説明

定着装置と画像形成装置

【課題】 低消費電力で、且つ、小サイズ紙を連続して使用した直後に大サイズ紙を使用しても大サイズ紙に溶融むらが発生したり、トナーオフセットが発生することがなく、且つ、短い立ち上がり時間が短く、しかも分離も良好な状態のコピーや印刷物を高速で得ることができる。
【解決手段】 加熱手段を付設した定着ローラと当該定着ローラに圧接する加圧ローラとを備える定着装置において、上記定着ローラの芯金の熱伝導率をλ1、厚みをt1とし、ローラ硬度をA1とし、上記加圧ローラの芯金の熱伝導率をλ2、厚みをt2とし、ローラ硬度をA2とするとき、λ1<λ2且つt1<t2且つA1<A2且つ1.5<t2/t1<4を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等又はそれらの複合機のような画像形成装置において用いられるトナー画像熱定着方式の定着装置、及び当該定着装置を装着する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特公昭59−44631号公報
【特許文献2】特開2004−271751号公報
【特許文献3】特開2003−005557号公報
【特許文献4】特開2005−010607号公報
【特許文献5】特許第3017604号公報
【0003】
図2に、従来の電子写真方式画像形成装置の概略構成を示す。従来画像形成100は、静電潜像が形成される感光体ドラム101の周囲に、当該感光体ドラム101に接触して帯電処理を行う帯電ローラ102、レーザビーム等の露光手段103、感光体ドラム101上の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ104、感光体ドラム101上のトナー像を記録紙107に転写処理する転写ローラ106、転写処理後の感光体ドラム101をクリーニングするためのクリーニング装置108、感光体ドラム101の表面電位を測定する表面電位計109を配して構成されている。更に転写処理された転写紙107に定着を行う、定着ローラ111及び加圧ローラ112から成るローラ方式の熱定着装置110がある。符号105は、帯電ローラ102にDC電圧を印加するためのパワーパックである。図示の画像形成装置100は白黒画像を形成するためのものであるが、フルカラー画像形成のためには、赤:マゼンタ、青:シアン、黄:イエロー及び黒:ブラックの4色のトナーを重ね合わせるために、各色について現像器を備え、それらを重ね合わせる機構を設けさえすれば足りるので、ここでは白黒画像用画像形成装置として説明するが、本発明は当然ながらカラー画像形成装置にも適用され得るものである。
【0004】
この画像形成装置100では、回転する感光体ドラム101の感光体層を帯電ローラ102で一様に帯電させた後、露光手段103で露光して静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーによって現像することによりトナー像とし、このトナー像を記録紙107上に転写して、この記録紙107を定着ローラ111と加圧ローラ112のニップ部を通過させることで、記録紙にトナー像を熱定着するようになっている。
【0005】
記録紙の表面に転写された画像を定着する技術として最もよく知られたものは、上記したように、定着ローラ及び加圧ローラからなる一対のローラ間に記録紙(転写材、用紙)を挿入して定着する、熱ローラ方式である。この定着法は、ベルト定着等、他の定着法に比べ、構成が簡単で、堅牢な定着像が得られ、また溶剤等の揮発による環境への害が少ないといった利点があるので、広く利用されている。この熱ローラ定着装置は、一般に、回転中心線に沿ってハロゲンランプのような加熱用ヒータを内蔵した定着ローラと、当該定着ローラに対し圧接配置され、円筒状芯金の外周面に耐熱弾性体層を形成した加圧ローラと、から構成される。内蔵ヒータの輻射熱によって定着ローラを内側から加熱し、定着ローラと加圧ローラとの間で記録紙を挟持搬送することにより、記録紙の表面に載っているトナーを定着ローラ111の熱により軟化させつつ加圧して記録紙に定着させるようになっている。
【0006】
