説明

定着装置

【課題】ニップ部を構成する一対の回転体を有する定着装置において、一対の回転体間の加圧力を、一方の端部から他方の端部まで均一にしつつ、ニップ部で搬送される記録材にシワが発生してしまうことを防止する。
【解決手段】定着ローラ1と加圧ローラ6の回転軸が定着ニップ部を維持したまま互いに交差した状態となるように、定着ローラ1と加圧ローラ6のうち少なくともいずれか一方を移動させる移動手段と、前記移動手段を調節して、互いに交差する2つの前記回転軸がなす交差角を変更すると同時に、加圧バネ11,12を調節して、定着ローラ1と加圧ローラ6間の圧接力を変更することが可能な可変手段と、を備え、前記可変手段は、前記交差角のうち鋭角側が大きくなった場合には、前記圧接力が大きくなるように、前記交差角及び前記圧接力を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート等の記録材上に画像を形成する機能を備えた、例えば、複写機、プリンタなどの画像形成装置に適用される定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
定着装置のローラ加圧構成において、通常、ローラの両端を加圧する構成が一般的であるが、この際、上下のローラは撓みを生じるため、両端部に比べて中央部の加圧力が低くなることが懸念されている。この対策の1つに、上下ローラに一定の交差角を持たせる構成が知られている。これにより、ローラにおける一方の端部から他方の端部まで均一な加圧力を持たせることができるため、定着ムラ等の問題を解決することができる。
このような定着装置において、定着ローラと加圧ローラとの交差角を切替える切替手段を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、通紙時の加圧力と交差角は一定であり、圧解除動作と連動して交差方向を切り替えることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−237003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例では通紙中の加圧力と交差角は一定であったため、以下のような課題があった。
上下ローラに交差角を持たせた構成においては、交差角によってローラ表面にスラスト力が発生するため、通紙する紙もダメージを受けやすい。
ローラから紙に付与される寄り力は、ローラ中央部と両端部で異なるため、通紙中の加圧力と交差角が一定の場合、この不均一な寄り力が原因で、通紙される紙種によっては紙シワが発生してしまうことが懸念される。
本発明は、ニップ部を構成する一対の回転体を有する定着装置において、一対の回転体間の加圧力を、一方の端部から他方の端部まで均一にしつつ、ニップ部で搬送される記録材にシワが発生してしまうことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
互いに圧接して形成されたニップ部で、トナー像が形成された記録材を挟持搬送し、該記録材上に形成されたトナー像を該記録材に定着させるための一対の回転体と、
前記一対の回転体が互いに圧接された状態となるように、前記一対の回転体それぞれの回転軸の両端部を互いに近づけさせる圧接手段と、
を有する定着装置において、
前記ニップ部で挟持搬送される記録材のトナー像形成面に直交する直交方向において前記一対の回転体を見た場合に、前記一対の回転体の回転軸が前記ニップ部を維持したまま互いに交差した状態となるように、前記一対の回転体のうち少なくともいずれか一方の回転体を移動させる移動手段と、
前記直交方向において前記一対の回転体を見た場合に、前記移動手段を調節して、互いに交差する2つの前記回転軸がなす交差角を変更すると同時に、前記圧接手段を調節して、前記一対の回転体間の圧接力を変更することが可能な可変手段と、
を備え、
前記可変手段は、前記交差角のうち鋭角側が大きくなった場合には、前記圧接力が大きくなるように、前記交差角及び前記圧接力を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ニップ部を構成する一対の回転体を有する定着装置において、一対の回転体間の加圧力を、一方の端部から他方の端部まで均一にしつつ、ニップ部で搬送される記録材にシワが発生してしまうことを記録材の種類によらずに防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1において、定着装置全体を示した概略斜視図
