説明

定着部材、定着装置、及び画像形成装置

【課題】基材上に直接配設されるフッ素樹脂の表面層に発泡体を採用しない場合に比べ、光沢度に優れた画像が得られる定着部材を提供すること。
【解決手段】基材11と、基材11の外周面に直接配設され、フッ素樹脂の発泡体で構成された表面層12と、を有する定着部材10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着部材、定着装置、及びそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置に用いる定着装置の場合、定着部材としては、基体上に、耐熱性エラストマー若しくはフッ素樹脂から成る、表面層を形成した構造、又は基体上に少なくとも弾性層と表面層とをこの順で積層した構造が採用されている。
【0003】
特に、特許文献1には、基体上の弾性層として、多孔質ゴムからなる弾性層や、中空フィラーが分散された弾性層が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−006666
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、基材上に直接配設されるフッ素樹脂の表面層に発泡体を採用しない場合に比べ、光沢度に優れた画像が得られる定着部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
請求項1に係る発明は、
基材と
前記基材の外周面に直接配設され、フッ素樹脂の発泡体で構成された表面層と、
を有する定着部材。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記発泡体の発泡率が20%以上70%以下であり、且つ前記発泡体のセル径が0.5μm以上10μm以下である請求項1に記載の定着部材。
【0008】
請求項3に係る発明は、
前記表面層の厚みが、0.1mm以上10mm以下である請求項1又は2に記載の定着部材。
【0009】
請求項4に係る発明は、
前記フッ素樹脂の発泡体の隣り合うセル同士が、独立していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着部材。
【0010】
請求項5に係る発明は、
少なくとも、第1回転体と、前記第1回転体に接触して配置される第2回転体と、を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体の少なくとも一方が、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の定着部材である定着装置。
【0011】
請求項6に係る発明は、
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段が、請求項5に記載の定着装置である画像形成装置。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、基材上に直接配設されるフッ素樹脂の表面層に発泡体を採用しない場合に比べ、光沢度に優れた画像が得られる。
請求項2に係る発明によれば、発泡体の発泡率が20%以上70%以下でなく、且つ発泡体のセル径が0.5μm以上10μm以下でない場合に比べ、定着部材の長寿命化及び高画質化が実現される。
請求項3に係る発明によれば、表面層の厚みが0.1mm以上10mm以下でない場合に比べ、定着部材の長寿命化及び高画質化が実現される。
請求項4に係る発明によれば、隣り合うセル同士が独立していない場合に比べ、定着部材の長寿命化が実現される。
請求項5に係る発明によれば、基材上に直接配設されるフッ素樹脂の表面層に発泡体を採用しない定着部材を適用した場合に比べ、光沢度に優れた画像が得られる。
請求項6に係る発明によれば、基材上に直接配設されるフッ素樹脂の表面層に発泡体を採用しない定着部材を適用した場合に比べ、光沢度に優れた画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る定着部材を示す概略斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本実施形態に係る定着装置を示す概略構成図である。
【図4】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
(定着部材)
図1は、本実施形態に係る定着部材を示す概略斜視図である。図2は、図1のA−A断面図である。
【0016】
本実施形態に係る定着部材10は、図1及び図2に示すように、例えば、ロール状の部材であり、円筒状の基材11と、基材11の外周面に直接配設される表面層12と、で構成されている。そして、表面層12は、フッ素樹脂の発泡体で構成された表面層である。
なお、本実施形態において、基材11の外周面に表面層12が直接配設されているとは、所謂弾性層等の中間層が基材11と表面層12との間に介在しないことを意味し、基材11の外周面に表面層12を接着するための接着層(不図示)は介在していてもよい意味である。
【0017】
本実施形態に係る定着部材10では、表面層12をフッ素樹脂の発泡体で構成させることで、離型性を持つ表面層に柔軟性を付与する。これにより、記録媒体に転写されたトナー像を定着する際、別途、弾性層を設けなくとも、トナー像や記録媒体に追随して定着部材10の表面層が凹み易くなり、トナー像を包み込み均一に溶融させられると考えられる。
したがって、本実施形態に係る定着部材10は、光沢度に優れた画像が得られる。
【0018】
また、本実施形態に係る定着部材10では、表面層12をフッ素樹脂発泡体で構成させることで、当該表面層12を厚膜化しても、柔軟性と離型性とが共に保持されると考えられることから、長寿命化も実現される。
【0019】
以下、本実施形態に係る定着部材10の構成について詳細に説明する。
