了する前に、制御周期の起点を再設定することで、定着温度を応答性よく制御する。以下、実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0065】
図9は、定着制御装置100の機能ブロック図の一例を、図10は定着制御装置100の制御方法の変更を模式的に説明する図の一例をそれぞれ示す。本実施例の定着制御装置100は、外的要因検出部66と制御方法変更部65を有する。
【0066】
外的要因検出部66は、温度変化の急激な変化を検出するために、制御周期TIMEよりも十分に短い検知周期で、温度を検出する。この検知周期により、図10の丸101で囲まれた急激な定着温度の変化を検出する。なお、図10では検知周期が制御周期の十分の一〜二十分の一とされているが、より長くしても短くてもよい。
【0067】
検知周期t1〔ms〕は、設定可能な最小の制御周期tmin〔ms〕と比較して,
t1 < tmin
を満足する任意の値である。
【0068】
このようなt1を設定することで、制御周期TIMEより短い周期での温度変化の監視が可能になる。
【0069】
制御方法変更部65は、外的要因検出部66が急激な温度変化を検出すると、制御周期TIMEの満了を待たずに制御方法を変更する。図10に示すように、制御周期2の途中から制御方法が変更されている。制御方法の切換とは、制御周期TIMEの起点の再設定、制御周期の変更等が挙げられる。
【0070】
例えば制御周期の起点が再設定されることで、定着温度が下限値を下回る前に定着ヒータ25をONにすることができるので、コールドオフセットの発生を防止できる(図10の点線で示された温度低下が発生しない)。
【0071】
図11は定着制御装置100の制御手順の一例を示すフローチャート図である。この制御を行うタイミングは任意であり、常時であっても構わないし、特定のタイミングのみ(例えば印刷中のみ)であっても構わない。
【0072】
外的要因検出部66は、検知周期毎に定着温度を検出している(S210)。つまり、ステップS220以下の処理は、一定周期(検知周期)ごとに行われることを意味している。
【0073】
外的要因検出部66は、検知周期毎に検知された定着温度が急激に変化したか否かを判定する(S220)。具体的には、外的要因検出部66は、検知周期間(前回検知周期から今回の検知周期までの間)における温度変化を算出し,その温度変化が外的要因によるものであるかどうかを判断する(判断方法については後に詳述する。)。
【0074】
定着温度が急激に変化した場合(S220のYes)、制御方法変更部65は定着制御の制御方法を変更して(S230)、定着不良(コールドオフセット/ホットオフセット)の発生を防止する(具体的な制御方法の変更の判断方法については後に詳述する。)。
【0075】
定着温度が急激に変化してない場合(S220のNo)、制御方法変更部65はすでに変更した制御方法を通常の制御に戻すか否かを判定する(S240)。
【0076】
そして、外的要因による温度変化を解除すると判断した場合(S240のYes)、制御方法変更部65は変更された制御を通常の制御に戻すための処理を実行する(S250)。具体的な制御方法の変更の解除については後に詳述する。
【実施例2】
【0077】
本実施例では実施例1の定着制御方法をより具体的に説明する。本実施例では、外的要因による温度変化の発生を、定着温度が閾値を超えたかどうかから判断する定着制御装置100について説明する。
【0078】
図12は定着制御装置100の機能ブロック図の一例を、図13は温度変化の検知を模式的に説明する図の一例をそれぞれ示す。本実施例の定着制御装置100は、温度変化検出部67を有する。温度変化検出部67は、定着温度が上限値よりも低いTmaxより大になったこと、又は、定着温度が下限値よりも高いTmin未満になったこと、を検出する。Tmin〜Tmaxの範囲は、下限値〜上限値の範囲よりも狭いので、コールドオフセットやホットオフセットが発生するほど定着温度が上昇(又は低下)する前に、制御方法を変更することができる。
【0079】
ここで、TminとTmaxは、定着温度がTmin未満又はTmaxより大になってから、制御方法を変更することにより定着温度のアンダーシュートやオーバーシュートを回避できるように設定されている。例えば、Tmaxは上限値の5〜9割程度、Tminは下限値の1.1〜1.5倍程度である。なお、TminとTmax はエンジンサブボード等のROMやNVRAM46に保存されている。
【0080】
図14は、定着制御装置100の制御手順の一例を示すフローチャート図である。温度変化検出部67は、検知周期毎に、定着温度を取得する(S310)。
【0081】
温度変化検出部67は定着温度が Tmin未満か否かを判定する(S320)。定着温度がTmin未満の場合(S320のYes)、温度変化検出部67は、「外的要因による温度低下が有り」と判定する(S330)。この場合、制御方法変更部65は制御方法を変更する。
【0082】
定着温度がTmin未満でない場合(S320のNo)、定着温度が Tmaxより大か否かを判定する(S340)。定着温度がTmaxより大の場合(S340のYes)、温度変化検出部67は、「外的要因による温度上昇が有り」と判定する(S350)。この場合、制御方法変更部65は制御方法を変更する。
【0083】