【図2】実施例1にて、定着ローラを上方に開放した圧解除状態を示した概略斜視図
【図3】実施例1において、加圧ローラユニットが回転した状態を示した概略上面図
【図4】実施例1で加圧ローラユニットの回転状態における加圧バネ周辺を示した図
【図5】実施例2において、加圧ローラのリンク機構を示した概略斜視図
【図6】実施例2にて、加圧力と交差角の小さい薄紙通紙時のカム動作を示した図
【図7】実施例2にて、加圧力と交差角の大きい厚紙通紙時のカム動作を示した図
【図8】実施例3にて定着ローラ対及びリンク機構とその駆動源の概略構成を示す図
【図9】実施例3にて定着ローラ対及びリンク機構とその駆動源の概略構成を示す図
【図10】画像形成装置の全体構成を示した概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0009】
以下に、実施例1について図1〜4,10を用いて説明する。図1は、本実施例において、定着装置全体を示した概略斜視図である。図2は、本実施例において、定着ローラを上方に開放した圧解除状態を示した概略斜視図である。図3は、本実施例において、加圧ローラユニットが回転した状態を示した概略上面図である。図4は、本実施例において、加圧ローラユニットが回転した状態における加圧バネ周辺を示した概略側面図である。図10は、画像形成装置の一例であるレーザビームプリンタの全体構成を示した概略断面図である。
【0010】
まず、図10を用いて画像形成装置の全体構成及び記録材Pの流れについて説明を行う。
給送カセット101に積載された記録材Pは、最上面の1枚のみを給送ローラ102と給送パッド103からなる給送部にて分離給送される。記録材Pは搬送ローラ104にて搬送されて、感光ドラム105を含むプロセスカートリッジ106と、転写ローラ107とで形成された転写部に送られる。レーザスキャナ108により露光されることで画像情報に応じて感光ドラム105表面に形成された静電潜像は、プロセスカートリッジ106で現像される。これにより得られたトナー画像は、転写部にて記録材Pに転写される。
【0011】
トナー画像が転写された記録材Pは、搬送路109上を通り、定着ローラ1と加圧ローラ6を含む定着装置110へと搬送される。定着ニップ部(ニップ部)では、記録材Pが加熱・加圧されることでトナー画像が記録材Pに定着される。その後、トナー画像が定着された記録材Pは、搬送ローラ113により搬送路114上を搬送され、さらに排出ローラ115によって、装置本体天面に設けられた排出トレイ116上に排出される。
【0012】
次に、定着装置110について説明する。
図1,2において、定着ローラ1は、記録材Pのトナー画像面を押圧し、トナー画像を記録材Pに定着するための回転体であり、2,3は定着ローラ1を軸支する定着軸受け、4は定着ローラ1を備えた天板、5は天板4を回転させるための回転軸である。
【0013】
加圧ローラ6は記録材Pを加圧するための回転体であり、7,8は加圧ローラ6の回転軸方向の両端部で加圧ローラ6を軸支する加圧軸受け、9,10は加圧軸受け7,8の加圧回転軸、11,12は加圧ローラ6を定着ローラ1に押圧する加圧バネである。13は加圧ローラ6を支える加圧フレーム、14は加圧フレーム13の一部である把手、15は加圧ローラ6を含む加圧フレーム13を受けるベース、16はベース15の一部である加圧ユニット回転軸である。17,18は斜面形状を成す加圧バネ12の受け面、19は加圧ローラ6の交差角を示す指示部である。
本実施例において交差角とは、定着ニップ部で挟持搬送される記録材のトナー像形成面に直交する直交方向において定着ローラ1及び加圧ローラ6を見た場合に、互いに交差する定着ローラ1及び加圧ローラ6の回転軸がなす交差角をいう。そして、この交差角のうち鋭角側を「交差角の大きさ」というものとする。
【0014】
