説明

定着装置、画像形成装置、定着方法及び画像形成方法

【課題】省エネルギー化を図りつつ、加熱温度不足による定着不良が発生するのを抑制できる定着装置及び定着方法、前記定着装置を備えた画像形成装置、並びに、前記定着方法を用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】第一回転体と第二回転体とを有し該第一回転体と該第二回転体とを圧接させて圧接部を形成し、該圧接部で記録媒体を挟み込んで該記録媒体上のトナーを加圧する加圧手段と、前記第一回転体を加熱する加熱手段とを備え、樹脂、及び、該樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて前記記録媒体上に形成されたトナー像を、該記録媒体に定着させる定着装置において、前記第一回転体の線速が前記第二回転体の線速よりも速い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機などの画像形成装置に用いられる定着装置及び定着方法、前記定着装置を備えた画像形成装置、並びに、前記定着方法を用いた画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置は、紙、布、及びOHP用シートのような記録媒体に、画像情報に基づいて文字や記号を含む画像を形成する装置である。画像形成装置には種々の方式があるが、電子写真方式の画像形成装置は、普通紙に高精細な画像を高速で形成することができるため、広くオフィスで使用されている。このような電子写真方式の画像形成装置としては、被定着媒体である記録媒体上のトナーを120[℃]〜160[℃]で加熱して軟化あるいは溶融させ、軟化等させたトナーを加圧し記録媒体にトナーをアンカリングすることによって、トナーを記録媒体上に定着させる熱定着方式が広く普及している(特許文献1など)。
【0003】
このような熱定着方式を採用した電子写真方式の画像形成装置における消費電力の半分以上は、熱定着方式の定着装置においてトナーを加熱処理のために消費されている。一方、近年における環境問題対策の観点からは、消費電力を抑えて省エネルギー化を図れる画像形成装置が望まれている。このため、従来の画像形成装置における消費電力の半分以上を消費する定着装置での省エネルギー化が求められている。従来の熱定着方式の定着装置では加熱処理に多くの電力を消費していたため、トナーを定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させる定着方式が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人は、特願2011−113897号(以下、先願という)において、熱可塑性エラストマーを含有する樹脂、及び、前記樹脂を軟化する常温で固体の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて、記録媒体上にトナー像を形成する画像形成装置を提案している。この先願の画像形成装置では、定着装置に搬送された記録媒体上のトナー像が、内部に加熱手段であるヒーターが設けられた加熱ローラと加圧ローラとで形成される圧接部であるニップ部を通過したときに加熱されつつ加圧される。このとき、ニップ部でのトナー像の加熱温度は、カプセルに内包された可塑剤の融点温度以上であり、省エネルギー化の観点から40[℃]〜50[℃]としている。前記カプセルに内包した可塑剤は、ヒーターによって融点温度まで加熱され溶解し、加圧されることにより破壊されたカプセルからカプセル近傍の樹脂に拡散していく。このように可塑剤が樹脂に拡散することで、可塑剤の軟化作用により樹脂に含有された熱可塑性エラストマーの物理的架橋が崩れて樹脂が一気に軟化し、それに伴ってトナーが軟化する。そして、このように軟化したトナーがニップ部で加圧され記録媒体にアンカリングすることにより、記録媒体にトナー像が定着される。これにより、熱だけで樹脂を軟化させる場合よりも定着装置で記録媒体にトナー像を定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0005】
しかしながら、前記先願の画像形成装置では加熱ローラの温度が低温であるため、従来のような高温での定着に比べてニップ部での加熱ローラからトナーへの熱の伝達速度は遅くなってしまう。そのため、ニップ部でのトナー温度を定着可能温度まで昇温させることができないと、加熱温度不足によってカプセルに内包した可塑剤を十分に溶解することができず定着不良が発生するといった問題が生じる。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、省エネルギー化を図りつつ、加熱温度不足による定着不良が発生するのを抑制できる定着装置及び定着方法、前記定着装置を備えた画像形成装置、並びに、前記定着方法を用いた画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、第一回転体と第二回転体とを有し該第一回転体と該第二回転体とを圧接させて圧接部を形成し、該圧接部で記録媒体を挟み込んで該記録媒体上のトナーを加圧する加圧手段と、前記第一回転体を加熱する加熱手段とを備え、樹脂、及び、該樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて前記記録媒体上に形成されたトナー像を、該記録媒体に定着させる定着装置において、前記第一回転体の線速が前記第二回転体の線速よりも速いことを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、後述する実験で明らかにしたように、樹脂、及び、該樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて記録媒体上に形成されたトナー像を、該記録媒体に定着させる定着装置において、加熱手段によって加熱される第一回転体の線速が第二回転体の線速よりも速いことで、圧接部で第一回転体からトナーへの熱の伝達速度が速くなり、低温の定着温度でカプセルに内包した可塑剤を十分に溶解することができ、良好な定着性を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上、本発明によれば、省エネルギー化を図りつつ、加熱温度不足による定着不良が発生するのを抑制できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】内部加熱ローラ方式の定着装置の概略構成図。
【図2】実施形態の画像形成装置の一例を示す概略図。
【図3】実施形態の画像形成装置の他例を示す概略図。
【図4】画像形成ユニットの拡大図。
【図5】物理的刺激として熱と圧力を与えた場合の本実施形態のトナー状態を表すグラフ。
【図6】カプセルに内包された可塑剤をトナーに添加した場合における定着工程から排紙におけるトナーの状態変化を表すグラフ。
【図7】(a)トナー保存時におけるトナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す概念図、(b)定着時におけるトナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す概念図、(c)排紙時におけるトナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す概念図。
【図8】カプセルを含有したトナーの概略断面図。
【図9】直接転写方式のタンデム型画像形成装置の一例を示す概略図。
【図10】間接転写方式のタンデム型画像形成装置の一例を示す概略図。
【図11】オイル塗布装置を具備した内部加熱ローラ方式の定着装置の概略構成図。
【図12】内部加熱ベルト方式の定着装置の概略構成図。
【図13】オイル塗布装置を具備した内部加熱ベルト方式の定着装置の概略構成図。
【図14】外部加熱ローラ方式の定着装置の概略構成図。
【図15】オイル塗布装置を具備した外部加熱ローラ方式の定着装置の概略構成図。
【図16】外部加熱ベルト方式の定着装置の概略構成図。
【図17】オイル塗布装置を具備した外部加熱ベルト方式の定着装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を適用した画像形成装置の実施形態について説明する。
図2に示す画像形成装置100は、静電潜像担持体としての感光体ドラム10と、帯電手段としての帯電ローラ20と、露光手段としての露光装置による露光光Lと、現像手段としての現像装置40と、中間転写ベルト50と、クリーニング手段としてのクリーニングブレード60と、除電手段としての除電ランプ69とを備えている。
【0012】
中間転写ベルト50は無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、図中矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写ベルト50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写ベルト50には、その近傍に中間転写ベルトクリーニング装置90が配置されており、また、記録媒体Sに可視像(トナー像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な転写手段としての転写ローラ80が対向して配置されている。中間転写ベルト50の周囲には、この中間転写ベルト50上の可視像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、中間転写ベルト50の回転方向において、感光体ドラム10と中間転写ベルト50との接触部と、中間転写ベルト50と記録媒体Sとの接触部との間に配置されている。
【0013】
現像装置40は、現像剤担持体としての現像ベルト41と、この現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像装置45K、イエロー現像装置45Y、マゼンタ現像装置45M、及びシアン現像装置45Cとから構成されている。なお、ブラック現像装置45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えている。イエロー現像装置45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えている。マゼンタ現像装置45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えている。シアン現像装置45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラにより回転可能に張架され、一部が感光体ドラム10と接触している。
【0014】
図2に示す画像形成装置100においては、まず、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置(不図示)が感光体ドラム10上に露光を行い、静電潜像を形成する。感光体ドラム10上に形成された静電潜像を、現像装置40からトナーを供給して現像して可視像を形成する。可視像が、ローラ51から印加された電圧により中間転写ベルト50上に転写(一次転写)され、更に記録媒体S上に転写(二次転写)される。その結果、記録媒体S上には転写像が形成される。なお、感光体ドラム10上の残存トナーは、クリーニングブレード60により除去され、感光体ドラム10における帯電は除電ランプ69により一旦、除去される。
【0015】
本実施形態の画像形成装置により本実施形態の画像形成方法を実施する他の態様について、図3を参照しながら説明する。
【0016】
図3に示すタンデム型カラー画像形成装置である複写機は、複写機本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
【0017】
複写機本体150には、無端ベルト状の中間転写ベルト50が中央部に設けられている。そして、中間転写ベルト50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、図3中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写ベルト50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング手段である中間転写ベルトクリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写ベルト50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、及びブラックの4つの画像形成ユニット18が対向して並置されたタンデム型画像形成部120が配置されている。
【0018】
タンデム型画像形成部120の近傍には、露光装置21が配置されている。中間転写ベルト50における、タンデム型画像形成部120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである転写搬送ベルト24が一対のローラ23に張架されており、転写搬送ベルト24上を搬送される記録媒体Sと中間転写ベルト50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には定着装置25が配置されている。定着装置25は、定着ベルト26と加圧ローラ27を有している。
【0019】
なお、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、記録媒体Sの両面に画像形成を行うために記録媒体Sを反転させるための反転装置28が配置されている。
【0020】
次に、タンデム型画像形成部120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
【0021】
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動し、第一走行体33及び第二走行体34が走行する。このとき、第一走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第二走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読み取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの画像情報とされる。
【0022】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型画像形成部120における各画像形成ユニット18(ブラック用画像形成ユニット、イエロー用画像形成ユニット、マゼンタ用画像形成ユニット、及びシアン用画像形成ユニット)にそれぞれ伝達され、各画像形成ユニットにおいて、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー像が形成される。
【0023】
図4は、4つの画像形成ユニット18Y,C,M,Kからなるタンデム型画像形成部120の一部を示す部分拡大図である。なお、4つの画像形成ユニット18Y,C,M,Kは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、同図においては各符号に付すY,C,M,Kという添字を省略している。同図に示すように、画像形成ユニット18は、感光体ドラム10の周りに、帯電手段としての帯電装置160、現像装置61、一次転写手段としての転写ローラ62、感光体ドラムクリーニング装置63、除電装置64等を備えている。
【0024】
感光体ドラム10としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材を塗布し、感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。また、帯電装置160としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体ドラム10に当接させながら回転させるものを用いている。感光体ドラム10に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0025】
現像装置61は、磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ65に供給する攪拌部66と、現像スリーブ65に付着した二成分現像剤のうちのトナーを感光体ドラム10に転移させる現像部67とを有している。
【0026】
攪拌部66は、現像部67よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュー68、これら搬送スクリュー68間に設けられた仕切り板、現像ケース70の底面に設けられたトナー濃度センサ71などを有している。
【0027】
現像部67は、現像ケース70の開口を通して感光体ドラム10に対向する現像スリーブ65、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ72、現像スリーブ65に先端を接近させるドクタブレード73などを有している。ドクタブレード73と現像スリーブ65との間の最接近部における間隔は500[μm]程度に設定されている。現像スリーブ65は、非磁性の回転可能なスリーブ状の形状になっている。また、現像スリーブ65に連れ回らないようにないようされるマグネットローラ72は、例えば、ドクタブレード73の箇所から現像スリーブ65の回転方向にN1、S1、N2、S2、S3の5磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部66から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ65表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
【0028】
