説明

定着装置用発熱ベルトと画像形成装置

【課題】発熱ベルトの低抵抗化が有効に出来、十分な性能を長期にわたって維持することができ、かつ、ウォーミングアップタイムが短く、熱効率がよいので省エネルギーでもある発熱定着ベルトとそれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】粉体トナーを用いて形成されたトナー像を画像支持体に転写後、加熱定着する定着装置用発熱ベルトにおいて、導電性材料として体積固有抵抗10−6Ω・cm以上、10−2Ω・cm未満の薄片状黒鉛粉砕物を、耐熱性樹脂に含有させたことを特徴とする定着装置用発熱ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置用発熱ベルトとそれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やレーザービームプリンター等の画像形成装置では、トナー現像後、普通紙等の画像支持体上に転写された未定着トナー像を、熱ローラ方式で接触加熱定着する方法が多く用いられてきた。
【0003】
しかし、熱ローラ方式は定着可能な温度ませで熱するのに時間がかかり、かつ多量の熱エネルギーを要する。電源投入からコピースタートまでの時間(ウォーミングアップタイム)短縮と、省エネルギーの観点から、近年は熱フィルム定着方式が主流になってきている。
【0004】
この熱フィルム定着方式の定着装置(定着器)では、ポリイミド等の耐熱性フィルムの外面にフッ素樹脂等の離型性層が積層された、シームレスの定着ベルトが用いられている。
【0005】
ところで、このような熱フィルム定着方式の定着装置では、例えばセラミックヒーターを介してフィルムが加熱され、そのフィルム表面でトナー像が定着されるため、フィルムの熱伝導性が重要なポイントとなる。しかし、定着ベルトフィルムを薄膜化して熱伝導性を改善しようとすると機械的強度が低下し、高速で回動させることが難しくなり高速で高画質画像を形成するには問題が生じ、かつ、セラミックヒーター等が破損しやすいという問題も出てくる。
【0006】
このような問題を解決するために、近年、定着ベルトそのものに発熱体を設け、この発熱体に給電することにより定着ベルトを直接加熱し、トナー像を定着させる方式が提案されている。この方式の画像形成装置は、ウォーミングアップタイムが短く、消費電力もより小さく、熱定着装置として、省エネルギー化と高速化などの面から優れている。
【0007】
これらの技術としては、例えば発熱体は、導電性セラミック、導電性カーボン、金属粉体等の導電性材料と、絶縁性セラミックや耐熱性樹脂等の絶縁性材料から構成されるもの(特許文献1)、ポリイミド樹脂にカーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子を分散した発熱層と絶縁層と離型層を有した発熱ベルト(特許文献2)、或いは正温度特性を有する発熱ベルトを用いた定着装置であり、発熱層は導電性酸化物であり、該酸化物と樹脂と混合して形成することも可能といった技術(特許文献3)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−281123号公報
【特許文献2】特開2007−272223号公報
【特許文献3】特開2006−350241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発熱ベルトによる定着装置に関する技術開発は上記の如く盛んに行われているが、発熱ベルトの低抵抗化が有効にできる銅、ニッケル、銀などの金属系フィラーは、酸化による抵抗値増大、安全性、価格が高い等の何らかの問題を抱えていて、発熱ベルトとして十分な性能を長期にわたって維持することができない。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものである。
【0011】
即ち、本発明の目的は、発熱ベルトの低抵抗化が有効に出来、高い性能を長期にわたって維持することができ、かつ、ウォーミングアップタイムが短く、熱効率がよいので省エネルギーでもある発熱定着ベルトと、それを用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者は、安価で物質としても安定である黒鉛を使用した場合の低抵抗化効果に注目し、その実用化の可能性を鋭意検討した。無定形炭素を黒鉛化した人造黒鉛は、黒鉛化の過程で数千度に焼成されており、定着ベルトで使用する温度域100〜200℃では極めて安定である。また、黒鉛は炭素以外は含まないので安全面でも課題は見当たらない。コストに関する課題もない。しかし、金属系フィラーほど抵抗が下がらないという課題が残っていた。
【0013】
しかしながら、ある特定要件を満たした薄片状黒鉛粉砕物を用いると、金属フィラーなみの低抵抗化が達成できることがわかった。これは、従来の導電材と比べ途切れが無く、かつ密に導電路が形成されるため低抵抗化したものと推定される。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ねることにより成されたものである。
【0014】
即ち、本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成できることがわかった。
【0015】
(1)
粉体トナーを用いて形成されたトナー像を画像支持体に転写後、加熱定着する定着装置用発熱ベルトにおいて、導電性材料として体積固有抵抗10−6Ω・cm以上、10−2Ω・cm未満の薄片状黒鉛粉砕物を、耐熱性樹脂に含有させたことを特徴とする定着装置用発熱ベルト。
