説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】抵抗発熱層を発熱体とする定着装置において、異常発熱を低減することが可能な定着装置を提供する。
【解決手段】絶縁性の周面上に抵抗発熱体層514を有した筒状の加熱回転体51に給電して発熱させ、記録シート上の未定着画像を熱定着させる定着装置であって、抵抗発熱体層514は、複数の細長形状をした抵抗薄片が、その長手方向両端を、回転体両端部の全周に形成された給電電極に接続した状態で、回転体周方向に間隔をあけて配列された構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機等の画像形成装置が備える定着装置に関し、特に抵抗発熱体層を発熱層として用いた定着装置における異常発熱を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタ、複写機等の画像形成装置の定着装置として、通電によりジュール発熱する抵抗発熱体層を発熱体とする定着装置が利用されるようになってきている。この抵抗発熱体層は、耐熱性樹脂等の絶縁性材料中に金属等の導電性材料を分散させて構成される。通電されている抵抗発熱体層に直接触れると、感電する危険があるため、感電を防止するため、抵抗発熱体層は、絶縁層で被覆されているのが一般的である。
【0003】
特許文献1には、絶縁層で被覆された抵抗発熱体層を発熱層とする定着装置が開示されている。当該定着装置においては、抵抗発熱体層に直接給電することによって発熱体が発熱するので、当該定着装置の熱効率を高くすることができ、ウォームアップ時間を短縮化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009―109997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抵抗発熱体層は、絶縁層で被覆されているため、通常は、直接触れられることはない。しかしながら、絶縁層の厚さは数百μm程度と薄いため、外部から混入した異物や記録シートとの接触により、絶縁層に傷が生じ、その傷が抵抗発熱層にまで及び、当該傷の端部周辺で局所的に電流密度が高まり、抵抗発熱層の内、電流密度が高まった部分が、異常発熱する場合が生じ得る。
【0006】
図6は、従来の抵抗発熱体層を発熱体とする定着装置において、抵抗発熱体層に傷が生じ、傷の端部周辺が発熱する様子を模式的に示した図である。同図の符号600は、定着装置を、符号510は、加熱回転体を、符号520は、定着ローラを、符号530は、加圧ローラを、符号541、542は、給電ブラシを、符号543は、電源を、符号544、545は、給電用の電極をそれぞれ表す。
【0007】
又、符号601、604は、抵抗発熱体層に生じた傷を、符号602は、傷601の周辺を流れる電流を表す。図6に示すように、抵抗発熱体層に傷が生じると、傷により電流602の進行が遮られ、電流602が傷の端部周辺に回り込むので、端部周辺の電流密度が高まって、符号603の白矢印で表すように異常発熱する。傷604の端部周辺においても同様に符号605の白矢印で表すように異常発熱する。
【0008】
このように、異常発熱した部分に人が手を触れると、やけど等の深刻な事態を引き起こすことになり、非常に危険である。本発明は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、抵抗発熱体層を発熱層とする定着装置において、異常発熱を低減することが可能な定着装置及び当該定着装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る定着装置は、絶縁性の周面上に抵抗発熱体層を有した筒状回転体に給電して発熱させ、記録シート上の未定着画像を熱定着させる定着装置であって、前記抵抗発熱体層は、複数の細長形状をした抵抗薄片が、その長手方向両端を、回転体両端部の全周に形成された給電電極に接続した状態で、回転体周方向に間隔をあけて配列された構成である。
【0010】
前記筒状回転体は、周回駆動する無端状のベルトであることとすることができる。さらに、前記間隔は、1cm未満であることとすることができる。又、本発明の一形態に係る画像形成装置は、前記定着装置を備える画像形成装置であることとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を備えることにより、抵抗発熱体層の複数の各抵抗薄片が、絶縁性の周面上において、回転体周方向に間隔をあけて配列されているので、抵抗発熱体層に生じた傷の大きさが抵抗薄片の周方向の幅全体に及んでいる場合には、当該抵抗薄片における通電は、当該傷により遮断され、当該抵抗薄片には電流が流れなくなり、当該傷による抵抗発熱体層の異常発熱を防ぐことができる。
【0012】
又、抵抗発熱体層に生じた傷が小さく、その抵抗薄片の周方向の幅全体に及んでいない場合においても、隣接する抵抗薄片とは絶縁されているので、隣接する抵抗薄片を流れる電流が、傷が生じた抵抗薄片へ流れ込むのを抑止することができ、その分、傷の端部周辺に流れ込む電流密度を小さくすることができ、当該端部周辺における温度上昇を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プリンタ1の構成を示す図である。