定着ローラは、通常、アルミニウムや鉄等の金属製中空円筒体から成る芯金の外周面に、トナーの粘着を防止するために被覆された四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂(FEP)等のフッ素樹脂や耐熱性ゴムから成る離型層を設けたハードローラタイプのものが多く用いられている。近年、製品の高画質化の要求から、このようなハードローラタイプのものではなく、フルカラープリンタに用いられる弾性層を有したソフトローラタイプの定着ローラの需要が増してきている。このような傾向は、ハーフトーンや写真画像において、階調性や粒状度を重視するようになってきたからである。
【0007】
熱ローラ定着装置においては、定着ローラの表面温度を室温から所定の設定温度まで上昇させるのに必要な時間(以下、立ち上がり時間という)が、1分〜10分と長い。立ち上がり時間は、定着ローラの熱容量と投入電力の関係で決定されるので、定着ローラの熱容量が小さく、投入電力が大きければ、立ち上がり時間は短縮することができるが、定着ローラの熱容量はローラ剛性より限界があり、また投入電力は画像形成装置の機械消費電力に基づく制約により限界がある。
【0008】
一般的に定着専用に投入可能な電力は300W〜1200W程度であり、この範囲の電力で立ち上がり時間を短縮するには、定着ローラのローラ熱容量を小さくすることが有効である。しかし、ローラ熱容量を小さくするため、ローラ径やローラコア(基体)の肉厚を減らしていくと、同時にローラ剛性も小さくなってしまう。このため、所定のローラ径以下になると、急激にローラ剛性が小さくなり、ローラが撓んでしまって、定着に必要な荷重を加えることができなくなるという問題点がある。
【0009】
このような問題の発生を防止するために、特許文献1で定着装置の改善が提案された。この定着装置は、加熱ロールの肉厚が0.1〜2mmであって、定着ローラはゴム硬度30°以下のスポンジ状弾性体で形成されている。この定着装置は、既述のように、定着ローラの肉厚を薄くして熱容量を下げ、立ち上がり時間を短くしようとするものであるが、その際、定着ローラの変形を防ぐためにニップ荷重を減らして、必要なニップ幅を確保するために加圧ローラを低硬度のスポンジ状弾性体で形成している。定着ローラを薄肉にして、低硬度のスポンジ状弾性体でニップを形成することにより、立ち上がり時間が短く、かつ良好な定着が可能になる。したがって、低消費電力で高画質の画像形成が可能となった。
【0010】
ただ、薄肉定着ローラを用いると、その小さな熱容量のために、定着ローラ内に温度むらが発生しやすく、特に高速画像形成装置において薄肉定着ローラを用いた場合、小サイズ紙(例えば、B5や封筒縦タイプ)の連続通紙時に定着ローラ端部温度上昇という問題が発生する。これは、熱ローラ定着装置において、記録紙(転写材)が通過する部分は記録紙によりローラ表面の熱が奪われるが、記録紙の当たらない部分(非通紙領域)は熱損失がないため、小サイズの記録紙を連続して通紙した場合に、非通紙領域のローラ温度が許容範囲を越えて上昇するという現象である。この定着ローラ非通紙領域(通紙基準が中央基準であれば定着ローラの両端部)での温度過昇が発生すると、小サイズ連続通紙直後に大サイズ紙を通紙した場合に両端部でトナーオフセットが発生したり、溶融むらができたり、記録紙にシワ(定着シワ)が発生したりするという不具合が起きる。
【0011】
上記のようなオフセットや溶融むらを防ぐため、ローラ面内での温度の不均一性を改善する必要があり、その方法として2つのヒータを加熱ローラ内に用いるものが提案され、採用されている。これは夫々のローラによって中央部と両端部を独立に加熱制御するもので、小サイズ紙では中央部が、大サイズ紙では中央部と両端部が通電加熱されるものである。しかしながら、ヒータや温度センサのコスト、更には電源制御部のコストが2倍になってしまうという問題点があった。また、たとえ2本のヒータを使用したとしてもローラ面内の温度が均一になることはほとんどなく、溶融むらや、グロスむらを伴った画像が発生してしまう。
【0012】
また弾性層を有する定着ローラを用いた高画質定着方式においては、定着ローラ及び加圧ローラが共に弾性体となるので、紙が定着ローラ側に排出されて、巻きつきジャムが発生するという問題があった。そして、ジャム発生を防止するために紙を定着ローラから分離するための爪等を設けると、定着ローラの磨耗が発生するので、経時でトナーの固着がひどくなり、そのために、画像不良等の不具合が発生するという問題があった。