【0016】
(2)
前記耐熱性樹脂がポリイミド樹脂を主成分とすることを特徴とする(1)記載の定着装置用発熱ベルト。
【0017】
(3)
前記薄片状黒鉛粉砕物が、厚さ0.05μm以上、1.0μm以下で、平均体積粒径が5.0μm以上、50μm以下であり、且つ、体積分率10%の粒径(D10)と、体積分率90%の粒径(D90)との比(D10/D90)が0.10以上、0.30以下であることを特徴とする(1)又は(2)記載の定着装置用発熱ベルト。
【0018】
(4)
前記薄片状黒鉛粉砕物に対し、炭素繊維を5.0質量%以上、50質量%以下混合されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載の定着装置用発熱ベルト。
【0019】
(5)
前記薄片状黒鉛粉砕物に対しカーボンナノファイバーを、5.0質量%以上、50質量%以下混合されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載の定着装置用発熱ベルト。
【0020】
(6)
電子写真感光体を一様帯電後、像露光手段、トナー現像手段を用いて形成したトナー画像を、画像支持体上に転写した後、加熱定着手段により定着する画像形成装置において、該加熱定着手段に(1)〜(5)のいずれか1項記載の定着装置用発熱ベルトを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、発熱ベルトの低抵抗化が有効に出来、高い性能を長期にわたって維持することができ、かつ、ウォーミングアップタイムが短く、熱効率がよいので省エネルギーでもある発熱定着ベルトとそれを用いた画像形成装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の代表的な発熱ベルトの構成を示す構成断面図。
【図2】本発明の発熱ベルトを組み込んだ定着装置の構成概念図。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す断面構成図。
【図4】体積固有抵抗の測定装置の構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の構成、用いられる化合物や画像形成装置等につきさらに説明する。
【0024】
従来の定着装置において、ポリイミド樹脂にカーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粒子が分散された定着装置用発熱ベルトや、導電性酸化物を含有した発熱ベルトが提案されている。しかし、発熱ベルトの発熱層を狙いの電気抵抗率に調整するため多量の化合物を添加するため、発熱層の強度が低下し、耐久性が悪化するという問題があった。
【0025】
本発明の特徴は、導電性材料として金属に近い電気比抵抗を持ち、銅などに比べ酸化され難く、また銀や金に比べ安価で広い範囲で使用されている黒鉛の粉砕物を導電性材料として用い発熱層を構成している点であり、狙いの電気抵抗、昇温特性を満足すると共に耐久性を向上させた発熱ベルトを提供することが出来た。
【0026】
本発明では、基本的には低抵抗の1種類の導電性材料を用いることで、低抵抗で均一な発熱ベルトを実現した。しかしながら、カーボンナノファイバー又は炭素繊維を、5.0質量%以上、50質量%以下混合さて使用することも出来、これらの態様は本発明の好ましい実施例といえる。
【0027】
〔本発明の定着装置用発熱ベルトの構成〕
図1は、本発明の代表的な発熱ベルトの構成を示す構成断面図である。
【0028】
発熱ベルト10は、ベルトの支持体1はポリイミド等の耐熱性樹脂、ステンレス、鉄、アルミニウム等の薄い金属板等からなる。その上に端部に給電端子3a、3bを設けた発熱層3を塗設し、絶縁樹脂層4を介して弾性体層5と更に表面層として離型層6が設けられている。しかし、これは代表的な層構成を示したものであり、本発明において、層構成については特に限定はなく、導電性材料として黒鉛粉砕物を耐熱性樹脂に含有させた発熱層3を有する発熱ベルトであれば、どのような構成を有するものであってもよい。
【0029】
その製造方法についても、現在公知の方法をそのまま用いればよい。
【0030】
次に、図2に本発明の発熱ベルトを組み込んだ定着装置の構成概念図を示す。発熱ベルト10を押圧部材35により、対向する押圧ローラ31に押し当てる構成を有する。なお、Nは押圧部材35により押しつけられた発熱ベルト10と押圧ローラ31によるニップ部であり、32は発熱ベルト10のガイド部材である。
【0031】
いうまでもなく未定着トナー像を乗せた画像支持体Pがこのニップ間を通り搬送されることにより、トナー像は画像支持体P上に定着される。
【0032】
〔薄片状黒鉛粉砕物〕
黒鉛とは、石墨、グラファイトともいわれる炭素の同素体の一つで、六角形に並び網目状の面構造をした炭素原子が、層状に集まった結晶体のことである。
【0033】
金属光沢のある黒色不透明の六角板状結晶が代表的なものであるが、天然に産出するものは、石炭が地殻内で変質し炭化の度が進んだものもあり、本発明では前者の方が望ましい。工業的には無定形炭素を原料として多量に製造されていて、電気をよく伝え、融点が高く、化学的に安定している物質である。
【0034】
本発明においては黒鉛を粉砕して導電性材料とするが、本明細書の記載においては問題を生じない場合には薄片状と特に断らず黒鉛粉砕物という。黒鉛粉砕物への粉砕にはジェットミル、ボールミルのいずれかの方法を用いて粉砕するのがよく、特に不活性ガス雰囲気で粉砕するのが好ましい。
【0035】
