説明

定着装置および画像形成装置

【課題】坪量の低い被記録材を用いた場合でも、被記録材に浸透したキャリア液に起因して発生する透視(裏ぬけ)の課題を解決することが可能な構成を備える、定着装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】この定着装置は、被記録材Pを、第1ニップ領域n1、非接触加熱装置10および第2ニップ領域n2に順次通過させる第1定着モードと、被記録材Pを、第1ニップ領域n1および非接触加熱装置10を通過させるとともに、第2ニップ領域n2における定着圧が、第1ニップ領域n1における定着圧よりも低い、または、第2ニップ領域n2を通過させない第2定着モードとによる動作が可能であり、第2定着モードにおいては、第1定着モードにおける非接触加熱装置10による被記録材Pの加熱時間よりも、第2定着モードにおける非接触加熱装置10,10A,10Bによる前記被記録材Pの加熱時間の方が長く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
湿式電子写真方式では、トナー粒子(以下、単に「トナー」と称する。)をキャリア液中で扱う。これにより、トナーの移動性が向上し、電子写真方式で扱うことが困難とされる3μm以下の小粒径のトナーを使用することが可能となる。その結果、被記録材上に、高画質の画像が得られる。
【0003】
湿式電子写真方式では、液体現像剤中にトナーおよびキャリア液が含まれるため、被記録材上に形成されたトナーによる画像を定着するためには、トナーを溶融するために必要な熱量を液体現像剤に供給するだけでなく、被記録材に浸透したキャリア液の量を低減させる必要がある。ここれは、被記録材に浸透したキャリア液に伴う画像不良(裏ぬけ)が生じないようにするためである。
【0004】
被記録材は、「坪量」が多岐に渡る。被記録材の特性に応じて、適切な加熱や加圧をしなければ、良好なトナーの定着品質を得ることは困難である。ここで、「坪量」とは、被記録材の厚さや品質を示す単位であり、1平方メートル当たりの紙の重量を意味し、「g/m」で表示される。
【0005】
被記録材が高坪量の場合には、被記録材の熱容量が大きく、被記録材に十分な加熱、加圧をしなければ、トナー溶融不良による定着不良が発生する。
【0006】
被記録材が低坪量の場合には、被記録材の熱容量は小さく、加熱特性は良好であるが、被記録材の剛性が小さいため、特に高圧接力のニップ部で紙しわが発生しやすい。また、さらに、被記録材にキャリア液が浸透することによる被記録材の光散乱性低下(透明性アップ)が大きく、表面の画像が裏面から透けて見える裏ぬけが生じやすい。
【0007】
特開2011−75780号公報(特許文献1)および特開2011−75781号公報(特許文献2)には、第1加熱加圧装置および第2加熱加圧装置を有し、坪量の低い薄紙におけるしわの発生を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−75780号公報
【特許文献2】特開2011−75781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記各特許文献においては、坪量の低い被記録材を用いた場合の、しわの発生を抑制することが可能である。しかしながら、しわの発生を抑制するために、第2加熱加圧装置は用いられず、第1加熱加圧装置のみが用いられる。そのため、被記録材からキャリア液を揮発させる能力が不十分になり、坪量の低い被記録材に浸透したキャリア液に起因して発生する透視(裏ぬけ)の課題が生じるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、坪量の低い被記録材を用いた場合でも、被記録材に浸透したキャリア液に起因して発生する透視(裏ぬけ)の課題を解決することが可能な構成を備える、定着装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に基づいた定着装置においては、被記録材に形成された、トナーとキャリア液とを含む液体現像剤像を加熱して、上記被記録材上に上記トナーによる画像を定着させる定着装置であって、上記被記録材に形成された液体現像剤像を加熱加圧しながら上記被記録材を搬送する第1ニップ領域を含む第1加熱加圧装置と、上記第1加熱加圧装置よりも、上記被記録材の搬送方向の下流側に配置され、上記被記録材に形成された液体現像剤像を加熱加圧しながら上記被記録材を搬送する第2ニップ領域を含む第2加熱加圧装置と、少なくとも上記第1加熱加圧装置と上記第2加熱加圧装置との間に配置され、上記被記録材の上記液体現像剤像を非接触で加熱しながら、上記被記録材を搬送する非接触加熱装置とを備える。
【0012】
当該定着装置は、上記被記録材を、上記第1ニップ領域、上記非接触加熱装置および上記第2ニップ領域に順次通過させる第1定着モードと、上記被記録材を、上記第1ニップ領域および上記非接触加熱装置を通過させるとともに、上記第2ニップ領域における定着圧が、上記第1ニップ領域における定着圧よりも低い、または、上記第2ニップ領域を通過させない第2定着モードとによる動作が可能であり、上記第2定着モードにおいては、上記第1定着モードにおける上記非接触加熱装置による上記被記録材の加熱時間よりも、上記第2定着モードにおける上記非接触加熱装置による上記被記録材の加熱時間の方が長く設定されている。
【0013】
他の形態において、上記第2定着モードにおいては、上記非接触加熱装置による上記被記録材の搬送速度を、上記第1定着モードにおける上記非接触加熱装置による上記被記録材の搬送速度よりも遅くし、上記第2ニップ領域における定着圧を、上記第1ニップ領域における定着圧よりも低くして上記被記録材を搬送する。
【0014】
