説明

定着装置およびこれを備える画像形成装置

【課題】優れた耐久性を有するとともに、優れた定着性を有する定着装置およびこれを備える画像形成装置を提供すること。
【解決手段】定着装置は、定着ローラ91と加圧ローラ92との間に、未定着像を担持する記録媒体を通過させて、該記録媒体を加熱・加圧することにより、前記未定着像を前記記録媒体に定着させる。加圧ローラ92は、基部92Aと、その外周面に設けられた弾性層92Bと、その外周面に設けられた離型層92Cとを有し、離型層92Cは、加圧ローラ92の軸線方向の両端部において、弾性層92Bの端面より延出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置およびこれを備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用するプリンタ、コピー、ファクシミリなどの画像形成装置には、トナーにより形成されたトナー像を未定着状態で担持する紙等の記録媒体に加熱および加圧することにより、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着装置が備えられている(例えば、特許文献1参照。)。
かかる定着装置は、一般に、互いに圧接回転する円柱状または円筒状の定着ローラおよび加圧ローラと、この定着ローラを加熱するハロゲンヒータとを有している。前記定着ローラおよび前記加圧ローラの前記圧接により形成されたニップに、記録媒体を通紙することにより、前記記録媒体を加熱および加圧して、前記記録媒体上に形成されたトナー像を前記記録媒体に定着させる。
【0003】
特許文献1では、加圧ローラの軸線方向での長さが定着ローラの軸線方向での長さよりも若干短くなっている。また、前記加圧ローラは、芯金と、この芯金の周囲を覆うゴム製の弾性層と、この弾性層の周囲を覆う離型層とを有している。前記弾性層の弾性により、ニップ幅を大きいものとして定着性を向上させるとともに、離型層の離型性により、加圧ローラへの記録媒体の巻き付きなどを防止している。さらに、弾性層と離型層とは加圧ローラの軸線方向で同等の長さとなっていて、定着ローラの軸線方向における弾性層の端縁と離型層の端縁とが一致している。
【0004】
しかしながら、特許文献1では、加圧ローラの軸線方向における弾性層の端縁と離型層の端縁とが一致しているので、定着ローラとの圧接により離型層の端縁にストレスがかかりやすい。そのため、離型層を薄くすると、離型層が裂けやすく、定着装置の耐久性が低いものとなってしまう。一方、定着装置の耐久性を向上させるために、離型層を厚くすると、弾性層の弾性を十分に発揮させることができないため、十分なニップ幅を得ることができず、優れた定着性を得ることができない場合があった。
【0005】
【特許文献1】特公昭58−43740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れた耐久性を有するとともに、優れた定着性を有する定着装置およびこれを備える画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の定着装置は、互いに圧接回転する1対の回転体の間に、未定着像を担持する記録媒体を通過させて、該記録媒体を加熱・加圧することにより、前記未定着像を前記記録媒体に定着させる定着装置であって、
前記1対の回転体のうちの少なくとも一方の回転体は、基部と、その外周面に設けられた弾性層と、その外周面に設けられた離型層とを有し、前記離型層は、前記回転体の軸線方向の少なくとも一端部において、前記弾性層の端面より延出していることを特徴とする。
これにより、離型層の縁部にかかるストレスを低減することができるので、離型層を薄くしても離型層の裂けの発生を防止することができる。また、離型層を薄くすることができるので、弾性層の弾性を十分に発揮させて、十分なニップ幅を得ることができる。その結果、定着装置の耐久性および定着性を優れたものとすることができる。
【0008】
本発明の定着装置では、前記離型層は、前記回転体の軸線方向の両端部において、前記弾性層の端面より延出していることが好ましい。
これにより、回転体の軸線方向での両端部において、本発明の効果を得ることができる。その結果、定着装置の耐久性および定着性をより優れたものとすることができる。
本発明の定着装置では、前記1対の回転体のうち少なくとも一方の回転体は、その外径が軸線方向の中央部から両端部に向け漸増していることが好ましい。
