説明

定着装置用発熱ベルトと画像形成装置

【課題】発熱ベルトの機械的強度が高く、かつ、金属フィラーなみの低抵抗化を達成することで、ウォーミングアップタイムが短く、熱効率がよいので省エネルギーでもある発熱定着ベルトと定着装置を提供する。
【解決手段】粉体トナーを用いて形成されたトナー像を画像支持体に転写後加熱定着する、導電性材料を含有する定着装置用発熱ベルトにおいて、該導電性材料として黒鉛粉砕物を耐熱性樹脂に含有させたことを特徴とする定着装置用発熱ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置用発熱ベルトとそれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やレーザービームプリンター等の画像形成装置では、トナー現像後、普通紙等の画像支持体上に転写された未定着トナー像を、熱ローラ方式で接触加熱定着する方法が多く用いられてきた。
【0003】
しかし、熱ローラ方式は定着可能な温度まで熱するのに時間がかかり、かつ多量の熱エネルギーを要する。電源投入からコピースタートまでの時間(ウォーミングアップタイム)短縮と、省エネルギーの観点から、近年は熱フィルム定着方式が主流になってきている。
【0004】
この熱フィルム定着方式の定着装置(定着器)では、ポリイミド等の耐熱性フィルムの外面にフッ素樹脂等の離型性層が積層された、シームレスの定着ベルトが用いられている。
【0005】
ところで、このような熱フィルム定着方式の定着装置では、例えばセラミックヒーターを介してフィルムが加熱され、そのフィルム表面でトナー像が定着されるため、フィルムの熱伝導性が重要なポイントとなる。しかし、定着ベルトフィルムを薄膜化して熱伝導性を改善しようとすると機械的強度が低下し、高速で回動させることが難しくなり高速で高画質画像を形成するには問題が生じ、かつ、セラミックヒーター等が破損しやすいという問題も出てくる。
【0006】
このような問題を解決するために、近年、定着ベルトそのものに発熱体を設け、この発熱体に給電することにより定着ベルトを直接加熱し、トナー像を定着させる方式が提案されている。この方式の画像形成装置は、ウォーミングアップタイムが短く、消費電力もより小さく、熱定着装置として、省エネルギー化と高速化などの面から優れている。
【0007】
これらの技術としては、例えば発熱体は、導電性セラミック、導電性カーボン、金属粉体等の導電性材料と、絶縁性セラミックや耐熱性樹脂等の絶縁性材料から構成されるもの(特許文献1)、ポリイミド樹脂にカーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子を分散した発熱層と絶縁層と離型層を有した発熱ベルト(特許文献2)、正温度特性を有する発熱ベルトを用いた定着装置であり、発熱層は導電性酸化物で樹脂と混合も可能(特許文献3)、等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−281123号公報
【特許文献2】特開2007−272223号公報
【特許文献3】特開2006−350241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発熱ベルトによる定着装置に関する技術開発は上記の如く盛んに行われているが、発熱ベルトの機械的強度が高く、発熱ベルトとしての特長であるウォーミングアップタイムが短く、熱効率がよいので省エネルギーでもある発熱ベルトと、それを用いた定着装置はいまだに開発されていないのが実態である。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものである。
【0011】
即ち、本発明の目的は、発熱ベルトの機械的強度が高く、かつ、金属フィラーなみの低抵抗化を達成することで、ウォーミングアップタイムが短く、熱効率がよいので省エネルギーでもある発熱定着ベルトとそれを用いた画像形成装置を提供するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者は、黒鉛を使用した場合の低抵抗化効果に注目し、鋭意検討した結果によると、ある特定条件下で粉砕した黒鉛を用いると、金属フィラーなみの低抵抗化が達成できた。これは、従来導電材と比べ途切れが無く、かつ密に導電路が形成されるため低抵抗化したものと推定される。これにより、発熱ベルトに従来より少量の導電化材を用いても、加熱に必要な電力供給を可能にするものである。従って、発熱ベルトを構成する樹脂の量を相対的に高くでき、発熱ベルトの機械的強度を上げることが出来る。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ねることにより成されたものである。
【0013】
即ち、本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成できることがわかった。
【0014】
(1)
粉体トナーを用いて形成されたトナー像を画像支持体に転写後加熱定着する、導電性材料を含有する定着装置用発熱ベルトにおいて、該導電性材料として黒鉛粉砕物を耐熱性樹脂に含有させたことを特徴とする定着装置用発熱ベルト。
【0015】
(2)
前記黒鉛粉砕物を製造するにあたり、ジェットミル又はボールミルの少なくともいずれかを用いたことを特徴とする(1)記載の定着装置用発熱ベルト。