他の形態において、上記非接触加熱装置は、上記第1加熱加圧装置と上記第2加熱加圧装置との間に配置され、上記被記録材の上記液体現像剤像を非接触で加熱しながら、上記被記録材を搬送する第1非接触加熱装置と、上記第1非接触加熱装置の上記被記録材の搬送方向の下流側に配置され、上記被記録材の上記液体現像剤像を非接触で加熱しながら、上記被記録材を搬送する第2非接触加熱装置とを有し、上記第2定着モードにおいては、上記被記録材は、上記第1非接触加熱装置を通過した後、上記第2ニップ領域を通過せずに、上記第2非接触加熱装置を通過する。
【0015】
他の形態において、上記第2加熱加圧装置は、ローラーを有し、上記第2非接触加熱装置は、上記ローラーを上記被記録材の搬送に用いる。
【0016】
他の形態において、上記第2加熱加圧装置は、昇降可能に設けられ、上記第2定着モードにおいては、上記第2加熱加圧装置を下降させて、上記ローラーの頂部を上記被記録材の搬送に用いることにより、上記被記録材を上記第1非接触加熱装置から曲げることなく搬送する。
【0017】
この発明に基づいた画像形成装置においては、上述のいずれかに記載の定着装置を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、坪量の低い被記録材を用いた場合でも、被記録材に浸透したキャリア液に起因して発生する裏ぬけの課題を解決することが可能な構成を備える、定着装置および画像形成装置を提供することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1における画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施の形態1における定着装置を示す図であり、(A)は、第1定着モードにおける定着装置の概略構成を示す図であり、(B)は、第1定着モードにおける被記録材の後端位置を基準にした搬送速度を示す図である。
【図3】実施の形態1における定着装置を示す図であり、(A)は、第2定着モードにおける定着装置の概略構成を示す図であり、(B)は、第2定着モードにおける被記録材の後端位置を基準にした搬送速度を示す図である。
【図4】実施の形態2における定着装置の装置構成および第1定着モードを示す図である。
【図5】実施の形態2における定着装置の第2定着モードを示す図である。
【図6】実施の形態2における定着装置の他の装置構成を示す図である。
【図7】実施の形態3における定着装置の装置構成および第1定着モードを示す図である。
【図8】実施の形態3における定着装置の第2定着モードを示す図である。
【図9】実施の形態3における定着装置の他の装置構成を示す図である。
【図10】実施の形態4における定着装置の装置構成および第1定着モードを示す図である。
【図11】実施の形態4における定着装置の第2定着モードを示す図である。
【図12】実施例1から実施例4、および比較例1から比較例5における評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に基づいた実施の形態における定着装置およびその定着装置を備える画像形成装置について、以下、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。また、各実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0021】
(実施の形態1)
(画像形成装置1000)
図1を参照して、本実施の形態1における画像形成装置1000の主要構成について説明する。図1は、画像形成装置1000の概略構成を示す図である。
【0022】
この画像形成装置1000は、電子写真方式により像担持体(感光体)1に形成された液体現像剤像(以下、単に「トナー像」と称する。)を被記録材Pに転写および定着によりトナー像を固定化して、被記録材P上に画像形成を行なう。なお、被記録材Pとしては、用紙、フィルム等、表面にトナー像の形成が可能であり、画像形成装置1000内において、搬送可能な部材であれば、そのような部材であってもよい。
【0023】
この画像形成装置1000は、画像を担持するための像担持体1を有しており、像担持体1の周辺には、帯電装置2、露光装置3、液体現像装置4、転写ローラー5、およびクリーナー6が、像担持体1の回転方向(図1中矢印A)に沿って順に配置されている。
【0024】
像担持体1は、帯電装置2で帯電された後に、図1中のE点の位置に、レーザ発光器などを備えた露光装置3により露光されて、像担持体1の表面に静電潜像が形成される。液体現像装置4は、キャリア液中に帯電したトナー粒子が分散された液体現像剤を用いて、静電潜像をトナー像とする。
【0025】
転写ローラー5は、この像担持体1上のトナー像を被記録材Pに転写した後、図中の矢印C方向に、被記録材Pを搬送する。被記録材P上のトナー像11は、定着装置2000によって定着された後に、被記録材Pは、定着装置2000の外部に搬送される。
【0026】
クリーナー6は、転写後の像担持体1上の残留トナーを、たとえば機械的な力で除去する。
【0027】
画像形成装置1000に用いられる像担持体1、帯電装置2、露光装置3、液体現像装置4、転写ローラー5、およびクリーナー6は、周知の電子写真方式の技術を任意に使用してよい。また、像担持体1上に形成されたトナー像が中間転写体を介して被記録材Pに転写される構成であってもよい。
【0028】
液体現像剤を用いる画像形成装置1000では、液体現像装置4によって現像された像担持体1上のトナー像11は、トナーおよびキャリア液を含み、転写ローラー5により被記録材Pへ転写される。トナー像11の被記録材Pへの転写の際には、トナーと共にキャリア液が転移し、被記録材Pは定着装置2000に搬送される。
