定着装置
【課題】適正な定着性能を得ることができる定着装置を提供することを目的とする。
【解決手段】定着装置100は、記録シートを熱定着するためのニップ部を形成する第1定着部材および第2定着部材(加圧ローラ140)を備える。定着装置100には、付勢部材(引張コイルバネ540)の付勢力によって第1定着部材を第2定着部材に向けて付勢する付勢機構500と、第1定着部材に対して付勢部材の付勢力に抗する押圧力を与えることで、ニップ部の幅を、第1ニップ幅から当該第1ニップ幅よりも小さな第2ニップ幅に切り替えるとともに、押圧力を解放することでニップ部の幅を第2ニップ幅から第1ニップ幅に切替可能な切替部材700と、付勢力に抗する押圧力が解放された状態において、第1定着部材の移動を規制してニップ部の第1ニップ幅の最大値を規定する規制部(溝430の底面)が設けられている。
【解決手段】定着装置100は、記録シートを熱定着するためのニップ部を形成する第1定着部材および第2定着部材(加圧ローラ140)を備える。定着装置100には、付勢部材(引張コイルバネ540)の付勢力によって第1定着部材を第2定着部材に向けて付勢する付勢機構500と、第1定着部材に対して付勢部材の付勢力に抗する押圧力を与えることで、ニップ部の幅を、第1ニップ幅から当該第1ニップ幅よりも小さな第2ニップ幅に切り替えるとともに、押圧力を解放することでニップ部の幅を第2ニップ幅から第1ニップ幅に切替可能な切替部材700と、付勢力に抗する押圧力が解放された状態において、第1定着部材の移動を規制してニップ部の第1ニップ幅の最大値を規定する規制部(溝430の底面)が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録シート上にトナー像を熱定着させる定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録シートを加熱する加熱部材と、加熱部材との間でニップ部を形成する加圧ローラと、加熱部材を加圧ローラに向けて付勢する付勢機構と、加熱部材に対して付勢機構の付勢力に抗する押圧力を与えることでニップ部の幅を切り替える切替部材とを備えた定着装置が知られている(特許文献1参照)。この技術では、切替部材によって、ニップ部の幅が、熱定着を行うための第1ニップ幅と、ジャム処理を行うための第1ニップ幅よりも小さな第2ニップ幅(0)に切り替えることが可能となっている。
【0003】
具体的に、この技術では、付勢機構が、加熱部材を支持した状態で揺動可能なアーム部材と、アーム部材を介して加熱部材を加圧ローラに向けて付勢する付勢部材とを備え、切替部材が、アーム部材を付勢部材の付勢力に抗して押圧するカムを備えた構造となっている。そして、この技術では、アーム部材からカムが外れて、アーム部材の移動がカム等の他の部材で規制されないことによって付勢部材の付勢力がすべて加圧ローラに加わって、ニップ部の幅が第1ニップ幅となり、カムがアーム部材を付勢力に抗して押圧して付勢力を受けることで、ニップ部の幅が第2ニップ幅となるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−181937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、例えば使用により加圧ローラの硬度が変化した場合には、ニップ部の幅が第1ニップ幅のときにおいて、付勢力を加圧ローラですべて受けていることから、第1ニップ幅が許容される範囲の最大値よりも大きなニップ幅になる場合がある。この場合には、適正な定着性能を得られなくなるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、適正な定着性能を得ることができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る定着装置は、記録シート上に現像剤像を熱定着するための装置であって、可撓性を有する筒状部材と、前記筒状部材を挟むように配置され、前記記録シートを熱定着するためのニップ部を形成する第1定着部材および第2定着部材と、を備えている。
また、定着装置には、付勢部材を有し、当該付勢部材の付勢力によって前記第1定着部材を前記第2定着部材に向けて付勢する付勢機構と、前記第1定着部材に対して前記付勢部材の付勢力に抗する押圧力を与えることで、前記ニップ部の幅を、第1ニップ幅から当該第1ニップ幅よりも小さな第2ニップ幅に切り替えるとともに、前記押圧力を解放することで前記ニップ部の幅を前記第2ニップ幅から前記第1ニップ幅に切替可能な切替部材と、前記付勢力に抗する押圧力が解放された状態において、前記第1定着部材の移動を規制して前記ニップ部の第1ニップ幅の最大値を規定する規制部と、が設けられている。
【0008】
本発明によれば、第1定着部材が第1ニップ幅が大きくなる方向に移動しようとしても、規制部によってその移動が規制されるので、ニップ部の幅が第1ニップ幅の最大値を超えることを防止することができる。そのため、ニップ部の幅を確実に第1ニップ幅に維持することができるので、適正な定着性能を得ることができる。
【0009】
なお、本発明において、前記第1定着部材は、前記筒状部材の内周面に摺接するニップ板であり、前記第2定着部材は、前記ニップ板との間で前記筒状部材を挟むバックアップ部材であってもよい。
【0010】
また、本発明において、前記ニップ板は、前記記録シートの搬送方向に延びて前記ニップ部を形成するベース部と、当該ベース部から前記バックアップ部材側とは反対側に屈曲する屈曲部と、を有するのが望ましい。
【0011】
これによれば、ニップ板の屈曲部に筒状部材が摺動するので、例えばニップ板の端縁に筒状部材が摺動する構造に比べ、筒状部材の摺動性を向上することができる。
【0012】
また、本発明において、前記ニップ板は、前記屈曲部から前記搬送方向における前記ベース部とは反対側に延びるフランジ部を有し、前記屈曲部と前記フランジ部の間の隅部に潤滑剤が設けられているのが望ましい。
【0013】
これによれば、潤滑剤によって筒状部材の摺動性をより向上することができる。
【0014】
また、本発明において、前記規制部は、前記第1定着部材の移動を規制したときに前記筒状部材と前記フランジ部との間に間隔が空くような位置に設けられるのが望ましい。
【0015】
これによれば、筒状部材がフランジ部に接触しないことによって、隅部にある潤滑剤を筒状部材で必要以上に運ぶことが抑えられるので、隅部に潤滑剤を確実に保持しておくことができ、潤滑剤を長期間にわたって利用することができる。
【0016】
また、本発明において、前記規制部は、前記第1定着部材の移動を規制したときに前記筒状部材が前記屈曲部とは非接触となるような位置に設けられるのが望ましい。
【0017】
これによれば、筒状部材が屈曲部に倣って変形することによる筒状部材の劣化を抑えることができる。
【0018】
また、本発明において、前記ニップ部の幅が前記第2ニップ幅のときに、前記筒状部材が前記屈曲部とは非接触となるように前記切替部材が構成されているのが望ましい。
【0019】
これによれば、ニップ幅が第1ニップ幅のときに筒状部材が屈曲部と接触するような場合であっても、第2ニップ幅のときには筒状部材が屈曲部とは非接触となるので、第2ニップ幅のときにおける筒状部材の劣化を抑えることができる。
【0020】
また、本発明において、前記ニップ板が前記ベース部から搬送方向に沿って延びる延在部を有する場合には、前記規制部は、前記第1定着部材の移動を規制したときに前記筒状部材が前記延在部の縁部とは非接触となるような位置に設けられるのが望ましい。
【0021】
これによれば、筒状部材が延在部の縁部に摺接することによる筒状部材の劣化を抑えることができる。
【0022】
なお、本発明において、前記付勢機構は、定着装置のフレームに回動可能に支持されるとともに、前記第1定着部材を押圧するアーム部材を有し、前記アーム部材が前記付勢部材によって前記フレームに向けて付勢されるように構成されていてもよい。
【0023】
また、本発明において、前記規制部は、前記フレームのうち前記アーム部材に対して前記付勢部材の付勢方向に対向する面であり、当該アーム部材と当接することで前記第1定着部材の移動を規制するように構成されていてもよい。
【0024】
また、本発明において、前記切替部材は、前記アーム部材を前記付勢部材の付勢力に抗して押圧することで、前記ニップ部の幅を調整可能なカムを有していてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ニップ部の第1ニップ幅の最大値が規制部によって規定されるので、適正な定着性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の定着装置を備えたレーザプリンタの概略構成を示す図である。
【図2】定着装置の断面図である。
【図3】ニップ板、ハロゲンランプ、反射部材およびステイの斜視図である。
【図4】定着装置を分解して示す分解斜視図である。
【図5】アーム部材を示す斜視図(a)と、アーム部材と溝の関係を示す簡略断面図(b)である。
【図6】突出部を示す拡大斜視図(a)と、側面図(b)である。
【図7】定着装置を後斜め上から見た斜視図である。
【図8】定着装置を示す側面図(a)と、側壁をシャフト付近で切った簡略断面図(b)である。
【図9】搬送ローラ付近の構造を示す拡大断面図である。
【図10】切替部材によって切り替えられるニップ部の状態を示す説明図(a)〜(c)である。
【図11】カムとアーム部材の関係を示す説明図(a)〜(c)である。
【図12】アーム部材が溝の底面に当接した状態を示す説明図(a)と、ニップ部の幅が第1ニップ幅の最大値になった状態を示す説明図(b)である。
【図13】シャフトを支持する部位の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、まず、本発明の実施形態に係る定着装置100を備えたレーザプリンタ1(画像形成装置)の概略構成を簡単に説明した後、定着装置100の詳細な構成について説明する。
【0028】
また、以下の説明において、方向は、レーザプリンタ1を使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0029】
<レーザプリンタの概略構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、記録シートの一例としての用紙Sを供給する給紙部3と、露光装置4と、用紙S上にトナー像(現像剤像)を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙S上に転写されたトナー像を熱定着する定着装置100とを主に備えている。
【0030】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、給紙トレイ31と、用紙押圧板32と、給紙機構33とを主に備えている。給紙トレイ31に収容された用紙Sは、用紙押圧板32によって上方に寄せられ、給紙機構33によってプロセスカートリッジ5(感光体ドラム61と転写ローラ63との間)に向けて供給される。
【0031】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しないレーザ発光部や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。この露光装置4では、レーザ発光部から出射される画像データに基づくレーザ光(鎖線参照)が、感光体ドラム61の表面で高速走査されることで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0032】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とから構成されている。
【0033】
ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能に装着される構成となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、現像剤の一例としてのトナーを収容するトナー収容部74とを主に備えている。
【0034】
このプロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0035】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を用紙Sが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像が用紙S上に転写される。
【0036】
定着装置100は、プロセスカートリッジ5の後方に設けられている。用紙S上に転写されたトナー像は、定着装置100を通過することで用紙S上に熱定着される。その後、用紙Sは、搬送ローラ23,24によって排紙トレイ22上に排出される。
【0037】
<定着装置の詳細構成>
図2に示すように、定着装置100は、筒状部材の一例としての定着ベルト110と、ハロゲンランプ120と、第1定着部材の一例としてのニップ板130と、第2定着部材(バックアップ部材)の一例としての加圧ローラ140と、反射部材150と、ステイ160とを主に備えている。
【0038】
定着ベルト110は、耐熱性と可撓性を有する無端状(筒状)のステンレス綱製のベルトであり、カバー部材200に形成されたガイド部(ニップ上流ガイド310、ニップ下流ガイド320、上部ガイド330および前部ガイド340)により回転が案内されている。ここで、カバー部材200は、第1カバー部材210と、第2カバー部材220とを主に備えて構成されている。
【0039】
第1カバー部材210は、断面視略U形状をなして左右方向に長く延びるように形成されており、ステイ160を挟んでハロゲンランプ120とは反対側でステイ160を覆うように配置されている。第1カバー部材210は、後側壁211と、前側壁212と、後側壁211および前側壁212の上端同士を連結するように延びる上壁213と、後側壁211の下端から後方に向けて延びる延出壁214とを主に有している。
【0040】
そして、前側壁212の右端側には、定着ベルト110の前部分を案内する前部ガイド340が形成され、前側壁212の下端には、定着ベルト110の前側下部を案内するニップ上流ガイド310が形成されている。また、延出壁214の後端には、定着ベルト110の後側下部を案内するニップ下流ガイド320が形成されている。
【0041】
第2カバー部材220は、断面視略L形状をなして左右方向に長く延びるように形成されており、第1カバー部材210の後側壁211と上壁213の一部を覆うように配置されている。第2カバー部材220は、上壁221と、上壁221の後端から下方に向けて延びる後壁222と、後壁222の下端から後方に向けて延びる延出壁223とを主に有している。そして、上壁221には、定着ベルト110の上部を案内する上部ガイド330が形成されている。
【0042】
ハロゲンランプ120は、輻射熱を発してニップ板130および定着ベルト110(ニップ部N)を加熱することで用紙S上のトナーを加熱する部材であり、定着ベルト110の内側において定着ベルト110およびニップ板130の内面から所定の間隔をあけて配置されている。
【0043】
このハロゲンランプ120は、図3に示すように、細長い円筒状のガラス管121内に、図示しないフィラメントを配置し、ガラス管121の長手方向両端部を閉じてその内部にハロゲン元素を含む不活性ガスを封入することにより形成されている。このハロゲンランプ120の長手方向両端には、ガラス管121内のフィラメントの端部と電気的に接続された一対の電極122が設けられている。
【0044】
図2に戻り、ニップ板130は、ハロゲンランプ120からの輻射熱を受ける板状の部材であり、その下面が定着ベルト110の内周面に摺接するように配置されている。本実施形態において、ニップ板130は、金属製であり、例えば、後述するスチール製のステイ160より熱伝導率が大きい、アルミニウム板などを折り曲げることで形成されている。なお、ニップ板130をアルミニウム製とした場合には、ニップ板130の熱伝導性を向上させることが可能となっている。
【0045】
図3に示すように、ニップ板130は、ベース部131と、第1延在部132と、第2延在部133とを主に有している。
【0046】
ベース部131は、定着ベルト110の内周面と摺接するとともに、用紙Sの搬送方向に延びてニップ部Nを形成する部分であり、ハロゲンランプ120からの熱を定着ベルト110を介して用紙S上のトナーに伝達する。そして、図2に示すように、ベース部131の搬送方向上流側の端部には、定着ベルト110の内側(加圧ローラ140側とは反対側)に屈曲する屈曲部131Aが形成されている。
【0047】
これにより、定着ベルト110がニップ板130の端縁と擦れて磨耗するのを抑えることが可能となっている。
【0048】
また、屈曲部131Aの搬送方向上流側の端部には、当該屈曲部131Aから搬送方向上流側(搬送方向におけるベース部131とは反対側)に延びるフランジ部131Bが形成されている。そして、屈曲部131Aとフランジ部131Bの間の隅部には、潤滑剤Gが設けられている。これにより、潤滑剤Gによって定着ベルト110の摺動性をより向上することが可能となっている。
【0049】
図3に示すように、第1延在部132および第2延在部133は、平板状をなしており、ベース部131の後端から後方に向けて延びるように形成されている。第1延在部132は、ベース部131後端の左右方向における中央付近に1つ形成されており、その上面にサーモスタット170(図2参照)が対面して配置される。また、第2延在部133は、ベース部131後端の左右方向における中央付近と右端付近にそれぞれ1つずつ形成されており、それぞれの上面に図示せぬ2つのサーミスタが対面して配置される。
【0050】
図2に示すように、加圧ローラ140は、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟むことで定着ベルト110との間にニップ部Nを形成する部材であり、ニップ板130の下方に配置されている。本実施形態においては、ニップ部Nを形成するために、ニップ板130および加圧ローラ140の一方を他方に向けて付勢している。そして、この加圧ローラ140は、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟んだ状態で回転することで、当該定着ベルト110とともに用紙Sを搬送するようになっている。
【0051】
加圧ローラ140は、本体筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が伝達されて回転駆動するように構成されており、回転駆動することで定着ベルト110(または用紙S)との摩擦力により定着ベルト110を従動回転させる。トナー像が転写された用紙Sは、加圧ローラ140と加熱された定着ベルト110の間(ニップ部N)を搬送されることでトナー像(トナー)が熱定着されることとなる。
【0052】
反射部材150は、ハロゲンランプ120からの輻射熱をニップ板130に向けて反射する部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120を取り囲む(覆う)ように、ハロゲンランプ120から所定の間隔をあけて配置されている。
【0053】
この反射部材150は、赤外線および遠赤外線の反射率が大きい、例えば、アルミニウム板などを断面視略U形状に湾曲させて形成されている。より詳細に、反射部材150は、湾曲形状をなす反射部151と、反射部151の前後方向における両端部から前後方向外側に向けて延びるフランジ部152とを主に有している。
【0054】
ステイ160は、ニップ板130(ベース部131)の前後の端部を反射部材150(フランジ部152)を介して支持することで加圧ローラ140からの荷重を受ける部材であり、定着ベルト110の内側で反射部材150を覆うように配置されている。なお、ここでいう荷重は、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する構成においては、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する力の反力をいうものとする。
【0055】
このようなステイ160は、比較的剛性が高い、例えば、鋼板などを反射部材150(反射部151)の外面形状に沿った断面視略U形状に折り曲げることで形成されている。図3に示すように、ステイ160は、右側に設けられた右側固定部161と、左側に設けられた左側固定部162とを有している。右側固定部161および左側固定部162は、いずれもステイ160の上壁から後方に向けて延びるように形成されており、それぞれ貫通したネジ穴(符号省略)が設けられている。
【0056】
また、図4に示すように、定着装置100は、前述した各部材の他、第1フレーム400と、付勢機構500と、第2フレーム600と、切替部材700とを備えている。
【0057】
第1フレーム400は、樹脂製のフレームであり、主に、下壁部410と、下壁部410の左右方向の両端から上方に突出する一対の側壁420とを備えて構成されている。
【0058】
一対の側壁420は、その下部で加圧ローラ140を回転可能に支持し、その上部で加熱ユニットHUを上下方向にスライド可能に支持している。ここで、加熱ユニットHUは、前述した定着ベルト110、ハロゲンランプ120、ニップ板130、反射部材150、ステイ160およびカバー部材200で構成される構造体を備える他、この構造体(例えばステイ160)の左右両端を支持するとともに定着ベルト110の左右両端部を案内するサイドガイド(図示略)を備えている。
【0059】
そして、前記サイドガイドが一対の側壁420にスライド可能に支持されることで、加熱ユニットHUが上下に移動可能となっている。また、左側の側壁420には、加圧ローラ140を駆動するための駆動ギヤ440を設けられている。
【0060】
具体的に、駆動ギヤ440は、加圧ローラ140の左側端部に一体に設けられており、図示せぬモータから駆動力を受けることで加圧ローラ140と一体に回転するようになっている。また、一対の側壁420には、付勢機構500が設けられている。
【0061】
付勢機構500は、加熱ユニットHU(ニップ板130)を加圧ローラ140に向けて付勢する機構であり、主に、一対のアーム部材510と、付勢部材の一例としての一対の引張コイルバネ540とを備えて構成されている。
【0062】
一対のアーム部材510は、加熱ユニットHUの左右両端部の上方に配置されており、それぞれ左右対称な形状で形成されている。図5(a)に示すように、アーム部材510は、前後方向に延びるように形成されており、板状の縦壁部520および横壁部530によって断面視L字状に形成されている。
【0063】
縦壁部520は、左右方向に直交する壁であり、その前端部には、下方に延びる第1延在部521が形成されている。この第1延在部521には、第1フレーム400の側壁420に形成される図示せぬ軸部に回動可能に支持される回動中心穴522が形成されている。これにより、アーム部材510は、回動中心穴522を中心にして、後端部が上下に揺動可能となっている。
【0064】
また、縦壁部520の後側には、横壁部530よりも下方に突出するように延びる第2延在部523が形成されている。この第2延在部523は、図4および図5(b)に示すように、第1フレーム400の各側壁420に形成される溝430に入り込んでいる。この溝430は、上方に開口し、規制部の一例としての底面431を有しており、この底面431が、アーム部材510の第2延在部523に対して上下方向(後述する引張コイルバネ540の付勢方向)に対向している。
【0065】
これにより、溝430の底面431に第2延在部523の下端が当接したときには、アーム部材510の下方への移動が規制されて、それ以上、加熱ユニットHUが下方へ下がらないようになっている。
【0066】
また、第2延在部523の後側には、後方に延びた後上方に屈曲するフック部524が形成されている。そして、このフック部524と第1フレーム400の側壁420との間に引張コイルバネ540が設けられることで、アーム部材510の後端側(詳しくはアーム部材510の後述する押圧部531を挟んで回動軸とは反対側)の部分が第1フレーム400に向けて付勢されるようになっている。
【0067】
横壁部530は、上下方向に直交する壁であり、その略中央部が加熱ユニットHUを押圧するための押圧部531となっている。この押圧部531は、前述したフック部524よりも左右方向外側に配置されている。言い換えると、引張コイルバネ540は、押圧部531よりも左右方向内側(用紙Sの幅方向内側)に配置されている。