定着温度がTmaxより大でない場合(S340のNo)、温度変化検出部67は、現在の定着温度が閾値Tmin〜Tmaxの間であると判定する(S360)。すなわち、「外的要因による温度変化はない」と判定される。
【0084】
図13に示したように、温度変化検出部67は、下限値を下回る前にTminを下回ったこと(外的要因による温度低下)を検知しており、そのタイミングで制御方法変更部65が制御方法を変更する。こうすることで、定着温度が下限値を下回る前に(図13では、従来の定着制御方法では生じてしまう温度低下を点線で示している)、定着制御装置100は定着温度を上昇させることができ、コールドオフセットの発生を防止できる。ホットオフセットに付いては図示していないが、ホットオフセットについても同様に防止できる。
【実施例3】
【0085】
実施例2では、外的要因による温度変化の発生を、定着温度が閾値Tmin,Tmaxを超えたかどうかから判断したが、本実施例では温度変化の傾きから判断する定着制御装置100について説明する。
【0086】
図15は定着制御装置100の機能ブロック図の一例を、図16は温度変化の検知を模式的に説明する図の一例をそれぞれ示す。本実施例の温度変化検出部67は、定着温度の変化の傾きが閾値ΔTminより小さいこと又は閾値ΔTmaxより大きいことを検出する。したがって、定着温度の変化の傾きに着目することで、コールドオフセットやホットオフセットが発生する前に、制御方法を変更することができる。
【0087】
ここで、ΔTminとΔTmaxは、定着温度の変化の傾きがΔTmin未満又はΔTmaxより大になってから、制御方法を変更することにより定着温度のアンダーシュートやオーバーシュートを回避できるように設定されている。例えば、ΔTminやΔTmaxは下限値から上限値の温度範囲の5〜10%程度である。ΔTminとΔTmaxの大きさを変えてもよい。なお、ΔTminは負値、ΔTmax は正値であり、ΔTminとΔTmax はエンジンサブボード38等のROMやNVRAM46に保存されている。
【0088】
図17は、定着制御装置100の制御手順の一例を示すフローチャート図である。温度変化検出部67は、検知周期毎に、定着温度を取得する(S410)。
【0089】
温度変化検出部67は、現在の定着温度Tと1検知周期前に検知した定着温度T'の差ΔTを算出する(S420)。検知周期を単位時間と考えればΔTは温度変化の傾きとみなすことができる。
ΔT=T−T'
この式から、T>T'の場合はΔTは正値に、T<T'の場合はΔTは負値になる。
【0090】
次に、温度変化検出部67は、温度変化の傾きΔTがΔTmin未満か否かを判定する(S430)。
【0091】
温度変化の傾きΔTがΔTmin未満の場合(S430のYes)、定着温度が急激に低下していることを意味するので、温度変化検出部67は、「外的要因による温度低下が有り」と判定する(S440)。この場合、制御方法変更部65は制御方法を変更する。
【0092】
温度変化の傾きΔTがΔTmin未満でない場合(S430のNo)、温度変化検出部67は、温度変化の傾きΔTがΔTmaxより大か否かを判定する(S450)。
【0093】
温度変化の傾きΔTがΔTmaxより大きい場合(S450のYes)、定着温度が急激に増加していることを意味するので、温度変化検出部67は、「外的要因による温度上昇が有り」と判定する(S460)。この場合、制御方法変更部65は制御方法を変更する。
【0094】
温度変化の傾きΔTがΔTmaxより大きくない場合(S450のNo)、温度変化の傾きがΔTmin〜ΔTmaxの範囲にあることになるので、温度変化検出部67は、大きな温度変化がないと判定する(S470)。すなわち、「外的要因による温度変化はない」と判定される。
【0095】
次に、温度変化検出部67は、現在の定着温度TをT'としてNVRAN46等に記憶しておく(S480)。これにより、温度変化の傾きΔTの算出が可能になる。
【0096】
図16に示したように、温度変化検出部67は、下限値を下回る前に急激な温度変化(外的要因による温度低下)を検知しており、そのタイミングで制御方法変更部65が制御方法を変更する。こうすることで、定着温度が下限値を下回る前に、定着制御装置100は定着温度を上昇させることができ、コールドオフセットの発生を防止できる。ホットオフセットに付いては図示していないが、ホットオフセットについても同様に防止できる。なお、図16では、従来の定着制御方法では生じてしまう温度低下を点線で示している。
【実施例4】
【0097】
実施例3では、外的要因による温度変化の発生を、予め定めた閾値ΔTmin又はΔTmaxと温度変化の傾きを比較して判断したが、本実施例では、安定時の温度変化の傾きΔTdown又はΔTupと温度変化の傾きを比較して判断する定着制御装置100について説明する。
【0098】
図18は定着制御装置100の機能ブロック図の一例を、図19は温度変化の検知を模式的に説明する図の一例をそれぞれ示す。
【0099】
本実施例の温度変化検出部67は、安定状態の温度変化の傾きをΔTdown又はΔTupとしてNVRAM46等に記憶しておく。安定状態とは、画像形成装置200が印刷、画像読み取り又はFAXの送受信を行っていない状態である。
【0100】
温度変化検出部67は、定着温度の変化の傾きが閾値ΔTdownより小さいこと又は閾値ΔTupより大きいことを検出する。定着温度の変化の傾きに着目することで、コールドオフセットやホットオフセットが発生する前に、制御方法を変更することができる。