これにより、記録媒体のニップ通過時に皺が発生するのを防止することができる。このような場合、回転体の端縁部にかかる圧力が比較的大きく、本発明の効果が顕著となる。
【0009】
本発明の定着装置では、前記1対の回転体のうちの一方の回転体の軸線方向での長さが、他方の回転体の同方向での長さよりも短くなっており、前記一方の回転体が、前記離型層および前記弾性層とを有していることが好ましい。
これにより、一方の回転体において、離型層を薄くするとともに、弾性層の弾性を十分に発揮させることができる。このような場合、前記一方の回転体の端縁部にかかる圧力が比較的大きく、本発明の効果が顕著となる。
【0010】
本発明の定着装置では、前記他方の回転体を加熱するヒータを有していることが好ましい。
これにより、一方の回転体において弾性層の弾性を十分に発揮させて、十分なニップ幅を得つつ、他方の回転体を効率よく加熱して、ニップの温度を安定的なものとすることができる。
【0011】
本発明の定着装置では、前記離型層の前記弾性層の端面より延出している部分は、回転体の軸線側に向け縮径していることが好ましい。
これにより、前記延出している部分とこれに対向する回転体との接触を防止することができるので、離型層の縁部にかかるストレスをより低減することができる。
本発明の定着装置では、前記離型層の前記弾性層の端面より延出している部分の長さは、0.5〜5mmであることが好ましい。
これにより、弾性層の縁部に対する離型層の接触部の損傷を防止しつつ、離型層の縁部にかかるストレスをより確実に低減することができる。
【0012】
本発明の定着装置では、前記離型層の厚さは、10〜80μmであることが好ましい。
これにより、離型層に必要な強度を保ちつつ、弾性層の弾性を十分に発揮させることができる。
本発明の定着装置では、前記弾性層の端部の外径は、その端面に向け漸減していることが好ましい。
これにより、定着に必要なニップの圧力を確保しつつ、弾性層の縁部に対する離型層の接触部の損傷を防止することができる。
【0013】
本発明の定着装置では、前記弾性層は、前記回転体の軸線方向の少なくとも一端部において、前記基部の端面より延出していることが好ましい。
これにより、弾性層の縁部にかかるストレスを低減することができるので、弾性層の裂けの発生を防止することができる。
本発明の定着装置では、前記弾性層の前記基部の端面より延出している部分の長さは、0.5〜5mmであることが好ましい。
これにより、基部の縁部に対する弾性層の接触部の損傷を防止しつつ、弾性層の縁部にかかるストレスをより確実に低減することができる。
【0014】
本発明の定着装置では、前記基部の端部の外径は、その端面に向け漸減していることが好ましい。
これにより、弾性層の縁部にかかるストレスを低減することができるので、弾性層の裂けの発生を防止することができる。
本発明の定着装置では、前記弾性層の厚さは、0.3〜8mmであることが好ましい。
これにより、弾性層の耐久性を優れたものとしつつ、ニップ幅を十分なものとすることができる。
本発明の画像形成装置は、本発明の定着装置を備えることを特徴とする。
これにより、優れた耐久性を有するとともに、優れた定着性を有する画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の定着装置およびこれを備える画像形成装置の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を図1ないし図3に基づき説明する。
図1は、本発明にかかる画像形成装置の1実施形態を示す全体構成の模式的断面図、図2は、図1に示す画像形成装置に備えられた定着装置の好適な実施形態を示す模式的断面図、図3は、図2におけるA−A線断面図である。
【0016】
◆◆◆画像形成装置◆◆◆
本発明の定着装置に先立ち、本発明の定着装置を備える画像形成装置を簡単に説明する。
本実施形態の画像形成装置10は、図1に示すように、潜像を担持し図示矢印方向に回転する感光体20を有し、その回転方向に沿って順次、帯電ユニット30、露光ユニット40、現像ユニット50、一次転写ユニット60、クリーニングユニット75が配設されている。また、画像形成装置10は、図1にて下部に、紙などの記録媒体Pを収容する給紙トレイ82を有し、その給紙トレイ82に対して記録媒体Pの搬送方向下流に、二次転写ユニット80、定着装置90が順次配設されている。
【0017】