【0016】
(3)
平均体積粒径が0.5〜50μmである黒鉛粉砕物を用いたことを特徴とする(1)又は(2)記載の定着装置用発熱ベルト。
【0017】
(4)
前記耐熱性樹脂がポリイミド樹脂を主成分とすることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載の定着装置用発熱ベルト。
【0018】
(5)
電子写真感光体を一様帯電後、像露光手段、トナー現像手段を用いて形成したトナー画像を、画像支持体上に転写した後、加熱定着手段により定着する画像形成装置において、該加熱定着手段に(1)〜(4)のいずれか1項記載の定着装置用発熱ベルトを用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、発熱ベルトの機械的強度が高く、かつ、金属フィラーなみの低抵抗化を達成することができ、ウォーミングアップタイムが短く、熱効率がよいので省エネルギーでもある発熱定着ベルトとそれを用いた画像形成装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の代表的な定着装置用発熱ベルトの構成を示す構成断面図。
【図2】本発明の定着装置用発熱ベルトを組み込んだ定着装置の構成概念図。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す断面構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の構成、用いられる化合物や画像形成装置等につきさらに説明する。
【0022】
発熱ベルトの加熱部分を作る従来技術としては、大きく分けて2つの方法がある。第1の方法は、絶縁体シートに導電性ヒータを貼合せ複合化することにより発熱ベルトを造る方法であり、第2の方法は絶縁体材料に導電性材料を分散して発熱ベルトを造る方法である。これらには、第1の方法は製造時の均一な張り合わせが難しい等の理由で、均一な発熱が得にくく、定着ムラが発生するという問題があり、第2の方法は低抵抗化が難しくヒータに高電圧をかけなければならないという問題点がある。第2の方法は低抵抗化の解決方法が見いだせれば、第1の方法より製造はし易いとも考えられ、先に記載の通り導電性材料としてカーボンと金属を併用する従来技術もある。しかし、2種類の導電性材料の組み合わせは分散ムラを生じやすく、そのため局部的な抵抗ムラが起こるという問題があった。
【0023】
本発明では低抵抗の1種類の導電性材料を用いることで、低抵抗で均一な発熱ベルトを実現した。
【0024】
〔本発明の定着装置用発熱ベルトの構成〕
図1は、本発明の代表的な定着装置用発熱ベルトの構成を示す構成断面図である。
【0025】
定着装置用発熱ベルト10は、発熱ベルトの支持体1はポリイミド等の耐熱性樹脂、ステンレス、鉄、アルミニウム等の薄い金属板等からなる。その上に端部に給電端子3a、3bを設けた低抵抗発熱層3を塗設し、絶縁樹脂層4を介して弾性体層5と更に表面層として離型層6が設けられている。しかし、これは代表的な層構成を示したものであり、本発明において、層構成については特に限定はなく、導電性材料として黒鉛粉砕物を耐熱性樹脂に含有させた低抵抗発熱層3を有する発熱ベルトであれば、どのような構成を有するものであってもよい。
【0026】
その製造方法についても、現在公知の方法をそのまま用いればよい。
【0027】
導電性材料として黒鉛粉砕物を耐熱性樹脂に含有させた低抵抗発熱層の体積抵抗率は、5×10−3Ω・cm未満が好ましい。
【0028】
次に、図2に本発明の定着装置用発熱ベルトを組み込んだ定着装置の構成概念図を示す。定着装置用発熱ベルト10を押圧部材35により、対向する押圧ローラ31に押し当てる構成を有する。なお、Nは押圧部材35により押しつけられた発熱ベルト10と押圧ローラ31によるニップ部であり、32は定着装置用発熱ベルト10のガイド部材である。
【0029】
いうまでもなく未定着トナー像を乗せた画像支持体Pがこのニップ間を通り搬送されることにより、トナー像は画像支持体P上に定着される。
【0030】
〔黒鉛粉砕物〕
黒鉛とは、石墨、グラファイトともいわれる炭素の同素体の一つで、六角形に並び網目状の面構造をした炭素原子が、層状に集まった結晶体のことである。
【0031】
金属光沢のある黒色不透明の六角板状結晶が代表的なものであるが、天然に産出するものは、石炭が地殻内で変質し炭化の度が進んだものもあり、本発明では前者の方が望ましい。工業的には無定形炭素を原料として多量に製造されていて、電気をよく伝え、融点が高く、化学的に安定している物質である。
【0032】
本発明においては黒鉛を粉砕して導電性材料とするが、粉砕にはジェットミルもしくは乾式ボールミル、湿式ボールミルのいずれかの方法を用いて粉砕するのがよく、特にジェットミルと乾式ボールミルは不活性ガス雰囲気で粉砕するのが好ましい。
【0033】
黒鉛粉砕物の平均体積粒径は0.5〜50μmの範囲であるのが特に好ましく、粒径分布が揃っているものがよい。粉砕しながら時々その状況をみて粒径を測定しながら粉砕すれば、この範囲のものは比較的容易に得ることができる。
【0034】
平均体積粒径が50μmを超えるものは、発熱ベルトの引張り強度が弱くなる。平均体積粒径0.5μm未満であると、粒子が凝集し易くなり、その結果作業性が悪くなる。また凝集体の影響で発熱ベルトの引張り強度が弱くなる。
