説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】紙シワが発生し難い定着処理が可能な定着装置及び画像形成装置を実現する。
【解決手段】トナー像が形成された用紙Pを第一ローラー221と第二ローラー222(ベルト部材224)の間に通紙することによって用紙Pにトナー像を定着させる定着装置22において、第一ローラー221と第二ローラー222をそれぞれ異なる駆動条件で回転させる駆動制御部50を備え、駆動制御部50は、少なくとも第一ローラー221と第二ローラー222が互いに圧接された状態で、一定の周速で第一ローラー221を回転させ、第一ローラー221が回転停止した場合には第二ローラー222も回転停止する大きさの一定のトルクで第二ローラー222を回転させる制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーによる画像を用紙に形成する画像形成装置において、未定着トナー像を担持した用紙を、対向するローラーやベルトなどの回転体間でニップし、加圧・加熱しながら搬送して、トナー像を用紙に定着する定着装置が広く用いられている。
【0003】
このような定着装置で用紙をニップして加熱定着処理する際、用紙上に形成されたトナー像のトナー量が多い場合など、溶けたトナーのために回転体間でスリップが発生することがある。例えば、用紙におけるトナーが有る領域(多い領域)と無い領域(少ない領域)とでスリップの程度が異なるために、駆動側の回転体から従動側の回転体へ伝達できる駆動トルクにばらつきが生じてしまうことで、用紙に皺が付いてしまう紙シワという不具合が発生してしまうことがあった。
【0004】
そして、定着装置の加圧ベルトを、用紙搬送方向への遊動を許容する一方向クラッチを介して用紙の搬送方向に回転駆動可能に設けるとともに、その加圧ベルトの周速を加熱ローラーの周速以下に設定することで、加圧ベルトと加熱ローラーによる用紙搬送を安定させて、スリップ発生時のベルト速度低下を防止する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、定着ローラー対を駆動させる駆動モーターの駆動トルクを感光体ドラムに付与するための駆動トルク付与手段がトルクリミッタを有することで、安定した駆動トルク付与を可能にした技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−222980号公報
【特許文献2】特開2006−71727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の場合、一方向クラッチを用いている方式のため、加圧ベルトの速度が所定値以下になったときでないと補助駆動が機能せず、その補助駆動のON/OFFはニップ領域の平均ベルト速度に依存している。一方、紙シワの発生は、ニップ領域長手方向に沿うトナー像の有無・濃淡によるところが大きく、平均的にベルトが滑っていなくても、ニップ領域長手方向で用紙がベルトから受けるせん断力に差があると、紙シワが発生してしまうことがあるので、この技術でも紙シワの防止には至っていない。
また、上記特許文献2の場合、トルクリミッタで補助的な駆動力を付与する際に、例えば、ベルトの周速をローラーの周速に対して十分小さくしておけば、補助トルクは常にトルク制限値に固定されるので、紙シワの発生をある程度防ぐことができる。ただし、トルク制限状態でのトルクリミッタ内では常にスリップが発生しているため、駆動力の大きな定着処理では、駆動力ロスとトルクリミッタの耐久性の観点から実用的でない。
【0007】
本発明の目的は、紙シワが発生し難い定着処理が可能な定着装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
トナー像が形成された用紙を第一ローラーと第二ローラーの間に通紙することによって前記用紙にトナー像を定着させる定着装置であって、
前記第一ローラーと前記第二ローラーを、それぞれ異なる駆動条件で回転させる駆動制御部を備え、
前記駆動制御部は、少なくとも前記第一ローラーと前記第二ローラーが互いに圧接された状態で、一定の周速で前記第一ローラーを回転させ、前記第一ローラーが回転停止した場合には前記第二ローラーも回転停止する大きさの一定のトルクで前記第二ローラーを回転させることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の定着装置において、
駆動力Fpで回転する前記第一ローラーと、前記第一ローラーの回転に応じて従動回転する前記第二ローラーの間に、その全面にトナーが付着されてなるトナー層を有する用紙が通紙される際に、前記第一ローラーが前記用紙と前記トナー層を介して前記第二ローラー側に伝達できる最大の力をFtとした場合、Fp>Fu>Fp−Ftの関係を満たす補助駆動力Fuを付加する一定のトルクで前記第二ローラーは前記駆動制御部によって回転されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の定着装置において、
前記第一ローラーと前記第二ローラーの回転駆動に関し、(前記第一ローラーを回転させるための駆動電力)>(前記第二ローラーを回転させるための駆動電力)>(前記第一ローラーを回転させるための駆動電力)−(紙シワが発生してしまう前記第一ローラーの駆動電力の下限値)の関係を満たす駆動条件で、前記駆動制御部は前記第一ローラーと前記第二ローラーを回転させることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の定着装置において、
前記第一ローラーと前記第二ローラーの回転駆動に関し、前記第一ローラーと前記第二ローラーとがそれぞれ受け持つトルク配分を調整するトルク配分調整制御部を備え、
前記駆動制御部は、前記トルク配分調整制御部により調整されたトルク配分に応じたトルクで前記第二ローラーを回転させることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の定着装置において、
前記トルク配分調整制御部は、前記第一ローラーのみを回転駆動させるときの前記第二ローラーのトルクの配分を0%とし、そこから前記第二ローラーのトルクの配分を増分していき、紙シワが発生しなくなる配分を前記トルク配分として調整することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の定着装置において、
前記第一ローラーと前記第二ローラーはそれぞれ周面に弾性層を備え、前記第一ローラーの弾性層よりも前記第二ローラーの弾性層の方が厚く形成されており、前記用紙はトナー像が形成された面を前記第二ローラー側に向けて通紙されることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の定着装置において、
前記第二ローラーを加熱するための加熱ローラーと、前記第二ローラーと前記加熱ローラーに掛架された無端状のベルト部材と、を備え、前記用紙は前記ベルト部材を介して前記第一ローラーと前記第二ローラーの間を通紙されることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか一項に記載の定着装置において、
前記第一ローラーと前記第二ローラーの回転駆動に関し、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を補正するトルク補正制御部を備え、
前記トルク補正制御部は、予め所定の記憶手段に記憶されているトナー溶融データとローラー駆動負荷データの少なくとも一方に基づき、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を補正し、
前記駆動制御部は、前記トルク補正制御部により補正されたトルクで前記第二ローラーを回転させることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の定着装置において、
前記トナー溶融データは、前記第二ローラーの温調温度と周速の少なくとも一方を含むデータであることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載の定着装置において、
前記ローラー駆動負荷データは、当該定着装置の駆動積算時間に関するデータであることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜7の何れか一項に記載の定着装置において、