【0013】
なお、定着装置において、熱容量を小さくしつつ所定の強度を維持して、立ち上がり時間及び耐久性を向上させる提案には、最近のものとして、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5に開示された構成がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、低消費電力で、且つ、前述したような従来の定着の問題点を解決し、小サイズ紙を連続して使用した直後に大サイズ紙を使用しても大サイズ紙に溶融むらが発生したり、トナーオフセットが発生することがなく、且つ、短い立ち上がり時間が短く、しかも分離も良好な状態のコピーや印刷物を高速で得ることができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、本発明により、加熱手段を付設した定着ローラと当該定着ローラに圧接する加圧ローラとを備える定着装置において、上記定着ローラの芯金の熱伝導率をλ1、厚みをt1とし、ローラ硬度をA1とし、上記加圧ローラの芯金の熱伝導率をλ2、厚みをt2とし、ローラ硬度をA2とするとき、λ1<λ2且つt1<t2且つA1<A2且つ1.5<t2/t1<4を満たすことによって解決される。
【0016】
前記定着ローラの芯金がFe又はFe合金であり、前記加圧ローラの芯金がAl又はAl合金であるのが好適である。前記定着ローラの芯金の外側に良離型性のシリコーンゴムを有し、その厚みをt3とするとき、0.5≦t3/t1<3、特に1≦t3/t1<3を満たすのが好ましい。前記加圧ローラの芯金の外側に良離型性のシリコーンゴムを有し、前記定着ローラのゴム硬度をB1、前記加圧ローラのゴム硬度をB2とするとき、B1<B2を満たせば、一層効果的である。前記定着ローラ側に非接触状態で紙分離爪を設けるのもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、定着装置の立ち上がり時間を短縮することができる。また加圧ローラの芯金の方が熱伝導率が高いので、小サイズ紙を連続使用した直後に、定着ローラ端部の熱が加圧ローラに移り、大サイズ紙を使用しても大サイズ紙に溶融むらやトナーオフセットが発生しない。また加圧ローラの硬度が定着ローラの硬度よりも高いので、定着ローラが加圧ローラに加圧されて変形し、紙排出方向が加圧ローラの方へ向き、紙分離性、つまり紙搬送性に優れたものとなる。その結果、紙分離爪を定着ローラ側に設置する必要性が小さくなる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、定着ローラと加圧ローラとの密着性を高めるとともに十分なニップを確保でき、加圧力を均一に維持して定着むらをなくすことができる。請求項5に係る発明によれば、加圧ローラのゴム硬度を定着ローラのゴム硬度より高くすることで加圧ローラ向きのニップを形成させ分離をし易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の詳細を、図に示す例に基づいて説明する。なお本発明に係る電子写真式画像形成装置は、以下に説明する定着装置を装着した画像形成装置であり、全体的な聞こうとしては従来と基本的に同じであり、感光体の周囲に、画像を形成するために必要な所定の装置、例えば、帯電手段、露光手段、現像手段等が設けられているが、説明の簡略化のために、定着装置以外については上記従来技術の項での説明に譲り、画像形成装置全体としての説明は省略する。
【0020】
図1は、例示的一態様としての定着装置の構成を示す概略図である。図1に示されるように、定着装置は、加熱部として、ヒータランプ2を内蔵する定着ローラ(加熱ローラ)1を備え、加圧部として、芯金3a及び外周層3bから構成された加圧ローラ3を備える。定着ローラ1は、少なくとも、芯金と、当該芯金の外周部に形成された外周層とから構成される円筒体であって、その肉厚はt1mmである。図示の例では、芯金1aと弾性体層1bと離型層1cが備えられている。定着ローラ1は、その肉厚が少なくともローラとしての円筒形状を保てる厚さ以上が必要であり、また接触タイプの温度センサや、オフセットトナーの剥離爪、離型剤としてのオイルの供給装置、クリーニング装置等、その表面に所定圧で接触する周辺の補助部品を設けても、凹んだり変形したりしない肉厚が必要である。