感光体20は、円筒状の導電性基材(図示せず)と、その外周面に形成された感光層(図示せず)とを有し、その軸線まわりに図1中矢印方向に回転可能となっている。
帯電ユニット30は、コロナ帯電などにより感光体20の表面を一様に帯電するための装置である。
露光ユニット40は、図示しないパーソナルコンピュータなどのホストコンピュータから画像情報を受けこれに応じて、一様に帯電された感光体20上に、レーザを照射することによって、静電的な潜像を形成する装置である。
【0018】
現像ユニット50は、ブラック現像装置51と、マゼンタ現像装置52と、シアン現像装置53と、イエロー現像装置54との4つの現像装置を有し、これらの現像装置を感光体20上の潜像に対応して選択的に用いて、前記潜像をトナー像として可視化する装置である。ブラック現像装置51はブラック(K)トナー、マゼンタ現像装置52はマゼンタ(M)トナー、シアン現像装置53はシアン(C)トナー、イエロー現像装置54はイエロー(Y)トナーを用いて現像を行う。
【0019】
本実施形態におけるYMCK現像ユニット50は、前述の4つの現像装置51、52、53、54を選択的に感光体20に対向するように、回転可能となっている。具体的には、このYMCK現像ユニット50は、軸50aを中心として回転可能な保持体55の4つの保持部55a、55b、55c、55dにそれぞれ4つの現像装置51、52、53、54が保持されており、前記保持体の回転により、4つの現像装置51、52、53、54が相対位置関係を維持したまま、感光体20に選択的に対向するようになっている。
【0020】
一次転写ユニット60は、感光体20に形成された単色のトナー像を中間転写体70に転写するための装置である。
中間転写体70は、エンドレスのベルトであり、図1に示す矢印方向に、感光体20とほぼ同じ周速度にて回転駆動される。中間転写体70上には、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのうちの少なくとも1色のトナー像が担持され、例えばフルカラー画像の形成時に、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの4色のトナー像が順次重ねて転写されて、フルカラーのトナー像が形成される。
【0021】
二次転写ユニット80は、中間転写体70上に形成された単色やフルカラーなどのトナー像を、紙、フィルム、布等の記録媒体Pに転写するための装置である。
定着装置90は、前記トナー像の転写を受けた記録媒体Pを加熱および加圧することにより、前記トナー像を記録媒体Pに融着させて永久像として定着させるための装置である。なお、定着装置90については、後に詳述する。
クリーニングユニット75は、一次転写ユニット60と帯電ユニット30との間で感光体20の表面に当接するゴム製のクリーニングブレード76を有し、一次転写ユニット60によって中間転写体70上にトナー像が転写された後に、感光体20上に残存するトナーをクリーニングブレード76により掻き落として除去するための装置である。
【0022】
次に、このように構成された画像形成装置10の動作を説明する。
まず、図示しないホストコンピュータからの指令により、感光体20、現像ユニット50に設けられた現像ローラ(図示せず)、および中間転写体70が回転を開始する。そして、感光体20は、回転しながら、帯電ユニット30により順次帯電される。
【0023】
感光体20の帯電された領域は、感光体20の回転に伴って露光位置に至り、露光ユニット40によって、第1色目、例えばイエローYの画像情報に応じた潜像が前記領域に形成される。
感光体20上に形成された潜像は、感光体20の回転に伴って現像位置に至り、イエロー現像装置54によってイエロートナーで現像される。これにより、感光体20上にイエロートナー像が形成される。このとき、YMCK現像ユニット50は、イエロー現像装置54が、前記現像位置にて感光体20と対向している。
【0024】
感光体20上に形成されたイエロートナー像は、感光体20の回転に伴って一次転写位置に至り、一次転写ユニット60によって、中間転写体70に転写される。このとき、一次転写ユニット60には、トナーの帯電極性とは逆の極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。なお、この間、二次転写ユニット80は、中間転写体70から離間している。