基材11としては、例えば、円筒状の部材が挙げられる。円筒状の部材の材料しては、例えば、アルミ、SUS、鉄、銅等の金属、合金、セラミックス、FRM(繊維強化メタル)等が挙げられる。
【0020】
表面層12は、上述のようにフッ素樹脂の発泡体で構成されている。
フッ素樹脂は、他の離型材料に比べ、離型性が高いことから、定着部材の表面の離型性不足に起因する定着不良が抑制される。
【0021】
フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレン・テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、又はフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。これらの中でも、フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、又はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が好適に挙げられる。
【0022】
発泡体の発泡率は、20%以上70%以下であることが望ましく、より望ましくは30%以上65%以下、さらに望ましくは40%以上60%以下である。そして、発泡体のセル径は、0.5μm以上10μm以下であることが望ましく、0.5μm以上5μm以下、さらに望ましくは0.5μm以上3μm以下である。この発泡体の発泡率及びセル径が上記範囲を満たすと、表面層の柔軟性を確保すると共に、表面層の引張強度・引裂強度をも確保され易くなると考えられることから、定着部材の長寿命化及び高画質化が実現される。
【0023】
ここで、発泡体の発泡率は、デジタル比重計(商品名「AND−DMA−220」、安藤計器製工所社製)を用いて、試料(サンプル)の比重を測定し、当該比重から算出したものである。
【0024】
一方、ここで、発泡体のセル径は、デジタルマイクロスコープ(VHX900、キーエンス社製)を用いて計測し、この測定をセル20点につき行った平均値である。
【0025】
発泡体のセルは、隣り合うセル同士が独立している状態(いわゆる独立気泡)であることがよい。この状態であると、表面層の柔軟性を確保すると共に、表面層の引張強度・引裂強度をも確保され易くなると考えられることから、定着部材の長寿命化が実現される。
【0026】
表面層12の厚みは、例えば、0.1mm以上10mm以下が望ましく、より望ましくは1mm以上8以下、さらに望ましくは2mm以上5mm以下である。表面層の厚みを上記範囲とすることで、磨耗しても表面層の強度と柔軟性とが共に確保されると考えられることから、定着部材の長寿命化が実現される。
【0027】
上記構成の本実施形態に係る定着部材10は、軸方向における中央部が両端部よりも太いクラウン形状であってもよいし、軸方向における中央部が両端部よりも細い逆クラウン形状であってもよい。
【0028】
本実施形態に係る定着部材10は、例えば、基材11を準備すると共に、予め、表面層となる発泡体からなるチューブを作製し、当該チューブを基材11の外周面に被覆することで、作製することがよい。例えば、発泡体からなるチューブの作製方法としては、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体に、発泡の核材となるホウ酸アルミニウムを混合し、二軸押出機により押出してペレットを作製し、押出機に該ペレットをセットして、一定の圧力で窒素ガスを加えながらペレットをシリンダーから押出し、ダイの温度より低い温度の熱ロールによって巻き取りながら冷却する方法等が挙げられる。この場合、発泡の核材の量や、ダイの温度、熱ロールの温度等を変化させることで、発泡率やセル径を制御する。
無論、これに限られず、基材11上に、例えばフッ素樹脂、発泡剤(例えばパーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロポリエーテル)を含む表面層形成用塗布液を塗布した後、発泡させて表面層を形成して、作製してもよい。
【0029】
なお、本実施形態に係る定着部材10では、ロール状の定着部材について説明したが、これに限られず、無端ベルト状(管状)の定着部材であってもよい。無端ベルト状(管状)の定着部材を採用する場合、基材11としては、無端ベルト状の基材が採用される。無端ベルト状の基材としては、例えば、金属フィルムや樹脂フィルムが挙げられ、中でも樹脂フィルムが好適に挙げられる。樹脂フィルムの材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。また、樹脂フィルムの内部に導電化剤、帯電防止剤、剥離剤、又は補強剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0030】
(定着装置)
図3は、本実施形態に係る定着装置を示す概略構成図である。
【0031】
本実施形態に係る定着装置20は、例えば、図3に示すように、例えば、少なくとも、熱源23(例えばハロゲンヒータ等)を内部に有する加熱ロール21(第1回転体)と、加熱ロール21の外周面に接離して配置される加圧ロール22(第2回転体)と、を備えている。加圧ロール22はその軸方向を加熱ロール21の軸方向と沿うように当該加熱ロール21に接触して配置されている。そして、加熱ロール21として、上記本実施形態に係る定着部材10を適用している。
【0032】
一方、加圧ロール22は、周知の構成であればよく、例えば、円筒状の基材22A(例えばSUS基材や、アルミニウム又はその合金基材等)と、基材22Aの外周面に配設された弾性層22B(例えばシリコーンゴム層やフッ素ゴム層等)で構成されている。
【0033】