【0021】
上記肉厚の条件を考慮すると、定着ローラ1の芯金1aとしては、熱容量が小さくかつ形状保持機能を有する金属系の材料が好ましく、例えば、鉄、SUS(ステンレス)、アルミ、銅、ニッケルなどを用いることができる。芯金として金属を使用する場合には、基体芯金の肉厚を0.1mm以上とすることが好ましい。もちろん、使用する材質により強度や熱伝導率が異なるため、上記肉厚の条件を満たしつつ、最適な寸法を適宜決定する。
【0022】
また、基体芯金の外周部に形成される外周層としては、例えば、弾性体層及び/又は離型層から構成されている。基体芯金の外周部に弾性体層1b及び離型層1cが形成される場合、基体芯金の表面に弾性体層が形成され、当該弾性体層の表面に離型層が形成された構造となる。弾性体層1bとしては、耐熱性の高い弾性体であればどのような材料も使用することができる。特に、ゴム硬度25〜40°(JIS−A)程度のゴム、エラストマー等の弾性体を用いることが好ましく、具体的にはシリコーンゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。このなかでも特に耐熱性と加工性の面からPFA(パーフルオロアルキルビニールエーテル共重合樹脂)が最適である。弾性体層の厚みとしては、用いる材料のゴム硬度にもよるが、0.3〜3.0mm程度が好ましい。離型層1cとしては、耐熱性の樹脂であればどのような樹脂を用いてもよく、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。離型層の離型性や摩耗性を考慮すれば、特にフッ素樹脂を用いることが好ましい。フッ素樹脂としては、PFA、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合樹脂)等が使用できるが、耐熱性と加工性の観点よりPFAが最適である。離型層の厚みとしては、好ましくは5〜40μm、より好ましくは10〜30μmである。離型層の厚みが5μm未満であると、定着ローラ1の歪みに基づくシワが発生する可能性があり、また40μmを超えると離型層が硬くなり、光沢むら等の画質欠陥が現れる可能性があり、共に好ましくない。なお、弾性体層が離型性を有する弾性体で形成されるならば、更に離型層を設ける必要はない。また上記弾性体層及び離型層は、それぞれ、単一の層で形成されていてもよいし、複数の層で形成されていてもよい。本発明に用いられる定着装置の定着ローラ1としては、例えば、直径35.0mm、肉厚0.80mm、長さ240mmの鉄製芯金に、弾性体層としてPFAチューブを1.6mm厚で、更にフッ素樹脂(テフロン:デュポン社の商品名)を30μmの厚さで被覆した構造を有する。
【0023】
上記定着ローラ1は、外部の駆動機構に機械的に結合して直接駆動することができる。また薄肉円筒体で成る定着ローラ1は、立ち上がり時にローラ全体が内部のヒータランプ2により略均一加熱されるため、立ち上がり完了後に回転しても定着ローラ1の温度が急激に低下するという問題はなく、高速定着に適したものとなっている。図1に示すように、定着ローラ1の中心部には、加熱源のヒータランプ2が1本配設されている。ヒータランプ2としては、例えば、100V、850Wのハロゲンランプを用いる。定着ローラ1は、その位置が回転駆動力により、また後述する加圧ローラ3からの圧接力などを受けても変わらないように、ローラ両端で軸受されている。
【0024】
一方、加圧ローラ3は定着ローラ1と圧接し、対向位置に形成されたニップ部を用紙が通過する際に、用紙の裏面を、すなわち片面画像形成の場合のトナー画像が付着されていない面を押圧して、用紙のトナー画像付着面(表面)を定着ローラ表面に密着させる。加圧ローラ3は、その表面硬度が定着ローラより大きい場合、定着ニップ部で定着ローラが加圧ローラに加圧されて変形し、紙排出方向が加圧ローラ向き(図1で下向き)となり、紙分離性、つまり紙搬送性に優れたものとなる。その結果、紙を分離するための分離爪を定着ローラ側に設置する必要が小さい。本発明に用いられる定着装置における定着ローラ1の表面硬度A1と加圧ローラ3の表面硬度A2との関係は、A1<A2である。定着ローラ1の表面硬度A1と加圧ローラ3の表面硬度A2との関係は、実際に、定着ローラ1と加圧ローラ3を互いに押し付け、変形状態を観察することによって表される。
