説明

定着装置

【課題】 たとえ定着ローラの薄肉化が進行しても、当該薄肉化に対応して回り止め状態で断熱部材を定着ローラに確実に装着する。
【解決手段】 加熱源である発熱体24が内装された、軸心回りに回転可能な定着ローラ30と、周面が定着ローラ30の周面に圧接された状態で定着ローラ30の軸心と同一方向に延びるローラ軸71回りに回転可能な加圧ローラ70との間に形成されたニップ部Nに用紙Pを供給することにより当該用紙P上のトナー像に加熱による定着処理を施す定着装置20であって、定着ローラ30に同心で外嵌される環状断熱部材40には内周面から径方向に向かって突設された第1係止突起44が設けられている一方、定着ローラ30には第1係止突起44が嵌入される係止孔31が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やファクシミリ装置等の画像形成装置に適用される、用紙等の記録媒体に転写されたトナー像に対して当該記録媒体への定着処理を施す定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているような、画像形成装置に適用される定着装置が知られている。この定着装置は、感光体ドラムの周面に形成されたトナー像の転写された用紙上の当該トナー像を当該用紙に定着させるためのものであり、内部にヒータが内蔵された定着ローラと、この定着ローラに押圧される加圧ローラとを備えて構成され、これら同期回転している定着ローラと加圧ローラとのニップ部へ向けて用紙を供給することにより、定着ローラによる加熱で用紙上のトナー像に定着処理が施されるようになっている。
【0003】
かかる定着装置における定着ローラには、両端に環状の断熱部材が外嵌されているとともに、各断熱部材にベアリングが外嵌され、これらのベアリングが所定のハウジングの互いに対向した側壁にそれぞれ支持されることにより、当該定着ローラが軸心回りに回転可能にハウジングに支持されるようになっている。
【0004】
かかる定着ローラには、両端部の外周面に軸心と平行に形成されたカット部分(定着ローラ側キー面という)がそれぞれ設けられている一方、断熱部材の内周面には、前記定着ローラ側キー面に対応した平面部分(断熱部材側キー面という)が設けられ、断熱部材側キー面を定着ローラ側キー面に対応させた状態で断熱部材を定着ローラの端部に嵌め込むことにより、断熱部材が定着ローラに回り止め状態で外嵌されるようになっている。
【特許文献1】特開平10−3223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のような定着ローラ側キー面と断熱部材側キー面とからなる定着ローラと断熱部材との間に形成された回り止め構造にあっては、定着ローラの端部に切削加工を施して定着ローラ側キー面を形成させなければならず、そのために定着ローラは、切削加工に耐え得る程度の厚み寸法を備えていなくてはならない。
【0006】
ところで、近年、画像形成装置の電源を投入してから可能な限り短時間で画像形成処理を行い得るようにするために、定着ローラの加熱速度の迅速化を図るべく定着ローラの厚み寸法を可能な限り薄くすることが行われている。そして、定着ローラの厚み寸法が薄くなると、機械的強度が低下するためその端部に切削加工で定着ローラ側キー面を形成することが困難となり、これによって定着ローラの薄肉化が制限されるという不都合が生じる。
【0007】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであり、たとえ定着ローラの薄肉化が進行しても、当該薄肉化に対応して回り止め状態で断熱部材を定着ローラに装着することが可能な定着装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、加熱源が内装された、軸心回りに回転可能な定着ローラの周面に記録媒体を供給することにより当該記録媒体上のトナー像に加熱による定着処理を施す定着装置であって、前記定着ローラには、同心で外嵌される環状断熱部材が設けられ、前記環状断熱部材には、内周面から径方向に向かって突設された第1係止突起が設けられている一方、前記定着ローラには、前記第1係止突起が嵌入される係止孔が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
かかる構成によれば、記録媒体を軸心回りに回転している定着ローラの周面に供給することにより、当該記録媒体は、内部に熱源を備えた定着ローラからの熱を得てトナー像に対する定着処理が施されつつ搬送され、定着ローラから排出されることにより定着処理が完了する。
【0010】
このような定着装置において、定着ローラは、同心で外嵌される環状断熱部材を有し、この環状断熱部材には内周面から径方向に向かって突設された第1係止突起が設けられている一方、定着ローラには第1係止突起が嵌入される係止孔が設けられているため、例えば環状断熱部材を弾性変形させながら(具体的には例えば拡径しながら)定着ローラに外嵌した上で、環状断熱部材の第1係止突起を定着ローラの係止孔に嵌め込むことにより、環状断熱部材が回り止め状態で定着ローラに装着される。
【0011】
従って、たとえ定着ローラの厚み寸法が薄くて従来のような回り止め用のキー面の切削加工を定着ローラに施すことができなくても、環状断熱部材側に第1係止突起を設ける一方、定着ローラ側に第1係止突起に対応した係止孔を設けることで環状断熱部材を確実に回り止め状態で定着ローラに装着することが可能になる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記環状断熱部材には、前記定着ローラを軸心回りに駆動回転させるべく環状ギヤが外嵌され、前記環状ギヤには、内周面から径方向に向かって突設された第2係止突起が設けられている一方、前記環状断熱部材には、前記第2係止突起が嵌め込まれる、軸心方向に延び、かつ、一端が開放端になった係止溝が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