黒鉛粉砕物の体積固有抵抗は、10−6Ω・cm以下、10−2Ω・cm未満である。体積固有抵抗が10−6Ω・cm以上であると抵抗が下がり過ぎ、所定の発熱性能が得られない。体積固有抵抗が10−2Ω・cm以上のものは、添加された発熱ベルトの抵抗が下がらず発熱が不十分となる。
【0036】
体積固有抵抗(Ω・m)とは、RA/L(R:電気抵抗(Ω)、L:導体の長さ(m)、A:導体の断面積(m))で表され、その測定には、図4の装置を用い、リング状のテフロン(登録商標)容器101内に黒鉛粉砕物100を1g入れ、無加圧状態でテーブルバイブレーターに10分のせて振動させる。その後、リング状のテフロン(登録商標)容器101のリング内径よりやや小さい径の大きさのステンレス棒102に2940N(300kgw)の荷重をかけてその状態で電圧(10V)を懸けて流れる電流値を測ることにより体積固有抵抗を測定する。
【0037】
尚、図4中の数字は長さ(mm)を示している。
【0038】
体積固有抵抗は、前記した黒鉛の作製方法等に基づく性質、粉砕工程中の雰囲気、粉砕方法による粒子形状等により変化するから、これら原料の選択や粉砕工程条件を変えることにより、体積固有抵抗の値を制御し本発明に用いることができる範囲の黒鉛粉砕物を得ることができる。
【0039】
粉砕後の粒子形状については、他の条件が同じなら、形状が球状のものは体積固有抵抗が高く、凹凸の大きいものは低くなる。
【0040】
黒鉛粉砕物の平均体積粒径は5.0〜50μmの範囲であるのが特に好ましく、粒径分布が揃っているものがよい。粉砕しながら時々その状況をみて粒径を測定しながら粉砕すれば、この範囲のものは比較的容易に得ることができる。
【0041】
平均体積粒径が50μmを超えるものは、発熱ベルト内の発熱状態が不均一になりやすく、定着オフセットが発生することがある。
【0042】
平均体積粒径5.0μm未満であると導通路が形成されにくく、抵抗率が下りにくいことがある。
【0043】
平均体積粒径(D50)の測定方法は、「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」にデータ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター製)を接続した装置を用いて測定、算出する。
【0044】
測定手順としては、黒鉛0.02gを、界面活性剤溶液20ml(黒鉛の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、黒鉛分散液を作製する。この黒鉛分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター製)の入ったビーカーに、測定器表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入する。この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値が得られる。測定機において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を100μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出する。体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準メディアン径(D50)とする。
【0045】
又、体積積算分率が小さい方から10%のところの粒子径をD10、90%のところの粒子径をD90と定義する。そして双方の比(D10/D90)が0.10以上、0.30以下である比較的均一な粒径のものが好ましい。
【0046】
〔耐熱性樹脂〕
一般的には短期的耐熱性が200℃以上、長期的耐熱性が150℃以上のものを耐熱性樹脂という。耐熱性樹脂の代表的なものとしては下記のものがあるがある。
【0047】
ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等。
【0048】
中でも本発明において特に好ましい耐熱性樹脂は、ポリイミド樹脂である。
【0049】
これらは、黒鉛粉砕物と混合し発熱ベルトの低抵抗発熱層として用いられるが、前記したそのほかの層の構成成分樹脂としても用いられる。
【0050】
なお、本発明において、「主成分とする」とは樹脂全体の50質量%以上が当該樹脂である場合をいう。
【0051】
〔画像形成装置〕
本発明の画像形成装置は、定着装置以外については、現在公知の構造のものをそのまま用いることが出来る。
【0052】
下記にその代表的なものを挙げて説明する。
【0053】
図3において、1Y、1M、1C、1Kは感光体、4Y、4M、4C、4Kは現像装置、5Y、5M、5C、5Kは1次転写手段としての1次転写ロール、5Aは2次転写手段としての2次転写ロール、6Y、6M、6C、6Kはクリーニング装置、7は中間転写体ユニット、24は熱ロール式定着装置、70は中間転写体を示す。
【0054】
この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体ユニット7と、画像支持体Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としての発熱ベルト式定着装置24とを有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0055】