【図2】定着装置5の構成を示す斜視図である。
【図3】加熱回転体51の両端部を除く領域における詳細な構造を示す断面図である。
【図4】加熱回転体51の一方の端部(電極511がある側の端部)周辺の回転軸方向の断面図である。
【図5】制御部60の構成と制御部60の制御対象となる主構成要素との関係を示す図である。
【図6】従来の抵抗発熱体層を発熱体とする定着装置において、抵抗発熱体層に傷が生じ、傷の端部周辺が発熱する様子を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態)
以下、本発明に係る一形態の画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に適用した場合を例にして説明する。
[1]プリンタの構成
先ず、本実施の形態に係るプリンタ1の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るプリンタ1の構成を示す図である。同図に示すように、このプリンタ1は、画像プロセス部3、給紙部4、定着装置5、制御部60を備えている。
【0015】
プリンタ1は、ネットワーク(例えばLAN)に接続され、外部の端末装置(不図示)や図示しない操作パネルから印刷指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナー像を形成し、これらを多重転写してフルカラーの画像を形成することにより、記録シートへの印刷処理を実行する。
以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成要素の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
【0016】
画像プロセス部3は、作像部3Y、3M、3C、3K、露光部10、中間転写ベルト11、2次転写ローラ45などを有している。
作像部3Y、3M、3C、3Kの構成は、いずれも同様の構成であるため、以下、主として作像部3Yの構成について説明する。
作像部3Yは、感光体ドラム31Yと、その周囲に配設された帯電器32Y、現像器33Y、1次転写ローラ34Y、および感光体ドラム31Yを清掃するためのクリーナ35Yなどを有しており、感光体ドラム31Y上にY色のトナー像を作像する。現像器33Yは、感光体ドラム31Yに対向し、感光体ドラム31Yに帯電トナーを搬送する。
【0017】
中間転写ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラ12と従動ローラ13に張架されて矢印C方向に周回駆動される。露光部10は、レーザダイオードなどの発光素子を備え、制御部60からの駆動信号によりY〜K色の画像形成のためのレーザ光Lを発し、作像部3Y、3M、3C、3Kの各感光体ドラムを露光走査する。
この露光走査により、帯電器32Yにより帯電された感光体ドラム31Y上に静電潜像が形成される。作像部3M、3C、3Kの各感光体ドラム上にも同様にして静電潜像が形成される。
【0018】
各感光体ドラム上に形成された静電潜像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの
各現像器により現像されて各感光体ドラム上に対応する色のトナー像が形成され
る。
形成されたトナー像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの各1次転写ローラにより、中間転写ベルト11上の同じ位置に重ね合わされるように、中間転写ベルト11上にタイミングをずらして順次1次転写された後、2次転写ローラ45による静電力の作用により中間転写ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に2次転写される。トナー像が2次転写された記録シートは、さらに定着装置5に搬送され、記録シート上のトナー像(未定着画像)が、定着装置5において加熱及び加圧されて記録シートに熱定着された後、排出ローラ71により排紙トレイ72に排出される。
【0019】
給紙部4は、記録シート(図1の符号Sで表す)を収容する給紙カセット41と、給紙カセット41内の記録シートを搬送路43上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ42と、繰り出された記録シートを2次転写位置46に送り出すタイミングをとるためのタイミングローラ44などを備えている。給紙カセットは、1つに限定されず、複数であってもよい。
【0020】
記録シートとしては、大きさや厚さの異なる用紙(普通紙、厚紙)やOHPシートなどのフィルムシートを利用できる。給紙カセットが複数ある場合には、異なる大きさ又は厚さ又は材質の記録シートを複数の給紙カセットに収納することとしてもよい。
繰り出しローラ42、タイミングローラ44等の各ローラは、搬送モータ(不図示)を動力源とし、歯車ギヤやベルトなどの動力伝達機構(不図示)を介して回転駆動される。この搬送モータとしては、例えば、高精度の回転速度の制御が可能なステッピングモータが使用される。
【0021】
記録シートは、中間転写ベルト11上のトナー像の移動タイミングに合わせて
給紙部4から2次転写位置46に搬送され、2次転写ローラ45により中間転写
ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に2次転写される。
[2]定着装置の構成
図2は、定着装置5の構成を示す斜視図である。同図に示すように、定着装置5は、加熱回転体51と、定着ローラ52と、加圧ローラ53と、を有する。加熱回転体51は、無端状のベルトであり、その両端部に給電用の電極511、512が設けられ、両電極には電源部500から給電ブラシ501、502を介して給電が行われる。これにより、両電極間に電流が流れて、加熱回転体51が発熱する。さらに、加熱回転体51の外周面の近傍の所定の位置(ここでは、回転軸方向の中央部付近)には、温度センサ54が配置されている。
【0022】
図3は、加熱回転体51の両端部を除く領域における詳細な構造を示す断面図である。同図に示すように、両端部を除く領域においては、加熱回転体51は、絶縁層513、抵抗発熱体層514、弾性層515、離型層516が、この順に積層されて構成される。抵抗発熱体層514は、加熱回転体51の周方向において複数の細長形状の層に分割(ここでは、等分割)されており、分割された細長形状の層(以下、「分割層」という。)は、それぞれ、周方向に等間隔をあけて絶縁層513上を周回するように配置されている。隣接する分割層間の間隙部分には、絶縁性の弾性層515が充填され、隣接する分割層間が絶縁状態となるように構成されている。なお、加熱回転体51の通紙領域における定着温度に温度ムラが生じないようにするため、隣接する分割層間の間隔は、できるだけ近接している方が望ましく、数mm以下(1cm未満)とすることが望ましい。
【0023】
このように、抵抗発熱体層514を、絶縁層513の周面全体を覆う1つの層として一体的に構成せず、複数の分割層に分割して絶縁層513に配置する構成とすることにより、抵抗発熱体層514に傷が生じた場合における、傷の端部周辺の異常発熱量を低減することができる。
例えば、図2の符号201で示すように、傷の周方向の長さが、抵抗発熱体層514の1つの分割層の周方向の幅全体に及んでいる場合には、当該傷により通電が遮られて当該分割層には、符号202の×印付き矢印で示すように電流が流れないので、当該分割層の温度は、上昇しない。一方、図6に示すように、抵抗発熱体層を、絶縁層の周面全体を覆う1つの層として構成した定着装置600においては、図2の傷201に対応する位置に生じた傷601の端部周辺に集中的に電流602が流れ、当該端部周辺の電流密度が高まるので、白矢印603で示すように、当該端部周辺の温度が急上昇し、異常発熱してしまう。
【0024】
さらに、図2の符号203で示すように、傷が小さく、抵抗発熱体層514の1つの分割層の周方向の幅全体に及んでいない場合においても、隣接する分割層とは、絶縁性の弾性層515により隔てられ、絶縁されるように構成されているので、隣接する分割層から傷の端部周辺へ符号204の×印付き矢印で示す電流が流れ込むことはないため、絶縁層の周面全体を覆う一つの層として構成した場合における、図6の符号605で示す温度上昇(図2の傷203に対応する位置の傷604の端部周辺における温度上昇)に比べ、傷の端部周辺に流れ込む電流密度を小さくすることができる分だけ、当該端部周辺における温度上昇を符号205(図2及び図6では、白矢印の長さにより温度上昇の程度を表している。)で示すように低減することができる。
【0025】
等分割される抵抗発熱体層514の分割層の数は、多ければ多い程、分割層の周方向の幅を小さくすることができ、それに応じて小さい傷であっても、当該傷の端部周辺における温度上昇を効果的に低減することができる。
図4は、加熱回転体51の一方の端部(電極511がある側の端部)周辺の回転軸方向の断面図である。同図に示すように、加熱回転体51の端部においては、絶縁層513、抵抗発熱体層514、電極511がこの順に積層されて構成される。電極511は、導電性の材料から構成される。電極511の材料としては、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、真鍮、リン青銅等の金属を用いることができる。絶縁層513は、加熱回転体51の強度を補強するとともに、隣接する抵抗発熱体層514の分割層間が絶縁されるようにするための層であり、絶縁層513としては例えば、ポリイミド樹脂を用いることができる。
【0026】
抵抗発熱体層514は、電極511、512と電気的に接続され、電極511、512を通じて給電されることにより、ジュール熱を発生する層である。抵抗発熱体層514は、耐熱性樹脂等の絶縁性材料中に導電性材料を分散させて構成される。抵抗発熱体層514の電気抵抗値(又は体積抵抗率)は、導電性材料の量を調整することにより、所定の電気抵抗値(又は体積抵抗率)に調整される。
【0027】
耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリエチレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリエステル-イミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリ-p-キシリレノン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂などを用いることができる。抵抗発熱体層514に用いる耐熱性樹脂として、耐熱性、絶縁性及び機械的強度等に優れた特性を示すポリイミド樹脂を用いるのが望ましい。