かかる構成によれば、環状ギヤの内周面に突設された第2係止突起を環状断熱部材に設けられている軸心方向に延びた係止溝へその開放端から嵌め込んでいくことにより、環状ギヤは、回り止め状態で環状断熱部材に装着される。そして、予め定着ローラに装着された状態の環状断熱部材に対し第2係止突起を係止溝に嵌め込むことで環状ギヤを定着ローラに装着することにより、当該環状ギヤは、環状断熱部材を介して定着ローラと共回り可能に一体化する。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記環状断熱部材は、周方向で複数の分割体に分割可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
かかる構成によれば、定着ローラを囲んで各分割体を組み付けることにより環状断熱部材が定着ローラに装着された状態になるため、環状断熱部材の定着ローラに対する装着操作が容易になる。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記各分割体は、互いの対向面に互いに嵌合し合う嵌合構造が形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
かかる構成によれば、各分割体を組み付けて環状断熱部材を形成させた状態で、互いの当接面に設けられた嵌合し合う嵌合構造により各分割体の結合状態が安定化する。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項3または4記載の発明において、前記各分割体は、前記定着ローラに装着された状態で対向面に隙間が形成されるように寸法設定されていることを特徴とするものである。
【0019】
かかる構成によれば、各分割体は、定着ローラに装着された状態で対向面に隙間が形成されるように寸法設定されているため、各分割体を定着ローラ周りに組み付けた状態で隣接した分割体間で空間的な余裕(すなわち隙間)ができ、これによって製造時の寸法誤差等による装着状態の不具合(具体的には、分割体同士の対向面の当接によって分割体の内面が定着ローラの周面に密着しなくなるなどの不具合)が防止される。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項3乃至5のいずれかに記載の発明において、前記各分割体は、曲率内径寸法が前記定着ローラの外径寸法より小さく寸法設定されていることを特徴とするものである。
【0021】
かかる構成によれば、各分割体を定着ローラ周りに装着して環状断熱部材を形成させた状態で、当該環状断熱部材に環状ギヤを圧入することにより、各分割体は、曲率径寸法が大きくなるように弾性変形するため、この弾性力で定着ローラの周面に密着し、これによって各分割体(すなわち環状断熱部材)の定着ローラに対する装着状態が安定する。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項3乃至6のいずれかに記載の発明において、前記各分割体は、互いの対向面の径方向外縁部に面取り処理が施されていることを特徴とするものである。
【0023】
かかる構成によれば、各分割体を定着ローラ周りに組み付けた状態で、たとえ製造誤差によって隣接する分割体の外面間に段差が形成されるようなことがあっても、各分割体は、互いの対向面の径方向外縁部に面取り処理が施されているため、隣接した分割体の外面間の急峻な段差が緩和され、これによって環状ギヤが各分割体からなる環状断熱部材に嵌め易くなる。
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項3乃至7のいずれかに記載の発明において、前記各分割体は、互いの当接位置における外面側が扁平に形成されていることを特徴とするものである。
【0025】
かかる構成によれば、環状断熱部材の構成要素である各分割体の当接位置の外面側において製作誤差等によりたとえ段差が存在しても、この部分は扁平に形成されているため、ギヤやベアリング等の他の部材を環状断熱部材に外嵌するに際し、当該段差の存在で嵌め込み難くなるような不都合が生じず、他の部材は環状断熱部材に円滑に外嵌される。
【0026】
請求項9記載の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明において、前記環状断熱部材の一方の端部には、外周面から外方へ軸心に向かって傾斜した環状テーパー部が形成されていることを特徴とするものである。
【0027】
かかる構成によれば、環状ギヤを定着ローラに装着された環状断熱部材に嵌め込むに際し、環状ギヤは、環状断熱部材の一方の端部に形成された環状テーパー部に案内されるため、環状ギヤの環状断熱部材に対する装着作業の作業性が向上する。
【発明の効果】
【0028】
請求項1記載の発明によれば、定着ローラに同心で外嵌される環状断熱部材には内周面から径方向に向かって突設された第1係止突起が設けられている一方、定着ローラには第1係止突起が嵌入される係止孔が設けられているため、環状断熱部材を弾性変形させながら定着ローラに外嵌した上で、環状断熱部材の第1係止突起を定着ローラの係止孔に嵌め込むことにより、環状断熱部材を回り止め状態で定着ローラに装着することができる。
【0029】
従って、たとえ定着ローラの厚み寸法が薄くて従来のような回り止め用のキー面の切削加工を定着ローラに施すことができなくても、環状断熱部材側に第1係止突起を設ける一方、定着ローラ側に第1係止突起に対応した係止孔を設けることで環状断熱部材を確実に回り止め状態で定着ローラに装着することができ、これによって定着ローラの厚み寸法を可能な限り薄くすることが可能になるため、伝熱効率の向上で画像形成装置の電源投入後の迅速な立ち上げに貢献することができる。
【0030】
請求項2記載の発明によれば、環状ギヤの内周面に突設されている第2係止突起を環状断熱部材に設けられている軸心方向に延びた係止溝へその開放端から嵌め込んでいくことにより、環状ギヤは、回り止め状態で環状断熱部材に装着されるため、予め定着ローラに装着された状態の環状断熱部材に対し第2係止突起を係止溝に嵌め込むことにより環状ギヤを環状断熱部材を介して定着ローラと一体化させることができ、これによって所定の駆動手段の駆動力を環状ギヤを介して定着ローラに伝達することができる。