磁気ブラシは、現像スリーブ65の回転に伴ってドクタブレード73との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体ドラム10に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ65に印加される現像バイアスと、感光体ドラム10の静電潜像との電位差によって静電潜像上に転移して現像に寄与する。更に、現像スリーブ65の回転に伴って再び現像部67内に戻り、マグネットローラ72の磁極間の反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部66に戻される。攪拌部66内では、トナー濃度センサ71による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置61として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
【0029】
感光体ドラムクリーニング装置63としては、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード75を感光体ドラム10に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体ドラム10に接触させる接触導電性のファーブラシ76を、図中矢印方向に回転自在に有するクリーニング装置を採用している。そして、ファーブラシ76にバイアスを印加する金属製の電界ローラ77を図中矢示方向に回転自在に設け、その電界ローラ77にスクレーパ78の先端を押し当てている。スクレーパ78によって電界ローラ77から除去されたトナーは、回収スクリュー79上に落下して回収される。
【0030】
かかる構成の感光体ドラムクリーニング装置63は、感光体ドラム10に対してカウンタ方向に回転するファーブラシ76で、感光体ドラム10上の残留トナーを除去する。ファーブラシ76に付着したトナーは、ファーブラシ76に対してカウンタ方向に接触して回転するバイアスを印加された電界ローラ77に取り除かれる。電界ローラ77に付着したトナーは、スクレーパ78でクリーニングされる。感光体ドラムクリーニング装置63で回収したトナーは、回収スクリュー79で感光体ドラムクリーニング装置63の片側に寄せられ、トナーリサイクル装置80で現像装置61へと戻されて再利用される。
【0031】
除電装置64は、除電ランプ等からなり、光を照射して感光体ドラム10の表面電位を除去する。このようにして除電された感光体ドラム10の表面は、帯電装置160によって一様帯電せしめられた後、光書込処理がなされる。
【0032】
このように、タンデム型画像形成部120における各画像形成ユニット18(ブラック用画像形成ユニット、イエロー用画像形成ユニット、マゼンタ用画像形成ユニット及びシアン用画像形成ユニット)は、それぞれ、感光体ドラム10(ブラック用感光体ドラム10K、イエロー用感光体ドラム10Y、マゼンタ用感光体ドラム10M、及びシアン用感光体ドラム10C)と、感光体ドラム10を一様に帯電させる帯電装置160と、各カラー画像情報に基づいて各感光体ドラム10の表面を露光光Lで露光し、各感光体ドラム10上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー像を形成する現像装置61と、トナー像を中間転写ベルト50上に転写させるための転写ローラ62と、感光体ドラムクリーニング装置63と、除電装置64とを備えており、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。
【0033】
こうして形成されたブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像は、支持ローラ14、支持ローラ15及び支持ローラ16により回転移動される中間転写ベルト50上にそれぞれ、ブラック用感光体ドラム10K上に形成されたブラック画像、イエロー用感光体ドラム10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用感光体ドラム10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用感光体ドラム10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。
【0034】
そして、中間転写ベルト50上にブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0035】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つから記録媒体Sを繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して複写機本体150内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上の記録媒体Sを繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。
【0036】
なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、記録媒体Sの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。
【0037】
そして、中間転写ベルト50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写ベルト50と二次転写装置22との間に記録媒体Sを送出させ、二次転写装置22により合成カラー画像(カラー転写像)を記録媒体S上に転写(二次転写)することにより、記録媒体S上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写ベルト50上の残留トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置17によりクリーニングされる。
【0038】
カラー画像が転写され形成された記録媒体Sは、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、この定着装置25において、熱と圧力とにより合成カラー画像(カラー転写像)が記録媒体S上に定着される。
【0039】
その後、記録媒体Sは、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされ、あるいは、切換爪55で切り換えて反転装置28により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【0040】
<トナー>
本実施形態で用いるトナーは、樹脂、着色剤、及びカプセルを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0041】
前記樹脂は、熱可塑性エラストマーを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の成分を含む。前記カプセルは、前記熱可塑性エラストマーを軟化する可塑剤を内包し、所定の圧力により破壊されるカプセルである。
【0042】
従来のトナーを用いた画像形成装置では、一般に、定着装置のニップ部で、トナーを軟化させる温度以上に加熱しながら圧力をかけて紙などの記録媒体Sにトナーを定着させる。その加熱温度は、一般には、120[℃]〜160[℃]である。この定着方式における加熱に要する消費電力は、画像形成装置の消費電力の多くを占める。そのため、常温に近い加熱温度(トナーの温度として、概ね40[℃]〜50[℃])で紙などの記録媒体Sにトナーを定着できれば、従来の画像形成装置に比べ、消費電力を50[%]以上削減することができる。
【0043】
一方で、トナースペント及びトナーフィミングは、画像形成装置機内でトナー同士又はトナーと機械類との摩擦による摩擦熱でトナー温度が上がり、トナーが軟化することで発生する。その摩擦熱によるトナーの温度上昇は、印刷速度により異なるが、概ね50[℃]前後と考えられる。
【0044】
消費電力を大幅に削減するために定着温度を常温に近づけると、定着温度と画像形成装置機内でのトナーの摩擦熱による温度とが重なり、従来のトナーでは、常温に近い定着(低温定着;例えば、60[℃]以下)とトナースペント防止及びトナーフィミング防止とを両立することができない。
【0045】
そこで、本願発明者らは、トナーへ2つの物理的刺激を与え、それらの2つの物理的刺激がある閾値を超えて初めてトナーの軟化が起こるようにトナーに工夫をすることで、上記の両立、即ち常温に近い定着とトナースペント防止及びトナーフィミング防止とを図ることにたどり着いた。前記2つの物理的刺激は、1つは熱で、もう1つは圧力である。
【0046】
図5に、物理的刺激として熱と圧力を与えた場合の本実施形態のトナー状態を表すグラフを示す。図5に示すように、刺激1を熱(温度)、刺激2を圧力(加圧力)とすると、現像装置でトナーにかかる圧力(刺激2、加圧力1)が閾値以下であれば、加熱温度が、例えば、50[℃]になっても、トナースペント及びトナーフィルミングが発生するほどにトナーは、軟化しない。一方、加熱温度が50[℃]で、定着装置のニップ部でトナーにかかる圧力(刺激2、加圧力2)が、閾値を超えていれば、トナーは、定着装置のニップ部において定着に必要な程度に軟化する。このように、現像装置と定着装置のニップ部が同じ温度になっていても、もう1つの物理的刺激である圧力により、定着装置のニップ部でのみ軟化するようにトナーに工夫ができれば、常温に近い定着(低温定着)とトナースペント防止及びトナーフィミング防止とを両立することができる。
【0047】
そこで、本願発明者らは、定着装置のニップ部での圧力に閾値を設ける方法として、トナー中に分散された、樹脂を軟化させる可塑剤を閉じ込めたカプセルを破壊する圧力を閾値とすることに思い至った。定着装置のニップ部において、前記閾値を超えた圧力が、樹脂を軟化させる可塑剤を閉じ込めたカプセルに付与されると、カプセルが破壊され、カプセルから漏出した可塑剤がトナー中に浸透拡散して樹脂が軟化される。従来は、熱でトナー中の樹脂を軟化させるのに対して、この技術的思想は、トナー中に含まれる、可塑剤を内包するカプセルを、圧力で破壊し、その可塑剤により樹脂を軟化させる点において、従来と考え方が大きく異なる。
【0048】
ただし、単にトナー中に結着樹脂とカプセルに内包された可塑剤とを含有させ、その可塑剤によりトナーを軟化させるだけでは、新たな問題点がある。それは、以下のとおりである。
【0049】
図6は、カプセルに内包された可塑剤をトナーに添加した場合における定着工程から排紙におけるトナーの状態変化を表すグラフである。図6に示すように、例えば、定着装置のニップ部においては、0.1秒間以内に定着装置のニップ部の加圧手段によりトナーが軟化及び変形した後、0.3秒間程度で、印刷紙(記録媒体S)は、機内の排紙手段を通過する。排紙手段を通過する時点では、トナーはある程度硬化しておく必要がある。なぜなら、排紙手段に軟化したトナーが固着するためである。しかし、通常、可塑剤で軟化したトナーは、可塑剤が除去されない限りは、軟化状態を維持し、硬化することがない。このため、排紙手段に軟化したトナーが固着し、紙ジャム及び画像はがれを発生させる恐れがあり、装置として信頼性が悪くなりかねない。
【0050】
そこで、本願発明者らは、樹脂に熱可塑性エラストマーを含有させ、熱可塑性エラストマーを軟化させることに思い至った。
【0051】
図7(a)、図7(b)、図7(c)に、トナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す。図7(a)は、トナー保存時におけるトナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す概念図である。図7(b)は、定着時におけるトナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す概念図である。図7(c)は、排紙時におけるトナー中の熱可塑性エラストマーと可塑剤の状態を示す概念図である。
【0052】
図7(a)、図7(b)、図7(c)における熱可塑性エラストマーは、硬いハードセグメントとゴム状弾性を示すソフトセグメントとを有するブロック共重合体である。熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント同士が分子間力により物理的架橋を形成することで流動性がなく、ソフトセグメントの弾性によりゴム状特性を示す。
【0053】
図7(a)、図7(b)、図7(c)における可塑剤は、常温で固体であり、熱可塑性エラストマーの少なくともハードセグメントに対して可塑性を有する。
【0054】
ここで、物理的架橋とは、ハードセグメント同士が分子間力により集まって分子運動を拘束する状態を意味する。
【0055】
トナー保存時には、図7(a)に示すように、トナー中の熱可塑性エラストマーは、弾性変形をするが、ハードセグメントによる物理的架橋により、流動性がなく、塑性変形はしない。また、カプセルは、破壊されず、可塑剤の漏出はない。現像装置においても同様である。
【0056】
定着時には、トナーは、加熱されると共に、閾値を超えた圧力が付与される。そうすると、図7(b)に示すように、カプセルが破壊されて可塑剤が漏出し、漏出した可塑剤の軟化作用により熱可塑性エラストマーのハードセグメント同士の物理的架橋が崩れ、熱可塑性エラストマーは、一気に軟化する。それに伴ってトナーが軟化する。
【0057】
通常の熱可塑性樹脂は、樹脂分子同士のいたるところで分子間力により相互作用しており、その相互作用を緩めるために、可塑剤が多めに必要で、かつ軟化応答が遅い。
【0058】
一方、熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントのみで物理的架橋を形成し、ソフトセグメントは、もともと柔らかい状態にある。そのため可塑剤は、ハードセグメント部のみ物理的架橋を緩めればよい。したがって、熱可塑性エラストマーを用いると、可塑剤濃度低減が可能で、かつ軟化応答を速めることができる。
【0059】
このため、本実施形態のような応答時間を確保する定着方式であれば熱可塑性樹脂でも定着可能ではあるが、熱可塑性エラストマーを使用することでより安定した軟化、定着を確保にさらに好適である。
【0060】
定着装置のニップ部で軟化されたトナーは、排紙時には、自然冷却される。その際、図7(c)に示すように、トナー中の常温で固体の可塑剤は、流動性を失い、ハードセグメントから外れる。そうすると、可塑剤と熱可塑性エラストマーは、相分離する。この現象により、軟化していた可塑性エラストマーは、物理的架橋を形成し、トナーは、再び硬化する。
【0061】
本願発明者らは、熱可塑性エラストマーは、通常の熱可塑性樹脂と異なり、ハードセグメント同士が物理的架橋を形成しやすい性質があることが特徴で、可塑剤が固化するにつれて、ハードセグメント同士が再結合しやすく、硬化が一般的な樹脂よりも促進することを見出した。
【0062】
また、可塑剤が常温で固体の場合、可塑剤を含有する前の樹脂の硬さか、それ以上の硬さになる利点がある。
【0063】
<樹脂>
前記樹脂は、熱可塑性エラストマーを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の樹脂を含む。
【0064】
<熱可塑性エラストマー>
熱可塑性エラストマーは、常温ではゴム弾性体としての挙動をとり、温度上昇によって塑性変形をする樹脂である。ここで、常温とは、熱したり冷やしたりせずに達成される温度であり、JIS Z8703にて定義されている、5[℃]〜35[℃]であることが好ましい。
【0065】
熱可塑性エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ハードセグメントとソフトセグメントとを有することが好ましい。
【0066】
熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体が好ましく、A−B−Aトリブロック共重合体(ただし、Aは、ハードセグメントを表し、Bは、ソフトセグメントを表す。)がより好ましい。
【0067】
ここで、ハードセグメントとは、加硫ゴムの架橋点に相当して塑性変形を防止する分子運動拘束成分を意味し、ソフトセグメントとは、ゴム弾性を示す柔軟性成分を意味する。
【0068】
熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメントとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
【0069】
熱可塑性エラストマーにおけるソフトセグメントとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、ポエーテル、ポリエステル、ポリアルキルアクリレート、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0070】
なお、ポリエステル及びポリ塩化ビニルは、その具体的組成により、ハードセグメントにもなるし、ソフトセグメントにもなる。
【0071】
ハードセグメントとソフトセグメントとの質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ハードセグメント:ソフトセグメントが、1:9〜6:4が好ましい。前記質量比が、1:9よりもハードセグメントの割合が低いと、常時、トナーに粘着性が出ることがあり、6:4よりもハードセグメントの割合が高いと、硬くなりすぎて、定着に必要な軟化が確保できなくなることがある。
【0072】
熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、ハードセグメントがポリスチレンでソフトセグメントがポリブタジエンであるSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)や、ハードセグメントがポリスチレンでソフトセグメントが水添ポリブタジエンであるSEBS(スチレン−水添ブタジエン−スチレン)、ハードセグメントがポリスチレンでソフトセグメントがポリイソプレンであるSEPS(スチレン−イソプレン−スチレン)、ハードセグメントがポリウレタンでソフトセグメントがポリエーテルであるTPU(ポリウレタン−ポリエーテル−ポリウレタン)、ハードセグメントがポリエチレンでソフトセグメントがポリ酢酸ビニルであるEVA(エチレン−酢酸ビニル−エチレン)、ハードセグメントがポリ塩化ビニルでソフトセグメントがポリ塩化ビニルであるTPVCなどが挙げられる。