【0035】
粒度分布の測定方法については市販されている粒度分布計ならばなんでも良い。例えばレーザー光の散乱を利用した粒度分布計、沈降法による粒度分布計を利用できる。粒度分布の測定はサンプルの調整方法にも影響を受ける場合がある。粒度分布の測定結果が妥当かどうかは、電子顕微鏡で観察された粒度分布と比較すると良い。以下にその確認用として電子顕微鏡観察で粒度分布を求める方法を説明する。
【0036】
電子顕微鏡観察方法として透過型電子顕微鏡(SEM)を用いる。観察の倍率は2000倍もしくは5000倍の像を用いる。観察された像を20cm×20cmの大きさで印刷する。印刷された像の上に1cm間隔で直線を引く。画像に引かれた直線とカーボンの粒子との交点の距離をすべて計測する。好ましくは50個以上200個未満の粒子の幅を計測する。計測された粒子の幅の分布から平均粒径を求める。
【0037】
このようにして求められた平均粒径と、粒度分布計で求められた平均粒径と比較して誤差が±20%以内であれば粒度分布計で本発明のカーボン粒子の分布は計測されていると判断できる。
【0038】
〔耐熱性樹脂〕
一般的には短期的耐熱性が200℃以上、長期的耐熱性が150℃以上のものを耐熱性樹脂という。耐熱性樹脂の代表的なものとしては下記のものがあるが、本発明において特に好ましい耐熱性樹脂は、ポリイミド樹脂である。
【0039】
ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等。
【0040】
これらは、黒鉛粉砕物と混合し発熱ベルトの低抵抗発熱層として用いられるが、前記したそのほかの層の構成成分樹脂としても用いられる。
【0041】
本発明において、「主成分とする」とは樹脂全体の50質量%以上が当該樹脂である場合をいう。
【0042】
体積抵抗率と引っ張り強度の両立する範囲として、黒鉛粉砕物の含有率は、耐熱樹脂と黒鉛粉砕物の中で45〜50質量%が好ましい。
【0043】
〔画像形成装置〕
本発明の画像形成装置は、定着装置以外については、現在公知の構造のものをそのまま用いることが出来る。
【0044】
下記にその代表的なものを挙げて説明する。
【0045】
図3において、1Y、1M、1C、1Kは感光体、4Y、4M、4C、4Kは現像装置、5Y、5M、5C、5Kは1次転写手段としての1次転写ロール、5Aは2次転写手段としての2次転写ロール、6Y、6M、6C、6Kはクリーニング装置、7は中間転写体ユニット、24は熱ロール式定着装置、70は中間転写体を示す。
【0046】
この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体ユニット7と、画像支持体Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としての熱ロール式定着装置24とを有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0047】
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、ドラム状の感光体1Y、該感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、1次転写手段としての1次転写ロール5Y、クリーニング手段6Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、ドラム状の感光体1M、該感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、1次転写手段としての1次転写ロール5M、クリーニング手段6Mを有する。
【0048】
また、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、ドラム状の感光体1C、該感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、1次転写手段としての1次転写ロール5C、クリーニング手段6Cを有する。さらに、他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部10Kは、ドラム状の感光体1K、該感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、1次転写手段としての1次転写ロール5K、クリーニング手段6Kを有する。
【0049】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間転写エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0050】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材として用紙等の画像支持体Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ロール22A、22B、22C、22D、レジストロール23を経て、2次転写手段としての2次転写ロール5Aに搬送され、画像支持体P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された画像支持体Pは、熱ロール式定着装置24により定着処理され、排紙ロール25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0051】