ここで、定着ローラ1及び加圧ローラ6は、互いに圧接して形成されたニップ部で、トナー像が形成された記録材を挟持搬送し、該記録材上に形成されたトナー像を該記録材に定着させるための一対の回転体に相当する。また、加圧バネ11,12、加圧回転軸9,10は、定着ローラ1及び加圧ローラ6が互いに圧接された状態となるように、定着ローラ1及び加圧ローラ6それぞれの回転軸の両端部を互いに近づけさせる圧接手段に相当する。また、把手14、加圧ユニット回転軸16は、定着ニップ部で挟持搬送される記録材のトナー像形成面に直交する直交方向(本実施例では上下方向)において定着ローラ1及び加圧ローラ6を見た場合に、加圧ローラ6を次のように移動させる移動手段に相当する。すなわち、移動手段は、定着ローラ1及び加圧ローラ6の回転軸が定着ニップ部を維持したまま互いに交差した状態となるように加圧ローラ6を移動させる。本実施例においては、移動手段により加圧ローラ6を移動させているが、これに限らず、定着ローラ1及び加圧ローラ6のうち少なくともいずれか一方が移動するものであればよい。また、把手14、受け面17,18は、前記移動手段を調節して、交差角を変更すると同時に、前記圧接手段を調節して、定着ローラ1及び加圧ローラ6間(一対の回転体間)の圧接力を変更可能な可変手段に相当する。ここで、加圧バネ11,12が定着ローラ1と加圧ローラ6それぞれの回転軸の両端部を互いに近づけさせる加圧力を発揮することで、定着ローラ1及び加圧ローラ6間に圧接力がかかる。
【0015】
転写部でトナー画像が転写された記録材Pは、図1に示すように、定着ローラ1と加圧ローラ6との間に形成された定着ニップ部で挟持搬送され、かつ加熱・加圧されてトナー画像が定着された後、排出トレイ116へと送られる。
定着ローラ1は、加圧ローラ6との間で互いに圧接された状態で、天板4に設けられた不図示の固定手段によって天板4に固定されている。
【0016】
図2には、回転軸5を中心に定着ローラ1が開放されることで、定着ローラ1と加圧ローラ6との間の加圧状態が解除された状態が示されている。定着部でのジャム処理時などに図2の圧解除を利用する。図3の上面図には、定着ローラ1に対する加圧ローラ6の角度(交差角)が角度A(図3(a))、角度B(図3(b))の2種類設けられた構成において、定着ニップ部よりも下方にある部品のみが示されている。
加圧バネ11,12による加圧力(圧接力)が大きくなると、上下のローラに撓みが生じてしまい、加圧時にローラ端部に比べて中央の圧が小さくなる圧抜けの問題が懸念される。
そのため、上下のローラに、加圧力に準じた交差角を設けて加圧することで、紙幅方向
(記録材搬送方向に直交する記録材の幅方向)に均一なニップを形成することが可能となる。これにより、ローラの撓み量によって交差角の大きさを変えることができ、加圧力が大きい場合には交差角も大きく(交差角が大きい場合には加圧力も大きく)することができる。
薄紙は紙シワが発生し易いため寄り力が小さくなるように加圧力も小さく抑え、一方、厚紙は紙シワになりにくく、定着性を満足させるには薄紙より高い加圧力が必要なため加圧力の設定を大きくすることとなる。この場合、交差角も薄紙時は小さく、厚紙時は大きく設定することになる。
【0017】
図3(a)は、加圧ユニット回転軸16を中心に交差角Aだけ加圧ローラ6を回転させた状態を示している。加圧力が比較的小さい場合は、図3(a)のように微小な交差角Aだけ加圧ローラ6を回転することで定着ニップ部内の圧バランスを調整することができる。操作方法としては、図2のような定着圧解除状態において、ユーザが把手14を操作して加圧ローラ6を交差角Aの位置に設定する。このとき、把手14の先端部に位置する指示部19に紙の厚さを示すマークなどを入れておくことで、ユーザは設定した交差角が薄紙用か厚紙用かを判別し易くなる。
【0018】
図3(b)は、加圧ユニット回転軸16を中心に交差角Bだけ加圧ローラ6を回転させた状態を示している。厚紙通紙時など図3(a)の状態より加圧力が大きい場合は、図3(a)よりさらに大きな交差角Bとなるように加圧ローラ6を回転させることで、定着ニップ部内の圧バランスを調整する。操作方法は図3(a)の場合に説明した方法と同様であり、指示部19に示した厚紙マークに把手14の先端部を合わせることで、ユーザは厚紙用の交差角に設定したことを認識できる。
【0019】
図4は、図3で示した2つの交差角設定時における加圧バネ12の作用長を示したものである。図3(a)における把手14の位置を14aで示し、図3(a)における加圧バネ12の位置を12aで示している。また、図3(b)における把手14の位置を14bで示し、図3(b)における加圧バネ12の位置を12bで示している。