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1Y、該感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、1次転写手段としての1次転写ロール5Y、クリーニング手段6Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1M、該感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、1次転写手段としての1次転写ロール5M、クリーニング手段6Mを有する。
【0056】
また、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1C、該感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、1次転写手段としての1次転写ロール5C、クリーニング手段6Cを有する。さらに、他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部10Kは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1K、該感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、1次転写手段としての1次転写ロール5K、クリーニング手段6Kを有する。
【0057】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間転写エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0058】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材として用紙等の画像支持体Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ロール22A、22B、22C、22D、レジストロール23を経て、2次転写手段としての2次転写ロール5Aに搬送され、画像支持体P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された画像支持体Pは、発熱ベルト式定着装置24により定着処理され、排紙ロール25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0059】
一方、2次転写ロール5Aにより画像支持体Pにカラー画像を転写した後、画像支持体Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
【0060】
画像形成処理中、1次転写ロール5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の1次転写ロール5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
【0061】
2次転写ロール5Aは、ここを画像支持体Pが通過して2次転写が行われるときにのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
【0062】
この様に、感光体1Y、1M、1C、1K上に帯電、露光、現像によりトナー像を形成し、無端ベルト状中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して画像支持体Pに転写し、定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。トナー像を画像支持体Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、クリーニング装置6Aで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
【0063】
本発明に係るトナーを非磁性一成分系現像剤として用いた場合の画像形成装置としては、前記二成分現像装置を非磁性一成分現像装置に交換すればよい。
【0064】
又、感光体については、特に限定はなく無機系の感光体、有機系の感光体共に用いることが出来る。
【0065】
いうまでもなく、図3には、図2の説明にて前述した、本発明の発熱ベルトと押圧ローラからなる発熱ベルト定着方式の定着装置24が使用される。
【0066】
〔画像支持体〕
本発明に係るトナーを用いて画像を形成することが可能な画像支持体(記録材、記録紙、記録用紙等ともいう)は、一般に用いられているものでよく、例えば、上述した画像形成装置等による公知の画像形成方法により形成したトナー画像を保持するものであれば特に限定されるものではない。本発明で使用可能な画像支持体として用いられるものには、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、あるいは、コート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等が挙げられる。
【実施例】
【0067】
次に、本発明の代表的な実施態様とその効果を記載して、本発明につきさらに説明する。しかし、無論本発明の構成はこれに限定されるものではない。
【0068】
〔薄片状黒鉛粉砕物の調製〕
黒鉛粉砕物は、予め粗粉砕した人造黒鉛電極を窒素ガス中或いは大気中など雰囲気を変えボールミルで1〜100時間粉砕して粒子形状等も制御し、体積固有抵抗の調整をした。比較例2以外の黒鉛粉砕物の調整は、窒素ガス中で調整し、比較例2に用いた黒鉛粉砕物は、大気下で調整した。
【0069】
〔発熱層ドープ液の調製〕