【0031】
請求項3記載の発明によれば、環状断熱部材は、周方向で複数の分割体に分割可能に構成されているため、定着ローラを囲んで各分割体を組み付けることにより環状断熱部材が定着ローラに装着された状態になり、定着ローラに対し環状断熱部材を組み付ける作業の作業性を向上させることができる。
【0032】
請求項4記載の発明によれば、各分割体は、互いの対向面に互いに嵌合し合う嵌合構造が形成されているため、各分割体を組み付けて環状断熱部材を形成させた状態で互いの当接面に設けられた嵌合構造により各分割体の結合状態を安定化させることができる。
【0033】
請求項5記載の発明によれば、各分割体は、定着ローラに装着された状態で対向面に隙間が形成されるように寸法設定されているため、各分割体を定着ローラ周りに組み付けた状態で隣接した分割体間で空間的な余裕ができ、これによって製造時の寸法誤差等による装着状態の不具合を防止することが可能になり、環状断熱部材を定着ローラに確実に装着することができる。
【0034】
請求項6記載の発明によれば、各分割体は、曲率内径寸法が前記定着ローラの外径寸法より小さく寸法設定されているため、各分割体を定着ローラ周りに装着して環状断熱部材を形成させた状態で、当該環状断熱部材に環状ギヤを圧入することにより、各分割体は、曲率径寸法が大きくなるように弾性変形してこの弾性力で定着ローラの周面に密着し、これによって各分割体の定着ローラに対する装着状態を安定させることができる。
【0035】
請求項7記載の発明によれば、各分割体は、互いの対向面の径方向外縁部に面取り処理が施されているため、各分割体を定着ローラ周りに組み付けた状態で、たとえ製造誤差によって隣接する分割体の外面間に段差が形成されるようなことがあっても、隣接した分割体の外面間の急峻な段差が緩和されていることにより環状ギヤを各分割体からなる環状断熱部材に容易に嵌め込むことができ、組み付け作業の作業性を向上させることができる。
【0036】
請求項8記載の発明によれば、環状断熱部材の構成要素である各分割体の当接位置の外面側において製作誤差等によりたとえ段差が存在しても、この部分は扁平に形成されているため、ギヤやベアリング等の他の部材を環状断熱部材に外嵌するに際し、当該段差の存在で嵌め込み難くなるような不都合が生じず、他の部材を環状断熱部材に円滑に外嵌することができる。
【0037】
請求項9記載の発明によれば、環状断熱部材の一方の端部に外周面から外方へ軸心に向かって傾斜した環状テーパー部が形成されているため、環状ギヤを定着ローラに装着された環状断熱部材に嵌め込むに際し、環状ギヤは、環状断熱部材の一方の端部に形成された環状テーパー部に案内され、これによって環状ギヤの環状断熱部材に対する装着作業の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、本発明に係る定着装置が適用された画像形成装置の一種であるプリンタ10の一実施形態の内部構造の概要を示す正面断面視の説明図である。図1に示すように、プリンタ10は、印刷処理に供する用紙(記録媒体)Pを貯留する用紙貯留部12と、この用紙貯留部12に貯留された用紙束P1から繰り出された1枚ずつの用紙Pに対して画像の転写処理を施す画像形成部13と、この画像形成部13で転写処理の施された用紙Pに対して定着処理を施す定着部14とが装置本体11に内装されると共に、定着部14で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部15が装置本体11の頂部に設けられることによって構成されている。前記排紙部15は、装置本体11の頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ151が設けられている。
【0039】
前記用紙貯留部12には、所定数(本実施形態では1つ)の用紙カセット121が装置本体11に対して挿脱自在に設けられている。用紙カセット121の下流端(図1の左方)には、用紙束P1から1枚ずつの用紙Pを繰り出させるピックアップローラ122が設けられている。このピックアップローラ122の駆動によって用紙カセット121から繰り出された用紙Pは、給紙搬送路123およびこの給紙搬送路123の下流端に設けられたレジストローラ対124を介して画像形成部13に給紙されるようになっている。
【0040】
前記画像形成部13は、コンピュータ等から電送された画像情報に基づき用紙Pに転写処理を施すものであり、前後方向(図1の紙面と直交する方向)に延びる軸心回りに回転可能に設けられた感光体ドラム131の周面に沿うように、当該感光体ドラム131の図1における右上位置から時計方向に向けて帯電器132、露光装置133、現像装置134、転写ローラ135およびクリーニング装置136が配設されることによって形成されている。
【0041】
そして、感光体ドラム131と、帯電器132と、クリーニング装置136とが所定のハウジングに内装され感光体ユニット130としてユニット化されている。
【0042】
前記感光体ドラム131は、周面に静電潜像およびこの静電潜像に沿ったトナー像を形成させるためのものであり、周面にアモルファスシリコン層が積層され、これによってこれらの像を形成させるのに適したものになっている。
【0043】
前記帯電器132は、軸心回りに時計方向に回転している感光体ドラム131の周面に一様な電荷を形成させるものであり、コロナ放電によって感光体ドラム131の周面に電荷を付与するようになっている。なお、かかる帯電器132に代えて帯電ローラを採用してもよい。
【0044】
前記露光装置133は、コンピュータ等の外部の機器から電送されてきた画像データに基づき強弱の付与されたレーザー光を回転している感光体ドラム131の周面に照射し、これによる感光体ドラム131周面のレーザー光が照査された部分の電荷の消去によって当該感光体ドラム131の周面に静電潜像を形成させるものである。
【0045】