加圧バネ12の上部を規制している加圧軸受け8の高さは一定で、加圧バネ12の下部を規制している受け面18が斜面形状となっているため、図3(a),(b)で加圧バネ12の作用長は異なっている。すなわち、図4に示すように、加圧バネ12aに対して加圧バネ12bの方が作用長は短く加圧力の高い設定となっている。
よって、図3で示したように交差角の設定を変えることで、同時に加圧力の設定も変えることが可能であるため、ユーザの操作を最小限に留めることができる。
【0020】
以上のように本実施例によれば、記録材の種類に応じて加圧力及び交差角を変更することができる。これにより、定着ローラ1と加圧ローラ6との間の加圧力を、回転軸方向の一方の端部から他方の端部まで均一にしつつ、ニップ部で搬送される記録材にシワが発生してしまうことを記録材の種類によらずに防止できる。したがって、定着性をより向上することが可能となる。
ここで、本実施例においては、記録材の厚さに応じて加圧力及び交差角を変更した形態を示したが、記録材の種類としては記録材の厚さに限るものではなく、記録材のサイズ(大きさ)であってもよい。すなわち、記録材の厚さや記録材のサイズに応じて加圧力及び交差角を変更するものであればよい。従来技術では、記録材のサイズが変わると記録材にかかる圧力も変化してしまうため、定着条件が不安定になることが懸念されるが、本発明を適用することで、記録材のサイズが変わった場合でも、定着条件を安定させることができる。
【実施例2】
【0021】
以下に、実施例2について図5〜図7を用いて説明する。なお、実施例1と同様の構成
部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図5は本実施例において、加圧ローラ6のリンク機構を示した概略斜視図であり、図5(a)と図5(b)は、加圧ローラ6の軸方向において反対方向から見た図となっている。
図6は本実施例において、加圧力と交差角の小さい薄紙通紙時のカム動作を示した概略断面図である。図7は本実施例において、加圧力と交差角の大きい厚紙通紙時のカム動作を示した概略断面図である。
【0022】
図5(a)において、20は加圧ローラ6を上下方向に操作する加圧レバー、21は加圧レバー20の回転軸、22は加圧ローラ6に交差角を与える交差レバー、23は交差レバー22の回転軸である。また、24は加圧バネ、25は加圧ローラ6の加圧・圧解除を操作する加圧カム、26は加圧ローラ6の交差角を操作する交差カムである。31は加圧カム25及び交差カム26共通のカム回転軸、32はカム回転軸31を回転制御するモータである。
図5(b)において、27は加圧レバー20と同様加圧ローラ6を上下方向に操作する加圧レバー、28は加圧レバー27の回転軸、29は加圧ローラ6に交差レバー22と反対側に交差角を与える交差レバー、30は交差レバー29の回転軸である。
本実施例においては、図5(a)の紙面において右から左、図5(b)の紙面において左から右に記録材Pが搬送されるものとする。
【0023】
ここで、加圧レバー20,27、回転軸21,28、加圧バネ24は圧接手段に相当する。また、加圧レバー20,27、回転軸21,28、加圧カム25、カム回転軸31、モータ32は、離間手段に相当する。また、交差レバー22,29、回転軸23,30、交差カム26、カム回転軸31、モータ32は、移動手段に相当する。また、加圧レバー20,27、回転軸21,28、加圧カム25、交差カム26、カム回転軸31、モータ32は、可変手段に相当する。
【0024】
加圧レバー20と加圧レバー27は左右対称形状を成しており、加圧ローラ6の回転軸を上下方向で挟持しており、左右方向には加圧ローラ6の回転軸を規制していない状態となっている。このため、加圧カム25によって加圧レバー20,27の一端を上下操作することで、回転軸21,28を中心に加圧ローラ6を上下に移動することが可能となっている。本実施例において、左右方向は、記録材の搬送方向である。
【0025】
また、交差レバー22に設けられている回転軸23は、加圧ローラ6の回転軸に対して下側に位置し、交差レバー29に設けられている回転軸30は、加圧ローラ6の回転軸に対して上側に位置するように構成されている。
