説明

定着装置および画像形成装置

【課題】複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられる、定着ベルト等の定着回転体と、この定着回転体に当接するように配設された加圧ローラ等の加圧回転体と、これらの回転体を加熱するための加熱手段とを備え、立ち上がり直後においても、加圧回転体による定着回転体の吸熱を抑制して定着性の低下を回避し得る定着装置、この定着装置を備えたかかる画像形成装置の提供。
【解決手段】記録媒体Sの未定着画像を担持する方の面側に位置する定着回転体63と、定着回転体63に当接するように配設され記録媒体Sの他方の面側に位置する加圧回転体69と、定着回転体63を加熱するための定着加熱手段65と、加圧回転体69を内側から加熱する加圧加熱手段78と、加圧回転体69の表面に対向して配設され加圧回転体69を外側から加熱する加圧加熱手段73とを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられる、定着ベルト等の定着回転体と、この定着回転体に当接するように配設された加圧ローラ等の加圧回転体と、これらの回転体を加熱するための加熱手段とを備えた定着装置、及びこの定着装置を備えたかかる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられる、定着ベルト等の定着回転体と、この定着回転体に当接するように配設された加圧ローラ等の加圧回転体と、これらの回転体を加熱するための加熱手段とを備えた定着装置、およびこの定着装置を備えたかかる画像形成装置が知られている(たとえば、〔特許文献1〕、〔特許文献2〕参照)。
【0003】
このような定着装置では、定着動作中において、定着回転体の温度を定着に適した温度に保つことが、良好な定着を行ううえで極めて重要である。しかしながら、特に立ち上がり直後など、定着回転体や加圧回転体等が十分に温まっていない状態では、定着のために用紙等の記録媒体を定着回転体と加圧回転体との間のニップ部に通過させると、記録媒体やこれに担持されたトナー、さらにはこれに加えて十分には昇温していない加圧回転体によって、定着回転体の熱が吸収されて定着回転体の温度が低下し、数枚から数十枚の連続通紙を行うと、定着回転体の温度が定着下限温度を割って、定着性が低下することがある。とくに、記録媒体がカラートナーを担持している場合には、1枚の記録媒体に対して定着を行ったときにおいても、その先端部がニップ部を通過するときからその後端部がニップ部を通過するときにかけて定着回転体の温度が低下することで、定着画像の光沢度の差が先端部と後端部とで大きく生じ、後端部では光沢が低い画像になってしまうことがある。
【0004】
そこで、定着回転体の温度低下を抑制すべく、定着回転体に対して補助的な加熱手段を設ける技術(たとえば、〔特許文献1〕参照)、加圧回転体に対して補助的な加熱手段を設ける技術(たとえば、〔特許文献2〕参照)が提案されている。なお、定着回転体の温度低下を抑制するために加圧回転体に対してかかる加熱手段を設けるのは、上述のように、定着回転体の熱を奪う構成に加圧回転体も含まれるためである。すなわち、加圧回転体の加熱熱量を増加させることで、加圧回転体が奪う定着回転体の熱量を低減させることを狙っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、近年では、定着装置の立ち上がり時間の短縮、省エネルギー化、TEC値の低減等のために、スタンバイ時には加熱を停止し、画像形成の開始にあわせて加熱を開始するとともに速やかに定着回転体の昇温を行うべく、定着回転体や、定着回転体が定着ベルトである場合にはこれを張架したローラ等の部材が薄肉化され、熱容量が低減されていることから、上述のように、特に立ち上がり時においては、加圧回転体による吸熱によって定着回転体の温度が低下しやすく、定着回転体に対して補助的な加熱手段を設けていても、依然として、定着性が低下する問題が発生する。
【0006】
この問題は、加圧回転体に対して補助的な加熱手段を設けても生じる。これは、従来の加熱手段は加圧回転体の内側に配設されているとともに、加圧回転体はある程度の肉厚を持っていることから、加熱手段によって発せられた熱が、加圧回転体の内面から外面に到達するまでに時間がかかるためである。すなわち、加圧回転体の肉厚により、加熱手段によって加熱しても、加圧回転体の内面から外面に向けた肉厚方向に、温度勾配が生じるため、熱応答性に限界がある。
【0007】
なお、省エネ対応としてトナーを低定着温度化とする技術が検討されており、この技術によれば、立ち上がりの温度低下時においても定着性が維持されるとも考えられる。しかし、この場合、トナーは軟化温度を下げる処方となるために、クリーニングローラ等に付着した回収トナーが使用中に軟化温度を越えて流出開始温度に達すると、いわゆる溶け出しという現象が発生し、クリーニングローラを当接させた部材に再度トナーを逆転写して異常画像となる場合がある。したがって、定着装置側の構成で、立ち上がり時においても定着性を担保することが望ましい。
【0008】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられる、定着ベルト等の定着回転体と、この定着回転体に当接するように配設された加圧ローラ等の加圧回転体と、これらの回転体を加熱するための加熱手段とを備えた定着装置であって、立ち上がり直後においても、加圧回転体による定着回転体の吸熱を抑制して定着性の低下を回避し得る定着装置、この定着装置を備えたかかる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、記録媒体の未定着画像を担持する方の面側に位置する定着回転体と、この定着回転体に当接するように配設され記録媒体の未定着画像を担持する方の面と反対側の面側に位置する加圧回転体と、前記定着回転体を加熱するための定着加熱手段と、前記加圧回転体を内側から加熱する第1の加圧加熱手段と、前記加圧回転体の表面に対向して配設され同加圧回転体を外側から加熱する第2の加圧加熱手段とを有する定着装置にある。