前記第一ローラーと前記第二ローラーの回転駆動に関し、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を補正するトルク補正制御部と、
前記第一ローラーまたは前記第二ローラーの回転駆動に関するローラー駆動負荷データを検出する負荷データ検出部と、を備え、
前記トルク補正制御部は、前記負荷データ検出部により検出されたローラー駆動負荷データに基づき、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を補正し、
前記駆動制御部は、前記トルク補正制御部により補正されたトルクで前記第二ローラーを回転させることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の定着装置において、
前記負荷データ検出部は、前記ローラー駆動負荷データとして、前記第一ローラーを回転させるための駆動電力を検出することを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項1〜12の何れか一項に記載の定着装置において、
前記駆動制御部は、前記第一ローラーと前記第二ローラーが互いに圧接された状態と、前記第一ローラーと前記第二ローラーが離間した状態とに応じて、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を切り替えて、前記第二ローラーを回転させることを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜12の何れか一項に記載の定着装置において、
前記駆動制御部は、前記第一ローラーと前記第二ローラーが互いに圧接された状態と、前記第一ローラーと前記第二ローラーが離間した状態と、前記第一ローラーと前記第二ローラーが接離する動作中とに応じて、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を切り替えて、前記第二ローラーを回転させることを特徴とする。
【0022】
請求項15に記載の発明は、請求項13又は14に記載の定着装置において、
前記第一ローラーと前記第二ローラーが互いに圧接された状態において前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値は、前記第一ローラーと前記第二ローラーが離間した状態において前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値よりも大きいことを特徴とする。
【0023】
請求項16に記載の発明は、請求項14又は15に記載の定着装置において、
前記駆動制御部は、前記第一ローラーと前記第二ローラーが接離する動作中、前記第一ローラーが回転する周速と略同じ周速で前記第二ローラーを回転させるように、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を切り替えて、前記第二ローラーを回転させることを特徴とする。
【0024】
請求項17に記載の発明は、請求項14又は15に記載の定着装置において、
前記駆動制御部は、前記第一ローラーと前記第二ローラーが接離する動作中および前記第一ローラーと前記第二ローラーが離間した状態とにおいて、前記第一ローラーが回転する周速と略同じ周速で前記第二ローラーを回転させるように、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を切り替えて、前記第二ローラーを回転させることを特徴とする。
【0025】
請求項18に記載の発明は、画像形成装置であって、
請求項1〜17の何れか一項に記載の定着装置と、前記用紙に前記トナー像を形成するための画像形成部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、紙シワが発生し難い定着処理が可能な定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】画像形成装置の定着装置を示す拡大側面図である。
【図4】定着装置における第一ローラーと第二ローラーの回転駆動力に関する説明図であり、トナー像のない用紙が通紙された場合(a)、用紙上のトナー層によってスリップが生じた場合(b)、第二ローラーによる補助駆動を行った場合(c)を示している。
【図5】画像形成装置の定着装置に関する説明図である。
【図6】定着装置における第一ローラー駆動部の駆動電力とニップ幅の相関(a)と、定着装置における第一ローラー駆動部の駆動トルクとニップ幅の相関(b)を示す説明図である。
【図7】トナー溶融データである第二ローラーの温調温度と周速に関する補正値の一例を示すテーブルである。
【図8】ローラー駆動負荷データである定着装置の駆動積算時間に関する補正値の一例を示す補正曲線データである。
【図9】第二ローラーを回転させるトルク制御の切り替えに関する説明図である。
【図10】第二ローラーを回転させるトルク制御と周速制御の切り替えに関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0029】
(実施形態1)
図1は、画像形成装置1を示す概略構成図であり、図2は、画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。
画像形成装置1は、原稿から画像を読み取り、読み取った画像データに基づく画像を用紙P上に形成して出力するコピー機能や、外部装置等から画像データを含むページデータや各画像データの画像形成条件等を含むジョブデータを受信し、受信したページデータ及びジョブデータに基づく画像を用紙P上に形成して出力するプリント機能等を具備している。
【0030】
画像形成装置1は、図1、図2に示すように、画像読取部10と、画像形成部20と、定着装置22と、用紙収容部25と、搬送部30と、操作部40と、制御部50等を備えて構成されている。
【0031】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿送り部11と、読取部12とを備えている。
読取部12は、読取個所であるコンタクトガラス12a上に載置された原稿dの画像をCCD(Charge Coupled Device)により読み取る。
また、自動原稿送り部11の原稿トレイ11aに載置された原稿dは、読取個所であるコンタクトガラス12a上に搬送され、CCDによってその原稿dの片面又は両面の画像が読み取られる。
ここで、画像とは、図形や写真等のイメージデータに限らず、文字や記号等のテキストデータ等も含む。
【0032】
画像読取部10により読み取られた画像(アナログ画像信号)は、後述するCPU51図2参照)に出力され、アナログ処理、A/D変換処理、シェーディング補正、画像圧縮処理等の各種画像処理が施された後、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色に色分解され、デジタルの画像データとして画像形成部20に出力される。
【0033】
画像形成部20は、入力された画像データに基づいて、電子写真方式の画像形成処理を行う。
画像形成部20は、露光ユニット2Y、2M、2C、2Kと、現像ユニット3Y、3M、3C、3Kと、像担持体である感光体ドラム4Y、4M、4C、4Kと、帯電部5Y、5M、5C、5Kと、感光体ドラム用のクリーニング部6Y、6M、6C、6Kと、一次転写ローラー7Y、7M、7C、7Kと、中間転写ベルト8と、中間転写ベルト用のクリーニング装置9と、二次転写ローラー21等を備えて構成されている。
この画像形成部20において、中間転写ベルト8と二次転写ローラー21とが圧接している箇所が、用紙Pに画像を転写して画像形成を行う画像転写部として機能する。
【0034】
露光ユニット2Y、2M、2C、2Kは、LD等のレーザー光源、ポリゴンミラー、複数のレンズ等から構成されている。
露光ユニット2Y、2M、2C、2Kは、制御部50(CPU51)から送られた画像データに基づいて、感光体ドラム4Y、4M、4C、4Kの表面をレーザービームにより走査露光する。このレーザービームの走査露光により、帯電部5Y、5M、5C、5Kによって帯電された感光体ドラム4Y、4M、4C、4Kに潜像が形成され、すなわち画像が書き込まれる。
【0035】
感光体ドラム4Y、4M、4C、4K上に形成された潜像は、対応する現像ユニット3Y、3M、3C、3Kのトナーによる現像によって顕像化され、各感光体ドラム4Y、4M、4C、4K上にはトナー像が形成される。
感光体ドラム4Y、4M、4C、4K上に形成されて担持されたトナー像は一次転写ローラー7Y、7M、7C、7Kにより、中間転写ベルト8上に一次転写される。