【0068】
これにより、付勢機構500から第1フレーム400の一対の側壁420に対して左右方向内側に向かう力が発生するようになっている。
【0069】
なお、アーム部材510(押圧部531)には、加熱ユニットHUが支持されており、アーム部材510の上下動に応じて加熱ユニットHUが上下動するようになっている。
【0070】
図4に示すように、第2フレーム600は、左右方向に延びる長尺状の樹脂製フレームであり、加熱ユニットHUを挟んで加圧ローラ140とは反対側に配置され、第1フレーム400の一対の側壁420に架け渡されるように設けられている。第2フレーム600は、長尺状の本体部610と、本体部610の左右の側面611の前側上部から左右方向外側に突出するカバー部620とを備えている。
【0071】
本体部610は、一対の側壁420の間の距離よりも短く形成されており、一対の側壁420の間に入り込むように配置されている。そして、本体部610の左右の側面611の後側下部には、左右方向外側(用紙Sの幅方向外側)に突出する突出部630が形成されている。
【0072】
突出部630は、側壁420の左右方向内側に配置されており、図6(a)に示すように、その先端面631が一対の側壁420と間隔を空けて配置されるような高さで形成されている。これにより、付勢機構500によって一対の側壁420が左右方向内側に押されて撓んだ場合には、側壁420が先端面631と当接することで、側壁420の変形を抑えることが可能となっている。すなわち、本実施形態では、突出部630の先端面631が、側壁420の変形を規制する規制面となっている。
【0073】
そして、このように側壁420の変形を抑えることで、側壁420に設けた駆動ギヤ440の位置が左右にずれることが抑えられるので、駆動ギヤ440を確実に作動させることが可能となっている。また、一対の側壁420と先端面631との間には間隔が空いているので、第1フレーム400と第2フレーム600の組み付けを容易にすることが可能となっている。
【0074】
また、図6(b)に示すように、突出部630は、第1板状部632と、当該第1板状部632に直交(交差)する第2板状部633と、当該第2板状部633に直交する第3板状部634とを備え、これらの板状部632〜634によってh字状に形成されている。これにより、突出部630の剛性を向上することができるので、一対の側壁420の変形を突出部630で確実に抑えることが可能となっている。また、各板状部632〜634によって突出部630を形成する、すなわち肉薄な構造で突出部を構成するので、第2フレーム600の軽量化を図ることが可能となっている。
【0075】
図7に示すように、第1フレーム400と第2フレーム600は、後述する切替部材700の1本のシャフト710により互いに連結されている。これにより、1本のシャフト710に対して第1フレーム400と第2フレーム600を精度よく位置決めすることが可能となっている。また、位置決め用のシャフトを切替部材700のシャフト710とは別に設ける構造に比べ、部品点数を削減することが可能となっている。
【0076】
シャフト710は、第2フレーム600の左右方向の一端側から他端側に延びるように形成されており、第1フレーム400の一対の側壁420と第2フレーム600を貫通するように設けられている。これにより、第2フレーム600がシャフト710で補強されて第2フレーム600の撓みが抑制されるので、突出部630の先端面631で確実に側壁420の変形を抑えることが可能となっている。また、第2フレーム600の補強に切替部材700のシャフト710を利用するので、補強するためのシャフトを別に設ける構造に比べ、部品点数を削減することが可能となっている。
【0077】
なお、本実施形態では、シャフト710は、金属で形成されている。これにより、2つのフレーム400,600を樹脂製として形状の自由度を向上させつつ、樹脂製のフレーム400,600の剛性を金属製のシャフト710で上げることが可能となっている。
【0078】
第2フレーム600の上部後側には、シャフト710によって支持される3つの被支持部641,642が形成されている。3つのうち2つの被支持部641は、第2フレーム600のうち左右方向(シャフト710の軸方向)の両端部に設けられ、1枚の板状に形成されている。これらの2つの被支持部641には、シャフト710が挿通される貫通穴641Aが形成されている。
【0079】
3つのうち残りの1つの被支持部642は、第2フレーム600のうち左右方向の中間部に設けられ、2枚の板状のリブをシャフト710よりも大径の連結部で一体に連結して構成されている。この被支持部642には、シャフト710が挿通される貫通穴642Aが形成されている。
【0080】
ここで、第2フレーム600の中間部とは、図示のように第2フレーム600の左右方向におけるちょうど中央部であってもよいし、中央部から左右にずれた位置でもよい。
【0081】
上述したように3つの被支持部641,642を配置することで、第2フレーム600が撓むのをシャフト710で確実に抑えることが可能となっている。また、第2フレーム600のシャフト710との連結部分を最小限の大きさにすることができるので、第2フレーム600の軽量化を図ることが可能となっている。
【0082】
また、第2フレーム600の中間部に設けた被支持部642の左右の幅の大きさを、両端部に設けた各被支持部641の左右の幅の大きさよりも大きくしたので、第2フレーム600の中間部が撓むのを確実に抑えることが可能となっている。
【0083】
図8(a),(b)に示すように、第1フレーム400の一対の側壁420の後側(用紙Sの搬送方向の一方側)の上部には、シャフト710が挿通される貫通穴421が形成されている。このようにシャフト710が第1フレーム400の後部と第2フレーム600の後部を貫通することで、第2フレーム600の前部がシャフト710を中心に揺動可能となるが、この揺動は、第1フレーム400の前部および第2フレーム600の前部に設けた突起部422および係合凹部621によって抑えられている。
【0084】
具体的に、突起部422は、第1フレーム400の側壁420の前側(用紙Sの搬送方向の他方側)の上部に左右方向外側に突出するように形成されている。
【0085】
係合凹部621は、第2フレーム600のカバー部620の前側に形成されている。詳しくは、カバー部620は、図7に示すように、本体部610の左右両端から左右方向外側に延びて側壁420の上方を通った後、下方に折れ曲がって側壁420の外面に対向するように形成されており、アーム部材510の回動軸付近を覆っている。そして、図8(a)に示すように、カバー部620のうち側壁420の外面に対向する部位の前側に、係合凹部621が形成されている。
【0086】
係合凹部621は、前方に開口する凹部であり、突起部422を上下方向で挟み込むように当該突起部422に係合している。なお、以上のように構成される第1フレーム400と第2フレーム600を組み付ける場合には、まず、第2フレーム600の一対のカバー部620を第1フレーム400の一対の側壁420の上面に沿ってスライドさせていくことで、一対の係合凹部621を一対の突起部422に係合させる。
【0087】
次に、シャフト710を、第1フレーム400の各貫通穴421と第2フレーム600の各貫通穴641A,642Aに挿入する。これにより、第2フレーム600が第1フレーム400に組み付けられる。より詳しくは、各貫通穴641A,642Aに挿入したシャフト710の両端に後述するカム720を取り付けることで、第2フレーム600が第1フレーム400に組み付けられる。
【0088】
図7に示すように、第2フレーム600の後側上部には、用紙Sを搬送するための搬送ローラ650が左右方向に間隔を空けて複数設けられるとともに、用紙Sをガイドするためのガイドリブ660が各搬送ローラ650を左右方向で挟むように左右方向に間隔を空けて複数設けられている。
【0089】
図9に示すように、搬送ローラ650の左右両側に配置されるガイドリブ660には、搬送ローラ650の回転軸部651を回転可能に支持する略U字の溝状の軸受部661と、搬送ローラ650を軸受部661に案内するためのガイド溝662とが形成されている。ガイド溝662は、軸受部661から第2フレーム600の上面(外面)に延びる溝であり、上面付近の部分が軸受部661の幅よりも大きく形成されて第2フレーム600の上方の空間に連通している。
【0090】
これにより、搬送ローラ650の回転軸部651をガイド溝662(幅広の部分)に挿入しやすくなっている。また、搬送ローラ650の回転軸部651をガイド溝662に沿って挿入させていくと、当該ガイド溝662で回転軸部651が軸受部661に案内されて、搬送ローラ650を第2フレーム600に組み付けることが可能となっている。
【0091】
そして、搬送ローラ650を第2フレーム600に組み付けた後に前述したシャフト710を各フレーム400,600の各貫通穴421,641A,642Aに挿入することで、シャフト710が、ガイド溝662に沿って移動する搬送ローラ650の軌跡上に配置される。これにより、第2フレーム600から搬送ローラ650が外れるのをシャフト710で抑えることができるので、シャフト710とは別の抜け止め用の部材を設ける構造に比べ、部品点数を削減することが可能となっている。
【0092】
また、第2フレーム600の軸受部661付近には、搬送ローラ650を軸受部661、詳しくはU字状の軸受部661の底面側に向けて付勢するトーションバネ670が設けられている。これにより、搬送ローラ650の下方に配置される図示せぬ駆動ローラに向けて搬送ローラ650がトーションバネ670で付勢されるので、搬送ローラ650を駆動ローラに従動させることが可能となっている。
【0093】
図4に示すように、切替部材700は、前述したシャフト710と、シャフト710の両端部に固定(支持)される一対のカム720とを備えている。シャフト710は、第1フレーム400および第2フレーム600に対して回動可能に支持されており、これにより、シャフト710の両端部に設けた一対のカム720がシャフト710とともに各フレーム400,600に対して回動するようになっている。
【0094】
カム720は、アーム部材510を引張コイルバネ540の付勢力に抗して上方に押圧することで、ニップ部の幅を調整可能な樹脂製の部材であり、アーム部材510の下側に配置されている。カム720は、シャフト710が挿通される筒部721と、筒部721から径方向外側に延びる板カム部722とを備えている。
【0095】
筒部721は、板カム部722から左右方向内側(軸方向内側)に突出するように形成され、図8(b)に示すように、第1フレーム400の側壁420の貫通穴421に入り込んで当該貫通穴421で回動可能に支持されている。これにより、樹脂製の第1フレーム400に対して樹脂製のカム720の筒部721が摺動するので、摺動抵抗を減らして、カム720をスムーズに回動させることが可能となっている。
【0096】
また、図4に示すように、右側のカム720の左右方向外側には、ユーザによって操作される操作部730が一体に形成されている。そして、ユーザが操作部730を操作することによって、図10(a)〜(c)に示すように、ニップ幅を3段階に切り替えることが可能となっている。ここで、図10(a)には、普通紙等を印刷するときの第1ニップ幅N1を示し、図10(b)には、厚紙等を印刷するときのニップ幅であり、第1ニップ幅N1よりも小さい第2ニップ幅N2を示し、図10(c)には、加熱ユニットHUを加圧ローラ140から離間させた状態(ニップ幅=0)を示している。また、図10では、便宜上、カバー部材200等を省略する。
【0097】
なお、「第1ニップ幅N1」や「第2ニップ幅N2」は、設計値に対してある程度幅(公差)を持った値であり、適宜実験やシミュレーション等で決定すればよい。
【0098】