【0073】
熱可塑性エラストマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂に対して50[質量%]〜95[質量%]が好ましく、50[質量%]〜80[質量%]がより好ましい。前記含有量が、50[質量%]未満であると、定着後のトナー層にタック感が発生し、印刷紙などの記録媒体Sを重ねたときにブロッキングを生じることがあり、95[質量%]を超えると、定着時に、印刷紙のパルプ繊維に樹脂がからみつきにくくなり、紙へのアンカリングが弱くなり、定着不良を生じることがある。前記含有量が、前記好ましい範囲内であると、ブロッキング及び定着不良を生じることなく、画像形成ができる点で有利である。
【0074】
<その他の樹脂>
その他の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記可塑剤により軟化される樹脂が好ましい。前記その他の樹脂が、前記可塑剤により軟化されることにより、印刷紙のパルプ繊維に樹脂がからみつきやすくなり、紙へのアンカリングが強くなり、定着性に優れる。
【0075】
また、前記その他の樹脂としては、熱可塑性エラストマーと相溶性の良い樹脂が好ましい。熱可塑性エラストマーと相溶性の良い樹脂としては、例えば、熱可塑性エラストマーがハードセグメントとソフトセグメントとを有する場合、ハードセグメントと類似の構造を有する樹脂などが挙げられる。
【0076】
前記その他の樹脂としては、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等の単独又は2種類以上からなる重合体;ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。
【0077】
前記重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリブチルアクリレートなどが挙げられる。
【0078】
また、前記その他の樹脂としては、変性ポリエステル樹脂が挙げられる。前記変性ポリエステル樹脂とは、樹脂中に酸、アルコールのモノマーユニットに含まれる官能基とエステル結合以外の結合基が存在したり、また樹脂中に構成の異なる樹脂成分が共有結合、イオン結合などで結合したりしたポリエステル樹脂をいう。
【0079】
前記変性ポリエステル樹脂としては、例えば、活性水素基含有化合物と、化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステル樹脂とを反応させ前記ポリエステル樹脂を伸長反応、架橋反応等させたもの(ウレア変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂など)が挙げられる。
【0080】
前記活性水素基含有化合物としては、例えば、アミン類などが挙げられる。前記アミン類としては、例えば、ジアミン、3価以上のポリアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、これらのアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
<着色剤>
着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜、公知の染料及び顔料を選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。前記マスターバッチと共に混練される樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0083】
<カプセル>
カプセルは、熱可塑性エラストマーを軟化する可塑剤を内包している。カプセルは、所定の圧力により破壊されるカプセルである。前記所定の圧力とは、定着時の圧力であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5[MPa]を超えることが好まし好ましい。前記圧力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3[MPa]以下が好ましく、1[MPa]以下がより好ましい。前記所定の圧力とは、画像形成装置の定着手段のニップ部における設定圧力である。
【0084】
定着装置のニップ部の圧力(ニップ圧)と現像装置等の機内でトナーにかかる圧力に差があればあるほど、トナーの耐久性は上がる。しかしながら、定着装置のニップ部の圧力を高くしすぎる(例えば、5[MPa]以上)と定着装置のニップ部の機械構成を堅牢にする必要があり、定着装置のニップ部が大型化及び重量化してしまう。一般的なオフィス内で使用するデスクトップタイプ及びフロアタイプの複写機やプリンタを想定した場合の定着装置のニップ部の大きさ及び重さを重視すると、定着装置のニップ部にかけられる圧力は、通常5[MPa]以下であり、1[MPa]以下が好ましい。一方、画像形成装置機内でトナーに摩擦が生じる場合の圧力は、0.3[MPa]以下と推定される。したがって、前記カプセルは、0.3[MPa]程度では破壊されず、1[MPa]以下の圧力で破壊されるカプセルが好ましい。
【0085】
カプセルは、シェル(外殻)を有する。カプセルの粒径とシェルの厚みは、カプセルの破壊強度に大きな影響を与える。本願発明者らは、シェルが樹脂部材である場合、カプセルの粒径が1[mm]以下の範囲では、カプセルの粒径とシェルの厚みの比率が、カプセルの破壊に影響を与えることを見出した。定着装置のニップ部におけるカプセルの破壊に必要な圧力を1[MPa]程度とした場合、カプセルの粒径とシェルの厚みの比率(カプセルの粒径:シェルの厚み)は、20:1〜5:1が好ましい。
【0086】
カプセルの粒径の下限は、シェルの厚みの強度限界に影響を与える。カプセルのシェルの厚みが数分子鎖オーダーの場合、カプセルの強度が保てず、分子鎖間距離を0.3[nm]程度と仮定すると10分子鎖以上は必要と考えられる。そうすると、シェルの厚みとの比率の関係から、1[MPa]の圧力で前記カプセルを破壊するためのカプセルの粒径は、60[nm]以上が好ましい。
【0087】
また、カプセルの粒径の上限は、定着に必要なトナー中の前記熱可塑性エラストマーに対する前記可塑剤の濃度と前記カプセル破壊後の前記可塑剤の樹脂中への浸透性に影響する。
【0088】
前記可塑剤の含有量は、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、5質量部〜30質量部が好ましく、10質量部〜20質量部がより好ましい。なお、前記カプセルのシェルが薄い場合には、前記カプセルの質量と前記可塑剤の質量を同一視できる。
【0089】
定着装置のニップ部のニップ部での加圧時間は、印刷速度及び加圧ニップ幅により異なるが、従来の一つのニップ構成では10[ms]〜40[ms]程度である。
【0090】
この短時間でトナーを軟化するにはカプセル破壊後に前記可塑剤が前記樹脂中に均一拡散する必要がある。したがって、トナー中の樹脂内部での前記カプセル同士が離れすぎていると、前記可塑剤が前記樹脂中に浸透しきれず、トナーが十分な軟化状態とならず定着不良となる。
【0091】
前記可塑剤の前記樹脂への浸透は、拡散係数で決まり、おおよそ拡散係数が1×10−12〜1×10−13程度であると、ニップ時間が10[ms]〜40[ms]の範囲内に浸透可能な距離は100[nm]〜300[nm]程度である。即ちトナー樹脂中で可塑剤カプセル同士は100[nm]〜300[nm]の距離となるように分散させることが好ましい。
【0092】
以上のことから、前記可塑剤が前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、10質量部〜20質量部の範囲で、前記カプセル同士が100[nm]〜300[nm]の距離となるようするには、前記カプセルの粒径は、400[nm]が上限となる。即ち、カプセルの粒径は、60[nm]〜400[nm]が好ましい。
【0093】
しかし、カプセルをトナー内で均一分散した場合であり、よりトナーを軟化状態で確実に加圧するには浸透拡散の時間を確保する本実施例の定着構成が好ましく、トナー作成や可塑剤の選択範囲が広がり安価な材料を選択できる効果がある。
【0094】
カプセルの粒径は、例えば、TEM(透過型電子顕微鏡)又はSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、その平均値により求めることができる。また、カプセルを分散した液を、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子社製)を用いた動的光散乱法により測定することができる。
【0095】
カプセルのシェル(外殻)は、前記所定の圧力により破壊されるシェルであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0096】
シェルの材質としては、例えば、無機物、樹脂などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。また、シェルは、トナーの製造時に用いる溶剤に対して溶解しないことが好ましい。
【0097】
<可塑剤>
可塑剤は、熱可塑性エラストマーを軟化する可塑剤であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。可塑剤は、前記熱可塑性エラストマーの前記ハードセグメントに対して相溶性を示す可塑剤が好ましい。
【0098】
ここでの「相溶性を示す」とは、液体状態の前記可塑剤と前記熱可塑性エラストマーを接触した状態で接触面が膨潤する又は粘着性が発現する状態である、又は前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して前記可塑剤を30質量部混練した場合に、貯蔵弾性率が1×10[Pa]以下となる状態である。
【0099】
可塑剤は、常温で固体の可塑剤であることが好ましい。可塑剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30[℃]〜60[℃]が好ましい。融点が、前記好ましい範囲内であると、融解に必要な熱量が少なくなり、省エネルギー化の点で有利である。
【0100】
可塑剤としては、具体的には、例えば、n−アルカン類、二塩基酸ジアルキル類、脂肪酸ジアルコキシアルキル類、脂肪酸ジアルコキシアルコキシアルキル類、長鎖有機酸、フタル酸ジシクロヘキシル、4−ブトキシフタロニトリル、塩素化パラフィン、リン酸トリフェニルなどが挙げられる。
【0101】
これらの可塑剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、常温で液体の可塑剤と固体の可塑剤を混合し、常温でベースト状となる程度の可塑剤も好ましい。
【0102】
常温で液体の前記n−アルカン類としては、例えば、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカンなどが挙げられる。
【0103】
常温で固体の前記n−アルカン類としては、例えば、n−オクタデカン、n−ヘプタデカン、n−ノナデカン、融点が40[℃]〜50[℃]のパラフィンなどが挙げられる。
【0104】
常温で液体の前記二塩基酸ジアルキル類としては、例えば、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジオクチルなどが挙げられる。
【0105】
常温で液体の前記脂肪酸ジアルコキシアルキル類としては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジメトキシエチルなどが挙げられる。
【0106】
常温で液体の前記脂肪酸ジアルコキシアルコキシアルキル類としては、例えば、コハク酸ジエトキシエトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエトキシエチルなどが挙げられる。
【0107】
常温で固体の前記長鎖有機酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、これらの混合物などが挙げられる。
【0108】
前記n−アルカン類は、ハードセグメントであるエチレンに構造が類似していることから、前記熱可塑性エラストマーとしてのEVAの可塑剤に適している。
【0109】
前記二塩基酸ジアルキル類、前記脂肪酸ジアルコキシアルキル類、前記脂肪酸ジアルコキシアルコキシアルキル類、前記長鎖有機酸、前記フタル酸ジシクロヘキシル、前記4−ブトキシフタロニトリル、前記塩素化パラフィン、及び前記リン酸トリフェニルは、ハードセグメントがスチレンであるSBS、SEBS、SEPBなどの熱可塑性エラストマーの可塑剤に適している。
【0110】
可塑剤として、常温で固体の可塑剤を用いることで、カプセルの強度を高くすることができる効果がある。
【0111】
一般的に、樹脂のような可とう性を有するシェルにより形成されるカプセルは、破壊に強く、内部が気体のように圧縮性をもつ部材の場合には、20[MPa]程度の高加圧でも破壊できない。
【0112】
しかし、内部に液体が充填されており、非圧縮性であると、加圧によりカプセルが変形するに従い、内圧が一気に上昇し、カプセル内部から液体が押し出ようとする力が働き1PMa以下の圧力で簡単にカプセルが破壊することがある。このように液体を閉じ込めたカプセルは、比較的弱い圧力で破壊されやすい。
【0113】
一方、カプセル内が固体であれば、加圧による変形そのものを抑えるため内圧が上昇せずカプセルが割れにくくなる。即ち、画像形成装置機内で、現像装置等で固体可塑剤の融点よりも低い温度条件下で、トナーに圧力がかかっても内包する可塑剤カプセルの破壊を防止でき保存安定性を高くすることができる。
【0114】
可塑剤の含有量は、前述のとおり、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、5質量部〜30質量部が好ましく、10質量部〜20質量部がより好ましい。
【0115】
<カプセルの製造方法>
カプセルの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、いわゆる一般的に知られているマイクロカプセル製法により製造できる。前記マイクロカプセル製法としては、例えば、界面重合法、in−situ重合法などの油相と水相のエマルジョン系で2相間の界面でシェルを形成する方法;液中乾燥法、コアセベーション法などのように油相と水相のエマルジョンにおける蒸発及び凝集を利用してシェルを形成する方法;光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などによりシェルを形成する方法;マイクロ流路を用いて直接連続相に分散相を注ぎ込み微粒子化する方法など挙げられる。
【0116】
<その他の成分>
その他の成分としては、例えば、無機微粒子、磁性体、帯電制御剤、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、金属石鹸などが挙げられる。
【0117】
<無機微粒子>
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。また、これらの表面に疎水化処理を施すことにより、結着樹脂への分散性が向上する効果があり好ましい。
【0118】
トナーの内部に適切な特性の無機微粒子が存在することで、トナー成分である前記結着樹脂、前記着色剤、ワックスの微分散を達成できる。これは、前記無機微粒子が存在することにより、これらトナー成分にフィラー効果による混合シェアがかかり、均一混合できるためである。
【0119】
無機微粒子の平均一次粒径(以下、平均粒径という)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10[nm]〜1000[nm]が好ましく、50[nm]〜600[nm]がより好ましい。前記平均一次粒径が、10[nm]未満であると、無機微粒子の凝集が生じやすく、トナーの体積固有抵抗値の低下、及びトナー成分の分散悪化が生じることがある。一方、前記平均一次粒径が、1000[nm]を超えると、フィラー効果による分散効果が得られないことがある。また、前記無機微粒子は、外添剤として用いることもできる。
【0120】
<磁性体>
磁性体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金;これらの混合物などが挙げられる。
【0121】
磁性体の具体例としては、例えば、Fe、γ−Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe12O、NiFe、NdFeO、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、Fe、γ−Feの微粉末が好ましい。
【0122】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。
【0123】
異種元素としては、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、スズ、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウムなどが挙げられる。これらの中でも、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ジルコニウムが好ましい。
【0124】
異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、表面に酸化物又は水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0125】