【0036】
トナー像の転写を終えた各感光体ドラム4Y、4M、4C、4Kの表面は、クリーニング部6Y、6M、6C、6Kによって残留トナーが除去される。
【0037】
中間転写ベルト8は、複数のローラー(例えば、張架ローラー81、88)に懸架され回転可能に支持された無端状のベルト部材(エンドレスベルト)であり、ローラーの回転に伴って図中時計回りの所定の搬送方向に回動される。
この中間転写ベルト8は、一次転写ローラー7Y、7M、7C、7Kによりそれぞれの感光体ドラム4Y、4M、4C、4Kに圧着される。これにより各感光体ドラム4Y、4M、4C、4Kの表面に現像された各トナー像が、各一次転写ローラー7Y、7M、7C、7Kによる転写位置で中間転写ベルト8に転写(一次転写)される。
また、中間転写ベルト8は、二次転写ローラー21による転写位置で用紙Pと圧接し、その用紙Pに中間転写ベルト8上に形成されたトナー像を転写(二次転写)する。
そして、中間転写ベルト8は、二次転写ローラー21によって用紙Pにトナー像を転写した後、用紙Pを曲率及び静電的に分離して定着装置22へ送る。
トナー像を用紙Pに転写した中間転写ベルト8は、クリーニング装置9により残留トナー等の異物が除去される。
【0038】
定着装置22は、図1〜図3に示すように、二次転写によってトナー像が形成された用紙Pが通紙されるローラー対である第一ローラー221と第二ローラー222と、第二ローラー222を加熱するための加熱ローラー223と、第二ローラー222と加熱ローラー223に掛架された無端状のベルト部材224等を備えている。加熱ローラー223は内部にヒーター22hを備えており、ベルト部材224を介して第二ローラー222を加熱する。
また、定着装置22は、図2に示すように、第一ローラー221を回転させる第一ローラー駆動部22mと、第二ローラー222を回転させる第二ローラー駆動部22nと、第一ローラー221と第二ローラー222を接離させる接離駆動部22oと、第一ローラー221または第二ローラー222の回転駆動に関するローラー駆動負荷データを検出する負荷データ検出部22p等を備えている。負荷データ検出部22pは、例えばローラー駆動負荷データとして、第一ローラー駆動部22mが第一ローラー221を回転させるための駆動電力を検出する。
【0039】
第一ローラー221と第二ローラー222は、搬送部30により用紙Pが搬送される方向であって、その用紙Pが通紙される方向と交差する方向に延在し、回転可能に配設されている。
この第一ローラー221と第二ローラー222の周面にはシリコーンゴムなど、熱伝導性の高い材料からなる弾性層が設けられており、第一ローラー221と第二ローラー222が互いの周面を密着させた状態で回転することで、対を成す第一ローラー221と第二ローラー222の間でニップした用紙Pを挟持搬送するようになっている。
特に、図3に示すように、第一ローラー221の弾性層221aよりも第二ローラー222の弾性層222aの方が厚く形成されており、例えば、第一ローラー221の弾性層221aの厚みは1mm、第二ローラー222の弾性層222aの厚みは20mmに形成されている。
また、直接用紙もしくはトナーに接触する、ベルト224、第二ローラー222の最表層には、トナーによる汚染やトナーの付着を防止するための厚さ30μmの離型層が設けられている。
【0040】
また、第一ローラー221と第二ローラー222は、接離駆動部22oによって接離されることによって、第一ローラー221と第二ローラー222が互いに圧接された状態と、第一ローラー221と第二ローラー222が離間した状態とに切り替えられるようになっている。
この第一ローラー221と第二ローラー222が互いに圧接された際、第一ローラー221と第二ローラー222の間にベルト部材224が挟み込まれて、第一ローラー221の外周面とベルト部材224の外周面との間にニップ領域が形成される。
このニップ領域にトナー像が形成された用紙Pを通紙することで、用紙Pにトナー像が定着される。つまり、用紙Pはベルト部材224を介して第一ローラー221と第二ローラー222の間を通紙されるようになっている。なお、用紙Pはトナー像が形成された面を第二ローラー222側(ベルト部材224側)に向けて通紙される。
【0041】
第一ローラー221は、第一ローラー駆動部22m(図2参照)によって一定の周速で回転される駆動ローラーである。
第二ローラー222は従動ローラーであり、第一ローラー221と第二ローラー222が圧接した状態で、第一ローラー221の回転駆動に伴い回転し、第一ローラー221が回転停止した場合には第二ローラー222も回転停止する。但し、第二ローラー222は、第二ローラー駆動部22n(図2参照)により、第一ローラー221が回転停止した場合には第二ローラー222も回転停止する大きさの一定のトルクで回転されている。
第一ローラー駆動部22mは、例えば、DCブラシレスモーターであって、モーター内蔵のエンコーダ出力をフィードバックすることで速度制御が可能なモーターである。
第二ローラー駆動部22nは、例えば、DCブラシレスモーターではあるが、回転速度検知機構を有しておらず、モーターのON/OFFをPWM制御することで実効電流値を規制してトルク制御が可能なモーターである。
【0042】
そして、定着装置22は、第一ローラー221と第二ローラー222(ベルト部材224)の間で用紙Pをニップして搬送することで、用紙Pに転写されたトナー像を加熱定着させる。これにより、用紙Pにトナー像が定着して画像が形成される。この定着装置22による定着処理を終えた用紙Pは排紙トレイ91に排紙される。
【0043】
なお、画像形成部20による画像形成とは、露光ユニット2Y、2M、2C、2Kにより各感光体ドラム4Y、4M、4C、4Kに潜像を形成し、形成された潜像にトナーを付着させて現像したトナー像を中間転写ベルト8に一次転写し、さらに用紙Pに二次転写するまでの一連の動作のことを意味する。また、用紙P上に二次転写されたトナー像を定着装置22で定着するまでを含めた一連の動作が画像形成装置1による画像形成である。
【0044】
用紙収容部25は、複数の給紙トレイ25a、25b、25cと、給紙手段25dとを備えて構成されている。
給紙トレイ25a、25b、25cには、用紙Pの斤量やサイズ等に応じて識別された各種用紙が予め設定された種類毎に格納されている。
給紙手段25dは、各給紙トレイに収容されている用紙Pを最上部から1枚ずつ搬送部30に向けて給紙する。
【0045】
搬送部30は、用紙収容部25から画像転写部(中間転写ベルト8および二次転写ローラー21)に向かう搬送路Rと、その搬送路Rに配置されて用紙収容部25から給紙された用紙Pを画像転写部に搬送するための複数の搬送ローラー対(31、32、33)とにより構成されている。なお、搬送路Rの一部は、画像転写部から排紙トレイ91に向かう経路や、用紙の表裏を反転させるための経路に延在している。
特に、搬送部30は、搬送ローラー対として、搬送路Rにおいて画像転写部(中間転写ベルト8および二次転写ローラー21)の上流側直近に配されたレジストローラー32と、そのレジストローラー32の上流側に隣接して配されたループローラー31と、そのループローラー31と給紙トレイ(給紙手段25d)との間に配された給紙用ローラー33とを備えている。
【0046】
ループローラー31は、用紙Pの曲がり(斜行)を矯正する機能を有する。具体的には、ループローラー31を通過した用紙Pは、停止した状態のレジストローラー32に突き当たる。そして、そのレジストローラー32に突き当たった用紙Pは、さらにループローラー31により搬送されることで湾曲し、レジストローラー32のニップ線に倣って斜行が矯正される。
レジストローラー32は、画像形成に備えて搬送途中の用紙Pを挟持しながら用紙の搬送方向と直交する方向に揺動して、中間転写ベルト8に一次転写されたトナー像に対する用紙Pの位置調整を行う機能を有する。
【0047】
操作部40は、例えば、液晶表示パネルとその液晶表示パネルの表示画面上に設けられたタッチパネルとを備えて構成されており、液晶表示パネルに表示される各種操作キー等をタッチ操作することにより、タッチパネルがタッチ指示された位置を検出し、検出した位置に応じた操作信号を制御部50(CPU51)に出力するようになっている。
【0048】
また、画像形成装置1は、図2に示すように、装置の各部を統括制御する制御部50を備えており、その制御部50に、画像読取部10、画像形成部20、定着装置22、搬送部30、操作部40等が接続されている。