【0028】
導電性材料としては、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)等の金属、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノコイル等を用いることができ、2種類以上の導電性材料(例えば、カーボンナノ材料と金属)を用いることとしてもよい。この場合、金属は、特に針状やフレーク状の銀(Ag)やニッケル(Ni)が好ましく、粒径は0.01〜10μmが良い。これにより、カーボンナノ材料と線状に絡み合うことで均一な電気抵抗を有する抵抗発熱体層514を成型することができる。金属が粒状や粉末状や塊状の場合、抵抗発熱体層514中に混在するカーボンナノ材料と絡み合わず、カーボンナノ材料と点接触することになるため、均一な電気抵抗を有する抵抗発熱体層514が得られにくくなる。
【0029】
抵抗発熱体層514の厚さは、任意であるが、5〜100μm程度が望ましい。抵抗発熱体層514の電気抵抗値は、1.0×10−6〜1.0×10−2Ω・m程度の範囲に設定することができるが、当該電気抵抗値は、1.0×10−5〜5.0×10−3Ω・mの範囲内であることが望ましい。
弾性層515は、記録シート上のトナー像に均一かつ柔軟に熱を伝えるための層である。弾性層515を設けることにより、トナー像が押しつぶされたり、トナー像が不均一に溶融されたりするのを防止し、画像ノイズの発生を防止することができる。弾性層515の材料としては、耐熱性と弾性とを有し、絶縁性のゴム材や樹脂材を用いる。例えば、シリコーンゴムを用いることができる。
【0030】
弾性層515の厚さは、10〜800μm、さらに望ましくは100〜300μmの範囲内のものとする。弾性層515の厚さが10μm未満では厚さ方向の十分な弾力性を得ることが難しい。また,この厚さが800μmを超えていると,抵抗発熱体層514で発生した熱を加熱回転体51の外周面まで到達させることが難しく,伝熱効率が悪いので好ましくない。
【0031】
離型層516は,加熱回転体51の最外層をなし,加熱回転体51と記録シートとの離型性を高めるための層である。離型層516の材料としては、定着温度での使用に耐えられるとともにトナーに対する離型性に優れたものを使用することができる。例えば、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、PTFE(四フッ化エチレン)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化エチレン共重合体)、PFEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)等のフッ素樹脂を使用することができる。離型層516の厚さは5〜100μm、望ましくは10〜50μmの範囲内のものとするのがよい。
【0032】
図2の説明に戻って、定着ローラ52と加圧ローラ53は、芯金522、532の軸方向両端部521、531が図示しないフレームの軸受部に回転自在に軸支される。加圧ローラ53は、加圧ローラ駆動モータ56からの駆動力が伝達されることにより矢印B方向に回転駆動される。この加圧ローラ53の回転に伴って加熱回転体51と定着ローラ52が矢印A方向に従動回転する。
【0033】
定着ローラ52は、長尺で円筒状の芯金522の周囲を断熱層523で被覆されてなり、加熱回転体51の周回経路の内側に配されている。芯金522は、定着ローラ52を支持する部材であり、耐熱性と強度を有する材料から構成される。芯金522の材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等を用いることができる。
断熱層523は、加熱回転体51が発熱した熱を芯金522に逃がさないようにするための層である。断熱層523の材料としては、熱伝導率が低く、耐熱性及び弾性を有するゴム材や樹脂材のスポンジ体(断熱構造体)を用いるのが望ましい。加熱回転体51のたわみを許容し、ニップ幅を広くすることができるからである。断熱層523を、ソリッド体とスポンジ体との2層構造にしてもよい。シリコンスポンジ材を断熱層523として用いる場合には、その厚さを1〜10mmとするのが望ましい。さらに望ましくは、2〜7mmとするのがよい。
【0034】
加圧ローラ53は、円筒状の芯金532の周囲に、弾性層533を介して離型層534が積層されてなり、加熱回転体51の周回経路外側に配置され、加熱回転体51の外側から加熱回転体51を介して定着ローラ52を押圧して、加熱回転体51の外周面との間に周方向に所定幅を有する定着ニップが形成される。芯金532は、加圧ローラ53を支持する部材であり、耐熱性と強度を有する材料から構成される。芯金532の材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等を用いることができる。
【0035】
弾性層533は、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体で、厚さ1〜20mmの範囲内の耐熱性の高い材料で構成される。離型層534は、離型層515と同様に、加圧ローラ53と記録シートとの離型性を高めるための層であり、離型層515と同様の材料及び厚さで構成することができる。