【0101】
図20は、定着制御装置100の制御手順の一例を示すフローチャート図である。温度変化検出部67は、検知周期毎に、定着温度を取得する(S510)。
【0102】
温度変化検出部67は、現在の定着温度Tと1検知周期前に検知した定着温度T'の差ΔTを算出する(S515)。検知周期を単位時間と考えればΔTは温度変化の傾きとみなすことができる。
ΔT=T−T'
この式から、T>T'の場合はΔTは正値に、T<T'の場合はΔTは負値になる。
【0103】
次に、温度変化検出部67は、画像形成装置200が待機中か否かを判定する(S520)。例えば、エンジンメインボード41又はコントローラ47に現在のステイタスを問い合わせることで、待機中か否かを判定できる。
【0104】
待機中の場合(S520のYes)、定着温度も安定に推移すると考えられるので、温度変化検出部67は、温度変化の傾きΔTがゼロ未満か否かを判定する(S525)。温度変化の傾きΔTがゼロ未満であることは(S525のYes)、定着温度が低下傾向にあることを意味するので、温度変化検出部67はΔTdownにΔTを設定する(S530)。
【0105】
温度変化の傾きΔTがゼロ未満でないことは(S525のNo)、定着温度が増加傾向にあることを意味するので、温度変化検出部67はΔTupにΔTを設定する(S535)。
【0106】
また、待機中なので、温度変化検出部67は「外的要因による温度変化はない」と判定する(S540)。
【0107】
そして、温度変化検出部67は、現在の定着温度TをT'としてNVRAM46等に記憶しておく(S545)。これにより、温度変化の傾きΔTの算出が可能になる。
【0108】
次にステップS520に戻り、待機中でない場合(S520のNo)、定着温度が安定に推移しないおそれがあると考えられるので、温度変化検出部67は、温度変化の傾きΔTがΔTdown未満か否かを判定する(550)。
【0109】
温度変化の傾きΔTがΔTdown未満の場合(S550のYes)、定着温度が急激に低下していることを意味するので、温度変化検出部67は、「外的要因による温度低下が有り」と判定する(S555)。この場合、制御方法変更部65は制御方法を変更する。
【0110】
温度変化の傾きΔTがΔTdown未満でない場合(S550のNo)、温度変化検出部67は、温度変化の傾きΔTがΔTupより大か否かを判定する(S560)。
【0111】
温度変化の傾きΔTがΔTupより大きい場合(S560のYes)、定着温度が急激に増加していることを意味するので、温度変化検出部67は、「外的要因による温度上昇が有り」と判定する(S565)。この場合、制御方法変更部65は制御方法を変更する。
【0112】
温度変化の傾きΔTがΔTupより大きくない場合(S560のNo)、温度変化の傾きがΔTdown〜ΔTupの範囲にあることになるので、温度変化検出部67は、大きな温度変化がないと判定する(S570)。すなわち、「外的要因による温度変化はない」と判定される。
【0113】
図19に示したように、温度変化検出部67は、安定時の温度変化を利用して、下限値を下回る前に急激な温度変化(外的要因による温度低下)を検知しており、そのタイミングで制御方法変更部65が制御方法を変更する。こうすることで、定着温度が下限値を下回る前に、定着制御装置100は定着温度を上昇させることができ、コールドオフセットの発生を防止できる。ホットオフセットに付いては図示していないが、ホットオフセットについても同様に防止できる。
【0114】
なお、図19では、従来の定着制御方法では生じてしまう温度低下を点線で示している。
【0115】
また、実施例3のように、予め定められたΔTminやΔTmaxを閾値とすると、安定時や印刷時に継続して発生している要因(例えば室温の高低など)の影響受けて、通紙時でないのに、急激な温度変化が生じたと判定するおそれがある。しかし、本実施例では、安定時の温度変化を閾値ΔTdown又はΔTmaxとするので、継続して発生している要因を排除することができ、適切な定着制御が可能になる。
【実施例5】
【0116】
本実施例では、定着ヒータ25の制御状態を利用して外的要因による温度変化の発生を判断する定着制御装置100について説明する。
【0117】
図21は定着制御装置100の機能ブロック図の一例を、図22は温度変化の検知を模式的に説明する図の一例をそれぞれ示す。定着制御装置100はヒータ状態判定部68を有する。ヒータ状態判定部68は、定着ヒータ25がONかOFFかを判定し、判定結果を温度変化検出部67に通知する。なお、ヒータ状態は、ヒータON・OFF部64に問い合わせることで判定される。
【0118】
そして、本実施例の温度変化検出部67は、定着ヒータ25がONであり、温度変化が負値の場合に外的要因による温度変化が発生したと判定し、定着ヒータ25がOFFであり、温度変化が正値の場合に外的要因による温度変化が発生したと判定する。
【0119】
図22では、定着ヒータ25がONの状態で温度が低下しているので、その後、定着ヒータ25がOFFになったら、定着温度が下限値を下回ることが予測できる。したがって、定着ヒータ25がONの場合に定着温度が低下すること、又は、定着ヒータ25がOFFの場合に定着温度が増加することは、制御の傾向と温度変化の傾向が逆になっていることを示す。この場合は外的要因が影響している可能性が高いので、制御方法を変更することで、コールドオフセットやホットオフセットが発生する前に、制御方法を変更することができる。