【0049】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)51と、RAM(Random Access Memory)52と、ROM(Read Only Memory)53と、を備えて構成されている。
【0050】
CPU51は、ROM53に格納されているシステムプログラム及び各種アプリケーションプログラムの中から指定されたプログラムを読み出してRAM52に展開し、RAM52に展開されたプログラムとの協働で、各種処理を実行し、画像形成装置1の各部を集中制御する。
【0051】
RAM52は、例えば揮発性のメモリであって、CPU51により実行される各種プログラムやこれら各種プログラムに係るデータ等を格納するワークエリアを有し、その情報を一時的に記憶する。
【0052】
ROM53は、例えば、画像形成装置1(CPU51)で実行可能なシステムプログラムや、そのシステムプログラムによって実行される各種処理プログラム、これら各種処理プログラムを実行する際に使用されるデータなどを記憶する。
例えば、ROM53は、第一ローラー221と第二ローラー222をそれぞれ異なる駆動条件で回転させるための駆動制御プログラムや、第一ローラー221と第二ローラー222を回転駆動するにあたって第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を補正するためのトルク補正制御プログラムなどを記憶している。
また、ROM53は、所定の記憶手段として、トナー溶融データとローラー駆動負荷データなどを記憶している。なお、トナー溶融データは、第二ローラー222の温調温度と周速の少なくとも一方を含むデータである。ローラー駆動負荷データは、定着装置22の駆動積算時間に関するデータである。
【0053】
ROM53に記憶されている駆動制御プログラムは、第一ローラー221と第二ローラー222をそれぞれ異なる駆動条件で回転させるように、第一ローラー駆動部22mと第二ローラー駆動部22nを駆動制御して、一定の周速で第一ローラー221を回転させるとともに、一定のトルクで第二ローラー222を回転させるためのプログラムである。
具体的に、駆動制御プログラムは、少なくとも第一ローラー221と第二ローラー222が互いに圧接された状態において、一定の周速で第一ローラー221を回転させ、その第一ローラー221が回転停止した場合には第二ローラー222も回転停止する大きさの一定のトルクで第二ローラー222を回転させるように、第一ローラー駆動部22mと第二ローラー駆動部22nを駆動する制御を制御部50に実現させるプログラムである。
CPU51が、駆動制御プログラムを実行すると、制御部50は、第一ローラー駆動部22mと第二ローラー駆動部22nを駆動させて、一定の周速で第一ローラー221を回転させ、その第一ローラー221が回転停止した場合には第二ローラー222も回転停止する大きさの一定のトルクで第二ローラー222を回転させる駆動制御部として機能する。
【0054】
また、ROM53に記憶されているトルク補正制御プログラムは、第一ローラー221と第二ローラー222を回転駆動に関し、第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を補正する制御を制御部50に実現させるプログラムである。
CPU51が、トルク補正制御プログラムを実行すると、制御部50は、予め所定の記憶手段(ROM53)に記憶されているトナー溶融データとローラー駆動負荷データの少なくとも一方に基づき、第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を補正するトルク補正制御部として機能する。
また、CPU51が、トルク補正制御プログラムを実行すると、制御部50は、負荷データ検出部22pにより検出されたローラー駆動負荷データである第一ローラー221を回転させるための駆動電力に基づき、第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を補正するトルク補正制御部として機能する。
なお、駆動制御部として機能する制御部50は、トルク補正制御部としての制御部50により補正されたトルクで第二ローラー222を回転させるように、第二ローラー駆動部22nを駆動させる。
【0055】
次に、定着装置22における第一ローラー221と第二ローラー222のそれぞれの回転駆動力について説明する。
【0056】
図4(a)に示すように、第一ローラー221の外周面とベルト部材224の外周面との間のニップ領域に、トナー像が形成されていない用紙Pが通紙される場合、ベルト部材224と用紙P間の摩擦係数は十分に大きく、用紙Pはベルト部材224に対して滑らないので、駆動力Fpで回転する第一ローラー221の回転力がベルト部材224に伝わり、ベルト部材224は駆動力Fpに対応する抗力Frを受ける。
【0057】
これに対し、図4(b)に示すように、その全面にトナーが付着されてなるトナー層Tを有する用紙Pがニップ領域に通紙される場合、溶融したトナー層Tに起因するスリップが発生するため、駆動力Fpで回転する第一ローラー221の回転力の全てがベルト部材224に伝わらない。例えば、第一ローラー221が用紙Pとトナー層Tを介して第二ローラー222側のベルト部材224に伝達できる最大の力をFtとすると、そのFtに対応する抗力Frがベルト部材224に伝わることになる。
【0058】
このように、用紙P上にトナー層Tが有る場合(図4(b)参照)と無い場合(図4(a)参照)とでは、用紙Pを介してベルト部材224が受ける抗力Frが異なる。
そして、ニップ領域に通紙される用紙P上にトナー像(トナー層T)が有る部分と無い部分が混在していると、そのトナー層Tが有る部分と無い部分とでベルト部材224が受ける抗力Frが異なるために、用紙Pがスリップする度合いが部分的に異なってしまい、用紙Pに紙シワが発生してしまうことになる。
【0059】
そこで、図4(c)に示すように、駆動力Fpで回転する第一ローラー221と、その第一ローラー221の回転に応じて従動回転する第二ローラー222およびベルト部材224の間に、その全面にトナーが付着されてなるトナー層Tを有する用紙Pが通紙される際に、第一ローラー221が用紙Pとトナー層Tを介して第二ローラー222側に伝達できる最大の力をFtとした場合、Fp>Fu>Fp−Ftの関係を満たす補助駆動力Fuを付加する一定のトルクで第二ローラー222を回転させるようにする。補助駆動力Fuのトルクで第二ローラー222を回転させることで、ベルト部材224は駆動力Fpで回転する第一ローラー221の回転力に相当する抗力Frを受けるようになる。
なお、駆動制御部として機能する制御部50によって、第二ローラー222は、Fp>Fu>Fp−Ftの関係を満たす補助駆動力Fuを付加する一定のトルクで回転される。そして、この条件を満たす補助駆動力Fuで回転される第二ローラー222は、第一ローラー221の従動ローラーであるので、用紙Pがスリップしていなければ駆動力Fpで回転する第一ローラー221に追従して回転し、用紙Pがスリップした場合にはその回転によって補助駆動力Fuを付加するようになっている。
このように、駆動力Fpで回転する第一ローラー221がベルト部材224に伝達できる力(Ft)の不足分を第二ローラー222の補助駆動力Fuで補うようにすることで、用紙P上のトナー像(トナー層T)の有無に関わらず用紙Pがスリップすることを防いで、用紙Pに紙シワが発生しないように挟持搬送することが可能になる。
【0060】
ここで、弾性層の厚いローラーを主たる駆動ローラーとすると、芯金と弾性層の界面のせん断応力による弾性体(シリコーンゴム)の歪が大きいために耐久劣化が早いので、弾性層の厚いローラーを駆動ローラーとすることは耐久性の観点から望ましくない。そこで、図3に示す本発明の定着装置22のように、下側の第一ローラー221を駆動ローラーとして駆動することが好ましい。
しかしながら、ローラー径に対して大きなニップ幅を得るために、弾性層のゴム厚を厚くし、且つ定着荷重を高くした構成の定着装置においては、駆動負荷が大きくなるため、トナーが無い白紙の用紙Pでは、第一ローラー221から十分な駆動力が伝達できるが、溶融したトナーが存在するときは、駆動力が十分に伝わらず、スリップする状態が発生する。トナーの有る領域と無い領域が混在する画像では、場所によって伝達できる駆動力が異なるため、対応する位置で用紙Pが受けるストレスも異なり紙シワとなる。
従って、画像によらず、トナーがある状態で不足するトルクを補完できるFu>Fp−Ftを満たすトルク(Fu)を補助トルク値とする。また、駆動の主従関係が逆転しないために、Fp>Fuとする。
【0061】