具体的に、図10(a)に示す第1ニップ幅N1の状態では、カム720がアーム部材510から離れた状態(図11(a)参照)、すなわちカム720が引張コイルバネ540の付勢力を受けない状態になっている。この状態(以下、「第1の向き」という。)から、図11(b)に示すように、操作部730の操作によりカム720を一方向に回動させて第2の向きにすると、アーム部材510が所定量押し上げられる。すなわち、加熱ユニットHUに対して引張コイルバネ540の付勢力に抗する押圧力が与えられると、加熱ユニットHUが最下方の第1の位置から上方の第2の位置に移動する。これにより、図10(b)に示すように、ニップ部の幅が第1ニップ幅N1から第2ニップ幅N2に切り替わる。
【0099】
また、ニップ部の幅を第2ニップ幅N2からゼロに切り替える場合には、図11(c)に示すように、操作部730の操作によりカム720を一方向に所定量回動させて第2の向きから第3の向きにすることで、アーム部材510がさらに押し上げられて、加熱ユニットHUが最上方の第3の位置に移動して、ニップ幅がゼロになる(図10(c)参照)。
【0100】
ここで、ニップ部の幅が第2ニップ幅N2やゼロのときには、図11(b),(c)に示すように、カム720がアーム部材510を介して引張コイルバネ540の付勢力を受けている。なお、第2ニップ幅N2および離間状態の各状態でのカム720の向きは、カム720に形成された平面状の第1リリース面720Aおよび完全リリース面720Bがアーム部材510に面接触することで、保持されている。
【0101】
また、ニップ部の幅をゼロから第2ニップ幅N2に切り替える場合には、操作部730の操作によりカム720を他方向に所定量回動させて第3の向きから第2の向きにすることで、引張コイルバネ540の付勢力によりアーム部材510が所定量下がる(図11(b)参照)。これにより、加熱ユニットHUが最上方の第3の位置から第2の位置に移動して、ニップ部の幅がゼロから第2ニップ幅N2に切り替わる。
【0102】
また、ニップ部の幅を第2ニップ幅N2から第1ニップ幅N1に切り替える場合には、操作部730の操作によりカム720を他方向に所定量回動させて第2の向きから第1の向きにすることで、カム720からアーム部材510に加わっていた押圧力が解放される(図11(a)参照)。これにより、加熱ユニットHUが第2の位置から最下方の第1の位置に移動して、ニップ部の幅が、第2ニップ幅N2から第1ニップ幅N1に切り替わる。
【0103】
ここで、ニップ部の幅が第1ニップ幅N1のときには、カム720によってアーム部材510が支えられていないので、温度や湿度などの環境条件などによって加圧ローラ140が柔らかくなると、加熱ユニットHUが第1の位置よりも下がって、第1ニップ幅N1が許容範囲の最大値を超える場合がある。そこで、本実施形態では、溝430の底面431を、第1ニップ幅N1の最大値に対応した位置に形成している。
【0104】
これにより、カム720からアーム部材510に加わっていた押圧力が解放された状態において、環境の変化などで加圧ローラ140が柔らかくなって加熱ユニットHUが第1の位置よりも下がろうとしても、図12(a)に示すように、溝430の底面431にアーム部材510が当接することで、加熱ユニットHUの移動が規制される。これにより、図12(b)に示すように、ニップ部の幅が第1ニップ幅N1の最大値Nmaxを超えることを防止することができ、その結果、適正な定着性能を得ることが可能となっている。
【0105】
また、溝430の底面431は、アーム部材510との当接により加熱ユニットHUの移動を規制したときに、定着ベルト110とニップ板130のフランジ部131Bとの間に間隔が空くような位置に設けられている(図12(b)参照)。これにより、定着ベルト110がフランジ部131Bに接触しないことによって、屈曲部131Aとフランジ部131Bの間の隅部にある潤滑剤Gを定着ベルト110で必要以上に運ぶことが抑えられる。そのため、隅部に潤滑剤Gを確実に保持しておくことができ、潤滑剤Gを長期間にわたって利用することが可能となっている。
【0106】
また、溝430の底面431は、アーム部材510との当接により加熱ユニットHUの移動を規制したときに、定着ベルト110が延在部132,133の縁部(エッジ)とは非接触となるような位置に設けられている。つまり、ニップ部の範囲内に延在部132,133の縁部が入らないように、溝430の底面431によってアーム部材510、ひいては加熱ユニットHUの移動が止められるようになっている。これにより、定着ベルト110が延在部132,133の縁部に摺接することによる定着ベルト110の劣化を抑えることが可能となっている。
【0107】
また、切替部材700は、ニップ部の幅が第2ニップ幅N2のときに、定着ベルト110がニップ板130の屈曲部131Aとは非接触となるように構成されている。つまり、ニップ部の幅が第2ニップ幅N2となるように、カム720でアーム部材510を支持している状態において、ニップ部の範囲に屈曲部131Aが入らないように、切替部材700が構成されている。
【0108】
これにより、ニップ幅が第1ニップ幅N1のときに定着ベルト110が屈曲部131Aと接触するような場合(例えば、図12(b)のような第1ニップ幅N1の最大値Nmaxのとき)であっても、第2ニップ幅N2のときには定着ベルト110が屈曲部131Aとは非接触となるので、第2ニップ幅N2のときにおける定着ベルト110の劣化を抑えることが可能となっている。
【0109】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0110】
前記実施形態では、定着ベルト110とニップ板130のフランジ部131Bとの間に間隔が空くような位置に規制部(溝430の底面431)を設けたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、規制部で第1定着部材の移動を規制したときに筒状部材が屈曲部とは非接触となるような位置(図10(a)に示す位置)に、規制部を設けてもよい。
【0111】
これによれば、筒状部材が屈曲部に倣って変形することによる筒状部材の劣化を抑えることができる。
【0112】
前記実施形態では、規制部としてアーム部材510に当接する溝430の底面431を例示したが、本発明はこれに限定されず、規制部は、例えばニップ板に当接する突起などであってもよい。
【0113】
前記実施形態では、第1定着部材をニップ板130、第2定着部材を加圧ローラ140としたが、本発明はこれに限定されず、第1定着部材を加圧ローラ、第2定着部材をニップ板としてもよい。また、第1定着部材を加熱ローラ、第2定着部材を加圧ローラとしてもよい。
【0114】
前記実施形態では、バックアップ部材として加圧ローラ140を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ベルト状の加圧部材などであってもよい。
【0115】
前記実施形態では、付勢機構500をアーム部材510と引張コイルバネ540で構成したが、本発明はこれに限定されず、アーム部材とトーションバネで構成してもよいし、引張コイルバネやトーションバネ等の付勢部材のみで構成してもよい。
【0116】
前記実施形態では、シャフト710を貫通穴641A等で支持したが、本発明はこれに限定されず、例えば図13に示すように、穴の外周の一部が外部に開放された切欠部800でシャフト710を支持してもよい。
【0117】
前記実施形態では、定着ベルト110(筒状部材)をステンレス綱製としたが、本発明はこれに限定されず、その他の金属で形成してもよいし、ポリイミド樹脂などの樹脂から形成されていてもよいし、ゴムなどの弾性を有する材料から形成されていてもよい。ただし、樹脂製とした場合には、定着ベルト110と金属製のニップ板130との摺動抵抗を小さくすることができるので、定着ベルト110の摺動性をより向上することができる。
【0118】
また、筒状部材は、多層構造であってもよい。具体的には、例えば、金属製ベルトの表面に摺動抵抗を低減するための樹脂層などを有する構造であってもよいし、金属製ベルトの表面にゴム層などの弾性層を有する構造であってもよい。
【0119】
前記実施形態では、ニップ板130の搬送方向上流側の端部を定着ベルト110の内側に反らせたが、本発明はこれに限定されず、搬送方向下流側の端部を反らせてもよい。
【0120】
前記実施形態では、記録シートとして、普通紙やはがきなどの用紙Sを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、OHPシートなどであってもよい。
【0121】
前記実施形態では、本発明の定着装置を備える画像形成装置として、モノクロの画像を形成するレーザプリンタ1を例示したが、これに限定されず、例えば、カラーの画像を形成するプリンタであってもよい。また、画像形成装置は、プリンタに限定されず、例えば、フラットベッドスキャナなどの原稿読取装置を備える複写機や複合機などであってもよい。
【符号の説明】
【0122】
100 定着装置
110 定着ベルト
130 ニップ板
140 加圧ローラ
430 溝
431 底面
500 付勢機構
540 引張コイルバネ
700 切替部材
HU 加熱ユニット
N ニップ部
S 用紙
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録シート上にトナー像を熱定着させる定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録シートを加熱する加熱部材と、加熱部材との間でニップ部を形成する加圧ローラと、加熱部材を加圧ローラに向けて付勢する付勢機構と、加熱部材に対して付勢機構の付勢力に抗する押圧力を与えることでニップ部の幅を切り替える切替部材とを備えた定着装置が知られている(特許文献1参照)。この技術では、切替部材によって、ニップ部の幅が、熱定着を行うための第1ニップ幅と、ジャム処理を行うための第1ニップ幅よりも小さな第2ニップ幅(0)に切り替えることが可能となっている。
【0003】
具体的に、この技術では、付勢機構が、加熱部材を支持した状態で揺動可能なアーム部材と、アーム部材を介して加熱部材を加圧ローラに向けて付勢する付勢部材とを備え、切替部材が、アーム部材を付勢部材の付勢力に抗して押圧するカムを備えた構造となっている。そして、この技術では、アーム部材からカムが外れて、アーム部材の移動がカム等の他の部材で規制されないことによって付勢部材の付勢力がすべて加圧ローラに加わって、ニップ部の幅が第1ニップ幅となり、カムがアーム部材を付勢力に抗して押圧して付勢力を受けることで、ニップ部の幅が第2ニップ幅となるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−181937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、例えば使用により加圧ローラの硬度が変化した場合には、ニップ部の幅が第1ニップ幅のときにおいて、付勢力を加圧ローラですべて受けていることから、第1ニップ幅が許容される範囲の最大値よりも大きなニップ幅になる場合がある。この場合には、適正な定着性能を得られなくなるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、適正な定着性能を得ることができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る定着装置は、記録シート上に現像剤像を熱定着するための装置であって、可撓性を有する筒状部材と、前記筒状部材を挟むように配置され、前記記録シートを熱定着するためのニップ部を形成する第1定着部材および第2定着部材と、を備えている。
また、定着装置には、付勢部材を有し、当該付勢部材の付勢力によって前記第1定着部材を前記第2定着部材に向けて付勢する付勢機構と、前記第1定着部材に対して前記付勢部材の付勢力に抗する押圧力を与えることで、前記ニップ部の幅を、第1ニップ幅から当該第1ニップ幅よりも小さな第2ニップ幅に切り替えるとともに、前記押圧力を解放することで前記ニップ部の幅を前記第2ニップ幅から前記第1ニップ幅に切替可能な切替部材と、前記付勢力に抗する押圧力が解放された状態において、前記第1定着部材の移動を規制して前記ニップ部の第1ニップ幅の最大値を規定する規制部と、が設けられている。
【0008】
本発明によれば、第1定着部材が第1ニップ幅が大きくなる方向に移動しようとしても、規制部によってその移動が規制されるので、ニップ部の幅が第1ニップ幅の最大値を超えることを防止することができる。そのため、ニップ部の幅を確実に第1ニップ幅に維持することができるので、適正な定着性能を得ることができる。