異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、又は各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
【0126】
磁性体の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂100質量部に対して、磁性体10質量部〜200質量部が好ましく、20質量部〜150質量部がより好ましい。
【0127】
磁性体の個数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1[μm]〜2[μm]が好ましく、0.1[μm]〜0.5[μm]がより好ましい。
【0128】
個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザーなどで測定することにより求めることができる。
【0129】
磁性体の磁気特性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20エルステッド〜150エルステッド、飽和磁化50[emu/g]〜200[emu/g]、残留磁化2[emu/g]〜20[emu/g]のものが好ましい。磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0130】
<帯電制御剤>
帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜、公知のものを選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。
【0131】
帯電制御剤は、市販品を用いることができる。前記市販品としては、例えば、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製);銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物などが挙げられる。
【0132】
帯電制御剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記含有量が、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがある。
【0133】
帯電制御剤は、マスターバッチ、結着樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させることもできるし、勿論、有機溶剤に直接溶解又は分散する際に加えてもよい。また、トナー母体粒子調製後にその表面に固定化させてもよい。
【0134】
<外添剤>
外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ微粒子、疎水化されたシリカ微粒子、脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムなど);金属酸化物(例えば、チタニア、アルミナ、酸化スズ、酸化アンチモンなど)又はこれらの疎水化物、フルオロポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、疎水化されたシリカ微粒子、チタニア微粒子、疎水化されたチタニア微粒子が好ましい。
【0135】
シリカ微粒子としては、例えば、R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(いずれも日本アエロジル株式会社製)などが挙げられる。
【0136】
チタニア微粒子としては、例えば、P−25(日本アエロジル株式会社製);STT−30、STT−65C−S(いずれも、チタン工業株式会社製);TAF−140(富士チタン工業株式会社製);MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−150A(いずれも、テイカ株式会社製)などが挙げられる。
【0137】
疎水化されたチタニア微粒子としては、例えばT−805(日本アエロジル株式会社製);STT−30A、STT−65S−S(いずれも、チタン工業株式会社製);TAF−500T、TAF−1500T(いずれも、富士チタン工業株式会社製);MT−100S、MT−100T(いずれも、テイカ株式会社製);IT−S(石原産業株式会社製)などが挙げられる。
【0138】
疎水化されたシリカ微粒子、前記疎水化されたチタニア微粒子、疎水化されたアルミナ微粒子は、親水性の微粒子を疎水化処理剤で処理(疎水化処理)して得ることができる。
【0139】
疎水化処理剤としては、例えば、ジアルキルジハロゲン化シラン、トリアルキルハロゲン化シラン、アルキルトリハロゲン化シラン、ヘキサアルキルジシラザンなどのシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、シリコーンワニスなどが挙げられる。
【0140】
また、無機微粒子にシリコーンオイルを処理(必要に応じて熱を加えて処理)したシリコーンオイル処理無機微粒子も好ましい。
【0141】
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸パリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。これらの中でも、シリカ、二酸化チタンが特に好ましい。
【0142】
前記シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アクリル又はメタクリル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0143】
前記無機微粒子の一次粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1[nm]〜100[nm]が好ましく、3[nm]〜70[nm]がより好ましい。前記平均粒径が、1[nm]未満であると、無機微粒子がトナー中に埋没し、その機能が有効に発揮されにくいことがあり、100[nm]を超えると、静電潜像担持体表面を不均一に傷つけてしまうことがある。
【0144】
前記外添剤として樹脂微粒子を用いることもできる。前記樹脂微粒子としては、例えば、ソープフリー乳化重合、懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン;メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルの共重合体;シリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロン等の縮重合系;熱硬化性樹脂による重合体粒子などが挙げられる。このような樹脂微粒子を機微粒子と併用することによってトナーの帯電性が強化でき、逆帯電のトナーを減少させ、地肌汚れを低減することができる。
【0145】
前記樹脂微粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01[質量%]〜5[質量%]が好ましく、0.1[質量%]〜2[質量%]がより好ましい。
【0146】
前記外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1[質量%]〜5[質量%]が好ましく、0.3[質量%]〜3[質量%]がより好ましい。
【0147】
<流動性向上剤>
流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することが可能なものであり、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0148】
<クリーニング性向上剤>
クリーニング性向上剤は、静電潜像担持体及び中間転写体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加される。
【0149】
クリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩;ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。前記ポリマー微粒子としては、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01[μm]〜1[μm]のものがより好ましい。
【0150】
次に、本実施形態で用いる、カプセルを含有したトナーの一例について説明する。
図8は、カプセルを含有したトナーの概略断面図である。トナー201は、熱可塑性エラストマーを含む結着樹脂202と、着色剤203と、可塑剤207を内包するカプセル204と、帯電制御剤205と、外添剤206とを有している。
【0151】
<トナーの製造方法>
トナーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉砕法、重合法、溶解懸濁法、噴霧造粒法などが挙げられる。これらの中でも、溶解懸濁法が好ましい。
【0152】
<粉砕法>
粉砕法は、例えば、トナー材料を溶融し、混練した後、粉砕し、分級等することにより、トナー粒子を得る方法である。
【0153】
トナー材料の溶融、混練では、トナー材料を混合し、混合物を溶融混練機に仕込んで溶融混練する。溶融混練機としては、例えば、一軸の連続混練機、二軸の連続混練機、ロールミルによるバッチ式混練機などが挙げられる。例えば、株式会社神戸製鋼所製KTK型二軸押出機、東芝機械株式会社製TEM型押出機、有限会社ケイシーケイ製二軸押出機、株式会社池貝鉄工所製PCM型二軸押出機、ブス社製コニーダー等が好適に用いられる。この溶融混練は、カプセルを破壊しない条件で行うことが好ましい。カプセルを破壊しない条件としては、例えば、トナー材料に、結着樹脂を溶解する溶剤を含有する方法が挙げられる。そうすることで、トナー材料を柔らかい状態にすることができる。
【0154】
粉砕では、混練で得られた混練物を粉砕する。この粉砕においては、まず、混練物を粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。この際ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターとの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。
【0155】
トナーは、熱可塑性エラストマーを含有しているため、通常の粉砕条件では砕けない場合がある。その場合には、冷凍粉砕することが好ましい。前記冷凍粉砕としては、例えば、低温環境(例えば、0[℃]以下)で粉砕する方法が挙げられる。
【0156】
分級は、前記粉砕で得られた粉砕物を分級して所定粒径の粒子に調整する。前記分級は、例えば、サイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができる。
【0157】
前記粉砕及び分級が終了した後に、粉砕物を遠心力などで気流中に分級し、所定の粒径のトナーを製造する。前記粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5[μm]〜20[μm]が挙げられる。
【0158】
粉砕法の場合、トナーの平均円形度を高くする目的で、得られたトナー母体粒子に対し、機械的衝撃力を与えて形状を制御してもよい。この場合、前記機械的衝撃力は、例えば、ハイブリタイザー、メカノフュージョンなどの装置を用いてトナー母体粒子に付与することができる。
【0159】
<溶解懸濁法>
溶解懸濁法としては、例えば、前記結着樹脂を溶媒中に溶解させた溶液(油相)を水系媒体(水相)中に添加することにより懸濁液を調製する工程と、懸濁液から溶媒を除去する工程を有する方法などが挙げられる。このとき、結着樹脂と共に、添加剤を溶媒中に溶解乃至分散させることができる。
【0160】
溶解懸濁法においては、前記結着樹脂を溶解しつつ、前記カプセルの前記シェルを溶解しない溶媒を用いることが好ましい。前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0161】
<現像剤>
本実施形態の現像剤は、上述した本実施形態のトナーを含んでなる。また、本実施形態のトナーは、一成分現像剤とし使用してもよく、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。中でも、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で前記二成分現像剤が好ましい。
【0162】
前記トナーを用いた前記一成分現像剤の場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の層厚規制部材へのトナーの融着がなく、現像手段の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0163】
また、前記トナーを用いた前記二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像手段における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0164】
<キャリア>
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
【0165】
<芯材>
前記芯材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50[emu/g]〜90[emu/g]のマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料などが好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100[emu/g]以上)、マグネタイト(75[emu/g]〜120[emu/g])等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている感光体への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30[emu/g]〜80[emu/g])等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0166】
前記芯材の粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均粒径(質量平均粒径(D50))で、10[μm]〜200[μm]が好ましく、40[μm]〜100[μm]がより好ましい。前記平均粒径(重量平均粒径(D50))が、10[μm]未満であると、キャリア粒子の分布において、微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがあり、200[μm]を超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0167】
<樹脂層>
前記樹脂層の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0168】
前記シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オルガノシロサン結合のみからなるストレートシリコーン樹脂;アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等で変性した変性シリコーン樹脂などが挙げられる。前記シリコーン樹脂としては、市販品を用いることができる。
【0169】
前記ストレートシリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKR271、KR255、KR152;東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2400、SR2406、SR2410などが挙げられる。前記変性シリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKR206(アルキド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性);東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキド変性)などが挙げられる。なお、前記シリコーン樹脂を単体で用いることも可能であるが、架橋反応する成分、帯電量調整成分等を同時に用いることも可能である。
【0170】
前記樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛などが挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1[μm]以下が好ましい。前記平均粒子径が1[μm]を超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。前記樹脂層は、例えば、前記シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、塗布溶液を前記芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。前記塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法などが挙げられる。
【0171】
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブ、ブチルアセテートなどが挙げられる。
【0172】
前記焼付の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよい。前記焼付の装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉、マイクロウエーブを備えた装置などが挙げられる。
【0173】