本実施形態に係る定着装置20では、加熱ロール21と加圧ロール22とを接触して配置させ、少なくとも一方を回転駆動させる。そして、未定着のトナー像Tを形成された記録媒体Pを、双方のロールの間に狭持させ搬送させる。このとき、加熱ロール21から伝達される熱でトナー像を溶融させると共に、双方のロールの間の圧力によりトナー像Tを記録媒体Pの表面に圧着させ、当該トナー像Tを定着する。
【0034】
なお、本実施形態に係る定着装置20では、加熱ロール21のみに上記本実施形態に係る定着部材10を適用した形態を説明したが、これに限られず、加圧ロール22及び加圧ロール22の双方に上記本実施形態に係る定着部材10を適用した形態であってもよし、加圧ロール22のみに上記本実施形態に係る定着部材10を適用した形態であってもよい。また、熱源23を加圧ロール22に設けた形態であってもよい。
【0035】
また、本実施形態に係る定着装置20では、第1回転体として加熱ロール、第2回転体として加圧ロールを採用した所謂ロール・ロール方式の定着装置について説明したが、これに限られず、第1回転体として加熱ロール、第2回転体として加圧ベルトを採用した所謂ロール・ベルト方式の定着装置、第1回転体として加熱ベルト、第2回転体として加圧ロールを採用した所謂ベルト・ロール方式の定着装置、又は、第1回転体として加熱ベルト、第2回転体として加圧ベルトを採用した所謂ベルト・ベルト方式の定着装置であってもよい。そして、これら方式の第1回転体及び第2回転体の少なくとも一方に、上記本実施形態に係る定着部材10を適用すればよい。
【0036】
(画像形成装置)
図4は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0037】
本実施形態に係る画像形成装置30は、図4に示すように、例えば、電子写真感光体31(像保持体)と、電子写真感光体31の表面を帯電させる帯電装置32(帯電手段)と、帯電装置32により帯電される電子写真感光体31を露光して静電潜像を形成する露光装置33(静電潜像形成手段)と、露光装置33により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置34(現像手段)と、現像装置34により形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置35(転写手段)と、転写後の電子写真感光体31の表面に残留するトナーを除去すえるクリーニング装置36と、を備える。そして、本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体に転写されたトナー像を定着する定着装置37を備え、当該定着装置37として上記本実施形態に係る定着装置20を適用している。
【0038】
本実施形態に係る画像形成装置30では、帯電装置32により電子写真感光体31の表面を帯電させる。次に、露光装置33により、帯電された電子写真感光体の表面を像様に露光することで、像様に静電潜像が形成される。次に、現像装置34により、電子写真感光体31の表面の静電潜像を現像して、トナー像を形成する。次に、転写装置35により、電子写真感光体31に形成したトナー像を、収納部38から搬送された記録媒体Pに転写する。そして、記録媒体Pに転写されたトナー像を定着する。一方、クリーニング装置36により、転写後の電子写真感光体に残留したトナーを除去して、次の画像形成が行われる。
【0039】
本実施形態に係る画像形成装置30は、定着装置以外は、周知の構成であればよく、特に限定されないが、以下簡単に説明する。
【0040】
電子写真感光体31としては、例えば、導電性基体上に少なくとも感光層が設けられた構成を有するものであれば特に限定されないが、例えば、導電性基体上に、電荷発生層と電荷輸送層とこの順に積層した機能分離型の感光層を有する有機感光体が好適に挙げられる。また、感光層の表面には必要に応じて表面保護層を設けたり、感光層と導電性基体や、感光層と表面保護層との間に必要に応じて中間層を設けてもよい。
【0041】
帯電装置32としては、接触帯電方式の帯電装置であってもよいし、非接触帯電方式の帯電装置であってもよい。接触帯電方式の帯電装置としては、例えば、帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、又は帯電チューブ等が挙げられる。非接触帯電方式の帯電装置としては、例えば、コロトロン、スコロトロン等が挙げられる。
【0042】
露光装置33としては、電子写真感光体31の表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッター等の光源を像様に露光する光学系装置等が挙げられる。
【0043】
現像装置34としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行う。その現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択する。
【0044】
転写装置35としては、ローラー状、ベルト状、フィルム状若しくはゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、又は、コロナ放電を利用したスコロトロン、若しくはコロトロン等の非接触転写電器等が挙げられる。
【0045】
クリーニング装置36としては、例えば、クリーニングブレード、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等を利用した装置が挙げられる。
【0046】
なお、本実施形態に係る画像形成装置30は、電子写真感光体に形成したトナー像を記録媒体へ直接転写する方式の装置について説明したがこれに限られず、電子写真感光体に形成したトナー像を中間転写体を介して記録媒体に転写する中間転写方式の装置、又は複数の電子写真感光体を中間転写体の直列に配設させたタンデム方式の装置等、周知の構成を適用される。
【0047】