なお、第一ローラー221と第二ローラー222の回転駆動に関し、(第一ローラー221を回転させるための駆動電力)>(第二ローラー222を回転させるための駆動電力)>(第一ローラー221を回転させるための駆動電力)−(紙シワが発生してしまう第一ローラー221の駆動電力の下限値)の関係を満たす駆動条件で、駆動制御部として機能する制御部50は第一ローラー221と第二ローラー222を回転させるようになっている。この駆動電力については後述する。
【0062】
次に、定着装置22における第一ローラー221と第二ローラー222の回転駆動に関し、駆動制御部としての制御部50が第二ローラー222を回転させる補助駆動力Fuについて説明する。
【0063】
定着装置22におけるニップ領域での摩擦力を測定することは困難なので、実際には、第一ローラー221の駆動トルクとニップ幅の関係や、第一ローラー221の駆動電力とニップ幅の関係から、第二ローラー222の補助駆動力Fuのトルク値を設定する。
そのために予め、第一ローラー221の駆動トルクとニップ幅の相関や、第一ローラー221の駆動電力とニップ幅の相関を求める。
例えば、図5に示すように、第一ローラー221と第一ローラー駆動部22mの間に減速ギア列221dと動トルク計221tを配し、第二ローラー222と第二ローラー駆動部22nの間に減速ギア列222dを配し、第二ローラー222を回転駆動させない状態でバネ荷重を増やすようにして第一ローラー221と第二ローラー222を密接させて、ニップ幅と第一ローラー221のトルクを可変した際の第一ローラー駆動部22mに流れる電流値より、第一ローラー221の駆動トルクとニップ幅の関係を求めた。
このときトルクは回転数に依存するため、実際に定着装置22を作動させる際のローラー対の回転数における電流値とトルクの関係を求め、測定した電流値よりトルクを求める。なお、実際の装置に動トルク計221tを設置することが困難な場合は、電流値とトルクの関係より換算して求めればよい。
【0064】
こうして求めた第一ローラー駆動部22mの駆動電力とニップ幅の関係を図6(a)に示し、第一ローラー駆動部22mの駆動トルクとニップ幅の関係を図6(b)に示す。図6(a)(b)に示すように、ニップ幅の増大にほぼ比例して、第一ローラー駆動部22mの駆動電力や駆動トルクが増大することがわかる。なお、第一ローラー221がトナー層を介して第二ローラー222側(ベルト部材224)に伝達できる駆動トルクは5.2N・m(図6(b)参照)であり、その駆動トルク5.2N・mに対応する第一ローラー駆動部22mの駆動電力は103W(図6(a)参照)である。
なお、求めた第一ローラー221の駆動電力とニップ幅の相関データ(図6(a))や、第一ローラー221の駆動トルクとニップ幅の相関データ(図6(b))は、ROM53などの記憶手段に格納される。
【0065】
そして、第一ローラー221がトナー層を介して第二ローラー222側(ベルト部材224)に伝達できる駆動トルク(5.2N・m)を超えると、紙シワが発生するので、紙シワが発生するトルクの下限値を下回るように、第二ローラー222の補助トルクを設定する。
例えば、ニップ領域のニップ幅を26mmとする場合、図6(b)に示すように、第一ローラー221の駆動負荷として5.5N・mの駆動トルクが必要であるが、5.2N・mまでしか駆動力が伝達できないことが想定される。つまり、第一ローラー221側の駆動トルクとして0.3N・mが不足しており、0.3N・m以上かつ総駆動トルクである5.5N・mを超えないトルクを第二ローラー222によって補助すればよい。
この場合、補助駆動力Fuは、0.3N・m以上5.5N・m未満であればよく、耐久性の観点から第二ローラー222の駆動力はできるだけ小さい方が望ましいので、0.5N・mを補助トルク値とした。ただし、この値は主たる駆動源のモーター出力軸でのトルクであるので、実際はギア列の減速比とローラーの半径比分の換算を行わなければならない。本構成では、ローラー対(第一ローラー221と第二ローラー222)のローラー径はどちらもφ80で、減速比はどちらも1/30なので、0.5N・mを補助トルク値とする。
そして、ニップ領域のニップ幅を26mmとする場合には、第一ローラー221を5.2N・mのトルクによって一定の周速で回転させ、第二ローラー222を0.5N・mの一定のトルクで回転させる制御が実行される。
【0066】
なお、ニップ領域での駆動力の伝達に関してトルクで表現すると、トルク値がローラー径や駆動系の減速比の影響を受けるため汎用的に使いにくい。そのため、モーターに投入される電流×電圧=電力を使うと、機械構成の影響を受けず簡便である。
例えば、ニップ領域のニップ幅を26mmとする場合、図6(a)に示すように、第一ローラー221を駆動するためには第一ローラー駆動部22mに110Wの駆動電力が必要であるが、103W以上を要する駆動では紙シワが発生してしまうことが想定される。そこで、第一ローラー駆動部22mには103Wの駆動電力を供給し、第二ローラー222を駆動させる第二ローラー駆動部22nに7W以上110W以下の駆動電力を供給するように電力補助を行えばよい。実際には、耐久性の観点から第二ローラー駆動部22nへの補助駆動電力はできるだけ小さいことが望ましいので、10Wを補助駆動電力とした。
そして、ニップ領域のニップ幅を26mmとする場合には、第一ローラー221を103Wの電力によって一定の周速で回転させ、第二ローラー222を10Wの電力によって一定のトルクで回転させる制御が実行される。
【0067】
以上のように画像形成装置1は、一定の周速で回転される第一ローラー221と、その第一ローラー221が回転停止した場合には回転停止する大きさの一定のトルクで回転される第二ローラー222と、を備えた定着装置22を備えている。
そして、定着装置22は、図6(a)(b)に示したような、第一ローラー221の駆動電力とニップ幅の相関データや、第一ローラー221の駆動トルクとニップ幅の相関データに基づき、駆動力Fpで第一ローラー221を回転させるとともに、第一ローラー221が用紙Pとトナー層Tを介して第二ローラー222側に伝達できる最大の力をFtとした場合に、上記したFp>Fu>Fp−Ftの関係を満たす補助駆動力Fuを付加する一定のトルクで第二ローラー222を回転させることで、駆動力Fpで回転する第一ローラー221がベルト部材224に伝達できる力(Ft)の不足分を第二ローラー222の補助駆動力Fuで補うことができる。
それによって、定着装置22は、用紙P上のトナー像(トナー層T)の有無に関わらず用紙Pがスリップすることを防いで、用紙Pに紙シワが発生しないように挟持搬送することが可能になり、好適に用紙Pにトナー像を定着させることができる。
【0068】
このように、本発明に係る定着装置22は、用紙Pに定着させるトナー像がどのようなものであっても用紙Pがスリップしないように挟持搬送することができ、用紙Pに紙シワが発生し難い定着処理を行うことが可能である。
つまり、この定着装置22を備える画像形成装置1は、例えば、文字のみの画像、文字と写真が混在する画像、また余白の少ない画像や多い画像など、どのような画像を形成する場合でも、用紙Pに紙シワを発生させることなく、良好なプリント・画像形成を行うことができる。
【0069】
なお、定着装置22は、図6(b)に示したような、第一ローラー221の駆動電力とニップ幅の相関データを参照して、例えば、ニップ領域のニップ幅を26mmとする場合には、第一ローラー221を5.2N・mのトルクによって一定の周速で回転させ、第二ローラー222を0.5N・mの一定のトルクで回転させる制御を実行することには限らない。
【0070】
例えば、定着装置22は、予め所定の記憶手段(ROM53)に記憶されているトナー溶融データである第二ローラー222の温調温度と周速に応じた補正値に基づき、第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を補正し、その補正されたトルクで第二ローラー222を回転させる制御を実行するようにしてもよい。
トナー溶融データである第二ローラー222の温調温度と周速は、例えば、図7に示すようなテーブルとして、ROM53に記憶されている。なお、図7に示すテーブルの場合、温調温度200℃×周速450m/sの条件を標準条件とし、その標準条件を100%(補正ゼロ)とした際の、その他の条件(温調温度×周速)の補正率を表している。