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の定着装置において、第2の加圧加熱手段に電力を供給するキャパシタを備えた補助電源を有することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の定着装置において、第1の加圧加熱手段の出力と、第2の加圧加熱手段の出力との比は、前記加圧回転体の熱容量と、第2の加圧加熱手段の熱容量との比となるように設定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の定着装置において、第2の加圧加熱手段による前記加圧回転体の加熱を、前記定着回転体と前記加圧回転体との間に記録媒体を通過させ始める第1のタイミングから、第1のタイミングの後の前記定着回転体の温度が最も低下する第2のタイミングまでを含むように行うことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の定着装置において、前記加圧回転体の回転方向における、同加圧回転体が前記定着回転体に当接した位置の下流側で、第2の加圧加熱手段が同加圧回転体に対向した位置の上流側において同加圧回転体に当接して配設されたヒートパイプを有することを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の定着装置において、前記ヒートパイプの表面は、画像形成物質と反応して軟化温度を上昇させる架橋剤をコーティングされていることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6の何れか1つに記載の定着装置を有する画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、記録媒体の未定着画像を担持する方の面側に位置する定着回転体と、この定着回転体に当接するように配設され記録媒体の未定着画像を担持する方の面と反対側の面側に位置する加圧回転体と、前記定着回転体を加熱するための定着加熱手段と、前記加圧回転体を内側から加熱する第1の加圧加熱手段と、前記加圧回転体の表面に対向して配設され同加圧回転体を外側から加熱する第2の加圧加熱手段とを有する定着装置にあるので、加圧回転体を表面側から加熱することで、立ち上がり直後においても、加圧回転体による定着回転体の吸熱を抑制して定着回転体の急激な温度落ち込みを防止し、定着回転体の温度を定着に適した温度に保ち、定着性の低下を回避し得ることで、良好な画像形成に寄与し得る定着装置を提供することができる。
【0017】
第2の加圧加熱手段に電力を供給するキャパシタを備えた補助電源を有することとすれば、低格電力を超えることなく電力を加熱回転体の昇温に有効に利用することが可能であり、またかかる昇温を加圧回転体を表面側から加熱して行うことで、立ち上がり直後においても、加圧回転体による定着回転体の吸熱を抑制して定着回転体の急激な温度落ち込みを防止し、定着回転体の温度を定着に適した温度に保ち、定着性の低下を回避し得ることで、良好な画像形成に寄与し得る定着装置を提供することができる。
【0018】
第1の加圧加熱手段の出力と、第2の加圧加熱手段の出力との比は、前記加圧回転体の熱容量と、第2の加圧加熱手段の熱容量との比となるように設定されていることとすれば、加圧回転体の肉厚方向の温度分布を均一状態に保つように加圧回転体を内外部から加熱することで、立ち上がり直後においても、加圧回転体による定着回転体の吸熱を抑制して定着回転体の急激な温度落ち込みを防止し、定着回転体の温度を定着に適した温度に保ち、定着性の低下を回避し得ることで、良好な画像形成に寄与し得る定着装置を提供することができる。
【0019】
第2の加圧加熱手段による前記加圧回転体の加熱を、前記定着回転体と前記加圧回転体との間に記録媒体を通過させ始める第1のタイミングから、第1のタイミングの後の前記定着回転体の温度が最も低下する第2のタイミングまでを含むように行うこととすれば、定着回転体の表面温度落ち込みを最小限にして定着回転体の温度を定着に適した温度に保つように、加圧回転体を表面側から加熱することで、立ち上がり直後においても、加圧回転体による定着回転体の吸熱を抑制して定着回転体の急激な温度落ち込みを防止し、定着回転体の温度を定着に適した温度に保ち、定着性の低下を回避し得ることで、良好な画像形成に寄与し得る定着装置を提供することができる。
【0020】
前記加圧回転体の回転方向における、同加圧回転体が前記定着回転体に当接した位置の下流側で、第2の加圧加熱手段が同加圧回転体に対向した位置の上流側において同加圧回転体に当接して配設されたヒートパイプを有することとすれば、加圧回転体の回転方向において加圧回転体が定着回転体に当接した位置の下流側で加圧回転体の温度ムラを速やかに緩和させて画像形成物質のいわゆるオフセットを防止ないし抑制することが可能となるとともに、加圧回転体を表面側から加熱することで、立ち上がり直後においても、加圧回転体による定着回転体の吸熱を抑制して定着回転体の急激な温度落ち込みを防止し、定着回転体の温度を定着に適した温度に保ち、定着性の低下を回避し得ることで、より良好な画像形成に寄与し得る定着装置を提供することができる。
【0021】
前記ヒートパイプの表面は、画像形成物質と反応して軟化温度を上昇させる架橋剤をコーティングされていることとすれば、加圧回転体の回転方向において加圧回転体が定着回転体に当接した位置の下流側で加圧回転体の温度ムラを速やかに緩和させることに加えて架橋剤を用いることで画像形成物質のいわゆるオフセットをより良好に防止ないし抑制することが可能となるとともに、加圧回転体を表面側から加熱することで、立ち上がり直後においても、加圧回転体による定着回転体の吸熱を抑制して定着回転体の急激な温度落ち込みを防止し、定着回転体の温度を定着に適した温度に保ち、定着性の低下を回避し得ることで、さらに良好な画像形成に寄与し得る定着装置を提供することができる。
【0022】
本発明は、かかる定着装置を有する画像形成装置にあるので、立ち上がり直後においても、加圧回転体による定着回転体の吸熱を抑制して定着回転体の急激な温度落ち込みが防止され、定着回転体の温度を定着に適した温度に保たれ、定着性の低下が回避され得ることで、良好な画像形成を行うことが可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の概略正面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に備えられた定着装置の概略正面図である。
【図3】図2に示した定着装置に備えられたヒートパイプの詳細を示した概略正断面である。
【図4】ヒートパイプの有無によって、定着回転体の幅方向における非通紙領域で温度上昇に差が生じることの一例を示したグラフである。
【図5】加圧補助ヒータの有無によって、定着回転体の温度落ち込みに差が生じることの一例を示したグラフである。
【図6】加圧補助ヒータの点灯タイミングを示したグラフである。
【図7】図1に示した画像形成装置に備えられる定着装置の他の構成例の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、フルカラーレーザプリンタであるが、他のタイプのプリンタ、ファクシミリ、複写機、印刷機、複写機とプリンタとの複合機等、他の画像形成装置であっても良い。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体として画像形成を行なうことが可能である。