前記現像装置134は、感光体ドラム131の周面にトナーを供給することによって周面の静電潜像が形成された部分にトナーを付着させ、これによって感光体ドラム131の周面にトナー像を形成させるものである。
【0046】
前記転写ローラ135は、感光体ドラム131の直左方位置に送り込まれた用紙Pに対して当該感光体ドラム131の周面に形成されているプラスに帯電したトナー像を用紙Pに転写させるものであり、トナー像の電荷と逆極性であるマイナスの電荷を用紙Pに付与するようになっている。
【0047】
従って、感光体ドラム131の左下位置に到達した用紙Pは、転写ローラ135と感光体ドラム131とによって押圧挟持されつつ、プラスに帯電した感光体ドラム131周面のトナー像がマイナスに帯電した用紙Pの表面に向けて引き剥がされ、これによって用紙Pに対し転写処理が施されることになる。
【0048】
前記クリーニング装置136は、転写処理後の感光体ドラム131の周面に残留しているトナーや、前記帯電器132で帯電ワイヤに付着した粉塵等の異物を清掃処理したときに飛散して感光体ドラム131の周面に付着したものなどを取り除いて清浄化するためのものである。このクリーニング装置136には、感光体ドラム131の周面に摺擦する摺擦ローラ136aが設けられ、この摺擦ローラ136aの回転で感光体ドラム131の周面に付着した残留トナーや異物が擦り落とされる(すなわち感光体ドラム131の周面が研磨される)ようになっている。このクリーニング装置136によって清浄化された感光体ドラム131の周面は、次の画像形成処理のために再び帯電器132へ向かうことになる。
【0049】
前記定着部14は、画像形成部13によって転写処理の施された用紙Pのトナー像に加熱による定着処理を施すものであり、定着装置20を備えて構成されている。この定着装置20は、用紙Pに熱を加える定着ローラ30と、この定着ローラ30の左側に対向配置された加圧ローラ70とを備えて構成されている。
【0050】
そして、転写処理後の用紙Pは、定着ローラ30と加圧ローラ70との間に形成されたニップ部Nへ向けて送り込まれ、当該ニップ部Nを通過することによって、定着ローラ30からの熱を得て定着処理が施されるようになっている。定着処理の施された用紙Pは、排紙搬送路141を通って排紙部15へ排出されることになる。
【0051】
そして、装置本体11内の図1における右方位置上部に外気を取り入れるためのフィルタ161を備えた送風機16と、この送風機16によってフィルタ161を介して取り入れられた外気を感光体ユニット130へ向けて案内する送風ダクト17とが設けられている。送風機16の駆動で送風ダクト17を介し感光体ユニット130へ向けて吹き付けられた外気は、感光体ユニット130内を貫通し、これによって感光体ドラム131内に設けられた図略のヒータによって感光体ユニット130内が過加熱されている場合に当該感光体ユニット130内を冷却するようになっている。
【0052】
図2は、定着装置の一実施形態を示す背面側から見た斜視図である。従って、図2においては、図1に示す定着装置20と左右の位置関係が逆転している(すなわち、図1では定着ローラ30が右側に、加圧ローラ70が左側に位置しているが、図2では定着ローラ30が左側に、加圧ローラ70が右側に位置している)。
【0053】
図2に示すように、定着装置20は、筐体21内に定着ローラ30と加圧ローラ70とが左右に並設されることによって構成されている。前記筐体21は、図2における手前側の背面板211と、同向こう側の前面板212と、これら背面板211および前面板212の各側縁部間に架設された一対の側板部材213とを備え、これら背面板211、前面板212および側板部材213に囲繞された空間に定着ローラ30および加圧ローラ70を装着するための装着空間Vが形成されている。
【0054】
そして、この装着空間V内において、背面板211および前面板212間の図2における左方位置に定着ローラ30が装着されているとともに、同右方位置に周面を定着ローラ30の周面と当接させた状態で加圧ローラ70が装着されている。
【0055】
前記定着ローラ30の各端部には、後述する環状断熱部材40を介してベアリング60がそれぞれ装着され、定着ローラ30は、これらのベアリング60が背面板211および前面板212にそれぞれ凹設された凹部に嵌め込まれることにより軸心回りに回転可能に筐体21の装着空間Vに装着されるようになっている。なお、加圧ローラ70は、装着空間V内の図2における定着ローラ30の右側位置で背面板211および前面板212間に架設されたローラ軸71に軸支され、定着ローラ30の回転に従動してローラ軸71回りに回転するようになっている。
【0056】
また、定着ローラ30の図2におけるベアリング60より手前側の端部には後述する環状ギヤ50が一体回転可能に外嵌されている一方、背面板211には、図略の駆動モータの駆動でギヤ軸221回りに回転する駆動ギヤ22が設けられている。この駆動ギヤ22は、前記環状ギヤ50と噛合され、これによって駆動モータの駆動による駆動ギヤ22の回転が環状ギヤ50を介して定着ローラ30に伝達されるようになっている。
【0057】
また、前記背面板211には、定着ローラ30の端部開口と対向するように端子台23が設けられているとともに、この端子台23から定着ローラ30内の奥部に向けて延設されたハロゲンランプ等からなる発熱体(加熱源)24が設けられている。この発熱体24は、定着ローラ30の内周面と接触し合わないように寸法設定されている。かかる発熱体24に図略の電源からの電力がコネクタ25および端子台23を介して供給されることにより、当該発熱体24が発熱し、これによって定着ローラ30に加熱処理が施されるようになっている。
【0058】
図3は、定着ローラ30の第1実施形態を説明するための図であり、(イ)は、環状断熱部材40、環状ギヤ50およびベアリング60が定着ローラ30から外された状態を示す斜視図、(ロ)は、環状断熱部材40の第1実施形態を示す拡大斜視図である。また、図4は、環状断熱部材40,環状ギヤ50およびベアリング60が定着ローラ30に装着された状態を示す斜視図であり、図5は、図4のA−A線断面図である。これらの図に示すように、定着ローラ30には、環状断熱部材40、環状ギヤ50およびベアリング60が装着されるようになっている。