第二ローラー222の温調温度や周速(ニップ時間)が異なる定着条件であると、トナー層Tの溶け具合が異なり、用紙Pのスリップの程度も異なるので、その温調温度や周速に基づき第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を補正して、その補正されたトルクで第二ローラー222を回転させることが、用紙Pに紙シワを発生させない定着処理を行う上で有効な手段となる。
なお、図6(a)(b)に示した相関データが、標準条件である温調温度200℃×周速450m/sの条件で求められたものであるとすると、その他の条件(温調温度×周速)でも同様の測定を行って、各条件での補正値を設定している。
【0071】
また、例えば、定着装置22は、予め所定の記憶手段(ROM53)に記憶されているローラー駆動負荷データである定着装置22の駆動積算時間に応じた補正値に基づき、第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を補正し、その補正されたトルクで第二ローラー222を回転させる制御を実行するようにしてもよい。
ローラー駆動負荷データである定着装置22の駆動積算時間は、例えば、図8に示すような補正曲線データとして、ROM53に記憶されている。なお、定着装置22の駆動積算時間は、用紙Pが第一ローラー221と第二ローラー222の間を通過した走行距離(累積値)に対応している。
定着装置22の駆動積算時間が増すほど、ローラーの弾性層が劣化するなどしてその柔軟性・硬度が変化し、用紙Pのスリップの程度も異なるので、その駆動積算時間に基づき第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を補正して、その補正されたトルクで第二ローラー222を回転させることが、用紙Pに紙シワを発生させない定着処理を行う上で有効な手段となる。
【0072】
また、例えば、定着装置22は、負荷データ検出部22pにより検出されたローラー駆動負荷データである第一ローラー221を回転させるための駆動電力に基づき、第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を補正し、その補正されたトルクで第二ローラー222を回転させる制御を実行するようにしてもよい。
負荷データ検出部22pが、第一ローラー221を回転させるための駆動電力を検出することで、実際に回転している第一ローラー221のトルクを検知することが可能になるので、作動中の定着装置22に応じて第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を補正することができる。その補正されたトルクで第二ローラー222を回転させることが、用紙Pに紙シワを発生させない定着処理を行う上で有効な手段となる。
例えば、ローラー駆動負荷データ(駆動電力)の検出は、第二ローラー222の補助駆動をオフにした状態かつ圧着状態で、第一ローラー221を回転させる第一ローラー駆動部22mに流れる電流値を測定して行い、その検出した電流値(駆動電力)をトルク値に換算する。ローラー駆動負荷データの検出タイミングは、第二ローラー222の熱膨張の影響を考慮して、ウォームアップ後の印字動作前に行うことが望ましい。
【0073】
なお、定着装置22は、各補正値等に基づき、第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を補正し、その補正されたトルクで第二ローラー222を回転させる制御を実行することに限らず、各補正値等に基づき、第二ローラー222を回転させる第二ローラー駆動部22nに供給する駆動電力の値を補正することで、第二ローラー222のトルクの値を補正するようにしてもよい。
【0074】
(実施形態2)
次に、本発明に係る定着装置及び画像形成装置の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0075】
画像形成装置1の制御部50のROM53は、第一ローラー221と第二ローラー222の回転駆動に関し、第一ローラー221と第二ローラー222とがそれぞれ受け持つトルク配分を調整するためのトルク配分調整プログラムなどを記憶している。
【0076】
ROM53に記憶されているトルク配分調整プログラムは、第一ローラー221と第二ローラー222の回転駆動に関し、第一ローラー221と第二ローラー222とがそれぞれ受け持つトルク配分を調整する制御を制御部50に実現させるプログラムである。
CPU51が、トルク配分調整プログラムを実行すると、制御部50は、例えば、第一ローラー221のみを回転駆動させるときの第二ローラー222のトルクの配分を0%とし、そこから第二ローラー222のトルクの配分を増分していき、紙シワが発生しなくなる配分をトルク配分として調整するトルク配分調整制御部として機能する。
なお、駆動制御部として機能する制御部50は、トルク配分調整制御部としての制御部50により調整されたトルク配分で、第一ローラー221と第二ローラー222を回転させるように、第一ローラー駆動部22mと第二ローラー駆動部22nを駆動させる。
【0077】
例えば、第二ローラー222の駆動の無い状態でバネ荷重を増やしていくことで、ニップ幅と負荷トルクを可変し、可変したニップ幅ごとに第一ローラー221を回転させる第一ローラー駆動部22mへ流れる電流値を測定することにより、ニップ幅と第一ローラー221の駆動トルクの関係を求める。ニップ幅が増大する駆動負荷の増大に比例して、第一ローラー221の駆動トルクも増大する。そして、トナー層を介して伝達できる駆動トルクを超えると、紙シワが発生する。そこで、所定のニップ幅で必要な負荷トルクに対して、第二ローラー222の補助駆動を行わないときのトルク配分を0%とし、そこから増分していったときに、紙シワが無くなる比率をトルク配分の設定値とする。
【0078】
ここで、ニップ領域のニップ幅を26mmとする場合、図6(b)に示すように、第一ローラー221の駆動負荷として5.5N・mの駆動トルクが必要であることから定着処理に必要な負荷トルクは5.5N・mであり、このときの第二ローラー222のトルクの配分を0%とする。そして、第二ローラー222のトルクの配分を増分していき、第二ローラー222のトルクの配分が5%となるトルク配分が、紙シワが発生しなくなる配分であることがわかる。こうして、第一ローラー221のトルクの配分が95%で、第二ローラー222のトルクの配分が5%のトルク配分であることから、駆動制御部として機能する制御部50によって、第一ローラー221は5.2N・m(5.5N・mの95%)のトルクによって一定の周速で回転され、第二ローラー222は0.3N・m(5.5N・mの5%)のトルクで回転される。
【0079】
このように、トルク配分調整制御部としての制御部50により調整されたトルク配分で、第一ローラー221と第二ローラー222を回転させる定着装置22であっても、用紙Pに定着させるトナー像によらず、用紙Pがスリップしないように挟持搬送することができ、用紙Pに紙シワが発生し難い定着処理を行うことが可能である。
つまり、この定着装置22を備える画像形成装置1は、例えば、文字のみの画像、文字と写真が混在する画像、また余白の少ない画像や多い画像など、どのような画像を形成する場合でも、用紙Pに紙シワを発生させることなく、良好なプリント・画像形成を行うことができる。
【0080】
なお、定着装置22は、図6(b)に示したような、第一ローラー221の駆動電力とニップ幅の相関データを参照して、例えば、ニップ領域のニップ幅を26mmとする場合には、第一ローラー221を95%の5.2N・mのトルクによって一定の周速で回転させ、第二ローラー222を5%の0.3N・mの一定のトルクで回転させる制御を実行することには限らない。
【0081】
例えば、定着装置22は、上記実施形態1と同様に、予め所定の記憶手段(ROM53)に記憶されているトナー溶融データである第二ローラー222の温調温度と周速に応じた補正値(図7参照)や、予め所定の記憶手段(ROM53)に記憶されているローラー駆動負荷データである定着装置22の駆動積算時間に応じた補正値(図8参照)に基づき、トルク配分比を補正することで第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を補正し、その補正されたトルクで第二ローラー222を回転させる制御を実行するようにしてもよい。
また、定着装置22は、上記実施形態1と同様に、負荷データ検出部22pにより検出されたローラー駆動負荷データである第一ローラー221を回転させるための駆動電力に基づき、トルク配分比を補正することで第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を補正し、その補正されたトルクで第二ローラー222を回転させる制御を実行するようにしてもよい。