【0009】
なお、本発明において、前記第1定着部材は、前記筒状部材の内周面に摺接するニップ板であり、前記第2定着部材は、前記ニップ板との間で前記筒状部材を挟むバックアップ部材であってもよい。
【0010】
また、本発明において、前記ニップ板は、前記記録シートの搬送方向に延びて前記ニップ部を形成するベース部と、当該ベース部から前記バックアップ部材側とは反対側に屈曲する屈曲部と、を有するのが望ましい。
【0011】
これによれば、ニップ板の屈曲部に筒状部材が摺動するので、例えばニップ板の端縁に筒状部材が摺動する構造に比べ、筒状部材の摺動性を向上することができる。
【0012】
また、本発明において、前記ニップ板は、前記屈曲部から前記搬送方向における前記ベース部とは反対側に延びるフランジ部を有し、前記屈曲部と前記フランジ部の間の隅部に潤滑剤が設けられているのが望ましい。
【0013】
これによれば、潤滑剤によって筒状部材の摺動性をより向上することができる。
【0014】
また、本発明において、前記規制部は、前記第1定着部材の移動を規制したときに前記筒状部材と前記フランジ部との間に間隔が空くような位置に設けられるのが望ましい。
【0015】
これによれば、筒状部材がフランジ部に接触しないことによって、隅部にある潤滑剤を筒状部材で必要以上に運ぶことが抑えられるので、隅部に潤滑剤を確実に保持しておくことができ、潤滑剤を長期間にわたって利用することができる。
【0016】
また、本発明において、前記規制部は、前記第1定着部材の移動を規制したときに前記筒状部材が前記屈曲部とは非接触となるような位置に設けられるのが望ましい。
【0017】
これによれば、筒状部材が屈曲部に倣って変形することによる筒状部材の劣化を抑えることができる。
【0018】
また、本発明において、前記ニップ部の幅が前記第2ニップ幅のときに、前記筒状部材が前記屈曲部とは非接触となるように前記切替部材が構成されているのが望ましい。
【0019】
これによれば、ニップ幅が第1ニップ幅のときに筒状部材が屈曲部と接触するような場合であっても、第2ニップ幅のときには筒状部材が屈曲部とは非接触となるので、第2ニップ幅のときにおける筒状部材の劣化を抑えることができる。
【0020】
また、本発明において、前記ニップ板が前記ベース部から搬送方向に沿って延びる延在部を有する場合には、前記規制部は、前記第1定着部材の移動を規制したときに前記筒状部材が前記延在部の縁部とは非接触となるような位置に設けられるのが望ましい。
【0021】
これによれば、筒状部材が延在部の縁部に摺接することによる筒状部材の劣化を抑えることができる。
【0022】
なお、本発明において、前記付勢機構は、定着装置のフレームに回動可能に支持されるとともに、前記第1定着部材を押圧するアーム部材を有し、前記アーム部材が前記付勢部材によって前記フレームに向けて付勢されるように構成されていてもよい。
【0023】
また、本発明において、前記規制部は、前記フレームのうち前記アーム部材に対して前記付勢部材の付勢方向に対向する面であり、当該アーム部材と当接することで前記第1定着部材の移動を規制するように構成されていてもよい。
【0024】
また、本発明において、前記切替部材は、前記アーム部材を前記付勢部材の付勢力に抗して押圧することで、前記ニップ部の幅を調整可能なカムを有していてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ニップ部の第1ニップ幅の最大値が規制部によって規定されるので、適正な定着性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の定着装置を備えたレーザプリンタの概略構成を示す図である。
【図2】定着装置の断面図である。
【図3】ニップ板、ハロゲンランプ、反射部材およびステイの斜視図である。
【図4】定着装置を分解して示す分解斜視図である。
【図5】アーム部材を示す斜視図(a)と、アーム部材と溝の関係を示す簡略断面図(b)である。
【図6】突出部を示す拡大斜視図(a)と、側面図(b)である。
【図7】定着装置を後斜め上から見た斜視図である。
【図8】定着装置を示す側面図(a)と、側壁をシャフト付近で切った簡略断面図(b)である。
【図9】搬送ローラ付近の構造を示す拡大断面図である。
【図10】切替部材によって切り替えられるニップ部の状態を示す説明図(a)〜(c)である。
【図11】カムとアーム部材の関係を示す説明図(a)〜(c)である。
【図12】アーム部材が溝の底面に当接した状態を示す説明図(a)と、ニップ部の幅が第1ニップ幅の最大値になった状態を示す説明図(b)である。
【図13】シャフトを支持する部位の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、まず、本発明の実施形態に係る定着装置100を備えたレーザプリンタ1(画像形成装置)の概略構成を簡単に説明した後、定着装置100の詳細な構成について説明する。
【0028】
また、以下の説明において、方向は、レーザプリンタ1を使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0029】
<レーザプリンタの概略構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、記録シートの一例としての用紙Sを供給する給紙部3と、露光装置4と、用紙S上にトナー像(現像剤像)を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙S上に転写されたトナー像を熱定着する定着装置100とを主に備えている。
【0030】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、給紙トレイ31と、用紙押圧板32と、給紙機構33とを主に備えている。給紙トレイ31に収容された用紙Sは、用紙押圧板32によって上方に寄せられ、給紙機構33によってプロセスカートリッジ5(感光体ドラム61と転写ローラ63との間)に向けて供給される。
【0031】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しないレーザ発光部や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。この露光装置4では、レーザ発光部から出射される画像データに基づくレーザ光(鎖線参照)が、感光体ドラム61の表面で高速走査されることで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0032】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とから構成されている。
【0033】
ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能に装着される構成となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、現像剤の一例としてのトナーを収容するトナー収容部74とを主に備えている。
【0034】
このプロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0035】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を用紙Sが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像が用紙S上に転写される。
【0036】
定着装置100は、プロセスカートリッジ5の後方に設けられている。用紙S上に転写されたトナー像は、定着装置100を通過することで用紙S上に熱定着される。その後、用紙Sは、搬送ローラ23,24によって排紙トレイ22上に排出される。
【0037】
<定着装置の詳細構成>
図2に示すように、定着装置100は、筒状部材の一例としての定着ベルト110と、ハロゲンランプ120と、第1定着部材の一例としてのニップ板130と、第2定着部材(バックアップ部材)の一例としての加圧ローラ140と、反射部材150と、ステイ160とを主に備えている。
【0038】
定着ベルト110は、耐熱性と可撓性を有する無端状(筒状)のステンレス綱製のベルトであり、カバー部材200に形成されたガイド部(ニップ上流ガイド310、ニップ下流ガイド320、上部ガイド330および前部ガイド340)により回転が案内されている。ここで、カバー部材200は、第1カバー部材210と、第2カバー部材220とを主に備えて構成されている。
【0039】
第1カバー部材210は、断面視略U形状をなして左右方向に長く延びるように形成されており、ステイ160を挟んでハロゲンランプ120とは反対側でステイ160を覆うように配置されている。第1カバー部材210は、後側壁211と、前側壁212と、後側壁211および前側壁212の上端同士を連結するように延びる上壁213と、後側壁211の下端から後方に向けて延びる延出壁214とを主に有している。
【0040】
そして、前側壁212の右端側には、定着ベルト110の前部分を案内する前部ガイド340が形成され、前側壁212の下端には、定着ベルト110の前側下部を案内するニップ上流ガイド310が形成されている。また、延出壁214の後端には、定着ベルト110の後側下部を案内するニップ下流ガイド320が形成されている。
【0041】
第2カバー部材220は、断面視略L形状をなして左右方向に長く延びるように形成されており、第1カバー部材210の後側壁211と上壁213の一部を覆うように配置されている。第2カバー部材220は、上壁221と、上壁221の後端から下方に向けて延びる後壁222と、後壁222の下端から後方に向けて延びる延出壁223とを主に有している。そして、上壁221には、定着ベルト110の上部を案内する上部ガイド330が形成されている。
【0042】
ハロゲンランプ120は、輻射熱を発してニップ板130および定着ベルト110(ニップ部N)を加熱することで用紙S上のトナーを加熱する部材であり、定着ベルト110の内側において定着ベルト110およびニップ板130の内面から所定の間隔をあけて配置されている。
【0043】
このハロゲンランプ120は、図3に示すように、細長い円筒状のガラス管121内に、図示しないフィラメントを配置し、ガラス管121の長手方向両端部を閉じてその内部にハロゲン元素を含む不活性ガスを封入することにより形成されている。このハロゲンランプ120の長手方向両端には、ガラス管121内のフィラメントの端部と電気的に接続された一対の電極122が設けられている。
【0044】
図2に戻り、ニップ板130は、ハロゲンランプ120からの輻射熱を受ける板状の部材であり、その下面が定着ベルト110の内周面に摺接するように配置されている。本実施形態において、ニップ板130は、金属製であり、例えば、後述するスチール製のステイ160より熱伝導率が大きい、アルミニウム板などを折り曲げることで形成されている。なお、ニップ板130をアルミニウム製とした場合には、ニップ板130の熱伝導性を向上させることが可能となっている。
【0045】
図3に示すように、ニップ板130は、ベース部131と、第1延在部132と、第2延在部133とを主に有している。
【0046】
ベース部131は、定着ベルト110の内周面と摺接するとともに、用紙Sの搬送方向に延びてニップ部Nを形成する部分であり、ハロゲンランプ120からの熱を定着ベルト110を介して用紙S上のトナーに伝達する。そして、図2に示すように、ベース部131の搬送方向上流側の端部には、定着ベルト110の内側(加圧ローラ140側とは反対側)に屈曲する屈曲部131Aが形成されている。
【0047】
これにより、定着ベルト110がニップ板130の端縁と擦れて磨耗するのを抑えることが可能となっている。
【0048】
また、屈曲部131Aの搬送方向上流側の端部には、当該屈曲部131Aから搬送方向上流側(搬送方向におけるベース部131とは反対側)に延びるフランジ部131Bが形成されている。そして、屈曲部131Aとフランジ部131Bの間の隅部には、潤滑剤Gが設けられている。これにより、潤滑剤Gによって定着ベルト110の摺動性をより向上することが可能となっている。