【0059】
まず、図3の(イ)に示すように、定着ローラ30は、薄肉の金属製の筒体であり、本実施形態においては外径寸法が直径で31.4mmに設定されているとともに、厚み寸法が0.35mmに設定され、これによって発熱体24による定着ローラ30に対する加熱処理が迅速に行われ、プリンタ10の電源スイッチを投入したときの定着装置20の立ち上がりが迅速に行われるようになっている。かかる定着ローラ30には、両端部の適所にそれぞれ係止孔31が穿設されている。これらの係止孔31は、定着ローラ30に外嵌された後述する環状断熱部材40を回り止め状態で係止するためのものである。
【0060】
このような定着ローラ30の図3における手前側には、環状断熱部材40と、環状ギヤ50と、ベアリング60とが外嵌される一方、同向こう側には、環状断熱部材40と、ベアリング60とが外嵌されるようになっている(図5参照)。定着ローラ30の図3における手前側においては、環状断熱部材40が定着ローラ30に外嵌された後に予め定着ローラ30に遊嵌されている環状ギヤ50およびベアリング60がこの環状断熱部材40に外嵌されるようになっている。これに対し定着ローラ30の図3における向こう側においては、環状断熱部材40が定着ローラ30に外嵌された後に予め定着ローラ30に遊嵌されているベアリング60のみがこの環状断熱部材40に外嵌されるようになっている。
【0061】
前記環状断熱部材40は、図3の(ロ)に示すように、内径寸法が定着ローラ30の外形寸法より僅かに小さい円筒状を呈する断熱部材本体41と、この断熱部材本体41の一方の端部に同心で形成されたフランジ42とを備えた基本構成を有している。そして、本実施形態においては、環状断熱部材40の一部に筒心方向の全長に亘って切り込まれることによって形成したスリット43が設けられているとともに、このスリット43の途中に当該スリット43を介して二つ割れ状態で断熱部材本体41の内周面から径方向の内側に向けて突設された第1係止突起44が設けられている。
【0062】
この第1係止突起44は、前記定着ローラ30の係止孔31に対応して設置位置が設定されている。そして、環状断熱部材40をスリット43を介して若干開いた状態で定着ローラ30に嵌め込んでこの二つ割れの第1係止突起44を係止孔31に嵌入することにより、環状断熱部材40が回り止め状態で定着ローラ30に装着されるようになっている。
【0063】
また、断熱部材本体41の周面には、フランジ42と反対側の端縁から筒心方向と平行にフランジ42へ略到達するまで凹設されることによって形成され、一端が開放端となった係止溝45が設けられている。この係止溝45は、断熱部材本体41に外嵌された環状ギヤ50を回り止めするためのものである。
【0064】
さらに、フランジ42が設けられている側と反対側の断熱部材本体41の端縁には、外周面から外方へ軸心に向かって傾斜した環状テーパー部411(図3の(ロ))が形成され、環状ギヤ50およびベアリング60は、この環状テーパー部411に案内されることによって断熱部材本体41へ容易に嵌め込むことができるようになっている。
【0065】
前記環状ギヤ50は、内径寸法が断熱部材本体41の外径寸法より僅かに大きく寸法設定され、これによって摺接状態で断熱部材本体41に外嵌し得るようになっている。かかる環状ギヤ50の内周面には、図3の(イ)に示すように、前記環状断熱部材40の係止溝45に対応した第2係止突起51が中心方向に向けて突設されている。この第2係止突起51を環状断熱部材40の係止溝45に対応させた状態で環状ギヤ50をフランジ42へ向けて断熱部材本体41に押し込んでいくことにより、環状ギヤ50が、図4に示すように、回り止め状態で定着ローラ30に外嵌された環状断熱部材40に装着されることになる。
【0066】
前記ベアリング60は、環状断熱部材40を介して定着ローラ30を筒心回りに回転可能に軸支した状態で、前記筐体21(図2)の背面板211および前面板212に支持されるものである。かかるベアリング60は、内径寸法が断熱部材本体41の外形寸法と略同一に設定され、環状ギヤ50が環状断熱部材40を介して定着ローラ30に外嵌された状態で環状断熱部材40に圧入されるようになっている。
【0067】
前記環状断熱部材40およびベアリング60は、定着ローラ30の図2における手前側および向こう側の双方の端部にそれぞれ外嵌されるのに対し、環状ギヤ50は、定着ローラ30の手前側の端部にのみ外嵌され、向こう側の端部には外嵌されない。
【0068】
そして、定着ローラ30の図3における手前側に環状断熱部材40、この環状断熱部材40を介して環状ギヤ50およびベアリング60が外嵌された状態では、図4に示すように、環状断熱部材40の第1係止突起44が定着ローラ30の係止孔31に嵌入しているとともに、環状ギヤ50の第2係止突起51が環状断熱部材40の係止溝45に嵌り込んでいるため、結局、定着ローラ30と環状ギヤ50とは環状断熱部材40を介して互いに回り止め状態で結合された状態になっている。従って、当該定着ローラ30が筐体21に装着された状態で、図略の駆動モータの駆動で駆動ギヤ22が駆動回転すると、これに噛合している環状ギヤ50も回転し、これによって定着ローラ30も回転することになる。
【0069】
第1実施形態の定着ローラ30ならびにこの定着ローラ30に装着される環状断熱部材40および環状ギヤ50によれば、環状断熱部材40に定着ローラ30の係止孔31に対応した第1係止突起44を設けるとともに、環状ギヤ50の第2係止突起51に対応した係止溝45を設けることにより、定着ローラ30が薄肉製のものであり、これによって当該定着ローラ30に回り止めのための各種の加工を施すことが困難であっても、環状ギヤ50を環状断熱部材40を介して回り止め状態で定着ローラ30に装着することが可能になる。
【0070】