本実施形態に係る画像形成装置30は、具体的には例えば、複写機、プリンタ、又はファクシミリ等の画像形成装置に適用され得る。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を交えて本発明を詳細に説明するが、以下に示す実施例のみに本発明は限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
外径102mm、長さ380mm、厚さ10mmのアルミニウム製の円筒状の基体と、直径100mm、長さ520mm、厚さ2mm、発泡率45%、セル径5μmであり、裏面にエキシマレーザー処理を施した、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体から成る発泡フッ素樹脂チューブと、を準備した。発泡フッ素樹脂チューブの裏面にプライマー(PL−910YL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、30分間風乾させた後、基体上に発泡フッ素樹脂チューブを被覆し、熱風オーブンにて130℃で1時間焼成することにより定着部材を得た。
【0050】
ここで、発泡フッ素樹脂チューブは、次のように作製した。テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体100重量部に、発泡の核材となるホウ酸アルミニウム5重量部を混合し、二軸押出機により押出してペレットを作製し、押出機に該ペレットをセットして、一定の圧力で窒素ガスを加えながらペレットをシリンダーから押出し、ダイの温度より低い温度の熱ロールによって巻き取りながら冷却し所望の発泡フッ素樹脂チューブを作製した。
【0051】
(実施例2)
実施例1において、ダイの温度を変化させることで、発泡フッ素樹脂チューブの発泡率が20%、セル径が0.5μmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の定着部材を得た。
【0052】
(実施例3)
実施例1において、ダイの温度を変化させることで、発泡フッ素樹脂チューブの発泡率が70%、セル径が10μmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
【0053】
(実施例4)
実施例1において、ダイの温度を変化させることで、発泡フッ素樹脂チューブの発泡率が20%、セル径が10μmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
【0054】
(実施例5)
実施例1において、発泡フッ素樹脂チューブの発泡率が70%、セル径が0.5μmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
【0055】
(実施例6)
実施例1において、ダイの温度を変化させることで、発泡フッ素樹脂チューブの発泡率が20%、セル径が5μmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
【0056】
(実施例7)
実施例1において、ダイの温度を変化させることで、発泡フッ素樹脂チューブの発泡率が70%、セル径が5μmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
【0057】
(実施例8)
実施例1において、ダイの温度を変化させることで、発泡フッ素樹脂チューブの発泡率が45%、セル径が0.5μmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
【0058】
(実施例9)
実施例1において、ダイの温度を変化させることで、発泡フッ素樹脂チューブの発泡率が45%、セル径が10μmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
【0059】
(比較例1)
実施例1において、パーフルオロアルキル/ビニルエーテル共重合体から成る非発泡フッ素樹脂チューブを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
ここで、非発泡フッ素樹脂チューブは、次のように作製した。パーフルオロアルキル/ビニルエーテル共重合体を押出機に投入して環状ダイスからチューブ状にして溶融押出し、サイジングダイでチューブ径を規制した後にニップロールによりチューブを引き取り、所望の寸法に裁断し、チューブを得た。
【0060】
(比較例2)
実施例1に記載の基体と、比較例1に記載の非発泡フッ素樹脂チューブを準備した。非発泡フッ素樹脂チューブの裏面に実施例1に記載のプライマーを塗布し風乾させた後、フッ素樹脂チューブ内側に基体を挿入し、基体と非発泡フッ素樹脂チューブ(表面層)との間に液状シリコーンゴム(KE1367−A/B、信越化学社製)を厚さ2mmで注型し、200℃で4時間焼成した。以上で基体上に弾性層と表面層とがこの順で積層した構造を有する定着部材を得た。
【0061】
(実施例10)
実施例1において、ダイの温度を変化させることで、発泡フッ素樹脂チューブの発泡率が15%、セル径が0.3μmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
【0062】
(実施例11)
実施例1において、ダイの温度を変化させることで、発泡フッ素樹脂チューブの発泡率が75%、セル径が12μmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
【0063】
(実施例12)
実施例1において、ダイの温度を変化させることで、発泡フッ素樹脂チューブの発泡率が15%、セル径が12μmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
【0064】
(実施例13)
実施例1において、ダイの温度を変化させることで、発泡フッ素樹脂チューブの発泡率が75%、セル径が0.3μmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