【0082】
(実施形態3)
次に、本発明に係る定着装置及び画像形成装置の実施形態3について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0083】
画像形成装置1における定着装置22の第一ローラー221と第二ローラー222は、第一ローラー221と第二ローラー222が互いに圧接された状態と、第一ローラー221と第二ローラー222が離間した状態とに切り替えられるようになっている。
そして、駆動制御部として機能する制御部50は、第一ローラー221と第二ローラー222が互いに圧接された状態と、第一ローラー221と第二ローラー222が離間した状態とに応じて、第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を切り替えて、第二ローラー222を回転させる制御を実行する(2段階切替制御)。
また、駆動制御部として機能する制御部50は、第一ローラー221と第二ローラー222が互いに圧接された状態と、第一ローラー221と第二ローラー222が離間した状態と、第一ローラー221と第二ローラー222が接離する動作中とに応じて、第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を切り替えて、第二ローラー222を回転させる制御を実行する(3段階切替制御)。
特に、第一ローラー221と第二ローラー222が互いに圧接された状態において第二ローラー222を回転駆動するトルクの値は、第一ローラー221と第二ローラー222が離間した状態において第二ローラー222を回転駆動するトルクの値よりも大きく設定されている。
【0084】
例えば、図9に示すように、2段階切替制御の場合、第一ローラー221と第二ローラー222が互いに圧接された状態(圧着時)では、第二ローラー222は0.5N・mのトルクで回転駆動され、第一ローラー221と第二ローラー222が離間した状態(離間時)および第一ローラー221と第二ローラー222が接離する動作中(圧離動作中)では、第二ローラー222は0.1N・mのトルクで回転駆動される。
また、3段階切替制御の場合、第一ローラー221と第二ローラー222が互いに圧接された状態(圧着時)では、第二ローラー222は0.5N・mのトルクで回転駆動され、第一ローラー221と第二ローラー222が接離する動作中(圧離動作中)では、第二ローラー222は0.1N・mのトルクで回転駆動され、第一ローラー221と第二ローラー222が離間した状態(離間時)では、第二ローラー222は0.05N・mのトルクで回転駆動される。
なお、第二ローラー222が0.1N・mのトルクで回転されることで、第一ローラー221が回転する周速と略同じ周速で、第二ローラー222が回転されるようになっている。
【0085】
このように、第一ローラー221と第二ローラー222が圧着するタイミングと離間するタイミングにおいて、第一ローラー221と第二ローラー222の周速差が無いあるいは僅かであると、第一ローラー221と第二ローラー222やベルト部材224の表面を摺擦によって傷めることはない。
また、第二ローラー222の駆動について考えると、離間状態では駆動負荷が小さくなるために、圧接状態と同じトルクで第二ローラー222を駆動すると、プリント中(圧着時)の周速に比べて、第二ローラー222およびベルト部材224が著しく高速に回転してしまい、圧離間動作中の摺擦や耐久性の点で好ましくない。従って、少なくとも第一ローラー221と第二ローラー222が接離する動作中において、第一ローラー221と第二ローラー222の周速が略一致するトルクで回転させる制御を行う。また、第一ローラー221と第二ローラー222が完全に離間した状態で、耐久性を優先する場合には、さらに第二ローラー222が遅い周速となるように、3段階の切替制御を実行する。
トルクの切り替えタイミングとしては、摺擦を極力避けるため、圧着動作完了後と離間動作前に行うことが望ましい。
また、3段階の切替制御において第二ローラー222の耐久性を優先する上で、第一ローラー221と第二ローラー222が完全に離間した状態では、第一ローラー221の周速と略一致するトルクよりもさらに小さなトルクで第二ローラー222を回転させる設定を行ったが、アイドリング時に第二ローラー222の熱膨張を早く促進する目的であれば、第二ローラー222がより高速に回転するように設定しても良い。
【0086】
なお、実施形態3において第二ローラー222を回転させる制御に関し、駆動制御部(制御部50)による制御は、上記したトルク制御による手法に限らない。
例えば、駆動制御部として機能する制御部50は、第一ローラー221と第二ローラー222が接離する動作中、第一ローラーが回転する周速と略同じ周速で第二ローラー222を回転させるように、第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を切り替えて、第二ローラーを回転させる制御を実行する。
また、駆動制御部として機能する制御部50は、第一ローラー221と第二ローラー222が接離する動作中および第一ローラー221と第二ローラー222が離間した状態とにおいて、第一ローラー221が回転する周速と略同じ周速で第二ローラー222を回転させるように、第二ローラー222を回転駆動するトルクの値を切り替えて、第二ローラーを回転させる制御を実行する。
【0087】
例えば、図10に示すように、第一ローラー221が一定の周速450mm/sで回転するときの2段階切替制御の場合、第一ローラー221と第二ローラー222が互いに圧接された状態(圧着時)では、第二ローラー222は0.5N・mのトルクで回転駆動され、第一ローラー221と第二ローラー222が離間した状態(離間時)および第一ローラー221と第二ローラー222が接離する動作中(圧離動作中)では、第二ローラー222は周速が450mm/sとなるトルクで回転駆動される。
また、第一ローラー221が一定の周速450mm/sで回転するときの3段階切替制御の場合、第一ローラー221と第二ローラー222が互いに圧接された状態(圧着時)では、第二ローラー222は0.5N・mのトルクで回転駆動され、第一ローラー221と第二ローラー222が接離する動作中(圧離動作中)では、第二ローラー222は周速が450mm/sとなるトルクで回転駆動され、第一ローラー221と第二ローラー222が離間した状態(離間時)では、第二ローラー222は周速が400mm/sとなるトルクで回転駆動される。
【0088】
本実施形態3においては、少なくとも第一ローラー221と第二ローラー222が接離する動作中(圧離動作中)に、第一ローラー221と第二ローラー222の周速差が殆ど無いように制御することで、第一ローラー221と第二ローラー222やベルト部材224の表面が損傷しないようにしている。つまり、第一ローラー221と第二ローラー222(ベルト部材224)の周速を適切に制御することを目的としている。
ただし、トルク制御のみで第一ローラー221と第二ローラー222の周速を制御する場合、駆動負荷が変動した場合に周速も変動してしまう恐れがある。そこで、トルク制御と周速制御の両方の制御によって第一ローラー駆動部22mと第二ローラー駆動部22nを制御することによって、第一ローラー221と第二ローラー222の周速を厳密に制御することが可能になるので、摺擦によるベルトやローラー表面の損傷を極力低減することが可能になる。
【0089】
このように、少なくとも第一ローラー221と第二ローラー222が接離する動作中(圧離動作中)に、第一ローラー221と第二ローラー222の周速差が殆ど無いように制御する定着装置22であれば、ベルトやローラー表面の損傷を極力低減することができるとともに、用紙Pに定着させるトナー像がどのようなものであっても、用紙Pがスリップしないように挟持搬送することができ、用紙Pに紙シワが発生し難い定着処理を行うことが可能である。
つまり、この定着装置22を備える画像形成装置1は、例えば、文字のみの画像、文字と写真が混在する画像、また余白の少ない画像や多い画像など、どのような画像を形成する場合でも、用紙Pに紙シワを発生させることなく、良好なプリント・画像形成を行うことができる。
【0090】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 画像形成装置
10 画像読取部
20 画像形成部
22 定着装置
221 第一ローラー
221a 弾性層
22m 第一ローラー駆動部
222 第二ローラー
222a 弾性層
22n 第二ローラー駆動部
22o 接離駆動部
22h ヒーター