【0049】
図3に示すように、第1延在部132および第2延在部133は、平板状をなしており、ベース部131の後端から後方に向けて延びるように形成されている。第1延在部132は、ベース部131後端の左右方向における中央付近に1つ形成されており、その上面にサーモスタット170(図2参照)が対面して配置される。また、第2延在部133は、ベース部131後端の左右方向における中央付近と右端付近にそれぞれ1つずつ形成されており、それぞれの上面に図示せぬ2つのサーミスタが対面して配置される。
【0050】
図2に示すように、加圧ローラ140は、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟むことで定着ベルト110との間にニップ部Nを形成する部材であり、ニップ板130の下方に配置されている。本実施形態においては、ニップ部Nを形成するために、ニップ板130および加圧ローラ140の一方を他方に向けて付勢している。そして、この加圧ローラ140は、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟んだ状態で回転することで、当該定着ベルト110とともに用紙Sを搬送するようになっている。
【0051】
加圧ローラ140は、本体筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が伝達されて回転駆動するように構成されており、回転駆動することで定着ベルト110(または用紙S)との摩擦力により定着ベルト110を従動回転させる。トナー像が転写された用紙Sは、加圧ローラ140と加熱された定着ベルト110の間(ニップ部N)を搬送されることでトナー像(トナー)が熱定着されることとなる。
【0052】
反射部材150は、ハロゲンランプ120からの輻射熱をニップ板130に向けて反射する部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120を取り囲む(覆う)ように、ハロゲンランプ120から所定の間隔をあけて配置されている。
【0053】
この反射部材150は、赤外線および遠赤外線の反射率が大きい、例えば、アルミニウム板などを断面視略U形状に湾曲させて形成されている。より詳細に、反射部材150は、湾曲形状をなす反射部151と、反射部151の前後方向における両端部から前後方向外側に向けて延びるフランジ部152とを主に有している。
【0054】
ステイ160は、ニップ板130(ベース部131)の前後の端部を反射部材150(フランジ部152)を介して支持することで加圧ローラ140からの荷重を受ける部材であり、定着ベルト110の内側で反射部材150を覆うように配置されている。なお、ここでいう荷重は、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する構成においては、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する力の反力をいうものとする。
【0055】
このようなステイ160は、比較的剛性が高い、例えば、鋼板などを反射部材150(反射部151)の外面形状に沿った断面視略U形状に折り曲げることで形成されている。図3に示すように、ステイ160は、右側に設けられた右側固定部161と、左側に設けられた左側固定部162とを有している。右側固定部161および左側固定部162は、いずれもステイ160の上壁から後方に向けて延びるように形成されており、それぞれ貫通したネジ穴(符号省略)が設けられている。
【0056】
また、図4に示すように、定着装置100は、前述した各部材の他、第1フレーム400と、付勢機構500と、第2フレーム600と、切替部材700とを備えている。
【0057】
第1フレーム400は、樹脂製のフレームであり、主に、下壁部410と、下壁部410の左右方向の両端から上方に突出する一対の側壁420とを備えて構成されている。
【0058】
一対の側壁420は、その下部で加圧ローラ140を回転可能に支持し、その上部で加熱ユニットHUを上下方向にスライド可能に支持している。ここで、加熱ユニットHUは、前述した定着ベルト110、ハロゲンランプ120、ニップ板130、反射部材150、ステイ160およびカバー部材200で構成される構造体を備える他、この構造体(例えばステイ160)の左右両端を支持するとともに定着ベルト110の左右両端部を案内するサイドガイド(図示略)を備えている。
【0059】
そして、前記サイドガイドが一対の側壁420にスライド可能に支持されることで、加熱ユニットHUが上下に移動可能となっている。また、左側の側壁420には、加圧ローラ140を駆動するための駆動ギヤ440を設けられている。
【0060】
具体的に、駆動ギヤ440は、加圧ローラ140の左側端部に一体に設けられており、図示せぬモータから駆動力を受けることで加圧ローラ140と一体に回転するようになっている。また、一対の側壁420には、付勢機構500が設けられている。
【0061】
付勢機構500は、加熱ユニットHU(ニップ板130)を加圧ローラ140に向けて付勢する機構であり、主に、一対のアーム部材510と、付勢部材の一例としての一対の引張コイルバネ540とを備えて構成されている。
【0062】
一対のアーム部材510は、加熱ユニットHUの左右両端部の上方に配置されており、それぞれ左右対称な形状で形成されている。図5(a)に示すように、アーム部材510は、前後方向に延びるように形成されており、板状の縦壁部520および横壁部530によって断面視L字状に形成されている。
【0063】
縦壁部520は、左右方向に直交する壁であり、その前端部には、下方に延びる第1延在部521が形成されている。この第1延在部521には、第1フレーム400の側壁420に形成される図示せぬ軸部に回動可能に支持される回動中心穴522が形成されている。これにより、アーム部材510は、回動中心穴522を中心にして、後端部が上下に揺動可能となっている。
【0064】
また、縦壁部520の後側には、横壁部530よりも下方に突出するように延びる第2延在部523が形成されている。この第2延在部523は、図4および図5(b)に示すように、第1フレーム400の各側壁420に形成される溝430に入り込んでいる。この溝430は、上方に開口し、規制部の一例としての底面431を有しており、この底面431が、アーム部材510の第2延在部523に対して上下方向(後述する引張コイルバネ540の付勢方向)に対向している。
【0065】
これにより、溝430の底面431に第2延在部523の下端が当接したときには、アーム部材510の下方への移動が規制されて、それ以上、加熱ユニットHUが下方へ下がらないようになっている。
【0066】
また、第2延在部523の後側には、後方に延びた後上方に屈曲するフック部524が形成されている。そして、このフック部524と第1フレーム400の側壁420との間に引張コイルバネ540が設けられることで、アーム部材510の後端側(詳しくはアーム部材510の後述する押圧部531を挟んで回動軸とは反対側)の部分が第1フレーム400に向けて付勢されるようになっている。
【0067】
横壁部530は、上下方向に直交する壁であり、その略中央部が加熱ユニットHUを押圧するための押圧部531となっている。この押圧部531は、前述したフック部524よりも左右方向外側に配置されている。言い換えると、引張コイルバネ540は、押圧部531よりも左右方向内側(用紙Sの幅方向内側)に配置されている。
【0068】
これにより、付勢機構500から第1フレーム400の一対の側壁420に対して左右方向内側に向かう力が発生するようになっている。
【0069】
なお、アーム部材510(押圧部531)には、加熱ユニットHUが支持されており、アーム部材510の上下動に応じて加熱ユニットHUが上下動するようになっている。
【0070】
図4に示すように、第2フレーム600は、左右方向に延びる長尺状の樹脂製フレームであり、加熱ユニットHUを挟んで加圧ローラ140とは反対側に配置され、第1フレーム400の一対の側壁420に架け渡されるように設けられている。第2フレーム600は、長尺状の本体部610と、本体部610の左右の側面611の前側上部から左右方向外側に突出するカバー部620とを備えている。
【0071】
本体部610は、一対の側壁420の間の距離よりも短く形成されており、一対の側壁420の間に入り込むように配置されている。そして、本体部610の左右の側面611の後側下部には、左右方向外側(用紙Sの幅方向外側)に突出する突出部630が形成されている。
【0072】
突出部630は、側壁420の左右方向内側に配置されており、図6(a)に示すように、その先端面631が一対の側壁420と間隔を空けて配置されるような高さで形成されている。これにより、付勢機構500によって一対の側壁420が左右方向内側に押されて撓んだ場合には、側壁420が先端面631と当接することで、側壁420の変形を抑えることが可能となっている。すなわち、本実施形態では、突出部630の先端面631が、側壁420の変形を規制する規制面となっている。
【0073】
そして、このように側壁420の変形を抑えることで、側壁420に設けた駆動ギヤ440の位置が左右にずれることが抑えられるので、駆動ギヤ440を確実に作動させることが可能となっている。また、一対の側壁420と先端面631との間には間隔が空いているので、第1フレーム400と第2フレーム600の組み付けを容易にすることが可能となっている。
【0074】
また、図6(b)に示すように、突出部630は、第1板状部632と、当該第1板状部632に直交(交差)する第2板状部633と、当該第2板状部633に直交する第3板状部634とを備え、これらの板状部632〜634によってh字状に形成されている。これにより、突出部630の剛性を向上することができるので、一対の側壁420の変形を突出部630で確実に抑えることが可能となっている。また、各板状部632〜634によって突出部630を形成する、すなわち肉薄な構造で突出部を構成するので、第2フレーム600の軽量化を図ることが可能となっている。
【0075】
図7に示すように、第1フレーム400と第2フレーム600は、後述する切替部材700の1本のシャフト710により互いに連結されている。これにより、1本のシャフト710に対して第1フレーム400と第2フレーム600を精度よく位置決めすることが可能となっている。また、位置決め用のシャフトを切替部材700のシャフト710とは別に設ける構造に比べ、部品点数を削減することが可能となっている。
【0076】
シャフト710は、第2フレーム600の左右方向の一端側から他端側に延びるように形成されており、第1フレーム400の一対の側壁420と第2フレーム600を貫通するように設けられている。これにより、第2フレーム600がシャフト710で補強されて第2フレーム600の撓みが抑制されるので、突出部630の先端面631で確実に側壁420の変形を抑えることが可能となっている。また、第2フレーム600の補強に切替部材700のシャフト710を利用するので、補強するためのシャフトを別に設ける構造に比べ、部品点数を削減することが可能となっている。
【0077】
なお、本実施形態では、シャフト710は、金属で形成されている。これにより、2つのフレーム400,600を樹脂製として形状の自由度を向上させつつ、樹脂製のフレーム400,600の剛性を金属製のシャフト710で上げることが可能となっている。
【0078】
第2フレーム600の上部後側には、シャフト710によって支持される3つの被支持部641,642が形成されている。3つのうち2つの被支持部641は、第2フレーム600のうち左右方向(シャフト710の軸方向)の両端部に設けられ、1枚の板状に形成されている。これらの2つの被支持部641には、シャフト710が挿通される貫通穴641Aが形成されている。
【0079】
3つのうち残りの1つの被支持部642は、第2フレーム600のうち左右方向の中間部に設けられ、2枚の板状のリブをシャフト710よりも大径の連結部で一体に連結して構成されている。この被支持部642には、シャフト710が挿通される貫通穴642Aが形成されている。
【0080】
ここで、第2フレーム600の中間部とは、図示のように第2フレーム600の左右方向におけるちょうど中央部であってもよいし、中央部から左右にずれた位置でもよい。