【0120】
図23は、定着制御装置100の制御手順の一例を示すフローチャート図である。温度変化検出部67は、検知周期毎に、定着温度を取得する(S610)。
【0121】
温度変化検出部67は、現在の定着温度Tと1検知周期前に検知した定着温度T'の差ΔTを算出する(S620)。検知周期を単位時間と考えればΔTは温度変化の傾きとみなすことができる。
ΔT=T−T'
この式から、T>T'の場合はΔTは正値に、T<T'の場合はΔTは負値になる。
【0122】
次に、ヒータ状態判定部68は、定着ヒータ25がOFFか否かを判定する(S630)。
【0123】
そして、定着ヒータ25がOFFの場合(S630のYes)、温度変化検出部67は、温度変化の傾きΔTがゼロより大か否かを判定する(S640)。温度変化の傾きΔTがゼロより大であることは(S640のYes)、定着ヒータ25がOFFなのに定着温度が増加傾向にあることを意味するので、温度変化検出部67は、「外的要因による温度上昇が有り」と判定する(S650)。この場合、制御方法変更部65は制御方法を変更する。
【0124】
温度変化の傾きΔTがゼロより大でない場合(S640のNo)、定着ヒータ25がOFFであることは予想される傾向であるため、温度変化検出部67は、「外的要因による温度変化はなし」と判定する(S660)。
【0125】
ステップS630に戻り、定着ヒータ25がOFFでない場合(S630のNo)、温度変化検出部67は、温度変化の傾きΔTがゼロ未満か否かを判定する(S670)。温度変化の傾きΔTがゼロ未満であることは(S670のYes)、定着ヒータ25がONなのに定着温度が低下傾向にあることを意味するので、温度変化検出部67は、「外的要因による温度低下が有り」と判定する(S680)。この場合、制御方法変更部65は制御方法を変更する。
【0126】
温度変化の傾きΔTがゼロ未満でない場合(S670のNo)、定着ヒータ25がONであることは予想される傾向であるため、温度変化検出部67は、「外的要因による温度変化はなし」と判定する(S690)。
【0127】
次に、温度変化検出部67は、現在の定着温度TをT'としてNVRAM46等に記憶しておく(S700)。これにより、温度変化の傾きΔTの算出が可能になる。
【0128】
図22に示したように、温度変化検出部67は、定着ヒータ25の状態を利用して、下限値を下回る前に急激な温度変化(外的要因による温度低下)を検知しており、そのタイミングで制御方法変更部65が制御方法を変更する。こうすることで、定着温度が下限値を下回る前に、定着制御装置100は定着温度を上昇させることができ、コールドオフセットの発生を防止できる。ホットオフセットに付いては図示していないが、ホットオフセットについても同様に防止できる。
【実施例6】
【0129】
実施例2〜5では、外的要因による温度変化の発生の具体的な検知方法について説明した。以下の実施例では、制御方法の変更について具体的に説明する。
【0130】
図24は定着制御装置100の機能ブロック図の一例を、図25は温度変化の検知を模式的に説明する図の一例をそれぞれ示す。本実施例の定着制御装置100は制御周期再設定部69を有する。制御周期再設定部69は、外的要因による温度変化が検出された場合に、制御周期の起点を再設定する。制御周期の長さは同じままである。
【0131】
図25は急激な温度低下が検出された場合の、制御周期の再設定を示すが、比較のため、従来技術の制御周期と共に(上段)、本実施例の制御周期を示した(下段)。制御周期2において外的要因(例えば転写媒体の突入)が発生して、急激な温度低下が始まっている。従来では制御周期3が始まるまで定着ヒータ25をONにすることができず、コールドオフセットが発生するおそれがあった。
これに対し、本実施例の定着制御装置100は、制御周期2において外的要因が発生した直後から、制御周期の起点を再設定することで、外的要因が発生した直後から定着ヒータ25をONにすることができる。このため、コールドオフセットが発生することを防止できる。
【0132】
図26は、本実施例の定着制御装置100が制御周期の起点を再設定する手順を示すフローチャート図の一例である。図6(a)にて説明したように、制御周期が満了するまでは点灯制御が開始されなかったが、本実施例では制御周期が満了する前に、制御周期の起点を再設定するか否かが判定される点(S15)が特徴である。
【0133】
制御周期検出部61は、所定のサイクル時間毎に制御周期の満了を検出しているが、制御周期が満了するまで、外的要因検出部66が外的要因による温度変化の有無を判定する(S15)。
【0134】
外的要因による温度変化がある場合(S15のYes)、点灯制御部62が点灯制御を開始する(S20)。好ましくは外的要因による温度変化が検出された直後が、新たな制御周期の起点となる。したがって、制御周期が満了しなくても点灯制御を解することができる。具体的には、外的要因検出部66が外的要因による温度変化を検出した場合、制御周期再設定部69が制御周期検出部61に擬似的に制御期間の満了を通知する。または、制御周期再設定部69が点灯制御部62に点灯制御の開始を強制すると共に、制御周期検出部61がそれまでカウントしている満了時間をリセットしてもよい。
【0135】