一方、2次転写ロール5Aにより画像支持体Pにカラー画像を転写した後、画像支持体Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
【0052】
画像形成処理中、1次転写ロール5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の1次転写ロール5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
【0053】
2次転写ロール5Aは、ここを画像支持体Pが通過して2次転写が行われるときにのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
【0054】
この様に、感光体1Y、1M、1C、1K上に帯電、露光、現像によりトナー像を形成し、無端ベルト状中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して画像支持体Pに転写し、定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。トナー像を画像支持体Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、クリーニング装置6Aで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
【0055】
本発明に係るトナーを非磁性一成分系現像剤として用いた場合の画像形成装置としては、前記二成分現像装置を非磁性一成分現像装置に交換すればよい。
【0056】
又、感光体については、特に限定はなく無機系の感光体、有機系の感光体共に用いることが出来る。
【0057】
いうまでもなく、図3には、図2の説明にて前述した、本発明の発熱ベルト10と押圧ローラからなるベルト定着方式の定着装置24が使用される。
【0058】
〔画像支持体〕
本発明に係るトナーを用いて画像を形成することが可能な画像支持体(記録材、記録紙、記録用紙等ともいう)は、一般に用いられているものでよく、例えば、上述した画像形成装置等による公知の画像形成方法により形成したトナー画像を保持するものであれば特に限定されるものではない。本発明で使用可能な画像支持体として用いられるものには、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、あるいは、コート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等が挙げられる。
【実施例】
【0059】
次に、本発明の代表的な実施態様とその効果を記載して、本発明につきさらに説明する。しかし、本発明の構成はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
東洋炭素社製黒鉛板(体積抵抗率9×10−4(Ω・cm))15kgを金槌で粉砕後ジルコニア製ボールミルで40分粉砕、次にセイシン企業社製ジェットミルで粉砕し10kgの粉砕黒鉛1を得た。平均粒径0.4μm、D10/D90は0.2であった。
【0060】
この粉砕黒鉛1を18gとポリイミドワニス(宇部興産社製 U−ワニスS)100g(固形分18%)を遊星型ボールミルで混合した。この混合物をドクターブレード法でガラス板上にシートを形成し、乾燥後220℃まで加熱し、1時間保持する。その後400℃まで昇温し、ポリイミド化を行う。このようにして厚み50μmの発熱層を得る。発熱層の体積抵抗率は3〜5×10−3(Ω・cm)で引張り強度は60〜70MPaであった。
【0061】
10/D90とは、粒径分布の10%粒径と90%粒径との比である。
(実施例2)
実施例1のジルコニア製ボールミルの粉砕時間を30分、その他条件は同じ条件で粉砕することで、平均粒径0.7μmの粉砕黒鉛2が得られ、実施例1と同じ製造方法により、ガラス板上に発熱層が得られる。発熱層の体積抵抗率は3〜5×10−3(Ω・cm)で引張り強度は80MPaであった。
(実施例3)
実施例1のジルコニア製ボールミルの粉砕時間を2時間、その他条件は同じ条件で粉砕することで、平均粒径20.0μmの粉砕黒鉛3が得られ、実施例1と同じ製造方法により、ガラス板上に発熱層が得られる。発熱層の体積抵抗率は3〜5×10−3(Ω・cm)で引張り強度は80MPaであった。
(実施例4)
東洋炭素社製黒鉛板(体積抵抗率9×10−4(Ω・cm))15kgを金槌で粉砕後ジルコニア製ボールミルで1.5時間粉砕し、平均粒径48.0μmの粉砕黒鉛4を得た。この粉砕黒鉛4を用い、実施例1と同じ製造方法により、ガラス板上に発熱層が得られる。発熱層の体積抵抗率は3〜5×10−3(Ω・cm)で引張り強度は80MPaであった。
(実施例5)
天然黒鉛をジェットミルにて処理し、平均粒径52.0μmの粉砕黒鉛5を得た。この粉砕黒鉛5を用い、実施例1と同じ製造方法により、ガラス板上に発熱層が得られる。発熱層の体積抵抗率は3〜5×10−3(Ω・cm)で引張り強度は50〜70MPaであった。
(実施例6)