【0081】
上述したように3つの被支持部641,642を配置することで、第2フレーム600が撓むのをシャフト710で確実に抑えることが可能となっている。また、第2フレーム600のシャフト710との連結部分を最小限の大きさにすることができるので、第2フレーム600の軽量化を図ることが可能となっている。
【0082】
また、第2フレーム600の中間部に設けた被支持部642の左右の幅の大きさを、両端部に設けた各被支持部641の左右の幅の大きさよりも大きくしたので、第2フレーム600の中間部が撓むのを確実に抑えることが可能となっている。
【0083】
図8(a),(b)に示すように、第1フレーム400の一対の側壁420の後側(用紙Sの搬送方向の一方側)の上部には、シャフト710が挿通される貫通穴421が形成されている。このようにシャフト710が第1フレーム400の後部と第2フレーム600の後部を貫通することで、第2フレーム600の前部がシャフト710を中心に揺動可能となるが、この揺動は、第1フレーム400の前部および第2フレーム600の前部に設けた突起部422および係合凹部621によって抑えられている。
【0084】
具体的に、突起部422は、第1フレーム400の側壁420の前側(用紙Sの搬送方向の他方側)の上部に左右方向外側に突出するように形成されている。
【0085】
係合凹部621は、第2フレーム600のカバー部620の前側に形成されている。詳しくは、カバー部620は、図7に示すように、本体部610の左右両端から左右方向外側に延びて側壁420の上方を通った後、下方に折れ曲がって側壁420の外面に対向するように形成されており、アーム部材510の回動軸付近を覆っている。そして、図8(a)に示すように、カバー部620のうち側壁420の外面に対向する部位の前側に、係合凹部621が形成されている。
【0086】
係合凹部621は、前方に開口する凹部であり、突起部422を上下方向で挟み込むように当該突起部422に係合している。なお、以上のように構成される第1フレーム400と第2フレーム600を組み付ける場合には、まず、第2フレーム600の一対のカバー部620を第1フレーム400の一対の側壁420の上面に沿ってスライドさせていくことで、一対の係合凹部621を一対の突起部422に係合させる。
【0087】
次に、シャフト710を、第1フレーム400の各貫通穴421と第2フレーム600の各貫通穴641A,642Aに挿入する。これにより、第2フレーム600が第1フレーム400に組み付けられる。より詳しくは、各貫通穴641A,642Aに挿入したシャフト710の両端に後述するカム720を取り付けることで、第2フレーム600が第1フレーム400に組み付けられる。
【0088】
図7に示すように、第2フレーム600の後側上部には、用紙Sを搬送するための搬送ローラ650が左右方向に間隔を空けて複数設けられるとともに、用紙Sをガイドするためのガイドリブ660が各搬送ローラ650を左右方向で挟むように左右方向に間隔を空けて複数設けられている。
【0089】
図9に示すように、搬送ローラ650の左右両側に配置されるガイドリブ660には、搬送ローラ650の回転軸部651を回転可能に支持する略U字の溝状の軸受部661と、搬送ローラ650を軸受部661に案内するためのガイド溝662とが形成されている。ガイド溝662は、軸受部661から第2フレーム600の上面(外面)に延びる溝であり、上面付近の部分が軸受部661の幅よりも大きく形成されて第2フレーム600の上方の空間に連通している。
【0090】
これにより、搬送ローラ650の回転軸部651をガイド溝662(幅広の部分)に挿入しやすくなっている。また、搬送ローラ650の回転軸部651をガイド溝662に沿って挿入させていくと、当該ガイド溝662で回転軸部651が軸受部661に案内されて、搬送ローラ650を第2フレーム600に組み付けることが可能となっている。
【0091】
そして、搬送ローラ650を第2フレーム600に組み付けた後に前述したシャフト710を各フレーム400,600の各貫通穴421,641A,642Aに挿入することで、シャフト710が、ガイド溝662に沿って移動する搬送ローラ650の軌跡上に配置される。これにより、第2フレーム600から搬送ローラ650が外れるのをシャフト710で抑えることができるので、シャフト710とは別の抜け止め用の部材を設ける構造に比べ、部品点数を削減することが可能となっている。
【0092】
また、第2フレーム600の軸受部661付近には、搬送ローラ650を軸受部661、詳しくはU字状の軸受部661の底面側に向けて付勢するトーションバネ670が設けられている。これにより、搬送ローラ650の下方に配置される図示せぬ駆動ローラに向けて搬送ローラ650がトーションバネ670で付勢されるので、搬送ローラ650を駆動ローラに従動させることが可能となっている。
【0093】
図4に示すように、切替部材700は、前述したシャフト710と、シャフト710の両端部に固定(支持)される一対のカム720とを備えている。シャフト710は、第1フレーム400および第2フレーム600に対して回動可能に支持されており、これにより、シャフト710の両端部に設けた一対のカム720がシャフト710とともに各フレーム400,600に対して回動するようになっている。
【0094】
カム720は、アーム部材510を引張コイルバネ540の付勢力に抗して上方に押圧することで、ニップ部の幅を調整可能な樹脂製の部材であり、アーム部材510の下側に配置されている。カム720は、シャフト710が挿通される筒部721と、筒部721から径方向外側に延びる板カム部722とを備えている。
【0095】
筒部721は、板カム部722から左右方向内側(軸方向内側)に突出するように形成され、図8(b)に示すように、第1フレーム400の側壁420の貫通穴421に入り込んで当該貫通穴421で回動可能に支持されている。これにより、樹脂製の第1フレーム400に対して樹脂製のカム720の筒部721が摺動するので、摺動抵抗を減らして、カム720をスムーズに回動させることが可能となっている。
【0096】
また、図4に示すように、右側のカム720の左右方向外側には、ユーザによって操作される操作部730が一体に形成されている。そして、ユーザが操作部730を操作することによって、図10(a)〜(c)に示すように、ニップ幅を3段階に切り替えることが可能となっている。ここで、図10(a)には、普通紙等を印刷するときの第1ニップ幅N1を示し、図10(b)には、厚紙等を印刷するときのニップ幅であり、第1ニップ幅N1よりも小さい第2ニップ幅N2を示し、図10(c)には、加熱ユニットHUを加圧ローラ140から離間させた状態(ニップ幅=0)を示している。また、図10では、便宜上、カバー部材200等を省略する。
【0097】
なお、「第1ニップ幅N1」や「第2ニップ幅N2」は、設計値に対してある程度幅(公差)を持った値であり、適宜実験やシミュレーション等で決定すればよい。
【0098】
具体的に、図10(a)に示す第1ニップ幅N1の状態では、カム720がアーム部材510から離れた状態(図11(a)参照)、すなわちカム720が引張コイルバネ540の付勢力を受けない状態になっている。この状態(以下、「第1の向き」という。)から、図11(b)に示すように、操作部730の操作によりカム720を一方向に回動させて第2の向きにすると、アーム部材510が所定量押し上げられる。すなわち、加熱ユニットHUに対して引張コイルバネ540の付勢力に抗する押圧力が与えられると、加熱ユニットHUが最下方の第1の位置から上方の第2の位置に移動する。これにより、図10(b)に示すように、ニップ部の幅が第1ニップ幅N1から第2ニップ幅N2に切り替わる。
【0099】
また、ニップ部の幅を第2ニップ幅N2からゼロに切り替える場合には、図11(c)に示すように、操作部730の操作によりカム720を一方向に所定量回動させて第2の向きから第3の向きにすることで、アーム部材510がさらに押し上げられて、加熱ユニットHUが最上方の第3の位置に移動して、ニップ幅がゼロになる(図10(c)参照)。
【0100】
ここで、ニップ部の幅が第2ニップ幅N2やゼロのときには、図11(b),(c)に示すように、カム720がアーム部材510を介して引張コイルバネ540の付勢力を受けている。なお、第2ニップ幅N2および離間状態の各状態でのカム720の向きは、カム720に形成された平面状の第1リリース面720Aおよび完全リリース面720Bがアーム部材510に面接触することで、保持されている。
【0101】
また、ニップ部の幅をゼロから第2ニップ幅N2に切り替える場合には、操作部730の操作によりカム720を他方向に所定量回動させて第3の向きから第2の向きにすることで、引張コイルバネ540の付勢力によりアーム部材510が所定量下がる(図11(b)参照)。これにより、加熱ユニットHUが最上方の第3の位置から第2の位置に移動して、ニップ部の幅がゼロから第2ニップ幅N2に切り替わる。
【0102】
また、ニップ部の幅を第2ニップ幅N2から第1ニップ幅N1に切り替える場合には、操作部730の操作によりカム720を他方向に所定量回動させて第2の向きから第1の向きにすることで、カム720からアーム部材510に加わっていた押圧力が解放される(図11(a)参照)。これにより、加熱ユニットHUが第2の位置から最下方の第1の位置に移動して、ニップ部の幅が、第2ニップ幅N2から第1ニップ幅N1に切り替わる。
【0103】
ここで、ニップ部の幅が第1ニップ幅N1のときには、カム720によってアーム部材510が支えられていないので、温度や湿度などの環境条件などによって加圧ローラ140が柔らかくなると、加熱ユニットHUが第1の位置よりも下がって、第1ニップ幅N1が許容範囲の最大値を超える場合がある。そこで、本実施形態では、溝430の底面431を、第1ニップ幅N1の最大値に対応した位置に形成している。
【0104】
これにより、カム720からアーム部材510に加わっていた押圧力が解放された状態において、環境の変化などで加圧ローラ140が柔らかくなって加熱ユニットHUが第1の位置よりも下がろうとしても、図12(a)に示すように、溝430の底面431にアーム部材510が当接することで、加熱ユニットHUの移動が規制される。これにより、図12(b)に示すように、ニップ部の幅が第1ニップ幅N1の最大値Nmaxを超えることを防止することができ、その結果、適正な定着性能を得ることが可能となっている。
【0105】
また、溝430の底面431は、アーム部材510との当接により加熱ユニットHUの移動を規制したときに、定着ベルト110とニップ板130のフランジ部131Bとの間に間隔が空くような位置に設けられている(図12(b)参照)。これにより、定着ベルト110がフランジ部131Bに接触しないことによって、屈曲部131Aとフランジ部131Bの間の隅部にある潤滑剤Gを定着ベルト110で必要以上に運ぶことが抑えられる。そのため、隅部に潤滑剤Gを確実に保持しておくことができ、潤滑剤Gを長期間にわたって利用することが可能となっている。
【0106】
また、溝430の底面431は、アーム部材510との当接により加熱ユニットHUの移動を規制したときに、定着ベルト110が延在部132,133の縁部(エッジ)とは非接触となるような位置に設けられている。つまり、ニップ部の範囲内に延在部132,133の縁部が入らないように、溝430の底面431によってアーム部材510、ひいては加熱ユニットHUの移動が止められるようになっている。これにより、定着ベルト110が延在部132,133の縁部に摺接することによる定着ベルト110の劣化を抑えることが可能となっている。
【0107】
また、切替部材700は、ニップ部の幅が第2ニップ幅N2のときに、定着ベルト110がニップ板130の屈曲部131Aとは非接触となるように構成されている。つまり、ニップ部の幅が第2ニップ幅N2となるように、カム720でアーム部材510を支持している状態において、ニップ部の範囲に屈曲部131Aが入らないように、切替部材700が構成されている。
【0108】