また、交差レバー22,29はともに加圧ローラ6の回転軸を左右方向で挟持しており、上下方向には加圧ローラ6の回転軸を規制していない状態となっている。このため、交差カム26によって交差レバー22の端部が上方に移動すると、図5(a)において、交差レバー22は回転軸23を中心に反時計回りに回転し、交差レバー22は加圧ローラ6の回転軸を左方向(記録材搬送方向上流から下流)に移動させる。
一方、交差カム26によって交差レバー29の端部が上方に移動すると、図5(b)において、交差レバー29は回転軸30を中心に時計回りに回転し、交差レバー29は加圧ローラ6の回転軸を左方向(記録材搬送方向下流から上流)に移動させる。
【0026】
よって、加圧ローラ6は不図示の回転軸(実施例1の加圧ユニット回転軸16に相当)を中心に回転し、定着ローラ1に対して交差角を持つ状態になる。加圧カム25と交差カム26は同一軸(カム回転軸31)上にあり、ワンウェイクラッチ等で一方向のみにトルクが掛かる構成であり、且つ、加圧カム25と交差カム26の駆動方向が逆向きに設定されている。この時、モータ32からの正転・逆転駆動によって加圧カム25または交差カ
ム26の一方のみに駆動が掛かるため加圧操作中は交差角が一定であり、交差角操作中は加圧操作が停止している。具体的な操作方法は図6,7を用いて以下に説明する。
【0027】
図6(a)は、加圧カム25が加圧レバー20を押し下げることで加圧ローラ6が定着ローラ1から離れた圧解除状態(離間状態)を示す概略断面図である。図6(b)は、交差カム26が交差レバー22を操作している状態を示す概略断面図である。図6(c)は、加圧カム25が加圧レバー20から離れて加圧ローラ6が定着ローラ1に加圧された状態を示す概略断面図である。
【0028】
初期状態では図6(c)に示すように、加圧カム25が加圧レバー20から離れており、加圧レバー20は加圧バネ24からの反力によって上方に加圧されている。よって、加圧レバー20に回転軸を上下方向で挟持された加圧ローラ6も定着ローラ1に押圧された状態になっている。
【0029】
ここで、図6(a)に示すように、加圧カム25をカム回転軸31を中心に図の矢印方向(時計回り)に180°回転させて加圧レバー20を下方に押し下げることで、加圧レバー20と共に加圧ローラ6も下方に押し下がる。また、同様に、加圧ローラ6の右端部でも加圧レバー27が同様の操作を行い、加圧ローラ6を押し下げることで加圧ローラ6と定着ローラ1は圧解除状態となる。加圧カム25にはワンウェイクラッチが内蔵されており、図の矢印方向(時計回り)に回転する場合のみ加圧カム25に駆動がかかる構成となっている。
【0030】
次に、図6(b)に示すように、交差カム26をカム回転軸31を中心に図の矢印方向(反時計回り)に90°回転させて交差レバー22を押し上げることで、加圧バネ24の作用長を短くする。ここで、加圧バネ24の作用長を短くすることで、離間状態を解除した後の圧接力の設定が変更される。交差レバー22が押し上げられることで、交差レバー22は回転軸23を中心に回転するため加圧ローラ6の回転軸が左端部において図6(b)における右方向(記録材搬送方向上流から下流)に移動することになる。
【0031】
この時、交差レバー22と同じように、交差カム26の回転により交差レバー29が回転すると、加圧ローラ6の回転軸が右端部において図6(b)における左方向(搬送方向下流から上流)に移動する。これは、図5(b)で示したように、加圧ローラ6の回転軸に対する位置が、交差レバー29の回転軸30と、交差レバー22の回転軸23とでは異なるように構成されているためである。
結果として、加圧ローラ6は不図示の加圧ユニット回転軸を中心に回転し、定着ローラ1に対して交差角を持つことになる(離間状態を解除した後の交差角の設定が変更されることになる)。交差カム26にはワンウェイクラッチが内蔵されており図6(b)の矢印方向(反時計回り)に回転時のみ交差カム26に駆動がかかる構成となっている。
【0032】
最後に、図6(c)に示すように、加圧カム25をカム回転軸31を中心に図の矢印方向(時計回り)に180°回転させて加圧カム25と加圧レバー20を離間させることで、加圧レバー20が加圧バネ24からの反力によって引き上げられることとなる。