このような手法により、制御周期が満了しなくても、定着制御装置100は次の制御周期を開始することができる。すなわち、制御周期の起点を再設定することができる。制御周期の起点を再設定することで、外的要因による温度変化が発生したタイミングで、定着ヒータ25の点灯制御を変更することができるので、定着温度を安定させることができる。
【実施例7】
【0136】
実施例6では、制御方法の変更として、制御周期の起点を再設定する定着制御装置100について説明したが、本実施例では制御周期の起点を再設定するとともに制御周期を変更する定着制御装置100について説明する。
【0137】
図27は定着制御装置100の機能ブロック図の一例を、図28は温度変化の検知を模式的に説明する図の一例をそれぞれ示す。本実施例の定着制御装置100は制御周期再設定部69に加え、制御周期変更部71を有する。
【0138】
制御周期変更部71は、外的要因による温度変化が検出された場合に、それまでの制御周期TIMEを制御周期TIME2に設定する。以下、外的要因による温度変化が検出されるまでの制御周期を「制御周期TIME1」という。
【0139】
一般に、制御周期を長くすると定着ヒータ25の寿命が長くなるが温度リップルが大きくなり、制御周期を短くすると温度リップルを小さくできるが定着ヒータ25の寿命が短くなるというトレードオフの関係がある。よって、制御周期を常に短くすることは困難であるが、外的要因による温度変化が検出された場合だけなら、制御周期を短くしても定着ヒータ25の寿命に大きな影響は与えない。したがって、制御周期TIME2<制御周期TIME1とすることで、外的要因による温度変化が検出された場合の温度リップルを小さくし、かつ、寿命低下を抑制できる。
【0140】
制御周期TIME2は設定可能な最小の制御周期tmin〔ms〕と同程度以上、かつ、制御周期TIME1未満である。制御周期TIME2が制御周期TIME1と同程度では温度リップルの低減が困難になるので、実用面から、制御周期TIME2の上限は制御周期TIME1の半分未満としてもよい。
【0141】
図28は急激な温度低下が検出された場合の、制御周期の再設定を示すが、比較のため、従来技術の制御周期と共に(上段)、本実施例の制御周期を示した(下段)。制御周期2において外的要因(例えば転写媒体の突入)が発生して、急激な温度低下が始まっている。従来では制御周期3が始まるまで定着ヒータ25をONにすることができず、コールドオフセットが発生するおそれがあった。
これに対し、本実施例の定着制御装置100は、制御周期2において外的要因が発生した直後から、制御周期の起点を再設定し、かつ、制御周期TIME1を制御周期TIME2に短くしている。これにより、外的要因が発生した直後から定着ヒータ25をONにし、また、温度リップルを小さくすることもできる。このため、コールドオフセットが発生することを防止できる。
【0142】
図29は、本実施例の定着制御装置100が制御周期を再設定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【0143】
制御周期の満了を判定する前に、外的要因検出部66が点灯制御を変更するか否かを判定している点が特徴になる(S2)。点灯制御の変更の判定方法は、外的要因による温度変化の有無の判定方法と同じである。
【0144】
点灯制御を変更すると判定された場合(S2のYes)、制御周期変更部71が制御周期TIME1をTIME2に変更する(S4)。この時、制御周期再設定部69は制御周期の起点を再設定している。これにより、制御周期が短くなり温度リップルを低減できる。
【0145】
点灯制御を変更すると判定されない場合(S2のNo)、制御周期変更部71が制御周期TIME2をTIME1に変更する(S6)。この場合も、制御周期再設定部69は制御周期の起点を再設定している。これにより、制御周期が長くなり定着ヒータ25の寿命が短くなることを抑制できる。
【0146】
なお、制御周期をTIME2からTIME1に戻す処理については実施例10,11で説明する。
【0147】
以降の処理は図6(a)と同じである。すなわち制御周期検出部61は、制御周期TIME1又は制御周期2の満了を検出すると(S10のYes)、点灯制御部62に通知する。これにより、点灯制御部62は点灯制御を開始する(S20)。ステップS4により、制御周期TIME1がTIME2に変更された場合、ステップS10の判定は変更の直後にYesとなるので、点灯制御部62は制御周期TIME2にて点灯制御を開始することができる。
【0148】
したがって、図28に示すように、外的要因による温度低下があった直後から、制御周期TIME1をTIME2に変更することができる。
【0149】
以上のように、外的要因による温度変化が検出された場合には短い制御周期TIME2を設定し、外的要因による温度変化が無い場合には長い制御周期TIME1を設定することで、コールドオフセットが発生することを防止できる。また、温度リップルの抑制と、定着ヒータ25の長寿命化も両立できる。
【実施例8】
【0150】
実施例7では、制御周期の起点を再設定するとともに制御周期を変更する定着制御装置100について説明したが、本実施例ではさらに温度上昇か温度低下かにより定着ヒータ25のON・OFFを制御する定着制御装置100について説明する。
【0151】
図30は定着制御装置100の機能ブロック図の一例を、図31は温度変化の検知を模式的に説明する図の一例をそれぞれ示す。本実施例の定着制御装置100は外的要因検出部66でなく温度変化検出部67を有する。温度変化検出部67は、これまで説明したように温度変化を検出し、温度が上昇したのか下降したのかをヒータON・OFF部64に通知する。