図6は、定着ローラ30a、環状断熱部材40aおよび環状ギヤ50aの第2実施形態を示す分解斜視図である。この実施形態においては、定着ローラ30aの端部の対向位置に一対で係止孔31が穿設されているとともに、環状断熱部材40aは、一対の分割体46を合体させることにより形成されるようになっている。また、環状ギヤ50aは、一対の分割体46に対応するように、内周面における対向位置にそれぞれ突設された一対の第2係止突起51を有している。
【0071】
前記各分割体46は、半円状の分割体本体41aと、この分割体本体41aの一方の端縁部に形成された半円状フランジ42aとを備えて構成されている。分割体本体41aの内面側の曲率周方向の中央部には、定着ローラ30aの係止孔31に対応した第1係止突起44が突設されているとともに、外面側の曲率周方向の中央部には、環状ギヤ50aの第2係止突起51が嵌め込まれる係止溝45が凹設されている。
【0072】
また、各分割体46の互いの対向面の径方向外縁部には、面取り処理が施されることによって形成した筒心方向に延びる面取り縁411bが設けられ、これによって一対の分割体46が合体されることによって形成した環状断熱部材40aにおいて、両者の対向部分に急峻な段差が形成されないようにしている。
【0073】
また、半円状フランジ42aと反対側の断熱部材本体41の端縁部には、第1実施形態の環状テーパー部411に相当する円弧状テーパー部411aが設けられ、これによって各分割体46が定着ローラ30aに装着されることにより形成した環状断熱部材40aに環状ギヤ50aおよびベアリング60を嵌め込み易くしている。
【0074】
さらに、各分割体46の曲率内径寸法は、定着ローラ30aの外径寸法より僅かに小さめに寸法設定されている。こうすることにより一対の分割体46をそれぞれ定着ローラ30aに被せて環状断熱部材40aを形成した状態で各分割体本体41aに環状ギヤ50aおよびベアリング60を外嵌することにより、各分割体本体41aが弾性変形して拡径し、これによって各分割体本体41aの内面が定着ローラ30aの周面に押圧密着した状態になるため、環状断熱部材40aを介した環状ギヤ50aおよびベアリング60の定着ローラ30aへの装着状態が安定する。
【0075】
加えて、各分割体本体41aは、曲率中心角が180°より僅かに小さめに角度設定され、これによって一対の分割体46が定着ローラ30aに装着された状態で、これらの対向縁面間に僅かな隙間が形成されるようにしている。こうすることによって分割体46の製造時の寸法誤差等による装着状態の不具合、具体的には分割体46同士の対向面の当接によって分割体46の内面が定着ローラ30aの周面に密着しなくなるなどの不具合の発生を防止することができる。
【0076】
このように構成された第2実施形態の定着ローラ30a、環状断熱部材40aおよび環状ギヤ50aによれば、各分割体46を合わせるようにして定着ローラ30aに装着することができるため、環状断熱部材40aの定着ローラ30aに対する装着操作が容易になる。
【0077】
図7は、環状断熱部材40bの第3実施形態を示す分解斜視図である。なお、第3実施形態の環状断熱部材40bが適用される定着ローラ30aおよび環状ギヤ50aについては第2実施形態のものと同様である。
【0078】
図7に示すように、第3実施形態の環状断熱部材40bは、一対の分割体46aが合体されることによって形成されるものであることについては、一対の分割体46が合体されることにより環状断熱部材40aが形成される第2実施形態と同様であるが、各分割体46aには、当該一対の分割体46aを合わせたときに筒心方向に延びる各縁部において対向縁部同士が互いに嵌合し合う嵌合構造47が設けられている点が第2実施形態のものと相違している。
【0079】
すなわち、前記嵌合構造47は、分割体46aにおける筒心方向に延びた一方の端縁面から周方向の外方に向けて突設された矩形状の嵌合突起471と、同他方の端縁面から周方向の内方に向けて凹設された前記嵌合突起471に対応する嵌合凹部472とを備えて構成されている。前記嵌合凹部472は、嵌合突起471より若干大きめに形状設定され、これによって一方の分割体46aの嵌合凹部472に他の分割体46aの嵌合突起471が余裕をもって嵌め込まれるようになっている。その他の分割体46aの構成は第2実施形態の分割体46と同様である。
【0080】
このように構成された第3実施形態の環状断熱部材40bによれば、一対の分割体46aが定着ローラ30aに装着され、これによって環状断熱部材40bが形成された状態で、一方の分割体46aの嵌合突起471が他方の分割体46aの嵌合凹部472に嵌り込んでいるため、各分割体46aの筒心方向に向かった位置ずれが確実に防止され、これによって定着ローラ30aと環状ギヤ50aとの間に介設された環状断熱部材40bの定着ローラ30aに対する装着状態が安定する。
【0081】
以上詳述したように、本発明に係る定着装置20は、加熱源である発熱体24が内装された、軸心回りに回転可能な定着ローラ30,30aと、周面が定着ローラ30,30aの周面に圧接された状態で定着ローラ30,30aの軸心と同一方向に延びるローラ軸71回りに回転可能な加圧ローラ70との間に形成されたニップ部Nに用紙Pを供給することにより当該用紙P上のトナー像に加熱による定着処理を施すものを対象とするものであるため、用紙Pを互いに逆方向に回転している定着ローラ30,30aと加圧ローラ70との間に形成されたニップ部Nに供給することにより、当該用紙Pは、内部に熱源を備えた定着ローラ30,30aからの熱を得てトナー像に対する定着処理が施されつつ搬送され、ニップ部Nから排出されることにより定着処理が完了する。
【0082】
そして、このような定着装置20において、定着ローラ30,30aに同心で外嵌される環状断熱部材40,40a,40bには内周面から径方向に向かって突設された第1係止突起44が設けられている一方、定着ローラ30,30aには第1係止突起44が嵌入される係止孔31が設けられているため、環状断熱部材40,40a,40bを定着ローラ30,30aに外嵌した上で、環状断熱部材40,40a,40bの第1係止突起44を定着ローラ30,30aの係止孔31に嵌め込むことにより、環状断熱部材40,40a,40bを回り止め状態で定着ローラ30,30aに装着することができる。