前記樹脂層の前記キャリアにおける量としては、0.01[質量%]〜5.0[質量%]が好ましい。前記量が、0.01[質量%]未満であると、前記芯材の表面に均一な前記樹脂層を形成することができないことがあり、5.0[質量%]を超えると、前記樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
【0174】
前記現像剤が二成分現像剤である場合には、前記キャリアの前記現像剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、90[質量%]〜98[質量%]が好ましく、93[質量%]〜97[質量%]がより好ましい。
【0175】
<トナー入り容器>
本実施形態のトナー入り容器は、本実施形態のトナーを容器中に収容してなる。前記トナー入り容器としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、現像剤容器本体とキャップとを有してなるものなどが挙げられる。前記現像剤容器本体としては、その大きさ、形状、構造、材質などにつき、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記現像剤容器本体の形状としては、例えば、前記円筒状などが好ましく、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより内容物であるトナーが排出口側に移行可能であり、かつスパイラル部の一部乃至全部が蛇腹機能を有しているものなどが特に好ましい。前記現像剤容器本体の材質としては、特に制限はなく、寸法精度がよいものが好ましく、例えば、樹脂が好適に挙げられ、その中でも、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂などが好適に挙げられる。前記現像剤入り容器は、保存、搬送等が容易であり、取扱性に優れる。
【0176】
本実施形態の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含む。そして、好ましくはクリーニング工程を含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば除電工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
【0177】
本実施形態の画像形成装置として例えば図3に示した複写機は、静電潜像担持体である感光体ドラム10と、静電潜像形成手段である露光装置21と、現像手段である現像装置61と、転写手段である二次転写装置22と、定着手段である定着装置25とを少なくとも有する。そして、好ましくはクリーニング手段である感光体ドラムクリーニング装置63を有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段である除電装置64、リサイクル手段であるトナーリサイクル装置80、制御手段として不図示の制御装置等を有してなる。
【0178】
<静電潜像形成工程>
静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。静電潜像担持体(以下、「感光体」と称することがある。)の材質、形状、構造、大きさなどについては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。その材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコンが好ましい。静電潜像担持体の形状としては、例えば、ドラム状、シート状、エンドレスベルト状などが挙げられる。静電潜像担持体の構造は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。静電潜像担持体の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、画像形成装置の大きさや仕様等に応じて適宜選択することができる。
【0179】
アモルファスシリコン感光体としては、例えば、支持体を50[℃]〜400[℃]に加熱し、前記支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法によりa−Siからなる光導電層を有する感光体を用いることができる。これらの中でも、プラズマCVD法、即ち、原料ガスを直流又は高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa−Si堆積膜を形成する方法が好適である。
【0180】
静電潜像の形成は、例えば、静電潜像担持体の表面を帯電させた後、露光することにより行うことができ、静電潜像形成手段により行うことができる。静電潜像形成手段は、例えば、静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電手段と、静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光手段とを少なくとも有する。
【0181】
<帯電工程>
帯電工程は、例えば、帯電手段を用いて静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。帯電手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器などが挙げられる。
【0182】
帯電手段の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等どのような形態をとってもよく、画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択することができる。
【0183】
帯電手段として磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシとしては、例えば、Zn−Cuフェライト等の各種フェライト粒子を帯電手段として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。
【0184】
帯電手段としてファーブラシを用いる場合、ファーブラシの材質として、例えば、カーボン、硫化銅、金属又は金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで帯電手段とすることができる。帯電手段としては、接触式の帯電手段に限定されるものではないが、帯電手段から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電手段を用いることが好ましい。
【0185】
<露光工程>
露光工程は、例えば、露光手段を用いて静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。露光手段としては、帯電手段により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光手段などが挙げられる。
【0186】
露光手段に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般などが挙げられる。
【0187】
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。なお、本実施形態においては、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0188】
<現像工程>
現像工程は、静電潜像を、トナーまたは現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。トナーとしては、上述した本実施形態のトナーを用いる。現像剤としては、前記本実施形態のトナーを含む現像剤を用いる。可視像の形成は、例えば、静電潜像をトナーまたは現像剤を用いて現像することにより行うことができ、現像手段により行うことができる。
【0189】
現像手段としては、トナーまたは現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、トナーまたは現像剤を収容し、静電潜像にトナーまたは現像剤を接触或いは非接触的に付与可能な現像装置を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0190】
現像装置は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよい。また、単色用現像装置であってもよいし、多色用現像装置であってもよい。例えば、トナーまたは現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるものなどが好適に挙げられる。
【0191】
現像装置内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、静電潜像担持体近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって静電潜像担持体の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて静電潜像担持体の表面にトナーによる可視像が形成される。
【0192】
現像手段に収容させる現像剤は、トナーを含む現像剤であるが、現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。一成分現像手段としては、例えば、トナーが供給される現像剤担持体と、現像剤担持体表面にトナーの薄層を形成する層厚規制部材とを有する一成分現像装置が好適に用いられる。
【0193】
<転写工程>
転写工程は、可視像を記録媒体Sに転写する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、転写手段を用いて行われる。転写手段としては、静電潜像担持体上の可視像を記録媒体Sに直接転写する転写手段であってもよいし、中間転写体を用い、中間転写体上に可視像を一次転写した後、可視像を記録媒体S上に二次転写する二次転写手段であってもよい。
【0194】
転写は、例えば、可視像を、電源より転写バイアスが印加された転写ローラなどの転写帯電器を用いて静電潜像担持体や中間転写体との間に転写電界を形成することで行うことができる。転写手段としては、静電潜像担持体上から可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、複合転写像を記録媒体S上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
【0195】
ここで、記録媒体S上に二次転写される画像が複数色のトナーからなるカラー画像である場合に、転写手段により、中間転写体上に各色のトナーを順次重ね合わせて中間転写体上に画像を形成し、中間転写手段により、中間転写体上の画像を記録媒体S上に一括で二次転写する構成とすることができる。
【0196】
なお、中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルトなどが好適に挙げられる。
【0197】
転写手段(前記第一次転写手段や前記第二次転写手段)は、静電潜像担持体上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。転写器としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器などが挙げられる。
【0198】
これらの転写手段は、タンデム型画像形成装置においても好適に用いられる。タンデム型画像形成装置は、少なくとも静電潜像担持体、帯電手段、現像手段、及び、転写手段を含む画像形成要素を複数配列したものである。このタンデム型画像形成装置では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック用の4つの画像形成要素を搭載し、各々の可視像を4つの画像形成要素で並列に作成し、記録媒体Sまたは中間転写体上で重ね合わせることから、より高速にフルカラー画像を形成できる。
【0199】
タンデム型の画像形成装置としては、図9に示すように、複数の画像形成要素の静電潜像担持体である感光体ドラム10それぞれとの対向領域である転写位置を通過するように、搬送ベルト3により搬送される記録媒体Sに、転写ローラ62により、順次、各感光体ドラム10上に形成されたトナー像を転写する直接転写方式がある。
【0200】
また、図10に示すように、複数の画像形成要素の各感光体ドラム10上のトナー像を転写ローラ62により一旦、中間転写ベルト50に順次転写した後、中間転写ベルト50上の画像を二次転写装置22により記録媒体Sに一括転写する間接転写方式とがある。なお、図10では二次転写手段として転写搬送ベルト24を用いているが、ローラ形状であってもよい。
【0201】
直接転写方式と間接転写方式とを比較すると、直接転写方式は、感光体ドラム10を並べたタンデム型画像形成部120の記録媒体搬送方向上流側に不図示の給紙装置を、記録媒体搬送方向下流側に定着手段としての定着装置7を配置しなければならない。そのため、記録媒体Sの搬送方向に装置が大型化する。これに対し間接転写方式は、二次転写位置を比較的自由に設置することができ、給紙装置及び定着装置7をタンデム型画像形成部120と重ねて配置することができ、装置の小型化が可能となるという利点がある。
【0202】
また、直接転写方式では、記録媒体Sの搬送方向に装置が大型化しないためには、定着装置7をタンデム型画像形成部120に接近して配置することとなる。そのため、記録媒体Sがたわむことができる十分な余裕をもって定着装置7を配置することができず、記録媒体Sの先端が定着装置7に進入するときの衝撃(特に厚い記録媒体Sで顕著となる)や、定着装置7を通過するときの記録媒体Sの搬送速度と、転写搬送ベルトによる記録媒体Sの搬送速度との速度差により、定着装置7が上流側の画像形成に影響を及ぼしやすい。これに対し間接転写方式は、記録媒体Sがたわむことができる十分な余裕をもって定着装置7を配置することができるので、定着装置7はほとんど画像形成に影響を及ぼさない。
【0203】
以上のようなことから、最近では、特に間接転写方式のものが注目されている。このようなカラー画像形成装置では、図10に示すように、一次転写後に感光体ドラム10上に残留する転写残トナーを、クリーニング手段としての感光体ドラムクリーニング装置63で除去して感光体ドラム表面をクリーニングし、再度の画像形成に備えている。また、二次転写後に中間転写ベルト50上に残留する転写残トナーを、中間転写ベルトクリーニング装置17で除去して中間転写ベルト表面をクリーニングし、再度の画像形成に備えている。
【0204】
なお、記録媒体Sとしては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0205】
<除電工程>
除電工程は、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。除電手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプなどが好適に挙げられる。
【0206】
<クリーニング工程>
クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。なお、クリーニング手段を用いることなく、摺擦部材で残留トナーの電荷を揃え、現像ローラで回収する方法を採用することもできる。
【0207】
クリーニング手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体上に残留する電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどが好適に挙げられる。
【0208】
<リサイクル工程>
リサイクル工程は、クリーニング工程により除去したトナーを現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0209】
<制御工程>
制御工程は、各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。制御手段としては、各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器などが挙げられる。
【0210】
画像形成装置は、静電潜像担持体と少なくとも現像手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジを備える画像形成装置であることが好ましい。
【0211】
<定着工程>
定着工程は、記録媒体Sに転写された可視像を定着させる工程であり、各色のトナーに対して記録媒体Sに転写する毎に行っても良いし、各色のトナーに対してこれを積奏した状態で一度に同時で行っても良い。
【0212】
定着工程は、定着装置により行うことができる。定着装置としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着部材とその定着部材を加熱する熱源とを有する定着装置が好ましい。
【0213】
定着部材としては、加圧力を受けつつ互いに接触してニップ部を形成可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0214】
例えば、無端状ベルトとローラとの組合せ、ローラとローラとの組合せなどが挙げられる。中でも、加熱手段としてい用いる場合はウォームアップ時間を短縮することができ、省エネルギー化の実現の点で、無端状ベルトとローラとの組合せや誘導加熱などによる定着部材の表面からの加熱方法を用いるのが好ましい。
【0215】
定着部材が無端状ベルトである場合、無端状ベルトは、熱容量の小さい材料で形成されるのが好ましく、例えば、基体上にオフセット防止層が設けられてなる態様などが挙げられる。
【0216】
基体を形成する材料としては、例えば、ニッケル、ポリイミドなどが挙げられる。オフセット防止層を形成する材料としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0217】
一方、定着部材がローラである場合、そのローラの芯金は、高い圧力による変形(たわみ)を防止するため非弾性部材で形成されるのが好ましい。非弾性部材としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、アルミニウム、鉄、ステンレス、真鍮等の高熱伝導率体が好ましい。