【0152】
ヒータON・OFF部64は、温度が上昇した場合、点灯割合算出部63が点灯割合Dを算出することなく、定着ヒータ25をOFFにし、温度が下降した場合、定着ヒータ25をONにする。したがって、点灯割合Dの算出が不要になり、早期に定着ヒータ25をON又はOFFすることで、定着温度が上限値を超えたり、下限値を下回ることを防止できる。
【0153】
図32は、本実施例の定着制御装置100が制御周期の起点を再設定する手順を示すフローチャート図の一例である。図32では、制御周期変更部71が、制御周期2に変更した後(S4)、温度変化検出部67が温度が上昇したか否かを判定している点が特徴となる(S22)。
【0154】
温度が上昇した場合(S22のYes)、ヒータON・OFF部64は定着ヒータ25をOFFに制御し(S24)、温度が上昇しなかった場合(S22のNo)、ヒータON・OFF部64は定着ヒータ25をONに制御する(S26)。なお、S22〜S26は点灯制御のS20に相当する。
【0155】
一方、ステップS2において、外的要因検出部66が点灯制御を変更しない判定した場合(S2のNo)、制御周期変更部71が制御周期TIME2から制御周期TIME1に変更し(S6)、その後、制御周期検出部61は制御周期が満了したか否かを判定する(S10)。以下の処理は、図6(b)と同様になる。
【0156】
したがって、図31に示すように、外的要因による温度低下があった直後から、制御周期がTIME2に変更され定着ヒータ25がONになる。その後、外的要因による温度低下が検出されている間は、制御周期TIME2による定着ヒータ25のONが継続する。制御周期をTIME2からTIME1に戻す処理については実施例10,11で説明する。
【0157】
そして、ステップS2において点灯制御を変更しないと判定されると、制御周期がTIMEに変更され、図6(b)と同様に、点灯割合Dの算出から処理される。
【0158】
このように本実施例の定着制御装置100は、外的要因検出部66が点灯制御を変更すると判定した場合、点灯割合Dを算出しないので、算出による遅れを排除して、定着ヒータ25のON・OFFを実施することができ、温度の立ち上がりや立ち下がりを早くすることが可能になる。
【0159】
なお、本実施例ではステップS4、S6の制御周期の変更はなくてもよい。すなわち、制御周期の起点を再設定し、かつ、定着割合Dを算出することなくヒータをON・OFFするだけでも点灯割合Dの算出による遅延を低減できる。
【実施例9】
【0160】
実施例8では、定着ヒータ25を直接ON又はOFFすることで、点灯割合Dの算出による遅延を回避したが、本実施例では点灯割合Dの算出方法を変更することで点灯割合Dの算出による遅延を回避する定着制御装置100について説明する。
【0161】
図33は定着制御装置100の機能ブロック図の一例を示す。本実施例の定着制御装置100は算出方法切換部72を有する。算出方法切換部72は、外的要因による温度変化が検出された場合、点灯割合Dの算出方法を切り替える。
【0162】
点灯割合Dの算出方法には、ON/OFF制御、ヒステリシス制御、テーブルPID(PI)制御、PID(PI)制御など制御方式と同じ名前で識別される算出方法がある。ON/OFF制御は、上記のとおり、定着温度が目標温度未満なら定着ヒータ25をON(100%デューティ)・定着温度が目標温度より大なら定着ヒータ25をOFF(0%デューティ)する、算出方法である。ヒステレシス制御は、閾値を2つ設け、定着温度が下側の閾値を下回った場合は定着ヒータ25をON(100%デューティ)・定着温度が上側の閾値を上回ったら定着ヒータ25をOFF(0%デューティ)し、定着温度が2つの閾値の間なら現在の点灯割合Dを維持する、算出方法である。テーブルPID制御は、定着温度、定着温度の積分値及び定着温度の微分値に点灯割合Dを対応付けたテーブルを作成しておき、テーブルから点灯割合Dを読み出す算出方法である。PID制御は、目標値と定着温度との差分を、ゲインが乗じられた定着温度、積分値及び微分値に乗じて、点灯割合Dを算出する算出方法である。
【0163】
これらの算出方法では、ON/OFF制御やヒステリシス制御は点灯割合Dの算出が比較的早く、テーブルPID制御やPID制御は点灯割合Dの算出が比較的遅い、という特徴がある。したがって、算出方法切替部72は、外的要因による温度変化が検出された場合、点灯割合Dの算出方法を、例えば、ON/OFF制御に切り替え、外的要因による温度変化が検出されない場合、点灯割合Dの算出方法を、例えばPID制御に切り替える。以下、算出時間が短い算出方法を算出方法1、算出時間が短い算出方法を算出方法2という。
【0164】
こうすることで、外的要因による温度変化が検出された場合、温度リップルを小さくすることができる。
【0165】
図34は、本実施例の定着制御装置100が制御周期の起点を再設定する手順を示すフローチャート図の一例である。図34では、制御周期変更部71が、制御周期TIME2に変更した後(S4)、算出方法切替部72が、点灯割合Dの算出方法2を点灯割合算出部63に要求する点が特徴となる(S401)。また、制御周期変更部71が制御周期TIME1に変更した後(S6)、算出方法切替部72は点灯割合Dの算出方法1を点灯割合算出部63に要求する(S402)。