前述の処理と同様の処理が、第2色目、第3色目および第4色目について繰り返して実行されることにより、各画像信号に対応した各色のトナー像が、中間転写体70に重なり合って転写される。これにより、中間転写体70上にはフルカラートナー像が形成される。
一方、記録媒体Pは、給紙トレイ82から、給紙ローラ84、レジローラ86によって二次転写ユニット80へ搬送される。
【0025】
中間転写体70上に形成されたフルカラートナー像は、中間転写体70の回転に伴って二次転写位置に至り、二次転写ユニット80によって記録媒体Pに転写される。このとき、二次転写ユニット80は中間転写体70に押圧されるとともに二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。
記録媒体Pに転写されたフルカラートナー像は、定着装置90によって加熱および加圧されて記録媒体Pに融着される。
一方、感光体20は一次転写位置を経過した後に、クリーニングユニット75のクリーニングブレード76によって、その表面に付着しているトナーが掻き落とされ、次の潜像を形成するための帯電に備える。掻き落とされたトナーは、クリーニングユニット75内の残存トナー回収部に回収される。
【0026】
◆◆◆定着装置◆◆◆
ここで、定着装置90を図2、図3に基づいて詳細に説明する。
定着装置90は、図2に示すように、互いに圧接回転する1対の回転体である定着ローラ91および加圧ローラ92と、定着ローラ91を加熱するためのヒータ93と、定着ローラ91の温度を検知するための温度検知体94と、定着ローラ91から定着後の記録媒体を分離するための分離部材95と、定着ローラ91および加圧ローラ92のそれぞれの周面の一部を覆うカバー96とを有している。
【0027】
この定着装置90は、定着ローラ91および加圧ローラ92の圧接により形成されるニップNに対し、図2にて下方から、未定着像を担持する記録媒体がニップNへ搬送され、前記記録媒体を加熱および加圧することにより、前記未定着像を前記記録媒体に定着させる。本実施形態では、ニップNに搬送される記録媒体は定着ローラ91側に未定着像を担持している。
【0028】
定着ローラ91は、円筒状をなし、その軸線まわりに回転可能となっている。また、定着ローラ91の内部空間には、ヒータ93が配設され、定着ローラ91は、ヒータ93により加熱される。これにより、加圧ローラ92において、後述する弾性層92Bの弾性を十分に発揮させて、十分なニップ幅を得つつ、定着ローラ91を効率よく加熱して、ニップNの温度を安定的なものとすることができる。
【0029】
このような定着ローラ91の温度を検知するための温度検知体94は、例えばサーミスタであり、定着ローラ91の周面に接触して設けられている。このような温度検知体94によって検知された温度に基づき、図示しない制御手段により、定着ローラ91の外表面が目標温度となるように、前述したヒータ93の駆動が制御される。
定着ローラ91から定着後の記録媒体を分離するための分離部材95は、定着ローラ91の周面に接触もしくは近接して設けられており、ニップNを通過した後の記録媒体を定着ローラ91から分離して正規の位置(定着装置90の外部)へもたらすようになっている。
【0030】
加圧ローラ92は、円筒状または円柱状をなし、その軸線まわりに回転可能となっているとともに、定着ローラ91に圧接している。
また、加圧ローラ92は、図2および図3に示すように、円柱状をなす金属製の基部(芯金)92Aと、基部92Aの外周面を覆う弾性層92Bと、弾性層92Bの外周面を覆う離型層92Cとを有している。なお、図3は、定着ローラ91と加圧ローラ92との圧接を解除した状態を示している。
【0031】
すなわち、加圧ローラ92は、その表層として設けられた離型層92Cと、離型層92Cよりも下層に設けられた弾性層92Bとを有している。離型層92Cは、図3に示すように、加圧ローラ92の軸線方向における弾性層92Bの端面より延出している。これにより、離型層92Cの縁部にかかるストレスを低減することができるので、離型層92Cを薄くしても離型層92Cの裂けの発生を防止することができる。また、離型層92Cを薄くすることができるので、弾性層92Bの弾性を十分に発揮させて、十分なニップ幅を得ることができる。その結果、定着装置90の耐久性および定着性を優れたものとすることができる。
特に、離型層92Cは、加圧ローラ92の軸線方向の両端部において、弾性層92Bの端面より延出しているので、加圧ローラ92の軸線方向での両端部において、本発明の効果を得ることができる。その結果、定着装置90の耐久性および定着性をより優れたものとすることができる。