【0218】
また、ローラは、その表面がオフセット防止層で被覆されていることが好ましい。オフセット防止層を形成する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、RTV(Room Temperature Vulcanization)シリコーンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
【0219】
ニップ部は、少なくとも2つの定着部材の構成要素(例えば、無端状ベルトとローラ、ローラとローラ)が互いに当接して形成される。
【0220】
ニップ部の面圧としては、トナーに含有されるカプセルを破壊可能な面圧であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.3[MPa]以上が好ましく、0.3[MPa]〜3[MPa]がより好ましく、0.3[MPa]〜1[MPa]が特に好ましい。ニップ部の面圧を高くするほどローラの耐久性を高める必要があるため、定着装置25が重量化及び大型化してしまう。
【0221】
トナー像の記録媒体Sへの定着温度(即ち、定着部材の表面温度)としては、省エネルギー化の観点から100[℃]以下が好ましく、90[℃]以下がより好ましく、60[℃]〜70[℃]が特に好ましい。定着温度が60[℃]よりも低くなってしまうと、トナーの保存安定性との両立が極端に難しくなってしまう。また、可塑剤として常温で固体の可塑剤を用いる場合、定着温度は、定着工程におけるトナー中のカプセルに内包された可塑剤が液化する温度が好ましい。
【0222】
トナー像を加熱する加熱手段としては、非接触加熱方式や接触加熱方式がある。非接触加熱方式では、記録媒体Sの搬送経路中に加熱手段を構成する。例えば、ハロゲンランプ、フラッシュ等による加熱方式、または超音波やマイクロ波、温風等が挙げられるが、トナー温度を可塑剤の融点まで加熱することが可能であれば特に限定はしない。
【0223】
接触加熱方式としては、ローラや無端状ベルトなどの定着部材の外周面を加熱手段で加熱して、定着部材の外周面と記録媒体S上のトナーとをニップ部で接触させることにより、定着部材の熱をトナーへ伝熱してトナーを加熱する。
【0224】
また、接触加熱方式は、定着部材の内部や内周面側から定着部材の外周面を加熱する内部加熱方式と、定着部材の外部から定着部材の外周面を直接加熱する外部加熱方式とに大別される。なお、内部加熱方式と外部加熱方式とを組み合わせたものを用いることも可能である。
【0225】
内部加熱方式の加熱手段として、例えば、定着部材の内部に熱源を設けるものが挙げられる。熱源としては、例えばヒーターやハロゲンランプ等の熱源が挙げられる。
【0226】
外部加熱方式の加熱手段としては、例えば、定着部材のトナーと接触する外周面の少なくとも一部と対向する位置に熱源を設けるものが挙げられる。熱源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲンランプや電磁誘導加熱装置などが挙げられる。
【0227】
電磁誘導加熱装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、磁場を発生する手段と、電磁誘導により発熱する手段とを有するものなどが好ましい。
【0228】
電磁誘導加熱装置としては、例えば、定着部材である加熱ローラなどへ近接するように配置される誘導コイルと、この誘導コイルが設けられている遮蔽層と、この遮蔽層の誘導コイルが設けられている面の反対側に設けられている絶縁層とからなるものが好ましい。このとき、加熱ローラとしては、磁性体からなるものやヒートパイプであるものなどが好ましい。
【0229】
誘導コイルは、加熱ローラの、加熱ローラと定着部材(例えば、加圧ローラや無端状ベルトなど)との接触部位との反対側において、少なくとも半円筒部分を包む状態にて配置されるのが好ましい。
【0230】
ここで、内部加熱方式や外部加熱方式の定着手段において、定着温度が高温となる従来のトナーでは定着部材と加圧ローラの線速差(例えば内部加熱方式の定着ローラと加圧ローラの線速差)を大きく与えると画像乱れなどが生じてしまっていた。これに対して、本願発明者らは、本実施形態の定着温度が低温となるトナーを用いることで画像乱れを起こさず線速差を大きく与えることが可能となり、トナーへ与える熱量を増やし、且つ、トナーへせん断変形を与えることで、従来よりも低温の定着温度で前記トナーを定着させることができることを見出した。
【0231】
[構成例1]
図1は、内部加熱ローラ方式の定着手段の一例を示す定着装置500の概略構成図である。定着装置500は、内部にヒーター503を具備した定着ローラ501と、加圧ローラ502とを備えている。
【0232】
定着ローラ501は内部のヒーター503によって所定温度に加熱されている。加圧ローラ502は、定着ローラ501の外側に当接し、各々が独立して回転可能に配置されている。また、後述するニップ部Nにおいては、定着ローラ501の線速と加圧ローラ502の線速とに差をもたせたており、定着ローラ501の線速が加圧ローラ502の線速よりも速くなっている。
【0233】
定着装置500において、まず、図8に示したような結着樹脂202及びその結着樹脂202を軟化させる常温で固体状の可塑剤207を内包したカプセル204を少なくとも含有したトナー201を用いたトナー像Tが形成された記録媒体Sが、定着ローラ501と加圧ローラ502とを当接させて形成したニップ部Nにニップ部Nに挿入される。そして、ヒーター503によって所定温度に加熱された定着ローラ501と加圧ローラ502によりニップ部Nで押圧され、記録媒体S上のトナー像Tが加熱されて溶融状態となるとともに、トナー像Tが記録媒体S上に定着される。
【0234】
次いで、トナー像Tが定着された記録媒体Sは、ニップ部Nを通過し、定着ローラ501から剥離され搬送される。このとき、記録媒体Sが、加圧ローラ502側に向けて排出され、記録媒体Sの定着ローラ511への巻き付きが防止される。なお、定着ローラ501の表面には記録媒体S上のトナーが付着少なからず付着するため、不図示のクリーニングローラによって定着ローラ501の表面をクリーニングしている。
【0235】
本構成例においては、ヒーター503によって加熱される定着ローラ501の線速が加圧ローラ502の線速よりも速いことで、ニップ部Nで定着ローラ501からトナー201への熱の伝達速度が速くなり、低温の定着温度でもカプセル204に内包した可塑剤207を十分に溶解することができ、良好な定着性を得ることができる。
【0236】
[構成例2]
図11は、オイル塗布装置514を具備した内部加熱ローラ方式の定着装置510の概略構成図である。定着装置510は、定着ローラ511と、加圧ローラ512と、オイル塗布装置514とを備えている。本構成例においては、定着ローラ511の表面に潤滑剤としてのオイルを塗布しており、定着装置510の所定箇所に潤滑剤塗布手段であるオイル塗布装置514を設けている。
【0237】
オイル塗布装置514においては、オイルタンク518内のオイルを汲み上げローラ516でオイル塗布ローラ515に汲み上げ、オイル膜厚制御ブレード517によりオイル塗布ローラ515上のオイルの膜厚をコントロールした後、オイル塗布ローラ515によって定着ローラ511の表面にオイルが塗布される。
【0238】
定着ローラ511は内部のヒーター513によって所定温度に加熱されている。加圧ローラ512は、定着ローラ511の外側に当接し、各々が独立して回転可能に配置されている。また、後述するニップ部Nにおいては、定着ローラ511の線速と加圧ローラ512の線速とに差をもたせたており、定着ローラ511の線速が加圧ローラ512の線速よりも速くなっている。
【0239】
定着装置510において、まず、図8に示したような結着樹脂202及びその結着樹脂202を軟化させる常温で固体状の可塑剤207を内包したカプセル204を少なくとも含有したトナー201を用いたトナー像Tが形成された記録媒体Sが、定着ローラ511と加圧ローラ512とを当接させて形成したニップ部Nにニップ部Nに挿入される。そして、ヒーター513によって所定温度に加熱された定着ローラ511と加圧ローラ512とによりニップ部Nで押圧され、記録媒体S上のトナー像Tが加熱されて溶融状態となるとともに、トナー像Tが記録媒体S上に定着される。
【0240】
次いで、トナー像Tが定着された記録媒体Sは、ニップ部Nを通過し、定着ローラ511から剥離され搬送される。このとき、記録媒体Sが、加圧ローラ512側に向けて排出され、記録媒体Sの定着ローラ511への巻き付きが防止される。なお、定着ローラ511の表面には記録媒体S上のトナーが付着少なからず付着するため、不図示のクリーニングローラによって定着ローラ511の表面をクリーニングしている。
【0241】
本構成例においては、ヒーター513によって加熱される定着ローラ511の線速が加圧ローラ512の線速よりも速いことで、ニップ部Nで定着ローラ511からトナー201への熱の伝達速度が速くなり、低温の定着温度でもカプセル204に内包した可塑剤207を十分に溶解することができ、良好な定着性を得ることができる。
【0242】
また、オイル塗布装置514によって定着ローラ511の表面にオイルを塗布することで、記録媒体S上のトナー像に対してニップ部Nで画像乱れを生じ難くすることができる。また、画像乱れが生じたとしても記録媒体S上から定着ローラ511側へトナーがオフセットし付着することを抑制することができる。
【0243】
[構成例3]
図12は、内部加熱ベルト方式の定着手段の一例を示す定着装置520の概略構成図である。本構成例のような内部加熱ベルト方式の定着装置においても、構成例1などで説明したような内部加熱ローラ方式の定着装置と同様にトナー像Tを記録媒体S上に定着させることが可能となる。
【0244】
図12に示した定着装置520は、加熱ローラ521と、定着ローラ522と、定着ベルト523と、加圧ローラ524とを備えている。加熱ローラ521の内部には、加熱ローラを加熱するヒーター525が内蔵されている。定着ベルト523は、内部に回転可能に配置された加熱ローラ521と定着ローラ522とによって張架され、ヒーター525により加熱された加熱ローラ521によって所定温度に加熱される。なお、ヒーターは定着ローラ522と加圧ローラ524に具備されていても良い。
【0245】
定着ローラ522は、定着ベルト523の内側で且つ定着ベルト523の内面に当接しながら回転可能に配置されている。加圧ローラ524は、定着ベルト523の外側で且つ定着ベルト523の外面に、定着ベルト523を介して定着ローラ522と圧接するように当接している。また、加熱ローラ521と定着ローラ522と加圧ローラ524との各々が独立して回転可能に配置されている。後述するニップ部Nにおいては、定着ベルト523の線速と加圧ローラ524の線速とに差をもたせたており、定着ベルト523の線速が加圧ローラ524の線速よりも速くなっている。
【0246】
定着ベルト523の表面硬度は、加圧ローラ524の表面硬度よりも低く、定着ベルト523を介して定着ローラ522と加圧ローラ524とにより形成されたニップ部Nにおいては、記録媒体Sの導入側端及び排出側端の間に位置する中間領域が、前記導入側端及び前記排出側端よりも、定着ローラ522側に位置する。
【0247】
図12に示す定着装置520において、まず、図8に示したような結着樹脂202及びその結着樹脂202を軟化させる常温で固体状の可塑剤207を内包したカプセル204を少なくとも含有したトナー201を用いたトナー像Tが形成された記録媒体Sが、定着ベルト523を介して定着ローラ522と加圧ローラ524とを当接させて形成したニップ部Nにニップ部Nに挿入される。そして、ヒーター525によって所定温度に加熱された定着ローラ522及び定着ベルト523により、記録媒体S上のトナー像Tが加熱されて溶融状態となる。この状態において、定着ベルト523を介して定着ローラ522と加圧ローラ524とによりニップ部Nで押圧され、記録媒体S上のトナー像Tが記録媒体S上に定着される。
【0248】
次いで、トナー像Tが定着された記録媒体Sは、ニップ部Nを通過し、定着ベルト523から剥離され搬送される。このとき、記録媒体Sが、加圧ローラ524側に向けて排出され、記録媒体Sの定着ベルト523への巻き付きが防止される。なお、定着ベルト523の表面には記録媒体S上のトナーが少なからず付着するため、不図示のクリーニングローラによって定着ベルト523の表面をクリーニングしている。
【0249】
本構成例においては、ヒーター525によって加熱された加熱ローラ521を介して加熱される定着ベルト523の線速が加圧ローラ524の線速よりも速いことで、ニップ部Nで定着ベルト523からトナー201への熱の伝達速度が速くなり、低温の定着温度でもカプセル204に内包した可塑剤207を十分に溶解することができ、良好な定着性を得ることができる。
【0250】
[構成例4]
図13は、オイル塗布装置536を具備した内部加熱ベルト方式の定着装置530の概略構成図である。定着装置530は、加熱ローラ531と、定着ローラ532と、定着ベルト533と、加圧ローラ534、オイル塗布装置536とを備えている。本構成例においては、定着ベルト533の表面に潤滑剤としてのオイルを塗布しており、定着装置530の所定箇所に潤滑剤塗布手段であるオイル塗布装置536を設けている。
【0251】
オイル塗布装置536において、オイルタンク540内のオイルを汲み上げローラ538でオイル塗布ローラ537に汲み上げ、オイル膜厚制御ブレード539によりオイル塗布ローラ537上のオイルの膜厚をコントロールした後、オイル塗布ローラ537によって定着ベルト533の表面にオイルが塗布される。
【0252】
加熱ローラ531の内部には、加熱ローラ531を加熱するヒーター535が内蔵されている。定着ベルト533は、内部に回転可能に配置された加熱ローラ531と定着ローラ532とによって張架され、ヒーター535により加熱された加熱ローラ531によって所定の温度に加熱されている。なお、ヒーターは定着ローラ532と加圧ローラ534に具備されていても良い。
【0253】
定着ローラ532は、定着ベルト533の内側で且つ定着ベルト533の内面に当接しながら回転可能に配置されている。加圧ローラ534は、定着ベルト533の外側で且つ定着ベルト533の外面に、定着ベルト533を介して定着ローラ532と圧接するように当接している。また、加熱ローラ531と定着ローラ532と加圧ローラ534との各々が独立して回転可能に配置されている。後述するニップ部Nにおいては、定着ベルト533の線速と加圧ローラ534の線速とに差をもたせたており、定着ベルト533の線速が加圧ローラ534の線速よりも速くなっている。
【0254】
定着ベルト533の表面硬度は、加圧ローラ534の表面硬度よりも低く、定着ベルト533を介して定着ローラ532と加圧ローラ534とにより形成されたニップ部Nにおいては、記録媒体Sの導入側端及び排出側端の間に位置する中間領域が、前記導入側端及び前記排出側端よりも、定着ローラ532側に位置する。
【0255】
図13に示す定着装置530において、まず、図8に示したような結着樹脂202及びその結着樹脂202を軟化させる常温で固体状の可塑剤207を内包したカプセル204を少なくとも含有したトナー201を用いたトナー像Tが形成された記録媒体Sが、定着ベルト533を介して定着ローラ532と加圧ローラ534とを当接させて形成したニップ部Nにニップ部Nに挿入される。そして、ヒーター535によって所定温度に加熱された定着ローラ532及び定着ベルト533により、記録媒体S上のトナー像Tが加熱されて溶融状態となる。この状態において、定着ベルト533を介して定着ローラ532と加圧ローラ534とによりニップ部Nで押圧され、記録媒体S上のトナー像Tが記録媒体S上に定着される。
【0256】
次いで、トナー像Tが定着された記録媒体Sは、ニップ部Nを通過し、定着ベルト533から剥離され搬送される。このとき、記録媒体Sが、加圧ローラ534側に向けて排出され、記録媒体Sの定着ベルト533への巻き付きが防止される。なお、定着ベルト533の表面には記録媒体S上のトナーが少なからず付着するため、不図示のクリーニングローラによって定着ベルト533の表面をクリーニングしている。
【0257】
本構成例においては、ヒーター535によって加熱された加熱ローラ531を介して加熱される定着ベルト533の線速が加圧ローラ534の線速よりも速いことで、ニップ部Nで定着ベルト533からトナー201への熱の伝達速度が速くなり、低温の定着温度でもカプセル204に内包した可塑剤207を十分に溶解することができ、良好な定着性を得ることができる。
【0258】
また、オイル塗布装置536によって定着ベルト533の表面にオイルを塗布することで、記録媒体S上のトナー像に対してニップ部Nで画像乱れを生じ難くすることができる。また、画像乱れを起こしたとしても記録媒体S上から定着ベルト533側へトナーがオフセットし付着することを抑制することができる。
【0259】
[構成例5]
図14は、外部加熱ローラ方式の定着手段の一例を示す定着装置550の概略構成図である。この定着装置550は、定着ローラ551と、加圧ローラ552と、電磁誘導加熱装置553とを備えている。
【0260】
定着ローラ551は、例えば、ステンレススチール等の金属製の芯金有し、その表面が耐熱性を有するシリコーンゴムをソリッド状又は発泡状にした弾性層で被覆されて形成されており、低熱容量で昇温の速い構成となっている。
【0261】
また、定着ローラ551と加圧ローラ552との各々が独立して回転可能に配置されている。後述するニップ部Nにおいては、定着ローラ551の線速と加圧ローラ552の線速とに差をもたせたており、定着ローラ551の線速が加圧ローラ552の線速よりも速くなっている。
【0262】