【0166】
制御周期が制御周期2に設定された後、制御周期2が満了した場合には(S10のYes)、点灯割合算出部63は算出方法2により点灯割合Dを算出するので、算出による遅延を低減し温度リップルを抑制できる。
【0167】
なお、本実施例ではステップS4、S6の制御周期の変更はなくてもよい。すなわち、制御周期の起点を再設定し、かつ、算出方法を切り替えるだけでも点灯割合Dの算出による遅延を低減できる。
【実施例10】
【0168】
本実施例では、制御周期の起点、制御周期の変更、強制的な定着ヒータ25のON・OFF又は点灯割合Dの算出方法の変更、の解除のタイミングについて説明する。なお、制御周期の起点の解除については、制御周期2が満了したところから制御周期1を開始すればよいので、強制的に制御周期1に再設定(すなわち解除)しなくてもよい。
【0169】
図35は定着制御装置100の機能ブロック図の一例を示す。本実施例の定着制御装置100は制御変更継続判定部73を有する。制御変更継続判定部73は、タイマーにより制御方法変更部65が変更した制御方法を継続するか元に戻すかを判定する。
【0170】
本実施例では、制御方法変更部65が制御方法を変更してから経過した時間Δtが、予め定められたΔtmax以上になると、制御方法を元に戻す。Δtmaxは、定着ユニット22の寿命や熱容量、定着ヒータ25の応答性などを考慮して予め定められた値であり,ROMやNVRAM46に保存されている。
【0171】
図36は、本実施例の定着制御装置100が制御周期を元に戻す手順を示すフローチャート図の一例である。
【0172】
まず、制御変更継続判定部73は、制御方法変更部65が制御方法を変更したか否かを判定する(S710)。この判定は、制御方法変更部65が制御方法を変更したことを制御変更継続判定部73に通知するなどして行われる。
【0173】
制御方法変更部65が制御方法を変更した場合(S710のYes)、制御変更継続判定部73はクロックをカウントするなどして制御変更時間Δtの計測を開始する(S720)。
【0174】
そして、制御変更継続判定部73は、制御変更時間ΔtがΔtmax未満か否かを判定する(S730)。
【0175】
制御変更時間ΔtがΔtmax未満の場合(S730のYes)、まだ定着温度が適切に制御されていないと推定して、制御変更継続判定部73は制御変更を継続する(S740)。
【0176】
制御変更時間ΔtがΔtmax未満でない場合(S730のNo)、すでに定着温度が適切に制御されていると推定して、制御変更継続判定部73は制御変更を解除する(S750)。具体的には制御変更継続判定部73は、制御方法変更部65に制御方法を元に戻すように要求する。制御方法変更部65は、元の制御周期1の起点を再設定し、制御周期を元の制御周期1に戻し、強制的にヒータON又はOFFしたなら定着ヒータ25をOFF又はONに戻し、点灯割合Dの算出方法の算出方法を変更した場合は点灯割合Dの算出方法を元の算出方法1に戻す。
【0177】
本実施例によれば、タイマーにより制御方法を確実に元に戻すことができる。特に、制御周期を元に戻すことで、定着ヒータ25への負担(寿命低下)を抑制することができる。
【実施例11】
【0178】
実施例10ではタイマーにより制御方法の変更を解除する定着制御装置100について説明したが、本実施例では定着温度の監視により制御方法の変更を解除する定着制御装置100について説明する。
【0179】
図37は定着制御装置100の機能ブロック図の一例を示す。本実施例の定着制御装置100は外的要因検出部66がその一形態である温度変化検出部67を有する。温度変化検出部67は、制御方法変更部65が制御方法を変更した後、温度変化を監視して、制御方法の変更をもたらした温度変化と逆の温度変化を検出する。実際に温度変化を監視して制御方法を元に戻すか否かを判定するので、温度変化のバラツキが大きい場合でも適切なタイミングで制御方法の変更を解除できる。
【0180】
図38は、本実施例の定着制御装置100が制御周期を元に戻す手順を示すフローチャート図の一例である。
【0181】
まず、制御変更継続判定部73は、制御方法変更部65が制御方法を変更したか否かを判定する(S810)。この判定は、制御方法変更部65が制御方法の変更を制御変更継続判定部73に通知するなどして行われる。
【0182】
次に、温度変化検出部67は、制御方法の変更が定着温度の上昇によるものか否かを判定する(S820)。
【0183】
定着温度の上昇により制御方法が変更された場合(S820のYes)、温度変化検出部67は、現在の定着温度Tと1検知周期前に検知した定着温度T'の差ΔTがゼロより大きいか否かを判定する(S830)。
【0184】
ΔTがゼロより大きい場合(S830のYes)、温度上昇がまだ継続しており上限値を超える可能性があるので、制御変更継続判定部73は制御変更を継続する(S840)。
【0185】
ΔTがゼロより大きくない場合(S830のNo)、温度上昇が温度低下に転じると推定されるので、制御変更継続判定部73は制御変更を解除する(S850)。
【0186】
ステップS820に戻り、定着温度の上昇により制御方法が変更されていない場合(S820のNo)、温度変化検出部67はΔTがゼロより小さいか否かを判定する(S860)。
【0187】
ΔTがゼロより小さい場合(S860のYes)、温度低下がまだ継続しており下限値を超える可能性があるので、制御変更継続判定部73は制御変更を継続する(S870)。