【0032】
本実施形態では、図3に示すように、加圧ローラ92の軸線方向での長さが、定着ローラ91の同方向での長さよりも短くなっている。このような場合、加圧ローラ92の端縁部にかかる圧力が比較的大きい。したがって、前述したように、加圧ローラ92において、離型層92Cを薄くするとともに、弾性層92Bの弾性を十分に発揮させることができるため、本発明の効果が顕著である。
【0033】
また、定着ローラ91および加圧ローラ92の双方のそれぞれの外径が軸線方向の中央部から両端部に向け漸増している。これにより、記録媒体のニップN通過時に皺が発生するのを防止することができる。このような場合、加圧ローラ92の端縁部にかかる圧力が比較的大きい。したがって、本発明の効果が顕著となる。
また、離型層92Cの弾性層92Bの端面より延出している部分は、図3に示すように、加圧ローラ92の軸線側に向け縮径している。これにより、前記延出している部分とこれに対向する定着ローラ91との接触を防止することができるので、離型層92Cの縁部にかかるストレスをより低減することができる。
【0034】
また、弾性層92Bの端部の外径は、図3に示すように、その端面に向け漸減している。これにより、定着に必要なニップNの圧力を確保しつつ、弾性層92Bの縁部に対する離型層92Cの接触部の損傷を防止することができる。
離型層92Cの弾性層92Bの端面より延出している部分の長さXは、0.5〜5mmであるのが好ましく、1〜3mmであるのがより好ましい。これにより、弾性層92Bの縁部に対する離型層92Cの接触部の損傷を防止しつつ、離型層92Cの縁部にかかるストレスをより確実に低減することができる。
【0035】
また、離型層92Cの厚さは、10〜80μmであるのが好ましく、20〜50μmであるのがより好ましい。これにより、離型層92Cに必要な強度を保ちつつ、弾性層92Bの弾性を十分に発揮させることができる。
また、離型層92Cの構成材料としては、例えば、PTFE、PFAなどを好適に用いることができる。
【0036】
また、弾性層の厚さは、0.3〜8mmであるのが好ましく、0.6〜6mmであるのがより好ましい。これにより、弾性層92Bの耐久性を優れたものとしつつ、ニップNの幅を十分なものとすることができる。
また、弾性層92Bの構成材料としては、例えば、Siゴム、EPDM、フッ素ゴムなどを好適に用いることができる。
以上説明したように、本実施形態では、加圧ローラ92が、基部92Aと、その外周面に設けられた弾性層92Bと、その外周面に設けられた離型層92Cとを有し、離型層92Cが、加圧ローラ92の軸線方向の両端部において、弾性層92Bの端面より延出しているので、定着装置90の耐久性および定着性を優れたものとすることができる。
【0037】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を図4に基づき説明する。以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図4は、本実施形態の定着ローラおよび加圧ローラを説明するための図である。
本実施形態の定着装置90’は、加圧ローラの端部の構成が異なる以外は、第1実施形態の定着装置と同様である。
【0038】
定着装置90’に備えられた加圧ローラ92’は、図4に示すように、円柱状をなす金属製の基部(芯金)92’Aと、基部92’Aの外周面を覆う弾性層92’Bと、弾性層92’Bの外周面を覆う離型層92’Cとを有している。なお、図4は、定着ローラ91と加圧ローラ92’との圧接を解除した状態を、図3に対応する断面で示している。
弾性層92’Bは、加圧ローラ92’の軸線方向の両端部において、基部92’Aの端面より延出している。これにより、弾性層92’Bの縁部にかかるストレスを低減することができるので、弾性層92’Bの裂けの発生を防止することができる。
【0039】
このような弾性層92’Bの基部92’Aの端面より延出している部分Yの長さは、0.5〜5mmであるのが好ましく、1〜3mmであるのがより好ましい。これにより、基部92’Aの縁部に対する弾性層92’Bの接触部の損傷を防止しつつ、弾性層92’Bの縁部にかかるストレスをより確実に低減することができる。