【0025】
図1に示すように、加圧ローラ3は、金属等の材料によって中空円筒状に形成された芯金3aと、当該芯金3aの外周面に形成された外周層3bとから構成されている。また加圧ローラ3は、上記外周層3bの外周面にPFAチューブが被嵌されていてもよい。芯金3aとしては、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、SUS等の金属材料などを使用することができる。加圧ローラの熱伝導率λ2が定着ローラの熱伝導率λ1より高い構成では、小サイズの用紙を連続して使用した直後のローラ端部の温度上昇に対して熱が加圧ローラ側に逃げ、その後の大サイズの用紙を使用しても用紙に溶融むらやトナーオフセットが発生しないという長所がある。外周層3bのゴム硬度としては(日本ゴム協会規格)10°以上50°以下が望ましく、好ましくは10°〜30°である。本発明に用いられる定着装置の加圧ローラ3としては、例えば、外径35mm,肉厚1.2mm,長さ240mmのアルミニウム製芯金3aに、外周層3bとして肉厚2.0mmの発泡シリコーンゴムを被覆した構造を有する。
【0026】
以上のように構成された定着装置では、転写された未定着トナー画像を載置した用紙を、定着ローラ1と加圧ローラ3との間のニップ部に挿通し、定着ローラ1のヒータランプ2からの熱と、定着ローラ1と加圧ロール3との間の加圧力(ニップ圧)によって、未定着トナー画像の熱溶融による定着を行い、トナー画像が定着された用紙を排出する。以上、説明した定着装置は、定着ローラ1が薄肉構造であるため、定着ローラ1の熱容量を低下させることができ、その結果、立ち上がり時間を5〜20秒と短縮することができる。また、上記定着ローラ側に紙分離のための分離爪をローラに非接触状態で設けることで、定着ローラ側の耐久性を向上させることができる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
芯金の厚み0.8mm、ゴム厚0.4mmのSTKM(機械構造用炭素鋼、熱伝導率42W/K・m)でできている定着ローラ(ローラ硬度72/ASKER C)と芯金の厚み1.3mm、ゴム厚3mmのAl5052(熱伝導率138W/K・m)でできている加圧ローラ(ローラ硬度76/ASKER C)を市販の画像形成装置(リコー社製、imagio MF6550)に装着して特性評価を行った。
【0028】
<立ち上がり時間>
画像形成装置の電源をスイッチONとしてプリントが開始するまでの時間をタイムウォッチで測定し、立ち上がり時間を計測した。
【0029】
<端部温度上昇>
A5縦サイズの紙6200Y(RICOPY PPC用紙)を20枚通した後に休まず、A4縦サイズの紙6200Y(RICOPY PPC用紙)を通したときに溶融むらやトナーオフセットが発生しないか目視で見た。
【0030】
<分離>
A4縦サイズの紙55Y(NBSリコー 複写印刷用紙)を用いてカラー画像を印刷したときに定着ローラに巻きつきが起こらないかを目視で見た。分離した場合は○、定着ローラに巻きついた場合は×とした。
なお、定着ローラ及び加圧ローラのゴム硬度及び上記3つの評価結果を表1に示す。
【0031】
(実施例2)
表1に示すように、定着ローラ及び加圧ローラの材質、芯金厚み、ローラ硬度、ゴム厚、ゴム硬度を実施例1と変えて上記特性評価を行った。
【0032】
(実施例3)
実施例2と同様、表1に示すように定着ローラ及び加圧ローラの芯金厚み、ローラ硬度、ゴム厚、ゴム硬度を実施例1と変えて上記特性評価を行った。
【0033】
(実施例4)
実施例2〜3と同様、表1に示すように定着ローラ及び加圧ローラの芯金厚み、ローラ硬度、ゴム厚、ゴム硬度を実施例1と変えて上記特性評価を行った。
【0034】
(実施例5)
実施例2〜4と同様、表1に示すように定着ローラ及び加圧ローラの芯金厚み、ローラ硬度、ゴム厚、ゴム硬度を実施例1と変えて上記特性評価を行った。
【0035】
(比較例1)
定着ローラの芯金をAl5052とし、加圧ローラの芯金をFe(熱伝導率64W/K・m)にした以外は表1に示すように実施例1と同様に上記特性評価を行った。