【0188】
ΔTがゼロより小さくない場合(S860のNo)、温度低下が温度上昇に転じると推定されるので、制御変更継続判定部73は制御変更を解除する(S880)。
【0189】
本実施例によれば、タイマーを使用しなくても、定着温度を監視することで確実に制御方法を元に戻すことができる。特に、制御周期を元に戻すことで、定着ヒータ25への負担(寿命低下)を抑制することができる。
【符号の説明】
【0190】
25 定着ヒータ
26 サーミスタ
38 エンジンサブボード
41 エンジンメインボード
47 コントローラ
100 定着制御装置
200 画像形成装置
300 プログラム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0191】
【特許文献1】特開2003−280448号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写媒体に形成されたトナー像を熱により転写媒体に定着させる定着手段の定着制御装置であって、
前記定着手段を加熱する加熱手段と、
前記定着手段の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段から検出された温度と目標温度とに応じて、所定の制御周期毎に前記加熱手段を制御する制御手段と、
前記温度検出手段が検出した温度から外的要因による温度変化の発生を検出する外的要因発生検出手段と、
前記外的要因発生検出手段が外的要因による温度変化の発生を検出した際、制御周期の起点を新たに設定する制御周期設定手段と、
を有することを特徴とする定着制御装置。
【請求項2】
前記制御周期設定手段は、
前記外的要因発生検出手段が外的要因による温度変化の発生を検出した際、制御周期を、外的要因による温度変化の発生を検出する前よりも短くする、ことを特徴とする請求項1記載の定着制御装置。
【請求項3】
前記制御周期設定手段は、制御周期の起点を新たに設定した後、前記定着手段の温度に応じて、制御周期を元に戻すことを特徴とする請求項1又は2記載の定着制御装置。
【請求項4】
前記外的要因発生検出手段が温度上昇を検出して前記制御周期設定手段が制御周期の起点を新たに設定した場合、前記制御周期設定手段は、温度低下を検出することで制御周期を元に戻し、
前記外的要因発生検出手段が温度低下を検出して前記制御周期設定手段が制御周期の起点を新たに設定した場合、前記制御周期設定手段は、温度上昇を検出することで制御周期を元に戻す、
ことを特徴とする請求項3記載の定着制御装置。
【請求項5】
前記制御周期設定手段は、前記外的要因発生検出手段が外的要因による温度変化の発生を検出した時を新たな制御周期の起点とする、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の定着制御装置。
【請求項6】
前記外的要因発生検出手段は、所定期間の温度変化量が閾値を超えたこと、又は、所定期間の温度変化が前記加熱手段制御手段による前記加熱手段の加熱又は非加熱と逆の変化であることから、外的要因による温度変化の発生を検出する、
ことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の定着制御装置。
【請求項7】
前記外的要因発生検出手段は、前記温度検出手段が検出した温度が予め設定された閾値を超えた場合、又は、下回った場合、外的要因による温度変化の発生を検出する、
ことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の定着制御装置。
【請求項8】
前記外的要因発生検出手段が外的要因による温度変化の発生を検出した際、前記制御手段による制御方法を切り替える制御方法切り替え手段、を有し、
前記制御方法切り替え手段は、制御周期におけるDutyの算出方法を変更する、
ことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の定着制御装置。
【請求項9】
転写媒体に形成されたトナー像を熱により転写媒体に定着させる定着手段の定着制御装置が実行するプログラムであって、
CPUに、
温度検出手段が検出した前記定着手段の温度を取得するステップと、
前記温度検出手段から検出された温度と目標温度とに応じて、所定の制御周期毎に前記加熱手段を制御する制御ステップと、
前記温度検出手段が検出した温度から外的要因による温度変化の発生を検出する外的要因発生検出ステップと、
前記外的要因発生検出手段が外的要因による温度変化の発生を検出した際、制御周期の起点を新たに設定する制御周期設定ステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項10】
CPUに、
前記制御周期設定ステップにおいて制御周期の起点を新たに設定した後、前記定着手段の温度に応じて、制御周期を元に戻すステップ、
を実行させることを特徴とする請求項9記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−63610(P2012−63610A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208216(P2010−208216)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】