また、基部92’Aの端部の外径は、図4に示すように、その端面に向け漸減している。これにより、弾性層92’Bの縁部にかかるストレスを低減することができるので、弾性層92’Bの裂けの発生を防止することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、前述した第1実施形態の効果に加えて、弾性層92’Bの縁部にかかるストレスを低減することができるので、弾性層92’Bの裂けの発生を防止することができる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
例えば、本発明の定着装置および画像形成装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、前述した実施形態では1対の回転体のうちの一方、すなわち加圧ローラ92の離型層が加圧ローラの軸線方向における弾性層の端面より延出しているものについて説明したが、定着ローラ長さが加圧ローラの長さとほぼ同等もしくは加圧ローラより短く、かつ、定着ローラが弾性層および離型層を有する場合、定着ローラ91の離型層を定着ローラの軸線方向における弾性層の端面より延出させても、本発明の効果を得ることができる。
【0042】
また、前述した実施形態では、定着装置として、1対の回転体としてローラ状をなす定着ローラおよび加圧ローラを備えるものについて説明したが、一方の回転体をフィルム状とし、他方の回転体をローラ状とするものであってもよい。
例えば、支持体に支持された加熱体と、支持体の周囲に外嵌された一方の回転体である耐熱フィルムと、耐熱フィルムを介して加熱体に圧接してニップを形成する他方の回転体である加圧ローラとを備え、未定着のトナー像を担持した記録媒体を前記ニップに通過させることにより記録媒体に前記加熱体の熱エネルギーを付与して定着させる定着装置であってもよい。
【0043】
また、励磁コイルと、励磁コイルを支持する支持体と、励磁コイルが生成する磁場中を移動する導電層を有する一方の回転体であるフィルムと、フィルムを介して支持体に圧接してニップを形成する他方の回転体である加圧ローラとを備え、未定着のトナー像を担持した記録媒体を前記ニップに通過させることにより記録媒体に前記フィルムの熱エネルギーを付与して定着させる定着装置であってもよい。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
図3に示すような定着ローラおよび加圧ローラを製造した。
定着ローラの外径は約30mmであり、軸線方向での端部の外径は中央部の外径よりも135μm大きかった。また、定着ローラは、基部として、鉄で構成されたものを用いた。また、定着ローラは、弾性層として、Siゴムで構成されたものを用い、その厚さが1mmであった。また、定着ローラは、離型層として、PFAで構成されたものを用い、その厚さが30μmであった。
【0045】
加圧ローラの外径は約35mmであり、軸線方向での端部の外径は中央部の外径よりも80μm大きかった。また、加圧ローラは、基部として、鉄で構成されたものを用いた。また、加圧ローラは、弾性層として、Siゴムで構成されたものを用い、その厚さが5mmであった。また、加圧ローラは、離型層として、PFAで構成されたものを用い、その厚さが30μmであった。また、離型層の弾性層の端面より延出している部分の長さは、2mmであった。
【0046】
(実施例2)
加圧ローラの構成を図4に示すようなものとした以外は、実施例1と同様にして、定着ローラおよび加圧ローラを製造した。
(比較例)
加圧ローラの軸線方向における両端部において、離型層の端面と弾性層の端面とを一致させた以外は、実施例1と同様にして、定着ローラおよび加圧ローラを製造した。
【0047】
以上のような実施例1、2および比較例のそれぞれについて、作製した定着ローラおよび加圧ローラを図1に示すような画像形成装置に搭載して、80000枚の連続印字を行って、加圧ローラの耐久性の評価を行った。