22p 負荷データ検出部
223 加熱ローラー
224 ベルト部材
25 用紙収容部
30 搬送部
40 操作部
50 制御部(駆動制御部、トルク補正制御部、トルク配分調整制御部)
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成された用紙を第一ローラーと第二ローラーの間に通紙することによって前記用紙にトナー像を定着させる定着装置であって、
前記第一ローラーと前記第二ローラーを、それぞれ異なる駆動条件で回転させる駆動制御部を備え、
前記駆動制御部は、少なくとも前記第一ローラーと前記第二ローラーが互いに圧接された状態で、一定の周速で前記第一ローラーを回転させ、前記第一ローラーが回転停止した場合には前記第二ローラーも回転停止する大きさの一定のトルクで前記第二ローラーを回転させることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
駆動力Fpで回転する前記第一ローラーと、前記第一ローラーの回転に応じて従動回転する前記第二ローラーの間に、その全面にトナーが付着されてなるトナー層を有する用紙が通紙される際に、前記第一ローラーが前記用紙と前記トナー層を介して前記第二ローラー側に伝達できる最大の力をFtとした場合、Fp>Fu>Fp−Ftの関係を満たす補助駆動力Fuを付加する一定のトルクで前記第二ローラーは前記駆動制御部によって回転されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第一ローラーと前記第二ローラーの回転駆動に関し、(前記第一ローラーを回転させるための駆動電力)>(前記第二ローラーを回転させるための駆動電力)>(前記第一ローラーを回転させるための駆動電力)−(紙シワが発生してしまう前記第一ローラーの駆動電力の下限値)の関係を満たす駆動条件で、前記駆動制御部は前記第一ローラーと前記第二ローラーを回転させることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第一ローラーと前記第二ローラーの回転駆動に関し、前記第一ローラーと前記第二ローラーとがそれぞれ受け持つトルク配分を調整するトルク配分調整制御部を備え、
前記駆動制御部は、前記トルク配分調整制御部により調整されたトルク配分に応じたトルクで前記第二ローラーを回転させることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記トルク配分調整制御部は、前記第一ローラーのみを回転駆動させるときの前記第二ローラーのトルクの配分を0%とし、そこから前記第二ローラーのトルクの配分を増分していき、紙シワが発生しなくなる配分を前記トルク配分として調整することを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第一ローラーと前記第二ローラーはそれぞれ周面に弾性層を備え、前記第一ローラーの弾性層よりも前記第二ローラーの弾性層の方が厚く形成されており、前記用紙はトナー像が形成された面を前記第二ローラー側に向けて通紙されることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記第二ローラーを加熱するための加熱ローラーと、前記第二ローラーと前記加熱ローラーに掛架された無端状のベルト部材と、を備え、前記用紙は前記ベルト部材を介して前記第一ローラーと前記第二ローラーの間を通紙されることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記第一ローラーと前記第二ローラーの回転駆動に関し、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を補正するトルク補正制御部を備え、
前記トルク補正制御部は、予め所定の記憶手段に記憶されているトナー溶融データとローラー駆動負荷データの少なくとも一方に基づき、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を補正し、
前記駆動制御部は、前記トルク補正制御部により補正されたトルクで前記第二ローラーを回転させることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記トナー溶融データは、前記第二ローラーの温調温度と周速の少なくとも一方を含むデータであることを特徴とする請求項8に記載の定着装置。
【請求項10】
前記ローラー駆動負荷データは、当該定着装置の駆動積算時間に関するデータであることを特徴とする請求項8又は9に記載の定着装置。
【請求項11】
前記第一ローラーと前記第二ローラーの回転駆動に関し、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を補正するトルク補正制御部と、
前記第一ローラーまたは前記第二ローラーの回転駆動に関するローラー駆動負荷データを検出する負荷データ検出部と、を備え、
前記トルク補正制御部は、前記負荷データ検出部により検出されたローラー駆動負荷データに基づき、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を補正し、
前記駆動制御部は、前記トルク補正制御部により補正されたトルクで前記第二ローラーを回転させることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項12】
前記負荷データ検出部は、前記ローラー駆動負荷データとして、前記第一ローラーを回転させるための駆動電力を検出することを特徴とする請求項11に記載の定着装置。
【請求項13】
前記駆動制御部は、前記第一ローラーと前記第二ローラーが互いに圧接された状態と、前記第一ローラーと前記第二ローラーが離間した状態とに応じて、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を切り替えて、前記第二ローラーを回転させることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項14】
前記駆動制御部は、前記第一ローラーと前記第二ローラーが互いに圧接された状態と、前記第一ローラーと前記第二ローラーが離間した状態と、前記第一ローラーと前記第二ローラーが接離する動作中とに応じて、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を切り替えて、前記第二ローラーを回転させることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項15】
前記第一ローラーと前記第二ローラーが互いに圧接された状態において前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値は、前記第一ローラーと前記第二ローラーが離間した状態において前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値よりも大きいことを特徴とする請求項13又は14に記載の定着装置。
【請求項16】
前記駆動制御部は、前記第一ローラーと前記第二ローラーが接離する動作中、前記第一ローラーが回転する周速と略同じ周速で前記第二ローラーを回転させるように、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を切り替えて、前記第二ローラーを回転させることを特徴とする請求項14又は15に記載の定着装置。
【請求項17】
前記駆動制御部は、前記第一ローラーと前記第二ローラーが接離する動作中および前記第一ローラーと前記第二ローラーが離間した状態とにおいて、前記第一ローラーが回転する周速と略同じ周速で前記第二ローラーを回転させるように、前記第二ローラーを回転駆動するトルクの値を切り替えて、前記第二ローラーを回転させることを特徴とする請求項14又は15に記載の定着装置。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか一項に記載の定着装置と、前記用紙に前記トナー像を形成するための画像形成部と、を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−105112(P2013−105112A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250276(P2011−250276)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】