【0029】
定着装置2000は、トナー像11中の余剰なキャリア液を除去し、被記録材Pへの十分なトナーの定着強度を得るために、第1加熱加圧装置8、非接触加熱装置10、および第2加熱加圧装置9を有する。画像形成装置1000は、第1加熱加圧装置8、非接触加熱装置10、および第2加熱加圧装置9の動作を制御する制御装置200を有する。
【0030】
(定着装置2000)
次に、図2および図3を参照して、本実施の形態における定着装置2000について説明する。図2は、本実施の形態における定着装置2000を示す図であり、(A)は、第1定着モードにおける定着装置2000の概略構成を示す図、(B)は、第1定着モードにおける被記録材の後端位置を基準にした搬送速度を示す図である。図3(A)は、第2定着モードにおける定着装置2000の概略構成を示す図であり、(B)は、第2定着モードにおける被記録材の後端位置を基準にした搬送速度を示す図である。
【0031】
図2(A)を参照して、定着装置2000は、被記録材Pの搬送方向(図中矢印C)の上流側から、第1加熱加圧装置8、非接触加熱装置10、および第2加熱加圧装置9を有する。
【0032】
第1加熱加圧装置8は、定着ローラー81および加圧ローラー82を有する。定着ローラー81および加圧ローラー82の内部には、ハロゲンヒーター等を用いた加熱装置が内蔵されている(図示省略)。定着ローラー81と加圧ローラー82とは、被記録材Pに形成されたトナー像11を加熱加圧しながら被記録材Pを搬送する第1ニップ領域n1を形成する。
【0033】
第2加熱加圧装置9は、定着ローラー91および加圧ローラー92を有する。定着ローラー91および加圧ローラー92の内部には、ハロゲンヒーター等を用いた加熱装置が内蔵されている(図示省略)。定着ローラー91と加圧ローラー92とは、被記録材Pに形成されたトナー像11を加熱加圧しながら被記録材Pを搬送する第2ニップ領域n2を形成する。
【0034】
第1加熱加圧装置8と第2加熱加圧装置9とのニップ間距離(L1)は、被記録材Pの搬送方向(C方向)に沿った長さよりも長くなるように設定されている。図2(A)では、第1加熱加圧装置8および第2加熱加圧装置9に、定着ローラー81,91および加圧ローラー82,92を採用した場合を示しているが、この構成に限定されない。一方もしくは両方が複数のローラーによって張架されたベルト部材によって構成されていてもよい。
【0035】
第1加熱加圧装置8と第2加熱加圧装置9との間には、被記録材Pのトナー像11に対して非接触で加熱しながら、被記録材Pを搬送する非接触加熱装置10が配置されている。この非接触加熱装置10は、被記録材Pを搬送するための搬送装置として、搬送ベルト103を有する。被記録材Pの搬送経路(非接触加熱部)においては、被記録材Pを非接触状態で加熱するため、搬送ベルト103を挟むように(図2においては上下方向から挟むように)、非接触加熱装置として遠赤外線ヒーター101,102が配置されている。
【0036】
非接触加熱装置として遠赤外線ヒーターを採用した場合を示しているが、遠赤外線ヒーターに限定されず、熱風等、適宜選択すればよい。図2では、搬送装置として搬送ベルト103を採用する場合を示しているが、被記録材搬送ガイド及び搬送ローラーからなる搬送装置であってもよい。
【0037】
被記録材Pの搬送経路においては、搬送ベルト103を挟むように遠赤外線ヒーター101,102を配置した場合を示しているが、遠赤外線ヒーター(非接触加熱装置)はトナー像が形成された面(表面)にだけ配置してもよい。被記録材Pのトナー像が形成されていない裏面側は、非接触加熱限定されず接触加熱とすることもできる。
【0038】
被記録材Pの裏面側に非接触加熱装置を用いる場合には、搬送ベルト103には加熱効率が損なわれないよう、開口の大きい金属板、メッシュ部材、またはワイヤー部材、その他の開口率の高い構成部材を用いるとよい。
【0039】
<定着モード>
本実施の形態の定着装置2000は、被記録材Pの坪量に応じて2つの定着モードを有しており、以下に各定着モードについて説明する。
【0040】
実施の形態において、第1定着モードと第2定着モードの切り替えは、主として被記録材Pの坪量によって行なわれ、被記録材の坪量(厚み)等を検出して切り替えてもよいし、ユーザーによる被記録材選択に基づいて切り替えても良い。
【0041】
定着モードを切替る坪量としては、被記録材Pの種類(コート紙、上質紙)、第1加熱加圧装置8および第2加熱加圧装置9の設定条件(温度や圧力)、システム速度、さらには使用する液体現像剤によっても変わるため一概には言えない。たとえば、坪量150g/m以上を第1定着モード、それ未満を第2定着モードとすることができる。
【0042】
また、片面印刷モード、両面印刷モードによって、定着モードを切り替える坪量を変えても良い。たとえば、片面印刷モード時は150g/mで切り替え、両面印刷モードの場合、第1面目(表面)は、200g/mで定着モードを切り替え、第2面目(裏面)は、150g/mで定着モードを切り替えてもよい。
【0043】
定着モードを切り替える坪量の設定は、定着強度、透視(裏ぬけ)、紙しわ等を踏まえて適宜設定すればよい。本実施の形態に限らず、以下の各実施の形態においても同じである。以下の説明において、坪量が大きい被記録材Pとは、坪量が150g/m以上の被記録材を意味し、坪量が小さい被記録材Pとは、坪量が150g/m未満の被記録材を意味する。
【0044】
各モードの切替は、制御装置200からの信号に基づき、第1加熱加圧装置8、非接触加熱装置10、および第2加熱加圧装置9の各動作が制御されている。
【0045】
[第1定着モード(図2(A),(B))]