【0025】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を像形成物質としてのトナーを担持することで形成可能な第1の像担持体としての潜像担持体である感光体たる感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを平行配設したタンデム構造、言い換えるとタンデム方式を採用している。
【0026】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、画像形成装置100の本体99の図示しないフレームに回転自在に支持された可撓性を有する第2の像担持体としての中間転写体たる無端状のベルトである中間転写ベルトとしての転写ベルト11の移動方向であって図1において反時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で等間隔で並列に並んでいる。各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【0027】
各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための作像ユニットである画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
【0028】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、本体99の内部のほぼ中央部に配設された無端のベルトとして構成された転写ベルト11の外周面側すなわち作像面側に位置している。
【0029】
転写ベルト11は、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対峙しながら矢印A1方向に移動可能となっている。各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成された可視像すなわちトナー像は、矢印A1方向に移動する転写ベルト11に対しそれぞれ重畳転写され、その後、記録媒体である記録材としての用紙たる転写紙Sに一括転写されるようになっている。よって画像形成装置100は中間転写方式言い換えると間接転写方式の画像形成装置となっている。したがって画像形成装置100はタンデム型間接転写方式の画像形成装置である。
【0030】
転写ベルト11は、その下側の部分が各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対向しており、この対向した部分が、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上のトナー像を転写ベルト11に転写する1次転写部58を形成している。
【0031】
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成されたトナー像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対向する位置に配設された一次転写手段としての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0032】
転写ベルト11は、A1方向に直交する、図1の紙面に垂直な方向に対応した幅方向において、A4横サイズの転写紙Sに対応した幅を有している。よって、画像形成装置100は、最大でA3縦サイズの転写紙Sに対する画像形成が可能となっている。
【0033】
画像形成装置100は、本体99内に、4つの画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKと、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの上方に対向して配設され、転写ベルト11を備えたベルトユニットである中間転写ユニットとしての転写ベルトユニット10と、図1における転写ベルト11の右側において転写ベルト11に対向して配設された2次転写手段としての2次転写装置5と、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKの下方に対向して配設された潜像形成手段としての光書込みユニットである書き込みユニットとしての露光装置たる光走査装置8とを有している。
【0034】
画像形成装置100はまた、本体99内に、転写ベルト11と2次転写装置5との間の転写ニップ部たる転写ニップとしての2次転写ニップである2次転写部57に向けて搬送される転写紙Sを多数枚積載可能な給紙カセットとしてのシート給送装置61と、シート給送装置61から搬送されてきた記録紙Sを、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、2次転写部57に向けて繰り出すレジストローラ対4と、転写紙Sの先端がレジストローラ対4に到達したことを検知する図示しないセンサとを有している。
【0035】
画像形成装置100はまた、本体99内に、2次転写部57でトナー像を転写された転写紙Sに同トナー像すなわち未定着トナー画像を定着させるためのベルト定着方式の定着ユニットとしての熱定着装置である定着装置6と、シート給送装置61から送り出された転写紙Sを搬送する図示しない搬送ローラを備え、中途部にレジストローラ対4、定着装置6を配設された給紙路32と、給紙路32の終端に位置し定着済みの転写紙Sである画像出力物を本体99の外部に排出する排出ローラである排紙ローラ対としての排紙ローラ7と、転写ベルトユニット10の上方に配設され、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9M、9C、9BKと、本体99の上側に配設され排出ローラ7により本体99の外部に排出された転写紙Sを積載する排紙部としての排紙トレイ17とを有している。
【0036】
画像形成装置100はまた、本体99内に、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを回転駆動する図示しない駆動手段としての駆動モータを含む駆動装置と、画像形成によって生じた、不要となったトナーを貯留する図示しない廃トナーボトルと、画像形成装置100の動作全般を制御する図示しないCPU、メモリ等を含む制御手段91と、図示しない商用電源から電力の供給を受ける図2に示す主電源装置31とを有している。
【0037】