【0083】
従って、たとえ定着ローラ30,30aの厚み寸法が薄くて従来のような回り止め用のキー面の切削加工を定着ローラ30,30aに施すことができなくても、環状断熱部材40,40a,40b側に第1係止突起44を設ける一方、定着ローラ30,30a側に第1係止突起44に対応した係止孔31を設けることで環状断熱部材40,40a,40bを確実に回り止め状態で定着ローラ30,30aに装着することができ、これによって定着ローラ30,30aの厚み寸法を可能な限り薄くすることが可能になるため、伝熱効率の向上で画像形成装置の電源投入後の迅速な立ち上げに貢献することができる。
【0084】
また、環状断熱部材40,40a,40bには、定着ローラ30,30aを軸心回りに駆動回転させるべく環状ギヤ50,50aが外嵌され、この環状ギヤ50,50aには、内周面から径方向に向かって突設された第2係止突起51が設けられている一方、環状断熱部材40,40a,40bには、第2係止突起51が嵌め込まれる、軸心方向に延び、かつ、一端が開放端になった係止溝45が設けられているため、環状ギヤ50,50aの内周面に突設されている第2係止突起51を環状断熱部材40,40a,40bに設けられている軸心方向に延びた係止溝45へその開放端から嵌め込んでいくことにより、環状ギヤ50,50aは、回り止め状態で環状断熱部材40,40a,40bに装着される。このように予め定着ローラ30,30aに装着された状態の環状断熱部材40,40a,40bに対し第2係止突起51を係止溝45に嵌め込むことにより環状ギヤ50,50aを環状断熱部材40,40a,40bを介して定着ローラ30,30aと一体化させることができ、これによって所定の駆動手段の駆動力を環状ギヤ50,50aを介して定着ローラ30,30aに伝達することができる。
【0085】
また、特に上記第2および第3実施形態においては、環状断熱部材40a,40bは、周方向で複数の分割体46,46aに分割可能に構成されているため、定着ローラ30aを囲んで各分割体46,46aを組み付けることにより環状断熱部材40a,40bが定着ローラ30aに装着された状態になり、定着ローラ30aに対し環状断熱部材40,40a,40bを組み付ける作業の作業性を向上させることができる。
【0086】
そして、各分割体46aは、一方の分割体46aと他方の分割体46aの対向面に、互いに嵌合し合う嵌合構造47が形成されているため、各分割体46aの結合状態を安定化させることができる。
【0087】
また、各分割体46aは、定着ローラ30aに装着された状態で対向面に隙間が形成されるように寸法設定されているため、各分割体46aを定着ローラ30a周りに組み付けた状態で隣接した分割体46a間で空間的な余裕ができ、これによって製造時の寸法誤差等による装着状態の不具合を防止することが可能になり、環状断熱部材40a,40bを定着ローラ30aに確実に装着することができる。
【0088】
また、各分割体46aは、曲率内径寸法が定着ローラ30aの外径寸法より小さく寸法設定されているため、各分割体46aを定着ローラ30a周りに装着して環状断熱部材40a,40bを形成させた状態で、当該環状断熱部材40,40a,40bに環状ギヤ50,50aを圧入することにより、各分割体46aは、曲率径寸法が大きくなるように弾性変形してこの弾性力で定着ローラ30aの周面に密着し、これによって各分割体46aの定着ローラ30aに対する装着状態を安定させることができる。
【0089】
また、各分割体46aは、互いの対向面の径方向外縁部に面取り縁411bが形成されているため、各分割体46aを定着ローラ30a周りに組み付けた状態で、たとえ製造誤差によって隣接する分割体46aの外面間に段差が形成されるようなことがあっても、隣接した分割体46aの外面間の急峻な段差が面取り縁411bによって緩和されていることになり、環状ギヤ50,50aを各分割体46aからなる環状断熱部材40a,40bに容易に嵌め込むことができ、組み付け作業の作業性を向上させることができる。
【0090】
これらに加えて、環状断熱部材40,40a,40bの一方の端部(環状ギヤ50,50aが嵌め込まれる側の端部)には、外周面から外方へ軸心に向かって傾斜した環状テーパー部411,411aが形成されているため、環状ギヤ50,50aを定着ローラ30aに装着された環状断熱部材40,40a,40bに嵌め込むに際し、環状ギヤ50,50aは、環状断熱部材40,40a,40bの一方の端部に形成された環状テーパー部411に案内され、これによって環状ギヤ50,50aの環状断熱部材40,40a,40bに対する装着作業の作業性を向上させることができる。
【0091】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0092】
(1)上記の実施形態においては、定着装置20が適用される画像形成装置としてプリンタ10を例に挙げて説明したが、本発明は、画像形成装置がプリンタ10であることに限定されるものではなく、複写機やファクシミリ装置であってもよい。
【0093】
(2)上記の第1実施形態においては、環状断熱部材40の内周面にスリット43を挟んで分割状態で第1係止突起44が設けられているが、本発明は、第1係止突起44をスリット43を挟んで分割状態で設けることに限定されるものではなく、スリット43から離れた位置に分割されない状態で設けてもよい。
【0094】
(3)上記の第3実施形態においては、嵌合構造47の嵌合突起471および嵌合凹部472の形状が矩形状に設定されているが、本発明は、嵌合突起471および嵌合凹部472が矩形状であることに限定されるものではなく、三角形状や半円形状等のその他の形状であってもよい。
【0095】
(4)上記の第2および第3実施形態においては、環状断熱部材40a,40bは2つの分割体46,46aに2分割可能になされているが、本発明は、環状断熱部材40a,40bが2つの分割体46,46aに2分割可能であることに限定されるものではなく、3つ以上に分割し得るようにしてもよい。