温度センサ54は、周回駆動する加熱回転体51の外周面の周方向の表面温度を所定の時間間隔で検出し、制御部60に検出結果を出力する。検出する時間間隔は、周回駆動中に周方向に分割配置された抵抗発熱体層514の各分割層に対応する加熱回転体51の外周面上の領域における表面温度を検出できる時間間隔に予め設定されている。温度センサ54としては、例えば、赤外線検知型のサーモパイルを用いることができる。制御部60は、表面温度の検出結果に基づいて、加熱回転体51への通電のオン・オフを制御し、表面温度が所定の温度(例えば、定着温度)になるように制御する。
【0036】
[3]制御部の構成
図5は、制御部60の構成と制御部60の制御対象となる主構成要素との関係を示す図である。制御部60は、所謂コンピュータであって、同図に示されるように、CPU(Central Processing Unit)601、通信インターフェース(I/F)部602、ROM(Read Only Memory)603、RAM(Random Access Memory)604、画像データ記憶部605などを備える。
【0037】
通信I/F部602は、LANカード、LANボードといったLANに接続するためのインターフェースである。ROM603には、画像プロセス部3、給紙部4、定着装置5、操作パネル6を制御するためのプログラムなどが格納されている。
RAM604は、CPU601のプログラム実行時のワークエリアとして用いられる。
画像データ記憶部605は、通信I/F部602や不図示の画像読取部を介して入力された、印刷用の画像データを記憶している。CPU601は、ROM603に格納されている各種プログラムを実行することにより、画像プロセス部3、給紙部4、定着装置5、操作パネル6を制御する。
(変形例)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
【0038】
(1)本実施の形態では、ベルト加熱方式の定着装置を用いることとしたが、本実施の形態による効果は、抵抗発熱体層を利用した定着装置であれば、ベルト加熱方式以外の定着装置においても実現することができる。例えば、複数の抵抗発熱体層514の分割層を定着ローラに直接設けることとし、定着装置を定着ローラと加圧ローラとで構成することとしてもよい。
【0039】
(2)本実施の形態では、抵抗発熱体層514は、周方向に等間隔をあけて複数の層に等分割されていることとしたが、分割の仕方は、等分割に限定されない。例えば、各分割層の周方向の幅が、異なる長さであってもよいし、各分割層間の周方向の間隔も1cmを超えない範囲であれば、等間隔でなくてもよい。
(3)本実施の形態では、抵抗発熱体層514の各分割層の形状を細長の形状としたが、分割層の形状は細長形状に限定されない。当該形状は、絶縁層513の周面を、周方向に近接する間隔(1cmより短い間隔)を隔てて被覆することが可能な形状であれば、どのような形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、プリンタ、複写機等の画像形成装置が備える定着装置に関し、特に抵抗発熱体を発熱体として用いた定着装置における異常発熱を低減する技術に関する。
【符号の説明】
【0041】
1 プリンタ
3 画像プロセス部
3Y〜3K 作像部
4 給紙部
5 定着装置
10 露光部
11 中間転写ベルト
12 駆動ローラ
13 従動ローラ
31Y 感光体ドラム
32Y 帯電器
33Y 現像器
34Y 1次転写ローラ
35Y クリーナ
41 給紙カセット
42 繰り出しローラ
43 搬送路
44 タイミングローラ
45 2次転写ローラ
46 2次転写位置
51 加熱回転体
52 定着ローラ
53 加圧ローラ
54 温度センサ
60 制御部
71 排出ローラ
72 排紙トレイ
500 電源部
501、502 給電ブラシ
511、512 電極
513 絶縁層
514 抵抗発熱体層
515、533 弾性層
516、534 離型層
521、531 芯金端部
522、532 芯金
523 断熱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の周面上に抵抗発熱体層を有した筒状回転体に給電して発熱させ、記録シート上の未定着画像を熱定着させる定着装置であって、
前記抵抗発熱体層は、複数の細長形状をした抵抗薄片が、その長手方向両端を、回転体両端部の全周に形成された給電電極に接続した状態で、回転体周方向に間隔をあけて配列された構成である
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記筒状回転体は、周回駆動する無端状のベルトである
ことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記間隔は、1cm未満である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−253141(P2011−253141A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128631(P2010−128631)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】