【0036】
(比較例2)
定着ローラのローラ硬度を76とし、加圧ローラのローラ硬度を72にした以外は表1に示すように実施例1と同様に上記特性評価を行った。
【0037】
(比較例3)
定着ローラの芯金厚みを2mmとし、加圧ローラの芯金厚みを2mmにした以外は表1に示すように実施例1と同様に上記特性評価を行った。
【0038】
(比較例4)
定着ローラのゴム厚みを2mmとし、加圧ローラのゴム厚みを0.6mmにした以外は表1に示すように実施例1と同様に上記特性評価を行った。
【0039】
(比較例5)
定着ローラのゴム厚みを1mmとし、加圧ローラのゴム厚みを5mmにした以外は表1に示すように実施例1と同様に上記特性評価を行った。
特性評価の結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
なお、本特性評価では、芯金上に弾性層、離型層を順次形成した定着ローラに対してハロゲンヒータを用いて加熱を行っているが、立ち上がり時間は定着ローラ構成、定着ローラ加熱手段、通紙枚数(線速)に依存して変化する。例えば、特開2001−242732号公報や特開2001−13805号公報に記載されているように、誘導加熱方式を用いて定着ローラを加熱することもできるが、立ち上がり時間は変わる。誘導加熱方式において、定着ローラは、芯金上に弾性層、離型層以外に、断熱層、発熱層を含む構成であってもよい。また本特性評価において、加熱源への電力供給は商用電源から行われているが、補助電源を設け、当該補助電源から電力供給することも可能である。補助電源としては、特開2002−174988号公報に開示されているような、電気2重層コンデンサ(電気化学キャパシタ)を利用するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】定着ローラ及び加圧ローラの構成を示す概略図である。
【図2】画像形成装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0043】
1 定着ローラ
1a 定着ローラ芯金
1b 定着ローラ弾性層
1c 定着ローラ離型層
2 ヒータ
3 加圧ローラ
3a 加圧ローラ芯金
3b 加圧ローラ外周層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段を付設した定着ローラと当該定着ローラに圧接する加圧ローラとを備える定着装置において、上記定着ローラの芯金の熱伝導率をλ1、厚みをt1とし、ローラ硬度をA1とし、上記加圧ローラの芯金の熱伝導率をλ2、厚みをt2とし、ローラ硬度をA2とするとき、λ1<λ2且つt1<t2且つA1<A2且つ1.5<t2/t1<4を満たすことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着ローラの芯金がFe又はFe合金であり、前記加圧ローラの芯金がAl又はAl合金である、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着ローラの芯金の外側に良離型性のシリコーンゴムを有し、その厚みをt3とするとき、0.5≦t3/t1<3を満たす、請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
1≦t3/t1<3を満たす、請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加圧ローラの芯金の外側に良離型性のシリコーンゴムを有し、前記定着ローラのゴム硬度をB1、前記加圧ローラのゴム硬度をB2とするとき、B1<B2を満たす、請求項3又は4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記定着ローラ側に非接触状態で紙分離爪を設けたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−71986(P2007−71986A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256597(P2005−256597)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】