これにより、ニップ幅が第1ニップ幅N1のときに定着ベルト110が屈曲部131Aと接触するような場合(例えば、図12(b)のような第1ニップ幅N1の最大値Nmaxのとき)であっても、第2ニップ幅N2のときには定着ベルト110が屈曲部131Aとは非接触となるので、第2ニップ幅N2のときにおける定着ベルト110の劣化を抑えることが可能となっている。
【0109】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0110】
前記実施形態では、定着ベルト110とニップ板130のフランジ部131Bとの間に間隔が空くような位置に規制部(溝430の底面431)を設けたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、規制部で第1定着部材の移動を規制したときに筒状部材が屈曲部とは非接触となるような位置(図10(a)に示す位置)に、規制部を設けてもよい。
【0111】
これによれば、筒状部材が屈曲部に倣って変形することによる筒状部材の劣化を抑えることができる。
【0112】
前記実施形態では、規制部としてアーム部材510に当接する溝430の底面431を例示したが、本発明はこれに限定されず、規制部は、例えばニップ板に当接する突起などであってもよい。
【0113】
前記実施形態では、第1定着部材をニップ板130、第2定着部材を加圧ローラ140としたが、本発明はこれに限定されず、第1定着部材を加圧ローラ、第2定着部材をニップ板としてもよい。また、第1定着部材を加熱ローラ、第2定着部材を加圧ローラとしてもよい。
【0114】
前記実施形態では、バックアップ部材として加圧ローラ140を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ベルト状の加圧部材などであってもよい。
【0115】
前記実施形態では、付勢機構500をアーム部材510と引張コイルバネ540で構成したが、本発明はこれに限定されず、アーム部材とトーションバネで構成してもよいし、引張コイルバネやトーションバネ等の付勢部材のみで構成してもよい。
【0116】
前記実施形態では、シャフト710を貫通穴641A等で支持したが、本発明はこれに限定されず、例えば図13に示すように、穴の外周の一部が外部に開放された切欠部800でシャフト710を支持してもよい。
【0117】
前記実施形態では、定着ベルト110(筒状部材)をステンレス綱製としたが、本発明はこれに限定されず、その他の金属で形成してもよいし、ポリイミド樹脂などの樹脂から形成されていてもよいし、ゴムなどの弾性を有する材料から形成されていてもよい。ただし、樹脂製とした場合には、定着ベルト110と金属製のニップ板130との摺動抵抗を小さくすることができるので、定着ベルト110の摺動性をより向上することができる。
【0118】
また、筒状部材は、多層構造であってもよい。具体的には、例えば、金属製ベルトの表面に摺動抵抗を低減するための樹脂層などを有する構造であってもよいし、金属製ベルトの表面にゴム層などの弾性層を有する構造であってもよい。
【0119】
前記実施形態では、ニップ板130の搬送方向上流側の端部を定着ベルト110の内側に反らせたが、本発明はこれに限定されず、搬送方向下流側の端部を反らせてもよい。
【0120】
前記実施形態では、記録シートとして、普通紙やはがきなどの用紙Sを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、OHPシートなどであってもよい。
【0121】
前記実施形態では、本発明の定着装置を備える画像形成装置として、モノクロの画像を形成するレーザプリンタ1を例示したが、これに限定されず、例えば、カラーの画像を形成するプリンタであってもよい。また、画像形成装置は、プリンタに限定されず、例えば、フラットベッドスキャナなどの原稿読取装置を備える複写機や複合機などであってもよい。
【符号の説明】
【0122】
100 定着装置
110 定着ベルト
130 ニップ板
140 加圧ローラ
430 溝
431 底面
500 付勢機構
540 引張コイルバネ
700 切替部材
HU 加熱ユニット
N ニップ部
S 用紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シート上に現像剤像を熱定着するための定着装置であって、
可撓性を有する筒状部材と、
前記筒状部材を挟むように配置され、前記記録シートを熱定着するためのニップ部を形成する第1定着部材および第2定着部材と、を備え、
付勢部材を有し、当該付勢部材の付勢力によって前記第1定着部材を前記第2定着部材に向けて付勢する付勢機構と、
前記第1定着部材に対して前記付勢部材の付勢力に抗する押圧力を与えることで、前記ニップ部の幅を、第1ニップ幅から当該第1ニップ幅よりも小さな第2ニップ幅に切り替えるとともに、前記押圧力を解放することで前記ニップ部の幅を前記第2ニップ幅から前記第1ニップ幅に切替可能な切替部材と、
前記付勢力に抗する押圧力が解放された状態において、前記第1定着部材の移動を規制して前記ニップ部の第1ニップ幅の最大値を規定する規制部と、が設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第1定着部材は、前記筒状部材の内周面に摺接するニップ板であり、
前記第2定着部材は、前記ニップ板との間で前記筒状部材を挟むバックアップ部材であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ニップ板は、前記記録シートの搬送方向に延びて前記ニップ部を形成するベース部と、当該ベース部から前記バックアップ部材側とは反対側に屈曲する屈曲部と、を有することを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ニップ板は、前記屈曲部から前記搬送方向における前記ベース部とは反対側に延びるフランジ部を有し、
前記屈曲部と前記フランジ部の間の隅部に潤滑剤が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記規制部は、前記第1定着部材の移動を規制したときに前記筒状部材と前記フランジ部との間に間隔が空くような位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記規制部は、前記第1定着部材の移動を規制したときに前記筒状部材が前記屈曲部とは非接触となるような位置に設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の定着装置。
【請求項7】
前記ニップ部の幅が前記第2ニップ幅のときに、前記筒状部材が前記屈曲部とは非接触となるように前記切替部材が構成されている請求項5に記載の定着装置。
【請求項8】
前記ニップ板は、前記ベース部から搬送方向に沿って延びる延在部を有し、
前記規制部は、前記第1定着部材の移動を規制したときに前記筒状部材が前記延在部の縁部とは非接触となるような位置に設けられていることを特徴とする請求項3〜請求項7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記付勢機構は、
定着装置のフレームに回動可能に支持されるとともに、前記第1定着部材を押圧するアーム部材を有し、
前記アーム部材が前記付勢部材によって前記フレームに向けて付勢されることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記規制部は、前記フレームのうち前記アーム部材に対して前記付勢部材の付勢方向に対向する面であり、当該アーム部材と当接することで前記第1定着部材の移動を規制するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の定着装置。
【請求項11】
前記切替部材は、前記アーム部材を前記付勢部材の付勢力に抗して押圧することで、前記ニップ部の幅を調整可能なカムを有することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の定着装置。
【請求項1】
記録シート上に現像剤像を熱定着するための定着装置であって、
可撓性を有する筒状部材と、
前記筒状部材を挟むように配置され、前記記録シートを熱定着するためのニップ部を形成する第1定着部材および第2定着部材と、を備え、
付勢部材を有し、当該付勢部材の付勢力によって前記第1定着部材を前記第2定着部材に向けて付勢する付勢機構と、
前記第1定着部材に対して前記付勢部材の付勢力に抗する押圧力を与えることで、前記ニップ部の幅を、第1ニップ幅から当該第1ニップ幅よりも小さな第2ニップ幅に切り替えるとともに、前記押圧力を解放することで前記ニップ部の幅を前記第2ニップ幅から前記第1ニップ幅に切替可能な切替部材と、
前記付勢力に抗する押圧力が解放された状態において、前記第1定着部材の移動を規制して前記ニップ部の第1ニップ幅の最大値を規定する規制部と、が設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第1定着部材は、前記筒状部材の内周面に摺接するニップ板であり、
前記第2定着部材は、前記ニップ板との間で前記筒状部材を挟むバックアップ部材であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ニップ板は、前記記録シートの搬送方向に延びて前記ニップ部を形成するベース部と、当該ベース部から前記バックアップ部材側とは反対側に屈曲する屈曲部と、を有することを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ニップ板は、前記屈曲部から前記搬送方向における前記ベース部とは反対側に延びるフランジ部を有し、
前記屈曲部と前記フランジ部の間の隅部に潤滑剤が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記規制部は、前記第1定着部材の移動を規制したときに前記筒状部材と前記フランジ部との間に間隔が空くような位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記規制部は、前記第1定着部材の移動を規制したときに前記筒状部材が前記屈曲部とは非接触となるような位置に設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の定着装置。
【請求項7】
前記ニップ部の幅が前記第2ニップ幅のときに、前記筒状部材が前記屈曲部とは非接触となるように前記切替部材が構成されている請求項5に記載の定着装置。
【請求項8】
前記ニップ板は、前記ベース部から搬送方向に沿って延びる延在部を有し、
前記規制部は、前記第1定着部材の移動を規制したときに前記筒状部材が前記延在部の縁部とは非接触となるような位置に設けられていることを特徴とする請求項3〜請求項7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記付勢機構は、
定着装置のフレームに回動可能に支持されるとともに、前記第1定着部材を押圧するアーム部材を有し、
前記アーム部材が前記付勢部材によって前記フレームに向けて付勢されることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記規制部は、前記フレームのうち前記アーム部材に対して前記付勢部材の付勢方向に対向する面であり、当該アーム部材と当接することで前記第1定着部材の移動を規制するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の定着装置。
【請求項11】
前記切替部材は、前記アーム部材を前記付勢部材の付勢力に抗して押圧することで、前記ニップ部の幅を調整可能なカムを有することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の定着装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−68662(P2013−68662A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205133(P2011−205133)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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