【0065】
(実施例14)
実施例1において、押出機の押出量を変化させることで、発泡フッ素樹脂チューブの厚みが0.08mmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
【0066】
(実施例15)
実施例1において、押出機の押出量を変化させることで、発泡フッ素樹脂チューブの厚みが11mmのものを用いたこと以外は実施例1と同様にして定着部材を得た。
【0067】
(評価1)
上記各実施例及び各比較例で得たそれぞれの定着部材を、ロール・ロール方式の定着装置(図3参照)に、加熱ロールとして取り付けた。なお、本定着装置の加圧ロールとしては、外径102mm、長さ380mm、厚さ10mmのアルミニウム製の円筒状の基体の外周面に、シリコーンゴム(商品名SE6920―A/B、東レ・ダウコーニング社製)からなる厚み2mmの弾性層を配設した定着部材を採用した。そして、この定着装置を画像形成装置(図4参照:富士ゼロックス社製DocuCentreIII7000)に設置して画像(画像種;文字、絵、黒ベタ複合チャート)を形成した。記録媒体(用紙)としては、OKトップコート256gsm紙(富士ゼロックス社製)を用いた。そして、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
−画像光沢性評価−
画像光沢性は、得られた画像の光沢度を75度光沢度計(村上色彩技術研究所(株)製)で測定して評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:45度以上
○:40度以上45度未満
△:35度以上40度未満
×:35度未満
【0069】
−画質評価−
画質評価は、得られた画像の画質を官能評価で行った。評価点数は以下の通りである。
・非常に好ましい:5点
・好ましい:4点
・普通:3点
・好ましくない:2点
・非常に好ましくない:1点
そして、20人の評価点数の平均点から、以下の評価基準により画質評価の結果とした。
◎:3.5点以上
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.5点以上3.0点未満
×:2.5点未満
【0070】
<加圧ロール(定着部材)の寿命評価>
定着部材の寿命評価は、加熱ロール(定着部材)に、画質に影響を与える損傷が発生するまでの通紙枚数を評価した。当該定着部材の損傷としては、表面層の亀裂や破れの発生、或いは表面層が磨耗によって消失する等である。評価基準は、以下の通りである。
◎:500,000枚以上
○:200,000枚以上500,000枚未満
△:100,000枚を超え200,000枚未満
×:100,000枚以下
【0071】
(評価2)
実施例1、及び比較例1乃至2で得たそれぞれの定着部材を、ロール・ロール方式の定着装置(図3参照)に、加圧ロールとして取り付けた。なお、本定着装置の加熱ロールとしては比較例2で作製した定着部材を採用した。そして、この定着装置を用いた以外は、上記評価1と同様にして評価した。結果を表1に示す。なお、定着部材の寿命評価については、加圧ロールについて行った。
【0072】
【表1】

【0073】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、画像光沢性、画質、及び定着部材の寿命について共に良好な結果が得られることがわかる。また、本実施例1乃至9は、実施例10乃至13に比べ、画像光沢性、画質、及び定着部材の寿命について共に良好な結果が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0074】
10 定着部材
11 基材
12 表面層
20 定着装置
21 加熱ロール
22 加圧ロール
22A 基材
22B 弾性層
23 熱源
30 画像形成装置
31 電子写真感光体
32 帯電装置
33 露光装置
34 現像装置
35 転写装置
36 クリーニング装置
37 定着装置
38 収納部
P 記録媒体
T トナー像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と
前記基材の外周面に直接配設され、フッ素樹脂の発泡体で構成された表面層と、
を有する定着部材。
【請求項2】
前記発泡体の発泡率が20%以上70%以下であり、且つ前記発泡体のセル径が0.5μm以上10μm以下である請求項1に記載の定着部材。
【請求項3】
前記表面層の厚みが、0.1mm以上10mm以下である請求項1又は2に記載の定着部材。
【請求項4】
前記フッ素樹脂の発泡体の隣り合うセル同士が、独立していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着部材。
【請求項5】
少なくとも、第1回転体と、前記第1回転体に接触して配置される第2回転体と、を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体の少なくとも一方が、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の定着部材である定着装置。
【請求項6】
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段が、請求項5に記載の定着装置である画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−286788(P2010−286788A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142611(P2009−142611)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】