電磁誘導加熱装置553は、定着ローラ551の近傍であって、定着ローラ551の軸方向にわたって配設されている。電磁誘導加熱装置553は、磁界発生手段である励磁コイル554と、この励磁コイル554が巻き回されたコイルガイド板555とを有している。コイルガイド板555は定着ローラ551の外周面に近接配置された半円筒形状をしており、励磁コイル554は長い一本の励磁コイル線材をこのコイルガイド板555に沿って定着ローラ551の軸方向に交互に巻き付けたものである。
【0263】
なお、励磁コイル554は、発振回路が周波数可変の駆動電源(不図示)に接続されている。励磁コイル554の外側には、フェライト等の強磁性体よりなる半円筒形状の励磁コイルコア557が、励磁コイルコア支持部材556に固定されて励磁コイル554に近接配置されている。
【0264】
図14に示す定着装置550において、まず、図8に示したような結着樹脂202及びその結着樹脂202を軟化させる常温で固体状の可塑剤207を内包したカプセル204を少なくとも含有したトナー201を用いたトナー像Tが形成された記録媒体Sが、定着ローラ551と加圧ローラ552とを当接させて形成したニップ部Nにニップ部Nに挿入される。そして、電磁誘導加熱装置553によって所定温度に加熱された定着ローラ551と加圧ローラ552とによりニップ部Nで押圧され、記録媒体S上のトナー像Tが加熱されて溶融状態となるとともに、トナー像Tが記録媒体S上に定着される。
【0265】
次いで、トナー像Tが定着された記録媒体Sは、ニップ部Nを通過し、定着ローラ551から剥離され搬送される。このとき、記録媒体Sが、加圧ローラ552側に向けて排出され、記録媒体Sの定着ローラ551への巻き付きが防止される。なお、定着ローラ551の表面には記録媒体S上のトナーが付着少なからず付着するため、不図示のクリーニングローラによって定着ローラ551の表面をクリーニングしている。なお、加圧ローラ552に対して、電磁誘導加熱装置やヒーターなどの加熱手段を具備しても良い。
【0266】
本構成例においては、電磁誘導加熱装置553によって加熱される定着ローラ551の線速が加圧ローラ552の線速よりも速いことで、ニップ部Nで定着ローラ551からトナー201への熱の伝達速度が速くなり、低温の定着温度でもカプセル204に内包した可塑剤207を十分に溶解することができ、良好な定着性を得ることができる。
【0267】
[構成例6]
図15は、オイル塗布装置568を具備した外部加熱ローラ方式の定着装置560の概略構成図である。定着装置560は、定着ローラ561と、加圧ローラ562と、電磁誘導加熱装置563と、オイル塗布装置568とを備えている。本構成例においては、定着ローラ561の表面に潤滑剤としてのオイルを塗布しており、定着装置560の所定箇所に潤滑剤塗布手段であるオイル塗布装置568を設けている。
【0268】
オイル塗布装置568においては、オイルタンク572内のオイルを汲み上げローラ570でオイル塗布ローラ569に汲み上げ、オイル膜厚制御ブレード571によりオイル塗布ローラ569上のオイルの膜厚をコントロールした後、オイル塗布ローラ569によって定着ローラ561の表面にオイルが塗布される。
【0269】
定着ローラ561は電磁誘導加熱装置563によって所定温度に加熱されている。加圧ローラ562は、定着ローラ561の外側に当接し、各々が独立して回転可能に配置されている。また、後述するニップ部Nにおいては、定着ローラ561の線速と加圧ローラ562の線速とに差をもたせたており、定着ローラ561の線速が加圧ローラ562の線速よりも速くなっている。
【0270】
電磁誘導加熱装置563は、定着ローラ561の近傍であって、定着ローラ561の軸方向にわたって配設されている。電磁誘導加熱装置563は、磁界発生手段である励磁コイル564と、この励磁コイル564が巻き回されたコイルガイド板565とを有している。コイルガイド板565は定着ローラ561の外周面に近接配置された半円筒形状をしており、励磁コイル564は長い一本の励磁コイル線材をこのコイルガイド板565に沿って定着ローラ561の軸方向に交互に巻き付けたものである。
【0271】
なお、励磁コイル564は、発振回路が周波数可変の駆動電源(不図示)に接続されている。励磁コイル564の外側には、フェライト等の強磁性体よりなる半円筒形状の励磁コイルコア567が、励磁コイルコア支持部材566に固定されて励磁コイル564に近接配置されている。
【0272】
図15に示す定着装置560において、まず、図8に示したような結着樹脂202及びその結着樹脂202を軟化させる常温で固体状の可塑剤207を内包したカプセル204を少なくとも含有したトナー201を用いたトナー像Tが形成された記録媒体Sが、定着ローラ561と加圧ローラ562とを当接させて形成したニップ部Nにニップ部Nに挿入される。そして、電磁誘導加熱装置563によって所定温度に加熱された定着ローラ561と加圧ローラ562とによりニップ部Nで押圧され、記録媒体S上のトナー像Tが加熱されて溶融状態となるとともに、トナー像Tが記録媒体S上に定着される。
【0273】
次いで、トナー像Tが定着された記録媒体Sは、ニップ部Nを通過し、定着ローラ561から剥離され搬送される。このとき、記録媒体Sが、加圧ローラ562側に向けて排出され、記録媒体Sの定着ローラ561への巻き付きが防止される。なお、定着ローラ561の表面には記録媒体S上のトナーが付着少なからず付着するため、不図示のクリーニングローラによって定着ローラ551の表面をクリーニングしている。なお、加圧ローラ562に対して、電磁誘導加熱装置やヒーターなどの加熱手段を具備しても良い。
【0274】
本構成例においては、電磁誘導加熱装置563によって加熱される定着ローラ561の線速が加圧ローラ562の線速よりも速いことで、ニップ部Nで定着ローラ561からトナー201への熱の伝達速度が速くなり、低温の定着温度でもカプセル204に内包した可塑剤207を十分に溶解することができ、良好な定着性を得ることができる。
【0275】
また、オイル塗布装置568によって定着ローラ561の表面にオイルを塗布することで、記録媒体S上のトナー像に対してニップ部Nで画像乱れを生じ難くすることができる。また、画像乱れを起こしたとしても記録媒体S上から定着ローラ561側へトナーがオフセットし付着することを抑制することができる。
【0276】
[構成例7]
図16は、外部加熱ベルト方式の定着手段の一例を示す定着装置580の概略構成図である。本構成例のような外部加熱ベルト方式の定着装置においても、構成例5などで説明したような外部加熱ローラ方式の定着装置と同様にトナー像Tを記録媒体S上に定着させることが可能となる。
【0277】
図16に示した定着装置580は、加熱ローラ581と、定着ローラ582と、定着ベルト583と、加圧ローラ584と、電磁誘導加熱装置585とを備えている。
【0278】
定着ベルト583は、内部に回転可能に配置された加熱ローラ581と定着ローラ582とによって張架され、電磁誘導加熱装置585により加熱された加熱ローラ581によって所定温度に加熱される。
【0279】
加熱ローラ581は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル又はこれら金属の合金等の中空円筒状の磁性金属部材を有し、低熱容量で昇温の速い構成となっている。定着ローラ582は、例えば、ステンレススチール等の金属製の芯金を有し、その表面が耐熱性を有するシリコーンゴムをソリッド状又は発泡状にした弾性層で被覆されて形成されており、定着ベルト583の内側で且つ定着ベルト583の内面に当接しながら回転可能に配置されている。加圧ローラ584は、定着ベルト583の外側で且つ定着ベルト583の外面に、定着ベルト583を介して定着ローラ582と圧接するようにして当接している。
【0280】
また、加熱ローラ581と定着ローラ582と加圧ローラ584との各々が独立して回転可能に配置されている。後述するニップ部Nにおいては、定着ベルト583の線速と加圧ローラ584の線速とに差をもたせたており、定着ベルト583の線速が加圧ローラ584の線速よりも速くなっている。
【0281】
電磁誘導加熱装置585は、加熱ローラ581の近傍であって、加熱ローラ581の軸方向にわたって配設されている。電磁誘導加熱装置585は、磁界発生手段である励磁コイル586と、この励磁コイル586が巻き回されたコイルガイド板587とを有している。コイルガイド板587は加熱ローラ581の外周面に近接配置された半円筒形状をしており、励磁コイル586は長い一本の励磁コイル線材をこのコイルガイド板587に沿って加熱ローラ581の軸方向に交互に巻き付けたものである。
【0282】
なお、励磁コイル586は、発振回路が周波数可変の駆動電源(不図示)に接続されている。励磁コイル586の外側には、フェライト等の強磁性体よりなる半円筒形状の励磁コイルコア588が、励磁コイルコア支持部材589に固定されて励磁コイル586に近接配置されている。
【0283】
図16に示す定着装置580において、まず、図8に示したような結着樹脂202及びその結着樹脂202を軟化させる常温で固体状の可塑剤207を内包したカプセル204を少なくとも含有したトナー201を用いたトナー像Tが形成された記録媒体Sが、定着ベルト583を介して定着ローラ582と加圧ローラ584とを当接させて形成したニップ部Nにニップ部Nに挿入される。そして、電磁誘導加熱装置585によって所定温度に加熱された定着ローラ582及び定着ベルト583により、記録媒体S上のトナー像Tが加熱されて溶融状態となる。この状態において、定着ベルト583を介して定着ローラ582と加圧ローラ584とによりニップ部Nで押圧され、記録媒体S上のトナー像Tが記録媒体S上に定着される。
【0284】
次いで、トナー像Tが定着された記録媒体Sは、ニップ部Nを通過し、定着ベルト583から剥離され搬送される。このとき、記録媒体Sが、加圧ローラ584側に向けて排出され、記録媒体Sの定着ベルト583への巻き付きが防止される。なお、定着ベルト583の表面には記録媒体S上のトナーが少なからず付着するため、不図示のクリーニングローラによって定着ベルト583の表面をクリーニングしている。なお、定着ローラ582や加圧ローラ584に対して電磁誘導加熱装置やヒーターなどの加熱手段を具備しても良い。
【0285】
本構成例においては、電磁誘導加熱装置585によって加熱ローラ581を介して加熱される定着ベルト583の線速が加圧ローラ584の線速よりも速いことで、ニップ部Nで定着ベルト583からトナー201への熱の伝達速度が速くなり、低温の定着温度でもカプセル204に内包した可塑剤207を十分に溶解することができ、良好な定着性を得ることができる。
【0286】
[構成例8]
図17は、オイル塗布装置600を具備した外部加熱ベルト方式の定着装置590の概略構成図である。定着装置590は、加熱ローラ591と、定着ローラ592と、定着ベルト593と、加圧ローラ594と、電磁誘導加熱装置595と、オイル塗布装置600とを備えている。本構成例においては、定着ベルト593の表面に潤滑剤としてのオイルを塗布しており、定着装置590の所定箇所に潤滑剤塗布手段であるオイル塗布装置600を設けている。
【0287】
オイル塗布装置600において、オイルタンク604内のオイルを汲み上げローラ602でオイル塗布ローラ601に汲み上げ、オイル膜厚制御ブレード603によりオイル塗布ローラ601上のオイルの膜厚をコントロールした後、オイル塗布ローラ601によって定着ベルト593の表面にオイルが塗布される。
【0288】
定着ベルト593は、内部に回転可能に配置された加熱ローラ591と定着ローラ592とによって張架され、電磁誘導加熱装置595により加熱された加熱ローラ591によって所定温度に加熱される。
【0289】
加熱ローラ591は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル又はこれら金属の合金等の中空円筒状の磁性金属部材を有し、低熱容量で昇温の速い構成となっている。定着ローラ592は、例えば、ステンレススチール等の金属製の芯金を有し、その表面が耐熱性を有するシリコーンゴムをソリッド状又は発泡状にした弾性層で被覆されて形成されており、定着ベルト593の内側で且つ定着ベルト593の内面に当接しながら回転可能に配置されている。加圧ローラ594は、定着ベルト593の外側で且つ定着ベルト593の外面に、定着ベルト593を介して定着ローラ592と圧接するようにして当接している。
【0290】
電磁誘導加熱装置595は、加熱ローラ591の近傍であって、加熱ローラ591の軸方向にわたって配設されている。電磁誘導加熱装置595は、磁界発生手段である励磁コイル596と、この励磁コイル596が巻き回されたコイルガイド板597とを有している。コイルガイド板597は加熱ローラ591の外周面に近接配置された半円筒形状をしており、励磁コイル596は長い一本の励磁コイル線材をこのコイルガイド板597に沿って加熱ローラ591の軸方向に交互に巻き付けたものである。
【0291】
なお、励磁コイル596は、発振回路が周波数可変の駆動電源(不図示)に接続されている。励磁コイル596の外側には、フェライト等の強磁性体よりなる半円筒形状の励磁コイルコア598が、励磁コイルコア支持部材599に固定されて励磁コイル596に近接配置されている。
【0292】
図17に示す定着装置590において、まず、図8に示したような結着樹脂202及びその結着樹脂202を軟化させる常温で固体状の可塑剤207を内包したカプセル204を少なくとも含有したトナー201を用いたトナー像Tが形成された記録媒体Sが、定着ベルト593を介して定着ローラ592と加圧ローラ594とを当接させて形成したニップ部Nにニップ部Nに挿入される。そして、電磁誘導加熱装置595によって所定温度に加熱された定着ローラ592及び定着ベルト593により、記録媒体S上のトナー像Tが加熱されて溶融状態となる。この状態において、定着ベルト593を介して定着ローラ592と加圧ローラ594とによりニップ部Nで押圧され、記録媒体S上のトナー像Tが記録媒体S上に定着される。
【0293】
次いで、トナー像Tが定着された記録媒体Sは、ニップ部Nを通過し、定着ベルト593から剥離され搬送される。このとき、記録媒体Sが、加圧ローラ594側に向けて排出され、記録媒体Sの定着ベルト593への巻き付きが防止される。なお、定着ベルト593の表面には記録媒体S上のトナーが少なからず付着するため、不図示のクリーニングローラによって定着ベルト593の表面をクリーニングしている。なお、定着ローラ592や加圧ローラ594に対して電磁誘導加熱装置やヒーターなどの加熱手段を具備しても良い。
【0294】
本構成例においては、電磁誘導加熱装置595によって加熱ローラ591を介して加熱される定着ベルト593の線速が加圧ローラ594の線速よりも速いことで、ニップ部Nで定着ベルト593からトナー201への熱の伝達速度が速くなり、低温の定着温度でもカプセル204に内包した可塑剤207を十分に溶解することができ、良好な定着性を得ることができる。
【0295】
また、オイル塗布装置600によって定着ベルト593の表面にオイルを塗布することで、記録媒体S上のトナー像に対してニップ部Nで画像乱れを生じ難くすることができる。また、画像乱れを起こしたとしても記録媒体S上から定着ベルト593側へトナーがオフセットし付着することを抑制することができる。
【0296】
[実験]
以下、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例3の各条件で行った、紙上に定着されたトナー像の画像乱れ評価と定着性評価との確認実験について説明する。
【0297】
[実施例1]
紙(Mypaper、株式会社リコー社製)を用い、カスケード現像法により0.40[mg/cm]のトナー層を前記紙上に形成した。図1に図示したような内部加熱手段を有するローラ定着装置の校正にて、定着ローラ温度60[℃]、ニップ幅1[mm]、及び、線速100[mm/s]とし、所定の圧力、線速差にて前記トナー層を形成した紙を通過させた。通過後のトナー像を目視しで画像乱れの状態を、そして、定着トナー面をウエスで擦り定着性を、各々下記基準にて評価した。
【0298】
<画像乱れ評価基準>
定着後の画像にて明らかに画像が乱れている状態を「××」とし、定着後の画像にて一部に画像が乱れている状態を「×」とし、定着後の画像にてほとんど画像が乱れていない状態を「○」とした。
【0299】
<定着性評価基準>
定着後のトナーを布で擦り、大部分のトナーが紙から取れる状態を「××」とし、定着後のトナーを布で擦り、一部のトナーが紙から取れる状態を「×」とし、定着後のトナーを布で擦り、布がほとんど汚れない状態(定着性良好)を「○」とした。
【0300】
また、所定の圧力としては、0.3[MPa]、0.6[MPa]、及び、1.0[MPa]とした。また、所定の線速差としては、1[%]、3[%]、5[%]、10[%]、15[%]、及び、20[%]とした。なお、ここでの線速差とは、数1によって得られる値である。
【0301】
【数1】

【0302】
[実施例2]
紙(Mypaper、株式会社リコー社製)を用い、カスケード現像法により0.40[mg/cm]のトナー層を前記紙上に形成した。図11に図示したようなオイル塗布装置を具備した内部加熱手段を有するローラ定着装置の校正にて、定着ローラ温度60[℃]、ニップ幅1[mm]、及び、線速100[mm/s]とし、所定の圧力、線速差にて、前記トナー層を形成した紙を通過させた。通過後のトナー像を目視して像乱れの状態と定着性を実施例1と同様に評価した。
【0303】
ここで、実施例1及び実施例2で用いたトナーについて説明する。
【0304】
<可塑剤を内包するカプセルの作製>
コアセルベーション法により、可塑剤としてのラウリン酸を内包しシェルがポリビニルアルコールであるカプセルを作製した。作製方法を以下に示す。
【0305】
ビーカーに水(イオン交換水)を100[mL]入れた後、分散剤(ソルビトール系界面活性剤、花王TW120[s]、花王社製)を水100質量部に対して2質量部混合し、更に攪拌して分散剤を水に溶解させた。その後、水温を70[℃]に保ちつつ、ポリビニルアルコール(Mw=500)粉末を水100質量部に対して1質量部混合し十分に溶解させた。
【0306】