ポリアミド酸(宇部興産社製 U−ワニスS301)100gと表1の実施例1〜8、比較例1〜3に記載する各種黒鉛微粉末18gを遊星方式の混合機で十分に混合した。
【0070】
【表1】

【0071】
〔発熱ベルトの製作〕
(ベルトの支持体)
予め離型剤を塗布した外径30mm、全長345mmのステンレス管にポリアミド酸(宇部興産社製 U−ワニスS301)を膜厚500μmで塗布する。その後、150℃で3時間乾燥する。
【0072】
(発熱層の製作)
上記補強層の上に、ドープ液を膜厚500μmで塗布する。その後、150℃で3時間乾燥後、400℃で30分乾燥し、イミド化させる。
【0073】
(弾性体層の製作)
ステンレス管に装着した前記ポリイミド樹脂管状物にプライマー(信越化学社製商品名“X331565”)をはけ塗りし、常温で30分乾燥させた。
【0074】
その後、シリコーンゴム“KE1379”(信越化学製商品名)の液状ゴム及びシリコーンゴム“DY356013”(東レダウコーニングシリコーン社製商品名)2液を予め2:1の割合で混合したものをポリイミド管状物の外面に200μmの厚みでシリコーンゴムを塗布した。
【0075】
その後、150℃の温度で30分一次加硫し、さらに200℃で4時間ポスト加硫を行い、ポリイミド管状物の外層に200μmの厚みでシリコーンゴムが成形された管状物を得た。ゴム層の硬度は26度であった。
【0076】
(離型層の製作)
シリコーンゴム表面を洗浄した後、フッ素樹脂(B)として、PTFE樹脂ディスパージョン(デュポン社製商品名“30J”)を用いて、この中に回転させながら3分間浸漬し、取り出し、常温で20分間乾燥し、次いでシリコーンゴム表面のフッ素樹脂を布で拭き取った。
【0077】
その後、フッ素樹脂(A)として、PTFE樹脂とPFA樹脂を7:3の割合で混合し、固形分濃度45%、粘度:0.110Pa・sに調整したフッ素樹脂ディスパーション(デュポン社製商品名“855−510”)中にポリイミド・シリコーンゴム成形管状物を浸漬し、最終の厚さで15μmとなるようにコーティングした。室温で30分乾燥後、230℃で30分間加熱した。その後、炉内温度が270℃に設定した内径100mmの管状炉内を、約10分で通過させ、シリコーンゴム表面にコーティングされたフッ素樹脂を焼成した。ついで、冷却後、金型から管状物を分離し、目的とする発熱ベルトを得た。
【0078】
〔性能評価〕
(初期発熱)
表1の実施例1〜14及び比較例1〜3に示す発熱層を有する発熱ベルトを図2で示した構成を有する定着装置に装填して、発熱層に100Vを印加し、線速210mm/secで駆動させ、通電開始から180℃に到達する時間を測定した。180℃に到達しない場合には、通電開始から10秒後の温度を測定した。
【0079】
(耐久性)
上記熱ベルトを図3に示した画像形成装置に組み込み、A4の画像支持体50万枚を1万枚毎に5分間中断しながら通紙し、その後、初期発熱と同じように評価を行った。
【0080】
【表2】

【0081】
表2に示す評価結果を見れば明らかな如く、実施例1〜14はいずれの性能もよいが、本発明外の比較例1〜3は、少なくともいずれかの特性に問題が出ることがわかる。
【符号の説明】
【0082】
1 ベルトの支持体
3 発熱層
3a、3b 給電端子
4 絶縁樹脂層
6 離型層
10 発熱ベルト
31 押圧ローラ
32 ガイド部材
35 押圧部材
P 画像支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体トナーを用いて形成されたトナー像を画像支持体に転写後、加熱定着する定着装置用発熱ベルトにおいて、導電性材料として体積固有抵抗10−6Ω・cm以上、10−2Ω・cm未満の薄片状黒鉛粉砕物を、耐熱性樹脂に含有させたことを特徴とする定着装置用発熱ベルト。
【請求項2】
前記耐熱性樹脂がポリイミド樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1記載の定着装置用発熱ベルト。
【請求項3】
前記薄片状黒鉛粉砕物が、厚さ0.05μm以上、1.0μm以下で、平均体積粒径が5.0μm以上、50μm以下であり、且つ、体積分率10%の粒径(D10)と、体積分率90%の粒径(D90)との比(D10/D90)が0.10以上、0.30以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の定着装置用発熱ベルト。
【請求項4】
前記薄片状黒鉛粉砕物に対し炭素繊維を、5.0質量%以上、50質量%以下混合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の定着装置用発熱ベルト。
【請求項5】
前記薄片状黒鉛粉砕物に対しカーボンナノファイバーを、5.0質量%以上、50質量%以下混合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の定着装置用発熱ベルト。
【請求項6】
電子写真感光体を一様帯電後、像露光手段、トナー現像手段を用いて形成したトナー画像を、画像支持体上に転写した後、加熱定着手段により定着する画像形成装置において、該加熱定着手段に請求項1〜5のいずれか1項記載の定着装置用発熱ベルトを用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−248190(P2011−248190A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122661(P2010−122661)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】