図2(A),(B)を参照して、坪量が大きい被記録材Pに用いられる第1定着モードでは、被記録材Pは第1加熱加圧装置8、非接触加熱装置10、および第2加熱加圧装置に順次搬送されることで、被記録材Pに形成されたトナー像11が定着される。
【0046】
坪量が大きい被記録材Pは熱容量が大きいため、第1加熱加圧装置8のみでは被記録材Pおよびトナー像11の温度上昇が足りずトナー溶融が不足し、十分な定着強度が得られない。そこで第2加熱加圧装置9を用いることにより、温度上昇の不足分を補うことが可能となる。
【0047】
ここで、第1加熱加圧装置8と第2加熱加圧装置9との間隔L1が大きいと、第1加熱加圧装置8と第2加熱加圧装置9との間での被記録材P(トナー像11を含む)の温度低下が大きくなり、第1加熱加圧装置8の第1ニップ領域n1および第2加熱加圧装置9の第2ニップ領域n2での加熱温度や加圧条件を高く設定しなければならない。
【0048】
一方、第1加熱加圧装置8と第2加熱加圧装置9との間隔L1を極力小さくして、被記録材P(トナー像11を含む)の温度低下を抑制することもできる。しかし、間隔L1を被記録材Pの搬送方向に沿った長さ以下にすると、被記録材Pの両端部が同時に第1加熱加圧装置8および第2加熱加圧装置9に挟持され、被記録材Pに不要な負荷が加わる場合がある。
【0049】
そこで、第1加熱加圧装置8と第2加熱加圧装置9との間に、非接触加熱装置10を配置することで、第1加熱加圧装置8と第2加熱加圧装置9との間における被記録材P(トナー像11を含む)の温度低下を抑制して、トナー像11の被記録材Pへの十分な定着強度を得ることができる。
【0050】
図2(B)は、被記録材Pの後端位置を基準にした搬送速度を示す図である。被記録材Pは、一定の搬送速度S1で、第1加熱加圧装置8、非接触加熱装置10、および第2加熱加圧装置9を通過する。また、第1加熱加圧装置8の第1ニップ領域n1および第2加熱加圧装置9の第2ニップ領域n2においては、所定の加圧力および加熱温度が被記録材Pに加えらる。
【0051】
なお、本実施の形態における一例としては、第1定着モードにおける被記録材Pの搬送速度S1は、300mm/s〜1000mm/s程度、第1ニップ領域n1および第2ニップ領域n2での加圧力は、1000N〜5000N程度、加熱温度(ローラ表面温度)は、100℃〜200℃程度、非接触加熱装置10での加熱温度(ヒータ温度)は、150℃〜300℃程度である。
【0052】
[第2定着モード(図3(A),(B))]
次に、図3(A),(B)を参照して、坪量が大きい被記録材Pに用いられる第2定着モードにおいても、第1定着モード(図2(A),(B))と同じ装置構成の定着装置2000が用いられる。
【0053】
坪量の小さい被記録材Pに用いられる第2定着モードでは、被記録材Pは第1加熱加圧装置8および非接触加熱装置10に搬送される。ここで、図3(B)に示すように、被記録材Pの後端が第1加熱加圧装置8(第2ニップ領域n2)を通過した後に、非接触加熱装置10における搬送ベルト103の搬送速度を遅く(S2:S2<S1)、もしくは一旦停止させることで、被記録材Pの非接触加熱装置10の通過時間を第1定着モードと比較して長くする。
【0054】
非接触加熱装置10を通過した後の被記録材Pは、第1加熱加圧装置8に比べて加圧力が弱められた第2加熱加圧装置9に搬送されて、被記録材Pに形成されたトナー像11が被記録材Pに定着される。第2加熱加圧装置9の加圧力は、定着ローラー91と加圧ローラー92とを離間(図3(A)中矢印U1)させて弱められる。
【0055】
定着ローラー91と加圧ローラー92との間には、両ローラーの距離を調節して、定着ローラー91と加圧ローラー92との間の加圧力を調節する機構が設けられている。定着ローラー91と加圧ローラー92との加圧力は、被記録材Pを搬送するのに要する加圧力があればよい。
【0056】
坪量が小さい被記録材Pは熱容量も小さく、第1加熱加圧装置8のみで、被記録材Pおよびトナー像11の温度を十分加熱することができ、第1加熱加圧装置8でトナーが溶融・加圧されることで十分な定着強度が得られる。
【0057】
坪量の小さい被記録材Pは、キャリア液の浸透に伴う光散乱性の低下(透明性の向上)が顕著であるため、被記録材P中に浸透して残留するキャリア液が多いと、被記録材Pの裏面側から表面に形成されたトナー像11が透けて見える「裏ぬけ」の問題が発生する。
【0058】
そのため、坪量の小さい被記録材Pに対しては、トナー像11の定着強度のみならず、被記録材Pに浸透したキャリア液を揮発させ、浸透量を低減させる必要が生じる。第2加熱加圧装置9による加熱により、被記録材Pの浸透キャリア液を揮発させることは可能である。
【0059】
しかし、第2ニップ領域n2において実質的に被記録材Pが密閉環境にあるため揮発効率が低く、加えて被記録材Pの加熱に伴う剛性の低下も生じる。その結果、坪量の小さい被記録材Pの場合、第2ニップ領域n2において、被記録材Pにしわが発生するおそれがある。
【0060】
一方、第1加熱加圧装置8と第2加熱加圧装置9との間に設けた非接触加熱装置10は、装置構成が大気開放系であり、キャリア液の揮発を促進させることが可能である。ここで、被記録材Pからキャリア液の量を十分に低減するには、一定の時間が必要となる。第1加熱加圧装置8と第2加熱加圧装置9との間の間隔を広くすることで非接触加熱時間を長くすることは可能である。しかし、定着装置の大型化に直結する。
【0061】
そこで、本実施の形態における定着装置2000の定着モード2では、非接触加熱装置10における搬送ベルト103の搬送速度を下げる、もしくは一旦停止させることで、非接触加熱時間を、第1定着モードよりも長くしている。
【0062】