溶解後、70[℃]に保ちつつ、超音波ホモジナイザー(UT−300、日本精機社製)にてビーカー中の水溶液を攪拌しながら粉末のラウリン酸(関東化学社製、融点44[℃]〜46[℃])を水100質量部に対して100質量部混合した。ラウリン酸は、投入直後に溶融し、乳化(O/Wエマルジョン化)が始まった。このまま10分間攪拌を続けた。攪拌後、ビーカーに攪拌子を入れて300[rpm]で回転しながらビーカーの周りに氷を置き、10[℃]まで一気に冷やしながら10分間攪拌した。この時点で乳化液をレーザ顕微鏡で観察したところ、直径300[nm]程度の固形のラウリン酸微粒子が多数観察された。
【0307】
次に、ラウリン酸微粒子が分散した水分散液を500[rpm]で攪拌しながらエタノール50[mL]をビーカー中の水分散液に滴下して10分間攪拌した。攪拌後、遠心分離器にて固形分と液を分離し、上澄みの液を捨てて酢酸エチルを混合した。この作業を10回繰り返し、酢酸エチル中に固形微粒子が分散した液ができた。得られた固形微粒子についてTEMによる断面観察をしたところ、ポリビニルアルコールをシェルとしてラウリン酸を内包する、粒径が300[nm]のカプセルであった。
【0308】
<トナーの作製>
熱可塑性エラストマーとしてのスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS、アサヒプレンT432、旭化成社製)を、酢酸エチル100質量部に対して前記SBSが20質量部となるように酢酸エチルに溶解させた。次に、上記で作製した酢酸エチルに分散した前記カプセルを、前記SBSの酢酸エチル溶解液(前記SBSが20質量[%])に、前記SBS100質量部に対して前記カプセルが15質量部となるように混合し、100[rpm]にて3分間攪拌した。これら一連の混合は、20[℃]の環境で行った。
【0309】
前記SBSと前記カプセルを混合した酢酸エチル液に、前記液の固形分全体に対して、ポリスチレン(ピコラスティックA−75、イーストマン社製)を10[質量%]、カーボンブラックマスターバッチを10[質量%]加え攪拌した。この酢酸エチル液を油相とした。分散剤(ソルビトール系界面活性剤、花王TW120[s]、花王社製)を2[質量%]溶解した水を水相とし、その水相をホモミキサー(TKホモミクサーMARK II、プライミクス社製)にて攪拌しながら、油相である前記酢酸エチル液を徐々に加え、平均粒子径15[μm]のO/Wエマルジョンを作製した。
【0310】
3時間攪拌(液温は、30[℃])し、余分な酢酸エチルをほとんど蒸発させたところで、疎水性シリカ微粒子を加えて、微粒子表面に疎水性外添剤層を形成した。その後、水を除去し、十分に乾燥し、乾燥したトナー(平均粒子径10[μm])を得た。得られたトナーにおいて、SBSの含有量は、結着樹脂に対して、87[質量%]であった。
【0311】
<耐熱試験>
耐熱試験は、針入度試験器(日科エンジニアリング社製)を用いて測定した。具体的には、トナーを10[g]計量し、温度20[℃]〜25[℃]、40[%]〜60[%]RHの環境下で30[mL]のガラス容器(スクリューバイアル)に入れ、蓋を閉めた。前記トナーを入れたガラス容器を100回タッピングした後、温度を50[℃]にセットした恒温槽に24時間放置した。放置後のガラス容器中のトナーに対し、針入度試験器で針入度を測定して評価した。その結果、針入度は、21[mm]であり、良好な結果を示した。この結果から、トナーは、50[℃]での保存において、ほとんど軟化しておらず、耐熱保存性、トナースペント性、及び、トナーフィルミング性に優れることが確認できた。
【0312】
[比較例1]
実施例1において、トナーをリコーMFP機CX3000用の黒トナーに代えた以外は、実施例1と同様にして、通過後のトナー像を目視しで画像乱れの状態と定着性を実施例1と同様に評価した。
【0313】
[比較例2]
実施例2において、トナーをリコーMFP機CX3000用の黒トナーに代えた以外は、実施例2と同様にして、通過後のトナー像を目視しで画像乱れの状態と定着性を実施例1と同様に評価した。
【0314】
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例3の実験結果として、表1に画像乱れ評価結果を示しており、表2に定着性評価結果を示した。
【0315】
【表1】

【0316】
【表2】

【0317】
表1や表2より、保存性の良い(耐熱保存性、トナースペント性、及びトナーフィルミング性に優れた)トナーを60[℃]、0.3[MPa]において、画像乱れなく紙に定着させることができるのがわかる。これは、樹脂及び樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて紙上に形成されたトナー像を、紙に定着させる定着装置において、ヒーターによって加熱される定着ローラの線速が加圧ローラの線速よりも速いことで、ニップ部で定着ローラからトナーへの熱の伝達速度が速くなり、低温の定着温度でもカプセルに内包した可塑剤を十分に溶解することができ、良好な定着性を得ることができるためだと考えられる。
【0318】
また、定着ローラの表面に潤滑剤としてオイルを塗布することで、定着ローラの線速と加圧ローラの線速とに、より大きな線速差を与えても、画像乱れを起こさず高い光沢度を持った定着性の良い画像を得ることが可能となる。
【0319】
これらのことから、本実施形態の各構成例で示したような定着装置を用いれば、画像乱れがなく定着性が良好なトナー像を従来に比べて低温度で得ることが可能であることがわかった。
【0320】
なお、20[%]を超える線速差を与えるとトナー像の乱れに加え、ジャム及び紙しわを起こしやすくなり、且つ、騒音も大きくなり製品としての価値が著しく低下してしまう。しかしながら、これらの課題に対応可能であれば本実施形態の構成で20[%]以上の線速差を与えることは可能であり、より低温、且つ、低圧での定着を狙うことも可能である。
【0321】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
定着ローラ501などの第一回転体と加圧ローラ502などの第二回転体とを有し第一回転体と第二回転体とを圧接させてニップ部Nなどの圧接部を形成し、圧接部で記録媒体Sなどの記録媒体を挟み込んで記録媒体上のトナーを加圧する加圧手段と、第一回転体を加熱するヒーター503などの加熱手段とを備え、結着樹脂などの樹脂、及び、樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤207などの可塑剤を内包したカプセル204などのカプセルを少なくとも含有したトナー201などのトナーを用いて記録媒体上に形成されたトナー像を、記録媒体に定着させる定着装置500などの定着装置において、第一回転体の線速が第二回転体の線速よりも速い。これよれば、上記実施形態について説明したように、省エネルギー化を図りつつ、加熱温度不足による定着不良が発生するのを抑制できる。
(態様B)
(態様A)において、第一回転体の表面にオイルなどの潤滑剤を塗布するオイル塗布装置514などの潤滑剤塗布手段を有する。これによれば、上記実施形態について説明したように、より線速差を与えることが可能となり、画像乱れを起こさず高い光沢度を持った定着性の良い画像を得ることが可能となる。
(態様C)
(態様A)または(態様B)において、第一回転体と第二回転体との線速差は、線速差[%]={(第一回転体の線速−第二回転体の線速)/第二回転体の線速}×100で算出され、前記線速差が10[%]である。これによれば、上記実施形態について説明したように、圧接部での圧力の大きさによらず画像乱れがなく定着性が良好な画像を従来に比べて低温度で得ることができる。
(態様D)
像担持体と、像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、樹脂、及び、樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて潜像を現像しトナー像を形成する現像手段と、トナー像を像担持体上から記録媒体上に転写する転写手段と、記録媒体上に転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着手段とを備えた画像形成装置において、前記定着手段として、(態様A)、(態様B)または(態様C)の定着装置を用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、省エネルギー化を図りつつ、加熱温度不足による定着不良が発生するのを抑制できる。
(態様E)
加熱手段により加熱された第一回転体と、第二回転体とを圧接させて形成された圧接部に記録媒体を挟み込み、樹脂及び樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて記録媒体上に形成されたトナー像を、記録媒体に定着させる定着方法において、第一回転体の線速が第二回転体の線速よりも速い。これよれば、上記実施形態について説明したように、省エネルギー化を図りつつ、加熱温度不足による定着不良が発生するのを抑制できる。
(態様F)
(態様E)において、第一回転体の表面に潤滑剤塗布手段によって潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布工程を有する。これによれば、上記実施形態について説明したように、より線速差を与えることが可能となり、画像乱れを起こさず高い光沢度を持った定着性の良い画像を得ることが可能となる。
(態様G)
像担持体上に潜像を形成する潜像形成工程と、樹脂及び樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて潜像を現像しトナー像を形成する現像工程と、トナー像を像担持体上から記録媒体上に転写する転写工程と、記録媒体上に転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着工程とを有する画像形成方法において、前記定着工程で(態様F)または(態様F)の定着方法を用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、省エネルギー化を図りつつ、加熱温度不足による定着不良が発生するのを抑制できる。
【符号の説明】
【0322】
3 搬送ベルト
7 定着装置
10 感光体ドラム
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写ベルトクリーニング装置
18 画像形成ユニット
20 帯電ローラ
21 露光装置
22 二次転写手段
22 二次転写装置
23 ローラ
24 転写搬送ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 反転装置
32 コンタクトガラス
33 第一走行体
34 第二走行体
35 結像レンズ
36 読み取りセンサ
40 現像装置
41 現像ベルト
42 現像剤収容部
43 現像剤供給ローラ
44 現像ローラ
45 現像装置
49 レジストローラ
50 中間転写ベルト
51 ローラ
52 分離ローラ
53 給紙路
54 手差しトレイ
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排紙トレイ
58 コロナ帯電器
60 クリーニングブレード
61 現像装置
62 転写ローラ
63 感光体ドラムクリーニング装置
64 除電装置
65 現像スリーブ
66 攪拌部
67 現像部
68 搬送スクリュー
69 除電ランプ
70 現像ケース
71 トナー濃度センサ
72 マグネットローラ
73 ドクタブレード
75 クリーニングブレード
76 ファーブラシ
77 電界ローラ
78 スクレーパ
79 回収スクリュー
80 トナーリサイクル装置
80 転写ローラ
90 中間転写ベルトクリーニング装置
100 画像形成装置
120 タンデム型画像形成部
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
150 複写機本体
160 帯電装置
200 給紙テーブル
201 トナー
202 結着樹脂
203 着色剤
204 カプセル
205 電制御剤
206 外添剤
207 可塑剤
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置
500 定着装置
501 定着ローラ
502 加圧ローラ
503 ヒーター
510 定着装置
511 定着ローラ
512 加圧ローラ
513 ヒーター
514 オイル塗布装置
515 オイル塗布ローラ
516 汲み上げローラ
517 オイル膜厚制御ブレード
518 オイルタンク
520 定着装置
521 加熱ローラ
522 定着ローラ
523 定着ベルト
524 加圧ローラ
525 ヒーター
530 定着装置
531 加熱ローラ
532 定着ローラ
533 定着ベルト
534 加圧ローラ
535 ヒーター
536 オイル塗布装置
537 オイル塗布ローラ
538 汲み上げローラ
539 オイル膜厚制御ブレード
540 オイルタンク
550 定着装置
551 定着ローラ
552 加圧ローラ
553 電磁誘導加熱装置
554 励磁コイル
555 コイルガイド板
556 励磁コイルコア支持部材
557 励磁コイルコア
560 定着装置
561 定着ローラ
562 加圧ローラ
563 電磁誘導加熱装置
564 励磁コイル
565 コイルガイド板
566 励磁コイルコア支持部材
567 励磁コイルコア
568 オイル塗布装置
569 オイル塗布ローラ
570 汲み上げローラ
571 オイル膜厚制御ブレード
572 オイルタンク
580 定着装置
581 加熱ローラ
582 定着ローラ
583 定着ベルト
584 加圧ローラ
585 電磁誘導加熱装置
586 励磁コイル
587 コイルガイド板
588 励磁コイルコア
589 励磁コイルコア支持部材
590 定着装置
591 加熱ローラ
592 定着ローラ
593 定着ベルト
594 加圧ローラ
595 電磁誘導加熱装置
596 励磁コイル
597 コイルガイド板
598 励磁コイルコア
599 励磁コイルコア支持部材
600 オイル塗布装置
601 オイル塗布ローラ
602 汲み上げローラ
603 オイル膜厚制御ブレード
604 オイルタンク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0323】
【特許文献1】特開平8−006426号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一回転体と第二回転体とを有し該第一回転体と該第二回転体とを圧接させて圧接部を形成し、該圧接部で記録媒体を挟み込んで該記録媒体上のトナーを加圧する加圧手段と、
前記第一回転体を加熱する加熱手段とを備え、
樹脂、及び、該樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて前記記録媒体上に形成されたトナー像を、該記録媒体に定着させる定着装置において、
前記第一回転体の線速が前記第二回転体の線速よりも速いことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1の定着装置において、
上記第一回転体の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段を有することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2の定着装置において、
上記第一回転体と上記第二回転体との線速差は、線速差[%]={(第一回転体の線速−第二回転体の線速)/第二回転体の線速}×100で算出され、前記線速差が10[%]であることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
像担持体と、
像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、
樹脂、及び、該樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて前記潜像を現像しトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を前記像担持体上から記録媒体上に転写する転写手段と、
前記記録媒体上に転写されたトナー像を該記録媒体に定着させる定着手段とを備えた画像形成装置において、
前記定着手段として、請求項1、2または3の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
加熱手段により加熱された第一回転体と、第二回転体とを圧接させて形成された圧接部に記録媒体を挟み込み、樹脂及び該樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて前記記録媒体上に形成されたトナー像を、該記録媒体に定着させる定着方法において、
前記第一回転体の線速が前記第二回転体の線速よりも速いことを特徴とする定着方法。
【請求項6】
請求項5の定着方法において、
上記第一回転体の表面に潤滑剤塗布手段によって潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布工程を有することを特徴とする定着方法。
【請求項7】
像担持体上に潜像を形成する潜像形成工程と、
樹脂、及び、該樹脂を軟化させる常温で固体状の可塑剤を内包したカプセルを少なくとも含有したトナーを用いて前記潜像を現像しトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を前記像担持体上から記録媒体上に転写する転写工程と、
前記記録媒体上に転写されたトナー像を該記録媒体に定着させる定着工程とを有する画像形成方法において、
前記定着工程で請求項5または6の定着方法を用いることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−54085(P2013−54085A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190330(P2011−190330)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】