よって、加圧レバー20に回転軸(左端部)を上下方向に挟持された加圧ローラ6は、定着ローラ1との離間状態が解除され、交差角(図6(b)で示した状態)を維持したまま再度定着ローラ1へ押圧されることになる。反対側でも加圧レバー27の操作で加圧ローラ6の回転軸(右端部)が引き上げられて定着ローラ1に押圧されるため、結果として加圧ローラ6は交差角(図6(b)で示した状態)を維持したまま元の加圧状態に戻ることになる。
【0033】
以上、図6(a),(b),(c)を用いて説明したように、定着ローラ1と加圧ロー
ラ6における、加圧動作と交差角設定動作を連動させ、かつ加圧力と交差角の設定を短時間で行うことが可能となる。このため、通紙中の記録材変更時などでもスループットを落とすことなく紙種に合った定着条件(加圧力と交差角)に変更することができる。また、1つの駆動源からの動力で加圧動作と交差角設定動作を操作できるため、スペースを取らずに製品の小型化を可能とする。
【0034】
図7(a)は、加圧カム25が加圧レバー20を押し下げることで加圧ローラ6が定着ローラ1から離れた圧解除状態を示す概略断面図である。図7(b)は、交差カム26が交差レバー22を操作している状態を示す概略断面図である。図7(c)は、加圧カム25が加圧レバー20から離れて加圧ローラ6が定着ローラ1に加圧された状態を示す概略断面図である。
【0035】
図6では、加圧力と交差角の小さい薄紙通紙時のカム動作を示しているのに対し、図7では、加圧力と交差角の大きい厚紙通紙時のカム動作を示している。図7(a),(b),(c)における基本的な動作は図6で説明した通りであるが、交差カム26の回転角を変えることで交差レバー22の押上げ量を大きくして加圧力と交差角を図6より大きな値に設定することができる。
このように、図6と加圧力が異なる設定に対しても交差カム26の回転角調整のみで加圧力と交差角が設定できる。
【0036】
以上より、本実施例においても、実施例1同様、使用する記録材の種類に応じて加圧力と交差角設定を調節することで、定着性の向上を図ることができる。と同時に、駆動源からの駆動力によって加圧力と交差角の設定を行うことで、操作性の向上も図ることが可能となる。
また、加圧力が大きい場合に、圧解除せずに交差角を変更すると定着ローラ等の表面に大きなストレスが掛かり破損する可能性もあるが、本実施例の方法では圧解除後に交差角の変更を行うため、定着ローラ等の表面が破損する恐れが無い。
また、近年提案されているメディアセンサなどを用いて記録材の種類を検出させることにより、記録材の種類に対応して加圧力と交差角を可変させるように構成してもよく、このような構成により、定着性と同時に操作性をより高めることが可能となる。
【実施例3】
【0037】
以下に、実施例3について図8,9を用いて説明する。なお、実施例1,2と同様の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
本実施例では、定着ローラ対を離間させることなく、加圧力及び交差角の変更を行う形態について説明する。このような形態は、定着ローラ対(定着ローラ1及び加圧ローラ6)間の加圧力が比較的低く、交差角も小さいような定着装置に好適に適用できる。
【0038】
図8は、本実施例において、定着ローラ対及びリンク機構とその駆動源の概略構成を示した斜視図である。図9は、本実施例において、定着ローラ対及びリンク機構とその駆動源の概略構成を示した正面図である。
図8,9において、33は定着ローラ1に駆動を与えるモータ、34は加圧ローラ6に駆動を与えるモータ、35は加圧ローラ6とモータ34を繋ぐユニバーサルジョイントである。また、モータとローラとの間や、モータとカムとの間に介在する駆動列は省略する。
本実施例においては、実施例2で示した加圧カム25や加圧レバー20、加圧レバー27等の圧解除手段を省いた構成となっている。本実施例においては、交差カム26、カム回転軸31、モータ32が、可変手段に相当する。
【0039】
図8,9において、モータ33及びモータ34からの駆動力によって定着ローラ1と加
圧ローラ6は互いに逆方向に回転している。
本実施例においては、定着ローラ1と加圧ローラ6が圧接状態で、定着ローラ1と加圧ローラ6が回転している状態で、モータ32からの駆動力によって交差カム26を回転させて交差レバー22及び交差レバー29を押し上げることが可能に構成されている。