非接触加熱装置10を通過した被記録材Pは、第2加熱加圧装置9によって搬送され、搬出される。その際、先述のように第2加熱加圧装置9でのしわの発生を抑制するため、第2加熱加圧装置9の圧接力を低減、もしくは離間している。このようにして、定着モード2では坪量の小さい被記録材Pに対して、十分な定着強度を確保しつつ、裏ぬけと紙しわの発生を抑えることを可能としている。
【0063】
また、第2定着モードにおいて非接触加熱装置10での被記録材の搬送速度を低下させることで、被記録材の非接触加熱装置10の滞留時間を長くすることができる。その結果、最小限の非接触加熱装置10の大きさ、部品数で被記録材に浸透したキャリア液量を低減することが可能となる。
【0064】
なお、本実施の形態における一例としては、第2定着モードにおける被記録材Pの搬送速度S1は、300mm/s〜1000mm/s程度、搬送速度S2は、0mm/s〜200mm/s程度、第1ニップ領域n1での加圧力は、1000N〜5000N程度、加熱温度(ローラ表面温度)は、100℃〜200℃程度、第2ニップ領域n2の加圧力は、0N〜50N程度、加熱温度(ローラ表面温度)は、100℃〜200℃程度、非接触加熱装置10での加熱温度(ヒーター温度)は、150℃〜300℃程度である。
【0065】
(実施の形態2)
以下、図4から図6を参照して、本実施の形態おける定着装置2000Aについて説明する。画像形成装置1000の構成は、図1に示す装置構成と同じであり、定着装置の構成が、上記実施の形態1の場合と異なっている。実施の形態1における定着装置2000と同一または相当箇所については、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0066】
図4は、定着装置2000Aの装置構成および第1定着モードを示す図、図5は、定着装置2000Aの第2定着モードを示す図、図6は、定着装置2000Aの他の装置構成を示す図である。
【0067】
(定着装置2000A)
本実施の形態における定着装置2000Aは、図2および図3に示した定着装置2000に加えて、第2加熱加圧装置9の定着ローラー91の周囲に第2非接触加熱装置10Aが設けられている。本実施の形態では、第1加熱加圧装置8と第2加熱加圧装置9との間に設けた非接触加熱装置10は、第1非接触加熱装置10となる。
【0068】
第2非接触加熱装置10Aは、定着ローラー91の外周面に沿って配置される、湾曲形状の第1ガイド部材108および第2ガイド部材109が設けられている。第1ガイド部材108および第2ガイド部材109と第1非接触加熱装置10との間には、搬送ローラー対106および経路切替装置105が設けられている。第1ガイド部材108および第2ガイド部材109の搬送ローラー対106とは反対側には、排出ローラー対107
が設けられている。第2ガイド部材109の外側には、第2ガイド部材109に沿って、遠赤外線ヒーター104が設けられている。
【0069】
各モードの切替は、制御装置200からの信号に基づき、第1加熱加圧装置8、第1非接触加熱装置10、第2非接触加熱装置10A、および第2加熱加圧装置9の各動作が制御されている。
【0070】
[第1定着モード(図4)]
図4に示す第1定着モードは、実施の形態1の第1定着モードと同様に、坪量の大きい被記録材Pに用いられ、被記録材Pは第1加熱加圧装置8、第1非接触加熱装置10、および第2加熱加圧装置に順次搬送されることで、被記録材Pに形成されたトナー像11が定着される。
【0071】
[第2定着モード(図5)]
図5に示す第2定着モードでは、実施の形態1の第2定着モードと同様に、坪量の小さい被記録材Pに用いられ、経路切替装置105によって、第2加熱加圧装置9を迂回するように搬送経路が切り替えられる。第2定着モードにおいては、被記録材Pは、第2ニップ領域n2を通過せずに、第2加熱加圧装置9の搬送ローラー対106、第1ガイド部材108、第2ガイド部材109、排出ローラー対107によって迂回経路に搬送される。
【0072】
第1ガイド部材108は、第2非接触加熱装置10Aの第2遠赤外線ヒーター104から放射される輻射熱が被記録材Pに届くのを遮らないように、開口が設けられているとよい。同様に、第2ガイド部材109は定着ローラー91から放射される輻射熱が被記録材Pに届くのを遮らないように、開口が設けられているとよい。
【0073】
迂回経路を採用した場合でも、被記録材Pの搬送速度は一定であるものの、第1非接触加熱装置10に加えて第2非接触加熱装置10Aが設けられることで、非接触加熱時間を長くしている。また、第2非接触加熱装置10Aは、搬送機構を有することから、第2加熱加圧装置9でのしわの発生を抑制することができる。このようにして、定着モード2では坪量の小さい被記録材Pに対して、十分な定着強度を確保しつつ、裏ぬけと紙しわの発生を抑えることを可能としている。
【0074】
また、第2定着モードにおいて、第2加熱加圧装置9を加熱装置として用いている。これにより、第2加熱加圧装置9を被記録材Pに高圧接力を印加しない加熱装置として用いることで、部品数の増加を抑制して被記録材Pに浸透したキャリア液量を低減することが可能となる。
【0075】
第2非接触加熱装置10Aにおいて、加熱熱量が、定着ローラー91の内部に設けられたハロゲンランプのみで賄うことができる場合には、図6に示すように、遠赤外線ヒーター104を設けない構成の採用も可能である。
【0076】
(実施の形態3)
以下、図7から図9を参照して、本実施の形態おける定着装置2000Bについて説明する。画像形成装置1000の構成は、図1に示す装置構成と同じであり、定着装置の構成が、上記実施の形態1の場合と異なっている。実施の形態1における定着装置2000と同一または相当箇所については、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0077】