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11の他に、1次転写バイアスローラとしての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKと、転写ベルト11を巻き掛けられた、駆動部材である駆動ローラ72と、張架ローラとしてのクリーニング対向ローラ74と、駆動ローラ72及びクリーニング対向ローラ74とともに転写ベルト11を張架する支持ローラとしての張架ローラ75、33と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11表面をクリーニングする中間転写体クリーニング装置であるベルトクリーニング装置としてのクリーニング装置13とを有している。
【0038】
転写ベルトユニット10はまた、駆動ローラ72を回転駆動する図示しない駆動モータを備えた図示しない駆動系と、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKにそれぞれ独立して1次転写バイアスを印加する図示しない第1の転写バイアス印加手段としての電源及び制御手段91の一機能として実現された第1の転写バイアス制御手段とを有している。
【0039】
駆動ローラ72、クリーニング対向ローラ74、張架ローラ75、33は、転写ベルト11を回転搬送可能に掛け渡し、掛け回した支持ローラとなっている。クリーニング対向ローラ74、張架ローラ75、33は、駆動ローラ72によって回転駆動される転写ベルト11に連れ回りする従動ローラとなっている。支持ローラ72、74、75、33のうち、張架ローラ33のみが転写ベルト11の外周面である表面に当接し、他の支持ローラ72、74、75は、転写ベルト11の内周面である裏面に当接している。
【0040】
1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKは、転写ベルト11をその裏面から感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに向けて押圧してそれぞれ転写ニップとしての1次転写ニップを形成する。この1次転写ニップは、転写ベルト11の、クリーニング対向ローラ74と張架ローラ75との間に張り渡した部分において形成されている。クリーニング対向ローラ74と張架ローラ75とは、1次転写ニップを安定化する機能を有する。
【0041】
各1次転写ニップには、1次転写バイアスの影響により、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKと1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKとの間に1次転写電界が形成される。感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上に形成された各色のトナー像は、この1次転写電界や、駆動ローラ72と2次転写ローラ64との間で転写ベルト11を挟み付ける圧力であるニップ圧の影響によって転写ベルト11上に1次転写される。
【0042】
駆動ローラ72は、転写ベルト11を介して2次転写ローラ64を当接されており、2次転写ローラ64に対向する位置で転写ベルト11を巻き掛けて2次転写部57を形成している。よって駆動ローラ72は対向ローラとしての2次転写対向ローラを兼ねている。
【0043】
張架ローラ75は、2次転写部57において転写ベルト11と2次転写ローラ64とによって形成されるA1方向上流側の楔状の空間を、転写紙Sが2次転写部57に滑らかに進入するように形成する入口ガイド材としての機能を有する。
クリーニング対向ローラ74は、転写ベルト11に、転写に適した所定の張力を与える加圧部材としてのテンションローラたる機能を有している。
【0044】
クリーニング装置13は、図1においてクリーニング対向ローラ74の左方に配設されている。クリーニング装置13は、クリーニング対向ローラ74に対向する位置、すなわち、A1方向において2次転写部57の下流側且つ1次転写部58の上流側の位置で転写ベルト11に当接するように配設されたクリーニングブレード13aと、クリーニングブレード13aをその内部に収容したケース13bとを有している。
【0045】
クリーニング装置13は、転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブレード13aで掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。
転写ベルトユニット10は、本体99に対して一体で着脱可能となっている。
【0046】
シート給送装置61は、転写紙Sを複数枚重ねた転写紙束の状態で収容するものであり、本体99の下部に配設されている。
シート給送装置61は、最上位の転写紙Sの上面に押圧される給紙ローラとしての給送ローラ3を有しており、給送ローラ3が所定のタイミングで反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の転写紙Sを1枚ずつ分離してレジストローラ対4に向けて給送するようになっている。この点、給紙ローラ3は分離ローラとしても機能する。
シート給送装置61から送り出された転写紙Sは、給紙路32を経てレジストローラ対4に至り、レジストローラ対4のローラ間に挟まれる。
【0047】
2次転写装置5は、駆動ローラ72に対向して配置されている。2次転写装置5は、駆動ローラ72との間で転写ベルト11を挟むようにして配設され、転写ベルト11との間を通過する転写紙Sに転写ベルト11上のトナー像を転写可能とするための2次転写部材である転写部材としての転写ローラたる回転体である2次転写ローラ64を有している。
【0048】
2次転写装置5はまた、A1方向において2次転写部57の上流側に配設され、レジストローラ対4によって2次転写部57に向けて繰り出された転写紙Sを2次転写部57に案内する態様で転写紙Sの搬送時のガイドを行う紙ガイドとしてのガイド板38と、A1方向において2次転写部57の下流側に配設され、2次転写部57において転写ベルト11上のトナー像を転写された転写紙Sを2次転写ローラ64から分離して定着装置6に向けて搬送する分離板39とを有している。
【0049】
2次転写ローラ64と、転写ベルト11の2次転写部57近傍の一部とは、給紙路32に臨むように配設されており、2次転写部57を形成している。2次転写ローラ64は転写ベルト11に当接して2次転写部57を形成する当接部材として機能する。このように、2次転写ローラ64と転写ベルト11とが対向し、密着した領域が2次転写部57となっている。
【0050】