その結果、実施例1、2の加圧ローラの離型層の縁部には、裂けが生じなかった。特に、実施例2の加圧ローラは、100000枚の連続印字を行っても、離型層の縁部に裂けが生じず、また、弾性層の裂けも生じなかった。一方、比較例の加圧ローラの離型層の縁部には、裂けが生じた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の1実施形態を示す全体構成の模式的断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置に備えられた定着装置の好適な実施形態を示す模式的断面図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の回転体の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10‥‥‥画像形成装置 20‥‥‥感光体 30‥‥‥帯電ユニット 40‥‥‥露光ユニット 50‥‥‥現像ユニット 50a‥‥‥軸 51‥‥‥ブラック現像装置 52‥‥‥マゼンタ現像装置 53‥‥‥シアン現像装置 54‥‥‥イエロー現像装置 55‥‥‥保持体 55a〜55d‥‥‥保持部 60‥‥‥一次転写ユニット 70‥‥‥中間転写体 75‥‥‥クリーニングユニット 76‥‥‥クリーニングブレード 80‥‥‥二次転写ユニット 82‥‥‥給紙トレイ 84‥‥‥給紙ローラ 86‥‥‥レジローラ 90、90’‥‥‥定着装置 91‥‥‥定着ローラ(回転体) 92、92’‥‥‥加圧ローラ(回転体) 92A、92’A‥‥‥基部 92B、92’B‥‥‥弾性層 92C、92’C‥‥‥離型層 93‥‥‥ヒータ 94‥‥‥温度検知体 95‥‥‥分離部材 96‥‥‥カバー N‥‥‥ニップ P‥‥‥記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに圧接回転する1対の回転体の間に、未定着像を担持する記録媒体を通過させて、該記録媒体を加熱・加圧することにより、前記未定着像を前記記録媒体に定着させる定着装置であって、
前記1対の回転体のうちの少なくとも一方の回転体は、基部と、その外周面に設けられた弾性層と、その外周面に設けられた離型層とを有し、前記離型層は、前記回転体の軸線方向の少なくとも一端部において、前記弾性層の端面より延出していることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記離型層は、前記回転体の軸線方向の両端部において、前記弾性層の端面より延出している請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記1対の回転体のうち少なくとも一方の回転体は、その外径が軸線方向の中央部から両端部に向け漸増している請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記1対の回転体のうちの一方の回転体の軸線方向での長さが、他方の回転体の同方向での長さよりも短くなっており、前記一方の回転体が、前記離型層および前記弾性層とを有している請求項1ないし3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記他方の回転体を加熱するヒータを有している請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記離型層の前記弾性層の端面より延出している部分は、回転体の軸線側に向け縮径している請求項1ないし5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記離型層の前記弾性層の端面より延出している部分の長さは、0.5〜5mmである請求項1ないし6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記離型層の厚さは、10〜80μmである請求項1ないし7のいずれかに記載の定着装置。
【請求項9】
前記弾性層の端部の外径は、その端面に向け漸減している請求項1ないし8のいずれかに記載の定着装置。
【請求項10】
前記弾性層は、前記回転体の軸線方向の少なくとも一端部において、前記基部の端面より延出している請求項1ないし9のいずれかに記載の定着装置。
【請求項11】
前記弾性層の前記基部の端面より延出している部分の長さは、0.5〜5mmである請求項10に記載の定着装置。
【請求項12】
前記基部の端部の外径は、その端面に向け漸減している請求項1ないし11のいずれかに記載の定着装置。
【請求項13】
前記弾性層の厚さは、0.3〜8mmである請求項1ないし12のいずれかに記載の定着装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−106034(P2006−106034A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288396(P2004−288396)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】