図7は、定着装置2000Bの装置構成および第1定着モードを示す図、図8は、定着装置2000Bの第2定着モードを示す図、図9は、定着装置2000Bの他の装置構成を示す図である。
【0078】
(定着装置2000B)
本実施の形態における定着装置2000Bは、図2および図3に示した定着装置2000に加えて、第2加熱加圧装置9の定着ローラー91の周囲に第2非接触加熱装置10Bが設けられている。本実施の形態では、第1加熱加圧装置8と第2加熱加圧装置9との間に設けた非接触加熱装置10は、第1非接触加熱装置10となる。
【0079】
第2非接触加熱装置10Bは、定着ローラー91の外周面に沿って配置される、湾曲形状の第1ガイド部材108が設けられている。第1ガイド部材108と第1非接触加熱装置10との間には、搬送ローラー対106および経路切替装置105が設けられている。第1ガイド部材108の搬送ローラー対106とは反対側には、搬送ローラー117が設けられている。搬送ローラー117を挟んで、第1ガイド部材108とは反対側には、ガイド部材109が設けられている。
【0080】
各モードの切替は、制御装置200からの信号に基づき、第1加熱加圧装置8、第1非接触加熱装置10、第2非接触加熱装置10B、および第2加熱加圧装置9の各動作が制御されている。
【0081】
[第1定着モード(図7)]
図7に示す第1定着モードは、実施の形態1の第1定着モードと同様に、坪量が大きい被記録材Pに用いられ、被記録材Pは第1加熱加圧装置8、第1非接触加熱装置10、および第2加熱加圧装置に順次搬送されることで、被記録材Pに形成されたトナー像11が定着される。
【0082】
[第2定着モード(図8)]
図8に示す第2定着モードでは、実施の形態1の第2定着モードと同様に、坪量の小さい被記録材Pに用いられ、経路切替装置105によって、第2加熱加圧装置9を迂回するように搬送経路が切り替えられる。第2定着モードにおいては、被記録材Pは、第2ニップ領域n2を通過せずに、第2加熱加圧装置9の搬送ローラー対106、定着ローラー91の外周面、第1ガイド部材108、排出ローラー対107、ガイド部材109によって迂回経路に搬送される。
【0083】
この時、定着ローラー91は、回転方向が、第1モードの回転方向から反転し、搬送装置として機能する。この際、加圧ローラー92は定着ローラー91同様に回転方向を反転させるか、もしくは定着ローラー91に対して離間される。
【0084】
迂回経路を採用した場合でも、被記録材Pの搬送速度は一定であるものの、第1非接触加熱装置10に加えて第2非接触加熱装置10Bが設けられることで、非接触加熱時間が長くなる。また、第2非接触加熱装置10Bは、搬送機構を有することから、第2加熱加圧装置9でのしわの発生を抑制することができる。このようにして、定着モード2では坪量の小さい被記録材Pに対して、十分な定着強度を確保しつつ、裏ぬけと紙しわの発生を抑えることを可能としている。
【0085】
また、第2定着モードにおいて第2加熱加圧装置9を用紙搬送装置として用いている。これにより、第2加熱加圧装置9を用紙搬送装置として用いることで、部品数の増加を抑制して被記録材Pの搬送と効率的な加熱を両立することが可能となる。
【0086】
第2非接触加熱装置10Bにおいて、加熱熱量が、定着ローラー91の内部に設けられた遠赤外線ヒーターのみで賄うことができる場合には、図9に示すように、遠赤外線ヒーター104を設けない構成の採用も可能である。
【0087】
(実施の形態4)
以下、図10および図11を参照して、本実施の形態おける定着装置2000Cについて説明する。画像形成装置1000の構成は、図1に示す装置構成と同じであり、定着装置の構成が、上記実施の形態1の場合と異なっている。実施の形態1における定着装置2000と同一または相当箇所については、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0088】
図10は、定着装置2000Cの装置構成および第1定着モードを示す図、図11は、定着装置2000Cの第2定着モードを示す図である。
【0089】
(定着装置2000C)
本実施の形態における定着装置2000Cは、図2および図3に示した定着装置2000に対して、第2加熱加圧装置9は、第1非接触加熱装置10の搬送経路から見て、下方に移動可能な昇降機構および第2非接触加熱装置10Cを有している。本実施の形態では、第1加熱加圧装置8と第2加熱加圧装置9との間に設けた非接触加熱装置10は、第1非接触加熱装置10となる。
【0090】
第2非接触加熱装置10Cは、定着ローラー91の頂部に対向配置される搬送ローラー117を有している。また、遠赤外線ヒーター110,111、およびガイド部材118,119が搬送経路に沿うように設けられている。
【0091】
各モードの切替は、制御装置200からの信号に基づき、第1加熱加圧装置8、第1非接触加熱装置10、第2非接触加熱装置10C、および第2加熱加圧装置9の各動作が制御されている。
【0092】
[第1定着モード(図10)]
図10に示す第1定着モードは、実施の形態1の第1定着モードと同様に、坪量の大きい被記録材Pに用いられ、被記録材Pは第1加熱加圧装置8、第1非接触加熱装置10、および第2加熱加圧装置に順次搬送されることで、被記録材Pに形成されたトナー像11が定着される。
【0093】
[第2定着モード(図11)]
図11に示す第2定着モードでは、実施の形態1の第2定着モードと同様に、坪量の小さい被記録材Pに用いられ、第2加熱加圧装置9が下降し、定着ローラー91の頂部を通過する搬送経路が形成される。第2定着モードにおいては、搬送ベルト103、ガイド部材118、定着ローラー91の頂部、およびガイド部材119が、略同一の平面上に位置することになる。
【0094】