定着装置6は、2次転写部57において転写ベルト11から未定着画像であるトナー像を転写され担持する方の転写紙Sの面側に位置する定着回転体としての定着ベルト63と、定着ベルト63を張架した定着ローラ68および加熱ローラ62と、加熱ローラ62の内部に配設され加熱ローラ62を加熱することで定着ベルト63を加熱するための定着加熱手段としての加熱ヒータであるハロゲンヒータ65とを有している。
【0051】
定着装置6はまた、定着ローラ68に対向する位置において定着ベルト63に加圧された状態で当接するように配設され、転写紙Sのトナー像を担持する方の面と反対側の面側に位置する加圧回転体としての中空の加圧ローラ69と、加圧ローラ69の内部に配設され加圧ローラ69を内側から加熱する第1の加圧加熱手段としての加圧ヒータであるハロゲンヒータ78と、加圧ローラ69の表面に対向し当接して配設され加圧ローラ69を外側から加熱する第2の加圧加熱手段であるヒータローラ73とを有している。
【0052】
定着装置6はまた、加圧ローラ69の表面に当接して配設されたヒートパイプであるヒートパイプローラ77と、2次転写部57において転写ベルト11からトナー像を転写された転写紙Sを、定着ベルト63と加圧ローラ69とが互いに当接することによって形成されたニップ部としての定着ニップ70に向けて案内する案内部材としてのガイド板76とを有している。
【0053】
定着装置6はまた、図2に示すように、主電源装置31によって電力を供給されるとともに後述する所定のタイミングで加圧ローラ69を加熱するための電力をヒータローラ73に供給するキャパシタ81を備えた補助電源としての補助電源装置82と、定着ベルト63の回転方向において定着ニップ70よりも下流側に配設され、定着ニップ70を通過した転写紙Sを先端部側から定着ベルト63から剥離して排出ローラ7に向けて定着装置6から排出するための分離板ユニット81と、加圧ローラ69の回転方向において定着ニップ70よりも下流側に配設され、定着ニップ70を通過した転写紙Sを先端部側から加圧ローラ69から剥離する加圧分離手段としての分離爪82とを有している。
【0054】
定着装置6はまた、定着ベルト63、加圧ローラ69のそれぞれの表面温度を検知する、図示しない定着温度検知手段、加圧温度検知手段と、以上述べた各構成を囲繞した図1に示すハウジング85とを有している。
【0055】
定着ベルト63は、PI(ポリイミド)樹脂からなる層厚90μmのベース層と、このベース層上に順次積層された、弾性材料で形成された弾性層と、離型層からなる表層とを有する多層構造の無端ベルトである。定着ベルト63の弾性層は、層厚が200μm程度であって、シリコーンゴム製であるが、弾性材料であれば、フッ素ゴム、発泡性シリコーンゴム等の他の材質で形成しても良い。定着ベルト63の離型層は、層厚が20μm程度であって、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)によって形成されているが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)等の、トナーに対する離型性言い換えると剥離性が確保される材質によって形成されていれば良い。
【0056】
加圧ローラ69は、芯金と、芯金表面にコーティングされたPFAによる離型層とを有する金属パイプローラである。加圧ローラ69の芯金の厚さは0.5mmであり、その材質は鉄であるが、アルミニウム等の他の材質で形成しても良いし、芯金の厚さは0.2〜1.0mmの範囲で設定されればよい。離型層の材質は、PFAに限られるものではない。
【0057】
ヒートパイプローラ77は、加圧ローラ69の回転方向における、定着ニップ70の下流側で、ヒータローラ73が加圧ローラ69に対向し当接した位置の上流側において、加圧ローラ69に当接して配設されている。
【0058】
ヒートパイプローラ77は、加圧ローラ69の長手方向である同図における紙面に垂直な方向、言い換えると定着ベルト63の幅方向に延在するように配設され、加圧ローラ69の長手方向の全域において加圧ローラ69に当接し、加圧ローラ69に連れ回りするように構成されている。これにより、ヒートパイプローラ77は、長手方向における加圧ローラ69の温度を均一化することで定着ベルト63の温度を幅方向において均一化する温度均一化部材として機能するとともに、加圧ローラ69に付着したトナーを吸着することにより加圧ローラ69をクリーニングする加圧クリーニング部材として機能する。
【0059】
ヒートパイプローラ77は、図3に示すように、アルミニウムの素管77aと、素管77aの内部に熱拡管によって埋め込まれた銅製のヒートパイプ77bと、素管77aの表面にコーティングされた架橋剤77cと、素管77aの各端部に、SUM、SUSなどの軸部材77dが圧入されることによって形成された軸部77eとを有しており、これら軸部77eによって、ヒートパイプローラ77はハウジング85に回転自在に支持されている。架橋剤77cの組成は、加圧ローラ69側から転移してきたトナーすなわちオフセットトナーと反応して軟化温度を上げる作用をもつサルチル酸鉄とされている。この架橋剤77cにより、ヒートパイプローラ77は、加圧ローラ69のクリーニング機能を併せ持ちながらトナーの溶け出しを防止ないし抑制し、かつ加圧ローラ69の回転方向において下流側に位置するヒータローラ73の表面の汚れを防止ないし抑制し、良好な定着画像を得ることに寄与する。
【0060】
ヒートパイプローラ77が、加圧ローラ69の温度をその長手方向において均一化する温度均一化部材として機能することについて、図4に沿ってより詳しく説明する。同図は、ヒートパイプローラ77の有無により定着ベルト63の幅方向言い換えると定着ベルト63の回転方向に直交する方向における温度上昇に相違が生じることを示している。具体的には、同図は、定着ニップ70に小サイズの転写紙Sを連続通紙した場合に、定着ベルト63の幅方向において、この転写紙Sが定着ベルト63に当接する通紙領域と、非通紙領域とでの温度上昇の様子を、ヒートパイプローラ77の有無で比較したものを示している。
【0061】
同図に示されているように、かかる転写紙Sを連続通紙すると、定着ベルト63の中央部の通紙領域における定着ベルト63の温度は一定であるが、定着ベルト63の両端部の非通紙領域において、定着ベルト63の温度は、破線で示すように、ヒートパイプローラ77がない場合のオーバーシュート量が大きく、ホットオフセット領域に入ってしまう場合がある。しかし、ヒートパイプローラ77を設けると、加圧ローラ69の長手方向言い換えると軸方向の温度ムラが均一化され、これによって定着ベルト63の幅方向の温度ムラも均一化されることで、ホットオフセットが防止される。
【0062】
とくに、ヒートパイプローラ77の加圧ローラ69に対する当接位置が、加圧ローラ69の回転方向における、定着ニップ70の下流側で、ヒータローラ73が加圧ローラ69に対向し当接した位置の上流側であることから、加圧ローラ69の温度ムラが早期に修復されるため、定着ベルト63の温度ムラの均一化作用が効率的に得られる。