【0096】
(5)図8は、第3実施形態の環状断熱部材40b(図7)の変形例を示す斜視図である。この変形例は、各分割体46a,46aの互いの当接位置(具体的には、一方の分割体46aの嵌合突起471と他方の分割体46aの嵌合凹部472とが互いに嵌り合う位置)における外面側に扁平に形成された扁平部48が設けられている。
【0097】
かかる扁平部48を設けることにより、環状断熱部材40bの構成要素である各分割体46a,46aの当接位置の外面側において製作誤差等によりたとえ段差が存在しても、この部分は扁平になっているため、環状ギヤ50およびベアリング60を環状断熱部材40bに外嵌するに際し、当該段差の存在で嵌め込み難くなるような不都合が生じず、環状ギヤ50aおよびベアリング60を環状断熱部材40bに円滑に外嵌することができ、延いては定着装置20の組み付け作業の作業性の向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係る定着装置が適用された画像形成装置の一種であるプリンタの一実施形態の内部構造の概要を示す正面断面視の説明図である。
【図2】定着装置の一実施形態を示す背面側から見た斜視図である。
【図3】定着ローラの第1実施形態を説明するための図であり、(イ)は、ベアリング、環状ギヤおよび環状断熱部材が定着ローラから外された状態を示す斜視図、(ロ)は、環状断熱部材の第1実施形態を示す拡大斜視図である。
【図4】定着ローラの組み立て斜視図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】定着ローラ、環状断熱部材および環状ギヤの第2実施形態を示す分解斜視図である。
【図7】環状断熱部材の第3実施形態を示す分解斜視図である。
【図8】第3実施形態の環状断熱部材の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0099】
10 プリンタ 11 装置本体
12 用紙貯留部 121 用紙カセット
122 ピックアップローラ 123 給紙搬送路
124 レジストローラ対 13 画像形成部
130 感光体ユニット 131 感光体ドラム
132 帯電器 133 露光装置
134 現像装置 135 転写ローラ
136 クリーニング装置 136a 摺擦ローラ
14 定着部 141 排紙搬送路
15 排紙部 151 排紙トレイ
16 送風機 161 フィルタ
17 送風ダクト 20 定着装置
21 筐体 211 背面板
212 前面板 213 側板部材
22 駆動ギヤ 221 ギヤ軸
23 端子台 24 発熱体(加熱源)
25 コネクタ 30,30a 定着ローラ
31 係止孔
40 環状断熱部材 40a,40b 環状断熱部材
41 断熱部材本体 41a 分割体本体
411 環状テーパー部 411a 円弧状テーパー部
411b 面取り縁 42 フランジ
42a 半円状フランジ 43 スリット
44 係止突起 45 係止溝
46,46a 分割体 47 嵌合構造
471 嵌合突起 472 嵌合凹部
48 扁平部 50 環状ギヤ
50a 環状ギヤ 51 係止突起
60 ベアリング 70 加圧ローラ
71 ローラ軸 N ニップ部
P 用紙(記録媒体) P1 用紙束
V 装着空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱源が内装された、軸心回りに回転可能な定着ローラの周面に記録媒体を供給することにより当該記録媒体上のトナー像に加熱による定着処理を施す定着装置であって、
前記定着ローラには、同心で外嵌される環状断熱部材が設けられ、
前記環状断熱部材には、内周面から径方向に向かって突設された第1係止突起が設けられている一方、前記定着ローラには、前記第1係止突起が嵌入される係止孔が設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記環状断熱部材には、前記定着ローラを軸心回りに駆動回転させるべく環状ギヤが外嵌され、
前記環状ギヤには、内周面から径方向に向かって突設された第2係止突起が設けられている一方、前記環状断熱部材には、前記第2係止突起が嵌め込まれる、軸心方向に延び、かつ、一端が開放端になった係止溝が設けられていることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記環状断熱部材は、周方向で複数の分割体に分割可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の定着装置。
【請求項4】
前記各分割体は、互いの対向面に互いに嵌合し合う嵌合構造が形成されていることを特徴とする請求項3記載の定着装置。
【請求項5】
前記各分割体は、前記定着ローラに装着された状態で対向面に隙間が形成されるように寸法設定されていることを特徴とする請求項3または4記載の定着装置。
【請求項6】
前記各分割体は、曲率内径寸法が前記定着ローラの外径寸法より小さく寸法設定されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記各分割体は、互いの対向面の径方向外縁部に面取り処理が施されていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記各分割体は、互いの当接位置における外面側が扁平に形成されていることを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載の定着装置。
【請求項9】
前記環状断熱部材の一方の端部には、外周面から外方へ軸心に向かって傾斜した環状テーパー部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−57643(P2007−57643A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240741(P2005−240741)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】