坪量の小さい被記録材Pは、第2ニップ領域n2を通過せずに、ガイド部材118、定着ローラー91の頂部および搬送ローラー117、ガイド部材109に沿って搬送される。
【0095】
この時、定着ローラー91は、回転方向が、第1モードの回転方向から反転し、搬送装置として機能する。この際、加圧ローラー92は定着ローラー91同様に回転方向を反転させるか、もしくは定着ローラー91に対して離間される。
【0096】
第2加熱加圧装置9を下降させた場合でも、被記録材Pの搬送速度は一定であるものの、第1非接触加熱装置10に加えて第2非接触加熱装置10Cが設けられることで、非接触加熱時間を長くしている。また、第2非接触加熱装置10Cは、搬送機構を有することから、第2加熱加圧装置9でのしわの発生を抑制することができる。また、被記録材Pの搬送においては、被記録材Pを、第1非接触加熱装置10から曲げることなく第2非接触加熱装置10Cに搬送することができる。
【0097】
このようにして、定着モード2では坪量の小さい被記録材Pに対して、十分な定着強度を確保しつつ、裏ぬけと紙しわの発生を抑えることを可能としている。
【0098】
また、第2定着モード時に、被記録材Pを非接触加熱する非接触加熱装置を通紙経路上に設けている。これにより、非接触加熱装置を搬送経路にも設けることで、非接触加熱時間を長くすることができ、確実に被記録材に浸透したキャリア液量を低減することが可能となる。
【0099】
(実施例)
以下に本実施の形態の効果を確認するための実施例および比較例を示す。実施の形態1に示す定着装置2000を用いた、液体現像による画像形成装置1000を用いて、被記録材として、坪量の小さいコート紙(OKトップコート+(登録商標)、坪量79.1g/m、王子製紙社製、以下「薄紙」と称する)、および、坪量の大きいコート紙(ボンアイボリー(登録商標)、坪量360g/m、王子製紙社製、以下「厚紙」と称する)のそれぞれに画像を形成した。以下の各実施例および各比較例について、被記録材の定着強度、トナーの透視(裏ぬけ)、紙しわを評価した。
【0100】
(評価方法)
定着強度:定着後の印刷物を画像面を内側にして折り曲げ、折り曲げ部のトナー剥離性を目視評価した。画像上のトナー剥離が実用上問題ない場合を「A」、画像上に多くのトナー剥離が生じ実用上問題がある場合を「B」と評価した。
【0101】
トナーの透視(裏ぬけ):定着後の印刷物の画像面(表面)に黒い板を重ね、裏面(非画像部)から表面の画像を目視評価した。表面の画像がほとんど視認できない場合を「A」、視認できる場合を「B」と評価した。
【0102】
紙しわ:定着後の印刷物の紙しわを目視評価した。紙しわがない場合を「A」、紙しわが発生している場合を「B」と評価した。
【0103】
(実施例1)
実施の形態1に示す構成の定着装置2000を用い、厚紙を第1定着モード、薄紙を第2定着モードで定着した。
【0104】
(実施例2)
実施の形態2に示す構成の定着装置2000Aを用い、厚紙を第1定着モード、薄紙を第2定着モードで定着した。
【0105】
(実施例3)
実施の形態3に示す構成の定着装置2000Bを用い、厚紙を第1定着モード、薄紙を第2定着モードで定着した。
【0106】
(実施例4)
実施の形態4に示す構成の定着装置2000Cを用い、厚紙を第1定着モード、薄紙を第2定着モードで定着した。
【0107】
(比較例1)
実施の形態1に示す構成の定着装置2000を用い、厚紙および薄紙ともに第1定着モードで定着した。
【0108】
(比較例2)
実施の形態1に示す構成の定着装置2000を用い、厚紙および薄紙ともに第2定着モードで定着した。
【0109】
(比較例3)
実施の形態1に示す構成の定着装置2000を用い、遠赤外線ヒーターをOFFにして、厚紙を第1定着モード、薄紙を第2定着モードで定着した。
【0110】
(比較例4)
実施の形態1に示す構成の定着装置2000を用い、厚紙を第1定着モードで、薄紙を第1定着モードにおいて遠赤外線ヒーターをOFFにして定着した。
【0111】
(比較例5)
実施の形態1に示す構成の定着装置2000を用い、厚紙を第1定着モードで、薄紙を第2定着モードにおいて搬送速度を変えることなく用紙搬送して定着した。
【0112】
図12に、実施例1から実施例4、および比較例1から比較例5における評価結果を示す。評価結果から明らかなように、本実施の形態によれば、定着装置の大型化を抑制した上で、定着品質(定着強度、透視(裏ぬけ)、紙しわ)を、厚紙および薄紙それぞれにおいて両立可能となっていることがわかる。
【0113】
このように、本実施の形態における定着装置および画像形成装置によれば、被記録材Pに形成された液体現像剤像11を加熱加圧しながら被記録材Pを搬送する第1ニップ領域n1を含む第1加熱加圧装置8と、第1加熱加圧装置8よりも、被記録材Pの搬送方向の下流側に配置され、被記録材Pに形成された液体現像剤像11を加熱加圧しながら被記録材Pを搬送する第2ニップ領域n2を含む第2加熱加圧装置9と、少なくとも第1加熱加圧装置8と第2加熱加圧装置9との間に配置され、被記録材Pの液体現像剤像11を非接触で加熱しながら、被記録材Pを搬送する非接触加熱装置10と、第1加熱加圧装置8、非接触加熱装置10、および第2加熱加圧装置9の動作を制御する制御装置200とを備えている。
【0114】
制御装置200は、被記録材Pの坪量に応じて、被記録材Pを、第1ニップ領域n1、非接触加熱装置10および第2ニップ領域n2に順次通過させる第1定着モードと、被記録材Pを、第1ニップ領域n1および非接触加熱装置10を通過させるとともに、第2ニップ領域n2における定着圧が、第1ニップ領域n1における定着圧よりも低い、または、第2ニップ領域n2を通過させない第2定着モードと、が選択可能である。
【0115】