実施例3の粉砕条件で得られる粉砕黒鉛3を16gとポリイミドワニス(宇部興産社製 U−ワニスS)110g(固形分18%)を遊星型ボールミルで混合した。この混合物をドクターブレード法でガラス板上にシートを形成し、乾燥後220℃まで加熱し、1時間保持する。その後400℃まで昇温し、ポリイミド化を行う。このようにして厚み50μmの発熱層を得る。発熱層の体積抵抗率は3〜5×10−3(Ω・cm)で引張り強度は80MPaであった。
(実施例7)
実施例3の粉砕条件で得られる粉砕黒鉛3を17gとポリイミドワニス(宇部興産社製 U−ワニスS)106g(固形分18%)を遊星型ボールミルで混合した。この混合物をドクターブレード法でガラス板上にシートを形成し、乾燥後220℃まで加熱し、1時間保持する。その後400℃まで昇温し、ポリイミド化を行う。このようにして厚み50μmの発熱層を得る。発熱層の体積抵抗率は3〜5×10−3(Ω・cm)で引張り強度は80MPaであった。
(比較例1)
実施例1の粉砕黒鉛1の代わりにフェノール樹脂を1000℃で処理し、炭化粉砕品として用いた。平均粒径は80.0μmであった。ガラス板上に得られた発熱層の体積抵抗率は1〜4×10(Ω・cm)で引張り強度は40MPaであった。
(比較例2)
実施例1の粉砕黒鉛1の代わりにSbドープSnO(石原産業製)を用いた。平均粒径は0.5μmであった。ガラス板上に得られた発熱層の体積抵抗率は1〜3×10(Ω・cm)で引張り強度は30MPaであった。
(比較例3)
実施例1の粉砕黒鉛1の代わりにアセチレンブラックを用いた。平均粒径0.2μmであった。ガラス板上に得られた発熱層の体積抵抗率は1〜5×10(Ω・cm)で引張り強度は60MPaであった。
【0062】
(評価方法)
・体積抵抗率
三菱化学アナリテック社製低抵抗率計ロレスターGPを用いる。
【0063】
プローブは直列4探針ASPを用い、1サンプルにつき5点測定、その平均値を求める。JIS−K7194準拠
・引張り強度
インストロン社製の万能材料試験機を用いる。
【0064】
試験片として3号形試験片(幅10mm、標線間距離50mm)を用い、引張り速度5mm/min、チャック間距離115mmの条件で試験。1サンプルにつき3回測定し、その平均値を求める(JIS_K7127に準拠)。
【0065】
・実写耐久性テスト
図1と同様な構成を有するデジタル電子写真複写機:Bbizhub PROC6501(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製を用い、定着装置を図2に示す構成のものに入れ替えた。
【0066】
熱ベルトは、ポリイミド樹脂を支持体とし、実施例1〜7並びに比較例1〜3に示す構成を有する発熱層を各々有し、表面にフッ素樹脂の離型層を形成した定着装置用発熱ベルトを作製し耐久性テストを行った。
【0067】
50万枚実写を2万枚の連続実写(A4・ブラック画像)毎に、12時間の休止を入れながら行った。
【0068】
実写後の熱ベルトの状態を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
【0069】
◎:熱ベルトの状態は殆ど変化していない
○:よく見るとベルト表面によこ又は斜めの筋があるが、定着性能には問題なし
△:ベルト表面によこ又は斜めの筋がありベルトの幅方向の端部まで達している
×:テストを最後まで行う前に熱ベルト表面に凹凸ができ、定着性能も劣化するので発熱層が均一に発熱しない様になっていると思われる
【0070】
【表1】

【0071】
上記、表1の結果から、本発明内の実施例1〜7はいずれも良い性能をしめすが、本発明外の比較例1〜3は、少なくともいずれかの特性に問題があることがわかる。
【符号の説明】
【0072】
1 ベルトの支持体
3 低抵抗発熱層
3a、3b 給電端子
4 絶縁樹脂層
6 離型層
10 定着装置用発熱ベルト
31 押圧ローラ
32 ガイド部材
35 押圧部材
P 画像支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体トナーを用いて形成されたトナー像を画像支持体に転写後加熱定着する、導電性材料を含有する定着装置用発熱ベルトにおいて、該導電性材料として黒鉛粉砕物を耐熱性樹脂に含有させたことを特徴とする定着装置用発熱ベルト。
【請求項2】
前記黒鉛粉砕物を製造するにあたり、ジェットミル又はボールミルの少なくともいずれかを用いたことを特徴とする請求項1記載の定着装置用発熱ベルト。
【請求項3】
平均体積粒径が0.5〜50μmである黒鉛粉砕物を用いたことを特徴とする請求項1又は2記載の定着装置用発熱ベルト。
【請求項4】
前記耐熱性樹脂がポリイミド樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の定着装置用発熱ベルト。
【請求項5】
電子写真感光体を一様帯電後、像露光手段、トナー現像手段を用いて形成したトナー画像を、画像支持体上に転写した後、加熱定着手段により定着する画像形成装置において、該加熱定着手段に請求項1〜4のいずれか1項記載の定着装置用発熱ベルトを用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−232424(P2011−232424A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100687(P2010−100687)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】