【0063】
ヒータローラ73は、キャパシタ81によって電力を供給されることで昇温する熱源としての加圧補助ヒータとしてのハロゲンヒータ73aと、ハウジング85によって回転自在に支持され、ハロゲンヒータ73aを内蔵しハロゲンヒータ73aによって加熱され昇温することで加圧ローラ69を加熱する金属製の円筒部73bとを有している。このようにしてヒータローラ73はローラ状に構成されており、加圧ローラ69に連れ回りするように構成されている。円筒部73bの表面も、ヒートパイプローラ77と同様に、加圧ローラ69のクリーニング機能を持っていても良い。ハロゲンヒータ73aの駆動制御は、制御手段91によって行われるようになっている。この点、制御手段91は、補助加熱制御手段として機能する。
【0064】
定着装置6は、トナー像を担持した転写紙Sをガイド板76によって定着ニップ70に案内し、定着ニップ70に挟み込む態様で通すことで、熱と圧力との作用により、転写紙Sに担持されたトナー像を同転写紙Sの表面に定着するようになっている。
定着装置6のその余の点については後述する。
【0065】
トナーボトル9Y、9M、9C、9BK内のイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーは、図示しない搬送経路を経て、所定の補給量だけ、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKに備えられた現像装置80Y、80M、80C、80BKに補給される。
【0066】
画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKは互いに同様の構成となっている。画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの周囲に、図1中時計方向であるその回転方向B1に沿って、作像手段として、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKと、クリーニング手段としてのクリーニング器であるクリーニング装置71Y、71M、71C、71BKと、除電手段としての図示しない除電装置と、帯電バイアス形成のためにAC帯電を行なう帯電ローラ51Y、51M、51C、51BKを備えた帯電手段としての帯電装置79Y、79M、79C、79BKと、2成分現像剤により現像を行う現像手段としての現像装置80Y、80M、80C、80BKとを有している。
【0067】
画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、本体99に固定された図示しないガイドレールに沿って本体99に対して引き出し自在であるとともに、本体99に押し込むことが可能であり、本体99に対して着脱自在に設置されたプロセスカートリッジとなっている。プロセスカートリッジとしての画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、本体99に押し込むと、画像形成に適した所定の位置に装填され、位置決めされるようになっている。このようにプロセスカートリッジ化することは、交換部品として取り扱うことが可能であるため、メンテナンス性が著しく向上し、大変好ましい。またプロセスカートリッジの要素である各部の寿命が同等とされているため、不要な交換が防止、抑制され、さらに好ましい構成となっている。
【0068】
このような構成の画像形成装置100において、カラー画像を形成すべき旨の信号がユーザによって入力されると、制御手段91において形成すべき所望の画像であるフルカラー画像に対応した画像情報を含む印刷ジョブである画像形成ジョブがメモリに記憶され保持されるとともに、駆動ローラ72が駆動され、転写ベルト11、クリーニング対向ローラ74、張架ローラ75、33が従動回転するとともに、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKがB1方向に回転駆動される。
【0069】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKはそれぞれ、B1方向への回転に伴い、帯電装置79Y、79M、79C、79BKにより帯電バイアスによって表面を所定の極性に一様に帯電され、光走査装置8からの、同図の紙面垂直方向に略一致する主走査方向への、上方へ向けた、光変調されたレーザー光の露光走査すなわち照射により、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した静電潜像による、画像情報に応じた潜像を形成され、この静電潜像を現像装置80Y、80M、80C、80BKの現像バイアス及びトナーの帯電によりイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーにより現像されて顕像化され、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像によって構成された単色画像が形成される。
【0070】
なお、制御手段91は、光走査装置8を駆動して各色に対応した静電潜像を形成するにあたり、メモリに記憶した画像情報をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の色情報に分解し、各色に分解された単色の画像情報である各色画像情報に基づいて光走査装置8を駆動する。
【0071】
現像により得られたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像は、A1方向の最上流側に位置するイエロートナー画像から、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、ブラックトナー画像の順で、順次、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによって形成される1次転写バイアスにより、A1方向に回転している転写ベルト11上の同じ位置に1次転写されて色重ねが行われ、転写ベルト11上にはフルカラーのトナー画像である合成カラー画像が形成され担持される。
【0072】
一方、カラー画像を形成すべき旨の信号の入力に伴い、シート給送装置61に備えられた給送ローラ3が回転して転写紙Sを繰り出すとともに1枚ずつ分離して給紙路32に送り込み、給紙路32に送り込まれた転写紙Sは図示しない搬送ローラでさらに搬送されレジストローラ対4に突き当てられた状態で停止する。
【0073】