第2定着モードにおいては、第1定着モードにおける非接触加熱装置10による被記録材Pの加熱時間よりも、第2定着モードにおける非接触加熱装置10による被記録材Pの加熱時間の方が長く設けられる。
【0116】
このように、被記録材Pの坪量に応じて定着モードを切り替えることによって、定着装置の大型化をすることなしに、坪量の大きく異なる被記録材において適切な定着品質を満たすことが可能となる。
【0117】
具体的には、坪量が大きく熱容量の大きい被記録材Pに対しては、第1定着モードで複数の加熱加圧装置によるトナー溶融によって十分な定着性が得られる。坪量が小さく剛性の低い被記録材Pを用いた場合の第2定着モードでは、複数の加熱加圧装置を用いることによる紙しわの発生が抑えられ、さらに、非接触加熱時間が長いため、被記録材Pに浸透したキャリア液の揮発が促進され、坪量が小さい被記録材において顕著な被記録材Pに浸透したキャリア液によって表面に形成された画像が裏面から透けて見える裏抜けの不良をなくすことが可能となる。
【0118】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
1 像担持体(感光体)、2 帯電装置、3 露光装置、4 液体現像装置、5 転写ローラー、6 クリーナー、8 第1加熱加圧装置、9 第2加熱加圧装置、10 非接触加熱装置(第1非接触加熱装置)、10A,10B,10C 第2非接触加熱装置、11 トナー像、81,91 定着ローラー、82,92 加圧ローラー、101,102 遠赤外線ヒーター、103 搬送ベルト、104 遠赤外線ヒーター、105 経路切替装置、106 搬送ローラー対、107 排出ローラー対、108 第1ガイド部材、109 第2ガイド部材(ガイド部材)、110,111 遠赤外線ヒーター、117 搬送ローラー、118,119 ガイド部材、1000 画像形成装置、2000,2000A,2000B,2000C 定着装置、n1 第1ニップ領域、n2 第2ニップ領域、P 被記録材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材に形成された、トナーとキャリア液とを含む液体現像剤像を加熱して、前記被記録材上に前記トナーによる画像を定着させる定着装置であって、
前記被記録材に形成された液体現像剤像を加熱加圧しながら前記被記録材を搬送する第1ニップ領域を含む第1加熱加圧装置と、
前記第1加熱加圧装置よりも、前記被記録材の搬送方向の下流側に配置され、前記被記録材に形成された液体現像剤像を加熱加圧しながら前記被記録材を搬送する第2ニップ領域を含む第2加熱加圧装置と、
少なくとも前記第1加熱加圧装置と前記第2加熱加圧装置との間に配置され、前記被記録材の前記液体現像剤像を非接触で加熱しながら、前記被記録材を搬送する非接触加熱装置と、を備え、
当該定着装置は、
前記被記録材を、前記第1ニップ領域、前記非接触加熱装置および前記第2ニップ領域に順次通過させる第1定着モードと、
前記被記録材を、前記第1ニップ領域および前記非接触加熱装置を通過させるとともに、前記第2ニップ領域における定着圧が、前記第1ニップ領域における定着圧よりも低い、または、前記第2ニップ領域を通過させない第2定着モードとによる動作が可能であり、
前記第2定着モードにおいては、前記第1定着モードにおける前記非接触加熱装置による前記被記録材の加熱時間よりも、前記第2定着モードにおける前記非接触加熱装置による前記被記録材の加熱時間の方が長く設定されている、定着装置。
【請求項2】
前記第2定着モードにおいては、
前記非接触加熱装置による前記被記録材の搬送速度を、前記第1定着モードにおける前記非接触加熱装置による前記被記録材の搬送速度よりも遅くし、
前記第2ニップ領域における定着圧を、前記第1ニップ領域における定着圧よりも低くして前記被記録材を搬送する、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記非接触加熱装置は、
前記第1加熱加圧装置と前記第2加熱加圧装置との間に配置され、前記被記録材の前記液体現像剤像を非接触で加熱しながら、前記被記録材を搬送する第1非接触加熱装置と、
前記第1非接触加熱装置の前記被記録材の搬送方向の下流側に配置され、前記被記録材の前記液体現像剤像を非接触で加熱しながら、前記被記録材を搬送する第2非接触加熱装置と、を有し、
前記第2定着モードにおいては、
前記被記録材は、前記第1非接触加熱装置を通過した後、前記第2ニップ領域を通過せずに、前記第2非接触加熱装置を通過する、請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第2加熱加圧装置は、ローラーを有し、
前記第2非接触加熱装置は、前記ローラーを前記被記録材の搬送に用いる、請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記第2加熱加圧装置は、昇降可能に設けられ、
前記第2定着モードにおいては、前記第2加熱加圧装置を下降させて、前記ローラーの頂部を前記被記録材の搬送に用いることにより、前記被記録材を前記第1非接触加熱装置から曲げることなく搬送する、請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の定着装置を備えた、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−113898(P2013−113898A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257592(P2011−257592)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】