このような動作により、加圧バネ24の作用長が小さくなるため加圧力が増し、と同時に、交差レバー22と交差レバー29が加圧ローラ6の両端を互いに反対方向に押圧することで加圧ローラ6が定着ローラ1に対して交差回転し、交差角が変更することになる。
ここで、加圧ローラ6が交差角を持つ際にも、加圧ローラ6とモータ34との間にユニバーサルジョイント35を介することで、モータ34からの駆動力を加圧ローラ6に確実に伝達することができる。
【0040】
以上のように本実施例によれば、定着ローラ1と加圧ローラ6を離間させることなく、定着ローラ1と加圧ローラ6の回転中に、加圧力と交差角の設定を変えることができる。これにより、種類の異なる記録材を連続通紙した際にも、駆動を止めることなく通紙中の紙間にて加圧力の設定変更を行うことができるため、定着性の向上に加えて更なる操作性の向上を図ることが可能となる。
ここで、本実施例においては、定着ローラ1及び加圧ローラ6はそれぞれ別々のモータを駆動源としているが、共通の駆動源で駆動してもよく、片側のみの駆動としてもよい。このような構成でも上記同様な効果を得る事が可能である。上述した実施例1,2においても同様である。
【0041】
上述した実施例1〜3は、記録材Pに対する加圧手段を有する定着装置についてのみ説明を行っているが、定着装置としては、これに限るものではない。すなわち、加圧手段に加熱手段も加えることで「圧+熱」によって定着を行う定着装置においても本発明を好適に適用することができ、このような定着装置においても上記同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0042】
1…定着ローラ、6加圧ローラ、11,12…加圧バネ、14…把手、16…加圧ユニット回転軸、17,18…受け面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに圧接して形成されたニップ部で、トナー像が形成された記録材を挟持搬送し、該記録材上に形成されたトナー像を該記録材に定着させるための一対の回転体と、
前記一対の回転体が互いに圧接された状態となるように、前記一対の回転体それぞれの回転軸の両端部を互いに近づけさせる圧接手段と、
を有する定着装置において、
前記ニップ部で挟持搬送される記録材のトナー像形成面に直交する直交方向において前記一対の回転体を見た場合に、前記一対の回転体の回転軸が前記ニップ部を維持したまま互いに交差した状態となるように、前記一対の回転体のうち少なくともいずれか一方の回転体を移動させる移動手段と、
前記直交方向において前記一対の回転体を見た場合に、前記移動手段を調節して、互いに交差する2つの前記回転軸がなす交差角を変更すると同時に、前記圧接手段を調節して、前記一対の回転体間の圧接力を変更することが可能な可変手段と、
を備え、
前記可変手段は、前記交差角のうち鋭角側が大きくなった場合には、前記圧接力が大きくなるように、前記交差角及び前記圧接力を変更することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記可変手段は、
前記一対の回転体を離間させる離間手段を備え、
前記離間手段により前記一対の回転体を離間させた状態で、離間状態を解除した後の前記圧接力及び前記交差角の設定を変更し、その後、前記離間手段による離間状態を解除し、前記圧接手段により前記一対の回転体が互いに圧接された状態とすることで、前記交差角及び前記圧接力を変更することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記可変手段は、前記一対の回転体が互いに圧接された状態、かつ、前記一対の回転体が回転している状態で、前記交差角及び前記圧接力を変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−133012(P2012−133012A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283440(P2010−283440)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】