転写ベルト11上に重ね合わされた合成カラー画像が転写ベルト11のA1方向の回転に伴って2次転写部57まで移動するタイミングに合わせて、言い換えると給紙タイミングを計られて、レジストローラ対4が回転し、2次転写部57では、転写ベルト11に担持されている合成カラー画像が、2次転写部57に送り込まれた転写紙Sに密着し、2次転写バイアス及びニップ圧の作用によって他の媒体である転写紙Sに一括して2次転写され、記録される。
【0074】
転写紙Sは2次転写装置5によって搬送されて定着装置6に送り込まれ、定着装置6において定着ベルト63と加圧ローラ69との間の定着ニップ70すなわち定着部を通過する際、熱と圧力との作用により、担持したトナー像すなわち合成カラー画像を定着される。
【0075】
定着装置6を通過した、合成カラー画像を定着済みの転写紙Sは、排紙ローラ7を経て本体99外に排出され、本体99の上部の排紙トレイ17上にスタックされる。
【0076】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、転写後に残留し不要なトナーとなった残留トナーである転写残トナーをクリーニング装置71Y、71M、71C、71BKにより表面から拭い去られて除去され、除電装置によって除電され、表面電位を初期化されて、帯電装置79Y、79M、79C、79BKによる次の帯電に供される。クリーニング装置71Y、71M、71C、71BKにより感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの表面から除去された転写残トナーは廃トナーボトルに貯留される。
【0077】
2次転写を終えた2次転写部57通過後の転写ベルト11は、クリーニング装置13に備えられたクリーニングブレード13aによって転写後にその表面に残留した不要なトナーである転写残トナーを拭い去られ、除去されてクリーニングされ、次の転写に備える。クリーニング装置13により転写ベルト11の表面から除去された転写残トナーは廃トナーボトルに貯留される。
【0078】
このような画像形成を行うに際し、定着装置6においては、定着動作中の定着ベルト63の温度を定着に適した温度に保つことが、良好な定着を行ううえできわめて重要である。そのため、定着温度6では、定着温度検知手段、加圧温度検知手段によって検知された、定着ベルト63、加圧ローラ69の温度に基づいて、ハロゲンヒータ65、ハロゲンヒータ78の駆動が制御される。この制御は制御手段91によって行われる。定着ベルト63の温度を適温に保つために加圧ローラ69の温度を制御するのは、加圧ローラ69の温度が低いと加圧ローラ69が定着ニップ70において定着ベルト63の熱を奪って定着ベルト63の温度を低下させることで、定着ベルト63が適温よりも低い温度となることを防止するためである。
【0079】
ところが、すでに述べたように、定着装置6の立ち上がり直後など、定着ベルト63や加圧ローラ69等が十分に温まっていない状態では、定着のために転写紙Sを定着ニップ70に通過させると、十分には昇温していない加圧ローラ69等によって定着ベルト63の熱が吸収されて、図5において破線で示すように、定着ベルト63の温度が低下し、数枚から数十枚の連続通紙を行うと、定着ベルト63の温度が定着下限温度を割って、定着性が低下することがある。特に、カラー画像形成時には、1枚の転写紙Sに対して定着を行ったときにおいても、その先端部が定着ニップ70を通過するときからその後端部が定着ニップ70を通過するときにかけて定着ベルト63の温度が低下することで、定着画像の光沢度の差が先端部と後端部とで大きく生じ、後端部では光沢が低い画像になってしまうことがある。
【0080】
このような問題は、ハロゲンヒータ78のように加圧ローラ69を内側から加熱する構成を用いても、完全に解消することが難しい場合がある。これは、加圧ローラ69は、定着ニップ70を形成するためのある程度の強度を要すること等の理由により、ある程度の肉厚を持っているため、内側から加熱しても、その肉厚による熱容量に起因して、表面が昇温するまでにタイムラグがあり、熱応答性に限界があるからである。
【0081】
そこで、定着装置6においては、ヒータローラ73具体的にはハロゲンヒータ73aにより加圧ローラ69を表面側から加熱することで、図5において実線で示すように、立ち上がり直後の画像形成時すなわち定着時においても加圧ローラ69が定着ベルト63の温度を低下させることを防止ないし抑制し、定着ベルト63の温度を立ち上がり直後の定着においても適温に保つようになっている。
【0082】
そのため、図6に示すように、ハロゲンヒータ73aによる加圧ローラ69の加熱は、補助加熱制御手段として機能する制御手段91により、定着ニップ70に転写紙Sを通過させ始める第1のタイミングである画像形成開始時から、画像形成開始後に定着ベルト63の温度が最も低下する第2のタイミングであるTmin時までのΔtの時間を含むT1時間の間、行われるようになっている。
【0083】
ハロゲンヒータ73aへの電力供給は、キャパシタ81によって行われるようになっているため、キャパシタ81からハロゲンヒータ73aへの放電が、補助加熱制御手段として機能する制御手段91により、画像形成開始時から、時間Δtよりも長い通電時間T1で行われる。これにより、同図に示すように、Tmin時においても、定着ベルト63の温度が定着加減温度を割り込むことが防止される。キャパシタ81による放電量、時間は、定着ベルト63の温度が定着加減温度を割り込むことを防止するように設定される。キャパシタ81を補助電源に用い、キャパシタ81の充電を、同図に示されているように、待機時に行うため、定着ベルト63を適温に保つために必要とされるエネルギーが、比較的大きな場合であっても、画像形成装置100の定格電力を超えることなく、立ち上がり直後の画像形成時に不足なく得られる。
【0084】
ハロゲンヒータ73aの出力と、ハロゲンヒータ78の出力との比は、円筒部73bの熱容量と、加圧ローラ69の熱容量との比となるように設定されている。すなわち、ハロゲンヒータ73aのヒータW数をQ1、ハロゲンヒータ78のヒータW数をQ2とし、円筒部73の熱容量をC1、加圧ローラ69の熱容量をC2としたとき、
Q1:Q2=C1:C2
の関係を満たすようになっている。
本形態において、C1>C2であるため、Q1>Q2となっている。
【0085】
このように設定するのは、加圧ローラ69の内部、外部それぞれからの加熱による断面方向言い換えると肉厚方向における温度分布を均一状態に保つには、ハロゲンヒータ73aの出力と、ハロゲンヒータ78の出力とを、ヒータローラ73と加圧ローラ69との熱容量比にほぼ比例した配分に設定することが望ましいためである。
【0086】
定着装置6は、以上のような構成、動作により、図6に示すように、立ち上がり直後においても、転写紙Sを定着ニップ70に通過させたとき、これが数枚から数十枚の連続通紙であっても、定着ベルト63の温度が定着下限温度を割って、定着性が低下することが回避される。カラー画像形成時においても、転写紙Sの先端部が定着ニップ70を通過するときから後端部が定着ニップ70を通過するときにかけての定着ベルト63の温度が低下することが防止ないし抑制され、定着画像の光沢度の差が防止ないし抑制される。
【0087】
このように、定着装置6では、ハロゲンヒータ73aを用いることで、立ち上がり直後においても定着ベルト63の表面温度の落ち込みが防止ないし抑制され、かかる表面温度が定着に適した温度に保たれて、光沢度が適正となるなど、良好な定着が行われる。
【0088】
なお、ハロゲンヒータ73aを用いることにより、加圧ローラ69、さらには定着ベルト63は、ハロゲンヒータ73aがない場合と比べて昇温する傾向にあり、たとえば小サイズの転写紙Sに定着を行う場合には、非通紙領域においてかかる昇温傾向が大きくなり得るが、ヒートパイプローラ77により、加圧ローラ69、定着ベルト63の長手方向における温度を均一化することでこれらが過剰に昇温することが防止ないし抑制される。
【0089】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0090】
たとえば、定着加熱手段は、上述したハロゲンヒータ65でなく、電磁誘導により定着ベルト63を直接加熱する電磁誘導加熱タイプを採用し、IHヒータ66としても良い。なお、同図において、符号67は、IHヒータ66によって定着ベルト63に向けて形成された電磁場が他の部材に影響を与えることを防止するための磁束遮蔽部材を示している。
【0091】
また、定着回転体は、定着ベルト63のような無端ベルト状の部材に限らず、ローラ状の定着ローラであっても良い。加圧回転体は、加圧ローラ69のようなローラ状の部材に限らず、無端ベルト状の加圧ベルトであっても良い。
【0092】
本発明を適用する画像形成装置は、タンデム型であっても、上述した間接転写方式でなく、直接転写方式を採用可能である。また、画像形成装置は、いわゆるタンデム方式の画像形成装置ではなく、1つの感光体ドラム上に順次各色のトナー像を形成して各色トナー像を順次重ね合わせてカラー画像を得るいわゆる1ドラム方式の画像形成装置にも同様に適用することが可能であるし、他にも、シート状の有機感光体等の像担持体上に各色のトナー像を現像するものの色重ね自体は別にある中間転写体を用いる方式、あるいは中間転写体を複数用いる方式、中間色トナーを用いる方式等の画像形成装置にも同様に適用することが可能である。
【0093】
その他、画像形成装置は、近年では、市場からの要求にともない、カラー複写機やカラープリンタなど、カラーのものが多くなってきているが、画像形成装置は、モノカラー画像のみを形成可能なものであっても良い。
【0094】
このような画像形成装置に用いる画像形成物質として現像剤を用いる場合、この現像剤は、二成分現像剤に限らず、一成分現像剤であっても良い。さらには、画像形成物質は、定着を要するものであれば、インク等であっても良い。
【0095】
画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリの複合機でなく、これらの単体であっても良いし、その他、複写機とプリンタとの複合機等の他の組み合わせの複合機であっても良い。
【0096】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0097】
6 定着装置
63 定着回転体
65、66 定着加熱手段
69 加圧回転体
73 第2の加圧加熱手段
77 ヒートパイプ
77c 架橋剤
78 第1の加圧加熱手段
81 キャパシタ
82 補助電源
100 画像形成装置
S 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0098】
【特許文献1】特開2009−139674号公報
【特許文献2】特開2007−79142号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の未定着画像を担持する方の面側に位置する定着回転体と、
この定着回転体に当接するように配設され記録媒体の未定着画像を担持する方の面と反対側の面側に位置する加圧回転体と、
前記定着回転体を加熱するための定着加熱手段と、
前記加圧回転体を内側から加熱する第1の加圧加熱手段と、
前記加圧回転体の表面に対向して配設され同加圧回転体を外側から加熱する第2の加圧加熱手段とを有する定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
第2の加圧加熱手段に電力を供給するキャパシタを備えた補助電源を有することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の定着装置において、
第1の加圧加熱手段の出力と、第2の加圧加熱手段の出力との比は、前記加圧回転体の熱容量と、第2の加圧加熱手段の熱容量との比となるように設定されていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の定着装置において、
第2の加圧加熱手段による前記加圧回転体の加熱を、前記定着回転体と前記加圧回転体との間に記録媒体を通過させ始める第1のタイミングから、第1のタイミングの後の前記定着回転体の温度が最も低下する第2のタイミングまでを含むように行うことを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の定着装置において、
前記加圧回転体の回転方向における、同加圧回転体が前記定着回転体に当接した位置の下流側で、第2の加圧加熱手段が同加圧回転体に対向した位置の上流側において同加圧回転体に当接して配設されたヒートパイプを有することを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項5記載の定着装置において、
前記ヒートパイプの表面は、画像形成物質と反応して軟化温度を上昇させる架橋剤をコーティングされていることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つに記載の定着装置を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−194478(P2012−194478A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59736(P2011−59736)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】